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特表2024-512865超長ナノ銀ワイヤ材料、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】超長ナノ銀ワイヤ材料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20240313BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240313BHJP
   B22F 1/062 20220101ALI20240313BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240313BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B22F9/24 E
B22F1/00 K
B22F1/062
H01B13/00 501Z
H01B1/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544218
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022129423
(87)【国際公開番号】W WO2023078320
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111311807.3
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523273967
【氏名又は名称】西北有色金属研究院
【氏名又は名称原語表記】NORTHWEST INSTITUTE FOR NONFERROUS METAL RESEARCH
【住所又は居所原語表記】96 Weiyang Road,Weiyang District,Xi’an,Shaanxi 710016,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】党 蕊
(72)【発明者】
【氏名】鄭 晶
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA02
4K017CA04
4K017CA07
4K017EJ01
4K017FB03
4K017FB07
4K017FB11
4K018BA01
4K018BB02
4K018BB04
4K018KA37
5G301AA01
5G301AB20
5G301AD04
(57)【要約】
本発明は、超長ナノ銀ワイヤ材料、及びその製造方法を開示し、還元糖及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて、清澄溶液を得るステップ1と、前記清澄溶液を金属イオン溶液と混合し、混合溶液Aを得るステップ2と、前記混合溶液Aをハロゲン化物溶液と混合し、混合溶液Bを得るステップ3と、前記混合溶液Bに銀イオン含有溶液を滴下して、反応溶液を得た後、110℃~130℃で14h~20h反応させ、フロック状生成物を得るステップ4と、脱イオン水及び無水エタノールを用いて前記フロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得るステップ5と、を含む。本発明の製造方法は、水溶液系で、不活性雰囲気による保護が不要であり、低コストで、環境に優しく、工業化生産が容易な超長ナノ銀ワイヤ材料の新しい製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元糖及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得るステップ1と、
前記清澄溶液を金属イオン溶液と混合し、混合溶液Aを得るステップ2と、
前記混合溶液Aをハロゲン化物溶液と混合し、混合溶液Bを得るステップ3と、
前記混合溶液Bに銀イオン含有溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移し、110℃~130℃で14h~20h反応させ、フロック状生成物を得るステップ4と、
脱イオン水及び無水エタノールを用いて前記フロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、アスペクト比が3000を超える超長ナノ銀ワイヤ材料を得るステップ5と、を含む、ことを特徴とする超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項2】
前記還元糖は、グルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、及びガラクトースのうちの1種又は複数種、好ましくはグルコースであり、及び/又は、
前記金属イオン溶液は、硝酸ニッケル溶液、硫酸ニッケル溶液、硝酸鉄溶液、硫酸第一鉄溶液、硫酸銅溶液、硝酸銅溶液、及び硫酸マンガン溶液のうちの1種又は複数種、好ましくは硫酸銅溶液である、ことを特徴とする請求項1に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化物溶液は、塩化カリウム溶液及び/又は塩化ナトリウム溶液であり、及び/又は、
前記銀イオン含有溶液は、硝酸銀溶液であり、及び/又は、
前記ポリビニルピロリドンの分子量Mwが、4000~1300000ダルトン、好ましくは8000~100000ダルトン、例えば24000又は58000ダルトンである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項4】
前記還元糖、前記ポリビニルピロリドン、及び前記脱イオン水のモル比が、1:(0.05~0.1):(280~560)、好ましくは1:(0.05~0.1):(350~550)、例えば1:0.05:400、1:0.06:430、1:0.08:350、1:0.07:550、1:0.06:450又は1:0.1:500であり、及び/又は、
ステップ2の前記混合溶液Aにおいて、前記還元糖と前記金属イオンとのモル比が、1:(480~600)、好ましくは1:(500~580)、例えば1:550、1:560又は1:567である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項5】
ステップ3の前記混合溶液Bにおいて、前記ハロゲン化物と前記金属イオンとのモル比が、1:(2.5~4.8)、好ましくは1:(3~4.5)、例えば1:3.67、1:4又は1:4.17であり、及び/又は、
ステップ4の前記反応溶液において、前記還元糖と前記銀イオンとのモル比が、1:(300~500)、好ましくは1:(350~480)、例えば1:400、1:440又は1:450である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項6】
グルコース及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得るステップ1と、
ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸銅溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Aを得るステップ2と、
ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Bを得るステップ3と、
ステップ3で得られた混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、110℃~130℃で14h~20h反応させ、フロック状生成物を得るステップ4と、
脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、アスペクト比が3000を超える超長ナノ銀ワイヤ材料を得るステップ5と、を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項7】
ステップ1では、前記グルコース、前記ポリビニルピロリドン、及び前記脱イオン水のモル比が、1:(0.05~0.1):(280~560)であり、及び/又は、
ステップ2では、前記混合溶液Aにおいて、前記グルコースと前記硫酸銅とのモル比が、1:(480~600)であり、及び/又は、
ステップ3では、前記混合溶液Bにおいて、前記塩化ナトリウムと前記硫酸銅とのモル比が、1:(3~4.8)であり、及び/又は、
ステップ4では、前記反応溶液において、前記グルコースと前記硝酸銀とのモル比が、1:(300~500)である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項8】
ステップ5では、沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3~5回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3~5回繰り返す、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項9】
ステップ1、ステップ2、及びステップ3のいずれにおいても、混合溶液の撹拌は室温の条件で行われ、及び/又は、
ステップ2、ステップ3では、撹拌時間は、それぞれ0.5~2hである、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法により製造された超長ナノ銀ワイヤ材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属ナノ材料の技術分野に属し、具体的には、超長ナノ銀ワイヤ材料、及びその製造方法に関する。
【0002】
本願は、出願日が2021/11/8である中国特許出願202111311087.3の優先権を主張している。本願は、上記中国特許出願の全文を援用している。
【背景技術】
【0003】
ナノ材料の製造技術が発展し、フレキシブル電子製品の需要が高まるに伴い、中国国内外の研究は、グラフェンやカーボンナノチューブ、複合ナノ材料、金属メッシュや金属ナノワイヤなど、金属酸化物薄膜に代わる新型ナノ材料に変化している。これらの材料の高い直流導電性により、製造された超薄膜は、良好な導電性を有し、従来の電極の機械的脆性、柔軟性が劣るという欠点を克服し優れた性能を有する透明電極を製造することを可能にする。その中で、ナノ銀ワイヤは、1次元金属ナノ材料として高いアスペクト比を持ち、基材上に不規則な網目構造を形成することができ、電極の曲げ半径を小さくし、曲げ時の抵抗変化率を小さくすることができる。また、超長ナノ銀ワイヤ材料製の透明電極は、他のいくつかの新材料と比べて、ヘイズが低く、より良い光透過性を持つ。
【0004】
現段階で、ナノ銀ワイヤの製造方法は、物理法と化学法の2種類に分けられる。物理法には、マグネトロンスパッタリング、超音波粉砕、機械粉砕などの方法が含まれる。化学法には、水熱合成法、光化学還元法、電気化学法、鋳型法、超音波還元法、多価アルコール法などが含まれる。物理法は、プロセスが複雑で、しかもエネルギー消費量が大きく、技術への要件が高く、しかも、得られた生成物の形態の均一性が劣り、これによって、物理法で製造されたナノ銀ワイヤの規格が厳しく制限されてしまう。物理法に比べて、化学液相法は、ナノ材料を制御可能に合成するための最もよく使われる方法であり、この方法は、プロセス過程が簡単で、コストが安く、簡単な液相反応過程においてナノ材料の形態と寸法を制御することができ、超長ナノ銀ワイヤ材料の工業化生産に応用されるものとして最も有望である。その中で、夏幼南氏が提案した多価アルコールによる超長ナノ銀ワイヤ材料の製造は、広く受け入れられ、普遍的に応用されている技術方法である。最もよく使用されるのはエチレングリコールを溶媒とし、PVPを界面活性剤としてナノ銀ワイヤ間の接着を抑制し、制御剤を添加してAgとコロイドを形成し、Agの還元速度とナノ銀ワイヤの成長速度を制御し、最終的に超長ナノ銀ワイヤ材料を得ることである。これに基づいて多くの探究が行われてきた。そのメカニズムと各種の影響パラメーターを検討することにより、さまざまな規格のナノ銀ワイヤが製造された。しかし、この方法は、まだ、製造過程が煩雑で、材料投入過程を正確に制御する必要があり、しかも、影響要素が多く、現在報告されている製造規模はほとんどミリグラムとグラム級にとどまっており、これはナノ銀ワイヤの量産に非常に不利である。また、多価アルコール法は、いずれも有機試薬(エチレングリコール、プロピレントリオールなど)を溶媒と還元剤として使用する必要があり、反応液の粘度が大きく、生成物のその後の洗浄過程を困難にするほか、環境汚染をもたらす。さらに、超長ナノ銀ワイヤ材料のアスペクト比などはフレキシブル透明電極の性能に大きく影響し、同じシート抵抗と直径では、ナノワイヤの透過率は本数に反比例し、長いナノ銀ワイヤ製透明電極の透過率は短いナノ銀ワイヤよりも高く、長いナノ銀ワイヤ製透明電極の光電性能は短いナノワイヤよりも優れている。しかし、多価アルコール法で製造されたナノ銀ワイヤ材料は一般的に短く、長さが70μm以上の超長ナノ銀ワイヤ材料に関する報道は少なく、しかも、規模が極めて小さく、再現性が悪く、これにより、超長ナノ銀ワイヤ材料のフレキシブル電極分野における工業化応用が極めて制限されてしまう。
【0005】
超長ナノ銀ワイヤ材料の応用分野が拡大していくに伴い、その製造手段もさらに発展している。その発展は、化学液相法を巡って、環境にやさしい技術やプロセスを開発し、環境が結晶成長過程に与える影響の要素を減らす傾向にあり、製造技術は、低コスト化、低消費量化、低汚染化へ発展していく。製造された超長ナノ銀ワイヤ材料は、洗浄されやすく、工業的生産の需要を満たし、工業的生産を実現することを可能にする必要がある。また、フレキシブル電子分野の発展の需要に応じて、フレキシブル電子デバイスの導電性、透明性、屈曲性の応用要求を満たすために、今後は特に超長ナノ銀ワイヤ材料の製造プロセス技術に注目する。
【発明の概要】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の従来技術の欠点に対して、超長ナノ銀ワイヤ材料、及びその製造方法を提供することである。この製造方法は、現在市販の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造プロセスのほとんどにおいて、多価アルコール有機系を使用しており、生成物溶液の粘度が大きく、洗浄が困難で、汚染が深刻で、反応条件が厳しいなどの問題があることに着目し、水溶液系で、有機溶媒の使用が不要で、不活性雰囲気による保護が不要で、低コストで、環境に優しく、工業化生産が容易な超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法を開発する。
【0007】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の技術的解決手段を採用し、
還元糖及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得るステップ1と、
前記清澄溶液を金属イオン溶液と混合し、混合溶液Aを得るステップ2と、
前記混合溶液Aをハロゲン化物溶液と混合し、混合溶液Bを得るステップ3と、
前記混合溶液Bに銀イオンを含む溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移し、110℃~130℃で14h~20h反応させ、フロック状生成物を得るステップ4と、
脱イオン水及び無水エタノールを用いて前記フロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、アスペクト比が3000を超える超長ナノ銀ワイヤ材料を得るステップ5と、を含む、超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法である。
【0008】
いくつかの好ましい実施形態では、以下の製造方法が用いられ、
ステップ1において、グルコース及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、
ステップ2において、ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸銅溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、
ステップ3において、ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、
ステップ4において、ステップ3で得られた混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、110℃~130℃で14h~20h反応させ、フロック状生成物を得、
ステップ5において、脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、アスペクト比が3000を超える超長ナノ銀ワイヤ材料を得る。
【0009】
本発明では、まず、還元糖(例えば、グルコース)、ポリビニルピロリドン及び脱イオン水を混合し、その後、金属イオン溶液(例えば、硫酸銅溶液)、ハロゲン化物溶液(例えば、塩化ナトリウム溶液)を順次加え、さらに銀イオン含有溶液(例えば、硝酸銀溶液)を加え、水熱条件下で反応させて超長ナノ銀ワイヤ材を得、本発明は、多価アルコールを溶媒とする代わりに、温和で環境に優しい還元糖(例えば、グルコース)を還元剤とすることで、反応液の粘度を効果的に低下させ、生成物の洗浄を容易にし、また、反応物のコストを効果的に抑え、本発明は、極少量のポリビニルピロリドンを界面活性剤とし、これにより、得られる生成物が活性剤コーティングによる影響を受けずに済み、使用安定性が向上し、本発明では、溶媒として水を用いることにより、環境汚染を効果的に低減させ、本発明では有機溶液系の代わりに水溶液系を使用する理由としては、有機溶液系を使用する場合は、有機溶液中に不活性ガスを導入して、有機溶液中の溶存酸素を除去するのが一般的であるが、酸素の存在により銀の析出の最初の段階で得られた5面双晶構造が大量に消費され、5面双晶構造はナノ銀結晶がナノワイヤに成長するのに必要な前提条件であり、5面双晶は酸素の存在下で粒子に成長し、たとえ反応時間を増加しても、得られたものが粒子のままであり、このように反応系に大量のナノ銀粒子が現れて、後続のサンプル処理に大きな困難をもたらし、それに対し、本発明で使用される水溶液系で得られた双晶構造は、溶液中の酸素に敏感ではなく、不活性ガスを導入しなくても5面双晶構造を維持でき、最終的な生成物は基本的にナノワイヤ構造であり、本発明は、他の操作を必要とせず、全過程にわたって室温で反応すればよく、不活性雰囲気を導入して保護する必要がなく、工業的生産に有利で、プロセスが簡単で、エネルギー消費量が低い。
【0010】
本発明では、前記溶液の溶媒は、すべて水である。
【0011】
本発明では、前記還元糖は、グルコース、マルトース、フルクトース、スクロース、及びガラクトースのうちの1種又は複数種であってもよいが、好ましくはグルコースである。
【0012】
本発明では、前記金属イオン溶液は、硝酸ニッケル溶液、硫酸ニッケル溶液、硝酸鉄溶液、硫酸第一鉄溶液、硫酸銅溶液、硝酸銅溶液、及び硫酸マンガン溶液のうちの1種又は複数種であってもよいが、好ましくは硫酸銅溶液である。
【0013】
本発明では、前記ハロゲン化物溶液は、塩化カリウム溶液及び/又は塩化ナトリウム溶液であってもよい。
【0014】
本発明では、前記銀イオン含有溶液は、硝酸銀溶液であってもよい。
【0015】
本発明では、前記ポリビニルピロリドンの分子量Mwが、4000~1300000ダルトンであってもよいが好ましくは8000~100000ダルトン、例えば24000又は58000ダルトンであってもよい。
【0016】
本発明のステップ1では、前記還元糖、前記ポリビニルピロリドン、及び前記脱イオン水のモル比が、1:(0.05~0.1):(280~560)、好ましくは1:(0.05~0.1):(350~550)、例えば1:0.05:400、1:0.06:430、1:0.08:350、1:0.07:550、1:0.06:450又は1:0.1:500であってもよい。いくつかの特定実施形態において、ステップ1では、前記グルコース、前記ポリビニルピロリドン、及び前記脱イオン水のモル比が、1:(0.05~0.1):(280~560)である。
【0017】
本発明では、還元糖(例えば、グルコース)は還元剤であり、ポリビニルピロリドンは構造指向剤であり、還元糖(例えば、グルコース)、ポリビニルピロリドン、及び脱イオン水のモル比を制御することにより、最終生成物が超長ナノワイヤ構造であることが確保され、ナノ粒子の生成が回避され、また、本発明では、界面活性剤の使用量が極めて少なく、界面活性剤を少量で使用することにより、生成物の洗浄などのプロセスが容易になる。
【0018】
本発明のステップ2では、前記混合溶液Aにおいて、前記還元糖と前記金属イオンとのモル比が、1:(480~600)であってもよいが、好ましくは1:(500~580)、例えば1:550、1:560又は1:567である。
【0019】
いくつかの特定実施形態において、ステップ2では、前記混合溶液Aにおいて、グルコースと硫酸銅とのモル比が1:(480~600)である。
【0020】
本発明では、還元糖(例えば、グルコース)と金属イオン(例えば、硫酸銅)とのモル比を制御することにより、最終生成物がナノワイヤ構造であることが確保され、ナノ粒子の生成が防止される。
【0021】
本発明では、ステップ3では、前記混合溶液Bにおいて、前記ハロゲン化物と前記金属イオンとのモル比が、1:(2.5~4.8)であってもよいが、好ましくは1:(3~4.5)、例えば1:3.67、1:4又は1:4.17である。
【0022】
いくつかの特定実施形態において、ステップ3では、前記混合溶液Bにおいて、塩化ナトリウムと硫酸銅とのモル比が、1:(3~4.8)である。
【0023】
本発明では、ハロゲン化物(例えば、塩化ナトリウム溶液)と金属イオン(例えば、硫酸銅)とのモル比を制御することにより、最終生成物がナノワイヤ構造であることが確保され、ナノ粒子の生成が防止される。
【0024】
本発明のステップ4では、前記反応溶液において、前記還元糖と前記銀イオンとのモル比は、1:(300~500)であってもよいが、好ましくは1:(350~480)、例えば1:400、1:440又は1:450である。
【0025】
いくつかの特定実施形態において、ステップ4では、前記反応溶液において、グルコースと硝酸銀とのモル比は、1:(300~500)である。
【0026】
本発明では、還元糖(例えば、グルコース)を還元剤として、銀イオン(例えば、硝酸銀)をナノ銀に還元するため、その割合を制御する必要があり、そうしないと、還元剤の量が不足である場合、硝酸銀の銀への還元ができず、還元剤の量が多すぎる場合、反応が速すぎ、ナノワイヤ構造の成長に不利である。
【0027】
本発明のステップ5では、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3~5回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3~5回繰り返す。通常、ナノ材料はすべて遠心洗浄が必要であるが、本発明で得られた生成物は超長ナノ銀ワイヤであり、遠心洗浄を行う場合、回転速度制御が適切ではないと、超長ナノ銀ワイヤに不可逆的な凝集現象が起こり、後続のナノワイヤの使用に影響を与えるため、ナノワイヤの凝集を引き起こすことがない沈降洗浄方式が使用されており、それぞれ脱イオン水と無水エタノールを用いて洗浄することにより、無機不純物も有機不純物も効果的に洗浄することができ、洗浄効果が良い。
【0028】
本発明では、ステップ1、ステップ2、及びステップ3のいずれにおいても、混合溶液撹拌は室温の条件で行われる。
【0029】
本発明では、ステップ2、ステップ3では、撹拌時間は、それぞれ0.5~2hである。
【0030】
本発明は、上述したような製造方法で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料をさらに提供する。
【0031】
本発明は、従来技術と比べて、以下の利点を有する。
【0032】
1、本発明では、反応が水溶液系で行われ、従来の多価アルコール有機系による超長ナノ銀ワイヤ材料の製造プロセスとは異なり、いかなる有機溶媒を使用する必要もなく、超長ナノ銀ワイヤ材料の洗浄が困難で、反応条件が厳しく、汚染が深刻であるという技術上の制限をなくし、水溶液系で、不活性雰囲気による保護が不要で、低コストで、環境に優しく、工業化生産が容易な超長ナノ銀ワイヤ材料の新しい製造方法を開発する。
【0033】
2、本発明では、さらに、還元剤として多価アルコールの代わりに還元糖(例えば、グルコース)が採用されており、これにより、多価アルコールによる環境汚染をなくし、また、還元糖(例えばグルコース)が入手されやすく、安価であり、現在提唱されている低炭素生産の要件を満たすことができる。得られた生成物の洗浄が容易であり、沈降洗浄のみで使用ニーズを満たすことができ、遠心分離による生成物の不可逆的な凝集を低減する。
【0034】
3、本発明では、界面活性剤であるポリビニルピロリドンの使用量が少なく、使用量が少ない条件下で超長ナノ銀ワイヤ材料の分散性が良好に保たれ、明らかな凝集現象が見られなかった。
【0035】
4、本発明は、使用する設備が簡単で、コストが安く、プロセスパラメータが制御可能で、再現性が非常に高く、大規模生産が容易であり、製造された超長ナノ銀ワイヤ材料は、抗菌、プリント回路基板、透明導電膜、無線RF電子タグ、触媒、電気化学センシング、電波吸収、電磁シールドなどの分野で応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施例1で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。
図2】本発明の実施例1で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像(aは低倍率、bは高倍率)である。
図3】本発明の実施例2で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像(aは低倍率、bは高倍率)である。
図4】本発明の実施例3で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。
図5】本発明の実施例4で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。
図6】本発明の実施例5で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。
図7】本発明の実施例6で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。
図8】本発明の実施例8で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0037】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:グルコース及び分子量Mwが58000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記グルコース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.1:280であり、前記グルコースのモル質量は、0.01mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸銅溶液を加えて0.5hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硫酸銅溶液において、硫酸銅のモル質量は4.8mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて2hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は1mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、110℃で16h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は3mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを5回繰り返す。
【0038】
図1は、本実施例で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像であり、図2において、a及びbは、本実施例で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料の低倍SEM像、及び高倍SEM像であり、図1から分かるように、得られた生成物は、ナノワイヤ構造であって、直径が約130nm程度であり、生成物には、1次元ナノワイヤ構造以外の他の形態や他の不純物生成物が見られておらず、これは、得られた生成物の純度が高いことを示し、この拡大倍率では、単一のナノワイヤの長さがすべて100μmを超えていることが分かった。図2から分かるように、得られたナノワイヤの長さをさらに理解するために、本実施例では、低倍率でのテストも行ったが、製造されたナノワイヤは確かに長いので、器具の倍率の影響により、ナノワイヤを最初から最後まで全体を視野に入れることは困難であり、一端だけが視野の範囲内にあり、他端が視野の可視範囲を超えた場合がほとんどであり、本実施例では、視野範囲内で測定可能なより短い単一の超長ナノ銀ワイヤ材料を見出し、このナノワイヤは、弓の形をしており、両端間の直線長さが318μmであり、実際の長さが318μmを超えており、したがって、本実施例で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のアスペクト比は3000よりもはるかに大きい。
【実施例2】
【0039】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:グルコース及び分子量Mwが24000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記グルコース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.05:400であり、前記グルコースのモル質量は、0.01mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸銅溶液を加えて1hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硫酸銅溶液において、硫酸銅のモル質量は6mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて0.5hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は2mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、130℃で20h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は4.8mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。
【0040】
図3のa、bは本実施例で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像であり、図3から分かるように、得られた生成物は、ナノワイヤ構造であって、生成物には、1次元ナノワイヤ構造以外の他の形態や他の不純物生成物が見られておらず、これは、得られた生成物の純度が高く、得られたナノワイヤの直径分布が均一であることを示し、超長ナノ銀ワイヤ材料のアスペクト比は3000よりもはるかに大きい。
【実施例3】
【0041】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:グルコース及び分子量が1300000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記グルコース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.06:430であり、前記グルコースのモル質量は、0.05mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硝酸鉄溶液を加えて2hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硝酸鉄溶液において、硝酸鉄のモル質量は28mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて0.5hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は7mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、115℃で15h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は22mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。
【0042】
図4は、本発明の実施例3で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。図から分かるように、得られた生成物は、1次元ナノワイヤ構造であって、ナノワイヤの分散が良好で、直径が均等である。
【実施例4】
【0043】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:フルクトース及び分子量が58000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記フルクトース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.08:350であり、前記フルクトースのモル質量は、0.02mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸鉄(II)溶液を加えて1hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硫酸鉄(II)のモル質量は10mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて1.5hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は4mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、120℃で18h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は8mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。
【0044】
図5は、本発明の実施例4で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。図から分かるように、得られた生成物は、1次元ナノワイヤ構造であって、ナノワイヤの分散が良好である。
【実施例5】
【0045】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:スクロース及び分子量が58000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記フルクトース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.07:550であり、前記スクロースのモル質量は、0.03mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硝酸ニッケル溶液を加えて1hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硝酸ニッケル溶液において、硝酸ニッケルのモル質量は17mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて0.5hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は4mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、115℃で15h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は12mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。
【0046】
図6は、本発明の実施例5で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。図から分かるように、得られた生成物は、1次元ナノワイヤ構造であって、ナノワイヤの分散が良好であり、ナノワイヤの長さは大きく、この倍率で特徴づけられる長さを超えている。
【実施例6】
【0047】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:グルコース及び分子量が58000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記グルコース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.06:450であり、前記グルコースのモル質量は、0.01mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硝酸銅溶液を加えて0.5hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硝酸銅溶液において、硝酸銅のモル質量は5mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて1hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は1.2mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、120℃で16h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は4.5mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせ静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。
【0048】
図7は、本発明の実施例6で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像である。図から分かるように、得られた生成物は、1次元ナノワイヤ構造であって、ナノワイヤの分散が良好で、直径が均等である。
【実施例7】
【0049】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:マルトース及び分子量が8000ダルトンのポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記マルトース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.1:500であり、前記マルトースのモル質量は、0.01mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸鉄(II)溶液を加えて1hかけて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硫酸鉄(II)溶液において、硫酸鉄(II)のモル質量は5.5mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて1hかけて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は1.2mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、130℃で18h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は4mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせ静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。
【実施例8】
【0050】
本実施例は、以下のステップを含み、
ステップ1:グルコース及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得、前記グルコース、ポリビニルピロリドン、及び水のモル比は1:0.08:560であり、前記グルコースのモル質量は0.01mmolであり、
ステップ2:ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸銅溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Aを得、前記硫酸銅溶液において、硫酸銅のモル質量は5.4mmolであり、
ステップ3:ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Bを得、前記塩化ナトリウム溶液において、塩化ナトリウムのモル質量は1.3mmolであり、
ステップ4:ステップ3の混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移して、120℃で14h反応させ、フロック状生成物を得、前記硝酸銀溶液において、硝酸銀のモル質量は5mmolであり、
ステップ5:脱イオン水及び無水エタノールを用いてステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、超長ナノ銀ワイヤ材料を得、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを5回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3回繰り返す。図8は、本実施例で製造された超長ナノ銀ワイヤ材料のSEM像であり、図8から分かるように、得られた生成物は、ナノワイヤ構造であって、生成物には、1次元ナノワイヤ構造以外の他の形態や他の不純物生成物が見られておらず、これは、得られた生成物の純度が高く、得られたナノワイヤの直径分布が均一であることを示し、超長ナノ銀ワイヤ材料のアスペクト比は3000よりもはるかに大きい。
【0051】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、当業者であれば理解できるように、これらは例示にすぎず、本発明の原理および本質から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更または修正を加えることができる。したがって、本発明の特許範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース及びポリビニルピロリドンを脱イオン水に加えて均一に撹拌し、清澄溶液を得て、前記グルコース、前記ポリビニルピロリドン、及び前記脱イオン水のモル比が、1:0.05~0.1:280~560であるステップ1と、
ステップ1で得られた清澄溶液に硫酸銅溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Aを得て、前記混合溶液Aにおいて、前記グルコースと前記硫酸銅とのモル比が、1:480~600であるステップ2と、
ステップ2で得られた混合溶液Aに塩化ナトリウム溶液を加えて均一に撹拌し、混合溶液Bを得て、前記混合溶液Bにおいて、前記塩化ナトリウムと前記硫酸銅とのモル比が、1:3~4.8であるステップ3と、
ステップ3で得られた混合溶液Bに硝酸銀溶液を滴下して撹拌し、反応溶液を得た後、反応溶液を水熱反応釜に移し、110℃~130℃で14h~20h反応させ、フロック状生成物を得て、前記反応溶液において、前記硝酸銀と前記グルコースとのモル比が、1:300~500であるステップ4と、
脱イオン水及び無水エタノールを用いて、ステップ4で得られたフロック状生成物を順次沈降させて洗浄し、アスペクト比が1000を超える超長ナノ銀ワイヤ材料を得るステップ5と、を含む、ことを特徴とする超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【請求項2】
ステップ5では、前記沈降洗浄の過程として、脱イオン水にフロック状生成物を加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と脱イオン水とが分離すると、上澄み液を捨てて、脱イオン水をさらに加えて、このプロセスを3~5回繰り返した後、フロック状生成物を無水エタノールに加えて、振とうさせて静置し、フロック状生成物と無水エタノールとが分離すると、上澄み液を捨てて、無水エタノールをさらに加えて、このプロセスを3~5回繰り返す、ことを特徴とする請求項に記載の超長ナノ銀ワイヤ材料の製造方法。
【国際調査報告】