(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】MOSFETデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240313BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240313BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546028
(86)(22)【出願日】2023-03-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2023082486
(87)【国際公開番号】W WO2023169592
(87)【国際公開日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】202211305002.2
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523285557
【氏名又は名称】エシュウ セミコンダクター マニュファクチュアリング エレクトロニクス(シャオシン)コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,シャン
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジッピン
(72)【発明者】
【氏名】コン,マオジー
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シンイン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ユカイ
(57)【要約】
本発明は、MOSFETデバイス及びその製造方法を提供する。まず、拡散しやすい第1注入領域を形成し、その後、拡散しにくく接合がより深い第2注入領域を順次形成し、ソース領域のプラズマ注入が完了した後、第1注入領域を活性化し、それにより、第1注入領域の接合拡散によって必要なウェル領域を形成し、第2注入領域はウェル領域の深さを深くするためのものである。これにより、直接複数回のAlイオン注入によってPウェルを形成することでチャネルでの基板表面が破壊され、結果としてデバイスチャネルの表面が粗くなるという従来技術の問題を回避し、デバイスの高い伝導性能を実現する。また、第1注入領域、第2注入領域及びソース領域のイオン注入は同じマスク層を使用することができ、プロセスが簡単に実現でき、フォトリソグラフィの回数を効果的に減らすことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を用意し、前記基板の正面表層に第1導電型の第1ウェルイオンを注入し、第1注入領域を形成するステップと、
前記第1注入領域の下方の前記基板に第1導電型の第2ウェルイオンを注入し、第2注入領域を形成するステップと、
前記第1注入領域の表層に第2導電型のソースイオンを注入し、ソース領域を形成するステップと、
前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化することで、前記第1注入領域の接合を横方向に必要な幅に拡散させ且つ縦方向に前記第2注入領域に接させ、必要なウェル領域を形成するステップと、
前記基板の正面に、順次積層されたゲート酸化層及びゲートを形成し、前記第1注入領域と前記ゲート酸化層とのコンタクト領域がMOSFETデバイスのチャネルとするステップと、を含むことを特徴とする、MOSFETデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記基板の正面表層に前記第1ウェルイオンを注入する前に、
前記基板の正面にウェル領域を定義するためのパターン化マスク層を形成するステップと、
前記パターン化マスク層をマスクとし、前記基板に前記第1ウェルイオン、前記第2ウェルイオン及び前記ソースイオンを順次注入するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ソース領域を形成した後、且つ前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化する前に、
前記パターン化マスク層を除去するステップと、
前記ソース領域の一部に第1導電型のボディ領域イオンを注入し、ボディ領域を形成し、前記ボディ領域が、前記第1注入領域の一部に深く入り込み、前記ソース領域と前記第1注入領域とを短絡するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1ウェルイオンはホウ素イオン又はフッ化ホウ素イオンを含み、前記第2ウェルイオンはアルミニウムイオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1ウェルイオンの注入プロセスパラメータは、注入エネルギー50keV~300keV、注入量1E11/cm
2~6E14/cm
2を含むことを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
アニールプロセスによって前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化し、アニール温度は1500℃~1900℃で、アニール時間は2min~200minであることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記基板は第2導電型の炭化ケイ素層を含み、前記第1注入領域及び前記第2注入領域は両方とも前記炭化ケイ素層内に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記基板の正面に層間誘電体層を形成し、前記層間誘電体層が前記ゲートを埋め込み、前記ソース領域の一部を露出させるステップと、
前記層間誘電体層上に、前記ソース領域と電気的に接続されるソース金属層を形成するステップと、
前記基板の裏面にドレイン金属層を形成するステップと、をさらに含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
基板と、
上から下へ形成されている第1注入領域及び第2注入領域を含む第1導電型のウェル領域であって、前記第1注入領域が、前記基板の正面の一部領域の表層内に形成されており、前記第2注入領域が、前記第1注入領域の底部下方の前記基板内に形成されており、且つ前記第1注入領域が縦方向に前記第2注入領域に接する第1導電型のウェル領域と、
前記第1注入領域の表層に形成されているソース領域と、
前記基板の正面に順次積層されているゲート酸化層及びゲートであって、前記ゲートが、前記第1注入領域及び前記ソース領域の両方にも接触し、前記第1注入領域が、前記ゲートの底部において、前記第2注入領域に対して横方向により遠く延びているゲート酸化層及びゲートと、を含むことを特徴とする、MOSFETデバイス。
【請求項10】
前記基板は第2導電型の炭化ケイ素層を含み、前記第1注入領域及び前記第2注入領域は両方とも前記炭化ケイ素層内に形成されており、前記第1注入領域にドープされた第1導電型の第1ウェルイオンは、ホウ素イオン又はフッ化ホウ素イオンを含み、前記第2注入領域にドープされた第1導電型の第2ウェルイオンは、アルミニウムイオンを含むことを特徴とする、請求項9に記載のMOSFETデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOSFETデバイス製造の技術分野に関し、特に、MOSFETデバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC) MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor,金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)デバイスは、スイッチング速度が早く、オン抵抗が小さい等の優位性を有するとともに、小さいドリフト層の厚さで高い絶縁破壊電圧レベルを実現でき、パワースイッチモジュールのサイズを小さくし、エネルギー消費を削減し、パワースイッチ、コンバータ等の応用分野で明らかな優位性がある。
【0003】
Al(アルミニウム)イオン注入はSiC中での拡散が弱いため、既存のプレーナゲートSiC MOSFETプロセスにおいて、通常、複数回のAlイオン注入の方法によって一定深さのPウェルを得てから、イオン注入によってPウェルにおいてN+ソース領域、P+ボディ領域(P+コンタクト領域ともいう)等を形成する。
【0004】
しかしながら、複数回のAlイオン注入により、プレーナゲートSiC MOSFETのチャネルでのSiC表面が破壊され、Pウェルチャネルの表面が粗くなり、チャネル散乱が増加し、チャネルキャリア移動度の向上が制限される。
【0005】
上記問題は、複数回のAlイオン注入によってPウェルを形成する他のプレーナMOSFETプロセスにも存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、イオン注入によるPウェルチャネル表面への破壊を回避し、デバイスの高い伝導性能を実現することができる、MOSFETデバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を実現するために、本発明は、
基板を用意し、前記基板の正面表層に第1導電型の第1ウェルイオンを注入し、第1注入領域を形成するステップと、
前記第1注入領域の下方の前記基板に第1導電型の第2ウェルイオンを注入し、第2注入領域を形成するステップと、
前記第1注入領域の表層に第2導電型のソースイオンを注入し、ソース領域を形成するステップと、
前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化することで、前記第1注入領域の接合を横方向に必要な幅に拡散させ且つ縦方向に前記第2注入領域に接させ、必要なウェル領域を形成するステップと、
前記基板の正面に、順次積層されたゲート酸化層及びゲートを形成し、前記第1注入領域と前記ゲート酸化層とのコンタクト領域がMOSFETデバイスのチャネルとするステップと、を含むMOSFETデバイスの製造方法を提供する。
【0008】
選択的に、前記基板の正面表層に前記第1ウェルイオンを注入する前に、さらに前記基板の正面にウェル領域を定義するためのパターン化マスク層を形成し、その後、前記パターン化マスク層をマスクとし、前記基板に前記第1ウェルイオン、前記第2ウェルイオン及び前記ソースイオンを順次注入する。
【0009】
選択的に、前記ソース領域を形成した後、且つ前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化する前に、
前記パターン化マスク層を除去するステップと、
前記ソース領域の一部に第1導電型のボディ領域イオンを注入し、ボディ領域を形成し、前記ボディ領域が、前記第1注入領域の一部に深く入り込み、前記ソース領域と前記第1注入領域とを短絡するステップと、をさらに含む。
【0010】
選択的に、前記第1ウェルイオンはホウ素イオン又はフッ化ホウ素イオンを含み、前記第2ウェルイオンはアルミニウムイオンを含む。
【0011】
選択的に、前記第1ウェルイオンの注入プロセスパラメータは、注入エネルギー50keV~300keV、注入量1E11/cm2~6E14/cm2を含む。
【0012】
選択的に、アニールプロセスによって前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化し、アニール温度は1500℃~1900℃で、アニール時間は2min~200minである。
【0013】
選択的に、前記基板は第2導電型の炭化ケイ素層を含み、前記第1注入領域及び前記第2注入領域は両方とも前記炭化ケイ素層内に形成されている。
【0014】
選択的に、前記の製造方法は、
前記基板の正面に層間誘電体層を形成し、前記層間誘電体層が前記ゲートを埋め込み、前記ソース領域の一部を露出させるステップと、
前記層間誘電体層上に、前記ソース領域と電気的に接続されるソース金属層を形成するステップと、
前記基板の裏面にドレイン金属層を形成するステップと、をさらに含む。
【0015】
同じ発明概念に基づいて、本発明は、
基板と、
上から下へ形成されている第1注入領域及び第2注入領域を含む第1導電型のウェル領域であって、前記第1注入領域が、前記基板の正面の一部領域の表層内に形成されており、前記第2注入領域が、前記第1注入領域の底部下方の前記基板内に形成されており、且つ前記第1注入領域が前記第2注入領域に接するまで縦方向に拡散する第1導電型のウェル領域と、
前記第1注入領域の表層に形成されているソース領域と、
前記基板の正面に順次積層されているゲート酸化層及びゲートであって、前記ゲートが、前記第1注入領域及び前記ソース領域の両方にも接触し、前記第1注入領域が、前記ゲートの底部において、前記第2注入領域に対して横方向により遠く延びているゲート酸化層及びゲートと、を含むMOSFETデバイスをさらに提供する。
【0016】
選択的に、前記基板は第2導電型の炭化ケイ素層を含み、前記第1注入領域及び前記第2注入領域は両方とも前記炭化ケイ素層内に形成されており、前記第1注入領域にドープされた第1導電型のイオンは、ホウ素イオン又はフッ化ホウ素イオンを含み、前記第2注入領域にドープされた第1導電型のイオンは、アルミニウムイオンを含む。
【0017】
従来技術と比較して、本発明の技術的解決手段は、少なくとも以下の有益な効果のうちの1つを有する。
【0018】
1、まず、拡散しやすい第1注入領域を形成し、その後、拡散しにくく接合がより深い第2注入領域を順次形成し、ソース領域のプラズマ注入が完了した後、第1注入領域を活性化し、それにより、第1注入領域の接合拡散によって必要なウェル領域を形成し、第2注入領域はウェル領域の深さを深くするためのものである。これにより、直接複数回のAlイオン注入によってPウェルを形成することでチャネルでの基板表面が破壊され、結果としてデバイスチャネルの表面が粗くなるという従来技術の問題を回避し、デバイスの高い伝導性能を実現する。
【0019】
2、第1注入領域、第2注入領域及びソース領域のイオン注入は同じマスク層を使用することができ、プロセスが簡単に実現でき、フォトリソグラフィの回数を効果的に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
当業者であれば、提供される図面は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではないことが理解される。
【
図1】本発明の一実施例のMOSFETデバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図2】
図1に示すMOSFETデバイスの製造方法におけるデバイス構造の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明では、本発明をより徹底的に理解するために、多くの具体的な詳細が与えられる。しかしながら、本発明がこれらの詳細の1つ又は複数がなくても実施できることは、当業者にとって自明である。他の例では、本発明との混同を避けるために、本分野に周知のいくつかの技術的特徴については説明していない。本発明は、異なる形態で実施でき、本明細書に記載の実施例に限定されるものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。むしろ、これらの実施例は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、且つ本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されるものである。図面において、層と領域のサイズ及び相対的なサイズは、明確にするために誇張されている場合がある。全体を通して同じ符号は同じ要素を指す。要素又は層が、他の要素又は層「の上にある」又は他の要素又は層に「接続されている」と記述されている場合は、他の要素又は層の上に直接あるか又は他の要素又は層に直接接続されてもよく、あるいは、介在する要素又は層が存在してもよいことを理解すべきである。対照的に、要素が他の要素又は層「の上に直接ある」又は他の要素又は層に「直接接続されている」と記述されている場合は、介在する要素又は層が存在しないことになる。第1、第2などの用語は、様々な要素、部材、領域、層及び/又はセクションを説明するために使用され得るが、これらの要素、部材、領域、層及び/又はセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、部材、領域、層又はセクションを別の要素、部材、領域、層又はセクションと区別するためのものに過ぎない。したがって、以下に説明した第1の要素、部材、領域、層又はセクションは、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、部材、領域、層又はセクションと表すことができる。「の下にある」、「下にある」、「下の」、「の上にある」、「上にある」、「上の」などの空間関係用語は、本明細書では、説明の便宜上、図に示される1つの要素又は特徴と他の要素又は特徴との関係を説明するために用いることができる。空間関係用語は、図に示されている向きに加えて、使用中及び操作中のデバイスの異なる向きをさらに包含することを意図していることを理解すべきである。例えば、図中のデバイスが裏返されると、「の下にある」、「下にある」、「下の」と記載された要素又は特徴は、他の要素又は特徴の「上」に配向されることになる。デバイスは別の向き(90度回転又は他の向き)であってもよく、本明細書で使用される空間記述用語はそれに応じて解釈される。本明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明することのみを目的としており、本発明を限定するものではない。本明細書で使用される場合、単数形の「一」、「1つ」及び「前記/該」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、複数形を含むことも意図している。また、用語「含む」は、可能な特徴、ステップ、操作、要素及び/又は部材の存在を確定するためのものであるが、1つ又は複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、部材及び/又はグループの存在又は追加を排除するものではないことも理解すべきである。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目のいずれか及びあらゆる組み合わせを含む。
【0022】
以下において、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明で提供される技術的解決手段をさらに詳しく説明する。本発明の利点及び特徴は、以下の説明からより明らかになる。説明すべきは、図面は全て非常に簡略化された形式であり、且つ全て正確でない縮尺を使用しており、本発明の実施例を容易かつ明確に説明するのを支援するためのものに過ぎない点である。
【0023】
図1を参照すると、本発明の一実施例はMOSFETデバイスの製造方法を提供する。前記製造方法は、次のS1、S2、S3、S4及びS5を含む。
【0024】
S1で、基板を用意し、前記基板の正面表層に第1導電型(例えば、P型)の第1ウェルイオンを注入し、第1注入領域を形成する。
【0025】
S2で、前記第1注入領域の下方の前記基板に第1導電型の第2ウェルイオンを注入し、第2注入領域を形成する。
【0026】
S3で、前記第1注入領域の表層に第2導電型(例えば、N型)のソースイオンを注入し、ソース領域を形成する。
【0027】
S4で、前記第1注入領域内の第1ウェルイオンを活性化することで、前記第1注入領域の接合を横方向に必要な幅に拡散させ且つ縦方向に前記第2注入領域に接させ、必要なウェル領域を形成する。
【0028】
S5で、前記基板の正面に、順次積層されたゲート酸化層及びゲートを形成し、前記第1注入領域と前記ゲート酸化層とのコンタクト領域はMOSFETデバイスのチャネルとする。
【0029】
図2の(A)を参照すると、ステップS1では、基板100を形成するために炭化ケイ素、シリコンなどの任意の適切な半導体材料を用意することができる。例えば、用意される基板100は、N型の炭化ケイ素基板であり、且つ下から上へ3層あり、N+ベース100a、バッファ層100b及びN-ドリフト層100cの順であり、N-ドリフト層100cのN型イオンのドープ濃度はN+ベース100a内のN型イオンのドープ濃度よりも低い。
【0030】
具体的には、
図2の(A)を参照すると、S1のステップでは、まず、基板100に対して表面洗浄と乾燥を行うことができ、続いて、N-ドリフト層100c上にマスク層材料を堆積し、該マスク層材料は、例えば、ポリシリコン(poly Si)、単結晶シリコン(Si)、シリカ(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)等から選択される1種又は複数種であってもよく、単層膜であってもよいし、複数の異なる材料の膜の重ね合わせであってもよく、該マスク層材料をフォトリソグラフィ及びエッチングし、形成されるPウェルを定義するためのパターン化マスク層200を形成する。本例では、パターン化マスク層200の両側のいずれにおいても、形成されるPウェルの注入窓(図示せず)が定義されており、次に、パターン化マスク層200をマスクとし、N-ドリフト層100cの表層にP型の第1ウェルイオンを注入して、パターン化マスク層200の両側のN-ドリフト層100cの表層内に第1注入領域101を形成する。該ステップで選択される第1ウェルイオンは、N-ドリフト層100c内に正孔を形成でき、且つ高温で後続の第2ウェルイオン及びソースイオンに対してより拡散しやすいイオンである。例として、第1ウェルイオンはホウ素イオン又はフッ化ホウ素イオンであり、注入方向はN-ドリフト層100c表面に垂直な方向であってもよく、注入エネルギーは50keV~300keV(例えば、100keV、200keV等)で、注入量は1E11/cm
2~6E14/cm
2(例えば、5E12/cm
2、1E13/cm
2等)である。
【0031】
図2の(B)を参照すると、ステップS2では、パターン化マスク層200をマスクとし、第1注入領域101の下方のN-ドリフト層100cにP型の第2ウェルイオンを注入して、パターン化マスク層200の両側の第1注入領域101の下方のN-ドリフト層100c内に第2注入領域102を形成し、これにより、第2注入領域102は第1注入領域101よりも深い接合を形成することができる。例として、Pウェル設計の深さ要件と幅要件に応じて、複数回のアルミニウム(Al)イオン注入によって、第1注入領域101の下方のN-ドリフト層100cに対して垂直又は斜めにイオン注入を行うことができ、注入温度は400℃~1000℃(例えば、500℃、800℃等)で、注入エネルギーは200keV~500keV(例えば、300keV、400keV等)で、注入量は1E11/cm
2~6E14/cm
2(例えば、5E12/cm
2、1E13/cm
2、1E14/cm
2等)である。
【0032】
図2の(C)を参照すると、ステップS3では、パターン化マスク層200をマスクとし、ソース領域設計の深さ要件と幅要件に応じて、第1注入領域101の表層に対して垂直又は斜めにN型のソースイオンを注入して、パターン化マスク層200の両側の第1注入領域101の表層内にソース領域103を形成する。例として、N型のソースイオンは、リン(P)イオン、砒素(As)イオン、窒素(N)イオンなどのうちの少なくとも1つを含み、注入エネルギーは50keV~300keV(例えば、100keV、200keV等)で、注入量は1E14/cm
2~1E16/cm
2(例えば、5E14/cm
2、1E15/cm
2、5E15/cm
2等)である。
【0033】
図2の(D)を参照すると、ステップS3では、選択的に、ソース領域103を形成した後、パターン化マスク層200を除去し、ソース領域103の一部にP型のボディ領域イオンを注入し、ボディ領域104(コンタクト領域ともいう)を形成し、ボディ領域104の底部は第1注入領域101の一部に深く入り込み、ソース領域103と第1注入領域101とを短絡し、且つそのP型イオンのドープ濃度は第1注入領域101よりも高い。例として、ボディ領域イオンはホウ素イオン、フッ化ホウ素イオン及びアルミニウムイオンのうちの少なくとも1つを含んでもよく、注入エネルギーは50keV~300keV(例えば、100keV、200keV等)で、注入量は1E14/cm
2~1E16/cm
2(例えば、5E14/cm
2、1E15/cm
2、5E15/cm
2等)である。
【0034】
図2の(E)を参照すると、ステップS4では、基板100を高温アニールプロセスによってアニールして、第1注入領域101内の第1ウェルイオンを活性化するとともに、第2注入領域102内の第2ウェルイオン及びソース領域103におけるN型イオンボディ領域104内のP型イオンを活性化する。アニール温度は1500℃~1900℃(例えば、1650℃、1700℃、1800℃等)で、アニール時間は2min~200min(例えば、10min、20min、50min、100min等)である。該高温アニール過程により、第1注入領域101内のホウ素イオン等の1ウェルイオンが拡散し、拡散後の第1注入領域101’は縦方向に底部が第2注入領域102の頂部に接し、横方向にPウェルに必要な幅に拡張され、それにより、後続に必要なチャネル幅を提供する。そして、第2注入領域102内の第2ウェルイオン及びソース領域103におけるN型イオンボディ領域104内のP型イオンは、いずれも第1注入領域101内の第1ウェルイオンに対して拡散が弱く、2つの拡散後の第1注入領域101’間のN-ドリフト層101cは空乏領域としている。
【0035】
該ステップでは、必要なウェル領域は、上部の拡散後の第1注入領域101’及び下部の第2注入領域102で構成され、且つ、必要なチャネルが第1注入領域101の拡散により形成されているため、チャネル表面の粗さを大幅に低減でき、さらに最終的に製造されたMOSFETデバイスのチャネル電子の界面散乱を低減し、チャネル移動度を向上させることができる。
【0036】
図2の(F)を参照すると、ステップS5では、まず、熱酸化プロセス又は化学気相堆積などの適切なゲート酸素プロセスを採用し、ボディ領域104、ソース領域103、拡散後の第1注入領域101’及びN-ドリフト層100cの正面上にゲート酸化層301を形成することができ、続いて、ゲート酸化層301の表面にゲート材料層を堆積し、且つ堆積したゲート材料層及びゲート酸化層301をフォトリソグラフィ及びエッチングして、ゲート302を形成することができる。形成されたゲート302は拡散後の第1注入領域101’及びソース領域104の両方とも重なりがあり、且つ拡散後の第1注入領域101’とゲート酸化層301とのコンタクト領域はMOSFETデバイスのチャネルとしている。
【0037】
本ステップでは、ステップS4において拡散によりPウェルを形成することで、チャネル表面が粗くなることを効果的に回避でき、且つ空乏領域として用いられるN-ドリフト層100cのSiC結晶品質が完全であることも保証できるため、形成されたゲート酸化層301の品質を保障し、チャネル欠陥密度を低下させ、デバイスの温度ドリフト性能をさらに改善し、デバイスの信頼性をさらに向上させることができる。
【0038】
さらに選択的に、ゲート302を形成した後、まず、化学気相堆積プロセス等によって、基板100の正面を層間誘電体層400で覆い、層間誘電体層400は、単層誘電体膜構造であってもよく、多層誘電体膜が積層された構造であってもよい。次に、該層間誘電体層400をフォトリソグラフィ及びエッチングして、該層間誘電体層400をパターン化し、パターン化後の層間誘電体層400は、前記ゲート302を埋め込み、ソース領域103の一部を露出させることができる。続いて、金属スパッタリング堆積又は蒸着などの適切なプロセスによって、層間誘電体層400上にソース金属層500(例えば、銅、アルミニウム、金などの1種の金属材料や合金)を形成し、該ソース金属層500はソース領域103及びボディ領域104の両方にも電気的に接続されている。その後、N+ベース100aの裏面にドレイン金属層(図示せず)を形成する。
【0039】
本実施例のMOSFETデバイスの製造方法は、拡散によって必要なウェル領域を形成し、一方で、チャネル表面の粗さを大幅に低減でき、チャネル電子の界面散乱を低減し、それにより、チャネル移動度を向上させ、他方で、チャネル欠陥のエネルギー準位及びゲート酸素品質を改善し、デバイスの温度ドリフト性能をさらに改善し、デバイスの信頼性をさらに向上させることができる。
【0040】
また、第1注入領域、第2注入領域及びソース領域のイオン注入はいずれも同じパターン化マスク層200によって実施可能であり、プロセスが簡単に実現でき、フォトリソグラフィの回数を効果的に減らすことができる。
【0041】
図2の(F)を参照すると、本発明の一実施例は、好ましくは本発明のMOSFETデバイスの製造方法で製造されるMOSFETデバイスをさらに提供する。該MOSFETデバイスは、次の基板100、第1導電型(例えば、P型)のウェル領域、ソース領域103、ゲート酸化層301及びゲート302を含む。
【0042】
基板100は、任意の適切な半導体材料であってもよい。例えば、基板100は、N型の炭化ケイ素基板であり、且つ下から上へ3層あり、N+ベース100a、バッファ層100b及びN-ドリフト層100cの順である。
【0043】
第1導電型(例えば、P型)のウェル領域は、上から下へ形成されている第1注入領域101及び第2注入領域102を含み、第1注入領域101は、N-ドリフト層100cの正面の一部領域の表層内に形成されており、第2注入領域102は、第1注入領域101の底部下方のN-ドリフト層100c内に形成されており、且つ第1注入領域101は、第2注入領域102に接するまで縦方向に拡散し、第1注入領域101にドープされた第1導電型イオンはホウ素イオン又はフッ化ホウ素イオンを含み、第2注入領域102にドープされた第1導電型イオンはアルミニウムイオンを含む。
【0044】
ソース領域103は、第1注入領域101の表層に形成されている。
【0045】
ゲート酸化層301及びゲート302は、N-ドリフト層100cの正面に順次積層されており、且つゲート302は第1注入領域103及びソース領域104の両方とも重なりがあり、第1注入領域103は、ゲート302の底部において、第2注入領域102に対して横方向により遠く延びている。
【0046】
以上より、本発明のMOSFETデバイス及びその製造方法では、まず、拡散しやすい第1注入領域を形成し、その後、拡散しにくく接合がより深い第2注入領域を順次形成し、ソース領域のプラズマ注入が完了した後、第1注入領域を活性化し、それにより、第1注入領域の接合拡散によって必要なウェル領域を形成し、第2注入領域はウェル領域の深さを深くするためのものである。これにより、直接複数回のAlイオン注入によってPウェルを形成することでチャネルでの基板表面が破壊され、結果としてデバイスチャネルの表面が粗くなるという従来技術の問題を回避し、デバイスの高い伝導性能を実現する。また、第1注入領域、第2注入領域及びソース領域のイオン注入は同じマスク層を使用することができ、プロセスが簡単に実現でき、フォトリソグラフィの回数を効果的に減らすことができる。
【0047】
上記の説明は、本発明の好ましい実施例についての説明に過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではなく、当業者が上記の開示に基づいて行ったあらゆる変更、修飾は、いずれも本発明の技術的解決手段の保護範囲に属するものとする。
【国際調査報告】