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特表2024-512872糖生成物及び発酵生成物を製造するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】糖生成物及び発酵生成物を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/00 20060101AFI20240313BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20240313BHJP
   C12P 7/42 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
C12P19/00
C12P1/00 Z
C12P7/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546401
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2022058941
(87)【国際公開番号】W WO2022214460
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】21167451.0
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519463673
【氏名又は名称】ベルサリス エッセ.ピー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アペルドーン マーイケ
(72)【発明者】
【氏名】ノールダム ベルタス
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AD02
4B064AF01
4B064CA05
4B064CA21
4B064CB07
4B064CC12
4B064DA16
(57)【要約】
本出願は、セルロース材料から糖生成物を製造するプロセス、及び、セルロース材料から発酵生成物を製造するプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース材料から糖生成物を製造するプロセスであって、
a)酵素組成物を用いて前記セルロース材料を酵素的加水分解し、糖生成物を得る工程であって、前記酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸500μmol~1100μmol/前記セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える、工程と、
b)任意選択的に、前記糖生成物を回収する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項2】
セルロース材料から発酵生成物を製造するプロセスであって、
a)酵素組成物を用いて前記セルロース材料を酵素的加水分解し、糖生成物を得る工程であって、前記酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸500μmol~1100μmol/前記セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える、工程と、
b)前記の加水分解されたセルロース材料を発酵させて、発酵生成物を生産する工程と、
c)任意選択的に、前記発酵生成物を回収する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項3】
前記セルロース材料が酵素的加水分解の前に前処理される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酵素的加水分解中の乾物含量が、10%(w/w)~40%(w/w)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酵素組成物が、真菌の全発酵ブロスの形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酵素的加水分解用の反応器が、1m以上の容積を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酵素的加水分解用の反応器が、50m以上の容積を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記酵素的加水分解が、50℃~70℃の温度で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記酵素的加水分解が、回分、流加、及び/又は、連続培養反応器で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
酵素的加水分解の間に、0.0002mol O/m~0.047mol O/mの酸素濃度を維持するように、酸素を加える、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記酵素組成物が、少なくともセルラーゼ、及び/又は、少なくともヘミセルラーゼを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記酵素組成物が、β-グルコシダーゼ(BG)、エンドグルカナーゼ(EG)、溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO)、セロビオヒドロラーゼ(CBH)、β-キシロシダーゼ、及びエンドキシラナーゼ(EX)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記発酵が、少なくとも1種のC5糖を発酵させることができる微生物を用いて行われる、請求項2~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、セルロース材料から糖生成物を製造するプロセス、及び、セルロース材料から発酵生成物を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース材料は主に、セルロースで構成され、ヘミセルロース及びリグニンも含み得る。セルロース材料は、化石燃料に対する代替のエネルギー源を生み出すための魅力的なプラットフォームを提供する。本材料は大量に入手可能であり、有価物、例えば、糖類又は、バイオエタノール等のバイオ燃料に変換することができる。
【0003】
セルロース材料から発酵生成物を生産することは、当該技術分野において既知であり、一般に、前処理、加水分解、発酵、及び任意選択的に、発酵生成物の回収の工程を含む。
【0004】
通常、生産される糖類は、酵母のような微生物により、エタノール等の有価発酵生成物に変換される。発酵は、同じ、又は異なる容器において、別個の、好ましくは嫌気性の処理工程にて行われる。
【0005】
一般的に、酵素生産のコストは、セルロース材料から発酵生成物を生産する全体的なプロセスにおける、主たるコスト因子である。これまでのところ、酵素生産コストの低下は、より広い、及び/又はより高い(特異的な)加水分解活性を有する、単一の、又は複数の微生物源(特許文献1を参照されたい)由来の酵素生成物を利用することにより達成される。これにより、酵素の必要性が下がり、変換速度が速くなり、及び/又は、変換収率が高くなるため、全体的な生産コストが下がる。
【0006】
酵素の最適化とは別に、プロセス設計の最適化が、糖生成物及び発酵生成物の生産の全体的なコストを下げるための重要なツールとなっている。例えば、糖分解生成物による糖の喪失が増加し、収率が低下する。糖分解生成物は発酵を阻害する可能性があるため、プロセス設計を最適化して、これらの糖分解生成物の量を減少させるべきである。
【0007】
それゆえに、経済的な理由から、セルロース材料の前処理、加水分解、及び発酵を伴うプロセスにおいて、全体的な生産コストを下げることを目的とする、新規かつ革新的なプロセス構成を含めることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/008793号
【発明の概要】
【0009】
本出願の目的は、セルロース材料から糖生成物を製造する改善されたプロセス、及び、セルロース材料から発酵生成物を製造する改善されたプロセスを提供することである。プロセスは、特定の加水分解条件を用いることで改善される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書、及び添付の特許請求の範囲を通して、「を含む(comprise)」及び「を含む(include)」という語、並びに、「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含む(includes)」、及び「を含む(including)」等の変形は、包括的に解釈されるものとする。すなわち、これらの語は、文脈が許容する場合において、具体的に引用されていない他の要素又は完全体を含む可能性があることを伝えることを意図する。冠詞「a」及び「an」は本明細書において、1つ、又は2つ以上(すなわち、1つ、又は少なくとも1つ)の、冠詞の文法上の目的物を指すように用いられる。例えば、「要素(an element)」とは、1つの要素又は2つ以上の要素を意味し得る。
【0011】
本開示は、セルロース材料から糖生成物を製造するプロセスであって、(a)酵素組成物を用いてセルロース材料を酵素的加水分解し、糖生成物を得る工程であって、酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸500μmol~1100μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える、工程と、(b)任意選択的に、糖生成物を回収する工程とを含む、プロセスに関する。
【0012】
本開示はまた、セルロース材料から発酵生成物を製造するプロセスであって、(a)酵素組成物を用いてセルロース材料を酵素的加水分解し、糖生成物を得る工程であって、酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸500μmol~1100μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える、工程と、(b)加水分解されたセルロース材料を発酵させて、発酵生成物を生産する工程と、(c)任意選択的に、発酵生成物を回収する工程とを含む、プロセスに関する。
【0013】
酵素的加水分解の後、加水分解されたセルロース材料を、少なくとも1回の固液分離にかけることができる。固液分離の方法及び条件は、用いるセルロース材料の種類によって左右され、十分に当業者の範囲内である。例としては、遠心分離、サイクロン分離、濾過、デカンテーション、ふるい分け、及び沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態においては、固液分離は、遠心分離又は沈殿により実施される。固液分離の間に、分離を向上させるための手段及び/又は補助手段を用いてもよい。
【0014】
一実施形態においては、酵素的加水分解の前に、セルロース材料を前処理工程にかける。換言すれば、一実施形態においては、セルロース材料は、酵素的加水分解の前に前処理される。以下、様々な前処理方法を説明する。
【0015】
一実施形態においては、酵素的加水分解の前に、セルロース材料を洗浄工程にかける。一実施形態においては、酵素的加水分解の前に、セルロース材料を、少なくとも1回の固液分離にかける。そのため、セルロース材料を酵素的加水分解にかける前に、少なくとも1回の固液分離にかけることができる。固液分離は、前処理工程の前及び/又は後に実施することができる。固液分離のための好適な方法及び条件は、上述している。
【0016】
一実施形態においては、酵素的加水分解を受けたセルロース材料を、固液分離工程、続いて、解毒工程、及び/又は、濃縮工程にかける。
【0017】
本明細書に記載するプロセスにおいて、セルロース材料を、1つ以上の加水分解反応器に加えることができる。一実施形態においては、酵素組成物は、セルロース材料を加える前に、1つ以上の加水分解反応器に既に存在する。別の実施形態においては、酵素組成物を、1つ以上の加水分解反応器に加えることができる。一実施形態においては、セルロース材料は、酵素組成物を加える前に、1つ以上の加水分解反応器に既に存在する。一実施形態においては、セルロース材料と酵素組成物の両方が、1つ以上の加水分解反応器に同時に加えられる。1つ以上の加水分解反応器に存在する酵素組成物は、水性組成物であり得る。
【0018】
一実施形態においては、酵素的加水分解は、セルロース材料が少なくとも第1の加水分解反応器で加水分解される液化工程と、液化されたセルロース材料が少なくとも第1の加水分解反応器及び/又は少なくとも第2の加水分解反応器で加水分解される糖化工程とを少なくとも含む。糖化は、液化と同じ加水分解反応器(すなわち、少なくとも第1の加水分解反応器)で行ってもよく、別個の加水分解反応器(すなわち、少なくとも第2の加水分解反応器)で行ってもよい。そのため、酵素的加水分解において、液化と糖化を組み合わせてもよい。代替的には、液化と糖化は、別個の工程であってもよい。液化と糖化は、異なる温度で行ってもよく、単一の温度で行ってもよい。一実施形態においては、液化の温度は、糖化の温度よりも高い。液化は、好ましくは、60℃~85℃の温度で行われ、糖化は、好ましくは、50℃~65℃の温度で行われる。
【0019】
酵素的加水分解は、1つ以上の加水分解反応器で行うことができるが、1つ以上の管、又は、任意の他の連続系で行うこともできる。これは、酵素的加水分解が液化工程と糖化工程とを含む場合にも当てはまる。液化工程は、1つ以上の加水分解反応器で行うことができるが、1つ以上の管、若しくは任意の他の連続系で行うこともでき、及び/又は、糖化工程は、1つ以上の加水分解反応器で行うことができるが、1つ以上の管、若しくは任意の他の連続系で行うこともできる。一実施形態においては、酵素的加水分解は、回分、流加、及び/又は、連続培養反応器で行われる。用いる加水分解反応器の例としては、流加撹拌反応器、回分撹拌反応器、限外濾過を用いる連続流撹拌反応器、及び、連続栓流カラム反応器が挙げられるが、これらに限定されない。撹拌は、1つ以上のインペラ、ポンプ、及び/又は、静的ミキサーにより行うことができる。
【0020】
酵素的加水分解で用いる酵素は、酵素的加水分解の前、及び/又は、酵素的加水分解の間に加えることができる。上記で示した通り、酵素的加水分解の前に、セルロース材料を固液分離にかける場合、酵素的加水分解で用いる酵素は、固液分離の前に加えてもよい。代替的には、酵素はまた、固液分離の後に、又は、固液分離の前及び後に加えてもよい。酵素はまた、酵素的加水分解の間に加えてもよい。酵素的加水分解が液化工程と糖化工程とを含む場合、液化工程の間、及び/又は、液化工程の後に、追加の酵素を加えてもよい。追加の酵素は、糖化工程の前、及び/又は、糖化工程の間に加えてもよい。追加の酵素はまた、糖化工程の後に加えてもよい。
【0021】
一実施形態においては、酵素的加水分解の合計時間は、10時間以上、12時間以上、14時間以上、16時間以上、18時間以上、20時間以上、30時間以上、40時間以上、50時間以上、60時間以上、70時間以上、80時間以上、90時間以上、100時間以上、110時間以上、120時間以上、130時間以上、140時間以上、150時間以上、160時間以上、170時間以上、180時間以上、190時間以上、200時間以上である。
【0022】
一実施形態においては、酵素的加水分解の合計時間は、10時間~300時間、16時間~275時間、好ましくは20時間~250時間、より好ましくは30時間~200時間、最も好ましくは40時間~150時間である。
【0023】
酵素的加水分解に用いる1つ以上の加水分解反応器中のセルロース材料の粘度は、10cP~20000cP、10cP~15000cP、好ましくは10cP~10000cPである。
【0024】
プロセスが、液化工程と糖化工程とを含む酵素的加水分解を含む場合、液化工程におけるセルロース材料の粘度は、10cP~4000cP、10cP~2000cP、好ましくは10cP~1000cPであり、及び/又は、糖化工程におけるセルロース材料の粘度は、好ましくは10cP~1000cPである。
【0025】
粘度は、加水分解に用いる温度、及び、10未満のレイノルズ数において、ラッシュトンインペラを用いるRheolab QC粘度計により測定することができる。
【0026】
酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、酸素を加える。一実施形態においては、酵素的加水分解全体の間に、酸素を加える。酸素は、酵素的加水分解の間に、連続的に又は断続的に加えることができる。一実施形態においては、酵素的加水分解の間に、酸素を1回以上加える。酸素はまた、酵素的加水分解の前に、セルロース材料を酵素的加水分解に用いる加水分解反応器に加えている間に、酵素を酵素的加水分解に用いる加水分解反応器に加えている間に、又は、これらのいずれかの組み合わせにおいて加えてもよい。酵素的加水分解で用いる1つ以上の加水分解反応器に、酸素を加える。
【0027】
酸素は、幾つかの形態で加えることができる。例えば、酸素は、酸素ガス、酸素富化空気等の酸素富化ガス、又は、空気として加えることができる。酸素添加の例としては、スパージ、電気分解、酸素の化学的添加、上部から酵素的加水分解で用いる1つ以上の加水分解反応器を充填すること(加水分解産物をタンクに入れ、結果的に酸素を加水分解産物に導入する)、及び、上記1つ以上の加水分解反応器の上部空間に酸素を添加することによる、酸素の添加が挙げられるが、これらに限定されない。小型の加水分解反応器(すなわち、1m未満)を用いる場合、酸素を加水分解反応器(複数の場合もある)の上部空間に加えることで、加水分解反応に必要十分な酸素を供給することができる。大型の、すなわち、商業用の加水分解反応器(すなわち、1m超)を用いる場合、上部空間を介して酸素を加えるのは不十分であり、酸素は、例えば、酸素をセルロース材料にスパージ又はブローすることにより、加える必要がある。一般に、加水分解反応器(複数の場合もある)に加える酸素の量は、制御することができ、及び/又は、変動させることができる。上記加水分解反応器(複数の場合もある)において加水分解時間の一部の間だけ酸素を加えることにより、供給する酸素を制限することが可能である。別の選択肢は、例えば、空気と循環空気(加水分解反応器から出る空気)の混合物を用いることにより、又は、空気を不活性ガスで「希釈」することにより、低濃度で酸素を加えることである。加える酸素の量を増加させることは、より長い期間の加水分解時間の間、酸素を加えることにより、より高濃度で酸素を加えることにより、又は、より多くの空気を加えることにより、達成することができる。酸素濃度を制御する別の方法は、酸素消費器、及び/又は、酸素生成器を加えることである。セルロース材料の酵素的加水分解の間の酸素濃度は、例えば、DO(溶存酸素)電極を用いることで、測定することができる。
【0028】
一実施形態においては、酵素的加水分解で用いる1つ以上の加水分解反応器には、セルロース材料を上記1つ以上の加水分解反応器に加える前、及び/又は、加えている間、及び/又は、加えた後に、酸素を加える。酸素は、加水分解反応器(複数の場合もある)に入るセルロース材料と共に導入することができる。酸素は、加水分解反応器(複数の場合もある)に入る材料の流れに、又は、加水分解反応器(複数の場合もある)の外部ループを通過する加水分解反応器(複数の場合もある)の内容物の一部と共に、導入することができる。
【0029】
酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸500μmol~1100μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える。好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸510μmol~1090μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える。より好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸520μmol~1080μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える。更により好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸530μmol~1070μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える。最も好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の少なくとも一部の間に、1時間当たり、キシロン酸540μmol~1050μmol/セルロース材料中のキシラン1kgの量のキシロン酸が形成される量で酸素を加える。
【0030】
一実施形態においては、酵素的加水分解の間に、0.0002mol O/m~0.047mol O/mの酸素濃度を維持するように、酸素を加える。好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の間に、0.0002mol O/m~0.002mol O/mの酸素濃度を維持するように、酸素を加える。好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の間に、0.002mol O/m~0.016mol O/mの酸素濃度を維持するように、酸素を加える。好ましい実施形態においては、酵素的加水分解の間に、0.016mol O/m~0.047mol O/mの酸素濃度を維持するように、酸素を加える。上記の「mol O/m」値は、通常の大気圧、及び、60℃の温度で測定した値に関する。異なる圧力及び/又は温度を用いる場合、値は異なる。異なる圧力及び/又は温度を用いる場合に、「mol O/m」値を計算することは、十分に当業者の範囲内である。
【0031】
一実施形態においては、酵素的加水分解及び/又は発酵で用いる反応器(複数の場合もある)は、少なくとも1mの容積を有する。好ましくは、反応器は、少なくとも1m、少なくとも2m、少なくとも3m、少なくとも4m、少なくとも5m、少なくとも6m、少なくとも7m、少なくとも8m、少なくとも9m、少なくとも10m、少なくとも15m、少なくとも20m、少なくとも25m、少なくとも30m、少なくとも35m、少なくとも40m、少なくとも45m、少なくとも50m、少なくとも60m、少なくとも70m、少なくとも75m、少なくとも80m、少なくとも90m、少なくとも100m、少なくとも200m、少なくとも300m、少なくとも400m、少なくとも500m、少なくとも600m、少なくとも700m、少なくとも800m、少なくとも900m、少なくとも1000m、少なくとも1500m、少なくとも2000m、少なくとも2500mの容積を有する。一般に、反応器(複数の場合もある)は、3000m又は5000mよりも小さい。幾つかの反応器を酵素的加水分解で用いる場合、これらの反応器は、同じ容積を有してもよいが、異なる容積を有してもよい。酵素的加水分解が、別個の液化工程と糖化工程とを含む場合、液化工程に用いる加水分解反応器(複数の場合もある)、及び、糖化工程に用いる加水分解反応器(複数の場合もある)は、同じ容積を有してもよいが、異なる容積を有してもよい。
【0032】
一実施形態においては、酵素的加水分解は、40℃~90℃、好ましくは45℃~80℃、より好ましくは50℃~70℃、最も好ましくは55℃~65℃の温度で行われる。
【0033】
本明細書で用いるセルロース材料は、任意のセルロース含有材料を含む。好ましくは、本明細書で用いるセルロース材料は、リグノセルロース材料及び/又はヘミセルロース材料を含む。本明細書で用いるセルロース材料は、デンプン及び/又はスクロースも含み得る。本明細書に記載するプロセスで用いるのに好適なセルロース材料としては、バイオマス、例えば、未使用のバイオマス、及び/又は、未使用ではないバイオマス、例えば、農業バイオマス、商業用有機物質、建築及び解体廃材、都市固形廃棄物、廃棄紙、及び庭廃棄物が挙げられる。一般的な形態のバイオマスとしては、木、低木及び草、小麦、ライ麦、オート麦、麦わら、サトウキビ、サトウキビわら、サトウキビバガス、スイッチグラス、ススキ、エナジーケーン、キャッサバ、糖蜜、大麦、トウモロコシ、トウモロコシ茎葉、トウモロコシ繊維、トウモロコシの皮、トウモロコシの穂軸、キャノーラの茎、大豆の茎、サトウモロコシ、穀粒由来の繊維を含むトウモロコシ穀粒、蒸留乾燥穀物(DDGS)、多くの場合、「糠又は繊維」と呼ばれる、トウモロコシ、小麦、及び大麦等の穀物の粉砕(湿式粉砕及び乾式粉砕を含む)による生成物及び副生成物、加えて、都市固形廃棄物、廃棄紙、及び庭廃棄物が挙げられる。バイオマスは、草本物質、農業残留物、林業残留物、都市固形廃棄物、廃棄紙、並びにパルプ及び紙粉砕残留物でもあり得るが、これらに限定されない。「農業バイオマス」としては、枝、やぶ、茎、トウモロコシ及びトウモロコシの皮、エネルギー作物、高木林、果物、花卉、穀物、草、草本作物、葉、樹皮、針状葉、薪、根、稚樹、短期輪作木材作物、低木、スイッチグラス、木、野菜、果物の皮、つる、サトウダイコン、サトウダイコンパルプ、小麦ミッドリング(midlings)、オート麦の外皮、並びに、硬質及び軟質木材(有害物質を含む木材は含まない)が挙げられる。加えて、農業バイオマスとしては、特に、林業木材廃棄物を含む、畜産及び林業活動を含む農業プロセスから生成された有機廃棄物質が挙げられる。農業バイオマスは、上述したもののいずれか単独、又は、それらの任意の組み合わせ若しくは混合物であり得る。
【0034】
一実施形態においては、セルロース材料は、酵素的加水分解の前に前処理される。前処理方法は、当該技術分野において既知であり、熱、機械的、化学的修飾、生物学的修飾、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態においては、前処理は、蒸気処理、希酸処理、オルガノソルブ処理、石灰処理、ARP処理、又はAFEX処理である。前処理は通常、セルロース材料の酵素的加水分解を行いやすくするため、及び/又は、セルロース材料中で、ヘミセルロースを加水分解し、及び/又は、ヘミセルロース及び/又はセルロース及び/又はリグニンを可溶化させるために行われる。一実施形態においては、前処理は、セルロース材料を蒸気爆砕で処理すること、温水処理すること、又は、希酸若しくは希塩基で処理することを含む。前処理方法の例としては、蒸気処理(例えば、100℃~260℃、7bar~45barの圧力、中性pHで1分~10分処理すること)、希酸処理(例えば、0.1%~5%のHSO及び/又はSO及び/又はHNO及び/又はHClで、蒸気の存在下又は不存在下、120℃~200℃、2bar~15barの圧力、酸性pHで、2分~30分処理すること)、オルガノソルブ処理(例えば、有機溶媒及び蒸気の存在下で1%~1.5%のHSO、160℃~200℃、7bar~30barの圧力、酸性pHで、30分~60分処理すること)、石灰処理(例えば、水/蒸気の存在下で0.1~2%のNaOH/Ca(OH)で、60℃~160℃、1bar~10barの圧力、アルカリ性pHで、60分~4800分処理すること)、ARP処理(例えば、5%~15%のNH、150℃~180℃、9bar~17barの圧力、アルカリ性pHで、10分~90分処理すること)、AFEX処理(例えば、15%超のNH、60℃~140℃、8bar~20barの圧力、アルカリ性pHで、5分~30分処理すること)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
セルロース材料は、洗浄することができる。一実施形態においては、セルロース材料は、前処理後に洗浄してもよい。洗浄工程を用いて、発酵工程及び/又は加水分解工程に対して阻害剤として作用する可能性がある水溶性化合物を取り除くことができる。洗浄工程は、当業者に既知の方法で行うことができる。洗浄の次に、他の解毒方法が存在する。固液分離、真空蒸着、抽出、吸着、中和、オーバーライミング、還元剤の添加、ラッカーゼ又はペルオキシダーゼ等の解毒酵素の添加、加水分解物を解毒可能な微生物の添加が挙げられるが、これらに限定されない、これらの方法のいずれか(又は、任意の組み合わせ)により、セルロース材料を解毒することもできる。
【0036】
一実施形態においては、加水分解工程は、セルロース材料中の利用可能な糖の、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、95%以上が放出されるまで行われる。
【0037】
一実施形態においては、酵素的加水分解中でのセルロース材料の乾物含量は、10%(w/w)~40%(w/w)、11%(w/w)~35%(w/w)、12%(w/w)~30%(w/w)、13%(w/w)~29%(w/w)、14%(w/w)~28%(w/w)、15%(w/w)~27%(w/w)、16%(w/w)~26%(w/w)、17%(w/w)~25%(w/w)である。
【0038】
一実施形態においては、加水分解中に加える酵素組成物の量(本明細書では、酵素用量又は酵素投入量とも呼ばれる)は少ない。一実施形態においては、酵素組成物の量は、タンパク質10mg/乾物重量1g以下、タンパク質9mg/乾物重量1g以下、タンパク質8mg/乾物重量1g以下、タンパク質7mg/乾物重量1g以下、タンパク質6mg/乾物重量1g以下、タンパク質5mg/乾物1g以下、タンパク質4mg/乾物1g以下、タンパク質3mg/乾物1g以下、タンパク質2.5mg/乾物1g以下、タンパク質2mg/乾物1g以下、又は、タンパク質1mg/乾物1g以下(タンパク質として、タンパク質のmg数/乾物1gで表現)である。明らかに、酵素組成物の量は0よりも多い。一実施形態においては、酵素組成物の量は、酵素5mg/乾物重量1g以下、酵素4mg/乾物重量1g以下、酵素3mg/乾物重量1g以下、タンパク質2.5mg/乾物1g以下、酵素2mg/乾物重量1g以下、酵素1mg/乾物重量1g以下、酵素0.5mg/乾物重量1g以下、酵素組成物0.4mg/乾物重量1g以下、酵素0.3mg/乾物重量1g以下、酵素0.25mg/乾物重量1g以下、酵素0.20mg/乾物重量1g以下、酵素0.18mg/乾物重量1g以下、酵素0.15mg/乾物重量1g以下、又は、酵素0.10mg/乾物重量1g以下(セルラーゼ酵素の合計として、酵素のmg数/乾物1gで表現)である。明らかに、酵素の量は0よりも多い。
【0039】
一実施形態においては、酵素組成物は、タンパク質1mg~20mg/セルロース材料中のグルカンの乾物重量1gの量で、酵素的加水分解で用いられる。一実施形態においては、酵素組成物は、タンパク質1.5mg~15mg/セルロース材料中のグルカンの乾物重量1gの量で、酵素的加水分解で用いられる。一実施形態においては、酵素組成物は、タンパク質2mg~12mg/セルロース材料中のグルカンの乾物重量1gの量で、酵素的加水分解で用いられる。一実施形態においては、酵素組成物は、タンパク質2mg~10mg/セルロース材料中のグルカンの乾物重量1gの量で、酵素的加水分解で用いられる。
【0040】
一実施形態においては、発酵(すなわち、工程b)は、1つ以上の発酵反応器で行われる。一実施形態においては、発酵は、少なくとも1種のC5糖を発酵させることができる微生物を用いて行われる。一実施形態においては、発酵は、アルコールを生産する微生物により、アルコールを生産することにより行われる。一実施形態においては、発酵は、有機酸を生産する微生物により、有機酸を生産することにより行われる。アルコールを生産する微生物によりアルコールを生産する発酵は、酵素的加水分解が行われるのと同じ発酵反応器(複数の場合もある)で行うことができる。代替的には、アルコールを生産する微生物によりアルコールを生産する発酵、及び、有機酸を生産する微生物により有機酸を生産する発酵は、1つ以上の別個の発酵反応器で行うことができるが、同じ発酵反応器のうちの1つ以上で行ってもよい。
【0041】
一実施形態においては、発酵は酵母により行われる。一実施形態においては、アルコールを生産する微生物、及び/又は、有機酸を生産する微生物は、酵母である。一実施形態においては、アルコールを生産する微生物は、少なくともC5糖、及び、少なくともC6糖を発酵させることができる。一実施形態においては、有機酸を生産する微生物は、少なくともC6糖を発酵させることができる。一実施形態においては、アルコールを生産する微生物、及び有機酸を生産する微生物は、異なる微生物である。別の実施形態においては、アルコールを生産する微生物、及び有機酸を生産する微生物は、同じ微生物である、すなわち、アルコールを生産する微生物は、コハク酸等の有機酸を生産することもできる。
【0042】
更なる態様においては、本開示はそれゆえに、微生物が、糖(複数の場合もある)、例えば、グルコース、L-アラビノース、及び/又は、キシロースを含む炭素源の発酵に使用される発酵プロセスを含む。炭素源は、例えば、リグノセルロース、キシラン、セルロース、デンプン、アラビナン等の、L-アラビノース、キシロース、又はグルコース単位を含む、任意の炭水化物オリゴマー又はポリマーを含むことができる。このような炭水化物からキシロース又はグルコース単位を放出させるために、適切なカルボヒドラーゼ(例えば、キシラナーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ等)を、発酵培地に加えることができ、又は、改変宿主細胞により生産することができる。後者の場合、改変宿主細胞は、遺伝子改変されてこのようなカルボヒドラーゼを生産し、排出することができる。グルコースオリゴマー又はポリマー源を用いることの更なる利点は、例えば、律速量のカルボヒドラーゼを用いることにより、発酵中に(より)低い濃度の遊離グルコースを維持することが可能になるということである。これは、さらには、キシロース等の非グルコース糖の代謝及び輸送に必要な系の抑制を防止する。好ましいプロセスにおいては、改変宿主細胞は、L-アラビノース(任意選択的に、キシロース)及びグルコースの両方を、好ましくは同時に発酵させ、この場合、好ましくは、グルコース抑制に対して不感性であり、ジオーキシック増殖を防止する、改変宿主細胞を用いる。炭素源としてのL-アラビノース、任意選択的に、キシロース(及び、グルコース)の源に加えて、発酵培地は、改変宿主細胞の増殖に必要である適切な成分を更に含む。酵母又は糸状菌等の微生物を増殖させるための発酵培地の組成は、当該技術分野において既知である。
【0043】
発酵時間は、同一条件では従来の発酵よりも短い場合があり、酵素的加水分解の一部が依然として、発酵中に行われる必要がある。一実施形態においては、発酵時間は、50g/lのグルコース、及び、炭水化物物質由来の対応する他の糖類(例えば、50g/lのキシロース、35g/lのL-アラビノース、及び、10g/lのガラクトース)の糖組成物に対して、100時間以下、90時間以下、80時間以下、70時間以下、又は60時間以下である。より希釈された糖組成物に対しては、発酵時間はそれに対応して減少し得る。一実施形態においては、エタノール生産工程の発酵時間は、C6糖から作られたエタノールに対しては10時間~50時間であり、C5糖から作られたエタノールに対しては20時間~100時間である。一実施形態においては、コハク酸生産工程の発酵時間は、20時間~70時間である。
【0044】
発酵プロセスは、好気性、又は、嫌気性発酵プロセスであり得る。嫌気性発酵プロセスは、本明細書では、酸素の不存在下で実施される、又は、実質的に酸素が消費されない、好ましくは5mmol/L/h、2.5mmol/L/h、又は1mmol/L/h未満、より好ましくは0mmol/L/hの酸素が消費され(すなわち、酸素消費量が検出可能ではない)、かつ、有機分子が、電子供与体と電子受容体のどちらにもなる、発酵プロセスと定義される。酸素の不存在下で、解糖及びバイオマス形成にて生じるNADHは、酸化的リン酸化により酸化することができない。この問題を解決するために、多くの微生物が、ピルビン酸、又は、その誘導体のうちの1つを、電子及び水素受容体として用いることで、NADを再生している。したがって、好ましい嫌気性発酵プロセスにおいては、ピルビン酸は、電子(及び水素受容体)として用いられ、エタノール、乳酸、3-ヒドロキシ-プロピオン酸、アクリル酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アミノ酸、1,3-プロパン-ジオール、エチレン、グリセロール、ブタノール、β-ラクタム抗生物質、及びセファロスポリン等の発酵生成物に還元される。好ましい実施形態においては、発酵プロセスは嫌気性である。嫌気性プロセスは、好気性プロセスよりも安価であり、必要となる特別な装置が少ないため、有利である。さらに、嫌気性プロセスは、好気性プロセスよりも、生成物の収率が高くなることが予想される。好気性条件下では、通常、バイオマス収率は、嫌気性条件下よりも高い。結果として、通常、好気性条件下では、予想される生成物の収率は、嫌気性条件下よりも低い。
【0045】
別の実施形態においては、発酵プロセスは、酸素制限条件下である。より好ましくは、発酵プロセスは好気性かつ酸素制限条件下である。酸素制限発酵プロセスは、気体から液体への酸素移動により、酸素消費量が制限されるプロセスである。酸素制限の程度は、入ってくるガスフローの量及び組成、加えて、用いる発酵装置の、実際の混合/物質移動上の性質により決定される。好ましくは酸素制限条件下でのプロセスにおいては、酸素消費速度は、少なくとも5.5mmol/L/h、より好ましくは少なくとも6mmol/L/h、更により好ましくは少なくとも7mmol/L/hである。
【0046】
一実施形態においては、アルコール発酵プロセスは嫌気性である一方で、有機酸発酵プロセスは好気性であるが、酸素制限状態下で行われる。
【0047】
発酵プロセスは、好ましくは、用いる微生物に対して最適な温度で実施される。したがって、大部分の酵母又は真菌細胞に対しては、発酵プロセスは、42℃未満、好ましくは38℃以下の温度で行われる。酵母、又は糸状菌宿主細胞に対しては、発酵プロセスは、好ましくは、35℃、33℃、30℃、又は28℃未満の温度で、かつ、20℃、22℃、又は25℃を超える温度で行われる。一実施形態においては、アルコール発酵工程及び有機酸発酵工程は、25℃~35℃で行われる。
【0048】
一実施形態においては、発酵は、発酵微生物により行われる。一実施形態においては、C5糖のアルコール(例えば、エタノール)発酵は、C5発酵微生物により行われる。一実施形態においては、C6糖のアルコール(例えば、エタノール)発酵は、C5発酵微生物、又は、商業用のC6発酵微生物により行われる。エタノール生産に好適な市販の酵母としては、BIOFERM(商標)AFT及びXR(NABC-North American Bioproducts Corporation, GA, USA)、ETHANOL RED(商標)酵母(Fermentis/Lesaffre, USA)、FALI(商標)(Fleischmann's Yeast, USA)、FERMIOL(商標)(DSM Food Specialties)、GERT STRAND(商標)(Gert Strand AB, Sweden)、並びに、SUPERSTART(商標)及びTHERMOSACC(商標)新鮮酵母(Ethanol Technology, WI, USA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
好ましい実施形態においては、発酵生成物はアルコールであり、発酵微生物は、少なくとも1種のC5糖を発酵させることができる、アルコールを生産する微生物である。
【0050】
一実施形態においては、アルコールを生産する微生物、及び/又は、有機酸を生産する微生物の増殖は、1つ以上の増殖反応器で行われる。増殖後、アルコールを生産する微生物、及び/又は、有機酸を生産する微生物を、1つ以上の発酵反応器に加えることができる。代替的には、アルコールを生産する微生物、及び/又は、有機酸を生産する微生物の増殖を、それぞれ、アルコールを生産する微生物、及び/又は、有機酸を生産する微生物によりアルコール及び/又は有機酸を生産する発酵と組み合わせる。
【0051】
一実施形態においては、アルコールを生産する微生物は、少なくとも1種のC5糖を発酵させることができる微生物である。好ましくは、少なくとも1種のC6糖を発酵させることもできる。一実施形態においては、本開示は、(a)本明細書に記載するセルロース材料から糖生成物を製造するプロセスを実施する工程と、(b)酵素的加水分解されたセルロース材料を発酵させてエタノールを生産する工程と、(c)任意選択的に、エタノールを回収する工程とを含む、セルロース材料からエタノールを製造するプロセスについても記載する。発酵は、少なくとも1種のC5糖を発酵させることができる微生物により行うことができる。
【0052】
一実施形態においては、有機酸を生産する微生物は、少なくとも1種のC6糖を発酵させることができる微生物である。一実施形態においては、本開示は、(a)本明細書に記載するセルロース材料から糖生成物を製造するプロセスを実施する工程と、(b)酵素的加水分解されたセルロース材料を発酵させてコハク酸を生産する工程と、(c)任意選択的に、コハク酸を回収する工程とを含む、セルロース材料からコハク酸を製造するプロセスについて記載する。発酵は、少なくとも1種のC6糖を発酵させることができる微生物により行うことができる。
【0053】
アルコールを生産する微生物は、原核生物又は真核生物であり得る。本プロセスで用いる微生物は、遺伝子改変された微生物であり得る。好適な、アルコールを生産する生物の例は酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、若しくは、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、ハンゼヌラ(Hansenula)、イサチェンキア(Issatchenkia)、例えば、イサチェンキア・オリエンタリス(Issatchenkia orientalis)、ピキア(Pichia)、例えば、ピキア・スチピテス(Pichia stipites)、若しくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、例えば、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fagilis)、カンジダ(Candida)、例えば、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、若しくは、カンジダ・アシドサーモフィルム(Candida acidothermophilum)、パキソレン(Pachysolen)、例えば、パキソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)、又は細菌、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)、例えば、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、ゲオバチルス(Geobacillus)、ザイモモナス(Zymomonas)、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、クロストリジウム(Clostridium)、例えば、クロストリジウム・フィトフェルメンタンス(Clostridium phytofermentans)、エシェリキア(Escherichia)、例えば、大腸菌(E. coli)、クレブシエラ(Klebsiella)、例えば、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)である。一実施形態においては、少なくとも1種のC5糖を発酵させることができる微生物は、酵母である。一実施形態においては、酵母は、サッカロミセス属、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ種に属する。本明細書に記載するプロセスで用いる酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエは、ヘキソース(C6)糖及びペントース(C5)糖を変換することができる。本明細書に記載するプロセスで用いる酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエは、少なくとも1種のC6糖、及び少なくとも1種のC5糖を、嫌気的に発酵させることができる。例えば、酵母は、グルコースに加えて、L-アラビノース及びキシロースを嫌気的に用いることができる。一実施形態においては、酵母は、L-アラビノースをL-リブロース、及び/又は、キシルロース5-リン酸に、及び/又は、所望の発酵生成物に、例えば、エタノールに、変換することができる。L-アラビノースからエタノールを生産することができる生物、例えば、サッカロミセス・セレビシエ株は、好適な源に由来する、araA(L-アラビノースイソメラーゼ)、araB(L-リブログリオキサレート)、及び、araD(L-リブロース-5-P4-エピメラーゼ)遺伝子を導入することで、宿主酵母を改変することにより生産することができる。このような遺伝子は、アラビノースを用いることができるように、宿主細胞に導入することができる。このようなアプローチは、国際公開第2003/095627号に記載されている。ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)に由来するaraA、araB、及びaraD遺伝子を用いることができ、これらは、国際公開第2008/041840号に開示されている。バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)に由来するaraA遺伝子、並びに、大腸菌(Escherichia coli)に由来するaraB及びaraD遺伝子を用いることができ、これらは、欧州特許第1499708号に開示されている。別の実施形態においては、国際公開第2009011591号に開示されているように、araA、araB、及びaraD遺伝子は、クラビバクター(Clavibacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、及び/又はグラメラ(Gramella)属のうちの少なくとも1つ、特に、クラビバクター・ミチガネンシス(Clavibacter michiganensis)、アルスロバクター・オーレセンス(Arthrobacter aurescens)、及び/又は、グラメラ・フォルセティ(Gramella forsetii)のうちの1つに由来することができる。一実施形態においては、酵母は、キシロースイソメラーゼ遺伝子の1つ以上のコピー、及び/又は、キシロースレダクターゼ、及び/又は、キシリトールデヒドロゲナーゼの1つ以上のコピーも含み得る。
【0054】
酵母は、酵母がキシロースを発酵させることを可能にする、1つ以上の遺伝子組み換えを含み得る。遺伝子組み換えの例は、1つ以上のxylA-遺伝子、XYL1遺伝子、及びXYL2遺伝子、及び/又はXKS1-遺伝子の導入、アルドースレダクターゼ(GRE3)遺伝子の欠失、細胞内でのペントースリン酸経路による流れを増加させる、PPP-遺伝子TAL1、TKL1、RPE1、及びRKI1の過剰発現である。遺伝子改変酵母の例は、欧州特許第1468093号及び/又は国際公開第2006/009434号に記載されている。
【0055】
好適な商業用酵母の一例は、DSM(the Netherlands)製の、キシロース及びグルコース発酵サッカロミセス・セレビシエ株である、RN1016である。
【0056】
一実施形態においては、エタノールを生産する発酵プロセスは嫌気性である。嫌気性については、本明細書の以前の部分で既に定義している。別の好ましい実施形態においては、エタノールを生産する発酵プロセスは好気性である。別の好ましい実施形態においては、エタノールを生産する発酵プロセスは、酸素制限条件下、より好ましくは好気性かつ酸素制限条件下である。酸素制限条件については、本明細書の以前の部分で既に定義している。
【0057】
代替的には、上記の発酵プロセスに関して、少なくとも2種の異なる細胞を用いてもよく、これは、本プロセスが共発酵プロセスであることを意味する。上記した発酵プロセスの全ての好ましい実施形態は、この共発酵プロセスの好ましい実施形態でもある:発酵生成物の同一性、L-アラビノース源とキシロース源の同一性、発酵の条件(好気性又は嫌気性条件、酸素制限条件、プロセスが実施される温度、エタノールの生産性、エタノールの収率)。
【0058】
有機酸を生産する微生物は、原核生物又は真核生物であり得る。本プロセスで用いられる微生物は、遺伝子改変された微生物であり得る。好適な、有機酸を生産する生物の例は、酵母、例えば、サッカロミセス、例えば、サッカロミセス・セレビシエ、真菌、例えば、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)及びアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)等のアスペルギルス株、ビソクラミス・ニベア(Byssochlamys nivea)、レンチヌス・デゲナー(Lentinus degener)、ペシロミセス・バリオッティ(Paecilomyces varioti)、及び、ペニシリウム・ビニフェルム(Penicillium viniferum)、並びに細菌、例えば、アナエロビオスピリルム・スクシニシプロドゥセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)、アクチノバチルス・スクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、マンヘミア・スクシニシプロデュセンス(Mannhei succiniciproducers)MBEL 55E、大腸菌、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種、ペクチナータス(Pectinatus)sp.、バクテロイデス(Bacteroides)sp.、例えば、バクテロイデス・アミノフィルス(Bacteroides amylophilus)、ルミノコッカス・フラベファシエンス(Ruminococcus flavefaciens)、プレボテラ・ルミニコラ(Prevotella ruminicola)、スクシニモナス・アミロリチカ(Succcinimonas amylolytica)、スクシニビブリオ・デキストリニソルベンス(Succinivibrio dextrinisolvens)、ウォリネラ・スクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、及び、サイトファーガ・スクシニカンス(Cytophaga succinicans)である。一実施形態においては、少なくとも1種のC6糖を発酵させることができる、有機酸を生産する微生物は、酵母である。一実施形態においては、酵母は、サッカロミセス属、好ましくは、サッカロミセス・セレビシエ種に属する。本明細書に記載する有機酸の生産プロセスで用いる酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエは、ヘキソース(C6)糖を変換することができる。本明細書に記載するプロセスで用いる酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエは、少なくとも1種のC6糖を嫌気的に発酵させることができる。
【0059】
全体の反応時間(又は、加水分解工程と発酵工程を合わせた反応時間)は、短くしてもよい。一実施形態においては、全体の反応時間は、90%のグルコース収率で、300時間以下、200時間以下、150時間以下、140時間以下、130時間以下、120時間以下、110時間以下、100時間以下、90時間以下、80時間以下、75時間以下、又は、約72時間である。これに対応して、グルコース収率が低くなるほど、全体の反応時間を短くすることができる。
【0060】
本明細書に記載するプロセスにより生産することができる発酵生成物は、発酵に由来する任意の物質であり得る。これらとしては、アルコール(アラビニトール、ブタノール、エタノール、グリセロール、メタノール、1,3-プロパンジオール、ソルビトール、及びキシリトール等);有機酸(酢酸、アセトン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アクリル酸、クエン酸、2,5-ジケト-D-グルコン酸、ギ酸、フマル酸、グルカル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタル酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、イタコン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、及びキシロン酸等);ケトン(アセトン等);アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジン、セリン、トリプトファン、及びトレオニン等);アルカン(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、及びドデカン等)、シクロアルカン(シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタン等)、アルケン(ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、及びオクテン等);並びに、気体(メタン、水素(H)、二酸化炭素(CO)、及び一酸化炭素(CO)等)が挙げられるが、これらに限定されない。発酵生成物は、タンパク質、ビタミン、医薬品、動物飼料サプリメント、特殊化学品、化学原料、プラスチック、溶媒、エチレン、酵素、例えば、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リアーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、又はキシラナーゼでもあり得る。好ましい実施形態においては、有機酸及び/又はアルコールが、本明細書に記載する発酵プロセスで製造される。好ましい実施形態においては、コハク酸及び/又はエタノールは、本明細書に記載する発酵プロセスで製造される。好ましくは、発酵生成物はアルコール、好ましくはエタノールである。
【0061】
本明細書に記載する有益な効果は、幾つかのセルロース材料に対して見出されており、それゆえに、あらゆる種類のセルロース材料の加水分解に対して存在すると考えられている。有益な効果は、幾つかの酵素に対して見出されており、それゆえに、あらゆる種類の加水分解酵素組成物に対して存在すると考えられている。
【0062】
一実施形態においては、本明細書に記載するプロセスで用いる酵素組成物は、少なくともセルラーゼ、及び/又は、少なくともヘミセルラーゼを含む。
【0063】
一実施形態においては、本明細書に記載するプロセスで用いる酵素組成物は、真菌の全発酵ブロスの形態である。
【0064】
一実施形態においては、本明細書に記載するプロセスで用いる酵素組成物は、β-グルコシダーゼ(BG)、エンドグルカナーゼ(EG)、溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO)、セロビオヒドロラーゼ(CBH)、β-キシロシダーゼ、及びエンドキシラナーゼ(EX)を含む。
【0065】
エンドグルカナーゼは、セルロース、リケニン、又は、穀物β-D-グルカンにおける1,4-β-D-グルコシド結合のエンド加水分解を触媒可能な酵素である。これらはEC 3.2.1.4に属し、1,3-結合も含有するβ-D-グルカンにおける1,4-結合の加水分解も可能である。エンドグルカナーゼは、セルラーゼ、アビセラーゼ、β-1,4-エンドグルカンヒドロラーゼ、β-1,4-グルカナーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ、セルデキストリナーゼ(celludextrinases)、エンド-1,4-β-D-グルカナーゼ、エンド-1,4-β-D-グルカノヒドロラーゼ、又は、エンド-1,4-β-グルカナーゼと称することもできる。
【0066】
一実施形態においては、エンドグルカナーゼは、GH5エンドグルカナーゼ、及び/又は、GH7エンドグルカナーゼを含む。これは、酵素組成物中のエンドグルカナーゼのうちの少なくとも1つが、GH5エンドグルカナーゼ又はGH7エンドグルカナーゼであることを意味する。酵素組成物中に更にエンドグルカナーゼが存在する場合、これらのエンドグルカナーゼは、GH5エンドグルカナーゼ、GH7エンドグルカナーゼ、又は、GH5エンドグルカナーゼとGH7エンドグルカナーゼの組み合わせであり得る。好ましい実施形態においては、エンドグルカナーゼは、GH5エンドグルカナーゼを含む。GH分類は、CAZyウェブサイトで見つけることができる。
【0067】
一実施形態においては、酵素組成物は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)等のトリコデルマ(Trichoderma)由来の;アスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、又は、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等のアスペルギルス由来の;エルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovara)等のエルウィニア(Erwinia)由来の;フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)等のフサリウム(Fusarium)由来の;チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)等のチエラビア(Thielavia)由来の;フミコーラ・グリセアvar.サーモイデア(Humicola grisea var. thermoidea)又はフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)等のフミコーラ(Humicola)由来の;メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)等のメラノカルプス(Melanocarpus)由来の;ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)等のニューロスポラ(Neurospora)由来の;ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)等のミセリオフトラ(Myceliophthora)由来の;クラドリヌム・フォエクンジシムム(Cladorrhinum foecundissimum)等のクラドリヌム(Cladorrhinum)由来の;及び/又は、クリソスポリウム・ラックノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株等のクリソスポリウム(Chrysosporium)由来の、エンドグルカナーゼを含む。一実施形態においては、限定されるものではないが、アシドサームス・セルロリティクス(Acidothermus cellulolyticus)エンドグルカナーゼ(国際公開第91/05039号;国際公開第93/15186号;米国特許第5,275,944号;国際公開第96/02551号;米国特許第5,536,655号、国際公開第00/70031号、国際公開第05/093050号を参照されたい);サーモビフィダ・フスカ(Thermobifida fusca)エンドグルカナーゼIII(国際公開第05/093050号を参照されたい);及び、サーモビフィダ・フスカエンドグルカナーゼV(国際公開第05/093050号を参照されたい)を含む細菌エンドグルカナーゼでさえも用いることができる。
【0068】
一実施形態においては、エンドグルカナーゼは、熱安定性エンドグルカナーゼである。「熱安定性」エンドグルカナーゼとは、本明細書で用いる場合、活性を10分~30分測定する場合、エンドグルカナーゼが45℃~90℃の範囲に温度最適を有することを意味する。熱安定性エンドグルカナーゼは、例えば、好熱性若しくは熱耐性真菌から単離することができ、又は、当業者により設計され、人工的に合成することができる。一実施形態においては、熱安定性エンドグルカナーゼは、好熱性若しくは熱耐性糸状菌から単離する、若しくは得ることができ、又は、好熱性ではない、若しくは熱耐性ではないが、熱安定性であることが分かっている真菌から単離することができる。一実施形態においては、熱安定性エンドグルカナーゼは真菌のものである。一実施形態においては、熱安定性エンドグルカナーゼは、好熱性又は熱耐性真菌から得られる。「好熱性真菌」とは、45℃以上の温度で増殖する真菌を意味する。「熱耐性」真菌とは、20℃以上で、最大55℃付近の温度で増殖する真菌を意味する。
【0069】
一実施形態においては、熱安定性エンドグルカナーゼは、限定されるものではないが、フミコーラ、リゾムコール(Rhizomucor)、ミセリオフトラ、ラサムソニア(Rasamsonia)、タラロミセス(Talaromyces)、ペニシリウム、サーモミセス(Thermomyces)、サーモアスクス(Thermoascus)、アスペルギルス、スチタリジウム(Scytalidium)、ペシロミセス(Paecilomyces)、ケトミウム(Chaetomium)、スチベラ(Stibella)、コリナスクス(Corynascus)、マルブランケア(Malbranchea)、又は、チエラビアを含む属の真菌から得られる。これらの属の好ましい種としては、フミコーラ・グリセアvar.サーモイデア、フミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、フミコーラ・ヒアロサーモフィリア(Humicola hyalothermophilia)、ミセリオフトラ・サーモフィラ、ミセリオフトラ・ヒヌレア(Myceliophthora hinnulea)、ラサムソニア・ビソクラミドイデス(Rasamsonia byssochlamydoides)、ラサムソニア・エメルソニイ(Rasamsonia emersonii)、ラサムソニア・アルギラセア(Rasamsonia argillacea)、ラサムソニア・エブルネアン(Rasamsonia eburnean)、ラサムソニア・ブレビスティピタタ(Rasamsonia brevistipitata)、ラサムソニア・シリンドロスポラ(Rasamsonia cylindrospora)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、タラロミセス・バシリスポルス(Talaromyces bacillisporus)、タラロミセス・レイセタヌス(Talaromyces leycettanus)、タラロミセス・サーモフィルス(Talaromyces thermophilus)、タラロミセス・エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、サーモミセス・レヌギノスス(Thermomyces lenuginosus)、サーモミセス・ステラツス(Thermomyces stellatus)、サーモアスクス・クルスタセウス(Thermoascus crustaceus)、サーモアスクス・サーモフィルス(Thermoascus thermophilus)、サーモアスクス・アウランチアクス(Thermoascus aurantiacus)、ペニシリウム・エメルソニイ(Penicillium emersonii)、ペニシリウム・シリンドロスポルム(Penicillium cylindrosporum)、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・フミガーツス、スチタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)、ペシロミセス・ビソクラミドイデス(Paecilomyces byssochlamydoides)、ケトミウム・サーモフィルム(Chaetomium thermophilum)、ケトミウム・オリビカラー(Chaetomium olivicolor)、スチベラ・サーモフィラ(Stibella thermophila)、コリナスクス・セペドニウム(Corynascus sepedonium)、マルブランケア・シナモンメア(Malbranchea cinnamonmea)、及び、チエラビア・テレストリスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
好ましい実施形態においては、熱安定性エンドグルカナーゼは、ラサムソニア属、タラロミセス属、サーモアスクス属、又はペニシリウム属の真菌から得られる。
【0071】
本明細書で用いる場合、β-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)は、β-D-グルコースを放出する、末端非還元β-D-グルコース残基の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。このようなポリペプチドは、β-D-グルコシドに対して幅広い特異性を有することができ、以下のうちの1つ以上を加水分解することもできる:β-D-ガラクトシド、α-L-アラビノシド、β-D-キシロシド、又は、β-D-フコシド。この酵素は、アミグダラーゼ、β-D-グルコシドグルコヒドロラーゼ、セロビアーゼ、又はゲントビアーゼと称することもできる。
【0072】
一実施形態においては、酵素組成物は、国際公開第02/095014号に開示されているもの、若しくは、国際公開第2008/057637号に開示されている、β-グルコシダーゼ活性を有する融合タンパク質等の、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、又は、国際公開第2005/047499号で配列番号2として、若しくは、国際公開第2014/130812号で配列番号5として開示されているもの、若しくは、以下の置換を有するもの:F100D、S283G、N456E、F512Y(ナンバリングに関しては、国際公開第2014/130812号での配列番号5を用いる)等の、国際公開第2012/044915号に開示されているもの等の、アスペルギルス・フミガーツスβ-グルコシダーゼバリアント等の、アスペルギルス・フミガーツス、又は、アスペルギルス・アクレアツス、アスペルギルス・ニガー、若しくはアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)等の、アスペルギルスに由来するβ-グルコシダーゼを含む。別の実施形態においては、β-グルコシダーゼは、国際公開第2007/019442号で配列番号2として開示されている、ペニシリウム・ブラジリアヌム(Penicillium brasilianum)等のペニシリウム、又は、米国特許第6,022,725号、米国特許第6,982,159号、米国特許第7,045,332号、米国特許第7,005,289号、米国特許出願公開第2006/0258554号、米国特許出願公開第2004/0102619号に開示されているもの等の、トリコデルマ・リーゼイ等のトリコデルマに由来する。一実施形態においては、細菌β-グルコシダーゼでさえも用いることができる。別の実施形態においては、β-グルコシダーゼは、チエラビア・テレストリス(国際公開第2011/035029号)又はトリコファエア・サッカタ(Trichophaea saccata)(国際公開第2007/019442号)に由来する。好ましい実施形態においては、酵素組成物は、ラサムソニア・エメルソニイ等のラサムソニア由来のβ-グルコシダーゼを含む(国際公開第2012/000886号又は国際公開第2012/000890号を参照されたい)。
【0073】
本明細書で用いる場合、セロビオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.91)は、鎖の末端からセロビオースを放出する、セルロース又はセルロテトラオースにおける1,4-β-D-グルコシド結合の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、セルラーゼ、1,4-β-セルロビオシダーゼ、1,4-β-セロビオヒドロラーゼ、1,4-β-D-グルカンセロビオヒドロラーゼ、アビセラーゼ、エキソ-1,4-β-D-グルカナーゼ、エキソセルロビオヒドロラーゼ、又はエキソグルカナーゼと称することもできる。
【0074】
一実施形態においては、セロビオヒドロラーゼは、GH7セロビオヒドロラーゼI等のセロビオヒドロラーゼIである。
【0075】
好ましい実施形態においては、セロビオヒドロラーゼIは、ラサムソニア属、タラロミセス属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、又はペニシリウム属等の真菌から得られる。好ましい実施形態においては、セロビオヒドロラーゼIは、ラサムソニア・エメルソニイ、タラロミセス・エメルソニイ、タラロミセス・レイセタヌス、アスペルギルス・フミガーツス、トリコデルマ・リーゼイ、又はペニシリウム・エメルソニイの種の真菌から得られる。
【0076】
一実施形態においては、酵素組成物は、国際公開第2011/057140号の配列番号6で、若しくは、国際公開第2014/130812号の配列番号6で開示されているCel7A CBHI、又は、国際公開第2013/028928号若しくは国際公開第2015/081139号で開示されているようなCBHI等の、アスペルギルス・フミガーツス等のアスペルギルス由来の;トリコデルマ・リーゼイ等のトリコデルマ由来の;ケトミウム・サーモフィルム等のケトミウム由来の;(例えば、国際公開第2015/187935号又は国際公開第2016/082771号に開示されているような)タラロミセス・レイセタヌス等のタラロミセス由来の、又は、(例えば、国際公開第2011/057140号に開示されているような)ペニシリウム・エメルソニイ等のペニシリウム由来の、セロビオヒドロラーゼIを含む。好ましい実施形態においては、酵素組成物は、ラサムソニア・エメルソニイ等のラサムソニア由来のセロビオヒドロラーゼIを含む(国際公開第2010/122141号を参照されたい)。
【0077】
一実施形態においては、本明細書に記載するプロセスで用いる酵素組成物は、ヘミセルラーゼを含み得る。本明細書に記載するように、本開示の酵素組成物は、好ましくは、ヘミセルラーゼを含む。「ヘミセルラーゼ」は、「少なくとも1種のヘミセルラーゼ」を意味するものと理解されるべきである。本開示の酵素組成物はそれゆえに、2種以上のヘミセルラーゼを含み得る。一実施形態においては、ヘミセルラーゼは、β-キシロシダーゼ及び/又はエンドキシラナーゼを含む。
【0078】
本明細書で用いる場合、β-キシロシダーゼ(EC 3.2.1.37)は、1,4-β-D-キシランの加水分解を触媒し、非還元末端から、連続したD-キシロース残基を取り除くことが可能なポリペプチドである。β-キシロシダーゼは、キシロビオースを加水分解することもできる。β-キシロシダーゼは、キシラン1,4-β-キシロシダーゼ、1,4-β-D-キシランキシロヒドロラーゼ、エキソ-1,4-β-キシロシダーゼ、又は、キシロビアーゼと称することもできる。
【0079】
一実施形態においては、β-キシロシダーゼは、GH3β-キシロシダーゼを含む。これは、酵素組成物中のβ-キシロシダーゼのうちの少なくとも1つが、GH3β-キシロシダーゼであることを意味する。一実施形態においては、酵素組成物中の全てのβ-キシロシダーゼが、GH3β-キシロシダーゼである。
【0080】
一実施形態においては、酵素組成物は、ニューロスポラ・クラッサ、アスペルギルス・フミガーツス、又はトリコデルマ・リーゼイ由来のβ-キシロシダーゼを含む。好ましい実施形態においては、酵素組成物は、ラサムソニア・エメルソニイ等のラサムソニア由来のβ-キシロシダーゼを含む(国際公開第2014/118360号を参照されたい)。
【0081】
本明細書で用いる場合、エンドキシラナーゼ(EC 3.2.1.8)は、キシランにおける1,4-β-D-キシロシド結合のエンド加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、エンド-1,4-β-キシラナーゼ、又は、1,4-β-D-キシランキシラノヒドロラーゼと称することもできる。代替物は、グルクロノアラビノキシランにおける1,4-キシロシド結合を加水分解することができる酵素である、EC 3.2.1.136、すなわち、グルクロノアラビノキシランエンドキシラナーゼである。
【0082】
一実施形態においては、エンドキシラナーゼは、GH10キシラナーゼを含む。これは、酵素組成物中のエンドキシラナーゼのうちの少なくとも1つが、GH10キシラナーゼであることを意味する。一実施形態においては、酵素組成物中の全てのエンドキシラナーゼが、GH10キシラナーゼである。
【0083】
一実施形態においては、酵素組成物は、アスペルギルス・アクレアツス(国際公開第94/21785号を参照されたい)、アスペルギルス・フミガーツス(国際公開第2006/078256号を参照されたい)、ペニシリウム・ピノフィルム(国際公開第2011/041405号を参照されたい)、ペニシリウムsp.(国際公開第2010/126772号を参照されたい)、チエラビア・テレストリスNRRL 8126(国際公開第2009/079210号を参照されたい)、タラロミセス・レイセタヌス、サーモビフィダ・フスカ、又はトリコファエア・サッカタGH10(国際公開第2011/057083号を参照されたい)由来のエンドキシラナーゼを含む。好ましい実施形態においては、酵素組成物は、ラサムソニア・エメルソニイ等のラサムソニア由来のエンドキシラナーゼを含む(国際公開第02/24926号を参照されたい)。
【0084】
本明細書で用いる場合、溶解性多糖モノオキシゲナーゼは、CAZyにより最近、ファミリーAA9(補助活性ファミリー9)、又は、ファミリーAA10(補助活性ファミリー10)に分類された酵素である。したがって、AA9溶解性多糖モノオキシゲナーゼ、及びAA10溶解性多糖モノオキシゲナーゼが存在する。溶解性多糖モノオキシゲナーゼは、結晶グルカン構造を開環し、リグノセルロース基質に対するセルラーゼの作用を向上させることができる。これらは、セルロース分解向上活性を有する酵素である。溶解性多糖モノオキシゲナーゼは、セロオリゴ糖にも影響を及ぼし得る。最新の文献によると(Isaksen et al., Journal of Biological Chemistry, vol. 289, no. 5, p. 2632-2642を参照されたい)、GH61という名の(グリコシドヒドロラーゼファミリー61、又はEGIVと称される場合もある)タンパク質は、溶解性多糖モノオキシゲナーゼである。GH61は元々、エンドグルカナーゼとして、非常に弱いエンド-1,4-β-d-グルカナーゼ活性の測定に基づき、或るファミリーメンバーに分類されたが、最近、CAZyにより、ファミリ-AA9に再分類された。CBM33(ファミリー33炭水化物結合モジュール)は、溶解性多糖モノオキシゲナーゼでもある(Isaksen et al, Journal of Biological Chemistry, vol. 289, no. 5, pp. 2632-2642を参照されたい)。CAZyは最近、CBM33をAA10ファミリーに再分類した。
【0085】
一実施形態においては、溶解性多糖モノオキシゲナーゼは、AA9溶解性多糖モノオキシゲナーゼを含む。これは、酵素組成物中の溶解性多糖モノオキシゲナーゼのうちの少なくとも1つが、AA9溶解性多糖モノオキシゲナーゼであることを意味する。一実施形態においては、酵素組成物中の全ての溶解性多糖モノオキシゲナーゼが、AA9溶解性多糖モノオキシゲナーゼである。
【0086】
一実施形態においては、酵素組成物は、国際公開第2005/074656号で配列番号2として、並びに、国際公開第2014/130812号及び国際公開第2010/065830号で配列番号1として記載されているもの等の、サーモアスクス・アウランチアクス等のサーモアスクス由来の;又は、国際公開第2005/074647号で配列番号8として、若しくは、国際公開第2014/130812号及び国際公開第2008/148131号及び国際公開第2011/035027号で配列番号4として記載されているもの等の、チエラビア・テレストリス等のチエラビア由来の;又は、国際公開第2010/138754号で配列番号2として、若しくは、国際公開第2014/130812号で配列番号3として記載されているもの等の、アスペルギルス・フミガーツス等のアスペルギルス由来の;又は、国際公開第2011/041397号で配列番号2、若しくは、国際公開第2014/130812号で配列番号2として開示されているもの等の、ペニシリウム・エメルソニイ等のペニシリウム由来の、溶解性多糖モノオキシゲナーゼを含む。他の好適な溶解性多糖モノオキシゲナーゼとしては、トリコデルマ・リーゼイ(国際公開第2007/089290号を参照されたい)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(国際公開第2009/085935号、国際公開第2009/085859号、国際公開第2009/085864号、国際公開第2009/085868号を参照されたい)、ペニシリウム・ピノフィルム(国際公開第2011/005867号を参照されたい)、サーモアスクスsp.(国際公開第2011/039319号を参照されたい)、及び、サーモアスクス・クルスタセオウス(Thermoascus crustaceous)(国際公開第2011/041504を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。酵素組成物に含むことができる他のセルロース分解酵素は、幾つか例を挙げると、国際公開第98/13465号、国際公開第98/015619号、国際公開第98/015633号、国際公開第99/06574号、国際公開第99/10481号、国際公開第99/025847号、国際公開第99/031255号、国際公開第2002/101078号、国際公開第2003/027306号、国際公開第2003/052054号、国際公開第2003/052055号、国際公開第2003/052056号、国際公開第2003/052057号、国際公開第2003/052118号、国際公開第2004/016760号、国際公開第2004/043980号、国際公開第2004/048592号、国際公開第2005/001065号、国際公開第2005/028636号、国際公開第2005/093050号、国際公開第2005/093073号、国際公開第2006/074005号、国際公開第2006/117432号、国際公開第2007/071818号、国際公開第2007/071820号、国際公開第2008/008070号、特許文献1、米国特許第5,457,046号、米国特許第5,648,263号、及び米国特許第5,686,593号に記載されている。好ましい実施形態においては、溶解性多糖モノオキシゲナーゼは、ラサムソニア、例えば、ラサムソニア・エメルソニイに由来する(国際公開第2012/000892号を参照されたい)。
【0087】
一実施形態においては、酵素組成物は、国際公開第2014/130812号での配列番号7におけるもの等の、アスペルギルス・フミガーツス等のアスペルギルス由来の、又は、トリコデルマ・リーゼイ等のトリコデルマ由来の、タラロミセス・レイセタヌス等のタラロミセス由来の、又は、チエラビア・テレストリス由来のセロビオヒドロラーゼII CEL6Aといった、チエラビア・テレストリス等のチエラビア由来の、セロビオヒドロラーゼIIを含む。好ましい実施形態においては、酵素組成物は、ラサムソニア・エメルソニイ等のラサムソニア由来のセロビオヒドロラーゼIIを含む(国際公開第2011/098580号を参照されたい)。
【0088】
酵素組成物は、好ましくは、少なくとも2種の活性を含むものの、通常、組成物は、3種以上の活性、例えば、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、又は更にそれ以上の活性を含む。酵素組成物は、活性クラス1つ当たりで、2種以上の酵素活性を含み得る。酵素組成物は、セルラーゼ活性、及び/又は、ヘミセルラーゼ活性、及び/又は、ペクチナーゼ活性のうちの1種を含み得る。
【0089】
一実施形態においては、酵素組成物は、少なくとも2種のセルラーゼを含む。本明細書で用いる場合、セルラーゼは、セルロースを分解又は改変することができる任意のポリペプチドである。少なくとも2種のセルラーゼは、同一又は異なる活性を含有することができる。酵素組成物は、セルラーゼ以外の少なくとも1種の酵素、例えば、ヘミセルラーゼ又はペクチナーゼを更に含み得る。本明細書で用いる場合、ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースを分解又は改変することができる任意のポリペプチドである。本明細書で用いる場合、ペクチナーゼは、ペクチンを分解又は改変することができる任意のポリペプチドである。少なくとも1種の他の酵素は、補助的な酵素活性、すなわち、リグノセルロース分解を、直接的、又は間接的のいずれかでもたらす追加の活性を有してもよい。このような補助活性の例は、本明細書で言及している。
【0090】
一実施形態においては、本明細書に記載する酵素組成物は、1、2、3、4クラス以上のセルラーゼ、例えば、エンドグルカナーゼ、溶解性多糖モノオキシゲナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、及び、β-グルコシダーゼのうちの1つ、2つ、3つ、若しくは4つ、又は全てを含む。
【0091】
一実施形態においては、本明細書に記載するプロセスで用いる酵素組成物は、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、溶解性多糖モノオキシゲナーゼ、セロビオヒドロラーゼII、β-グルコシダーゼ、β-キシロシダーゼ、及びエンドキシラナーゼを含む。
【0092】
一実施形態においては、酵素組成物は、以下で言及する酵素のうちの1つ以上も含む。
【0093】
本明細書で用いる場合、β-(1,3)(1,4)-グルカナーゼ(EC 3.2.1.73)は、1,3-及び1,4-結合を含有するβ-D-グルカンにおいて、1,4-β-D-グルコシド結合の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。このようなポリペプチドは、リケニン及び穀物β-D-グルカンでは機能することができるが、1,3-又は1,4-結合のみを含有するβ-D-グルカンでは機能することができない。この酵素は、リケニナーゼ、1,3-1,4-β-D-グルカン4-グルカノヒドロラーゼ、β-グルカナーゼ、エンド-β-1,3-1,4-グルカナーゼ、リケナーゼ、又は混合連結β-グルカナーゼと称することもできる。この種の酵素の代替物は、EC 3.2.1.6であり、これは、エンド-1,3(4)-β-グルカナーゼと記載される。還元基が加水分解される結合に関与するグルコース残基が、それ自体C-3において置換される場合に、この種の酵素は、β-D-グルカンにおける1,3-又は1,4-結合を加水分解する。代替の名称としては、エンド-1,3-β-グルカナーゼ、ラミナリナーゼ、1,3-(1,3;1,4)-β-D-グルカン3(4)グルカノヒドロラーゼが挙げられる。基質としては、ラミナリン、リケニン、及び、穀物β-D-グルカンが挙げられる。
【0094】
本明細書で用いる場合、α-L-アラビノフラノシダーゼ(EC 3.2.1.55)は、α-L-アラビノフラノシド、(1,2)及び/又は(1,3)-及び/又は(1,5)-結合を含有するα-L-アラビナン、アラビノキシラン、並びにアラビノガラクタンで機能することができる任意のポリペプチドである。この酵素は、α-N-アラビノフラノシダーゼ、アラビノフラノシダーゼ、又はアラビノシダーゼと称することもできる。酵素組成物に含むことができるアラビノフラノシダーゼの例としては、アスペルギルス・ニガー、フミコーラ・インソレンスDSM 1800(国際公開第2006/114094号及び国際公開第2009/073383号を参照されたい)、並びに、M.ギガンテウス(M. giganteus)(国際公開第2006/114094号を参照されたい)に由来するアラビノフラノシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で用いる場合、α-D-グルクロニダーゼ(EC 3.2.1.139)は、以下の形態の反応を触媒可能な任意のポリペプチドである:α-D-グルクロノシド+H(2)O=アルコール+D-グルクロネート。この酵素は、α-グルクロニダーゼ、又は、α-グルコシドゥロナーゼと称することもできる。これらの酵素は、キシランで置換基として存在することもできる4-O-メチル化グルクロン酸も加水分解することができる。代替物は、EC 3.2.1.131:キシランα-1,2-グルクロノシダーゼであり、これは、α-1,2-(4-O-メチル)グルクロノシル結合の加水分解を触媒する。酵素組成物に含むことができるα-グルクロニダーゼの例としては、アスペルギルス・クラヴァツス、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・テレウス、フミコーラ・インソレンス(国際公開第2010/014706号を参照されたい)、ペニシリウム・アウランチオグリセウム(Penicillium aurantiogriseum)(国際公開第2009/068565号を参照されたい)、及び、トリコデルマ・リーゼイ由来の、α-グルクロニダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本明細書で用いる場合、アセチルキシランエステラーゼ(EC 3.1.1.72)は、キシラン及びキシロ-オリゴ糖の脱アセチル化を触媒可能な任意のポリペプチドである。このようなポリペプチドは、通常、トリアセチルグリセロールではなく、高分子キシラン、アセチル化キシロース、アセチル化グルコース、α-ナフチルアセテート、又は、p-ニトロフェニルアセテート由来のアセチル基の加水分解を触媒することができる。このようなポリペプチドは通常、アセチル化マンナン又はペクチンでは機能しない。酵素組成物に含むことができるアセチルキシランエステラーゼの例としては、アスペルギルス・アクレアツス(国際公開第2010/108918号を参照されたい)、ケトミウム・グロボーサム(Chaetomium globosum)、ケトミウム・グラシル(Chaetomium gracile)、フミコーラ・インソレンスDSM 1800(国際公開第2009/073709号を参照されたい)、ヒポクレア・ジェコリーナ(Hypocrea jecorina)(国際公開第2005/001036号を参照されたい)、マイセリオフテラ・サーモフィラ(Myceliophtera thermophila)(国際公開第2010/014880号を参照されたい)、ニューロスポラ・クラッサ、ファエオスファエリア・ノドルム(Phaeosphaeria nodorum)、及び、チエラビア・テレストリスNRRL 8126(国際公開第2009/042846号を参照されたい)由来のアセチルキシランエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態においては、酵素組成物は、ラサムソニア・エメルソニイ等のラサムソニア由来のアセチルキシランエステラーゼを含む(国際公開第2010/000888号を参照されたい)。
【0097】
本明細書で用いる場合、フェルロイルエステラーゼ(EC 3.1.1.73)は、フェルロイル-糖類+HO=フェルレート+糖類の形態の反応を触媒可能な任意のポリペプチドである。糖類は、例えば、オリゴ糖又は多糖であり得る。これは、通常、「天然」基質中においてアラビノースであるエステル化糖からの4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナモイル(フェルロイル)基の加水分解を通常触媒し得る。酢酸p-ニトロフェノール及びフェルラ酸メチルは通常、不十分な基質である。この酵素はまた、シンナモイルエステルヒドロラーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、又は、ヒドロキシシンナモイルエステラーゼと称することもできる。この酵素はまた、キシラナーゼ及びペクチナーゼが、植物細胞壁のヘミセルロース及びペクチンを破壊することを補助することができるため、ヘミセルラーゼアクセサリー酵素と称することもできる。酵素組成物に含むことができるフェルロイルエステラーゼ(フェルラ酸エステラーゼ)の例としては、フミコーラ・インソレンスDSM 1800(国際公開第2009/076122号を参照されたい)、ネオサルトリャ・フィッシェリ(Neosartorya fischeri)、ニューロスポラ・クラッサ、ペニシリウム・アウランチオグリセウム(国際公開第2009/127729号を参照されたい)、並びに、チエラビア・テレストリス(国際公開第2010/053838号及び国際公開第2010/065448号を参照されたい)由来のフェルロイルエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本明細書で用いる場合、クマロイルエステラーゼ(EC 3.1.1.73)は、クマロイル-糖類+H(2)O=クマレート+糖類の形態の反応を触媒可能な任意のポリペプチドである。糖類は、例えば、オリゴ糖又は多糖であり得る。この酵素はまた、トランス-4-クマロイルエステラーゼ、トランス-p-クマロイルエステラーゼ、p-クマロイルエステラーゼ、又は、p-クマル酸エステラーゼと称することもできる。この酵素は、EC 3.1.1.73の範囲内でもあるため、フェルロイルエステラーゼと称することもできる。
【0099】
本明細書で用いる場合、α-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22)は、ガラクトースオリゴ糖、ガラクトマンナン、ガラクタン、及びアラビノガラクタンを含む、α-D-ガラクトシド中における末端非還元α-D-ガラクトース残基の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。このようなポリペプチドは、α-D-フコシドを加水分解することも可能である。この酵素は、メリビアーゼと称することもできる。
【0100】
本明細書で用いる場合、β-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.23)は、β-D-ガラクトシドにおける末端非還元β-D-ガラクトース残基の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。このようなポリペプチドは、α-L-アラビノシドを加水分解することも可能である。この酵素は、エキソ-(1→4)-β-D-ガラクタナーゼ又はラクターゼと称することもできる。
【0101】
本明細書で用いる場合、β-マンナナーゼ(EC 3.2.1.78)は、マンナン、ガラクトマンナン、及び、グルコマンナンにおける1,4-β-D-マンノシド結合の無作為な加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、マンナンエンド-1,4-β-マンノシダーゼ、又は、エンド-1,4-マンナナーゼと称することもできる。
【0102】
本明細書で用いる場合、β-マンノシダーゼ(EC 3.2.1.25)は、β-D-マンノシドにおける末端非還元β-D-マンノース残基の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、マンナナーゼ又はマンナーゼと称することもできる。
【0103】
本明細書で用いる場合、エンド-ポリガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.15)は、ペクテート及び他のガラクツロナンにおける1,4-α-ガラクトシド結合の無作為な加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、ポリガラクツロナーゼペクチンデポリメラーゼ、ペクチナーゼ、エンドポリガラクツロナーゼ、ペクトラーゼ、ペクチンヒドロラーゼ、ペクチンポリガラクツロナーゼ、ポリ-α-1,4-ガラクツロニドグリカノヒドロラーゼ、エンドガラクツロナーゼ;エンド-D-ガラクツロナーゼ、又は、ポリ(1,4-α-D-ガラクツロニド)グリカノヒドロラーゼと称することもできる。
【0104】
本明細書で用いる場合、ペクチンメチルエステラーゼ(EC 3.1.1.11)は、ペクチン+nHO=nメタノール+ペクテートの反応を触媒可能な任意の酵素である。この酵素は、ペクチンエステラーゼ、ペクチンデメトキシラーゼ、ペクチンメトキシラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクターゼ、ペクチノエステラーゼ、又は、ペクチンペクチルヒドロラーゼとしても知られている場合がある。
【0105】
本明細書で用いる場合、エンド-ガラクタナーゼ(EC 3.2.1.89)は、アラビノガラクタンにおける1,4-β-D-ガラクトシド結合のエンド加水分解を触媒可能な任意の酵素である。この酵素は、アラビノガラクタンエンド-1,4-β-ガラクトシダーゼ、エンド-1,4-β-ガラクタナーゼ、ガラクタナーゼ、アラビノガラクタナーゼ、又は、アラビノガラクタン4-β-D-ガラクタノヒドロラーゼとしても知られている場合がある。
【0106】
本明細書で用いる場合、ペクチンアセチルエステラーゼは、本明細書では、ペクチンのGalUA残基のヒドロキシル基において、アセチル基の脱アセチル化を触媒するアセチルエステラーゼ活性を有する任意の酵素と定義される。
【0107】
本明細書で用いる場合、エンド-ペクチンリアーゼ(EC 4.2.2.10)は、(1→4)-α-D-ガラクツロナンメチルエステルの脱離切断を触媒し、非還元末端に4-デオキシ-6-O-メチル-α-ガラクト-4-エヌロノシル基を有するオリゴ糖をもたらすことが可能な任意の酵素である。この酵素は、ペクチンリアーゼ、ペクチントランス-エリミナーゼ;エンド-ペクチンリアーゼ、ポリメチルガラクツロントランスエリミナーゼ、ペクチンメチルトランスエリミナーゼ、ペクトリアーゼ、PL、PNL、若しくはPMGL、又は、(1→4)-6-O-メチル-α-D-ガラクツロナンリアーゼとしても知られている場合がある。
【0108】
本明細書で用いる場合、ペクチン酸リアーゼ(EC 4.2.2.2)は、(1→4)-α-D-ガラクツロナンの脱離切断を触媒し、非還元末端に4-デオキシ-α-ガラクト-4-エヌロノシル基を有するオリゴ糖をもたらすことが可能な任意の酵素である。この酵素は、ポリガラクツロントランスエリミナーゼ、ペクチン酸トランスエリミナーゼ、ポリガラクツロネートリアーゼ、エンドペクチンメチルトランスエリミナーゼ、ペクテートトランスエリミナーゼ、エンドガラクツロネートトランスエリミナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンリアーゼ、α-1,4-D-エンドポリガラクツロン酸リアーゼ、PGAリアーゼ、PPアーゼ-N、エンド-α-1,4-ポリガラクツロン酸リアーゼ、ポリガラクツロン酸リアーゼ、ペクチントランス-エリミナーゼ、ポリガラクツロン酸トランス-エリミナーゼ、又は、(1→4)-α-ガラクツロナンリアーゼとしても知られている場合がある。
【0109】
本明細書で用いる場合、α-ラムノシダーゼ(EC 3.2.1.40)は、α-L-ラムノシド、又は代替的にラムノガラクツロナンにおける末端非還元α-L-ラムノース残基の加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、α-L-ラムノシダーゼT、α-L-ラムノシダーゼN、又は、α-L-ラムノシドラムノヒドロラーゼとしても知られている場合がある。
【0110】
本明細書で用いる場合、エキソ-ガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.82)は、非還元末端からペクチン酸を加水分解し、ジガラクツロネートを放出することが可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、エキソ-ポリ-α-ガラクツロノシダーゼ、エキソポリガラクツロノシダーゼ、又は、エキソポリガラクツラノシダーゼとしても知られている場合がある。
【0111】
本明細書で用いる場合、エキソ-ガラクツロナーゼ(EC 3.2.1.67)は、(1,4-α-D-ガラクツロニド)+HO=(1,4-α-D-ガラクツロニド)n-1+D-ガラクツロネートを触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、ガラクツラン1,4-α-ガラクツロニダーゼ、エキソポリガラクツロナーゼ、ポリ(ガラクツロネート)ヒドロラーゼ、エキソ-D-ガラクツロナーゼ、エキソ-D-ガラクツロナナーゼ、エキソポリ-D-ガラクツロナーゼ、又は、ポリ(1,4-α-D-ガラクツロニド)ガラクツロノヒドロラーゼとしても知られている場合がある。
【0112】
本明細書で用いる場合、エキソポリガラクツロネートリアーゼ(EC 4.2.2.9)は、ペクテート、すなわち、脱エステル化されたペクチンの還元末端から、4-(4-デオキシ-α-D-ガラクト-4-エヌロノシル)-D-ガラクツロネートの脱離切断を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、ペクテート二糖-リアーゼ、ペクテートエキソ-リアーゼ、エキソペクチン酸トランスエリミナーゼ、エキソペクテートリアーゼ、エキソポリガラクツロン酸-トランス-エリミナーゼ、PATE、エキソ-PATE、エキソ-PGL、又は、(1→4)-α-D-ガラクツロナン還元末端-二糖リアーゼとして知られている場合がある。
【0113】
本明細書で用いる場合、ラムノガラクツロナンヒドロラーゼは、二糖[(1,2-α-L-ラムノイル-(1,4)-α-ガラクトシルウロン酸]からなる、厳密に交互のラムノガラクツロナン構造において、エンド様式で、ガラクトシルウロン酸とラムノピラノシルとの結合を加水分解可能な任意のポリペプチドである。
【0114】
本明細書で用いる場合、ラムノガラクツロナンリアーゼは、β-脱離により、ラムノガラクツロナンにおいて、エンド様式で、α-L-Rhap-(1→4)-α-D-GalpA結合を切断可能な任意のポリペプチドである、任意のポリペプチドである。
【0115】
本明細書で用いる場合、ラムノガラクツロナンアセチルエステラーゼは、ラムノガラクツロナンにおいて、交互のラムノース及びガラクツロン酸残基の骨格の脱アセチル化を触媒する任意のポリペプチドである。
【0116】
本明細書で用いる場合、ラムノガラクツロナンガラクツロノヒドロラーゼは、エキソ様式で、厳密に交互のラムノガラクツロナン構造の非還元末端からガラクツロン酸を加水分解可能な任意のポリペプチドである。
【0117】
本明細書で用いる場合、キシロガラクツロナーゼは、エンド様式でβ-キシロース置換ガラクツロン酸骨格を切断することによりキシロガラクツロナンに作用する任意のポリペプチドである。この酵素は、キシロガラクツロナンヒドロラーゼとしても知られている場合がある。
【0118】
本明細書で用いる場合、α-L-アラビノフラノシダーゼ(EC 3.2.1.55)は、α-L-アラビノフラノシド、(1,2)及び/又は(1,3)-及び/又は(1,5)-結合を含有するα-L-アラビナン、アラビノキシラン、並びにアラビノガラクタンに作用可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、α-N-アラビノフラノシダーゼ、アラビノフラノシダーゼ、又はアラビノシダーゼと称することもできる。
【0119】
本明細書で用いる場合、エンド-アラビナナーゼ(EC 3.2.1.99)は、1,5-アラビナンにおける1,5-α-アラビノフラノシド結合のエンド加水分解を触媒可能な任意のポリペプチドである。この酵素は、エンド-アラビナーゼ、アラビナンエンド-1,5-α-L-アラビノシダーゼ、エンド-1,5-α-L-アラビナナーゼ、エンド-α-1,5-アラバナーゼ;エンド-アラバナーゼ又は1,5-α-L-アラビナン1,5-α-L-アラビナノヒドロラーゼとしても知られている場合がある。
【0120】
「プロテアーゼ」は、ペプチド結合を加水分解する酵素(ペプチダーゼ)、加えて、ペプチドと、糖等の他の部分との結合を加水分解する酵素(グリコペプチダーゼ)を含む。多くのプロテアーゼは、EC 3.4の下で特徴付けられ、本明細書に記載するプロセスでの使用に好適である。プロテアーゼの幾つかの具体的な種類としては、ペプシン、パパインを含むシステインプロテアーゼ、並びにキモトリプシン、カルボキシペプチダーゼ、及びメタロエンドペプチダーゼを含むセリンプロテアーゼが挙げられる。
【0121】
「リパーゼ」は、ホスホグリセリド、リポタンパク質、ジアシルグリセロール等を含む、脂質、脂肪酸、及びアシルグリセリドを加水分解する酵素を含む。植物では、脂質は、水分喪失及び病原体への感染を制限する構成成分として用いられる。これらの脂質としては、脂肪酸由来のワックス、加えて、クチン及びスベリンが挙げられる。
【0122】
「リグニナーゼ」としては、リグニンポリマーの構造を加水分解、又は破壊することができる酵素が挙げられる。リグニンを破壊することができる酵素としては、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼ及びフェルロイルエステラーゼ、並びに、リグニンポリマーを解重合、又はそれ以外の方法で破壊することが知られている、当該技術分野で記載されている他の酵素が挙げられる。ヘミセルロース糖(特に、アラビノース)と、リグニンとの間で形成される結合を加水分解可能な酵素も挙げられる。リグニナーゼとしては、限定されるものではないが、以下の酵素群が挙げられる:リグニンペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.14)、マンガンペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.13)、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)、及び、フェルロイルエステラーゼ(EC 3.1.1.73)。
【0123】
「ヘキソシルトランスフェラーゼ」(2.4.1-)としては、トランスフェラーゼ反応を触媒可能であるが、例えば、セルロース及び/又はセルロース分解生成物の加水分解反応も触媒することができる酵素が挙げられる。使用可能なヘキソシルトランスフェラーゼの例は、β-グルカノシルトランスフェラーゼである。このような酵素は、(1,3)(1,4)グルカン、及び/又はセルロース、及び/又は、セルロース分解生成物の分解を触媒することができる場合がある。
【0124】
「グルクロニダーゼ」としては、グルクロノシド、例えば、β-グルクロノシドの加水分解を触媒してアルコールを生じる酵素が挙げられる。多くのグルクロニダーゼが特性決定されており、例えば、β-グルクロニダーゼ(EC 3.2.1.31)、ヒアルロノ-グルクロニダーゼ(EC 3.2.1.36)、グルクロノシル-ジスルホグルコサミングルクロニダーゼ(3.2.1.56)、グリチルリチネートβ-グルクロニダーゼ(3.2.1.128)、又は、α-D-グルクロニダーゼ(EC 3.2.1.139)を用いるのが好適であり得る。
【0125】
エクスパンシンは、植物細胞の増殖中に細胞壁構造を緩和することに関与する。エクスパンシンは、加水分解活性を有さずに、セルロースと他の細胞壁多糖との水素結合を破壊することが提示されている。このようにして、エクスパンシンは、セルロース繊維のスライド、及び、細胞壁の拡張を可能にすると考えられている。エクスパンシン様タンパク質であるスウォレニンは、N末端の炭水化物結合モジュールファミリー1ドメイン(CBD)、及び、C末端のエクスパンシン様ドメインを含有する。本明細書に記載するように、エクスパンシン様タンパク質、又は、スウォレニン様タンパク質は、このようなドメインの一方又は両方を含むことができる、及び/又は、任意選択的に、検出可能な量の還元糖を生産することなく、細胞壁の構造を破壊する(例えば、セルロース構造を破壊する)ことができる。
【0126】
セルロース誘導タンパク質、例えば、cip1若しくはcip2遺伝子、若しくは同様の遺伝子のポリペプチド生成物(Foreman et al., J. Biol. Chem. 278(34), 31988-31997, 2003を参照されたい)、セルロース/セルロソーム組み込みタンパク質、例えば、cipA若しくはcipC遺伝子のポリペプチド生成物、又は、スキャフォルディン若しくはスキャフォルディン様タンパク質。スキャフォルディン及びセルロース組み込みタンパク質は、セルロース分解性サブユニットを組織化して多酵素複合体にすることができる多機能組み込みサブユニットである。これは、2つの相補性クラスのドメイン、すなわち、スキャフォルディン上の接着ドメインと、各酵素ユニット上のドックリンドメインとの相互作用により達成される。スキャフォルディンサブユニットは、セルロソームの、その基質への付着を媒介する、セルロース結合モジュール(CBM)も有する。スキャフォルディン又はセルロース組み込みタンパク質は、このようなドメインの一方又は両方を含むことができる。
【0127】
カタラーゼ;「カタラーゼ」という用語は、2つの過酸化水素の、酸素と2つの水への変換を触媒する、過酸化水素:過酸化水素オキシドレダクターゼ(EC 1.11.1.6、又は、EC 1.11.1.21)を意味する。カタラーゼ活性は、以下の反応:2H→2HO+Oに基づいて、240nmにおける過酸化水素の分解をモニターすることにより求めることができる。反応は、10.3mMの基質(H)、及び、1ml当たりおよそ100単位の酵素を用いて、25℃においてpH7.0の、50mMのホスフェートにて実施する。吸光度を16秒~24秒以内に分光測定でモニターする。これは、0.45から0.4への吸光度の低下に対応するはずである。1カタラーゼ活性単位は、pH7.0及び25℃において、1分当たりに分解する1マイクロモルのHとして表すことができる。
【0128】
「アミラーゼ」という用語は、本明細書で用いる場合、α-アミラーゼ(EC 3.2.1.1)、β-アミラーゼ(EC 3.2.1.2)、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ(EC 3.2.1.3)、グルカン1,4-α-マルトテトラオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.60)、グルカン1,4-α-マルトヘキサオシダーゼ(EC 3.2.1.98)、グルカン1,4-α-マルトトリオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.116)、及び、グルカン1,4-α-マルトヒドロラーゼ(EC 3.2.1.133)等の、デンプンにおいて、アミロース及びアミロペクチンの両方において、α-1,4-グルコシド結合を加水分解する酵素、並びに、プルラナーゼ(EC 3.2.1.41)及び限界デキストリナーゼ(EC 3.2.1.142)等の、アミロペクチンの分岐点であるα-1,6-グルコシド結合を加水分解する酵素を意味する。
【0129】
本明細書で用いる場合、グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)は、α-1,4、及び、α-1,6グルコシド結合の加水分解を触媒し、デンプン、並びに、関連する多糖及びオリゴ糖の非還元末端からβ-D-グルコースを放出するエキソグルコヒドロラーゼである。これらは、アミログルコシダーゼ、グルカン1,4-α-グルコシダーゼ、又は、1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼとも呼ばれる。これらは、デンプン、又は、関連するオリゴ糖及び多糖分子の非還元末端からD-グルコースを放出することを触媒する。グルコアミラーゼの大部分は、様々な長さのO-グリコシル化リンカー領域により、デンプン結合ドメインに結合した触媒領域からなるマルチドメイン酵素である。本明細書で用いる場合、グルコアミラーゼは、α-グリコシダーゼ(EC 3.2.1.20)も含む。グルコアミラーゼは、GH15グルコアミラーゼ、GH31グルコアミラーゼ、GH97グルコアミラーゼ、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。本明細書に記載する酵素組成物は、グルコアミラーゼを含み得る。本明細書で用いるグルコアミラーゼは、構造ファミリーGH15、GH31、又はGH97に属する。グルコアミラーゼは、真菌グルコアミラーゼであり得る。グルコアミラーゼは、数例を挙げると、アスペルギルス、トリコデルマ、ラサムソニア、ペニシリウム、リゾプス(Rhizopus)、サーモミセスに由来するグルコアミラーゼであり得る。グルコアミラーゼはまた、1つ以上の変異、欠失、及び/又は、挿入を含むバリアント酵素等の改変グルコアミラーゼであり得る。
【0130】
酵素組成物は、上述した酵素のクラスのそれぞれのメンバー、或る酵素クラスの幾つかのメンバー、又は、これらの酵素クラスの任意の組み合わせで構成することができる。本明細書に記載する酵素組成物における異なる酵素は、異なる源から得ることができる。
【0131】
本明細書に記載する使用及びプロセスにおいて、上記の組成物の構成成分は、同時に(すなわち、それ自体単独の組成物として)、又は別個に、又は連続して提供することができる。
【0132】
一実施形態においては、酵素組成物中の酵素は、真菌、好ましくは糸状菌に由来する、又は、酵素は、真菌酵素、好ましくは糸状菌酵素を含む。一実施形態においては、(リグノ)セルロース分解酵素(すなわち、セルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼ)のコアセットは、ラサムソニア・エメルソニイに由来することができる。必要に応じて、酵素のセットを、他の源に由来する追加の酵素活性で補充することができる。このような追加の活性は、古典的な源に由来することができる、及び/又は、遺伝子組み換え生物から生み出すことができる。したがって、酵素組成物は、ラサムソニア以外の源に由来する、セルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼを含んでもよい。一実施形態においては、これらは、1種以上のラサムソニア酵素と共に用いることができる、又は、追加のラサムソニア酵素を存在させずに用いることができる。
【0133】
「糸状菌」としては、真菌門(Eumycota)及び卵菌門(Oomycota)(Hawksworth et al., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKにより定義される)の亜門の全ての糸状形態が挙げられる。糸状菌は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び、他の複合多糖で構成される菌糸壁を特徴とする。栄養成長は菌糸伸長により、炭素代謝は絶対好気性である。糸状菌株としては、アクレモニウム(Acremonium)、アガリクス(Agaricus)、アスペルギルス、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、ビューベリア(Beauvaria)、セファロスポリウム(Cephalosporium)、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)、ケトミウム・ペシロミセス(Chaetomium paecilomyces)、クリソスポリウム、クラビセプス(Claviceps)、コクリオボルス(Cochiobolus)、コプリヌス(Coprinus)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、シアツス(Cyathus)、エメリセラ(Emericella)、エンドチア(Endothia)、エンドチア・ムコール(Endothia mucor)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フザリウム(Fusarium)、ゲオスミチア(Geosmithia)、グリオクラジウム(Gilocladium)、フミコーラ、マグナポルテ(Magnaporthe)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ、ミロセシウム(Myrothecium)、ネオカリマスティクス(Neocallimastix)、ニューロスポラ、ペシロミセス、ペニシリウム、ピロミセス(Piromyces)、ファネロカエテ(Panerochaete)、プレウロツス(Pleurotus)、ポドスポラ(Podospora)、ピリキュラリア(Pyricularia)、ラサムソニア、リゾムコール、リゾプス、スキタリジウム(Scylatidium)、シゾフィラム(Schizophyllum)、スタゴノスポラ(Stagonospora)、タラロミセス、サーモアスクス、サーモミセス、チエラビア、トリポクラジウム(Tolypocladium)、トラメテス(Trametes)、トリコデルマ、及びトリコフィトン(Trichophyton)の株が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
糸状菌の幾つかの株は、American Type Culture Collection(ATCC)、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSM)、Centraalbureau Voor Schimmelcultures(CBS)、及び、Agricultural Research Service Patent Culture Collection, Northern Regional Research Center(NRRL)等の、多数のカルチャーコレクションにおいて、公に容易にアクセスすることができる。このような株の例としては、アスペルギルス・ニガーCBS 513.88、アスペルギルス・オリゼATCC 20423、IFO 4177、ATCC 1011、ATCC 9576、ATCC14488-14491、ATCC 11601、ATCC12892、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)CBS 455.95、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum)ATCC 38065、ペニシリウム・クリソゲヌムP2、タラロミセス・エメルソニイCBS 393.64、アクレモニウム・クリソゲヌム(Acremonium chrysogenum)ATCC 36225又はATCC 48272、トリコデルマ・リーゼイATCC 26921又はATCC 56765又はATCC 26921、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)ATCC11906、クリソスポリウム・ラックノウェンスC1、Garg 27K、VKM F-3500-D、ATCC44006、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0135】
酵素(例えば、全発酵ブロスの形態の)は、好適な微生物、例えば、糸状菌を用いて、好適な基質を発酵することにより調製することができ、酵素は、微生物により生産される。微生物を改変し、酵素を改良する、又は、酵素を作製することができる。例えば、微生物を、古典的な株改良手順により、又は、組み換えDNA技術により変異させることができる。したがって、本明細書で言及する微生物は、それ自体、酵素を生産するために用いることができる、又は、該微生物を改変して、生産を増加させることができる、若しくは、改変酵素を生産することができる。改変酵素としては、異種酵素、例えば、セルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼ、ゆえに、元々、該微生物により生産されない酵素を挙げることができる。好ましくは、真菌、より好ましくは糸状菌を用いて、酵素を生産する。有利には、好熱性又は耐熱性微生物を用いる。任意選択的に、酵素生産微生物により、酵素の発現を誘導する基質を用いる。
【0136】
一実施形態においては、酵素組成物は、全発酵ブロスである。一実施形態においては、酵素組成物は、真菌、好ましくは糸状菌、好ましくはラサムソニア属の全発酵ブロスである。全発酵ブロスは、非組み換え、及び/又は、組み換え糸状菌の発酵から調製することができる。一実施形態においては、糸状菌は、糸状菌に対して相同又は異種であり得る1種以上の遺伝子を含む組み換え糸状菌である。一実施形態においては、糸状菌は、セルロース基質を分解することができる酵素をコードする、糸状菌に対して相同又は異種であり得る1種以上の遺伝子を含む組み換え糸状菌である。全発酵ブロスは、本明細書に記載するポリペプチドのいずれか、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0137】
好ましくは、酵素組成物は、細胞が殺傷された、すなわち、生存していない、全発酵ブロスである。一実施形態においては、全発酵ブロスは、ポリペプチド、有機酸(複数の場合もある)、殺傷された細胞及び/又は細胞デブリ、並びに、培養培地を含む。
【0138】
一般に、糸状菌は、セルロース基質を加水分解可能な酵素を生産するのに好適な細胞培養培地で培養される。培養は、当該技術分野において既知の手順を用いて、炭素及び窒素源と無機塩とを含む好適な栄養培地で行われる。好適な培養培地、温度範囲、並びに、増殖、及び、セルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼ生産に好適な他の条件は、当該技術分野において既知である。全発酵ブロスは、糸状菌を静止期まで増殖させ、1種以上のセルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼを発現させるのに十分な期間、制限炭素条件下で糸状菌を維持することにより調製することができる。セルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼ等の酵素が、糸状菌により発酵培地に分泌されたら、全発酵ブロスを用いることができる。全発酵ブロスは、糸状菌を含み得る。一実施形態においては、全発酵ブロスは、発酵終了時に誘導される発酵物質の分画されていない内容物を含む。通常、全発酵ブロスは、糸状菌が増殖して飽和し、炭素制限条件下でインキュベートしてタンパク質合成(特に、セルラーゼ、及び/又は、ヘミセルラーゼ、及び/又は、ペクチナーゼの発現)が可能となった後に存在する、消費された培養培地及び細胞デブリを含む。幾つかの実施形態においては、全発酵ブロスは、消費された細胞培養培地、細胞外酵素、及び、糸状菌を含む。全発酵ブロスに存在する糸状菌細胞を、当該技術分野において既知の方法を用いて殺傷し、細胞殺傷全発酵ブロスを作製することができる。例えば、有機酸を加えることで、細胞の殺傷がもたらされる。必要に応じて、細胞を溶解、及び/又は、透過処理することもできる。一実施形態においては、全発酵ブロスは、全発酵ブロスに含有される糸状菌細胞が殺傷される細胞殺傷全発酵ブロスである。換言すれば、全発酵ブロスは、生存している細胞よりも多くの生存していない細胞を含む、好ましくは、生存していない細胞のみを含む。幾つかの実施形態においては、細胞を、化学的及び/又はpH処理により、糸状菌を溶解させて殺傷することで、糸状菌の細胞殺傷全発酵ブロスが生成される。幾つかの実施形態においては、化学的及び/又はpH処理により糸状菌を溶解し、細胞殺傷発酵混合物のpHを好適なpHに調節することにより、細胞が殺傷される。一実施形態においては、全発酵ブロスは、有機酸と混合される。
【0139】
「全発酵ブロス」という用語は、本明細書で用いる場合、回収及び/又は精製を受けない、又は最小限しか受けない細胞発酵により作製される調製物を指す。例えば、微生物培養物が増殖して飽和し、炭素制限条件下でインキュベートされてタンパク質合成(例えば、宿主細胞による酵素の発現)、及び、細胞培養培地への分泌が可能となると、全発酵ブロスが作製される。通常、全発酵ブロスは分画されず、消費された細胞培養培地と、細胞外酵素と、微生物の、好ましくは、生存していない細胞とを含む。
【0140】
一実施形態においては、全発酵ブロスは分画することができ、分画内容物の1つ以上を用いることができる。例えば、殺傷細胞及び/又は細胞デブリを全発酵ブロスから取り除き、これらの構成成分を含有しない酵素組成物を得ることができる。
【0141】
全発酵ブロスは、防腐剤及び/又は抗菌剤を更に含み得る。このような防腐剤及び/又は抗菌剤は、当該技術分野において既知である。一実施形態においては、細胞を殺傷するために用いられる有機酸は、防腐剤及び/又は抗菌剤の機能も有し得る。
【0142】
本明細書に記載する全発酵ブロスは通常、液体であるが、殺傷細胞、細胞デブリ、培養培地構成成分、及び/又は、不溶性酵素(複数の場合もある)等の不溶性構成成分を含有することができる。幾つかの実施形態においては、不溶性構成成分を取り除き、浄化された全発酵ブロスを得ることができる。
【0143】
一実施形態においては、全発酵ブロスに、内因的には発現しない、又は、糸状菌により比較的低レベルで発現する1種以上の酵素活性を補充し、例えば、セルロース基質のグルコース又はキシロース等の発酵可能な糖への分解を向上させることができる。補充酵素(複数の場合もある)は、全発酵ブロスへの補充物として加えることができる、すなわち、これらは、全発酵ブロスにスパイクされる。追加の酵素は、全発酵ブロスの形態で補充することができる、又は、精製した、若しくは最小限回収された及び/又は精製された酵素として補充することができる。
【0144】
一実施形態においては、全発酵ブロスに、少なくとも他の全発酵ブロスを補充することができる。他の全発酵ブロスは、同じ種類の真菌、又は、他の種類の真菌に由来することができる、例えば、第1の全発酵ブロスはラサムソニアに由来することができる一方で、第2の全発酵ブロスは、ラサムソニア又はアスペルギルスに由来することができる。
【0145】
一実施形態においては、全発酵ブロスは、1種以上の酵素を過剰発現してセルロース基質の分解を改善する組み換え糸状菌の全発酵ブロスである。代替的には、全発酵ブロスは、非組み換え糸状菌の全発酵ブロスと、1種以上の酵素を過剰発現してセルロース基質の分解を改善する組み換え糸状菌の全発酵ブロスとの混合物である。一実施形態においては、全発酵ブロスは、β-グルコシダーゼを過剰発現する糸状菌の全発酵ブロスである。代替的には、全発酵ブロスは、非組み換え糸状菌の全発酵ブロスと、β-グルコシダーゼを過剰発現する組み換え糸状菌の全発酵ブロスとの混合物である。
【0146】
一実施形態においては、本明細書に記載する酵素組成物は、2.0~5.5のpHを有する。好ましくは、酵素組成物は、2.5~5.0のpHを有する。より好ましくは、酵素組成物は、3.0~4.5のpHを有する。したがって、酵素組成物中の酵素は、低pHで機能することができる。
【0147】
一実施形態においては、本明細書に記載する酵素組成物を調製するプロセスで用いる酵素生産反応器(複数の場合もある)は、少なくとも1mの容積を有する。好ましくは、酵素生産反応器は、少なくとも1m、少なくとも2m、少なくとも3m、少なくとも4m、少なくとも5m、少なくとも6m、少なくとも7m、少なくとも8m、少なくとも9m、少なくとも10m、少なくとも15m、少なくとも20m、少なくとも25m、少なくとも30m、少なくとも35m、少なくとも40m、少なくとも45m、少なくとも50m、少なくとも60m、少なくとも70m、少なくとも75m、少なくとも80m、少なくとも90mの容積を有する。一般に、酵素生産反応器(複数の場合もある)は、300mよりも小さい。
【0148】
本明細書に記載する酵素組成物を調製するプロセスにおいて、微生物細胞、例えば、糸状菌細胞の集団は、液体又は固体培地の中で、増殖に好適な条件下で培養される。一実施形態においては、微生物細胞は、流加培養、回分培養、連続培養、又はこれらの任意の組み合わせで培養される。好ましくは、糸状菌は、流加培養で培養される。当業者は、培養の様々な様式、及びその条件を十分認識している。一実施形態においては、培養は、好気性条件下で行われる。当業者は、例えば、撹拌タンク及び気泡塔等の、好気性培養のための発酵槽設計を十分認識している。
【実施例
【0149】
実施例1
セルロース材料の酵素的加水分解中のキシロン酸生産
酸前処理したトウモロコシ茎葉を15%(w/w)乾物の濃度で用いて、酵素的加水分解を行った。酸前処理したトウモロコシ茎葉は、(不溶性キシラン、可溶性キシロオリゴマー、及びキシロースを含む)乾物で、13%(w/w)の全キシランを含有した。前処理したトウモロコシ茎葉を水で希釈し、pHを、10%(w/w)のNHOH溶液で、pH4.5に調整した。酵素的加水分解は、1.5リットルの反応器を用いて、1kgスケールで行った。pHを4.5に制御し、酵素的加水分解中の温度は、62℃に制御した。
【0150】
TEC-210を、国際公開第2011/000949号に記載する播種及び発酵手順に従い生産した。
【0151】
TEC210セルラーゼカクテル試料のタンパク質濃度を、ビウレット法を用いて測定した。ビウレット反応において、銅(II)イオンを銅(I)に還元し、アルカリ性溶液中でペプチド結合の窒素及び炭素と錯体を形成する。紫色は、タンパク質が存在することを示す。色の強さ、すなわち、546nmにおける吸収は、ランベルト-ベールの法則に従い、タンパク質濃度に正比例する。ペプチドも、このアッセイで反応するため、ペプチドは、試料について10kDの濾過を行い、この10kD濾液の結果を、「そのような」試料から差し引くことで除外する。
【0152】
ウシ血清アルブミン(BSA)希釈液(0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、及び15mg/ml)を、0.2g/LのTween80を含有する水を用いて作製し、検量線を作成した。TEC210セルラーゼカクテル試料を、水を用いて重量基準で、BSA検量線の結果の中に収まるように、適宜希釈し、14000×g超で5分間遠心分離した。希釈した各試料の上清を回収し、更に「試料-上清」と称した。次に、希釈した各試料の試料-上清500μLを、10kDのフィルターを含有する遠心分離反応管に移し、必要な限り、15℃~20℃で遠心分離し、少なくとも200μLの濾液を得て、更に「試料-上清-10kD濾液」と称した。
【0153】
試料-上清、試料-上清-10kD濾液、及びBSA希釈液の全てから、200μLを1.5mLの反応管に移し、これに800μLのBioQuant Biuret試薬を加え、完全に混合した。次に、混合物を全て、少なくとも30分間室温でインキュベートした。混合物の吸収は、空測定として使用した水試料により、546nmで測定した。BSAの検量線の範囲内で、546nmにおいて吸収値をもたらしたTEC-210セルラーゼカクテル試料の希釈液を用いて、BSA検量線により、試料の総タンパク質濃度を計算した。試料-上清-10kD濾液で測定したタンパク質濃度を、試料-上清で測定したタンパク質濃度から差し引き、TEC-210セルラーゼカクテル試料における最終のタンパク質濃度を得た。
【0154】
次に、セルラーゼ酵素カクテルTEC210を、2.5mg(タンパク質)/g乾物の用量で、前処理したトウモロコシ茎葉に加えた。反応器を全て、窒素雰囲気下で150rpmの撹拌機速度にてまず6時間操作し、粘稠な原材料を液化させた(反応器の上部空間に、窒素を100mL/分の速度で連続して流した)。6時間後、窒素流を空気流(100mL/分)で置き換え、加水分解を66時間続け、合計で72時間の加水分解時間とした。
【0155】
反応混合物中の酸素濃度は、撹拌機速度で制御した(これにより、反応器の上部空間から反応混合物中への酸素の導入に対する制御を行った)。新鮮な空気(20%~21%の酸素を含有する)を連続して、反応器の上部空間に供給し、上部空間に十分な酸素が存在するようにした。異なる反応器における撹拌機速度は、100rpm-120rpm-140rpm-170rpm-200rpmであった。これらの撹拌機速度値に対応する、酵素的加水分解中の推定酸素濃度は、100rpm(0.0002mol O/m~0.002mol O/m)-120rpm(0.002mol O/m~0.016mol O/m)-140rpm(0.016mol O/m~0.047mol O/m)-170rpm(0.047mol O/m~0.078mol O/m)-200rpm(0.078mol O/m~0.109mol O/m)であり、ここで、酸素濃度は測定するのではなく、以前の実験に基づいて推定した。
【0156】
対照実験は、できる限り多くの酸素を排除するように、窒素雰囲気下で、150rpmの撹拌機速度で実施した。
【0157】
時間試料を実験中に取り出し、グルコース及びキシロン酸の量を測定した。試料を直ちに、4000×gで8分間、遠心分離した。上清を0.20μmのナイロンフィルターで濾過し、濾液を、分析するまで4℃で保管した。試料のグルコース濃度を、NREL技術報告書NREL/TP-510-42623、2008年1月に従い、Aminex HPX-87Hカラムを装着したHPLCを用いて測定した。
【0158】
キシロン酸の定量は、(A)Milli-Q精製水、及び、(B)5mMのNaOH、(C)100mMのNaOHを移動相とする勾配溶離を用いて、IonPac AS11-HCカラム(2.0mm×250mm)(Thermo Fisher)を装着し、IonPac AG11-HCガードカラム(2mm×50mm)(Thermo Fisher)を装着したICS3000デュアルLCシステム(Thermo Fisher)により実施した。勾配は、Aを80%、及びBを20%で8分間から始めた後、10分間で、Aを85%、及びCを15%まで線形増加させ、10分間で、Aを70%、及びCを30%まで線形増加させた。続いて、勾配を1分以内に、開始条件に戻し、10分間平衡化させた。25μlの注入体積を用いて、流速を0.38ml/分で維持し、カラム温度を30℃に設定した。伝導率を抑制して検出を行い、tr=7.0分でキシロン酸が溶出した。
【0159】
キシロン酸濃度は、D-キシロン酸カルシウム塩(Santa Cruz Biotechnology)、及び外部キャリブレーションを用いて求めた。t=72時間で測定した濃度から、t=6時間で測定した濃度を差し引くことにより、通気中に生産されたキシロン酸の量を計算した。次いで、生産されたキシロン酸の量を、この量を生産するのにかかった時間、すなわち、66時間(72時間-6時間)で除し、これを、1時間当たりの加水分解産物1リットル当たりの生産されたキシロン酸のμmol数(μmol/L/h)で表すことにより、生産速度を計算した。次に、1時間で生産されたキシロン酸の量(μmol/kgキシラン)を、以下の通りに計算した:
キシロン酸(μmol/L/h)×(ペレット因子/密度)/キシラン(kg/kg加水分解産物)
式中、用いたペレット因子は0.947であり、密度は1.044kg/Lであり、キシランは、15%乾物の加水分解産物1kg当たり0.019kgであった。
【0160】
これらの結果を表1に示す。本結果は、1時間当たり、500μmol~1100μmolのキシロン酸/キシラン1kgが、酸素添加中に生産されるとき、高いグルコースの放出が得られることをはっきりと示す。
【0161】
【表1】
【国際調査報告】