(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】光起電モジュールからのエネルギー入力によって動作する自給型物理データセンサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/024 20210101AFI20240313BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20240313BHJP
H10K 39/12 20230101ALI20240313BHJP
H10K 30/82 20230101ALI20240313BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20240313BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20240313BHJP
H02S 40/30 20140101ALI20240313BHJP
G01D 11/24 20060101ALI20240313BHJP
H10K 30/30 20230101ALI20240313BHJP
【FI】
G01K1/024
G08C15/00 E
H10K39/12
H10K30/82
H10K30/86
H10K30/88
H02S40/30
G01D11/24 Z
H10K30/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547893
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 FR2022050250
(87)【国際公開番号】W WO2022171964
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521000518
【氏名又は名称】ドラキュラ テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン ドキル,サドク
(72)【発明者】
【氏名】クルション,ブリス
(72)【発明者】
【氏名】アルシュ,エノラ
【テーマコード(参考)】
2F056
2F073
5F251
【Fターム(参考)】
2F056AE01
2F056AE05
2F056AE07
2F073AA02
2F073AA19
2F073AA40
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2F073AB12
2F073BB01
2F073BB04
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DE02
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2F073DE13
2F073EE13
2F073FF01
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073FH09
2F073GG05
5F251AA11
5F251BA05
5F251BA15
5F251CB13
5F251EA03
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5F251EA13
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5F251GA03
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5F251JA02
5F251JA28
5F251XA01
5F251XA55
5F251XA56
(57)【要約】
本発明は、直列に相互接続された少なくとも2つの光起電セルを有する光起電モジュール(200)と、少なくとも温度データを収集及び送信するように構成された電子デバイス(100)であって、フレキシブルプリント回路を備える、電子デバイス(100)と、光起電モジュール(200)と電子デバイス(100)とを接続する電気コネクタ手段(120)と、を備える、物理データセンサに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理データセンサであって、
-直列に相互接続された少なくとも2つの光起電セルを備える光起電モジュール(200)と、
-少なくとも温度データを収集及び送信するように構成された電子デバイス(100)であって、前記電子デバイスは、フレキシブルプリント回路を備える、電子デバイス(100)と、
-前記光起電モジュール(200)と前記電子デバイス(100)とを接続する電気コネクタ手段(120)と、を備え、
前記光起電モジュール(200)が、前記電子デバイス(100)の少なくとも一部を含む要素の上方に少なくとも部分的に配設されており、
前記センサは、前記電子デバイス(100)が上方に配置された第1のプレート(310)と、光放射が前記光起電モジュール(200)の少なくとも一部によって受け取られるように光放射が通過することを可能にするように構成された第2のプレート(320)との2つの電気絶縁プレート(310、320)を更に備え、
前記センサが、5mm~10mmの厚さを有し、
前記光起電モジュール(200)が、
・ポリマー材料で作製された可撓性基板と、
・キャリア上に配設された少なくとも第1の光起電セル及び第2の光起電セルと、を含むことを特徴とし、前記2つの光起電セルの各々が、
i.カソードを構成し、かつ前記基板を覆うインジウム-スズ酸化物層と、
ii.酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第1の界面層であって、前記第1の界面層が、前記カソードを覆う、第1の界面層と、
iii.前記第1の界面層を覆う光起電活性層と、
iv.ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第2の界面層であって、前記第2の界面層が、アノードを構成し、かつ前記光起電活性層を覆い、前記第2の界面層が、連続しており、有機繊維構造及び100nm~400nmの平均厚さを有する、第2の界面層と、を含み、
前記第1の光起電セルの前記第2の界面層が、前記第2の光起電セルの前記インジウム-スズ酸化物層と接触している、センサ。
【請求項2】
前記センサがなければ、前記電子デバイス(100)が、前記温度データを時間の関数として記憶するように構成されている、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第2の界面層が、100Ω/□~600Ω/□のシート抵抗を有する、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記電子デバイス(100)が、加速度計を更に含み、前記電子デバイス(100)が、好ましくは、水分データを収集するように更に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記電子デバイス(100)が、電気通信プロトコルに従って、収集された前記データを外部要素に送信するように構成された電気通信要素を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記第2のプレート(320)が、開口部(322)を備え、前記光起電モジュール(200)によって少なくとも部分的に受け取られるように前記光放射が前記開口部(322)を通過する、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記第1のプレートは、光放射が通過することを可能にするように更に構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記基板が、透明である、請求項1~7のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理データセンサに関する。特に、本発明は、エネルギーに関して自給型であり、光起電モジュールによって供給されるエネルギーで動作するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている物理データセンサは、一般に、電力が供給される電池と関連付けられた基本的に低コストの温度指示計である。したがって、センサは、一般に、無視できない寸法、具体的には一般に3cmを超える厚さを有する三次元物体の形態、例えば、箱の形態である。
【0003】
しかしながら、現在の最新技術では、長寿命、すなわち、5年を超える寿命を有する物理センサは存在しない。実際、一般に、電池を交換又は修正するために、5年に1回未満でセンサを処理する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的のうちの1つは、現在知られているセンサの不十分さを改善することである。
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、
-直列に相互接続された少なくとも2つの光起電セルを含む光起電モジュールと、
-少なくとも温度データを収集及び送信するように構成された電子デバイスであって、この電子デバイスは、フレキシブルプリント回路を含む、電子デバイスと、
-光起電モジュールと電子デバイスとを接続する電気コネクタ手段と、
光起電モジュールが、電子デバイスの少なくとも一部を含む要素の上方に少なくとも部分的に配設されており、
センサは、電子デバイスが上方に配置された第1のプレートと、光放射を、光放射が当該光起電モジュールの少なくとも一部によって受け取られるように通過することを可能にするように構成された第2のプレートと、という2つの電気絶縁プレート、を更に備え、
センサが、5mm~10mmの厚さを有し、
光起電モジュールが、
・ポリマー材料で作製された可撓性基板と、
・キャリア上に配設された少なくとも第1の光起電セル及び第2の光起電セルと、を含むことを特徴とし、2つの光起電セルの各々が、
i.カソードを構成し、支持体を覆うインジウム-スズ酸化物層と、
ii.酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第1の界面層であって、この第1の界面層が、カソードを覆う、第1の界面層と、
iii.第1の界面層を覆う光起電活性層と、
iv.ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第2の界面層であって、この第2の界面層が、アノードを構成し、かつ光起電活性層を覆い、この第2の界面層が、連続しており、有機繊維構造及び100nm~400nmの平均厚さを有する、第2の界面層と、を含み、
第1の光起電セルの第2の界面層が、第2の光起電セルのインジウム-スズ酸化物層と接触している、物理データセンサに関する。
【0006】
本出願の目的のために、フレキシブルプリント回路は、2つの絶縁プレートの間に積層されたフレキシブル回路を意味すると理解される。このようなプリント回路の存在は、セ
ンサを様々な製品に組み込むことを容易にし、その可能性を高めるように、センサが組み込まれ得る環境にセンサを適合させることを可能にする。
【0007】
この第1の態様によれば、センサは、ごくわずかなエネルギーしか消費せず、センサが曝される光エネルギーを、物理的データを収集するのに必要な電気エネルギーに変換するように構成されている。電子デバイスが動作するのに必要な電気エネルギーは、光放射を受け取ることに続いて、電子デバイスの動作を補正するのに十分な光電流を生成する光起電モジュールによって生成される。この光放射は、光起電モジュールによって受け取られる前に、少なくとも第2のプレートを通過し、かつ/又はこの第2のプレートに作製された開口部を通過する。
【0008】
特に、この第1の態様による当該光起電モジュールは、室内放射、すなわち、1000ルクス未満又は500ルクス未満の放射の下で効果的に使用することができるという利点を有する。特に、このような光起電モジュールでは、光発生電荷損失が最小限に抑えられ、有機光起電セルの異なる層間の光発生電荷の移動が、光起電モジュールの全体的な安定性を有するように改善される。実際、このような光起電モジュールでは、第2の界面層に適用される追加の層が回避される。したがって、第2の界面層及びアノード層の両方である1つの層が存在する。したがって、この場合、現在の最新技術で使用されている界面より少ない界面を含む有機光起電セルが使用される。したがって、光発生電荷を失うリスクが低減され、界面酸化を有するリスクも低減される。
【0009】
更に、電池ではなく光起電モジュールを使用することは、特に電池の交換を排除することによってセンサの保守を低減することも可能にし、したがって、電池の使用を容易にし、とりわけ、例えば、電池を交換することによって生じる処理の時間及びコストを大幅に低減する。また、電池ではなく光起電モジュールを使用することは、センサの寿命を延ばすことを可能にする。
【0010】
また、センサに組み込まれる電池の使用を排除することにより、特にセンサの厚さが10mm未満であるおかげで、環境にも更に組み込まれた新しい設計を有するセンサを作製することが可能になる。したがって、小さな空間に組み込まれた自給型センサを開発することが可能である。
【0011】
しかしながら、蓄電素子をセンサに組み込むことができることに留意されたい。例えば、このような蓄電素子は、キャパシタ、スーパーキャパシタ、及び更にはマイクロバッテリを含むが、これらに限定されない。
【0012】
更に、可撓性材料及び基板を有するこのセンサを使用及び産生することは、多くの場合、その使用を簡略化する。
【0013】
また、可撓性基板は、ポリエチレンで作製されていてもよいことに留意されたい。
【0014】
更に、好ましくは、基板は、透明であってもよい。したがって、基板の一方の面に適用された光起電モジュールの構成層が、光放射が基板の他方の面によって受け取られたときに電子デバイスの正しい動作に必要な電気エネルギーを生成することができるように、光放射が基板を通過することができる。
【0015】
特定の実施形態では、特にセンサがこれらの異なる温度に曝された頻度を考慮して、所定の持続時間にわたって正確な温度読み取り値を通信することが有利である。したがって、本実施形態では、電子デバイスは、温度データを時間の関数として記憶するように構成されている。
【0016】
特定の一実施形態によれば、周囲光エネルギーが1000ルクス未満、又は500ルクス未満であっても、モジュールが周囲光エネルギーを使用できることが有利である。この場合、第2の界面層は、100Ω/□~600Ω/□のシート抵抗を有する。
【0017】
特定の一実施形態によれば、センサは、センサが位置する環境に関する大量のデータを収集できることが好ましい。本実施形態では、電子デバイスは、加速度計を更に含み、電子デバイスは、好ましくは、水分データを収集するように更に構成されている。更に、このセンサは、ヒトの存在、圧力、又は更には光の変化に関する環境データなどの、より多くの物理データを収集することも可能にすることができる。
【0018】
特定の一実施形態によれば、収集された情報の送信を効果的に、すなわち、迅速に、データの損失なしに、安全な方法で行うことができることも好ましい。本実施形態では、電子デバイスは、電気通信プロトコルに従って、収集されたデータを外部デバイスに送信するように構成された電気通信手段を更に含む。例えば、この電気通信プロトコルは、Bluetooth Low Energyプロトコル(又は略してBLE)、無線電気通信プロトコルLoRaWan、SIGFOXプロトコル、又はZIGBEE(登録商標)プロトコルの中から選択することができる。
【0019】
好ましくは、第1のプレートは、光放射が通過することを可能にするように更に構成されてもよい。したがって、光放射は、光起電モジュールの面のいずれかによって受け取ることができ、これは、センサの向きを克服することによってエネルギーの生成を保証することを可能にする。したがって、おおよそ90°に等しい入射角で光起電モジュールによって受け取られる光放射であっても、おおよそ0°に等しい入射角で得られる最大電力の15%を生成することが可能である。
【0020】
したがって、2つの電気絶縁プレートは、例えば、光放射が少なくとも部分的に光起電モジュールによって受け取られるように光放射が通過することを可能にする透明プラスチック又は可塑化プレートであってもよい。例えば、これらのプレートは、これらに透明性を与えるために積層されていてもよい。また、第1のプレート及び/又は第2のプレートは、光放射が光起電モジュールの少なくとも一部によって受け取られるように通過する開口部を含んでもよい。このようにして、光起電モジュールによって送達される電力は、光放射が通過することを可能にするように構成され、モジュールの活性表面が同一であり、同じ光度に曝される第2のプレートのみを含む光起電モジュールに対して増加する。この構成では、センサの効率が改善される。したがって、この構成によるセンサの電気通信手段を介したデータ送信の頻度、可用性、通信カバレッジ、及びネットワーク検出は全て、光放射が通過することを可能にするように構成された第2のプレートのみを含む光起電モジュールに対して増加する。また、通信距離は、この構成の下でより大きくなり、センサは、例えば、取得の数の増加とともにより正確になり、待機電流は、より良好な補償、及び関連付けられたより高速の蓄電素子の再充電を有する。その結果、センサは、この構成においてより信頼性が高くなる。
【0021】
特に、光放射が通過することを可能にするように構成された2つの電気絶縁プレートを有するセンサが存在する場合、第1の透明電極(アノード又はカソード)のみが直接光に曝される構成では、いくつかの光子が第2の電極(それぞれカソード又はアノード)によっても間接的に受け取られる。この間接照明により、光起電モジュールの性能を3%だけ改善することを可能にする。
【0022】
また、第1の電気絶縁プレート、すなわち、インジウム-スズ酸化物層の側に配置された電気絶縁プレートが、光放射が通過することを可能にするように構成されておらず、第
2の電気絶縁プレート、すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマー混合物を含む層の側に配置された電気絶縁プレートのみが、光放射が通過することを可能にする、したがって、エネルギーを収集することを可能にする場合、光起電モジュールは、依然として、総性能の65%を確保することが可能であることに留意されたい。
【0023】
また、光放射が通過することを可能にするように構成された2つの電気絶縁プレートを有するセンサが存在する場合、アノード及びカソードの両方が直接照明に曝される構成では、光起電モジュールの性能は、第1の透明電極(アノード又はカソード)のみが直接照明に曝される構成に対して2倍になり得ることに留意されたい。
【0024】
更に、これらのプレートは、例えば、防湿性のセンサを得るために、電子デバイス、光起電モジュール、及びコネクタ手段を含むアセンブリを封入して、このアセンブリを外部から隔離することができる。この場合、このアセンブリの周囲において、2つのプレートは、例えば、第2のプレートに作製された開口部を介して、又は透明プレートを使用することによって、光起電モジュールの外部から来る光放射の受け取りを保証しながら、電子デバイスと外部コネクタ手段とを密封して絶縁するように直接接触している。
【0025】
また、光起電モジュールは、インクジェット印刷方法により産生することができることに留意されたい。
【0026】
また、本発明の意味の範囲内で、上記及び下記の用語は、直接的又は間接的に上記又は下記のいずれかを意味すると理解されることに留意されたい。したがって、第1の要素が第2の要素の上方にあると考えられる場合、この第1の要素とこの第2の要素との間に第3の要素があってもよい。
本発明は、単に例として提供される以下の説明を読み、添付の図面を参照することで、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施形態による、センサを組み立てる前の第1の分解図を示す。
【
図2】本発明の第1の好ましい実施形態による、センサを組み立てる前の第2の分解図を示す。
【
図3】本発明の第2の好ましい実施形態による、センサを組み立てる前の分解図を示す。
【
図4】本発明の第2の好ましい実施形態による、センサを組み立てた後の第1の図(正面図)を示す。
【
図5】本発明の第2の好ましい実施形態による、センサを組み立てた後の第2の図(背面図)を示す。
【
図6】本発明の好ましい実施形態に従って使用される光起電モジュールの構成の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1及び
図2に示されるセンサは、
-ポリエチレンテレフタレート(一般的に頭字語PETで表される)又はポリエチレン(ポリ(エチレン)2,6-ナフタレート(一般的に頭字語PENで表される))で作製された可撓性透明支持体と、
-直列に相互接続され、支持体上に配置された10個の光起電セルと、を含む、有機光起電モジュール200から構成されている。
【0029】
光起電セルの各々は、
i.カソードを構成し、基板を覆うインジウム-スズ酸化物層と、
ii.酸化亜鉛又はアルミニウムドープ酸化亜鉛の第1の界面層であって、この第1の界面層が、カソードを覆う、第1の界面層と、
iii.当該第1の界面層を覆う光起電活性層と、
iv.ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第2の界面層であって、当該第2の界面層が、アノードを構成し、かつ当該光起電活性層を覆い、当該第2の界面層が、連続しており、有機繊維構造及び100nm~400nmの平均厚さを有する、第2の界面層と、を含む。
【0030】
上で引用した10個の光起電セルの中から選択された光起電セルの第2の界面層が、隣接する光起電セルのうちの1つのインジウム-スズ酸化物層と接触していることに留意されたい(
図6参照)。
【0031】
このようなモジュールを産生するために、迅速で、経済的で、安定して容易に再現可能な製造方法が実施される。
【0032】
特に、本発明による好ましい態様によれば、光起電モジュールは、以下に示すように産生される(
図6参照)。
【0033】
最初に、例えば、PET又はPENで作製された基板20が提供され、その上に不連続なインジウムスズ酸化物層210、220が堆積される。インジウムスズ酸化物層210、220の部分の各々は、光起電モジュールの光起電セルの各々のカソードである。したがって、具体的には、不連続なインジウム-スズ酸化物210、220の層でコーティングされた、PETで作製された支持体20が存在し、その結果、支持体20は、以下で説明する2つの異なる隣接する有機光起電セル21及び22のカソードを形成するインジウム-スズ酸化物層210及び220のいずれかで部分的に覆われる。基板20は、特に基板の材料と適合性のある溶媒を使用するように注意して、インジウムスズ酸化物層の塗布前に、必要であれば洗浄されてもよい。
【0034】
次に、インクジェット印刷では、インジウムスズ酸化物層210、220に、酸化亜鉛ナノ粒子又はアルミニウムドープ酸化亜鉛ナノ粒子を含む第1のインク組成物が塗布される。第1の例では、第1のインク組成物として、実験室で合成された酸化亜鉛ナノ粒子を含むインクを有することが可能である。特に、酸化亜鉛ナノ粒子は、ポリオール技術を実施することによって得ることができ、その最後に酸化亜鉛ナノ粒子を冷浴中で冷却し、次いで、遠心分離(12分及び7800rpm)によって分離した後、界面活性剤としてエチレングリコールを使用してブタノール中に分散させる。別の例では、第1のインク組成物として、GENES’INKによって販売されている、実験室で合成されたアルミニウムドープ酸化亜鉛(aluminum-doped zinc oxide、AZO)ナノ粒子のインクを有することが可能である。これらの第1のインク組成物のいずれかがインジウムスズ酸化物層に塗布されると、第1の界面層211、221を形成するために、70℃~130℃で構成される温度で1分~5分の期間にわたって熱処理が行われる。具体的には、工程のこの熱処理は、85℃の温度のホットプレート上で3分間行われる。特に、
図6に示すように、光起電モジュール200の光起電セル21及び22の第1の界面層211及び221が得られる。
【0035】
次に、インクジェット印刷を使用して、第1の界面層211及び221上に、ポリ(チエノ[3,4-b]-チオフェン)と会合した[6,6]-フェニル-C61-メチルブタノエートを含むポリマーの混合物を含む第2のインク組成物を堆積させて、活性層212及び222を形成する。例えば、このインクは、Nano-C(登録商標)によってPC70BMの商品名で販売されている[6,6]-フェニル-C71-メチルブタノエートと、Raynergy Tek(登録商標)によってPV2000の商品名で販売されているポリ(チエノ[3,4-b]-チオフェン)との第1のポリマー混合物、又はNano-C(登録商標)によってPC70BMの商品名で販売されている[6,6]-フェニル-C71-メチルブタノエートと、1-MaterialsによってPTB7-Thの商品名で販売されているポリ(チエノ[3,4-b]-チオフェン)との第2のポリマー混合物から構成することができる。これら2つのポリマー混合物の各々は、O-キシレン(式C6H4(CH3)2のオルト-キシレン)を溶媒として、及びテトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)を添加剤として会合して、光起電活性層212及び222を形成する。具体的には、第1の混合物のポリマーPV2000又は第2の混合物のポリマーPTB7-Thは、好ましくは、これらの第2のインク組成物中に10mg/mLの割合で存在する。更に、第1の混合物のポリマーPV2000又は第2の混合物のポリマーPTB7-Thと、PC70BMとの質量比は、好ましくは1:1.5である。また、好ましくは、溶媒O-キシレンと、添加剤テトラリンとの間の体積比は、これら第2の組成物中で、97:3であることに留意されたい。2つのインク組成物は、第1のポリマー混合物及び第2のポリマー混合物に溶媒及び添加剤を添加して、これらを80℃の加熱プレート上で700RPMの速度で撹拌しながら、約おおよそ24時間維持することによって作製されることに留意されたい。次いで、これら2つの組成物の一方又は他方を塗布して、活性層212及び222を形成する。また、この好ましい実施形態では、有機光起電セルの層の各々の間の直列抵抗を更に低減するために、活性層を塗布した後、光起電活性層は、エタノール、ブタノール、メタノール、イソプロパノール、及びエチレングリコールから選択された溶媒を使用して洗浄される。次に、活性層を形成するために、70℃~130℃で構成される温度で1~5分の期間にわたって熱処理が行われる。具体的には、この熱処理は、85℃の温度のホットプレート上で2分間行われる。
【0036】
次いで、後続の工程において、インクジェット印刷では、製造中の光起電セル21、22の光起電活性層212、222に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムとのポリマーブレンドを含む第3のインク組成物を塗布し、これらの層は、隣接する光起電セルのインジウムスズ酸化物層とも接触する。この第3のインク組成物の塗布により、光起電モジュール200の光起電セル21及び22の第2の界面層213及び223が形成される。この第3の界面層は、例えば、
_PEDOT:Agfa(登録商標)によってIJ1005の商品名で市販されているPSS又はPEDOT:Agfa(登録商標)によってORGACON S315の商品名で市販されているPSS、
_洗剤/界面活性剤としてMerck(登録商標)によって市販されている、Triton X-100(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール、式Oct-C6H4-(OCH2CH2)xOH、x=9~10)、
_Merck(登録商標)によって市販されているエタンジオール(又はエチレングリコール、式HOCH2CH2OH)、
_Merck(登録商標)によって市販されているグリセロール(1,2,3-プロパントリオール又はグリセリン、式HOCH2CH(OH)CH2OH))、及び
_実験室で産生されるか、又は水のブランド名ELGA(登録商標)でPURELAB(登録商標)classic社によって市販されている脱イオン水を含んでもよい。
【0037】
次に、アノードでもある第2の界面層213、223を形成するために、70℃~130℃で構成される温度で1~5分の期間にわたって熱処理が行われる。具体的には、この熱処理は、120℃の温度のホットプレート上で1~5分間行われる。
【0038】
このようにして得られた光起電モジュール200は、可撓性であり、第2の界面層213、223は、100Ω/□~600Ω/□のシート抵抗を有する。
【0039】
このように進めることによって、得られた有機光起電モジュール200は、14%~23%の変換効率を有し、この変換効率は、室内放射、すなわち、1000ルクス未満又は500ルクス未満の放射において光起電モジュール200を効果的に使用することができるのに十分である。特に、この有機光起電モジュール200では、光発生電荷損失が最小限に抑えられ、有機光起電セルの異なる層間の光発生電荷の移動が、光起電モジュールの全体的な安定性を有するように改善される。実際、有機光起電モジュール200の一般的な安定性は、有機光起電モジュールの有機光起電セルの各々を構成する異なる層の固有の安定性に依存するが、これらの層の各々の間の界面の安定性にも依存する。加えて、この好ましい実施形態において使用される光起電モジュール200では、第2の界面層に適用される追加の層が排除される。したがって、第2の界面層及びアノード層の両方である1つの層が存在する。したがって、この場合、現在の最新技術で使用されている界面より少ない界面を含む有機光起電セルが使用される。したがって、光発生電荷を失うリスクが低減され、界面酸化を有するリスクも低減される。
【0040】
したがって、この光起電モジュールを製造するために、130℃を超える熱処理、特に、銀で作製され得るか、又は裏面構造を有する有機光起電セルのアノードとして使用される同様の特性を有する材料で作製され得る第2の界面層に一般的に適用されるアノード層を全般的にアニールするために、最新技術において現在実施されている熱処理を行う必要はない。このような熱処理を使用しないことの利点は、有機光起電セルの他の層が、高温によって影響されないことである。例えば、ポリエチレンなどの、例えば、130℃未満のガラス転移温度を有する基板を含む光起電モジュールを使用することができる。
【0041】
光起電モジュール200は、電気コネクタ手段120を介して電子デバイス100に接続されている。例えば、これらのコネクタ手段120は、2つのAWGケーブル型コネクタであってもよい。
【0042】
電子デバイス100は、特に、電子デバイス100のために構成された、又は少なくとも温度データを収集及び送信するように構成され、好ましくは、これらの温度データを時間の関数として記憶するように構成された電子構成部品を含む。また、電子デバイス100は、加速度計を更に含み、好ましくは、水分データを収集するように更に構成されている。
【0043】
電子デバイス100は、当業者に知られている電気通信プロトコルに従って、収集されたデータを外部デバイスに送信するように構成された電気通信手段を更に含む。
【0044】
次に、
図1及び
図2に示すように、光起電モジュール200が電子デバイス100の上方に配置されている。
【0045】
第1の好ましい実施形態によれば、
図1及び
図2に示すように、光起電モジュール200、電子デバイス100、及びコネクタ手段120を含むアセンブリは、最後に、電子デバイス100が上方に配置された第1のプレート310、及び光起電モジュール自体が第1のプレート310と第2のプレート320との間に配置されている、光起電モジュール200の上方に配置された第2のプレート320である、2つの電気絶縁プレート310、320の間に封入される。ここで、これら2つのプレートは透明であり、センサに酸素分子及び水分子が入るのを回避するようにセンサを気密にする目的を有するPETバリアフィルムの形態である。これら2つのプレートを、接着剤を付着させて85℃未満の温度で10分間積層することによって配置する。封入の工程と考えられるこの工程では、センサに、経時的に高い抵抗並びに水分に対する良好な抵抗を与える。第2のプレート320、すなわち、光起電モジュール200の側に配置されたフィルムは、第2のプレート320が透明であるという範囲内で、光起電モジュール200が少なくとも部分的に配置される開口部322を含んでもよいが、必ずしも含まなくてもよいことに留意されたい。
【0046】
第2の好ましい実施形態によれば、
図3及び
図5に示すように、光起電モジュール200、電子デバイス100、及びコネクタ手段120を含むアセンブリは、最後に、電子デバイス100が上方に配置された第1のプレート310、及び光起電モジュール自体が第1のプレート310と第2のプレート320との間に配置されている、光起電モジュール200の上方に配置された第2のプレート320である、2つの電気絶縁プレート310、320の間に封入される。ここで、この構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0047】
しかしながら、この第2の実施形態では、これら2つのプレートのいずれかは、光起電モジュール200の少なくとも一部が光放射を受け取ることができるように部分的に透明であるか、又は2つのプレートの両方ともが、光放射を直接的に受け取るか、又は間接的に受け取るように適合された光起電モジュール200が少なくとも部分的に配置される、すなわち、光放射が、透明支持体を通過し、その後、光起電モジュール200によって受け取られる開口部322を含む。
【0048】
更に、電子デバイス100の電子構成部品は、例えば、第1のプレート310を通して見えるが、第2のプレート320を通して非常によく見える可能性がある。これらの構成部品は、特に、2つのプレート310と320との間に封入される。
【0049】
本発明に従って、特にこれら2つの好ましい実施形態に従ってこのように得られたセンサは、電子デバイス100、光起電モジュール200、並びに2つのプレート310及び320の各々の厚さに応じて、5mm~10mmの厚さを有し得る。
【国際調査報告】