(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】一体型電磁音響センサーおよび感知
(51)【国際特許分類】
G01S 13/86 20060101AFI20240313BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240313BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240313BHJP
H04R 19/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01S13/86
G01S13/931
G01S15/931
H04R19/00 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552227
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 US2022017561
(87)【国際公開番号】W WO2022182787
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523257761
【氏名又は名称】アイディーケイ・エルエルシー・ディービーエー・インディー・セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロス・エフ・ジャトウ
(72)【発明者】
【氏名】ダニー・エラド
(72)【発明者】
【氏名】ダン・コルコス
【テーマコード(参考)】
5D019
5J070
5J083
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019DD01
5D019FF01
5J070AB18
5J070AB19
5J070AB20
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD02
5J070AE01
5J070AE09
5J070AE10
5J070AF03
5J070AH12
5J070AH31
5J070AH35
5J070AH39
5J070AK02
5J070BD04
5J083AA02
5J083AB12
5J083AC05
5J083AD04
5J083BA01
5J083BE53
5J083CC02
(57)【要約】
1つの例示的な一体型電磁音響センサーは、接地面と、電磁(EM)信号周波数を有するEM信号を送信または受信するための、接地面の上方のパッチアンテナと、音響信号周波数を有する音響信号を送信または受信するための、パッチアンテナとベース電極との間のキャビティによって形成された容量性微細加工音響変換器のアレイとを含む。1つの例示的な感知方法は、接地面とパッチアンテナとの間のEM信号を駆動または感知するステップと、パッチアンテナとベース電極との間の音響信号を駆動または感知するステップとを含み、ベース電極およびパッチアンテナはそれらの間に容量性微細加工音響変換器キャビティのアレイを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面と、
電磁(EM)信号周波数を有するEM信号を送信または受信するための、前記接地面の上方のパッチアンテナと、
音響信号周波数を有する音響信号を送信または受信するための、前記パッチアンテナとベース電極との間のキャビティによって形成された容量性微細加工音響変換器のアレイと、
を備える一体型電磁音響センサー。
【請求項2】
前記音響信号を前記一体型電磁音響センサーにまたは前記センサーから伝達するための第1および第2の差動信号ノードと、
前記第1の差動信号ノードを前記パッチアンテナに結合する第1のフィルタと、
前記第2の差動信号ノードを前記ベース電極に結合する第2のフィルタと、
をさらに備え、
前記第1および第2のフィルタが、前記EM信号周波数をブロックしながら前記音響信号周波数を通すように構成された、請求項1に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項3】
前記第1のフィルタが、第1のEM周波数チョークを用いて前記第1の差動信号ノードを前記パッチアンテナに結合し、第1のキャパシタを用いて前記第1の差動信号ノードを前記接地面に結合し、前記第2のフィルタが、第2のEM周波数チョークを用いて前記第2の差動信号ノードを前記ベース電極に結合し、第2のキャパシタを用いて前記第2の差動信号ノードを前記接地面に結合する、請求項2に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項4】
前記第1および第2のEM周波数チョークがそれぞれ1/4波マイクロストリップ伝送線路を備える、請求項3に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項5】
前記第1および第2のEM周波数チョークがそれぞれインダクタを備える、請求項3に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項6】
前記EM信号周波数が10GHz以上であり、前記音響信号周波数が1GHz以下である、請求項3に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項7】
無線周波数信号を前記センサーにまたは前記センサーから伝達するためのEM信号ノードと、
前記パッチアンテナを前記EM信号ノードに結合するキャパシタと
をさらに備える、請求項2に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項8】
前記パッチアンテナが、前記ベース電極から2ミクロン以下だけ分離され、前記接地面から少なくとも200ミクロンだけ分離された、請求項1に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項9】
前記ベース電極が前記接地面と前記パッチアンテナとの間にある、請求項1に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項10】
前記ベース電極が、前記EM信号周波数において高インピーダンス面を与えるようにパターニングされた、請求項9に記載の一体型電磁音響センサー。
【請求項11】
一体型電磁音響センサーを使用する方法であって、
接地面とパッチアンテナとの間のEM信号を駆動または感知するステップと、
前記パッチアンテナとベース電極との間の音響信号を駆動または感知するステップと
を含み、
前記ベース電極および前記パッチアンテナがそれらの間に容量性微細加工音響変換器キャビティのアレイを有する、方法。
【請求項12】
前記音響信号を駆動または感知するステップが、
第1および第2の差動信号ノードを介して前記音響信号を前記センサーに供給するか、または前記一体型電磁音響センサーから受信するステップを含み、前記第1の差動信号ノードが、前記EM信号をブロックしながら前記音響信号を通すように構成された第1のフィルタによって前記パッチアンテナに結合され、前記第2の差動信号ノードが、前記EM信号をブロックしながら前記音響信号を通すように構成された第2のフィルタによって前記ベース電極に結合された、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記EM信号周波数が10GHz以上であり、音響信号周波数が1GHz以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記EM信号を駆動または感知するステップが、
前記パッチアンテナにキャパシタ結合されたEMノードを介して前記EM信号を前記センサーに供給するか、または前記センサーから受信するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記パッチアンテナが、前記ベース電極から2ミクロン以下だけ分離され、前記接地面から少なくとも200ミクロンだけ分離された、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ベース電極が前記接地面と前記パッチアンテナとの間にある、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ベース電極が、前記EM信号周波数において高インピーダンス面を与えるようにパターニングされた、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
障害物検出器であって、
第1の一体型電磁音響センサーのEMノードにEM送信信号を供給するように結合され、第2の一体型電磁音響センサーのEMノードからEM受信信号を取得するように結合されたレーダートランシーバであって、前記EM受信信号が潜在的に前記障害物検出器のレーダーレンジ内の障害物からの反射を有する、レーダートランシーバと、
前記第1の一体型電磁音響センサーの音響入力に音響送信信号を供給するように結合され、前記第2の一体型電磁音響センサーの音響出力から音響受信信号を取得するように結合された音響トランシーバであって、前記音響受信信号が潜在的に前記障害物検出器の音響レンジ内の障害物からの反射を有し、前記音響レンジが、前記レーダーレンジよりも短い距離を含む、音響トランシーバと、
反射測定値を取得し、前記反射測定値を組み合わせて最も近い障害物までの距離を決定するための、前記レーダートランシーバと前記音響トランシーバとに結合されたコントローラと、
を備える障害物検出器。
【請求項19】
それぞれ、前記レーダートランシーバに結合され、前記音響トランシーバに結合された追加の一体型電磁音響センサーをさらに備え、前記レーダートランシーバおよび音響トランシーバが、それぞれ多入力多出力反射測定を実行するように構成され、前記コントローラが、前記最も近い障害物に対する方向と前記最も近い障害物の相対速度とを決定するように構成された、請求項18に記載の障害物検出器。
【請求項20】
前記一体型電磁音響センサーの各々が容量性微細加工音響変換器のアレイの一部としてパッチアンテナを備える、請求項18に記載の障害物検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2021年2月26日に出願された米国非仮特許出願第17/187,251号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
一層安全でより便利な移送オプションを求めて、多くの自動車製造業者は、車と近くの人、ペット、車両、または障害物との間の距離を監視するための音響センサーおよび/または電磁(EM)センサーのアレイをしばしば含む非常に多くの様々なセンサーを必要とする、自動運転車を開発している。音響センサーは、長距離測定を実現しようと苦闘しながら低コストを提供し得る。EMセンサーは、短距離検出を実現しようと苦闘しながら高い精度と動き検出とを提供し得る。各技術のためのセンサーは、車両設計に潜在的にコストがかかる制限を課する専用の外面を必要とし得る。これらの制限、または少なくとも関連するコストの影響は、既存のセンサー設計では適切に最小限に抑えられないことがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】O. Oralkanら、「Capacitive micromachined ultrasonic transducers: next generation acoustic imaging?」、IEEE Trans. Ultrasonics、第49巻、第11号、2002年11月
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記で特定された欠点に少なくとも部分的に対処し得る、一体型電磁音響センサーおよび感知方法を本明細書で開示する。1つの例示的な一体型電磁音響センサーは、接地面と、電磁(EM)信号周波数を有するEM信号を送信または受信するための、接地面の上方のパッチアンテナと、音響信号周波数を有する音響信号を送信または受信するための、パッチアンテナとベース電極との間のキャビティによって形成された容量性微細加工音響変換器(capacitive micromachined acoustic transducer)のアレイとを含む。
【0005】
1つの例示的な感知方法は、接地面とパッチアンテナとの間のEM信号を駆動または感知するステップと、パッチアンテナとベース電極との間の音響信号を駆動または感知するステップと、を含み、ベース電極およびパッチアンテナはそれらの間に容量性微細加工音響変換器キャビティのアレイを有する。
【0006】
例示的な障害物検出器は、第1の一体型電磁音響センサーのEMノードにEM送信信号を供給するように結合され、第2の一体型電磁音響センサーのEMノードからEM受信信号を取得するように結合されたレーダートランシーバであって、EM受信信号が潜在的に検出器のレーダーレンジ内の障害物からの反射を有する、レーダートランシーバと、第1の一体型電磁音響センサーの音響入力に音響送信信号を供給するように結合され、第2の一体型電磁音響センサーの音響出力から音響受信信号を取得するように結合された音響トランシーバであって、音響受信信号が潜在的に検出器の音響レンジ内の障害物からの反射を有し、音響レンジが、レーダーレンジよりも短い距離を含む、音響トランシーバと、反射測定値を取得し、反射測定値を組み合わせて最も近い障害物までの距離を決定するための、レーダートランシーバと音響トランシーバとに結合されたコントローラとを含む。
【0007】
例示的なセンサー、感知方法、および検出器は、任意の好適な組合せで、以下の随意の特徴のうちの1つまたは複数と一緒に、個別にまたは結合して採用され得る。1.音響信号をセンサーにまたはセンサーから伝達するための第1および第2の差動信号ノードと、第1の差動信号ノードをパッチアンテナに結合する第1のフィルタと、第2の差動信号ノードをベース電極に結合する第2のフィルタとであって、第1および第2のフィルタは、EM信号周波数をブロックしながら音響信号周波数を通すように構成される。2.第1のフィルタは、第1のEM周波数チョークを用いて第1の差動信号ノードをパッチアンテナに結合し、第1のキャパシタを用いて第1の差動信号ノードを接地面に結合する。3.第2のフィルタは、第2のEM周波数チョークを用いて第2の差動信号ノードをベース電極に結合し、第2のキャパシタを用いて第2の差動信号ノードを接地面に結合する。4.第1および第2のEM周波数チョークはそれぞれ1/4波(quarter-wave)マイクロストリップ伝送線路を備える。5.第1および第2のEM周波数チョークはそれぞれインダクタを備える。6.EM信号周波数は10GHz以上である。7.音響信号周波数は1GHz以下である。8.無線周波信号をセンサーにまたはセンサーから伝達するためのEM信号ノード、およびパッチアンテナをEM信号ノードに結合するキャパシタ。9.パッチアンテナは、ベース電極から2ミクロン以下だけ分離され、接地面から少なくとも200ミクロンだけ分離される。10.ベース電極は接地面とパッチアンテナとの間にある。11.ベース電極は、EM信号周波数において高インピーダンス面を与えるようにパターニングされる。12.それぞれ、レーダートランシーバに結合され、音響トランシーバに結合された追加の一体型電磁音響センサーであって、レーダートランシーバおよび音響トランシーバは、それぞれ多入力多出力反射測定を実行するように構成される。13.コントローラは、最も近い障害物に対する方向と最も近い障害物の相対速度とを決定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】センサーが装備された例示的な車両の俯瞰図である。
【
図2】例示的なドライバー支援システムのブロック図である。
【
図3】例示的な障害物検出システムの概略図である。
【
図4】例示的なMIMOレーダートランシーバチップのブロック図である。
【
図5】例示的なMIMO音響トランシーバチップのブロック図である。
【
図6A】(O. Oralkanら、「Capacitive micromachined ultrasonic transducers: next generation acoustic imaging?」、IEEE Trans. Ultrasonics、第49巻、第11号、2002年11月から得られる)例示的な容量性微細加工音響変換器の図である。
【
図6B】(O. Oralkanら、「Capacitive micromachined ultrasonic transducers: next generation acoustic imaging?」、IEEE Trans. Ultrasonics、第49巻、第11号、2002年11月から得られる)例示的な容量性微細加工音響変換器の図である。
【
図7A】第1の例示的な一体型電磁音響(EMA)センサーの図である。
【
図7B】第1の例示的な一体型電磁音響(EMA)センサーの図である。
【
図8A】第2の例示的なEMAセンサーの図である。
【
図8B】第2の例示的なEMAセンサーの図である。
【
図9A】例示的なEMAセンサーチップ構造の図である。
【
図9B】例示的なEMAセンサーチップ構造の図である。
【
図10】例示的なEMAセンサーチップの概略図である。
【
図11A】例示的なEMAセンサーアレイの概略図である。
【
図11B】EM信号周波数における等価回路図である。
【
図11C】音響信号周波数における等価回路図である。
【
図12A】レーダー測定値の収集されたセットを表す例示的なデータキューブである。
【
図12B】レーダー測定値の変換されたセットを表す例示的なデータキューブである。
【
図13】例示的な障害物検出システムについてのデータフロー図である。
【
図14】例示的な障害物検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
名称
「約」または「実質的に」という用語の使用は、要素の値が、述べられている値に近くなることが予想されるパラメータを有することを意味する。しかしながら、当技術分野でよく知られているように、値が厳密に述べられているとおりになるのを妨げる小さいばらつきがあり得る。したがって、10%の差など、予期される差異は、当業者が予想し、本開示の1つまたは複数の実施形態についての述べられている目標または理想的な目標に対して許容可能であると知っている妥当な差異である。また、「第1の」、「第2の」、「次の」、「最後の」、「前に」、「後に」という用語および他の同様の用語は、説明および参照の容易さの目的で使用されるにすぎず、本開示の様々な実施形態についての要素または一連の動作の任意の構成に限定されるものではないことを諒解されたい。さらに、「結合される」、「接続される」などの用語は、2つまたはそれ以上のデバイス、システム、構成要素などの間のそのような相互作用および信号の通信を直接相互作用に限定するものではなく、間接結合および間接接続も行われ得る。
【0010】
以下の説明および添付の図面は、説明の目的で与えられ、本開示を限定するために与えられるものではない。すなわち、それらは、当業者が、特許請求の範囲の範囲内に入るすべての改変、等価物、および代替を理解するための基礎を与える。
【0011】
図1は、前方障害物感知のための前方センサーアレイ104と、後方障害物感知のための後方センサーアレイ106とを含む、様々な一体型電磁音響(EMA)センサーアレイを装備した例示的な車両102を示す。ブラインドスポット障害物感知のためにサイド音響センサーアレイ108が設けられ得る。EMAセンサーアレイの各々は、電磁(EM)測定値と音響測定値とを組み合わせて、たとえば、駐車支援、適応走行制御、および自動衝突回避を含む、複数のドライバー支援サービスをサポートするために短距離、中距離、および遠距離感知を行い得る。各センサーアレイは、障害物の距離および方向の決定を可能にするために多入力多出力(MIMO)感知を実行し得る。ドライバー支援機能と自動運転機能とを有する車両のためのセンサー構成中のセンサーの数および構成は変動する。
【0012】
図2は、スタートポロジーの中心として様々なセンサー204~206に結合された車両(たとえば102)の電子制御ユニット(ECU)202を示す。もちろん、直列トポロジーと並列トポロジーと階層(ツリー)トポロジーとを含む他のセンサーバストポロジーも、本明細書で開示する原理に従って使用するのに好適であり、企図される。センサーは、それぞれ、送信および受信アンテナアレイ104A~108Bのうちの1つに結合してEM波または音響波を送信し、反射を受信し、車両の周囲に対する車両の空間関係を決定する、EMトランシーバおよび/または音響トランシーバを含む。自動駐車、支援駐車、車線追従、車線変更支援、障害物およびブラインドスポット検出、自動制動、自律運転、ならびに他の望ましい特徴を与えるために、ECU202は、さらに、ターンシグナルアクチュエータ208、ステアリングアクチュエータ210、制動アクチュエータ212、およびスロットルアクチュエータ214など、アクチュエータのセットに接続し得る。ECU202は、さらに、ユーザ入力を受け付け、様々な測定値およびシステムステータスの表示を与えるために、ユーザ対話型インターフェース216に結合し得る。
【0013】
EM測定値を収集するために、センサーはEM波および/または音響波を放出し、EM波および/または音響波は、送信アンテナのセットから外部に進み、その後、反射されて受信アンテナのセットに戻される。反射体は、放出された波の経路中の反射率が中度の物体であり得る。送信アンテナから反射体までの、および受信アンテナに戻るまでの波の進行時間を測定することによって、センサーは反射体までの距離を決定することができる。複数の送信アンテナまたは受信アンテナを使用することにより、または異なる位置において複数の測定値を収集することにより、センサーは、反射体に対する方向を決定し、したがって車両に対する反射体のロケーションを追跡することが可能になる。より高度な処理を用いると、複数の反射体を追跡し、それらの相対速度を決定することができる。パルス波測定と連続波測定の両方を実装することができる。少なくともいくつかの企図される実装形態では、音響波はパルス波であり、EM波は周波数変調された連続波である。
【0014】
図3は、EMAセンサーアレイを含む例示的な障害物検出器を示す。例示的な検出器は、それらの各々が集積回路チップとして作製され得る、複数のEMAセンサー308A、308B、309A、309B、310A、310B、311A、311Bをもつプリント回路板(PCB)306に取り付けられた、EMトランシーバチップ302と音響トランシーバチップ304とを含む。
【0015】
各EMAセンサーは、パッチ電極312に容量結合されたEM信号ノードを有し、パッチ電極312は、以下でさらに説明するように、図示のようにメッシュとして実装されるか、または完全導電面として実装され得る。パッチ電極312は、EM信号を送信または受信するためにセンサーチップ中のまたはPCB306中の接地面に対して駆動または感知され得る。容量結合は、EM信号周波数において無視できるインピーダンスを有するが、音響信号周波数をブロックし、それによりEMトランシーバ302を音響信号から隔離することが期待される。
【0016】
各EMAセンサーはまた、差動音響信号ノードのペアを有し、一方の信号ノード(「+」)はフィルタによってパッチ電極に結合され、相補的な信号ノード(「-」)はフィルタによってベース電極314に結合される。フィルタは、EM信号周波数をブロックしながら音響信号周波数を通し、それにより音響トランシーバ304をEM信号から隔離する。キャパシタおよびフィルタにより、一体型センサーのEM態様と音響態様との独立電子制御および同時電子制御が可能になる。たとえば、センサー308Aおよび308Bは、EM感知のためには直列に構成され、音響感知のためには並列に構成される。また、所与のセンサーを使用して、音響信号を受信しながら同時にEM信号を送信することが可能であり、その逆も同様である。
【0017】
EMAセンサー308A、308Bは単一の組合せアンテナ(EM)またはトランスデューサ(音響)として使用される。EMAセンサー309A、309Bは第2の組合せセンサーを形成し、それにより、EMトランシーバ302のMIMO動作を可能にするために、および音響トランシーバ304のMIMO動作を別個に可能にするために複数の入力を与える。EMAアンテナ/トランスデューサ310A、310Bは各トランシーバの一方の出力に結合され、EMAセンサー311A、311Bは各トランシーバの第2の出力に結合される。指向性を高めるために、送信および受信のためにより多くのセンサーを設けることができる。
【0018】
音響トランシーバ304は、音響パルスを送信し、受信された音響信号を処理してエコーを検出し、それにより、障害物の距離および方向を導出し得る。EMトランシーバ302は、周波数変調連続波(FMCW)レーダー信号を送信し、受信されたEM信号を分析して反射エネルギーを検出し、それにより、障害物の距離および方向を導出し得る。トランシーバ302は、さらに、EM信号ベースの測定値を音響信号ベースの測定値と組み合わせ、それにより、それらをつなぎ合わせて、いずれかの技術のみによって達成され得るよりも広いレンジにわたって障害物検出を行い得る。トランシーバ302は、さらに、測定情報をECUに伝達するための外部インターフェースを与え得る。
【0019】
図3の例示的な実装形態は、送信機または受信機として専用されるEMAセンサーを示すが、これは要件ではない。送信および受信するために所与のEMAセンサーを双方向様式で使用することができる。いくつかの企図されるトランシーバチップは、それらのトランシーバチップが所与のEMAセンサーを使用してEM信号および/または音響信号を送信し、次いで、そのセンサーを使用してEM信号および/または音響信号を受信することを可能にする、内部スイッチまたはハイブリッドを含む。さらに、所与のEMAセンサーがEM信号を送信するために使用されている間、そのEMAセンサーは同時に、音響信号を受信するために使用され得、その逆も同様であることに留意されたい。
【0020】
図4は、MIMOレーダーシステム中で使用するために構成された例示的なEMトランシーバチップ402のブロック図を示す。チップ402は、局部発振器信号を、一連の線形掃引された周波数チャープをもつ信号など、FMCW信号に変換するチャープ生成器404を含む。電力スプリッタ406は、FMCW信号電力の一部分を分離して、FMCW信号のコピーをダウンコンバージョンミキサ407に供給する。FMCW信号の残りは、コントローラ409が、RF出力の各々について独立してFMCW信号を位相シフトするために使用する、位相シフタ408のセットに渡る。
【0021】
位相シフトは、たとえば、仮想ビームステアリングを可能にするチャネル分離のためのコヒーレントビームステアリングまたはコーディングを与えるために様々な方法で使用することができる。チャネル分離は、チャネルごとに異なるコードパターンをもつ直交コーディングされた位相変調を使用して与えることができる。位相変調は、1ビット(バイポーラ位相シフトキーイング)、2ビット(4位相(quadrature phase)シフトキーイング)、または高次(Nビット)であり得る。電力増幅器410は、位相シフトされたFMCW信号を取り、送信信号(T0R~T1R)を与えるための接点を駆動する。図示のトランシーバは2つの送信信号を与えるが、数は変動することがある。
【0022】
トランシーバチップ402は、受信アンテナから2つの受信信号(R0R~R1R)を取得するための接点をさらに含む。ダウンコンバージョンミキサ407は、受信信号にFMCW信号のコピーを乗算し、それにより、受信信号をローパスフィルタ412によって通された近ベースバンド周波数に変換する。利得制御増幅器414は、アナログデジタル変換器(ADC)416のダイナミックレンジの使用を最適化するために信号振幅を適応的に調整する。ADC416はコントローラ409による処理のために受信信号をデジタル化する。コントローラ409は、高速メモリ(SRAM)とシリアル周辺インターフェース(SPI)とをもつプログラマブルデジタル信号プロセッサの形態を取り得、それにより、コントローラ409はシステム中の他のチップと通信することが可能になる。
【0023】
図5は、MIMO音響システム中で使用するために構成された例示的な音響トランシーバチップ502のブロック図を示す。チップ502は、測定コマンドとパラメータとを受信するための、および測定値をシステム中の他のチップに伝達するためのI/Oインターフェースを含む。コア論理504は、不揮発性メモリ505に記憶されたファームウェアとパラメータとに従って動作して、他のチップからのコマンドを解析し、音響バーストの送信および受信を含む適切な動作を実行する。音響バーストを送信するために、コア論理504は、電圧制御発振器からの好適に変調された局部発振器信号を用いて、送信端末{+T0
A,-T0
A}、{+T1
A,-T1
A}の一方または両方のセットを駆動する送信機506に結合される。送信機端末は、電気信号を放射音響エネルギーに変換する1つまたは複数のEMAセンサーの音響入力に結合される。
【0024】
1つまたは複数のEMAセンサーは、音響バーストのエコーを、一般にミリボルト範囲またはマイクロボルト範囲内にある電気信号に変換する。低雑音増幅器508は受信端末からの信号を増幅する。随意のミキサ(図示せず)が、増幅された受信信号に局部発振器信号を乗算して、変調された信号をベースバンドにダウンコンバートし、その後、信号は、一体型アナログデジタル変換器(ADC)をもつデジタル信号プロセッサ(DSP)510によってデジタル化され、処理される。代替的に、受信信号は直接デジタル化され、処理される。
【0025】
DSP510は、エコーを検出し、飛行時間、持続時間、およびピーク振幅など、エコーのパラメータを測定するために、プログラム可能な方法を適用する。そのような方法は、しきい値比較、最小間隔、ピーク検出、ゼロ交差検出およびカウント、雑音レベル決定、ならびに信頼性と精度とを改善するために調整された他のカスタマイズ可能な技法を採用し得る。DSP510は、バッファリングと外部インターフェースを介した最終的な通信とのために測定結果をコア論理504に与え得る。代替実装形態では、信号処理およびセンサーフュージョンはECUまたは他のシステムレベルプロセッサにオフロードされ得る。
【0026】
図6Aおよび
図6Bは例示的な容量性微細加工音響変換器の上面図および断面図を示す。それは、結晶半導体ウエハなど、基板上に形成されたベース電極を含む。基板厚さは、わずか100ミクロンまたは200ミクロン程度であり得るが、一般的には500ミクロン、700ミクロン、またはそれ以上であろう。埋込みキャビティをもつ絶縁層がベース電極の上に形成される。1つの企図される実装形態では、埋込みキャビティは、厚さ0.2ミクロンの絶縁層内で、厚さ0.11ミクロン、および幅36ミクロン、および間隔4ミクロンである。導電性メッシュ電極を形成するための相互接続とともに、上部電極が各キャビティの上方に設けられる。メッシュ電極を保護するためにパッシベーション層が設けられ得る。各キャビティの上方の膜の全厚さは、パッシベーション層と、メッシュ電極と、絶縁層の覆っている部分とを含めて、約0.9ミクロンであり得る。さらなる製造詳細は、たとえば、それの全体が本明細書に組み込まれる、O. Oralkanら、「Capacitive micromachined ultrasonic transducers: next generation acoustic imaging?」、IEEE Trans. Ultrasonics、第49巻、第11号、2002年11月に見つけられ得る。
【0027】
メッシュ電極とベース電極との間に適切にバイアスされた音響信号が印加されると、各キャビティの上方の膜は変形し、それにより電気信号が放射音響エネルギーに変換される。各キャビティの上方の膜を変形させる音響エネルギーを戻すと、適切な電圧バイアスの電気的変動が生じ、それにより音響エネルギーが電気受信信号に変換される。好適な音響信号周波数は、少なくとも100kHzから少なくとも10MHzまでに及び、潜在的には、好適にサイズ決定されたキャビティを用いると、より低い周波数(たとえば10kHz)およびより高い周波数(たとえば100MHz)に及ぶことがある。
【0028】
メッシュ電極および/またはベース電極がパッチアンテナの形状に形成された場合、メッシュ電極および/またはベース電極を使用してEM信号を送信および受信することができる。しかしながら、メッシュ電極とベース電極との間の間隔(ほぼ1ミクロン)は、パッチアンテナとそれの接地面との間に望まれる間隔(周波数にもよるが、ほぼ800ミクロン)のほんの一部分であり、それにより、改変されていない容量性微細加工音響変換器をEMアンテナとして使用することが妨げられる。
【0029】
図7Aおよび
図7BはEMAセンサーの上面図および断面図を示す。メッシュ電極のメタライゼーションの程度は、随意に、パッチアンテナとしてのメッシュ電極の性能を改善するために、
図7Aに示されているように高められ得る。少なくともいくつかの企図される実装形態(たとえば
図8A)では、メッシュ電極は完全に金属化される(すなわち固体電極表面)。アルミニウム膜(74GPa)とSiO
2膜(70GPa)とのヤング率が同等であることにより、膜の音響性能に著しく影響を及ぼすことなしに、より大きいメタライゼーションの使用が可能になる。
【0030】
図7Bは基板の裏面上への接地面の追加を示し、基板は、パッチアンテナからの所望の間隔を与えるために、たとえば、厚さ800ミクロンであり得る。代替的に、接地面は、センサーがそれに取り付けられるPCB上に設けられ得る。ベース電極がパッチアンテナの性能に影響を及ぼすのを防ぐために、ベース電極はEM信号周波数から電気的に絶縁され、それにより、ベース電極がパッチ電極に対して「浮動する」ことが可能になり得る。この絶縁について以下でさらに説明する。
【0031】
パッチ電極と接地面との間に公称間隔を与えることが不可能である場合(たとえば、相対的な低い抵抗率をもつドープ基板を使用するとき)、ベース電極は、接地面からの最小間隔を有する「ロープロファイル」パッチアンテナを可能にする磁性壁を与えるために、学術文献に開示されている技法を使用して、高インピーダンス面(HIS)としてパターニングされ得る。ベース電極パターニングはEMAセンサーの音響性能に影響を及ぼさない。
【0032】
EMAセンサーの音響セルは、自動車レーダー信号のために構成されたパッチアンテナの一般的な寸法(約1000ミクロン)に対して小さい(約40ミクロン)。したがって、パッチアンテナの所望のプロファイル内に、音響セルのグリッド、たとえば25×25セルグリッドが配置され得る。説明しやすいように、
図9Aは、4×4グリッド902を有するチップの上面図を示すが、EMAセンサーチップはより多い音響セルを含むであろうことが予想される。また、
図9Aには、音響信号をパッチ電極とベース電極とに伝達するための随意のワイヤボンドが示されている。EM信号がワイヤボンドを介して伝達されることが望ましいことは予想されない。
【0033】
したがって、
図9Bの断面図によって示されているように、EM信号は基板の底面上のボールグリッドアレイ接点を介してパッチ電極に伝達され得る。スルーシリコンビアがEM信号を(電磁干渉を制限するために周囲のビアの随意の「ケージ」とともに)パッチ電極に伝達し得る。
図9Bは、音響信号周波数をブロックしながらEM信号周波数を通すようにサイズ決定された一体型結合キャパシタ(「ACブロックキャパシタ」)を示す。
図9Bは、さらに、(オンチップまたはオフチップキャパシタと協働して)EM信号周波数をブロックしながら音響信号周波数を通すように構成された一体型1/4波伝送線路を示す。
図9Bの実装形態では、接地面はPCB上に設けられる。
【0034】
図10は、接地面と、EM信号ノードと、差動音響信号ノードのペアとを示す、EMAセンサーの概略図である。EMノードは、音響信号周波数をブロックしながらEM信号周波数を通すキャパシタによってメッシュ電極に結合される。この構成では、メッシュ電極はパッチアンテナとして働く。代替的に、ベース電極はパッチアンテナとして働き得る。メッシュ電極は、1/4波伝送線路またはインダクタなど、RFチョークよって差動音響信号ノードのうちの1つに結合される。ベース電極は、同様に、他方の差動音響信号ノードに結合される。キャパシタは差動音響信号ノードを接地に結合し、それによりRFチョークと協働して、音響信号周波数を通しながらEM信号周波数をブロックするフィルタを与える。
【0035】
多くのパッチアンテナ設計は、指向性の向上のために複数のパッチを採用する。
図11Aは、特性インピーダンスZ
0の中間伝送線路セグメントと直列に配置されたEMAセンサーの概略図であり、所与の設計によって必要とされ得る長さLはどんな長さでもよい。音響信号周波数が伝送線路セグメントを介して出入りするのを防ぐために、キャパシタが設けられ得る。各EMAセンサー内では、音響信号ノードがキャパシタを介して接地に結合され、RFチョークを介してメッシュノードに結合され、RFチョークは、キャパシタと協働して、EM信号周波数が音響信号ノードを介して出入りするのをブロックしながら音響信号周波数を通す。
図11Aの実装形態では、ベース電極は、EM信号周波数をブロックするRFチョークによって接地に結合される。メッシュ電極とベース電極との間の一連のキャパシタは音響キャビティセルのアレイを表す。
【0036】
EM信号周波数において、等価回路は、
図11Bに示されている等価回路、すなわち、伝送線路セグメントによって相互接続されたパッチの直列構成を駆動する増幅器である。音響信号周波数において、等価回路は、
図11Cに示されている等価回路であり、EMAセンサーのうちの一方は、音響バーストを送信するために音響信号によって駆動され、EMAセンサーのうちのもう一方は、音響バーストエコーを示す受信信号変動を検出するために増幅器に結合される。
【0037】
図12Aは、EMトランシーバ302によって収集され得るデジタル信号測定値の一部分を表す例示的なデータキューブを示す。各チャープは測定サイクルと考えられ得る。測定サイクル中に、フロントエンドは、受信アンテナからのダウンコンバートされた受信信号をデジタル化し、それにより、デジタル化された受信信号サンプルの時間シーケンスが与えられる。チャープ変調により、ターゲットによって反射された信号エネルギーは、往復進行時間(したがってターゲットまでの距離)に依存する周波数オフセットとともに、受信アンテナに到達する。所与のサイクル中に収集された時間シーケンスの高速フーリエ変換(FFT)により、各周波数オフセットに関連するエネルギーが隔離され、それにより反射エネルギー対ターゲットレンジの関数が得られる。本明細書で「レンジFFT」と呼ぶことがあるこの演算は各測定サイクル中の各送信受信アンテナペアについて実行され得る。レンジFFTにより、所与のレンジを有する各ターゲットについてのピークが得られる。
【0038】
アンテナアレイに対するターゲットの動きは反射信号エネルギーにドップラーシフトを追加し、ドップラーシフトは本質的に相対速度に比例する。ドップラーシフトは、通常、レンジにより誘導された周波数オフセットに対して小さいが、とはいえ、ドップラーシフトは、以後の測定サイクル中の関連する周波数係数の位相の変化として観測可能である。(FFT係数は、絶対値と位相の両方を有する複素数値であることを想起されたい。)一連の測定サイクル中の対応する周波数係数にFFTを適用すると、各相対速度に関連するエネルギーが隔離され、それにより、反射エネルギー対ターゲット速度の関数が得られる。本明細書で「速度FFT」と呼ぶことがあるこの演算は各レンジと各tx-rxアンテナペアとについて実行され得る。得られた2次元データアレイは、所与のレンジと相対速度とを有する各ターゲットについての「ピーク」を所有する。
【0039】
所与のターゲットからの反射エネルギーは、(「接近角(angle of approach)」としても知られる)反射エネルギーの到来方向に依存する相対位相とともに、アンテナアレイ中の個々の受信アンテナに到達する。一連の均等に離間したアンテナに関連する対応する周波数係数にFFTを適用すると、各入射角に関連するエネルギーが隔離され、それにより、反射エネルギー対接近角(「AoA」)の関数が得られる。本明細書で「AoA FFT」と呼ぶことがあるこの演算は、所与の送信アンテナを使用して各レンジと速度とについて実行され得る。
【0040】
したがって、(
図12Aに示されているように、)時間と、測定サイクルと、アンテナ位置との関数を表す、データキューブの3つの次元を有する測定データキューブ中に配置されたデジタル化された信号測定値を、(
図12Bに示されているように、)レンジと、速度と、AoAとの関数を表す、それの3つの次元を有するターゲットデータキューブに変換することができる。これらの演算(チャネル分離、レンジFFT、速度FFT、およびAoA FFT)は線形であるので、それらの演算を任意の順序で実行することができる。さらに、FFT演算は独立しており(たとえば、所与のアンテナおよびサイクルについてのレンジFFTは他のアンテナおよび他のサイクルについてのレンジFFTから独立しており、所与のレンジおよびアンテナについての速度FFTは他のレンジおよびアンテナについての速度FFTから独立していることを意味する)、それにより、必要な場合、FFT処理を並列化することが可能になる。
【0041】
別の望ましい処理演算は雑音エネルギーからの信号エネルギーの分離である。任意の好適な雑音抑圧またはターゲット検出技法が使用され得る。(多くの変形態を含む)1つの一般的な技法は定フォールスアラームレート(CFAR: constant false alarm rate)検出の技法である。CFAR検出は、(「供試セル」としても知られる)評価される測定の付近または周辺のスライディングウィンドウ中の測定エネルギー価に基づく検出しきい値適応を採用する。元の技法およびそれの変形形態は、スライディングウィンドウ内の測定値から検出しきい値を導出する異なる統計手法を使用することによって、性能と計算複雑さとの間の様々なトレードオフを提供する。CFAR検出は、しきい値を下回る測定値がゼロ化されるかまたは無視されるので非線形技法であるが、とはいえ、周波数係数のゼロ化は、一般に、後続のFFTが、ターゲットを表すエネルギーピークの関連する位相/周波数情報を活用するのを妨げないので、処理シーケンス中のCFAR検出の位置は変更され得る。
【0042】
図13は、トランシーバチップのみによって、またはECUなど、システムレベルプロセッサと組み合わせて実装され得る例示的なデータフロー1400を示す。デジタル化された受信信号EM
kが取得された際、基本的には信号が収集された際にレンジFFT1402が各チャネルについて実行され、それにより、得られた周波数係数がレンジデータとしてフレームバッファ1404に記憶される。フレームバッファ1404は複数の測定サイクルからのレンジデータを蓄積し、それにより、前に説明したように、コントローラ409は、各チャネルについてのターゲットレンジと速度データとを生成するために、次いで速度FFT1406を実行することが可能になる。
【0043】
適応しきい値を下回る雑音エネルギーを除去するために、CFAR検出器1408がターゲットレンジと速度データとに対して動作する。CFAR検出器1408は、しきい値を下回る値をゼロ化し、それにより、潜在的なターゲット(レーダーエネルギー反射体)のレンジおよび速度を表す、しきい値を上回る値のみが残り得る。いくつかの企図される変形形態では、CFAR検出プロセスは、しきい値を下回る値のうちの少なくともいくつかを省略することによって、ならびに、場合によっては、バッファサイズ要件および/またはバス帯域幅要件を低減するためのより高度なデータ圧縮技法を採用することによって、データ量を圧縮する。コントローラ409は、さらに、潜在的なターゲットに関連する相対方向を決定するためにAoA FFT1410を実行し得る。
【0044】
デジタル化された音響信号ACkが各音響受信EMAセンサーから取得された際、DSP510は、距離に関係する減衰を補償するために相関フィルタを適用し、出力をスケーリングする。DSPは、さらに、ピークを識別し、関連する障害物の距離および方向を決定するためにアレイ処理1414を実行し得、随意に、障害物を経時的に追跡して速度計算1416を実行し得る。コントローラ409またはシステムレベルプロセッサ202は、短距離音響信号測定値をより長距離のEM信号測定値とつなぎ合わせるためにセンサーフュージョン処理を実行し得る。ターゲットを評価し、応答アクションが必要とされるかどうかを決定し、随意に、応答アクションを自動的に実行するために、システムレベルプロセッサによってターゲット検出および追跡が実行され得る。
【0045】
図14は、MIMO EMAセンサーシステムによって実装可能な例示的な障害物検出方法のフローチャートである。この障害物検出方法はブロック1502において開始し、チャープ生成器404を使用して、信号周波数が開始周波数から終了周波数まで直線的にランプする間隔を有するチャープ信号を生成する。チャープ信号は、上昇チャープ信号、下降チャープ信号、さらには三角形の上昇後に下降するチャープ信号であり得る。チャープ信号は、複数の送信信号に分割され、ブロック1504において、選択されたEMA送信センサーに供給される。ブロック1506において、少なくとも距離および方向の関数として反射信号エネルギーを決定するために、選択されたEMA受信センサーからEM受信信号を取得し、処理する。ブロック1508において、送信機506が音響信号を生成し、ブロック1510において、音響信号を選択されたEMA送信センサーに供給する。ブロック1512において、少なくとも距離および方向の関数として反射信号エネルギーを決定するために、選択されたEMA受信センサーから音響受信信号を取得し、処理する。ブロック1514において、反射信号エネルギー対距離および方向のマップを決定するために、短距離音響エネルギー測定値をより長距離のEM信号測定値と組み合わせる。ブロック1516において、応答アクションが必要とされるかどうかを決定し、応答アクションが必要とされる場合には応答アクションを開始するために、プロセッサがターゲット検出および追跡を適用し、さらにターゲットを分析し得る。
【0046】
図15における動作について説明の目的で逐次的に説明したが、様々な動作が実際には同時にまたはパイプライン様式で実装され得る。その上、動作は、いくつかの実装形態では、並べ替えられるかまたは非同期的に実行され得る。
【0047】
上記の開示が十分に諒解されると、多数の他の改変、等価物、および代替が当業者に明らかになろう。以下の特許請求の範囲は、適用可能な場合、すべてのそのような改変、等価物、および代替を包含すると解釈されるものとする。
【符号の説明】
【0048】
102 車両
104 前方センサーアレイ
106 後方センサーアレイ
108 サイド音響センサーアレイ
202 電子制御ユニット
204 センサー
205 センサー
206 センサー
208 ターンシグナルアクチュエータ
210 ステアリングアクチュエータ
212 制動アクチュエータ
214 スロットルアクチュエータ
216 ユーザ対話型インターフェース
302 EMトランシーバチップ
304 音響トランシーバチップ
306 プリント回路板
308A EMAセンサー
308B EMAセンサー
309A EMAセンサー
309B EMAセンサー
310A EMAセンサー
310B EMAセンサー
311A EMAセンサー
311B EMAセンサー
312 パッチ電極
314 ベース電極
402 EMトランシーバチップ
404 チャープ生成器
406 電力スプリッタ
407 ダウンコンバージョンミキサ
408 位相シフタ
409 コントローラ
410 電力増幅器
412 ローパスフィルタ
414 利得制御増幅器
416 アナログデジタル変換器
502 音響トランシーバチップ
504 コア論理
505 不揮発性メモリ
506 送信機
508 低雑音増幅器
510 デジタル信号プロセッサ
902 4×4グリッド
1400 データフロー
1402 レンジFFT
1404 フレームバッファ
1406 速度FFT
1408 CFAR検出器
1410 AoA FFT
1414 アレイ処理
1416 速度計算
【国際調査報告】