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特表2024-512900ラタノプロストを含む安定な眼科用組成物
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  • 特表-ラタノプロストを含む安定な眼科用組成物 図1
  • 特表-ラタノプロストを含む安定な眼科用組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ラタノプロストを含む安定な眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5575 20060101AFI20240313BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240313BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240313BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61K31/5575
A61K9/08
A61K47/10
A61P27/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/34
A61K31/5377
A61K31/542
A61K47/02
A61K47/04
A61P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553238
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022057790
(87)【国際公開番号】W WO2022207454
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166452.9
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523330215
【氏名又は名称】アクトレボ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ACTREVO GMBH
【住所又は居所原語表記】Groser Burstah 25, 20457 Hamburg (DE)
(71)【出願人】
【識別番号】523330226
【氏名又は名称】オプタス ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OPTUS PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】50, Osongsaengmyeong6-ro, Osong-eup, Heungduk-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, Osong-Eup, Chungcheongbuk-do 28156 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレミング,ジェンズ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,ハーム
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,スンハク
(72)【発明者】
【氏名】リー,カンオク
(72)【発明者】
【氏名】コ,ジンソオク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨウンウォオン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD09F
4C076DD23D
4C076DD26Z
4C076DD38D
4C076EE23F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF63
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA331
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC85
4C086CB29
4C086DA02
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、0.003重量%~0.007重量%の量のラタノプロスト、0.3重量%~0.7重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(macrogolglycerol hydroxystearate)40、および0.05重量%~0.09重量%の量のプロピレングリコールを含む水性眼科用組成物であって、組成物が防腐剤および安定化剤を含まない、水性眼科用組成物に関する。さらに、本発明は、高眼圧症および/または緑内障の治療における使用に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.003重量%~0.007重量%の量のラタノプロスト、0.3重量%~0.7重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(macrogolglycerol hydroxystearate)40、および0.05重量%~0.09重量%の量のプロピレングリコールを含む水性眼科用組成物であって、前記組成物は防腐剤および安定化剤を含まない、水性眼科用組成物。
【請求項2】
マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40が、完全にもしくは実質的に完全に前記組成物中の唯一の界面活性剤であり、および/またはプロピレングリコールは完全にまたは実質的に完全に前記組成物中の唯一の非イオン性等張剤であることを特徴とする、請求項1に記載の水性眼科用組成物。
【請求項3】
前記組成物は、少なくとも0.004重量%の量のラタノプロスト、および/または少なくとも0.4重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート、および/または少なくとも0.06重量%の量のプロピレングリコールを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の水性眼科用組成物。
【請求項4】
前記組成物は、少なくとも0.005重量%の量のラタノプロスト、および/または少なくとも0.5重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40、および/または少なくとも0.07重量%の量のプロピレングリコールを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物。
【請求項5】
前記組成物は、少なくとも1つのさらなる活性成分を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのさらなる活性成分は、チモロールおよびブリンゾラミドならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の水性眼科用組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのさらなる活性成分は、遊離塩基チモロールに基づいて0.4~0.6重量%の量の、チモロールまたはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項6に記載の水性眼科用組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのさらなる活性成分は、前記遊離塩基チモロールに基づいて少なくとも0.5重量%の量の、チモロールまたはその薬学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項7に記載の水性眼科用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つのイオン等張剤を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物。
【請求項10】
前記組成物は、緩衝系を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物。
【請求項11】
前記緩衝系は、リン酸緩衝系であることを特徴とする、請求項10に記載の水性眼科用組成物。
【請求項12】
前記組成物のpH値は、6.4~7.0、好ましくは6.5~6.9、特に好ましくは6.6~6.8であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物。
【請求項13】
前記組成物は、単回用量として提供されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物。
【請求項14】
高眼圧症および/または緑内障の治療における、請求項1~13のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物の使用。
【請求項15】
高眼圧症および/または緑内障の治療のための、請求項1~14のいずれか1項に記載の水性眼科用組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いかなる安定化剤および防腐剤も含まない、安定な水性眼科用ラタノプロスト組成物に関する。さらに、ラタノプロスト組成物には、例えばチモロールおよびブリンゾラミドから選択される少なくとも1つのさらなる活性成分が提供される。
【0002】
本発明は、水性眼科用ラタノプロスト組成物を開示する。ラタノプロスト、イソプロピル-(Z)-7-[(1R,2R,3R,5S)-3,5-ジヒドロキシ-2-[(3R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンチル]シクロペンチル]-5-ヘプタノエート、CAS番号130209-82-4はプロスタグランジンF2α類似体であり、眼科用組成物でのその使用で知られている。特に、ラタノプロストは、緑内障および高眼圧症の治療における眼科用組成物の有効成分として提案されている。これらの組成物中のさらなる活性成分として、ブリンゾラミドおよびチモロール、例えばチモロールマレートの形態が提案されている。
【0003】
これらの製剤のいくつかはすでに市販されており、例えば、商標Xalatan(登録商標)、Monoprost(登録商標)、Xaloptic(登録商標)およびFixaprost(登録商標)で販売されている。
【0004】
一般に、眼科用組成物は安定である必要があり、有効成分が作用場所に送達されるように可溶化する必要がある。この目的のために、多くの場合、溶液に大量の界面活性剤が添加され、目の炎症などの副作用を引き起こし得る。
【0005】
眼科用組成物では、安定であり、さらに患者の目の炎症などの副作用を引き起こさない組成物を提供することが常に課題である。ラタノプロスト点眼液を安定化させる試みは、塩化ベンザルコニウム(Xaloptic(登録商標))を使用するか、または点眼液のpH値を5.0~6.25に調整することによって行われている。それぞれの製品は、商標「Xalatan(登録商標)pH6」の下で販売された。どちらの場合も、目の炎症などの副作用が報告されている。
【0006】
しかし、たとえ、例えばXalatan(登録商標)などでこれらの副作用が許容されるとしても、「ヒト用医薬品の技術的要件調和に関する国際評議会(The International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use)」(ICH)のガイドラインでは、これらの組成物を25℃超で保管しないことを推奨している。この推奨事項は、それぞれの組成物の安定性試験の結果である。世界の多くの地域で気温が上昇しているため、この推奨事項により、冷蔵庫が利用できる場合には組成物を冷蔵庫で保管する必要が生じる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、防腐剤および安定化剤を含まず、さらに安定化剤なしでも驚くべき安定性を示す水性眼科用ラタノプロスト組成物を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、防腐剤および安定化剤を含まず、高温でも高い安定性を示し、良好に許容される水性眼科用組成物を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載の水性眼科用組成物および従属請求項に記載の好ましい実施形態を提供することによって解決される。
【0010】
したがって、本発明の目的は、0.003重量%~0.007重量%の量のラタノプロスト、0.3重量%~0.7重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(macrogolglycerol hydroxystearate)40、および0.05重量%~0.09重量%の量のプロピレングリコールを含む水性眼科用組成物であって、組成物が防腐剤および安定化剤を含まない、水性眼科用組成物を提供することによって解決される。
【0011】
マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(macrogolglycerol hydroxystearate)40は、Kolliphor(登録商標)RH 40およびポリオキシル40硬化ヒマシ油としても知られている。
【0012】
本発明による水性眼科用組成物は、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40が、完全にもしくは実質的に完全に組成物中の唯一の界面活性剤であり、および/またはプロピレングリコールは完全にまたは実質的に完全に組成物中の唯一の非イオン性等張剤であることが好ましい。
【0013】
本発明による水性眼科用組成物は、当該組成物が、少なくとも0.004重量%の量のラタノプロスト、および/または少なくとも0.4重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40、および/または少なくとも0.06重量%の量のプロピレングリコールを含むことがさらに好ましい。
【0014】
本発明による水性眼科用組成物は、当該組成物が、少なくとも0.005重量%の量のラタノプロスト、および/または少なくとも0.5重量%の量のマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40、および/または少なくとも0.07重量%の量のプロピレングリコールを含むことがさらに好ましい。
【0015】
本発明による水性眼科用組成物は、当該組成物が少なくとも1つのさらなる活性成分を含むことが特に好ましい。
【0016】
本発明による水性眼科用組成物は、少なくとも1つのさらなる活性成分が、チモロールおよびブリンゾラミドならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択されることがさらに好ましい。
【0017】
本発明による水性眼科用組成物のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも1つのさらなる活性成分が、遊離塩基チモロールに基づいて0.4~0.6重量%の量の、チモロールまたはその薬学的に許容される塩である。
【0018】
本発明による水性眼科用組成物は、少なくとも1つのさらなる活性成分が、遊離塩基チモロールに基づいて少なくとも0.5重量%の量の、チモロールまたはその薬学的に許容される塩であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態では、水性眼科用組成物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、および塩化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つのイオン等張剤を含む。
【0020】
本発明による水性眼科用組成物は、当該組成物が緩衝系を含むことがさらに好ましい。
【0021】
本発明による好ましい実施形態では、水性眼科用組成物は、リン酸緩衝系である緩衝系を含む。
【0022】
特に好ましいのは、組成物のpH値が6.4~7.0、好ましくは6.5~6.9、特に好ましくは6.6~6.8である本発明による水性眼科用組成物である。
【0023】
本発明による好ましい実施形態では、水性眼科用組成物は単回用量として提供される。
【0024】
特に好ましいのは、高眼圧症および/または緑内障の治療における本発明による水性眼科用組成物の使用である。
【0025】
さらに好ましいのは、高眼圧症および/または緑内障の治療のための本発明による水性眼科用組成物の使用である。
【0026】
好ましくは、本発明による水性眼科用組成物は点眼液として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】Xalacom(登録商標)およびXalatan(登録商標)と比較した、本発明による組成物の生存率試験の結果を示す。
図2】Monoprost(登録商標)およびFixaprost(登録商標)と比較した、本発明による組成物の生存率試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
驚くべきことに、本発明による組成物は、40℃で保存した場合でも優れた安定性を示すことが見出された。安定性試験の結果は、本発明による組成物が40℃で少なくとも6か月間安定であることを示している。
【0029】
そしてさらに、細胞生存率試験は、さらに本発明による組成物が高い忍容性を示すことを示している。これは、従来技術のアプローチとは異なり、安定性の向上には副作用または非互換性が伴わないことを意味する。
【0030】
本発明による水性眼科用組成物は、ラタノプロスト、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40(Kolliphor(登録商標)RH 40)、プロピレングリコール、緩衝系およびイオン等張剤、例えば塩化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムまたは塩酸を用いてpH6.4~7.0に調整する。本発明の目的を達成するために、さらなる添加剤は必要ない。そして最も重要なことは、この組成物には防腐剤および安定化剤が含まれていないことである。
【0031】
したがって、少なくとも1つの有効成分ラタノプロストの他に、本発明による組成物は、界面活性剤としてマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40、および組成物のオスモル濃度を調整するための溶媒および等張化剤としてプロピレングリコールを含む。
【0032】
本発明による水性眼科用組成物の好ましい実施形態では、緩衝系は、リン酸二水素ナトリウム一水和物および無水リン酸二ナトリウムから調製されるリン酸緩衝剤である。
【0033】
本発明による水性眼科用組成物の好ましい実施形態では、少なくとも1つのさらなる活性成分、例えばチモロールもしくはブリンゾラミド、またはこれらの活性成分の生理学的に許容される塩が含まれる。
【0034】
以下に説明するように、本発明による好ましい実施形態を用いて安定性試験を実施した。
【0035】
安定性データ
ブローフィルシール技術を使用して、好ましい実施形態(表1に開示されている0.05mg/mLのラタノプロスト溶液)は、LDPE単回用量容器のストリップに充填される。単回用量容器にはラベルが付いている。5本の充填アンプルのうちの2本をアルミホイルの袋に詰めている。
【0036】
安定性試験は、加速条件下で好ましい実施形態の3つのバッチ(19001、19002、19003)に対して実施された。試験した組成物の組成を表1に示す。加速条件下での安定性試験の結果を表2に、長期条件下での安定性試験の結果を表3に示す。
【0037】
医薬品の単回用量容器には、0.2mL以上のラタノプロスト0.05mg/mLの点眼液が含まれている。医薬品は無色透明の溶液で、滅菌されており、そして実質的に粒子がない。溶液の公称pHは6.7で、溶液のオスモル濃度は250~320mOsmol/kgである。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0038】
本発明による組成物の優れた安定性が明らかになった後、本発明者らは、本発明による組成物中のプロピレングリコールの存在が組成物の安定性に影響を及ぼすかどうかを調査した。
【0039】
この目的のために、2つの組成物の安定性を比較した。組成物RD20-131は本発明による組成物であり、したがってプロピレングリコールを含む。組成を表4に示す。
【0040】
表5に示す組成物RD20-132は、RD20-132がプロピレングリコールを含まないという点のみでRD20-131と異なる。
【表4】
【0041】
RD20-132は同じ組成を有するが、プロピレングリコールが含まれていない。
【表5】
【0042】
両方の組成物(RD20-131およびRD20-132)を2℃~8℃(対照として)および60℃で5日間保存した。
【0043】
組成物の安定性を決定するために、溶液の外観、pH値、オスモル濃度、アッセイおよび不純物を決定した。
【0044】
表6にまとめた結果が示すように、プロピレングリコールの存在は溶液の安定性に影響を及ぼさない。両方の組成物、すなわちRD20-131およびRD20-132は、同じ安定性を示す。
【表6】
【0045】
これは、プロピレングリコールが本発明による組成物に対して安定化効果を持たず、従って安定化剤とはみなせないことを意味する。
【0046】
むしろ、プロピレングリコールは有効成分の可溶化を高め、オスモル濃度の調整に役立つようである。
【0047】
すでに述べたように、眼科用組成物の高い安定性は、ユーザーにとって有害な副作用を伴うことが多い。副作用の理由は、ほとんどの場合、使用されている防腐剤および安定化剤、あるいはpH値などの溶液のさらなる安定化パラメーターである。
【0048】
安全性と耐容性
本発明による組成物の安全性および耐容性を調査するために、細胞増殖アッセイに従って細胞生存率試験を行った。この目的を達成するために、HCE-T細胞を使用して、細胞増殖および細胞生存率に対するラタノプロスト組成物の影響を研究した。研究の結果は、市販のラタノプロスト組成物について並行して実施された試験の結果と比較された。図1および図2は、試験モデルの結果をグラフで示す。試験および結果については、以下で詳しく説明する。
【0049】
試験は、本発明による組成物の高い受け入れ性(acceptance)、特にXalacom(登録商標)、Xalatan(登録商標)、Monoprost(登録商標)、およびFixaprost(登録商標)と比較して非常に高い受け入れ性を示す。
【0050】
試験モデル細胞増殖アッセイ(細胞生存率試験)
試験モデル: HCE-T細胞、ここで、HCE-Tは「不死化ヒト角膜上皮細胞株」を表す。
【0051】
試験手順: 一般手順は、Huhtala et al. in J. Ocul. Pharmacol. Ther. 2003, 19(1), 11-21によって記載されるアプローチに従った。
【0052】
不死化HCE-T細胞は内部手順に従って培養された。細胞を、4日間にわたって1日1回、15分間製剤に曝露した。その後、細胞の生存率をMTSアッセイによって測定した。(Malich et al. in Toxicology 1997, 124(3), 179-192を参照)。試験モデルの陰性対照と陽性対照の両方について、細胞をクレブス-リンガーおよび溶解緩衝液でも同様に処置した。
【0053】
生存率試験は、市販のラタノプロスト組成物と比較して実施された。以下に市販されているこれらの組成を公開情報に基づいて示す。
【0054】
Xalatan(登録商標) pH6
Xalatan(登録商標)50マイクログラム/mLラタノプロスト点眼液は、1mL中に0.05 mgのラタノプロスト、0.20mgの塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、7.70mgのリン酸二水素ナトリウム一水和物、1.55mgの無水リン酸二ナトリウム、および注射用水を含む。
【0055】
これ以上公開されているデータはない。
【0056】
Xalacom(登録商標)
Xalacom点眼液、複数回用量容器に入った溶液は、1mL中に0.05mgのラタノプロスト、5.00mgのチモロール遊離塩基に相当する6.80mgのチモロールマレート、リン酸二水素ナトリウム一水和物、無水リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウムおよび注射用水を含む。
【0057】
Monoprost(登録商標)
Monoprost(登録商標)50マイクログラム/mL ラタノプロスト点眼液は、1mL中に0.05mgのラタノプロスト、50mgのマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート40、ソルビトール、カルボマー974P、マクロゴール4000、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび注射用水を含む。
【0058】
これは、組成物が比較的多量の界面活性剤を含むことを意味し、これにより組成物の耐容性が比較的低下する可能性がある。
【0059】
Fixaprost(登録商標)
Fixaprost(登録商標)は、点眼液1mL中に、0.05mgのラタノプロスト、5mgのチモロール(チモロールマレートの形態)、50mgのマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート、ソルビトール、マクロゴール4000、カルボマー974P、エデト酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび注射用水を含む。
【0060】
生存率試験の結果から分かるように、本発明による組成物は、並行して試験した製品と比較して、より高い程度の忍容性を示す。組成物Xalatan(登録商標)およびXalacom(登録商標)は両方とも、HCE-T細胞に対して毒性効果を示すことが知られている塩化ベンザルコニウムを含む。この効果は、図1の生存率データで見ることができる。
【0061】
さらに、図2に提供されるデータは、Monoprost(登録商標)およびFixaprost(登録商標)が本発明による組成物より耐容性が低いことを示す。両方の組成物は、本発明による組成物中の5mg/mLと比較して、はるかに多い量、すなわち50mg/mLの界面活性剤を含む。
【0062】
したがって、本発明による組成物は、比較した組成物よりも耐容性が高く、目に対する有害性が低いことが示された。
【0063】
チモロールとの併用
さらに好ましい実施形態では、本発明による組成物は、チモロールを、好ましくはチモロールマレートの形態で含む。チモロールは非選択的β遮断薬であり、高眼圧症の治療においてラタノプロストと併用される。
【0064】
チモロールは、チモロールの遊離塩基に基づいて、0.4~0.6重量%、最も好ましくは0.5重量%の量でラタノプロスト組成物の上記の参照された好ましい実施形態に添加される。
【0065】
チモロールおよびラタノプロストを含む本発明による最も好ましい組成物は、表7に示すように、1mL中に以下の成分を含む。
【表7】
【0066】
少なくとも1つのさらなる活性成分がチモロールである本発明による組成物は、第2の活性成分を含まない本発明による組成物と保存安定性および耐性に関して同じ肯定的な特性を示す。
【0067】
その理由は、本発明によれば、組成物中に防腐剤および安定化剤も含まれず、さらに、本発明による組成物は界面活性剤の含有量が比較的低いためである。
【0068】
本発明による水性眼科用組成物は、溶液、乳濁液、懸濁液、ゲルおよび軟膏のような任意の眼科的に許容される形態で提供され得る。

図1
図2
【国際調査報告】