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特表2024-512903高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/587 20060101AFI20240313BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20240313BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20240313BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C04B35/587
C04B35/645 500
F16C19/06
F16C33/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553433
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2022126295
(87)【国際公開番号】W WO2023071897
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111246756.0
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519228382
【氏名又は名称】中材高新▲タン▼化物陶瓷有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523332105
【氏名又は名称】中国航▲発▼哈▲爾▼▲浜▼▲軸▼承有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲偉▼儒
(72)【発明者】
【氏名】公平
(72)【発明者】
【氏名】徐金▲夢▼
(72)【発明者】
【氏名】王文雪
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼峰
(72)【発明者】
【氏名】董廷霞
(72)【発明者】
【氏名】高翔
(72)【発明者】
【氏名】宋健
(72)【発明者】
【氏名】呂沛▲遠▼
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA02
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA09
3J701BA10
3J701DA20
3J701EA44
3J701FA31
3J701GA60
3J701XB03
3J701XB14
3J701XB31
3J701XB33
(57)【要約】
本発明は、高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用を提供し、セラミック球の製造技術の分野に属する。本発明は、窒化珪素セラミック微小球に存在するブローホール、異常に大きな結晶粒、表面ピット及び雪片等の欠陥を解決し、窒化珪素セラミック微小球の高精度製造を実現する。実施例の結果から、本発明によって製造された高精度窒化珪素セラミック微小球のビッカース硬さHV10が最高1524kg/mmに達し、破壊靭性値が最高8.6MPa・m1/2に達し、表面粗さが0.006μm≦Ra≦0.008μmであり、微小球の直径変動量が0.03μm≦VDw≦0.08μmであり、球面誤差が0.03μm≦△Sph≦0.08μmであり、各項目の性能指標がいずれもGB/T308.2-2010/ISO3290-2:2008『転がり軸受ビーズの第2部分:窒化珪素セラミックマイクロビーズ』標準要件のG3レベルの標準要件に合うことが示される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法であって、
窒化珪素粉末、焼結助剤及び分散液をボールミル混合して、混合材料液を得るステップと、
前記混合材料液を噴霧造粒して、造粒粉末を得るステップと、
前記造粒粉末をプレス成形して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得るステップと、
前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及びより大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を坩堝に装入して、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、窒化珪素ブランク球を得るステップと、
前記窒化珪素ブランク球を研削加工して、高精度窒化珪素セラミック微小球を得るステップとを含み、
前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径の5~50倍であり、前記坩堝は多層側壁坩堝であり、前記多層側壁は、外から内へ順に黒鉛外壁、中間壁及び内壁を含み、前記中間壁及び内壁の延在方向は、前記坩堝の外壁の延在方向と一致し、前記中間壁及び内壁の材質は窒化珪素であり、隣接する層の側壁間の隙間は、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径より大きい、ことを特徴とする高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法。
【請求項2】
前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、20~35mmであり、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径は、0.8~4mmであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球との質量比は、1:(1~3)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記雰囲気加圧焼結の温度は1700~1800℃であり、保温時間は1~3hであり、前記雰囲気加圧焼結は窒素ガスの保護雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
室温から前記雰囲気加圧焼結の温度まで昇温し、昇温速度は5~20℃/minであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記雰囲気加圧焼結は、常圧下で行われることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記熱間等方圧加圧焼結の温度は1800~1850℃であり、保温時間は0.5~1hであり、前記熱間等方圧加圧焼結は窒素ガスの保護雰囲気中で行われ、前記熱間等方圧加圧焼結時の窒素ガスの圧力は200~210MPaであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記熱間等方圧加圧焼結の温度まで昇温する昇温速度は、5~20℃/minであることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記焼結助剤の質量は、前記窒化珪素粉末と前記焼結助剤の合計質量の3~5%であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記焼結助剤は、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イッテルビウム、酸化エルビウム及び酸化サマリウムの群から選ばれる一種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記窒化珪素粉末及び前記焼結助剤の合計質量に対する百分率で、前記焼結助剤は、酸化アルミニウム3%+酸化ランタン2%、酸化アルミニウム2%+酸化ルテチウム1%、又は酸化アルミニウム2%+酸化エルビウム2%であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記坩堝に装入することは、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及び前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を前記多層側壁坩堝の中間壁及び内壁によって形成されたキャビティに装入することであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記分散液は、無水エタノールであることを特徴とする請求項1又は9に記載の製造方法。
【請求項14】
前記分散液の質量と、前記窒化珪素粉末と前記焼結助剤の合計質量との比は、(3~4):1であることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記造粒粉末の粒径は、50~100μmであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記内壁の厚さは2~4mmであり、内壁によって形成された同心円の内径は90~100mmであり、前記中間壁の厚さは3~5mmであり、中間壁によって形成された同心円の内径は180~200mmであり、前記黒鉛外壁の厚さは8~10mmであり、形成された同心円の内径は300~320mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項17】
前記坩堝の各側壁の高さは同じ、15~17mmであることを特徴とする請求項1又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記高精度窒化珪素セラミック微小球のサイズは、0.4~1mmであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項19】
前記高精度窒化珪素セラミック微小球の表面粗さRaは、0.006μm≦Ra≦0.008μmを満たし、前記微小球の直径変動量VDwは、0.03μm≦VDw≦0.08μmを満たし、球面誤差ΔSphは、0.03μm≦ΔSph≦0.08μmを満たすことを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載の製造方法で製造された高精度窒化珪素セラミック微小球。
【請求項20】
前記高精度窒化珪素セラミック微小球のビッカース硬さHV10は、最高1480kg/mmに達し、破壊靭性値は最高8MPa・m1/2に達することを特徴とする請求項19に記載の高精度窒化珪素セラミック微小球。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の高精度窒化珪素セラミック微小球の歯科用ドリル軸受における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月26日に中国特許庁に出願された、出願番号が202111246756.0、発明の名称が「高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、セラミック球の製造技術の分野に関し、特に高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、人々の生活水準及び生活の質の向上に伴い、歯科疾患の予防と治療がますます重要視され、普及している。現在、中国では歯科用ハンドピースに付帯する高速歯科用ドリル軸受に対するニーズが絶えず増加している。高速歯科用ドリル玉軸受は、薄肉の超軽量シリーズの精密マイクロ玉軸受であり、その回転速度が高く、動作時に高速起動が要求され、騒音が低く、一定のアキシアル荷重及びラジアル荷重に耐えることができ、良好な耐食性及び耐摩耗性を有し、湿った口腔内で長期間動作しても錆びないことが要求され、正確な使用条件下で臨床寿命が6ヶ月に達する。従来、高速歯科用ドリル軸受は、主に国外から輸入され、現在、中国では少数の軸受企業が生産しているが、その品質、仕様及び数量はいずれも市場のニーズを満たすことができないため、高速歯科用ドリル軸受の研究開発に重要な意義を有する。
【0004】
Siセラミック球は、密度が低く、質量が軽く、球の遠心力を顕著に低下させるだけでなく、球のジャイロモーメントも顕著に低下させ、それにより軸受の予圧荷重を低下させ、軸受内部の接触荷重を減少させ、軸受内部の摩擦トルク及び摩擦による温度上昇を顕著に低下させる。また、窒化珪素セラミック球は、硬度が高く、耐食性、摩擦摩耗に強く、熱膨張係数が小さい等の特徴を有し、その熱吸収が低く、冷却要件が低く、潤滑条件が悪い環境でも動作できる。同時に、セラミック球は、鋼の表面と接着・摩耗しにくく、高速・軽荷重時、窒化珪素セラミック玉軸受は、全鋼製軸受より耐用年数が長い。したがって、窒化珪素セラミック球は、高速歯科用ドリル軸受の転動体の材料として非常に適している。
【0005】
軸受が作動する時、その振動は耐用年数に深刻な影響を与え、それにより作業装置の安定性、信頼性に影響を与える。リングや保持器に比べて、軸受の転動体の表面粗さは軸受の振動の主な原因であり、軸受に雑音を発生させる。単一のセラミック球の振動は、主に球の表面品質欠陥及び球の幾何学的形状誤差から生じる。現在、歯科用ドリル用の窒化珪素セラミック微小球の表面品質欠陥は、主にブローホール、ピット、異常に大きな結晶粒及び雪片であり、セラミック球の表面粗さに深刻な影響を与えて耐用年数を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、窒化珪素セラミック微小球に存在するブローホール、異常に大きな結晶粒、表面ピット及び雪片等の欠陥を解決し、窒化珪素セラミック微小球の高精度製造を実現する、高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0008】
本発明は、高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法であって、
窒化珪素粉末、焼結助剤及び分散液をボールミル混合して、混合材料液を得るステップと、
前記混合材料液を噴霧造粒して、造粒粉末を得るステップと、
前記造粒粉末をプレス成形して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得るステップと、
前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及びより大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を坩堝に装入して、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、窒化珪素ブランク球を得るステップと、
前記窒化珪素ブランク球を研削加工して、高精度窒化珪素セラミック微小球を得るステップとを含み、
前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径の5~50倍であり、前記坩堝は多層側壁坩堝であり、前記多層側壁は、外から内へ順に黒鉛外壁、中間壁及び内壁を含み、前記中間壁及び内壁の延在方向は、坩堝の外壁の延在方向と一致し、前記中間壁及び内壁の材質は窒化珪素であり、隣接する層の側壁の間の隙間は、より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径より大きい、高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法を提供する。
【0009】
好ましくは、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、20~35mmであり、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径は、0.8~4mmである。
【0010】
好ましくは、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球との質量比は、1:(1~3)である。
【0011】
好ましくは、前記雰囲気加圧焼結の温度は1700~1800℃であり、保温時間は1~3hであり、前記雰囲気加圧焼結は窒素ガスの保護下で行われる。
【0012】
好ましくは、前記熱間等方圧加圧焼結の温度は1800~1850℃であり、保温時間は0.5~1hであり、前記熱間等方圧加圧焼結は窒素ガスの保護下で行われ、前記熱間等方圧加圧焼結時の窒素ガスの圧力は200~210MPaである。
【0013】
好ましくは、前記焼結助剤の質量は、前記窒化珪素粉末と前記焼結助剤の合計質量の3~5%である。
【0014】
好ましくは、前記焼結助剤は、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イッテルビウム、酸化エルビウム及び酸化サマリウムの群から選ばれる一種又は複数種を含む。
【0015】
好ましくは、前記坩堝に装入することは、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及び前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を多層側壁坩堝の中間壁及び内壁によって形成されたキャビティに装入することである。
【0016】
本発明は、上記解決手段に記載の製造方法で製造された高精度窒化珪素セラミック微小球を提供し、前記高精度窒化珪素セラミック微小球の表面粗さRaが、0.006μm≦Ra≦0.008μmを満たし、前記微小球の直径変動量VDwが、0.03μm≦VDw≦0.08μmを満たし、球面誤差△Sphが、0.03μm≦△Sph≦0.08μmを満たす。
【0017】
本発明は、上記解決手段に記載の高精度窒化珪素セラミック微小球の歯科用ドリル軸受における使用を提供する。
【0018】
本発明は、高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法であって、窒化珪素粉末、焼結助剤及び分散液をボールミル混合し、混合材料液を得るステップと、前記混合材料液を噴霧造粒し、造粒粉末を得るステップと、前記造粒粉末をプレス成形し、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得るステップと、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及びより大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を坩堝に装入して、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、窒化珪素ブランク球を得るステップと、前記窒化珪素ブランク球を研削加工して、高精度窒化珪素セラミック微小球を得るステップとを含み、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径の5~50倍であり、前記坩堝は多層側壁坩堝であり、前記多層側壁は、外から内へ順に黒鉛外壁、中間壁及び内壁を含み、前記中間壁及び内壁の延在方向は、坩堝の外壁の延在方向と一致し、前記中間壁及び内壁の材質は窒化珪素であり、隣接する層の側壁の間の隙間は、より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径より大きい、高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球をともに焼結し、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径が前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径より大きいため、坩堝に装入する時、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地が前記大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の隙間内に充填され、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地が焼結過程で均一に加熱されることに役立つ。また、本発明は、多層側壁坩堝を用いて焼結を行い、かつ中間壁及び内壁の材質はいずれも窒化珪素であり、窒化珪素は熱の一部を吸収して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の局部的な受熱量が高すぎて結晶粒が異常に成長し、表面に白いピット、雪片等の欠陥が発生することを防止することができる。また、本発明は、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行うことにより、単一の雰囲気加圧焼結又は熱間等方圧加圧焼結に比べて、窒化珪素セラミック微小球の緻密度をさらに向上させ、ブローホール及び異常に大きな結晶粒の欠陥を減少させ、それによりSiセラミック球の機械的性質、安定性及び表面品質を向上させることができる。
【0020】
さらに、本発明は、焼結助剤の質量を窒化珪素粉末と焼結助剤の合計質量の3~5%に制御することにより、焼結時に焼結助剤と粒子表層物質が反応して形成される窒素酸化物の液相が少なくなり、焼結後に結晶粒界間に残ったガラス相が少なくなり、セラミック球の純度が高くなり、窒化珪素セラミック微小球の機械的性質を向上させることに役立つ。
【0021】
実施例の結果から、本発明により製造された高精度窒化珪素セラミック微小球のビッカース硬さHV10が最高1524kg/mmに達し、破壊靭性値が最高8.6MPa・m1/2に達し、表面粗さが0.006μm≦Ra≦0.008μmであり、微小球の直径変動量が0.03μm≦VDw≦0.08μmであり、球面誤差が0.03μm≦△Sph≦0.08μmであり、各項目の性能指標がいずれもGB/T308.2-2010/ISO3290-2:2008『転がり軸受ビーズの第2部分:窒化珪素セラミックマイクロビーズ』標準要件のG3レベルの標準要件に合うことが示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の焼結用坩堝の構造概略図である。
図2】比較例1で製造された窒化珪素微小球の写真である。
図3】比較例1で製造された窒化珪素微小球の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法であって、
窒化珪素粉末、焼結助剤及び分散液をボールミル混合して、混合材料液を得るステップと、
前記混合材料液を噴霧造粒して、造粒粉末を得るステップと、
前記造粒粉末をプレス成形して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得るステップと、
前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及びより大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を坩堝に装入して、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、窒化珪素ブランク球を得るステップと、
前記窒化珪素ブランク球を研削加工して、高精度窒化珪素セラミック微小球を得るステップとを含み、
前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径の5~50倍であり、前記坩堝は多層側壁坩堝であり、前記多層側壁は、外から内へ順に黒鉛外壁、中間壁及び内壁を含み、前記中間壁及び内壁の延在方向は、坩堝の外壁の延在方向と一致し、前記中間壁及び内壁の材質は窒化珪素であり、隣接する層の側壁の間の隙間は、より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径より大きい、高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法を提供する。
【0024】
本発明において、特に説明しない限り、使用される原料はいずれも本分野で周知の市販品である。
【0025】
本発明は、窒化珪素粉末、焼結助剤及び分散液をボールミル混合して、混合材料液を得る。
【0026】
本発明において、前記焼結助剤の質量は、窒化珪素粉末と焼結助剤の合計質量の3~5%であることが好ましく、前記焼結助剤は、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イッテルビウム、酸化エルビウム及び酸化サマリウムの群から選ばれる一種又は複数種を含むことが好ましく、酸化アルミニウム3%+酸化ランタン2%、酸化アルミニウム2%+酸化ルテチウム1%、又は酸化アルミニウム2%+酸化エルビウム2%を含むことがより好ましい。本段落中の百分率は、窒化珪素粉末と焼結助剤の合計質量に対するものである。
【0027】
本発明において、前記分散液は、無水エタノールであることが好ましく、前記分散液の質量と、窒化珪素粉末と焼結助剤の合計質量との比は、(3~4):1であることが好ましい。
【0028】
本発明において、前記ボールミル混合に用いられる研磨球は、窒化珪素研磨球であることが好ましく、前記窒化珪素研磨球の質量と、窒化珪素粉末と焼結助剤の合計質量との比は、(1.5~3):1であることが好ましく、2:1であることがより好ましい。本発明において、前記ボールミル混合の時間は、18~24hであることが好ましい。本発明において、前記ボールミル混合は、ローラーミルを用いることが好ましい。本発明は、前記ボールミル混合の回転速度に対して特別な要件がなく、本分野で周知の回転速度を用いればよい。
【0029】
本発明は、混合材料液を得た後、前記混合材料液を噴霧造粒して、造粒粉末を得る。本発明において、前記噴霧造粒は、圧力噴霧造粒の方法を用いることが好ましい。本発明は、噴霧造粒塔内で噴霧造粒を行うことが好ましい。本発明は、前記噴霧造粒の条件に対して特別な要件がなく、本分野で周知の噴霧造粒条件を用いればよい。本発明の実施例において、用いられる噴霧造粒塔の入口温度は190℃であり、噴霧シートの孔径は0.9mmである。本発明において、前記造粒粉末の粒径は、50~100μmであることが好ましい。本発明は、噴霧造粒を利用して、造粒粉末の流動性を向上させ、後続のプレス成形に役立つ。
【0030】
本発明は、造粒粉末を得た後、前記造粒粉末をプレス成形して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得る。本発明において、前記プレス成形は、中国実用新案CN 202023003181.3に記載のセラミックマイクロビーズ成形装置を用いてプレス成形することが好ましい。本発明は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地のサイズに応じて適切なサイズの側面のストリップである円筒状ローラー金型を選択することが好ましく、円筒状ローラー金型の回転速度は、5~10r/minであることが好ましい。本発明において、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径は、0.8~4mmであることが好ましい。
【0031】
本発明は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得た後、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及びより大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を坩堝に装入して、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、窒化珪素ブランク球を得る。
【0032】
本発明は、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の化学組成に対して特別な要件がなく、本分野で周知の窒化珪素セラミック素地球がいずれも可能である。本発明において、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球は、回転プレス機を使用して、上型と下型によるプレスにより乾式プレス成形される。
【0033】
本発明において、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径の5~50倍であり、さらに好ましくは、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は20~35mmであり、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径は0.8~4mmである。本発明において、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球との質量比は、1:(1~3)であることが好ましく、1:(1.5~2.5)であることがより好ましい。本発明では、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球に対して雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径が前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径より大きいため、セラミック球を坩堝に装入する時、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地が前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の隙間内に充填され、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地が焼結過程で均一に加熱されることに役立ち、局部的な受熱量が高すぎて結晶粒が異常に成長し、表面に白いピット、雪片等の欠陥が発生することを防止する。
【0034】
本発明において、前記坩堝は多層側壁坩堝であり、図1に示すように、前記多層側壁は、外から内へ順に黒鉛外壁、中間壁及び内壁を含み、前記中間壁及び内壁の延在方向は、坩堝の外壁の延在方向と一致し、前記中間壁及び内壁の材質は窒化珪素であり、隣接する層の側壁間の隙間は、窒化珪素セラミック素地球の直径より大きい。本発明において、前記多層側壁坩堝は一体構造であり、黒鉛外壁、中間壁及び内壁は同一の坩堝底部を共有する。
【0035】
本発明において、前記内壁の厚さは、2~4mmであることが好ましく、内壁によって形成された同心円の内径は、90~100mmであることが好ましく、前記中間壁の厚さは、3~5mmであることが好ましく、中間壁によって形成された同心円の内径は、180~200mmであることが好ましく、前記黒鉛外壁の厚さは、8~10mmであることが好ましく、形成された同心円の内径は、300~320mmであることが好ましい。本発明において、前記坩堝の底部の厚さは、6~8mmであることが好ましい。本発明において、前記坩堝の各側壁の高さは同じ、15~17mmであることが好ましい。
【0036】
本発明において、焼結時、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及び前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を前記多層側壁坩堝の中間壁及び内壁によって形成されたキャビティに装入することが好ましい。本発明は、多層側壁坩堝を用いて雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を行い、中間壁及び内壁の材質はいずれも窒化珪素であり、窒化珪素が熱の一部を吸収して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の局部的な受熱量が高すぎて結晶粒が異常に成長し、表面に白いピット、雪片等の欠陥が発生することを防止することができる。
【0037】
本発明において、前記雰囲気加圧焼結の温度は、1700~1800℃であることが好ましく、1720~1780℃であることがより好ましく、保温時間は、1~3hであることが好ましく、2hであることがより好ましく、前記雰囲気加圧焼結は、窒素ガスの保護雰囲気中で行われることが好ましい。本発明は、室温から前記雰囲気加圧焼結の温度まで昇温することが好ましく、昇温速度は5~20℃/minであることが好ましい。本発明は、雰囲気加圧焼結を利用して、開気孔のないSiセラミックを得る。
【0038】
本発明は、雰囲気加圧焼結を完了した後、室温まで冷却し、次いで、熱間等方圧加圧焼結を行うことが好ましい。本発明において、前記熱間等方圧加圧焼結の温度は1800~1850℃であることが好ましく、保温時間は0.5~1hであることが好ましく、前記熱間等方圧加圧焼結は、窒素ガスの保護雰囲気中で行われることが好ましく、前記熱間等方圧加圧焼結時の窒素ガスの圧力は、200~210MPaであることが好ましい。本発明において、前記熱間等方圧加圧焼結の温度まで昇温する昇温速度は、5~20℃/minであることが好ましい。本発明は、雰囲気加圧焼結後に熱間等方圧加圧焼結を行うことにより、窒化珪素セラミック微小球の緻密度をさらに向上させ、異常に大きな結晶粒の欠陥を減少させ、それによりSiセラミック球の緻密度、機械的性質、安定性及び表面品質を向上させる。
【0039】
本発明において、前記雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結は、いずれも本発明に記載の多層側壁坩堝を用いる。
【0040】
本発明は、前記熱間等方圧加圧焼結を完了した後、より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を除去して、窒化珪素ブランク球を得る。
【0041】
本発明は、窒化珪素ブランク球を得た後、前記窒化珪素ブランク球を研削加工して、高精度窒化珪素セラミック微小球を得る。本発明において、前記研削加工は、粗研削、細研削、仕上げ研削、仕上げ研磨、超仕上げ研磨を順次行うことが好ましい。本発明において、前記研削加工は、中国実用新案CN202021836565.0に開示された窒化珪素セラミックマイクロビーズのバッチ加工装置を用いて行うことが好ましい。本発明において、前記研削加工装置の上下研磨板は、いずれも鋳鉄板であり、仕様はΦ660mm×Φ420mmであることが好ましい。
【0042】
本発明において、前記粗研削時、上下研磨板の間に加えられる圧力は、(0.8~1)×10KNであることが好ましく、主軸の回転速度は、100~120r/minであることが好ましく、前記粗研削の取り代は、250~350μmであることが好ましい。
【0043】
本発明において、前記細研削時、上下研磨板の間に加えられる圧力は、(0.6~0.9)×10KNであることが好ましく、主軸の回転速度は、80~100r/minであることが好ましく、前記細研削の取り代は、150μm以上かつ250μm未満であることが好ましい。
【0044】
本発明において、前記仕上げ研削時、上下研磨板の間に加えられる圧力は、(0.4~0.7)×10KNであることが好ましく、主軸の回転速度は、70~80r/minであることが好ましく、前記仕上げ研削の取り代は、50μm以上かつ100μm未満であることが好ましい。
【0045】
本発明において、前記仕上げ研磨時、上下研磨板の間に加えられる圧力は、(0.3~0.6)×10KNであることが好ましく、主軸の回転速度は、60~70r/minであることが好ましく、前記仕上げ研磨の取り代は、30μm以上かつ50μm未満であることが好ましい。
【0046】
本発明において、前記超仕上げ研磨時、上下研磨板の間に加えられる圧力は、(0.1~0.3)×10KNであることが好ましく、主軸の回転速度は、50~60r/minであることが好ましく、前記超仕上げ研磨の加工代は0であり、すなわち、目標サイズに達する。
【0047】
本発明は、上記解決手段に記載の製造方法で製造された高精度窒化珪素セラミック微小球を提供し、前記高精度窒化珪素セラミック微小球の表面粗さRaが、0.006μm≦Ra≦0.008μmを満たし、微小球の直径変動量VDwが、0.03μm≦VDw≦0.08μmを満たし、球面誤差△Sphが、0.03μm≦△Sph≦0.08μmを満たす。本発明において、前記高精度窒化珪素セラミック微小球のビッカース硬さHV10が最高1480kg/mmに達し、破壊靭性値が最高8MPa・m1/2に達し、各項目の性能指標がいずれもGB/T308.2-2010/ISO3290-2:2008『転がり軸受ビーズの第2部分:窒化珪素セラミックマイクロビーズ』標準要件のG3レベルの標準要件に合う。本発明において、前記高精度窒化珪素セラミック微小球のサイズは、0.4~1mmであることが好ましい。
【0048】
本発明は、上記解決手段に記載の高精度窒化珪素セラミック微小球の歯科用ドリル軸受における使用を提供する。
【0049】
以下、実施例を参照しながら本発明が提供する高精度窒化珪素セラミック微小球、その製造方法及び使用を詳細に説明するが、それらは本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0050】
以下の実施例に用いられる多層側壁坩堝の仕様は以下のとおりである。
【0051】
内壁の厚さは3mmであり、内壁によって形成された同心円の内径は100mmであり、中間壁の厚さは4mmであり、中間壁によって形成された同心円の内径は180mmであり、黒鉛外壁の厚さは10mmであり、形成された同心円の内径は320mmである。多層側壁坩堝の底部の厚さは6mmであり、多層側壁坩堝の各側壁の高さは同じ、15mmである。
【0052】
実施例1
(1)含有量2wt%の酸化アルミニウム、含有量2wt%の酸化エルビウム及び含有量96wt%の窒化珪素粉末を粉末材料とし、無水エタノール(重量は粉末材料の合計重量の2倍である)を分散液とし、粉末材料、無水エタノール及び窒化珪素研磨球(重量は粉末材料の合計重量の2倍である)をローラーミルに入れてボールミル混合を24h行い、混合材料液を得た。
(2)前記混合材料液を噴霧造粒塔により圧力噴霧造粒の方法で造粒粉末を得、用いられる噴霧造粒塔の入口温度は190℃であり、噴霧シートの孔径は0.9mmであり、粒径が50~100μmの球形粒子を得た。
(3)CN 202023003181.3に記載のセラミックマイクロビーズ成形装置を使用して、噴霧造粒粉末をプレス成形し、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地のサイズは2.0~2.1mmであった。
(4)プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と直径が20mmの窒化珪素セラミック素地球を質量比1:2に従って多層側壁坩堝内に装入し、雰囲気加圧焼結炉に入れ、焼結温度は1790℃であり、昇温速度は8℃/minであり、最高温度の保温時間は1.5hであり、焼結過程は常圧下で窒素ガスで保護され、熱間等方圧加圧焼結の温度は1830℃であり、昇温速度は10℃/minであり、最高温度の保温時間は1時間であり、焼結過程における窒素ガスの圧力は200MPaであり、窒化珪素ブランク球を得た。
(5)前記窒化珪素ブランク球に対して粗研削、細研削、仕上げ研削、仕上げ研磨及び超仕上げ研磨を行い、上下研磨板はいずれも鋳鉄材質の鋳鉄板であり、仕様はΦ660mm×Φ420mmであり、ここで、粗研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は1×10KNであり、主軸の回転速度は110r/minであり、細研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.9×10KNであり、主軸の回転速度は90r/minであり、仕上げ研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.7×10KNの間であり、主軸の回転速度は80r/minであり、仕上げ研磨工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.6×10KNであり、主軸の回転速度は70r/minであり、超仕上げ研磨工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.3×10KNであり、主軸の回転速度は60r/minであり、Φ1mmの窒化珪素セラミック微小球の完成品を得た。
【0053】
実施例2
(1)含有量3wt%の酸化アルミニウム、含有量2wt%の酸化ランタン及び含有量95wt%の窒化珪素を粉末材料とし、無水エタノール(重量は粉末材料の合計重量の2倍である)を分散液とし、粉末材料、分散液及び窒化珪素研磨球(重量は粉末材料の合計重量の2倍である)をローラーミルに入れてボールミル混合を24h行い、混合材料液を得た。
(2)前記混合材料液を噴霧造粒塔により圧力噴霧造粒の方式で造粒粉末を得、用いられる噴霧造粒塔の入口温度は190℃であり、噴霧シートの孔径は0.9mmであり、粒径が50~100μmの球形粒子を得た。
(3)CN 202023003181.3に記載のセラミックマイクロビーズ成形装置を使用して、噴霧造粒粉末をプレス成形し、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地のサイズは1.3~1.4mmであった。
(4)プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と直径が20mmの窒化珪素セラミック素地球を質量比1:2.5に従って多層側壁坩堝内に装入し、雰囲気加圧焼結炉に入れ、焼結温度は1760℃であり、昇温速度は9℃/minであり、最高温度の保温時間は2hであり、焼結過程は常圧下で窒素ガスで保護され、熱間等方圧加圧焼結の温度は1800℃であり、昇温速度は8℃/minであり、最高温度の保温時間は1時間であり、合計焼結時間は10時間であり、焼結過程における窒素ガスの圧力は200MPaであり、窒化珪素ブランク球を得た。
(5)前記窒化珪素ブランク球に対して粗研削、細研削、仕上げ研削、仕上げ研磨、超仕上げ研磨加工を行い、上下研磨板はいずれも鋳鉄材質の鋳鉄板であり、仕様はΦ660mm×Φ420mmであり、ここで、粗研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.8×10KNであり、主軸の回転速度は110r/minであり、細研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.7×10KNの間であり、主軸の回転速度は90r/minであり、仕上げ研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.6×10KNの間であり、主軸の回転速度は70r/minであり、仕上げ研磨工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.5×10KNであり、主軸の回転速度は60r/minであり、超仕上げ研磨工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.2×10KNであり、主軸の回転速度は60r/minであり、Φ0.8mmの窒化珪素セラミック微小球の完成品を得た。
【0054】
実施例3
(1)含有量2wt%の酸化アルミニウム、含有量1wt%の酸化ルテチウム及び含有量97wt%の窒化珪素粉末を粉末材料とし、無水エタノール(重量は粉末材料の合計重量の2倍である)を分散液とし、粉末材料、無水エタノール及び窒化珪素研磨球(重量は粉末材料の合計重量の2倍である)をローラーミルに入れてボールミル混合を24h行い、混合材料液を得た。
(2)前記混合材料液を噴霧造粒塔により圧力噴霧造粒の方法で造粒粉末を得、用いられる噴霧造粒塔の入口温度は190℃であり、噴霧シートの孔径は0.9mmであり、粒径が50~100μmの球形粒子を得た。
(3)CN 202023003181.3に記載のセラミックマイクロビーズ成形装置を使用して、噴霧造粒粉末をプレス成形し、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地のサイズは0.8~0.9mmであった。
(4)プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と直径が20mmの窒化珪素セラミック素地球を質量比1:2.5に従って多層側壁坩堝内に装入し、雰囲気加圧焼結炉に入れ、焼結温度は1750℃であり、昇温速度は10℃/minであり、最高温度の保温時間は2hであり、焼結過程は常圧下で窒素ガスで保護され、熱間等方圧加圧焼結温度は1750℃であり、昇温速度は12℃/minであり、最高温度の保温時間は0.5時間であり、合計焼結時間は9.5時間であり、焼結過程における窒素ガスの圧力は200MPaであり、窒化珪素ブランク球を得た。
(5)前記窒化珪素ブランク球に対して粗研削、細研削、仕上げ研削、仕上げ研磨、超仕上げ研磨加工を行い、上下研磨板はいずれも鋳鉄材質の鋳鉄板であり、仕様はΦ660mm×Φ420mmであり、ここで、粗研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.8×10KNであり、主軸の回転速度は100r/minであり、細研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.6×10KNであり、主軸の回転速度は80r/minであり、仕上げ研削工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.4×10KNであり、主軸の回転速度は70r/minであり、仕上げ研磨工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.3×10KNであり、主軸の回転速度は60r/minであり、超仕上げ研磨工程において、上下研磨板の間に加えられる圧力は0.1×10KNであり、主軸の回転速度は50r/minであり、Φ0.4mmの窒化珪素セラミック微小球の完成品を得た。
【0055】
比較例1
実施例1との違いは、通常の単層坩堝を使用したことのみにある。
【0056】
比較例2
実施例1との違いは、焼結時、直径が20mmの窒化珪素セラミック素地球を使用しなかったことのみにある。
【0057】
比較例3
実施例1との違いは、熱間等方圧加圧焼結を省略したことのみにある。
【0058】
比較例4
実施例1との違いは、雰囲気加圧焼結を省略したことのみにある。
【0059】
実施例1~3及び比較例1~4の完成品に対して機械的性質試験及び精度試験を行い、ここで、機械的性質試験は、ASTM F2094-2018aを参照し、精度試験は、GB/T308.2-2010/ISO3290-2:2008『転がり軸受ビーズの第2部分:窒化珪素セラミックマイクロビーズ』を参照し、試験結果を表1に示した。

【0060】
【表1】
【0061】
注:異常に大きな結晶粒は走査型電子顕微鏡で観察することしかできず、各バッチの球の数が多く、割合を統計できないため、表1には示されていない。
【0062】
表1から、実施例1、2、3で製造された窒化珪素セラミック微小球の緻密度はいずれも99.7%以上に達し、ビッカース硬さ、破壊靭性及び3点曲げ強度等の材料特性はASTM F2094-2018a Iレベルの材料標準に達し、精度レベルはGB/T308.2 G3レベルの標準に達し、白いピット及び雪片の欠陥の割合はいずれも0.5%未満であることが分かった。比較例1で製造された窒化珪素セラミック微小球の緻密度は99.53%に達し、硬度はASTM F2094-2018a IIレベルの材料基準にのみ達し、破壊靭性及び3点曲げ強度はIレベルの材料基準に達し、精度レベルはGB/T308.2 G10レベルの標準に達し、白い点及び雪片の割合はそれぞれ32%、18%であり、比較例2で製造された窒化珪素セラミック微小球の緻密度は99.41%に達し、硬度はASTM F2094-2018a IIレベルの材料基準にのみ達し、破壊靭性及び3点曲げ強度はIレベルの材料基準に達し、精度レベルはGB/T308.2 G10レベルの標準に達し、白い点及び雪片の割合はそれぞれ35%、21%であり、比較例3で製造された窒化珪素セラミック微小球の緻密度は95.11%にのみ達し、硬度はASTM F2094-2018a IIIレベルの材料標準より低く、破壊靭性はIIレベルの材料標準に達し、3点曲げ強度はIIIレベルの材料標準に達し、精度レベルはGB/T308.2 G20レベルの標準に達し、白い点及び雪片の割合はそれぞれ26%、13%であり、比較例4で製造された窒化珪素セラミック微小球の緻密度は96.32%に達し、硬度破壊靭性はASTM F2094-2018a IIレベルの材料標準に達し、3点曲げ強度はIIIレベルの材料標準に達し、精度レベルはGB/T308.2 G20レベルの標準に達し、白い点及び雪片の割合はそれぞれ30%、10%である。本発明は、雰囲気加圧焼結と熱間等方圧加圧焼結を組み合わせた焼結方法を採用し、より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を多層側壁坩堝で焼結することにより、窒化珪素セラミック微小球に存在するブローホール、異常に大きな結晶粒、表面ピット及び雪片等の欠陥を解決し、窒化珪素セラミック微小球の高精度製造を実現する。
【0063】
図2は、比較例1で製造された窒化珪素微小球の写真であり、図2から、窒化珪素微小球の表面に白いピットが発生していることが分かる。図3は、比較例1で製造された窒化珪素微小球の走査型電子顕微鏡写真であり、異常に大きな結晶粒の出現が見られる。
【0064】
以上は本発明の好適な実施形態に過ぎず、指摘すべきこととして、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、さらに複数の改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾も本発明の保護範囲と見なされるべきである。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法であって、
窒化珪素粉末、焼結助剤及び分散液をボールミル混合して、混合材料液を得るステップと、
前記混合材料液を噴霧造粒して、造粒粉末を得るステップと、
前記造粒粉末をプレス成形して、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地を得るステップと、
前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及びより大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を坩堝に装入して、雰囲気加圧焼結及び熱間等方圧加圧焼結を順次行い、窒化珪素ブランク球を得るステップと、
前記窒化珪素ブランク球を研削加工して、高精度窒化珪素セラミック微小球を得るステップとを含み、
前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径の5~50倍であり、前記坩堝は多層側壁坩堝であり、前記多層側壁は、外から内へ順に黒鉛外壁、中間壁及び内壁を含み、前記中間壁及び内壁の延在方向は、前記坩堝の外壁の延在方向と一致し、前記中間壁及び内壁の材質は窒化珪素であり、隣接する層の側壁間の隙間は、前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径より大きい、ことを特徴とする高精度窒化珪素セラミック微小球の製造方法。
【請求項2】
前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球の直径は、20~35mmであり、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地の直径は、0.8~4mmであり、
前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地と前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球との質量比は、1:(1~3)であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記雰囲気加圧焼結の温度は1700~1800℃であり、保温時間は1~3hであり、前記雰囲気加圧焼結は窒素ガスの保護雰囲気中で行われ
室温から前記雰囲気加圧焼結の温度まで昇温し、昇温速度は5~20℃/minであり、
前記雰囲気加圧焼結は、常圧下で行われることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱間等方圧加圧焼結の温度は1800~1850℃であり、保温時間は0.5~1hであり、前記熱間等方圧加圧焼結は窒素ガスの保護雰囲気中で行われ、前記熱間等方圧加圧焼結時の窒素ガスの圧力は200~210MPaであり、
前記熱間等方圧加圧焼結の温度まで昇温する昇温速度は、5~20℃/minであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記焼結助剤の質量は、前記窒化珪素粉末と前記焼結助剤の合計質量の3~5%であり、
前記分散液の質量と、窒化珪素粉末と焼結助剤の合計質量との比は、(3~4):1であり、
前記焼結助剤は、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イッテルビウム、酸化エルビウム及び酸化サマリウムの群から選ばれる一種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記窒化珪素粉末及び前記焼結助剤の合計質量に対する百分率で、前記焼結助剤は、酸化アルミニウム3%+酸化ランタン2%、酸化アルミニウム2%+酸化ルテチウム1%、又は酸化アルミニウム2%+酸化エルビウム2%であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記坩堝に装入することは、前記プレスされた窒化珪素セラミック微小球の素地及び前記より大きなサイズの窒化珪素セラミック素地球を前記多層側壁坩堝の中間壁及び内壁によって形成されたキャビティに装入することであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記内壁の厚さは2~4mmであり、内壁によって形成された同心円の内径は90~100mmであり、前記中間壁の厚さは3~5mmであり、中間壁によって形成された同心円の内径は180~200mmであり、前記黒鉛外壁の厚さは8~10mmであり、形成された同心円の内径は300~320mmであり、
前記坩堝の各側壁の高さは同じ、15~17mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記高精度窒化珪素セラミック微小球のサイズは、0.4~1mmであり、
前記高精度窒化珪素セラミック微小球の表面粗さRaは、0.006μm≦Ra≦0.008μmを満たし、前記微小球の直径変動量V Dw は、0.03μm≦V Dw ≦0.08μmを満たし、球面誤差ΔS ph は、0.03μm≦ΔS ph ≦0.08μmを満たし、
前記高精度窒化珪素セラミック微小球のビッカース硬さHV10は、最高1480kg/mm に達し、破壊靭性値は最高8MPa・m 1/2 に達することを特徴とする請求項1に記載の高精度窒化珪素セラミック微小球。
【請求項10】
請求項に記載の高精度窒化珪素セラミック微小球を有する歯科用ドリル軸
【国際調査報告】