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特表2024-512906プロテーゼソケットシステム、およびこれを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】プロテーゼソケットシステム、およびこれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/62 20060101AFI20240313BHJP
   A61F 2/70 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61F2/62
A61F2/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553720
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2022057812
(87)【国際公開番号】W WO2022207461
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021107815.6
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502220838
【氏名又は名称】オットーボック・エスイー・ウント・コンパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッペ、マリオ
(72)【発明者】
【氏名】フィンケ、ラース・ベンヤミン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097BB02
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC06
4C097CC18
4C097TB17
(57)【要約】
本発明は、装着された状態のとき四肢または四肢断端を少なくとも部分的に取り囲み、互いに向かい合う少なくとも2つのソケット壁縁部(12,13)またはソケット壁領域(16,17)を有するソケット壁(11)を有する本体(10)を有するプロテーゼソケットシステムに関し、2つのアンカー(22,23)を有しており、それぞれ1つのアンカー(22,23)がソケット壁縁部(12,13)またはソケット壁領域(16,17)に配置され、ならびに、アンカー(22,23)に取り付けられたメカトロニクス式の機能部材(20)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された状態のとき四肢又は四肢断端を少なくとも部分的に取り囲み、互いに向かい合う少なくとも2つのソケット壁縁部(12,13)又はソケット壁領域(16,17)を有するソケット壁(11)を有する本体(10)を有するプロテーゼソケットシステムにおいて、2つのアンカー(22,23)を有しており、それぞれ1つのアンカー(22,23)が前記ソケット壁縁部(12,13)又は前記ソケット壁領域(16,17)に配置され、ならびに、前記アンカー(22,23)に取り付けられたメカトロニクス式の機能部材(20)を有することを特徴とする、プロテーゼソケットシステム。
【請求項2】
前記メカトロニクス式の機能部材(20)は、少なくとも1つのエネルギー蓄積器(31)、センサ(29)、制御ユニット(28)、通信インターフェース(30)、及び/又はアクチュエータ(27)を有することを特徴とする、請求項1に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項3】
前記メカトロニクス式の機能部材(20)は前記アンカー(22,23)に可逆的に取外し可能に固定可能なように構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項4】
前記メカトロニクス式の機能部材(20)は、前記アンカー(22,23)を相互に動かすように構成され、又は前記アンカー(22,23)若しくは前記ソケット壁(11)に対して相対的に変位するように構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項5】
前記アンカー(22,23)は形状接合部材及び/又は摩擦接合部材として構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項6】
前記アンカー(22,23)は前記本体(10)の内部又は表面に形状接合式に、摩擦接合式に、及び/又は物質接合式に取り付けられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項7】
前記本体(10)は個別に成形され、予備製作されたモジュールから形成され、又は予備成形されて形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項8】
前記ソケット壁縁部(12,13)は分離方法によって作製されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項9】
前記ソケット壁縁部(12,13)は相互間隔をおいて、かつ少なくとも区域的に互いにアライメントされて、又はテーパ状に、若しくは湾曲して、前記本体(10)の長手方向に拡張していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項10】
前記ソケット壁縁部(12,13)は近位・遠位・方向に向いて、又は近位・遠位・方向に対して斜めに向いて、延びることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項11】
前記本体(10)は射出成形で熱可塑性材料から成形され、付加製造され、又はラミネーションされて構成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項12】
前記本体(10)はテーパ状の基本形状を有し、又は、開いた断面若しくは切開部(19)を有するテーパ状の基本形状を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項13】
前記本体(10)に端部キャップ(14)が一体成形され、又は取り付けられることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項14】
前記端部キャップ(14)に前記メカトロニクス式の機能部材(20)のための取付装置(18)が配置されていることを特徴とする、請求項13に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項15】
前記ソケット壁縁部(12,13)は互いに弾性的に変位可能に構成され、及び/又は前記ソケット壁(11)は可逆的に変形可能に構成されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項16】
前記メカトロニクス式の機能部材(20)に前記アンカー(22,23)のための取付装置(32,33)が配置又は形成されていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項17】
前記メカトロニクス式の機能部材(20)は前記ソケット壁縁部(12,13)の間に、前記ソケット壁(11)の切開部に、又は前記ソケット壁(11)の外面に配置されていることを特徴とする、請求項1から16のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステム。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載のプロテーゼソケットシステムを製造する方法において、次の各ステップ、すなわち、
-ソケット壁(11)とソケット壁縁部(12,13)とを有する本体(10)が作製され、
-前記ソケット壁縁部(12,13)又はソケット壁縁部領域(16,17)にアンカー(22,23)が取り付けられ、又は形成され、
-前記アンカー(22,23)にメカトロニクス式の機能部材(20)が取り付けられる、を備える方法。
【請求項19】
前記本体(10)は付加製造法によって作製され、射出成形により熱可塑性材料から成形され、ラミネーションされて作製され、又はモデル若しくは四肢断端への直接的な一体成形によって作製されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
閉じた断面を有する本体(10)がまず形成され、そこからソケット壁縁部(12,13)を形成しながら1つのセグメントが切り離されることを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記アンカー(22,23)と前記本体(10)は形状接合式に、摩擦接合式に、及び/又は物質接合式に、互いに結合されることを特徴とする、請求項18から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記メカトロニクス式の機能部材(20)は形状接合式及び/又は摩擦接合式に前記アンカー(22,23)とロックされることを特徴とする、請求項18から21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着された状態のとき四肢または四肢断端を少なくとも部分的に取り囲み、互いに向かい合う少なくとも2つのソケット壁縁部またはソケット壁領域を有するソケット壁を有する本体を有するプロテーゼソケットシステムに関し、ならびに、このようなプロテーゼソケットシステムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテーゼソケットは、アクチュエータ、センサ、制御装置、および義肢や義足のような人工四肢などの他の義肢コンポーネントを患者に確実に固定するために、四肢または四肢断端を収容する役目を果たす。その際に重要な1つの点は、プロテーゼソケットが意図せず外れる危険が存することなく、プロテーゼソケットが四肢または四肢断端に確実に固定されることにある。さらにプロテーゼソケットは、四肢または四肢断端に対して相対的な他の義肢コンポーネントの向きを保証する。そのために、プロテーゼソケットが四肢または四肢断端にできる限り密着して当接すると好ましい。装着快適性を高めるために、および定義されたインターフェースを維持するために、たとえば四肢断端または四肢とプロテーゼソケットとの間にプロテーゼライナーが配置される、いわゆるライナーテクノロジーが利用される。ライナーとソケットとの間のロックは、機械コンポーネントを通じて、または負圧を通じて、行うことができる。いわゆる真空ソケットテクノロジーのためには、少なくとも部分領域で排気可能である、閉じたプロテーゼソケットを有することが必要である。
【0003】
プロテーゼソケットは、モデルを用いて、もしくは直接的に断端に合わせて、個別的に一体成形されるか、または、遠位の末端部分へ互いに変位可能に取り付けられる支柱もしくは壁コンポーネントで構成される。ベルトまたはその他の装置を通じて、支柱または壁コンポーネントを互いに相対的に変位させることが可能である。
【0004】
ドイツ特許出願公開第102007025410A1号明細書より、遠位のプロテーゼ装置のための接続手段を有する、切断断端および四肢を収容するためのプロテーゼソケットが公知であり、このプロテーゼソケットは少なくとも1つのシェルを有していて、このシェルは湾曲して開いた断面を有し、装着された状態にあるときそれぞれのシェル端部が互いに少なくとも部分的に重なり合う。円周方向に作用してそれぞれのシェル端部を相互に応力固定する少なくとも1つのクランプ手段が、シェルに配置される。
【0005】
欧州特許第1411872B1号明細書より、継手ピンを備えるプロテーゼライナーと、長手方向スリットを備えるプロテーゼライナーとを有するプロテーゼが公知であり、これにプロテーゼソケットと人工四肢とを結合するためのホルダが配置される。このプロテーゼソケットは、円筒状のアダプタが高さ調節可能に取り付けられた同心的な鍔を有している。それぞれの長手方向スリットが橋渡しされており、クランプ部材により直径に関して変更することができる。
【0006】
欧州特許第1555967B1号明細書より、プロテーゼソケットと切断断端との間の圧力を測定するためのセンサを有する、ならびに力、温度、および/または湿度を測定するセンサを有する、プロテーゼソケットが公知である。これらのセンサはディスプレイまたは警告装置と接続されている。センサ値についての限界値を超過すると、警告信号が出力される。
【0007】
欧州特許第3454972B1号明細書より、近位の挿入開口部と、断端を少なくとも部分的に取り囲む内側円周と、プロテーゼソケットに取付可能であるプロテーゼコンポーネントのための少なくとも1つの接続装置と、プロテーゼソケットの内側円周を変更可能であるアクチュエータと、少なくとも1つのセンサとリンクされた制御部とを有するプロテーゼソケットが公知であり、センサは慣性センサとして構成される。制御装置はアクチュエータと接続されており、アクチュエータは受信されたセンサ信号に依存して作動化または不作動化される。このプロテーゼソケットには、支持部材によって断端に印加される圧力を検出するために内部に位置する圧力センサおよび/またはモータ電流センサが支持部材に配置されていてよく、弾性的に構成された、または弾性的に支承された、複数の支持部材が存在していてよい。これらの支持部材は円周方向で重なり合うように構成されていてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102007025410A1号明細書
【特許文献2】欧州特許第1411872B1号明細書
【特許文献3】欧州特許第1555967B1号明細書
【特許文献4】欧州特許第3454972B1号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、メカトロニクス式のコンポーネントによって患者のための改善された総合的補助を提供することができるプロテーゼソケット、およびこれを製造する方法を提供することにある。
【0010】
本発明によるとこの課題は、主請求項の構成要件を有するプロテーゼソケットによって解決され、および、副請求項の構成要件を有する方法によって解決される。本発明の好ましい実施形態と発展形態は、従属請求項、発明の詳細な説明、ならびに図面に開示されている。
【0011】
装着された状態のとき四肢または四肢断端を少なくとも部分的に取り囲み、互いに向かい合う少なくとも2つのソケット壁縁部またはソケット壁領域を有するソケット壁を有する本体を有するプロテーゼソケットシステムは、2つのアンカーを意図しており、それぞれ1つのアンカーがソケット壁縁部またはソケット壁領域に配置され、ならびに、アンカーに取り付けられて特にそれぞれのソケット壁縁部の間またはソケット壁の内部の切開部に配置される、メカトロニクス式の機能部材を意図している。ソケット壁縁部またはソケット壁領域のアンカーを介して、メカトロニクス式の機能部材と、プロテーゼソケットシステムのソケット壁またはソケット壁領域との間の定義された機械的なインターフェースが提供される。少なくとも1つのソケット壁の個別的な実施形態に、アンカーを通じて、予備製作されたモジュールとして構成されるメカトロニクス式の機能部材が補足される。メカトロニクス式の機能部材は、プロテーゼソケットを完成させるために、すべてのコンポーネントと相互に適合させたうえで予備製作してソケット壁に取り付けることができる。それにより、アダプティブなプロテーゼソケットを提供するために、または義肢による補助のメカトロニクス式の総合的コンセプトを提供するために、特にセンサやその他のコンポーネントをソケット壁の内部または表面に個別的に取り付けて、個々のコンポーネントを個別的にコンフィグレーションする必要がなくなる。メカトロニクス式の機能部材に、すべての電気式、電子式、および機械式のインターフェースとコンポーネントが事前に工業生産されて統合されていてよく、プロテーゼソケットシステムの個別化の可能性が制約されることはなく、もしくはごくわずかしか制約されない。ソケット壁のそれ以外の部分や、プロテーゼの他のコンポーネントの構成は整形外科技師に引き続き委ねられ、このシステムにより、実証された最大の信頼性を有する構成部品が最小の設計サイズのもとで整形外科技師に提供される。
【0012】
1つの発展形態は、メカトロニクス式の機能部材が少なくとも1つのエネルギー蓄積器、センサ、制御ユニット、通信インターフェース、および/またはアクチュエータを有することを意図する。機械式、電気式、または電子式のコンポーネント、ならびにデータ処理装置が統合されることで、必要なすべてのアセンブリと中央の計算ユニットとを予備製作し、相互に適合化して1つのモジュールに統合することができる。少なくとも1つのエネルギー蓄積器は、メカトロニクス式の機能部材のための充電制御も含めた一体型のエネルギー供給を提供する。電気式および電子式のコンポーネントは、メカトロニクス式の機能部材内部で水密に配置されて格納されていてよく、ハウジングまたは相応の一体化によって十分な機械的防護を付与されていてよい。アクチュエータは、たとえばそれぞれのアンカーを互いに近づくように、または互いに離れるように動かすことを可能にし、それによりソケット壁または本体が変形する。本体またはソケット壁は弾性的に構成されていてよく、それにより、初期状態から変形または変位した後に初期状態へと復帰する。ソケット壁または本体は少なくとも部分領域で柔軟であってよく、1つのアクチュエータまたは複数のアクチュエータによるアンカーの変位によって、さまざまに異なる形状にすることができる。それにより、たとえば装着された状態での四肢または四肢断端に合わせたソケット壁の改善されたフィッティングを成立させることが可能である。
【0013】
メカトロニクス式の機能部材は、可逆的に取外し可能にアンカーに固定可能なように構成されるのが好ましく、それにより、コンポーネントの破壊を行う必要なしに、機能部材をそれぞれのソケット壁またはソケット壁領域の間に繰り返し配置し、そこから再び取り出すことができる。可逆的な固定は、たとえば形状接合部材および/または摩擦接合部材によって行うことができ、たとえばメカトロニクス式の機能部材の取付けと取外しを可能にするフック、ピン、レール、クリップ、磁石、クランプ装置、および/またはその他の機械式もしくは磁気式の装置を通じて行うことができる。
【0014】
メカトロニクス式の機能部材はアンカーを相互に動かすために構成され、特に、それぞれのアンカーを互いに近づくように、および互いに離れるように動かして、プロテーゼソケットの容積変化を実現するために構成される。これ以外のアンカー相互の相対変位も行うことができ、それにより、メカトロニクス式の機能部材の作動化または不作動化によって、1つのソケット壁または複数のソケット壁の相互の変位を行うことができる。それにより、プロテーゼソケットの形状フィッティングおよび特に容積調整を可能にすることが可能である。たとえばプロテーゼソケットの着用を容易にするために、容積を拡大することができる。相応の負荷または加速度が検知されたときは、プロテーゼソケットの確実な装着を保証するために、容積を縮小することができる。たとえば座っている場合など、快適性向上が希望される状況でも同様である。メカトロニクス式の機能部材は、ソケット壁に沿って、またはソケット壁に対して相対的に、メカトロニクス式の機能部材の変位を可能にするために、アンカーに対して相対的に可動に構成されていてもよい。それぞれのアンカー相互の位置の変更がなくても、メカトロニクス式の機能部材の作動化によってソケット壁の位置を変更することができ、それは、たとえばセンサを別の場所に位置決めするためや、圧力作用の変位を惹起するためや、メカトロニクス式の機能部材を新たに位置決めすることで変化した剛性を生じさせるためである。
【0015】
アンカーは、ソケット壁縁部またはソケット壁でのメカトロニクス式の機能部材の可逆的な固定を可能にするために、形状接合部材および/または摩擦接合部材として構成されるのが好ましい。アンカーは、たとえばレール、レールセグメント、ピン、または穴として、あるいは場合によりソケット壁またはソケット壁領域の複数のボアとして、構成されていてよい。レールを通じて、メカトロニクス式の機能部材にある対応するレールまたは案内部を差し込むことで、形状接合式の係止を実現することができる。レールはレールセグメントとして構成されていてよく、部分領域でのみソケット壁縁部に沿って配置または構成されていてよい。同様に、形状接合部材または突起またはアンダーカットをレールにクリップ嵌めすることができ、それにより、レールの長手方向にスライドする挿入運動ではなく、これに対して垂直の相対運動が行われる。同様にクランプ式の、すなわち摩擦接合式の連結をレールまたはクランプ部材で行うこともできる。磁石を通じて追加の保持力を提供することができ、たとえば所望の最終位置に達したときに、形状接合式の固定部材をロック解除位置からロック位置へと移すことができる。
【0016】
アンカーは、本体の内部または表面に形状接合式に、摩擦接合式に、および/または物質接合式に取り付けられていてよい。その代替としてアンカーは、ソケット壁、ソケット壁縁部、またはソケット壁縁部領域の一部として構成されていてよい。アンカーはソケット壁に特に注型され、クランプ止めされ、フック止めされ、内部接着され、内部ラミネーションされ、または差し込まれていてよく、同様に、1つまたは複数のアンカーは本体にねじ止めされ、溶着され、リベット止めされ、外部接着され、外部ラミネーションされ、縫合され、または本体に外嵌されていてよい。アンカーは、ボアまたは一体成形された突起またはスリットならびにアンダーカットとして構成されていてもよい。
【0017】
1つの態様は、本体が個別的に成形されて構成され、たとえば、四肢または四肢断端で直接的にモデル作製されることを意図する。その代替として本体は、予備製作されたモジュールから、標準モデルまたは個別に型取りされたモジュールから、構成されていてよく、または、さまざまに異なる仕立てサイズを有する標準本体として構成されていてよい。そのつど使用される材料は、プロテーゼソケットの製造方法や所望の特性に応じて選択される。
【0018】
ソケット壁縁部は分離方法によって製作されていてよく、たとえば裁断され、レーザ切断され、打ち抜かれ、またはその他の方式で分離式に製作することができる。たとえば本体に空いた領域がすでに存在するときは、研削やフライス加工によってソケット壁縁部をフィッティングして、それぞれのソケット壁縁部の間でメカトロニクス式の機能部材を位置決めし、またはそれぞれのアンカーの間で固定できるようにすることができ、それにより、互いに向かい合うソケット壁縁部でメカトロニクス式の機能部材の固定が行われる。メカトロニクス式の機能部材は、互いに向かい合うソケット壁縁部の間の領域を橋渡しし、または、これを全面的もしくは少なくとも部分的に充填する。メカトロニクス式の機能部材は、それぞれのソケット壁縁部の間の自由空間または切開部で、閉じた断面または実質的に閉じた断面を、およびこれに伴って全面的に円周で閉じたプロテーゼソケットを、実現することができるように配置されていてよい。
【0019】
それぞれのソケット壁縁部は互いに間隔をおいて、かつ少なくとも区域的に互いに沿ってアライメントされ、すなわち互いに実質的に平行に、または互いに若干のミスアライメントをもって、アライメントされる。その代替としてソケット壁縁部はテーパ状に、または湾曲して、本体の長手方向で拡張することができ、それにより、機能部材を特に近位・遠位・方向へ挿入することで、それぞれのアンカーに対して容易に位置決めして、本体に固定することができる。
【0020】
ソケット壁縁部は、1つの実施形態では近位・遠位・方向に延び、または近位・遠位・方向に対して斜めに向いており、それによって近位のソケット縁からの組付けが簡易化される。
【0021】
本体は、熱可塑性材料から成形される射出成型部品として製作され、または付加製造され、またはラミネーション造形で製造されていてよい。特に開いた断面を有する、本体の実質的にテーパ状の基本形状が意図されるのが好ましく、開いた断面または切欠きは、メカトロニクス式の機能部材を挿入するために、本体の製造時に、または事後的に、作製することができる。テーパ状の基本形状の枠内で、開いた断面を有しているか閉じた断面を有しているかには関わりなく、本体は少なくとも1つの切開部を有することができ、それは、メカトロニクス式の機能部材をその中に収容するためであり、または、メカトロニクス式の機能部材が切開部を少なくとも部分的に充填および/またはカバーできるようにするためである。
【0022】
本体には端部キャップが一体成形されていてよく、または取り付けられていてよい。端部キャップは閉じられて、または半分閉じられて、構成されていてよく、たとえば関節装置、下腿パイプや前腕パイプなどの橋渡しコンポーネント、または下腿プロテーゼや前腕プロテーゼなど、他のプロテーゼコンポーネントのための取付装置を遠位端に有することができる。
【0023】
端部キャップには、1つの実施形態ではメカトロニクス式の機能部材のための取付装置が配置され、これを介して、メカトロニクス式の機能部材を端部キャップとロックすることが可能である。取付装置は形状接合式および/または力接合式に作用することができ、特に、本体の内部または表面でのメカトロニクス式の機能部材の正しい位置決めをサポートすることができる。
【0024】
それぞれのソケット壁縁部は弾性的に互いに変位可能に構成されていてよく、特に、アクチュエータを通じて容積適合化をメカトロニクス式の機能部材で可能にするために、互いに近づくように、および互いに離れるように変位することができる。弾性的な変位可能性に基づき、弾性的な復帰力による初期位置への復帰が簡易化される。その代替または追加としてソケット壁は可逆的に変形可能に構成され、それにより、アクチュエータの運動に基づくアンカーの相応の変位によって、さまざまに異なる形態または容積を調整可能である。
【0025】
1つの発展形態は、メカトロニクス式の機能部材にアンカーのための取付装置が配置または構成されることを意図しており、それにより、メカトロニクス式の機能部材をアンカーの表面または内部で固定可能である。取付装置は、特に対応するように構成された形状接合装置であり、メカトロニクス式の機能部材が組み付けられるとき、この形状接合装置の中にアンカーが係合し、またはアンカーがこれと係合する。
【0026】
メカトロニクス式の機能部材は、1つの実施形態ではそれぞれのソケット壁縁部の間で、ソケット壁の切開部の中に、またはソケット壁の外面に配置されて、完全なプロテーゼソケットを形成するために本体を補足する。
【0027】
上で説明したようなプロテーゼソケットシステムを製造する方法は、まず、ソケット壁を有する本体が作製され、ソケット壁縁部が作製されることを意図する。ソケット壁縁部の作製は本体の作製時に行うことができ、または事後的に行うことができる。さらに、アンカーがソケット壁縁部またはソケット壁領域に形成され、または取り付けられる。アンカーの一体的な形成は本体の作製中に行われ、別個のアンカーが利用され、これが本体に、特にソケット壁縁部またはソケット壁領域に取り付けられる。それぞれのアンカーは互いに向かい合うことができ、たとえばレールまたはガイドとして構成されていてよい。次いで、メカトロニクス式の機能部材がアンカーに取り付けられ、それに伴ってプロテーゼソケットがメカトロニクス式の総合システムをなすように完成される。遠位の端部キャップが本体に配置または構成される場合、1つの発展例では、近位方向への変位を防止するために、メカトロニクス式の機能部材が端部キャップに取り付けられることが意図される。
【0028】
本体は、たとえば断端輪郭が検出されて所要のデータが負荷と利用目的に合わせてフィッティングされた後に、付加製造法によって行われる。その代替として本体は、射出成形法の枠内で、熱可塑性材料から別の方式で成形することができ、またはラミネーション法で製造することができる。原則として、たとえば鋳物などのモデルに直接的に一体成形し、または四肢断端に直接的に作製するという選択肢もある。その場合にも、ソケット壁縁部またはソケット壁縁部領域は本体の作製時に形成することができ、または事後的に作り出すことができる。
【0029】
たとえば石膏モデルの周囲への本体の形成は、ラミネーション法の枠内において、または熱可塑性材料の塗布の枠内において、閉じた断面を有する本体が形成される場合に簡易化される。このとき石膏モデルまたはそれ以外のモデルは、円周でソケット壁材料により全面的に包囲される。その場合、ソケット壁縁部は本体の1つのセグメントが切り離されることで形成される。
【0030】
アンカーと本体は、1つの発展形態では形状接合式、摩擦接合式、および/または物質接合式に互いに結合され、たとえば注型され、ねじ止めされ、溶接され、リベット止めされ、クランプ止めされ、フック止めされ、接着され、内部ラミネーションされ、外部ラミネーションされ、縫合され、差し込まれ、および/または外嵌され、場合により、たとえば溶接、接着などによって事後的に物質接合式に結合される。
【0031】
1つの発展形態では、メカトロニクス式の機能部材は形状接合式および/または摩擦接合式にアンカーとロックされ、そのようにして、それぞれの機能部材の可逆的な取付と可逆的な取外しを可能にする。
【0032】
必要なすべてのアセンブリおよび中央の計算ユニットを有する予備製作されたモジュールとしてメカトロニクス式の機能部材が構成されることで、エネルギー供給部、センサ装置、アクチュエータ、および制御部または調節部などのすべてのコンポーネントの最善の適合化を実現することができる。このプロテーゼソケットシステムにより、個別的なプロテーゼソケットの能動的で状況に即した容積調整を、標準化された機能グループによって生起することが可能である。これに加えて、複数のメカトロニクス式のモジュールとのネットワーク化のための標準化されたインターフェースが存在する。たとえば、位置調節距離を拡大するために、またはさまざまに異なる位置調節を可能にするために、本体で複数のメカトロニクス式の機能部材を、2つのソケット壁縁部の間で利用することができる。同様に、利用データを伝送して評価を可能にするために、異なるプロテーゼソケットシステム間での通信を、または評価装置や整形外科技師との通信を、構築することができる。
【0033】
このプロテーゼソケットシステムは、予備製作されたメカトロニクス式の機能部材と、場合により個別的な、それぞれの四肢およびそれぞれの患者に合わせてフィッティングされたプロテーゼソケットの各コンポーネントとからなる組合せを意図する。メカトロニクス式の機能部材の事前定義された外側寸法に基づき、プロテーゼソケットの正確な製造を保証し、それと同時に個別的なフィッティング可能性を実現することが可能である。それにより、円周で閉じた固定的な個別のソケットを作製し、残りの利用期間が少なくなることに基づく、またはプロテーゼ利用者の身体的特性の変化に基づく、容積変動をライナーシステムのフィッティングによって補償することは必要なくなる。製作精度がさほど高くなくてもよいので、プロテーゼソケットの製作を簡易化することができる。クリティカルなすべてのメカトロニクス式のインターフェースを事前に工業的に製作しておくことができ、それにより、利用中に最大の信頼性が最小の設計サイズのもとでもたらされる。
【0034】
次に、本発明の実施例と態様について添付の図面を参照しながら詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】メカトロニクス式の機能部材を示す単独図である。
図2】本体を示す単独図である。
図3】本体と挿入された機能部材とを有するプロテーゼソケットシステムである。
図4】延長されたアンカーを有する機能部材である
図5】開いた状態で示す図3の態様である。
図6】拡大された直径を有する本体である。
図7】追加のコンポーネントを有する機能部材である。
図8】プロテーゼシステムとその組立である。
図9】ペロッテとしての機能部材を有する態様である。
図9a図9のA-Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、近位端21と遠位端24とを有する基体25を有する、プロテーゼソケットシステムのための機能部材20が単独図で前面図として示されている。基体25の内部に、機械式および電気式ならびに電子式のコンポーネントが配置され、たとえば1つまたは複数のエネルギー蓄積器、1つまたは複数のセンサ、制御ユニット、少なくとも1つの通信インターフェース、および/または少なくとも1つのアクチュエータなどが配置される。機能形態と各コンポーネントについては、あとでまた詳しく説明する。メカトロニクス式の機能部材20は、図示した実施例では、基体25に可動かつ変位可能に取り付けられた2つのアンカー22,23を有している。各アンカー23は、図示しないアクチュエータによって互いに相対的に、および基体25に対して相対的に位置調節され、センサデータに基づいて、または、基体25の近位の前側領域に配置または構成される操作パネル26のキーもしくはスイッチの操作に基づいて、位置調節されることを可能にする。この位置調節は単独で行われ、または複合的に行われる。すなわちそれぞれのアンカー22,23を別々に、または好ましくは向かい合うアンカーに対して反対の方向に、変位させることができる。反対の方向への直線状の変位のほか、アンカー22,23はそれぞれの遠位および近位の端部領域でそれぞれ異なる変位ストロークを行うこともでき、それにより、たとえば近位領域では遠位領域におけるよりも大きい変位が、基体25から離れるように外方に向かって行われる。遠位の端部領域24には、基体をプロテーゼソケットシステムの他の部材に固定するために、形状接合部材または摩擦接合部材の形態の、たとえば突起、後方突起、クリップ、ウェブ、スナップ装置、クランプ部材などの取付装置34が配置または形成されていてよい。アンカー22,23を有するメカトロニクス式の機能部材20は工業的に予備製作することができ、意図される機能のために必要であるセンサ式、電気式、電子式、および機械式の一切のコンポーネントを有している。それにより、メカトロニクス式の機能部材20を予備製作されたモジュールとして提供し、これをそのつどの患者または個別のプロテーゼソケットに配置してこれに取り付け、メカトロニクス式の機能部材を通じてプロテーゼソケットの適合化と個別化ならびに機能拡張を可能にすることが可能である。
【0037】
ソケット壁11を有するプロテーゼソケットの本体10が、図2に示されている。本体10は、近位の着用開口部と、図示した実施例では端部キャップ14として構成された、実質的に閉じた遠位の端部領域とを有している。端部キャップ14に、他のプロテーゼコンポーネントのための取付装置が配置されていてよく、たとえば人工関節のための収容アダプタや、レール、駆動部、義手、義足などの他のプロテーゼコンポーネントもしくは整形外科コンポーネントのための収容アダプタが配置されていてよい。連続して形成されるソケット壁11の内部に切開部が形成されており、それにより、互いに向かい合う2つのソケット壁縁部12,13が生じている。この切開部は本体10の製作時に作製することができ、または、当初は円周で閉じている本体10の製作後に切り取ることができる。この切り離しは鋸引き、研削、穿孔、ウォータージェット切断、またはその他の分離方法によって行うことができる。切開部は本体10の近位の縁部から遠位の方向へ、遠位の端部キャップ14の上側縁部まで延びており、それから円周で拡張して、それぞれ右方と左方に向かって分かれるスリットをなしている。これらのスリットにより、ソケット縁部12,13の互いに近づく、および互いに離れる、変位可能性が可能となる。切開部の内部に、図1に示す機能部品20が挿入される。そのために切開部が相応に構成され、すなわちソケット壁縁部12,13は、アンカー22,23をこれらの表面または内部で固定できるように、相互に延びて相互に間隔をおいている。
【0038】
端部キャップ14の近位領域に、メカトロニクス式の機能部材20のための取付装置18が配置または形成される。取付装置18は、たとえばメカトロニクス式の機能部材20の取付装置34に対応するように構成されて配置される形状接合部材または磁石である。機能部材20が本体10の切開部に挿入されると、取付装置18,34が互いに係合することができ、端部キャップ14での機能部材20のロックが可能となる。
【0039】
アンカー22,23は、純粋に機械的に本体10に固定することができ、たとえばクランプ固定し、リベット止めし、ねじ止めし、または、アンカー22,23および/またはソケット壁縁部12,13に配置されるクランプレールに取り付けることができる。その代替または追加としてアンカー22,23は、ソケット壁縁部12,13で、または円周上でこれに接するソケット壁領域で、たとえば接着、溶接、またはその他の物質接合式の結合方法によって、物質接合式に固定することができる。
【0040】
本体10は、たとえば四肢断端を型取りしたモデルの上で繊維複合素材から一体成形し、他のプロテーゼコンポーネントのための収容装置を付与し、次いで切開部に関して、アンカー22,23との結合のためにソケット壁縁部12,13が適するように前処理することができる。基体25に対して相対的に可動であるアンカー22,23の構成に基づき、事後的な調節を容易に行うことができ、それにより、正確に適合するプロテーゼソケットを製造するために比較的低い製造精度で足りる。そのためにメカトロニクス式の機能部材20の内側は、すなわち患者のほうを向く側は、収容されるべき四肢の基本的な輪郭に合わせて構成され、特に、四肢または四肢断端へのできる限り全面的な当接を実現できるように湾曲される。本体10は、四肢断端または四肢の形状データを基礎として付加製造法で作製することもできる。形状データは、特に無接触式にスキャンすることで得ることができ、相応の3D印刷プログラムへと変換することができる。そしてこのデータを基礎として、本体10が好ましくは切開部および場合により相応のソケット壁縁部12,13と同時に製作される。ソケット壁縁部12,13には、たとえばアンカー22,23の対応するレール部材との形状接合式のロックを簡易化または可能化する肉厚部またはビード部を形成することができる。
【0041】
本体10を製作する1つの代替的な方式は、これを射出成形法の枠内で製作し、すなわち、事前に仕立てられて標準化されたプロテーゼソケット本体をたとえばさまざまに異なるサイズ段階で製作し、次いで切開部を穿設し、または既存の切開部とともにこのような本体10を射出成形することにある。同様に、本体10を複数の予備製作されたモジュールから接合することも可能であり、それによりソケット壁11は複数のコンポーネントで構成される。
【0042】
図3には、本体10とメカトロニクス式の機能部材20とを含む、完全に接合されたプロテーゼソケットシステムが示されており、アンカー22,23が本体の両側でソケット壁縁部領域16,17に取り付けられている。この取付は、上で述べたとおり、たとえばラミネーション、注型、射出などによって形状接合式または物質接合式に行うことができる。基体25の遠位の端部片が、端部キャップ14の近位の縁部から遠位方向に突き出す。側方のスリットは、ソケット壁11の弾性変形を容易にするための役目を果たし、それぞれの患者に合わせたフィッティングのためにプロテーゼソケットの拡張と容積縮小を可能にする。
【0043】
図4は、基体25から外方に向かって最大に変位した、最大に位置調節されたアンカー22,23を有するメカトロニクス式の機能部材を示している。
【0044】
図5には、アンカー22,23の最大に拡張された位置が組付状態で示されている。基体25は端部キャップ14と引き続き結合されており、ラミネーションされ、差し込まれ、接着され、溶接もしくは溶着され、またはその他の方式でソケット壁11に固定されたアンカー22,23が最大に離反移動しており、それにより、ソケット壁縁部16,17が外方に向かって拡張しており、このことは、端部キャップ14に対して近位の周回するスリットによって容易になる。プロテーゼソケットがこのような状態になるのは、たとえばプロテーゼソケットシステムの利用者がプロテーゼソケットを着脱しようとするときである。負荷軽減や快適性向上のためにも、このような開いた位置をとることができる。
【0045】
図6には、ソケット壁縁部12,13が最大に互いに離れるように動いた、明らかに拡大された内径および内部容積を有する本体10が示されている。
【0046】
図7には、メカトロニクス式の機能部材20とそのコンポーネント、ならびに電子的な接続が詳細に示されている。基体25は、プロテーゼソケットの他部分のための構造的な強度のほか、特にアクチュエータ27などの他のコンポーネントを収容するためのハウジングとしての役目を果たし、このアクチュエータは、場合により伝動装置と歯車とを有する電気モータの形態で構成され、この歯車に、アンカー22,23と結合されたラックが向かい合う側で係合する。アクチュエータ27が時計回りに作動すると、アンカー22,23が互いに反対の方向へ離れるように移動する。アクチュエータ27がこれと逆方向に、すなわち時計と反対回りに作動すると、両方のアンカー22,23が再び互いに近づくように基体25に向かう方向へ移動する。このような運動は、ボタンを有する操作パネル26を通じて実行することができる。同様に、アンカー22,23のこのような作動およびこれに伴う容積変化が、センサデータまたは伝送される外部データを基礎として行われることも可能である。そのためにメカトロニクス式の機能部材20に、センサ29とリンクされた制御装置28が配置される。センサ29は、たとえばプロテーゼソケットの圧力、血流、筋活動、断端活動、歩行状況、あるいは緊急状況を検知することができる。センサデータが制御装置28に伝送される。そこには相応のソフトウェアプログラムが格納されており、これが制御装置28のCPUで処理されて、アクチュエータ27の作動化または不作動化につながる。これに加えて制御装置28との通信インターフェース30が設けられていて、これを通じて一方ではデータをたとえば携帯電話、タブレット、コンピュータなどのモバイルデータ処理装置へ、あるいはさらにインターネットを通じて外部のデータ処理装置へ、送ることができる。そして利用者または整形外科技師がそのつどのステータスを認識し、ワイヤレス接続を通じてデータを受信し、あるいは再び返信することができ、それにより、たとえばプロテーゼソケットを開き、または閉じ、マッサージ機能を実行し、プロテーゼソケットの負荷適合化された縮小または拡大を惹起するなどする。通信インターフェース30は、外部装置、他のプロテーゼコンポーネント、医療評価機関、データバンク、および/または製造者との間でプロテーゼソケットシステムとのネットワーク化を可能にし、それにより、必要なフィッティングを行い、あるいは運動分析のためのデータを取得する。整形外科技師は、たとえばプロテーゼの使用時に圧力センサを参照して、四肢断端に対する負荷が作用しているか、どこでどのように作用しているか、十分な血流が行われているか、温度はどれくらい高いか、筋活動を通じて容積が変更されるべきか否かを認識することができる。
【0047】
プロテーゼソケットの自動的な適合化は、たとえばプロテーゼソケットを着用するとき、プロテーゼソケットを外すとき、座るとき、車を運転するとき、立脚期のとき、歩行時の遊脚期のとき、踵で立ったときの回転安定化のため、または容積増大もしくは容積減少の補償のために行うことができる。
【0048】
図8には、プロテーゼソケットシステムの1つの態様が示されている。右上の図面にはメカトロニクス式の機能部材20が示されているが、いずれのアンカーも基体25に変位可能に配置されるのではなく、アンカー22,23との可逆的な機械的ロックを可能にする取付装置32,33が配置されている。取付装置32,33は特に形状接合部材および/または摩擦接合部材を有していて、これにより本体10へ機能部材20を、反復して取外し可能かつロック可能に機械式に取り付けることを可能にすることが可能である。本体10は左側の図面に示されており、これにはすでにソケット壁縁部にアンカー22,23およびこれに成形された形状接合部材35が示されている。レール22,23は取付装置32,33に対応するように成形されており、取付装置32,33とレール22,23の機械的なロックを可能にする。そのために取付装置32,33がレール22,23に外嵌されてクリップ止めされ、それに伴って形状接合式および/または摩擦接合式にロックされ、場合によりねじ、取付装置、ロック部材などを通じてさらに固定される。レール22,23は同じく近位・遠位・方向に延びており、機能部材20の上からの差込と機械的なロックを可能にし、それにより円周全体にわたって、プロテーゼソケットの内部に収容される四肢断端が確実に保持される。メカトロニクス式の機能部材20は特に側面と正面で本体10に配置され、それにより容易なアクセス性が与えられる。このことは特に、上腿断端を収容するための人工膝関節のためのプロテーゼソケットの場合に好ましい。下腿断端の場合にも、このような配置が有意義であり得る。当該個所では、統合される機械式、電子式、および電気式のコンポーネントに基づいて若干広くなるプロテーゼソケットの容積は、使用時に邪魔にならないからである。
【0049】
このプロテーゼソケットシステムにより、標準化された、または個別的な、本体10の形態のソケットベースを通じて、位置調節可能なアンカー22,23との関連で、従来式のプロテーゼソケットシステムと比較して機能拡張されたオートアダプティブ式のプロテーゼソケットシステムが実現される。容積調節のいっそう幅広いバリエーションを可能にするために、複数の機能部材20が1つの本体10に、たとえば互いに向かい合うように配置されていてもよい。これに加えて、特殊な当接面の的確な操作を実現することが可能である。センサ29は機能部材20の内部に配置されるのが好ましく、制御装置28は、アクチュエータ27を動かすために、他のセンサまたは外部のデータソースとリンクすることもできる。アンカー22,23の相互の個別的な位置調節を実現するために、または複数の方向への変位を実現するために、複数のアクチュエータ27が存在していてもよい。アンカー22,23を回転させることもでき、同様に、側方への運動のほか、近位・遠位・方向への運動および/またはそれぞれの断端から見て外方もしくは内方に向かっての運動も行うことができる。
【0050】
図9には、本体10とソケット壁11とを有するプロテーゼソケットが斜視模式図で示されている。本体10は、遠位の端部キャップ14から近位の方向へと拡張するテーパ状の基本形状を有している。本体10は実質的に閉じた断面を有しており、組み付けられて装着された状態のとき、図示しない四肢断端を全面的に取り囲む。遠位の端部キャップ14に、たとえば関節などの他の図示しないプロテーゼコンポーネントのための取付装置や、義手、義足などの機能部材が存在する。ソケット壁11の内部に切開部19が形成されていて、これは本体10の成形時に形成されるか、または、当初は断端を全面的に取り囲んでいた本体10へ事後的に穿設されたものである。切開部19は、たとえば切り取られ、鋸引きされ、またはその他の分離方法によって作製することができる。切開部19には、互いに向かい合うソケット縁部12,13が形成されている。切開部19は非対称に構成されており、円周方向よりも近位・遠位・方向に大きい延在を有している。実質的に近位・遠位方向に延びる両方のソケット壁縁部12,13は、これらが互いに平行に向いて延びていないときでも互いに向かい合う。両方のソケット壁縁部12,13は縁取りされていてよく、同様に、切開部19の他の縁部も加工または縁取りされていてよく、たとえばソケット壁11の表面または内部に、アンカー22,23を固定するための取付装置または形状接合部材が配置または形成されていてよい。切開部19はフィルム、クッション、織物、またはその他の柔軟な、場合により弾性的なカバーによって部分的または全面的に閉じられていてよい。ソケット壁縁部12,13の向きは自由に選択可能であるが、円周方向への可変性が大きいことに基づき、近位・遠位・方向への向きがおそらくもっとも多く選択されると考えられる。
【0051】
ソケット壁11の外側には、形状接合式かつ可逆的に本体10に固定可能である2つのアンカー22,23が、ソケット壁縁部12,13ないしソケット縁部領域に固定されている。アンカー22,23は、図示した実施例ではいわゆるペロッテとして構成されるメカトロニクス式の機能部材20で可動に支承されている。メカトロニクス式の機能部材20の内部に、上で説明した、詳しくは図示しないエネルギー蓄積器、センサ、送信器、受信器、エネルギー・データインターフェース、制御装置、プロセッサ、データ記憶装置、モータなどのアクチュエータなどのコンポーネントが統合されている。
【0052】
図9aには、メカトロニクス式の機能部材20の中心体に対して相対的にアンカー22,23の位置決めが異なる2つの状態が示されている。上側の図面ではアンカー22,23が互いに近づくように動いており、それにより、切開部19のそれぞれのソケット縁部または縁部12,13の間の有効長さの短縮が惹起されている。ソケット縁部12,13は、図示した実施例では互いに近づくように変位しておらず、もしくは些細にしか変位しておらず、それにより、メカトロニクス式の機能部材20の中心体が本体10の内部へと変位している。中断されない本体10の湾曲線が破線で図示されている。このような状態のとき、中心体によっていっそう高い圧力が本体10の内部に、すなわちその中に収容された断端に、及ぼされる。
【0053】
両方のアンカー22,23がこれと反対の方向へ動くと、すなわち互いに離れるように変位すると、切開部19の領域における両方の縁部12,13の間のメカトロニクス式の機能部材20の有効長さが拡大し、それにより中心体が外方に向かって動く。このことは図9aの下側の図面に示されている。メカトロニクス式の機能部材20によって少なくとも部分的に覆われる切開部19の領域の内側円周は、ここでは実質的に、本体10のソケット壁11の延長された円周線に相当する。断端がいっそうの負荷軽減を必要とする場合には、メカトロニクス式の機能部材20の中心体に対して相対的に外方へ向かってのアンカー22,23の移動運動を継続することができる。アンカー22に対して相対的な中心体の変位のための駆動部またはアクチュエータが同方向に作動すると、アンカー22,23の間で、ないしは切開部19の縁部12,13の間で、中心体をスライドさせることができる。当然ながら同様のことは、本体10の近位の縁部まで延びる切開部が、切開部またはソケット縁部12,13によって形成される場合にも当てはまる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9a
【国際調査報告】