(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】プラスチック由来の合成原料のための抽出溶媒
(51)【国際特許分類】
C10G 21/12 20060101AFI20240313BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20240313BHJP
C10G 21/16 20060101ALI20240313BHJP
C10G 21/20 20060101ALI20240313BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C10G21/12
C10G1/10 ZAB
C10G21/16
C10G21/20
C08J11/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554028
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022022544
(87)【国際公開番号】W WO2022212502
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】セオドア シー.アーンスト
(72)【発明者】
【氏名】カリナ ユーレステ
(72)【発明者】
【氏名】カムズワラ ビャカラナム
(72)【発明者】
【氏名】タノン エス.ウッドソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エヌ.ショルズ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA27
4F401BA02
4F401BA03
4F401CA22
4F401CA70
4F401CA90
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4F401EA58
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4F401FA01Z
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
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4H129CA22
4H129DA06
4H129HB03
4H129NA01
4H129NA33
(57)【要約】
【課題】プラスチックから得られた熱分解油から汚染物質を抽出するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】プラスチックに由来する合成原料を精製するための組成物及び方法において使用される抽出溶媒が開示される。プラスチック由来の合成原料を精製する方法も提供される。例えば、プラスチック由来の合成原料組成物を精製する方法は、プラスチック熱分解に由来する合成原料組成物に抽出溶媒を添加して、抽出相及びラフィネート相を提供することを含み得、ここで、抽出溶媒は、合成原料に不混和性の極性有機抽出溶媒を含む。本方法はまた、ラフィネート相を抽出相から分離して、精製された合成原料を得ることを含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック由来の合成原料組成物を精製する方法であって、前記方法は、
抽出溶媒をプラスチック熱分解に由来する合成原料組成物に添加して、抽出相及びラフィネート相を提供することであって、前記抽出溶媒は、前記合成原料に不混和性の極性有機抽出溶媒を含む、ことと、
前記ラフィネート相を前記抽出相から分離して、精製された合成原料を得ることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記合成原料は、熱分解油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成原料は、約60~約80重量%のC
5~C
15、約20~約35重量%のC
16~C
29、及び約5重量%以下の≧C
30を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出溶媒は、約20℃の水に対して約2.5~約3.5デバイの極性、約1.1~約1.2の密度、及び約200℃以上の沸点を有する極性有機抽出溶媒を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、イソプロピルアルコール、ジエチレントリアミン、テトラエチレングリコール、グリコール重質物、及びこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出溶媒は、約90重量%のN-メチルピロリドン(NMP)及び約10重量%の水を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
合成原料と抽出溶媒との質量比は、約95:5~約10:90である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出溶媒を添加することは、熱分解後に急冷塔、又は空冷式若しくは水冷式凝縮器の出口で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出溶媒を添加することは、前記熱分解油の生成後、貯蔵容器中、又はそれらの任意の組み合わせで行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抽出溶媒を前記合成原料組成物に約1ppm~約900,000ppm添加する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出溶媒は、前記合成原料組成物の汚染物質を約5%~約95%減少させる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ラフィネート相は、前記精製合成原料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出相は、前記汚染物質を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記汚染物質は、ポリアミド、カプロラクタム、安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール、アルケン、アルカン、プロピレン、トルエン、ペンテン、ブタン、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、テトラヒドロキノリン、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抽出溶媒は、前記合成原料組成物の色を明るくする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記合成原料組成物は、酸化防止剤、流動点降下剤、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
プラスチック熱分解に由来する前記合成原料は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)前記合成原料を回収することと、によって得られる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記回収された合成原料を急冷塔、又は空冷式若しくは水冷式凝縮器内で冷却することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プラスチックは、廃プラスチックを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記合成原料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びこれらの任意の組み合わせを含むプラスチックの熱分解油を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記加熱は、触媒の存在下又は非存在下である、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる精製合成原料。
【請求項24】
プラスチックに由来する合成原料を含む組成物であって、前記合成原料は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)前記熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)前記合成原料を回収することと、
(d)抽出溶媒を前記合成原料に添加して、抽出相及びラフィネート相を提供することであって、前記抽出溶媒は、前記合成原料に不混和性の極性有機抽出溶媒を含む、ことと、
(e)前記ラフィネート相を前記抽出相から分離して、精製された合成原料を得ることと、を含む方法によって得られる、組成物。
【請求項25】
前記合成原料は、約60重量%~約80重量%のC
5~C
15、約20重量%~約35重量%のC
16~C
29、及び約5重量%以下の≧C
30を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記抽出溶媒は、約20℃の水に対して約2.5~約3.5デバイの極性、約1.1~約1.2の密度、及び約200℃以上の沸点を有する極性有機抽出溶媒を含む、請求項24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
前記抽出溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、イソプロピルアルコール、ジエチレントリアミン、テトラエチレングリコール、グリコール重質物、及びこれらの任意の組み合わせを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記抽出溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びこれらの任意の組み合わせを含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記抽出溶媒は、約90重量%のNMP及び約10重量%の水を含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
合成原料と抽出溶媒との質量比は、約95:5~約10:90である、請求項24~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記抽出溶媒を添加することは、熱分解後に急冷塔、又は空冷式若しくは水冷式凝縮器の出口で行われる、請求項24~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記抽出溶媒を添加することは、前記熱分解油の生成後、貯蔵容器中、又はそれらの任意の組み合わせで行われる、請求項24~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記抽出溶媒を前記合成原料組成物に約1ppm~約900,000ppm添加する、請求項24~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記抽出溶媒は、前記合成原料組成物の汚染物質を約5%~約95%減少させる、請求項24~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記ラフィネート相は、前記精製合成原料を含む、請求項24~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記抽出相は、前記汚染物質を含む、請求項24~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記汚染物質は、ポリアミド、カプロラクタム、安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール、様々な長さのアルケン及びアルカン、プロピレン、トルエン、ペンテン、ブタン、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、テトラヒドロキノリン、及びそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記抽出溶媒は、前記合成原料組成物の色を明るくする、請求項24~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記合成原料組成物は、酸化防止剤、流動点降下剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む、請求項24~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
プラスチックに由来する合成原料中の汚染又は汚染物質を減少させるための、請求項1~39のいずれか一項に記載の抽出溶媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、プラスチックに由来する合成原料の製造中の汚れを抑制又は低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みプラスチック及び規格外プラスチック材料は、これらのプラスチック材料を熱分解反応器中で加熱して、ポリマー鎖をより小さい揮発性断片に分解することによって、化学的にリサイクルすることができる。反応器からの蒸気は凝縮され、熱分解生成物又は熱分解油として回収され、一方、より小さい非凝縮性炭化水素断片は燃料ガスとして回収される。
【0003】
熱分解生成物の回収中に、熱分解油に不溶性である黒タール状物質又は褐色タール状物質などの汚染物質が蓄積し、蒸留塔、ポンプ、プロセス配管、フィルタなどのプロセス機器を汚染する。時間の経過とともに蓄積する汚染物質の堆積は、最終的には洗浄のために装置の停止を必要とする。
【0004】
熱分解油(熱分解生成物)が長期間にわたって貯蔵される場合、貯蔵容器はまた、褐色膜などの汚染物質を蓄積する可能性がある。この褐色膜は、空気の存在下又は非存在下で形成される。膜形成は、温度上昇によって加速されるが、より長い期間(例えば、7日間)にわたって室温で形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチックから得られた熱分解油から汚染物質を抽出するための組成物及び方法が本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本開示は、プラスチック由来の合成原料組成物を精製する方法であって、
抽出溶媒をプラスチック熱分解に由来する合成原料組成物に添加して、抽出相及びラフィネート相を提供することであって、抽出溶媒は、合成原料に不混和性の極性有機抽出溶媒を含む、ことと、
ラフィネート相を抽出相から分離して、精製された合成原料を得ることと、を含む。
【0007】
別の態様において、本開示は、プラスチックに由来する合成原料を含む組成物であって、合成原料は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、
(d)抽出溶媒を合成原料組成物に添加して、抽出相及びラフィネート相を提供することであって、抽出溶媒は、合成原料に不混和性の極性有機抽出溶媒を含む、ことと、
(e)ラフィネート相を抽出相から分離して、精製された合成原料を得ることと、を含む方法によって得られる組成物を提供する。
【0008】
更に別の態様において、本開示は、プラスチックに由来する合成原料中の汚染又は汚染物質を減少させるための抽出溶媒の使用を提供する。
【0009】
開示された組成物及び方法は、合成原料中の汚染物質を低減又は排除して、より高品質の原料材料を提供し、システム及び機器の洗浄のためのコスト及び時間を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0011】
【
図2】プラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0012】
【
図3】抽出溶媒による処理を示すプラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0013】
【
図4】抽出溶媒による処理を示すプラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0014】
【
図5】抽出溶媒による処理を示すプラスチック熱分解プロセスの実施形態の概略図である。
【0015】
【
図6A-1】
図6A-1は、異なる膜汚染物質含有試料の赤外スペクトルを示す。
【
図6A-2】
図6A-2は、異なる膜汚染物質含有試料の赤外スペクトルを示す。
【
図6B】異なる膜汚染物質含有試料の赤外スペクトルを示す。
【0016】
【
図7】様々な温度で貯蔵した後に得られた様々な膜についての脱着生成物の棒グラフである。膜汚染物質試料を以下のように指定する:NE00632=25℃で窒素を含まないブランク熱分解生成物、NE00633=25℃で窒素を含むブランク熱分解生成物、NE00634=43℃で窒素を含まないブランク、NE00635=43℃で窒素を含むブランク、NE00636=75℃で窒素を含まないブランク熱分解生成物、NE00637=75℃で窒素を含むブランク。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、様々な実施形態への言及を提供するが、当業者は、本出願の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更がなされ得ることを認識するであろう。様々な実施形態が、図面を参照して詳述される。様々な実施形態への言及は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。更に、本出願に記載されたいかなる例も、限定を意図するものではなく、添付の特許請求の範囲の多くの可能な実施形態のうちのいくつかを単に記載するものである。
【0018】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が優先される。本明細書で説明されるものと同様又は同等の方法及び材料が、本出願の実施又は試験に使用され得るが、方法及び材料を以下で説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「抽出相」は、合成原料と不混和性であり、汚染物質及び汚染物質前駆体に対してより強い親和性を有する有機液体を意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「汚染物質」という用語は、合成原料の操作及び製造中に装置上に付着するか、又は貯蔵中に蓄積する有機及び無機材料を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「プロセス機器」という用語は、プロセスに関連し、汚れる可能性がある蒸留塔、ポンプ、プロセス配管、フィルタ、凝縮器、急冷塔、貯蔵装置などを意味する。この用語はまた、流体連通又はガス連通している構成要素のセットを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ラフィネート相」という用語は、精製された合成原料を含む相を指す。
【0023】
「合成原料」という用語は、プラスチックの熱化学変換などのプラスチックに対する処理又はプロセスから得られる炭化水素(例えば、熱分解油又は熱分解生成物)を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「し得る(can)」、「含有する(contain(s))」、及びそれらの変形は、追加の作用又は構造の可能性を排除しない制限のない移行句、用語、又は単語であることが意図される。単数形「a」、「and」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本開示はまた、明示的に記載されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態、ステップ、及び/又は要素を「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「任意選択の」又は「任意選択に」は、その後に記載された事象、又は状況が発生する可能性があるが発生する必要はなく、並びにその説明に事象又は状況が生じる事例及び生じない事例が含まれることを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の配合成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流速、圧力、及び同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は使用配合物を作製するために使用される典型的な測定及び取り扱い手順により;これらの手順における偶発的な誤りにより;方法を実行するために使用される出発物質若しくは配合成分の製造、供給源、又は純度の違いにより、及び同様の近似考慮事項により生じる可能性がある数値量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する配合物の劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する配合物を混合又は加工することに起因して異なる量を包含する。「約」という用語によって修飾されている場合、添付の特許請求の範囲は、これらの量と同等のものを含む。更に、「約」が値の範囲を説明するために使用される場合、文脈によって特に限定されない限り、例えば「約1~5」は、「1~5」及び「約1~約5」及び「1~約5」及び「約1~5」を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、「から本質的になる」を意味し、「からなる」を含む。「から本質的になる」及び「からなる」は、米国特許法に準じて解釈される。例えば、特定の化合物又は材料を「実質的に含まない」溶液は、その化合物又は材料を含まなくてもよいか、あるいは意図しない汚染、副反応、若しくは不完全な精製などによって存在する少量のその化合物又は材料を有してもよい。「少量」は、微量、測定不可能な量、価値若しくは特性を妨げない量、又は文脈で提供されるような何らかの他の量であり得る。提供された成分のリスト「のみ実質的に」有する組成物は、それらの成分のみからなるか、又は存在する微量のいくつかの他の成分を有するか、又は組成物の特性に物質的に影響を及ぼさない1つ以上の更なる成分を有し得る。更に、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の成分のタイプ若しくは量、特性、測定可能な量、方法、値、又は範囲を修飾する「実質的に」とは、意図された組成物、特性、量、方法、値、又は範囲を無効にする様式で、記載された組成物、特性、量、方法、値、又はその範囲に全体的に影響を及ぼさない変動を指す。用語「実質的に」で修飾されている場合、本明細書に添付の特許請求の範囲は、この定義による等価物を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、任意の列挙された値の範囲は、範囲内の全ての値を想定し、列挙された範囲内の実数値である終点を有する任意の部分範囲を列挙する特許請求の範囲を支持するものとして解釈されるべきである。例として、1~5の範囲に関する本明細書における開示は、次の範囲、すなわち、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5、3~4、及び4~5のうちのいずれかに対する特許請求の範囲を支持するものとみなされるものとする。
【0029】
プラスチックに由来する合成原料を精製する組成物及び方法が記載される。したがって、精製された合成原料は、プラスチックリサイクル及び貯蔵中に使用される装置及びシステムの汚れを低減している。
【0030】
いくつかの実施形態では、熱分解油を精製するための方法は、熱分解油に抽出溶媒を添加することを含む。抽出溶媒は、汚染物質を抽出し、精製された合成原料を生成する。
【0031】
いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、抽出相及びラフィネート相を形成する混合物を提供するために合成供給物に添加される。抽出相は汚染物質を含有し、ラフィネート相はより精製された合成原料を含有する。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は極性有機溶媒であり、合成原料はプラスチックの熱分解に由来する。
【0032】
プラスチックをリサイクルするために、熱可塑性廃棄物などの様々なタイプのプラスチックを使用することができる。廃プラスチック原料において一般的に遭遇するプラスチックのタイプとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、合成原料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート及びそれらの組み合わせを含むプラスチックの熱分解を含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びより少ない量のポリスチレンが存在するが、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンテレフタレートは、分類が困難であるために存在する。
【0033】
プラスチック(例えば、廃プラスチック)をより低い分子量の炭化水素材料、特に炭化水素燃料材料に変換するいくつかのプロセスが知られている。例えば、米国特許第6,150,577号、同第9,200,207号、及び同第9,624,439号を参照されたい。これらの刊行物の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。広く説明されているそのようなプロセスは、酸素が制限されているか又は酸素がなく、かつ大気圧を上回る、熱分解-高熱(例えば、約400℃~約850℃)などの熱化学変換によって長鎖プラスチックポリマーを破壊することを含む。熱分解条件は、約400~850℃、約500~700℃、又は約600~700℃の温度を含む。得られた熱分解流出物は、凝縮され、次いで任意選択的に蒸留される。
【0034】
図1に示されるように、熱分解プロセスの実施形態は、廃プラスチックの供給器12、反応器14、及び凝縮器システム18を含む。ポリマー含有材料は、供給器内の入口10から供給され、反応器14に熱が加えられる。凝縮器システム18からの出口20は、生成物が出ることを可能にする。
図2は、プラスチックの熱分解プロセスの別の実施形態を示す。
図3及び
図4は、熱分解流出物の凝縮又は急冷後のプロセスを示す更に他の実施形態を示す。この熱分解反応を実現するための熱クラッキング反応器は、いくつかの特許、例えば、米国特許第9,624,439号、同第10,131,847号、同第10,208,253号、及びPCT国際特許出願公開第2013/123377A1号に詳細に記載されており、これらの刊行物の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、触媒の存在下又は非存在下である。
【0036】
いくつかの実施形態では、合成原料を得る方法は、
(a)実質的に酸素を含まない条件下で、約400℃~約850℃の温度でプラスチックを加熱して、熱分解流出物を生成することと、
(b)熱分解流出物を冷却及び凝縮して、合成原料を得ることと、
(c)合成原料を回収することと、を含む、方法によって提供される、組成物。
【0037】
いくつかの実施形態では、冷却して凝縮後、流出物は、任意選択的に蒸留される。
【0038】
いくつかの実施形態では、合成原料を回収することは、合成原料を得るために、熱分解流出物を分離すること若しくは急冷すること、又は分離すること及び急冷することの両方に関する。
【0039】
熱分解プロセスは、ガス(10℃~50℃の温度及び0.5~1.5大気圧で、5個以下の炭素を有する)、低沸点液体(ガソリン又はナフサ(40~200℃)又はディーゼル燃料(180~360℃)など)、より高い(例えば、250~475℃で)沸点の液体(油及びワックス)、及び一般にチャーと呼ばれるいくつかの固体残留物、から様々な炭化水素生成物を生成する。チャーは、熱分解プロセスが完了して反応器の流出物が回収された後に残る材料である。チャーは、原料の一部としてシステムに入る添加物及び汚染物質を含有する。チャーは、重油成分を有するスラッジに似た粉末状の残留物又は物質であり得る。ガラス、金属、炭酸カルシウム/酸化カルシウム、粘土、及びカーボンブラックは、変換プロセスが完了した後に残り、チャーの一部になるほんのわずかな汚染物質及び添加物である。
【0040】
いくつかの実施形態では、プラスチックの熱分解は、約2~30%のガス(C1~C4炭化水素)、(2)約10~50%の油(C5~C15炭化水素)、(3)約10~40%のワックス(≧C16炭化水素)、(4)約1~5%のチャー、を含む合成原料(例えば、熱分解生成物又は熱分解油)をもたらす。
【0041】
廃プラスチックの熱分解に由来する炭化水素は、アルカン、アルケン、オレフィン及びジオレフィンの混合物であり、オレフィン基は一般にC1とC2との間にある、すなわちα-オレフィンであり、いくらかのアルク-2-エンも生成され、ジエンは一般にアルファ及びオメガ位にある、すなわちアルク-α,ω-ジエンである。いくつかの実施形態では、プラスチックの熱分解は、パラフィン化合物、イソパラフィン、オレフィン、ジオレフィン、ナフテン、及び芳香族化合物を生成する。いくつかの実施形態では、熱分解流出物中の1-オレフィンのパーセンテージは、約25~75重量%、若しくは約35~65重量%である。
【0042】
処理条件に依存して、石油源からの原油と同様の特徴を有することができる合成原料であるが、有するオレフィンとジオレフィンの量は異なり得る。いくつかの実施形態では、廃プラスチックに由来する合成原料は、約35~65%のオレフィン及び/又はジオレフィン、約10~50%のパラフィン及び/又はイソパラフィン、約5~25%のナフテン、並びに約5~35%の芳香族化合物を含有する。いくつかの実施形態では、合成原料は、約15~20重量%のC9~C16、約75~87重量%のC16~C29、約2~5%のC30+である炭素長を有し、ここで炭素鎖は主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である。他の実施形態では、合成原料は、約10重量%の<C12、約25重量%のC12~C20、約30重量%のC21~C40及び約35重量%の>C41を有し、ここで炭素鎖は主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である。更に他の実施形態において、合成原料は、約60~80重量%のC5~C15、約20~35重量%のC16~C29、及び約5重量%以下の≧C30を有し、ここで炭素鎖は主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である。いくつかの実施形態では、合成原料は、約70~80重量%のC5~C15及び約20~35重量%のC16~C29を有し、ここで炭素鎖は主にアルカン、アルケン及びジオレフィンの混合物である。
【0043】
いくつかの実施形態では、合成原料組成物は、その所望の温度よりも高い温度で、又は貯蔵、輸送、若しくは使用温度中に反応して合成原料組成物から沈殿することができる、ある範囲のα又はωオレフィンモノマー成分(例えば、αオレフィン又はα,ωジオレフィン)を有する。いくつかの実施形態では、合成原料は、約25~70重量%のオレフィン及び/又はジオレフィン、又は約35~65重量%、約35~60重量%若しくは約5~50重量%のオレフィン及び/又はジオレフィンである。
【0044】
熱分解油(熱分解生成物)が長期間貯蔵される場合、貯蔵容器は褐色膜を蓄積し始める。この褐色膜は、空気(酸素)の存在下又は非存在下で形成される。膜形成は温度の上昇によって加速されるが、室温では1週間以上かけて形成される。赤外分光法によるこの褐色膜の分析は、これが熱分解生成物回収装置を汚染するタール様物質と同様の組成物であることを示す。
【0045】
いくつかの実施形態では、合成原料中の汚染物質は、「タール」様堆積物であるか、又は褐色膜様汚染物質及びそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、「タール」様堆積物は、固体粘弾性物質、及び暗褐色又は黒色粘性液体であり、それぞれ、不純廃プラスチックの熱分解から生じる。いくつかの実施形態では、「タール」様堆積物は、暗褐色又は黒色の粘性液体中の小さな黒色粒子の懸濁液であり、これは柔らかい芸術家の模型用粘土の粘稠度を有する。いくつかの実施形態では、固体及び暗色粘性液体は、同じ赤外分光特性を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、汚染物質(例えば、固体粘弾性物質として)は、追加のカルボン酸及びヒドロキシル官能基を有するポリアミドを含み、約62~75%の炭素、約6~9%の水素、約3~7%の窒素及び約12~25%の酸素の元素組成を有する。いくつかの実施形態では、汚染物質の元素組成は、約62~75%の炭素、約6~9%の水素、約3~7%の窒素、約12~25%の酸素、及び約0.3%未満の硫黄である。
【0047】
いくつかの実施形態では、熱分解油中に存在する汚染物質は、アミド官能基に関連するもの以外にヒドロキシル及びカルボニル官能基も含有する第二級アミドである。いくつかの実施形態では、汚染物質は、長鎖脂肪族基、カルボン酸基、アミド基、少量のオレフィン性不飽和を有する芳香族基、及びそれらの組み合わせを有するポリアミドである。いくつかの実施形態では、汚染物質は、長鎖脂肪族基、カルボン酸基、アミド基、オレフィン性不飽和を有する芳香族基、アルケン、アルカン、安息香酸、カプロラクタム、トルエン、キシレン、クレゾール、フェノール、イソプロピルフェノール、tertブチルフェノール及びジ-tertブチルフェノール、ジメチルフェノール、ナフタレノール、様々な長さのアルケン及びアルカン、並びにそれらの組み合わせを有するポリアミドである。
【0048】
約600℃での試料の加熱は、試料を様々な断片に熱分解する。同定された主要な断片は、プロピレン、トルエン、カプロラクタム、ペンテン及びブタンであった。少量の断片には、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロロール、ジメチルフラン、及びテトラヒドロキノリンが含まれた。
【0049】
いくつかの実施形態では、汚染物質は、熱分解油中の金属、ヘテロ原子、及び/又は他の望ましくない副生成物を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、熱分解油中の汚染物質濃度を抽出、除去又は低減することができる。いくつかの実施形態では、汚染物質は抽出溶媒に可溶性であり、抽出溶媒は熱分解油に不溶性である。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、熱分解油に不溶性である極性抽出溶媒であり、抽出溶媒と汚染物質との組み合わせは、熱分解油とは異なる密度を有する。異なる密度を有することは、熱分解油からの汚染物質及び抽出溶媒の分離(例えば、重量分離)を向上させる。抽出溶媒は熱分解生成物よりも密度が高く、熱分解生成物汚染物質も同様であり、抽出溶媒と汚染物質との間の接触効率を重量測定的に増加させ、ここで、汚染物質はプロセス機器中で沈降する傾向があり、添加された抽出溶媒は同じ場所に沈降する。汚染物質/抽出溶媒混合物の密度が高いことにより、熱分解生成物から汚染物質を除去するためにブリーダードレイン又は沈降ドラムの使用が可能になる。
【0051】
いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、約20℃の水に対して約2.5~約3.5デバイ、約1.1~約1.2の密度、及び約200℃以上、例えば約200℃~約350℃の沸点の極性を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、N-メチルピロリドン(NMP)、イソプロピルアルコール、ジエチレントリアミン、テトラエチレングリコール、グリコール重質物、及びこれらの組み合わせである。エチレングリコール及び水は、汚染物質の抽出溶媒として有効でないことが判明した。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリコール重質物又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、グリコール重質物は、エチレングリコールの蒸留回収後の塔底流である。
【0053】
抽出溶媒は、合成原料製造プロセスで使用される急冷塔又はカラムなどのプロセス機器における汚染物質の堆積を防止又は低減するのに有用である。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、合成原料の製造中に、貯蔵中に保持されている供給原料(精製又は未精製)又はそれらの組み合わせに添加される。抽出相中の汚染物質を抽出することによって、抽出溶媒は汚染物質を減少させ、より良好な品質の供給原料をもたらす。抽出溶媒は、プロセスの1つ以上の場所で添加されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、ガス状熱分解生成物が凝縮し始める時点で添加され、抽出溶媒は、凝縮した熱分解生成物と共に移動し、沈殿したか、又はそうでなければ抽出溶媒の非存在下で沈殿するであろう汚染物質との接触を達成することが可能になる(例えば、
図3を参照されたい)。いくつかの実施形態では、次いで、2相混合物は沈降ドラムに流入し、そこで、抽出溶媒及び汚染物質が重力によって除去される。いくつかの実施形態では、重力沈降は、液体サイクロン型分離器を用いて実施される。
【0055】
別の実施形態(
図4を参照されたい)では、抽出溶媒は、重力分離器への初期バッチ用量として適用される。次に、抽出溶媒を分離器底部から熱分解生成物蒸気回収システムにポンプで送り込み、抽出溶媒を熱分解生成物凝縮物回収システムを通して移動させ、分離器ドラムに戻す。抽出溶媒は公称濃度の汚染物質が蓄積するまで何度も循環し、その時点で蓄積汚染物質を含む抽出溶媒の一部を除去して、バッチ式又は連続式のいずれかで新しい抽出溶媒を補充することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では(例えば、
図5を参照されたい)、抽出溶媒は、貯蔵中に保持される熱分解生成物のスクラビング又は洗浄のために使用される。抽出溶媒及び熱分解生成物は、スタティックミキサを介して、又は混合エネルギーを提供する遠心ポンプの直前で抽出溶媒を熱分解生成物に導入することによって、十分に混合される。次いで、抽出溶媒及び熱分解生成物は一緒に中間貯蔵タンクに移動し、ここで抽出溶媒は熱分解生成物生成物から重力によって分離される。次いで、抽出溶媒層をタンクの底部から回収し、反応性化合物の濃度が抽出効率を妨げる濃度に達するまでスタティックミキサ(又はポンプ吸引)に戻すことができ、その時点で、循環抽出溶媒の一部が除去され、新鮮な抽出溶媒が補充される。
【0057】
いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、熱分解反応器を出る合成原料蒸気が急冷され、ガスが冷却され、約100℃~200℃、約110℃~140℃、又は約105℃~120℃の温度で凝縮されるときに、急冷塔、又はカラム、空冷式若しくは水冷式凝縮器の入口で添加される。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、貯蔵中に保持された合成原料に添加される。
【0058】
抽出溶媒は、任意の好適な方法で添加され得る。例えば、抽出溶媒は、原液の溶液又は補助薬と共に添加されてもよい。いくつかの実施形態では、補助薬は、水又は分散剤(例えば、界面活性剤)である。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、約10%の水を含む約90%のNMP、又はPluronic L-64若しくはPluronic L-61などの補助薬を含むDEG/TEGである。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、システム内の所望の開口部に、又はプロセス機器若しくはそこに含有される流体上に、噴霧、滴下、又は注入される溶液として適用されてもよい。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、ワンススルー方式で、又は周期的なパージ及び置換を伴う再循環システムとして、システムにポンプ注入又は注入され得る。いくつかの実施形態では、再循環抽出溶媒は、適合する置換体積を有する低体積連続パージを有する。抽出溶媒は、必要に応じてプロセス機器に連続的又は断続的に添加され得る。
【0059】
抽出溶媒は、処理されたプロセス機器を形成するために、プロセス機器に適用される。いくつかの実施形態では、処理されたプロセス機器は、抽出溶媒を添加しないプロセス機器よりも汚染物質堆積が少ないことが観察され得る。
【0060】
抽出溶媒は、インプロセス前、プロセス中、ポストプロダクション中、貯蔵中(抽出溶媒による抽出あり又はなし)、又はそれらの任意の組み合わせで添加することができる。いくつかの実施形態では、合成原料(例えば、熱分解油)と抽出溶媒との質量比は、約95:5~約10:90である。いくつかの実施形態では、抽出溶媒は、約1ppm~約900,000ppm、例えば、約50,000ppm~約900,000ppm、約150,000ppm~約900,000ppm、約300,000ppm~約900,000ppm、約100ppm~約700,000ppm、約300ppm~約500,000ppm、又は約500ppm~約250,000ppmで合成原料組成物に添加される。
【0061】
汚染物質形成又は汚染物質堆積の低減又は防止は、ASTM D4625などの任意の既知の方法又は試験によって評価され得る。いくつかの実施形態では、抽出溶媒で処理された合成原料は、汚染物質の汚染が約5%~95%、約5%~75%、約5%~50%、約5%~25%、約5%~15%、約50%~95%、約50%~20%、又は約50%~75%減少する。
【0062】
いくつかの実施形態では、合成原料の色は、抽出溶媒を添加していない合成原料と比較して明るくなる。
【0063】
他の添加剤は、抽出及び精製プロセス中に、貯蔵時に熱分解油に、又は精製された熱分解油に添加することができる。いくつかの実施形態では、他の添加剤は、酸化防止剤、パラフィン抑制剤、アスファルテン分散剤、ワックス分散剤、タール分散剤、中和剤、界面活性剤、殺生物剤、防腐剤、又はそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、他の添加剤は、精製熱分解に添加される酸化防止剤、流動点降下剤、又はその両方である。例えば、添加される酸化防止剤としては、米国特許出願第17/691,939号に報告されている酸化防止剤及び米国特許出願第17/471,784号に報告されている流動点降下剤が挙げられる。報告された出願はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される精製プロセスは、熱分解油中で行うことができ、その後、油を新しい場所に輸送することができる。任意選択的に、精製プロセスは、新しい場所でもう一度実行されてもよい。
【0065】
本明細書に開示される精製プロセスは、油が貯蔵されている間などの特定の期間後に油中に固体(膜形成成分)が残らない(又は実質的に残らない)熱分解油の生成を可能にする。例えば、油は、およそ室温と約43℃との間の温度で約30日間貯蔵されてもよく、貯蔵期間後、油は、いかなる固体又は膜も含まない。本明細書に開示される抽出/精製油は、様々な温度、例えば、約25℃、43℃、75℃、又はそれらの間の任意の温度で安定である(固体/膜を含有しない)。油は、例えば、固体/膜を形成することなく、約150℃までの温度で貯蔵され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、分散剤を精製油に添加して、油がいかなる固体/膜も形成することなく貯蔵され得る時間量を増加させてもよい。例えば、抽出は、油の製造の1つ以上の段階で行われてもよく、オレフィン及び/又は無水物を含有する化合物などの分散剤が、抽出のいずれかの前、間、又は後に添加されてもよい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明の異なる態様及び実施形態を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更がなされ得ることが認識されるであろう。
【0068】
実施例1.汚染物質特性評価
【0069】
元素(CHNS)分析は、熱分解油から得られた汚染物質膜の試料に対して行った。膜を熱分解油から分離し、ヘプタンで洗浄し、更にジクロロメタンに溶解した。ジクロロメタンを蒸発させて汚染物質膜を残した。
【0070】
表1は、CHNS分析を示す。
【0071】
【0072】
異なる熱分解源からの汚染物質試料も、赤外(IR)分光法によって評価した。IRスペクトルは、オンボードダイヤモンド内部反射アクセサリを備えたNicolet iS50 FTIRを用いて評価した。スペクトルは、4つの波数分解能で実行され、32の同時追加スキャンの結果であった。
【0073】
IR分光法は、長鎖脂肪族基、カルボン酸基、アミド基、少量のオレフィン性不飽和を有する芳香族基の存在を示した。汚染物質の主成分は第二級アミド(例えば、ポリアミド)であった。
図6を参照すると、様々な試料中の汚染物質が、群の中で脂肪族炭化水素、カルボン酸、アミド、及び芳香族化合物の量がいくらか変動した類似の組成物を示したことが示されている。試料内の汚染物質組成物は、異なる温度で同様の組成を示した。
【0074】
異なる供給源からの様々な熱分解試料の熱プロファイルを、発生ガス分析によって分析した。試料を約600℃で加熱した。試料の揮発性画分を約40℃~約300℃で熱脱着させ、ガスクロマトグラフィーによってクロマトグラフィー分離し、質量分析によって検出した。
【0075】
図7は、熱分解生成物からの汚染物質の放出ガス分析及び脱着生成物を示す。同定された揮発性成分は、少量の安息香酸、フェノール、p-クレゾール、ジメチルフェノール、イソプロピルフェノール、tert-ブチルフェノール、ジメチルエチルフェノール、ナフタレノール及び様々な長さのアルケン及びアルカンと共に、カプロラクタムの優勢を示した。約600℃での試料の加熱は、試料を様々な断片に熱分解する。同定された主要な断片は、プロピレン、トルエン、カプロラクタム、ペンテン及びブタンであった。少量の断片には、テトラメチルインドール、エチルベンゼン、エチルジメチルピロール、ジメチルフラン、及びテトラヒドロキノリンが含まれた。
【0076】
実施例2 プラスチック熱分解からの汚染物質の抽出のための抽出溶媒
【0077】
約300グラムの熱分解供給原料を約40グラムのジエチレングリコール(Aldrichからの試薬グレード)と室温で混合することによって、プラスチックの熱分解からの汚染物質の抽出を評価した。層を分離し、第1のジエチレングリコール抽出相を除去した後、約40グラムのジエチレングリコールによる第2の洗浄を残りのラフィネート相(すなわち、すでに抽出された試料)に対して行い、再度層に分離させ、そこで抽出相を除去した。汚染物質の抽出を、熱分解原料試料1(約60~80重量%のC5~C15、約20~35重量%のC16~C29及び約5重量%以下の≧C30)及び熱分解原料試料2(約70~80重量%のC5~C15、約20~35重量%のC16~C29)に対して行った。
【0078】
洗浄した供給原料を回収し、ASTM D4625手順ガイドラインに従って室温、約43℃及び約75℃で約30日間の安定性試験のためにいくつかの部分に分割した。試料を高温で1ヶ月間、室温で3ヶ月間観察した。
【0079】
抽出の結果は、抽出された試料では汚染物質膜形成が起こらなかったが、未処理の非抽出試料では膜形成が容易に明らかになったことを示した。ジエチレングリコールで処理した試料については、室温及び約43℃で30日後に膜は形成されなかった。
【国際調査報告】