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特表2024-512923省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20240313BHJP
   B23K 35/365 20060101ALI20240313BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B23K35/30 330B
B23K35/365 B
C22C38/00 302Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555703
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2022110118
(87)【国際公開番号】W WO2023134152
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210026990.0
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448821
【氏名又は名称】哈尓濱▲旱▼接研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Harbin Welding Institute Limited Company
【住所又は居所原語表記】No.2077 ChuangXin Road, SongBei District, Harbin, Heilongjiang, China
(71)【出願人】
【識別番号】523345471
【氏名又は名称】哈尓濱威尓▲旱▼接有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】HARBIN WELL WELDING LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Building 1-5,Bohai Road And Yantai Road Section,Haping Road Concentration Zone,Harbin Economic Development District,Heilongjiang 150060,China
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】徐▲カイ▼
(72)【発明者】
【氏名】梁暁梅
(72)【発明者】
【氏名】黄瑞生
(72)【発明者】
【氏名】王猛
(72)【発明者】
【氏名】方乃文
(72)【発明者】
【氏名】王星星
(72)【発明者】
【氏名】江来珠
(72)【発明者】
【氏名】武鵬博
(72)【発明者】
【氏名】郭梟
(72)【発明者】
【氏名】何鵬
(72)【発明者】
【氏名】王慶江
(72)【発明者】
【氏名】温国棟
(72)【発明者】
【氏名】蘇金花
【テーマコード(参考)】
4E084
【Fターム(参考)】
4E084AA03
4E084AA09
4E084AA20
4E084AA24
4E084AA31
4E084DA01
4E084DA24
4E084GA07
(57)【要約】
省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ及びその製造方法であって、被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、アーク安定剤、スラグ形成剤、潤滑剤及び残部の合金粉末を混合してなり、アーク安定剤はチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの混合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤであって、前記被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C≦0.05%、Si≦0.90%、Mn:3.50%~5.00%、P≦0.020%、S≦0.020%、Cr:15.00%~17.00%、Ni:1.50%~2.50%、Mo≦0.55%、Cu≦1.50%、N:0.10%~0.20%及び残部のFeであることを特徴とする省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ。
【請求項2】
前記被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、前記被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤20%~40%、スラグ形成剤40%~60%、潤滑剤10%~20%及び残部の合金粉末を混合してなり、前記アーク安定剤はチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項3】
前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は100:(10~20)であり、前記ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.6~2.9であることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項4】
前記アーク安定剤中のチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの質量比は(2.5~5):1であることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項5】
前記スラグ形成剤は金紅石、方解石、蛍石及び石英で構成され、前記金紅石、方解石、蛍石及び石英の質量比は10:(2.5~3.5):(1.5~2.5):(0.5~1.5)であることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項6】
前記潤滑剤はチタンホワイトとホワイトクレイの混合物であり、前記チタンホワイトとホワイトクレイの質量比は(1.5~2.5):1であることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項7】
前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は100:15であり、前記ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.8であることを特徴とする請求項3に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項8】
前記被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤30%、スラグ形成剤48%、潤滑剤15%及び残部の合金粉末を混合してなることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項9】
前記被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤29%、スラグ形成剤48%、潤滑剤12%及び残部の合金粉末を混合してなることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項10】
前記被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.041%、Si:0.62%、Mn:4.52%、P:0.018%、S:0.010%、Cr:16.22%、Ni:1.81%、Mo:0.25%、Cu:1.20%、N:0.15%及び残部のFeであることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項11】
前記被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.044%、Si:0.65%、Mn:4.63%、P:0.019%、S:0.010%、Cr:16.52%、Ni:1.93%、Mo:0.26%、Cu:1.01%、N:0.15%及び残部のFeであることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項12】
請求項2~11のいずれか一項に記載の被覆溶接ワイヤの製造方法であって、
被覆粉末材料の組成及び配合比で各原料を均一になるまで混合撹拌し、次にナトリウム水ガラスを加えて均一になるまで撹拌し続けて、被覆ブランクを得るステップ1と、
ステップ1で得られた被覆ブランクを予熱して保温し、次にステンレス鋼溶接コアの外部にコーティングし、一晩自然に干した後、乾燥炉に移して乾燥させ、前記被覆溶接ワイヤを得るステップ2とに従って行われることを特徴とする請求項2~11のいずれか一項に記載の被覆溶接ワイヤの製造方法。
【請求項13】
ステップ2における前記予熱の温度は100~150℃であり、保温時間は5min~10minであることを特徴とする請求項12に記載のの製造方法。
【請求項14】
ステップ2における前記ステンレス鋼溶接コアの直径は1.6mm~2.4mmであり、コーティングの厚さは0.5mm~1.5mmであることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップ2における前記乾燥のパラメータは、温度が300~350℃であり、時間が1h~3hであることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項2~11のいずれか一項に記載の被覆溶接ワイヤ又は請求項12~15のいずれか一項に記載の製造方法で製造された被覆溶接ワイヤの省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接における使用であって、前記裏当て溶接はアルゴンガスを充填しない条件下で行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年01月11日に中国特許庁に出願された、出願番号が202210026990.0、発明の名称が「省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ及びその製造方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、溶接材料の技術分野に属し、具体的には、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ステンレス鋼パイプの従来の溶接方法は、ソリッドワイヤアルゴンアーク溶接を用いて裏当て溶接を行い、溶接ビードの表面の酸化を防止するために、パイプの内側にアルゴンガスを充填して保護する必要があるため、作業効率が低く、生産コストが高い等の問題を引き起こし、かつ溶接品質を制御しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ及びその製造方法を提供し、本発明が提供する省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する溶接ワイヤは、ステンレスパイプの溶接品質を向上させ、生産コストを削減し、作業効率を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が提供する省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C≦0.05%、Si≦0.90%、Mn:3.50%~5.00%、P≦0.020%、S≦0.020%、Cr:15.00%~17.00%、Ni:1.50%~2.50%、Mo≦0.55%、Cu≦1.50%、N:0.10%~0.20%及び残部のFeである。
【0006】
さらに限定すると、前記被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、前記被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤20%~40%、スラグ形成剤40%~60%、潤滑剤10%~20%及び残部の合金粉末を混合してなり、前記アーク安定剤はチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの混合物である。
【0007】
さらに限定すると、前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は、100:(10~20)であり、前記ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.6~2.9である。
【0008】
さらに限定すると、前記アーク安定剤中のチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの質量比は(2.5~5):1である。
【0009】
さらに限定すると、前記スラグ形成剤は、金紅石、方解石、蛍石及び石英で構成され、前記金紅石、方解石、蛍石及び石英の質量比は、10:(2.5~3.5):(1.5~2.5):(0.5~1.5)である。
【0010】
さらに限定すると、前記潤滑剤はチタンホワイトとホワイトクレイの混合物であり、前記チタンホワイトとホワイトクレイの質量比は(1.5~2.5):1である。
【0011】
本発明は、上記解決手段に記載の省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤの製造方法であって、
被覆粉末材料の組成及び配合比で各原料を均一になるまで混合撹拌し、次にナトリウム水ガラスを加えて均一になるまで撹拌し続けて、被覆ブランクを得るステップ1と、
ステップ1で得られた被覆ブランクを予熱して保温し、次にステンレス鋼溶接コアの外部にコーティングし、一晩自然に干した後、乾燥炉に移して乾燥させて、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適する被覆溶接ワイヤを得るステップ2とに従って行われる、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤの製造方法を提供する。
【0012】
さらに限定すると、ステップ2における前記予熱の温度は100~150℃であり、保温時間は5min~10minである。
【0013】
さらに限定すると、ステップ2における前記ステンレス鋼溶接コアの直径は1.6mm~2.4mmであり、コーティングの厚さは0.5mm~1.5mmである。
【0014】
さらに限定すると、ステップ2における前記乾燥のパラメータは、温度が300~350℃であり、時間が1h~3hである。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比較した本発明の利点は以下のとおりである。
1)本発明は、ニッケル元素の代わりにマンガンと窒素の組み合わせを利用して、オーステナイト組織を得ることで、大量のニッケル資源を節約し、製造コストを大幅に削減することができる。
2)本発明の被覆溶接ワイヤを使用して裏当て溶接を行う時、溶融した溶接フラックスは溶融池の裏面に浸透し、裏面の溶接継ぎ目が酸化されることなく緻密な保護層を形成するため、アルゴン充填などの一連の工程を省き、作業効率を著しく向上させ、生産コストを大幅に削減することができる。
3)本発明は、アーク安定剤としてチタン酸カリウム及び炭酸ナトリウムを用いて、イオン化ポテンシャルが低いKとNaの相乗効果により、アーク雰囲気のイオン化ポテンシャルを低下させ、アークの安定性を大幅に向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記実施例で使用された実験方法は、特に断りのない限り、いずれも通常の方法である。使用される材料、試薬、方法及び機器は、特に断りのない限り、いずれも本分野における通常の材料、試薬、方法及び機器であり、当業者が商業的に入手可能である。
【0017】
下記実施例に記載の合金粉末は、元素Mn、Cr、Ni、Mo、Cu、Feを提供できる当技術分野における通常の合金粉末である。
【0018】
実施例1:
本実施例における省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.041%、Si:0.62%、Mn:4.52%、P:0.018%、S:0.010%、Cr:16.22%、Ni:1.81%、Mo:0.25%、Cu:1.20%、N:0.15%及び残部のFeであった。
【0019】
前記被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、前記被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤30%(チタン酸カリウム22%+炭酸ナトリウム8%)、スラグ形成剤48%(金紅石30%+方解石9%+蛍石6%+石英3%)、潤滑剤15%(チタンホワイト10%+ホワイトクレイ5%)及び残部の合金粉末を混合してなり、前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は100:15であり、ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.8であり、前記ステンレス鋼溶接コアの直径は2mmであった。
【0020】
上記溶接ワイヤの製造方法は、
被覆粉末材料の組成及び配合比で各原料を均一になるまで混合撹拌し、次にナトリウム水ガラスを加えて均一になるまで撹拌し続けて、被覆ブランクを得るステップ1と、
ステップ1で得られた被覆ブランクを100℃で予熱して5min保温し、次にステンレス鋼溶接コアの外部にコーティング厚さ1.2mmでコーティングし、24h自然に干した後、乾燥炉に移して、乾燥温度320℃で2h乾燥させて、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適する被覆溶接ワイヤを得るステップ2とに従って行われた。
【0021】
実施例2:
本実施例における省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.044%、Si:0.65%、Mn:4.63%、P:0.019%、S:0.010%、Cr:16.52%、Ni:1.93%、Mo:0.26%、Cu:1.01%、N:0.15%及び残部のFeであった。
【0022】
前記被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、前記被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤29%(チタン酸カリウム24%+炭酸ナトリウム5%)、スラグ形成剤48%(金紅石30%+方解石9%+蛍石6%+石英3%)、潤滑剤12%(チタンホワイト8%+ホワイトクレイ4%)及び残部の合金粉末を混合してなり、前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は100:15であり、ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.8であった。
【0023】
前記ステンレス鋼溶接コアの直径は2mmであった。
【0024】
上記溶接ワイヤの製造方法は、
被覆粉末材料の組成及び配合比で各原料を均一になるまで混合撹拌し、次にナトリウム水ガラスを加えて均一になるまで撹拌し続けて、被覆ブランクを得るステップ1と、
ステップ1で得られた被覆ブランクを100℃で予熱して5min保温し、次にステンレス鋼溶接コアの外部にコーティング厚さ1.2mmでコーティングし、24h自然に干した後、乾燥炉に移して、乾燥温度320℃で2h乾燥させて、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適する被覆溶接ワイヤを得るステップ2とに従って行われた。
【0025】
比較例1:
本比較例における省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.042%、Si:0.64%、Mn:4.55%、P:0.019%、S:0.010%、Cr:16.20%、Ni:1.76%、Mo:0.25%、Cu:1.22%、N:0.15%及び残部のFeであった。
【0026】
前記被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、前記被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤30%(チタン酸カリウム22%+長石8%)、スラグ形成剤48%(金紅石30%+方解石9%+蛍石6%+石英3%)、潤滑剤15%(チタンホワイト10%+ホワイトクレイ5%)及び残部の合金粉末を混合してなり、前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は100:15であり、ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.8であった。
【0027】
前記ステンレス鋼溶接コアの直径は2mmであった。
【0028】
上記溶接ワイヤの製造方法は、
被覆粉末材料の組成及び配合比で各原料を均一になるまで混合撹拌し、次にナトリウム水ガラスを加えて均一になるまで撹拌し続けて、被覆ブランクを得るステップ1と、
ステップ1で得られた被覆ブランクを100℃で予熱して5min保温し、次にステンレス鋼溶接コアの外部にコーティング厚さ1.2mmでコーティングし、24h自然に干した後、乾燥炉に移して、乾燥温度320℃で2h乾燥させて、省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適する被覆溶接ワイヤを得るステップ2とに従って行われた。
【0029】
検証試験
実施例1、実施例2及び比較例1の被覆溶接ワイヤを用いて、溶接電流70~90A、アーク電圧10~12V及び溶接速度50~120mm/minのプロセスパラメータで横向き溶接を行い、試験板母材は08Cr19Mn6Ni3Cu2N低ニッケルオーステナイト系ステンレス鋼材質の鍛造品であり、開先角度=60±5°、開先根元部の隙間=2~3mm、開先鈍辺=0~1mmであった。
【0030】
実施例1及び実施例2の溶接ワイヤの裏当て溶接は、片面溶接両面成形が良好であり、裏面の溶接継ぎ目が銀白色の金属光沢を呈しており、スラグが自然に脱落し、アークが安定している。
【0031】
比較例1は、実施例1の溶接ワイヤと比較して、溶接アークが安定せず、片面溶接両面成形が悪くなり、溶接継ぎ目の表面が平坦であった。
【0032】
以上の実施例の説明は、単に本発明の方法及びその核心思想を理解するためのものである。なお、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に対していくつかの改良及び変更を行うことができ、これらの改良及び変更も本発明の特許請求の範囲に含まれる。これらの実施例に対する様々な修正は、当業者にとって明らかであり、本明細書で定義される一般原理は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施例で実施され得る。したがって、本発明は、本明細書に示されたこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤであって、前記被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C≦0.05%、Si≦0.90%、Mn:3.50%~5.00%、P≦0.020%、S≦0.020%、Cr:15.00%~17.00%、Ni:1.50%~2.50%、Mo≦0.55%、Cu≦1.50%、N:0.10%~0.20%及び残部のFeであることを特徴とする省ニッケル型オーステナイト系ステンレス鋼の裏当て溶接に適用する被覆溶接ワイヤ。
【請求項2】
前記被覆溶接ワイヤは被覆及びステンレス鋼溶接コアで構成され、前記被覆は被覆粉末材料及びナトリウム水ガラスで製造され、そのうち、被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤20%~40%、スラグ形成剤40%~60%、潤滑剤10%~20%及び残部の合金粉末を混合してなり、前記アーク安定剤はチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項3】
前記被覆粉末材料とナトリウム水ガラスの質量比は100:(10~20)であり、前記ナトリウム水ガラスのモジュラスは2.6~2.9であることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項4】
前記アーク安定剤中のチタン酸カリウムと炭酸ナトリウムの質量比は(2.5~5):1であり、前記スラグ形成剤は金紅石、方解石、蛍石及び石英で構成され、前記金紅石、方解石、蛍石及び石英の質量比は10:(2.5~3.5):(1.5~2.5):(0.5~1.5)であり、前記潤滑剤はチタンホワイトとホワイトクレイの混合物であり、前記チタンホワイトとホワイトクレイの質量比は(1.5~2.5):1であり、前記被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤30%、スラグ形成剤48%、潤滑剤15%及び残部の合金粉末を混合してなることを特徴とする請求項2に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項5】
前記被覆粉末材料は、質量分率で、アーク安定剤29%、スラグ形成剤48%、潤滑剤12%及び残部の合金粉末を混合してなることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項6】
前記被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.041%、Si:0.62%、Mn:4.52%、P:0.018%、S:0.010%、Cr:16.22%、Ni:1.81%、Mo:0.25%、Cu:1.20%、N:0.15%及び残部のFeであることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項7】
前記被覆溶接ワイヤの溶着金属の化学成分及び各元素の質量分率は、C:0.044%、Si:0.65%、Mn:4.63%、P:0.019%、S:0.010%、Cr:16.52%、Ni:1.93%、Mo:0.26%、Cu:1.01%、N:0.15%及び残部のFeであることを特徴とする請求項1に記載の被覆溶接ワイヤ。
【請求項8】
請求項2~のいずれか一項に記載の被覆溶接ワイヤの製造方法であって、被覆粉末材料の組成及び配合比で各原料を均一になるまで混合撹拌し、次にナトリウム水ガラスを加えて均一になるまで撹拌し続けて、被覆ブランクを得るステップ1と、
ステップ1で得られた被覆ブランクを予熱して保温し、次にステンレス鋼溶接コアの外部にコーティングし、一晩自然に干した後、乾燥炉に移して乾燥させ、前記被覆溶接ワイヤを得るステップ2とに従って行われることを特徴とする請求項2~のいずれか一項に記載の被覆溶接ワイヤの製造方法。
【請求項9】
ステップ2における前記予熱の温度は100~150℃であり、保温時間は5min~10minであり、ステップ2における前記ステンレス鋼溶接コアの直径は1.6mm~2.4mmであり、コーティングの厚さは0.5mm~1.5mmであることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ2における前記乾燥のパラメータは、温度が300~350℃であり、時間が1h~3hであることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【国際調査報告】