(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】特定航空機に装着された特定タイヤの現在の摩耗状態を予測する方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240313BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
B60C11/24 Z
B60C19/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556509
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022057268
(87)【国際公開番号】W WO2022207375
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ デ ラ オサ マルク
(72)【発明者】
【氏名】リナレス クレマン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュネ ジュリアン
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB05
3D131LA24
3D131LA34
(57)【要約】
本発明は、予測モデルによって出力される、特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数(残りLPT)を予測するコンピュータ実装された予測方法(200)に関する。予測方法中に、特定航空機に装着された特定タイヤの撤去閾値の値を特定タイヤの撤去閾値に到達する前の残り着陸回数(残りLPT)と比較し、結果として、予測方法を実行するシステム(100)が特定タイヤのメンテナンススケジュールを作成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定航空機に装着された特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数(残りLPT)を予測するコンピュータ実装された予測方法(200)であって、
- 予測方法を実行するシステム(100)に前記特定タイヤに影響する影響パラメータを導入するステップ(202)を含み、前記システム(100)は、該システムに入力されたデータを管理する通信ネットワーク(102)を含み、該通信ネットワークは、前記特定タイヤに影響する前記影響パラメータに対応するデータを管理する1又は2以上の通信サーバ(102a)と、前記データを取り込んで前記サーバに送信する少なくとも1つの通信装置とを有し、
前記ステップ(202)は、
- 前記システム(100)の前記通信装置によって実行される前記特定タイヤに影響する影響パラメータを取得するステップであって、取得される影響パラメータは前記特定タイヤの履歴情報及び一般情報に対応するデータを含む、ステップと、
- 前記特定タイヤの前記撤去閾値への到達に対応する前記残り着陸回数を予測するための予測モデルに導入される摩耗状態訓練データベースを作成するステップと、
を含み、
前記予測方法(200)は、
- 前記特定タイヤの前記撤去閾値への到達に対応する前記残り着陸回数を予測するように前記予測モデルを訓練するステップ(204)であって、前記特定タイヤによって実行された着陸回数に対応する既知の摩耗状態をプロセッサが取得できるように、前記取得された影響パラメータ及び前記訓練データベースの前記データを機械学習法が入力として受け取るステップ(204)と、
- 前記特定タイヤの前記撤去閾値に到達するまでの残り着陸回数(残りLPT)を予測するステップ(206)であって、前記特定タイヤの残り着陸回数を前記影響パラメータに対応するデータに基づいて計算するステップ(206)と、
- 前記予測モデルによって出力された、前記特定タイヤの前記撤去閾値に到達するまでの前記残り着陸回数(残りLPT)を前記特定タイヤの前記撤去閾値の値と比較し、結果として前記システム(100)が前記特定タイヤのメンテナンススケジュールを作成する比較ステップ(208)と、
をさらに含む、ことを特徴とする予測方法(200)。
【請求項2】
前記影響パラメータは、
- 前記特定タイヤが装着された前記特定航空機の過去のフライトに対応するデータを含む履歴情報と、
- 前記特定航空機における前記特定タイヤの装着位置を含む、前記特定タイヤに対応するデータを含む一般情報と、
を含む、請求項1に記載の予測方法(200)。
【請求項3】
前記比較ステップ(208)中に前記システム(100)によって作成される前記メンテナンススケジュールは、
- 前記予測モデルによって出力された前記残り着陸回数(残りLPT)が、前記特定タイヤについて定められた前記撤去閾値よりも高い場合に、前記特定タイヤを整備する計画と、
- 前記予測モデルによって出力された前記残り着陸回数(残りLPT)が、前記特定タイヤについて定められた前記撤去閾値以下である場合に、前記特定タイヤを検査する計画と、
を含む、請求項1又は2に記載の予測方法(200)。
【請求項4】
前記特定タイヤによって実行された着陸回数に対応する既知の摩耗状態を前記プロセッサが取得して前記予測モデルを構築できるように、前記取得された影響パラメータ及び前記訓練データベースの前記データを教師あり学習法が入力として受け取る、
請求項1から3のいずれか1項に記載の予測方法(200)。
【請求項5】
前記教師あり学習法は、GBR(勾配ブースティングレグレッサ)タイプの教師あり学習法を含む、
請求項4に記載の予測方法(200)。
【請求項6】
前記訓練データベースは、既知の摩耗状態に対応する摩耗プロファイルの画像と、前記特定タイヤによって実行された対応する着陸回数とを含む、
請求項4又は5に記載の予測方法(200)。
【請求項7】
前記予測ステップ(206)中に、前記特定タイヤの前記残り着陸回数(残りLPT)が、将来的な着陸の前記影響パラメータに対応するデータに基づいて計算される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の予測方法(200)。
【請求項8】
前記特定航空機の目的地空港を過去の飛行データに基づいてシミュレートするステップ(400)をさらに含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の予測方法(200)。
【請求項9】
前記シミュレートするステップ(400)は、各状態が1つの空港を表して各空港間リンクが1つの空港から出発して別の空港に着陸する確率を表すマルコフ連鎖を通じて実行される、
請求項8に記載の予測方法(200)。
【請求項10】
前記シミュレートするステップ(400)は、前記特定タイヤの寿命終了を予測する目的でモンテカルロループ(402)を介して複数回繰り返される、
請求項8又は9に記載の予測方法(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用タイヤの寿命に影響するパラメータに基づいて航空機用タイヤの現在の摩耗状態を予測するコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に装着されるタイヤ(或いは「航空機用タイヤ」又は単純に「タイヤ」)は、他の車両の場合と同様に、その撤去閾値(removal thresholds)(タイヤの使用限界を下回るトレッドパターンの高さ)に到達した時、又は使用を継続できないほど構造が劣化した時に交換される摩耗部品である。「寿命(lifetime)」という用語は、航空機用タイヤの寿命、すなわち摩耗撤去閾値に到達して供用から外されるまでの時間、或いは換言すれば、航空機用タイヤが早期に撤去されることが必要になる耐久性問題に見舞われることなく期待されるサービスを提供できる時間を意味する。航空業界では、タイヤが初めて航空機に装着されてから航空機から撤去されるまでの間にタイヤが実行する着陸の回数をカウントすることによってこの寿命を測定することが知られている(これは「カーカス着陸指数(landings per carcass)」又は「トレッド着陸指数(landings per tread)」又はLPTとも呼ばれる)。
【0003】
先行技術には、タイヤのメンテナンスが必要な時期をその予想寿命に応じて予測する解決策が存在する。例えば、米国特許第10,295,333号には、トレッド部の画像に基づいてタイヤのトレッド部の状態を判定する方法が開示されている。さらに、米国特許第10,179,487号には、タイヤの潜在的摩耗レベル又はトレッド部の状態を表す表示の生成を可能にする方法が開示されている。この表示は、事前に取得されたトレッド部の深さの測定値に部分的に基づく。しかしながら、これらの2つの解決策はいずれも航空機用タイヤに適用することができない。従って、これらの解決策は、航空機用タイヤの寿命を着陸回数で予測する分野とは無関係である。
【0004】
国際公開第2020/169833号には、航空機用タイヤの劣化を検出する方法が開示されている。開示されている方法では、実際のタイヤの中心点の位置の決定が、捕捉点を通過する第1の3次元物体の表面に垂直なベクトルを各捕捉点について定める第1のステップを含む。方法は、この法線ベクトルに基づいて実際のタイヤの中心点の位置を推定する第2のステップを含む(中心点の位置の推定は反復プロセスである)。方法は、一致するタイヤを形成する第2の3次元物体を取得する目的で、第1の3次元物体を既知の寸法及び既知の配向の理論的タイヤと照合する第3のステップも含む。第2の3次元物体を変換して1又は2以上の2次元物体を取得し、これを分析して実際のタイヤの劣化を検出する。
【0005】
国際公開第2019/116782号A1には、航空機に装着された少なくとも第1のタイヤの残りの溝高さを測定し、第1のタイヤを含む航空機に装着された他のタイヤの摩耗レベルを予測する装置が開示されている。摩耗計算は、摩耗エネルギー及び航空機用タイヤの内圧を含む多くのパラメータに応じて実行される。
【0006】
しかしながら、所与のタイヤモデルで摩耗によって示される(着陸回数でカウントされた)性能偏差は有意であり、観察される最小値と最大値との間で容易に100%を超えてしまうことがある。現在のところ、これらの偏差は、航空会社が自社の運航及びコストの最適化を可能にする予測的メンテナンス戦略を適用することを阻むものであるため、メンテナンス作業に関する問題である。現在のところ、航空機用タイヤの構造に対する損傷を理由に航空機用タイヤを撤去する必要があるか否かは確率的事象(例えば、滑走路又は誘導路上に存在する外部物体によって生じるタイヤの損傷)に関連するため予測不可能である。この損傷はしばしば「異物損傷(foreign object damage)」又は「FOD」と呼ばれ、剛性物体が散乱した滑走路又は誘導路上を航空機が通過する際に発生する(「aeroplane」という用語と「aircraft」という用語は同義的に使用される)。FODの原因となる物体は、タイヤに損傷を与え得る(限定するわけではないが、金属片、舗装道路の破片、ケータリング用品、建築資材、石、砂、手荷物及び野生動物を含む)いずれかのタイプの物体である。これらの物体は、ターミナルゲート、滑走路及び誘導路、並びに航空機が地上を移動する他の路面上で見つかる。
【0007】
現在では、タイヤの摩耗寿命の最後にタイヤを撤去する瞬間(残りのトレッドパターン高さが1.2mm±0.2mm以下になる時)を予測できないことにより、検査、メンテナンスチームの管理、タイヤ、ブレーキ及びホイールの在庫管理の面で取引先に重い制約が課され、経済的な影響を伴う。また、航空機用タイヤは、タイヤ-ブレーキ-ホイール-着陸装置アセンブリのうちで最も寿命の短い部品であるため、航空機のタイヤ-ブレーキ-ホイール-着陸装置システム(例えば、ATA32などのシステム)のメンテナンスチェーン全体がタイヤに依存している。
【0008】
理論的には、物理的モデルに基づいて航空機用タイヤの残りのトレッドパターン高さを推定した後に、そこから(着陸回数又は残りのトレッドパターン高さで)このタイヤの残り寿命を推測することが可能であると思われる。しかしながら、このモデルが十分に正確であるためには、(限定するわけではないが、トレッド部の温度、タイヤの荷重、空気圧、速度などを含む)多くの物理的パラメータが必要になる。上述した物理的パラメータは、タイヤに多くのセンサを配置しなければ取得することが困難である。
【0009】
最近では、データを計算して記憶するプラットフォームと相まって機械学習及びデータ解析技術が向上したことにより、先行技術の欠点を克服する航空機用タイヤ管理への新たな予測的手法を開発する道が開かれた。人工知能の分野では機械学習技術が知られており、その本質は多数の状況に基づいて訓練されることである。機械学習は、訓練段階における重み付け係数の調整に基づいて、提示された新たな状況の結果を予測することができる。なお、(所望の結果を取得できるようになるまでラベル付きデータセットに基づいてアルゴリズムが訓練される)教師あり学習、(ネットワークがアルゴリズムの精度を高める学習を行えるようにデータにラベルが付されていない)教師なし学習又は半教師あり学習、(肯定的な結果の場合にはアルゴリズムに報酬が与えられ、否定的な結果の場合には罰が与えられる)強化学習、及び(アルゴリズムが、学習するにつれてその予測を精緻化するために実例及びラベルを要求する)能動的学習を含む複数の異なる機械学習法が可能である(https://www.lebigdata.fr/reseau-de-neurones-artificiels-definitionを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第10,295,333号明細書
【特許文献2】米国特許第10,179,487号明細書
【特許文献3】国際公開第2020/169833号
【特許文献4】国際公開第2019/116782号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】インターネット<https://www.lebigdata.fr/reseau-de-neurones-artificiels-definition>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、航空機用タイヤの使用(すなわち、航空機用タイヤの寿命に影響するパラメータ)とタイヤの寿命性能との間の関係を調査することが有利であると思われる。この性能知識は、航空機使用のパラメータの結果として観察される摩耗プロファイルの理解を含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、開示する発明は、タイヤの摩耗状態を介して間接的に推定される航空機用タイヤの残り寿命を予測する方法に関する。この残り寿命は、航空機用タイヤのメンテナンススケジュールに関連する全ての活動がより良好にスケジュールされることを可能にする予測的メンテナンスツールとして機能する潜在的残余摩耗量(potential residual wear)に対応する。
【0014】
本発明は、特定航空機に装着された特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数を予測するコンピュータ実装された予測方法に関し、この予測方法は、
- 予測方法を実行するシステムに、特定タイヤに影響する影響パラメータを導入するステップを含み、システムは、システムに入力されたデータを管理する通信ネットワークを含み、通信ネットワークは、特定タイヤに影響する影響パラメータに対応するデータを管理する1又は2以上の通信サーバと、データを取り込んでサーバに送信する少なくとも1つの通信装置とを有し、このステップは、
- 特定タイヤの履歴情報及び一般情報に対応するデータを含む、特定タイヤに影響する影響パラメータを取得するステップであって、システムの通信装置によって実行されるステップと、
- 特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数を予測する予測モデルに導入される摩耗状態訓練データベースを作成するステップと、
を含み、予測方法は、
- 特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数を予測するように予測モデルを訓練するステップであって、特定タイヤによって実行された着陸回数に対応する既知の摩耗状態をプロセッサが取得できるように、取得された影響パラメータ及び訓練データベースのデータを機械学習法が入力として受け取るステップと、
- 特定タイヤの撤去閾値に到達するまでの残り着陸回数を予測するステップであって、特定タイヤの残り着陸回数を影響パラメータに対応するデータに基づいて計算するステップと、
- 予測モデルによって出力された、特定タイヤの撤去閾値に到達するまでの残り着陸回数を特定タイヤの撤去閾値の値と比較し、結果としてシステムが特定タイヤのメンテナンススケジュールを作成する比較ステップと、
をさらに含む。
【0015】
方法のいくつかの実施形態では、影響パラメータが、
- 特定タイヤが装着された特定航空機の過去のフライトに対応するデータを含む履歴情報と、
- 特定航空機における特定タイヤの装着位置を含む、特定タイヤに対応するデータを含む一般情報と、
を含む。
【0016】
方法のいくつかの実施形態では、比較ステップ中にシステムによって作成されるメンテナンススケジュールが、
- 予測モデルによって出力された残り着陸回数が、特定タイヤについて定められた撤去閾値よりも高い場合に、特定タイヤを整備する計画と、
- 予測モデルによって出力された残り着陸回数が、特定タイヤについて定められた撤去閾値以下である場合に、特定タイヤを検査する計画と、
を含む。
【0017】
方法のいくつかの実施形態では、方法が、特定タイヤによって実行された着陸回数に対応する既知の摩耗状態をプロセッサが取得して予測モデルを構築できるように、取得された影響パラメータ及び訓練データベースのデータを入力として受け取る教師あり学習法をさらに含む。
【0018】
方法のいくつかの実施形態では、教師あり学習法が、GBR(勾配ブースティングレグレッサ)タイプの教師あり学習法を含む。
【0019】
方法のいくつかの実施形態では、訓練データベースが、既知の摩耗状態に対応する摩耗プロファイルの画像と、特定タイヤによって実行された対応する着陸回数とを含む。
【0020】
方法のいくつかの実施形態では、予測ステップ中に、特定タイヤの残り着陸回数が、将来的な着陸の影響パラメータに対応するデータに基づいて計算される。
【0021】
方法のいくつかの実施形態では、方法が、特定航空機の目的地空港を過去の飛行データに基づいてシミュレートするステップをさらに含む。
【0022】
方法のいくつかの実施形態では、シミュレートするステップが、各状態が1つの空港を表して各空港間リンクが1つの空港から出発して別の空港に着陸する確率を表すマルコフ連鎖を通じて実行される。
【0023】
方法のいくつかの実施形態では、シミュレートするステップが、特定タイヤの寿命終了を予測する目的でモンテカルロループを介して複数回繰り返される。
【0024】
以下の詳細な説明からは、本発明のさらなる態様が明らかになるであろう。
【0025】
全体を通じて同じ参照数字が同一の部品を示す添付図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより、本発明の性質及び様々な利点がさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】本発明の予測方法の実施形態の概略図である。
【
図4】本発明の予測方法を実行するシステムの概略図である。
【
図5】本発明の予測方法の1つの実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明が提案する解決策は、新たなセンサを追加することなく、対象のタイヤが行ったフライトの(例えば、出発日、到着日、訪問先空港及び気象データに対応するデータを含む)履歴情報、及びそのタイヤに関する(例えば、リトレッドレベルに対応するデータ、航空機におけるタイヤの取り付け位置、その位置で考えられる理論平均着陸回数、及びFODの結果としての撤去を除く同様のタイヤの性能を含む)一般情報のみを使用して航空機用タイヤの寿命を推定することを目的とする。タイヤの使用の大部分を表すこれらのデータは、タイヤの寿命に影響するパラメータに基づいてタイヤの現在の摩耗状態を予測するために機械学習モデルで使用される。
【0028】
本発明が主題とする航空機用タイヤの特性については、その幾何学的形状を考慮しなければならない。
図1及び
図2は、従来の方法でタイヤをリムに固定するように意図された2つの周方向ビードを含むタイヤPの概略図を含む。各ビードは、環状の補強用ビードワイヤを含む。通常、タイヤの構成は、子午面、すなわちタイヤの回転軸を含む平面における構成要素の表現によって表される。半径方向、軸方向及び周方向は、それぞれタイヤの回転軸に垂直な方向、タイヤの回転軸に平行な方向、及び子午面に垂直な方向を示す。「半径方向に(radially)」、「軸方向に(axially)」、及び「周方向に(circumferentially)」という表現は、それぞれタイヤの「半径方向に(in a radial direction)」、「軸方向に(in the axial direction)」、及び「周方向に(in a circumferential direction)」を意味する。「半径方向内側」及び/又は「半径方向外側」という表現は、それぞれ「半径方向においてタイヤの回転軸に近い又は遠い」ことを意味する。
【0029】
図1を参照すると、タイヤPは、共にタイヤPのサイドウォール部Fの限界を定める内部限界F
I及び外部限界FEを含む。内部限界F
Iは、タイヤが取り付けられるように意図されるリム(図示せず)からタイヤのサイドウォール部Fを分離する。タイヤPは、タイヤの中心点Cと、リムとタイヤのサイドウォール部Fとを分離する内部限界F
Iとの間の距離として定められるリム半径R
Jも有する。タイヤPは、リム半径R
Jの2倍として定められるサイドウォール部内径も有する。タイヤPは、中心点Cとタイヤのトレッド面を表すサイドウォール部Fの外形限界F
Eとの間の距離として定められるタイヤ半径R
Pも有する。タイヤPは、タイヤ半径R
Pの2倍として定められるタイヤ直径も有する。
【0030】
図2を参照すると、膨張した空荷時のタイヤPは、公称断面幅L
P及び高さH
P(高さH
Pは幅L
Pのパーセンテージとして表されることが多い)を含む、タイヤPの幾何学的形状に関する複数のパラメータを有する。タイヤPは、タイヤが装着されるように意図されるリムの直径を表す測定値D
J(この測定値はサイドウォール部内径F
Iと実質的に等しい)も有する。これらの各パラメータは、同等の既知の長さ測定値(例えば、ミリメートル(mm)又はインチ(in))で表すことができると理解されたい。
【0031】
次に、同じ要素を同じ番号によって示す
図3及び
図4を参照すると、
図3は、特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数を予測する方法(又は「予測方法」又は「方法」)の実施形態の概略図である。本発明の予測方法は、特定タイヤの摩耗状態に基づくものであり、予測摩耗プロファイル、残りの溝高さ(溝は、滑走路又は誘導路との接触及び付着を可能にするために水を除去することができるトレッドパターン要素を含む)を通じて、或いは潜在的に有用な残りの溝を予測するための別の手段を介して定められる。なお、摩耗状態は、(航空機に一度も装着されたことがないタイヤによって表される)新品状態と(摩耗を通じて撤去閾値に到達したという理由で使用から撤去されたタイヤによって表される)摩耗状態との間の差分を表す1つ又は一連の値によって表される。摩耗状態は、最小溝高さなどの1つの値、タイヤの子午面におけるトレッド部の高さを定める一連の値(例えば、2Dプロファイル)、或いはタイヤの外面の全部又は一部におけるトレッド部の高さを定める一連の値(例えば、3Dプロファイル)の形態をとることができる。
【0032】
ここで使用する特定タイヤの「残り寿命(remaining lifetime)」とは、タイヤの寿命に影響するパラメータの値の関数としてのタイヤの潜在的残余摩耗量を意味する。残り寿命は、特定タイヤの寿命に影響するパラメータに対応するデータを収集することにより、継続的に、或いは定期的な、予め定められた又は散発的な間隔で決定することができる。本発明の方法は、特定タイヤの残り寿命を決定する目的で、収集されたデータに基づいてタイヤの現在の摩耗状態を定めることができ、残り寿命は到達可能な着陸回数で計算される。
【0033】
図4に、本発明の予測方法を実行するシステム100を示す。システムは、様々なソースからシステム100に入力されるデータを管理する通信ネットワーク102を含む。通信ネットワーク102は、特定タイヤに関する履歴情報及び一般情報に対応するデータを管理する1又は2以上の通信サーバ(又は「サーバ」)102aを含む。ここで使用する「特定タイヤ(identified tyre)」(単数形又は複数形)という用語は、システム100の物理的環境内に存在する、特定航空機(identified aeroplane)に装着されたタイヤ(特定航空機において依然として供用中のタイヤ)を意味する。特定タイヤは、特定航空機の動作環境に対応するデータ又はその一部などのデータを生成し又は取り込む1又は2以上の既知のセンサを含む。これらのセンサは、特定タイヤの動作特性に関するデータを提供する一連のセンサを含む。センサは、例えば1又は2以上の速度センサ、1又は2以上の加速度センサ、トラクションに関する1又は2以上のセンサ、ブレーキに関する1又は2以上のセンサ、及び/又は特定タイヤの動的状況の1又は2以上の側面に関するデータを収集するセンサの組み合わせを含むことができる。センサは、特定タイヤの識別に関する(限定するわけではないが、生産、流通及び/又は保管に関するタイヤの来歴、タイヤの生産日、該当する場合にはタイヤのリトレッド履歴、タイヤの位置及び装着履歴を含む)格納データを提供することもできる。
【0034】
ここで使用する「履歴情報(historic information)」(単数形又は複数形)という用語は、特定タイヤが装着された特定航空機の過去のフライトに対応するデータを意味する。これらのデータは、限定するわけではないが、特定航空機の出発日及び/又は到着日に対応するデータ、特定航空機が訪れた空港(これらのデータは、特定航空機が属する航空会社104に起因する過去のフライトのデータを含む様々な情報源から収集することができる)、(限定するわけではないが、メーカー、航空機モデルのバージョン、航空機の識別コードなどを含む)航空機に関するデータ、並びに過去のフライト中の気象条件及び/又は気候条件106を含むことができる。
【0035】
ここで使用する「一般情報(general information)」(単数形又は複数形)という用語は、特定タイヤに対応するデータを意味する。これらのデータは、限定するわけではないが、(タイヤのタイプ及び/又は標準名称によって表すことができる)タイヤのサイズ、タイヤの構造コード(例えば、バイアスプライタイヤの場合には「-」、ラジアルタイヤの場合には「R」)、タイヤの製造に関する来歴108(例えば、特定タイヤのメーカーの名称及び/又は商標、タイヤの製造日、並びに製造、流通及び/又は保管の場所)、シリアル番号、定格荷重、定格速度、予想されるトレッド着陸指数又はLPT及び/又は一意の識別コードを含むことができる。一例として、52×21.0R22というサイズのタイヤでは、「52」という数字がタイヤの直径をインチで表し、「21.0」という数字が膨張した新品タイヤの最も幅の広い地点の断面幅を表し、「R」という文字がラジアルタイヤを表し、「22」という数字がリムの直径をインチで表す。
【0036】
一般情報は、特定タイヤの(取り付け履歴を含む)取り付け位置110を含むこともできる。なお、
図4に示す取り付け位置は一例として示すものである。
【0037】
一般情報は、(該当する場合には)特定タイヤのリトレッドレベルを含むこともできる。ここで使用する「リトレッド(retreading)」という用語は、トレッド部及び1又は2以上のプライのゴムを新品にすることによって、摩耗したタイヤを動作に適する状態に戻すために使用される方法を意味する。リトレッドプロセス中には、古いトレッド製品が取り除かれて新たな材料に交換される。リトレッドは、航空宇宙産業で知られていて規制されている方法である。特定タイヤのリトレッドレベルに対応するデータは、航空会社104及び/又は(番号108によって表す)生産業者によって管理される。
【0038】
本発明の1つの実施形態では、少なくとも部分的に1又は2以上の空港(又は特定の空港を含む1又は2以上の空港ネットワーク)が履歴情報及び/又は一般情報を生成及び/又は管理することができる。この実施形態では、システム100が、特定航空機の目的地空港を履歴情報に基づいてシミュレートすることを目的とする。なお、航空会社104は自社の航空機を異なる形で管理しており、従ってその管理モードは修正可能である。従って、この実施形態では、目的地空港に関して個別化されたシミュレーションを実行することにより、一般情報を使用して特定タイヤの履歴情報と特性との間の関係を特定することもできる。
【0039】
システム100の通信ネットワーク102は、収集されたデータを取り込んでサーバ102aに送信する1又は2以上の通信装置(図示せず)を含む。1又は2以上の通信装置は、モバイルネットワーク装置(例えば、携帯電話機、ラップトップコンピュータ、「拡張現実」及び/又は「仮想現実」装置を含む、ネットワークに接続された1又は2以上のポータブル装置、及び/又はいずれかの組み合わせ及び/又はいずれかの同等物)などの1又は2以上のポータブル装置を含む。いずれの場合にも、通信装置は、ネットワークに接続されて1又は2以上のオペレータ(各オペレータは人間、又はロボットなどの既知の装置である)によって装着された衣服及び/又はウェアラブルを含むことができる。一例として、航空会社パイロットによって装着されるモニタリング装置は、ビデオを介してフライト状況をモニタし、(特定タイヤの履歴情報である)対応するデータを通信ネットワーク102のサーバ102aに送信することができる。
【0040】
1又は2以上の通信装置は、通信ネットワーク102を介してデータを転送できる1又は2以上のリモートコンピュータを含むこともできる。一例として、システム100のポータブル装置は、特定タイヤの履歴情報及び/又は一般情報をシステム100のリモートコンピュータに送信することができる。リモートコンピュータは、送信されたデータに基づいて、特定タイヤのメンテナンスに関する、期待される取り組みに関する計画を示す意見(例えば、特定タイヤのトレッド部深さが浅すぎることを本発明の予測モデルが示したという理由で特定タイヤを供用から外すアドバイス)をポータブル装置に送信することができる。
【0041】
通信ネットワーク102は有線又は無線リンクを含むことができ、当業者に周知のいずれかのデータ転送プロトコルを採用することができる。無線リンクの例としては、限定するわけではないが、無線周波数(RF)リンク、衛星リンク、(アナログ又はデジタル)セル又は携帯電話リンク、Bluetooth(登録商標)リンク、Wi-Fiリンク、赤外線リンク、ZigBeeリンク、ローカルエリアネットワーク(LAN)リンク、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)リンク、ワイドエリアネットワーク(WAN)リンク、近距離無線通信(NFC)リンク、その他の無線通信標準及び構成に従うリンク、これらの同等物、及びこれらの要素の組み合わせを挙げることができる。
【0042】
なお、当業者であれば理解するように、通信ネットワーク102aは1又は2以上のプロセッサの使用を意味すると理解されるであろう。「プロセッサ」という用語(或いは、「プログラマブルロジック回路」という用語)(単数形又は複数形)は、データの処理及び分析が可能な、これらのデータを処理するための1又は2以上のソフトウェアパッケージを含む1又は2以上の装置(例えば、当業者によってコンピュータに含まれているものとして知られている1又は2以上の集積回路、1又は2以上のコントローラ、1又は2以上のマイクロコントローラ、1又は2以上のマイクロコンピュータ、1又は2以上のプログラマブルロジックコントローラ(又はPLC)、1又は2以上の特定用途向け集積回路、1又は2以上の機械学習アルゴリズム、及び/又は1又は2以上の他の既知の同等のプログラマブル回路)を意味する。
【0043】
従って、本発明は、(受け取られた履歴情報及び一般情報に基づいて)提供された部分的情報を完成させるために、人工知能(又は「AI」)に基づく方法及びツールを十分に利用する。機械学習の分析は、複数の層を含む人工ニューラルネットワークなどの機械学習モデルを使用して実行される。機械学習分析は、通信ネットワーク102からの処理済みデータ、すなわち特定タイヤの履歴情報及び一般情報を入力として受け取る。実施形態では、機械学習モデルの様々な層への入力を通じてデータが受け取られる。このアルゴリズムは、全ての航空機用タイヤにわたる継続的改善を可能にし、システム100が獲得した経験から、とりわけ特定タイヤを整備する計画と検査する計画との間の選択に関してシステム100の自己改善を保証することができる。
【0044】
次に、
図3及び
図4、さらには
図5を参照しながら、本発明の摩耗状態予測方法の実施形態を開示する。各実施形態では、システム100が(着陸回数又は航空機用タイヤの摩耗状態のいずれかに関して)特定タイヤの摩耗状態を予測するモデル(又は「予測モデル」)を構築できるように、予測方法がコンピュータによって実行される。
【0045】
図5を参照すると、この図には本発明の予測方法200の1つの実施形態を示しており、この実施形態では、予測モデルが特定タイヤの残り寿命を決定する目的で特定タイヤの残り着陸回数を予測することができる。特定タイヤの残り寿命は、特定タイヤの予測摩耗状態に対応する特定航空機の着陸回数(又はトレッド着陸指数すなわちLPT)を含む。従って、この実施形態では、方法が、メンテナンススケジュールを決定する目的で特定タイヤの残り着陸回数を予測するモデルの構築を主題とする。特定タイヤのメンテナンススケジュールは、(特定タイヤを特定航空機に装着されたままにしておく)整備計画、及び(特定タイヤのリトレッドを実行するため、又はリサイクルを含む寿命終了サーキット(end-of-life circuit)に特定タイヤを導入するために、特定タイヤが正しい時期に撤去されることを確実にする目的で特定タイヤを検査する)検査計画のいずれかを選択することを含む。
【0046】
図5に示す予測方法200の開始時に、特定タイヤの摩耗に影響する1又は2以上のパラメータに基づいて予測モデルを構築する。方法は、予測モデルを構築するために特定タイヤの影響パラメータを導入するステップ202を含み、このステップはシステム100によって実行される。このステップ中に、システム100の通信装置が特定タイヤの影響パラメータを取得する。取得された影響パラメータは、特定タイヤの履歴情報及び一般情報に対応するデータを含む。これらのデータは(例えば、システム100の1又は2以上のデータベース120、122に)(
図3を参照)記憶され、予測方法全体を通じて継続的又は断続的に更新される。
【0047】
導入ステップは、予測モデルに導入される摩耗状態の訓練データベース(又は「データベース」)を作成するステップを含む。作成された訓練データベースは、特定航空機に装着されるように意図される航空機用タイヤの参照データベースを含むことができる。データベースは、既に作成されている参照(例えば、複数の摩耗閾値における航空機用タイヤの残り寿命のテーブル)を含むことができる。データベースは、(上述した一般情報の一部を形成するパラメータを含む)複数の市販タイヤに対応するパラメータを含むことができる。複数の摩耗レベルの摩耗状態の特定のソースはここで説明する方法にとって必須ではなく、方法は、摩耗閾値に到達したタイヤのみから取得されたデータを使用しても等しく機能する。一例として、あるシステムは、取り付けられたアセンブリの取り外し後に工場が受け取ったタイヤに対して実行された測定から取得されたデータを使用して本発明の方法を実装することができる。
【0048】
このシステムは、恐らくは航空機の検査中に、特定タイヤのトレッド部の摩耗の進行に関する情報を航空会社が自社で利用中の空港の職員に送信することを支援するために本発明の方法を実装する。このシステムは、特定タイヤの保守整備を予測するために、「ストック」されたトレッド部の摩耗閾値の測定からのデータを使用して、航空機のオペレータ(すなわち、航空会社、又は航空会社の施設がある空港)に送信すべき個人化されたリマインダを準備するために本発明の方法を実装する。
【0049】
作成されたデータベースは、既知の摩耗状態に対応する摩耗プロファイルの画像、及び対応する実行された着陸の回数を含むことができる。特定タイヤの摩耗プロファイルは、その使用中のトレッド部の外面の輪郭によって定められる。従って、未だ採用されていない新品のトレッド部は0%まで摩耗したエンベロープであると考えられ、メーカーの勧告撤去条件を満たしたトレッド部は100%まで摩耗したエンベロープであると考えられる。ここで説明するプロファイルは、トレッド部の外面の全部又は一部を再生する(事前に実行された)1又は2以上の(3D)表面測定から成ることができる。さらに、ここで説明するプロファイルは、トレッド部の対称軸を含む1又は2以上の平面内の(事前に実行された)1又は2以上の(2D)線形測定から成ることができる。従って、訓練データベースは、摩耗したタイヤの(3D、2D、1D)プロファイルに対応する予想画像(従ってデータ)及び航空機の着陸を含む。
【0050】
図5に示す本発明の予測方法200は、特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数を予測するように予測モデルを訓練するステップ204をさらに含む。ここで使用する特定タイヤの「撤去閾値(removal threshold)」とは、タイヤを交換しなければならない規制上の最小深さ(又はユーザによって定められた別の閾値)を意味する。このステップ中に、機械学習法が、取得された影響パラメータ(特定タイヤの履歴情報及び一般情報)及び作成された訓練データベースのデータを入力として受け取る。特定タイヤに対応する履歴情報及び一般情報をシステム100が取得した後に、プロセッサは、予測モデルを構築する目的で、特定タイヤが実行した着陸回数に対応する既知の摩耗状態を収集することができる。
【0051】
1つの実施形態では、訓練ステップ204中に採用される機械学習法が教師あり学習法を含む。教師あり学習法は、1又は2以上のニューラルネットワーク(例えば、オートエンコーダ、ANN、CNN、RNN、パーセプトロン、長短期記憶(LSTM)、ホップフィールドネットワーク、ボルツマンマシン、深層信念ネットワーク、逆畳み込みニューラルネットワーク、生成的敵対ネットワーク(GAN)など)、並びにその補完物及び同等物を含むことができる。1又は2以上のCNNは、影響パラメータを表すデータ(例えば、上述した訓練データベースに組み込まれたデータ)を使用して生成されるグランドトゥルースデータで訓練することができる。
【0052】
訓練ステップ204が教師あり学習法を含む1つの実施形態では、このステップがGBR(勾配ブースティングレグレッサ(gradient boosting regressor))タイプの教師あり学習法を含む。GBR学習法は、(限定するわけではないが、特定航空機における特定タイヤの位置、この特定タイヤのリトレッドレベル、及びこの特定タイヤが訪れた各空港での着陸割合を含む)特定タイヤの履歴情報及び一般情報に対応するデータを入力として受け取る。GBR学習法は、特定タイヤの撤去閾値への到達に対応する残り着陸回数(残りLPT)を予測することを目的とする。従って、予測モデルの予測すべき出力は、(例えば、特定タイヤの撤去閾値に到達する日付範囲によって特徴付けられる)特定タイヤの摩耗状態の予測になる。これにより、例えば過度に顕著な摩耗状態(すなわち、タイヤの正しい動作を保証する所定の摩耗閾値を超えた摩耗状態)を有するタイヤを予防的に撤去することが可能になる。一例として、いくつかの使用事例では、特定タイヤのショルダー部の摩耗率が、スキッド限界に達する前にワーキングプライの出現を誘導する。摩耗した航空機用タイヤの摩耗プロファイルを提供することで、緊急の予測不可能な撤去を回避できるようになる。
【0053】
本発明の予測方法200は、特定タイヤの撤去閾値に到達するまでの残り着陸回数(又は「残りLPT」)を予測するステップ206をさらに含む。特定タイヤの残り着陸回数は、将来的な着陸の影響パラメータに対応するデータに基づいて計算することができる。なお、将来的着陸データは、航空会社が自社の保有航空機に適用する管理のタイプ、及び航空機が割り当てられるルートを所与の時間枠内に決定する能力に応じて、仮想的なもの又は現実的なものであることができる。真の摩耗状態と予測着陸回数との間のオフセットは計算誤差によって示され、このような誤差は特定タイヤのトレッド部のばらつきを示す。これらの計算誤差を(上述した)訓練データベースに入力して、予測モデルの予測能力を高めることができる。
【0054】
予測方法200は、予測モデルによって出力された特定タイヤの撤去閾値への到達前の残りLPTを撤去閾値の値と比較する比較ステップ208をさらに含む。この撤去閾値は、メンテナンス作業を体系化する目的でユーザ(例えば、航空会社)及び/又は特定タイヤのメーカーによって定められる。
【0055】
比較ステップ中、予測モデルによって出力された残り着陸回数が特定タイヤに定められた撤去閾値よりも高い場合、システム100は特定タイヤを整備する計画210を示す。同様に、予測モデルによって出力された残り着陸回数がこの撤去閾値以下である場合、システム100は特定タイヤを検査する計画212を示す。特定タイヤのトレッド部が摩耗撤去閾値に到達した場合又は到達しつつある場合、システム100は、使用後に工場から受け取られた航空機用タイヤでの摩耗状態の測定から取得された摩耗タイヤの摩耗状態を考慮する。特定タイヤを同じタイプの別のタイヤと交換しなければならない場合には、摩耗タイヤと新品とみなされるトレッド部を有する特定タイヤ(
図5の番号214を参照)との交換中に予測モデルを更新する。なお、特定タイヤの交換は、特定タイヤをリトレッドすること又はリサイクルすること(又は別の寿命終了処理)のいずれかを含むことができる。
【0056】
再び
図3を参照すると、本発明の予測方法の全ての実施形態では、方法が、特定航空機の目的地空港をシミュレートすることを目的とする任意のシミュレートするステップ400をさらに含むことができる。これらの実施形態では、このシミュレーションが、所与の航空機が属する航空会社の過去のフライトデータに基づいて、この航空機の目的地空港をシミュレートすることを目的とする。このシミュレーションは、各状態が1つの空港を表して各空港間リンクが1つの空港から出発して別の空港に着陸する確率を表すマルコフ連鎖を通じて実行される。これらの確率は、航空会社が自社の航空機の将来的な使用について知らないものとしてランダムなスケジューリングを実行する目的で、履歴情報に基づいて推定される。マルコフ連鎖を使用することで、対応する不確定モデルを開発して評価する目的でデータの主要特性を学習することが可能になる。
【0057】
特定航空機の目的地空港をシミュレートすることを目的とする本発明の方法の実施形態では、複数の目的地をシミュレートすることで、シミュレーションにおいて識別された複数の空港の各々における特定タイヤの着陸割合を(従って、「実際の」データ及びシミュレートしたデータを使用して)計算できるようになる。この特定タイヤの寿命を全うする目的で目的地をシミュレートするステップ400は、モンテカルロループを介して複数回繰り返される(
図3の番号402を参照)。その後、特定タイヤについて最終的に予測着陸回数分布を取得するために、各シミュレーションを上述したモデルによる予測の対象にする。
【実施例】
【0058】
* 特定航空機の位置Pに装着された特定タイヤは、時点tにZ回のLPTを有する。位置PにおけるLPTの分布の知識は履歴情報を介して得られる。
* 考えられる軌道のランダム抽選を考慮すると、シミュレートされる軌道は、理論的LPTのランダム抽選であるLPT_tht毎にLPT_tht-Zの目的地を含む。
* 特定タイヤが実行できる総LPT回数の分布を取得するために、特定タイヤの寿命の完全な軌道をたどる頻度のパーセンテージを計算することによって、各完全な軌道の予測モデルを適用する。
【0059】
航空会社がより高度にスケジュールされた管理を採用しており、自社の航空機の目的地を数週間前に知っているという仮定的事例では、航空会社がシミュレーションの代わりに真の目的地を導入することもできる(或いは、自社の航空機がどのように使用されるかを航空会社が正確には知らないが、比較的確率の高い目的地を定めることができる場合には、中間的な半決定論的管理の採用を選択することもできる)。マルコフ連鎖を実装して、不確定モデルに必要な関連する特性の挙動を明らかにする予測プロセスの長期時間依存モデル(long-term time-dependent models)を認識する前に、モデルの評価に使用されるデータセット(履歴情報及び一般情報)の性質を研究して理解することが不可欠である。
【0060】
本発明の予測方法の全ての実施形態では、1又は2以上のステップを反復的に実行することができる。
【0061】
ここでは、機械学習モデルを通じたニューラルネットワークの使用の文脈で本発明の予測方法の実施形態を説明したが、他のタイプの機械学習モデルを使用することもできる。後者のモデルは、限定するわけではないが、線形回帰、ロジスティック回帰、決定木、サポートベクターマシン、ナイーブベイズ法、kがグループを示すk-最近傍(k-NN)アルゴリズム、ランダムフォレスト、次元を減少させるアルゴリズム及び勾配降下を使用するモデルを含む。
【0062】
従って、本発明は、入手しやすいデータを使用して航空機用タイヤの寿命を予測し(従って、メンテナンススケジュールを予測し)、信頼できる予測モデルが作成されることを可能にする。人間の専門家は、航空機用タイヤを整備する計画又は航空機用タイヤを検査する計画に関して決定を下す際に柔軟性を示すとしても、特定航空機を整備しなければならないかどうかを判定する目的でリアルタイムの決定を行うために必要な大量のデータを分析することはできない。職員も、この決定を行うために必要な大量のデータを分析することができない。この目的のためには、人間の専門家が採用する様々な経験則に関するデータを使用してメンテナンス明細(maintenance statements)を予測する航空会社運営を改める手法を採用することが必要である。
【0063】
システム100は、予めプログラムされた管理情報を含むことができる。例えば、予測方法の調整は、システム100が機能する典型的な物理的環境のパラメータ(例えば、訪れた空港のパラメータ)に関連することができる。いくつかの実施形態では、システム100(及び/又はシステム100を組み込んだ設備)が、例えば特定タイヤの履歴情報及び/又は一般情報に対応するデータの取り込みの開始又は停止、或いは通信装置の移動の開始又は停止を表す音声コマンド又はその他のオーディオデータを受け取ることができる。システム100に対して行われる要求は、自動予測方法サイクルの現在の状態を求める要求を含むことができる。生成された応答は、聴覚的に、視覚的に、(例えばハプティックインターフェイスを通じて)触覚的に、及び/又は仮想的及び/又は拡張的に表現することができる。この応答は、対応するデータと共にニューラルネットワークに記録することができる。
【0064】
「少なくとも1つの」という用語と「1又は2以上の」という用語は同義的に使用される。「aとbとの間」に存在するものとして与えられる範囲は、値「a」及び「b」を含む。
【0065】
開示する装置の特定の実施形態を図示し説明したが、本明細書の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な変更、追加及び修正を行うことができると理解されるであろう。従って、説明した発明の範囲には、添付の特許請求の範囲に記載する範囲以外に制約を課すべきではない。
【符号の説明】
【0066】
120 データベース
122 データベース
400 シミュレートするステップ
402 モンテカルロループ
【国際調査報告】