IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レメゲン,エルティーディー.の特許一覧

特表2024-512935TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法
<>
  • 特表-TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法 図1
  • 特表-TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法 図2
  • 特表-TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法 図3
  • 特表-TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法 図4
  • 特表-TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法 図5
  • 特表-TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240313BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240313BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P37/00 ZNA
A61K47/68
A61P43/00 111
A61K39/395 Y
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557035
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2022122399
(87)【国際公開番号】W WO2023051660
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111156909.2
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087262
【氏名又は名称】レメゲン シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.58 Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong)Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】房 健民
(72)【発明者】
【氏名】王 文祥
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC03
4C076CC07
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA59
4C084DA53
4C084DC50
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZC421
4C084ZC422
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG05
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、TACI-Fc融合タンパク質を用いたシェーグレン症候群の治療薬、用量スキーム、投与間隔及び投与方法に関する。結果によると、本発明で提供されるTACI-Fc融合タンパク質は、24週目にシェーグレン症候群患者のESSDAIスコア及びMF-20スコアを有意に改善し、治療中により良い安全性を示すことが分かった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェーグレン症候群を有する患者に、
(i)TACI細胞外ドメイン、又は、Blys及び/又はAPRILに結合するその断片と、
(ii)ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片と、
を含むTACI-Fc融合タンパク質を治療有効量で投与することを含むことを特徴とする、シェーグレン症候群の治療方法。
【請求項2】
前記TACI細胞外ドメイン或いはBlys及び/又はAPRILに結合するその断片が、配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒト免疫グロブリンはIgG1であるか、或いは
前記ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%一致するアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片が、配列番号2の部位3、8、14、15、17、110、111又は173のうちの1つ又は複数の部位に対応するアミノ酸の修飾を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記修飾がアミノ酸の置換、欠失又は挿入であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記置換が、P3T、L8P、L14A、L15E、G17A、A110S、P111S及びA173Tからなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記TACI-Fc融合タンパク質が、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記TACI-Fc融合タンパク質がテリタシセプト(Telitacicept)であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シェーグレン症候群が、原発性シェーグレン症候群又は続発性シェーグレン症候群であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記TACI-Fc融合タンパク質が、約0.1~10mg/kgの単回投与量で投与されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記TACI-Fc融合タンパク質が、160~240mg、さらに好ましくは160mg又は240mgの単回投与量で投与されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項13】
前記TACI-Fc融合タンパク質が、大腿、腹部又は上腕の投与部位で皮下投与、筋肉投与又は静脈投与されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記TACI-Fc融合タンパク質が1ヶ月の間隔で2~4回使用されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記TACI-Fc融合タンパク質が週1回の頻度で投与されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記治療が約2~50週間持続されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェーグレン症候群を治療するための医薬品、用量スキーム、投与間隔及び投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シェーグレン症候群(即ち、Sjogren’s Syndrome、Sjtoegren症候群、SS)は、主に涙腺、唾液腺などの外分泌腺に浸潤する慢性自己免疫疾患であり、自己免疫性外分泌腺疾患としても知られており、角膜乾燥、結膜炎、口腔乾燥症を主な症状として現れ、呼吸器系や、消化器系、泌尿器系、血液系、神経系、筋肉、関節などの他のシステムに影響を与え、複数のシステムや臓器に損傷を与える恐れがある。
シェーグレン症候群は、世界的な疾患であり、発症率が高く、40~60歳の中高年で発症する場合が多く、また、患者には90%以上が女性で、小児は少ないということである。今までも統一的な診断基準が欠如しているため、この疾患の罹患率は、正確ではないが、一般的に0.1%~0.7%と見積もられている。米国では、シェーグレン症候群の発症率は関節リウマチに次ぐ。中国では一万人以上の人々の調査によると、この疾患の罹患率は0.29%~0.77%であり、関節リウマチの発症率0.3%~0.4%よりも低くないことが示された。
【0003】
現在、シェーグレン症候群の治療には、主にホルモンを使用して患者の異常な免疫応答を抑制し、そして外分泌腺及び他の重要な臓器の機能を保護している。しかしながら、シェーグレン症候群に対して承認された有効な治療法や生物薬剤は世界中にもまだない。2021年07月20日まで、シェーグレン症候群の臨床研究段階にあるBAFF/BLyS/APRILを標的とする新しい生物薬剤は世界中で5つしかない(表1参照)。
【0004】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、中国であれ全世界であれ、シェーグレン症候群治療の分野には、満たされていない巨大な臨床的ニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
多量の臨床データを詳細に分析したところ、驚くべきことに、本発明者らは、本発明で提供されるTACI-Fc融合タンパク質によりシェーグレン症候群の癌患者を治療する際に予想外の技術的効果を生じることを発見した。具体的には、本発明は、前記シェーグレン症候群を有する患者にTACI-Fc融合タンパク質を治療有効量で投与することを含む、シェーグレン症候群の治療方法を提供する。前記TACI-Fc融合タンパク質は、
(i)TACI細胞外ドメイン或いはBlys及び/又はAPRILに結合するその断片と、
(ii)ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片とを含む。
【0007】
いくつかの好ましい実施形態では、前記TACI-Fc融合タンパク質は、好ましくは約0.1~10mg/kgの単回投与量で投与される。
【0008】
また、本発明は、シェーグレン症候群を治療するための医薬品の作製におけるTACI-Fc融合タンパク質の使用に関する。
【0009】
一実施形態では、前記TACI細胞外ドメイン又はその断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0010】
一実施形態では、前記ヒト免疫グロブリンはIgG1であるか、或いは前記ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%一致するアミノ酸配列を含む。
【0011】
好ましい実施形態では、前記ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片は、配列番号2の部位3、8、14、15、17、110、111又は173のうちの1つ又は複数の部位に対応するアミノ酸の修飾を含む。前記修飾は、好ましくはアミノ酸の置換、欠失又は挿入である。
【0012】
いくつかの特定の実施形態では、前記置換は、P3T、L8P、L14A、L15E、G17A、A110S、P111S及びA173Tからなる群より選択される。
【0013】
特定の実施形態では、前記ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一実施形態では、前記TACI-Fc融合タンパク質は、テリタシセプト(Telitacicept)であり、そのアミノ酸配列が配列番号4に示される。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態では、前記TACI-Fc融合タンパク質は、大腿、腹部又は上腕の投与部位で皮下投与、筋肉投与又は静脈投与される。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、前記TACI-Fc融合タンパク質は、1ヶ月の間隔で2~4回使用される。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、前記TACI-Fc融合タンパク質は、週1回の頻度で投与される。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、前記治療は約2~50週間持続される。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、前記シェーグレン症候群は原発性シェーグレン症候群である。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態では、前記シェーグレン症候群は続発性シェーグレン症候群である。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、前記TACI-Fc融合タンパク質は、160~240mg、さらに好ましくは160mg又は240mgの単回投与量で投与される。
【0022】
また、本発明には、シェーグレン症候群を治療するための医薬品の作製における上記TACI-Fc融合タンパク質の使用が含まれる。
【0023】
本発明によって実施された臨床研究の結果によると、テリタシセプトによる治療によれば、24週目にpSS患者のESSDAIスコア及びMF-20スコアが有意に改善され、テリタシセプトがpSS患者においてより良い安全性を示したことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるIgGレベルのベースラインに対する変化率である。
図2図2は、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるIgAレベルのベースラインに対する変化率である。
図3図3は、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるIgMレベルのベースラインに対する変化率である。
図4図4は、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるCD19+B細胞数のベースラインに対する変化率である。
図5図5は、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるCD4+T細胞数のベースラインに対する変化率である。
図6図6は、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるCD8+T細胞数のベースラインに対する変化率である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。この分野の定義及び用語について、当業者なら、具体的にCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel)を参照すればよい。
【0026】
本発明で使用されるアミノ酸の3文字のコード及び1文字のコードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載されている通りである。
【0027】
本発明は、シェーグレン症候群の治療における膜貫通活性化剤、カルシウム調節剤及びシクロフィリンリガンド相互作用剤(TACI)-免疫グロブリン融合タンパク質(即ち、TACI-Fc融合タンパク質)の使用を提供する。本発明に係る患者は、好ましくはヒトなどの哺乳動物である。
【0028】
本発明における用語「TACI」、即ち膜貫通活性化剤とカルモジュリンリガンド相互作用分子(transmembrane activator and CAML interactor)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーの1つである。本発明における用語「BLys」は、Bリンパ球刺激因子(B lymphocyte stimulator)を指し、膜結合型及び可溶性型の2つの形態で存在するTNFリガンドスーパーファミリーのメンバーの1つであり、骨髄細胞の表面に特異的に発現され、Bリンパ球の増殖及び免疫グロブリンの産生を選択的に刺激するものである。本発明における用語「APRIL」(a proliferation-inducing ligand)は、腫瘍壊死因子(TNF)類似体であり、体内の原始B細胞及びT細胞の増殖を刺激し、B細胞の蓄積を促進して脾臓の含有量を増加させることができる。APRILは、TACI、BCMAに特異的に結合することができ、結合すると、APRILがB細胞に結合するのを抑制し、そしてAPRILによって刺激された原始B細胞の増殖反応を抑制することができる。また、APRILは、BLysと競合して受容体(BCMA、TACI)に結合することができる。
【0029】
本発明における用語「TACI-Fc融合タンパク質」とは、膜貫通活性化剤、カルシウム調節剤及びシクロフィリンリガンド相互作用剤(TACI)-免疫グロブリン融合タンパク質(即ち、TACI-Fc融合タンパク質)を指す。本発明で提供されるTACI-免疫グロブリン融合タンパク質は、(i)TACI細胞外ドメイン或いはBlys及び/又はAPRILに結合するその断片と、(ii)ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片とを含む。
【0030】
用語「TACI細胞外ドメイン或いはBlys及び/又はAPRILに結合するその断片」については、具体的には、米国特許NO.5,969,102、6,316,222及び6,500,428、ならびに米国特許出願09/569,245及び09/627,206(その内容は参照により本明細書に組み込まれる。)に開示されているTACIの細胞外ドメイン及びTACIリガンドと相互作用できるTACI細胞外ドメインの特定の断片、又は公開番号CN101323643Aの中国特許に開示されているTACI細胞外ドメインの13~118番目のアミノ酸断片を参照すればよい。
【0031】
本発明で提供されるTACI-免疫グロブリン融合タンパク質の免疫グロブリン部分は、好ましくは、ヒトの重鎖定常領域などの重鎖定常領域を含み得るIgG1である。本発明の好ましいIgG1重鎖定常領域は、CH2及びCH3領域を含むIgG1 Fcフラグメントであり、これは、野生型IgG1 Fcフラグメント又は変異されたIgG1 Fcフラグメントであり得る。
【0032】
用語「ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片」において、免疫グロブリン部分は、好ましくは、ヒトの重鎖定常領域などの重鎖定常領域を含み得るIgG1である。本発明の好ましい「ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片」としては、ヒンジ領域ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインの一部を含むアミノ酸断片である。いくつかのより好ましい実施形態では、本発明に記載されている「ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片」のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるか、或いは配列番号2と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%一致するアミノ酸配列を含む。いくつかのより好ましい実施形態では、前記「ヒト免疫グロブリンの定常領域の断片」のアミノ酸配列は、配列番号3に示される。
【0033】
本発明における用語「アミノ酸」は、最も広い意味で理解され、アミノ基及びカルボキシ基を含む一種類の有機化合物の一般的な用語である。好ましくは、本発明に係るアミノ酸としては、生体内のタンバク質を構成する主要な単位であり、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明で使用されるアミノ酸の3文字のコード及び1文字のコードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載されている通りである。アミノ酸部位の番号付け方法としては、Kabat番号付け、EU番号付け、順序番号付けなど様々であるが、本発明においては、アミノ酸部位の番号付け方法として「順序番号付け」法を採用し、例えば、本発明における「配列番号2の部位3、8、14、15、17、110、111又は173」とは、配列番号2の3番目のアミノ酸、8番目のアミノ酸などを指す。本発明における「P3T」とは、配列番号2の3番目のアミノ酸配列を先の「P」から「T」に変異させることを意味し、さらに「L8P」とは、配列番号2の8番目のアミノ酸配列を先の「L」から「P」に変異させることを意味し、この例のように類推する。
【0035】
別の実施形態として、本発明で提供される免疫グロブリンの定常領域には、置換(即ち、変異)、付加(即ち、挿入)又は欠失(即ち、削除)などの1つ又は複数のアミノ酸の変化を導入することができる。
【0036】
本発明における用語「テリタシセプト」(中国語で呼ばれる「泰愛」と本発明において互換的に使用できる)は、TACI-Fc融合タンパク質であり、そのINN名がTelitaciceptであり、そのアミノ酸配列が配列番号4に示されるか、又はhttps://extranet.who.int/soinn/mod/page/view.php?id=137&inn_n=10932を参照のこと。
【0037】
本発明のTACI-Fc融合タンパク質は、任意の経路を介して投与することができる。投与経路には、経口投与や、静脈注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄内注射、腹腔内注射、髄腔内注射、心脳内、経皮、経皮、外用、皮下、鼻腔内、腸内、舌下、膣内、直腸経路などが含まれるがこれらに限定されない。
【0038】
本発明における用語「治療」は、所定の疾患又は病気に関連する。「治療」には、疾患又は病気の進行を阻止するように該疾患又は病気の抑制、疾患又は病気を退行させるように該疾患又は病気の軽減、或いは、疾患又は病気の症状を軽減、予防又は治療するように該疾患又は病気に起因した症状の軽減が含まれるが、これらに限定されない、。
【0039】
以下、本発明の実施形態について実施例と合わせて詳細に説明するが、以下の実施例が本発明を説明するために使用され、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことは、当業者なら理解するであろう。
【0040】
実施例1 テリタシセプトを用いてシェーグレン症候群を治療する臨床試験
【0041】
1.研究方法
この研究は、多施設、ランダム化、二重盲検、プラセボを対照とした第II相臨床研究であった。被検者は、抗SSA抗体が陽性であり、原発性シェーグレン症候群(pSS)と診断された患者であり、スクリーニング期間中にESSDAI≧5ポイントと要求された。試験段階は、スクリーニング期間と二重盲検治療期間の2つの部分に分けられた。スクリーニング期間を-28日から-1日までとし、除外基準を満たさずに選択基準を満たした被検者をプラセボ群、テリタシセプト160mg群及びテリタシセプト240mg群に1:1:1の割合でランダム分配した。二重盲検治療期間を0日目から168日目(24週目)までとし、その期間に、週1回、計24回投薬した。
【0042】
【表2】
【0043】
2.選択された患者
2016年のACR/EULAR原発性シェーグレン症候群の分類基準を満たし、ドライアイ及びドライマウスのうちの少なくとも1つ症状を有し、即ち、以下の少なくとも1つが陽性である患者:
・ 毎日耐えられないドライアイを3ヶ月以上続いて感じていたこと、
・ 目のザラザラ感が繰り返されたこと、
・ 人工涙液を1日3回又は3回以上使用する必要があったこと、
・ 3ヶ月以上毎日、口の乾燥を感じていたこと、
・ ドライフードを飲み込む際に頻繁に水の補助が必要であったこと;抗SSA抗体が陽性であったこと;及びESSDAI≧5ポイントであったこと。
【0044】
3.評価基準
3.1治療効果指標
3.1.1主治療効果指標
ベースラインに対する24週目のESSDAIスコアの変化量
【0045】
3.1.2副次的治療効果指標
・ ベースラインに対する12週目のESSDAIスコアの変化量、
・ ベースラインに対する12、24週目のESSPRIスコアの変化量、
・ ベースラインに対する12、24週目の疾患活動の変化量に関する医師の総合評価、
・ ベースラインに対する12、24週目の疾患活動の変化量に関する患者の総合評価、
・ ベースラインに対する12、24週目のSF-36の変化量、
・ ベースラインに対する12、24週目のMFI-20の変化量、
・ 非刺激性全唾液(UWS)流速、
・ 5分時点のろ紙ストリップの濡れた部分の前縁に対応する目盛り、
・ 免疫学的指標:IgG、IgA、IgM、補体(C3、C4)、Bリンパ球の総数(CD19+)、CD4+T細胞数、CD8+T細胞数。
【0046】
3.2安全性評価
・ 有害事象、
・ 実験室検査、
・ バイタルサイン、
・ 胸部X線、
・ 心電図、
・ 免疫原性。
【0047】
4.統計学的方法
この研究では、分析にSAS 9.4ソフトウェアを採用し、すべての統計検定に両側検定を採用し、P値≦0.05の場合は、検定された差が統計的に有意であると考えられた。連続変数を平均値、標準偏差、中央値、最小値及び最大値で記述し、計数及び等級資料に頻度数及びパーセンテージで記述した。
【0048】
この研究には次の3つの解析対象集団があった:
・ 最大の解析対象集団(FAS):最大の解析対象集団は、ランダム化され、少なくとも1回の治験薬を使用したすべての症例の集合を指す。
・ 治験実施計画書に適合した対象集団(PPS):治験実施計画書に適合した対象集団は、治験実施計画書を十分に遵守している被検者によって生成されたデータ集団であり、だだし、遵守には、治療への曝露、主要終点指標測定値の利用可能性及び大きな治験実施計画書違反がないことなどが含まれる。
・ 安全性データの解析対象集団(SS):少なくとも1回の治療を受け、安全性指標が記録された実際のデータである。有害反応の発生率は安全性データの解析対象集団の症例数を分母とする。
【0049】
5.人口統計学とベースラインの特徴
この試験では、57例の患者がスクリーニングされ、42例がランダムに群に入れ、30例が24週間の試験観察を完了し、12例が早期に試験を中止し、最終的に42例が最大の解析対象集団(FAS)に含まれ、30例が治験実施計画書に適合した対象集団(PPS)に含まれ、42例が安全性データの解析対象集団(SS)に含まれた。なお、プラセボ群ではFASが14例、PPSが10例、SSが14例であり、160mg群ではFASが14例、PPSが12例、SSが14例であり、240mg群ではFASが14例、PPSが8例、SSが14例であった。
【0050】
ベースラインの時には、240mg群(N=14)、160mg群(N=14)及びプラセボ群(N=14)は、被検者の年齢、身長、体重、BMI、性別、民族、職業、婚姻状況、生育状况、喫煙歴、薬物アレルギー歴、原発性シェーグレン症候群の経過、原発性シェーグレン症候群診断スコア、原発性シェーグレン症候群の発現、原発性シェーグレン症候群の治療歴、バイタルサイ、ウイルス学的検査、甲状腺機能検査、免疫学的指標、ESSDAIの総合スコア、治験責任医師による疾患の総合評価、ESSPRIの総合スコア及び各次元のスコア、被検者による疾患の総合評価、SF-36の総合スコア及び各次元のスコア、MFI-20の総合スコア及び各次元のスコア、自己抗体検査、BLyS濃度、APRIL濃度において、比較可能性がある(P>0.05)。
【0051】
6.治療効果の結果
6.1主治療効果の終点
この研究の主治療効果の終点を、ベースラインに対する24週目のESSDAIスコアの変化量とし、分析時に反復測定による混合効果モデル(MMRM)を用いて群間の違いを比較し、欠損データを削除・補充しなかった。FASに対する分析結果によると、治療後24週目のESSDAIスコアのベースラインからの変化値及びその95%CIは、それぞれプラセボ群(N=14)では-0.3[95%CI:-2.1~1.6]、160mg群(N=14)では-4.0[95%CI:-5.7~-2.3]、240mg群(N=14)では-3.1[95%CI:-5.2~-1.0]であり、また、MMRMの比較により、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.004)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.044)であった。PPSに対する分析結果によると、治療後24週目のESSDAIスコアのベースラインからの変化値及びその95%CIは、それぞれプラセボ群(N=10)では-0.2[95%CI:-1.8~1.4]、160mg群(N=12)では-3.9[95%CI:-5.4~-2.5]、240mg群(N=8)では-3.1[95%CI:-4.8~-1.3]であり、また、MMRMの比較により、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.019)であった。
【0052】
6.2副次的治療効果の終点
6.2.1.ベースラインに対する12週目のESSDAIスコアの変化量
ベースラインに対する12週目のESSDAIスコアの変化量は、この研究の副次的治療効果指標の1つであり、分析時に繰り返し測定混合効果モデル(MMRM)を用いて群間の違いを比較し、欠損データを削除・補充しなかった。FASの分析結果によると、治療後12週目のESSDAIスコアのベースラインからの変化値及びその95%CIは、それぞれプラセボ群(N=14)では0.7[95%CI:-1.0~2.4]、160mg群(N=14)では-3.8[95%CI:-5.5~-2.1]、240mg群(N=14)では-2.5[95%CI:-4.3~-0.6]であり、MMRMの比較により、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.013)であった。PPSの分析結果によると、治療後12週目のESSDAIスコアのベースラインからの変化値及びその95%CIは、それぞれプラセボ群(N=10)では-0.5[95%CI:-2.1~1.1]、160mg群(N=12)では-3.8[95%CI:-5.2~-2.3]、240mg群(N=8)では-2.9[95%CI:-4.7~-1.2]であり、また、MMRMの比較により、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.003)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.045)であった。
【0053】
6.2.9.免疫学的指標
免疫学的指標には、IgG、IgA、IgM、補体(C3、C4)、Bリンパ球の総数(CD19+)、CD4+T細胞数、CD8+T細胞数が含まれる。治療後のベースラインに対する免疫学指標の変化については、分散分析を用いて群間の違いを比較した。分散分析のP≦0.05の場合、LSD-t検定を用いて群間のペアワイズ比較を行った。FASの実際のデータを用いて分析を行った。
【0054】
プラセボ群と比較すると、テリタシセプト治療群は、IgG、IgA、IgMのレベルが4週目から24週目まで有意に低下していた。24週目に、プラセボ群、160mg群、240mg群における2ベースラインに対するIgGレベルの変化率は、それぞれ1.02±21.855、-23.91±10.199、-28.40±11.219であり、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であった。24週目に、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるベースラインに対するIgAレベルの変化率は、それぞれ-1.29±14.749、-47.55±8.790、-49.18±11.294であり、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であった。24週目に、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるベースラインに対するIgMレベルの変化率は、それぞれ-7.87±19.062、-55.74±11.010、-61.61±8.692であり、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P<0.001)であった。ベースラインに対する各群のIgG、IgA、IgMレベルの変化率の経時分析を図1図3に示す。
【0055】
プラセボ群と比較すると、テリタシセプト治療群は、CD19+B細胞数が有意に低下してきた傾向が示された。24週目に、プラセボ群、160mg群、240mg群におけるベースラインに対するCD19+B細胞数の変化率は、それぞれ6.31±32.826、-29.26±44.698、-39.36±37.836であり、160mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.044)であり、240mg群とプラセボ群の群間の違いは統計的に有意(P=0.021)であった。ベースラインに対する各群のCD19+B細胞数の変化率の経時分析を図4~6に示す。
【0056】
6.3安全性結果
プラセボ群における1例だけの被検者は、低アルブミン血症、帯状疱疹、肺結核、感染性肺炎、シェーグレン症候群の悪化などの重篤な有害事象を生じたが、治療後に軽減された。
240mg群における2例だけの被検者は、それぞれ重度以上(CTCAE グレード3~5)の急性腎盂腎炎と白血球減少症の有害事象を経験した。
【0057】
6.4結論
プラセボ群と比較すると、テリタシセプトを用いた治療は24週目にpSS患者のESSDAIスコア及びMF-20スコアを有意に改善した。テリタシセプトはpSS患者に対して良好な安全性を示した。
【0058】
上記の説明は、好ましい実施形態にすぎず、例示だけとして用いられ、本発明を実施するために必要な特徴の組み合わせを限定するものではない。提供されるタイトルは、本発明の様々な実施形態を限定することを意味するものではない。「包含する」、「含む」及び「含まれる」などの用語は、限定することを意味するものではない。さらに、特に断りがない限り、数字で修飾されていない場合、複数形が含まれ、また「又は」、「或いは」は「及び/又は」を意味する。本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0059】
本出願で言及されたすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明に記載された方法及び組み合わせに対して行った様々な修飾及び変形は、当業者にとって明らかである。具体的な好ましい実施形態を通じて本発明を説明したが、保護が要求される本発明がこれらの具体的な実施形態に不適切に限定されるべきではないことを理解されたい。実際には、当業者にとって自明になる、本発明を実施するために述べたモードの様々な変形は、本願の特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024512935000001.xml
【国際調査報告】