(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】床擦れを治療する薬剤の調製における、マンゴスチンフルーツの殻抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/38 20060101AFI20240313BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240313BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240313BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
A61K36/38
A61P17/02
A61K31/352
A61K131:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558461
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2021140135
(87)【国際公開番号】W WO2022213665
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523360614
【氏名又は名称】シアンテオ バイオテクノロジ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, ダイフア
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シイン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン, イピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, クチェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イェンジュ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C088AB11
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088MA55
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
床擦れを治療するための薬剤の調製における、組成物の使用が提供される。この組成物は、マンゴスチンフルーツの殻抽出物の有効量を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床擦れを治療するための薬剤の調製における、組成物の使用であって、前記組成物は、マンゴスチンフルーツの殻抽出物の有効量を含む、使用。
【請求項2】
前記マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、マンゴスチンフルーツの殻の水抽出物、及び/またはマンゴスチンフルーツの殻のアルコール抽出物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記マンゴスチンフルーツの殻は、マンゴスチンフルーツの殻における内殻及び/またはマンゴスチンフルーツの殻における外殻である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記マンゴスチンフルーツの殻は、マンゴスチンフルーツの殻における外殻である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物は非経口製剤である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記非経口製剤は外用剤である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
マンゴスチンフルーツの殻抽出物の前記有効量は、0.5~10重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
マンゴスチンフルーツの殻抽出物の前記有効量は、1~8重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
マンゴスチンフルーツの殻抽出物の前記有効量は、1.25~5重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
マンゴスチンフルーツの殻抽出物の有効量を含んだ、医薬組成物を投与することを含む、対象の床擦れを治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床擦れを治療する薬剤の調製における、マンゴスチンフルーツの殻抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体における最も広い組織である。多くのタイプの皮膚病が存在する。皮膚病は、(数分から数時間続くだけの)急性疾患、または個人に対して数日、数カ月、数年、さらには一生涯影響を及ぼし得る、慢性疾患である場合がある。皮膚病は、菌、細菌、もしくはウィルス源によって生じる疾患であるか、またはアレルゲンを伴うか、もしくは伴わない炎症反応、もしくは特発性の炎症反応などの、非感染性の免疫反応である場合がある。このように皮膚病の症状は多様であり、軽いかゆみ、赤み、及び腫れから、例えば有害な潰瘍化などの深刻な膿及び侵害受容性疼痛まで、の範囲となり得る。皮膚病は、個人の生活の質に大きな影響を及ぼし得る。
【0003】
圧迫潰瘍、ベッド潰瘍、または褥瘡(じょくそう)性潰瘍とも知られている床擦れは、皮膚及び下層組織における局部的な損傷であり、一般的に、踵、臀部、及び尾骨などの骨ばった隆起部の上に生じ、通常は長時間の圧迫からもたらされる。
【0004】
床擦れのリスク要因は、一般的に糖尿病、身体障害、認知障害、神経衰弱、または加齢であると考えられる。床擦れは、蜂巣炎、骨関節の感染症、癌、及び敗血症などの、合併症も生じさせる。
【0005】
臨床において、2019年の国際的なエビデンスに基づいた、臨床診療ガイドラインは、床上安静、圧力を再分布させる支持面、栄養サポート、整復、創傷ケア、及び生物物理学的薬剤を含んだ、床擦れを治療するための方策を推奨している。しかし、このガイドラインは、床擦れを治療するための、適切な治療薬剤に関する教示を欠いている。
【0006】
マンゴスチンは、乳癌防止及び筋肉に関する病気の分野に使用されており、日常生活における栄養補助剤及び化粧品としても開発され、同様に急性肝炎、肝線繊症、及び肝硬変の予防にも使用されている。
【0007】
Matsumotoらは、マンゴスチンフルーツの殻から精製された、α-マンゴスチン、β-マンゴスチン、γ-マンゴスチン、及びメチル-β-マンゴスチンを研究し、細胞周期の様々なステージにおいて、この組成物の抑制効果を調査しており、この組成物が、抗細胞増殖促進効果及び抗腫瘍効果を有することを示している(Bioorg.Med.Chem.2005、13 6064-6069)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Matsumotoらによる研究(Bioorg.Med.Chem.2005、13 6064-6069)
【発明の概要】
【0009】
本発明は、皮膚の疾患を治療するための医薬組成物の調製における、組成物の使用を提供する。
【0010】
具体的には、本発明は、床擦れを治療するための薬剤の調製における、マンゴスチンフルーツの殻抽出物の有効量を含んだ、組成物の使用を提供する。薬剤は、局所治療または精密治療用途にも使用することができる。
【0011】
本発明は、マンゴスチンフルーツの殻抽出物の有効量を有する医薬組成物を投与することを含んだ、対象の床擦れを治療するための方法を提供する。
【0012】
マンゴスチンフルーツの殻は、より柔らかい内殻、及びより堅い外殻を含む。
【0013】
好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻は、メタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、アセトン、酢酸エチル、及び水、から成るグループから選択された溶媒を用いて抽出される。
【0014】
別の好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、マンゴスチンフルーツの殻の水抽出物、及び/またはマンゴスチンフルーツの殻のアルコール抽出物である。
【0015】
好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、マンゴスチンフルーツの殻の水抽出物である。
【0016】
別の好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、マンゴスチンフルーツの殻のアルコール抽出物である。
【0017】
好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻は、マンゴスチンフルーツの殻における内殻及び/もしくは外殻、ならびに/または、マンゴスチンフルーツの殻の全体である。
【0018】
別の好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻は、マンゴスチンフルーツの殻における外殻である。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、経口製剤または非経口製剤とすることができる。非経口製剤は、クリーム、ペースト、軟膏、ジェル、ウォッシュローション、またはパッチである、外用剤とすることができる。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明の、マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む。
【0021】
別の好ましい実施形態において、本発明の、マンゴスチンフルーツの殻の水抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明の、マンゴスチンフルーツの殻のアルコール抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む。
【0023】
本明細書で使用される用語「有効量」は、個人に投与したときの効果的な結果を実現できる量、または体内もしくは体外における所望の活性を有する量である。本発明において、用語「有効量」は、組成物全体重量に対する抽出物重量の比によって計算される。床擦れの場合、治療をしない場合と比較したときに、効果的な臨床成績として、病気もしくは状態に関連付けられた症状の程度、もしくは重症度の改善、及び/または個人の寿命を延ばすこと、及び/または個人の生活の質を改善すること、が挙げられる。個人に投与される組成物の正確な量は、病気または症状のタイプ及び重症度、ならびに個人の健康全般、年齢、性別、体重、及び個人の薬剤耐性など、個人の特性に依存することになる。個人に投与される組成物の正確な量は、炎症性疾患、自己免疫疾患、及びアレルギー性疾患の状態、重症度、及びタイプによって、または所望の免疫抑制効果によっても、決定される。当業者は、これら及び他の要因に基づいて、適切な用量を決定することができる。
【0024】
実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻抽出物における有効量は、0.5~10重量%である。好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻抽出物における有効量は、1~8重量%である。最も好ましい実施形態において、マンゴスチンフルーツの殻抽出物における有効量は、1.25~5重量%である。
【0025】
本発明の医薬組成物を、経口製剤または非経口製剤の様々な形態に調合することができる。経口製剤を、粉末、顆粒、トローチ、カプセルなどの固形製剤として、または懸濁液、乳剤、シロップなどの液体製剤として、調合することができる。非経口製剤を、クリーム、軟膏、ジェル、ウォッシュローション、パッチなどの外用剤として、または吸入薬、エアロゾル、座薬などとして、調合することができる。
【0026】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容できる添加剤を含む場合がある。特に、所定の溶媒またはオイル、pH調整剤をさらに含む場合があり、必要に応じて分散剤をさらに含む場合がある。
【0027】
本発明で使用する溶媒の例として、限定ではないが、水、エタノール、イソプロパノール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0028】
本発明で使用されるオイルの例は、限定ではないが、コーンオイル、ゴマ油、アマニ油、綿実油、大豆油、ピーナッツオイル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、鉱油、スクアレン、ホホバオイル、オリーブオイル、マツヨイグサ油、ボラージオイル、ブドウ種油、ココナッツオイル、ヒマワリオイル、シアバター、及びこれらの任意の組み合わせ、から成るグループから選択される。
【0029】
溶媒及びオイルを、単独で、またはこれらの任意の組み合わせで使用することができる。
【0030】
有益な分散剤として、限定ではないが、レシチン、有機モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンステアレートなどが挙げられる。これらの原料を、単独で、またはこれらの任意の組み合わせで使用することができる。
【0031】
必要に応じて、組成物は、抗生物質または防腐剤などの追加材料をさらに含む。
【0032】
その一方で、本発明の組成物の薬剤活性に対して悪影響がない限り、活性成分を組成物と同時に使用することができることが知られている。例えば、セラミド保湿剤は、アトピー性皮膚炎のために、従来の薬剤として一般的に使用される。またはヒドロコルチゾンステロイド、ビタミンAパルミチン酸エステルなどのビタミンA誘導体、及び/またはトロフェロールなどの液体成分を、組成物と共に使用することができる。
【0033】
医薬組成物が、外用剤として使用される場合、適切な皮膚外用剤を基礎材料として使用することができ、水溶液、非水溶媒、懸濁液、乳剤、または凍結乾燥製剤などを使用して、公知の方法に従って殺菌することができる。
【0034】
本発明の、提供または投与される組成物の実際の使用において、有効量は、患者の投与経路、年齢、性別、及び体重、病気の重症度、ならびに活性成分としての薬剤のタイプなど、様々な要因に依存して決定することができる。
【0035】
本発明の組成物が、食品組成物または化粧品組成物である場合、この組成物を、少なくとも1つの栄養補助食品または美容的に許容可能なキャリアの、適切な追加によって調製することができる。
【0036】
食品組成物は、例えば健康食品に利用するか、または加えることができる。本明細書で使用される用語「健康食品」は、一般的な食品と比較して機能が強化された、本発明の組成物を含んだ食品を指す。健康食品は、一般的な食品を組成物に加えるか、またはカプセル化、微粉化、もしくは懸濁液化することによって、調製することができる。
【0037】
化粧品組成物を、単独で、もしくは他の化粧品成分と共に加えることができ、または他の公知の方法に従って適切に使用することができる。化粧品として、限定ではないが、アフターシェイヴ剤、ローション、クリーム、フェイスパック、及びカラーメーキャップが挙げられる。
【0038】
化粧品組成物は、ジェル、クリーム、軟膏など、様々な組成物の形態に調合することができる。ジェル、クリーム、及び軟膏の形態の組成物は、公知の方法を使用することによって、ならびに公知の軟化剤、乳化剤、及び増粘剤または当技術分野で公知の他の材料を追加することによって、組成物の形態に従って適切に調製することができる。
【0039】
ジェル形態の組成物は、例えば、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、ならびに例えばプロピレングリコール、エタノール、及びイソセチルアルコールなどの溶媒のグリセロール、などの軟化剤と、純水と、を加えることによって調製することができる。
【0040】
クリームの形態における組成物の調製は、例えば、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、レスベラトロール、イソステアリルアルコール、及びイソセチルアルコールなどの脂肪アルコール;レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド及びこの派生物、ステアリン酸グリセリル、ソルビトールパルミテート、ソルビトールステアレートなどの脂質の乳化材;アボカドオイル、アーモンドオイル、ババスオイル、ボラージオイル、ツバキ油などの天然脂肪及び天然オイル;セラミド、コレステロール、脂肪酸、フィトスフィンゴシン、レシチンなどの脂質組成物;プロピレングリコールなどの溶媒;ならびに純水、を加えることによって実行できる。
【0041】
軟膏の形態における組成物の調製は、例えば、皮膚軟化薬、乳化剤、及び例えばミクロクリスタリンワックス、パラフィン、セレシン、蜜蝋、鯨蝋、ペトロラタムなどのワックス、を加えることによって実行できる。
【0042】
別の態様において、本発明は、床擦れを治療または緩和するための薬剤を調製するために、組成物を使用するための方法を提供する。本明細書で使用される用語「治療または緩和」は、患者が薬剤を使用したときに、病気の進行または症状を止めるか、または遅らせることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】スケジュールを示す、本発明の動物実験のフローチャートである。
【
図1B】マウスの床擦れを表わす、本発明の動物実験のフローチャートである。
【
図2】7日間の治療後における、床擦れステージ3の領域を示す図である。ここで、CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、全殻抽出物:有効量0.625重量%、1.25重量%、2.5重量%、及び5重量%のシャントサンプルグループ。結果は、平均±SEMで表わされる。*P<0.05、**P<0.01、スチューデントt検定。
【
図3】7日間の治療後の回復における、床擦れステージ3の画像を示す図である。ここで、CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、全殻抽出物:有効量0.625重量%、1.25重量%、2.5重量%、及び5重量%のシャントサンプルグループ。
【
図4A】炎症スコアにおいて、フラシ―ボと比較して2.5重量%において顕著な変化を示す、マウスの皮膚における組織学的評価のグラフである。ここで、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントt検定。CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、マンゴスチンフルーツの殻抽出物:シャントサンプルグループ。
【
図4B】再上皮化スコアにおいて、フラシ―ボと比較して2.5重量%で顕著な変化を示す、マウスの皮膚における組織学的評価のグラフである。ここで、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントt検定。CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、マンゴスチンフルーツの殻抽出物:シャントサンプルグループ。
【
図4C】組織の肉芽形成スコアにおいて、フラシ―ボと比較して2.5重量%で顕著な変化を示す、マウスの皮膚における組織学的評価のグラフである。ここで、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントt検定。CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、マンゴスチンフルーツの殻抽出物:シャントサンプルグループ。
【
図4D】血管形成スコアにおいて、フラシ―ボと比較して2.5重量%で顕著な変化を示す、マウスの皮膚における組織学的評価のグラフである。ここで、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントt検定。CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、マンゴスチンフルーツの殻抽出物:シャントサンプルグループ。
【
図5】7日間の治療後における、床擦れステージ3の領域を示す図である。ここで、CTL:偽グループ;フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、マンゴスチンフルーツの殻抽出物:有効量2.5重量%のシャントサンプルグループであり、I:内殻抽出物、O:外殻抽出物、W:全殻抽出物。結果は、平均±SEMで表わされる。*P<0.05、スチューデントt検定。
【
図6】7日間の治療後の回復における、床擦れステージ3の画像を示す図である。ここで、CTL:偽グループ、フラシ―ボ(Placebo):賦形薬グループ、マンゴスチンフルーツの殻抽出物:有効量2.5重量%のシャントサンプルグループであり、I:内殻抽出物、O:外殻抽出物、W:全殻抽出物。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の例は非限定であり、単位本発明の様々な態様及び特徴を表わすのみである。
【実施例】
【0045】
[医薬組成物の調製]
【0046】
マンゴスチンフルーツの殻抽出物は、米国特許第10383906号明細書に列挙された以下の調整ステップによって調製した。
【0047】
簡潔に述べると、マンゴスチンフルーツの殻を集積して50~95%まで乾燥し、(水または10~95%のアルコールなどの)溶媒を用いて抽出して、マンゴスチンフルーツの殻抽出物を得るために濃縮した。
【0048】
マンゴスチンフルーツの殻における外殻及び内殻を分離し、マンゴスチンフルーツの殻における外殻及びマンゴスチンフルーツの殻における内殻を、それぞれ50~95%まで乾燥し、(水または10~95%のアルコールなどの)溶媒を用いて抽出して、次にマンゴスチンフルーツの殻における外殻抽出物及びマンゴスチンフルーツの殻における内殻抽出物を得るために濃縮した。
【0049】
マンゴスチン果皮のアルコール及び水抽出物,マンゴスチン果皮の内果皮.外果皮のアルコール及び水抽出物を,それぞれ濃度の異なるクリーム又は軟膏として製造した。それらを、本明細書では、本発明における「シャントサンプル」と呼ぶ。
[動物実験]
【0050】
体重24~30gの、生後7週間のBALB/cマウス(LESCO Biotech社から購入)を、動物実験に使用した。それらは、飼育室に入れる1週間前に、獣医によって隔離された。飼育室の温度は21±2℃、湿度は30~70%、及び環境は12/12時間の明暗サイクルで設定され、餌及び水を無制限に与えた。
【0051】
本発明の動物実験のフローチャートが、
図1Aに示される。マウスの床擦れモデルは、僅かな変更を加えて、Stadlerらによって記載された方法に従って展開した。マウスは、イソフルラン及びO
2を概ね50~60秒間使用して鎮静させた。背部の毛を剃った。テンプレートを使用し、磁気プレートの位置に印を付けて、各動物の一定の配置を確保した。背部の皮膚を、径12mm、厚さ5.0mm、磁力1000Gの、2つの円形セラミックの磁気プレート間における誘引力によって、挟んで押し付けた(
図1B参照)。
【0052】
3つの虚血再灌流(IR)サイクルを、床擦れの形成を始めるために各動物に使用した。磁気プレートの6時間間隔から成る、1回の虚血/再灌流の次に、18時間の解放または休憩期間をとった。動物は、IRサイクル中に、固定せず、麻酔せず、または治療もしなかった。
【0053】
動物には、自由に餌及び水が与えられた。全36匹のマウスをランダムに6つのグループ(各グループ6匹のマウス)に分けた:偽グループ(CTLに分類)、添加剤を用いて治療した賦形薬グループ(水及び他の乳化材であり、フラシ―ボに分類)、及びマンゴスチンフルーツの全殻抽出物の有効量0.625重量%、1.25重量%、2.5重量%、5重量%の試験物質を創傷に適用して治療した、4つのシャントサンプルグループ(全殻抽出物に分類)。ステージ3の床擦れ形成後、創傷は、各サンプル(40.25mg/cm2)を毎日用いて、7日間治療した。潰瘍治癒、体重、餌及び水の摂取量を含んだ、いくつかのパラメータを、0日目、4日目、及び7日目に観察した。各グループの創傷領域を写真に撮り、次にソフトウェアImageJ(ImageJ Fuji、USA)を使用して分析した。潰瘍のステージを、表1に示されるように、臨床診療に広く使用される標準段階評価を使用して類別した。皮膚の色及び皮膚の完全性における変化を、0~4の評価に類別した。ここで0は、影響を受けていない正常の皮膚に割り当て、4は、皮膚及び皮下組織の全層損失、ならびに/または瘢痕形成に割り当てた。平均の潰瘍ステージ及び標準偏差を計算した。
【0054】
標準圧力潰瘍段階評価;
【0055】
【0056】
各マウスからの皮膚組織は、10%のリン酸緩衝ホルマリンに固定して、次にパラフィンブロックに埋め込んだ。パラフィンに埋め込んだ組織の、5mm厚のセクションを、ガラススライド上に取り付け、蒸留水で再水和して、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色した。組織学的評価の一部として、全てのスライドを、事前の処理に関する知識なしに、50倍の拡大率の顕微鏡(LEICA DM2700M USA)を用いて、マスクしたスライドを使用して病理学者が検査した。測定したパラメータは、炎症、再上皮化、組織の肉芽形成、及び血管形成であった。組織学的スコアシステムを、表2に示す。
【0057】
【0058】
結果を、平均±標準偏差で提示した。統計学的分析を、GraphPad Prism(バージョン8.0)を使用したDunnettの事後試験を用いて、変化の一方向分析によって実施した。統計的有意性のP値は、*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001と示される。
[結果]
【0059】
7日間の治療後、有効量1.25重量%、2.5重量%、及び5重量%の全殻抽出物を投与して、ステージ3の潰瘍の、顕著なサイズの減少が得られた(
図2及び
図3参照)。特に、有効量2.5重量%の全殻抽出物を与えたグループは、より良好な効果を示した。CTLと比較すると:*p<0.05、**p<0.01。
【0060】
フラシ―ボグループと比較して、2.5%の全殻抽出物で治療することによる、床擦れの組織学的スコアの評価について、結果を
図4に示す。炎症スコア(4A)について、2.67まで減少した2.5%の全殻抽出物以外の、残りのグループのスコアは、3.83~4を示した。再上皮化スコア(4B)について、2まで増加した2.5%の全殻抽出物以外の、残りのグループのスコアは、1~1.17を示した。組織の肉芽形成スコア(4C)について、2まで増加した2.5%の全殻抽出物以外の、残りのグループのスコアは、1~1.33を示した。炎症スコア(4D)について、2.67まで増加した2.5%の全殻抽出物以外の、残りのグループのスコアは、1~1.67を示した。これらの結果は、2.5%の全殻抽出物が、創傷及び床擦れの治癒において最も効果的であることを示す。
【0061】
2.5重量%のマンゴスチンフルーツの殻抽出物における効果を、さらに確認するために、30匹の生後7週間のBALB/cマウスを5つのグループ、すなわち偽グループ(CTLに分類)、賦形薬グループ(フラシ―ボに分類)、及び3つのシャントサンプルグループ(マンゴスチンフルーツの殻抽出物において、I:内殻抽出物、O:外殻抽出物、W:全殻抽出物)に分け、各グループに6匹ずつとした。ステージ3の床擦れ形成後、創傷は、各サンプル(40.25mg/cm
2)を毎日用いて、7日間治療した。潰瘍治癒、体重、餌及び水の摂取量を含んだ、いくつかのパラメータを、0日目、4日目、及び7日目に観察した。各グループの創傷領域を写真に撮り、次にソフトウェアImageJ(ImageJ Fuji、USA)を使用して分析した。
図5及び
図6に示されるように、2.5%の外殻抽出物及び全殻抽出物は、ステージ3の潰瘍のサイズを大幅に減少させ、外殻抽出物が、床擦れに対して最も潜在的な治療効果を有すると思われる。
【0062】
当業者が利用するために、本発明を十分詳細に説明して実例を挙げたが、様々な代替、変更、及び改善は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、明白となるはずである。
【0063】
当業者は、本発明が、目的を実行するよう、かつ記載した目的及び利点、ならびにそれらの本質を得るよう、良好に適合されることを容易に理解するであろう。細胞、動物、ならびにそれらを生成するためのプロセス及び方法は、好ましい実施形態の代表であり、例示であって、本発明の範囲を制限することは意図されない。これらにおける変更及び他の使用を、当業者は思い付くであろう。これらの変更は、本発明の趣旨に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】