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特表2024-512954鉄ナゲットの製造のプロセスおよびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】鉄ナゲットの製造のプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/10 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
C21B13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558545
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022021584
(87)【国際公開番号】W WO2022204307
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,924
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523361390
【氏名又は名称】カーボンテック エナジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒントサラ, デール
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DE01
4K012DE03
4K012DE06
(57)【要約】
銑鉄グレードのナゲットの製造用の移動式炉床炉のための炉床であって、複数の金属鉄ノジュールとスラグを生成する際に、合成グラファイト材料をプロセスチャージに直接接触させた炉床。酸化物と、所定量の還元剤およびフラックスを含有する鉄を含むプロセスチャージは、炉床上に搬送されて、還元段階、溶融段階および合体段階を経て、結果として生じる金属鉄ノジュールおよびスラグは、合成グラファイト材料に直接接触し、および炉床の合成グラファイト材料に付着しない。付着がないことおよび除去の容易さは、銑鉄グレードのナゲット中の何らかの不純物を最小限にし、および接触面の何らかの補充の必要性を伴うことなく、炉床を二度以上のサイクルに使用できるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物を含有する鉄を含むプロセスチャージと、所定量の還元剤およびフラックスが搬送されて、還元段階、溶融段階および合体段階を介して、前記プロセスチャージを金属鉄ノジュールおよびスラグ成分に変換する、酸化物を含有する鉄を還元して金属鉄ノジュールを生成するプロセスにおいて、前記プロセスチャージと前記還元し、溶融しおよび合体する鉄およびスラグが合成グラファイト材料のみに直接接触するように、前記プロセスチャージが、前記合成グラファイト材料を有する炉床上に搬送されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
酸化物を含有する鉄を還元して、酸化物を含有する鉄と、所定量の還元剤およびフラックスとを含むプロセスチャージから複数の金属鉄ノジュールを生成するプロセスであって、前記プロセスチャージは、前記プロセスチャージを前記複数の金属鉄ノジュールおよびスラグ成分に変換するために、還元段階、溶融段階および合体段階のための移動式炉床炉内に搬送されるプロセスにおいて、
プロセスチャージを、合成グラファイト材料から成る炉床上に供給することであって、前記プロセスチャージが前記合成グラファイト材料に直接接触することと、
前記移動式炉床炉内での還元段階、溶融段階および合体段階中に、前記プロセスチャージを前記炉床上に搬送することであって、前記複数の金属鉄ノジュールおよびスラグ成分が、前記炉床の前記合成グラファイト材料のみと直接接触されるように、前記プロセスチャージが前記合成グラファイト材料に直接接触するプロセス。
【請求項3】
酸化物を含有する鉄を還元して、酸化物を含有する鉄と、所定量の還元剤およびフラックスを含むプロセスチャージから複数の金属鉄ノジュールを生成するための移動式炉床炉に用いる炉床であって、前記炉床が、該炉床上に供給されたプロセスチャージが合成グラファイト材料に直接接触するように、該合成グラファイト材料から本質的に成る外側面を備える、炉床。
【請求項4】
前記炉床が、基板に操作可能に付着された前記合成グラファイト材料から成る少なくとも一つの層を備える、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項5】
合成グラファイト材料から成る前記少なくとも一つの層が前記基板に界接している、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項6】
前記基板は、合成グラファイト材料から成る前記少なくとも一つの層によって、少なくとも部分的に覆われている、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項7】
合成グラファイト材料から成る前記少なくとも一つの層は、約0.5mm~約100cm、いくつかの態様においては約1mm~約10cm、いくつかの他の態様においては、約2mm~約5cm、およびいくつかの他の態様においては、約2.5mm~約2.5cmの厚さを有する、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項8】
前記合成グラファイト材料は、二つ以上の層として備えられる、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項9】
前記炉床は、モノリシックの合成グラファイト材料から成る、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項10】
前記モノリシックの合成グラファイト材料は、約1インチ~約12インチ、いくつかの態様においては、約1.5インチ~約10インチ、およびいくつかの他の態様においては、約2インチ~約6インチの厚さを有する、請求項1~請求項3および請求項9のいずれかに記載の炉床。
【請求項11】
前記複数の金属鉄ノジュールおよびスラグ成分は、前記合成グラファイト材料に付着しない、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項12】
前記炉床は、炭素質材料を何ら有していない、好ましくは、前記プロセスチャージと直接接触している炭素質材料を何ら有していない、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項13】
前記炉床は、天然のグラファイト材料を何ら有していない、好ましくは、前記プロセスチャージに直接接触している天然グラファイト材料を何ら有していない、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項14】
前記複数の金属鉄ノジュールの各々は、約200ppm未満、好ましくは、約190ppm未満、好ましくは、約180ppm未満、好ましくは、約170ppm未満、好ましくは、約160ppm未満、好ましくは、約150ppm未満、好ましくは、約140ppm未満、好ましくは、約130ppm未満、好ましくは、約120ppm未満、好ましくは、約110ppm未満、好ましくは、約100ppm未満、好ましくは、約90ppm未満、好ましくは、約80ppm未満、好ましくは、約70ppm未満、好ましくは、約60ppm未満、好ましくは、約50ppm未満、好ましくは、約40ppm未満、好ましくは、約30ppm未満、好ましくは、約20ppm未満、およびより好ましくは、約10ppm未満の量で硫黄不純物レベルを有する、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項15】
前記複数の金属鉄ノジュールは銑鉄グレードのナゲットを含む、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項16】
前記炉床は、銑鉄グレードのナゲットを生成するための移動式炉床炉内で二度以上使用されることが可能である、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項17】
前記炉床の前記合成グラファイト材料は、銑鉄グレードのナゲットを生成するための前記移動式炉床炉内で前記炉床が二度以上のサイクルに使用される場合に補充する必要がない、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【請求項18】
前記銑鉄フェーズが、タンブリングおよび/または磁気分離のうちの一つ以上によって、前記スラグフェーズから分離することをさらに含む、上記の請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記鉄ナゲットを、出荷のためにレールカー、トラック、艀および/または船に載せることをさらに含む、上記の請求項のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
前記炉床は、処理中に、前記鉄およびスラグを溶融状態で前記炉床内に留めるための隆起縁部を備え、該隆起縁部は、好ましくは、合成グラファイト材料から成る、上記の請求項のいずれかに記載の炉床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本発明は、その内容全体を参照によって本願明細書に引用したものとする、2021年3月23日に出願された“Process and System for the Production of Iron Nuggets”というタイトルの米国仮特許出願第63/164,924号に対して優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
この発明は、銑鉄グレードのナゲットの製造に関する。より具体的には、本発明は、合成グラファイトをプロセスチャージに直接接触させた炉床を供給することによる、移動式炉床炉での銑鉄グレードのナゲットの製造に注力する。
【背景技術】
【0003】
現在、銑鉄の製造に最も一般的に用いられるプロセスは、溶鉱炉で実行される。該方法での銑鉄の製造が、望ましくないガス、具体的には二酸化炭素の大気中への排出の主な原因であることは良く認識されている。そのため、鉄鋼業界は、全世界的に、溶鉱炉の利用を減らす方向に変わってきている。その努力にもかかわらず、実際には、商業用銑鉄は、依然として溶鉱炉で製造されている。商業用銑鉄は、インゴットに鋳造された、粒状の、または、製造されて、市場で、鋳造工場や電気炉鉄鋼メーカー等の第三者のユーザに、およびその要件を満たす十分な銑鉄を製造できない総合製鋼企業に、鉄の原料として販売されるナゲットの形態で製造された冷銑として定義される。溶鉱炉で製造された商業用銑鉄とは対照的に、銑鉄グレードのナゲットは、エネルギー消費量が30%以上少なく、かつ二酸化炭素の排出を低減する移動式炉床炉で製造することができる。
【0004】
移動式炉床炉において、炉床は、還元剤と、フラックスと、酸化物を含有する鉄、例えば、鉄鉱石および/または溶鉱炉または製鋼企業からの廃棄酸化物を含有する鉄とから成る混合物を搬送する還元炉内に移動される。現在、基本的には、すべての商業用銑鉄は、溶鉱炉または高炉で製造され、およびあるとしても少しだけ炉床炉、すなわち、リニア(トンネル)または回転炉床炉で製造される。これは、移動式炉床炉でそうすることの複雑さおよびコストの結果であると思われる。
【0005】
米国特許第7,695,544号明細書は、移動式炉床炉での銑鉄グレードのナゲット製造に対する最新式に関する考察を含む。それに開示されているように、耐火材料から形成された、または、耐火材料をその表面に適用した銑鉄は、還元剤と、フラックスと、酸化物を含有する鉄(例えば、鉄鉱石)とから成る混合物を含むプロセスチャージを担持し、および還元炉および溶解炉内へ移動されおよび該炉から移動される。炉内では、プロセスチャージは、乾燥、予熱、還元、溶解および合体の段階を経て、プロセスチャージを銑鉄グレードのナゲットまたはノジュールおよびスラグに変換する。米国特許第7,695,544号明細書に含まれている開示は、その全体を参照することによって本願明細書に含まれるものとする。
【0006】
従来技術において、移動式炉床炉のプロセスチャージは、炉内で生成された還元および溶解環境へのおよび該環境からの炉床ベッド上に担持されたペレット、ブリケット等の形態である可能性がある。米国特許第7,695,544号明細書で考察されているように、一般に認められている従来の方法は、炭素質材料(例えば、炉床層)から成る層を炉床に供給して、プロセスチャージを炉床表面から分離することである。
【0007】
米国特許第7,695,544号明細書は、該炉床層が、炉床ベッドからのプロセスチャージおよび溶融鉄およびスラグの分離を実行して、ナゲット/ノジュールおよびスラグが炉床面に係合することを防ぐことを教示している。この分離は、溶融鉄およびスラグが炉床と反応して、凝固したナゲットおよび/またはスラグを炉床に付着させる境界をそれらの間に形成することを防ぐ。このような付着は、炉プロセスの終了時の炉床からの金属ナゲット/スラグフォームの除去に干渉する。このような出来事の欠点は、(i)後の還元処理の間に、付着が、金属鉄ナゲットおよびスラグを炉床から分離することに干渉して、それを個別の金属鉄ナゲットの形態にし、該フォームは、後に鋳鉄工場および製鋼プロセスで使用可能であること、および(ii)炉床が、それを追加的な還元サイクルで再使用できない程度まで損傷される可能性があることである。そのため、製造物の一部が失われるだけではなく、炉床を交換しなければならず、いずれも銑鉄グレードのナゲットの製造に関するコストの増加の一因になる。
【0008】
また、米国特許第7,695,544号明細書で教示されているような炭素質材料は、プロセスに関する根本的なコストを増加させ、および二酸化炭素および他の望ましくないガスの生成に利用可能な追加的な炭素源も提供する石炭、炭化物および/またはコークスであることにも留意すべきである。炭素質材料は、硫黄のソースでもあり、その存在は、製鋼プロセスにおいては避けるべきである。硫黄は、製造された銑鉄グレードの鉄ナゲットに吸収される、このことは、鋳鉄工場および製鋼プロセスで用いる銑鉄の価値を下げる。
【0009】
炭素質材料の炉床層の利用は、個々の鉄ナゲット/ノジュールが確実に製造される方法で、プロセス材料が炉床層に搬送されることを確実にするために特別な注意が必要であるという点で該プロセスの複雑さおよびコストを増加させる。さらに、炉内プロセスの完了時に、金属鉄ナゲットおよびスラグを炭素質材料の炉床層から分離して、銑鉄グレードの鉄ナゲットおよびスラグを個々のクリーンナゲットとして、およびクリーンスラグを道路建設または他の用途に使用できる材料として得ることが必要である。
【0010】
したがって、当業界においては、移動式炉床炉を用いて製造される銑鉄グレードのナゲット中の硫黄汚染物を低減すること、および還元プロセス中の有害な状況および排出を低減する必要性がある。また、当業界において、炉床炉の操業を単純化し、炉床炉における酸化鉄還元に関する複雑さおよびコストを削減するという必要性もある。さらに、当業界においては、移動式炉床炉を用いて銑鉄グレードのナゲットを製造する必要性があり、それにより、凝固した銑鉄グレードの鉄ナゲットおよび/またはスラグが炉床に付着せず、その結果、金属鉄ナゲットおよびスラグを炉床から容易に分離することができ、および該分離中の炉床への何らかの損傷が低減されまたはなくなって、追加的な還元サイクルにおける炉床の再使用が可能になる。
【発明の概要】
【0011】
本発明者等は、合成グラファイトをプロセスチャージに直接接触させた炉床が、合成グラファイトが、それと溶融した銑鉄グレードの鉄ナゲットまたはスラグとの間の相互作用を引き起こす可能性がある、その物理的特性または化学的特性における何らかの変化を生じることなく、移動式炉床における還元プロセスに関係するものとして、高温に曝されることが可能な固有の特性を有し、そのことがナゲットおよびスラグが炉床面に付着するのを防ぐという驚くべき発見をした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
いくつかの態様において、炉床は、基板材料と、プロセスチャージが炉床に直接接触している領域近くの、合成グラファイトから成る少なくとも一つの層とを備えている。いくつかの態様において、炉床の基板材料は、合成グラファイト層に少なくとも部分的に覆われている。いくつかの態様において、炉床は、モノリシックの合成グラファイト材料から成る。
【0013】
いくつかの態様において、プロセスチャージに直接接触している炉床層は、合成グラファイトから成り、および従来の炭素質材料を実質的に有していない。したがって、炭素質材料から成る炉床層は、プロセス全体への悪影響のため排除されている。
【0014】
いくつかの他の態様において、プロセスチャージに直接接触している炉床層は、実質的に天然グラファイトを有していない。
【0015】
このようにして、鉄ナゲット中に硫黄がほとんどないかまたはない、および付着スラグを伴う、汚染されていない銑鉄グレードの鉄ナゲットが、必要な後処理に対して、追加的な注意を要することなく、炉内プロセス準備の終了時に提供される。鉄ナゲットおよびスラグは、水冷却(必要に応じて)と、銑鉄をスラグから分離すること(タンブリング)と、銑鉄フェーズをスラグフェーズから分離すること(磁気分離)を含む冷却の最終工程の準備ができている炉床から容易に除去される。
【発明の効果】
【0016】
炉床炉における還元プロセスに関する利点、より良く表現すると進歩は、プロセス中に、酸化物を含有する鉄と、還元剤と、フラックスのみがあるということである。還元に必要な正確な化学量論量の炭素がプロセスで使用され、および生成される排出を増加させるように存在する炭素の追加的なソースは何らないことになる。このことは、生成されて大気中に放出される二酸化炭素の量に関する制御の方法を提供する。さらに、炉内プロセスの終了時に処理しなければならない炭素質材料の残留物はない。
【0017】
上記の概要は、各例示されている実施形態または本特許の対象のすべての実施を記載するように意図されていない。以下の図面および詳細な説明は、さまざまな実施形態をより具体的に例示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の特定の実施形態による炉床の表面に直接載っているペレットの形態のプロセスチャージが載っている炉床の平面図である。
図2図2は、本発明の特定の実施形態による、線1-1に沿った図1の炉床の図の断面図である。
図3図3は、本発明の特定の実施形態による、合成グラファイトから成る層をプロセスチャージに直接接触させた炉床の実施形態を示す図2の炉床の断面領域Aの拡大図である。
図4図4は、本発明の特定の実施形態による、プロセスチャージに直接接触しているモノリシックの合成グラファイト材料である炉床の実施形態を示す、図2の炉床の断面領域Aの拡大図である。
図5図5は、本発明の特定の実施形態による、隆起した縁部を有し、および炉床の表面に直接載っているペレットの形態でプロセスチャージが一杯搭載されている炉床の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
さまざまな実施形態が、種々の変更形態や代替形態に適しているが、それらの詳細を例として図面に示しており、および詳細に説明する。しかし、本発明は、クレームされている発明を、記載されている特定の実施形態に限定するものではないことを理解すべきである。それどころか、本発明は、クレームで定義されている発明の対象の趣旨および範囲に入るすべての変更例、等価物および代替例をカバーする。
【実施例1】
【0020】
(図面の詳細な説明)
本開示の典型的な実施形態は、合成グラファイトをプロセスチャージに直接接触させた炉床を提供し、これは、ナゲットおよびスラグが炉床面に付着するのを防ぐ。
【0021】
本願明細書において称している「合成グラファイト」という用語は、炭化水素材料の高温処理または化学蒸着によって人工的に結晶化された、および約12g/molの分子量と、2.190~2.260g/cm3の比重と、3652℃~3697℃(6606~6687°F)の融点とを有する固体グラファイトカーボン材料を意味する。いくつかの好適な態様において、本発明の目的を達成することが可能な合成グラファイトは、オハイオ州のChagrin FallsのGraphite Sales社から入手可能であり、2.0未満の灰分含有率と、98%以上の炭素含有率と、0.02未満の硫黄含有率とを有している。本願明細書において称している「天然グラファイト」という用語は、採掘されて、高温および高圧の長期の作用下での、炭素を多く含む有機材料の変質によって自然に結晶化されている固体グラファイトカーボン材料を意味する。
【0022】
本願明細書において称している「炭素質材料」という用語は、石炭、炭化物および/またはコークス等の炭素質還元剤としての使用に適している炭素含有材料を意味する。当業者は、本願明細書において用いる炭素質材料が、天然または合成のグラファイトを含まず、およびグラファイト結晶構造を別様に有していないことは正しく認識するであろう。
【0023】
炉床の合成グラファイトは、基板材料を覆っている合成グラファイトから成る少なくとも一つの層を備える。いくつかの態様において、合成グラファイトから成る少なくとも一つの層は、該基板に界接している。いくつかの他の態様においては、合成グラファイトから成る少なくとも一つの層は、該基板を少なくとも部分的に覆っている。また、炉床は、モノリシックの合成グラファイト材料から成るように合成グラファイトで形成することもできる。炉床の合成グラファイトは、プロセスチャージが炉内で曝される、1490℃(2714°F)の還元剤温度を優に上回る少なくとも3652℃(6606°F)の融点でプロセスチャージに直接接触している。この特性は、炉内プロセス中に、炉床、より具体的にはその表面が、溶融した鉄およびスラグを炉床に付着させる可能性がある何らかの化学的変化または物理的変化を伴うことなく、その元の状態のままであることを意味する。
【0024】
次に、図面を大まかに参照すると、図1および図2は、高温合成グラファイトから構成された炉床10を示す。ペレット12の形態のプロセスチャージが、炉床10の表面14に直接載っている。
【0025】
図2の代表的な部分「A」の拡大である図3に示すように、プロセスチャージに直接接触している合成グラファイトは、基板16に操作可能に取付けられた合成グラファイト15から成る少なくとも一つの層とすることができる。いくつかの態様において、合成グラファイト15から成る少なくとも一つの層は、基板16に界接している。いくつかの他の態様においては、基板16は、合成グラファイト15から成る少なくとも一つの層によって少なくとも部分的に覆うことができる。合成グラファイトから成る各層は、約0.5mm~約100cm、いくつかの態様においては、約1mm~約10cm、いくつかの他の態様においては、約2mm~約5cm、およびいくつかの他の態様においては、約2.5mm~約2.5cmとすることができる。いくつかの態様において、合成グラファイトは、二つ以上の層として設けることができる。
【0026】
図2の代表的な部分「A」の拡大である図4に示すように、炉床は、プロセスチャージが合成グラファイトに直接接触するように、モノリシックの合成グラファイト材料17で構成することができる。いくつかの態様において、モノリシックの合成グラファイト材料17は、約1インチ~約12インチ、いくつかの態様においては、約1.5インチ~約10インチ、およびいくつかの他の態様においては、約2インチ~約6インチの厚さを有する。
【0027】
ペレットは、炉床上に搬送されて、炉内に運ばれて、そこで従来の予熱、還元、溶融、合体を経て、最後に、付着スラグを伴う銑鉄グレードの鉄ナゲットとして炉から出てくる。
【0028】
合体後、その結果として生じるナゲットは、冷却できるようになっており、必要に応じて、水冷却を経ることができ、その結果、後処理を低温で続行することができる。後処理は、スイーピングと、炉床から鉄ナゲットを磁気リフティングすることと、ナゲットを付着スラグとともに水槽に移動させた後、タンブラーに入れてスラグを銑鉄から分離することとの組合せから成る。一旦、分離されると、鉄ナゲットとスラグは、磁気セパレータによって、二つの生成物、すなわち、銑鉄生成物とスラグ生成物とに分けられる。そして、鉄ナゲットは、レールカー、トラック、艀、船に載せられるか、または、最終的な用途または販売のための在庫とされ、またスラグは、道路建設または他の目的のための販売により、または従来の方法で処理される。
【0029】
上述したプロセスの間には、鉄とスラグが溶融状態になっている時間がある。溶融状態の間、プロセス材料が炉床内に留まっていることを確実にするために、特定の実施形態に従って、炉床に隆起縁部14が設けられている。隆起縁部は、別様に起きる可能性のある、炉床からの何らかのオーバーフローを防ぐ。
【0030】
(図示されてはいないが、米国特許第7,695,544号明細書には開示されている)リニアまたはトンネル炉床炉が好適な炉である。従来のウォーキングビーム(図示せず)を、炉内で炉床を移動させるのに用いてもよい。代替例として、炉床は、レールまたはホイール上へ押すことによって移動させることができ、該レールまたはホイールも同様に炉床をそれの前方へ押す。より具体的には、炉内を移動する際の炉床は、炉内で適切な平坦な支持体上で位置合わせされる。追加的な炉床が押し込まれて位置合わせされる際、それは炉床をそれの前方に押して、炉内のすべての炉床が、炉床一個分の長さだけ移動される。このようにして、炉床は、炉内で漸進的に移動される。炉床は、合成グラファイト層が該ベースの表面を被覆し、および該ベース表面がプロセスチャージから分離され、および還元中に、溶融段階および合体段階が溶融中および合体中の鉄およびスラグから分離されている状態の適当な耐熱性材料で形成されたベースを代替的に含むことができる。
【0031】
炭素質の炉床層の必要性をなくすことにより、本発明は、改良された炉床炉銑鉄プロセスを提供した。すなわち、本発明の炉床は、
1.炭素質の炉床層材料をなくし、およびそれに起因する追加的なコスト要因をなくす。
2.個々のナゲットの製造を確実にする方法でプロセスチャージを支持するために炭素質の炉床層を構成するという時間のかかるステップをなくす。
3.生成される銑鉄中に不純物、例えば硫黄を生成するであろう、およびその存在が、鋳鉄工場および製鋼プロセスにおいて問題である、上記で確認した炭素質材料に含まれている望ましくない要素の導入をなくす。
4.プロセスチャージ中のみに含まれているもの以外の炭素のソースがないため、還元に必要な化学量論量が用いられて、生成される可能性のある二酸化炭素の排出量に関する制御の方法が、還元プロセスの過程で実現されることを実行できる。
5.炉内プロセスの完了時に、生成された銑鉄グレードの鉄ナゲットを炭素質の炉床層から分離して、必要な後処理のために、炉からの生成物を使えるようにする、すなわち、鉄ナゲットをスラグから物理的に分離して、個々の生成物またはフェーズにする必要性をなくす。
6.炉内プロセスで消費された炉床層を形成する炭素質材料を補充する必要はない。
7.限定された数を超えるサイクルに炉床を使用できることを確実にする。
【0032】
環境的に有益であることに一致する好適な還元剤は、適切なバイオマスである。
【0033】
いくつかの態様において、結果として生じるナゲットは、約200ppm未満、好ましくは、約190ppm未満、好ましくは、約180ppm未満、好ましくは、約170ppm未満、好ましくは、約160ppm未満、好ましくは、約150ppm未満、好ましくは、約140ppm未満、好ましくは、約130ppm未満、好ましくは、約120ppm未満、好ましくは、約110ppm未満、好ましくは、約100ppm未満、好ましくは、約90ppm未満、好ましくは、約80ppm未満、好ましくは、約70ppm未満、好ましくは、約60ppm未満、好ましくは、約50ppm未満、好ましくは、約40ppm未満、好ましくは、約30ppm未満、好ましくは、約20ppm未満、より好ましくは、約10ppm未満の量で硫黄不純物を含む。
【0034】
本発明の環境に配慮する態様に関して、炭素質の炉床層をなくすことは、さらに環境的配慮を強化したおよびコスト効率の良い銑鉄グレードの鉄ナゲットの製造プロセスのためのこの出願の本発明のテクノロジーと組合される保護炭素質層に加えて、米国特許第7,632,330号明細書および同第8,906,131号明細書に開示されているテクノロジーを可能にする。したがって、米国特許第7,632,330号明細書および同第8,906,131号明細書に包含されている開示は、参照によって、あたかもこの仮出願の一部として、その全体が本願明細書に記載されているかのように本願明細書に組み込まれるものとする。
【0035】
最終的な分析において、この発明は、溶鉱炉または高炉以外で、およびはるかに環境的に健全な方法で、商業用の銑鉄グレードの鉄を製造することができる改良されたおよびコスト効率の良いプロセスを利用可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】