(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】バリア層を有する生分解性電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 6/40 20060101AFI20240313BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240313BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20240313BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240313BHJP
H01M 50/126 20210101ALI20240313BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240313BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240313BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240313BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240313BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240313BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M6/40
H01M50/121
H01M50/124
H01M50/119
H01M50/126
H01M50/133
H01M10/04 Z
H01M50/131
H01M4/02 Z
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558628
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 US2022022475
(87)【国際公開番号】W WO2022212454
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(71)【出願人】
【識別番号】506175792
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】マクガイア グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】チョプラ ナヴィーン
(72)【発明者】
【氏名】フー ナン-シン
(72)【発明者】
【氏名】ラフォルグ アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】シャプロー ナタリー
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H025
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011CC01
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK00
5H011KK01
5H017EE07
5H017EE08
5H017HH03
5H025BB10
5H025CC02
5H025CC40
5H028AA07
5H028BB01
5H028EE01
5H028EE06
5H028FF08
5H028HH00
5H028HH05
5H050AA17
5H050BA20
5H050CA01
5H050CA02
5H050CB02
5H050CB11
5H050DA09
5H050EA23
5H050HA04
(57)【要約】
電気化学デバイスが開示され、この電気化学デバイスは、アノードとカソードとの間に配置された電解質組成物、および生分解性材料を含むことができる水蒸気バリアを含むことができ、水蒸気バリアは、電気化学デバイスから水蒸気が抜け出るのを防止するために配置されている。水蒸気バリアは、ポリ乳酸または金属化コーティングをさらに含むことができる。水蒸気バリアは、さらに多層をさらに含むことができ、24時間にわたり、2質量%以下の水蒸気透過度(WVTR)を有する。水蒸気バリアの実施形態はまた、ポリマー性生分解性材料または生分解性材料上に配置された金属化コーティングを含んでもよい。水蒸気バリアはまた多層を含むことができ、24時間にわたり1cm2当たり1mg以下の水蒸気透過度(WVTR)を有することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、
カソード、
アノードとカソードとの間に配置された電解質組成物および
生分解性材料を含む水蒸気バリアを含む電気化学デバイスであって、生分解性材料を含む水蒸気バリアが、電気化学デバイスから抜け出る蒸気を減少させるために配置されている、電気化学デバイス。
【請求項2】
水蒸気バリアがポリ乳酸(PLA)をさらに含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
水蒸気バリアが金属化コーティングをさらに含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
金属化コーティングがアルミニウムを含む、請求項3に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
水蒸気バリアが多層をさらに含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
水蒸気バリアが水分不透過層をさらに含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
水分不透過層が金属を含む、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
金属層が、厚さ約1μm~約150μmを有する、請求項7に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
アノードが水蒸気バリア上に直接印刷される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
カソードが水蒸気バリア上に直接印刷される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
ポリマーを含む生分解性材料、および
生分解性材料上に配置された金属層コーティング
を含む、水蒸気バリア。
【請求項12】
ポリマーがポリ乳酸(PLA)を含む、請求項11に記載の水蒸気バリア。
【請求項13】
金属層がアルミニウムを含む、請求項11に記載の水蒸気バリア。
【請求項14】
多層をさらに含む、請求項11に記載の水蒸気バリア。
【請求項15】
金属層が厚さ約1μm~約150μmを有する、請求項11に記載の水蒸気バリア。
【請求項16】
アノード、
カソード、および
アノードとカソードとの間に配置された電解質組成物、ならびに
アノード、カソード、および電解質組成物を封入する、生分解性材料を含む水蒸気バリアをさらに含み、
アノード、カソード、および電解質組成物が水蒸気バリアにより封入されている、請求項11に記載の水蒸気バリア。
【請求項17】
アノード、
カソード、
アノードとカソードとの間に配置された電解質組成物、および
生分解性材料を含む水蒸気バリアを含む電気化学デバイスであって、
生分解性材料を含む水蒸気バリアが電気化学デバイスから水蒸気が抜け出るのを防止するために配置され、
生分解性材料を含む水蒸気バリアがポリ乳酸(PLA)層および金属層をさらに含み、
電気化学デバイスが、24時間にわたり、1cm
2当たり1mg以下の水蒸気透過度(WVTR)を有する、電気化学デバイス。
【請求項18】
水蒸気バリアが多層をさらに含む、請求項17に記載の電気化学デバイス。
【請求項19】
金属層が厚さ約0.1μm~約10μmを有する、請求項17に記載の電気化学デバイス。
【請求項20】
金属層が厚さ約20μm~約150μmを有する、請求項17に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明により開示される実施形態または実装形態は、生分解性電気化学デバイス、その固体水性電解質、およびそのための防湿バリアを対象とする。
【背景技術】
【0002】
世界中で生産されている電池の数は、携帯用および遠隔電源に対する必要性が増えた結果として連続的に増加している。特に、いくつかの新規技術は、埋込型電子機器に電力を供給する電池を必要とする。例えば、埋込型電子機器、例えば、携帯用および着用式電子機器、インターネットオブシングス(IoT)デバイス、患者医療モニタリング、構造モニタリング、環境モニタリング、スマートパッケージングなどは、電力供給を電池に依存している。従来型電池は部分的にリサイクルすることはできるが、現在市販されている電池で環境に優しいまたは生分解性のものはない。よって、従来型電池の製造および使用の増加は、電池が適切に破棄またはリサイクルされなかった場合、環境に有毒および有害な廃棄物を相応に増加させる結果となる。前述を考慮して、特に廃棄される前に限られた時間の間使い捨て電池を利用する用途に対して、生分解性電池を開発する必要性がある。
【0003】
さらに、柔軟性のある、低コスト、中程度または低い性能の電池に対する需要を満たすため、単回使用の使い捨て電池として市販される全印刷電池が開発されてきた。しかし、これらの全印刷電池のいずれも生分解性ではない。
【0004】
生分解性電池の生産においてもっとも大きな難題の1つは、生分解性ポリマー電解質の開発であることが一般的に認められており、この生分解性ポリマー電解質は、全印刷電池の主要なポリマーベースの構成成分である。加えて、さらなる難題は、既存の印刷技術を使用して印刷することもできるこのような生分解性ポリマー電解質の開発である。
【0005】
従来の生分解性ポリマー電解質は、多くの場合生分解性ポリマーと伝導性塩との組合せを含む。生分解性ポリマー電解質を得るためには、生分解性ポリマーおよび伝導性塩を溶媒中で溶解し、次いで溶媒を続いて比較的遅い速度で蒸発させて、固体ポリマー電解質フィルムを生成する。これら従来の生分解性ポリマー電解質は多くの場合、生分解性ポリマー中でのイオンの移動性が低いため、周辺温度でイオン伝導率が低い(例えば、RTで約10-5S/cm未満)という問題がある。しかし、十分な伝導率は、ポリマー電解質がポリマー鎖移動性を可能にするのに十分な温度(すなわち、動作温度)に加熱され、これによって、イオンがポリマー電解質構造を介してより自由に移動することが可能になった場合達成することができる。十分な伝導率はまた、ポリマー電解質の結晶化度を抑制する添加物を組み込むことによって達成することができるが、これによってその動作温度が低減する。よって、室温で十分な伝導率で作動し得る、生分解性ポリマー電解質は限定される。
【0006】
前述の弱点に加えて、従来の生分解性ポリマー電解質はまた、製造中、溶媒を蒸発させるために必要とされる時間により、製造プロセスが非常に長いという問題もある。例えば、真空および/または温度により補助される蒸発は、多くの場合、従来の生分解性ポリマー電解質を調製するための溶媒を蒸発させるのに数時間が必要とされ、よって、従来の生分解性ポリマー電解質と、連続する層とが数分単位で互いに重なり合って印刷されなければならないハイスループットな印刷プロセスとの適合性には限界がある。
【0007】
印刷可能な、生分解性電気化学デバイス、その固体水性電解質、およびそれを合成および製作するための方法が利用可能であるが、集電体、カソード/アノード材料、結合剤、接着剤、および電解質を含む様々な材料の層は、高い忠実性および精度で印刷する必要がある。さらに、水性電解質内の水分または含水量の保持は、良好なイオン伝導率のための可溶化塩の維持を介した電池性能に対して重大であり、これらのような生分解性印刷電池(printed biodegradable battery)は、生分解性基材、例えば、ポリ乳酸(PLA)フィルムを通過する蒸発を介した水分損失により寿命が短くなるという問題を抱えている。WVTR(水蒸気透過度)を減少させることにより、これらの電池、特に電解質層の保水率(moisture retention rate)を改善する必要がある。同時に、生分解性印刷電池の非生分解性物質含有量を維持または減少させながら、電気化学デバイスを取り囲むためのこの密閉特性を達成するという難題が依然として存在し、これは現在のところ、印刷電池を密閉するための、従来の比較的厚い、非生分解性ホイル「パウチ」、例えば、Li-イオン電池に見出されるようなものを使用しても可能ではない。
【発明の概要】
【0008】
以下は、本発明の教示の1つまたは複数の実施形態の一部の態様の基本的理解をもたらすために、簡略化された概要を提示している。この概要は、大規模な概説でもなく、本発明の教示の主要なまたは重大な要素を特定することを意図するものでもなく、本開示の範囲を線引きするものでもない。むしろ、その主要な目的は、後で提示される詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の概念を簡略化された形態で単に提示することである。
【0009】
電気化学デバイスが開示されている。電気化学デバイスはまたアノードおよびカソードを含む。デバイスはまた、アノードとカソードとの間に配置される電解質組成物、および生分解性材料を含むことができる水蒸気バリアを含み、この水蒸気バリアは電気化学デバイスから水蒸気が抜け出るのを防ぐために配置される。水蒸気バリアはポリ乳酸をさらに含むことができる。水蒸気バリアは金属化またはアルミニウム金属化コーティングをさらに含むことができる。水蒸気バリアは、さらに多層をさらに含むことができる。電気化学デバイスは、24時間にわたり、2質量%以下の水蒸気透過度(WVTR)をさらに有することができる。
【0010】
水蒸気バリアの実施形態はまた、ポリマーを含む生分解性材料を含むことができる。水蒸気バリアはまた、生分解性材料上に配置された金属化コーティングを含むことができる。水蒸気バリアはポリマーを含むことができ、ポリマーは、ポリ乳酸、金属化またはアルミニウム金属化コーティングをさらに含むことができる。水蒸気バリアはまた多層を含むことができ、24時間にわたり、1cm2当たり1mg以下の水蒸気透過度(WVTR)を有することができる。
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図は、本発明の教示の実施形態を例示する。本開示の実施形態におけるこれらおよび/または他の態様ならびに利点は、添付の図と併せて、様々な実施形態の以下の説明から明らかとなり、より容易に認識される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】1つまたは複数の開示された実施形態による、並列構成の例示的な生分解性電気化学デバイスの分解立体図を図示している。
【
図2】1つまたは複数の開示された実施形態による、積層型構成の別の例示的な生分解性電気化学デバイスの分解立体図を図示している。
【
図3】1つまたは複数の実施形態による、水蒸気バリアを有する生分解性電池アセンブリーに対して、完全に組み立てた代用物の比較例の断面図を図示している。
【
図4】1つまたは複数の実施形態による、水蒸気バリアを有する、実施例1の電気化学デバイスアセンブリーに対して、完全に組み立てた代用物の実施形態の断面図を図示している。
【
図5】1つまたは複数の実施形態による、水蒸気バリアを有する実施例2の電気化学デバイスアセンブリーに対して、完全に組み立てた代用物の実施形態の断面図を図示している。
【
図6】1つまたは複数の実施形態による、水蒸気バリアを有する実施例3の電気化学デバイスアセンブリーに対して、完全に組み立てた代用物の実施形態の断面図を図示している。
【
図7】本開示によるマルチラミネートエンクロージャー構造を有する電気化学デバイスアセンブリーに対して、代用物の実施例の断面図を図示している。
【
図8】
図3の比較例に対して、
図4、5、6、および7の実施例1~5とそれぞれ比較した、1平方センチメートル当たりの水分損失(単位:ミリグラム)対時間(単位:日)のプロットを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図の一部の詳細は簡略化され、厳密な構造的精度、詳細、およびスケールを維持するためというよりもむしろ本発明の教示の理解を促進するために描かれていることに注目されたい。
【0014】
様々な典型的な態様の以下の説明は単に例示的な性質であり、本開示、その用途、または使用を限定することを意図するものでは決してない。
【0015】
全体にわたり使用されている範囲は、範囲内にあるありとあらゆる値を記載するための略記として使用されている。範囲内のいずれの値も範囲の末端として選択することができる。加えて、本明細書で引用されたすべての参考文献は、これら全体において参照により本明細書に組み込まれている。本開示における定義と、引用された参考文献の定義とが矛盾する場合、本開示が優先される。
【0016】
特に明記されていない限り、本明細書でおよび明細書の他の箇所で表現されているすべてのパーセンテージおよび量は、質量によるパーセンテージを指すと考えられるべきである。付与された量は、材料の活性のある質量に基づく。
【0017】
さらに、すべての数値は、「約」または「およそ」として示される値であり、当業者により予想される実験誤差および変化形を考慮に入れている。本明細書で開示されているすべての数値および範囲は、「約」が同時に使用されているどうかに関わらず、近似する値および範囲であることを認識されたい。「約」という用語は、本明細書で使用される場合、数値と併せて、その数値の±0.01%(両端の値を含む)、±0.1%(両端の値を含む)、±0.5%(両端の値を含む)、±1%(両端の値を含む)であってよい、その数値±2%(両端の値を含む)、その数値±3%(両端の値を含む)、その数値±5%(両端の値を含む)、その数値±10%(両端の値を含む)、またはその数値±15%(両端の値を含む)であってよい値を指すこともまた認識されたい。数値的範囲が本明細書で開示されている場合、範囲内に入るいかなる数値もまた具体的に開示されていることをさらに認識されたい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、両端の値を含むオペレーターであり、文脈が他を明確に指示していない限り、「および/または」という用語と同等である。「基づく」という用語は排他的ではなく、文脈が他を明確に指示していない限り、記載されていないさらなる要素に基づくことを許容する。明細書では、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という列挙は、A、B、もしくはC、A、B、もしくはCの複数の例、またはA/B、A/C、B/C、A/B/B/B/B/C、A/B/Cの組合せなどを含有する実施形態を含む。加えて、明細書全体にわたり、「a」、「an」および「the」の意味は複数の言及を含む。「in」の意味は「in」および「on」を含む。
【0019】
ここで、本発明の教示の例示的な実施形態について詳細に言及することになり、その例は添付の図において図示されている。可能な限り、同じ、類似の、または同様の部分を指すのに同じ参照番号が図全体にわたり使用されている。
【0020】
生分解性電気化学デバイスが本明細書で開示されている。本明細書で使用される場合、「生分解性」または「生分解性材料」という用語は、妥当な時間内で、生命体、特にゴミ処理地内の微生物により分解されることが可能な、またはそのように設計された材料、構成成分、物質、デバイスなどを指すことができる。材料、構成成分、物質、デバイスなどは、水、天然に存在する気体、例えば、二酸化炭素およびメタン、バイオマス、またはこれらの組合せなどに分解することができる。本明細書で使用される場合、「生分解性電気化学デバイス」または「生分解性デバイス」という表現は、電気化学デバイスまたはデバイスをそれぞれ指すことができ、これらのうちの少なくとも1種以上のその構成成分が生分解性である。ある場合には、生分解性電気化学デバイスまたは生分解性デバイスの構成成分の大部分またはかなり多数が生分解性である。他の事例では、生分解性電気化学デバイスまたは生分解性デバイスのポリマー構成成分のすべてが生分解性である。例えば、電気化学デバイスのポリマーおよび/または他の有機ベース構成成分は生分解性である一方、金属および/または金属酸化物を含めた、本明細書で開示されている電気化学デバイスの無機材料は生分解性でなくてもよい。電気化学デバイスのすべてのポリマーおよび/または有機ベース構成成分が生分解性であれば、全部の電気化学デバイスが生分解性であると考えられることが一般的に認められることを認識されたい。本明細書で使用される場合、「堆肥化可能」という用語は堆肥にすることができる、またはさもなければ地球に優しいまたは環境に優しい方式で破棄することができる品目を指すことができる。堆肥化可能な材料とは、生分解性材料のサブセットカテゴリーと考えることができ、堆肥化可能な材料を破壊するためにさらなる特定の環境の温度または条件が必要とされ得る。堆肥化可能という用語は生分解性と同義ではないが、これらの用語は、生分解性材料を破壊するまたは分解するのに必要な条件が、堆肥化可能な材料を破壊するのに必要な条件と類似すると考えられる場合には交換可能なように使用することができる。本明細書で使用される場合、「電気化学デバイス」という用語または表現は、電気を化学反応に変換する、および/またはその逆を行うデバイスを指すことができる。例示的電気化学デバイスは、これらに限定されないが、電池、光増感太陽電池、電気化学的センサー、エレクトロクロミックガラス、燃料電池、電気分解装置などであってよい、またはこれらを含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「環境に優しい電気化学デバイス」または「環境に優しいデバイス」という用語または表現は、生態系または一般的環境に対して最小量の、より低い量の毒性を示す、またはいかなる毒性も示さない電気化学デバイスまたはデバイスをそれぞれ指すことができる。少なくとも1つの実施形態では、本明細書で開示されている電気化学デバイスおよび/またはその構成成分は環境に優しい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「フィルム」または「バリア層」という用語または表現は、様々な電気化学デバイスの構成成分またはパーツに使用することができる、薄い、部分的または実質的にプラスチックおよび/またはポリマー性の材料を指すことができ、これらに限定されないが、基材、結合部、エンクロージャー、バリア、またはこれらの組合せを含む。本明細書に記載されているようなフィルムは、これらのそれぞれの組成物の固有の物理的特性または寸法に応じて、剛性であっても、または柔軟性があってもよい。少なくとも1つの実施形態では、これらのフィルムまたはバリア層は、環境に優しいまたは生分解性であることができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「エンクロージャー」、「バリア」、または「水蒸気バリア」という用語または表現は、部分的に密閉して、完全に密閉して利用される、またはさもなければ、電気化学デバイスのバリアを介して水分、水または他の蒸発性材料が出入りするのを防止するために使用される材料を指すことができる。少なくとも1つの実施形態では、これらエンクロージャーは環境に優しいまたは生分解性であることができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「金属層」という用語または表現は、表面、フィルム、基材、またはバリア層上の金属の層を指すことができる。本明細書に記載されている金属層は、蒸気または化学堆積法の手段により表面上に堆積され得る金属化コーティング、ならびに表面、フィルム、基材、またはバリア層と合わせた、またはこれらに接着した金属ホイル、金属フィルム、もしくは他の金属層を含めた、金属層の例を含むことができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、本明細書で開示されている生分解性電気化学デバイスは、アノード、カソード(すなわち、集電体および/または活性層)、および1つまたは複数の電解質組成物(例えば、生分解性固体水性電解質組成物)を含むことができる。別の実施形態では、生分解性電気化学デバイスは、1つもしくは複数の基材、1つもしくは複数の密閉部、1つもしくは複数のパッケージ、1つもしくは複数のパウチ、1つもしくは複数のエンクロージャー、またはこれらの組合せをさらに含むことができる。
【0026】
本明細書で開示されている生分解性電気化学デバイスは柔軟性があり得る。本明細書で使用される場合、「柔軟性のある」という用語は、破損および/またはクラッキングを起こすことなく、既定の曲率半径周辺に曲げることが可能な材料、デバイス、またはその構成成分を指すことができる。本明細書で開示されている生分解性電気化学デバイスおよび/またはその構成成分は、破損またはクラッキングを起こすことなく、約30cm以下、約20cm以下、約10cm以下、約5cm以下の曲率半径の周辺に曲げることができる。
【0027】
図1は、1つまたは複数の実施形態による、並列または同一平面上の構成の例示的な生分解性電気化学デバイス100の分解立体図を図示している。
図1に図示されているように、生分解性電気化学デバイス100は、第1の基材102、第1の基材102に隣接してまたはその上に配置された第1の集電体104および第2の集電体106、第1の集電体104に隣接してまたはその上に配置されたアノード活性層108、第2の集電体106に隣接してまたはその上に配置されたカソード活性層110、アノード活性層108およびカソード活性層110に隣接してまたはその上に配置された電解質層112、ならびに電解質組成物112に隣接してまたはその上に配置された第2の基材114を含むことができる。第1の集電体104およびアノード活性層108は、生分解性電気化学デバイス100のアノード120と本明細書で総合的に称することができることを認識されたい。第2の集電体106およびカソード活性層110は、生分解性電気化学デバイス100のカソード122と本明細書で総合的に称することができることをさらに認識されたい。
図1に図示されているように、生分解性電気化学デバイス100のアノード120およびカソード122は、アノード120およびカソード122が同じXY平面に沿って配置されるよう同一平面上にあることができる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性電気化学デバイス100は、生分解性電気化学デバイス100の集電体104、106、アノード活性層108、カソード活性層110、および第1の基材102と第2の基材114との間の電解質組成物112を密閉するまたは気密的に密閉することが可能なまたは密閉するように設計された1つまたは複数の密閉部(116、118の2つが示されている)を含むことができる。例えば、
図1に図示されているように、生分解性電気デバイス100は、生分解性電気化学デバイス100を密閉するまたは気密的に密閉するために、第1の基材102と第2の基材114との間ならびに集電体104、106、アノード活性層108、カソード活性層110、および電解質組成物112の周囲に挿入された2つの密閉部116、118を含むことができる。別の実施形態では、生分解性電気化学デバイス100は、密閉部116、118を含まなくてもよいし、または実質的に含まなくてもよい。例えば、基材102、114は、生分解性電気化学デバイス100を密閉するために互いに溶融または結合されていてもよい。
【0029】
図2は、1つまたは複数の実施形態に従い、積層型構成の別の例示的な生分解性電気化学デバイス200の分解立体図を図示している。
図2に図示されているように、生分解性電気化学デバイス200は、第1の基材202、第1の基材102に隣接してまたはその上に配置された第1の集電体204、第1の集電体204に隣接してまたはその上に配置されたアノード活性層208、アノード108に隣接してまたはその上に配置された電解質層212、電解質組成物212に隣接してまたはその上に配置されたカソード活性層210、カソード活性層210に隣接してまたはその上に配置された第2の集電体206、および第2の集電体206に隣接してまたはその上に配置された第2の基材214を含むことができる。第1の集電体204およびアノード活性層208は、生分解性電気化学デバイス200のアノード220と本明細書で総合的に称することができることを認識されたい。第2の集電体206およびカソード活性層210は、生分解性電気化学デバイス200のカソード222と本明細書で総合的に称することができることをさらに認識されたい。
図2に図示されているように、生分解性電気化学デバイス200のアノード220およびカソード222は、アノード220およびカソード222が互いの上または下に配置されるように積層型構成または形状で配置することができる。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性電気化学デバイス200は、生分解性電気化学デバイス200の集電体204、206、アノード活性層208、カソード活性層210、および第1の基材202と第2の基材214との間の電解質組成物212を気密的に密閉することが可能なまたは気密的に密閉するように設計された1つまたは複数の密閉部(216、218の2つが示されている)を含むことができる。例えば、
図2に図示されているように、生分解性電気デバイス200は、生分解性電気化学デバイス200を気密的に密閉するために、第1の基材202と第2の基材214との間ならびに集電体204、206、アノード活性層208、カソード活性層210、および電解質組成物212の周囲に挿入された、2つの密閉部216、218を含むことができる。別の実施形態では、生分解性電気化学デバイス200は、密閉部216、218を含まなくてもよいし、または実質的に含まなくてもよい。例えば、基材202、214は、生分解性電気化学デバイス200を密閉するために互いに溶融または結合されていてもよい。
【0031】
図1および2に図示されているように、集電体104、106、204、206のそれぞれは、密閉部116、118、216、218の外側まで伸びて、結合性をもたらすことができるそれぞれのタブ124、126、224、226を含むことができる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、それぞれの生分解性電気化学デバイス100、200の基材102、114、202、214のうちのいずれか1つまたは複数は、これらに限定されないが、生分解性基材であってもよいし、またはこれを含んでもよい。例示的生分解性基材は、これらに限定されないが、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、絹フィブロイン、キトサン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、米紙、セルロースのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せもしくは複合体であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0033】
それぞれの生分解性電気化学デバイス100、200の生分解性基材は、約50℃~約150℃の温度で安定していることができる。本明細書で使用される場合、「安定した」または「安定性」という用語は、約50℃~約150℃の温度に曝露された場合、寸法の変化に対して抵抗し、構造的完全性を維持する基材の能力を指すことができる。例えば、生分解性基材は、約50℃~約150℃の温度に曝露された後、約20%未満、約15%未満、または約10%未満の寸法の変化で構造的完全性を維持することが可能であり、または維持するように設計することができる。1つの例では、生分解性基材のそれぞれは、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、または約110℃~約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃の温度で安定していることができる(例えば、寸法の変化は20%未満)。別の例では、生分解性基材のそれぞれは、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、または少なくとも145℃の温度で安定していることができる。少なくとも1つの実施形態では、生分解性基材は、約50℃~約150℃の温度で、約5分~約60分以上の期間安定していることができる。例えば、生分解性基材は、上述の温度で、約5分、約10分、約20分、または約30分~約40分、約45分、約50分、約60分以上の期間安定していることができる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性基材は、さらなる接着剤を使用することなく、溶接可能、結合可能、および/または永久的に熱的密閉可能である。例えば、基材102、114、202、214のそれぞれの生分解性基材は、それぞれの密閉部116、118、216、218を使用することなく、互いに溶接可能なおよび/または結合可能であることができる。互いに溶接可能および/または結合可能であることができる例示的生分解性基材は、これらに限定されないが、熱可塑性、例えば、ポリ乳酸(PLA)、結晶化度を増強する核剤で修飾したポリ乳酸、例えば、核剤Dで修飾したポリ乳酸(PLA-D)および核剤Eで修飾したポリ乳酸(PLA-E)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、PLAとポリヒドロキシブチレート(PHB)のブレンド、PHBベースのブレンドなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「結合可能」、「溶接可能」、および/または「永久的に熱的密閉可能」という用語または表現は、加熱または溶融を介して、2つの表面を互いに加熱密閉するまたは永久的に2つの表面を互いに連結する材料(例えば、基材)の能力を指すことができる。
【0035】
それぞれの生分解性電気化学デバイス100、200のアノード活性層108、208は、これらに限定されないが、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、炭素(C)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、マグネシウム合金、亜鉛合金などのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せおよび/もしくは合金であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的アノード活性層またはその材料は、これらに限定されないが、などまたはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、アノード活性層は、H2ガス発生を調節または制御するために、酸化亜鉛(ZnO)を十分な量で含むことができる。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれのアノード活性層108、208は、アノードペースト剤から調製または製作することができる。例えば、アノード活性層は、亜鉛アノードペースト剤から調製することができる。アノードペースト剤はアトライターミルで調製することができる。少なくとも1つの実施形態では、ステンレススチールショットはアトライターミルに配置されて、アノードペースト剤の調製を促進することができる。アノードペースト剤は、1種もしくは複数の金属もしくは金属合金、1種もしくは複数の有機溶媒、1種もしくは複数のスチレン-ブタジエンゴム結合剤、またはこれらの組合せを含むことができる。例示的な実施形態では、アノードペースト剤は、エチレングリコール、スチレン-ブタジエンゴム結合剤、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、Znダストのうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せを含むことができる。例示的有機溶媒は当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、エチレングリコール、アセトン、NMPなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、いずれか1種または複数の生分解性結合剤は、スチレン-ブタジエンゴム結合剤の代わりにまたはこれと組み合わせて利用することができる。
【0037】
生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれのカソード活性層110、210は、これらに限定されないが、鉄(Fe)、塩化鉄(VI)、酸化水銀(HgO)、酸化マンガン(IV)(MnO2)、炭素(C)、炭素含有カソード、金(Au)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、三酸化モリブデン(MoO3)、酸化銀(Ag2O)、銅(Cu)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化ニッケル(NiO)、ヨウ化銅(Cu2I2)、塩化銅(CuCl)などのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せおよび/もしくは合金であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的な実施形態では、カソード活性層110、210は酸化マンガン(IV)を含むことができる。炭素および/または炭素含有カソード活性層は、水性金属空気電池、例えば、亜鉛空気電池に利用することができる。
【0038】
少なくとも1つの実施形態では、カソード活性層110、210は、カソード活性層110、210の電子伝導率を少なくとも部分的に増強することが可能なまたはそのように設計された1種または複数の添加物を含むことができる。例示的添加物は、これらに限定されないが、炭素粒子、例えば、グラファイト、炭素ナノチューブ、カーボンブラックなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれのカソード活性層110、210は、カソードペースト剤から調製または製作することができる。例えば、カソード活性層110、210は、酸化マンガン(IV)カソードペースト剤から調製することができる。カソードペースト剤はアトライターミルで調製することができる。少なくとも1つの実施形態では、ステンレススチールショットは、アトライターミルに配置されて、カソードペースト剤の調製を促進することができる。カソードペースト剤は、1種もしくは複数の金属もしくは金属合金、1種もしくは複数の有機溶媒(例えば、エチレングリコール)、1種もしくは複数のスチレン-ブタジエンゴム結合剤、またはこれらの組合せを含むことができる。例示的な実施形態では、カソードペースト剤は、エチレングリコール、スチレン-ブタジエンゴム結合剤、酸化マンガン(IV)(MnO2)、グラファイトのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せを含むことができる。例示的有機溶媒は当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、エチレングリコール、アセトン、NMPなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、1種または複数の有機溶媒は、水性溶媒、例えば、水で置き換えてもよいし、またはこれと組み合わせて使用してもよい。例えば、水は酸化マンガン(IV)と組み合わせて利用することができる。
【0040】
アノードおよび/またはカソードペースト剤は、約100cP~約1E6cPの粘度を有していてもよい。例えば、アノードおよび/またはカソードペースト剤は、約100cP以上、約200cP以上、約500cP以上、約1,000cP以上、約1,500cP以上、約2,000cP以上、約10,000cP以上、約20,000cP以上、約50,000cP以上、約1E5cP以上、約1.5E5cP以上、約2E5cP以上、約3E5cP以上、約4E5cP以上、約5E5cP以上、約6E5cP以上、約7E5cP以上、約8E5cP以上、または約9E5cP以上の粘度を有していてもよい。別の例では、アノードおよび/またはカソードペースト剤は、約200cP以下、約500cP以下、約1,000cP以下、約1,500cP以下、約2,000cP以下、約10,000cP以下、約20,000cP以下、約50,000cP以下、約1E5cP以下、約1.5E5cP以下、約2E5cP以下、約3E5cP以下、約4E5cP以下、約5E5cP以下、約6E5cP以下、約7E5cP以下、約8E5cP以下、約9E5cP以下、または約1E6cP以下の粘度を有していてもよい。
【0041】
少なくとも1つの実施形態では、アノード120、220およびカソード122、222、またはその活性層108、110、208、210のそれぞれは独立して生分解性結合剤を含むことができる。生分解性結合剤の機能は、それぞれの層のそれぞれの粒子を一緒に固着させ、基材の表面下への接着をもたらすことであり、それぞれの層とはアノード集電体104、204、カソード集電体106、206、アノード活性層108、208、カソード活性層110、210、またはこれらの組合せである。例示的生分解性結合剤は、これらに限定されないが、キトサン、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、ゼラチン、キサンタンガム、酢酸酪酸セルロース(CAB)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)のうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物に関して本明細書で開示されている生分解性ポリマーのうちのいずれか1種または複数はまた、アノード120、220、カソード122、222、その構成成分、またはこれらの任意の組合せの生分解性結合剤として利用することもできる。さらに本明細書に記載されているように、1種または複数の生分解性ポリマーは架橋されていてもよい。よって、アノード120、220、カソード122、222、および/またはその構成成分に利用される生分解性結合剤は、電解質組成物に関して本明細書で開示されている架橋した生分解性結合剤を含むことができる。
【0042】
それぞれの生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれの電解質層112、212は、電解質組成物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。電解質組成物は生分解性ポリマー材料を利用することができる。電解質組成物は固体、水性電解質組成物であってよい。固体、水性電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲルならびにヒドロゲル中におよびに/またはヒドロゲル全体にわたり分散した塩であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。コポリマーは、ポリマー中心ブロック(CB)に結合している少なくとも2つのポリカプロラクトン(PCL)鎖を含むことができる。例えば、コポリマーは、ポリマーの中心ブロックにカップリングした少なくとも2つのPCL鎖を含むブロックコポリマーまたはグラフトコポリマー、例えば、PCL-CB-PCLであってよい。別の例では、コポリマーは、ポリマーの中心ブロックとカップリングした、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリエチレンイミン(PEI)のうちの少なくとも1種以上、またはこれらの組合せを含むブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーであってよい。
【0043】
コポリマーまたは固体は、ヒドロゲルの総質量に対して(例えば、溶媒、ポリマー、および塩の総質量)、ヒドロゲル中に約5質量%以上~90質量%以下の量で存在し得る。例えば、コポリマーは、ヒドロゲルの総質量に対して、約5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上の量で存在し得る。別の例では、コポリマーは、ヒドロゲルの総質量に対して、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、または60質量%以下の量で存在し得る。好ましい実施形態では、コポリマーまたは固体は、ヒドロゲルの総質量に対して、ヒドロゲル中に約5質量%~約60質量%、約5質量%~約50質量%、約20質量%~約40質量%、または約30質量%の量で存在し得る。また別の好ましい実施形態では、コポリマーまたは固体は、ヒドロゲルの総質量に対して、ヒドロゲル中に30質量%超~60質量%の量で存在し得る。
【0044】
コポリマーは、ヒドロゲル中に、気泡を含まない、または実質的に含まない連続的なフィルムまたは層を提供するのに十分な量で存在し得る。コポリマーはまた、ヒドロゲル中に約1,000cP~約100,000cPの粘度をもたらすのに十分な量で存在し得る。例えば、コポリマーは、ヒドロゲル中に約1,000cP、約5,000cP、約10,000cP、または約20,000cP~約30,000cP、約40,000cP、約50,000cP、約75,000cP、約90,000cP、または約100,000cPの粘度をもたらすのに十分な量で存在し得る。
【0045】
コポリマーのポリマー中心ブロックは生分解性ポリマーであってよく、これによって、固体、水性電解質組成物の生分解性が改善または増加する。ポリマー中心ブロックの生分解性ポリマーは好ましくは天然に存在するものである。ポリマーの中心ブロックは、ポリマー、例えば、ε-カプロラクトンとの反応に利用可能な少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む生分解性ポリマーであってもよいし、またはこれを含んでもよいし、またはこれから誘導されてもよい。さらに本明細書に記載されているように、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含むポリマーは、ε-カプロラクトンと反応させて、コポリマーを形成することができる。ポリマー中心ブロック(CB)を形成するために利用することができる少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基を含む例示的ポリマーは、これらに限定されないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシルを保持する多糖、生分解性ポリエステル、ヒドロキシ脂肪酸(例えば、ヒマシ油)などのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的ヒドロキシルを保持する多糖は、これらに限定されないが、デンプン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キチン、グアーガム、キサンタンガム、寒天、プルラン、アミロース、アルギン酸、デキストランなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的生分解性ポリエステルは、これらに限定されないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸、ポリイタコン酸、ポリブチレンスクシネートなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。好ましい実施形態では、ポリマー中心ブロックは、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシルを保持する多糖、生分解性ポリエステル、またはヒドロキシ脂肪酸のうちの1種もしくは複数であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、コポリマーのポリマー中心ブロックは生分解性ポリマーでなくてもよい。例えば、コポリマーのポリマー中心ブロックは、これらに限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシ末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリオレフィン、例えば、ヒドロキシ末端ポリブタジエンなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0047】
ポリマー中心ブロックに結合した少なくとも2つのポリカプロラクトン(PCL)鎖を含むコポリマーは、グラフトコポリマーまたはブロックコポリマーであってよい。コポリマーがグラフトコポリマーであるか、またはブロックコポリマーであるかは、ポリマー中心ブロックの少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基の数および/または配置により少なくとも部分的に決定され得る。例えば、ε-カプロラクトンを、ポリマー中心ブロック鎖の長さに沿ってモノマー上にヒドロキシル基を有するポリマー中心ブロックと反応させると、グラフトコポリマーが形成される。別の例では、ε-カプロラクトンを、ポリマー中心ブロックのそれぞれの末端にヒドロキシル基のそれぞれを有するポリマー中心ブロックと反応させると、ブロックコポリマーが形成される。例示的ブロックコポリマーは、トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、スターブロックコポリマー、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0048】
上で論じられた通り、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲルおよびヒドロゲル中に分散した塩を含む固体、水性電解質組成物であってよい。ヒドロゲルの塩は、当技術分野で公知の任意の適切なイオン性塩であってもよいし、またはこれを含んでもよい。例示的イオン性塩は、これらに限定されないが、有機ベースの塩、無機ベースの塩、室温のイオン性液体、深い共晶溶媒ベースの塩などのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せもしくは混合物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。好ましい実施形態では、塩は、亜鉛/酸化マンガン(IV)(Zn/MnO2)電気化学において使用可能な塩であり、またはそのような塩を含む。例示的塩は、これらに限定されないが、塩化亜鉛(ZnCl2)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、硫酸マンガン(MnSO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化第二鉄(FeCl3)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)など、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。好ましい実施形態では、電解質組成物の塩は、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化亜鉛(ZnCl2)、またはこれらの組合せもしくは混合物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。別の実施形態では、塩は、アルカリ金属塩、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化カリウム(KOH)、またはこれらの組合せもしくは混合物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0049】
塩は、イオン伝導率をもたらすのに可能な量で、イオン伝導率をもたらすように設計された量で、またはイオン伝導率をもたらすのに十分な量で存在し得る。例えば、塩は、ヒドロゲル中に、少なくとも0.1M、より好ましくは少なくとも0.5M、さらにより好ましくは少なくとも2M、さらにより好ましくは少なくとも4Mの量または濃度で存在し得る。塩は、ヒドロゲル中に、10M以下、より好ましくは6M以下の濃度で存在し得る。別の例では、塩は、ヒドロゲル中に、約3M~約10M、約4M~約10M、約5M~約9M、または約6M~約8Mの量で存在し得る。例示的な実施では、塩は塩化アンモニウムおよび塩化亜鉛を含んだ。この場合、塩化アンモニウムは約2.5M~約3M、約2.8M~約2.9M、または約2.89Mの量で存在し、塩化亜鉛は約0.5M~1.5M、約0.8M~約1.2M、または約0.9Mの量で存在する。
【0050】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、1種または複数の添加物を含むことができる。1種または複数の添加物は、これらに限定されないが、生分解性または環境に優しいナノ材料であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。生分解性ナノ材料は、電解質層またはその電解質組成物の柔軟性を犠牲にすることなく、電解質層またはその電解質組成物の構造的強度をもたらすおよび/または改善することが可能であってもよいし、またはそのように設計されていてもよい。添加物の例示的生分解性ナノ材料は、これらに限定されないが、多糖ベースのナノ材料、無機のナノ材料など、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的多糖ベースのナノ材料は、これらに限定されないが、セルロースナノ結晶、キチンナノ結晶、キトサンナノ結晶、デンプンナノ結晶などのうちの1種もしくは複数、またはその組合せもしくは混合物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的無機ナノ材料はこれらに限定されないが、酸化ケイ素(例えば、ヒュームドシリカ)、酸化アルミニウム、層状ケイ酸塩もしくは石灰のうちの1種もしくは複数、またはその組合せもしくは混合物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。例示的層状ケイ酸塩は、これらに限定されないが、ベントナイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、アタパルジャイト、イライト、ハロイサイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、ノントロナイト、バイデライト、サポナイト、ボルコンスコアイト、マガディアイト、メドモンタイト、ケニアイト、ソーコナイト、ムスコバイト、バーミキュライト、雲母、ヒドロ雲母、フェンジャイト、ブラマライト、セラドナイトのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せもしくは混合物であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0051】
1種または複数の添加物は、ヒドロゲルの総質量に対して、少なくとも0.1質量%の量で存在し得る。例えば、1種または複数の添加物は、ヒドロゲルの総質量に対して、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.5質量%、または少なくとも1質量%の量で存在し得る。1種または複数の添加物はまた、ヒドロゲルの総質量に対して、40質量%以下の量で存在し得る。例えば、1種または複数の添加物は、ヒドロゲルの総質量に対して、40質量%以下、20質量%以下、または10質量%以下の量で存在し得る。
【0052】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、水性溶媒を含むことができる。例えば、電解質組成物は水を含むことができる。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は共溶媒を含むことができる。例えば、電解質組成物は水およびさらなる溶媒を含むことができる。例示的共溶媒は、これらに限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。共溶媒は、電解質組成物の水性溶媒の総質量または容量で、約20%超、約30超、約40%超、約50%超~約60%超、約70%超、約80%超、約85%超、または約90%超の量の水を含むことができる。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲルおよびヒドロゲル中に分散した塩、溶媒(例えば、水または水および共溶媒)、1種もしくは複数の光開始剤、任意の1種もしくは複数の添加物、またはこれらの組合せを含む。例えば、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散した塩、溶媒、1種もしくは複数の添加物、またはこれらの組合せもしくは混合物を含む。少なくとも1つの実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散した塩、および溶媒(例えば、水または水および共溶媒)からなるまたはこれらから本質的になる。別の実施形態では、電解質組成物は、コポリマーのヒドロゲル、ヒドロゲル中に分散した塩、溶媒、および1種または複数の添加物からなるまたはこれらから本質的になる。水または水と共溶媒の組合せであってよい溶媒は、ヒドロゲルの平衡状態をもたらすことができる。適切な電解質組成物ならびにそれを生成するための方法および手順は、その開示がその全体において本明細書で参照により本明細書に組み込まれている、国際出願PCT/US2020/046932に開示されている。
【0054】
以前に論じた通り、生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれの電解質層112、212は、固体、水性電解質組成物であってもよいし、またはこれを含んでもよい。固体、水性電解質組成物は、市販の印刷電池または商業的に有用な印刷電池に対して必要とされる十分な機械的および電気化学的特性を有することができる。例えば、固体、水性電解質組成物は、約0.10メガパスカル(MPa)を超える、約0.15MPaを超える、または約0.20MPaを超えるヤング率または貯蔵弾性率を有することができ、よって応力下での破損を防止するための十分な柔軟性を維持しながら、十分な強度を有する固体、水性電解質組成物を提供する。固体、水性電解質組成物は、約100MPa以下、約80MPa以下、約60MPa以下、またはこれよりも低いヤング率を有することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「降伏強度」という用語または表現は、材料が永久的に変形し始める前に、材料が受けるまたは受け取ることができる最大応力を指すことができる。固体、水性電解質組成物は、約5kPa以上の降伏強度を有することができる。例えば、固体、水性電解質組成物は、約5kPa以上、約8kPa以上、約10kPa以上、約12kPa以上、約15kPa以上、または約20kPa以上の降伏強度を有することができる。
【0056】
固体、水性電解質組成物は、生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれのアノード活性層108、208とカソード活性層110、210の両方に対して電気化学的に安定していることができる。例えば、固体、水性電解質組成物は、長期間にわたり安定した無負荷電圧を維持することができ、これによって、生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれのアノード活性層108、208とカソード活性層110、210の両方に対して電気化学的安定性を実証する。少なくとも1つの実施形態では、固体、水性電解質組成物は、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも1年、またはそれよりも長い間、電極層と接触して電気化学的に安定していることができる。
【0057】
本明細書で開示されている固体、水性電解質組成物は、任意の電気化学デバイス、例えば、電気化学セル、電池、および/または本明細書で開示されている生分解性電気化学デバイス100、200において利用することができる。好ましい実施形態では、固体、水性電解質組成物は、Znアノード活性層およびMnO2カソード活性層を含む電池において利用することができる。
【0058】
生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれの集電体104、106、204、206は、電気を受け取る、伝導する、および送達することが可能であってもよいし、またはそのように設計されていてもよい。例示的集電体104、106、204、206は、これらに限定されないが、銀、例えば、銀マイクロ粒子および銀ナノ粒子、炭素、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素ナノ粒子、例えば、炭素ナノチューブ、グラフェン、還元型グラフェンオキシド(RGO)など、またはこれらの任意の組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0059】
方法
本開示の実施形態は、電気化学デバイス、例えば、本明細書で開示されている生分解性電気化学デバイス100、200を製作するための方法を提供することができる。本方法は生分解性基材を準備するステップを含むことができる。本方法はまた、生分解性基材に隣接してまたはその上に電極および/または電極組成物を堆積させるステップを含むことができる。電極を堆積させるステップは、電極の集電体を堆積および乾燥させるステップ、ならびに集電体に隣接してまたはその上に活性層(すなわち、アノードまたはカソード材料)を堆積および乾燥させるステップを含むことができる。本方法はまた、電極および/または電極組成物を乾燥させるステップを含むことができる。電極組成物は熱的に(例えば、加熱)乾燥させてもよい。本方法はまた、電極組成物の上にまたはこれに隣接して、生分解性の、放射線硬化性電解質組成物を堆積させるステップを含むことができる。本方法は生分解性の放射線硬化性電解質組成物を放射線硬化するステップをさらに含むことができる。生分解性放射線硬化性電解質組成物は、電極組成物の乾燥前または後で放射線により硬化することができる。生分解性基材は任意の熱的乾燥と熱的適合性があってもよい。例えば、生分解性基材は、熱的に乾燥した場合、寸法的に安定していることができる(例えば、湾曲および/またはカーリングがない)。本方法は、生分解性、放射線硬化性電解質組成物の上にまたはこれと隣接して第2の電極および/または電極組成物を堆積させるステップを含むことができる。少なくとも1つの実施形態では、第1のおよび第2の電極組成物のそれぞれは金属ホイル組成物である。第1の電極の金属ホイル組成物は、第2の電極の金属ホイル組成物と異なってもよい。
【0060】
少なくとも1つの実施形態では、電気化学デバイス、その構成成分のすべて、またはその構成成分の実質的にすべては、印刷プロセスを介して製作される。印刷プロセスは、堆積させること、スタンピング、スプレー、スパッタリング、ジェッティング、コーティング、層化などを含むことができる。例えば、1種もしくは複数の集電体、1種もしくは複数の電極組成物、生分解性、放射線硬化性電解質組成物、またはこれらの組合せは印刷プロセスを介して堆積させることができる。例示的印刷プロセスは、これらに限定されないが、スクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷(例えば、スタンプ)、グラビア印刷、オフセット印刷、エアブラシ、エアゾール印刷、植字、ロールツーロール法などのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。好ましい実施形態では、電気化学デバイスの構成成分は、スクリーン印刷を介して印刷される。
【0061】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性の放射線硬化性電解質組成物を放射線硬化するステップは、電解質組成物を放射エネルギーに曝露するステップを含む。放射エネルギーは紫外線光であってよい。生分解性放射線硬化性電解質組成物を放射エネルギーに曝露することにより、生分解性放射線硬化性電解質組成物を少なくとも部分的に架橋することができ、これによってヒドロゲルを形成する。生分解性放射線硬化性電解質組成物は室温で放射線により硬化することができる。少なくとも1つの実施形態では、生分解性放射線硬化性電解質組成物は不活性雰囲気で硬化する。例えば、生分解性放射線硬化性電解質組成物は、窒素下、アルゴン下などで硬化することができる。別の実施形態では、生分解性放射線硬化性電解質組成物は不活性でない大気下で硬化してもよい。
【0062】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性放射線硬化性電解質組成物は、約5ms~約100msの期間で放射線により硬化することができる。例えば、生分解性放射線硬化性電解質組成物は、約5ms、約10ms、約15ms、約20ms、約30ms、約40ms、または約50ms~約60ms、約70ms、約80ms、約85ms、約90ms、約95ms、または約100msの期間で放射線により硬化することができる。生分解性放射線硬化性電解質組成物を放射線により硬化するのに十分な期間は、紫外光の出力により少なくとも部分的に決定され得る。
【0063】
少なくとも1つの実施形態では、本方法はまた、接着剤、例えば、生分解性接着剤を堆積させ、これによって生分解性電気化学デバイス100、200のそれぞれの密閉部116、118、216、218を得るステップを含むこともできる。例えば、本方法は、接着剤の層を堆積させて、電気化学デバイスの基材または基材の一部(例えば、タブ124、126、224、226の周辺領域)を互いにカップリングするステップを含むことができる。一部の実施形態では、接着剤はホットメルト接着剤であってよい。別の実施形態では、電気化学デバイスは任意の接着剤を含まなくてもよいし、または実質的に含まなくてもよい。例えば、生分解性基材は、さらなる接着剤を使用せずに、溶接可能および/または加熱密閉可能であることができる。
【0064】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性基材は連続的なウェブであってよいし、または連続ウェブで支持されていてもよい。本明細書で使用される場合、「ウェブ」という用語は、移動する支持表面、例えば、コンベヤーベルトを指すことができる。少なくとも1つの例では、複数の電気化学デバイスは、連続ウェブ上の独立したまたは連結した要素または構成成分として同時に印刷される。例えば、複数の電気化学デバイスのそれぞれの構成成分は、並行したプロセスにおける1つのアレイとして、連続ウェブ上で独立したまたは連結した構成成分として同時に印刷することができる。本明細書で使用される場合、「連結した要素」または「連結した構成成分」という用語または表現は、互いに物理的に接している、重複している、またはさもなければ接触している電気化学デバイスのそれぞれの要素または構成成分を指すことができる。例示的な連結した要素は、集電体層と隣接してまたはこれらの上に配置された活性層(例えば、カソード活性層またはアノード活性層)、集電体層および銅テープタブ、または活性カソード/アノード層の上の電解質層であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0065】
例示的生分解性電気化学デバイスの少なくとも1つの実施形態では、その固体水性電解質、ならびにそれを合成および製作する方法が利用可能であり、集電体、カソード/アノード材料、結合剤、接着剤、および電解質を含む様々な材料の層は、高い忠実性および精度をもって印刷される必要がある。さらに、水性電解質内の水分の保持率は、良好なイオン伝導率のための可溶化塩の維持を介して、電池性能に重大であり、これらのような生分解性または堆肥化可能な印刷電池は、ポリ乳酸(PLA)フィルムであってもよい生分解性基材を通過する蒸発を介した水分損失により寿命が短くなるという問題を抱えている。このような電気化学デバイスは、生分解性バリア層を有する生分解性ポリマー複合体フィルムエンクロージャーパウチを有することができる。例示的生分解性エンクロージャー材料は、これらに限定されないが、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)、絹フィブロイン、キトサン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、米紙、セルロースのうちの1種もしくは複数、またはこれらの組合せもしくは複合体であってもよいし、またはこれらを含んでもよい。
【0066】
少なくとも1つの実施形態では、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間で架橋され、印刷される前に放射線硬化性である、架橋された生分解性ポリマー材料を含む電解質組成物を含む柔軟性のある生分解性電気化学デバイスは、水性電解質材料内に存在する水分が蒸発するのを防止するために、電気化学デバイスの外側部分の周りにエンクロージャー、フィルムまたはパウチを形成する、生分解性水分もしくは水蒸気バリアまたはバリア層を有することができる。このような実施形態では、全部の電気化学デバイスは生分解性であるため、デバイスは、エンクロージャーパウチの水蒸気バリアまたは水分バリア層の特性の改善により長期の耐用年数を有することができ、生分解性であることができ、および/またはその耐用年数が終了しても生分解性であることができる。生分解性水蒸気バリアまたはエンクロージャーの機能は、電気化学デバイス内で水が水性電解質組成物から蒸発するのを妨げ、よって電気化学デバイスの耐用年数を延長する水分バリア層を提供することである。本明細書に記載されている水蒸気バリアまたは水分バリア層に関連して、電気化学デバイスのある特定の実施形態は相当量の水または水分を有することができるが、その一方で他の溶媒または蒸発性材料もまた、本開示の水蒸気バリア内に封入された電気化学デバイスの長期にわたるおよび許容可能な作動の助けとなることができることに注目されたい。
【0067】
それぞれの生分解性電気化学デバイスの生分解性水蒸気バリアは約50℃~約150℃の温度で安定していることができる。本明細書で使用される場合、「安定した」または「安定性」という用語は、約50℃~約150℃の温度に曝露された場合、寸法の変化に対して抵抗し、構造的完全性を維持する基材の能力を指すことができる。例えば、生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度に曝露された後、約20%未満、約15%未満、または約10%未満の寸法の変化で、構造的完全性を維持することが可能であり、または維持するように設計することができる。1つの例では、生分解性水蒸気バリアのそれぞれは、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、または約110℃~約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃の温度で安定していることができる(例えば、寸法の変化は20%未満)。別の例では、生分解性水蒸気バリアのそれぞれは、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、少なくとも130℃、少なくとも135℃、少なくとも140℃、または少なくとも145℃の温度で安定していることができる。少なくとも1つの実施形態では、生分解性水蒸気バリアは、約50℃~約150℃の温度で、約5分~約60分以上の期間安定していることができる。例えば、生分解性水蒸気バリアは、上述の温度で、約5分、約10分、約20分、または約30分~約40分、約45分、約50分、約60分以上の期間安定していることができる。
【0068】
少なくとも1つの実施形態では、生分解性水蒸気バリア材料は、さらなる接着剤を使用することなく、溶接可能、結合可能、および/または永久的に熱的密閉可能である。例えば、電気化学デバイスエンクロージャーに対して本明細書に記載されている生分解性水蒸気バリアは、それぞれの密閉部を使用することなく、互いに溶接可能および/または結合可能であることができる。互いに溶接可能および/または結合可能であることができる例示的生分解性水蒸気バリア材料は、これらに限定されないが、熱可塑性、例えば、ポリ乳酸(PLA)、結晶化度を増強する核剤で修飾したポリ乳酸、例えば、核剤Dで修飾したポリ乳酸(PLA-D)および核剤Eで修飾したポリ乳酸(PLA-E)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、PLAとポリヒドロキシブチレート(PHB)のブレンド、PHBベースのブレンドなど、またはこれらの組合せであってもよいし、またはこれらを含んでもよい。本明細書で使用される場合、「結合可能」、「溶接可能」および/または「永久的に熱的密閉可能」という用語または表現は、加熱または溶融を介して、2つの表面を互いに加熱密閉するまたは永久的に2つの表面を互いに連結する材料(例えば、基材)の能力を指すことができる。
【0069】
一部の実施形態では、生分解性エンクロージャー、パウチ、または水蒸気バリアは、金属化した生分解性ポリ乳酸(PLA)フィルム、例えば、アルミニウム金属化ポリ乳酸フィルムから作製することができる。金属化を提供する金属表面層はアルミニウムであってもよい。ある特定の実施形態では、金属化層は、アルミニウム、他の適切な金属または合金、セラミクス、粘土、無機-有機バイオポリマーのハイブリッド材料、およびこれらの組合せを含むことができる。代替の実施形態は、金属多層、多層フィルムの内層、外層、または両方の上の金属を有することができる。PLAフィルムは、エンクロージャーパウチの物理的特性を改善するよう2軸に方向づけることができる。さらなる他の実施形態では、水分バリア特性を増強させる添加物がフィルムに組み込まれていてもよい。電気化学デバイス用の生分解性エンクロージャー、パウチ、または水蒸気バリアは、代替の実施形態における1種または複数の材料の組合せを有する単層または多層を有することができる。金属化層フィルムまたはバリアは、約1nm~約100nm、約5nm~約50nm、または約10nm~約40nmの厚さを提供することができる。ある特定の例の単層フィルムまたはバリアは、全厚約1μm~約100μm、約40μm~約80μm、または約50μm~約75μmを有することができる。水蒸気バリアの金属化層は、基材フィルム層、例えば、PLA上で、厚さ約0.5nm~約100nm、約5nm~約50nm、または約5nm~約25nmを有することができる。
【0070】
ある特定の例では、生分解性エンクロージャー、パウチ、または水蒸気バリアは、薄い金属ホイル、例えば、アルミニウムの各側の上に生分解性ポリマーを押出加工または積層することにより構築された多層複合材でできていてもよい。生分解性エンクロージャーの金属化ポリマー層とは対照的に、このような多層化された積層複合体内の薄いおよび連続的な金属層は、1つまたは複数の生分解性エンクロージャー層と連結した強力なバリア層を提供することができる。このような多層化された積層構造の利点とは、連続的な金属フィルムは、複合体を介した水の透過をより効果的に防止することができる層を形成すること、ならびにより厚い金属またはアルミニウム層または金属多層を提供するオプションを提供することである。よって、水蒸気バリアを提供する金属層は、約1μm~約200μm、または約5μm~約150μm、または約10μm~約100μmであることができる。本開示による金属ホイル層は、アルミニウムまたは金属層にピンホールなどの問題(これは、スパッタリングまたは本明細書に記載されているような他の堆積方法から形成された金属フィルムによく見られる)を起こす傾向がそれほどない。生分解性エンクロージャー、パウチ、または水蒸気バリア内の金属層または他のバリア層のピンホールの存在は、ある場合には、複合材料を介した一部の水の透過を可能にしてしまう。
【0071】
本開示による多層複合材を有するある特定の例に対して、いくつかの方法を使用して、これらの多層積層体を形成することができる。第1の実施例では、予め存在するポリマーシートは、アルミニウムまたは金属ホイルへのこのポリマーシートの接着を可能にするまたは増強する1つもしくは複数の交互勘合されたまたは分散した接着結合層を使用して、適切な温度および圧力で、アルミニウムシートの片側または各側に押し付けることができる。第2の実施例では、ポリマー層および接着結合層は、当業者に公知の多層フィルムキャスティング法を使用して、アルミニウムまたは他の金属ホイルの表面上に薄膜として直接的に融解押出加工することができる。金属、例えば、マグネシウム、チタニウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、もしくは合金またはこれらの混合物を組み込んださらなる金属ホイルまたはフィルムを本開示に従い使用することができる。
【0072】
ある特定の実施形態では、水蒸気バリア特性を有することが公知の他の材料を使用することができる。これらの材料は、生分解性および/または堆肥化可能なフォーマットに合致し、蜜ろう、可塑剤、および代替の生分解性ポリマー複合体フィルムなどの材料を含まなければならない。水蒸気バリアが電気化学デバイスの基材の一部ではない代替の実施形態において、生分解性材料、ポリマーまたは複合体と比較した場合、より幅広い範囲の温度抵抗性を有する、より高い温度安定性および抵抗性を有する水蒸気バリアを使用することができる。水分バリア特性を有する生分解性エンクロージャーまたは水蒸気バリアを有する電気化学デバイスの実施形態は、このようなバリア、層、またはエンクロージャーを有さない電気化学デバイスと比較した場合、より低い水蒸気透過度(WVTR)を示すことができ、24時間にわたり約0%~24時間にわたり約5%、24時間にわたり約0.1%~24時間にわたり約2%、または24時間にわたり約0.5%~24時間にわたり約1%のWVTRを示す。WVTRはまた、エンクロージャーまたは水分バリアを含む電気化学デバイスの総質量と比較した場合の、失った水の総質量のパーセンテージとして表現することもできる。本開示による水分バリア特性を有する生分解性エンクロージャーまたは水蒸気バリアを有する電気化学デバイスの実施形態は、このようなバリア層またはエンクロージャーを有さない電気化学デバイスと比較した場合、より低い水蒸気透過度(WVTR)を示すことができ、水蒸気バリアは、約0.0g/m2/24時間~約10g/m2/24時間、約0.5g/m2/24時間~約5g/m2/24時間、または約1g/m2/24時間~約2g/m2/24時間のWVTRを示す。WVTRの表現は、全電気化学デバイスの質量パーセント、または質量%として本明細書に提供されている。水分バリア特性を有する生分解性エンクロージャーまたは水蒸気バリアを有する電気化学デバイスのある特定の例は、このようなバリア層またはエンクロージャーを有さない電気化学デバイスと比較した場合、より低い水蒸気透過度(WVTR)を示すことができ、本開示の水蒸気バリアは、約0mg/cm2/24時間~約5.0mg/cm2/24時間、約0.1mg/cm2/24時間~約1mg/cm2/24時間、または約0.1mg/cm2/24時間~約0.5mg/cm2/24時間のWVTRを示す。
【0073】
一部の実施形態では、電気化学デバイスは、電池または電気化学デバイスがエンクロージャー内に、または改善された水蒸気バリア特性を有する、記載された水蒸気バリア内に完全に含有されるように配置されてもよく、カソードおよびアノードが、
図1に図示されているように並列または横方向XY平面形状となるように方向づけられ、または配置されてもよい。代替の実施形態では、電気化学デバイスは、電池または電気化学デバイスが改善された水蒸気バリア特性を有する、記載されたエンクロージャー内に含有されるように配置されてもよく、カソードおよびアノードが、
図2に図示されているように積層型形状となるように方向づけられ、または配置されてもよい。
【0074】
本開示の実施形態は、改善された水分バリア特性または水蒸気バリア特性を有する電気化学デバイスを製作する、生成する、またはさもなければ封入するための方法を提供することができる。本方法は、4つの縁を有する第1の金属化PLAフィルムおよび4つの縁を有する第2の金属化PLAフィルムを、第1の金属化PLAフィルムの非金属化側が、第2の金属化PLAフィルムの非金属化側へと向くように方向づけるステップを含むことができる。第1および第2の金属化PLAフィルムの1つまたは複数の縁は一緒に密閉することもできる。生分解性または堆肥化可能な電気化学デバイスは、第1の金属化PLAフィルムと第2の金属化PLAフィルムとの間に配置し、これに続いて、第1の金属化PLAフィルムの縁および第2の金属化PLAフィルムの縁を、電気化学デバイスの1つまたは複数の電極が4つの縁のうちの少なくとも1つを介して曝露されるように、一緒に密閉することができる。
【0075】
本方法は代わりに、電気化学デバイスの上側に、4つの縁を有する第1の金属化PLAフィルムを、非金属化側が電気化学デバイスへと向くように方向づけるステップを含むこともできる。第2の金属化PLAフィルムは、非金属化側が電気化学デバイスへと向くように、電気化学デバイスの底側に方向づける。第1の金属化PLAフィルムのすべての4つの縁および第2の金属化PLAフィルムの4つの縁は、1つまたは複数の電極が4つの縁のうちの少なくとも1つを介して曝露されるように一緒に密閉することもできる。生分解性のアルミナイズ処理ポリマーバリア層からこの方式で製作されたエンクロージャーまたは水蒸気バリアは、表面コーティングおよび/またはポリマー添加物と組み合わせて、生分解性または堆肥化可能な電気化学デバイスからの水蒸気損失を減少させるまたは防止することができる。このようなデバイスは、時間の経過と共に電解質溶媒が蒸発するのを防止することによって、生分解性または堆肥化可能な電気化学デバイスの耐用年数を有意に延長することができる。
【実施例】
【0076】
本明細書に記載されている実施例および他の実装形態は例示的であり、本開示の組成物および方法の完全な範囲の記載を限定することを意図するものではない。特定の実装形態、材料、組成物および方法の同等の変化、修正および変化形は本開示の範囲内で生成することができ、実質的に類似の結果を生じる。
【0077】
(比較例1)
保湿性が改善された、生分解性電池構成の本明細書に記載されている実施形態に関係した、代用試験が比較例1との関連で記載されている。
図3は、1つまたは複数の実施形態による、水蒸気バリアを有する生分解性電池アセンブリーに対する、完全に組み立てた代用物の比較例の断面図を図示している。この代用試験は、完全に組み立てた生分解性電池と類似の状況でPLA-D生分解性基材を介した水分損失を測定するために実施した。比較例1は、水性電解質電池組成物に対する代用物として、濾紙302のパッチを取り囲んでいるフィルムエンクロージャー304を有する代用電池集合体300である。厚さ80μmのPLA-Dの2軸方向延伸フィルムの2枚のシートを、2cm×3cm正方形に切り取った。切断したフィルムの2枚を同じ方向性で一緒に積層した。5秒間170℃に設定した、MTI社製MSK-130ヒートシール装置を使用して、フィルムシートの4つの縁のうちの3つを一緒に加熱密閉して、単一の、密閉されていない3cmの側面を有するパウチまたはエンクロージャーを生成した。whatman1825-150濾紙302の1cm正方形のパッチを2cm×3cmパウチ304に配置した。次いで、濾紙302を内側に有するパウチを秤量し、風袋を秤量した。3滴のDI水をパウチ内の紙に加え、次いでパウチの残りの開いた縁を密閉して、以前に記述された条件と同じ条件で加熱密閉された縁306を形成した。パウチの質量を時間の経過と共に測定して、水分の損失を決定した。代用試験は、完全なサイズの、密閉した基材構成の生成を含み、完全に組み立てた生分解性電池に見出されたものと同じ量を反映した、公知の、測定された量の水を添加する。次いで、代用電池集合体300を定期的に秤量することにより、時間の経過による水分損失を測定する。次いで、実験的実施例1~3を用いて、この試験プロトコルを繰り返すことによって、生分解性電気化学デバイス内の水性ベースの電解質組成物からの水透過損失を阻害するためのフィルムエンクロージャーの様々な実施形態を評価する。
【0078】
(実施例1)
図4は、1つまたは複数の実施形態による水蒸気バリアを有する実施例1の電気化学デバイスアセンブリーに対する、完全に組み立てた代用物の実施形態の断面図を図示している。Celplast、Toronto Ontario、Canada製のEnviromet HS、厚さ75μmのアルミナイズ処理PLAの2枚の4cm×4cm正方形シートを、PLA側面が内側に向き、電気化学デバイスに対するエンクロージャー400を形成するように方向づけ、一緒に積層する。3秒間170℃に設定されたソフトダイを有するMSK-130ヒートシール装置を使用して、シートの4つの縁のうちの3つを一緒に密閉して、1つの側面が開いたエンクロージャーパウチ400を生成し、内側のPLA層410および外側のアルミニウム層412を有するエンクロージャーパウチ400を生成する。次いで、水で浸した濾紙402および比較例1に関して記載された実施形態と同様に縁を密閉したPLA-Dエンクロージャーパウチ404をPLA-Alパウチ400の内側に配置し、MSK-130を使用して、残りの縁414を密閉した。時間の経過によるパウチ400の質量を測定して、水分の損失を決定した。
【0079】
(実施例2)
図5は、1つまたは複数の実施形態による水蒸気バリアを有する実施例2の電気化学デバイスアセンブリーに対する完全に組み立てた代用物の実施形態の断面図を図示している。Enviromet、厚さ75μmのアルミナイズ処理PLAの8枚の4cm×4cm正方形シートを、PLA側面が内側に向き、電気化学デバイスに対する4つの層を有するエンクロージャーパウチまたは水蒸気バリア500を形成するように、方向づけ、一緒に積層した。3秒間170℃に設定したソフトダイを有するMSK-130ヒートシール装置を使用して、各シートの4つの縁のうちの3つを一緒に密閉して、1つの側面が開いているエンクロージャーパウチ500を生成した。本実施形態では、エンクロージャーパウチ500の壁は、第1のPLA層508および第1のアルミニウム層510を有する第1の層、第2のPLA層512および第2のアルミニウム層514を有する第2の層、第3のPLA層516および第3のアルミニウム層518を有する第3の層、ならびに第4のPLA層520および第4のアルミニウム層522を有する第4の層からなり、Envirometアルミナイズ処理PLAの4つの積層型シートを生成する。次いで、比較例1に関して記載された実施形態と同様に、縁506において密閉された水で浸した濾紙502およびPLA-Dエンクロージャーパウチ504を、PLA-Alパウチ500の内側に配置し、MSK-130を使用して残りの縁522を密閉した。時間の経過によるエンクロージャーパウチ500の質量を測定して、水分の損失を決定した。
【0080】
(実施例3)
図6は、1つまたは複数の実施形態による水蒸気バリアを有する実施例3の電気化学デバイスアセンブリーに対する完全に組み立てた代用物の実施形態の断面図を図示している。Enviromet、厚さ75μmのアルミナイズ処理PLAの2枚の4cm×4cm正方形シートを、PLA側面が内側に向き、電気化学デバイスに対する単一の水蒸気バリア層を有するエンクロージャーパウチ600を形成するように、方向づけ、一緒に積層した。3秒間170℃に設定したソフトダイを有するMSK-130ヒートシール装置を使用して、4つの縁のうちの3つを一緒に密閉して、1つの側面が開いているエンクロージャーパウチ600を生成した。本実施形態では、エンクロージャーパウチ600の壁は、PLA層604およびアルミニウム層606からなる。Whatman1825-150濾紙602の1cm正方形パッチを4cm×4cmエンクロージャーパウチ600の中に配置した。次いで、紙パッチ602を内側に有するパウチ600を秤量し、風袋を秤量した。3滴のDI水をパウチ600の紙602に加え、次いでパウチの開いている最後の縁をMSK-130で前の通り密閉した。時間の経過によるパウチの質量を測定し、水分の損失を決定した。
【0081】
(実施例4、実施例5、実施例6および実施例7)
図7は、本開示によるマルチラミネートエンクロージャー構造を有する電気化学デバイスアセンブリーに対する代用物の実施例の断面図を図示している。多層エンクロージャー構造700において、金属バリア層702の第1の側面および第2の側面は、金属バリア層702に配置された第1の接着結合層704および第2の接着結合層706を有する。多層複合材構造700に対するある特定の材料の構成では、いかなる接着結合層も必要とされないが、他の実施例において、接着剤なしではポリマーがアルミニウムまたは他の金属表面に接着しない事例では、接着結合層の存在が望ましい可能性もあることに注目されたい。ある特定の例では、接着結合層704、706の組成物は生分解性であるが、しかし、金属およびポリマー層と比較してこれらは十分に薄いため、これらの層は部分的にまたは完全に非生分解性材料で製作されていてもよい。このような例では、任意の非生分解性の材料の相対的質量パーセンテージは、全エンクロージャー材料の質量の10%未満である。ある特定の例では、アルミニウムまたは金属バリア702表面は、1つまたは多層の金属バリア層702の表面への接着を増強することができる表面処理、例えば、プラズマまたはコロナ処理を有することもできる。外側の第1の生分解性ポリマー層708と第2の生分解性ポリマー層710との両方が同じ材料で構築されることも予想されるが、ある特定の例では、第1の生分解性ポリマー層708および第2の生分解性ポリマー層710は同じ材料で構築されていなくてもよく、したがって、第1の生分解性ポリマー層708および第2の生分解性ポリマー層710に使用されている各ポリマーの種類との接着を最適化するために必要とされる場合には、接着結合層704、706の材料組成物が異なってもよい。本明細書に記載されている金属層または金属バリア層は、水分不透過層、または水分を通さない層を有する、本開示の多層エンクロージャー構造を提供する。このような多層エンクロージャー構造のある特定の例では、金属層または金属バリア層は、あらゆる水、水分、または溶媒のエンクロージャーの通り抜けを不可能にすることもできる。
【0082】
実施例4:密着層として市販の3層PLA薄膜を使用した、半分構造の多層複合材の生成。Corbionから入手した市販の押出し等級PLAを結晶化剤(薬剤D、Luminy D070、Corbion製)とブレンドした配合物を、融解押出加工することにより、厚さおよそ100μmのPLAシートを得た。All Foils Inc.、Ohio、USAから入手した厚さ40μmのアルミ箔、押し出したPLA-Dポリマーのシート、およびその間の接着結合層として、3層PLA薄膜、Evlon EV-HS1を使用して、多層スタックを調製した。この多層スタックを、120℃、5000PSIで、20分間圧縮した。生成した多層フィルムは、
図7で詳述されている多層構造の半分と考えられる。しかし、アルミニウム層は水蒸気バリア層として作用するので、この半分構造は、本開示による代用の評価においてバリア特性を実証するには十分である。完全構造は、ポリマーの耐傷性層(scratch-resistant layer)を加えることにより、アルミニウム層を機械的ダメージから保護するためのある特定の実施例においてのみ必要とされ得る。完全構造は、半分構造と同じ方法を使用して製作することができる。
【0083】
実施例5:非生分解性ポリアミドベース接着剤を密着層として使用する半分構造の多層複合材の生成。静電スプレーガンを使用して、厚さ40μmのアルミ箔に、ポリアミドベースの接着剤粉末(Evonik Vestamelt Hylink)の薄層をコーティングし、次いで、140℃で10分間オーブンに入れた。次いで、実施例4に詳述されているような、入手したPLA-Dシートをアルミ箔の接着結合層側に塗布し、120℃、5000PSIで20分間圧縮した。接着結合層は、質量2mg/cm2であるのに対して、半分構造の質量は32.4mg/cm2であり、接着結合層質量は、半分構造の総質量に対しておよそ6質量%であった。これにより、完全な対称的マルチラミネート構造の接着結合層の質量は、54.4mg/cm2のうちの4mg/cm2、または非生分解性接着結合層の7.4質量%と計算することができる。
【0084】
実施例6:ポリカプロラクトン(PCL)の薄膜を接着結合層として使用した、多層複合材の半分構造の生成。Ingevityから入手したCAPA6500 PCLペレットを、100℃、5000PSIで20分間圧縮することにより、PCL接着結合層の薄膜を得た。厚さ40μmのアルミ箔、実施例4に使用されているおよび本開示による押し出したPLA-Dのシート、およびPCL薄膜を接着結合層として使用して、多層スタックを調製した。多層スタックを120℃、5000PSIで、20分間圧縮した。
【0085】
実施例7:接着結合層として非晶質等級のPLAの薄膜を使用した半分構造の多層複合材の生成。PLAペレットを200℃、5000PSIで20分間圧縮することにより、非晶質PLA層の薄膜を生成した。厚さ40μmのアルミ箔、押し出したPLA-Dのシート(実施例4の通り)および交互にかみ合わさった非晶質PLA薄膜を接着結合層として使用して、多層スタックを調製した。多層スタックを、120℃、5000PSIで20分間圧縮した。
【0086】
ある特定の実施形態では、実施例6および7の多層複合材は、多層包装の製造業界で一般的に実施されているように、接着結合層とPLAフィルムの二重層を、アルミニウムロールに直接的に融解押出加工することにより、単一ステップで生成することができる。
【0087】
実施例4、5、6および7で生成した多層複合材のバリア特性を実証するため、類似の寸法のシートを切り出し、200℃で5秒間に設定された手持ち式熱シーラーのかみ合い部の間でこれらを圧縮することにより、これらの縁を熱的に密閉することにより、それぞれの多層積層体(半分構造)の気密密閉されたパウチを調製した。各パウチは、水を浸漬させた紙組織を含有した。次いで、多層複合材を介した水の透過およびその後の蒸発をモニターするための手段として各パウチの質量を毎日測定した。
【0088】
図8は、1平方センチメートル当たりの水分損失(単位:ミリグラム)対時間(単位:日)のプロットを、
図3の比較例に対して、
図4、5、6、および7の実施例1~7とそれぞれと比較して図示している。各実施例に対して、1平方センチメートル当たりの累積的水分損失(単位:ミリグラム)を、24時間ごとに質量で測定し、表面積に対して正規化し、次いでプロットした。PLA-D基材のみをバリア層として有する比較例1は、約15mg/cm
2という高い、累積的水分損失を示し、9日目までの水分の全損失を示している。追加のアルミナイズ処理PLAバリア層を有する実施例1は、9日目までに、約1.34mg/cm
2という有意に減少した累積的水分損失を示している。4つの合わせた、アルミナイズ処理PLAバリア層を有する実施例2は、9日目までには、累積的水分損失0.66mg/cm
2という有意な減少を示す。アルミナイズ処理PLAのみをバリア層として有する実施例3は、類似の時間での比較例1の水合計量損失と比較した場合、9日目の累積的水分損失において2.84mg/cm
2という適度に改善された減少を示す。実施例4、5、6、および7のマルチラミネート試料は、9日目までに実質的には水分損失が全くないことを示し、またはごくわずかな水分損失を示した全部の結果は表1および2に報告されている。
【0089】
【0090】
【0091】
継続性試験
本明細書に記載されているようなバリア層を有する生分解性電池の実施形態の利用は、電池タブの継続性に影響を及ぼす、特にタブ全域での加熱密閉の使用に関して起こり得る問題を提示している。実施例2と類似の、アルミナイズ処理PLAを外側バリア層として使用したいくつかのフルサイズの電池を構築することによりこれを評価した。135℃という低温をMSKシーラーに対して使用することによって、電池タブに対する不必要な熱への暴露および潜在的な損傷を防止する一方、強い密閉をさらに提供した。MSKシーラーは、低温135℃に、ソフトモードで、6秒間というより長い時間に設定した。デバイスは、加熱密閉後、タブ全域で継続性の損失がなく、完全に機能的であることが判明した。
【0092】
本開示は例示的な実装形態を参照して記載されている。限定された数の実装形態が示され、記載されているが、先行する詳細な説明の原理および趣旨を逸脱することなく、これらの実装形態において変更がなされ得ることを当業者であれば認識している。すべてのこのような修正および改変は、これらが添付の特許請求の範囲またはその同等物の範囲内にある限り、本開示に含まれると解釈されることを意図している。
【国際調査報告】