(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】CD3に結合する多重特異性抗原結合タンパク質とその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240313BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240313BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240313BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240313BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240313BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240313BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240313BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240313BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240313BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240313BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240313BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240313BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240313BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20240313BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240313BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240313BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/46 ZNA
C12N1/21
C12N15/63 Z
C12N1/15
A61P43/00 107
A61P35/00
A61K47/68
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K47/46
C07K16/28
C12P21/08
C12N1/19
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558720
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2022082129
(87)【国際公開番号】W WO2022199555
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/082341
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/089112
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/127043
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523363464
【氏名又は名称】広州凌騰生物医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU LINTONPHARM CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】シン ショウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジェ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
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4C085BB22
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4C085BB36
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本出願は、CD3に対する結合部分を含む多重特異性抗原結合タンパク質を提供する。本出願はまた、T細胞活性化および/または腫瘍治療薬剤の製造における多重特異性抗原結合タンパク質の使用方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD3結合部分を含む多重特異性抗原結合タンパク質であって、
前記CD3結合部分は、重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記HCDR1は、配列番号4、37、45および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記HCDR2は、配列番号5、38、46および54のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記HCDR3は、配列番号6、39、47および55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、および/または、
前記CD3結合部分は、軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記LCDR1は、配列番号1、40、48および56のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記LCDR2は、配列番号2、41、49および57のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記LCDR3は、配列番号3、42、50および58のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記CD3結合部分は、T細胞の活性化を誘導する、多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項2】
前記CD3結合部分は、重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号4、37、45および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記HCDR2は、配列番号5、38、46および54のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記HCDR3は、配列番号6、39、47および55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、および/または、
前記CD3結合部分は、軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、
前記LCDR1は、配列番号1、40、48および56のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記LCDR2は、配列番号2、41、49および57のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、
前記LCDR3は、配列番号3、42、50および58のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項3】
前記重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、それぞれ配列番号4、5および6に記載の配列を有する、および/または前記軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ配列番号1、2および3に記載の配列を有する、
前記重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、それぞれ配列番号37、38および39に記載の配列を有する、および/または前記軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ配列番号40、41および42に記載の配列を有する、
前記重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、それぞれ配列番号45、46および47に記載の配列を有する、および/または前記軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ配列番号48、49および50に記載の配列を有する、または、
前記重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、それぞれ配列番号53、54および55に記載の配列を有する、および/または前記軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ配列番号56、57および58に記載の配列を有する、請求項1または2に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項4】
前記CD3結合部分は、重鎖可変領域と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域は、配列番号8、35、43および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、および/または、
前記CD3結合部分は、軽鎖可変領域と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列番号7、36、44および52のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項5】
前記CD3結合部分は、重鎖可変領域のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖可変領域は、配列番号8、35、43および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、および/または、
前記CD3結合部分は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列番号7、36、44および52のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項6】
前記CD3結合部分は、配列番号8の重鎖可変領域、および/または配列番号7の軽鎖可変領域を含む;
前記CD3結合部分は、配列番号35の重鎖可変領域、および/または配列番号36の軽鎖可変領域を含む;
前記CD3結合部分は、配列番号43の重鎖可変領域、および/または配列番号44の軽鎖可変領域を含む;または、
前記CD3結合部分は、配列番号51の重鎖可変領域、および/または配列番号52の軽鎖可変領域を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記CD3結合部分は、ヒト化されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記ヒト化CD3結合部分は、
(i)配列番号27の重鎖可変領域、および/または配列番号31の軽鎖可変領域、
(ii)または配列番号28の重鎖可変領域、および/または配列番号31の軽鎖可変領域から選択される重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記ヒト化CD3結合部分は、前記重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列が、
(i)配列番号27の重鎖可変領域、および/または配列番号31の軽鎖可変領域、
(ii)または配列番号28の重鎖可変領域、および/または配列番号31の軽鎖可変領域から選択される、請求項8に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項10】
宿主細胞からの組換え発現により産生される、請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、哺乳動物細胞またはウイルスから選択される、請求項10に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項12】
前記細菌細胞は、大腸菌である、請求項11に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項13】
前記真菌細胞は、酵母細胞である、請求項11に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項14】
前記哺乳動物細胞は、CHO、NSO、BHK、またはHEK293細胞から選択される、請求項11に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項15】
ハイブリドーマ細胞によって産生される、請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項16】
前記ハイブリドーマ細胞は、マウス、ラット、ウサギから選択される、請求項15に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項17】
前記多重特異性抗原結合タンパク質の形式は、二重特異性抗体、二重特異性ダイアボディ、二重特異性scFv、TandAb、三価結合分子、または四価結合分子から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項18】
ヒト化抗体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項19】
完全ヒト抗体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項20】
キメラ抗体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項21】
モノクローナル抗体である、請求項1~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項22】
IgA、IgG、IgD、IgEまたはIgM抗体由来の定常領域を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項23】
前記抗原結合タンパク質は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含む、請求項1~22の1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項24】
少なくとも1つの腫瘍関連抗原(TAA)結合部分を含む、請求項1~23の1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項25】
前記TAAは、EPCAM、CCR5、CD19、HER2、HER3neu、HER3、HER4、EGFR、PSMA、CEA、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC7、bhCG、Lewis-Y、CD20、CD33、CD30、gangliosideGD3、9-O-Acetyl-GD3、GM2、globoH、fucosylGM1、PolySA、GD2、RON、c-Met、CEACAM-6、PCTA-1、PSA、PAP、ALCAM(CD166)、PECAM-1、CD151、MAGE-1、TROP2、IGF1R、TGFBR2、GHRHR、GHR、IL-6R、gpl30、TNFR2、OSMRp、Patched-1、Frizzled、Robol、LTpR、CD26、CD27、CD44、CD80、CD81、CD86、CD100、CXCR4、SAS、BCMA、TWEAKR/Fnl4、FGFR4、VEGFR1、VEGFR2、SSX1、およびSSX2、カルボアンヒドラーゼIX(MN/CAIX)、CD44v6、ソニックヘッジホッグ(Shh)、Wue-1、形質細胞抗原、(膜結合型)IgE、黒色腫コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF-α前駆体、STRAP、メソテリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly-6;デスモグレイン4、E-カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19-9マーカー、CA-125マーカーおよびミュラー阻害物質(MIS)受容体II型、sTn(シアル化Tn抗原、TAG72)、FAP(線維芽細胞活性化抗原))、エンドシアリン、EGFRvIII、L6、SAS、CD63、TF抗原、Cora抗原、CD7、CD79b、CD22、Igα、Igβ、gp100、MT-MMPs、F19-antigen、CO-29およびEphA2を含む群から選択される、請求項24に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項26】
前記TAAは、HER2またはCD20である、請求項24に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項27】
前記HER2結合部分は、それぞれ配列番号12、13および14に記載の配列を有する重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、および/またはそれぞれ配列番号9、10および11に記載の配列を有する軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項24~26のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項28】
前記HER2結合部分は、それぞれ配列番号12、13および14に記載の配列を有する重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、および/またはそれぞれ配列番号9、10および11に記載の配列を有する軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3からなり、
前記CD3結合部分は、T細胞活性化を誘導する、請求項27に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項29】
前記HER2結合部分は、配列番号16の重鎖可変領域、および/または配列番号15の軽鎖可変領域と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項30】
前記HER2結合部分は、配列番号16の重鎖可変領域、および/または配列番号15の軽鎖可変領域を含む、請求項29に記載の多重特異性抗原結合タンパク質。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質をコードする単離された核酸分子。
【請求項32】
請求項31に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項33】
請求項32に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項34】
請求項1~30のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質を製造する方法であって、
前記多重特異性抗原結合タンパク質を発現可能な条件下で、請求項33に記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
【請求項35】
請求項1~30のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質、請求項31に記載の単離された核酸分子、請求項32に記載のベクター、および/または請求項33に記載の宿主細胞、および場合により薬学的に許容されるアジュバントを含む医薬組成物。
【請求項36】
請求項1~30のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質、請求項31に記載の単離された核酸分子、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の宿主細胞の使用、及び/または、T細胞を活性化する、T細胞上に発現するCD3を標的とする、および/またはT細胞と腫瘍細胞との間の相互作用を促進するための薬物の製造における、および/または請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項1~30のいずれか1項に記載の多重特異性抗原結合タンパク質、請求項31に記載の単離された核酸分子、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の細胞の使用、および/または腫瘍を予防、軽減および/または治療するための薬剤の製造における、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
がんを有する被験体を予防、緩和および/または治療する方法であって、
請求項1~30のいずれかに記載の多重特異性抗原結合タンパク質、請求項31に記載の単離された核酸分子、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の細胞、および/または請求項35に記載の医薬組成物を、必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項39】
請求項38に記載のがんを有する被験体を予防、緩和および/または治療する方法であって、
前記がんは、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化器がん、食道がん、膵チックがん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がんを含む、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮体がん、唾液腺がん、腎がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、泌尿器がん、肝細胞がん(HCC)、肛門がん、陰茎がん、頭頸部がんを含む群から選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
二重特異性抗体は2つの異なる標的を同時に認識でき、より多くの細胞の制御機構を活性化できるため、腫瘍やその他の疾患の治療に大きな可能性を秘めている。Tセルエンゲージャー二重特異性抗体は、典型的な二重特異性抗体である。T細胞表面抗原(CD3など)と腫瘍細胞表面抗原(CD19など)に同時に結合して免疫シナプスを形成することにより、免疫シナプスを形成する可能性がある。腫瘍細胞とT細胞の間の距離は二重特異性抗体によって短縮され、その後T細胞が直接活性化および増殖し、活性化されたT細胞は腫瘍細胞を直接殺傷したり、細胞毒素を放出して腫瘍細胞を殺傷したりする能性がある。したがって、二重特異性抗体によるT細胞の活性化プロセスには、特異的なTリンパ球クローンを生成するためのT細胞への腫瘍抗原の提示は含まれない。したがって、このプロセスはMHCやHLAによって制限されず、臨床応用が可能である。
【0002】
CD3(分化クラスター3)は、ほとんどのT細胞の表面に発現するタンパク質複合体である。MHC-TCR結合シグナルを伝達し、T細胞を活性化できるため、T細胞エンゲージャー二重特異性抗体にとって理想的な結合部位となる。初代目抗CD3薬は大きな成功を収めた。ただし、安全性を向上させるために(たとえば、サイトカイン放出症候群(CRS)を回避するために)、T細胞の活性化および/またはサイトカインの放出の合理制御には改善が必要である。CRSの発生率の低下は、血液がんにおけるT細胞エンゲージャー二重特異性抗体の臨床応用を促進するだけでなく、固形腫瘍への応用でも画期的な進歩をもたらすであろう。
【0003】
したがって、CD3に対するより有効かつ安全な多重特異性抗体および対応ヒト化抗CD3抗体の提供が急務となる。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、CD3に対する結合部分を含む多特異的抗原結合タンパク質を提供し、CD3に対する結合部分は、配列番号8の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2およびHCDR3領域及び/または配列番号7の軽鎖可変領域VHからのLCDR1、LCDR2およびLCDR3領域を含む。LCDR1、LCDR2およびLCDR3領域を含む。多特異的抗原結合タンパク質は、腫瘍関連抗原(TAA)に対する結合部分をさらに含み得る。本出願の多特異的抗原結合タンパク質は、腫瘍の予防、緩和及び/又は治療薬剤の製造に使用できる。本出願の多特異的抗原結合蛋白質は、腫瘍細胞に対してより効果的な殺傷効果を示すことができる。本出願の多特異的抗原結合タンパク質は、投与された被験体に対する安全性プロファイルの改善を示し、例えば、T細胞媒介性サイトカインの放出をより少なく誘導し得る。本出願の多特異的抗原結合タンパク質および/またはCD3に対する結合部分は、CD3に対して著しく増強された結合親和性を示す。
【0005】
一つの態様では、本出願は、CD3結合部分を含む多特異的抗原結合タンパク質を提供し、ここで、CD3結合部分は、重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。HCDR1は、配列番号4、37、45および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、HCDR2は、配列番号5、38、46および54のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、HCDR3は、配列番号および6、39、47および55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。および/または、CD3結合部分は、軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。LCDR1は、配列番号1、40、48および56のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。LCDR2は、配列番号2、41、49および57のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する;LCDR3は、配列番号3、42、50および58のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、CD3結合部分は、T細胞の活性化を誘導する。
【0006】
いくつかの実施形態において、CD3結合部分は、重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。HCDR1は、配列番号4、37、45および53のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、HCDR2は、配列番号5、38、46および54のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、HCDR3は、配列番号6、39、47および55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。および/または、CD3結合部分は、軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。LCDR1は、配列番号1、40、48および56のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、LCDR2は、配列番号2、41、49および57のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有し、LCDR3は、配列番号3、42、50および58のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3はそれぞれ配列番号4、5および6に示される配列を有し、および/または軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は配列番号1、2および3に示される配列を有する。重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は配列番号37、38および39に示される配列を有し、および/または軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は配列番号40、41および42に示される配列を有する。重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、配列番号45、46および47に示される配列を有し、および/または軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は配列番号48、49および50に示される配列を有する。または、重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、配列番号53、54および55に示される配列を有し、および/または軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3は配列番号56、57および58に示される配列を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、CD3結合部分は、重鎖可変領域と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、重鎖可変領域は、配列番号8、35、43および51のいずれかの一つに記載のアミノ酸配列を有する。および/または、CD3結合部分は、軽鎖可変領域と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号7、36、44および52のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。
【0009】
いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、配列番号8、35、43および51のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。および/または、軽鎖可変領域は、配列番号7、36、44、52のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、CD3結合部分は、配列番号8の重鎖可変領域、および/または配列番号7の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。CD3結合部分は、配列番号35の重鎖可変領域および/または配列番号36の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。CD3結合部分は、配列番号43の重鎖可変領域および/または配列番号44の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。または、CD3結合部分は、配列番号51の重鎖可変領域および/または配列番号52の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、CD3結合部分は、配列番号8の重鎖可変領域、および/または配列番号7の軽鎖可変領域を含む。CD3結合部分は、配列番号35の重鎖可変領域、および/または配列番号36の軽鎖可変領域を含む。CD3結合部分は、配列番号43の重鎖可変領域、および/または配列番号44の軽鎖可変領域を含む。または、CD3結合部分は配列番号51の重鎖可変領域および/または配列番号52の軽鎖可変領域を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、VHは、フレームワーク領域H-FR1、H-FR2、H-FR3、およびH-FR4を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、CD3に対する結合部分は、抗体重鎖定常領域を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、CD3に対する結合部分は、IgA、IgG、IgD、IgE、またはIgM抗体に由来する抗体重鎖定常領域を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域は、IgG定常領域を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域は、配列番号18または配列番号26を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、VLは、フレームワーク領域L-FR1、L-FR2、L-FR3、およびL-FR4を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、CD3に対する結合部分は、抗体軽鎖定常領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、CD3に対する結合部分は、IgA、IgG、IgD、IgE、またはIgM抗体に由来する抗体軽鎖定常領域を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体軽鎖定常領域は、Igк定常領域を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体軽鎖定常領域は、配列番号17または配列番号25を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、CD3に対する結合部分は、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0023】
一つの態様では、多重特異性抗原結合タンパク質のCD3結合部分はヒト化されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、CD3に対するヒト化結合部分は、配列番号27の重鎖可変領域及び/または配列番号31の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、CD3に対するヒト化結合部分は、配列番号28の重鎖可変領域及び/または配列番号31の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、CD3に対するヒト化結合部分は、配列番号27の重鎖可変領域、および/または配列番号31の軽鎖可変領域を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、CD3に対するヒト化結合部分は、配列番号28の重鎖可変領域、および/または配列番号31の軽鎖可変領域を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質は、宿主細胞の組換え発現によって産生される。
【0031】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、哺乳動物細胞またはウイルスから選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、細菌細胞は大腸菌である。
【0033】
いくつかの実施形態において、真菌細胞は酵母細胞である。
【0034】
いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、CHO、NSO、BHK、またはHEK293細胞から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質は、ハイブリドーマ細胞によって産生される。
【0036】
いくつかの実施形態において、ハイブリドーマ細胞は、マウス、ラット、またはウサギから選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、多特異性抗原結合タンパク質の形式は、二重特異性抗体、二重特異性ダイアボディ、二重特異性scFv、TandAb、三価結合分子、または四価結合分子から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの腫瘍関連抗原(TAA)に対する結合部分を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質のTAAは、下記の群から選択される:EPCAM、CCR5、CD19、HER2、HER3neu、HER3、HER4、EGFR、PSMA、CEA、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC7、βhCG、Lewis-Y、CD20、CD33、CD30、gangliosideGD3、9-0-Acetyl-GD3、GM2、globoH、fucosylGM1、PolySA、GD2、RON、c-Met、CEACAM-6、PCTA-1、PSA、PAP、ALCAM(CD166)、PECAM-1、CD151、MAGE-1、TROP2、IGF1R、TGFBR2、GHRHR、GHR、IL-6R、gpl30、TNFR2、OSMRp、Patched-1、Frizzled.Robol、LTpR、CD26、CD27、CD44、CD80、CD81、CD86、CD100、CXCR4、SAS、BCMA、TWEAKR/Fnl4、FGFR4、VEGFR1、VEGFR2、SSX1、およびSSX2、CarboanhydraseIX(MN/CAIX)、CD44v6、SonicHedgehog(Shh)、Wue-1、形質細胞抗原、(膜結合型)IgE、黒色腫コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF-α前駆体、STRAP、メソテリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly-6;デスモグレイン4、E-カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19-9マーカー、CA-125マーカーおよびミュラー阻害物質(MIS)受容体II型、sTn(シアル化Tn抗原、TAG72)、FAP(線維芽細胞活性化抗原)、エンドシアリン、EGFRvIII、L6、SAS、CD63、TF抗原、Cora抗原、CD7、CD79b、CD22、Igα、Igβ、gp100、MT-MMPs、F19-antigen、CO-29およびEphA2。
【0040】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質は、HER2に対する結合部分を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質のHER2に対する結合部分は、それぞれ配列番号12、13および14に記載の配列を有する重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3および/またはそれぞれ配列番号9、10および11に記載の配列を有する軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質のHER2に対する結合部分は、それぞれ配列番号12、13および14に記載の配列を有する重鎖可変領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3および/またはそれぞれ配列番号9、10および11に記載の配列を有する軽鎖可変領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。CD3結合部分は、T細胞の活性化を誘導する。
【0043】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合タンパク質のHER2に対する結合部分は、配列番号16の重鎖可変領域および/または配列番号15の軽鎖可変領域に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗原結合タンパク質のHER2に対する結合部分は、配列番号16の重鎖可変領域、および/または配列番号15の軽鎖可変領域を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、HER2に対する結合部分は、抗体重鎖定常領域を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、HER2に対する結合部分は、IgA、IgG、IgD、IgE、またはIgM抗体に由来する抗体重鎖定常領域を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域は、IgG定常領域を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗体重鎖定常領域は、配列番号18または配列番号26を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、HER2に対する結合部分は、抗体軽鎖定常領域を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、HER2に対する結合部分は、IgA、IgG、IgD、IgE、またはIgM抗体に由来する抗体軽鎖定常領域を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、HER2抗体軽鎖定常領域は、IgK定常領域を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、HER2抗体軽鎖定常領域は、配列番号17または配列番号25に記載のアミノ酸配列を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、HER2に対する結合部分は、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、HER2に対する抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、HER2に対する抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体から選択される。
【0056】
いくつかの実施形態において、多特異的抗原結合タンパク質は、CD20に対する結合部分を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、CD20に対する結合部分の重鎖可変領域VHは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、CD20に対する結合部分の軽鎖可変領域VLは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、CD3に対する結合部分は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含む。第1のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体の重鎖可変領域VHを含み、第2のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、TAAに対する結合部分は、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖を含む。第3のポリペプチド鎖は、TAAに結合する抗体の重鎖可変領域VHを含み、第4のポリペプチド鎖は、TAAに結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、第3のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体の重鎖可変領域VHを含み、第4のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、HER2に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み、HER2に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む。または、HER2に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み、HER2に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、第3のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体の重鎖可変領域VHを含み、第4のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、CD20に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含み、CD20に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む。
【0065】
別の態様では、本出願は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質をコードする1つまたは複数の単離された核酸分子を提供する。
【0066】
別の態様では、本出願は、本出願の単離された核酸分子を含むベクターを提供する。
【0067】
別の態様では、本出願は、本出願の単離された核酸分子および/または本出願のベクターを含む細胞を提供する。
【0068】
別の態様では、本出願は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の発現を可能にする条件下で本出願の細胞を培養することを含む、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質を調製する方法を提供する。
【0069】
別の態様では、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、および/または本出願の細胞、および任意に薬学的に許容されるアジュバントを含む、医薬組成物を提供する。
【0070】
別の態様では、本出願は、腫瘍を予防、緩和および/または治療薬剤の製造における、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物の使用方法を提供する。
【0071】
別の態様では、本出願は、腫瘍の予防、緩和および/または治療に使用するための、本出願の多特異性抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を提供する。
【0072】
別の態様では、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、腫瘍を予防、緩和および/または治療する方法を提供する。
【0073】
別の態様において、本出願は、被験体における腫瘍を予防、緩和および/または治療する方法を提供する。ここで、腫瘍は、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、扁平上皮肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、食道がん、膵チックがんを含む、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮体がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、泌尿器がん、肝細胞がん(HCC)、肛門がん、陰茎がん、頭頸部がん、またはその他のがんを指す。
【0074】
別の態様では、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を投与することを含む、T細胞を活性化する方法、T細胞上に発現されるCD3を標的とする方法、および/またはT細胞と腫瘍細胞との間の相互作用を促進する方法を提供する。
【0075】
本出願の追加の態様および利点は、本出願の例示的な実施形態のみが示され、説明される以下の詳細な説明から、当業者に容易に明らかになる。理解されるように、本出願は、他の異なる実施形態が可能であり、その幾つかの細部は、全て本開示から逸脱することなく、様々な明白な点で修正が可能である。従って、図面および説明は、本質的に例示的なものとみなされ、制限的なものとはみなされない。
【0076】
関連出願の相互参照
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求範囲に詳細に記載される。本発明の特徴および利点は、本発明の原理が使用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面(「図」および「図面」と言う)を参照することによって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の構造を示す。
【
図2】
図2は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質のウェスタンブロットの結果を示す。
【
図3】
図3は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。
【
図4】
図4は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質のF(ab)’2断片構造を示す。
【
図5】
図5は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質のF(ab)’2断片構造を示す。
【
図6】
図6は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。
【
図7】
図7は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。
【
図8】
図8は、ジャーカット細胞に対する本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の結合親和性を示す。
【
図9】
図9は、SK-BR-3細胞に対するhHER2×CD3およびrHER2×CD3の細胞毒性を示す。
【
図10】
図10は、SK-BR-3細胞に対する本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の細胞毒性を示す。
【
図11】
図11は、SU-DHL-8細胞に対する本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の細胞毒性を示す。
【
図13A-F】
図13A-13Fは、抗CD3mAhのウェスタンブロットおよびSDS-PAGEの結果を示す。
図13A、
図13Cおよび
図13Eは、それぞれC3000、C3002-1、およびC3002-2のウェスタンブロットの結果を示す。
図13Bの1行目13Dと
図13Fは、それぞれ、C3000、C3002-1、およびC3002-2の還元SDS-PAGEの結果を示す。
図13B、
図13Dおよび
図13Fのライン2は、それぞれC3000、C3002-1およびC3002-2の非還元SDS-PAGEの結果を示す。
【
図14】
図14は、CD3eおよびCD3yヘテロ二量体タンパク質に対する抗CD3mAbC3000、C3002-1およびC3002-2の結合親和性を示す。
【
図15】
図15は、hHER2×CD3およびrHER2×CD3によって媒介されるSK-BR-3細胞に対するT細胞の細胞毒性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明の様々な実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態が例示のためにのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が当業者に生じ得る。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替が採用され得ることが理解されるべきである。
【0080】
本明細書で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、一般に複数形の参照を含む。
【0081】
本出願において、「抗原結合タンパク質」という用語は、一般に、抗原に結合する部分と、任意に、抗原結合タンパク質と抗原との結合を促進するコンフォメーションを抗原結合部分にとらせる足場または骨格部分とを含むタンパク質を指す。抗原結合タンパク質の例としては、抗体、抗体断片(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体アナログを挙げることができる。抗原結合タンパク質は、例えば、天然に存在する免疫グロブリンの構造を持ち得る。免疫グロブリン」は四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンでは、各四量体は2対の同一のポリペプチド鎖から構成され、各対は1本の軽鎖(LC)と1本の重鎖(HC)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100から110以上のアミノ酸を含む可変領域を含み得る。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、 または軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、εまたはκλに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEとして定義する。天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域で結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)と同じ一般構造を示し得る。N末端からC末端まで、軽鎖と重鎖の両方がドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含み得る。
【0082】
本出願に使用される「CDR」という用語は、一般に、抗原結合タンパク質の相補性決定領域のアミノ酸配列を指す。これらは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖および3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)がある。CDR配列には様々な番号付けシステムがあることは当業者には明らかであろう。例えば、Chothia(Chothiaら(1989)Nature 342:877-883)、Rabat(Rabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、国立衛生研究所、メリーランド州ベセスダ(1987年と1991年))。Chothia番号付けシステムは、本開示の抗体中の残基に番号を付けるために使用される。
【0083】
本出願において、本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語は、一般に免疫グロブリン分子の一部を指す。抗原結合断片は、1つの軽鎖と、単一の抗原結合部位を有する重鎖の一部を含み得る。抗原結合断片は、免疫グロブリン分子の酵素消化によって得ることができる。例えば、抗原結合断片は、重鎖および軽鎖のそれぞれの1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインを含み得る。可変ドメインは、免疫グロブリン分子のアミノ末端に、相補性決定領域のセットを含むパラトープ(抗原結合部位)を含む場合がある。
【0084】
本出願において、本明細書で使用される「Fv断片」という用語は、一般に、重鎖および軽鎖の可変領域の全部または一部を指し、重鎖および軽鎖の定常領域は含まれない。例えば、重鎖および軽鎖の可変領域はCDRを含み得る。
【0085】
本出願に使用される「ScFv」という用語は、一般に、単鎖抗体断片を指す。ScFvは、抗体の軽鎖および重鎖可変領域が直接またはペプチドリンカーを介して接続された組換え単鎖ポリペプチド分子であり得る。
【0086】
本出願において、用語「Fab」は、一般に、ヒンジ領域において少なくとも1つのジスルフィド橋によって結合された重鎖ポリペプチドの2つのN末端部分と、2つの完全な軽鎖ポリペプチドとを含む断片を含む抗体断片を指す。例えば、各軽鎖は重鎖の1つのN末端部分と複合体化され得る。Fabはまた、重鎖ポリペプチド(例えば、VHCH1)のN末端部分と複合体化した軽鎖ポリペプチド(例えば、VLCL)の全部または大部分を含むFab断片を含み得る。
【0087】
本出願において、用語「Fab」は、本明細書で使用される場合、一般にF(ab)2断片の還元産物の抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むCHIドメインのカルボキシ末端にいくつかの付加的な残基を有することにより、Fab断片と異なる場合がある。Fab’-SHは、本明細書において、一定ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の呼称であり得る。
【0088】
本出願において、用語「F(ab)2」は、本明細書で使用される場合、一般に、抗原に結合可能であるが、Fc部分を有しない一価の抗体構造を指す。F(ab)2は、酵素パパインによって消化され、それぞれ約50kDaの2つのF(ab)断片とFc断片を生じる抗体であり得る。
【0089】
本出願において、用語「F(ab’)2」は、本明細書で使用される場合、一般に、2つのFab断片と、ジスルフィド結合によって結合されたヒンジ領域の一部とを含む抗体断片を指す。F(ab’)2は、インタクトな抗体のペプシン消化によって産生され得る。F(ab’)2断片は二価の抗原結合活性を有し、抗原を架橋できる可能性がある。
【0090】
本出願明細書において、「完全ヒト抗体」という用語は、一般に、遺伝子改変マウスの使用によるinvivoか、スクリーニングと組み合わせた抗体工学的プロセスによって抗原特異性が選択された、完全ヒトアミノ酸配列由来の抗体を指す。
【0091】
本出願において、「モノクローナル抗体」という用語は、一般に、実質的に相同体のある抗体群を指す。すなわち、その抗体群に含まれる各抗体は、微量の天然由来の変異の可能性を除いて同一である。モノクローナル抗体は、複数の異なる免疫細胞から作られるポリクローナル抗体とは対照的に、すべてユニークな親細胞のクローンである同一の細胞によって作られる抗体と理解される。例えば、モノクローナル抗体はハイブリドーマ技術によって調製することもできるし、組換えDNA法によって細菌、真核動物、植物細胞で産生することもできる。または、モノクローナル抗体は、例えば、Clacksonら、Nature、352:624-628(1991)およびMarksら、Mol.Biol.、222:581-597(1991)に記載されている技術を用いる。
【0092】
本出願において、「キメラ抗体」という用語は、一般に、各重鎖または軽鎖のアミノ酸配列の一部が、特定の動物種由来の抗体の対応するアミノ酸配列と相同であるか、特定のクラスに属し、鎖の残りの部分が他の動物種の対応する配列と相同である抗体を指す。例えば、軽鎖と重鎖の両方の可変領域は、ある動物種(例えば、マウス、ラットなど)の抗体の可変領域に由来し、定数部分は別の動物種(例えば、ヒト)の抗体配列に相同である。例えば、キメラ抗体を得るために、非ヒトB細胞またはハイブリドーマ細胞を用いて可変領域を作製し、これに結合する定常領域はヒト由来とできる。可変領域は調製しやすいという利点があり、その特異性は結合する定数領域の由来に影響されない。同時に、キメラ抗体の定数領域はヒト由来である可能性があるため、定数領域が非ヒト由来である抗体と比較して、キメラ抗体を注射した際に免疫反応が誘導される可能性は低くなると考えられる。
【0093】
本出願において、「ヒト化抗体」とは、一般に、非ヒト種(例えば、マウスやラット)由来の抗体、免疫グロブリン結合タンパク質およびポリペプチドのヒトに対する免疫原性を低下させることにより得られる、元の抗体の抗原結合特性を保持したまま操作された抗体を指す。例えば、CDRグラフト化(Jonesら、Nature 321:522(1986))、および「再形成」(Verhoeyenら、1988 Science 239:1534-1536;Riechmannら、1988 Nature 332:323-337;Tempestら、1991 9:266-271)Bio/Technol 1991 9:266-271)、「ハイパーキメライゼーション」(Queenら、1989 Proc Natl Acad Sci USA86:10029-10033;Coら、1991 Proc Natl Acad Sci USA88:2869-2873;Coら、1992 J Immunol 148:1149-1154)、「ベニアリング」(Markら、「Derivation of therapeutically active humanized and veneered anti-CD 18 antibodies」を含むその変形を含む技術的手段を使用できる。上記資料は、Metcalf BW,Dalton BJ,eds.細細胞接着:分子的定義から治療の可能性まで。ニューヨーク:Plenum Press,1994:291-312)を参照する。または、非ヒト結合ドメインをヒト化する。ヒンジ領域や定常領域ドメインなどの他の領域も非ヒト由来であれば、これらの領域もヒト化できる。
【0094】
本出願明において、「CD3」という用語は、一般にCD3を含むTCR複合体を指す。CD3は、哺乳類では4本の鎖(すなわちCD3γ、CD35および2本のCD3ε鎖)を含むタンパク質複合体で、T細胞受容体(TCR)として知られる分子や( ζ-鎖および η鎖と(ホモまたはヘテロダイマーとして))会合して、Tリンパ球の活性化シグナルを生成する。これらのCD3分子の細胞内尾部には、「免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ」、略してITAMとして知られる一つの保存されたモチーフを含み、TCRのシグナル伝達能力に不可欠である。CD3γ鎖、δ鎖、ε鎖とζ-η鎖は、CD3-鎖(ζとCD3η鎖はTCRとともにT細胞受容体複合体として知られている)とも呼ばれる。
【0095】
本出願において、用語「HER2」は、一般に、ErbB-2、NEU、HER-2またはCD340を指し、上皮成長因子受容体2(例えば、ヒトHER2、SwissProtP04626)、およびその任意の変異体、アイソフォームおよび種の相同体を指す場合がある。HER2は、腫瘍細胞を含む細胞においてネイティブに発現され得る。細胞におけるHER2遺伝子またはcDNAのトランスフェクションによって発現され得る。
【0096】
本出願において、「CD20」という用語は、一般に、骨髄由来リンパ球抗原CD20を指し、骨髄由来リンパ球表面抗原B1または白血球表面は抗FormerLeu-16とも呼ばれ、霊長類などの哺乳動物、動体(人など)、非ヒト霊長類およびげっ歯類(マウスおよびラットなど)を含む、任意の脊椎動物由来の天然のCD20を含み得る。ヒトCD20のアミノ酸配列のUniprotアクセッション番号PI1836に表示されている。CD20は一種の疎水性膜貫通タンパク質であり、分子量は約35kDで、先行するBリンパ球や成熟骨髄由来リンパ球に発現し得る。
【0097】
本出願において、「腫瘍関連抗原」という用語は、一般に、同じ組織型の非腫瘍細胞よりも腫瘍細胞によって高い頻度または密度で発現され得る分子または複合体を指す。腫瘍関連抗原は、宿主によって通常発現されない抗原であり得、宿主によって通常発現される分子の変異、切断、ミスフォールディング、またはその他の異常な発現であり得、通常発現される分子と同一であっても異常に高いレベルで発現されるものであり得、または異常な状況または環境において発現されるものであり得る。腫瘍関連抗原は、例えば、タンパク質またはタンパク質断片、複合糖質、ガングリオシド、ハプテン、核酸、またはこれらの組み合わせ、または他の生物学的分子である。例えば、腫瘍関連抗原はHER2および/またはCD20を含み得る。
【0098】
本出願において、「活性化」という用語は、一般に、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドとの結合によって誘導される一次応答を意味し、それによってシグナル伝達事象が媒介される。例えば、活性化はTCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を含み得る。
【0099】
本出願において、「T細胞と腫瘍細胞との相互作用」という用語は、一般に、免疫系(例えば、T細胞)によって認識される腫瘍細胞に対する負の選択圧をもたらすT細胞と腫瘍細胞との反応を意味する。そのため、腫瘍細胞では、抗原プロセシングと提示に重要な分子のダウンレギュレーションやコスティミュレーションによって、T細胞の認識が低下する可能性がある。
【0100】
本出願において、本明細書で使用する「治療する」という用語は、一般的に、治療される個体または細胞の自然経過を変化させようとする臨床的介入を指す。治療は、予防のために、または臨床病理学の経過中に実行され得る。望ましい効果としては、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の軽減、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、寛解または予後の改善などが含まれ得る。
【0101】
本出願において、本明細書で使用される「対象」という用語は、一般に哺乳動物を指す。例えば、対象は人間であり得る。例えば、対象はヒト以外の哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物には、家畜、スポーツ動物、およびペットが含まれ得る。
【0102】
本出願において、「多重特異性」という用語は一般に、二重特異性、三重特異性、または多重特異性の抗原結合の特徴を指す。多重特異性抗原結合タンパク質は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または2つ以上の標的ポリペプチドのエピトープに特異的な抗原結合ドメインを含み得る。多重特異性抗原結合タンパク質は、単一の多機能ポリペプチドであり得、または互いに共有結合または非共有結合した2つ以上のポリペプチドの多量体複合体であり得る。「多重特異性抗原結合タンパク質」という用語は、本出願の抗体および/または本出願の抗原結合断片を含み得る。例えば、本出願の抗体および/または抗原結合断片は、タンパク質またはその断片などの1つまたは複数の他の分子実体に機能的に(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合またはその他によって)連結され得る。第2の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性の抗原結合タンパク質を生成する。本出願によれば、「多特異的抗原結合タンパク質」という用語は、二重特異性、三重特異性または多特異性抗体またはその抗原結合断片を含むこともある。
【0103】
本出願において、用語「単離された核酸分子または分子」は、一般に、任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらのアナログの重合体であって、本来の環境から単離されたもの、または人工的に合成されたものを指す。
【0104】
本出願において、「ベクターまたはベクター」という用語は、一般に、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが挿入および発現され得る核酸ビヒクルを指す。ベクターに担持された遺伝物質エレメントは、宿主細胞をベクターで形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることにより、宿主細胞中で発現させることができる。ベクターの具体例としては、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、PI由来人工染色体(PAC)などの人工染色体;λファージやM13ファージなどのファージ、動物ウイルスなどが挙げられる。ベクターには、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、レポーター遺伝子など、発現を制御するさまざまなエレメントが含まれる場合がある。さらに、ベクターには複製起点も含まれる場合がある。また、ベクターには、これらの物質だけではなく、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質シェルなど、細胞への侵入を助ける成分が含まれる可能性もある。
【0105】
本出願において、本明細書で使用される「細胞」という用語は、一般に、本開示のベクターまたはベクターを担持するために使用され得るか、または本開示の抗体、抗原結合断片もしくは変異体を発現もしくは産生するために使用され得る細胞を指す。本開示の細胞は宿主細胞であり得る。細胞は、大腸菌や枯草菌などの原核細胞、酵母細胞やアスペルギルス細胞などの真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞やSf9などの昆虫細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HEK293細胞など、抗体発現に適した他の細胞であり得る。
【0106】
本出願において、本明細書で使用される「発現を可能にする条件」という用語は、一般に、本開示の多特異的抗原結合タンパク質の発現を可能にする条件を指す。例えば、条件は、インキュベーション時間、温度、培養培地を含み得、細胞型に依存し得、当業者によって容易に決定される。
【0107】
本出願において、「T細胞エンゲージャー」という用語は、一般に、T細胞/CD3複合体の定数成分および腫瘍関連抗原(TAA)に対する二特異性抗体または多重特異性抗体を指す。T細胞活性化の引き金となる通常のTCR-MHC相互作用をバイパスすることで、T細胞エンゲージャーは2つの利点を示す:1)ポリクローナルT細胞応答を誘発できる可能性がある。2)抗原提示のダウンレギュレーションを伴うエスケープ機構の影響を受けない可能性がある。T細胞エンゲージャーは、Methods154(2019)102-117を参照する場合がある。
【0108】
本出願において、「約」という用語は、一般に、所定の値±0.5%~±10%の範囲の変動を指す。例えば、所定の値±0.5%、±1%、±1.5%、±2%、±2.5%、±3%、±3.5%、±4%、±4.5%、±5%、±5.5%、±6%、±6.5%、±7%、±7.5%、±8%、±8.5%、±9%、±9.5%、または±10%である。
【0109】
CD3に対する結合部分
本出願において、CD3に対する結合部分は、抗体またはその抗原結合断片を含み得る。本出願において、CD3に対する結合部分は、CD3に対して特異的であり得る。例えば、CD3に対する結合部分は、抗CD3抗体またはCD3に対する抗原結合断片であり得る。「CD3に対する結合部分」および「CD3結合部分」という用語は、本出願において互換的に使用される。
【0110】
本出願において、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体から選択され得る。
【0111】
本出願において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含み得る。
【0112】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号8の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0113】
本出願において、CD3に対する結合部分はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0114】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号35の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0115】
本出願において、CD3に対する結合部分はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号39に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0116】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号43の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0117】
本出願において、CD3に対する結合部分はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号46に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0118】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号51の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0119】
本出願において、CD3に対する結合部分はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0120】
本出願において、CD3に対する結合部分は、VHを含み得る。例えば、CD3に対する結合部分のVHは、フレームワーク領域H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み得る。
【0121】
本出願において、CD3に対する結合部分のVHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVHは、配列番号35に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVHは、配列番号43に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVHは、配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む。
【0122】
本出願において、CD3に対する結合部分がヒト化されている。本出願において、CD3に対する結合部分のVHは、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVHは、配列番号28に記載のアミノ酸配列を含む。
【0123】
本出願において、CD3に対する結合部分は、抗体重鎖定常領域を含み得る。
【0124】
本出願において、抗体重鎖定常領域は、IgG定常領域を含む。
【0125】
本出願において、抗体重鎖定常領域は、配列番号18または配列番号26に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0126】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号7の軽鎖可変領域VLからのLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0127】
本出願において、CD3に対する結合部分はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0128】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号36の軽鎖可変領域VLからのLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0129】
本出願において、CD3に対する結合部分はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号40に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0130】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号44の軽鎖可変領域VLからのLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0131】
本出願において、CD3に対する結合部分はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号49に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号50に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0132】
本出願において、CD3に対する結合部分は、配列番号52の軽鎖可変領域VLからのLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0133】
本出願において、CD3に対する結合部分はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0134】
本出願において、CD3に対する結合部分は、VLを含み得る。例えば、CD3に対する結合部分のVLは、フレームワーク領域L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4を含み得る。
【0135】
本出願において、CD3に対する結合部分のVLは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVLは、配列番号36に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVLは、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む。本出願において、CD3に対する結合部分のVLは、配列番号52に記載のアミノ酸配列を含む。
【0136】
本出願において、CD3に対する結合部分がヒト化されている。本出願において、CD3に対する結合部分のVLは、配列番号31に記載のアミノ酸配列を含む。
【0137】
本出願において、CD3に対する結合部分は、抗体軽鎖定常領域を含み得る。
【0138】
本出願において、抗体軽鎖定常領域は、IgK定常領域を含み得る。
【0139】
本出願において、抗体軽鎖定常領域は、配列番号17または配列番号25に記載のアミノ酸配列を含む。
【0140】
本出願において、CD3に対する結合部分は、HCDR1-3およびLCDR1-3を含み得る。HCDR1は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR1は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、LCDR3は、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0141】
本出願において、CD3に対する結合部分は、HCDR1-3およびLCDR1-3を含み得る。HCDR1は、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号39に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR1は、配列番号40に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0142】
本出願において、CD3に対する結合部分は、HCDR1-3およびLCDR1-3を含み得る。HCDR1は、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号46に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR1は、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号50に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0143】
本出願において、CD3に対する結合部分は、HCDR1-3およびLCDR1-3を含み得る。HCDR1は、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR1は、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号57に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、LCDR3は、配列番号48に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0144】
本出願において、CD3に対する結合部分は、VHおよびVLを含み得る。VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み得る。そして、VLは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0145】
本出願において、CD3に対する結合部分は、ヒト化VHおよびヒト化VLを含み得る。VHは、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含んでもよく、VLは、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0146】
本出願において、多重特異性抗原結合タンパク質は、IgA、IgG、IgD、IgE、またはIgM抗体に由来する定常領域を含み得る。
【0147】
参照抗体
本開示において、CD3に対する結合部分は、CD3への結合に関して参照抗体と競合し得る。
【0148】
場合によっては、参照抗体は、配列番号8の重鎖可変領域VHからの少なくとも1つのHCDR領域、配列番号7の軽鎖可変領域VLからの少なくとも1つのLCDR領域を含み得る。場合によっては、参照抗体は、配列番号35の重鎖可変領域VHからの少なくとも1つのHCDR領域、および配列番号36の軽鎖可変領域VLからの少なくとも1つのLCDR領域を含み得る。場合によっては、参照抗体は、配列番号43の重鎖可変領域VHからの少なくとも1つのHCDR領域、および配列番号44の軽鎖可変領域VLからの少なくとも1つのLCDR領域を含み得る。場合によっては、参照抗体は、配列番号51の重鎖可変領域VHからの少なくとも1つのHCDR領域、および配列番号52の軽鎖可変領域VLからの少なくとも1つのLCDR領域を含み得る。
【0149】
本開示において、参照抗体はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含み得る。場合によっては、参照抗体はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0150】
本開示において、参照抗体はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号39に記載のアミノ酸配列を含み得る。場合によっては、参照抗体はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号40に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号41に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0151】
本開示において、参照抗体はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号45に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号46に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号47に記載のアミノ酸配列を含み得る。場合によっては、参照抗体はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号49に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号50に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0152】
本開示において、参照抗体はHCDR1~3を含み得る。HCDR1は、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含み得る。場合によっては、参照抗体はLCDR1~3を含み得る。LCDR1は、配列番号56に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号57に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0153】
本開示において、参照抗体は、VHおよびVLを含み得る。VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み得る。そして、VLは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み得る。VLは、配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号43に示されるアミノ酸配列を含み得る。Lは、配列番号44に示されるアミノ酸配列を含み得る。VHは、配列番号51に示されるアミノ酸配列を含み得る。VLは、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0154】
本開示において、参照抗体は、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含み得る。重鎖定常領域は、配列番号18または配列番号26に記載のアミノ酸配列を含み得、軽鎖定常領域は、配列番号17または配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0155】
CD3に対する結合部分には、それと実質的に同じ機能/特性を有する相同体またはその変異体も含まれ得る。場合によっては、相同体または変異体は、抗原結合タンパク質とは少なくとも1つのアミノ酸が異なるポリペプチドであり得る。例えば、相同体または変異体は、抗原結合タンパク質とは異なるポリペプチドで、1-50、1-40、1-30、1-20、1-15、1-14、1-13、1-12、1-11、1-10、1-9、1-8、1-7、1-6、1-5、1-4、1-3、または1-2のアミノ酸など、1個以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換によって異なる場合がある。
【0156】
腫瘍関連抗原(TAA)に対する結合部分
本出願において、多重特異性抗原結合タンパク質は、腫瘍関連抗原(TAA)に対する結合部分を含み得る。
【0157】
本出願において、TAAは下記の対象群から選択される:EPCAM、CCR5、CD19、HER2、HER3neu、HER3、HER4、EGFR、PSMA、CEA、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC7、βhCG、Lewis-Y、CD20、CD33、CD30、gangliosideGD3、9-O-Acetyl-GD3、GM2、globoH、fucosylGM1、PolySA、GD2、RON、c-Met、CEACAM-6、PCTA-1、PSA、PAP、ALCAM(CD166)、PECAM-1、CD151、MAGE-1、TROP2、IGF1R、TGFBR2、GHRHR、GHR、IL-6R、gp130、TNFR2、OSMRp、Patched-1、Frizzled.Robol、LTpR、CD26、CD27、CD44、CD80、CD81、CD86、CD100、CXCR4、SAS、BCMA、TWEAKR/Fnl4、FGFR4、VEGFR1、VEGFR2、SSX1、およびSSX2、カルボアンヒドラーゼIX(MN/CAIX)、CD44v6、ソニックヘッジホッグ(Shh)、Wue-1、形質細胞抗原、(膜結合型)IgE、メラノーマコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNFα前駆体、STEAP、メソセリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly-6;デスモグレイン4、E-カドヘリン新エピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19-9マーカー、CA-125マーカー、ミュラー抑制物質(MIS)受容体II型、sTn(シアリル化Tn抗原、TAG72)、FAP(線維芽細胞活性化抗原)、エンドシアリン、EGFRvIII、L6、SAS、CD63、TF抗原、Cora抗原、CD7、CD79b、CD22、Igα、Igβ、gp100、MT-MMPs、FI9抗原、CO-29、EphA2。
【0158】
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質は、HER2に対する結合部分を含み得る。
【0159】
例えば、HER2に対する結合部分は、抗HER2抗体またはHER2に対する抗原結合断片であり得る。
【0160】
本出願において、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体から選択され得る。
【0161】
本出願において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含み得る。
【0162】
本出願において、HER2に対する結合部分は、配列番号16または配列番号20の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0163】
本出願において、HER2に対する結合部分は、HCDR1-3を含み得る。HCDR1は、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0164】
本出願において、HER2に対する結合部分は、VHを含み得る。例えば、HER2に対する結合部分のVHは、フレームワーク領域H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み得る。
【0165】
本出願において、HER2に対する結合部分のVHは、配列番号16または配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0166】
本出願において、HER2に対する結合部分は、抗体重鎖定数領域を含み得る。
【0167】
本出願において、抗体重鎖定常領域は、IgG定常領域を含む。
【0168】
本出願において、抗体重鎖定常領域は、配列番号18または配列番号26に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0169】
本出願において、HER2に対する結合部分は、配列番号15または配列番号19の軽鎖可変領域VLからのLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0170】
本出願において、HER2に対する結合部分は、LCDR1-3を含み得る。LCDR1は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0171】
本出願において、HER2に対する結合部分は、VLを含み得る。例えば、HER2に対する結合部分のVLは、フレームワーク領域L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4を含み得る。
【0172】
本出願において、HER2に対する結合部分は、抗体軽鎖定数領域を含み得る。
【0173】
本出願において、抗体軽鎖定数領域は、lgk定数領域を含み得る。
【0174】
本出願において、抗体軽鎖定常領域は、配列番号17または配列番号25に記載のアミノ酸配列を含む。
【0175】
本出願において、HER2に対する結合部分は、HCDR1-3およびLCDR1-3を含み得る。HCDR1は、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR2は、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み得る。HCDR3は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR1は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR2は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み得る。LCDR3は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0176】
本出願において、HER2に対する結合部分は、VHとVLを含み得る。VHは、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み得、VLは配列番号15に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0177】
本出願において、HER2に対する結合部分は、VHとVLを含み得る。VHは、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み得、VLは配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0178】
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質は、CD20に対する結合部分を含み得る。
【0179】
例えば、CD20に対する結合部分は、抗CD20抗体またはCD20に対する抗原結合断片であり得る。
【0180】
本出願において、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体から選択され得る。
【0181】
本出願において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含み得る。
【0182】
本出願において、CD20に対する結合部分は、配列番号24の重鎖可変領域VHからのHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0183】
本出願において、CD20に対する結合部分のVHは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む。
【0184】
本出願において、CD20に対する結合部分は、抗体重鎖定数領域を含み得る。
【0185】
本出願において、抗体重鎖定常領域は、IgG定常領域を含む。
【0186】
本出願において、抗体重鎖定常領域は、配列番号18または配列番号26に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0187】
本出願において、CD20に対する結合部分は、配列番号23の軽鎖可変領域VLからのLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3領域のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む。
【0188】
本出願において、CD20に対する結合部分は、抗体軽鎖定数領域を含み得る。
【0189】
本出願において、抗体軽鎖定数領域は、lgK定数領域を含み得る。
【0190】
本出願において、抗体軽鎖定常領域は、配列番号17または配列番号25に記載のアミノ酸配列を含む。
【0191】
本出願において、CD20に対する結合部分は、VHとVLを含み得る。VHは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含み得、VLは、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0192】
多特異的抗原結合タンパク質
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片であり得る。例えば、多特異的抗原結合タンパク質は、インタクトな抗体(例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および/または完全ヒト抗体)であり得る。例えば、多特異的抗原結合タンパク質はIgG抗体であり得る。例えば、多特異的抗原結合タンパク質は、その抗原結合断片であり得、例えば、多特異的抗原結合タンパク質は、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含み得る。例えば、多特異的抗原結合タンパク質はF(ab’)2であり得る。
【0193】
本出願において、CD3に対する結合部分は、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含み得る。第1のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体の重鎖可変領域VHを含み得、第2のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含み得る。
【0194】
本出願において、CD3に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み得る。CD3に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0195】
本出願において、第1のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体の軽鎖を含み得る。また、本出願において、第2のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体の重鎖を含み得る。
【0196】
本出願において、第1のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体のVLおよび軽鎖定常領域を含み得る。また、本出願において、第2のポリペプチド鎖は、CD3に結合する抗体のVH、重鎖定常領域のCHI、およびヒンジを含み得る。
【0197】
例えば、CD3に結合する抗体は、本出願のCD3抗体を含み得る。
【0198】
本出願において、軽鎖定数領域はIgG由来であり得る。例えば、IgG2由来、またはマウスIgG2由来であり得る(例えば、IgG2a由来であり得る)。
【0199】
本出願において、重鎖定常領域(例えば、CHI)は、IgGに由来であり得る。例えば、IgG2由来、またはラットIgG2由来であり得る(例えば、IgG2b由来であり得る)。本出願において、ヒンジはIgG由来であり得る。例えば、IgG2由来、またはラットIgG2由来であり得る(例えば、IgG2b由来であり得る)。
【0200】
本出願において、第2のポリペプチド鎖は、ヒンジのC末端にリンカーを含み得る。例えば、リンカーは可撓性リンカーであり得る。例えば、リンカーはGGGGSである。
【0201】
本出願において、第2のポリペプチド鎖は、そのC末端にタグを含み得る。例えば、タグは、タンパク質(例えば、第2のポリペプチド鎖、および/またはCD3に対する結合部分)の単離および/または精製に利用可能な任意のタグであり得る。例えば、タグはHisタグであり得る。
【0202】
本出願において、TAAに対する結合部分は、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖を含み得、第3のポリペプチド鎖は、TAAに結合する抗体の重鎖可変領域VHを構成する場合があり、第4のポリペプチド鎖は、TAAに結合する抗体の軽鎖可変領域VLを構成する場合がある。
【0203】
本出願において、第3のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体の重鎖可変領域VHを構成し、第4のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含み得る。
【0204】
本出願において、HER2に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含み得、HER2に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む場合がある。または、HER2に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号20に記載のアミノ酸配列を含み得、HER2に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む場合がある。
【0205】
本出願において、第3のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体の重鎖可変領域VHを構成し、第4のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体の軽鎖可変領域VLを含み得る。
【0206】
本出願において、CD20に結合する抗体の重鎖可変領域VHは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含み得、CD20に結合する抗体の軽鎖可変領域VLは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む場合がある。
【0207】
本出願において、第3のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体の軽鎖を含み得る。また、本出願において、第4のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体の重鎖を含み得る。
【0208】
または、本出願において、第3のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体のVLおよび軽鎖定常領域を含み得る。そして、本出願において、第4のポリペプチド鎖は、HER2に結合する抗体のVH、重鎖定常領域のCHI、及びヒンジを含み得る。
【0209】
例えば、HER2に結合する抗体は、本出願のHER2抗体を含み得る。
【0210】
本出願において、第3のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体の軽鎖を含み得る。また、本出願において、第4のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体の重鎖を含み得る。
【0211】
または、本出願において、第3のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体のVLおよび軽鎖定常領域を含み得る。そして、本出願において、第4のポリペプチド鎖は、CD20に結合する抗体のVH、重鎖定常領域のCHI、及びヒンジを含み得る。
【0212】
例えば、CD20に結合する抗体は、本出願のCD20抗体を含み得る。
【0213】
本出願において、軽鎖定数領域はIgG由来であり得る。例えば、IgG2由来、またはマウスIgG2由来であり得る(例えば、IgG2a由来であり得る)。
【0214】
本出願において、重鎖定常領域(例えば、CHI)は、IgGに由来であり得る。例えば、IgG2由来、またはマウスIgG2由来であり得る(例えば、IgG2a由来であり得る)。本出願において、ヒンジはIgG由来であり得る。例えば、IgG2由来、またはマウスIgG2由来であり得る(例えば、IgG2a由来であり得る)。
【0215】
本出願において、第4のポリペプチド鎖は、ヒンジのC末端にリンカーを含み得る。例えば、リンカーは可撓性リンカーであり得る。例えば、リンカーはGGGGSである。
【0216】
本出願において、第4のポリペプチド鎖は、そのC末端にタグを含み得る。例えば、タグは、タンパク質(例えば、第4ポリペプチド鎖、および/またはHER2もしくはCD20に対する結合部分)の単離および/または精製に利用可能な任意のタグであり得る。例えば、タグはstrep-tagIIであり得る。
【0217】
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質は、1つの第1のポリペプチド鎖、1つの第2のポリペプチド鎖、1つの第3のポリペプチド鎖および1つの第4のポリペプチド鎖を含み得る。多特異的抗原結合タンパク質において、第4のポリペプチド鎖は、第3のポリペプチド鎖に対応するものであり得、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖は、同一のTAAに結合可能であり得る。
【0218】
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質は、宿主細胞の組換え発現により産生され得る。
【0219】
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質を産生する宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、哺乳動物細胞またはウイルスであり得る。
【0220】
本出願において、細菌細胞は大腸菌であり得る。
【0221】
本出願において、真菌細胞は酵母細胞であり得る。
【0222】
本出願において、哺乳動物細胞は、CHO、NSO、BHK、またはHEK293細胞であり得る。
【0223】
本出願において、多特異的抗原結合タンパク質はハイブリドーマ細胞により産生され得る。
【0224】
本出願において、ハイブリドーマ細胞は、マウス、ラットまたはウサギ由来であり得る。
【0225】
本出願において、多特異性抗原結合タンパク質の形式は、二重特異性抗体、二重特異性ダイアボディ、二重特異性scFv、TandAb、三価結合分子、または四価結合分子であり得る。
【0226】
本出願において、多重特異性抗原結合タンパク質は、IgA、IgG、IgD、IgE、またはIgM抗体に由来する定常領域を含み得る。
【0227】
本出願において、タンパク質はまた、タンパク質と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み得る。例えば、相同体または変異体は、タンパク質と80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上)の配列同一性を有するポリペプチドであり得る。
【0228】
本出願で同定されるポリペプチド配列の文脈で使用される「パーセント(%)配列同一性」という用語は、一般に、「配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後、第2の参照ポリペプチド配列またはその一部のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である、クエリ配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージ」を指し得る。必要に応じて、配列同一性の最大パーセントを達成し、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない。パーセントアミノ酸/ヌクレオチド配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、NEEDLEまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技術の範囲内である様々な方法で達成できる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定できる。同一性パーセントは、定義されたポリペプチド/ポリヌクレオチド配列全体の長さにわたって測定され得、またはより短い長さにわたって、例えば、より大きな定義されたポリペプチド/ポリヌクレオチド配列から取られた断片の長さにわたって測定され得る。本明細書、表、図または配列表に示される配列によってサポートされる任意の断片長は、同一性パーセントが測定され得る長さを記述するために使用され得ることが理解される。
【0229】
1~16のアミノ酸配列(および/またはその任意の1つ以上の断片および/または誘導体)のいずれも、当業者の所望に応じて他のアミノ酸で置換することもできる。例えば、当業者は、以下の表1に示すように、特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置き換えることによって保存的置換を行うことができる。選択される特定のアミノ酸置換は、選択された部位の位置に依存する可能性がある。このような保存的アミノ酸置換は、その位置のアミノ酸残基のサイズ、極性、電荷、疎水性または親水性にほとんどまたは全く影響がないように、天然アミノ酸残基を非天然残基で置換することを伴う場合がある。
【0230】
【0231】
核酸、ベクター、細胞
別の態様では、本出願は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質をコードする1つまたは複数の単離された核酸分子を提供する。
【0232】
別の態様では、本出願は、本出願の単離された核酸分子を含み得るベクターを提供する。
【0233】
別の態様では、本出願は、本出願の単離された核酸分子および/または本出願のベクターを含み得る細胞を提供する。
【0234】
別の態様では、本出願は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質を調製する方法を提供し、この方法は、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の発現を可能にする条件下で本出願の細胞を培養することを含み得る。
【0235】
単離された核酸は、それぞれが抗原結合タンパク質(例えば、CD3に対する結合部分、および/またはTAAに対する結合部分)をコードする1つまたは複数の核酸分子を含み得る。例えば、単離された核酸は、少なくとも2つの核酸分子を含み得る。一方は抗体重鎖またはその断片をコードし、もう一方は抗体軽鎖またはその断片をコードする。
【0236】
単離された核酸または複数の単離された核酸は、当技術分野で周知の組換え技術を使用して合成され得る。例えば、単離された核酸または複数の単離された核酸は、自動DNA合成装置を用いて合成され得る。標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術には、Sambrook、J.Fritsch、E.F.およびManiatis、T.Molecular Cloningによって記載されている技術が含まれる。研究室マニュアル;コールドスプリングハーバー研究所出版局:Cold Spring Harbor、(1989)(Maniatis)、T.J.Si1havy、M.L.Bennan、およびL.W.Enquist著、「Experiments with Gene Fusions」、コールドスプリングハーバー研究所、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州(1984)、およびAusubel、F.M.ら、Current分子生物学のプロトコル、出版物。Greene Publishing Assoc、およびWiley-Interscience(1987)による。簡単に言うと、対象の核酸は、ゲノムDNA断片、cDNA、およびRNAから調製することができ、これらはすべて細胞から直接抽出することもできるし、PCRおよびRT-PCRを含むがこれらに限定されない様々な増幅プロセスによって組換え生成することもできる。
【0237】
核酸の直接化学合成では、通常、成長するヌクレオチドポリマー鎖の末端5’ヒドロキシル基への3’ブロックおよび5’ブロックのヌクレオチドモノマーの連続的な付加が含まれ、各付加は末端5の求核攻撃によって影響を受ける可能性がある。追加されたモノマーの3’位にある成長鎖のヒドロキシル基。典型的には、ホスホトリエステル、ホスホラミダイトなどのリン誘導体である。例えば、Matteuciら、Tet.Lett.521:719(1980);Caruthersらの米国特許第4,500,707号明細書;そしてSouthernらの米国特許第5,436,327号明細書および第5,700,637号明細書である。
【0238】
ベクターは、任意の直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター等であり得る。ウイルスベクターの非限定的な例には、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが含まれ得る。本出願において、ベクターは発現ベクター、例えばプラスミドであり得る。
【0239】
発現ベクターは、特定の種類の宿主細胞での使用には適しているが、他の種類の宿主細胞での使用には適さない場合がある。例えば、発現ベクターを宿主生物に導入し、その後、ベクターに含まれる任意の遺伝子/ポリヌクレオチドの生存率および発現をモニタリングできる。
【0240】
発現ベクターはまた、発現時に、発現ベクターを保有する宿主細胞を選択または識別するのに有用な1つまたは複数の表現型形質を与える1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含み得る。真核細胞に適した選択マーカーの非限定的な例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素およびネオマイシン耐性が挙げられる。
【0241】
主題のベクターは、様々な確立された技術によって宿主細胞に安定的にまたは一過的に導入され得る。例えば、1つの方法は、発現ベクターがカルシウム沈殿物を介して導入される塩化カルシウム処理を含み得る。他の塩、例えばリン酸カルシウムも同様の手順に従って使用できる。さらに、エレクトロポレーション(つまり、核酸に対する細胞の透過性を高めるための電流の印加)も使用できる。形質転換法の他の例としては、マイクロインジェクション、DEAEデキストラン媒介形質転換、酢酸リチウム存在下での熱ショックなどが挙げられます。脂質複合体、リポソーム、デンドリマーも宿主細胞をトランスフェクトするために使用できる。
【0242】
本出願において、細胞は、本開示の多重特異性抗原結合タンパク質を発現し得る。細胞は真核細胞であっても原核細胞であり得る。適切な細胞を本出願の核酸またはベクターで形質転換またはトランスフェクトし、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質の発現および/または分泌に利用できる。例えば、細胞は、HEK293細胞、他の細菌宿主細胞、酵母細胞、または様々な高等真核細胞であり得る。
【0243】
本出願において、方法は、場合により、本出願の多重特異性抗原結合タンパク質を採取することをさらに含み得る。
【0244】
医薬組成物、使用および方法
別の態様では、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、および/または本出願の細胞、および任意に薬学的に許容されるアジュバントを含む、医薬組成物を提供する。
【0245】
別の態様では、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、本出願のベクターの使用方法を提供する;本出願のベクター、本出願の細胞、および/または腫瘍を予防、緩和および/または治療するための薬剤の製造における本出願の医薬組成物の使用方法を提供する。
【0246】
別の態様では、本出願は、腫瘍の予防、緩和および/または治療に使用するための、本出願の多特異性抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を提供する。
【0247】
別の態様では、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、腫瘍を予防、緩和および/または治療する方法を提供する。
【0248】
本出願において、「薬学的に許容されるアジュバント」は、あらゆる防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。微生物の存在防止は、上述した滅菌手順と、様々な抗菌剤および抗真菌剤の含有との両方によって確保され得る。また、組成物に等張化剤を含めることが望ましい場合もある。さらに、吸収を遅延させる薬剤を含有させることにより、注射可能な医薬形態の吸収を延長させることができる。
【0249】
医薬組成物は、典型的には、無菌であり、製造および保存の条件下で安定であり得る。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化できる。担体は、例えば、水、エタノールおよびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えばコーティングの使用によって維持できる。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0250】
本出願の医薬組成物は、腫瘍の治療に使用される他の化合物、薬物、および/または薬剤を含み得る。
【0251】
本出願において、腫瘍は、固形腫瘍および/またはb100d腫瘍を含み得る。例えば、b100d腫瘍は、B細胞リンパ腫および/または白血病、例えば、急性T細胞白血病、またはヒトB細胞リンパ腫を含み得る。例えば、固形腫瘍は乳がんを含む。
【0252】
本出願において、腫瘍を予防、緩和および/または治療することは、腫瘍の成長を阻害および/または低減すること、腫瘍の進行を阻害することを含み得る。例えば、腫瘍を予防、緩和および/または治療することは、別の薬剤、例えば、腫瘍を治療するための当該技術分野で公知の任意の薬剤を投与することも含み得る。
【0253】
本出願の医薬組成物および/または本出願の多特異的抗原結合タンパク質は、任意の合理的な投与量、レジメンおよび/または様式で必要な被験体に投与することができ、これら全ての投与条件は、腫瘍の種類、被験体の状況等に応じて調整できる。
【0254】
別の態様において、本出願は、T細胞エンゲージャーの製造における、本出願のCD3に対する結合部分、および/または本出願の多特異的抗原結合タンパク質の使用を提供する。
【0255】
本出願において、T細胞エンゲージャーは、Bi特異的T細胞エンゲージャー(BiTEs)を含んでなり得る。T細胞エンゲージャーは宿主の免疫系を誘導し、腫瘍細胞に対してより特異的なT細胞の細胞傷害活性を示す可能性がある。T細胞エンゲージャーは、腫瘍を治療するための医薬品としてより安全である可能性がある。そして、T細胞エンゲージャーは、腫瘍細胞に対してより効果的な殺傷を示す可能性がある。
【0256】
別の態様において、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、T細胞を活性化する方法を提供する。
【0257】
別の態様において、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を投与することを含む、T細胞上で発現するCD3を標的とする方法を提供する。
【0258】
別の態様において、本出願は、本出願の多特異的抗原結合タンパク質、本出願の単離された核酸分子、本出願のベクター、本出願の細胞、および/または本出願の医薬組成物を投与することを含む、T細胞と腫瘍細胞との間の相互作用を促進する方法を提供する。
【0259】
別の態様において、本出願は、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺腺がん、扁平上皮肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、消化管がん、食道がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸部がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、尿路がん、肝細胞がん(HCC)、肛門がん、陰茎がん、頭頸部がんなどの治療方法を提供する。
【実施例】
【0260】
以下の実施例は、当業者に本発明の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を提供するために記載されており、発明者が彼らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。それらは、以下の実験が実行されたすべての実験であるか、または唯一の実験であることを表すことを目的とする。使用される数値(量、温度など)の正確性を確保するために努力が払われていますが、一部の実験誤差や偏差は考慮する必要がある。特に断りのない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏温度、圧力は大気圧または大気圧付近を示す。標準的な略語が使用され得る。例えば、bp、塩基対(複数可)。kb、キロ塩基(複数可)。π、ピコリットル(複数可)。sまたはsec、秒(複数可)。min、分(複数可)。hまたはhr、時間(複数可)。aa、アミノ酸(複数可)。nt、ヌクレオチド(複数可)。i.m.、筋肉内(複数可)。i.p.、腹腔内(複数可)。s.c.、皮下(複数可)などが挙げられる。
【0261】
実施例1 ハイブリドーマHER2-CD3二特異性抗体の作製とスクリーニング
HER2抗原およびCD3抗原を含む組成物をマウスおよびラットにそれぞれ注射し、脾臓におけるBリンパ球の増殖を刺激し、HER2およびCD3に対する抗体を特異的に分泌させた。マウスおよびラットの脾臓は複数回の免疫後に外科的に摘出し、骨髄腫細胞との細胞融合にはポリエチレングリコール(PEG)を用いた。次いで、融合細胞をHAT選択培地を通してスクリーニングした。HAT選択培地は、ヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、チミン(T)の3つの成分で構成される。HAT選択培地中のアミノプテリンはジヒドロ葉酸還元酵素の阻害剤であり、DNA合成の内因性経路を効果的にブロックできる。融合前の骨髄腫細胞は抗体を産生できず、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)遺伝子を欠いているため、HAT選択培地に対して感受性が高く、したがって生存できない。しかし、融合細胞はHGPRT酵素を合成でき、Bリンパ球と骨髄腫細胞の二重の特徴を継承できるため、HAT選択培地中で無限に増殖できる。
【0262】
融合細胞をHAT選択培地中で約10~14日間インキュベートし、その後、各ウェルが1つのハイブリドーマ細胞のみを含むように培地をマルチウェルプレート内で希釈した。これらの単一細胞クローンから、所定の特異的抗体を分泌するハイブリッド細胞株をELISAにより選択した。
【0263】
選択されたハイブリドーマの1つは、マウス由来の抗HER2抗体(略してHER2抗体)を発現するハイブリドーマであった。
【0264】
他の4つは、ラット由来の抗CD3抗体(略してCD3A抗体、CD3B抗体、CD3C抗体、およびCD3D抗体)を発現するハイブリドーマであった。
【0265】
HER2抗体を発現するハイブリドーマ細胞とCD3D抗体を発現するハイブリドーマ細胞を融合させ、抗HER2×抗CD3二重特異性抗体を発現する二重特異性ハイブリドーマ、すなわちハイブリドーマHER2-CD3D二重特異性抗体(以下、hHER2×CD3Dという)を得た。
【0266】
実施例2 ヒトT細胞株に対する各種CD3抗体の結合活性
a)試薬と消耗品:
1.ヒトT細胞株Jurkat(クローンE6-1、ATCC♯TIB-152)
2.抗CD3抗体:
(i)抗CD3A抗体(配列番号35に記載のアミノ酸を含むVHと配列番号36に記載のアミノ酸を含むVLを有する)
(ii)抗CD3B抗体(配列番号43に記載のアミノ酸を含むVHと配列番号44に記載のアミノ酸を含むVLを有する)
(iii)抗CD3C抗体(配列番号51に記載のアミノ酸を含むVHと配列番号52に記載のアミノ酸を含むVLを有する)
(iv)抗CD3D抗体(配列番号8に記載のアミノ酸を含むVHと配列番号7に記載のアミノ酸を含むVLを有する)
(v)UCHT-l(eBioscience、2100293)
3.二次抗体:FITC標識AffmiPureRatAnti-MouseIgG(H+L)(JacksonImm.Res.、415-095-166)、FITC標識AffmiPureMouseAnti-RatIgG(H+L)(JacksonImm.Res.、212-095-168)
4.PBS(センルイ、CR20012)
5.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
6.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
【0267】
b)方法:
本出願のCD3抗体と市販のUCHT-1のヒトCD3抗原に対する結合活性を比較するために、invitro細胞実験を用いて抗体の結合活性を検出した。
【0268】
まず、Jurkat細胞の濃度をPBSで1×107細胞/mlに調整した。これら2つの抗体の濃度は80μg/ml、40μg/ml、20μg/ml、10μg/ml、5μg/ml、2.5μg/ml、1.25μg/ml、0.625μg/ml、0.3125μg/ml、0.15625μg/ml、78.125ng/ml、39.0625ng/ml、19.53125ng/ml及び0ng/mlに調整された。次に、Jurkat細胞の懸濁液(50μl/ウェル)を加え、続いてこれら5種類のCD3抗体(50μl/ウェル)を異なる濃度でU字底プレートを備えた96ウェルプレートに加えた。最後、混合物中のこれら5つのCD3抗体の最終濃度は、それぞれ40μg/ml、20μg/ml、10μg/ml、5μg/ml、2.5μg/ml、1.25μg/ml、0.625μg/ml、0.3125μg/ml、0.15625μg/ml、78.125ng/ml、39.0625ng/ml、19.53125ng/ml、9.765625ng/ml及び0ng/mlであり、混合物を4℃の冷蔵庫で1時間インキュベートした。
【0269】
インキュベーション後、混合物を300gで5分間遠心分離して上清を除去し、PBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。最後に、二次抗体FITC標識AffmiPureMouseAnti-RatIgG(H+L)またはFITC標識AffmiPureRatAnti-MouseIgG(H+L)をそれぞれ用いて、抗CD3抗体-Jurkat細胞複合体またはUCHT-l-Jurkat細胞複合体に結合させ、フローサイトメトリーを行った。ジャーカット細胞に対する抗体の結合活性を評価するために、FITC陽性ジャーカット細胞を計算した(
図8)。
【0270】
GraphPadPrism7ソフトウェアを用いてグラフを可視化し、Jurkat細胞に対する抗体の結合活性の半値最大効果濃度(EC50)を算出した。CD3A、CD3B、CD3C、CD3DおよびUCHT-1抗体のEC50値は、それぞれ25.87pM、9.56pM、15.23pM、10.71pM、22.79pMであった。
【0271】
実施例3 CHOにおける組換えHER2-CD3二重特異性抗体の発現
本実施例では、CHO細胞を遺伝子改変し、組換えHER2×CD3D二特異性抗体(以下、rHER2×CD3Dと略す)を発現および産生させた。
【0272】
1.タンパク質配列の合成
rHER2-CD3D二重特異性抗体の構造を
図1に示す。抗体は2つの異なる抗原結合部分、すなわちHER2結合部分とCD3結合部分を含む。HER2結合部分は実施例1のマウス抗HER2抗体に由来し、CD3結合部分は実施例1のラット抗CD3D抗体に由来する。
【0273】
実施例1の抗HER2抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列をそれぞれp2MPT(ピューロマイシン耐性遺伝子を含む)の2つの異なる発現カセットに挿入し、組換えプラスミドp2MPT-EHELを得た。実施例1の抗CD3D抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸配列をそれぞれp2MPT(ピューロマイシン耐性遺伝子を含む)の2つの異なる発現カセットに挿入し、組換えプラスミドp2MPT-DHDLを得た。
【0274】
【0275】
rHER2-CD3D二重特異性抗体を発現させるために、2種類の組換えプラスミドをCHO細胞に1:1の割合で安定的に共導入した。トランスポザーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドpHT-PBase-oriを安定トランスフェクションの試薬として用いた。トランスフェクションの間、細胞密度を4.0×106細胞/mlに調整し、培地を新鮮なproCH05培地に交換した。トランスフェクション試薬はポリエチレンイミン(PEI)で、全DNAとPEIの比率は1:5であった。
【0276】
表3に従って、新鮮な培地に懸濁したCHO細胞にDNAとPEIを順次添加し、素早く混合した後、混合物を37℃のシェーカーに入れてトランスフェクションを行った。
【0277】
【0278】
2.rHER2-CD3D二重特異性抗体の細胞プールスクリーニング
トランスフェクションの72時間後、10ml容量の5×106個の細胞に10μg/mlのピューロマイシンを加え、37℃のシェーカーで培養した。培地は2-3日ごとにリフレッシュし、細胞は0.5×106細胞/mlの密度で継代し、10μg/mlのピューロマイシン中で維持した。10日間のスクリーニングの後、生存率97%以上の陽性細胞プールが得られた。
【0279】
3.rHER2-CD3D二重特異性抗体の発現
5.0×106細胞/mlの陽性細胞を、2mM酪酸ナトリウム添加培地で31℃、4日間培養した。1500rpmで5分間の遠心分離により上清を回収した。
【0280】
4.rHER2-CD3D二重特異性抗体の精製
ステップ3で得られた上清を2000rpmで遠心分離し、細胞破片を除去した後、0.45μmの微多孔膜で傾けた。MabselectSureアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて上清からFc部分を持つ抗体を濃縮し、pH5.8のクエン酸ナトリウム緩衝液を用いて抗CD3Dモノクローナル抗体を溶出した。その後、pH5.8からpH3.0まで20CVのグラジエント直線溶出を行った。
【0281】
採取したサンプルはTris-HClでpH5.4に調整した後、CaptoS衝撃イオン交換クロマトグラフィーカラムでrFIER2-CD3D二重特異性抗体と抗HER2モノクローナル抗体を分離した。精製されたrHER2-CD3D二重特異性抗体は、組換えHER2-CD3D二重特異性抗体であり、以下rHER2×CD3Dと称する。
【0282】
30Kdカットオフ限外濾過を行い、溶出バッファーをPBS溶液に置換した。rHER2×CD3DはウェスタンブロットとSDS-PAGEで純度を確認した。
図2はウェスタンブロットの結果を表す。
図2中、Mはマーカー、1-2行目はrHER2×CD3D、3行目は抗HER2モノクローナル抗体、4行目は抗CD3Dモノクローナル抗体を表す。
図3は、SDS-PAGEの結果を示す。ライン1はマーカーを表し、ライン2はrHER2×CD3Dを表す。
【0283】
実施例4 組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片の作製
HER2とCD20をそれぞれ標的とする重鎖可変領域VHと軽鎖可変領域VLは、市販のハーセプチンとリツキシマブから得られた。重鎖定常領域CHI、CLの軽鎖定常領域およびそのヒンジ領域はマウスIgG2aに由来した。精製のために、Strep-tagIIをCHIのC末端に連結した。
【0284】
CD3を標的とする重鎖可変領域VHおよび軽鎖可変領域VLは、実施例1の抗CD3D抗体または市販のUCHT1に由来した。重鎖定常領域CHI、CLの軽鎖定常領域およびそのヒンジ領域はラットIgG2bに由来した。Hisタグを精製のためにCHIのC末端に連結した。
【0285】
ラット由来Fabおよびマウス由来Fabの2つの部分は、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合され、組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2構造を形成した。
【0286】
組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片は、宿主細胞内で2つの異なるFab抗体断片を共発現させることにより得られた。組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片を含む細胞プールを安定遺伝子発現(SGE)により得た。高分子ポリエチレンイミン(PEI)が宿主細胞へのDNA導入を仲介し、piggyBacトランスポゾンシステムを用いて安定な細胞プールを得た。CHO細胞に2つの異なるプラスミドを共導入することにより、組換え抗CD3二重特異性抗体の完全なF(ab)’2断片が得られた。
【0287】
1.タンパク質の配列解析と合成
8つの遺伝子は以下のように合成された:
1)遺伝子1、エンコーディング:ハーセプチンVH(配列番号20に記載のアミノ酸を有する)-マウスIgG2aのCH1-マウスIgG2aのヒンジ-フレキシブルリンカーG4S-strep-タグII
2)遺伝子2、エンコーディング:ハーセプチンVL(配列番号19に記載のアミノ酸を有する)-マウスIgG2aのCL
3)遺伝子3、エンコーディング:リツキシマブVH(配列番号24に記載のアミノ酸を有する)-マウスIgG2aのCH1-マウスIgG2aのヒンジ-フレキシブルリンカーG4S-strep-tagII
4)遺伝子4、エンコーディング:リツキシマブVL(配列番号23に記載のアミノ酸を有する)-マウスIgG2aのCL
5)遺伝子5、エンコーディング:抗CD3DVH(配列番号8に記載のアミノ酸を有する)-ラットIgG2bのCHI-ラットIgG2bのヒンジ-フレキシブルリンカーG4S-His-タグ
6)遺伝子6、エンコーディング:抗CD3DVL(配列番号7に記載のアミノ酸を有する)-マウスIgG2aのCL
7)遺伝子7、エンコーディング:UCHT1VH(配列番号22に記載のアミノ酸を有する)-ラットIgG2bのCHI-ラットIgG2bのヒンジ-フレキシブルリンカーG4S-His-タグ、および、
8)遺伝子8、エンコーディング:UCHT1VL(配列番号21に記載のアミノ酸を有する)-マウスIgG2aのCL
【0288】
遺伝子1-8を発現ベクターにライゲーションし、宿主細胞株にトランスフェクトして、2つの異なるF(ab)’2断片の組換え抗CD3二重特異性抗体を作製し、その構造を
図4-5に示した。抗体の構造にはFc領域が含まれない。抗体は2つの異なる抗原結合部分、すなわちHER2結合部分とCD3結合部分、またはCD20結合部分とCD3結合部分を含む。この構造により、抗体は腫瘍細胞上に発現する腫瘍関連抗原(TAA)とT細胞上のCD3分子に同時に結合できる。そして、リコンビナント抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片は、精製のためにStrep-IIとHisペプチドの両方を持っている。
【0289】
2.プラスミド構築
遺伝子1-2または遺伝子3-4をp2MPT(ピューロマイシン耐性遺伝子を含む)の2つの異なる発現カセットに別々に挿入し、p2MPT-HH-HLおよびp2MPT-RH-RLと命名した組換えプラスミドを得た。遺伝子5-6または遺伝子7-8をp2MPT(ピューロマイシン耐性遺伝子を含む)の2つの異なる発現カセットに別々に挿入し、p2MPT-CH-CLおよびp2MPT-UH-ULと命名された組換えプラスミドを得た。
【0290】
【0291】
表4の組換えプラスミドを用いて、合計4つの組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片を構築した:(1)Herceptin×CD3DF(ab)’2;(2)Herceptin×UCHT1F(ab)’2;(3)Rituximab×CD3DF(ab)’2;および(4)Rituximab×UCHT1F(ab)’2。
【0292】
3.細胞トランスフェクション
CHO-DG44細胞を安定にトランスフェクトして、組換え抗CD3二重特異性抗体の上記4つのF(ab)’2断片を発現させた。
【0293】
トランスフェクション中、細胞密度を3.0×106細胞/mlに調整し、培地を新鮮なproCH05培地と交換した。トランスフェクション試薬はポリエチレンイミン(PEI)で、全DNAとPEIの比率は1:3であった。
【0294】
プラスミドp2MPT-HH-HLとp2MPT-CH-CL、p2MPT-RH-RLとp2MPT-CH-CL、p2MPT-HH-HLとp2MPT-UH-UL、p2MPT-RH-RLとp2MPT-UH-ULを添加し、その質量比は1:1とした。同時に、トランスポザーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドpHT-PBase-oriを添加し、添加量はDNA総量の1/10とした。表5に従って、新鮮な培地に懸濁したCHO-DG44細胞にDNAとPEIを順次添加し、素早く混合した後、混合物を37℃のシェーカーに入れてトランスフェクションを行った。
【0295】
【0296】
4.組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片の細胞プールスクリーニング
トランスフェクション96時間後、10ml容量の1.0×107個の細胞に10μg/mlのピューロマイシンを加え、37℃のシェーカーで培養した。培地は2日ごとにリフレッシュし、細胞は1.0×106細胞/mlの密度で継代し、10μg/mlのピューロマイシン中で維持した。12日間のスクリーニングの後、生存率95%以上の陽性細胞プールが得られた。
【0297】
5.組換え抗CD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片の発現
4.0×106細胞/mlの陽性細胞を、2mM酪酸ナトリウムを添加した培地中で31℃で7日間培養した。1000rpmで5分間の遠心分離により上清を回収した。
【0298】
6.組換えCD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片の精製
ステップ5で得られた上清を2000rpmで遠心分離して細胞破片を除去し、0.45μmの微多孔性膜で濾過した。Hisタグ付きF(ab’)2は、Histrapexcelアフィニティークロマトグラフィーカラムを用いてCHO発現上清から濃縮され、続いてHistrapアフィニティーカラムから濃縮された組換え抗CD3bi特異的抗体のF(ab’)2断片は300mMイミダゾール溶液で溶出された。溶出したサンプルをStrepTrapHPアフィニティークロマトグラフィーカラムで濃縮した。濃縮後、5mMの脱硫ビオチン(Desthiobiotin)を用いて溶出し、His-tagとStrep-tagIIの両方を持つ目的物を得た。30Kdカットオフ限外濾過を行い、溶出バッファーをPBS溶液に置換した。精製した抗CD3二重抗体のF(ab’)2断片をSDS-PAGEで検出した結果を
図6-7に示す。
図6において、線1はHerceptin×CD3DF(ab)’2を表し、線2はHerceptin×UCHT1F(ab)’2を表し、線3はマーカーを表す。7において、1行目はマーカー、2行目はRituximab×CD3DF(ab)’2、3行目はRituximab×UCHT1F(ab)’2を表す。
【0299】
HER2×CDF(ab)’2とCD20×CDF(ab)’2の構造を
図4と
図5に示す。
【0300】
実施例5 rHER2×CD3DおよびhHER2×CD3DによるInvitroSK-BR3細胞死滅アッセイ
a)試薬と消耗品:
1.細胞株:SK-BR-3(ATCC♯HTB-30)
2.末梢b100d単核細胞(PBMC)(リード、PBMC-2020110403)
3.HER2×CD3二重特異性抗体:
(i)rHER2×CD3D(実施例3で生成)
(ii)hHER2×CD3D(実施例1で作製)
4.PBS(センルイ、CR20012)
5.RPMI1640(Gibco、22400089)
6.FBS(HyClone、SH30406.05)
7.CellTrace遠赤細胞増殖キット(Invitrogen、C34572)
8.ヨウ化プロピジウム(PI)(シグマ、P4170)
9.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
10.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
【0301】
b)方法:
異なる抗体作製法によって作製された二重特異性抗体の薬力学的活性を比較するために、SK-BR-3細胞に対するrHER2×CD3DおよびhHER2×CD3Dの殺傷効果を検出するinvitro実験を行った。
【0302】
まず、表面にHER2を高発現しているSK-BR-3を細胞染色(FarRed)で染色した。次いで、細胞を10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁した。続いて、細胞濃度を8×105細胞/mlに調整した。健康なドナーからのPBMCを10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁し、細胞濃度を8×106細胞/mlに調整した。最後に、PBMCとSK-BR-3を体積比1:1でよく混合した。
【0303】
rHER2×CD3DまたはhHER2×CD3Dの濃度を0、2×10-4、2×10-3、2×10-2、2×10-1、2×100、2×101、2×102、2×103及び2×104に連続希釈した。PBMCとSK-BR-3の細胞混合物(50μl/ウェル)を96ウェルプレートに添加し、続いて連続希釈したrHER2×CD3DまたはhHER2×CD3D(50μl/ウェル)を細胞混合物に添加した。rHER2×CD3DまたはhHER2×CD3Dの最終濃度は、0、10-4、10-3、10-2、10-1、100、101、102、103及び104pMに調整した。
【0304】
二特異性抗体と細胞の混合物を37℃のインキュベーターで24時間インキュベートした後、400gで5分間遠心して上清を除去した。細胞をパンクレアチンで10分間消化し、PBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。
【0305】
最後に、死細胞をPIで染色し、残存するSK-BR-3細胞の量をフローサイトメトリーで解析して、SK-BR-3細胞に対する抗体媒介細胞傷害の殺傷効果を決定した。
【0306】
フローサイトメトリーを行う際、細胞懸濁液中のSK-BR-3細胞を標識するためにAPCチャンネルを用い(ファーレッド染色)、生細胞と死細胞を区別するためにPEチャンネルを用いた(PI染色)。PIは死細胞を染色することができるため、フローサイトメトリーで分析したAPC陽性細胞数とPi陰性細胞数(APC+PT)を最終的に用いて残存SK-BR-3細胞を定量し、殺傷率を算出した。
【0307】
SK-BR-3細胞に対するPBMCの殺傷活性を媒介するrHER2×CD3DとhHER2×CD3Dの効果を比較するために、グラフの可視化にはGraphPadPrism7ソフトウェアを用い、半減最大効果濃度(EC50)の算出には4パラメータフィッティング曲線の非線形回帰を用いた。rHER2×CD3Dの場合、EC50値は約3.33pMである。hHER2×CD3Dの場合、EC50値は約22.52pMである。したがって、CHO細胞から産生されたrHER2×CD3Dは、ハイブリドーマから産生されたhHER2×CD3Dよりも腫瘍細胞に対する殺傷活性が有意に優れているという驚くべき結果が得られた。
図9は、hHER2×CD3DおよびrHER2×CD3Dを介するSK-BR-3細胞に対するPBMCの殺傷効果を示す。
【0308】
実施例6 CD3結合部分は、SK-BR3細胞死滅に対するrHER2×CD3Dの細胞毒性効果に寄与
a)試薬と消耗品:
1.細胞株:SK-BR-3(ATCC♯HTB-30)
2.PBMCから精製されたT細胞(健常人ドナー♯1:Reid、PBMC-2021110902;健常人ドナー♯2:Oricells、LP210818013、Z0231)
3.HER2×CD3二重特異性抗体:
(i)rHER2×CD3D(実施例3で生成);
(ii)hHER2×CD3D(実施例1で作製)
4.PBS(センルイ、CR20012)
5.RPMI1640(Gibco、22400089)
6.FBS(HyClone、SH30406.05)
7.CellTrace遠赤細胞増殖キット(Invitrogen、C34572)
8.ヨウ化プロピジウム(PI)(シグマ、P4170)
9.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
10.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
【0309】
b)方法:
実施例6に基づき、CD3結合部分がSK-BR3細胞の殺傷に対するrHER2×CD3Dの細胞毒性効果の改善に寄与するかどうかを決定するために、SK-BR-3細胞に対するrHER2×CD3DおよびhHER2×CD3Dの殺傷効果を検出するinvitro実験を行った。実験のために健康なドナーのPBMCからT細胞を精製した。
【0310】
表面にHER2を高発現しているSK-BR-3を細胞染色(FarRed)で染色した。次いで、細胞を10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁した。続いて、細胞濃度を2×104細胞/mlに調整した。健康なドナーのPBMCから精製したT細胞を10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁し、T細胞濃度を2×105細胞/mlに調整した。最後に、PBMCから精製したT細胞とSK-BR-3を体積比1:1でよく混合した。
【0311】
rHER2×CD3DまたはhHER2×CD3Dの濃度を0、2×10-4、2×10-3、2×10-2、2×10-1、2×100、2×101、2×102、2×103および2×104pMに連続希釈した。PBMCから精製したT細胞とSK-BR-3の細胞混合物(50μl/ウェル)を96ウェルプレートに加え、続いて段階希釈したrHER2×CD3DまたはhHER2×CD3D(50μl/ウェル)を細胞混合物に加えた。rHER2×CD3DまたはhHER2×CD3Dの最終濃度は、0、10-4、10-3、10-2、10-1、100、101、102、103及び104pMに調整した。
【0312】
二特異性抗体と細胞の混合物を37℃のインキュベーターで24時間インキュベートした後、400gで5分間遠心して上清を除去した。細胞をパンクレアチンで10分間消化し、PBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。
【0313】
最後に、死細胞をPIで染色し、残存するSK-BR-3細胞の量をフローサイトメトリーで解析して、SK-BR-3細胞に対する抗体媒介細胞傷害の殺傷効果を決定した。
【0314】
フローサイトメトリーを行う際、細胞懸濁液中のSK-BR-3細胞を標識するためにAPCチャンネルを用い(ファーレッド染色)、生細胞と死細胞を区別するためにPEチャンネルを用いた(PI染色)。PIは死細胞を染色することができるので、フローサイトメトリーで分析したAPC陽性細胞とPi陰性細胞(APC+PI-)の数を用いて、残存するSK-BR-3細胞を定量し、殺傷率を算出した。
【0315】
SK-BR-3細胞に対するPBMCから精製したT細胞の殺傷活性を媒介するrHER2×CD3DとhHER2C’D3Dの効果を比較するために、グラフの可視化にGraphPadPrism7ソフトウェアを使用し、半値最大効果濃度(EC50)の算出に4パラメータフィッティング曲線の非線形回帰を使用した。rHER2CD3Dの場合、ドナー1のEC50値は約7.65pMであり、hHER2×CD3Dの場合、ドナー1のEC50値は約12.75pMであった。rHER2×CD3Dの場合、ドナー2のEC50値は約3.73pMであり、hHER2×CD3Dの場合、ドナー2のEC50値は約7.28pMであった。したがって、CD3結合部分はhHER2×CD3DよりもrHER2×CD3Dの方がSK-BR3細胞の殺傷において有意に優れた細胞毒性効果に寄与している。
図15は、hHER2×CD3DおよびrHER2×CD3Dを介するSK-BR-3細胞に対するT細胞の殺傷効果を示す。
【0316】
実施例7 hHER2×CD3DおよびrHER2×CD3Dによって誘導されるIL-6の放出
a)試薬と消耗品:
1.キット:LEGENDMAXTMヒトIL-6ELISA(バイオレジェンド、B329676)
2.テストサンプル:
(i)実施例5のhHER2×CD3Dからの上清;(ii)実施例5のrHER2×CD3Dからの上清;
3.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
4.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
【0317】
b)方法:
サイトカイン放出症候群(CRS)は、臨床で使用されるT細胞関与二特異性抗体の主な安全性の問題であるため、上清中のサイトカインの放出は、本出願の抗CD3二特異性抗体を投与する際の安全性に関係する。CRSを誘発するサイトカインには、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10などが含まれ、その中でIL-6はCRSの誘発において最も重要なサイトカインである。
【0318】
rHER2×CD3Dは10
2pMの濃度で最大の細胞毒性効果を示し、hHER2×CD3Dは10
4pMの濃度でrHER2×CD3Dと同等の細胞毒性効果を示した(
図9)。そこで、抗体濃度10
2pMと10
4pMにおけるアンディボディ誘発細胞毒性とサイトカインIL-6の放出の相関を解析した。表6に示すように、hHER2×CD3Dと比較して、rHER2×CD3Dが10
2pMの濃度でPBMCによる腫瘍細胞死滅を有意に増加させた場合(54.05%vs16.18%)、IL-6放出レベルは有意に低かった(1795.5pg/mlvs2928.79pg/ml);hHER2×CD3Dと比較して、rHER2×CD3Dは104pMの濃度で腫瘍細胞死滅をわずかに増加させたが(61.9%vs58.35%)、IL-6放出レベルは有意に増加しなかった(3837pg/mlvs3295.82pg/ml)。結論として、ハイブリドーマHER2×CD3Dと比較して、組換えHER2×CD3DはPBMCを介した抗腫瘍効果を増強するが、サイトカイン放出は少なく、臨床使用においてより安全な選択肢となる。
【0319】
【0320】
実施例8 ハーセプチン×CD3二重特異性抗体によるInvitroSK-BR3細胞死滅アッセイ
a)試薬と消耗品:
1.細胞株:SK-BR-3(ATCC♯HTB-30)
2.PBMC:健康なドナー♯1(リード、PBMC-2021010602);健康なドナー♯2(リード、PBMC-2021011802)
3.ハーセプチン×CD3二重特異性抗体:
(i)ハーセプチン×CD3DF(ab)’2、実施例4で生成;
(ii)ハーセプチン×UCHT1F(ab)’2、実施例4で生成;
4.PBS(センルイ、CR20012)
5.RPMI1640(Gibco、22400089)
6.FBS(HyClone、SH30406.05)
7.CellTrace遠赤細胞増殖キット(Invitrogen、C34572)
8.ヨウ化プロピジウム(PI)(シグマ、P4170)
9.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
10.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
b)方法:
異なるCD3抗体によって産生された二重特異性抗体の薬力学的活性を比較するために、SK-BR-3細胞に対するハーセプチン×CD3DF(ab)’2およびハーセプチン×UCHT1F(ab)’2の殺傷効果を検出するinvitro細胞実験を行った。
【0321】
まず、表面にHER2を高発現しているSK-BR-3を細胞染色(FarRed)で染色した。次いで、細胞を10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁した。続いて、細胞濃度を8×105細胞/mlに調整した。健康なドナーからのPBMCを10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁し、細胞濃度を8×106細胞/mlに調整した。最後に、PBMCとSK-BR-3を体積比1:1でよく混合した。HerceptinCD3DF(ab)’2またはHerceptin×UCHT1F(ab)’2の濃度を0、2×100、2×101、2×102、2×103、2×104、105および2×105pMに連続希釈した。PBMCとSK-BR-3の細胞混合物(50μl/ウェル)を96ウェルプレートに添加し、続いて段階希釈したハーセプチン×CD3DF(ab)’2またはハーセプチン×UCHT1F(ab)’2(50μl/ウェル)を添加した。Herceptin×CD3DF(ab)’2またはHerceptin×UCHT1F(ab)’2の最終濃度は、0、100、101、102、103、104、5×104、105pMに調整した。
【0322】
二特異性抗体と細胞の混合物を37℃のインキュベーターで24時間インキュベートした後、400gで5分間遠心して上清を除去した。細胞をパンクレアチンで10分間消化し、PBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。最後に、死細胞をPIで染色し、残存するSK-BR-3細胞の量をフローサイトメトリーで解析して、SK-BR-3細胞に対する抗体媒介細胞傷害の殺傷効果を決定した。
【0323】
フローサイトメトリーを行う際、細胞懸濁液中のSK-BR-3細胞を標識するためにAPCチャンネルを用い(ファーレッド染色)、生細胞と死細胞を区別するためにPEチャンネルを用いた(PI染色)。PIは死細胞を染色できるため、フローサイトメトリーで分析されたAPC陽性およびPi陰性(APC+PT-)細胞の数を最終的に使用して、残存SK-BR-3細胞を定量し、死滅率を計算した。
【0324】
SK-BR-3細胞に対するPBMCの殺傷活性媒介に対するハーセプチン×CD3DF(ab)’2とハーセプチン×UCHT1F(ab)’2の効果を比較するために、GraphPadPrism7ソフトウェアを使用してグラフを視覚化し、非線形回帰を行いました。4パラメータフィッティング曲線を使用して、最大効果濃度の半値(EC50)を計算した。Herceptin×CD3DF(ab)’2の場合、最初のドナーのEC50値は約680.7pM、2番目のドナーのEC50値は約82.58pMである。ハーセプチン×UCHT1F(ab)’2の場合、最初のドナーのEC50値は約1003pM、2番目のドナーのEC50値は約941.2pMである。これらの結果は、ハーセプチン×UCHT1F(ab)’2と比較して、ハーセプチン×CD3DF(ab)’2が腫瘍細胞に対して有意に優れた殺傷効果を有することを示した。
図10は、SK-BR-3細胞に対するハーセプチン×CD3DF(ab)’2およびハーセプチン×UCHT1F(ab)’2の殺傷効果を示す。
【0325】
実施例9 リツキシマブ×CD3二重特異性抗体によるInvitroSU-DHL-8細胞死滅アッセイ
a)試薬と消耗品:
1.細胞株:SU-DHL-8(ATCC♯CRL-2961)
2.PBMC:健康なドナー♯1(リード、PBMC-2020122101);健康なドナー♯2(リード、PBMC-2021010602)
3.リツキシマブ×CD3二重特異性抗体F(ab’)2:
(i)リツキシマブ×CD3DF(ab)’2、実施例4で生成。
(ii)リツキシマブ×UCHT1F(ab)’2、実施例4で生成。
4.PBS(センルイ、CR20012)
5.RPMI1640(Gibco、22400089)
6.FBS(HyClone、SH30406.05)
7.CellTrace遠赤細胞増殖キット(Invitrogen、C34572)
8.ヨウ化プロピジウム(PI)(シグマ、P4170)
9.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
10.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
【0326】
b)方法:
異なるCD3抗体によって産生された二重特異性抗体の薬力学的活性を比較するために、SU-DHL-8細胞に対するリツキシマブ×CD3DF(ab)’2およびリツキシマブ×UCHT1F(ab)’2の殺傷効果を検出するinvitro細胞実験を行った。まず、表面にCD20を発現させたSU-DHL-8を細胞染色(FarRed)で染色した。次いで、細胞を10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁した。続いて、細胞濃度を8×105細胞/mlに調整した。健康なドナーのPBMCを10%FBSを含むRPMI-1640培地に再懸濁し、細胞濃度を8×106細胞/mlに調整した。最後に、PBMCとSU-DHL-8を体積比1:1でよく混合した。
【0327】
Rituximab×CD3DF(ab)’2またはRituximab×UCHT1F(ab)’2の濃度を連続希釈した。PBMCとSU-DHL-8の細胞混合物(50μl/ウェル)を96ウェルプレートに添加し、続いて連続希釈したリツキシマブ×CD3DF(ab)’2またはリツキシマブ×UCHT1F(ab)’2(50μl/ウェル)を細胞混合物に添加した。二特異性抗体と細胞の混合物を37℃のインキュベーターで24時間インキュベートした後、400gで5分間遠心して上清を除去した。細胞をパンクレアチンで10分間消化し、PBS(200μl/ウェル)で2回洗浄した。U-DHL-8細胞をフローサイトメトリーで分析し、SU-DHL-8細胞に対する抗体媒介細胞毒性の殺傷効果を測定した。フローサイトメトリーを実行する場合、APCチャネルを使用して細胞懸濁液中のSU-DHL-8細胞を標識し(遠赤染色)、PEチャネルを使用して生細胞と死細胞を区別した(PI染色)。PIは死細胞を染色できるため、フローサイトメトリーで分析されたAPC陽性およびPi陰性(APC+PT-)細胞の数を最終的に使用して、残存SU-DHL-8細胞を定量し、死滅率を計算した。リツキシマブ×CD3DF(ab)’2とリツキシマブ×UCHT1F(ab)’2のSU-DHL-8細胞に対するPBMCの殺傷活性の仲介効果を比較するために、グラフの可視化にはGraphPadPrism7ソフトウェアを使用し、半値最大効果濃度(EC50)の算出には4パラメータフィッティング曲線の非線形回帰を使用した。リツキシマブ×CD3DF(ab)’2の場合、最初のドナーのEC50値は約72.83pM、2番目のドナーのEC50値は約59.98pMである。リツキシマブ×UCHT1F(ab)’2の場合、最初のドナーのEC50値は約605.5pM、2番目のドナーのEC50値は約274.4pMである。これらの結果から、リツキシマブ×UCHT1F(ab)’2と比較して、リツキシマブ×CD3DF(ab)’2は腫瘍細胞に対する殺傷効果が有意に優れていることが示された。
図11はSU-DHL-8細胞に対するリツキシマブ×CD3DF(ab)’2およびリツキシマブ×UCHT1F(ab)’2の殺傷効果を示す。
【0328】
実施例10 グランザイムBおよびパーフォリンの放出
a)試薬と消耗品:
1.検出キット:
(i)グランザイムB ELISAキット(Dayou、ロット:2007-1);
(ii)パーフォリンELISAキット(ダユー、ロット:2008-1)
2.テストサンプル:
(i)実施例8からの上清(健康なドナー♯1からのもの)。
(ii)実施例9からの上清(健康なドナー♯2からのもの)。
3.PBS(センルイ、CR20012)
4.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
5.マイクロプレートリーダー(Thermo、Multiskan FC)
【0329】
b)方法:
グランザイムB/パーフォリン経路は、細胞傷害性リンパ球が腫瘍細胞を殺す主な機構と考えられた。組換えCD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片がPBMCを媒介して標的細胞を殺すことができること、および細胞傷害効果がCD3とT細胞間の相互作用に起因することを確認するために、グランザイムBとパーフォリンの放出を定量した。
【0330】
実施例8または9で収集した上清をサンプルとして使用し、グランザイムBおよびパーフォリンの放出をグランザイムB/パーフォリンELISAキットにより定量した。
【0331】
結果は、実施例8のハーセプチン×CD3DF(ab)’2の上清について、グランザイムBおよびパーフォリンの含有量がそれぞれ21233.57pg/mlおよび1597.45pg/mlであることを示した。実施例9におけるリツキシマブ×CD3DF(ab)’2の上清については、グランザイムBおよびパーフォリンの含有量はそれぞれ24410.04pg/mlおよび1675.97pg/mlであった。リツキシマブ×UCHT1 F(ab)’2の上清では、グランザイムBとパーフォリンの含有量はそれぞれ48863.12pg/mlと2183.46pg/mlであった。
【0332】
上記の結果は、本出願における組換えCD3二重特異性抗体のF(ab)’2断片が、グランザイムBおよびパーフォリンの放出経路を介して腫瘍細胞の死滅を媒介することを示した。
【0333】
実施例11 ハーセプチン×CD3DF(ab)’2およびハーセプチン×UCHT1F(ab)’2によって誘導されるサイトカインIL-6の放出
a)試薬と消耗品:
1.キット:LEGENDplexTMヒトCD8/NKペインパネル(Biolegend、740267)
2.テストサンプル:
(i)実施例8の上清(健常ドナー♯1由来);(ii)実施例9の上清(健常ドナー♯2由来);
3.U字型底プレート付き96ウェルプレート(Jetbio、TCP002096)
4.フローサイトメーター(Beckmen、A00-1-1102)
【0334】
b)方法:
サイトカイン放出症候群(CRS)は、臨床で使用されるT細胞関与二特異性抗体の主な安全性の問題であるため、上清中のサイトカインの放出は、本出願の抗CD3二特異性抗体を投与する際の安全性に関係する。CRSを誘発するサイトカインには、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10などが含まれ、その中でIL-6はCRSの誘発において最も重要なサイトカインである。
【0335】
実施例8および実施例9から採取した上清中のIL-6レベルを、LEGENDplexTMHumanCD8/NKPanePanelキットにより測定した。上清中のIL-6含量は、抗CD3抗体濃度105pMで測定した。結果を表7に示す。
【0336】
その結果、実施例8の上清において、ハーセプチン×CD3DF(ab)’2がハーセプチン×UCHT1F(ab)’2よりも有意に優れた殺腫瘍効果を示した場合、上清中のIL-6の含量はほぼ同じであった。一方、リツキシマブ×CD3DF(ab)’2がリツキシマブ×UCHT1F(ab)’2と比較的同様の殺腫瘍効果を示した実施例9の上清において、リツキシマブ×UCHT1F(ab)’2の上清中のIL-6の含量は、リツキシマブ×CD3DF(ab)’2の上清中のIL-6の含量よりも有意に高く、キットの検出上限値をさらに上回った。
【0337】
結論として、UCHT-1と比較して、抗CD3D二重特異性抗体はサイトカイン放出が低く、腫瘍細胞の死滅を媒介する際により安全であった。
【0338】
【0339】
実施例12 ヒト化抗CD3モノクローナル抗体
12.1抗CD3モノクローナル抗体をコードするプラスミド構築物の調製
重鎖ベクターインサートまたは軽鎖ベクターインサートを、
図12に描かれているようにpTT5ベクター中の発現カセットにライゲーションした(pTT5-HCまたはpTT5-LCと命名)。得られたシグナルペプチドを含むベクター+インサートの塩基配列も決定し、コーディングDNAの正しい読み枠と塩基配列を確認した。各プラスミドに挿入されるアミノ酸配列を表8に示す。
【0340】
【0341】
表8によれば、C3000はラット由来の抗CD3抗体であるのに対し、C3002-1およびC3002-2はヒト化抗CD3抗体である。
【0342】
12.2トランスフェクション法
プラスミド pTT5-HCおよびpTT5-LCをExpiCHO(登録商標)-S細胞に一時的にトランスフェクトし、抗CD3モノクローナル抗体を取得した。ExpiCHO(登録商標)-S細胞を6.0×106細胞/mlの密度で、ExpiCHO(登録商標)ExpressionMedium中で37℃で培養した。2つの溶液を次のように調製:1)解決策1:64μlのエクスピフェクタミンCHO試薬を800μlのOptiPRO(登録商標)培地と混合した。2)解決策2:8μgのpTT5-HCおよび8μgのpTT5-LCの混合物を、800μlのExpifectamine(登録商標)CHO試薬で希釈した。溶液1と溶液2を混合して、ExpiFectamine(登録商標)CHO/プラスミドDNA混合物を形成した。5分間のインキュベーション後、ExpiFectamine(登録商標)CHO/プラスミドDNA混合物をExpiCHO(登録商標)-S細胞培養物に添加して、20mlの培養系を形成した。細胞培養混合物は37℃、8%CO2で培養された。
【0343】
12.3タンパク質の発現
トランスフェクション24時間後、120μLのExpiCHO(登録商標)Enhancerと4.8mLのExpiCHO(登録商標)Feed溶液を11.2から細胞培養に添加した。この培養液をさらに31℃で7日間培養した。上清を遠心分離により回収した。
【0344】
12.4精製
ステップ11.3で得られた上清をMabSelectSuReLXカラムで精製した。上清をpH7.4 PBSで洗浄し、pH3.0 0.1Mグリシンで溶出した。採取したサンプルはpH8.0の1M Tris緩衝液で中和した後、限外ろ過して溶出緩衝液をPBS溶液に置換した。精製サンプルは、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットによってさらに同定された。
図13A~13Fは、抗CD3mAbのウェスタンブロットおよびSDS-PAGEの結果を示す。
図13A、
図13Cと
図13Eは、それぞれC3000、C3002-1Cおよび3002-2のウェスタンブロットの結果を示す。
図13Bの1行目13Dと
図13Fは、それぞれC3000、C3002-1C、3002-2の還元SDS-PAGEの結果を示す。
図13Bの2行目、
図13Dおよび
図13Fは、それぞれC3000、C3002-1Cおよび3002-2の非還元SDS-PAGEの結果を示す。
【0345】
12.5抗CD3mAbC3000C3002-1Cおよび3002-2からCD3eおよびCD3yヘテロ二量体タンパク質の結合親和性
ELISAプレートに100ng/ウェルのCD3ε&CD3γHeterodimerProteinを4℃で一晩コートし、さらにPBS中3% BSAで2時間ブロッキングした後、連続希釈した抗CD3mAbC3000、C3002-1Cおよび3002-2をプレートに添加し、37℃で以下の時間インキュベートした。プレートを洗浄し乾燥させた後、検出抗体THEHisTagAntibody[HRP]を100μL/ウェル添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し乾燥させた後、TMB発色液を100μL/well添加し、37℃で10分間インキュベートした。発色後、50μL/wellの停止液を加え、発色反応を停止した。サンプルの最適密度は450nm(OD450)で測定された。
図14に示すように、GraphPadPrism8ソフトウェアを使用して、CD3εおよびCD3γヘテロ二量体タンパク質に対する抗CD3mAbC3000、C3002-1Cおよび3002-2の結合親和性のグラフを視覚化した。
図14によると、ラット由来のC3000と比較して、ヒト化抗CD3抗体C3002-1Cおよび3002-2は、CD3εおよびCD3γヘテロ二量体タンパク質に対して同等の結合親和性を示す。
【0346】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態が例示としてのみ提供されることは当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書内で提供される特定の例によって限定されることを意図するものではない。本発明を前述の明細書を参照して説明してきたが、本明細書における実施形態の説明および図示は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換を思いつくであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書に記載の特定の描写、構成または相対的比率に限定されないことを理解されたい。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、そのような代替物、修正物、変形物、または均等物も網羅するものと考えられる。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、およびそれらの均等物がそれによってカバーされることが意図されている。
【配列表】
【国際調査報告】