(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/14 20060101AFI20240313BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F16F15/14 Z
F16D7/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558882
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 DE2022100151
(87)【国際公開番号】W WO2022199741
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107697.8
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エフゲニー フランツ
(57)【要約】
本発明は、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置(1)であって、トルク伝達装置(1)は、自動車の内燃機関のクランクシャフトに螺合可能である入力要素(5)と、入力要素(5)に後続のトルクリミッタ(3)と、形状嵌合式接続(13)を使用してトルクリミッタ(3)に相対回転不能に接続されている後続の出力要素(6)と、を備え、出力要素(6)は、トルクリミッタ(3)に対して、トルク伝達装置(1)の軸線方向(A)において印加手段(14)、特にばね、の力によって、第1の位置(15)に保持されており、かつ印加手段(14)の力に抗して軸線方向(A)に変位可能であり、出力要素(6)は、軸線方向(A)に変位するにつれて、形状嵌合式接続(13)が引き続き存在する第2の位置(16)を取ることができ、出力要素(6)は、軸線方向(A)に変位するにつれて、形状嵌合式接続(13)が解除されて、出力要素(6)がトルクリミッタ(3)に対して回転可能である第3の位置(17)を取ることができる、トルク伝達装置(1)、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置(1)であって、前記トルク伝達装置(1)は、前記自動車の内燃機関のクランクシャフトに螺合可能である入力要素(5)と、前記入力要素(5)に後続のトルクリミッタ(3)と、形状嵌合式接続(13)を使用して前記トルクリミッタ(3)に相対回転不能に接続されている後続の出力要素(6)と、を備え、前記出力要素(6)は、前記トルクリミッタ(3)に対して、前記トルク伝達装置(1)の軸線方向(A)において印加手段(14)、特にばね、の力によって、第1の位置(15)に保持されており、かつ前記印加手段(14)の力に抗して軸線方向(A)に変位可能であり、前記出力要素(6)は、軸線方向(A)に変位するにつれて、前記形状嵌合式接続(13)が引き続き存在する第2の位置(16)を取ることができ、前記出力要素(6)は、軸線方向(A)に変位するにつれて、前記形状嵌合式接続(13)が解除されて、前記出力要素(6)が前記トルクリミッタ(3)に対して回転可能である第3の位置(17)を取ることができる、トルク伝達装置(1)。
【請求項2】
前記出力要素(6)は、少なくとも1つのねじ貫通穴(35)を有し、前記ねじ貫通穴(35)は、前記入力要素(5)を前記内燃機関の前記クランクシャフトに螺合させるために前記入力要素(5)内の対応するねじ穴(34)と位置合わせされている、する、請求項1に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項3】
前記トルクリミッタ(3)は、摩擦クラッチとして形成されている、請求項1または2に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項4】
前記形状嵌合式接続(13)は、前記トルクリミッタ(3)に対して前記出力要素(6)が軸線方向(A)に変位することを可能にし、前記トルクリミッタ(3)と前記出力要素(6)との間に配置されていて、プラグイン噛部として形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項5】
前記ばねは、前記トルクリミッタ(3)の出力側(40)に相対回転不能に接続されている支持リング(24)で支持されていて、前記出力要素(6)のフランジ部分(27)に対して予荷重がかかっており、前記フランジ部分(27)は、好適には、その外周部上に前記プラグイン噛部の外側歯部(26)が設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項6】
前記ばねは、ディスクばね(28)として形成されており、前記ばねによって、前記出力要素(6)は、前記トルクリミッタ(3)に対して軸線方向(A)において前記第1の位置(15)に保持されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項7】
前記ディスクばね(28)は、前記トルクリミッタ(3)に対して前記トルク伝達装置(1)の円周方向(U)に限定的に回転可能である、好適には、前記支持リング(24)によって限定的に回転可能に保持されている、請求項6に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項8】
初期位置の前記ディスクばね(28)は、初期位置において、軸線方向(A)における前記出力要素(6)の変位を前記第2の位置(16)に空間的に制限し、前記ディスクばね(28)は、前記初期位置に対して回転した回転位置において、前記空間的制限を解除し、軸線方向(A)における前記第3の位置(17)への前記出力要素(6)の変位を可能にする、請求項7に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項9】
前記ディスクばね(28)は、好適には、その外周部に、長いディスクばね舌片(29)および短いディスクばね舌片(30)を有し、前記ディスクばね(28)は、その前記長いディスクばね舌片(29)によって、前記初期位置においても前記回転位置においても、前記支持リング(24)で支持されており、前記ディスクばね(28)は、その前記短いディスクばね舌片(30)によって、前記初期位置において、前記支持リング(24)で、好適には、前記トルクリミッタ(3)の径方向(R)の内側に延在する、前記支持リング(24)の突出部(33)で、支持されていて、前記ディスクばね(28)が前記出力要素(6)の変位を、前記第2の位置(16)を超えて空間的に制限するように、前記ディスクばね(28)の軸線方向(A)における変位を制限し、前記短いディスクばね舌片(30)は、前記ディスクばね(28)の前記回転位置において、前記支持リング(24)で、好適には、径方向(R)の内側に延在する前記突出部(33)で、もはや支持されなくなることによって、前記ディスクばね(28)が前記出力要素(6)の前記第3の位置(17)への変位を空間的に解除するように、前記ディスクばね(28)の軸線方向(A)への変位を可能にする、請求項8に記載のトルク伝達装置(1)。
【請求項10】
出力要素(6)には、少なくとも1つの第1の遠心振り子フランジ(37)を有する遠心振り子装置(4)が設けられており、前記第1の遠心振り子フランジ(37)は、前記ディスクばね(28)の半径上に開口部を、好適には、長穴(36)の形で有し、前記長穴(36)を通して、前記ディスクばね(28)を回転させるための工具を挿入可能である、請求項7から9のいずれか一項に記載のトルク伝達装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102019120220号明細書により、入力側のねじり振動ダンパと、後続のトルクリミッタと、後続の遠心振り子装置と、を備え、遠心振り子装置の入力側がトルクリミッタの出力側に相対回転不能に接続されている、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、簡単な方法で取り外しとその後の再取り付けが可能である、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、本課題は、請求項1に記載の、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置により解決される。本発明の好適な実施例は、従属請求項に記載されている。
【0005】
自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置は、自動車の内燃機関のクランクシャフトに螺合可能である入力要素と、入力要素に後続のトルクリミッタと、形状嵌合式接続を使用してトルクリミッタに相対回転不能に接続されている後続の出力要素と、を備え、出力要素は、トルクリミッタに対して、トルク伝達装置の軸線方向において印加手段、特にばね、の力によって、第1の位置に保持されており、かつ印加手段の力に抗して軸線方向に変位可能であり、出力要素は、軸線方向に変位するにつれて、形状嵌合式接続が引き続き存在する第2の位置を取ることができ、出力要素は、軸線方向に変位するにつれて、形状嵌合式接続が解除されて、出力要素がトルクリミッタに対して回転可能である第3の位置を取ることができる。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0006】
好適には、入力要素は、ねじり振動ダンパ、特に弓型ばねダンパを含み、ねじり振動ダンパの入力フランジは、内燃機関のクランクシャフトに螺合可能であるか、または螺合されており、ねじり振動ダンパの出力フランジは、トルクリミッタの入力側を形成する。特に、ねじり振動ダンパ、好適には、ねじり振動ダンパの弓型ばねは、トルク伝達装置の径方向においてトルクリミッタの外側に配置されており、ねじり振動ダンパとトルクリミッタとは、好適には、軸線方向において重なり合っている。
【0007】
形状嵌合式接続を使用して相対回転不能にトルクリミッタに接続されている出力要素は、好適には、出力シャフトに相対回転不能に接続可能であるか、または接続されているハブを含む。出力シャフトは、自動車のハイブリッドドライブトレインのトランスミッション入力シャフトまたは中間シャフトであり得る。好適には、相対回転不能な接続は、プラグイン噛部を使用して行われる。このために、ハブは、好適には、径方向の内側に延在する内側歯部を備えている。
【0008】
さらに、出力要素に、ねじり振動アブソーバ、特に遠心振り子装置が相対回転不能に設けられている場合に有利である。このために、好適には、少なくとも1つの第1の遠心振り子フランジがハブに接続されている。好適には、遠心振り子装置は、いわゆる2フランジ振り子であり、2フランジ振り子では、円周方向に配分して配置された振り子は、スペーサボルトによって相互離間された2つの遠心振り子フランジ間で軸線方向にローラ上に旋回可能に配置されている。これらのうちの第1の遠心振り子フランジは、ハブに相対回転不能に接続されており、好適には、リベット留めされており、一方、これらのうちの第2の遠心振り子フランジは、スペーサボルトによって第1の遠心振り子フランジに相対回転不能に接続されている、好適には、リベット留めされている。
【0009】
しかしながら、遠心振り子装置は、いわゆる1フランジ振り子でもあり得、1フランジ振り子では、円周方向に配分して配置された振り子対は、唯一の、中心の遠心振り子フランジの両側で軸線方向に配置されている。振り子対の第1のウェイトは、遠心振り子フランジの、トルク伝達装置の入力側に向いた側に配置されており、一方、振り子対の第2のウェイトは、遠心振り子フランジの、トルク伝達装置の出力側に向いた側に配置されている。
【0010】
好適には、出力要素は、少なくとも1つのねじ貫通穴を有し、ねじ貫通穴は、入力要素を内燃機関のクランクシャフトに螺合させるために入力要素内の対応するねじ穴と位置合わせされている。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0011】
好適には、ねじり振動ダンパの入力フランジは、円周方向に配分して配置されたねじ穴を有し、ねじ穴を通して、入力フランジは、内燃機関のクランクシャフトに螺合可能である。同様に、出力要素、好適には、ハブは、同一の半径上に、かつ同一数で円周方向に配分して配置されたねじ貫通穴を有し、ねじ貫通穴は、トルク伝達装置をクランクシャフトに取り付けるために、ねじ穴と位置合わせされている。好適には、ねじ貫通穴の直径は、ねじ貫通穴と位置合わせされたねじ穴の直径と少なくとも一致しており、特に、ねじ貫通穴と位置合わせされたねじ穴の直径より大きい。
【0012】
好適には、トルクリミッタは、摩擦クラッチとして形成されている。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0013】
好適には、トルクリミッタは、軸線方向に位置が固定された逆圧プレートと、ディスクばねによって軸線方向に力が印加される押圧プレートと、を備えた摩擦クラッチである。好適には、ねじり振動ダンパの出力フランジは、それぞれ、摩擦ライニングの中間層の下で軸線方向に、摩擦クラッチの逆圧プレートと押圧プレートとの間に摩擦嵌合式に挟み込まれている。このときに、実質的に環状の摩擦ライニングのうちの一方が少なくともトルク伝達装置の円周方向において逆圧プレートに固定されていて、実質的に環状の摩擦ライニングのうちの他方が少なくとも円周方向において押圧プレートに固定されている場合に有利である。さらに、摩擦クラッチは、好適には、側面プレートを有し、側面プレートは、逆圧プレートに相対回転不能に、かつ軸線方向に固定接続されており、側面プレートはまた、押圧プレートに相対回転不能に接続されている。押圧プレートは、逆圧プレートと側面プレートとの間で軸線方向に配置されている。ディスクばねは、側面プレートで支持されて、押圧プレートに、ねじり振動ダンパの出力フランジに抗して逆圧プレートの方向に力を印加する。前述のプレートは、好適には、シートメタル部品として形成されている。
【0014】
さらに、ねじり振動ダンパの入力フランジは、心合わせ装置を有し、心合わせ装置によって、トルクリミッタの、心合わせおよび支持、特に支承が行われている場合に有利である。好適には、摩擦クラッチの環状の逆圧プレートは、その内側縁部によって、入力フランジの軸線方向に突き出た心合わせ装置で支持されている。好適には、心合わせ装置は、入力フランジに相対回転不能に形成されており、特にねじ穴を有し、このねじ穴は、入力フランジのねじ穴と位置合わせされている。
【0015】
好適には、形状嵌合式接続は、トルクリミッタに対して出力要素が軸線方向に変位することを可能にし、トルクリミッタと出力要素との間に配置されていて、プラグイン噛部として形成されている。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0016】
その場合、形状嵌合部は、少なくとも円周方向に延在して、トルクを伝達することができなければならないこと、および好適には、プラグイン噛部の対応する歯または歯面によって形成されていることに留意されたい。すなわち、トルクリミッタと出力要素との間の形状嵌合式接続は、少なくとも相対回転不能である。好適には、出力要素が逆圧プレートに接していることにより、環状の逆圧プレートは、逆圧プレートに接続されている側面プレートより径方向Rのさらに内側に延在して、出力要素の可能な変位を軸線方向に、より正確に言えば、トルクリミッタの入力側の方向に制限する。この装置は、出力要素の第1の位置を画定する。
【0017】
ばねは、トルクリミッタの出力側に相対回転不能に接続されている支持リングで支持されていて、出力要素のフランジ部分に対して予荷重がかかっている場合に有利であり、フランジ部分は、好適には、その外周部上にプラグイン噛部の外側歯部が設けられている。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0018】
フランジ部分は、好適には、ハブの径方向外側に設けられた部分である。フランジ部分の外周部の外側歯部は、好適には、摩擦クラッチの環状の側面プレートの内周に形成されている対応する内側歯部と噛み合っている。少なくともプラグイン噛部の領域内で、軸線方向のフランジ部分の厚さは、好適には、軸線方向の側面プレートの厚さより大きいことに留意されたい。さらに、プラグイン噛部の領域内で、軸線方向のフランジ部分の厚さは、好適には、軸線方向の側面プレートおよび支持リングの合わせた厚さより小さいことに留意されたい。この好ましい実施形態によって、出力要素の第2の位置では、出力要素が逆圧プレートにもはや接していない場合、形状嵌合式接続がトルクリミッタと出力要素またはハブのフランジ部分との間に引き続き存在することが可能である。
【0019】
好適には、ばねは、ディスクばねとして形成されており、ばねによって、出力要素は、トルクリミッタに対して軸線方向において第1の位置に保持されている。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0020】
ディスクばねは、好適には、その内側領域内では、ハブのフランジ部分に接し、その外側領域内では、支持リングに接している。出力要素の第1の位置で、ディスクばねは、好適には、円錐形状を有し、一方、ディスクばねは、出力要素の第2の位置で平らであり、好適には、その内側領域内では、トルク伝達装置の出力側に向いた、ハブのフランジ部分の表面に平面で当接している。
【0021】
ディスクばねは、トルクリミッタに対してトルク伝達装置の円周方向に限定的に回転可能である場合、好適には、支持リングによって限定的に回転可能に保持されている場合に有利である。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0022】
好適には、ディスクばねは、ばね付勢バヨネットロックの一種を形成する。これにより、トルクリミッタと出力要素との間の円周方向における形状嵌合式接続、詳しく言えば相対回転不能な接続を、予荷重の形態でのディスクばねの力によってのみ軸線方向において持続することが防止される。正確に言えば、バヨネットロックは、出力要素の第2の位置において軸線方向における形状嵌合部にも用いられ、形状嵌合部によって、トルクリミッタと出力要素との間の相対回転不能な接続を、追加的な措置なしで解除することが可能になることが防止される。
【0023】
好適には、ディスクばねは、初期位置において、軸線方向における出力要素の変位を第2の位置に空間的に制限し、ディスクばねは、初期位置に対して回転した回転位置において、空間的制限を解除し、軸線方向における第3の位置への出力要素の変位を可能にする。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0024】
好適には、平らに押し付けられたディスクばねが、ハブのフランジ部分を逆圧プレートからさらに離間することを防止することによって、空間的な制限は、軸線方向における形状嵌合部と一致する。
【0025】
ディスクばねは、好適には、その外周部に、長いディスクばね舌片および短いディスクばね舌片を有する場合に有利であり、ディスクばねは、その長いディスクばね舌片によって、初期位置においても回転位置においても、支持リングで支持されており、ディスクばねは、その短いディスクばね舌片によって、初期位置において、支持リングで、好適には、トルク伝達装置の径方向の内側に延在する、支持リングの突出部で、支持されていて、ディスクばねが出力要素の変位を、第2の位置を超えて空間的に制限するように、ディスクばねの軸線方向における変位を制限し、短いディスクばね舌片は、ディスクばねの回転位置において、支持リングで、好適には、径方向の内側に延在する突出部で、もはや支持されなくなることによって、ディスクばねが出力要素の第3の位置への変位を空間的に解除するように、ディスクばねの軸線方向への変位を可能にする。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0026】
第3の位置において、ディスクばねは、依然として平らに押し付けられており、付加的に、ハブのフランジ部分と一緒に全体的に、第2の位置におけるよりも、トルク伝達装置の入力側から軸線方向に少し遠く離れるか、または、ディスクばねは、第1の位置と比較して、逆向きに円錐形状を呈した。どちらの場合も、好適には、摩擦クラッチの環状の側面プレートの内周に接する内側歯部によって、かつハブのフランジ部分の外周部に接する外側歯部によって形成されている歯部噛み合い部を解除することができる。
【0027】
さらに、出力要素に、少なくとも1つの第1の遠心振り子フランジを有する遠心振り子装置が設けられている場合に有利であり、第1の遠心振り子フランジは、ディスクばねの半径上に開口部を、好適には、長穴の形で有し、その長穴を通して、ディスクばねを回転させるための工具を挿入可能である。それにより、自動車の運転時にトルクピークによってトルクリミッタが作動した後は、特にクランクシャフトねじ部にアクセスできるようになり、これによって、トルク伝達装置の取り外し性とその後の取り付け性が促進される。
【0028】
好適には、その場合、ディスクばねは、その長いディスクばね舌片または短いディスクばね舌片を使用して回転させることができる。
【0029】
さらに、遠心振り子装置は、好適には、回転軸周りに回転可能な、少なくとも1つの第1の遠心振り子フランジと、回転不規則性を打ち消すために、第1の遠心振り子フランジに変位可能に取り付けられている、少なくとも1つの振り子と、第1の遠心振り子フランジに相対回転不能に接続されている、少なくとも1つのハブと、が備え付けられており、ハブは、回転軸に対して半径領域において配置されており、振り子が中に配置されている半径領域と重なり合っており、トルク伝達装置に接続するために形成されている接続部分を有し、第1の遠心振り子フランジは、第1の工具貫通穴を有し、第1の工具貫通穴は、第1の遠心振り子フランジ内に接続部分の半径領域に形成されている。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0030】
接続部分は、ハブに一体形成され得るが、別体の構成要素としても形成され得、別体の構成要素のハブとの空間的な関係は、トルク伝達装置との接続の準備中または固有の接続プロセス中にようやく、最終的に確定される。
【0031】
ハブは、出力シャフトに相対回転不能に接続可能であるか、または接続されている。出力シャフトは、自動車のハイブリッドドライブトレインのトランスミッション入力シャフトまたは中間シャフトであり得る。好適には、相対回転不能な接続は、プラグイン噛部を使用して行われる。このために、ハブは、好適には、遠心振り子装置の径方向の内側に延在する内側歯部を備えている。
【0032】
好適には、遠心振り子フランジは、追加的な心合わせ開口部を有し、追加的な心合わせ開口部は、取り付け時に遠心振り子装置を位置合わせするために使用することができる。
【0033】
好適には、接続部分は、接続穴を有し、接続穴は、遠心振り子装置の軸線方向において第1の工具貫通穴と位置合わせされている。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0034】
位置合わせされているとは、この関連において、工具、例えば、螺合工具もしくはリベット工具を第1の工具貫通穴に挿入することができ、この工具によって接続手段を取り付けることができること、または接続穴において、取り付けの過程でトルク伝達装置に接続することができること、例えば、螺合もしくはリベット留めすることができることを意味する。これは、第1の工具貫通穴が、通常、接続穴より大きいことを意味する。したがって、特に、位置合わせされているとは、遠心振り子装置を軸線方向に見て、接続穴が完全に第1の工具貫通穴の外縁の内部にあることを意味する。こうして、例えば、2つの接続穴が個々の第1の工具貫通穴の外縁の内部にあり、個々の第1の工具貫通穴と位置合わせされていることが可能である。
【0035】
両方の開口部の輪郭または形状は、異なっていてもよい。好適には、接続穴は、環状に形成されており、一方、第1の工具貫通穴は、少なくとも環状の輪郭部分を有し、特に完全に環状にも形成されている。特に、第1の工具貫通穴が、接続穴の直径より少なくとも11mm大きく形成されている、必要に応じて、仮想のまたは内挿された直径を有する場合に有利である。
【0036】
接続部分が、ハブに固定接続されていない支持リングとして形成されており、支持リングの接続穴は、遠心振り子装置がトルク伝達装置によって作動して初めて、軸線方向において第1の工具貫通穴と位置合わせされている場合に有利である。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性が促進される。
【0037】
例えば、支持リングは、固定されずに、特に回転可能に、ハブ上をスライドしているか、またはハブによって心合わせされている。同様に、支持リングは、さらなる構成要素によって、例えば、ディスクばねによって、間接的に、ハブに対して摩擦嵌合式に位置合わせされ得るので、支持リングは、トルク伝達装置との接続の準備中には、まだハブに対して回転させることができる。ハブとの形状嵌合式接続または材料嵌合式接続は、好適には、存在しない。支持リングは、接続穴に対して軸線方向にオフセットされた支持部分を有してもよく、支持部分は、ディスクばねを軸線方向に支持するために使用する。これらの支持部分は、特にディスクばねによってバヨネットロックを形成するために、径方向の内側に突出した突出部を有してもよい。
【0038】
好適には、接続穴は、打ち抜き加工によって設けられており、好適には、打ち抜きダレは、既にあらかじめ取り付けられた残りのトルク伝達装置に取り付け時に対向側に、または第1の遠心振り子フランジから反対側に形成されている。打ち抜きダレによって、トルク伝達装置の方向から接続手段を挿入することが容易になり、これによって、遠心振り子装置の取り付け性が促進される。
【0039】
それに対応して、打ち抜きバリは、好適には、第1の遠心振り子フランジに対向している側に形成されている。支持リングは、好適には、シートメタル部品であり、一方、ハブは、好適には、鍛造部品またはシートメタル部品である。
【0040】
好適には、振り子は、振り子の重心が遠心振り子装置の径方向の内側に変位する時、第1の工具貫通穴を少なくとも一部覆う。逆に、振り子の重心が径方向の外側へ最大に変位する時に、工具貫通穴がふさがれておらず、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される場合に有利である。
【0041】
好適には、複数の工具貫通穴は、遠心振り子装置の円周方向に配分されて、好適には、同一半径で、かつ/または均等に離間されて、第1の遠心振り子フランジ内に形成されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0042】
特に、それぞれ1つの第1の工具貫通穴が2つの隣接する振り子の間で円周方向に配置されている場合に有利である。特に、3つの振り子が第1の遠心振り子フランジに取り付けられていて、これらの振り子が均等に円周方向に配分されて、すなわち、相互に120°ずつオフセットされて配置されている場合に有利である。
【0043】
第2の遠心振り子フランジが第1の遠心振り子フランジに対して平行にオフセットされて配置されている場合に有利であり、第2の遠心振り子フランジは、遠心振り子装置の軸線方向において第1の工具貫通穴と位置合わせされている第2の工具貫通穴を有し、振り子は、両方の遠心振り子フランジの間に変位可能に取り付けられている。位置合わせされている工具貫通穴によって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0044】
第1の工具貫通穴に関するこれまでの説明は、第2の工具貫通穴にも同様に当てはまる。好適には、第1の遠心振り子フランジは、その外周部に振り子用バーストプロテクションを有し、一方、第2の遠心振り子フランジは、その外周部に任意のバランサを使用することができ、好適には、バランス穴と、必要に応じて、その中に取り付けられるバランスリベットと、を使用して、残りのトルク伝達装置とは別に遠心振り子装置のバランスを取ることができる。
【0045】
好適には、第2の遠心振り子フランジは、第1の遠心振り子フランジに相対回転不能に接続されている。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0046】
スペーサボルトは、好適には、工具貫通穴の領域内で、第1の遠心振り子フランジを第2の遠心振り子フランジに接続する場合に有利である。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0047】
好適には、スペーサボルトは、振り子の振動角度を制限するためのストッパを形成する。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0048】
さらに、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置は、前述の実施例のうちの1つにより、入力側のねじり振動ダンパと、後続のトルクリミッタと、後続の遠心振り子装置と、を備えており、トルクリミッタの接続部分は、トルクリミッタの出力側に相対回転不能に接続されており、好適には、支持リングの接続穴に取り付けられた支持リングリベットによってリベット留めされている。それにより、遠心振り子フランジを貫通することによって接続部分のアクセス性が保証されており、これによって、遠心振り子装置の取り付け性と取り外し性が促進される。
【0049】
本発明は、以下で、好適な実施例を使用して、関連する図と組み合わせて詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】遠心振り子装置がまだ取り付けられていないか、または遠心振り子装置が取り外されているトルク伝達装置の実施例の斜視概略図である。
【
図2】遠心振り子装置が取り付けられた状態のトルク伝達装置の半断面図である。
【
図3】上側領域においては第2の遠心振り子フランジを取り付けた状態、下側領域においては第2の遠心振り子フランジを取り外した状態の、支持リングなし遠心振り子装置の上面図である。
【
図4】支持リングと、入力側で支持リングに接続されているトルクリミッタと、を備えた遠心振り子装置の上面図である。
【
図5a】トルク伝達装置の出力要素が第1の位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の半断面図である。
【
図5b】トルク伝達装置の出力要素が第2の位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の詳細図である。
【
図5c】トルク伝達装置の出力要素が第2の位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の半断面図である。
【
図5d】遠心振り子装置のディスクばねが初期位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の上面図である。
【
図6a】トルク伝達装置の出力要素が第1の位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の
図5aと同一の半断面図である。
【
図6b】トルク伝達装置の出力要素が第3の位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の詳細図である。
【
図6c】トルク伝達装置の出力要素が第3の位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の半断面図である。
【
図6d】遠心振り子装置のディスクばねが回転位置にある、遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の上面図である。
【
図7a】遠心振り子装置を取り付けた状態のトルク伝達装置の上面図である。
【
図7b】ディスクばねが初期位置にある、
図7aに由来する詳細図である。
【
図7c】ディスクばねが回転位置にある、
図7aに由来する詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1~
図7cでは、トルク伝達装置1用の遠心振り子装置4の実施例と、自動車のドライブトレイン用の、ねじり振動ダンパ2、トルクリミッタ3および遠心振り子装置4を備えたトルク伝達装置1の実施例と、が図示されている。以下の説明で本発明に本質的なものとして記述されていない特徴は、任意選択であるとして理解すべきである。
【0052】
図1~
図7cでは、トルク伝達装置1用の遠心振り子装置4の実施例と、自動車のドライブトレイン用の、ねじり振動ダンパ2、トルクリミッタ3およびねじり振動アブソーバ、特に前述の遠心振り子装置4を備えたトルク伝達装置1の実施例と、が図示されている。以下の説明で本発明に本質的なものとして記述されていない特徴は、任意選択であるとして理解すべきである。
【0053】
トルク伝達装置1は、入力要素5を有し、入力要素5は、自動車の内燃機関のクランクシャフトに螺合可能であるか、または螺合されている。さらに、トルク伝達装置1は、出力要素6を有し、出力要素6は、出力シャフトに相対回転不能に接続可能であるか、または接続されている。出力シャフトは、自動車のハイブリッドドライブトレインのトランスミッション入力シャフトまたは中間シャフトであり得る。
【0054】
図示された実施例では、入力要素5は、ねじり振動ダンパ2を有し、ねじり振動ダンパ2は、特に弓型ばねダンパとして形成されており、ねじり振動ダンパ2の入力フランジ7は、内燃機関のクランクシャフトに螺合可能であるか、または螺合されている。ねじり振動ダンパ2の出力フランジ8は、トルクリミッタ3の入力側39を形成する。特に、ねじり振動ダンパ2、好適には、ねじり振動ダンパの弓型ばね11は、トルク伝達装置1の径方向Rにおいてトルクリミッタ3の外側に配置されており、ねじり振動ダンパ2とトルクリミッタ3とは、好適には、トルク伝達装置1の軸線方向Aにおいて重なり合っている。弓型ばね11は、ばね溝10内に、好適には、スライドシェル内に案内されており、ばね溝10は、入力フランジ7およびカバーディスク12から形成されている。さらに、入力フランジ7に心合わせ装置9が設けられており、心合わせ装置9によって、トルクリミッタ3の心合わせおよび支持、特に支承が行われている。
【0055】
出力要素6は、形状嵌合式接続13を使用してトルクリミッタ3に相対回転不能に接続されており、出力要素6は、特に
図2、
図5aおよび
図6aで図示されているように、トルクリミッタ3に対して軸線方向Aに印加手段14、特にばね、の力によって第1の位置15に保持されており、特に
図5b、
図5c、
図6bおよび
図6cで図示されているように、印加手段14の力に抗して軸線方向Aに変位可能である。出力要素6は、軸線方向Aに変位するにつれて、
図5bおよび
図5bで図示されている第2の位置16を取ることができ、第2の位置16に形状嵌合式接続13が引き続き存在する。さらに、出力要素6は、軸線方向Aに変位するにつれて、
図6bおよび
図6cで図示されている第3の位置17を取ることができ、第3の位置17で形状嵌合式接続13が解除されて、出力要素6は、トルクリミッタ3に対して回転可能である。
【0056】
出力要素6は、ハブ23を有し、ハブ23は、出力シャフトに相対回転不能に接続可能であるか、または接続されている。図示された実施例では、相対回転不能な接続は、プラグイン噛部を使用して行われる。このために、ハブ23は、径方向Rの内側に延在する内側歯部32を備えている。
【0057】
遠心振り子装置4の第1の遠心振り子フランジ37は、ハブ23に相対回転不能に接続されている。図示された実施例では、遠心振り子装置4は、いわゆる2フランジ振り子であり、2フランジ振り子では、トルク伝達装置1の円周方向Uに配分して配置された振り子41が、スペーサボルト42によって相互離間された2つの遠心振り子フランジ37と38との間で軸線方向にローラ上を旋回可能に配置されている。これらのうちの第1の遠心振り子フランジ37は、ハブ23に相対回転不能に接続されている、好適には、リベット留めされていて、一方、これらのうちの第2の遠心振り子フランジ38は、スペーサボルト42によって第1の遠心振り子フランジ37に相対回転不能に接続されている、好適には、リベット留めされている。
【0058】
出力要素6は、少なくとも1つのねじ貫通穴35を有し、ねじ貫通穴35は、入力要素5を内燃機関のクランクシャフトに螺合させるために入力要素5内の対応するねじ穴34と位置合わせされている。特に、ねじり振動ダンパ2の入力フランジ7は、円周方向Uに配分して配置されたねじ穴34を有し、ねじ穴34を通して、入力フランジ7は、内燃機関のクランクシャフトに螺合可能である。同様に、出力要素6、特に、ハブ23は、同一の半径上に、かつ同一数で円周方向Uに配分して配置されたねじ貫通穴35を有し、ねじ貫通穴35は、トルク伝達装置1をクランクシャフトに取り付けるために、ねじ穴34と位置合わせされている。好適には、ねじ貫通穴35の直径は、ねじ貫通穴35と位置合わせされたねじ穴34の直径と少なくとも一致しており、特に、ねじ貫通穴35と位置合わせされたねじ穴34の直径より大きい。
【0059】
トルクリミッタ3は、図示された実施例では、軸線方向Aに位置が固定された逆圧プレート18と、ディスクばね21によって軸線方向Aに力が印加される押圧プレート19と、を備えた摩擦クラッチである。ねじり振動ダンパ2の出力フランジ8は、それぞれ、摩擦ライニング22の中間層の下で軸線方向Aに、摩擦クラッチの逆圧プレート18と押圧プレート19との間に摩擦嵌合式に挟み込まれている。実質的に環状の摩擦ライニング22のうちの一方が少なくとも円周方向において逆圧プレート18に固定されており、実質的に環状の摩擦ライニング22のうちの他方が少なくとも円周方向Uにおいて押圧プレート19に固定されている。
【0060】
さらに、摩擦クラッチは、側面プレート20を有し、側面プレート20は、逆圧プレート18に相対回転不能に、かつ軸線方向Aに固定接続されており、側面プレートはまた、押圧プレート19に相対回転不能に接続されている。押圧プレート19は、逆圧プレート18と側面プレート20との間で軸線方向Aに配置されている。ディスクばね21は、側面プレート20で支持されて、押圧プレート19に、ねじり振動ダンパ2の出力フランジ8に抗して逆圧プレート18の方向に力を印加する。前述のプレート18、19、20は、好適には、シートメタル部品として形成されている。
【0061】
図示された実施例では、摩擦クラッチの環状の逆圧プレート18は、その内側縁部によって、入力フランジ7の軸線方向Aに突き出た心合わせ装置9で支持されている。心合わせ装置9は、入力フランジ7に相対回転不能に形成されており、特にねじ穴34を有し、ねじ穴34は、入力フランジ7のねじ穴34と位置合わせされている。
【0062】
形状嵌合式接続13は、トルクリミッタ3に対して出力要素6が軸線方向Aに変位することを可能にし、トルクリミッタ3と出力要素6との間に配置されていて、プラグイン噛部として形成されている。その場合、形状嵌合部は、少なくとも円周方向Uに延在して、トルクを伝達することができなければならないこと、および好適には、プラグイン噛部の対応する歯または歯面によって形成されていることに留意されたい。すなわち、トルクリミッタ3と出力要素6との間の形状嵌合式接続13は、少なくとも相対回転不能である。
【0063】
図示された実施例では、特に
図2、
図5aおよび
図6aから確認できるように、出力要素6が逆圧プレート18に接していることにより、環状の逆圧プレート18は、逆圧プレート18に接続されている側面プレート20より径方向Rのさらに内側に延在して、出力要素6の可能な変位を軸線方向Aの左側に、より正確に言えば、トルクリミッタ3の入力側39の方向に制限する。この装置は、出力要素6の第1の位置15を画定する。
【0064】
ばねは、トルクリミッタ3の出力側40に相対回転不能に接続されている支持リング24で支持されており、出力要素6のフランジ部分27に抗して予荷重がかかっている。フランジ部分27は、その外周部上に、プラグイン噛部の外側歯部26が設けられている。フランジ部分27は、特に、ハブ23の径方向R外側に設けられた部分である。フランジ部分27の外周部の外側歯部26は、好適には、摩擦クラッチの環状の側面プレート20の内周に形成されている対応する内側歯部25と噛み合っている。
【0065】
少なくともプラグイン噛部の領域内で、軸線方向Aにおけるフランジ部分27の厚さは、好適には、軸線方向Aにおける側面プレート20の厚さより大きいことに留意されたい。さらに、プラグイン噛部の領域内で、軸線方向Aにおけるフランジ部分27の厚さは、好適には、軸線方向Aにおける側面プレート20および支持リング24の合わせた厚さより小さいことに留意されたい。この実施形態によって、出力要素6の第2の位置16では、出力要素6が逆圧プレート18にもはや接していない場合(
図5cを参照)、形状嵌合式接続13がトルクリミッタ3と出力要素6またはハブ23のフランジ部分27との間に引き続き存在することが可能である。
【0066】
ばねは、ディスクばね28として形成されており、ばねによって、出力要素6は、トルクリミッタ3に対して軸線方向Aにおいて第1の位置15に保持されている。ディスクばね28は、その内側領域内では、ハブ23のフランジ部分27に接し、その外側領域内では、支持リング24に接している。出力要素6の第1の位置15で、ディスクばね28は、円錐形状を有し(
図5aおよび
図6aを参照)、一方、ディスクばね28は、出力要素6の第2の位置16で平らであり、特にその内側領域内では、トルク伝達装置1の出力側40に向いた、
図5cに関しては右側の、ハブ23のフランジ部分27の表面に平面で当接している。
【0067】
ディスクばね28は、トルクリミッタ3に対して円周方向Uに限定的に回転可能に支持リング24によって保持されている。特に、ディスクばね28は、ばね付勢バヨネットロックの一種を形成する。これにより、トルクリミッタ3と出力要素6との間の円周方向Uへの形状嵌合式接続、詳しく言えば相対回転不能な接続を、予荷重の形態でのディスクばね28の力によって、軸線方向Aに持続することが防止される。正確に言えば、バヨネットロックは、出力要素6の第2の位置16において軸線方向Aにおける形状嵌合部にも用いられ(
図5bおよび
図5cを参照)、形状嵌合部によって、トルクリミッタ3と出力要素6との間の相対回転不能な接続を、追加的な措置なしで解除することが可能になることが防止される。
【0068】
ディスクばね28は、
図5dで図示されている初期位置において、軸線方向Aにおける出力要素6の変位を第2の位置16に空間的に制限する。平らに押し付けられたディスクばね28が、ハブ23のフランジ部分27を逆圧プレート18から、
図5cに関しては、さらに右側へ離間することが防止されることによって、空間的な制限は、軸線方向Aにおける形状嵌合部に一致する。初期位置に対して、
図6dで図示されている、
図5dから開始して矢印方向への回転によって到達する、回転された回転位置で、ディスクばね28は、空間的な制限を解除し、出力要素6が軸線方向Aの第3の位置に変位することを可能にする(
図6bおよび
図6cを参照)。
【0069】
ディスクばね28は、その外周部に長いディスクばね舌片29および短いディスクばね舌片30を有する。ディスクばね28は、その長いディスクばね舌片29によって、初期位置においても回転位置においても、支持リング24で支持されている。ディスクばね28は、その短いディスクばね舌片30によって、初期位置において、支持リング24で、特に径方向Rの内側に延在する、支持リング24の突出部33で支持されていて、ディスクばね28が、出力要素6の第2の位置16を超えた変位を空間的に制限するように、ディスクばね28の軸線方向Aにおける変位を制限する(
図5bおよび
図5cを参照)。短いディスクばね舌片30は、ディスクばね28の回転位置において、支持リング24で、特に径方向Rの内側に延在する突出部33で、もはや支持されなくなることによって、ディスクばね28が出力要素6の第3の位置17への変位を空間的に解除する(
図6bおよび
図6cを参照)ように、ディスクばね28の軸線方向Aへの変位を可能にし、これによって、トルクリミッタ3の解除によって、自動車の運転中はもはや位置合わせされないねじ穴34およびねじ貫通穴35が再度位置合わせされるまで、遠心振り子装置4を、残りのトルク伝達装置1に対して回転させることができ、これによって、クランクシャフトねじ部を、対応する工具を使用して解除することができ、トルク伝達装置1全体をクランクシャフトから取り外すことができる。
【0070】
図示された実施例では、支持リングリベット31を使用して逆圧プレート18および側面プレート20にリベット留めされている支持リング24は、第3の位置17に変位された出力要素6または第3の位置17に変位された遠心振り子装置4と、支持リング24の内側縁部を介して、好適には、同時にディスクばね28の軸線方向Aへの支持に使用される、軸線方向Aに突出した支持部分を介して、心合わせする。
【0071】
第3の位置17において、ディスクばね28は、依然として平らに押し付けられており、付加的に、ハブ23のフランジ部分27と一緒に全体的に、第2の位置16におけるよりも、トルク伝達装置1の入力側39から軸線方向Aに少し遠く離れるか、または、ディスクばね28は、第1の位置15と比較して、逆向きに円錐形状を呈した。どちらの場合も、摩擦クラッチの環状の側面プレート20の内周に接する内側歯部25によって、かつハブ23のフランジ部分27の外周部に接する外側歯部26によって形成されている歯部噛み合い部を、解除することができる。
【0072】
ディスクばね28を外側から回転させるために、第1の遠心振り子フランジ37、特に2つの遠心振り子フランジ37、38は、ディスクばね28の半径上に、好適には、長穴36の形状で開口部を有し、開口部を通して、ディスクばね28を回転させるための工具を挿入可能である。好適には、その場合、ディスクばね28を、
図7a~
図7cで図示されているように、その長いディスクばね舌片29または短いディスクばね舌片30を使用して回転させることができる。
【0073】
特に
図1~
図4に関しては、以下で、内燃機関から延びるトルク経路内にあらかじめ支承されている、残りのトルク伝達装置1への遠心振り子装置4の取り付けが説明される。
【0074】
既にある程度前述したように、遠心振り子装置4は、遠心振り子装置4またはトルク伝達装置1の回転軸Dの周りに回転可能な、少なくとも1つの第1の遠心振り子フランジ37を有する。少なくとも1つの振り子41は、回転不規則性を打ち消すために、第1の遠心振り子フランジ37に変位可能に取り付けられている。ハブ23は、第1の遠心振り子フランジ37に相対回転不能に接続されており、接続部分43を有し、接続部分43は、回転軸Dに対して半径領域内に配置されており、半径領域は、振り子41が中に配置されている半径領域と重なり合っている。接続部分43は、さらに、トルク伝達装置1に接続するために形成されている。接続部分43は、ハブ23に一体形成され得るが、別体の構成要素としても形成され得、別体の構成要素のハブ23との空間的な関係は、トルク伝達装置1との接続の準備中または固有の接続プロセス中にようやく、最終的に確定される。
【0075】
第1の遠心振り子フランジ37は、第1の工具貫通穴45を有し、第1の工具貫通穴45は、第1の遠心振り子フランジ37内の接続部分43の半径領域内に形成されている。好適には、遠心振り子フランジ37は、追加的な心合わせ開口部を有し、追加的な心合わせ開口部は、取り付け時に遠心振り子装置4を位置合わせするために使用することができる。
【0076】
接続部分43は、接続穴44を有し、接続穴44は、遠心振り子装置4の軸線方向Aにおいて第1の工具貫通穴45と位置合わせされている。位置合わせされているとは、この関連において、工具、例えば、螺合工具もしくはリベット工具を第1の工具貫通穴45に挿入することができ、この工具によって接続手段を取り付けることができること、または接続穴44において、取り付けの過程でトルク伝達装置1に接続することができること、例えば、螺合もしくはリベット留めすることができることを意味する。これは、第1の工具貫通穴45が、通常、接続穴44より大きいことを意味する。したがって、特に、位置合わせされているとは、遠心振り子装置4を軸線方向Aに見て、接続穴44が完全に第1の工具貫通穴45の外縁の内部にあることを意味する。こうして、例えば、2つの接続穴44が個々の第1の工具貫通穴45の外縁の内部にあり、個々の第1の工具貫通穴と位置合わせされていることが可能である。
【0077】
両方の開口部の輪郭または形状は、異なっていてもよい。好適には、接続穴44は、環状に形成されており、一方、第1の工具貫通穴45は、少なくとも環状の輪郭部分を有し、特に完全に環状にも形成されている。特に、第1の工具貫通穴45が、接続穴44の直径より少なくとも11mm大きく形成されている、必要に応じて仮想のまたは内挿された直径を有する場合に有利である。
【0078】
図示された実施例では、接続部分43は、ハブ23に固定接続されていない支持リング24として形成されており、支持リング24の接続穴44は、遠心振り子装置4がトルク伝達装置1によって作動して初めて、軸線方向Aにおいて第1の工具貫通穴45と常時位置合わせされている。例えば、支持リング24は、固定されずに、特に回転可能にハブ23上をスライドしているか、またはハブ23によって心合わせされている。同様に、支持リング24は、さらなる構成要素によって、例えば、ディスクばね28によって、間接的に、ハブ23に対して摩擦嵌合式に位置合わせされ得るので、支持リング24は、トルク伝達装置1との接続の準備中には、まだハブ23に対して回転させることができる。ハブ23との形状嵌合式接続または材料嵌合式接続は、好適には、存在しない。支持リング24は、接続穴44に対して軸線方向Aにオフセットされた支持部分を有し、これらの支持部分は、ディスクばね28を軸線方向Aに支持することに使用することができる。これらの支持部分は、特にディスクばね28によってバヨネットロックを形成するために、径方向Rの内側に突出した突出部33を有してもよい。
【0079】
取り付け時に、接続部分43は、トルクリミッタ3の出力側40に相対回転不能に接続されており、好適には、支持リング24の接続穴44内に取り付けられた支持リングリベット31によってリベット留めされている。支持リング24内の接続穴44は、好適には、支持リング24全体と一緒に、打ち抜き加工によって設けられている。打ち抜きダレが、第1の遠心振り子フランジ37から反対側に、すなわち、
図1に関しては左側に形成されている。それに対応して、打ち抜きバリが、第1の遠心振り子フランジ37に対向する側に、すなわち、
図1に関しては右側に、形成されている。支持リング24は、好適には、シートメタル部品であり、一方、ハブ23は、好適には、鍛造部品またはシートメタル部品である。
【0080】
振り子41は、この振り子41の重心が遠心振り子装置4の径方向Rの内側に変位する時、第1の工具貫通穴45を少なくとも一部覆う。複数の工具貫通穴45は、遠心振り子装置4の円周方向Uに配分されて、好適には、同一半径で、かつ/または均等に離間されて、第1の遠心振り子フランジ37内に形成されている。それぞれ1つの第1の工具貫通穴45は、2つの隣接する振り子41の間で円周方向Uに配置されている。特に、3つの振り子41が第1の遠心振り子フランジ37に取り付けられており、これらの振り子41は、円周方向Uに均等に配分されて、すなわち、相互に120°ずつオフセットされて配置されている。
【0081】
図示された実施例では、第2の遠心振り子フランジ38は、第1の遠心振り子フランジ37に対して平行にオフセットされて配置されている。第2の遠心振り子フランジ38は、第1の遠心振り子フランジ37に相対回転不能に接続されている。第2の遠心振り子フランジ38は、第2の工具貫通穴46を有し、第2の工具貫通穴46は、遠心振り子装置4の軸線方向Aにおいて第1の工具貫通穴45と位置合わせされている。1つの振り子41または複数の振り子41は、両方の遠心振り子フランジ37と38との間に変位可能に取り付けられている。第1の工具貫通穴45に関するこれまでの説明は、第2の工具貫通穴46にも同様に当てはまる。
【0082】
好適には、第1の遠心振り子フランジ37は、その外周部に振り子41用バーストプロテクションを有し、一方、第2の遠心振り子フランジ38は、その外周部に任意のバランサを使用することができ、好適には、バランス穴と、必要に応じて、その中に取り付けられるバランスリベットと、を使用して、残りのトルク伝達装置1とは別に遠心振り子装置4のバランスを取ることができる。
【0083】
スペーサボルト42は、好適には、工具貫通穴45、46の領域内で、第1の遠心振り子フランジ37を第2の遠心振り子フランジ38に接続する。特に、スペーサボルト42は、振り子41の振動角度を制限するためのストッパを形成する。
【0084】
前述の実施例は、自動車のドライブトレイン用のトルク伝達装置1であって、トルク伝達装置1は、自動車の内燃機関のクランクシャフトに螺合可能である入力要素5と、入力要素5に後続のトルクリミッタ3と、形状嵌合式接続13を使用してトルクリミッタ3に相対回転不能に接続されている後続の出力要素6と、を備え、出力要素6は、トルクリミッタ3に対して、トルク伝達装置1の軸線方向Aにおいて印加手段14、特にばね、の力によって、第1の位置15に保持されており、かつ印加手段14の力に抗して軸線方向Aに変位可能であり、出力要素6は、軸線方向Aに変位するにつれて、形状嵌合式接続13が引き続き存在する第2の位置16を取ることができ、出力要素6は、軸線方向Aに変位するにつれて、形状嵌合式接続13が解除されて、出力要素6がトルクリミッタ3に対して回転可能である第3の位置17を取ることができる、トルク伝達装置1、に関する。
【符号の説明】
【0085】
1 トルク伝達装置
2 ねじり振動ダンパ
3 トルクリミッタ
4 遠心振り子装置
5 入力要素
6 出力要素
7 入力フランジ
8 出力フランジ
9 心合わせ装置
10 ばね溝
11 弓型ばね
12 カバーディスク
13 形状嵌合式接続
14 印加手段
15 第1の位置
16 第2の位置
17 第3の位置
18 逆圧プレート
19 押圧プレート
20 側面プレート
21 ディスクばね
22 摩擦ライニング
23 ハブ
24 支持リング
25 内側歯部
26 外側歯部
27 フランジ部分
28 ディスクばね
29 長いディスクばね舌片
30 短いディスクばね舌片
31 支持リングリベット
32 内側歯部
33 突出部
34 ねじ穴
35 ねじ貫通穴
36 長穴
37 第1の遠心振り子フランジ
38 第2の遠心振り子フランジ
39 入力側
40 出力側
41 振り子
42 スペーサボルト
43 接続部分
44 接続穴
45 第1の工具貫通穴
46 第2の工具貫通穴
A 軸線方向
R 径方向
U 円周方向
D 回転軸
【国際調査報告】