IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セブンレス セラピューティクス リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-疼痛の新しい処置 図1
  • 特表-疼痛の新しい処置 図2
  • 特表-疼痛の新しい処置 図3
  • 特表-疼痛の新しい処置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】疼痛の新しい処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P43/00 111
A61P25/04
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61P29/00
A61K31/517
A61K31/519
A61K31/53
A61K31/502
A61K31/4155
A61K31/445
A61K31/496
A61K31/495
A61K31/4178
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559696
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022058337
(87)【国際公開番号】W WO2022207673
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2104609.9
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2113435.8
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523366926
【氏名又は名称】セブンレス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン ニール
(72)【発明者】
【氏名】ネイラー アラスデア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA20
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZB11
4C084ZC20
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC21
4C086BC36
4C086BC38
4C086BC46
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB22
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZB11
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本出願は、疼痛を処置するための新しい標的を記載し、本発明における使用のための適切な化合物を同定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛の処置において使用するためのSOS1阻害剤およびRas阻害剤。
【請求項2】
前記SOS1阻害剤が、5マイクロモーラー以下の、アッセイにおけるIC50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記SOS1阻害剤が100ナノモーラー未満のIC50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記SOS1阻害剤が1ナノモーラー以下のIC50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記Ras阻害剤が、500ナノモーラー以下の、アッセイにおけるIC50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記Ras阻害剤が100ナノモーラー未満のIC50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記Ras阻害剤が1ナノモーラー以下のIC50を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
本発明の前記SOS1阻害剤および前記Ras阻害剤が、以下の標的:
MEK1、MEK2、TrkAキナーゼ、TrkBキナーゼ、TrkCキナーゼ、C-Raf、B-Raf、PI3キナーゼ、AKT、およびERK
のうちの1つまたは複数よりも、100倍以上の選択性を示す、請求項1から7に記載の使用。
【請求項9】
前記SOS1阻害剤が以下:
【化1】
BI3406(N-[(1R)-1-[3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-7-メトキシ-2-メチル-6-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-4-アミン)
【化2】
Bay293(6,7-ジメトキシ-2-メチル-N-[(1R)-1-[4-[2-(メチルアミノメチル)フェニル]チオフェン-2-イル]エチル]キナゾリン-4-アミン)
【化3】
4-[[(1R)-1-(3,3-ジフルオロ-2H-1-ベンゾフラン-7-イル)エチル]アミノ]-6-[1-(ジフルオロメチル)シクロプロピル]-2-メチルピリド[4,3-d]ピリミジン-7-オン
【化4】

、およびBI-170963
から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記SOS1阻害剤が、(N-[(1R)-1-[3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-7-メトキシ-2-メチル-6-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-4-アミン)(BI-3406)および(6,7-ジメトキシ-2-メチル-N-[(1R)-1-[4-[2-(メチルアミノメチル)フェニル]チオフェン-2-イル]エチル]キナゾリン-4-アミン)(BAY-293)から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記Ras阻害剤が以下:
【化5】
から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記Ras阻害剤が、(3S)-5-ヒドロキシ-3-[2-[[[1-[(1-メチルイミダゾール-4-イル)メチル]インドール-6-イル]メチルアミノ]メチル]-1H-インドール-3-イル]-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン(BI-2852)である、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
抗NGF抗体と組み合わせて投与した場合に、前記疼痛の処置において使用するための、請求項1~12に記載のSOS1阻害剤またはRas阻害剤。
【請求項14】
前記抗NGF抗体がタネズマブである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
疼痛が、急性疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、痛覚過敏、アロディニア、中枢性疼痛、癌性疼痛、手術後疼痛、内臓痛、筋骨格痛、心臓痛または血管痛、偏頭痛を含む頭痛、歯痛を含む口腔顔面痛、および背痛を含む、請求項1~14に記載の使用。
【請求項16】
疼痛が以下:
(a)急性疼痛および/または自発性疼痛、
(b)慢性疼痛およびまたは継続中の疼痛、
(c)関節痛、骨関節炎もしくは関節リウマチから生じる疼痛、炎症性腸疾患から生じる疼痛、乾癬、および湿疹のうちの任意の1つを含む、炎症性疼痛
(d)侵害受容性疼痛、
(e)有痛性糖尿病性神経障害またはヘルペス後神経痛に関連する疼痛を含む神経因性疼痛、
(f)痛覚過敏、
(g)アロディニア、
(h)中枢性疼痛、中枢性卒中後痛、多発性硬化症から生じる疼痛、脊髄損傷から生じる疼痛、またはパーキンソン病もしくは癲癇から生じる疼痛、
(i)癌性疼痛、
(j)手術後疼痛、
(k)消化内臓痛および非消化内臓痛、胃腸管系(GI)障害が原因の疼痛、機能性腸障害(FBD)から生じる疼痛、炎症性腸疾患(IBD)から生じる疼痛、月経困難症から生じる疼痛、骨盤痛、膀胱炎、間質性膀胱炎、または膵炎を含む、内臓痛、
(l)筋骨格痛、筋痛、線維筋痛症、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ性)関節症、非関節性リウマチ、ジストロフィン異常症、グリコーゲン分解、多発性筋炎、化膿性筋炎、
(m)心臓痛または血管痛、狭心症が原因の疼痛、心筋(myocardical)梗塞、増帽弁狭窄症、心膜炎、レイノー現象、浮腫性硬化症(scleredoma)、浮腫性硬化症(scleredoma)、または骨格筋虚血、
(n)偏頭痛、前兆を伴う偏頭痛、前兆群発頭痛を伴わない偏頭痛、緊張型頭痛を含む、頭痛
(o)歯痛、側頭下顎筋筋膜痛、または耳鳴を含む口腔顔面痛、あるいは
(p)背痛、滑液包炎、月経痛、偏頭痛、関連痛、三叉神経痛、過敏化、脊椎の外傷および/もしくは変性または脳卒中から生じる疼痛
を含む、請求項1~14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Son of Sevenless相同体1受容体(SOS1)タンパク質およびラット肉腫(RAS)と結合し、それによってカスケード経路を阻害し、疼痛の低下をもたらす化合物の使用を記載する。
【0002】
疼痛を処置するための新規処置の必要性が依然として存在する。最も有効かつ頻繁に処方される疼痛処置の多くはオピオイドである。これらの薬物は乱用および中毒の高い潜在性を有する。しかし、現在までに、第一線処置としてこれらを置き換える、匹敵する有効性の処置は存在しない。疼痛の処置においてパラダイムシフトを提供することは、身体内の新しい標的および経路の同定を必要とする。
【0003】
本出願は、疼痛を処置するための適切な経路における、SOS-Rasの同定および活用を記載する。
【背景技術】
【0004】
以下のいくつかの状態を媒介することができるSOS1阻害剤が最近同定された:
【0005】
WO2019/122129号は、腫瘍学における癌性成長の処置において有用なSOS1阻害剤としての、ベンジルアミノで置換されたピリドピリミジンを記載している。
【0006】
WO2018/115380号は、腫瘍学における癌性成長の処置において同様に有用なSOS1阻害剤としての、ベンジルアミノで置換されたキナゾリンを記載している。
【0007】
WO2018/172250号は、過剰増殖性疾患の処置において使用するための2つのメチルキナゾリンの属を記載している。
【0008】
WO2019/201848号は、過剰増殖性疾患の処置において使用するための2つのメチルキナゾリンのさらなる属を記載している。
【0009】
WO2020/173935号は、RAS阻害剤としての新しいイソインドリノンで置換されたインドールを教示している。
【0010】
さらなるSOS1阻害剤は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(2019)、116(7)、2551~2560中に教示されている。
【0011】
KRASとして知られるRas阻害剤の部分組を含めた様々なRAS阻害剤もまた、最近同定された。WO2018/068017号、WO2018/140513号、WO2018/140514号、およびWO2020/173938号はすべて、癌を処置するためのRAS阻害剤としての活性を有する新しい化合物を教示している。新しいRas阻害剤およびその臨床状態の要約は、RSC Med.Chem.、2020、11、760中に見つけ得る。
【0012】
驚くべきことに、SOS1/Ras経路を疼痛の処置のために活用することができることが、今回見出された。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明は、疼痛の処置において使用するためのSOS1阻害剤を提供する。
【0014】
本発明はまた、疼痛の処置において使用するためのRAS阻害剤も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】疼痛をもたらすNGFシグナル伝達経路および経路を検証する臨床薬。NGFがTrkAと結合し、続くシグナル伝達の結果、ニューロン中の二リン酸化された細胞外シグナル制御キナーゼ(dppERKnuc)の核集積に至り、疼痛遺伝子が上方制御される。
図2】標的の臨床的遺伝的妥当性確認。NF1では、患者は神経のgapタンパク質中に突然変異を有する(NF1)。この突然変異が機能喪失を引き起こし、RASGTP上のGTPからGDPへの正常な代謝回転を妨げ、立ち代ってこれがRASGTPの濃度を増加させ、過剰なシグナル伝達、腫瘍、および疼痛をもたらす。
図3】BI3406による、PC-12細胞系中における神経成長因子(NGF)刺激性ホスホ細胞外制御キナーゼ1および2(pERK1/2)の活性化の阻害からの結果を示すグラフ。
図4】0.1、0.3、および1mg/kgの単一用量のタネズマブ(10mL/kg、i.p.、T=0)と組合せた25mg/kgのBI3406(10mL/kg、p.o.、午前および午後の投薬、2日間)、ならびに3mg/kgのタネズマブ単独(10mL/kg、i.p.、T=0)の効果を示すグラフ、BI3406では投薬の1時間後ならびにタネズマブ投与後の+1時間、+9時間、+25時間、および+33時間での荷重負荷(WB)評価を使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の概要
本出願は、疼痛を処置するための適切な経路としての、SOS-Ras標的の同定および活用を記載する。
【0017】
Rasタンパク質は腫瘍の維持における主要な要素であることが知られており、したがって、この標的は長い間、腫瘍学において魅力的であるとみなされてきた。しかし、最近まで、SOS1-Rasは新薬の開発につながらない標的として見られてきた。Rasの規範的な特性は、GTP加水分解のGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)刺激によって部分的に促進される、GTP結合した活性状態とGDP結合した不活性状態との間を通常は循環する、小さなGTPアーゼのものである(図2)。しかし、Rasタンパク質が突然変異的に活性化された場合、損なわれたGAP刺激は、持続的にGTP結合したRasの形成を支持する。この重大な生化学的欠損が、突然変異Rasを標的とする初期の努力を促した。プロテインキナーゼの有効な拮抗剤であるATP競合的阻害剤との類似性により、RasのGTP競合的阻害剤の同定が試みられた。しかし、ATPは低いマイクロモーラーの親和性でプロテインキナーゼと結合する一方で、GTPはピコモーラーの親和性でRasタンパク質と結合し、有効な阻害剤の発見が妨げられる。
【0018】
適切なSOS1阻害剤およびRas阻害剤の発見に伴って、癌以外の追加の適応症の経路を調査することが可能となった。驚くべきことに、詳細な調査により、SOS1阻害剤およびRas阻害剤を使用することによって疼痛に対してプラスの効果を有することが可能であることが今回明らかとなった。
【0019】
本発明は、疼痛の処置において使用するためのSOS1阻害剤を提供する。
【0020】
SOS1阻害剤の活性は、Hilligら、PNAS、2019年2月12日、第116巻、第7号、2551~2560に記載のHTRF結合アッセイによって測定し得る。
【0021】
他のSOS1アッセイは当業者に周知であり、FRET/SPR結合などのアッセイが挙げられる。
【0022】
本発明において使用するための適切なSOS1阻害剤は、5マイクロモーラー以下の、HTRF結合アッセイにおけるIC50を有する。
【0023】
特に適切なSOS1阻害剤は、HTRF結合アッセイにおいて100ナノモーラー未満のIC50を有する。
【0024】
特に好ましい実施形態では、SOS1阻害剤は、HTRF結合アッセイにおいて1ナノモーラー以下のIC50を有する。
【0025】
本発明のSOS1阻害剤はまた、追加の標的よりも、SOS1に対する選択性も示す。適切には、本発明のSOS1阻害剤は、以下の標的:MEK1、MEK2、TrkAキナーゼ、TrkBキナーゼ、TrkCキナーゼ、C-Raf、B-Raf、PI3キナーゼ、AKT、およびERKのうちの1つまたは複数よりも、100倍以上の選択性を示す。
【0026】
本発明の化合物が、別の標的よりも、SOS1に対する100倍を超える選択性を有するかどうかを決定する際は、以下のアッセイおよび方法を使用し得る:
【0027】
MEK1および2は、MEKアッセイキット、製品コードCS0490、Sigma、米国St Louisを使用してアッセイすることができる。
【0028】
Trk受容体キナーゼ活性は、Wangら、Curr Chem Genomics、2008、1:27~33に記載のようにアッセイすることができる。
【0029】
B-Rafは、B-Rafキナーゼアッセイキット、製品コード17-359、Sigma、米国St Louisを使用してアッセイすることができる。
【0030】
C-Rafは、BPS bioscienceアッセイキットカタログ番号79570、米国、カリフォルニア州San Diego、92121を使用してアッセイすることができる。
【0031】
PI3キナーゼは、Fry、Methods Mol Biol、2009、462:345~62に記載の方法を介してアッセイすることができる。
【0032】
AKTは、abcamキットAktキナーゼ活性アッセイキット(ab139436)、abcam plc、米国Cambridgeを使用してアッセイすることができる。
【0033】
ERKは、Promega ERK2キナーゼキット、カタログ番号V1961、Promega corporation、米国Madisonを使用してアッセイすることができる。
【0034】
適切なSOS1阻害剤としては、WO2019/122129号、WO2018/115380号およびWO2018/172250号、WO2019/201848号、ならびにWO2020/173935号中に開示されているものが挙げられる。
【0035】
さらなるSOS1阻害剤は、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(2019)、116(7)、2551~2560中に教示されている。
ACS Med Chem Lett、9(9)、941~946(2018)に記載のインドール。
J Med Chem、61(19)、8875~8894(2018)に記載のインドール。
J Med Chem、61(19)、8875~8894(2018)、Cancer Discovery、2020年8月19日、CD-20-0142、doi:10.1158/2159~8290.CD-20-0142、Luら、Chem MedChem、2016、11、814~821に記載のベンズイミダゾール。
【0036】
特に適切な化合物は、以下のものである:
【化1】
BI3406(N-[(1R)-1-[3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-7-メトキシ-2-メチル-6-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-4-アミン)
この分子の合成はWO2018115380号中に公開されている
【化2】
Bay293(6,7-ジメトキシ-2-メチル-N-[(1R)-1-[4-[2-(メチルアミノメチル)フェニル]チオフェン-2-イル]エチル]キナゾリン-4-アミン)。合成はPNAS、2019、116(7)、2551~2560中に公開されている
【化3】
4-[[(1R)-1-(3,3-ジフルオロ-2H-1-ベンゾフラン-7-イル)エチル]アミノ]-6-[1-(ジフルオロメチル)シクロプロピル]-2-メチルピリド[4,3-d]ピリミジン-7-オン。合成はWO2019122129号中に公開されている。
【化4】
合成はWO2020180770号中に公開されている
【化5】
合成はWO2020180768号中に公開されている;
【化6】
(R)-シクロプロピル(4-(1-メチル-4-((1-(2-メチル-3-(フリフルロメチル(frifluromethyl))フェニル)エチル)アミノ)フタラジン-6-イル)ピペラジン-1-イル)メタノン
合成はWO2021127429号中に公開されている
【化7】
(R)-5-(4-((1-(3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)エチル)アミノ)-2-メチル-8,9-ジヒドロ-7H-シクロペンタ[h]キナゾリン-6-イル)-1メチルピリジン-2(1H)-オン
合成はWO2021105960号中に公開されている
【化8】
(R)-4-((1-(3-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-2-フルオロフェニル)エチル)アミノ)-2,6,8,8-テトラメチル-6,8-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-g]キナゾリン-7-オン
合成はWO2021130731号中に公開されている、ならびに
WO2019122129号に開示されているBI-170963。
【0037】
特に適切な化合物は以下のものである。
【化9】
【0038】
SOS1阻害剤を、疼痛のin vitroモデルにおいて、NGF刺激性PC12アッセイにおいて試験した(Sasagawaら、NATURE CELL BIOLOGY、第7巻、第4号、2005年4月、365~373)。試験した化合物はモデルにおいて高い有効性を示した。特に、BI3406は疼痛薬物候補タネズマブに匹敵する有効性を示した。
【0039】
SOS1阻害剤は疼痛処置として数々の利点を有する。これらはオピエートの中毒潜在性を有さず、高い有効性を示す。これらはまた、タネズマブおよび他の抗NGFを治療上有効な用量で使用することをほぼ不可能にする副作用も、有さないようと考えられる。
【0040】
本発明は、疼痛の処置において使用するためのRas阻害剤を提供する。
【0041】
Ras阻害剤の活性は、Kesslerら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2019年8月6日、116(32):15823~15829によって記載されている結合アッセイにおいて測定し得る。
【0042】
本発明において使用するための適切なRas阻害剤は、5000nM以下の、結合アッセイにおけるIC50を有する。
【0043】
特に適切なRas阻害剤は、100ナノモーラー未満のIC50を有する。
【0044】
特に好ましい実施形態では、Ras阻害剤は、1ナノモーラー以下のIC50を有する。
【0045】
本発明のRas阻害剤はまた、追加の標的よりも、Rasに対する選択性も示す。適切には、本発明のRas阻害剤は、以下の標的:MEK1、MEK2、TrkAキナーゼ、TrkBキナーゼ、TrkCキナーゼ、C-Raf、B-Raf、PI3キナーゼ、AKT、およびERKのうちの1つまたは複数よりも、100倍以上の選択性を示す
【0046】
現在、いくつかのRas阻害剤が開発中である。Araxes化合物ARS-3248、ARS-1620、およびARS-853、AmgenのAMG-510、MiratiのMRTX-849、ならびにBridgeBioのBBP-454はすべて、癌薬物として調査されている。そのようなRas阻害剤が、本発明における使用に適切であろう。
【0047】
他のRas阻害剤としては、以下のものが挙げられる:
【化10】
【0048】
その合成は、J.M.Ostrem、U.Peters、M.L.Sos、J.A.Wells、およびK.M.Shokat、Nature、2013、503、548~551;およびM.P.Patricelli、M.R.Janes、L.S.Li、R.Hansen、U.Peters、L.V.Kessler、Y.Chen、J.M.Kucharski、J.Feng、T.Ely、J.H.Chen、S.J.Firdaus、A.Babbar、P.Ren、およびY.Liu、Cancer Discovery、2016、6、316~329中に見つけ得る。
【0049】
特に適切なRas阻害剤としては、以下のものが挙げられる:
【化11】
BI-2852
(3S)-5-ヒドロキシ-3-[2-[[[1-[(1-メチルイミダゾール-4-イル)メチル]インドール-6-イル]メチルアミノ]メチル]-1H-インドール-3-イル]-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン
ARS-3248/JNJ74699157
ARS-1620
【化12】
M.R.Janes、J.Zhang、L.S.Li、R.Hansen、U.Peters、X.Guo、Y.Chen、A.Babbar、S.J.Firdaus、L.Darjania、J.Feng、J.H.Chen、S.Li、S.Li、Y.O.Long、C.Thach、Y.Liu、A.Zarieh、T.Ely、J.M.Kucharski、L.V.Kessler、T.Wu、K.Yu、Y.Wang、Y.Yao、X.Deng、P.P.Zarrinkar、D.Brehmer、D.Dhanak、M.V.Lorenzi、D.Hu-Lowe、M.P.Patricelli、P.Ren、およびY.Liu、Cell、2018、172、578~589.e517。
ARS-853
【化13】
M.P.Patricelli、M.R.Janes、L.S.Li、R.Hansen、U.Peters、L.V.Kessler、Y.Chen、J.M.Kucharski、J.Feng、T.Ely、J.H.Chen、S.J.Firdaus、A.Babbar、P.Ren、およびY.Liu、Cancer Discovery、2016、6、316~329。
AMG-510
【化14】
J.Canon、K.Rex、A.Y.Saiki、C.Mohr、K.Cooke、D.Bagal、K.Gaida、T.Holt、C.G.Knutson、N.Koppada、B.A.Lanman、J.Werner、A.S.Rapaport、T.San Miguel、R.Ortiz、T.Osgood、J.R.Sun、X.Zhu、J.D.McCarter、L.P.Volak、B.E.Houk、M.G.Fakih、B.H.O’Neil、T.J.Price、G.S.Falchook、J.Desai、J.Kuo、R.Govindan、D.S.Hong、W.Ouyang、H.Henary、T.Arvedson、V.J.Cee、およびJ.R.Lipford、Nature、2019、575、217~223。
MRTX-849
【化15】
J.Hallin、L.D.Engstrom、L.Hargis、A.Calinisan、R.Aranda、D.M.Briere、N.Sudhakar、V.Bowcut、B.R.Baer、J.A.Ballard、M.R.Burkard、J.B.Fell、J.P.Fischer、G.P.Vigers、Y.Xue、S.Gatto、J.Fernandez-Banet、A.Pavlicek、K.Velastagui、R.C.Chao、J.Barton、M.Pierobon、E.Baldelli、E.F.Patricoin 3rd、D.P.Cassidy、M.A.Marx、I.I.Rybkin、M.L.Johnson、S.I.Ou、P.Lito、K.P.Papadopoulos、P.A.Janne、P.Olson、およびJ.G.Christensen、Cancer Discovery、2020、10、54~71
J.B.Fell、J.P.Fischer、B.R.Baer、J.F.Blake、K.Bouhana、D.M.Briere、K.D.Brown、L.E.Burgess、A.C.Burns、M.R.Burkard、H.Chiang、M.J.Chicarelli、A.W.Cook、J.J.Gaudino、J.Hallin、L.Hanson、D.P.Hartley、E.J.Hicken、G.P.Hingorani、R.J.Hinklin、M.J.Mejia、P.Olson、J.N.Otten、S.P.Rhodes、M.E.Rodriguez、P.Savechenkov、D.J.Smith、N.Sudhakar、F.X.Sullivan、T.P.Tang、G.P.Vigers、L.Wollenberg、J.G.Christensen、およびM.A.Marx、J.Med.Chem.、2020、DOI:10.1021/acs.jmedchem.9b02052。
、およびBBP-454
【0050】
追加のRas阻害剤は、RSC Med.Chem.、2020、11、760によって記載されている。
【0051】
本発明のさらなる実施形態では、SOS1阻害剤は、抗NGF抗体と組み合わせて投与した場合に、疼痛の処置において使用するために特に適切であることが見出されている。
【0052】
本発明のさらなる実施形態では、Ras阻害剤は、抗NGF抗体と組み合わせて投与した場合に、疼痛の処置において使用するために特に適切であることが見出されている。
【0053】
本発明は、治療上有効な量のSOS1阻害剤を抗NGF抗体と組み合わせて投与することによって、疼痛を処置する方法を提供する。
【0054】
タネズマブは抗NGF抗体の一例である。これは、有望かつ高度に有効な疼痛治療であるが、患者は、鎮痛を提供するために十分な投与量レベルで不快な副作用を頻繁に被る。
【0055】
組合せは、協同的なレベルの有効性を提供し、抗NGF抗体を、有害事象が見られ得るレベルに達さずに、鎮痛を提供するために十分な投与量レベルで投与することができるという利点を有する。協同的な系では、2つの独立した薬剤が、はるかにより高い用量の、薬剤のうちの一方と同等の活性レベルを示すことができる。2つの薬剤が組み合わさってそのような効果を有することが見出されたことは、驚くべきである。
【0056】
科学文献は、タネズマブが、ラットにおいて10mg/kgで有効性を示すことを教示している。(Miyagiら、Efficacy of nerve growth factor antibody in a knee osteoarthritis pain model in mice、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5670727/、抗NGFの最大有効用量は10mg/kgのマウスである、Ghilardiら、Neuroplasticity of Sensory and Sympathetic Nerve Fibers in the Painful Arthritic Joint、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3386465/、抗NGFの最大有効用量は10mg/kgのマウスである、Sheltonら、Nerve growth factor mediates hyperalgesia and cachexia in auto-immune arthritis、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15927377/、抗NGFの最大有効用量は10mg/kgのマウスである)
【0057】
BI3406は、マウスの疼痛モデルにおいて、10mg/kgの用量で有効性を有することが示されている。
【0058】
25mg/kgでのSOS1阻害剤BI3406の投薬は、疼痛モデルにおいて、わずかな有効性または有効性がないことを実証することが示されている。
【0059】
驚くべきことに、0.3mg/kgをタネズマブと組み合わせた低用量のSOS1(25mg/kg)BI3406は、有意な鎮痛効果を有する。1.0mgのタネズマブと組み合わせた低用量のSOS1(25mg/kg)BI3406は、有意な鎮痛効果を有する。
【0060】
固定用量のSOSiを用いた鎮痛の増加は、タナズマブ(Tanazumab)の用量に関連している(すなわち、有効性は用量に関連する)
【0061】
これらのデータは、ヒトにおいてタネズマブの用量を下げ、その結果、このクラスの薬物の使用を制限する副作用の傾向を低下させることが可能なはずであることを示す。タネズマブなどのモノクローナル抗体を介した、SOS1阻害とNGF遮断との組合せは、より高い用量のタネズマブ単独の使用と比較した場合に、増加した疼痛の有効性を低下した副作用でもたらすであろう。
【0062】
SOS阻害剤とNGFモノクローナル抗体、またはNGF経路の他の遮断剤/モジュレーターとの組合せは、より高い疼痛の有効性を低下した副作用でもたらし、骨関節炎などの状態における疼痛の改善および増強された処置をもたらす潜在性を有している。
【0063】
したがって、本発明は、抗NGFと組み合わせたSOS1阻害剤の使用を提供し、一方または両方の構成要素を、疼痛の処置には治療的以下の用量で投与する。
【0064】
用語、治療的以下の用量(sub therapeutic dose)とは、構成要素が単独療法として有効性を示す用量よりも低い用量を説明するために使用する。
【0065】
組合せの他の利点としては、静脈内または皮下投薬の代わりに経口投薬の潜在性を含む。また、組合せは、より低い処置費用をもたらし、より低い免疫原性リスクを提供する場合がある。
【0066】
特に適切な抗NGF抗体としては、タネズマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、およびMEDI735が挙げられる。
【0067】
特に適切な抗NGF抗体はタネズマブおよびファシヌマブである。
【0068】
好ましい実施形態では、抗NGF抗体はタネズマブである。
【0069】
別の好ましい実施形態では、抗NGF抗体はファシヌマブである。
【0070】
特に好ましい実施形態では、本発明は、疼痛を処置するための、治療的以下の用量のタネズマブと組み合わせたSOS1阻害剤の使用を提供する。任意選択で、SOS1阻害剤およびタネズマブをどちらも治療的以下の用量で投与する。
【0071】
用語、治療的以下の用量とは、構成要素が単独療法として有効性を示す用量よりも低い用量を説明するために使用する。
【0072】
本発明において使用するための適切なSOS1阻害剤は、5マイクロモーラー以下の、HTRF結合アッセイにおけるIC50を有する。
【0073】
特に適切なSOS1阻害剤は、100ナノモーラー未満のIC50を有する。
【0074】
特に好ましい実施形態では、SOS1阻害剤は、1ナノモーラー以下のIC50を有する。
【0075】
本発明のSOS1阻害剤はまた、追加の標的よりも、SOS1に対する選択性も示す。適切には、本発明のSOS1阻害剤は、以下の標的:MEK1、MEK2、TrkAキナーゼ、TrkBキナーゼ、TrkCキナーゼ、C-Raf、B-Raf、PI3キナーゼ、AKT、およびERKのうちの1つまたは複数よりも、100倍以上の選択性を示す。
【0076】
抗NGF抗体、特にタネズマブまたはフシニマブ(Fusinimab)と組み合わせて使用するためのさらなる適切なSOS1阻害剤は、以下のものである:
【化16】
BI3406(N-[(1R)-1-[3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-7-メトキシ-2-メチル-6-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-4-アミン)
この分子の合成はWO2018115380号中に公開されている
【化17】
Bay293(6,7-ジメトキシ-2-メチル-N-[(1R)-1-[4-[2-(メチルアミノメチル)フェニル]チオフェン-2-イル]エチル]キナゾリン-4-アミン)
合成はPNAS、2019、116(7)、2551~2560中に公開されている
【化18】
4-[[(1R)-1-(3,3-ジフルオロ-2H-1-ベンゾフラン-7-イル)エチル]アミノ]-6-[1-(ジフルオロメチル)シクロプロピル]-2-メチルピリド[4,3-d]ピリミジン-7-オン
合成はWO2019122129号中に公開されている
【化19】
合成はWO2020180770号中に公開されている
【化20】
合成はWO2020180768号中に公開されている。
【化21】
(R)-シクロプロピル(4-(1-メチル-4-((1-(2-メチル-3-(フリフルロメチル(frifluromethyl))フェニル)エチル)アミノ)フタラジン-6-イル)ピペラジン-1-イル)メタノン
合成はWO2021127429号中に公開されている
【化22】
(R)-5-(4-((1-(3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)エチル)アミノ)-2-メチル-8,9-ジヒドロ-7H-シクロペンタ[h]キナゾリン-6-イル)-1メチルピリジン-2(1H)-オン
合成はWO2021105960号中に公開されている
【化23】
(R)-4-((1-(3-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-2-フルオロフェニル)エチル)アミノ)-2,6,8,8-テトラメチル-6,8-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-g]キナゾリン-7-オン
合成はWO2021130731号中に公開されている
【0077】
タナズマブ(Tanazumab)と組み合わせて使用するための特に適切なSOS-1阻害剤は、BI3406(N-[(1R)-1-[3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-7-メトキシ-2-メチル-6-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-4-アミン)およびBay293(6,7-ジメトキシ-2-メチル-N-[(1R)-1-[4-[2-(メチルアミノメチル)フェニル]チオフェン-2-イル]エチル]キナゾリン-4-アミン)である。
【0078】
ファシヌマブと組み合わせて使用するための特に適切なSOS-1阻害剤は、BI3406(N-[(1R)-1-[3-アミノ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]エチル]-7-メトキシ-2-メチル-6-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-4-アミン)およびBay293(6,7-ジメトキシ-2-メチル-N-[(1R)-1-[4-[2-(メチルアミノメチル)フェニル]チオフェン-2-イル]エチル]キナゾリン-4-アミン)である。
【0079】
本発明において使用するための適切なRas阻害剤は、5000nM以下の、結合アッセイにおけるIC50を有する。
【0080】
特に適切なRas阻害剤は、100ナノモーラー未満のIC50を有する。
【0081】
特に好ましい実施形態では、Ras阻害剤は、1ナノモーラー以下のIC50を有する。
【0082】
適切なRas阻害剤としては、以下のものが挙げられる:
【化24】
BI-2852
(3S)-5-ヒドロキシ-3-[2-[[[1-[(1-メチルイミダゾール-4-イル)メチル]インドール-6-イル]メチルアミノ]メチル]-1H-インドール-3-イル]-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オン
ARS-3248/JNJ74699157
ARS-1620
【化25】
ARS-853
【化26】
AMG-510
【化27】
MRTX-849
【化28】
、およびBBP-454
【0083】
ファシヌマブと組み合わせて使用するための特に適切なRas阻害剤は、BI2852(3S)-5-ヒドロキシ-3-[2-[[[1-[(1-メチルイミダゾール-4-イル)メチル]インドール-6-イル]メチルアミノ]メチル]-1H-インドール-3-イル]-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オンである。
【0084】
タナズマブ(Tanazumab)と組み合わせて使用するための特に適切なRas阻害剤は、BI2852(3S)-5-ヒドロキシ-3-[2-[[[1-[(1-メチルイミダゾール-4-イル)メチル]インドール-6-イル]メチルアミノ]メチル]-1H-インドール-3-イル]-2,3-ジヒドロイソインドール-1-オンである。
【0085】
理論に束縛されずに、SOS1阻害剤およびRas阻害剤は、以下の方法で疼痛を処置するように作用すると考えられている。
【0086】
神経成長因子(NGF)は、NGF受容体(TrkA)と結合し、侵害受容に関与している遺伝子の上方制御をもたらすタンパク質である。NGFは、慢性疼痛の発生の重要な貢献因子であることが知られている。図1に示すように、NGFとTrkAとの結合、および続くシグナル伝達の結果、ニューロン中の二リン酸化された細胞外シグナル制御キナーゼ(dppERKnuc)の核集積に至り、疼痛遺伝子が上方制御される。
【0087】
SOS、およびRasなどのSOSによって下流で影響を受ける分子のレベルが、このカスケードに注がれ、より高いレベルのSOSおよびRASがより高いレベルのbRAFおよびMEKをもたらし、二リン酸化された細胞外シグナル制御キナーゼ(dppERKnuc)の蓄積をもたらし、より高いレベルの疼痛がもたらされる。この経路を阻害することによって、RAS GTPの形成を制御することが可能である。RAS GTPのレベルを下げることによって、疼痛が低下される。
【0088】
用語、疼痛(pain)には、それだけには限定されないが、急性疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛、痛覚過敏、アロディニア、中枢性疼痛、癌性疼痛、手術後疼痛、内臓痛、筋骨格痛、心臓痛または血管痛、偏頭痛を含む頭痛、歯痛を含む口腔顔面痛、および背痛が含まれる。
【0089】
より詳細には、処置に適した疼痛としては、それだけには限定されないが、
(a)急性疼痛および/または自発性疼痛、
(b)慢性疼痛およびまたは継続中の疼痛、
(c)関節痛、骨関節炎もしくは関節リウマチから生じる疼痛、炎症性腸疾患から生じる疼痛、乾癬、および湿疹のうちの任意の1つを含む、炎症性疼痛
(d)侵害受容性疼痛、
(e)有痛性糖尿病性神経障害またはヘルペス後神経痛に関連する疼痛を含めた神経因性疼痛、
(f)痛覚過敏、
(g)アロディニア、
(h)中枢性疼痛、中枢性卒中後痛、多発性硬化症から生じる疼痛、脊髄損傷から生じる疼痛、またはパーキンソン病もしくは癲癇から生じる疼痛、
(i)癌性疼痛、
(j)手術後疼痛、
(k)消化内臓痛および非消化内臓痛、胃腸管系(GI)障害が原因の疼痛、機能性腸障害(FBD)から生じる疼痛、炎症性腸疾患(IBD)から生じる疼痛、月経困難症から生じる疼痛、骨盤痛、膀胱炎、間質性膀胱炎、または膵炎を含めた、内臓痛、
(l)筋骨格痛、筋痛、線維筋痛症、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ性)関節症、非関節性リウマチ、ジストロフィン異常症、グリコーゲン分解、多発性筋炎、化膿性筋炎、
(m)心臓痛または血管痛、狭心症が原因の疼痛、心筋(myocardical)梗塞、増帽弁狭窄症、心膜炎、レイノー現象、浮腫性硬化症(scleredoma)、浮腫性硬化症(scleredoma)、または骨格筋虚血、
(n)偏頭痛、前兆を伴う偏頭痛、前兆群発頭痛を伴わない偏頭痛、緊張型頭痛を含む、頭痛
(o)歯痛、側頭下顎筋筋膜痛、または耳鳴を含む口腔顔面痛、あるいは
(p)背痛、滑液包炎、月経痛、偏頭痛、関連痛、三叉神経痛、過敏化、脊椎の外傷および/もしくは変性または脳卒中から生じる疼痛
が挙げられる。
【0090】
疼痛の処置は、それだけには限定されないが、疼痛の発生または進行を妨げる、寛解させる、制御する、その発生率を低下させる、または遅延させることを含む。
【0091】
特に適切な疼痛適応症としては、骨関節炎および癌性疼痛が挙げられる。
【0092】
別の実施形態では、適切な適応症は骨関節炎である。
【0093】
本発明の別の態様によれば、第2の薬理学的に活性のある化合物と合わせた組合せにおいて、別々、連続的、または同時に使用するための、本発明の化合物を提供する。好ましくは、組合せの第2の薬理学的に活性のある化合物は、それだけには限定されないが以下を挙げ得る:
・オピオイド鎮痛剤、たとえば、モルヒネ、ヘロイン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、メサドン、メペリジン、フェンタニル、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、またはペンタゾシン;
・非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)、たとえば、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチン、またはゾメピラック;
・バルビツレート鎮痛剤、たとえば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタール(butabital)、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルチタール(phenobartital)、セコバルビタール、タルブタール、テアミラール(theamylal)、またはチオペンタール;
・鎮痛作用を有するベンゾジアゼピン、たとえば、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、またはトリアゾラム;
・鎮痛作用を有するH拮抗剤、たとえば、ジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニルアミン、またはクロルシクリジン;
・鎮痛剤、たとえば、グルテチミド、メプロバメート、メタカロン、またはジクロラルフェナゾン;
・骨格筋弛緩剤、たとえば、バクロフェン、カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、メトカルバモール、またはオルフレナジン;
・NMDA受容体拮抗剤、たとえば、デキストロメトルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)もしくはその代謝物デキストロルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキニーネ、シス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、ブジピン、EN-3231(MorphiDex(登録商標)、モルヒネとデキストロメトルファンの組合せ配合物)、トピラメート、ネラメキサン、または、NR2B拮抗剤、たとえば、イフェンプロジル、トラキソプロジル、もしくは(-)-(R)-6-{2-[4-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシエチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンを含むペルジンフォテル;
・アルファ-アドレナリン作動性、たとえば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デクスメタトミジン、モダフィニル、または4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタン-スルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノール-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリン;
・三環系抗鬱剤、たとえば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリン;
・抗痙攣剤、たとえば、カルバマゼピン、ラモトリギン、トピラトマート(topiratmate)、またはバルプロエート;
・タキキニン(NK)拮抗剤、特に、NK-3、NK-2、またはNK-1拮抗剤、たとえば、(αR,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]-ナフチリジン-6-13-ジオン(TAK-637)、5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]-メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オン(MK-869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタント、または3-[[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-メチルアミノ]-2-フェニルピペリジン(2S,3S);
・ムスカリン性拮抗剤、たとえば、オキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロプシウム(tropsium)、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリン、およびイプラトロピウム;
・COX-2選択的阻害剤、たとえば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、またはルミラコキシブ;
・コールタール鎮痛剤、特に、パラセタモール;
・神経遮断剤、たとえば、ドロペリドール、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、チオリダジン、メソリダジン、トリフルオペラジン、フルフェナジン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、ジプラシドン、クエチアピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ソネピプラゾール、ブロナンセリン、イロペリドン、ペロスピロン、ラクロプリド、ゾテピン、ビフェプルノックス、アセナピン、ルラシドン、アミスルプリド、バラペリドン、パリンドール、エプリバンセリン、オサネタント、リモナバント、メクリネルタント、Miraxion(登録商標)、またはサリゾタン;
・バニロイド受容体作動剤(たとえばレジンフェラトキシン(resinferatoxin))または拮抗剤(たとえばカプサゼピン);
・ベータ-アドレナリン作動性、たとえばプロプラノロール;
・局所麻酔剤、たとえばメキシレチン;
・コルチコステロイド、たとえばデキサメタゾン;
・5-HT受容体作動剤または拮抗剤、特に5-HT1B/1D作動剤、たとえば、エレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、またはリザトリプタン、
・5-HT2A受容体拮抗剤、たとえばR(+)-アルファ-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニルエチル)]-4-ピペリジンメタノール(MDL-100907);
・コリン作動性(ニコチン性)鎮痛剤、たとえば、イスプロニクリン(TC-1734)、(E)-N-メチル-4-(3-ピリジニル)-3-ブテン-1-アミン(RJR-2403)、(R)-5-(2-アゼチジニルメトキシ)-2-クロロピリジン(ABT-594)、またはニコチン;
・Tramadol(登録商標);
・PDEV阻害剤、たとえば、5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニル-スルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン(シルデナフィル)、(6R,12aR)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-ピラジノ[2’,1’:6,1]-ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン(IC-351またはタダラフィル)、2-[2-エトキシ-5-(4-エチル-ピペラジン-1-イル-1-スルホニル)-フェニル]-5-メチル-7-プロピル-3H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン(バルデナフィル)、5-(5-アセチル-2-ブトキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-エチル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-(5-アセチル-2-プロポキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-イソプロピル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-[2-エトキシ-5-(4-エチルピペラジン-1-イルスルホニル)ピリジン-3-イル]-3-エチル-2-[2-メトキシエチル]-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、4-[(3-クロロ-4-メトキシベンジル)アミノ]-2-[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]-N-(ピリミジン-2-イルメチル)ピリミジン-5-カルボキサミド、3-(1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-6,7-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-N-[2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル]-4-プロポキシベンゼンスルホンアミド;
・カンナビノイド;
・代謝型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)拮抗剤;
・セロトニン再取り込み阻害剤、たとえば、セルトラリン、セルトラリン代謝物デメチルセルトラリン(demethylsertraline)、フルオキセチン、ノルフルオキセチン(フルオキセチンデスメチル代謝物)、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム代謝物デスメチルシタロプラム、エシタロプラム、d,l-フェンフルラミン、フェモキセチン、イホキセチン、シアノドチエピン、リトキセチン、ダポキセチン、ネファゾドン、セリクラミン、およびトラゾドン;
・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取り込み阻害剤、たとえば、マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタゼピン(mirtazepine)、オキサプリチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロプリオン、ブプロプリオン代謝物ヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシン、およびビロキサジン(Vivalan(登録商標))、特に選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、たとえばレボキセチン、特に(S,S)-レボキセチン;
・二重セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、たとえば、ベンラファキシン、ベンラファキシン代謝物O-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン、クロミプラミン代謝物デスメチルクロミプラミン、デュロキセチン、ミルナシプラン、およびイミプラミン;
・誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤、たとえば、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-L-ホモシステイン、S-[2-[(1-イミノエチル)-アミノ]エチル]-4,4-ジオキソ-L-システイン、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-2-メチル-L-システイン、(2S,5Z)-2-アミノ-2-メチル-7-[(1-イミノエチル)アミノ]-5-ヘプテン酸、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)-ブチル]チオ]-5-クロロ-3-ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-4-クロロベンゾニトリル、(2S,4R)-2-アミノ-4-[[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]チオ]-5-チアゾールブタノール、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-6-(トリフルオロメチル)-3ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロベンゾニトリル、N-[4-[2-(3-クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン-2-カルボキサミジン、またはグアニジノエチルジスルフィド、
・アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、たとえばドネペジル;
・プロスタグランジンEサブタイプ4(EP4)拮抗剤、たとえば、N-[({2-[4-(2-エチル-4,6-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)フェニル]エチル}アミノ)-カルボニル]-4-メチルベンゼンスルホンアミド、または4-[(1S)-1-({[5-クロロ-2-(3-フルオロフェノキシ)ピリジン-3-イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸;
・ロイコトリエンB4拮抗剤、たとえば、1-(3-ビフェニル-4-イルメチル-4-ヒドロキシ-クロマン-7-イル)-シクロペンタンカルボン酸(CP-105696)、5-[2-(2-カルボキシエチル)-3-[6-(4-メトキシフェニル)-5E-ヘキセニル]オキシフェノキシ]-吉草酸(ONO-4057)、またはDPC-11870;
・5-リポキシゲナーゼ阻害剤、たとえば、ジロートン、6-[(3-フルオロ-5-[4-メトキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル])フェノキシ-メチル]-1-メチル-2-キノロン(ZD-2138)、または2,3,5-トリメチル-6-(3-ピリジルメチル),1,4-ベンゾキノン(CV-6504);
・ナトリウムチャネル遮断剤、たとえばリドカイン;あるいは
・5-HT3拮抗剤、たとえばオンダンセトロン;
ならびにそれらの薬学的に許容される塩および溶媒和物。
【0094】
本発明は、上記定義した式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体とを含む、医薬配合物をさらに提供する。医薬配合物は、上述の障害の処置のための、1つまたは複数の追加の活性薬剤をさらに含み得る。
【0095】
本発明は、上述の障害の処置において別々、同時、または連続的に投与するための組合せ調製物としての、上記定義した式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、1つまたは複数の追加の活性薬剤とを含む、医薬キットをさらに提供する。
【0096】
本発明は、治療上有効な量の上記定義した式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、そのような処置を必要としている哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物(特にヒト)における上述の障害の処置の方法をさらに提供する。
【0097】
医薬的使用に意図する本発明の化合物は、結晶性または非晶質の生成物として投与し得る。これらは、たとえば、固体プラグ、粉末、またはフィルムとして、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾燥などの方法によって、得られ得る。マイクロ波または高周波乾燥をこの目的のために使用し得る。
【0098】
これらは、投与した 単独で、または本発明の1つもしくは複数の他の化合物と組み合わせて、または1つもしくは複数の他の薬物と組み合わせて(あるいはその任意の組合せとして)投与し得る。一般に、これらは、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と会合した配合物として投与する。本明細書中において用語「賦形剤(excipient)」とは、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために使用する。賦形剤の選択肢は、具体的な投与様式、溶解度および安定性に対する賦形剤の影響、ならびに剤形の性質などの要因に大幅に依存する。
【0099】
本発明の化合物の送達に適した医薬組成物およびその調製方法は、当業者に容易に明らかとなるであろう。そのような組成物およびその調製方法は、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版(Mack Publishing Company、1995)中に見つけ得る。
【0100】
経口投与
本発明の化合物は経口投与し得る。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下することを含み得る、または化合物が口から血流に直接入る頬側もしくは舌下投与を用い得る。
【0101】
経口投与に適した配合物としては、錠剤、粒子、液体、もしくは粉末を含有するカプセル、ロゼンジ(液体を充填したものを含む)、咀嚼錠、多粒子およびナノ粒子、ゲル、固溶体、リポソーム、フィルム、膣坐薬、スプレー、および液体配合物などの固体配合物が挙げられる。
【0102】
液体配合物としては、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが挙げられる。そのような配合物は、軟または硬カプセル中の充填剤として用いてよく、典型的には、担体、たとえば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油、および1つまたは複数の乳化剤および/または懸濁剤を含む。液体配合物はまた、固体の再構成によって、たとえばサシェ(sachet)からも調製し得る。
【0103】
本発明の化合物はまた、Expert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981~986、LiangおよびChen(2001)中に記載されているものなどの、速溶性、速崩壊性の剤形においても使用し得る。
【0104】
錠剤剤形には、用量に応じて、薬物は、剤形の1重量%~80重量%、より典型的には剤形の5重量%~60重量%を構成し得る。薬物に加えて、錠剤は一般に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン、およびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、剤形の1重量%~25重量%、好ましくは5重量%~20重量%を構成する。
【0105】
結合剤は一般に、錠剤配合物に粘着性の性質を与えるために使用する。適切な結合剤としては、微結晶セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ガム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤はまた、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥した一水和物、無水など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプン、および二塩基性リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤も含有し得る。
【0106】
錠剤はまた、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80などの界面活性剤、ならびに二酸化ケイ素およびタルクなどの滑剤も、任意選択で含み得る。存在する場合、界面活性剤は錠剤の0.2重量%~5重量%を構成してよく、滑剤は錠剤の0.2重量%~1重量%を構成してよい。
【0107】
錠剤はまた、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物などの潤滑剤も含有する。潤滑剤は、一般に、錠剤の0.25重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%を構成する。
【0108】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、香味料、保存料、および味マスキング剤が挙げられる。
【0109】
例示的な錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%~約90重量%の結合剤、約0重量%~約85重量%の希釈剤、約2重量%~約10重量%の崩壊剤、および約0.25重量%~約10重量%の潤滑剤を含有する。
【0110】
錠剤ブレンドは、直接またはローラーによって圧縮して、錠剤を形成し得る。あるいは、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を、錠剤化前に湿、乾、もしくは溶融顆粒化、溶融凝結、または押出し得る。最終配合物は1つまたは複数の層を含んでよく、コーティングされていてもされていなくてもよい。これはカプセル封入されていてさえよい。
【0111】
錠剤の配合は、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets、第1巻、H.LiebermanおよびL.Lachman(Marcel Dekker、New York、1980)中に記述されている。
【0112】
ヒトまたは獣医学的使用のための消費可能な経口フィルムは、典型的には、迅速に溶解するまたは粘膜接着であり得る、柔軟な水溶性または水膨潤性の薄膜剤形であり、典型的には、式Iの化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定化剤または乳化剤、粘度改質剤、および溶媒を含む。配合物の一部の構成要素は複数の機能を行い得る。
【0113】
本発明の化合物は水溶性または不溶性であり得る。水溶性の化合物は、典型的には、溶質の1重量%~80重量%、より典型的には20重量%~50重量%を構成する。可溶性がより低い化合物は、より高い割合の組成物、典型的には溶質の88重量%までを構成し得る。あるいは、本発明の化合物は、多粒子ビーズの形態であり得る。
【0114】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖、タンパク質、または合成ヒドロコロイドから選択してよく、典型的には、0.01~99重量%の範囲、より典型的には30~80重量%の範囲で存在する。
【0115】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色料、香味料および香味増強剤、保存料、唾液刺激剤、冷却剤、共溶媒(油を含む)、軟化剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、ならびに味マスキング剤が挙げられる。
【0116】
本発明によるフィルムは、典型的には、可剥性の背面支持体または紙上にコーティングした薄い水性フィルムの蒸発乾燥によって調製する。これは、乾燥オーブンもしくはトンネル、典型的には組み合わせたコーティング乾燥機中において、または凍結乾燥もしくは真空化によって行い得る。
【0117】
経口投与のための固体配合物は、即時および/または改変放出となるように配合し得る。改変放出配合物としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、およびプログラム放出が挙げられる。
【0118】
本発明の目的のための適切な改変放出配合物は、米国特許第6,106,864号中に記載されている。高エネルギー分散および浸透圧およびコーディング粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、Pharmaceutical Technology On-line、25(2)、1~14、Vermaら、(2001)中に見つかる。徐放性を達成するためのチューイングガムの使用は、WO00/35298号中に記載されている。
【0119】
非経口投与
本発明の化合物はまた、血流内、筋肉内、または内蔵内にも直接投与し得る。非経口投与の適切な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および皮下が挙げられる。非経口投与のための適切な装置としては、針(顕微針を含む)注射器、無針注射器、および輸液技法が挙げられる。
【0120】
非経口配合物は、典型的には、塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくは3~9のpHにするもの)などの賦形剤を含有し得る水溶液であるが、一部の応用には、これらは、より適切には、無菌的な非水性溶液として、または無菌的な発熱物質を含まない水などの適切なビヒクルと併せて使用する乾燥形態として配合し得る。
【0121】
無菌的条件下における、たとえば凍結乾燥による非経口配合物の調製は、当業者に周知の標準の医薬的技法を使用して容易に達成し得る。
【0122】
非経口溶液の調製において使用する本発明の化合物の溶解度は、溶解度増強剤の取り込みなどの適切な配合技法の使用によって増加させ得る。
【0123】
非経口投与のための配合物は、即時および/または改変放出となるように配合し得る。改変放出配合物としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、およびプログラム放出が挙げられる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の改変放出を提供する埋込型デポーとして投与するための、固形物、半固体、またはチキソトロピー液体として配合し得る。そのような配合物の例としては、薬物でコーティングしたステントおよびポリ(dl-乳酸-コ-グリコール酸)(PGLA)ミクロスフェアが挙げられる。
【0124】
局所投与
本発明の化合物はまた、皮膚または粘膜に、すなわち経真皮的または経皮的に局所投与もし得る。この目的のための典型的な配合物としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯、泡沫、フィルム、皮膚パッチ、ウエファー、移植片、スポンジ、繊維、帯具、およびマイクロエマルジョンが挙げられる。リポソームも使用し得る。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱物油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤を取り込ませてもよく、たとえば、J Pharm Sci、88(10)、955~958、FinninおよびMorgan(1999年10月)を参照されたい。
【0125】
局所投与の他の手段としては、電気穿孔、イオン泳動、音波泳動、超音波泳動、および顕微針または無針(たとえば、Powderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が挙げられる。
【0126】
局所投与のための配合物は、即時および/または改変放出となるように配合し得る。改変放出配合物としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、およびプログラム放出が挙げられる。
【0127】
吸入/鼻腔内投与
本発明の化合物はまた、鼻腔内でまたは吸入によって、典型的には乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、たとえばラクトースとの乾燥ブレンドで、もしくは混合構成要素粒子として、たとえばリン脂質、たとえばホスファチジルコリンと混合してのいずれかで)、ドライパウダー吸入器から、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは電気流体力学を使用して霧状ミストを生じるアトマイザー)、もしくは適切な噴霧剤、たとえば1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンを用いたまたは用いない噴霧器からのエアロゾルスプレーとして、投与することもできる。鼻腔内使用には、粉末は生体接着剤、たとえばキトサンまたはシクロデキストリンを含み得る。
【0128】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、または噴霧器は、たとえば、エタノール、水性エタノール、または活性薬剤の分散、可溶化、もしくは放出の延長のための適切な代替薬剤、溶媒としての噴霧剤、および任意選択の界面活性剤、たとえば、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、またはオリゴ乳酸を含む、本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0129】
乾燥粉末または懸濁液配合物において使用する前に、薬物製品を、吸入による送達に適した大きさ(典型的には5ミクロン未満)まで微小化する。これは、スパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体加工、高圧ホモジネート、またはスプレー乾燥などの、任意の適切な微粉砕方法によって達成し得る。
【0130】
吸入器または注入器において使用するためのカプセル(たとえばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製したもの)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物、適切な粉末基剤、たとえばラクトースまたはデンプン、および性能改質剤、たとえば、l-ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムの粉末混合物を含有するように配合し得る。ラクトースは、無水であるか、または一水和物の形態であってよく、好ましくは後者である。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが挙げられる。
【0131】
電気流体力学を使用して霧状ミストを生じるアトマイザーにおいて使用するための適切な溶液配合物は、1回の操作あたり1μg~20mgの本発明の化合物を含有してよく、操作体積は1μl~100μlで変動し得る。典型的な配合物は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含み得る。プロピレングリコールの代わりに使用し得る代替溶媒としては、グリセロールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0132】
メントールおよびレボメントールなどの適切な香味料、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味料を、吸入/鼻腔内投与を意図する本発明の配合物に加え得る。
【0133】
吸入/鼻腔内投与のための配合物は、たとえばPGLAを使用して、即時および/または改変放出となるように配合し得る。改変放出配合物としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、およびプログラム放出が挙げられる。
【0134】
ドライパウダー吸入器およびエアロゾルの場合、単位用量は、計量された量を送達する弁によって決定される。本発明によるユニットは、典型的には、1~10,000μgの本発明の化合物を含有する一定量または「パフ」を投与するように配置されている。全体的な1日用量は、典型的には1μg~10mgの範囲であり、これは、単一用量で、またはより通例では一日にわたる分割用量として投与し得る。
【0135】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、直腸または経膣で、たとえば、坐薬、膣坐薬、または浣腸の形態で投与し得る。カカオ脂が従来の坐薬基剤であるが、様々な代替物質を必要に応じて使用し得る。
【0136】
直腸/経膣投与のための配合物は、即時および/または改変放出となるように配合し得る。改変放出配合物としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、およびプログラム放出が挙げられる。
【0137】
眼球/耳の投与
本発明の化合物はまた、眼または耳に直接、典型的には等張のpH調節した無菌的な塩類溶液中の微小化した懸濁液または溶液の液滴の形態でも、投与し得る。眼球および耳の投与に適した他の配合物としては、軟膏、生分解性(たとえば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(たとえばシリコン)の移植片、ウエファー、レンズ、ならびに粒子状または小胞の系、たとえばニオソームまたはリポソームが挙げられる。ポリマー、たとえば、架橋結合したポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース性ポリマー、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロース、またはヘテロ多糖ポリマー、たとえばゲランガムを、保存料、たとえば塩化ベンザルコニウムと一緒に取り込ませ得る。そのような配合物はまた、イオン泳動によっても送達し得る。
【0138】
眼球/耳の投与のための配合物は、即時および/または改変放出となるように配合し得る。改変放出配合物としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、またはプログラム放出が挙げられる。
【0139】
他の技術
本発明の化合物は、前述の投与様式のうちの任意のものにおいて使用するために、その溶解度、溶解速度、味マスキング、生体利用能、および/または安定性を改善させるために、可溶性の巨大分子部分、たとえば、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体またはポリエチレングリコール含有ポリマーと組み合わせ得る。
【0140】
たとえば、薬物-シクロデキストリン複合体が、ほとんどの剤形および投与経路に一般に有用であることが見出されている。封入および非封入のどちらの複合体も使用し得る。薬物との直接複合体形成の代替方法として、シクロデキストリンを補助添加剤として、すなわち、担体、希釈剤、または可溶化剤として使用し得る。これらの目的のために最も一般的に使用されているものは、アルファ-、ベータ-、およびガンマ-シクロデキストリンであり、その例は、国際特許出願WO91/11172号、WO94/02518号、およびWO98/55148号中に見つけ得る。
【0141】
部品キット
たとえば特定の疾患または状態を処置する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合がある限りは、その少なくとも1つが本発明による化合物を含有する2つ以上の医薬組成物を、組成物の共投与に適したキットの形態で好都合に組み合わせ得ることは、本発明の範囲内にある。
【0142】
したがって、本発明のキットは、その少なくとも1つが本発明による式Iの化合物を含有する2つ以上の別々の医薬組成物と、前記組成物を別々に保持するための手段、たとえば、容器、分割ボトル、または分割ホイルパケットを含む。そのようなキットの一例は、錠剤、カプセルなどのパッケージングに使用されている、見慣れたブリスターパックである。
【0143】
本発明のキットは、様々な剤形、たとえば経口および非経口を投与するため、別々の組成物を様々な投与間隔で投与するため、または別々の組成物を互いに対して滴定するために、特に適している。コンプライアンスを支援するために、キットは、典型的には投与の指示を含み、いわゆる記憶補助と共に提供し得る。
【0144】
投与量
ヒト患者への投与には、本発明の化合物の合計1日用量は、典型的には、0.5mg~3000mgの範囲であり、もちろん投与様式に依存する。たとえば、経口投与は3mg~3000mgの合計1日用量を必要とし得る一方で、静脈内用量は0.5mg~500mgしか必要としない場合がある。合計1日用量は単一または分割用量で投与してよく、医師の判断で、本明細書中に与える典型的な範囲外であってよい。
【0145】
これらの投与量は、約60kg~70kgの体重を有する平均ヒト対象に基づく。医師は、乳児および高齢者などの、体重がこの範囲外となる対象の用量を容易に決定することができるであろう。
【0146】
疑いを回避するために、本明細書中における「処置(treatment)」への言及は、治癒的、対症的、および予防的処置への言及を含む。
【実施例
【0147】
実験
材料および方法
SOS1阻害剤の同定:
以下の方法は、Hilligら、PNAS、2019年2月12日、第116巻、第7号、2551~2560中に記載のHTRF結合アッセイに基づく。
【0148】
阻害データの測定および評価、IC50値の計算。
均一時間分解蛍光(HTRF)を、PHERAstarリーダー(BMG、ドイツ)を用いて、HTRFモジュール(励起:337nm、発光1:620nm、発光2:665nm)を使用して測定した。665および620nmでの発光の比を、さらなる評価のための特異的シグナルとして使用した。対照、すなわち、DMSO=0%の阻害、阻害剤対照溶液を有する阻害対照ウェル=100%の阻害を使用してデータを正規化した。化合物は、11個までの濃度(たとえば、20μM、5.7μM、1.6μM、0.47μM、0.13μM、38nM、11nM、3.1nM、0.89nM、0.25nM、および0.073nM)で2回繰り返し試験した。IC50値は、4パラメータの当て嵌めを使用して、市販のソフトウェアパッケージ(Genedata Screener、スイス)を用いて計算した。KRASG12Cの活性化はSOS1catアッセイ(「オン-アッセイ」)によって行った。このアッセイは、SOS1catに媒介される、蛍光GTP類似体を用いたKRASG12C-GDPのローディングを定量する。成功したローディングの検出は、GST-KRASG12Cと結合した抗GST-テルビウム(FRETドナー)からローディングした蛍光GTP類似体(FRETアクセプター)への共鳴エネルギー移動を測定することによって、達成した。DY-647P1(Dyomics GmbH、ドイツ)]で標識した蛍光GTP類似体EDA-GTP-DY-647P1[2’/3’-O-(2-アミノエチル-カルバモイル)グアノシン-5’-三リン酸をJena Bioscience (ドイツ)によって合成し、1mMの水溶液として供給した。KRASG12C作業溶液を、100nMのGST-KRASG12Cおよび2nMの抗GST-テルビウム(Cisbio、フランス)を含有するアッセイ緩衝液[10mMのHEPES、pH 7.4(AppliChem)、150mMのNaCl(Sigma)、5mMのMgCl2(Sigma)、1mMのDTT(Thermo Fisher)、0.05%のBSA V画分、pH7.0(ICN Biomedicals)、0.0025%(v/v)のIgepal(Sigma)]中で調製した。SOS1cat作業溶液を、20nMのSOS1catおよび200nMのEDA-GTP-DY-647P1を含有するアッセイ緩衝液中で調製した。阻害剤対照溶液を、200nMのEDA-GTP-DY-647P1を含有するSOS1catを含まないアッセイ緩衝液中で調製した。アッセイのすべてのステップは20℃で行った。2.5μLの体積のKRASG12C作業溶液を、Multidrop分注器(Thermo LabSystems)を使用して試験プレートのすべてのウェルに加えた。10分後、2.5μLのSOS1cat作業溶液を、阻害剤対照溶液ウェル以外のすべてのウェルに加えた。30分間のインキュベーションの後、HTRFを測定した。
【0149】
Ras阻害剤の同定
Ras阻害剤を、Kesslerら、Proc Natl Acad Sci U S A.、2019年8月6日、116(32):15823~15829からの以下のアッセイを使用して同定した。
【0150】
Alpha Screenアッセイ220、SOS:RASの相互作用を測定するためのin vitro無細胞方法。
【0151】
様々なタンパク質-タンパク質相互作用の測定を、Perkin Elmerによって開発されたAlpha 221 Screen技術を使用して行った。組換えRASタンパク質(H-、N-、K-222 RAS変異体;すべてのKRAS変異体はKRASアイソフォーム4B(uniprot id P01116-2)に基づく;223 KRAS(G12D)1~169、N末端の6Hisタグ、C末端のaviタグはXtal 224、BioStructures,Inc.からのものであり、KRAS(G12C)1~169、C末端のaviタグ、ビオチン標識、突然変異:225 C51S、C80L、C118S、NRAS(野生型)1~172、C末端aviタグ、ビオチン標識;HRAS(野生型)1~226 166、C末端aviタグ、ビオチン標識)。ビオチン化は、製造者(Avidity 228 LLC、米国コロラド州Aurora)によって推奨されるように、in vitroで、227組換えBirAビオチン-タンパク質リガーゼを用いて行った。SOS1(564~1049、N末端229 GSTタグ、TEV切断部位)、cRaf(1~303、N末端GSTタグ、TEV切断部位)、および230 PI3KA-RBD(160~317、N末端HIS_GSTタグ)などの相互作用タンパク質を、グルタチオンS231トランスフェラーゼ(GST)融合物として発現させた。したがって、Alpha Screenビーズは、グルタチオンでコーティングした232 Alpha Lisaアクセプタービーズ(Perkin Elmer AL 109 R)およびAlpha Screenストレプトアビジン233とコンジュゲートさせたドナービーズ(Perkin Elmer 6760002L)であった。ヌクレオチドは234 Sigma(GTP#G8877、GDP#G7127)から購入し、Tween-20はBioradからのものであった(#161-0781)。すべての235相互作用アッセイは、0.1%のウシ血清アルブミン、236 0.05%のTween-20、および10μMの対応するヌクレオチドを含有するPBS中で実施した。アッセイは、237白色ProxiPlate-384 Plusプレート(Perkin Elmer #6008280)中、20μLの最終体積で実施した。手短に述べると238、ビオチン標識したRASタンパク質(10nMの最終濃度)およびGST-SOS1、GST-PI3K239、またはGST-CRAF(10nMの最終)を、対応するヌクレオチド(SOS1を含有する241アッセイにはGDPまたはGTP、PI3KまたはCRAFを含有する相互作用アッセイにはGTPのみ)を含有する緩衝液中でグルタチオンアクセプタービーズ(5μg/mLの最終240濃度)と混合し、242 30分間室温でインキュベートした。ストレプトアビジンドナー243ビーズ(5μg/mLの最終濃度)を緑色光下で加えた後、混合物を60分間、暗所、室温でさらにインキュベートした244。単一の酸素誘導蛍光を、Enspireマルチモードプレートリーダー(Perkin Elmer)で、246製造者の推奨に従って245測定した。データはGraphPad Prismデータ247ソフトウェアを使用して分析した。
【0152】
疼痛を処置するSOS1阻害剤およびRas阻害剤の能力を、NGF刺激性PC12アッセイ(Sasagawaら、NATURE CELL BIOLOGY、第7巻、第4号、2005年4月、365~373)に基づく以下のアッセイを使用して測定した。
【0153】
BI3406による、PC-12細胞系中における神経成長因子(NGF)刺激性ホスホ細胞外制御キナーゼ1および2(pERK1/2)の活性化の阻害。
均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイ:
様々なNGF刺激濃度でのBI-3406阻害:
選択的小分子ラット肉腫の阻害効果:Son of Sevenless1(RAS:SOS1)阻害剤、BI-3406(Selleck Chemicals)を、NGF活性化後のERK1/2のリン酸化を測定するHTRF読取値を介してモニタリングした。そうでないと指定しない限り、すべてのアッセイは、1%の熱失活させたウマ血清(Merck)、0.5%の熱失活させたウシ胎児血清(FBS)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミンを添加したRPMI-1640成長培地(Gibco)中で24時間血清飢餓させた、ラット副腎PC-12細胞(Merck)中で行った。HTRFの市販のキット(Cisbio)からの試薬を、製造者の指示に従って調製した。
【0154】
アッセイ手順:
PC-12細胞をルーチン的な細胞培養物から単離し、適切な細胞密度で384ウェルプレート中に(典型的には25,000個の細胞/ウェル)24時間、血清飢餓条件下で播種した。インキュベーションの後、PC-12細胞を、適切な濃度応答範囲にわたる作業濃度のBI-3406で30分間前処置した(37℃/5%CO)。試験したNGF(Merck)の濃度あたり、二つ組のBI-3406の濃度応答曲線を設定した。30分間の化合物のプレインキュベーションの後、PC-12細胞をNGFで処置し(250ng/mL~10ng/mLのNGFの力価を試験した)、続いて5分間インキュベートした(37℃/5%CO)。5分間のNGF処置の後、市販のHTRFキットからの溶解緩衝液を、振盪を伴った30分間のインキュベーションのためにPC-12細胞に施用した(20℃、600rpm)。1ウェルあたり適切な体積の溶解物を収集し、別々の384ウェルのProxiplate(Perkin Elmer)に移し、5×濃縮HTRFキット抗体混合物をそれぞれの溶解物試料ウェル内に分注した。室温で2時間のインキュベーションを行った後、マイクロプレートリーダー(PHERAstar FSX、BMG Labtech)を使用した蛍光シグナルの決定を行った。
【0155】
【表1】
【0156】
分析
i.NGF活性化に対するBI-3406のIC50プロット:
試料データをそれぞれのプレート内で使用した高および低対照(それぞれ+/-25ng/mLのNGF)に対して正規化することによって、阻害百分率値を化合物濃度ごとに計算した。それぞれの二つ組のBI-3406濃度応答曲線からの阻害百分率値を平均して、濃度ごとのデータ点を提供した。その後、平均阻害百分率値を使用して、50%の阻害濃度(IC50)を決定し、最大%有効性(阻害)は、4パラメータのロジスティック当て嵌めを使用して、(BI3406の最大%有効性/-NGF対+NGFの差異によって与えられる最大%有効性)であった[式中、y=A xnH/(EC50nH+xnH)であり、xおよびyは、それぞれ試験薬剤濃度および%細胞pERKシグナルを表す]。パラメータEC50は試験薬剤濃度の最大半量アウトプットであり、Aは最大の阻害(有効性)である一方で、nHはヒル係数である(GraphPad Prism)。その後、応答データを、それぞれのBI-3406化合物濃度のモル濃度対数に対して、表示目的のために決定された当て嵌め結果と共にプロットした。エラーバーは1標準偏差を表す。
【0157】
ii.BI-3406のIC50対NGF濃度:
セクション「i」に記載した分析に従って、250ng/mL、200ng/mL、150ng/mL、100ng/mL、50ng/mL、25ng/mL、および10ng/mLのNGF濃度で、IC50値をBI-3406について計算した。続いて、生じたNGF濃度(x軸)ごとのIC50値(y軸)の相乗平均を、別々のグラフ内にプロットした。エラーバーは、2~8個の別々のIC50複製組から計算した1標準偏差を表す。
【0158】
iii.最大有効性百分率対NGF濃度:
セクション「i」に記載のように、適切なBI-3406濃度応答範囲にわたる阻害百分率値を化合物濃度ごとに計算した。NGF濃度ごとの、試験したBI-3406化合物の上位濃度について計算した平均阻害百分率値を、2~8個の複製組から計算し、続いて別々のグラフ内にプロットして、NGF濃度(x軸)に対する最大有効性百分率(y軸)を示した。エラーバーは1標準偏差を表す。
【0159】
結果を図3中にグラフで表す。
【0160】
組合せ作業;抗NGFおよびBI-3406阻害の協同性。
選択的小分子RAS:SOS阻害剤、BI-3406(Selleck Chemicals)、および既知の抗体に基づくNGF阻害剤、抗NGFの合わせた阻害効果を、NGF活性化によるERK1/2のリン酸化を測定するHTRF読取値を介してモニタリングした。そうでないと指定しない限り、すべてのアッセイは、1%の熱失活させたウマ血清(Merck)、0.5%の熱失活させたウシ胎児血清(FBS)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミンを添加したRPMI-1640成長培地(Gibco)中で24時間血清飢餓させた、ラット副腎PC-12細胞(Merck)中で行った。HTRFの市販のキット(Cisbio)からの試薬を、製造者の指示に従って調製した。
【0161】
アッセイ手順:
PC-12細胞をルーチン的な細胞培養物から単離し、適切な細胞密度(典型的には25,000個の細胞/ウェル)で384ウェルプレート中に24時間、血清飢餓条件下で播種した。様々な抗NGF(Abcam)濃度および固定NGF濃度の作業調製物を血清飢餓培地中で調製し、30分間プレインキュベートした(37℃/5%CO)。同時に、PC-12細胞を、作業濃度のBI-3406で30分間前処置した(37℃/5%CO)。試験した抗NGF;NGFの組合せあたり、二つ組のBI-3406の濃度応答曲線を設定した。30分間のプレインキュベーションの後、PC-12細胞を適切な抗NGF;NGFの組合せで処置し(固定の250ng/mLの濃度のNGFに対する、30μg/mL~0μg/mLの範囲の抗NGFの力価を試験した)、続いて5分間インキュベートした(37℃/5%CO)。5分間の抗NGF;NGF処置の後、市販のHTRFキットからの溶解緩衝液を、振盪を伴った30分間のインキュベーションのためにPC-12細胞に施用した(20℃、600rpm)。1ウェルあたり適切な体積の溶解物を収集し、別々の384ウェルのProxiplate(Perkin Elmer)に移し、5×濃縮HTRFキット抗体混合物をそれぞれの溶解物試料ウェル内に分注した。室温で2時間のインキュベーションを行った後、蛍光シグナルをマイクロプレートリーダー(PHERAstar FSX、BMG Labtech)において測定した。
【0162】
分析
i.抗NGF;NGF負荷に対するBI-3406の有効性百分率のプロット:
試料データをそれぞれのプレート内で使用した高および低対照(それぞれ+/-250ng/mLのNGF)に対して正規化することによって、阻害百分率値を化合物濃度ごとに計算した。それぞれの二つ組のBI-3406濃度応答曲線からの阻害百分率値を平均して、濃度ごとのデータ点を提供した。その後、平均阻害百分率値を使用して、50%の阻害濃度(IC50)を決定し、最大%有効性(阻害)は、4パラメータのロジスティック当て嵌めを使用して、(BI3406の最大%有効性/-NGFによって与えられる最大%有効性)であった[式中、y=A xnH/(EC50nH+xnH)であり、xおよびyは、それぞれ試験薬剤濃度および%細胞pERKシグナルを表す]。パラメータEC50は試験薬剤濃度の最大半量アウトプットであり、Aは最大のアウトプット(有効性)である一方で、nHはヒル係数である(GraphPad Prism)。その後、応答データを、それぞれのBI-3406化合物濃度のモル濃度対数に対して、表示目的のために決定された当て嵌め結果と共にプロットした。エラーバーは1標準偏差を表す。抗NGF:NGFの組合せごとの、試験したBI-3406化合物の上位および下位の濃度の両方について計算した平均阻害百分率値を抽出し、試験した様々な抗NGF:NGFの組合せにわたって表形式で比較した。
【0163】
ウエスタンブロット:
BI-3406阻害に対するNGF負荷:
選択的小分子RAS:SOS阻害剤、BI-3406(Selleck Chemicals)の阻害効果は、NGF活性化によるERK1/2のリン酸化を測定する、ウエスタンブロットに基づく読取値(Jess、Protein Simple)を介してモニタリングした。そうでないと指定しない限り、すべてのアッセイは、1%の熱失活させたウマ血清(Merck)、0.5%の熱失活させたウシ胎児血清(FBS)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミンを添加したRPMI-1640成長培地(Gibco)中で24時間血清飢餓させたラット副腎PC-12細胞(Merck)中で行った。Jess分離モジュールの市販のキット(Protein Simple)からの試薬を、製造者の指示に従って調製した。
【0164】
アッセイ手順:
PC-12細胞をルーチン的な細胞培養物から単離し、適切な細胞密度で6ウェルプレート中に24時間、血清飢餓条件下で播種した。インキュベーションの後、PC-12細胞を、作業濃度のBI-3406で30分間前処置した(37℃/5%CO)。試験したNGF(Merck)の濃度あたり、二つ組のBI-3406の濃度応答曲線を設定した。30分間の化合物のプレインキュベーションの後、PC-12細胞を適切な濃度のNGFで処置し、続いて5分間インキュベートした(37℃/5%CO)。5分間のNGF処置の後、PC-12細胞懸濁液をファルコンチューブに移し、遠心分離した(300×gで5分間、4℃)。細胞上清を廃棄し、残った細胞ペレットを氷冷PBSで洗浄した。これを3×PBSの洗浄について繰り返した後、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する氷冷溶解緩衝液を乾燥細胞ペレットに加えた。続いてチューブを30秒間超音波処理し、細胞溶解の完了を確実にするために、定期的に反転させながら氷上で15分間保管した。溶解の後、試料を遠心分離し(13,000×gで5分間、4℃)、上清を抽出して、ウエスタンブロット分析のために調製した。上清試料を、製造者の指示に従ってJess毛細カセット内にロードするために調製した。試験したBI-3406濃度あたり二つ組の試料を同じ実行内にロードした。iに記載のようにデータを分析した。
【0165】
細胞培養および成長因子処置。
PC12細胞(1)をアメリカ培養細胞系統保存機関(メリーランド州Rockville)から購入し、10%のウマ血清(Life Technologies、ニューヨーク州Grand Island)および5%のウシ胎児血清(Hyclone、ユタ州Logan)を有するRPMI-1640(Biowhittaker、メリーランド州Walkersville)中で培養した。細胞生存度はトリパンブルー色素排除によって評価した。アッセイの前に、細胞をDMEM中で16時間飢餓させ、その後、20ng/μlの濃度でRPMI-1640中に溶かし、その後使用前に適切な濃度まで希釈した神経成長因子(NGF-β、マウス顎下腺、Sigma、モンタナ州St.Louis)を用いて刺激した。
【0166】
免疫蛍光アッセイ。
細胞をポリ-L-リシンでコーティングしたカバーガラスまたは格子ガラス底面の皿上に播種し、血清飢餓させ、示した濃度のNGFを用いて刺激した。細胞を4%のパラホルムアルデヒドで10分間、室温で固定し、0.2%のTriton X-100を用いて10分間、室温で、または100%のメタノールを用いて10分間、-20℃で透過処理し、その後、1%のBSAで30分間、室温で遮断した。その後、細胞を、一次抗体である抗ホスホERK1/2(1:200)抗体と共に1~2時間、室温で、続いて二次抗体(Alexa Fluor 647抗マウスIgG(1:500))抗体と共に1時間、室温でインキュベートした。すべての抗体はCekk Signalling Technology、米国マサチューセッツ州Danversによって供給された。平衡化後、細胞を洗浄し、分光蛍光光度計(Molecular Devices Spectromax、米国カリフォルニア州San Jose、95134)を使用して蛍光を測定した。
【0167】
試験化合物。
抗NGFモノクローナル抗体はAbcam(米国マサチューセッツ州Cambridge)によって供給された。BI-3406はMedichemExpress、米国ニュージャージー州によって供給された。
【0168】
データ分析。
データはGraphPad Prismを使用して分析した。
【0169】
結果
BI3406を含めたいくつかの構造的に多様なSOS1阻害剤を、PC-12細胞系アッセイにおける神経成長因子(NGF)刺激性ホスホ細胞外制御キナーゼ1および2(pERK1/2)の活性化の阻害において、適切な対照に対して試験した。試験したすべての化合物が、5を下回る、SOS1アッセイにおけるIC50を有する。
【0170】
すべてが、40~70%の有効性レベルを示した。
【0171】
BI-3406は、10~20nMのIC50を有していた。
【0172】
Ras阻害剤を同じアッセイにおいて試験した。これは40~70%の有効性レベルを示した。
【0173】
SOS1阻害剤BI-3406と組み合わせたNGF阻害剤タネズマブの、疼痛を処置する能力を、PC-12細胞系アッセイにおける神経成長因子(NGF)刺激性ホスホ細胞外制御キナーゼ1および2(pERK1/2)の活性化の阻害において測定した。
【0174】
200nMの濃度では、タネズマブは100%の有効性を有していた。
【0175】
50nMの濃度では、タネズマブは90%の有効性を有していた。
【0176】
500nMの濃度のBI-3406は40%の有効性を有していた。
【0177】
500nMの濃度のBI-3406と組み合わせた50nMの濃度のタネズマブは、約96%の有効性を有していた。
【0178】
Ras阻害剤と組み合わせたNGF阻害剤タネズマブの、疼痛を処置する能力も、アッセイにおいて測定した。
【0179】
200nMの濃度では、タネズマブは100%の有効性を有していた。
【0180】
50nMの濃度では、タネズマブは90%の有効性を有していた。
【0181】
500nMの濃度のBI-3406は40%の有効性を有していた。
【0182】
Ras阻害剤と併せた50nMの濃度のタネズマブは、約97%の有効性を有していた。
【0183】
表題:C57Bl6マウスにおける荷重負荷を使用した、CFA(完全フロイントアジュバント)誘導性過敏症に対する、単一用量のタネズマブと組み合わせた25mg/kgのBI3406の調査。
【0184】
研究の目的:BI3406では投薬の1時間後ならびにタネズマブ投与後の+1時間、+9時間、+25時間、および+33時間での荷重負荷(WB)評価を使用した、25mg/kgのBI3406(10mL/kg、p.o.、午前および午後の投薬、2日間)、0.1、0.3、および1mg/kgの単一用量のタネズマブとの組合せ(10mL/kg、i.p.、T=0)、ならびに3mg/kgのタネズマブ単独(10mL/kg、i.p.、T=0)の効果を調査すること。
【0185】
動物:n=50匹の雄のC57/BL6マウス、20.1g~26.0g(Charles River注文番号#4650568)。
【0186】
環境条件:動物は、5匹の群で、標準のケージ中、食料と水を自由に利用し、12時間/12時間の明/暗サイクル(午前7:00に点灯)で、収容した。
【0187】
試験化合物:
・25mg/kgのBI3406(10mL/kg、i.p.、BID、2日間)
・0.1、0.3、1、および3mg/kgのタネズマブ(10mL/kg、i.p.、T=0)
【0188】
対照群:ビヒクル、0.5%のヒドロキシメチルセルロース(10mL/kg、p.o.、BID、2日間)
【0189】
研究スケジュール:
CFA投薬の3日前:WB装置への慣らし、ベースライン読取りを1回とる。
【0190】
投薬の24時間前:20μlのCFAの足底内注射、左後足に1.5mg/ml。
【0191】
投薬の1時間前:CFA後の読取りをWB用にとる。
【0192】
1日目:化合物の投与
・0.1、0.3、1、および3mg/kgのタネズマブ(10mL/kg、i.p.)。
・25mg/kgのBI3406(10mL/kg、i.p.、BID、2日間)。
【0193】
1および2日目に、荷重負荷測定を、BI3406のそれぞれの投薬の1時間後に行った(上記スケジュールを参照)。
【0194】
3日目 動物にBI3406を投薬し、血液採取のためにそれぞれの時点で群ごとに3匹の動物を選別した。時点は、BI3406の最後の投薬の1時間、2時間、および8時間後であった。動物をスケジュール1の方法によって選別し、血液を、心穿刺を介してEDTAチューブ内に採取し、4℃で10分間、1500×gで遠心分離した。生じた血漿を取り出し、2つのアリコートに分割した。試料は発送時まで-80℃で保管した。
【0195】
研究の評価:荷重負荷
ナイーブな動物は、その体重を2つの後足間で均等に分配する。しかし、有痛性の傷害を一方の後足に与えた場合(すなわち、坐骨神経狭窄またはCFA足底内注射)、罹患した足にかかる体重が減るように、体重は再分配される(傷害を受けた足への体重負荷の減少を伴う)。動物をインキャパシタンステスト装置(Linton Instruments、英国)内に入れ、後足を別々のセンサーにのせた。左および右の後肢によって発揮された平均の力を2秒間にわたって記録した。荷重負荷の読取りを、左および右の後足の両方についてとった。同側性/対側性の比を計算し、%(平均±標準誤差)で表した。
【0196】
【表2】

【0197】
【表3】
【0198】
統計:二方向RM混合モデル(処置×繰り返し因子:回数)(InVivoStat v3.7.0.0)
同じ時点のビヒクル群と比較した場合に、p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001の有意差(n=9~10匹/群)。同じ薬物群内のベースラインと比較した場合に、###p<0.001の有意差。
【0199】
分析
鎮痛性以下の用量のSOSi(BI3406、25mg/kg po)は、単独では制限されない鎮痛効果を有していたが、NGFモノクローナル抗体(タネズマブ)と組み合わせた場合は、増強された鎮痛応答が観察された。タネズマブの増強された鎮痛効果は、SOSi(BI3406、25mg/kg po)と組み合わせた場合、用量に関連していた。鎮痛応答の統計的に有意な増強は、0.3mg/kgおよび1.0mg/kgのタネズマブをSOSi(BI3406、25mg/kg)と組み合わせた場合に観察された。組合せ研究により、単独で投薬した場合のより高い用量のタネズマブに匹敵する鎮痛効果が生じた。

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】