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特表2024-512986改良された物理化学的特性および薬理学的特性を有する酵素トリガー自己反応性リンカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】改良された物理化学的特性および薬理学的特性を有する酵素トリガー自己反応性リンカー
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20240313BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 5/062 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 5/065 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 5/02 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 38/07 20060101ALN20240313BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
A61K47/54
C07K16/00 ZNA
C07K5/062
C07K5/065
C07K19/00
C07K5/02
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K47/65
A61P35/00
A61P37/02
A61K45/00
A61K38/07
A61K31/4745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559766
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022058402
(87)【国際公開番号】W WO2022207699
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21305405.9
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/167,915
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520144853
【氏名又は名称】マブリンク ビオシオンス
(71)【出願人】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】511196870
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリセル,ワラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】フルネ,ギュイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA44
4C084CA47
4C084DA35
4C084NA05
4C084ZB07
4C084ZB26
4C085AA16
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB01
4C085BB36
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZB07
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA13
4H045BA41
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA33
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、酵素トリガー自己反応アーム化合物、そのような化合物を調製するために使用される化学中間体、およびそれらの使用、特にプロドラッグ設計およびコンジュゲーション技術に関する。本発明はまた、そのような酵素トリガー自己反応アームを含むリガンド-薬物-コンジュゲート(LDC)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)を有するリガンド-薬物-コンジュゲート化合物(LDC)
【化1】

式中、
Lは、リガンドである;
X1は、コネクターユニットである;
Zは、任意のスペーサーである;
X2は、コネクターユニットである;
Kは、任意の疎水性マスキング物質であり、好ましくはポリサルコシンおよびポリエチレングリコールから選択される;
R1は、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Yは、Tが糖開裂性ユニットの場合はOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットの場合はNR3である;
R3は、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【請求項2】
Lは、ポリペプチド、タンパク質、抗体および抗体フラグメントからなる群から選択されるリガンドであり、好ましくは、Lは抗体である、請求項1に記載のLDC化合物。
【請求項3】
Dは、薬物からなる群から選択され、好ましくは、Dは抗癌剤または免疫調節剤である、請求項1または2に記載のLDC化合物。
【請求項4】
X1およびX2は、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、任意に置換されたポリエーテル、C-C12アルキレン、6~10個の環原子を有するアリーレン、C-Cシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロアリーレン、C-C10アルケニレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択され、
前記アルキレンおよび前記アルケニレンは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断され、
ならびに、前記アルキレン、前記アリーレン、前記シクロアルキレン、前記ヘテロシクロアルキレン、前記ヘテロアリーレン、および前記アルケニレンは、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている:ハロゲン、オキソ、-OH、-NO、-CN、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、6~10個の環原子を有するアリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、C-Cハロアルコキシ、-(CO)-R’、-O-(CO)-R’、-(CO)-O-R’、-(CO)-NR’’R’’’、-NR’’-(CO)-R’、および-NR’’R’’’;
R’、R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項5】
Zは、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、任意に置換されたポリエーテル、C-C12アルキレン、6~10個の環原子を有するアリーレン、C-Cシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロアリーレン、C-C10アルケニレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択され、
前記アルキレンおよび前記アルケニレンは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断され、
ならびに、前記アルキレン、前記アリーレン、前記シクロアルキレン、前記ヘテロシクロアルキレン、前記ヘテロアリーレン、および前記アルケニレンは、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている:ハロゲン、オキソ、-OH、-NO、-CN、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、6~10個の環原子を有するアリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、C-Cハロアルコキシ、-(CO)-R’、-O-(CO)-R’、-(CO)-O-R’、-(CO)-NR’’R’’’、-NR’’-(CO)-R’、および-NR’’R’’’;
R’、R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項6】
Kは、ポリサルコシンである、請求項1~5のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項7】
Tは、グルクロニドである糖開裂性ユニットである、請求項1~6のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項8】
Tはジペプチドであり、好ましくはVal-Cit、Val-AlaおよびPhe-Lysから選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項9】
前記化合物は、式(VI)の化合物である
【化2】

式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数であり;および、Tはポリペプチド開裂性ユニット、好ましくはジペプチドである、請求項1~6のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項10】
前記化合物は、式(VIII)の化合物である
【化3】

式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数であり;および、Tは糖開裂性ユニット、好ましくはグルクロニドまたはガラクトシドである、請求項1~6のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のLDC化合物と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項12】
薬物として使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載のLDC化合物。
【請求項13】
式(II)の中間体化合物
【化4】

式中、
X1’は、リガンドと反応してコネクターユニットを形成することができる基である;
Zは、任意のスペーサーである;
X2は、コネクターユニットである;
Kは、任意の疎水性マスキング物質であり、好ましくはポリサルコシンおよびポリエチレングリコールから選択される;
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【請求項14】
Kは、ポリサルコシンである、請求項11に記載の式(II)の中間体化合物。
【請求項15】
式(III)の中間体化合物
【化5】

式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【請求項16】
式(IV)の中間体化合物
【化6】

式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、Hである;
R5は、Hである;
Tは、糖開裂性ユニットである;
Y’は、Oである;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【請求項17】
式(IV)の中間体化合物
【化7】

式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Y’は、NR3’である;
Tは、ポリペプチド開裂性ユニットである;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、酵素トリガー自己反応アームを含む化合物、そのような化合物を調製するために使用される化学中間体、およびそれらの使用、特にプロドラッグ設計およびコンジュゲーション技術に関する。
【0002】
本発明はまた、このような酵素トリガー自己反応アームを含むリガンド-薬物-コンジュゲート(LDC)に関する。
【0003】
〔背景〕
リガンド-薬物-コンジュゲート(LDC)は、活性化合物を標的組織に特異的に送達する一方で、健常組織は温存するように設計されている。例えば、細胞毒性の抗癌剤を腫瘍細胞に送達することを目的としたLDCの場合には、LDCの形式を用いることで、毒性プロファイルを改善し、かつ治療の忍容性を向上することができる。
【0004】
LDCは、少なくとも1つのリガンドユニットを含む。当該リガンドユニットは、通常ポリペプチド、タンパク質または標的化低分子であり、これらは合成リンカーを介して少なくとも1つの治療化合物、診断化合物または標識化合物(以下、薬物またはDと称する)と共有結合している。この合成リンカーは、リガンドユニット(単数または複数)と、薬物ユニット(単数または複数)とを結合するための1つまたは複数の1価または2価のアームを含み得、これらはスペーサー、コネクターおよび酵素感受性切断可能部分から選択され得る。前記リンカーはまた、LDC性能(貯蔵安定性、形質安定性または薬物動態特性など)を向上させることができる任意の部分を直交して担持し得る。コンジュゲートのリガンドユニットが抗体または抗体フラグメントであり、免疫賦活薬、細胞毒性薬または化学療法薬と結合している場合には、抗体-薬物-コンジュゲート(ADC)という用語が一般的に使用される。
【0005】
LDCを設計する場合には、最終的な活性薬物をリガンド標的化ユニットに共有結合させると同時に、細胞内在化後、または疾患組織の微小環境において、選択的な酵素機構による薬物ユニットの最終的な放出を可能にする必要がある。この観点から、いくつかのペプチダーゼ感受性切断可能リンカー化学戦略およびグリコシダーゼ感受性切断可能リンカー化学戦略(自己犠牲化学と関連する)が開発された。これらの開裂性リンカーおよび対応する切断機構はよく知られており、いくつかの出版物に記載されている(例えば、Bargh JG et al., Chem. Soc. Rev., 2019, 48, 4361, Toki et al. J. Org. Chem. 2002, 67, 6, 1866-1872, Scott et al. Bioconjugate Chem. 2006, 17, 3, 831-840)。
【0006】
例えば、WO2011145068には、4-(1-ヒドロキシブト-3-イン-1-イル)フェノール自己犠牲化学スペーサーに基づくグリコシダーゼ感受性切断可能薬物リンカーの使用が開示されており、これによって、クリックケミストリー性能のための末端アルキンハンドルが付与される(下記式参照)。
【0007】
【化1】
【0008】
WO2017089895には、2-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)安息香酸自己犠牲化学スペーサー(下記式参照)に基づくグリコシダーゼ感受性切断可能薬物リンカーの使用が記載されている。
【0009】
【化2】
【0010】
しかし、LDCの物理化学的特性および薬理学的特性を改善するような酵素感受性自己犠牲リンカーを開発することが、常に望まれている。
【0011】
したがって、この文脈において、本開示の目的の1つは、LDCを調製するために使用できる酵素感受性自己犠牲リンカーを提供することである。
【0012】
本開示のもう1つの目的は、LDCの物理化学的特性および/または薬理学的特性を改善することができる酵素感受性自己犠牲リンカーである。
【0013】
本開示の別の目的は、LDCを調製するために使用できる化合物を提供することである。
【0014】
〔まとめ〕
第1の態様において、本開示は、以下の式(I)を有するリガンド-薬物-コンジュゲート化合物(LDC)に関する。
【0015】
【化3】
【0016】
式中、
Lは、リガンドである;
X1は、コネクターユニットである;
Zは、任意のスペーサーである;
X2は、コネクターユニットである;
Kは、任意の疎水性マスキング物質であり、好ましくはポリサルコシンおよびポリエチレングリコールから選択される;
R1は、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Yは、Tが糖開裂性ユニットの場合はOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットの場合はNR3である;
R3は、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択さる;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0017】
式(I)のように、2-アミノ-1-(4-アミノフェニル)エタン-1-オール-ベースの自己犠牲リンカーまたは2-アミノ-1-(4-オキソフェニル)エタン-1-オール-ベースの自己犠牲リンカーを使用すると、驚くべきことに、改善された親水性および改善されたin vivo薬物動態プロファイルを有するLDCが得られることが見出された。この自己犠牲リンカーはまた、式(I)の化合物の製造、精製および製剤化を容易にし、したがって収率をより高くすることを可能にする。式(I)の化合物はまた、この特異的なリンカーの存在によって、より低い凝集の可能性を有する。
【0018】
本開示はまた、本開示の化合物、好ましくは式(I)の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0019】
本開示はまた、本開示の化合物、好ましくは薬物として使用するための式(I)の化合物に関する。
【0020】
本開示はまた、式(II)の中間体化合物に関する:
【0021】
【化4】
【0022】
式中、
X1’は、リガンドと反応してコネクターユニットを形成することができる基である;
Zは、任意のスペーサーである;
X2は、コネクターユニットである;
Kは、任意の疎水性マスキング物質であり、好ましくはポリサルコシンおよびポリエチレングリコールから選択される;
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0023】
本開示はまた、式(III)の中間体化合物に関する
【0024】
【化5】
【0025】
式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0026】
本開示はまた、式(IV)の中間体化合物に関する
【0027】
【化6】
【0028】
式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
各々のR2は、電子吸引基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0029】
〔図面の簡単な説明〕
図1および図2は、実施例3による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
【0030】
図3および図4は、実施例4によるコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイを表す。
【0031】
図5は、実施例5によるコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイを表す。
【0032】
図6図7図8および図9は、ラットにおけるin vivo薬物動態プロファイルおよび実施例6による薬物動態パラメータを表す。
【0033】
図10は、実施例7による胃癌のマウス異種移植モデルにおける経時的な腫瘍体積を表す。
【0034】
〔詳細な説明〕
〔定義〕
本開示の様々な実施形態が、本明細書に記載されている。各々の実施形態において明記される特徴は、他の明記される特徴と組み合わされて、さらなる実施形態を提供し得ることを認識されたい。
【0035】
本開示は、本開示の化合物、それらの互変異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体またはそれらの混合物、ならびにそれらの水和物、エステル、溶媒和物または薬学的に許容される塩を包含する。
【0036】
本明細書で示される式のどれもが、重水素標識化合物または14C標識化合物のように、非標識化合物の形態ならびに同位体標識化合物の形態を表すことも意図している。
【0037】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の生物学的な有効性および特性を保持し、典型的には生物学的または他の点で不都合のない塩を指す。多くの場合には、本開示の化合物は、アミノ基および/またはカルボキシル基またはこれらに類似する基の効能によって、酸塩および/または塩基塩を形成することができる。薬学的に許容される酸付加塩は、有機酸および/または無機酸を用いて形成することができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、有機塩基および/または無機塩基を用いて形成することができる。このような塩は当業者に公知である。
【0038】
本明細書で使用される場合には、「C-C24アルキル」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、1~24個の炭素原子、好ましくは1~20個の炭素原子、より好ましくは1~12個または1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル官能基または分枝アルキル官能基を指す。好適なアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチル、ペンチルおよびその異性体(例えば、n-ペンチル、iso-ペンチル)、ならびにヘキシルおよびその異性体(例えば、n-ヘキシル、iso-ヘキシル)を含む。
【0039】
アルキレンは、単独で、または例えばアルキレングリコールの一部として使用され、本明細書で定義される2価の飽和アルキル基、直鎖アルキル基または分枝アルキル基を指す。
【0040】
アルケニルおよびアルキニルは、2~20個の炭素原子、好ましくは2~12個、より好ましくは2~6個、特に2~4個を有する、少なくとも部分的に不飽和の
直鎖炭化水素基もしくは分枝炭化水素基を指す。アルケニル基は、少なくとも1つのC=C二重結合を含み;アルキニル基は、少なくとも1つのC≡C三重結合を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合には、「C-Cシクロアルキル」または「炭素環」という用語は、3~8個の炭素原子、好ましくは3~6個の炭素原子を有する飽和環式基または不飽和環式基を指す。シクロアルキルは、単環または共に縮合した複数の環を有することができる。シクロアルキルはスピロ環も含むことができる。好適なシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0042】
本明細書で使用される場合には、「C-Cシクロアルキレン」または「カルボシクロ」という用語は、本明細書で定義される2価のシクロアルキルを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合には、「ハロゲン」という用語は、フルオロ(-F)基、クロロ(-Cl)基、ブロモ(-Br)基、またはヨード(-I)基を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合には、「C-Cハロアルキル」という用語は、本明細書で定義される1つ以上のハロゲン基によって置換されている、本明細書で定義されるC-Cアルキルを指す。好適なC-Cハロアルキル基は、トリフルオロメチルおよびジクロロメチルを含む。
【0045】
本明細書で使用される場合には、「ヘテロアルキル」という用語は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子、およびO、N、SiおよびSからなる群から選択される1個から3個までのヘテロ原子からなる直鎖炭化水素鎖または分岐炭化水素鎖を指す。ここで、窒素原子および硫黄原子は任意に酸化されていてもよく(例えば:スルホキシドまたはスルホン)、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されていてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置またはアルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に配置されてもよい。
【0046】
ヘテロアルキレンは、上記で定義される2価のヘテロアルキルを指す。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は鎖末端のいずれか一方または両方を占めることもできる。
【0047】
本明細書で使用される場合には、「C-Cアルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指す。ここで、アルキル基は本明細書で定義されるC-Cアルキルである。好適なC-Cアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシを含む。
【0048】
本明細書で使用される場合には、「C-Cハロアルコキシ」という用語は、本明細書で定義される1つ以上のハロゲン基によって置換されている、本明細書で定義されるC-Cアルコキシ基を指す。好適なハロアルコキシは、トリフルオロメトキシを含む。
【0049】
本明細書で使用される場合には、「6~10個の環原子を有するアリール」という用語は、6~10個の環原子を含む、単環もしくは共に縮合した複数の芳香族環を有する多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指す。ここで、少なくとも1つの環は、芳香族である。芳香族環は、任意に、芳香族環に縮合した1~2個の付加的な環(本明細書で定義される、シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール)を含んでもよい。好適なアリール基は、フェニル、ナフチルおよびヘテロシクリル(ベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニルなど)に縮合したフェニル環を含む。
【0050】
アリーレンは、上記で定義される2価のアリール基を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合には、「5~10個の環原子を有するヘテロアリール」という用語は、5~10個の原子を含む単環、または、5~10個の原子を含む、共に縮合した複数の芳香族環もしくは共有結合した複数の芳香族環を有する多価不飽和芳香族環系を指す。ここで、少なくとも1つの環は芳香族であり、少なくとも1つの環原子は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子である。窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されていてもよい。このような環は、アリール環、シクロアルキル環またはヘテロシクリル環に縮合されていてもよい。このようなヘテロアリールの非限定的な例は以下を含む:フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、プリニル、ベンゾチアジアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、キナゾリニルおよびキノキサリニル。
【0052】
本明細書で使用される場合には、「3~10個の環原子を有するヘテロシクリル」、「3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」という用語は、3~10個の環原子、好ましくは3~8個の環原子を有する飽和環式基もしくは不飽和環式基を指す。ここで、少なくとも1個の環原子は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子である。窒素ヘテロ原子および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されていてもよい。ヘテロ環はスピロ環と同様に、縮合環または架橋環を含むことができる。ヘテロ環の例は、テトラヒドロピリジル、ピペリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペラジニル、1-アゼパニル、イミダゾリニル、1,4-ジオキサニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される場合には、「ヘテロ環」または「ヘテロシクロアルキレン」という用語は、本明細書で定義される2価の複素環を指す。
【0054】
さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキル、ヘテロアルキレン、C-C炭素環、C-Cカルボシクロ、C-Cヘテロ環、C-Cヘテロシクロ、ポリエーテルという用語は、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換された基を指す:-X、-R’、-O、-OR’、=O、-SR’、-S、-NR’、-NR’、=NR’、-CX、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO、=N、-N、-NRC(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’、-SO 、-SOH、-S(=O)R’、-OS(=O)OR’、-S(=O)NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)、-P(=O)(OR’)、-PO 、-PO、-C(=O)R’、-C(=O)X、-C(=S)R’、-COR’、-CO、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’、C(=S)NR’、およびC(=NR’)NR’。ここで、各々のXは独立して、ハロゲン:-F、-CI、-Br、または-Iであり;および、各々のR’は独立して、-H、-C1-20アルキル、-C-C10アリール、または-C-C10ヘテロ環である。
【0055】
アシル基は-CO-アルキルを指し、ここでアルキルは上記の定義を有する。
【0056】
本明細書で使用される場合には、「ポリエーテル」という用語は、エーテル結合を含むポリマーを指す。ポリエーテル中のエーテル部分の数は、2~100個、好ましくは2~25個、特に2~10個含まれ得る。ポリエーテルの例は、2~100個、好ましくは2~25個、特に2~10個のエーテル部分を有するポリエチレングリコールのようなポリエチレングリコールを含む。
【0057】
「任意に置換されたポリエーテル」という用語は、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されたポリエーテル、特にポリエチレングリコールを指すことができる:ハロゲン、オキソ、-OH、-NO、-CN、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、6~10個の環原子を有するアリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、C-Cハロアルコキシ、-(CO)-R’、-O-(CO)-R’、-(CO)-O-R’、-(CO)-NR’’R’’’、-NR’’-(CO)-R’、および-NR’’R’’’;R’、R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される。
【0058】
固相ペプチド合成(SPPS)は、支持体である不溶性ポリマーに固定されたペプチドが、脱保護-洗浄-カップリング-洗浄のサイクルを繰り返しながら、Fmoc-またはBoc-で保護されたアミノ酸を連続的に添加することによって組み立てられる、公知のプロセスを指す。各々のアミノ酸の添加は、以下のサイクルとして呼ばれる:(i)Nα-保護基の切断、(ii)洗浄工程、(iii)カップリング試薬および非求核塩基を用いたフルオレニルメトキシカルボニル-(Fmoc-)またはtert-ブチルオキシカルボニル-(Boc-)の保護アミノ酸のカップリング、(iv)洗浄工程。増大する鎖は前記支持体に結合しているので、過剰な試薬および可溶性の副生成物は、簡単なろ過によって除去できる。ヒンダードFmoc-またはBoc-保護N-メチル化アミノ酸とカップリング反応を繰り返すことは困難であり、多くの場合最適ではなく、粗純度が低く、精製が困難であり、本技術では収率が低いことが予想される。前記支持体の例として、ワング樹脂(Wang resin)、リンクアミド樹脂(Rink amide resin)、トリチル-および2-クロロトリチル樹脂(trityl- and 2-chlorotrityl resins)、PAM樹脂、PAL樹脂、Sieberアミド樹脂、MBHA樹脂、HMPB樹脂、HMBA樹脂が市販されており、これらはペプチドが直接的または間接的に結合している。
【0059】
リガンド薬物コンジュゲート(LDC)は、本明細書で定義されるように、リガンドと薬物とを共有結合させ、本明細書に記載されるような任意の方法を含み、本明細書の実施例に例示されるようなコンジュゲートを指す。リガンドが抗体である場合には、本開示の好ましい実施形態である抗体薬物コンジュゲート(ADC)を参照することができる。
【0060】
コネクターユニットという用語は、異なる化合物の一部と共に結合する構成要素を指し、例えば、コネクターは、リガンドをスペーサーに、またはスペーサーをアミド機能-CO-NR1-に結合することができる。コネクターは、リガンド-薬物-コンジュゲートの構成要素、すなわちリガンド、スペーサー、疎水性マスキング物質および/またはアミド機能-CO-NR1-の付着部位を有する足場である。
【0061】
当業者はその知識から、予想されるLDC化合物に適したコネクターを選択することができる。コネクターの非網羅的なリストは、アミノ酸(例えば、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、チロシン、システイン、セレノシステイン、グリシン、ホモアラニン;アミノアルコール;アミノアルデヒド;ポリアミンまたはそれらの任意の組み合わせ)を含む。有利には、コネクターユニットX1および/またはX2は、1つ以上の天然または非天然のアミノ酸である。一実施形態において、コネクターユニットX1およびX2は、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、任意に置換されたポリエーテル、C-C12アルキレン、6~10個の環原子を有するアリーレン、C-Cシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロアリーレン、C-C10アルケニレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択されてもよく、前記アルキレンおよび前記アルケニレンは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断され、ならびに、前記アルキレン、前記アリーレン、前記シクロアルキレン、前記ヘテロシクロアルキレン、前記ヘテロアリーレン、および前記アルケニレンは、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている:ハロゲン、オキソ、-OH、-NO、-CN、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、6~10個の環原子を有するアリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、C-Cハロアルコキシ、-(CO)-R’、-O-(CO)-R’、-(CO)-O-R’、-(CO)-NR’’R’’’、-NR’’-(CO)-R’、および-NR’’R’’’;R’、R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される。
【0062】
コネクターユニットの例は、任意に置換されたポリエーテル、アミノ酸、ベンジル基、アミン、ケトン、
【0063】
【化7】
【0064】
を含む。
【0065】
特に、コネクターユニットは2価または3価であってもよい。例えば、疎水性マスキング物質Kが存在する場合には、X2は3価のコネクターユニットであってもよい。
【0066】
「アミノ酸」という用語は、天然または非天然のアミノ酸を指す。-CONR1-基または-CONR1’-基のCO部分は、X2が1つ以上のアミノ酸からなる場合には、X2コネクターユニットの一部とみなすことができる。アミノ酸の非網羅的なリストは、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、チロシン、システイン、セレノシステイン、グリシンおよびホモアラニンを含む。
【0067】
スペーサーは、リガンド-薬物-コンジュゲートの2つの構成要素を共有結合する2価のアーム(2つのコネクターユニットなど)である。スペーサーZは存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0068】
スペーサーユニットの非網羅的リストは、以下を含む:アルキレン、ヘテロアルキレン(Si、N、OおよびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子によって中断されたアルキレン);アルコキシ;ポリエーテル(ポリアルキレングリコールおよび典型的にはポリエチレングリコールなど);1つ以上の天然または非天然のアミノ酸(グリシン、アラニン、プロリン、バリン、N-メチルグリシンなど);C-Cヘテロシクロ;C-Cカルボシクロ;アリーレン、およびそれらの任意の組み合わせ。例えば、スペーサーは、2価の直鎖アルキレン基、好ましくは(CHである。
【0069】
例えば、スペーサーは、-C-C10アルキレン-、-C-C10ヘテロアルキレン-、-C-Cカルボシクロ-、-O-(Cアルキル)-、-アリーレン-、-C-C10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C-C10アルキレン-、-C-C10アルキレン-(C-Cカルボシクロ)-、-(C-Cカルボシクロ)-C-C10アルキレン-、-C-Cヘテロシクロ-、-C-C10アルキレン-(C-Cヘテロシクロ)-、-(C-Cヘテロシクロ)-C-C10アルキレン-、-C-C10アルキレン-C(=O)-、-C-C10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-C-Cカルボシクロ-C(=O)-、-O-(C-Cアルキル)-C(=O)-、-アリーレン-C(=O)-、-C-C10アルキレン-アリーレン-C(=O)-、-アリーレン-C-C10アルキレン-C(=O)-、-C-C10アルキレン-(C-Cカルボシクロ)-C(=O)-、-(C-Cカルボシクロ)-C-C10アルキレン-C(=O)-、-C-Cヘテロシクロ-C(=O)-、-C-C10アルキレン-(C-Cヘテロシクロ)-C(=O)-、-(C-Cヘテロシクロ)-C-C10アルキレン-C(=O)-、-C-C10アルキレン-NH-、-C-C10ヘテロアルキレン-NH-、-C-Cカルボシクロ-NH-、-O-(C-Cアルキル)-NH-、-アリーレン-NH-、-C-C10アルキレン-アリーレン-NH-、-アリーレン-C-C10アルキレン-NH-、-C-C10アルキレン-(C-Cカルボシクロ)-NH-、-(C-Cカルボシクロ)-C-C10アルキレン-NH-、-C-Cヘテロシクロ-NH-、-C-C10アルキレン-(C-Cヘテロシクロ)-NH-、-(C-Cヘテロシクロ)-C-C10アルキレン-NH-、-C-C10アルキレン-S-、-C-C10ヘテロアルキレン-S-、-C-Cカルボシクロ-S-、-O-(C-Cアルキル)-)-S-、-アリーレン-S-、-C-C10アルキレン-アリーレン-S-、-アリーレン-C-C10アルキレン-S-、-C-C10アルキレン-(C-Cカルボシクロ)-S-、-(C-Cカルボシクロ)-C-C10アルキレン-S-、-C-Cヘテロシクロ-S-、-C-C10アルキレン-(C-Cヘテロシクロ)-S-、-(C-Cヘテロシクロ)-C-C10アルキレン-S-、-C-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C-Cカルボシクロ-O-C(=O)-、-O-(C-Cアルキル)-O-C(=O)-、-アリーレン-O-C(=O)-、-C-C10アルキレン-アリーレン-O-C(=O)-、-アリーレン-C-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C-C10アルキレン-(C-Cカルボシクロ)-O-C(=O)-、-(C-Cカルボシクロ)-C-C10アルキレン-O-C(=O)-、-C-Cヘテロシクロ-O-C(=O)-、-C-C10アルキレン-(C-Cヘテロシクロ)-O-C(=O)-、および-(C-Cヘテロシクロ)-C-C10アルキレン-O-C(=O)-からなる群から選択されてもよい。
【0070】
上述の基のいずれかは、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換される:-X、-R’、-O、-OR’、=O、-SR’、-S、-NR’、-NR’ +、=NR’、-CX、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO、=N、-N、-NR’C(=O)R’、-C(=O)R’、-C(=O)NR’、-SO 、-SOH、-S(=O)R’、-OS(=O)OR’、-S(=O)NR’、-S(=O)R’、-OP(=O)(OR’)、-P(=O)(OR’)、-PO 、-PO、-C(=O)X、-C(=S)R’、-COR’、-CO、-C(=S)OR’、C(=O)SR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’、C(=S)NR’、およびC(=NR’)NR’。ここで、各々のXは独立して、ハロゲン:-F、-CI、-Br、または-Iであり;および、各々のR’は独立して、-H、-C1-20アルキル、-C-C10アリール、または-C-C10ヘテロ環である。
【0071】
リガンドとは、LDC(例えば、抗体-薬物コンジュゲート)技術で通常採用されるような任意の高分子(ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、典型的には抗体)、または低分子(葉酸もしくはアプタマーなど)を指し、バイオコンジュゲート技術を使用して、本研究の合成リンカーまたは薬物リンカーと共有結合させることができる(Greg T. Hermanson, Bioconjugate Techniques, 3rd Edition, 2013, Academic Press参照)。リガンドは伝統的に、その標的化能力のために選択される化合物である。リガンドの非網羅的リストは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、全長抗体およびその抗原結合フラグメント、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、ビタミン、トランスフェリン、またはその他の細胞結合分子もしくは物質を含む。コンジュゲートの調製に用いられるリガンドの主な種類は、抗体である。タンパク質の例は、ヒト血清アルブミンである。
【0072】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、修飾モノクローナル抗体および修飾ポリクローナル抗体、単特異性抗体、多重特異性抗体(二特異性抗体など)、抗体フラグメントおよび抗体模倣体(Affibody(登録商標)、Affilin(登録商標)、Affimer(登録商標)、Nanofitin(登録商標)、Cell Penetrating Alphabody(登録商標)、Anticalin(登録商標)、Avimer(登録商標)、Fynomer(登録商標)、MonobodiesまたはnanoCLAMP(登録商標))を含む。抗体の例は、トラスツズマブである。
【0073】
本明細書で言及される「抗体」という用語は、抗体全体、およびその抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部分」)またはその一本鎖を含む。
【0074】
天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に結合された少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)とを含む糖タンパク質である。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)と、重鎖定常領域と、を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインを含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略記する)と、軽鎖定常領域と、を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。V領域およびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存性の高い領域が散在している超可変性の領域にさらに細分化され得る。各々のVおよびVは3つのCDRと4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第一構成要素(Clq)を含む、宿主の組織もしくは因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0075】
本明細書で使用される抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗原部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の全長または1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例は、Fabフラグメント、Vドメイン、Vドメイン、Cドメイン、およびCH1ドメインからなる1価のフラグメント;F(ab)フラグメント、ヒンジ領域でのジスルフィド結合によって結合した2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント;VドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一アームのVドメインおよびVドメインからなるFvフラグメント;VドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);ならびに、単離された相補性決定領域(CDR)、またはそのような抗原結合部分を含む任意の融合タンパク質を含む。
【0076】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VおよびVは、別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて、V領域およびV領域が対になって1価の分子を形成する一本鎖タンパク質として作製されることを可能にする合成リンカーによって、結合させることができる(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426; and Huston et al., 1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883参照)。そのような一本鎖抗体が、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることもまた意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている従来の技術を用いて得られ、そのフラグメントはインタクト抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0077】
特定の実施形態において、LDCのリガンドは、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0078】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト由来の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図している。さらに、抗体が定常領域を含む場合には、定常領域もそのようなヒト配列(例えば、ヒト生殖細胞系列配列)、またはヒト生殖細胞系列配列の変異体、または(例えば、Knappikら(2000. J Mol Biol 296, 57-86)に記載されているような)ヒトフレームワーク配列解析に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。
【0079】
ヒト抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発、またはin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)を含んでいてもよい。しかしながら、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、他の哺乳動物種(マウスなど)の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図していない。
【0080】
「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、フレームワーク領域およびCDR領域の両方がヒト配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。
【0081】
本明細書で使用される「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によって提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG(IgG1またはIgG4など))を指す。
【0082】
本明細書において、「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という表現は、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と互換的に使用される。
【0083】
活性剤とは、生理活性分子または治療用分子を指す。活性剤の例は、薬物、イメージング剤および蛍光剤を含む。イメージング剤としては、インドシアニングリーンのような蛍光剤が挙げることができる。
【0084】
薬物とは、固有の薬理学的特性または診断学的特性を有するあらゆるタイプの薬物または化合物(例えば、細胞毒性化合物、細胞増殖抑制化合物、免疫調節化合物、免疫抑制化合物、免疫刺激化合物、抗炎症化合物、電離性化合物または抗感染性化合物)を指す。細胞毒性化合物としては、カリキアミシン;ウンシアラマイシン;アウリスタチン(MMAEとして知られるモノメチルアウリスタチンEなど);ハリコンドリン誘導体(エリブリンなど)、ツブリシンアナログ;メイタンシン;クリプトフィシン;ベンゾジアゼピン二量体(PBDとして知られるピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを含む);インドリノベンゾジアゼピン偽二量体(IGN);デュオカルマイシン;アントラサイクリン(ドキソルビシンまたはPNU159682など);カンプトテシンアナログ(SN38またはエキサテカンとして知られる7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシンなど);Bcl2およびBcl-xl阻害剤;タイランスタチン;アマトキシン(α-アマニチンを含む);キネシンスピンドルタンパク質(KSP)阻害剤;ビノレルビン;サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤;分子接着剤分解剤、ブレオマイシン;ダクチノマイシンまたは放射性核種およびその錯化剤(DOTA/177Luなど)を挙げることができる。抗炎症薬としては、コルチコステロイド(デキサメタゾンまたはフルチカゾンなど)を挙げることができる。抗感染薬としては、抗生物質(リファンピシンまたはバンコマイシンなど)を挙げることができる。薬物は、抗癌剤または免疫調節剤であってもよい。抗癌剤の例は、細胞毒性化合物および細胞増殖抑制化合物、好ましくは細胞毒性化合物である。
【0085】
疎水性マスキング物質とは、化合物の見かけの疎水性を低下させることができる基を指す。疎水性マスキング物質は、ポリサルコシン、ポリエチレングリコール、およびキトオリゴ糖から選択することができる。エチレングリコールまたはサルコシン部分の数は、広い範囲で変化してもよい。例えば、疎水性マスキング物質中のエチレングリコールまたはサルコシン部分の数は、2~500個、好ましくは5~100個、特に5~25個で含まれ得る。一実施形態において、疎水性マスキング物質は、6個から24個までのサルコシン部分、好ましくは10個から12個までのサルコシン部分を含むポリサルコシンである。キトオリゴ糖中のキトサンの数は、2~20個、例えば2~8個で含まれ得る。
【0086】
電子吸引基とは、通常、共鳴効果または誘導効果によって、隣接原子からそれ自身に向かって電子密度を引き寄せる原子または基を指す。電子吸引基は、ハロゲン、(-CFのような)ハロアルキル、-CN基、-SOH基、-NO基、および-C(O)R基を含み、R=H、OH、またはアルコキシを有する。有利には、電子吸引基は-NOである。一実施形態において、電子吸引基はフェニル環のY-T置換基に対してオルト位にある。
【0087】
本明細書で使用される場合には、「保護基」という用語は、再生された官能基または分子中の他の官能基を攻撃しない容易に入手可能な試薬によって、選択的に除去され得る化学的置換基を指す。好適な保護基は当該技術分野で知られており、開発され続けている。好適な保護基は、例えば、Wutzら("Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth Edition," Wiley-Interscience, 2007)において見出すことができる。Wutzら(696~927ページ)に記載されているようなアミノ基を保護するための保護基が、特定の実施形態において使用される。アミノ保護基の代表例は、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アセチル(Ac)、カルボキシベンジル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、アリル、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル(Alloc)基および2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)を含むが、これらに限定されない。
【0088】
コネクターユニットを形成するためにリガンドと反応することができる基とは、リガンドを共有結合させるために反応性であるあらゆる化学部分を指す。特に、それはリガンド上に存在するチオール基と反応し得る。
【0089】
リガンドを共有結合させるために反応性である化学部分の非網羅的リストは、以下を含む:カルボン酸;第一級アミン;第二級アミン;第三級アミン;ヒドロキシル;ハロゲン;活性化エステル(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、パーフルオロエステル、ニトロフェニルエステル、アザベンゾトリアゾールおよびベンゾトリアゾール活性化エステルなど)、アシル尿素;アルキニル;アルケニル;アジド;イソシアネート;イソチオシアネート;アルデヒド;チオール反応性部分(マレイミド、ハロマレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィドなど);チオール;アクリレート;メシレート;トシレート;トリフラート、ヒドロキシルアミン;クロロスルホニル;ボロン酸-B(OR’)誘導体(ここで、R’は水素またはアルキル基である)。
【0090】
「開裂性ユニット」は、内部または外部、好ましくは外部の刺激の作用によって、切断され得る化学基を指す。本開示において、開裂性ユニットは、ポリペプチド開裂性ユニットまたは糖開裂性ユニットのいずれかである。開裂性ユニットの切断を誘発する刺激としては、例えば、pHもしくは温度条件、または酵素の存在であり得る。開裂性ユニットの切断は、好ましくは本発明の化合物のフェニルを含むリンカーの自己犠牲、および活性剤Dの放出を誘発する。本開示において、「開裂性糖ユニット」は、糖部分、好ましくはグルクロニドまたはガラクトシドを指すことができる。本開示において、「ポリペプチド開裂性ユニット」は、ポリペプチド、好ましくはジペプチドまたはトリペプチドを指すことができる。
【0091】
本明細書で使用される場合には、「1つ以上」という用語は、1~20、または1~10、または1~5の数を指すと理解することができる。
【0092】
式(I)の化合物
本開示は、式(I)の化合物に関する:
【0093】
【化8】
【0094】
式中、
Lは、リガンドである;
X1は、コネクターユニットである;
Zは、任意のスペーサーである;
X2は、コネクターユニットである;
Kは、任意の疎水性マスキング物質であり、好ましくはポリサルコシンおよびポリエチレングリコールから選択される;
R1は、H、C-C12アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、ポリサルコシン、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引性基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Yは、Tが糖開裂性ユニットの場合はOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットの場合はNR3である;
R3は、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0095】
一実施形態によれば、Lは、ポリペプチド、タンパク質、抗体およびそれらの抗原結合フラグメントからなる群から選択されるリガンドであり、好ましくは、Lは抗体またはその抗原結合フラグメントであり、より好ましくは、Lは抗体である。一実施形態によれば、抗体はトラスツズマブである。
【0096】
一実施形態によれば、Dは薬物からなる群から選択され、好ましくは、Dは抗癌剤または免疫調節剤である。一実施形態によれば、DはエキサテカンまたはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。
【0097】
一実施形態によれば、X1およびX2は、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、任意に置換されたポリエーテル、C-C12アルキレン、6~10個の環原子を有するアリーレン、C-Cシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロアリーレン、C-C10アルケニレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択され、
前記アルキレンおよび前記アルケニレンは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断され、
ならびに、前記アルキレン、前記アリーレン、前記シクロアルキレン、前記ヘテロシクロアルキレン、前記ヘテロアリーレン、および前記アルケニレンは、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている:ハロゲン、オキソ、-OH、-NO、-CN、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、6~10個の環原子を有するアリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、C-Cハロアルコキシ、-(CO)-R’、-O-(CO)-R’、-(CO)-O-R’、-(CO)-NR’’R’’’、-NR’’-(CO)-R’、および-NR’’R’’’;
R’、R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される。
【0098】
一実施形態によれば、X1は、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、任意に置換されたポリエーテル、C-C12アルキレン、6~10個の環原子を有するアリーレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
一実施形態によれば、X1は以下の通りである。
【0100】
【化9】
【0101】
一実施形態によれば、X2は、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、C-C12アルキレン、任意に置換されたポリエーテル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0102】
一実施形態によれば、Zは、1つ以上のアミノ酸、1つ以上のN-置換アミノ酸、任意に置換されたポリエーテル、C-C12アルキレン、6~10個の環原子を有するアリーレン、C-Cシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキレン、5~10個の環原子を有するヘテロアリーレン、C-C10アルケニレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキレンおよび前記アルケニレンは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断され、
ならびに、前記アルキレン、前記アリーレン、前記シクロアルキレン、前記ヘテロシクロアルキレン、前記ヘテロアリーレン、および前記アルケニレンは、以下から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている:ハロゲン、オキソ、-OH、-NO、-CN、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、6~10個の環原子を有するアリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルキル、C-Cハロアルコキシ、-(CO)-R’、-O-(CO)-R’、-(CO)-O-R’、-(CO)-NR’’R’’’、-NR’’-(CO)-R’、および-NR’’R’’’;
R’、R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される。
【0103】
一実施形態によれば、Zは、1つ以上のアミノ酸(単数または複数)、1つ以上のN-置換アミノ酸、およびポリエチレングリコールからなる群から選択される。
【0104】
一実施形態によれば、Zは存在せず、X1およびX2は単結合を介して互いに直接結合している。
【0105】
一実施形態によれば、Kはポリサルコシンであり、好ましくは単分散ポリサルコシンである。ポリサルコシンは、1から50までの繰り返しユニットを有することができる。
【0106】
特定の実施形態において、Kはポリサルコシンであり、好ましくは以下の式(V)のポリサルコシンである
【0107】
【化10】
【0108】
式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数である、
ならびに、R6はOHまたはNH2に相当する。
【0109】
一実施形態によれば、Tは、グルクロニドまたはガラクトシドである糖開裂性ユニットである。Tをアリール基に連結するグリコシド結合は、薬物の放出をもたらす自己犠牲反応シーケンスを開始するために切断され得るものであってもよい。
【0110】
一実施形態によれば、Tはジペプチドであり、好ましくはVal-Cit、Val-AlaおよびPhe-Lysから選択される。
【0111】
一実施形態によれば、R1は、HおよびC-Cアルキルからなる群から選択され、好ましくはHである。
【0112】
一実施形態によれば、R3は、HおよびC-Cアルキルからなる群から選択され、好ましくはHである。
【0113】
一実施形態によれば、R4は、HおよびC-Cアルキルからなる群から選択される。
【0114】
一実施形態によれば、R5は、HおよびC-Cアルキルからなる群から選択される。
【0115】
一実施形態によれば、R4およびR5の両方がHである。
【0116】
一実施形態によれば、nは0であり、YはNR3であり、Tはポリペプチド開裂性ユニットである。別の実施形態によれば、nは1であり、R2は-NOであり、YはOであり、Tは糖開裂性ユニットである。
【0117】
好ましい実施形態によれば、Lは抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0118】
一実施形態によれば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、CD19、CD20、CD22、CD30、CD37、CD79b、HER2、およびPSMAを含む群、またはこれらからなる群から選択される抗原と結合する。
【0119】
一実施形態によれば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、HER2/neuに結合する。
【0120】
本明細書に記載の式(I)の化合物におけるリガンドLとして好適な抗体のいくつかの例は、トラスツズマブ、ブレンツキシマブ、ロンカツキシマブ、ロソパタマブ、リツキシマブ、ピナツズマブ、ポラツズマブ、およびナラツキシマブを含むが、これらに限定されない。
【0121】
一実施形態によれば、抗体はトラスツズマブである。
【0122】
式(I)の化合物は、少なくとも1つの不斉炭素を有するので、異なる立体異性体が存在し得る。例えば、式(I)の化合物は以下に示すように、(R)形態または(S)形態で存在し得る:
【0123】
【化11】
【0124】
一実施形態によれば、式(I)の化合物は(S)である。
【0125】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(VI)の化合物である:
【0126】
【化12】
【0127】
式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数であり;および、Tはポリペプチド開裂性ユニット、好ましくはジペプチドである。
【0128】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(VII)の化合物である
【0129】
【化13】
【0130】
式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数である。
【0131】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(VIII)の化合物である
【0132】
【化14】
【0133】
式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数であり;および、Tは糖開裂性ユニット、好ましくはグルクロニドまたはガラクトシドである。
【0134】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(IX)の化合物である
【0135】
【化15】
【0136】
式中、kは2~50、好ましくは4~30の整数である。
【0137】
本発明による式(I)の化合物は、実施例の節で開示したプロセスのような、当技術分野で公知の任意の好適なプロセスによって合成することができる。
【0138】
式(I)の化合物について記載した実施形態は、式(II)、式(III)および式(IV)の化合物にも適用される。
【0139】
式(II)の化合物
本開示はまた、式(II)の化合物に関する:
【0140】
【化16】
【0141】
式中、
X1’は、リガンドと反応してコネクターユニットを形成することができる基である;
Zは、任意のスペーサーである;
X2は、コネクターユニットである;
Kは、任意の疎水性マスキング物質であり、好ましくはポリサルコシンおよびポリエチレングリコールから選択される;
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引性基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0142】
一実施形態によれば、X1’はマレイミドである。
【0143】
一実施形態によれば、R1’はHである。
【0144】
一実施形態によれば、R3’はHである。
【0145】
式(II)の化合物は、式(I)の化合物を合成するために使用することができ、したがって式(II)の化合物は、式(I)の化合物の合成における中間体である。
【0146】
式(III)の化合物
本開示はまた、式(III)の化合物に関する
【0147】
【化17】
【0148】
式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Dは活性剤であり、好ましくは、薬物、イメージング剤および蛍光剤からなる群から選択される;
各々のR2は、電子吸引性基からなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0149】
式(III)の化合物は、式(II)の化合物を合成するために使用することができ、したがって式(III)の化合物は、式(I)の化合物の合成における中間体である。
【0150】
式(IV)の化合物
本開示はまた、式(IV)の化合物に関する
【0151】
【化18】
【0152】
式中、
R1’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
各々のR2は、電子吸引性基およびC-Cアルキルからなる群から独立して選択される;
nは、0、1または2である;
R4は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R5は、H、C-CアルキルおよびC-Cアルケニルからなる群から選択され、前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、および-NR’’-から選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
Tは、糖開裂性ユニットまたはポリペプチド開裂性ユニットである;
Y’は、Tが糖開裂性ユニットである場合にはOであり、Tがポリペプチド開裂性ユニットである場合にはNR3’である;
R3’は、アミノ保護基、H、C-C24アルキル、C-Cアルケニル;任意に置換されたポリエーテル、6~10個の環原子を有するアリール、C-Cシクロアルキル、3~10個の環原子を有するヘテロシクロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
前記アルキルおよび前記アルケニルは、1つ以上のヘテロ原子、または、-O-、-S-、-C(O)-、-NR’’-、-C(O)NR’’-、-NR’’-C(O)-、-NR’’-C(O)-NR’’’-、-NR’’-C(O)-O-、-O-C(O)NR’’-およびトリアゾールから選択される1つ以上の化学基によって任意に中断される;
R’’およびR’’’は、HおよびC-Cアルキルから独立して選択される;
ならびに、その薬学的に許容される塩である。
【0153】
一実施形態によれば、R4およびR5はHであり、Y’はOであり、Tは糖開裂性ユニットである。
【0154】
別の実施形態によれば、Y’はNR3’であり、Tはポリペプチド開裂性ユニットである。
【0155】
式(IV)の化合物は、式(III)の化合物を合成するために使用することができ、したがって式(IV)の化合物は、式(I)の化合物の合成における中間体である。
【0156】
〔医薬組成物〕
本開示はまた、本開示の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。特に、本開示は、式(I)の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0157】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含む。担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適し得る。一実施形態において、担体は皮下経路または腫瘍内注射に適するべきである。投与経路に応じて、活性化合物は、化合物を不活性化し得る酸および他の自然条件の作用から化合物を保護するための材料で被覆され得る。製剤は、1つ以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤などをさらに含むことができる。
【0158】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量およびレジメンは、当然、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重および性別などに依存する。
【0159】
本開示の医薬組成物は、局所投与、経口投与、経鼻投与、眼内投与、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与などのために製剤化され得る。
【0160】
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤として薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、特に、等張、無菌、生理食塩水(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなど、またはこれらの塩の混合物)、または乾燥した、特に凍結乾燥した組成物であってよく、場合によっては、滅菌水または生理食塩水を添加することによって注射液の構成を可能にする。
【0161】
投与に使用される用量は、様々なパラメータの関数として、特に使用される投与様式の関数として、関連する病態の関数として、または代替的に所望の治療期間の関数として適合され得る。
【0162】
医薬組成物を調製するために、本開示による化合物の有効量を、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散させてもよい。
【0163】
注射可能な使用に適した医薬形態は、無菌の水溶液または分散液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌の注射用溶液または分散液を即時に調製するための無菌の粉末または凍結乾燥物を含む。いずれの場合においても、製剤は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性がなければならない。また、製造および保管の条件下で安定でなければならず、微生物(細菌および真菌など)の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0164】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤(ヒドロキシプロピルセルロースなど)と適切に混合した水中で調製できる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中で調製できる。通常の保管および使用の条件下では、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含む。
【0165】
本開示の化合物は、中性または塩の形態で組成物に配合することができる。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(遊離アミノ基で形成される)を含み、これは、例えば、無機酸(塩酸もしくはリン酸など)、または有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)で形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、無機塩基(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など)、および有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)に由来し得る。
【0166】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および野菜油、を含む、溶媒または分散液とすることができる。適切な流動性は、例えば、コーティング剤(レシチンなど)の使用、分散液の場合には必要な粒子径の維持、ならびに、界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によってもたらされ得る。多くの場合には、等張剤(例えば、糖類または塩化ナトリウム)を含むことが好ましい。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の組成物への使用によってもたらされ得る。
【0167】
無菌注射液は、必要な量の活性化合物を、上に列挙したいくつかの他の成分と共に適切な溶媒中に必要な量で取り込み、必要に応じ、次いでろ過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、基本的な分散媒体と、上に列挙した成分のうち必要な他の成分とを含む無菌ビヒクルに、様々な滅菌された活性成分を組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、この技術は、活性成分の粉末に加え、あらかじめ無菌ろ過した溶液から所望の追加成分を得る。
【0168】
さらなる調製、または直接注射のための高濃度溶液はまた、溶媒としてDMSOを使用することで、高濃度の活性剤を小さな腫瘍領域に送達し、極めて迅速な浸透をもたらすことが想定されている。
【0169】
製剤化されると、溶液は剤形に適合した方法で治療上有効な量が投与される。製剤は、前述の注射液のタイプのような種々の剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども採用され得る。
【0170】
水溶液で非経口投与する場合には、例えば、必要であれば溶液を適切に緩衝化し、最初に液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースを用いて等張にする。これらの特定の水溶液は、特に、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に適している。これに関連して、採用できる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。例えば、1投与量を1mLの等張NaCl溶液に溶解し、1000mLの皮下注射液に添加するか、または注入予定部位に注射してもよい(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580参照)。投与量は、治療を受ける対象の状態によって、必然的に多少変動する。いずれにせよ、投与責任者が個々の対象に適切な用量を決定する。
【0171】
非経口投与(静脈内注射または筋肉内注射など)用に製剤化された化合物に加えて、他の薬学的に許容される形態は、例えば、経口投与用の錠剤または他の固形物;タイムリリースカプセル;および現在使用されている任意の他の形態を含む。
【0172】
特定の実施形態において、抗体を宿主細胞に導入するために、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が企図されている。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者に公知である。
【0173】
ナノカプセルは、一般に、安定かつ再現性のある方法で化合物を封入することができる。細胞内のポリマーの過負荷による副作用を避けるために、このような超微粒子(約0.1μmの大きさ)は、一般に、in vivoで分解可能なポリマーを使用して設計される。このような要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子は、本開示での使用が企図されており、そのような粒子は容易に製造することができる。
【0174】
リポソームは、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成され、自発的に多層同心二重層小胞(多層小胞(MLV)とも呼ばれる)を形成する。MLVは一般に、25nmから4μmまでの直径を有する。MLVを超音波処理すると、コアに水溶液を含み、200~500Aの範囲で直径を有する小さな単層小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、および2価陽イオンの存在に依存する。
【0175】
投与に使用される用量は、様々なパラメータの関数として、特に使用される投与様式の関数として、関連する病態の関数として、または代替的に所望の治療期間の関数として、適合され得る。化合物および化合物を含む組成物の適切な投与量は、患者によって異なり得ることを理解されたい。最適な投与量を決定することは、一般に、本明細書に記載されるあらゆる治療のリスク、または有害な副作用に対する治療上の有益性のレベルのバランスを取ることに関連する。選択される投与量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、化合物の排出速度、治療期間、併用される他の薬物、化合物、および/または材料、ならびに患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態、および既往歴を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存する。化合物の量および投与経路は、最終的には医師の裁量に委ねられるが、一般的には、実質的に有害または有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する、作用部位の局所濃度を達成するための投与量となる。例えば、投与に用いられる用量は、約50~70kgの対象に対して本開示の化合物を約0.1~1000mgとすることができる。
【0176】
〔使用方法〕
本開示の化合物は、実施例において提供されるin vitro試験およびin vivo試験において示されるように、貴重な薬学的特性を示し、したがって治療のために示される。本開示はまた、薬物として使用するための本開示の化合物に関する。特に、本開示は、薬物として使用するための、式(I)のリガンド-薬物コンジュゲート化合物、より具体的には、Lが抗体またはその抗原結合部分である式(1)の抗体-薬物コンジュゲート化合物に関する。
【0177】
特に、本開示の化合物、より具体的には、本開示の式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、癌、炎症性疾患および/または感染性疾患の予防または治療に有用である。好ましい実施形態において、癌の予防または治療に使用するための式(I)の化合物は、式(I)のリガンド-薬物コンジュゲート(LDC)であり、ここで、Lは抗体またはその抗原結合部分であり、より好ましくは、Dは細胞毒性化合物である。
【0178】
本開示はまた、癌を治療するための方法において使用するための本開示の化合物に関する。本明細書で使用される場合には、「癌」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、急速に増殖する細胞増殖を特徴とする異常な状態(state)または状態(condition)を含む。この用語は、病理組織学的タイプまたは浸潤性のステージに関係なく、全てのタイプの癌性増殖または癌原性プロセス、転移組織または悪性に形質転換された細胞、組織または器官を含むことを意味する。癌という用語は、皮膚、肺、乳房、甲状腺、リンパ系、消化管、および泌尿生殖器に影響を及ぼすような様々な器官系の癌、ならびに、ほとんどの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌および/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸の癌および食道の癌などの癌を含む腺癌を含む。
【0179】
本開示は、癌を治療するための方法に関し、前記方法は、それを必要とする対象、好ましくはヒトに、治療上有効な量の
(i)本開示の化合物、または
(ii)本明細書に記載の医薬組成物
を投与することを含む。
【0180】
好ましい実施形態において、本開示は、それを必要とする対象において癌を治療または予防するための方法に関し、前記方法は、治療有効量の式(I)のリガンド-薬物コンジュゲート(LDC)を投与することを含み、ここで、Lは抗体またはその抗原結合部分であり、より好ましくは、Dは細胞毒性化合物である。
【0181】
本開示はまた、炎症性疾患を治療するための方法において使用するための本開示の化合物に関する。
【0182】
本明細書において、「炎症性疾患」という用語は、対象において炎症によって引き起こされる、または炎症につながるあらゆる疾患を定義するために使用される。この用語は、(1)炎症性疾患および/またはアレルギー性疾患、(2)自己免疫疾患、(3)移植片拒絶反応、ならびに(4)望ましくない炎症反応が阻害される他の疾患、を含み得るが、これらに限定されない。
【0183】
本開示は、炎症性疾患を治療するための方法に関し、前記方法は、それを必要とする対象、好ましくはヒトに、治療上有効な量の
(i)本開示の化合物、または
(ii)本明細書に記載の医薬組成物
を投与することを含む。
【0184】
本開示はまた、感染性疾患を治療するための方法において使用するための本開示の化合物に関する。
【0185】
本明細書において、「感染性疾患」という用語は、感染因子(または病原体)による対象への侵入、その増殖、およびこれらの感染因子およびそれらが産生する毒素に対する対象の組織の反応によって引き起こされるあらゆる疾患を定義するために使用される。この用語は、(1)細菌感染、(2)ウイルス感染、(3)真菌感染、および(4)寄生虫感染を含むが、これらに限定されない。
【0186】
本開示は、感染性疾患を治療するための方法に関し、前記方法は、それを必要とする対象、好ましくはヒトに、治療上有効な量の
(i)本開示の化合物、または
(ii)本明細書に記載の医薬組成物
を投与することを含む。
【0187】
好ましい実施形態において、本開示は、それを必要とする対象において感染症を治療または予防するための方法に関し、前記方法は、治療有効量の式(I)のリガンド-薬物コンジュゲート(LDC)を投与することを含み、ここで、Lは、抗体またはその抗原結合部分であり、より好ましくは、Dは、抗感染剤(例えば、抗生物質または抗ウイルス剤)である。
【0188】
本明細書で使用される場合には、「治療する」という用語は、当該用語が適用される疾患、障害、もしくは状態、または、当該疾患、障害、もしくは状態の1つ以上の症状もしくは発現の可能性を逆転させること、緩和すること、進行を抑制すること、予防すること、または低減することを含む。予防することは、疾患、障害、状態、またはそのような症状もしくは発現、またはそのような重症度の悪化を起こさないようにすることを指す。したがって、現在開示されている化合物は、疾患、障害または状態の、発生または再発を、予防または低減するために、予防的に投与することができる。
【0189】
本明細書で使用される場合には、化合物の「治療上有効な量」という用語は、対象の生物学的反応または医学的反応を誘発する化合物の量(例えば、症状を改善する、状態を緩和する、疾患の進行を遅らせる、または疾患を予防する化合物の量)を指す。
【0190】
本開示はまた、癌、炎症性疾患および/または感染性疾患の治療のための、好ましくは癌の治療のための医薬の製造について、本開示の化合物、好ましくは式(I)の化合物の使用に関する。
【0191】
式(II)の化合物は、リガンドなしでそのまま使用することができる。例えば、X1’がマレイミド部分である場合には、式(II)の化合物は、血清アルブミンのようなタンパク質とin vivoで反応することができ、次いでリガンドとなる。したがって、本開示はまた、薬物として使用するための、上述のような式(II)の化合物に関する。
【0192】
〔実施例〕
〔材料および一般的な方法〕
全ての溶媒および試薬は、信頼できる市販の供給元(Sigma-Aldrich、Fluorochem、TCI Chemicals、Acros Organics、Alfa Aesar、Enamine、Thermo Fisher、Carbosynth、WuXi AppTec、Iris Biotech)から入手し、特に断りのない限り、さらに精製することなく使用した。無水溶媒は、Sigma-Aldrichから購入した。Fmoc-アミノ酸、2-クロロトリチル、ワングおよびリンクアミドポリスチレン1%DVB 100-200メッシュ樹脂(最初のFmoc-サルコシンアミノ酸をあらかじめ担持)は、Christof Senn LaboratoriesおよびSigma-Aldrichから購入した。モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、エキサテカンメシレートおよび7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン(SN38)は、DCChemicals、MedChemExpress、またはAbzenaから購入した。ヒトアルブミン(cat#A3782)は、Sigma-Aldrichから購入した。トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)IV)は、Rocheから購入した。市販されていないモノクローナル抗体は、CHO細胞株、およびGTP Technologies(Toulouse、フランス)によって精製されたprotein-A/SECへの一過性トランスフェクションによって、カスタム生産した。
【0193】
20μmのポリエチレンフリット(Sigma-Aldrich)を備えた空のSPEプラスチックチューブ内で、オンレジン合成を行った。攪拌には、Titramax101プラットフォームシェーカー(Heidolph)を使用した。特に断りのない限り、全ての化学反応は不活性アルゴン雰囲気下、室温で行った。
【0194】
液体核磁気共鳴スペクトルは、Bruker Fourier 300HDまたはBruker AVANCE III HD400質量分析計で、較正のために残留溶媒ピークを使用して記録した。質量分析は、University Claude Bernard Lyon 1のUMR5246 CNRS研究所のCentre Commun de Spectrometrie de Masse(CCSM)によって実施した。
【0195】
順相フラッシュクロマトグラフィーは、Macherey-Nagel Chromabond(登録商標)フラッシュカートリッジ(40~63μm)を用いて、Teledyne Isco CombiFlash(登録商標)Rf200装置で実施した。逆相クロマトグラフィーは、Teledyne Isco Combiflash(登録商標)Rf200装置で、Biotage(登録商標)Sfar C18 Duo 100A 30μmカートリッジまたはInterchim PuriFlash RP-AQ(30μm)カートリッジを使用して;または、Agilent1100分取バイナリーHPLCシステムを使用して実施した。
【0196】
化学反応および化合物の特性は、それぞれ、プレコートされた40~63μmシリカゲル(Macherey-Nagel)、HPLC-UV(Agilent1100システム)、または、UHPLC-UV/MS(Bruker Impact II(商標)Q-ToF質量分析計を備えたThermo UltiMate 3000 UHPLCシステム、もしくはBruker MicrOTOF-QII質量分析計を備えたAgilent 1260 HPLCシステム)を用いた薄層クロマトグラフィーによって、モニターおよび分析した。
【0197】
HPLC法1:DAD検出器装備を装備したAgilent 1100 HPLCシステム。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムはAgilent Zorbax SB-Aq 4.6×150mm 5μm(室温)であった。直線勾配は0%B~50%Bで30分間であり、その後50%Bで5分間保持した。流速は1.0mL/分であった。
【0198】
HPLC法2:DAD検出器装備を装備したAgilent 1100 HPLCシステム。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムはAgilent Poroshell 120 EC-C18 3.0×50mm 2.7μm(室温)であった。直線勾配は5%B~80%Bで9分間であり、その後80%Bで1分間保持した。流速は0.8mL/分であった。
【0199】
HPLC法3:DAD検出器装備を装備したAgilent 1100 HPLCシステム。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムはAgilent Poroshell 120 EC-C18 3.0×50mm 2.7μm(室温)であった。直線勾配は5%B~80%Bで20分間であり、その後80%Bで2分間保持した。流速は0.8mL/分であった。
【0200】
HPLC法4:Thermo UltiMate 3000 UHPLCシステム+Bruker Impact II(商標)Q-ToF質量分析計。移動相Aは水+0.1%ギ酸であり、移動相Bはアセトニトリル+0.1%ギ酸であった。カラムはAgilent PLRP-S 1000A 2.1×150mm 8μm(80℃)であった。直線勾配は10%B~50%Bで25分間であった。流速は0.4mL/分であった。UV検出は280nmでモニターした。Q-ToF質量分析計を使用し、m/z範囲は500-3500(ESI)であった。データはBruker Compass(登録商標)ソフトウェアに含まれるMaxEntアルゴリズムを使用してデコンボリューションした。
【0201】
HPLC法5(分取法):DAD検出器装備を装備したTeledyne Isco CombiFlash(登録商標)Rf200バイナリーMPLCシステム。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。再利用可能なカートリッジはBiotage(登録商標)Sfar C18 Duo 100A 30μm(30g)であった。直線勾配は10%B~50%Bで35分間であり、その後50%Bで5分間保持した。流速は25mL/分であった。
【0202】
HPLC法6(分取法):デュアルループオートインジェクター、DAD検出器、およびフラクションコレクターを装備したAgilent 1100 preparative binary HPLCシステム。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。カラムはWaters SunFire C18 OBD Prep Column,100A,5μm,19mm×250mm(室温)であった。直線勾配は10%B~60%Bで40分間であり、その後60%Bで5分間保持した。流速は25mL/分であった。
【0203】
1)本発明の化学化合物の調製
1.1)単分散ポリサルコシン中間体
1.1.1)一般的な方法
リンクアミド樹脂および2-クロロトリチル樹脂ではサブモノマー合成反復手順(特許WO2019081455に記載済み)を用いて、ワング樹脂では市販のFmoc-Sar-Sar-OHジペプトイドビルディングブロック(CAS#2313534-20-0)を使用する古典的なFmoc/SPPS方法に従って、単分散ポリサルコシンの樹脂上での合成を実現した。なお、ワング樹脂上でのペプトイドサブモノマー合成は失敗したことに留意されたい。全ての場合において、樹脂上での二量体ステージ(n=2)は、ジケトピペラジン形成のために回避した。全ての合成収率は、製造業者によって指示された初期のFmoc-サルコシン添加量に基づいて報告される。特に断りのない限り、全ての反応は室温で行った。リンクアミド、2-クロロトリチルまたはワングポリスチレン1%DVB100-200メッシュ樹脂に、第1のFmoc-サルコシン残基をあらかじめ添加したもの(Christof Senn Laboratories)を使用した(一般的な初期添加量は0.6-1mmol/g)。
【0204】
1.1.2)ポリサルコシンの伸長
Fmoc-サルコシンをあらかじめ添加したリンクアミド、2-クロロトリチルまたはワング樹脂を、DMF中20%のピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)で室温にて15分×2回処理した。次いで、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。樹脂に、Fmoc-Sar-Sar-OH(3eq)、HATU(2.9eq)およびDIPEA(6eq)のDMF溶液(樹脂100mg当たり1mL)を加えた。反応容器を2時間撹拌し、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。樹脂を、DMF中20%のピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)を用いて室温にて15分×2回処理した。その後、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。
【0205】
リンクアミドまたは2-クロロトリチル樹脂上での合成には、WO2019081455に記載されているように、古典的なサブモノマー合成手順を使用した。n=3のポリサルコシンオリゴマーの伸長は、ブロモアセチル化工程とアミン置換工程とを交互に行い、所望の長さが得られるまで行った。ブロモアセチル化工程は、10eqのブロモ酢酸および13eqのジイソプロピルカルボジイミドを、DMF(樹脂100mg当たり2mL)中で添加することによって行った。混合物を30分間撹拌し、水切りし、DMFで洗浄した(4回)。アミン置換工程のために、水溶液中の40%(wt)メチルアミンを添加し(樹脂100mg当たり1.5mL)、容器を30分間振とうし、水切りし、DMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。
【0206】
ワング樹脂上での合成には、古典的なFmoc/SPPS手順を用いた。n=3のポリサルコシンオリゴマーの伸長は、Fmoc-Sar-Sar-OHジペプトイドビルディングブロック(CAS#2313534-20-0)の反復カップリングによって行った。樹脂に、Fmoc-Sar-Sar-OH(3eq)、HATU(2.9eq)およびDIPEA(6eq)のDMF溶液を加えた(樹脂100mg当たり1mL)。反応容器を90分間撹拌し、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で広範囲に洗浄した。次に、樹脂を、DMF中20%のピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)を用いて室温で15分×2回処理した。樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。このカップリング/Fmoc-脱保護サイクルを、所望の長さのポリサルコシンが得られるまで繰り返した。必要であれば、最終的に均等な長さのポリサルコシンを得るために、Fmoc-Sar-Sar-OHジペプトイドユニットの代わりに市販のFmoc-Sar-OHアミノ酸を用いて最後のカップリングを行う。
【0207】
1.1.3)ポリサルコシンの最終的な樹脂上の側官能基化、任意のキャッピング、樹脂の切断および精製
所望の樹脂上のポリサルコシン単分散オリゴマー長に達したら、直交化学的官能基化を行う。任意に、Fmoc-アミノ酸(例えば、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-β-Ala-OH、Fmoc-アミノ-3,6ジオキサオクタン酸、Fmoc-9-アミノ-4,7-ジオキサノナン酸)による最終的なキャッピングが続く。最終化合物のN末端をキャッピングするFmoc保護基は、使用する直交官能基化化学に依って、樹脂切断の前または後に除去できる(後述する)。
【0208】
1.1.3.1)2-アジドエタン-1-アミン側官能基化ポリサルコシン
リンク樹脂または2-クロロトリチル樹脂に、DMF中10eqのブロモ酢酸と13eqのジイソプロピルカルボジイミドとを加える(樹脂100mg当たり2mL)。混合物を30分間撹拌し、水切りし、DMFで洗浄した(4回)。3モーラーの2-アジドエタン-1-アミンのDMF溶液(樹脂100mg当たり1mL)を加え、容器を45分間振とうし、水切りし、DMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。続いて、1時間のFmoc-Gly-OHカップリング(DMF中5eqのFmoc-Gly-OH、4.9eqのHATU、10eqのDIPEA(樹脂100mg当たり1mL))およびDMF中20%のピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)によるFmoc-脱保護を、室温で15分×2回行った。樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。
【0209】
最終ポリサルコシン化合物を樹脂から切断した(リンク樹脂およびワング樹脂は100%TFAを30分×2回、2-クロロトリチル樹脂はDCM中20%TFAを15分×2回)。樹脂をろ過し、減圧下で揮発性物質を除去して粗製物を得、これをInterchim(登録商標)RP-AQ(30μm)カートリッジで精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。
【0210】
1.1.3.2)β-アラニン側官能基化ポリサルコシン
リンク樹脂または2-クロロトリチル樹脂に、DMF中10eqのブロモ酢酸と13eqのジイソプロピルカルボジイミドを加える(樹脂100mg当たり2mL)。混合物を30分間撹拌し、水切りし、DMFで洗浄した(4回)。3モーラーのアリル3-アミノプロパノエートのDMF溶液(Schroer et al., J. Org. Chem. 1997, 62, 10, 3220-3229に記載のように合成し、THF中3eqのNaCOを用いて50℃で20分間フリーベースした)を加え(樹脂100mg当たり1mL)、容器を45分間振とうし、水切りし、DMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。続いて、1時間のFmoc-Gly-OHカップリング(DMF中5eqのFmoc-Gly-OH、4.9eqのHATU、10eqのDIPEA(樹脂100mg当たり1mL))を行った。樹脂をDMF(4回)、DCM(4回)で洗浄した。0.25eqのPd(PPhおよび20eqのフェニルシランを含むDCM溶液で30分×2回処理することによって、アロック保護基を除去した(アルゴン気流下で穏やかに撹拌)。その後、樹脂をDMF(5回)およびDCM(5回)で洗浄した。任意に、50eqのDICおよび60eqのN-ヒドロキシスクシンイミドを含むDMF溶液(樹脂100mg当たり1.5mL)で90分間処理することによって、最終ポリサルコシン化合物のカルボン酸側鎖にN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを導入した。その後、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。
【0211】
最終ポリサルコシン化合物を樹脂から切断した(リンク樹脂およびワング樹脂は100%TFAを30分×2回、2-クロロトリチル樹脂はDCM中20%TFAを15分×2回)。樹脂をろ過し、減圧下で揮発性物質を除去して粗製物を得、これをInterchim(登録商標)RP-AQ(30μm)カートリッジで精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。
【0212】
1.1.3.3)グルタミン酸側官能基化ポリサルコシン
リンク樹脂、ワング樹脂または2-クロロトリチル樹脂に、Fmoc-Glu(OAll)-OH(3eq)、HATU(2.9eq)およびDIPEA(6eq)のDMF溶液(樹脂100mg当たり1mL)を加えた。反応容器を90分間撹拌し、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で広範囲に洗浄した。次に、樹脂を、DMF中20%のピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)を用いて室温で15分×2回処理した。樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。続いて、DMF中、Fmoc-アミノ-3,6ジオキサオクタン酸(3eq)、HATU(2.9eq)、DIPEA(6eq)(樹脂100mg当たり1mL)を用いて1時間カップリングした。樹脂をDMF(4回)、DCM(4回)で洗浄した。0.25eqのPd(PPhおよび20eqのフェニルシランを含むDCM溶液で30分×2回処理することによって、アロック保護基を除去した(アルゴン気流下で穏やかに撹拌)。その後、樹脂をDMF(5回)およびDCM(5回)で洗浄した。任意に、50eqのDICおよび60eqのN-ヒドロキシスクシンイミドを含むDMF溶液(樹脂100mg当たり1.5mL)で90分間処理することによって、最終ポリサルコシン化合物のカルボン酸側鎖にN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを導入した。その後、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。
【0213】
最終ポリサルコシン化合物を樹脂から切断した(リンク樹脂およびワング樹脂は100%TFAを30分×2回、2-クロロトリチル樹脂はDCM中の20%TFAを15分×2回)。樹脂をろ過し、減圧下で揮発性物質を除去して粗製物を得、これをInterchim(登録商標)RP-AQ(30μm)カートリッジで精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。
【0214】
1.1.3.4)γ-アジドホモアラニン官能化ポリサルコシン
リンク樹脂、ワング樹脂または2-クロロトリチル樹脂に、Fmoc-γ-アジドホモアラニン(3eq)、HATU(2.9eq)およびDIPEA(6eq)のDMF溶液(樹脂100mg当たり1mL)を加えた。反応容器を90分間撹拌し、樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で広範囲に洗浄した。次に、樹脂を、DMF中20%のピペリジン(樹脂100mg当たり1mL)を用いて室温で15分×2回処理した。樹脂をDMF(4回)およびDCM(4回)で洗浄した。続いて、DMF中、Fmoc-アミノ-3,6ジオキサオクタン酸(3eq)、HATU(2.9eq)、DIPEA(6eq)(樹脂100mg当たり1mL)を用いて1時間カップリングした。樹脂をDMF(4回)、DCM(4回)で洗浄した。
【0215】
最終ポリサルコシン化合物を、樹脂から切断した(リンク樹脂およびワング樹脂は100%TFAを30分×2回、2-クロロトリチル樹脂はDCM中20%TFAを15分×2回)。樹脂をろ過し、減圧下で揮発性物質を除去して粗製物を得、これをInterchim(登録商標)RP-AQ(30μm)カートリッジで精製した。移動相Aは水+0.1%TFAであり、移動相Bはアセトニトリルであった。
【0216】
1.1.4)最終ポリサルコシン中間体
次の表1は、得られた化合物の一覧である。
【0217】
【表1】
【0218】
1.2)中間体化合物の合成
1.2.1)化合物B1および化合物B2の合成
【0219】
【化19】
【0220】
これらの化合物は、特許WO20199081455に記載されている手順に従って合成した。これらの化合物は、等モルのジアステレオ異性体混合物である(立体異性中心はアスタリスクによって示される)。
【0221】
1.2.2)化合物B3および化合物B4の合成
【0222】
【化20】
【0223】
1.2.2.1)tert-ブチル(2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)エチル)カルバメートの合成
(±)-オクトパミン塩酸塩(1690mg/11mmol)を丸底フラスコに量り取り、4mLの蒸留水に懸濁した。フラスコを0℃で冷やし、あらかじめ冷やしておいた65%硝酸溶液4mLをゆっくりと加えた。反応は0℃で20分間保持され、HPLCによる評価で出発物質の完全なモノニトロ化を示した。フラスコの内容物を250mLのあらかじめ冷やした三角フラスコに移し、pH値が8~9になるまで0℃で飽和NaHCO溶液(約50mL)を用いてゆっくりと中和した。次に、ジオキサン30mLを加え、続いてBocO(7202mg/13.2mmol)を加えた。次いで、反応物を室温にし、一晩撹拌した。その後、反応物をEtOAcで希釈し、飽和クエン酸水溶液で3回、飽和NaCl水溶液で1回洗浄した。有機相をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空下で蒸発させて粗製物を得、これをシリカゲル上のクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、70:30から20:80までの勾配)で精製して、表題化合物(1320mg/40%)を濃い黄色から褐色の油として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ10.79(s,1H)、7.79(d,J=2.1Hz,1H)、7.47(dd,J=8.6,2.1Hz,1H)、7.08(d,J=8.6Hz,1H)、6.74(t,J=5.9Hz,1H)、4.56(t,J=6.3Hz,1H)、3.07(td,J=6.1,1.6Hz,2H)、1.31(s,9H)。MSm/z(ESI):Calc[M+H]=299.1;Exp[M+H]=299.1。HPLC法2の保持時間=5.5分。
【0224】
1.2.2.2)(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-ヒドロキシエチル)-2-ニトロフェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートの合成
丸底フラッシュに、AgCO(1500mg/5.4mmol)および1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(251mg/1.1mmol)を4mLの無水アセトニトリル中に取り込み、室温で2時間撹拌した。前駆化合物tert-ブチル(2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)エチル)カルバメート(292mg/0.98mmol)および1-ブロモ-2,3,4-トリ-O-アセチル-α-D-グルクロニドメチルエステル(583mg/1.46mmol)を0℃で加え、溶液混合物を室温で4時間撹拌した。次いで、反応物をセライト上でろ過し、EtOAcで希釈し、飽和クエン酸水溶液で3回、飽和NaCl水溶液で1回洗浄した。有機相をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空下で蒸発させて粗製物を得、これをシリカゲル上のクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、70:30から30:70までの勾配)で精製して、表題化合物(244mg/48%)を黄色の泡として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ7.76(dd,J=3.3,2.1Hz,1H),7.60(t,J=7.6Hz,1H),7.36(dd,J=8.7,2.6Hz,1H),6.77(s,1H),5.71(d,J=7.8Hz,1H),5.61(s,1H),5.46(td,J=9.5,1.1Hz,1H),5.21-5.02(m,3H),4.75(dd,J=9.9,1.4Hz,1H),4.62(s,1H),3.65(s,3H),3.17(s,2H),3.10(t,J=6.1Hz,2H),2.81-2.59(m,6H),2.05-1.96(m,9H),1.30(d,J=1.7Hz,9H)。MSm/z(ESI):Calc[M+Na]=637.2;Exp[M+Na]=637.2。HPLC法2の保持時間=6.75分。
【0225】
1.2.2.3)(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エチル)-2-ニトロフェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートの合成
前駆化合物(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-ヒドロキシエチル)-2-ニトロフェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(334mg/0.54mmol)および4-ニトロフェニルクロロホルメート(219mg/1.09mmol)を、6mLの乾燥DCMに0℃で溶解した。無水ピリジン(112mg/1.41mmol)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。反応物を0.45μmPTFEフィルターでろ過し、シリカゲル上のクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、85:15から30:70までの勾配)で精製して、表題化合物(380mg/90%)を黄色の泡として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ8.39-8.26(m,2H),7.93(d,J=2.2Hz,1H),7.75(d,J=8.8Hz,1H),7.55(dd,J=9.2,1.2Hz,2H),7.46(d,J=8.8Hz,1H),7.20(d,J=4.8Hz,1H),5.77(dd,J=7.7,3.7Hz,1H),5.47(t,J=9.5Hz,1H),5.11(q,J=9.6Hz,2H),4.77(d,J=9.9Hz,1H),3.73-3.59(m,3H),3.59-3.37(m,2H),2.05-1.96(m,9H),1.48-1.35(m,1H),1.32(s,9H)。MSm/z(ESI):Calc[M+Na]=802.15;Exp[M+Na]=802.15。HPLC法2の保持時間=8.5分。
【0226】
1.2.2.4)化合物B3の合成
101mg(0.13mmol)の前駆化合物(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エチル)-2-ニトロフェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート、98mg(0.14mmol)のMMAEおよび18mg(0.13mmol)のHOBtを、85:15(v/v)の無水DMF/ピリジン混合物1mLに溶解した。16.7mg(0.13mmol)のDIPEAを加えた。反応物を室温で16時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から95:5までの勾配)で精製して、脱保護工程に直接関与する中間体化合物(白色固体)を147mg(84%)得た。ESI[M+H]=1358.7。HPLC法2の保持時間=8.8分。
【0227】
この中間体化合物144mg(0.106mmol)を0℃でMeOH3mLに溶解した。LiOH一水和物(44.5mg/1.06mmol)を水(0.4mL)に溶解し、反応容器に加えた。0℃で30分間撹拌した後(反応後、HPLC)、混合物を酢酸(83mg/1.4mmol)で中和し、減圧下濃縮した。得られた粗製物をTFA/DCM(30:70v/v)溶液を用いて0℃にて再溶解し、室温で15分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で蒸発させ、粗残渣を水/ACN(1:1v/v)溶液に取り込み、HPLC分取法5を用いて精製し、85mg(72%)の化合物B3を白色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1118.5867;Exp[M+H]=1118.5842;Error=2.2ppm。HPLC法3の保持時間=9.36分。
【0228】
1.2.2.5)化合物B4の合成
化合物B4は、化合物B3の合成に用いた手順と同じ手順に若干の調整を加えて合成した。(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エチル)-2-ニトロフェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートとエキサテカンメシレートとのカップリング反応は、室温で一晩行う代わりに40℃で2時間行った。
【0229】
125mg(87%)の中間体化合物(2S,3R,4S,5S,6S)-2-(4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-((((1R,9R)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)オキシ)エチル)-2-ニトロフェノキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテートは、黄色/緑色の固体で得られた。ESI[M+Na]=1098.3。HPLC法3の保持時間=14.7分および14.9分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0230】
グルクロニド部分の脱保護は、純粋なMeOHの代わりに、MeOH/THF(75:25v/v)を用いて行った。Boc-脱保護は、化合物B3について記載したように実施した。
【0231】
HPLC分取法5を用いて精製すると、65mg(67%)の化合物B4が黄色の固体として得られた。ESI[M+H]=836.2。HPLC法3の保持時間=7.3分および7.8分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0232】
1.2.2.6)立体純化合物B4-SおよびB4-Rの合成
【0233】
【化21】
【0234】
1.2.2.6.1)tert-ブチル(2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)エチル)カルバメートのラセミ混合物のキラル分離
ラセミ体tert-ブチル(2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)エチル)カルバメート(前述のように合成)のキラル分離は、Teledyne Isco CombiFlash(登録商標)Rf200システム上のChiralflash(登録商標)IC MPLCカラム30×100mm、20μm(Daicel cat#83M73)を用いて行った。移動相はDCM+0.2%(v/v)EtOH(アイソクラティック勾配)であった。流速は12mL/分であった。サンプル溶媒はDCM+0.2%(v/v)EtOHであった。分離後の2つのエナンチオマーの質量回収率は80%超であった。
【0235】
tert-ブチル(S)-(2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)エチル)カルバメートの保持時間は15分であったが、tert-ブチル(R)-(2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)エチル)カルバメートの保持時間は25分であった。
【0236】
絶対配置を決定するために、両方のエナンチオマーのフェノール位置を、無水THF中、1.2モル当量の4-ニトロベンゾイル塩化物および2モル当量のトリエチルアミンを用いてエステル化した。化合物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc、90:10から10:90までの勾配)で精製して、4-(2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-1-ヒドロキシエチル)-2-ニトロフェニル 4-ニトロ安息香酸を得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ8.51(d,J=9.1Hz,2H),8.44(d,J=9.1Hz,2H),8.19(d,J=1.9Hz,1H),7.88(d,J=10.2Hz,1H),7.72(d,J=8.4Hz,1H),6.93(t,J=5.9Hz,1H),5.84(d,J=4.7Hz,1H),4.86-4.76(m,1H),3.24(t,J=6.1Hz,2H),1.38(s,9H)。ESI[M+Na]=470.1。エナンチオマー(あらかじめヘプタン/ジクロロメタンの1:1混合物に溶解し、結晶形成を誘導するために3週間ゆっくりと蒸発させた)の絶対配置は、X線結晶構造解析によって確認した。ブロック状の結晶をパーフルオロエーテル油中のナイロンループにマウントした。データは、T=150.00(5)Kで動作するOxford Cryosystems低温装置を装備したXcalibur、Atlas、Gemini超回折計を使用して収集した。データは、CuKα放射線を使用したωスキャンを用いて測定した。構造は、デュアル法を用いたShelXTソリューションプログラムを用いて、Olex2(O.V. Dolomanov et al., Olex2: A complete structure solution, refinement and analysis program, J. Appl. Cryst., 2009, 42, 339-341)をグラフィカルインターフェースとして使用することによって解明した。このモデルは、ShelXL 2018/3(Sheldrick, G.M., Crystal structure refinement with ShelXL, Acta Cryst., 2015, C71, 3-8)で、Fについて完全行列最小二乗法による最小化を用いて精密化した。
【0237】
1.2.2.6.2)立体純B4-SおよびB4-R化合物の合成
立体純化合物のB4-SおよびB4-Rは、反応条件、反応性、または全般的な収率に大きな変化はなく、前節1.2.2で述べたように合成された。
【0238】
HPLC分取法5を用いた最終精製によって、33mgの化合物B4-Sを黄色固体として得た。ESI[M+H]=836.2。HPLC法3の保持時間=7.3分。
【0239】
HPLC分取法5を用いた最終精製によって、21mgの化合物B4-Rを黄色固体として得た。ESI[M+H]=836.2。HPLC法3の保持時間=7.8分。
【0240】
1.2.3)化合物B5および化合物B6の合成
【0241】
【化22】
【0242】
1.2.3.1)Ac-Val-Ala-OH(アセチル-L-バリル-L-アラニン)の合成
30mLのDCM中のL-アラニンベンジルエステル塩酸塩(542mg/2.5mmol)の溶液に、トリエチルアミン(254mg/2.5mmol)、蒸留水(30mL)、N-α-アセチル-L-バリン(400mg/2.5mmol)、およびHOBt(339mg/2.5mmol)を順次加えた。次いで混合物を0℃に冷却し、EDC-HCl(530mg/2.75mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で一晩撹拌した。反応物を20mLの2M HClで希釈し、層を分離した。有機相を2M HClで2回、飽和NaHCO溶液で2回、飽和NaCl溶液で1回洗浄した。有機相をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、真空下で蒸発させて、ベンジルアセチル-L-バリル-L-アラニネートを白色固体の中間体として714mg(89%)得た。
【0243】
この中間体を、1:1(v/v)のEtOAc/MeOH10mLに溶解し、ステンレス鋼製の水素化反応器に移した。最初のアルゴンパージ後、触媒量の5重量%Pd/Cを添加した。その後、反応器をHで2回パージし、10barのH圧力下に室温で一晩保持した。0.45μmのPTFEフィルターで反応物をろ過し、真空下で溶媒を除去した後、純粋なアセチル-L-バリル-L-アラニンを白色固体として定量的に得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ12.45(s,1H),8.23(d,J=6.9Hz,1H),7.85(d,J=9.0Hz,1H),4.25-4.11(m,2H),1.94(dt,J=13.6,6.8Hz,1H),1.85(s,3H),1.26(d,J=7.3Hz,3H),0.85(dd,J=12.1,6.8Hz,6H)。
【0244】
1.2.3.2)(2S)-2-アセトアミド-N-((2S)-1-((4-(1-ヒドロキシブト-3-イン-1-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-3-メチルブタンアミドの合成
丸底フラッシュに、420mg(2.60mmol)の1-(4-アミノフェニル)ブト-3-イン-1-オール(Sharma A. et al., Chem 2018, 4 (10), 2370-2383に記載の手順に従って合成)および600mg(2.60mmol)の前駆化合物Ac-Val-Ala-OHを、20mLの無水THFに懸濁した。次に、5mLの無水DMFに先に溶解させた676mg(2.74mmol)の2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)をフラスコに入れ、濁った反応混合物を室温で一晩撹拌した。その後、揮発性物質を減圧下で蒸発させ、粗残渣を乾固し、シリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から85:15までの勾配)で精製して、表題化合物809mg(83%)を白色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ9.84(s,1H),8.18(d,J=7.0Hz,1H),7.90(d,J=8.6Hz,1H),7.53(d,J=8.6Hz,2H),7.28(d,J=8.6Hz,2H),5.44(d,J=4.4Hz,1H),4.62(q,J=6.2Hz,1H),4.39(p,J=7.6,7.2Hz,1H),4.17(dd,J=8.5,6.8Hz,1H),2.70(t,J=2.6Hz,1H),1.96(dt,J=13.2,6.6Hz,1H),1.88(s,3H),1.30(d,J=7.1Hz,3H),0.86(dd,J=10.9,6.8Hz,6H)。ESI[M+H]=374.2。HPLC法2の保持時間=3.95分。
【0245】
1.2.3.3)1-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)ブト-3-イン-1-イル(4-ニトロフェニル)カーボネートの合成
94mg(0.25mmol)の(2S)-2-アセトアミド-N-((2S)-1-((4-(1-ヒドロキシブト-3-イン-1-イル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)-3-メチルブタンアミドおよび153mg(0.50mmol)のビス(4-ニトロフェニル)カーボネートを2mLの無水DMFに溶解した。98mg(0.76mmol)のDIPEAを加え、反応混合物を室温で一晩撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、粗残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から90:10までの勾配)で精製して、表題化合物118mg(87%)を黄色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ9.99(s,1H),8.35-8.26(m,2H),8.22(d,J=7.0Hz,1H),7.89(d,J=8.6Hz,1H),7.63(d,J=8.7Hz,2H),7.58-7.48(m,2H),7.43(d,J=8.7Hz,2H),5.74(d,J=7.5Hz,1H),4.39(p,J=7.2Hz,1H),4.17(dd,J=8.5,6.9Hz,1H),3.01-2.84(m,3H),1.99-1.91(m,1H),1.88(s,3H),1.31(d,J=7.1Hz,3H),0.86(dd,J=11.2,6.8Hz,6H)。ESI[M+H]=539.1。HPLC法2の保持時間=6.48分。
【0246】
1.2.3.4)化合物B5の合成
44mg(0.082mmol)の前駆化合物1-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)ブト-3-イン-1-イル(4-ニトロフェニル)カーボネート、53mg(0.074)のMMAEおよび11.1mg(0.082mmol)のHOBtを、85:15(v/v)の無水DMF/ピリジン混合物1mLに溶解した。10.6mg(0.082mmol)のDIPEAを加えた。反応物を室温で16時間撹拌し、HPLC分取法5を用いて直接精製し、化合物B5を白色固体として41mg(50%)得た。ESI[M+Na]=1139.7。HPLC法2の保持時間=7.40分。
【0247】
1.2.3.5)化合物B6の合成
化合物B6は、化合物B5の合成に用いた手順と同じ手順に若干の調整を加えて合成した。1-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)ブト-3-イン-1-イル(4-ニトロフェニル)カーボネートとエキサテカンメシレートとのカップリング反応は、室温で一晩行う代わりに40℃で3時間行った。減圧下で揮発性物質を除去した後、反応混合物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から95:5までの勾配)で精製して、53.3mg(78%)の化合物B6を黄色/緑色固体として得た。ESI[M+H]=835.3。HPLC法2の保持時間=6.50分および6.60分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0248】
1.2.4)化合物B7および化合物B8の合成
【0249】
【化23】
【0250】
1.2.4.1)tert-ブチル(2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートの合成
市販のtert-ブチル(2-ヒドロキシ-2-(4-ニトロフェニル)エチル)カルバメート(CAS#939757-25-2)911mg(3.23mmol)を含むMeOH溶液を、ステンレス鋼製の水素化反応器に移した。最初のアルゴンパージ後、5重量%の触媒量のPd/Cを添加した。その後、反応器をHで2回パージし、10barのHの圧力下、室温で5時間、攪拌しながら反応を保持した。反応物を0.45μmPTFEフィルターでろ過し、真空下でMeOHを除去した後、表題化合物749mg(92%)を白色固体として得た。ESI[M+H]=253.2。HPLC法2の保持時間=2.73分。
【0251】
1.2.4.2)tert-ブチル(2-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートの合成
150mg(0.60mmol)の前駆化合物tert-ブチル(2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメート、222mg(0.71mmol)のFmoc-Ala-OHおよび81mg(0.62mmol)のDIPEAを、5mLの無水DMFに溶解した。181mg(0.71mmol)のHATUを加え、反応物を室温で一晩撹拌する。その後、揮発性物質を減圧下で除去し、粗残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 100:0から90:10までの勾配)で精製して、Fmoc-脱保護に直接関与する最初の中間体tert-ブチル(2-(4-((S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートを定量的に得た。HPLC法2の保持時間=7.7分。
【0252】
tert-ブチル(2-(4-((S)-2-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)プロパンアミド)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートを、9:1(v/v)のDMF/ピペリジン5mLに溶解し、室温で15分間撹拌した。次いで、揮発性物質を減圧下で除去し、粗残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から80:20までの勾配)で精製して、130mg(2工程にわたって68%)の第2の中間体tert-ブチル(2-(4-((S)-2-アミノプロパンアミド)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートを白色の泡状固体として得た。HPLC法2の保持時間=3.75分。
【0253】
130mg(0.40mmol)のtert-ブチル(2-(4-((S)-2-アミノプロパンアミド)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートおよび124mg(0.48mmol)の市販のAc-Val-OSu(CAS#56186-37-9)を3mLの無水DMFに溶解し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。その後、揮発性物質を減圧下で除去し、粗残渣を3mLのDCMで粉砕して、表題化合物95mg(51%)を白色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ9.82(s,1H),8.16(d,J=7.1Hz,1H),7.88(d,J=8.6Hz,1H),7.53(d,J=8.4Hz,2H),7.22(d,J=8.5Hz,2H),6.73-6.58(m,1H),5.27(d,J=4.4Hz,1H),4.58-4.47(m,1H),4.40(q,J=7.1Hz,1H),4.17(dd,J=8.4,6.8Hz,1H),3.15-2.90(m,2H),1.88(s,4H),1.35(s,9H),1.30(d,J=7.1Hz,3H),0.92-0.73(m,6H)。ESI[M+H]=487.3。HPLC法2の保持時間=4.50分。
【0254】
1.2.4.3)tert-ブチル(2-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)-2-(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エチル)カルバメートの合成
286mg(0.62mmol)のtert-ブチル(2-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートおよび375mg(1.23mmol)のビス(4-ニトロフェニル)カーボネートを、無水DMF3mLに溶解した。318mg(2.46mmol)のDIPEAを加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、粗残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から90:10までの勾配)で精製して、表題化合物336mg(87%)を黄色固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO-d)δ9.99(s,1H),8.36-8.26(m,2H),8.22(d,J=6.9Hz,1H),7.89(d,J=8.6Hz,1H),7.63(d,J=8.6Hz,2H),7.56-7.46(m,2H),7.34(d,J=8.6Hz,2H),7.22(t,J=5.6Hz,1H),5.68(t,J=6.0Hz,1H),4.38(p,J=7.1Hz,1H),4.17(dd,J=8.5,6.9Hz,1H),3.49-3.34(m,2H),2.01-1.90(m,1H),1.87(s,3H),1.37(s,9H),1.30(d,J=7.1Hz,3H),0.86(dd,J=11.1,6.8Hz,6H)。ESI[M+Na]=652.2。HPLC法2の保持時間=7.13分。
【0255】
1.2.4.4)化合物B7の合成
43.2mg(0.069mmol)の前駆化合物tert-ブチル(2-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)-2-(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エチル)カルバメート、41mg(0.057)のMMAEおよび6.7mg(0.057mmol)のHOBtを、85:15(v/v)の無水DMF/ピリジン混合物1mLに溶解した。11.0mg(0.086mmol)のDIPEAを加えた。反応物を室温で16時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(DCM/MeOH 99:1から90:10までの勾配)で精製して、Boc-脱保護工程に直接関与する47mg(55%)の中間体化合物(微黄色固体)を得た。ESI[M+Na]=1230.7。HPLC法2の保持時間=7.55分。
【0256】
得られた固体をTFA/DCM(30:70v/v)溶液を用いて0℃にて再溶解し、室温で15分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で蒸発させ、粗残渣を水/ACN(1:1v/v)溶液に取り込み、HPLC分取法5を用いて精製し、化合物B7を白色固体として15mg(30%)得た。ESI[M+H]=1108.7。HPLC法2の保持時間=5.8分および5.9分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0257】
1.2.4.5)化合物B8の合成
化合物B8は、化合物B7の合成に用いた手順と同じ手順に若干の調整を加えて合成した。tert-ブチル(2-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)-2-(((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)エチル)カルバメートとエキサテカンメシレートとのカップリング反応は、室温で一晩行う代わりに40℃で3時間行った。
【0258】
中間体化合物1-(4-((S)-2-((S)-2-アセトアミド-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)フェニル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)エチル((1R,9R)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメートを褐黄色の固体で得た。ESI[M+H]=926.4。HPLC法2の保持時間=6.7分および6.8分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0259】
Boc-脱保護は、化合物B7について述べたように行った。HPLC分取法5を用いた精製によって、47mg(70%)の化合物B8を黄色固体として得た。ESI[M+H]=826.4。HPLC法3の保持時間=8.30分および8.75分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0260】
1.2.4.6)立体純化合物B8-SおよびB8-Rの合成
【0261】
【化24】
【0262】
1.2.4.6.1)tert-ブチル(2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートのラセミ混合物のキラル分離
ラセミ体tert-ブチル(2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートのキラル分離は、Teledyne Isco CombiFlash(登録商標)Rf200システムにChiralflash(登録商標)IC MPLCカラム30×100mm,20μm(Daicel cat#83M73)を用いて行った。移動相はDCM+0.2%(v/v)EtOH(アイソクラティック勾配)であった。流速は12mL/分であった。サンプル溶媒はDCM+0.2%(v/v)EtOHであった。分離後の2つのエナンチオマーの質量回収率は75%以上であった。
【0263】
tert-ブチル(S)-(2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートの保持時間は21分であったが、tert-ブチル(R)-(2-(4-アミノフェニル)-2-ヒドロキシエチル)カルバメートの保持時間は29分であった。エナンチオマー(あらかじめヘプタン/エタノールの1:1混合溶媒に溶解し、結晶形成を誘導するために1週間ゆっくりと蒸発させた)の絶対配置をX線結晶構造解析で確認した。ブロック状の結晶をパーフルオロエーテル油中のナイロンループにマウントした。データは、T=150.00(10)Kで動作するOxford Cryosystems低温装置を備えたXcalibur、Atlas、Gemini超回折計を使用して収集された。データは、CuKα放射線を使用したωスキャンを用いて測定された。構造は、デュアル法を用いたShelXTソリューションプログラムを用いて、Olex2(O.V. Dolomanov et al., Olex2: A complete structure solution, refinement and analysis program, J. Appl. Cryst., 2009, 42, 339-341)をグラフィカルインターフェースとして使用することによって解明した。このモデルは、ShelXL 2018/3(Sheldrick, G.M., Crystal structure refinement with ShelXL, Acta Cryst., 2015, C71, 3-8)を用いて、Fについて完全行列最小二乗法による最小化を用いて精密化した。
【0264】
1.2.4.6.2)立体純B8-SおよびB8-R化合物の合成
立体純化合物B8-SおよびB8-Rは、反応条件、反応性、または全般的な収率に大きな変化はなく、前節1.2.4で述べたように合成した。
【0265】
HPLC分取法5を用いた最終精製によって、54mgの化合物B8-Sを黄色固体として得た。ESI[M+H]=826.4。HPLC法3の保持時間=8.45分。
【0266】
HPLC分取法5を用いた最終精製によって、46mgの化合物B8-Rを黄色固体として得た。ESI[M+H]=826.4。HPLC法3の保持時間=8.90分。
【0267】
1.2.5)化合物B9、化合物B10および化合物B11の合成
1.2.5.1)化合物B9の合成
【0268】
【化25】
【0269】
20.0mg(0.036mmol)のBoc-Val-Ala-PAB-PNP(CAS#1884578-00-0,Iris Biotech)、23.1mg(0.032)のMMAEおよび5mg(0.036mmol)のHOBtを、85:15(v/v)の無水DMF/ピリジン混合物1mLに溶解した。4.6mg(0.036mmol)のDIPEAを加えた。反応物を室温で16時間撹拌し、揮発性物質を減圧下で蒸発させた。粗残渣を2mLのTFA/DCM(30:70v/v)溶液で溶解し、室温で1時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で蒸発させ、粗残渣を水/ACN(1:1v/v)溶液に取り込み、HPLC分取法5を用いて精製し、11mg(26%)の化合物B9を白色固体として得た。ESI[M+H]=1037.7。HPLC法2の保持時間=7.9分。
【0270】
1.2.5.2)化合物B10の合成
【0271】
【化26】
【0272】
化合物B10は、化合物B9の合成に用いた手順と同じ手順に若干の調整を加えて合成した。Boc-Val-Ala-PAB-PNP(CAS#1884578-00-0)とエキサテカンメシレートとのカップリング反応は、室温で一晩行う代わりに40℃で3時間行った。
【0273】
Boc-脱保護は、上記の化合物B9について述べたように行った。HPLC分取法5を用いた精製によって、52mg(2工程にわたって90%)の化合物B10を黄色固体として得た。ESI[M+H]=755.3。HPLC法2の保持時間=5.70分。
【0274】
1.2.5.3)化合物B11の合成
【0275】
【化27】
【0276】
化合物(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(2-(3-アミノプロパンアミド)-4-((5R,8R,11R,12S)-11-((R)-sec-ブチル)-12-(2-(2-((1R,2S)-3-(((1R,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-5.8-ジイソプロピル-4,10-ジメチル-3,6,9-トリオキソ-2,13-ジオキサ-4,7,10-トリアザテトラデシル)フェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸(化合物B11)を、Jeffrey SC et al., Bioconjug. Chem., 2006, 17(3), 831-840に記載のように合成した。
【0277】
1.3)薬物リンカーの合成
1.3.1)グルクロニドベースの薬物リンカーの合成
1.3.1.1)化合物DL1の合成
【0278】
【化28】
【0279】
100mg(0.081mmol)の化合物A1(NHS-活性化ポリサルコシン中間体)および51mg(0.061mmol)の化合物B4(NH-ペイロード)を、小瓶中の無水DMFに溶解した(化合物B4の濃度は0.080M)。41mg(0.405mmol)のトリエチルアミンを加え、室温で30分間撹拌して反応させた。HPLCで観察される反応の全転化後、DMF中8%(v/v)のピペリジン溶液になるように、ピペリジンを反応バイアルに直接添加する。その後、HPLCでFmoc-脱保護が完全に観察されるまで、反応物を室温で5~10分間撹拌する。反応物を、1:1(v/v)の水/ACN中10%のTFAの溶液を用いてゆっくりと中和し、HPLC分取法5を用いて精製し、74mg(出発化合物B4に基づいて70%の収率)の中間体化合物(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(4-(41-アミノ-1-(((1R,9R)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-9-グリシル-12,15,18,21,24,27,30,33,36,39-デカメチル-1,6,11,14,17,20,23,26,29,32,35,38,41-トリデカオキソ-2-オキサ-5,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36,39-ドデカアザヘンテトラコンタン-3-イル)-2-ニトロフェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸を黄色固体として得た。ESI[M+H]=1731.7。HPLC法3の保持時間=7.40分および7.70分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0280】
17.8mg(0.010mmol)のこの化合物および2.85mg(0.011mmol)のマレイミド酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、無水DMF(マレイミド化合物の濃度は0.1M)に溶解した。1.56mg(0.015)のトリエチルアミンを加え、HPLCで観察される反応物の全転化まで2時間撹拌した。次いで、反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法6を用いて精製し、13.7mg(72%)の化合物DL1を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=934.8559;Exp[M+2H]2+=934.8544;Error=1.7ppm。HPLC法3の保持時間=7.73分および8.08分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0281】
1.3.1.2)化合物DL2の合成
【0282】
【化29】
【0283】
44.5mg(0.049mmol)の化合物A2(アジド-ポリサルコシン中間体)および27.5(0.033mmol)の化合物B2(アルキン-ペイロード)を、化合物B2の濃度が0.060Mになるように、100mM PBS(pH=7.5)とDMSOとが1:1(v/v)である溶液に溶解した。次いで、0.08モル当量のCuおよび1モル当量のアスコルビン酸ナトリウム(反応混合物中の化合物B2モル当量に基づく)になるように、新しく調製したCuSO五水和物およびアスコルビン酸ナトリウム溶液(約250mg/mL)を反応バイアルに順次加えた。反応をアルゴンでパージし、40℃で撹拌する。反応はHPLCでモニターし、2時間以内に完了した。反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中0.1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法5を用いて精製し、44mg(出発化合物B2に基づいて77%)の中間体化合物(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(4-(2-(1-(35-アミノ-3-グリシル-6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-デカメチル-5,8,11,14、17,20,23,26,29,32,35-ウンデカオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27,30,33-ウンデカアザペンタトリアコンチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-1-((((1R,9R)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバモイル)オキシ)エチル)-2-ニトロフェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸を黄色固体として得た。ESI[M+H]=1755.7。HPLC法3の保持時間=7.51分および7.82分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0284】
26.0mg(0.015mmol)のこの化合物および4.11mg(0.016mmol)のマレイミド酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを、無水DMF(0.1M濃度のマレイミド化合物)に溶解した。2.25mg(0.022mmol)のトリエチルアミンを加え、HPLCで反応物の全転化が観察されるまで2時間撹拌した。反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法6を用いて精製し、16.0mg(57%)の化合物DL2を黄色固体として得た。ESI[M+H]=1892.7。HPLC法3の保持時間=7.95分および8.20分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0285】
1.3.1.3)化合物DL3の合成
【0286】
【化30】
【0287】
5.4mg(0.023mmol)の市販の2-(4-(2,5-ジオキソ-2H-ピロール-1(5H)-イル)フェニル)酢酸(CAS#91574-45-7)および9.04mg(0.021mmol)のCOMUを、無水DMF(マレイミド化合物の濃度0.1M濃度)に溶解した。4.75mg(0.067mmol)のトリエチルアミンを加えた。反応物を室温で2分間プレインキュベートし、9.8mg(0.012mmol)の化合物B4(反応バイアル中であらかじめ秤量)上に移した。反応物をHPLCで反応の全転化が観察されるまで30分間撹拌した。反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法5を用いて精製し、4.7mg(40%)の化合物DL3を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1049.2847;Exp[M+H]=1049.2873;Error=-2.5ppm。HPLC法3の保持時間=9.80分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0288】
1.3.1.4)化合物DL4の合成
【0289】
【化31】
【0290】
16.0mg(0.054mmol)のN-(2-アジドエチル)-2-(4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)フェニル)アセトアミド(特許WO2019081455にすでに記載されている手順に従って合成した。-20℃で保存すると数日しか保存できない、かなり不安定な化合物)および22.6(0.027mmol)の化合物B2を、0.060M濃度の化合物B2となるように、100mMのPBS(pH=7.5)とDMSOとが1:1(v/v)である溶液に溶解した。次に、新たに調製したCuSO五水和物およびアスコルビン酸ナトリウム溶液(約250mg/mL)を、0.08モル当量のCuおよび1モル当量のアスコルビン酸ナトリウム(反応混合物中の化合物B2モル当量に基づく)になるように反応バイアルに順次加えた。反応をアルゴンでパージし、室温で撹拌した。反応はHPLCでモニターし、1時間以内に完了した。次いで、反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中0.1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法6を用いて精製し、16mg(53%)の化合物DL4を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1144.3331;Exp[M+H]=1144.3351;Error=-1.8ppm。HPLC法3の保持時間=9.61分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0291】
1.3.1.5)化合物DL5の合成
【0292】
【化32】
【0293】
化合物DL5は、化合物DL1に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A4(NHS-活性化ポリサルコシン中間体)および化合物B3(NH-ペイロード)であった。
【0294】
10.8mg(2工程にわたって48%)の化合物DL5を微黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]3+=765.0460;Exp[M+3H]3+=765.0443;Error=2.2ppm。HPLC法3の保持時間=9.14分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0295】
1.3.1.6)化合物DL6の合成
【0296】
【化33】
【0297】
化合物DL6は、化合物DL2に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A5(アジド-ポリサルコシン中間体)および化合物B1(アルキン-ペイロード)であった。
【0298】
16.3mg(2工程にわたって41%)の化合物DL6を微黄色固体として得た。ESI[M+2H]2+=1159.1。HPLC法3の保持時間=9.32分および9.45分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0299】
1.3.1.7)化合物DL7の合成
【0300】
【化34】
【0301】
化合物DL7は、化合物DL3に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、市販の化合物マレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および化合物B3(NH-ペイロード)であった。
【0302】
15.6mg(69%)の化合物DL7を白色固体として得た。ESI[M+2Na]2+=701.3。HPLC法3の保持時間=10.94分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0303】
1.3.1.8)化合物DL8の合成
【0304】
【化35】
【0305】
15.0mg(0.013mmol)の化合物B1(アルキン-ペイロード)および3.44mg(0.040mmol)の2-アジドエチルアミンを、化合物B1の濃度が0.060Mになるように、100mMのPBS(pH=7.5)とDMSOとが1:1(v/v)である溶液に溶解した。次に、新しく調製したCuSO五水和物およびアスコルビン酸ナトリウム溶液(約250mg/mL)を、0.08モル当量のCuおよび1モル当量のアスコルビン酸ナトリウム(反応混合物中の化合物B1モル当量に基づく)になるように、反応バイアルに順次加えた。反応をアルゴンでパージし、室温で撹拌する。反応はHPLCでモニターし、1時間以内に完了した。反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中0.1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法5を用いて精製し、18.2mg(出発化合物B1に基づき110%)の中間体化合物(2S,3S,4S,5R,6S)-6-(4-((3S,4R,7R,10R)-15-(1-(2-アミノエチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-4-((R)-sec-ブチル)-3-(2-(2-((1S,2S)-3-(((1R,2S)-1-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-2-イル)アミノ)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル)ピロリジン-1-イル)-2-オキソエチル)-7,10-ジイソプロピル-5,11-ジメチル-6,9、12-トリオキソ-2,13-ジオキサ-5,8,11-トリアザペンタデカン-14-イル)-2-ニトロフェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸を白色固体として得た。ESI[M+H]=1213.6。HPLC法2の保持時間=5.55分および5.65分(ジアステレオ異性体混合物)。
【0306】
5.79mg(0.022mmol)の市販のマレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および9.00mg(0.021mmol)のCOMUを、無水DMF(0.1M濃度のマレイミド化合物)に溶解した。6.1mg(0.060mmol)のトリエチルアミンを加えた。反応物を室温で2分間プレインキュベートし、18.2mg(0.012mmol)の前駆化合物(反応バイアル中であらかじめ秤量)上に移した。反応物をHPLCで観察する反応物の全転化が観察されるまで30分間撹拌した。反応混合物を、1:1(v/v)の水/ACN中1%のTFAの溶液で希釈し、HPLC分取法5を用いて精製し、化合物DL8を白色固体として16.0mg(73%)得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=726.8609;Exp[M+2H]2+=726.8631;Error=-3.1ppm。HPLC法3の保持時間=10.40分および10.56分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0307】
1.3.1.9)化合物DL9の合成
【0308】
【化36】
【0309】
化合物DL9は、化合物DL3に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、市販の化合物マレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および化合物B11(NH-ペイロード)であった。
【0310】
10.0mg(41%)の化合物DL9を白色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=685.3549;Exp[M+2H]2+=685.3554;Error=-0.8ppm。HPLC法3の保持時間=11.38分。
【0311】
1.3.1.10)化合物DL10の合成
【0312】
【化37】
【0313】
化合物DL10は、化合物DL1に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A6(NHS-活性化ポリサルコシン中間体)および化合物B4(NH-ペイロード)であった。
【0314】
54.1mg(2工程にわたって44%)の化合物DL10を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=934.8559;Exp[M+2H]2+=934.8545;Error=1.5ppm。HPLC法3の保持時間=7.68分および8.01分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0315】
1.2.1.11)化合物DL10-SおよびDL10-Rの合成
【0316】
【化38】
【0317】
化合物DL10-SおよびDL10-Rは、化合物DL1に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質はそれぞれ、化合物B4-SおよびB4-R(NH-ペイロード)ならびに化合物A6(NHS-活性化ポリサルコシン中間体)であった。
【0318】
4.7mgの化合物DL10-Sを黄色固体として得た。ESI[M+Na]=1890.7。HPLC法3の保持時間=7.62分。
【0319】
4.0mgの化合物DL10-Rを黄色固体として得た。ESI[M+Na]=1890.7。HPLC法3の保持時間=8.06分。
【0320】
1.2.1.12)化合物DL11の合成
【0321】
【化39】
【0322】
化合物DL11は、化合物DL2に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A3(アジド-ポリサルコシン中間体)および化合物B2(アルキン-ペイロード)であった。
【0323】
14.3mg(2工程にわたって43%)の化合物DL11を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=947.3536;Exp[M+2H]2+=947.3540;Error=-0.5ppm。HPLC法3の保持時間=8.13分および8.36分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0324】
1.3.2)ジペプチドベースの薬物リンカーの合成
1.3.2.1)化合物DL12の合成
【0325】
【化40】
【0326】
化合物DL12は、化合物DL1に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A7(NHS-活性化ポリサルコシン中間体)および化合物B8(NH-ペイロード)であった。
【0327】
34.9mg(2工程にわたって46%)の化合物DL12を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=981.4394;Exp[M+2H]2+=981.4398;Error=-0.4ppm。HPLC法3の保持時間=8.81分および8.94分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0328】
1.3.2.2)化合物DL12-SおよびDL12-Rの合成
【0329】
【化41】
【0330】
化合物DL12-SおよびDL12-Rは、化合物DL1に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質はそれぞれ、化合物B8-SおよびB8-R(NH-ペイロード)ならびに化合物A7(NHS-活性化ポリサルコシン中間体)であった。
【0331】
18.1mgの化合物DL12-Sを黄色固体として得た。ESI[M+2H]2+=981.4。HPLC法3の保持時間=8.78分。
【0332】
16.3mgの化合物DL12-Rを黄色固体として得た。ESI[M+2H]2+=981.4。HPLC法3の保持時間=8.96分。
【0333】
1.3.2.3)化合物DL13の合成
【0334】
【化42】
【0335】
化合物DL13は、化合物DL2に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A8(アジド-ポリサルコシン中間体)および化合物B6(アルキン-ペイロード)であった。
【0336】
4.5mg(2工程にわたって24%)の化合物DL13を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+2H]2+=993.4451;Exp[M+2H]2+=993.4416;Error=3.5ppm。HPLC法3の保持時間=8.88分および9.11分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0337】
1.3.2.4)化合物DL14の合成
【0338】
【化43】
【0339】
化合物DL14は、化合物DL3に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、市販の化合物マレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および化合物B8(NH-ペイロード)であった。
【0340】
7.0mg(59%)の化合物DL14を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1065.4364;Exp[M+H]=1065.4370;Error=-0.5ppm。HPLC法3の保持時間=10.20分および10.44分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0341】
1.3.2.5)化合物DL15の合成
【0342】
【化44】
【0343】
化合物DL15は、化合物DL8で用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。
【0344】
3.1mg(2工程にわたって20%)の化合物DL15を黄色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1160.4848;Exp[M+H]=1160.4854;Error=-0.6ppm。HPLC法3の保持時間=9.96分および10.12分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0345】
1.3.2.6)化合物DL16の合成
【0346】
【化45】
【0347】
化合物DL16は、化合物DL3に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、市販の化合物マレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および化合物B7(NH-ペイロード)であった。
【0348】
5.3mg(41%)の化合物DL16を白色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+Na]=1369.7618;Exp[M+Na]=1369.7621;Error=-0.3ppm。HPLC法3の保持時間=11.38分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0349】
1.3.2.7)化合物DL17の合成
【0350】
【化46】
【0351】
化合物DL17は、化合物DL8に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。
【0352】
8.9mg(2工程にわたって24%)の化合物DL17を白色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1442.8294;Exp[M+H]=1442.8284;Error=0.7ppm。HPLC法3の保持時間=11.81分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0353】
1.3.2.8)化合物DL18の合成
【0354】
【化47】
【0355】
化合物DL18は、化合物DL3に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、市販の化合物マレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および化合物B10(NH-ペイロード)であった。
【0356】
14.5mg(62%)の化合物DL18を黄色固体として得た。ESI[M+H]=994.4。HPLC法3の保持時間=11.62分。
【0357】
1.3.2.9)化合物DL19の合成
【0358】
【化48】
【0359】
化合物DL19は、化合物DL3に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、市販の化合物マレイミド-PEG-酸(CAS#1374666-32-6)および化合物B9(NH-ペイロード)であった。
【0360】
4.7mg(35%)の化合物DL19を白色固体として得た。HRMSm/z(ESI):Calc[M+H]=1276.7439;Exp[M+H]=1276.7441;Error=-0.1ppm。HPLC法3の保持時間=13.28分。
【0361】
1.3.2.10)化合物DL20の合成
【0362】
【化49】
【0363】
化合物DL20は、化合物DL2に用いた手順と同じ手順で、上記のように合成した。出発物質は、化合物A3(アジド-ポリサルコシン中間体)および化合物B6(アルキン-ペイロード)であった。
【0364】
14.0mg(2工程にわたって36%)の化合物DL20を黄色固体として得た。ESI[M+H]=1883.8。HPLC法3の保持時間=8.82分および9.07分(等モルジアステレオ異性体混合物)。
【0365】
2)コンジュゲートの調製および特性評価
2.1)抗体-薬物コンジュゲートの調製
抗体の溶液(10mg/mLのPBS7.4+1mMのEDTA)を、14モル当量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を用いて37℃で2時間処理した。完全に還元された抗体を、Amicon30K遠心フィルター装置(Millipore)を用いて希釈/遠心を3回繰り返し、リン酸カリウム100mM pH7.4+1mMのEDTAを用いて緩衝液交換した。薬物抗体比(DAR)が8になるように、10~12モル当量の薬物リンカー(12mMのDMSOストック溶液から)を抗体に添加した(残留DMSO<10%v/v)。溶液を室温で30分間インキュベートした。コンジュゲートを、Amicon30K遠心フィルター装置を用いて希釈/遠心を4回繰り返すことによって、PBS pH7.4で緩衝液の交換/精製し、無菌ろ過した(0.20μmPESフィルター)。
【0366】
自己加水分解性マレイミド(マレイミド-フェニルおよびマレイミド-グリシン)を組み込んだコンジュゲートを、PBS8.0中5mg/mLで37℃にて24時間インキュベートして、スクシンイミジル部分の完全な加水分解を確実にし、Amicon30K遠心フィルター装置を用いてPBS pH7.4で緩衝液交換し、滅菌ろ過した(0.20μmPESフィルター)。
【0367】
最終タンパク質濃度は、Colibri微量分光計装置(Titertek Berthold)を用いて、280nmで、分光光度法で評価した。
【0368】
2.2)コンジュゲートの特性評価
得られたコンジュゲートは、以下の通りに特徴付けられた:
逆相液体クロマトグラフィー質量分光分析(RPLC-MS):
変性RPLC-QToF分析は、上述のUHPLC法4を用いて行った。簡単に説明すると、水/アセトニトリル+0.1%ギ酸の移動相勾配(0.4mL/分)を用いて、コンジュゲートをAgilent PLRP-S 1000A 2.1×150mm 8μm(80℃)で溶出し、Bruker Impact II(商標)Q-ToF質量分析計を用いて、500~3500m/z範囲(ESI)をスキャンして検出した。データはBruker Compass(登録商標)ソフトウェアに含まれるMaxEntアルゴリズムを用いてデコンボリューションした。
【0369】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):
SECは、Agilent1100HPLCシステムのエクストラカラム容量15μL以下(内径0.12mmのピークチューブの短いセクションおよびマイクロボリュームのUVフローセルを装備)で行った。カラムはAgilent AdvanceBioSEC 300A 4.6×150mm 2.7μm(30℃で維持)であった。移動相は100mMリン酸ナトリウムおよび200mM塩化ナトリウム(pH6.8)であった。10%アセトニトリル(v/v)を移動相に加え、固定相との二次的な疎水性相互作用を最小限に抑え、細菌の増殖を防止した。流速は0.35mL/分であった。UV検出は280nmでモニターした。
【0370】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC):
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、Agilent 1100HPLC システムで行った。カラムは、Tosoh TSK-GEL BUTYL-NPR 4.6×35mm 2.5μm(25℃)であった。移動相Aは、1.5M(NHSO+25mMリン酸カリウムpH7.0であった。移動相Bは、25mMリン酸カリウムpH7.0+15%イソプロパノール(v/v)であった。直線勾配は0%B~100%Bで10分間であり、その後100%Bで3分間保持した。流速は0.75mL/分であった。UV検出は220nmおよび280nmでモニターした。
【0371】
2.3)合成したコンジュゲートの概要
抗体-薬物コンジュゲートは、変性RPLCクロマトグラムで、1つのLC-1d(薬物リンカーが1つ結合した軽鎖)と、1つのHC-3d(薬物リンカーが3つ結合した重鎖)との吸光度ピークを示した(DAR8コンジュゲート)。重鎖の質量分光分析では、主要なグリコフォームが報告された(トラスツズマブはG0F)。
【0372】
【表2】
【0373】
3)抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)プロファイル
コンジュゲートの見かけの疎水性は、節2に記載の方法に従い、Tosoh TSK-GEL BUTYL-NPRカラムを用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって評価した。
【0374】
結果を、本発明のグリコシダーゼベースの薬物リンカー(オクトパミンアーキテクチャ)については図1に、本発明のジペプチダーゼベースの薬物リンカー(2-アミノ-1-(4-アミノフェニル)エタン-1-オールアーキテクチャ)については図2に示す。本発明のコンジュゲートは、既知の対応するアーキテクチャと比較して、系統的により親水性であった(HICクロマトグラムにおける保持時間がより短い)。この効果は、グリコシダーゼベースの薬物リンカーおよびジペプチダーゼベースの薬物リンカーで観察される。この効果は、薬物リンカーアーキテクチャの疎水性マスキング物質であるポリサルコシンの有無にかかわらず観察される。この効果は、異なる性質および異なるレベルの固有疎水性を持つ薬物ペイロードで観察される。
【0375】
4)本発明の薬物リンカーに基づくコンジュゲートおよび既知のアーキテクチャの薬物リンカーに基づくコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイ
いくつかの抗原陽性癌細胞株について、コンジュゲートのin vitro細胞毒性を評価した。細胞を96ウェルプレートに、細胞株に応じて適切な密度(100μLの適切な培地に1000~10000細胞/ウェル)でプレーティングし、37℃で24時間インキュベートした。あらかじめ培地に溶解した試験化合物の連続希釈液(50μL)を加え、MMAEベースのコンジュゲートでは72時間、エキサテカンベースのコンジュゲートでは144時間、37℃でインキュベートした。MTT(5mg/mL、20μL、Sigma-Aldrich)をウェルに添加し、37℃で1~2時間インキュベートを続けた。その後、培地を注意深く除去し、ウェルの内容物を酸性化イソプロパノールで均一に溶解した。吸光度値は、Multiskan(商標)スカイマイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)を用い、波長570nm(基準波長690nm)で測定した。未処理のコントロール細胞と比較したIC50濃度値は、阻害用量反応曲線フィッティング(GraphPad Prism 9)を用いて決定した。
【0376】
結果を、グリコシダーゼ感受性薬物リンカーに基づくコンジュゲートについては図3に、ジペプチダーゼ感受性薬物リンカーに基づくコンジュゲートについては図4に示す。本発明のコンジュゲート(オクトパミンおよび2-アミノ-1-(4-アミノフェニル)エタン-1-オールアーキテクチャ)は、既知の対応するアーキテクチャと比較して、系統的に同様の効力を示した。
【0377】
5)本発明のDL10薬物リンカー(等モルジアステレオ異性体混合物)、本発明の立体定義DL10-S薬物リンカーおよび本発明の立体定義DL10-R薬物リンカーに基づくコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイ
コンジュゲートのin vitro細胞毒性は、上記節4)の実験プロトコールに従って、いくつかの抗原陽性癌細胞株を評価した。
【0378】
結果を図5に示す。立体純度の高い薬物リンカーと同じ薬物リンカーの等モルジアステレオ異性体混合物との間にin vitroでの効力差は観察されなかった。
【0379】
6)3mg/kgのコンジュゲートを単回静脈内投与したラットの薬物動態プロファイル(全抗体-薬物コンジュゲート濃度の経時的変化)
メスのSprague-Dawleyラット(4~6週齢-Charles River)に、尾静脈からADCを3mg/kg注射した(1群につき3匹、無作為割付け)。様々な時点で眼窩後出血によってクエン酸塩チューブに採血し、血漿に処理し、分析まで-80℃で保存した。ADC濃度は、ヒトIgG ELISAキット(Stemcell(商標)Technologies)を用いて、製造業者のプロトコールに従って評価した。定量には対応するモノクローナル抗体の標準曲線を用いた。薬物動態パラメータ(クリアランス、半減期およびAUC)は、PK関数を組み込んだMicrosoft(登録商標)Excel(登録商標)ソフトウェア(Usanskyらにより開発されたアドイン、薬物動態および薬物代謝の部門,Allergan,Irvine,米国)を用いた2-コンパートメント解析によって算出した。
【0380】
結果を、グリコシダーゼ感受性薬物リンカーに基づくコンジュゲートについては図6(PKプロファイル)および図7(PKパラメーター)に、ジペプチダーゼ感受性薬物リンカーに基づくコンジュゲートについては図8(PKプロファイル)および図9(PKパラメーター)に示す。本発明のコンジュゲート(オクトパミンおよび2-アミノ-1-(4-アミノフェニル)エタン-1-オールアーキテクチャ)は、既知の対応するアーキテクチャと比較して、改善された薬物動態プロファイルおよび薬物動態パラメータ(改善した曝露、増大した半減期および減少したクリアランス速度)を系統的にもたらした。
【0381】
7)NCI-N87 HER2+胃癌異種移植モデルにおいて、ADC110コンジュゲート(グルクロニド-エキサテカンペイロードを有する本発明のオクトパミンアーキテクチャ)およびADC112コンジュゲート(グルクロニド-エキサテカンペイロードを有するトリアゾールアーキテクチャ)を、1mg/kgで1回静脈内投与した際の腫瘍体積(mm)の経時的変化。
【0382】
NCI-N87胃癌細胞を、雌性SCIDマウス(4週齢)に皮下移植した。ADCは、腫瘍が約150mmまで成長した時点で、1mg/kgの亜臨界用量を1回静脈内投与した(各群6匹、群間の初期腫瘍体積の差を最小にするように割り付けた)。腫瘍体積はキャリパー装置で3~5日ごとに測定し、式(L×W)/2を用いて算出した。腫瘍体積が1000mmを超えた時点でマウスを犠牲にした。
【0383】
結果を図10に示す。本発明のオクトパミンアーキテクチャに基づくコンジュゲートADC110は、トリアゾールアーキテクチャに基づくコンジュゲートADC112と比較して、改善されたin vivo活性を示した。全ての処置したマウスにおいて有意な体重減少は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0384】
図1図1は、実施例3による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
図2図2は、実施例3による疎水性相互作用クロマトグラムを表す。
図3-1】図3は、実施例4によるコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイを表す。
図3-2】図3の続き。
図3-3】図3の続き。
図4-1】図4は、実施例4によるコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイを表す。
図4-2】図4の続き。
図4-3】図4の続き。
図5図5は、実施例5によるコンジュゲートのin vitro細胞毒性アッセイを表す。
図6図6は、ラットにおけるin vivo薬物動態プロファイルおよび実施例6による薬物動態パラメータを表す。
図7図7は、ラットにおけるin vivo薬物動態プロファイルおよび実施例6による薬物動態パラメータを表す。
図8図8は、ラットにおけるin vivo薬物動態プロファイルおよび実施例6による薬物動態パラメータを表す。
図9図9は、ラットにおけるin vivo薬物動態プロファイルおよび実施例6による薬物動態パラメータを表す。
図10図10は、実施例7による胃癌のマウス異種移植モデルにおける経時的な腫瘍体積を表す。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】