(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】耐久性を有する歯科補綴および修復物のための光重合性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/887 20200101AFI20240313BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20240313BHJP
【FI】
A61K6/887
A61K6/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559770
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 US2022021941
(87)【国際公開番号】W WO2022204510
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517264281
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サン,ベンジャミン ジェー
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA02
4C089AA06
4C089BC12
4C089BD02
4C089BD04
4C089BD05
4C089BE03
(57)【要約】
本発明は、耐久性を有する歯科補綴および修復物を作製するのに適した光重合性樹脂組成物に関する。特に本発明は、複数の重合性成分、1種以上の樹脂改質粒子成分および1種以上の光重合開始剤成分の特定の組み合わせからなる光重合性樹脂組成物に関する。本発明の組成物は、効率的かつ信頼できる方法において付加製造システムおよび方法(例えば3次元(3D)印刷)を用いて、人工歯、クラウン、ブリッジ、インレー、アンレーおよびベニアなどの耐久性、耐汚染性および耐摩耗性を有する歯科補綴および修復物を作製するのに特によく適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科補綴および/または修復物の作製および/または修復のための光重合性樹脂組成物であって、
(a)少なくとも約45重量%の1種以上の第1の重合性アクリル系化合物であって、以下の式:
【化1】
(式中、
Xは酸素、窒素またはNR
1であり、式中、
R
1は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
R
2、R
3、R
4およびR
5は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
YはC1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
AおよびBは互いに独立しては以下の式:
【化2】
のうちの1つを表し、
式中、
R
6およびR
7は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
8およびR
9はC1~C12二官能性アルキレン、C1~C12アルキル基、C6~C12環式基、C1~C12環式アルキル基、C6~C12芳香族基、C1~C12芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
10は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
11はC1~C14二官能性アルキレン、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせを表し、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、かつ
R
12はC1~C8三官能性アルキル基を表し、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよい)
のうちの1つを特徴とする1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのウレタンジもしくはマルチ(メタ)アクリレート誘導体である1種以上の第1の重合性アクリル系化合物と、
(b)前記第1の重合性アクリル系化合物とは異なる少なくとも約15重量%の1種以上の第2の重合性アクリル系化合物と、
(c)少なくとも約2重量%の1種以上の第3の重合性アクリル系化合物であって、ウレタンプレオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーとの反応によって調製されるメタクリレートまたはアクリレート化合物である1種以上の第3の重合性アクリル系化合物と、
(d)少なくとも約2重量%の1種以上の樹脂改質粒子と、
(e)少なくとも約0.1重量%の1種以上の光重合開始剤と
を含み、ここでは前記組成物全体は100重量%を超えない組成物。
【請求項2】
前記1種以上の第3の重合性アクリル系化合物は、ジイソシアネートでエンドキャップされたプレオリゴマー中間体化合物と1種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物との反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジイソシアネートでエンドキャップされたプレオリゴマー中間体化合物は、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサンとビスフェノールAプロポキシレートとの反応生成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
第1の重合性アクリル系化合物(AC
1)と第3の重合性アクリル系化合物(AC
3)との重量比、すなわちAC
1:AC
3は約5:1~約20:1の範囲内である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は約75重量%以下の前記1種以上の第1の重合性アクリル系化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は約45重量%以下の前記1種以上の第2の重合性アクリル系化合物を含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は約20重量%以下の前記1種以上の第3の重合性アクリル系化合物を含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は約18重量%以下の前記1種以上の樹脂改質粒子を含む、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は約10重量%以下の前記1種以上の光重合開始剤を含む、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記1種以上の樹脂改質粒子は有機材料または有機-無機ハイブリッド材料からなる、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記1種以上の樹脂改質粒子は有機コアシェル耐衝撃性改良剤および有機-無機ハイブリッドコアシェル耐衝撃性改良剤からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも約0.01重量%であって約0.5重量%以下の1種以上の重合阻害剤をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記光重合性樹脂組成物はその未硬化流体形態において25℃で約50,000cP(50Pa-s)以下の粘度を有する、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約90MPaの曲げ応力値を有する、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約2300MPaの曲げ弾性率値を有する、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約0.90MPa-m
1/2の破壊靱性値(K
max)を有する、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約90J/m
2の破壊仕事値(W
f)を有する、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記光重合性樹脂組成物は、インビトロ局部摩耗方法に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において約0.15mm
3以下の局部摩耗量損失を有する、請求項1~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約90MPaの曲げ応力値、少なくとも約2300MPaの曲げ弾性率値、少なくとも約0.90MPa-m
1/2の破壊靱性値(K
max)、および少なくとも約90J/m
2の破壊仕事値(W
f)を有する、請求項1~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記光重合性樹脂組成物は、インビトロ局部摩耗方法に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において約0.15mm
3以下の局部摩耗量損失を有する、請求項19に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年3月26日に出願された米国非仮出願第17/213,642号の利益および優先権を主張するものであり、これは全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特に人工歯、クラウン、ブリッジ、インレー、アンレーおよびベニアとしての長期使用のための歯科補綴および修復物を作製および/または修復するのに適した光重合性樹脂組成物に関する。特に本発明は、付加製造システムおよび方法(例えば3次元(3D)印刷)を用いて効率的に作製することができる、耐久性および耐汚染性を有する歯科補綴および修復物を作製するのに特によく適している光重合性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
総義歯および/または部分義歯などの取外し可能な補綴歯科装置の作製あるいはクラウン、ブリッジ、インレー、アンレーまたはベニアなどの人工歯および固定される修復歯科物品の作製において、様々な種類の材料が長年開発および調査されてきた。費用対効果が高い方法での天然歯列の修復または置換のために、機能的および審美的性能の必要性の両方を満たすことができる材料を特定することに努力が向けられてきた。一般にそのような種類の材料は通常、合金、セラミックスまたはガラスセラミックス、レジン添加型セラミックス、ポリマー樹脂混合物および/または複合樹脂混合物(例えば、セラミックまたは他の無機粒子で強化されたポリマー樹脂)の中から選択されてきた。任意の所与の補綴もしくは修復物のための材料選択は、自身の患者との診察において歯科専門家による様々な考慮事項(外観/品質、耐久性、信頼性および作製コストなど)によって決まることが多い。
【0004】
いくつかのポリマー樹脂および/または複合樹脂組成物はそれらの汎用性(製造および使用の両方において)、生体適合性および相対的費用対効果の高さにより、特に耐久性を有し、かつこれらの用途によく適していることが分かっている。歴史的に、これらの組成物から作られている人工歯および/または修復歯科物品は従来より、いくつかのバージョンの直接鋳造もしくは射出成形プロセスまたはCNC(コンピュータ数値制御)切削プロセスのいずれかによって作製されてきた。
【0005】
直接鋳造もしくは射出成形プロセスを用いて作製される歯または修復歯科物品のために、未硬化もしくは部分硬化(例えば流動形態、液体、ペースト状またはゲル)ポリマー樹脂もしくは複合樹脂組成物を予め決定された形状の既成のモールドの中に鋳込み、押し付けまたは射出してもよい。この後に制御された熱および/または光処理を何回かを行って既成のモールド内での組成物の最終硬化を引き起こす。しかし鋳造もしくは射出成形プロセスには、成形プロセスを完了するために必要とされる多くの時間、労力および材料という不都合または欠点が存在する。さらに、異なる患者の必要性に応じて多様な範囲の歯または修復サイズに対応するために予め決定された形状の既成のモールドに対する信頼性にもさらなる欠点が存在する。特にこれは、作製のために異なるモールドのかなりの在庫が常に利用可能であるようにするために、作製および維持/交換にかなりのコストおよび時間の投入を必要とすることが多い。
【0006】
CNC切削プロセスを用いて作製される歯または修復歯科物品のための一般的な手法は、円形ディスク、ブランクまたは「パック」の形状に固体の形態で既に完全に硬化されたポリマー樹脂もしくは複合樹脂組成物を使用することである。ディスクから/内での複数の歯(前歯および/または臼歯の形態)または修復物(例えばクラウン、ブリッジ)の除去形成に対応するのに十分な直径および厚さのそのような硬化樹脂ディスクが提供されている。CNC機械加工ツールと共にCAD/CAM(コンピュータ支援設計/コンピュータ支援製造)ソフトウェアを用いて、複数の歯または修復物を非常に正確であって信頼できる方法でこれらの硬化樹脂ディスクから切り出すことができる。しかしCNC切削プロセスもいくつかの不都合または欠点を有する。1つには、この手法は大きい標準化された既成のディスクの機械加工を必要とし(小さい歯から大きい歯までの全範囲のサイズに対応するため)、それが樹脂材料または作製時間のいずれかの最も効率的な使用ではない多くの例が存在する。例えば義歯補綴物のために、あるいは患者の歯列を修復するために数本の歯のみまたは比較的小さい寸法を有する修復物が必要とされる状況では、かなりの量の材料をこれらのディスクから除去するか切り出さなければならない。これらの材料除去は容易に開始樹脂ディスク全体の90%以上になり得る。結果として、これによりCNC切削装置にとって非常に時間がかかる処理時間となる可能性がある。さらに、切削ヘッドはブランクの処理中に摩耗しやすいため切削ツールの摩耗の程度は比較的高く、従って切削ツールを定期的に交換しなければならない。さらに切削された材料(切削物)を廃棄またはリサイクルしなければならない。
【0007】
より最近では、これらの付加製造プロセスのために開発された装置/システムおよび材料の両方において、付加製造(AM)技術(3次元(3D)印刷としても知られている)の開発にかなりの進歩がみられる。これらの技術進歩により現在では、複雑な3D物体のより限られた範囲の単なる「ラピッドプロトタイピング」から、持続使用用途において重要な機能的性能を必要とする物体のためのより広範囲の信頼できる「迅速作製」への移行がさらに可能になっている。従って、付加製造による機能上信頼できる高品質の歯科物品の効率的な「迅速作製」は、補綴歯科治療のためのより達成可能な有望な方法になりつつある。特に光重合性流体樹脂組成物を調製し、かつSLAまたはDLPベースのAMシステム(「バット光重合」)などのプログラム可能なデジタル制御される光硬化システム、および/または材料噴射システム(例えば、インクジェット、MultiJet/PolyJet印刷システム)の中に充填することができ、ここではカスタムすなわち注文品の義歯ベース、人工歯および/または他の歯科修復物の仮想の設計を漸進的交互積層、液滴もしくは連続光硬化方法で形成することができる。しかし光重合性組成物に関しては、そのような長期使用歯科物品を作製するために使用される組成物の化学的および/または物理的特性は不十分なままである。より具体的には、有利な「印刷適性」挙動(例えば、効率的な交互積層または連続印刷/構築速度のための良好な相対的流動挙動、光硬化容易性、または効率のための十分な光反応性および/または一貫した寸法正確性/硬化時の完全性)を有すると共に、様々な望ましい最終硬化物体特性(例えば、高い耐久性のための強度、靱性および/または耐摩耗性および長期信頼性、生体適合性、耐汚染性、半透明性など)を与えることもできる流体樹脂組成物を確立するには、多くのトレードオフおよび課題が存在する。
【0008】
上記理由のために、人工歯および/または歯科修復物(クラウン、ブリッジ、インレー、アンレーおよびベニアなど)、特に口腔内での長期使用を目的としたものを効率的かつ信頼できる方法で3D印刷するための必要性を満たすように配合された流体樹脂組成物を提供することが求められている。従って特によく適し、かつ従来のポリマーの予め成形されたかCNC切削された選択肢の有効な代替物として汎用的かつ3D印刷可能な人工歯および/または歯科修復選択肢を提供するように設計された流体樹脂組成物を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、特に付加製造システムおよび方法を用いて調製する場合の歯科補綴および/または修復物の作製および/または修復のための光重合性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、光重合性組成物は、
(a)少なくとも約45重量%の1種以上の第1の重合性アクリル系化合物であって、以下の式:
【化1】
(式中、
Xは酸素、窒素またはNR
1であり、式中、
R
1は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
R
2、R
3、R
4およびR
5は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
YはC1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
AおよびBは互いに独立しては以下の式:
【化2】
のうちの1つを表し、
式中、
R
6およびR
7は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
8およびR
9はC1~C12二官能性アルキレン、C1~C12アルキル基、C6~C12環式基、C1~C12環式アルキル基、C6~C12芳香族基、C1~C12芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
10は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
11はC1~C14二官能性アルキレン、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせを表し、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、かつ
R
12はC1~C8三官能性アルキル基を表し、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよい)
のうちの1つを特徴とする1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのウレタンジもしくはマルチ(メタ)アクリレート誘導体である1種以上の第1の重合性アクリル系化合物と、
(b)第1の重合性アクリル系化合物とは異なる少なくとも約15重量%の1種以上の第2の重合性アクリル系化合物と、
(c)少なくとも約2重量%の1種以上の第3の重合性アクリル系化合物であって、ウレタンプレオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーとの反応によって調製されるメタクリレートまたはアクリレート化合物である1種以上の第3の重合性アクリル系化合物と、
(d)少なくとも約2重量%の1種以上の樹脂改質粒子と、
(e)少なくとも約0.1重量%の1種以上の光重合開始剤と
を含んでいてもよく、ここでは本組成物全体は100重量%を超えない。
【0011】
本発明の別の態様では、光重合性樹脂組成物の1種以上の第3の重合性アクリル系化合物は、ジイソシアネートでエンドキャップされたプレオリゴマー中間体化合物と1種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物との反応生成物であってもよい。
【0012】
本発明のさらなる態様では、ジイソシアネートでエンドキャップされたプレオリゴマー中間体化合物は、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサンとビスフェノールAプロポキシレートとの反応生成物であってもよい。
【0013】
一実施形態では、第1の重合性アクリル系化合物(AC1)と第3の重合性アクリル系化合物(AC3)との重量比、すなわちAC1:AC3は約5:1~約20:1の範囲内であってもよい。
【0014】
別の実施形態では、光重合性樹脂組成物の1種以上の樹脂改質粒子は、有機材料または有機-無機ハイブリッド材料からなっていてもよい。
【0015】
さらなる実施形態では、光重合性樹脂組成物の1種以上の樹脂改質粒子は、有機コアシェル耐衝撃性改良剤および有機-無機ハイブリッドコアシェル耐衝撃性改良剤からなる群から選択されてもよい。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、光重合性樹脂組成物はその未硬化流体形態において25℃で約50,000cP(50Pa-s)以下の粘度を有していてもよい。
【0017】
別の実施形態では、本発明の光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約90MPaの曲げ応力値を有していてもよい。
【0018】
さらに別の実施形態では、本発明の光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約2300MPaの曲げ弾性率値を有していてもよい。
【0019】
さらに別の実施形態では、本発明の光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約0.90MPa-m1/2の破壊靱性値(Kmax)を有していてもよい。
【0020】
さらに別の実施形態では、本発明の光重合性樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において少なくとも約90J/m2の破壊仕事値(Wf)を有していてもよい。
【0021】
さらに別の実施形態では、本発明の光重合性樹脂組成物は、インビトロ局部摩耗方法に従って調製され、かつ次いで測定される付加的に製造された棒状試験片を用いた場合に、その硬化固体形態において約0.15mm3以下の局部摩耗量損失を有していてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記概要ならびに以下に提供されている詳細な説明および特許請求の範囲では、本発明の特定の特徴および実施形態を参照する。当然のことながら、本明細書における本発明の開示はそのような特定の特徴の全ての可能な組み合わせを含む。例えば、本発明の特定の態様または実施形態あるいは特定の請求項の文脈において特定の特徴が開示されている場合、その特徴を可能な程度まで、本発明の他の特定の態様および実施形態との組み合わせおよび/またはそれらの文脈および本発明全般において使用することもできる。
【0023】
以下のさらなる定義は、特に具体的に指示がない限り本明細書および本発明の請求の範囲全体にわたって適用される。
【0024】
「約」という用語は、指定されている値の±5%、指定されている値の好ましくは±3%、より好ましくは指定されている値の±1%を意味するための近似の用語として本明細書で使用される。
【0025】
「本質的に」および「実質的に」という用語は、記載されている基本的な性質または主な特徴に関連して、大部分であるが必ずしも全体または完全ではないことを意味するための近似の用語として本明細書で使用される。
【0026】
その後に数が続く「少なくとも」という用語は、その数で始まる範囲の開始を示すために本明細書で使用される(これは定められている変数に応じて上限を有する範囲または有しない範囲であってもよい)。例えば、「少なくとも1つ(種)」は1または2つ(種)以上を意味する。
【0027】
その後に数が続く「多くとも」または「以下」という用語は、その数で終わる範囲の終了を示すために本明細書で使用される(これは定められている変数に応じてその下限として1または0を有する範囲または下限を有しない範囲であってもよい)。例えば、「多くとも100」または「100以下」は100または100未満を意味する。本明細書において、「(第1の数)から(第2の数)」または「(第1の数)~(第2の数)」として範囲が与えられてる場合、これはその下限が第1の数であり、かつその上限が第2の数である範囲を意味する。例えば、1~5mmはその下限が1mmであり、かつその上限が5mmである範囲を意味する。
【0028】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連する列挙されている項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに二者択一(「または」)で解釈される場合には組み合わせの欠如を含む。例えば「Aおよび/またはB」はAのみ、BのみまたはAおよびBの両方、すなわちそれらの混合物を意味する。
【0029】
本明細書において提供されている記載は、特に人工歯、クラウン、ブリッジ、インレー、アンレーおよびベニアとしての長期使用のための歯の修復および補綴物品を作製および/または修復することに適した改良された光重合性樹脂組成物の説明および具体例を提供する。本発明の1つ以上の実施形態に係る光重合性樹脂組成物は複数の重合性成分、1種以上の樹脂改質粒子成分および1種以上の光重合開始剤成分の特定の組み合わせを含んでいてもよい。これらの成分のそれぞれのための特定の態様または特徴の開示は、以下の明細書および特許請求の範囲において提供されている。
【0030】
重合性成分
本発明の組成物は重合性成分の組み合わせを含む。一実施形態では、本組成物は、(a)(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのウレタンジ(メタ)アクリレートまたはマルチ(メタ)アクリレート誘導体である1種以上の第1の重合性アクリル系化合物、(b)1種以上の第1の重合性アクリル系化合物とは異なる1種以上の第2の重合性アクリル系化合物、および(c)はウレタンプレオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーとの反応によって調製されるメタクリレートまたはアクリレート化合物である1種以上の第3の重合性アクリル系化合物を含んでいてもよい。
【0031】
一実施形態では、本組成物に含まれている第1および第3の重合性アクリル系化合物の組み合わせは、本組成物全体の少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約55重量%であって約80重量%以下、好ましくは約75重量%以下であってもよい。
【0032】
別の実施形態では、本組成物に含まれている第1、第2および第3の重合性アクリル系化合物の組み合わせは、本組成物全体の少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約75重量%であって約97重量%以下、好ましくは約95重量%以下であってもよい。
【0033】
第1の重合性アクリル系化合物
本発明の組成物は、以下に記載されている1種以上の第1の重合性アクリル系化合物を含む。特に本発明の1種以上の第1の重合性アクリル系化合物は、本組成物全体の少なくとも約45重量%、好ましくは少なくとも約50重量%の量で含まれていてもよい。一実施形態では、1種以上の第1の重合性アクリル系化合物は本組成物全体の約75重量%以下、好ましくは約70%以下の量で含まれていてもよい。少なくとも約45重量%の第1の重合性アクリル系化合物を本発明の組成物に含めることにより、特に人工歯、クラウンおよびブリッジなどとしての長期使用のための歯の修復および補綴物品によく適している特に望ましいレベルの最終硬化樹脂の強度、靱性および/または摩耗特性値を達成することができることが認められた。
【0034】
好ましくは、1種以上の第1の重合性アクリル系化合物は、以下の式:
【化3】
のうちの1つを特徴とする化合物から選択されてもよい、(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのウレタンジ(メタ)アクリレート誘導体(例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)であり、
式中、
Xは酸素、窒素またはNR
1であり、式中、R
1は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
R
2、R
3、R
4およびR
5は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、
YはC1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、Yの例としては1,3-シクロヘキサンジメチレン、1,4-シクロヘキサンジメチレンが挙げられ、あるいはそうでなければ、
AおよびBは互いに独立して、
【化4】
を表し、
式中、
R
6およびR
7は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
8およびR
9はC1~C12二官能性アルキレン、C1~C12アルキル基、C6~C12環式基、C1~C12環式アルキル基、C6~C12芳香族基、C1~C12芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
10は水素、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせであり、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、
R
11はC1~C14二官能性アルキレン、C1~C14アルキル基、C6~C14環式基、C1~C14環式アルキル基、C6~C14芳香族基、C1~C14芳香族アルキル基またはそれらの任意の組み合わせを表し、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよく、かつ
R
12はC1~C8三官能性アルキル基を表し、これらは酸素、硫黄またはそれ以外の原子によって中断されていてもよい。
【0035】
A、B、X、Y、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12またはそれらの任意の組み合わせがさらに挿入されていてもよく、あるいは置換されていても置換されていなくてもよいことが考えられる。挿入または置換されている場合、可能な置換基としては、限定されるものではないが、ハロゲン、O、S、NH、CO-NH、NH-CO、NH-CO-O、O-CO-NH、NH-CO-NH、-OCH3、-OH、-CN、-NO2、-COOH、-COOCH3基またはそれらの任意の組み合わせのうちの1種以上が挙げられるが必須ではない。
【0036】
さらに、その中のAおよびBが同じ意味を有するウレタンジ(メタ)アクリレート誘導体が好ましい。
【0037】
特に好ましい非限定的なウレタンジ(メタ)アクリレート誘導体としては以下が挙げられる。
【化5】
【0038】
他の特に好ましいウレタンジ(メタ)アクリレート誘導体としては以下が挙げられる。
【化6】
【0039】
本発明に係るウレタンジ(メタ)アクリレート誘導体は、以下の実施例1~6に開示されているように調製することができる。
【0040】
第2の重合性アクリル系化合物
本発明の組成物は、第1の重合性アクリル系化合物とは異なる1種以上の第2の重合性アクリル系化合物をさらに含んでいてもよい。特に本発明のこれらの1種以上の第2の重合性アクリル系化合物は、本組成物全体の少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%の量で含まれていてもよい。一実施形態では、1種以上の第2の重合性アクリル系化合物は本組成物全体の約45%重量以下、好ましくは約40重量%以下の量で含まれていてもよい。本発明の第2の重合性アクリル系化合物は、第1の重合性アクリル系化合物とフリーラジカル重合することができるエチレン性不飽和モノマーであってもよく、かつ以下で考察されている重合性アクリル系化合物の任意の組み合わせを含んでいてもよい。これらの第2の重合性アクリル系化合物の1種以上を選択し、かつ単独および/または異なる組み合わせおよび割合で使用して流体樹脂組成物および/または最終硬化樹脂組成物の様々な所望の特性を修正してもよい。そのような特性としては、流体樹脂粘度、熱安定性、重合率、硬化樹脂の機械的強度/靱性および柔軟性、硬化樹脂の寸法完全性(例えば低い収縮率)、生体適合性、耐汚染性、色および半透明性が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物に使用することができる1種以上の第2の重合性アクリル系化合物としては、限定されるものではないが、モノ、ジもしくはポリアクリレートおよびメタクリレート、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、オクタデシルジイソシアネートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよびカプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステルの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよび2-ヒドロキシエチルアクリレートの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよび2-ヒドロキシプロピル2-(メタクリロイルオキシ)エチルフタレートの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよび2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよびグリセロールジメタクリレートの反応生成物、オクタデシルジイソシアネートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物、シクロヘキシルジイソシアネートおよび2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物、ベンジルジイソシアネートおよび2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物、1,14-テトラデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、2,2-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン(またはエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート)(EBPADMA)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis-GMA)、Bis-GMAおよびオクタデシルジイソシアネートの反応生成物、Bis-GMAおよびシクロヘキシルジイソシアネートの反応生成物、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、ジウレタンジメタクリレート(DUDMA)、4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート、4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジメタクリレート、4,19-ジオキソ-3,20-ジオキサ-5,18-ジアザヘキサデカン-1,22-ジオールジアクリレート、4,19-ジオキソ-3,20-ジオキサ-5,18-ジアザヘキサデカン-1,22-ジオールジメタクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレートおよびジオールの反応生成物、ポリウレタンジメタクリレート(PUDMA)、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリカーボネートジメタクリレート(PCDMA)、ポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート、(メタ)アクリレート変性シリコーン、光硬化性エポキシド、エポキシメタクリレート(またはアクリレート)、アクリレート化モノマーおよびアクリレート化オリゴマーの共重合性混合物ならびにそれらの組み合わせおよび/または混合物が挙げられる。
【0042】
第3の重合性アクリル系化合物
本発明の組成物は、以下に記載されている1種以上の第3の重合性アクリル系化合物をさらに含んでいてもよい。特に、本発明の1種以上の第3の重合性アクリル系化合物は本組成物全体の少なくとも約2重量%、好ましくは少なくとも約3重量%、より好ましくは少なくとも約4重量%の量で含まれていてもよい。一実施形態では、1種以上の第3の重合性アクリル系化合物は本組成物全体の約20重量%以下、好ましくは約18重量%以下、より好ましくは約15重量%以下の量で含まれていてもよい。驚くべきことに、本発明の組成物に少なくとも約2重量%の第3の重合性アクリル系化合物を含めることにより、そのような第3の重合性アクリル系化合物が約2%未満の量で含まれているか完全に排除されている組成物と比較して、最終硬化樹脂の強度、靱性および/または摩耗特性を実質的に向上させることができることが発見された。
【0043】
さらなる実施形態では、第1の重合性アクリル系化合物と第3の重合性アクリル系化合物との重量比(本明細書では便宜上、単にAC1:AC3の重量比としても表されている)は約5:1~約20:1の範囲内であってもよい。さらなる好ましい実施形態では、AC1:AC3の重量比は約6:1~約15:1の範囲内であってもよい。
【0044】
より具体的には、1種以上の第3の重合性アクリル系化合物はヒドロキシルアルキルメタクリレートなどの、ウレタンプレオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーとの反応によって調製されるメタクリレート(またはアクリレート)化合物を含んでもよい。好ましくはそのような重合性アクリル系化合物は、以下の一般式I~Vの少なくとも1つの範囲内の構造を含む。
【0045】
好ましい実施形態では、ウレタンプレオリゴマーは直鎖状であり、イソシアネート末端基を含み、かつ一般式Iの範囲内の構造を有する。
【化7】
式中、R
1およびR
2は1~14個の炭素原子を有するか6~14個の炭素原子を有する少なくとも芳香族基を含むアルキルのいずれかであり、mは0~20の整数であり、オリゴマー中のmの値は使用されるジイソシアネートとジオールとのモル比によって決まり、mの値はこのモル比が減少するにつれて増加する。ジイソシアネート部分は構造OCN-R
1-NCOを有し、ジオール部分は構造HO-R
2-OHを有する。
【0046】
別の好ましい実施形態では、ウレタンプレオリゴマーは、過剰な少なくとも1つのジオールと少なくとも1つのジイソシアネートとを反応させて一般式II~IVの1つ以上の範囲内の構造を有するウレタンプレオリゴマーを得ることにより形成する。
【0047】
一般式II~IV:
【化8】
式中、R
1、R’
1、R
2およびR’
2はそれぞれ独立して1~14個の炭素原子または6~14個の炭素原子を有する少なくとも芳香族基を有するアルキルであり、nおよびmはそれぞれ独立して0~20の整数であり、オリゴマー中のnおよびmの合計は使用されるジイソシアネートとジオールとのモル比よって決まり、nおよびmの合計の値はこのモル比が減少するにつれて増加する。ジイソシアネートは構造OCN-R
1-NCOおよびOCN-R’
1-NCOを有し、ジオールは構造HO-R
2-OHおよびHO-R’
2-OHを有する。ウレタンプレオリゴマーのより複雑な構造は、少なくとも2つの異なるジオールおよび少なくとも2つの異なるジイソシアネートから構築されている。
【0048】
別の好ましい実施形態では、以下にさらに記載されているウレタンプレオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーとの反応により、一般式Vの範囲内の構造を有する重合性化合物が得られる。
【化9】
式中、R
3は水素またはメチル基などのアルキルであり、R
4は1~14個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは0~20の整数である。典型的なエチレン性不飽和モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびカプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステルなどである。
【0049】
硬化樹脂の好ましい機械的特性および組成物の所望の取り扱い特性は、化合物中のnの値が10以下であり、より好ましくはnが5以下である場合に存在し得る。化合物中のnの好ましい値は主として特定の用途の要求によって決まる。芳香族環系ジオールのための化合物中のnの最も好ましい値は1~3である。従って芳香族環系ジオールのためのジイソシアネートとジオールとのモル比は最も好ましくは1.33~2である。アルキル系ジオールのための化合物中のnの最も好ましい値は1~4である。従って、アルキル系ジオールのためのジイソシアネートとジオールとのモル比は最も好ましくは1.25~2である。
【0050】
当該技術分野で知られている触媒、例えば第三級アミンおよび金属塩、例えばオクタン酸第一スズ(stannous octoate)および特にジブチルスズジラウレートを使用して、イソシアネート末端プレオリゴマーおよびエンドキャップされたエチレン性不飽和モノマーの形成を促進してもよい。本発明で使用される好ましい安定化剤は、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびヒドロキノンメチルエーテル(MEHQ)である。
【0051】
本発明のウレタンプレオリゴマーを調製するために有用なジイソシアネートの例としては、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,8-ジイソシアナトオクタン、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルジイソシアネート)、シクロヘキシルジイソシアネート、3-メチルヘキサン-1,6-ジイソシアネート、3-エチル-1,6-ヘキサンジイソシアネート、5-メチル-1,9-ノナンジイソシアネート、5-エチル-1,10-デカンジイソシアネート、2,3-ジメチル-1,6-ヘキサンジイソシアネート、2,4-ジメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、2,4,6-トリメチル-1,7-ヘプタンジイソシアネート、2,3-ジメチル-5-エチル-1,8-オクタンジイソシアネート、2-メチル-4,6,8,10-テトラプロピル-1,12-ドデカンジイソシアネートなどおよびそれらの混合物が挙げられる。ジイソシアネートのさらなる好適な例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば4,4’-メチレンビス(フェニルジイソシアネート)、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,4-フェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビトリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートなどおよびそれらの混合物も挙げられる。
【0052】
本発明のウレタンプレオリゴマーを調製するために有用なジオールの例としては、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,9-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、プロポキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールA、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
ウレタンプレオリゴマーとの反応のために有用なエチレン性不飽和モノマーの例としては、メタクリレートおよび/またはアクリレートが挙げられる。これらの例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2-ヒドロキシシクロヘキシルアクリレートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明の第3の重合性アクリル系化合物としては、ビスフェノールAプロポキシレート、1,6-ジイソシアナトヘキサンおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物、ビスフェノールAプロポキシレート、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサンおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレート(TBDMA)の反応生成物、ビスフェノールA、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサンおよび2-ヒドロキシルエチルメタクリレートの一連の反応生成物、ビスフェノールA、1,6-ジイソシアナトヘキサンおよび2-ヒドロキシルエチルメタクリレートの一連の反応生成物、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートの一連の反応生成物、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートの一連の反応生成物、トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、ビスフェノールAプロポキシレートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートの一連の反応生成物、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステルおよび上記化合物の誘導体を含む二官能性メタクリレートが挙げられる。
【0055】
本発明に係る好ましいウレタンジメタクリレートオリゴマーは、以下の実施例7に開示されているように調製することができる。
【0056】
樹脂改質粒子成分
本発明の組成物は1種以上の樹脂改質粒子成分も含んでいてもよい。これらの樹脂改質粒子成分を本発明の流体樹脂組成物に分散させ、好ましくは上記重合性成分を含む均質なコロイド状の分散液または懸濁液を形成してもよい。一実施形態では、1種以上の樹脂改質粒子は本発明の組成物全体の少なくとも約2重量%、好ましくは少なくとも約3重量%、より好ましくは少なくとも約4重量%であって本組成物全体の約18重量%以下、好ましくは約15%以下の量で含まれていてもよい。本発明の組成物中に少なくとも約2重量%の樹脂改質粒子を含めることにより、樹脂改質粒子が約2%未満の量で含められているか完全に排除されている組成物と比較して、最終硬化樹脂の衝撃強度および/または破壊靱性特性を実質的に向上させることができる。しかし約18重量%超の樹脂改質粒子を本発明の組成物に含めた場合、流体樹脂組成物の混合、材料の取り扱いおよび/または印刷/硬化特性も実質的に変化する可能性がある。従ってこれらの流体樹脂組成物の粘度を高めることにより、さらなる考慮事項が促される可能性がある。これらのさらなる考慮事項としては、樹脂改質粒子の均質な分散、浸潤および安定な懸濁を達成すること、および/またはより望ましい印刷/硬化時間または印刷品質を達成すること、および/または印刷された物品のためのより望ましい印刷後クリーンアップまたは処理結果を達成することが挙げられる。従っていくつかの実施形態では、樹脂改質粒子の含有を本組成物全体の約18重量%以下に制限することが好ましい場合がある。
【0057】
特に有機材料または有機-無機ハイブリッド材料からなる樹脂改質粒子を使用してもよい。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、高架橋PMMAビーズ、ポリ(メチル/エチルメタクリレート)、ポリ(メチル/ブチルメタクリレート)、ゴム変性PMMA、コアシェル耐衝撃性改良剤、架橋ポリアクリレート、熱可塑性架橋ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエポキシド、ポリスチレンおよびポリアミドなどの有機樹脂改質粒子を使用することができる。また、特にシリコーンまたはポリオルガノシロキサン由来のものなどの有機-無機ハイブリッド材料を使用してもよい。そのような有機-無機ハイブリッド材料の例としては、高架橋シリコーン樹脂、シリコーンエラストマー/ゴムおよびグラフトされたコアシェル(シリコーンエラストマーコア-シリコーン樹脂シェル)型が挙げられる。所与の組成物のための樹脂改質粒子の種類の選択は、流体樹脂組成物および/または最終的な硬化製品において所望の結果を達成するための様々な考慮事項に基づいて行ってもよい。例えばそのような考慮事項としては、必ずしも限定されるものではないが、粒子の固有の物理的特性(例えば、粒径、多孔率/表面積、材料密度、材料硬度/デュロメータ硬さ)、および本組成物のために選択された重合性成分との粒子不活性または相互作用力の相対度/強度(例えば、化学的適合性または親和性)が挙げられる。
【0058】
一実施形態では、樹脂改質粒子は少なくとも約0.01ミクロンであって約100ミクロン以下の平均直径を有する小さい粒子の形態で含められていてもよい。好ましくは粒子は、少なくとも約0.02ミクロンであって約20ミクロン以下の平均直径を有していてもよい。より好ましくは粒子は、少なくとも約0.05ミクロンであって約10ミクロン以下の平均直径を有していてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、単独または他の非コアシェル型樹脂改質粒子との組み合わせのいずれかでの樹脂改質粒子成分としての1種以上のコアシェル型耐衝撃性改良剤の使用が好ましい場合がある。
【0060】
本明細書で使用されるコアシェル耐衝撃性改良剤という用語は、そのかなりの部分(例えば、30重量%、50重量%、70重量%超またはそれ以上)が第2のポリマー材料(すなわち第2の材料またはシェル材料)によって実質的に完全に封入された第1のポリマー材料(すなわち第1の材料またはコア材料)からなる耐衝撃性改良剤を意味してもよい。本明細書で使用されるこれらの第1および第2のポリマー材料は、組み合わせられ、かつ/または互いに反応させた(例えば連続的に重合させた)1種、2種、3種またはそれ以上のポリマーからなっていてもよく、あるいは別個もしくは同じコアシェル系の一部であってもよい。コアシェル耐衝撃性改良剤は、乳化重合およびその後の凝固または噴霧乾燥によって形成することができる。
【0061】
コアシェル耐衝撃性改良剤の第1および第2のポリマー材料は、エラストマー、ポリマー、熱可塑性プラスチック、コポリマー、他の成分またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料すなわちコアシェル耐衝撃性改良剤の両方が、(例えば、少なくとも70重量%、80重量%、90重量%またはそれ以上)の1種以上の熱可塑性プラスチックを含むか実質的に全体がそれからなる。例示的な熱可塑性プラスチックとしては、限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、MMA-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂またはポリメチルメタクリレートなど、および/またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。シリコーン系およびシリコーン-アクリル系ゴムおよび/またはブタジエン系ゴム(例えばMBSまたはABS)コアシェル耐衝撃性改良剤を含めて、硬化樹脂の高い衝撃強度および/または耐候性をさらに高めてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、コアシェル耐衝撃性改良剤は、コアシェルグラフト共重合体から形成されているか少なくともそれを含んでいてもよい。グラフト共重合体の第1の材料すなわちコアポリマー材料は、第2の材料すなわちシェルポリマー材料のガラス転移温度よりも実質的に(例えば、10℃、20℃またはさらには40℃超)低いガラス転移温度を有していてもよい。さらに、第2の材料すなわちシェルポリマー材料のガラス転移温度が23℃超である間に第1材料すなわちコアポリマー材料のガラス転移温度が23℃未満(例えば10℃未満)であることが望ましい場合があるが、これは必須の特徴ではないことを理解されたい。
【0063】
有用なコアシェルグラフト共重合体の例は、典型的にはスチレン、アクリロニトリルまたはメチルメタクリレートなどの「硬質/剛直」ポリマー化合物が、典型的にはシリコーン、ブタジエンまたはブチルアクリレートなどの「軟質/圧縮性」エラストマーもしくはゴム状ポリマー化合物の外側コアの上にグラフトされているものである。コアポリマーはスチレン、ビニルアセテート、メチルメタクリレートまたはイソプレンなどの他の共重合性化合物も含んでいてもよい。コアポリマー材料は、エチレングリコールジアクリレートおよびブチレングリコールジメタクリレートなどのおよそ等しい反応性の2つ以上の非共役二重結合を有する架橋モノマーも含んでいてもよい。コアポリマー材料は、等しくない反応性の2つ以上の非共役二重結合を有するグラフト結合モノマーを含んでいてもよい。
【0064】
本発明の組成物において特に有利であることが分かったコアシェル耐衝撃性改良剤の非限定的な例としては、Mitsubishi Chemical社(例えば、METABLEN(商標)C(ブタジエンゴム)、METABLEN(商標)W(アクリルゴム)およびMETABLEN(商標)S(シリコーン-アクリル系複合ゴム))、Arkema社(例えば、CLEARSTRENGTH(登録商標)MBS耐衝撃性改良剤)およびKaneka社(例えば、KANE ACE(登録商標)MBS、特製アクリル系耐衝撃性改良剤)から入手可能な耐衝撃性改良剤が挙げられる。特に、好ましいゴム耐衝撃性改良剤のいくつかの例としては、METABLEN(商標)C-223A、C-201A、S-2006、S-2001、S-2030、SRK200AおよびE-870A、CLEARSTRENGTH(登録商標)320、223、D440、E920およびE950ならびにKANE ACE(登録商標)M-211、M-570、FM-41、MR01、MR02、B-522、B-564、B-626、B-632、B-636、B637、M-511、M-731およびM-732が挙げられる。
【0065】
別の実施形態では、無機材料からなる樹脂改質粒子を使用してもよい。これらの無機材料は天然に生じるものであっても合成のものであってもよく、限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、窒化ケイ素、ガラス、例えばカルシウム、鉛、リチウム、セリウム、スズ、ジルコニウム、ストロンチウム、バリウム、アルミノシリケートおよびアルミノフルオロシリケート系ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸リチウム、アルミナケイ酸リチウム、カオリン、石英およびタルクが挙げられる。いくつかの実施形態では、有機材料、有機-無機ハイブリッド材料および/または無機材料からなる樹脂改質粒子を含む組成物を互いに組み合わせて使用して、印刷および/または最終硬化樹脂の強度および耐久性のために望ましい光重合性樹脂組成物特性を達成してもよい。
【0066】
光重合開始剤成分
本発明の印刷可能な歯科用重合性組成物は、本組成物を迅速かつ効率的に重合および硬化させるための1種以上の光重合開始剤成分を含んでいてもよい。歯科用光重合性組成物は好ましくは、活性化波長の光への曝露時に重合を開始させる光増感剤、例えばカンファーキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)またはメチルベンゾインおよび/または還元化合物、例えば第三級アミンを含む。光重合開始剤成分は本組成物全体の少なくとも約0.1重量%、好ましくは少なくとも約0.3重量%の量で存在してもよい。本組成物全体は、約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満の開始剤成分を含んでいてもよい。例えば開始剤成分は、本組成物全体の約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.3重量%~約5重量%の範囲で存在してもよい。
【0067】
一実施形態では、本組成物を光硬化可能にするために例えばベンゾフェノン、ベンゾインおよびそれらの誘導体またはαジケトンおよびそれらの誘導体などの光活性剤をそれに添加してもよい。好ましい光重合開始剤はカンファーキノン(CQ)である。カチオン性重合開始剤、4-オクチルオキシ-フェニル-フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(OPPI)などのジアリールヨードニウムおよびトリアリールスルホニウム塩を使用することができ、これは開環重合ならびに相変化からの体積膨張を開始して重合収縮を低減させる。多核芳香族化合物、それらの置換類似体、カルバゾール、フェノチアジン、クルクミンおよびチタン錯体フリーラジカル開始剤などの電子移動光増感剤も添加することができる。また様々な紫外線開始剤も使用することができる。光重合は、本組成物に好ましくは約350nm~約500nmの範囲の波長を有する青色可視光を照射することにより開始することができる。カンファーキノン(CQ)化合物は約400nm~約500nmの最大光吸収性を有し、この範囲の波長を有する光で照射した場合に重合のためにフリーラジカルを生成する。アシルホスフィンオキシドのクラスから選択された光開始剤も使用することができる。これらの化合物としては、例えばモノアシルホスフィンオキシド誘導体、ビスアシルホスフィンオキシド誘導体およびトリアシルホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)を光重合開始剤として使用することができる。
【0068】
光重合開始剤成分に加えて本発明の組成物は、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、クロラニル、フェノール、ブチルヒドロキシアナリン(BHA)、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、トコフェロール(ビタミンE)および/または当業者に公知のそれ以外の重合阻害剤などの重合阻害剤を含んでいてもよい。好ましくは、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を重合阻害剤として使用する。重合阻害剤は、本組成物中のフリーラジカルを捕捉し、かつ本組成物の貯蔵寿命を引き延ばすためのスカベンジャーとして機能する。一実施形態では、0%~最大約0.5重量%の1種以上の重合阻害剤が本発明の組成物に含まれていてもよい。
【0069】
さらなる成分
目的とする特定の歯科製品用途および/または所望の最終用途性能特性に応じて、以下のさらなる成分のうちの1つ以上も単独または組み合わせで本発明の組成物中に含めてもよい。
【0070】
本発明の光重合性組成物は、着色剤または色調剤として1種以上の顔料をさらに含んでいてもよい。審美的に望ましく、かつ歯科開業医および彼らの患者に喜ばしい、様々な歯および歯肉に色付けを施した補綴もしくは修復物を作製するために顔料の混合物を使用してもよい。顔料材料は可溶性染料と比較して、一般に経時的な信頼できる色安定性および色を劣化させることなく紫外線照射に耐える良好な能力を提供するため、典型的に使用するのにより望ましい。顔料は無機顔料および有機顔料を含んでもよく、顔料粒子は、分散性を高め、かつ本組成物の液体成分とのより高い適合性を促進するためにそれらの表面が処理または修飾されていてもよい。例えば無機顔料は、粒子と樹脂マトリックスとの結合を高め、かつ印刷可能な流体組成物中での分散の容易性を高めるために、様々な材料(例えば、有機化合物、シランもしくはシリコーン化合物、反応性カップリング剤、界面活性剤またはポリマー)で表面処理することができる。粒子/粉末を液体に有効に分散させるための様々な公知の方法のいずれかを使用して、顔料を本発明の光重合性組成物中に分散させてもよい。
【0071】
無機顔料の例としては限定されるものではないが、酸化鉄(例えば、黒色、黄色、赤色、褐色)、群青、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、コバルトクロムグリーン、アルメニアブルー、カーボンブラック、雲母、コバルトバイオレット、モリブデンレッド、チタニウムコバルトグリーンおよびモリブデンオレンジなどが挙げられる。有機顔料の例としては限定されるものではないが、Cromophtal Red-BRN 2-ナフタレンカルボキサミド、アゾ顔料、ポリアゾ顔料、アゾメチン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料およびベンゾイミダゾロン顔料などが挙げられる。
【0072】
別の実施形態では、様々な顔料を細かい重合された樹脂ビーズ(例えば、好ましくは約20ミクロン未満)の中に封入することによる使用のために、樹脂粒子ベースの顔料系も検討してもよい。これらの樹脂ビーズは乳化もしくは懸濁重合によって調製することができる。あるいは、高顔料濃縮樹脂(例えばMMA系樹脂)を最初に重合/硬化させ、微粉末に粉砕することによりさらに処理し、次いでその後に重合性液体組成物中に分散させることができる。
【0073】
1種以上の抗菌剤、抗真菌剤、レオロジー改質剤、蛍光増白剤および/または蛍光剤などの他の任意の添加剤を含めて、本発明の組成物にさらなる補完性を付与してもよい。本発明の組成物の光重合または硬化をひどく損なわせたり悪影響を与えたりしない限り、当該技術分野で知られているそのような任意の添加剤を選択し、かつ使用してもよい。これらの任意の添加剤は、本組成物全体の0重量%~最大約5重量%以下で含めてもよい。
【0074】
未硬化(流体)および硬化(固体)樹脂組成物の物理的特性
取り扱いおよび使用の容易性(例えば、注ぎ込み/分散、貯蔵容器からのより完全な除去)などの因子ならびに様々な光系システムおよび/または材料噴射システムにわたる望ましい「印刷適性」属性(例えば、印刷率/速度および品質/正確性)を考慮して、本発明のいくつかの実施形態では、未硬化(流体)樹脂組成物が25℃で約50,000cP(50Pa-s)以下の粘度を有することが好ましい場合がある。他の実施形態では、未硬化樹脂組成物が約30,000cP(30Pa-s)以下の粘度を有することがさらにより好ましく、かつ25℃で約15,000cP(15Pa-s)以下の粘度を有することがなおさらにより好ましい場合がある。
【0075】
さらに、本発明の実施形態のための別の望ましい目的は、それらの最終的な硬化形態で耐久性を有し、強力かつ頑丈な物理的特性を有するポリマー組成物を達成することであることを理解することができる。信頼できる強度および靱性の硬化樹脂材料を提供することにより、特に繰り返しの衝撃力および摩耗の両方に対する高い抵抗性が求められる長期歯科補綴および修復物におけるより有効な使用が可能になる。従って好ましい実施形態では、本発明の硬化樹脂組成物は、そのような強度および靱性を示す特定の物理的特性の少なくとも1つまたはより好ましくは組み合わせをさらに有していてもよい。より具体的には、静的機械分析、動的機械分析(DMA)および/または熱機械分析(TMA)のための公知の機器および技術を使用して、変形または破壊に対する抵抗性について固体材料の強度を定量的に特徴づけることが可能である。1つのそのような好ましい手法は、ISO20795-1:2013「歯科-ベースポリマー-第1部:義歯床のポリマー」に概説されている機械的性質試験である。また、ISO/TS14569-2:2001「歯科材料-摩耗試験に関するガイダンス-第2部:二体および/または三体接触による摩耗」に概説されているインビトロ技術の1つ以上を用いて硬化樹脂材料の耐摩耗性の指標を確認することも可能になり得る。例えば1つのそのような手法は、三体環状摩損機としていわゆるAlabama(Leinfelder-Suzuki)摩耗シミュレータを利用する。あるバージョンのこの機械および方法論を使用して、1つのそのようなインビトロ方法として材料の体積損失(37℃で400,000サイクルのmm3)に基づいて局部摩耗値を決定して、インビボ病態下で咬合面について材料摩耗性能の指標を得てもよい。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の硬化(固体)樹脂組成物は、ISO20795-1:2013に従って調整され、次いで測定される付加的に製造された(3D印刷された)棒状試験片を用いた以下の機械的特性:少なくとも約90MPaであって約300MPa以下の曲げ応力値、より好ましくは少なくとも約100MPaであって約250MPa以下の曲げ応力値、少なくとも約2300MPaであって約6000MPa以下の曲げ弾性率値、より好ましくは少なくとも約2500MPaであって約5000MPa以下の曲げ弾性率値、少なくとも約0.90MPa-m1/2であって約3.0MPa-m1/2以下の値(Kmax)の破壊靱性または最大応力拡大係数、より好ましくは少なくとも約1.00MPa-m1/2であって約2.5MPa-m1/2以下の破壊靱性値(Kmax)、少なくとも約90J/m2であって約500J/m2以下の破壊仕事値(Wf)、より好ましくは約100J/m2であって約400J/m2以下の破壊仕事値(Wf)の少なくとも1つまたはより好ましくは組み合わせを有していてもよい。本発明の実施形態の文脈内では、当然のことながら、上に記載されている全てのそのような機械的性質値は少なくとも5つの測定された試験片の平均に基づくものとするが、より多くの試験片を使用して正確性および精度をさらに高めてもよい。
【0077】
別の好ましい実施形態では、本発明の硬化樹脂組成物は、付加的に製造された試料を調製し、次いでインビトロ局部摩耗方法(以下の実施例にさらに記載されている)に従って測定した場合に、約0.15mm3(37℃で400,000サイクル)以下の局部摩耗量損失値、より好ましくは約0.12mm3(37℃で400,000サイクル)以下の局部摩耗量損失値を有していてもよい。本発明の実施形態の文脈内では当然のことながら、上に記載されている全てのそのような局部摩耗量損失値は、少なくとも4つの測定された試験片の平均に基づくものとする。
【0078】
樹脂組成物の調製、印刷および印刷後処理
本発明の流体樹脂組成物は、液体および固体を一緒に混合して均質な混合物を形成するための様々な公知の処理機器およびシステムを用いて異なる成分を1つにまとめて一緒に混合することにより調製することができる。含有のために選択された特定の成分の形態および性質の様々な考慮事項(例えば、固体の軟化点または融点温度、材料の粒径)に応じて、温度制御および混合/分散強度の両方のために汎用的である処理機器またはシステムにおいて本発明の組成物を調製することが一般に有利である。例えばいくつかの実施形態では、そのような機器またはシステムは、材料を実質的に周囲(25℃)温度を超える温度(例えば50℃超またはさらには70℃超)で長期間にわたって加熱および維持することができることが望ましい場合があり得る。さらに、高強度流体剪断力または分散システムの使用は、樹脂改質粒子成分および/または他の不溶性固体粒子成分(例えば顔料)のより急速かつ完全な浸潤および分散を保証するのに特に有利であり得る。本発明の様々な成分を処理のために導入したり互いに組み合わせたりする順番は、特に本発明の説明に具体的に記載されていない限り限定されない。
【0079】
本発明の樹脂組成物の3次元(3D)印刷は様々な公知の光重合方法およびシステムによって達成してもよい。限定を意図するものではないが、調製された流体樹脂組成物は、カスタムすなわち注文品の人工歯および他の歯科補綴もしくは修復物の仮想の設計を漸進的交互積層、液滴または連続光硬化方法で形成することができるSLAまたはDLPベースの付加製造システム(「バット光重合」)などのプログラム可能なデジタル制御される光硬化システム、および/または材料噴射システム(例えばインクジェット、MultiJet/PolyJet印刷システム)に充填することができる。幅広い流体樹脂粘度/レオロジー特性にわたる使用に有効に対応することができるシステムは、本発明の範囲内でのより幅広い組成物の変形を可能にするのに特に有利であり得る。
【0080】
好適な印刷プロセスパラメータは、所与の流体光重合性樹脂組成物を歯科補綴もしくは修復物の仮想設計モデルに従って有効に光硬化させることができるように、非限定的な方法で当業者によって決定および選択してもよい。流体光重合性樹脂組成物を有効に光硬化させることにより、その場でのポリマー組成物の急速架橋結合および硬化を生じさせて仮想の設計モデルに従って固体構造を形成する。有効な光硬化は、3D印刷システムによるポリマー組成物の部分硬化(すなわち、限定的または不完全な架橋結合および硬化)または完全硬化(すなわち、完全または本質的に完全な架橋結合および硬化)のいずれかにより達成してもよい。
【0081】
未反応すなわち残留する流体光重合性樹脂組成物を印刷された補綴もしくは修復物の表面から除去するための印刷された物品に対する印刷後洗浄処理は典型的に有利である。印刷後洗浄処理は、印刷された物品を短い期間(例えば、典型的には約1分~約20分間)にわたって液体溶媒組成物(例えば、C1~C3アルコールまたは他の有機溶媒混合物)に浸漬することにより行ってもよい。好適な溶媒組成物は、印刷された物品の完全性に有害であることなく残留する未反応樹脂を希釈し、かつ印刷された物品から除去するために良好な混和性および溶解特性を与えるために、当業者によって選択されてもよい。また浸漬は、印刷された物品表面からの残留する樹脂除去をさらに容易にするための超音波処理、混合、噴射、回転、または流体撹拌の他の同様の手段によって達成してもよい。
【0082】
印刷された物品に対する二次硬化処理も有利であり得る。最初の印刷(光硬化)は最初の固体の補綴もしくは修復物を形成するが、この二次硬化処理は、ポリマー組成物の完全な変換および架橋結合を保証して患者使用のために望ましい最終的な機械的特性および生体適合性プロファイルを完全に実現するためにさらに有利であり得る。この二次硬化手順では、印刷された物品を約10-8m(10ナノメートル)~10-3m(1ミリメートル)の波長にわたる広域スペクトル電磁放射線に曝露してもよい。典型的には、曝露期間は印刷された物品の全ての表面にわたって約5分~約30分間持続してもよい。紫外線(UV)および可視波長範囲の広域スペクトル電磁放射線への曝露が好ましい場合がある。ECLIPSE(登録商標)処理装置(モデル番号9494800、120ボルト、12アンペア、1200ワット、Dentsply Sirona社から入手可能)は、このような二次硬化処理を行うために使用することができる商業的に入手可能な光硬化装置の1つの例である。いくつかの実施形態では、そのような二次硬化手順は最終硬化プロセスをさらに促進するために、印刷された物品への熱の照射または生成を伴ってもよい。
【実施例】
【0083】
実施例1:ウレタンモノマー(UCDPHMA)の調製
500mLのフラスコに97.0グラム(0.499mol)の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約60℃に加熱した。この反応混合物に6滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応温度を60℃~80℃に維持しながら、66.2グラム(0.509mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、72.9グラム(0.505mol)のヒドロキシプロピルメタクリレートおよび阻害剤としての0.36グラムのブチルヒドロキシトルエン(BHT)の混合物を1時間かけて添加した。約6時間の撹拌後に熱を止め、モノマーを粘性液体としてフラスコから回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0084】
実施例2:ウレタンモノマー(UCDPMAA)の調製
500mLのフラスコに38.8グラム(0.200mol)の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約60℃に加熱した。この反応混合物に3滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応温度を56℃~78℃に維持しながら、22.7グラムの2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、26.6グラム(0.204mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、11.5グラム(0.099mol)の2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび阻害剤としての0.10グラムのBHTの混合物を70分間かけて添加した。約4時間の撹拌後に熱を止め、モノマーを粘性液体としてフラスコから回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0085】
実施例3:ウレタンモノマー(UCDPPA)の調製
500mLのフラスコに38.8グラム(0.200mol)の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約60℃に加熱した。この反応混合物に3滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応温度を66℃~76℃に維持しながら、29.2グラム(0.203mol)の2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、22.2グラム(0.100mol)の2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、11.9グラム(0.102mol)の2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび0.16グラムのBHTの混合物を50分間かけて添加した。78℃下での約4時間25分間の撹拌後に熱を止め、モノマーを粘性液体としてフラスコから回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0086】
実施例4:ウレタン樹脂の調製
250mLのフラスコに19.4グラム(0.10mol)の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約48℃に加熱した。この反応混合物に2滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応温度を65℃~75℃に維持しながら、阻害剤として0.055グラムのBHTを含む10.5グラム(0.047mol)の2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートおよび18.6グラム(0.143mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートの混合物を調製し、1時間25分間かけて添加した。上記混合物の90%の添加後に、上記混合物の残りの10%の最終的な添加前に1.9グラム(0.013mol)のUNOXOL(商標)ジオール(ミシガン州ミッドランドのDow Chemical社製)を添加した。UNOXOL(商標)ジオールは約1:1の比の(シス,トランス)-1,3-シクロヘキサンジメタノールおよび(シス,トランス)-1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる脂環式ジオールである。さらなる約5時間の撹拌後に熱を止め、モノマーを粘性の無色の液体としてフラスコから回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0087】
実施例5:ウレタンモノマー(UCDPMA)の調製
250mLのフラスコに19.4グラム(0.100mol)の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約60℃に加熱した。この反応混合物に2滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応温度を62℃~76℃に維持しながら、21.9グラム(0.168mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、7.5グラム(0.034mol)の2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートおよび0.05グラムのBHTの混合物を30分間かけて添加した。78℃下での約4時間35分間の撹拌後に熱を止め、モノマーを粘性液体としてフラスコから回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0088】
実施例6:ウレタン/尿素樹脂の調製
250mLのフラスコに19.4グラム(0.10mol)の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約64℃に加熱した。この反応混合物に2滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応温度を64℃~75℃に維持しながら、阻害剤として0.05グラムのBHTを含む10.5グラム(0.047mol)の2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートおよび16.15グラム(0.139mol)の2-ヒドロキシエチルアクリレートの混合物を調製し、1時間25分間かけて添加した。上記混合物の90%の添加後に、上記混合物の残りの10%の最終的な添加前に1.6グラム(0.014mol)の1,2-ジアミノシクロヘキサンを添加した。さらなる約5時間の撹拌後に熱を止め、モノマーを粘性の黄色がかった液体としてフラスコから回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0089】
実施例7:ウレタンジメタクリレートオリゴマー(TBDMA)の調製
反応器に1176グラムのトリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン(5.59mol)および1064グラムのビスフェノールAプロポキシレート(3.09mol)を乾燥窒素流下で充填し、正の窒素圧下で約65℃に加熱した。この反応混合物に10滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。反応混合物の温度を65℃~140℃に約70分間維持し、その後にさらなる10滴の触媒ジブチルスズジラウレートを添加した。粘性のペースト状ジイソシアネートでエンドキャップされた中間生成物が形成され、100分間撹拌した。
【0090】
反応温度を68℃~90℃に維持しながら、この中間生成物に662グラム(5.09mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび阻害剤としての7.0グラムのBHTを70分間かけて添加した。70℃での約5時間の撹拌後に熱を止め、オリゴマーを反応器から半透明の柔軟な固体として回収し、乾燥雰囲気下に貯蔵した。
【0091】
実施例8~23
以下の実施例のために、組成物を以下の一般化された手順に従って同様の方法で調製した。樹脂改質粒子成分を除いて全ての成分材料を、好適なサイズの混合容器において互いに組み合わせた。これらの材料を85℃に加熱し、全ての材料が完全に溶解して均質に互いに混合して均一な混合物になるまで(典型的には、全ての固体の重合性材料が溶解するのを認めた後に少なくとも20~30分間)混合した。低剪断混合(例えばアンカーブレード撹拌機を用いる)と高剪断分散(例えば高速ローター-ステーターミキサーを用いる)との組み合わせは、特に有効かつ効率的であることが認められた。混合を続けながら、次いで混合物の温度を下げて65±5℃に維持し、この時点で樹脂改質粒子成分を混合物に導入した。樹脂改質粒子成分を導入したら、樹脂改質粒子が有効に浸潤されて完全に分散されるまで(典型的には少なくとも30~45分間)さらなる低剪断混合および高剪断分散を用いた。流体樹脂組成物の最終混合物を放冷し、粘度を測定するか印刷で使用する前に周囲温度(典型的には20~25℃)で少なくとも24時間貯蔵した。
【0092】
流体樹脂組成物の調製が完了した後、複数の試験片試料をCARBON(登録商標)M1またはM2プリンター(Carbon社から入手可能)で印刷した。ISO20795-1:2013に概説されている寸法規格を満たすために、機械的性質試験、特に曲げ強度(応力、弾性率)および破壊靱性(Kmax、破壊仕事)のために棒状試験片を印刷した。CARBON(登録商標)M1およびM2プリンターに対して、5.0~8.0(例えば6.4)の樹脂硬化量(Dc)すなわち硬化させる量、0.0012~0.0022(例えば0.0017)の樹脂吸収係数(α)および1~4(例えば2.5)の露出補正(EC)のための印刷プロセスパラメータを与えた。さらに、印刷のために試験片試料の3Dデジタルモデルをスライスするために100ミクロンのスライス厚を選択した。
【0093】
プリンターからの印刷された試験片試料の除去後に、試験片をイソプロパノール(99%)を有するガラス容器の中に入れて各試験片を浸した。蓋が容器にしっかりと締められた状態で、それらを最初の洗浄サイクルのために超音波水浴に入れた。2分間の最初の超音波洗浄サイクルを行い、次いでイソプロパノールを容器から除去し、かつ容器に新しいイソプロパノールを充填してさらなる1分間の超音波洗浄サイクルを完了させた。洗浄した試験片を容器から除去し、圧縮空気により乾燥した後、ECLIPSE(登録商標)処理装置(モデル番号9494800、120ボルト、12アンペア、1200ワット、Dentsply Sirona社から入手可能)での二次硬化プロセスを続けた。洗浄した試験片を試験片の2つの最大の側面のそれぞれにおいて10分間さらに硬化させて、完全な機械的性質の開発のための完全な樹脂硬化をさらに保証した。
【0094】
関連する粘度範囲のために適当なスピンドル(例えばCPA-52Z)を有するBrookfield DV2T Cone/Plate Viscometer(Brookfield Engineering Labs社)を用いて、未硬化流体樹脂組成物の粘度の評価を行った。報告されている値は少なくとも3回の試料測定の平均を用いて25±1℃で決定した。
【0095】
ISO20795-1:2013に概説されている手順に従って100lbf(500N)のインストロン製ロードセルおよび37±1℃の水浴が備えられたInstron(登録商標)モデル3365万能試験機(Bluehill(登録商標)汎用ソフトウェアを用いる)を用いて、印刷および硬化された固体の棒状試験片のために機械的特性の評価を行った。報告されている機械的性質値は少なくとも5つの印刷された棒状試験片の平均を用いて決定した。
【0096】
印刷および硬化された固体の試験片のための耐摩耗性の評価は、カスタマイズされたバージョンのAlabama(Leinfelder-Suzuki)摩耗シミュレータを用いて以下に記載されているインビトロ局部摩耗方法により行った。カスタムステンレス鋼試験片ホルダー(それぞれが14~15mmの直径、4mmの深さの円筒状空洞を有する)を用いて、印刷された棒状試験片の好適なサイズの部分(硬化後に少なくとも24時間貯蔵した)をホルダーの空洞の中に充填された自己硬化アクリル系ベース材料を用いて適所にしっかりと装着した。一連の浸潤可能なサンドペーパー(400、600、1200、2400および4000グリット)を用いて、各試験片をウェット研磨して平らにした。最終的なウェット研磨された試験片を摩耗シミュレーション前に脱イオン水で洗い流して洗浄した。この組立体を摩耗シミュレータ内の循環水浴取付具の中に装着し、ぴったりと適合する黄銅シリンダカラーを各試験片ホルダーの周りに使用して研磨スラリーを保持するための貯蔵部を作り出した。研磨スラリーは、脱イオン水中に分散させた直径が約60μmの平均粒径を有する球状のPMMAポリマービーズ(例えば、Dentsply Sirona社製のポリマー68-168(HG-5))(CAS番号9011-14-7、非可塑化)から調製した(ポリマービーズの62.5重量%スラリー)。カラー内の各試験片は研磨媒体を維持するために試験全体を通して過剰なスラリーで覆われたままであった。バネ付勢されたピストンに取り付けられたスタイラス取付具内に装着された3/16インチのステンレス鋼強化ボールベアリングアンタゴニストを用いて、局部摩耗を発生させた。スタイラス取付具は、約1Hzの速度で76.5±1N(7.8±0.1kgf)の負荷を用いて試験片に負荷をかけた。負荷プロセス中に、最大負荷が達成された際にスタイラスは30°回転し、次いでピストンがその元の位置に移動すると逆回転した。各試験片を37±1℃で400,000サイクルに供した。摩耗シミュレーション後に、試験片ホルダー(試験片を含む)を穏やかな界面活性剤を含む水(例えば、希釈された液体の食器洗い洗剤用界面活性剤)の容器の中に浸し、次いで超音波洗浄水浴中に10分間入れ、脱イオン水で洗い流して洗浄した。試験片および試料ホルダーを乾燥させた後、局部摩耗領域の深さおよび直径を測定するためにKeyence VHX-6000シリーズデジタル顕微鏡システム(米国のKeyence社)により各試験片表面を特性評価した。次いで、これらの深さおよび直径値を用いて各試験片について局部摩耗量損失(mm
3)を計算した。報告されている局部摩耗量損失値は4つの試験片の平均を用いて決定した。
【表1】
【0097】
以下の表2Aおよび表2Bは、上に記載されている本発明の実施例組成物と同じように調製および評価した比較組成物の例を提供する。
【表2】
【0098】
表1A~表2Bの実施例のために得られた結果を調べると、比較例の結果に対して本発明の実施例組成物から発見された驚くべき利点および利益のいくつかに関して注目することができる。
【0099】
上記表1Aおよび表1B(本発明の実施例組成物)を参照すると、全てのこれらの実施例は好ましい「印刷適性」挙動を有し、結果として良好な試験片は困難なく印刷され、かつ一貫した形態完全性を維持していた。さらに、ロバストな強度(すなわち、曲げ応力および曲げ弾性率)ならびに靱性(すなわち、Kmaxおよび破壊仕事)特性の両方を示す望ましい機械的特性がこれらの実施例全体で認められた。より具体的には、少なくとも約100MPaの曲げ応力値および少なくとも約2500MPaの曲げ弾性率値が認められた。さらに、これらの実施例において少なくとも約0.90MPa-m1/2のKmax値および少なくとも約90J/m2の破壊仕事値も認められた。全てのこれらの実施例は、材料強度および長期摩耗作用に対する抵抗性のさらなる指標として低い局部摩耗量損失値を有していることがさらに認められた。特に約0.15mm3未満の局部摩耗量損失値が認められ、いくつかの実施例は約0.10mm3未満の損失さえも示した。
【0100】
本発明の先に記載されている実施形態は、光重合性樹脂組成物のために異なる利益および利点を提供する。本発明の組成物は付加製造システムおよび処理条件内で使用するのによく適していると共に、特に人工歯、修復クラウン、ブリッジおよびインレーなどとして耐久性を有する長期使用のための歯科補綴および修復物のために求められる必要とする物理的および化学的性能品質を満足させることができる。
【0101】
当然のことながら、本発明は全ての好ましいもしくは有利な特徴または全ての利点を本発明の全ての実施形態の中に組み込まなければならないことを要件とはしてしない。本発明についてその特定の好ましい形態を参照しながらかなり詳細に説明してきたが、本発明の範囲内で他の形態が可能である。従って添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲は、本明細書に含まれている好ましい形態の記載に限定されるべきではない。明示的に別段の定めをした場合を除き、添付の請求項の範囲、要約書および図面を含む本明細書において開示されている特徴の全てを同じ、同等または同様の目的を果たす他の特徴で置き換えてもよい。従って、明示的に別段の定めをした場合を除き、開示されている各特徴は一般的な一連の同等または同様の特徴の単に一例である。
【国際調査報告】