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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240313BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 133/20 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 133/24 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 193/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J133/20
C09J133/24
C09J193/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560022
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2022082165
(87)【国際公開番号】W WO2022206467
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110334625.1
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517045598
【氏名又は名称】日東電工(上海松江)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】田 松
(72)【発明者】
【氏名】侯 猛
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA09
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA01
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA08
4J040BA202
4J040DE021
4J040DF021
4J040DG031
4J040EB132
4J040EC002
4J040EF022
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA11
4J040GA20
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA07
4J040MB03
4J040NA08
4J040NA12
4J040NA15
4J040PA23
(57)【要約】
本発明は、粘着シートを提供する。本発明の粘着シートは、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の表面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である。本発明の粘着シートは優れた粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に容易に剥離することが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の表面に設けられた粘着剤層とを備える粘着シートであって、前記粘着剤層の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記基材層の少なくとも一方の表面の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シートはさらに、少なくとも前記粘着剤層における前記基材層とは反対側に設けられた離型フィルムを備え、前記離型フィルムの表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で0.5時間放置して測定したステンレス板に対する180°剥離粘着力が0.1~5Nであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で24時間放置して測定したステンレス板に対する180°剥離粘着力が5~12Nであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項6】
2枚の前記粘着シートの粘着剤層面を揃えて貼り付け、貼り付け面積を20mm×100mmとし、そのうちの1枚の粘着シートの一方側に400gの重りを吊り下げ、23℃×50RH%で24時間放置したときに、前記揃えて貼り付けた領域の分離量が80mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層の可溶性部分の重量平均分子量は10万以下、好ましくは8万以下、より好ましくは5万以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層のゲル分率は45%~70%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層は0℃での貯蔵弾性率(G’)が80.0~300.0×104Pa、好ましくは120.0~250.0×104Paであり、損耗弾性率(G”)が120.0~450.0×104Pa、好ましくは200.0~350×104Paであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤層は23℃での貯蔵弾性率(G’)が8.5~20×104Pa、好ましくは9.0~15.0×104Paであり、損耗弾性率(G”)は5.0~13.0×104Pa、好ましくは6.0~11.0×104Paであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記粘着剤層は粘着剤組成物からなり、前記粘着剤組成物は、ベースポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含み、
好ましくは、前記粘着付与樹脂の含有量は前記ベースポリマー100重量部に対して、30~50重量部であり、前記架橋剤の含有量は前記ベースポリマー100重量部に対して、1~5重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、前記ベースポリマーは、粘性モノマーを70~95重量部、好ましくは80~90重量部含み、極性モノマーを5~30重量部、好ましくは10~20重量部含み、共重合性モノマーを1~5重量部、好ましくは2~4重量部含み、
好ましくは、前記粘性モノマーは、炭素数4~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、前記極性モノマーは、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルおよびスチレンから選択される少なくとも1種であり、前記共重合性モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイミド系、イタコンイミド系、(メタ)アクリル酸アミノアルキル系、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系、ビニルエーテル系およびオレフィン系から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記粘着付与樹脂は、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、変性テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂および炭化水素系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記粘着付与樹脂は、水酸基価が70~110mgKOH/gの粘着付与樹脂を含み、
より好ましくは、前記粘着付与樹脂は、低軟化点粘着付与樹脂と、中軟化点粘着付与樹脂及び高軟化点粘着付与樹脂から選ばれる少なくとも1種との組み合わせであり、前記低軟化点粘着付与樹脂の軟化点は5~70℃であり、前記中軟化点粘着付与樹脂の軟化点は70℃超130℃未満であり、前記高軟化点粘着付与樹脂の軟化点は130~170℃であることを特徴とする請求項11に記載の粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シートに関し、特に優れた粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に容易に剥離することが可能な粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、粘着剤は、室温付近の温度域では柔らかい固体(粘弾性体)の状態となり、圧力により被着体に接着しやすい性質を有している。このような性質を利用して、粘着剤は、例えば基材の片面または両面に粘着剤層を設けた基材付き片面または両面粘着シートの形態で、接合や固定等の目的で様々な分野で広く使用されている。
【0003】
被着体に貼り合わせる前には、粘着シートは通常、被着体との良好な粘着を確保するために、良好な粘着性、平坦性等を有することが求められる。粘着シートは使用後、糊残りによる汚染を引き起こすことなく簡単に剥がせることが一般的に期待されている。したがって、優れた粘着性及び平坦性を確保しつつ、剥離後の優れた耐糊残り性を確保できる粘着シートの開発が、常に業界で研究する方向及び目標である。
【0004】
しかし、従来の粘着シートはこの問題点をよく解決できず、一部の粘着シートは粘着性能が悪く、所望のように被着体に長時間接着できず、使用寿命が短かった。他の一部の粘着シートは優れた粘着性を有しているが、優れた耐糊残り性を有せず、剥離後に糊残りによる汚染が生じやすかった。これら粘着シートは再利用できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためになされたものであり、優れた粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に容易に剥離することが可能な粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粘着剤層の表面粗さRa、Rz及びその比Rz/Raを特定の範囲に制御することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1].基材層と、前記基材層の少なくとも一方の表面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である粘着シート。
[2].前記基材層の少なくとも一方の表面の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である[1]に記載の粘着シート。
[3].前記粘着シートはさらに、少なくとも前記粘着剤層における前記基材層とは反対側に設けられた離型フィルムを備え、前記離型フィルムの表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4].前記粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で0.5時間放置して測定したステンレス板に対する180°剥離粘着力が0.1~5Nである[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[5].前記粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で24時間放置して測定したステンレス板に対する180°剥離粘着力が5~12Nである[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[6].2枚の前記粘着シートの粘着剤層面を揃えて貼り付け、貼り付け面積を20mm×100mmとし、そのうちのそのうちの1枚の粘着シートの一方側に400gの重りを吊り下げ、23℃×50RH%で24時間放置したときに、前記揃えて貼り付けた領域の分離量が80mm以下である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[7].前記粘着剤層の可溶性部分の重量平均分子量は10万以下、好ましくは8万以下、より好ましくは5万以下である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[8].前記粘着剤層のゲル分率は45%~70%である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[9].前記粘着剤層は0℃での貯蔵弾性率(G’)が80.0~300.0×104Pa、好ましくは120.0~250.0×104Paであり、損耗弾性率(G”)が120.0~450.0×104Pa、好ましくは200.0~350×104Paである[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[10].前記粘着剤層は23℃での貯蔵弾性率(G’)が8.5~20×104Pa、好ましくは9.0~15.0×104Paであり、損耗弾性率(G”)は5.0~13.0×104Pa、好ましくは6.0~11.0×104Paである[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[11].前記粘着剤層は粘着剤組成物からなり、前記粘着剤組成物は、ベースポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含み、
好ましくは、前記粘着付与樹脂の含有量は前記ベースポリマー100重量部に対して、30~50重量部であり、前記架橋剤の含有量は前記ベースポリマー100重量部に対して、1~5重量部である[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[12].前記ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、前記ベースポリマーは、粘性モノマーを70~95重量部、好ましくは80~90重量部含み、極性モノマーを5~30重量部、好ましくは10~20重量部含み、共重合性モノマーを1~5重量部、好ましくは2~4重量部を含み、
好ましくは、前記粘性モノマーは、炭素数4~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であり、前記極性モノマーは、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルおよびスチレンから選択される少なくとも1種であり、前記共重合性モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイミド系、イタコンイミド系、(メタ)アクリル酸アミノアルキル系、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系、ビニルエーテル系およびオレフィン系から選択される少なくとも1種である[11]に記載の粘着シート。
[13].前記粘着付与樹脂は、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、変性テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂および炭化水素系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種であり、
好ましくは、前記粘着付与樹脂は、水酸基価が70~110mgKOH/gの粘着付与樹脂を含み、
より好ましくは、前記粘着付与樹脂は、低軟化点粘着付与樹脂と、中軟化点粘着付与樹脂及び高軟化点粘着付与樹脂から選ばれる少なくとも1種との組み合わせであり、前記低軟化点粘着付与樹脂の軟化点は5~70℃であり、前記中軟化点粘着付与樹脂の軟化点は70℃超130℃未満であり、前記高軟化点粘着付与樹脂の軟化点は130~170℃である[11]に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着シートは、優れた粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に被着体に対する損傷や糊残り汚染を生じることなく容易に剥離することができ、剥離性及び作業性に優れ、様々な製品に対するシールド保護等の用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の別の実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施例の粘着シートにおける揃え貼り付け部分の分離量の測定を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0010】
1 粘着シート
10 基材層
20 粘着剤層
30 離型フィルム
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の内容について詳しく説明する。以下に記載する構成の説明は、本発明の代表的な実施形態、具体例に基づいて行うものであるが、本発明はこれらの実施形態、具体例に限定されるものではない。また、以下のことに注意すべきである。
【0012】
本明細書において、「数値A~数値B」で表される数値範囲は、限界値A及びBを含む範囲を意味する。本明細書において「以上」または「以下」で表される数値範囲は、その数字を含む数値範囲を意味する。本明細書において、「てもよい」で表すのは、ある処理を行うことも行わないことも含む意味である。本明細書において、「任意」、「任意の」、または「任意的に」とは、あるいくつかの物質、成分、実行ステップ、適用条件などの要素が使用されるか、または使用されないかを意味する。本明細書において、使用している単位名はすべて国際標準単位名である。本明細書において、「複数(個/種)」とは、特に説明のない限り、2個/種または2個/種以上であることを意味する。
【0013】
本明細書において、記載される「いくつかの具体的な/好ましい実施形態」、「別のいくつかの具体的な/好ましい実施形態」、「実施形態」などとは、記載される当該実施形態に関連する特定の要素(例えば、特徴、構造、性質、および/または特性)がここで記載される少なくとも1つの実施形態に含まれており、他の実施形態には存在してもしなくてもよいことを意味する。さらに、記載される要素は、様々な実施形態において任意の適切な形態で組み合わせることができることを理解されるべきである。
【0014】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の表面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、粘着シート1は、基材層10と、基材層10の一方の側に設けられた粘着剤層20とを備え、粘着剤層20は、好ましくは、基材層10の全面に設けられている。
【0016】
図2は、本発明の別の実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。図2に示すように、粘着シート1は、基材層10と、基材層10の一方の側に設けられた粘着剤層20と、基材層10における粘着剤層20とは反対側に設けられた離型フィルム30を備える。
【0017】
また、図示はしないが、本発明の粘着シートは、使用されるまでの間に粘着面を保護する目的で、粘着剤層の外側に剥離ライナーが設けられていてもよい。
【0018】
本明細書における粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含されてもよい。なお、ここに開示される粘着シートは、枚葉状であってもよく、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の粘着シートは、長尺状で提供されてもよい。本発明において、かかる粘着シートは好ましくは枚葉でロール状の形態で使用される。
【0019】
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0であることを特徴とする。前記表面粗さRa及びRzはいずれもJIS-B0601-1994の測定方法に準拠して測定される。
【0020】
表面粗さは、粘着剤層と被接面との有効接触面積を小さくすることができ、その現れとして、粘着力が低減される。本発明では、粘着剤層の表面粗さは、接触時間の延長または圧力の増大により徐々に低減し、有効接触面積が増加することを見出し、その現れとして、粘着力が徐々に元のレベルに戻る。
【0021】
本発明において、前記粘着剤層の表面粗さは上記特定範囲を満たすことにより、被着体の表面の平坦性に対する粘着シートの影響を抑制し、粘着シートの良好な再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に容易に剥離することが可能である。本発明において、粘着剤層のRaが0.2μm未満であると、及び/又はRzが2.0μm未満であると、及び/又はRz/Raが3.0未満であると、初期粘着力が高すぎ、貼り合わせるときに平坦ではなく、再度剥がすことはできず、リワーク性が得られない。一方、粘着剤層のRaが1.5μmを超えると、及び/又はRzが15.0μmを超えると、及び/又はRz/Raが30.0を超えると、経時で粘着力が十分に上昇せず、ひび割れや剥がれが生じやすい。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、前記基材層の少なくとも一方の表面も粘着剤層と同じ範囲の表面粗さを有する。すなわち、前記基材層の少なくとも一方の表面の表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である。
【0023】
本発明の別のいくつかの実施形態において、前記粘着シートはさらに、少なくとも前記粘着剤層における前記基材層とは反対側に設けられた離型フィルムを備え、前記離型フィルムも粘着剤層と同じ範囲の表面粗さを有する。すなわち、前記離型フィルムの表面粗さは、Raが0.2~1.5μm、好ましくは0.4~1.0μmであり、Rzが2.0~15.0μm、好ましくは3.0~10.0μmであり、Rz/Raが3.0~30.0、好ましくは5.0~20.0である。
【0024】
本発明では、前記基材層の少なくとも一方の表面及び/又は離型フィルムの表面粗さは前記特定範囲を満たすことにより、被着体の表面の平坦性に対する粘着シートの影響を抑制し、粘着シートの良好な再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に容易に剥離することが可能である。また、前記基材層の少なくとも一方の表面及び/又は離型フィルムの表面粗さが本発明の上記範囲から外れると、前記したかかる粘着剤層の表面粗さが本発明の範囲外れる場合と同じ不利な効果が発生してしまう。
【0025】
本発明では、上記表面粗さを有する基材層及び/又は離型フィルムを選択することにより、前記基材層と粘着剤層及び任意の離型フィルムとを組み合わせた際に、表面粗さは基材層及び/又は離型フィルムから粘着剤層に転写され、それにより粘着剤層も上記表面粗さを有する。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で0.5時間放置して測定したステンレス板に対する180°剥離粘着力は0.1~5N、好ましくは0.3~3Nである。別のいくつかの好ましい実施形態において、本発明の粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で24時間放置して測定したステンレス板に対する180°剥離粘着力は5~12N、好ましくは6.0~10Nである。
【0027】
本発明の粘着シートの上記粘着力が上記範囲内であると、優れた粘着性を得ることができる。本発明の粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で0.5時間放置するときに前記粘着力が0.1N未満であり、及び/又は本発明の粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で24時間放置するときに前記粘着力が5N未満であると、粘着性不足によって粘着シートが剥がれやすくなる。一方、本発明の粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で0.5時間放置するときに前記粘着力が5Nを超えると、及び/又は本発明の粘着シートをステンレス板に貼り合わせ、23℃×50RH%で24時間放置するときに前記粘着力が12Nを超えると、被着体から剥がれにくく、剥離の作業性が悪く、糊残り汚染等の悪影響が生じやすくなる。上記粘着力は、例えば、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、被着体は、好ましくはSUS430BA板、SUS304板、SUS304BA板等を含む。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の2枚の粘着シートの粘着剤層面を揃えて貼り付け、貼り付け面積を20mm×100mmとし、そのうちの1枚の粘着シートの一方側に400gの重りを吊り下げ、23℃×50RH%で24時間放置したときに、前記揃えて貼り合わせた領域の分離量は80mm以下、好ましくは50mm以下である。この分離量の詳細な測定方法および手順は実施例に示す。本発明の粘着シートは、上記範囲内の前記分離量を有することにより、優れた粘着性を得ることができる。
【0030】
本発明の粘着シートの厚みは特に限定されないが、いくつかの好ましい実施形態において、粘着シートの厚みは、好ましくは0.05~0.4mm、より好ましくは0.07~0.3mmである。粘着シートの厚みを上記範囲とすることにより、良好な粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)を得ることができる。
【0031】
[基材層]
ここに開示される粘着シートを構成する基材層の材質は、特に限定されず、この粘着シートの使用目的や使用態様などに応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレン・プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などの含フッ素樹脂を主成分とする含フッ素樹脂フィルム、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム、流延ポリプロピレンを主成分とするフィルム、熱可塑性ポリウレタンフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合化した構造体の基材であってもよい。このような複合基材としては、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとの積層構造を有する基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチック基材等が挙げられる。
【0032】
本発明の基材層の表面は、隣接する層との密着性および保持性等を向上させるために、任意の表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、コーティング処理が挙げられる。
【0033】
本発明の基材層の厚みは、所望とする強度または柔軟性、ならびに使用目的等に応じて、任意の適切な厚みに設定され得る。基材層の厚みは、好ましくは10~200μmであり、より好ましくは20~100μmである。
【0034】
本発明において、前記基材層の少なくとも一方の表面は、粘着剤層と同じ範囲の表面粗さを有し、具体的な表面粗さの範囲は前に示すとおりである。
【0035】
[粘着剤層]
本発明において、前記粘着剤層は前記した表面粗さの範囲を有する。
【0036】
好ましい一実施形態において、前記粘着剤層の可溶性部分の重量平均分子量は10万以下、好ましくは8万以下、より好ましくは5万以下である。粘着剤層の可溶性部分の重量平均分子量が10万を超えると、ポリマーの凝集力が不足であるため、剥離時に糊残りが発生する傾向がある。
【0037】
重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置は、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用することができる。
【0038】
好ましい一実施形態において、前記粘着剤層のゲル分率は45%~70%、好ましくは50%~70%、より好ましくは55%~65%である。ゲル分率が上記範囲内であると、優れた粘着特性を得ることができる。ゲル分率は、例えば、ベースポリマーの組成、分子量、架橋剤の使用の有無及びその種類並ぶに量の選択等に応じて調整することができる。
【0039】
好ましい一実施形態において、前記粘着剤層は0℃での貯蔵弾性率(G’)が80.0~300.0×104Pa、好ましくは120.0~250.0×104Paであり、損耗弾性率(G”)が120.0~450.0×104Pa、好ましくは200.0~350×104Paである。
【0040】
別の好ましい一実施形態において、前記粘着剤層は23℃での貯蔵弾性率(G’)が8.5~20×104Pa、好ましくは9.0~15.0×104Paであり、損耗弾性率(G”)は5.0~13.0×104Pa、好ましくは6.0~11.0×104Paである。
【0041】
貯蔵弾性率及び損耗弾性率が上記範囲内であると、被着体への貼り付きによる当該被着体表面の汚染が十分に低く、さらに、被着体に対する凹凸追従性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0042】
粘着剤層の貯蔵弾性率及び損失弾性率は、例えば、粘着剤層を構成する粘着剤組成物中のベースポリマーの種類(例えば、ベースポリマーのガラス転移温度、分子量等)によって制御することができる。粘着剤層を構成する粘着剤組成物中のベースポリマーのガラス転移温度は、例えば、当該ベースポリマーを構成するモノマーを適宜選択することにより調整することができる。
【0043】
本発明において、前記粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、前記粘着剤組成物は、ベースポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含む。前記粘着剤組成物は、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等をベースポリマー(すなわちポリマー成分の50重量%以上を占める成分)として含んでもよい。これらの中でも、粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物から形成された層であることが好ましい。粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、水分散型、溶剤型、ホットメルト型、活性エネルギー線硬化型(例えば、光硬化型)などの種々の形態のものであり得る。
【0044】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について詳しく説明する。
【0045】
(ベースポリマー)
本発明の粘着剤組成物は、ベースポリマーを含む。粘着剤組成物は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0046】
ベースポリマーの含有量は、特に制限されないが、十分な接着信頼性を得る観点から、粘着剤組成物全量(総重量、100質量%)に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。粘着剤組成物におけるベースポリマーの含有量を上記範囲に調整することにより、応力緩和性及び耐久性がより優れ、被着体に対する粘着性に優れた粘着剤組成物を提供することができる。
【0047】
ここに開示される技術におけるベースポリマーは、主モノマーとして粘性モノマーを含むモノマー、前記主モノマーと共重合性を有する共重合性モノマー、及び極性モノマーを含むモノマー成分のポリマーであることが好ましい。ここで主モノマーとは、ベースポリマーを構成するモノマー成分中の主成分、すなわち、該モノマー成分において50重量%を超えて含まれる成分をいう。
【0048】
((粘性モノマー))
好ましい一実施形態において、粘性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレートを含む。本明細書において、用語「アルキル(メタ)アクリレート」とは、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートを意味する。
【0049】
好ましくは、前記粘性モノマーは、炭素数4~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である。炭素数4~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルが挙げられる。なかでも、アクリル酸n-ブチル(BA)及びアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)が好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
粘性モノマーの含有量は、ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、70~95重量部であり、80~90重量部であることが好ましい。粘性モノマーの含有量が上記範囲内であると、優れた粘着性を得ることができる。
【0051】
((極性モノマー))
極性モノマーとしては、比較的高いガラス転移点を有するポリマーを形成可能な極性モノマーを好適に用いることができる。極性モノマーは、粘着剤層の凝集強度を高めるのに有用である。極性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
極性モノマーの非限定的な具体例としては、例えば、アクリロニトリル(AN)、メチルメタアクリレート(MMA)、酢酸ビニル(VAc)、スチレン(St)などが挙げられる。
【0053】
極性モノマーの含有量は、ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、5~30重量部であり、10~20重量部であることが好ましい。極性モノマーの含有量が上記範囲内であると、凝集強度及び耐熱性をさらに向上させることができる。
【0054】
((共重合性モノマー))
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、例えば、水酸基含有モノマー(水酸基を含有するモノマー)、カルボキシル基含有モノマー(カルボキシル基を含有するモノマー)、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アミド基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、スクシンイミド骨格を有するモノマー、マレイイミド系、イタコンイミド系、(メタ)アクリル酸アミノアルキル系、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系、ビニルエーテル系、オレフィン系等が挙げられる。これらの中でも、水酸基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0055】
共重合性モノマーの含有量は、ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、1~5重量部であり、2~4重量部であることが好ましい。共重合性モノマーの含有量が上記範囲内であると、粘着剤の凝集力が高すぎるのを防止することができ、粘着性を向上させることができる。
【0056】
水酸基含有モノマーとは、分子内に水酸基を少なくとも1つ有するモノマーを意味する。ベースポリマーを構成するモノマー成分が水酸基含有モノマーを含む場合、すなわち、ベースポリマーが水酸基含有モノマー由来のモノマー単位を含む場合には、被着体との水素結合等の2次結合が形成されるため、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の凝集力が高まり、粘着力の経時的な変化をより効果的に抑制することができ、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有する。また、ベースポリマーの原料モノマーに水酸基含有モノマーを含有させることにより、架橋剤を用いる場合に、該架橋剤との架橋反応を効果的に生じることができ、粘着剤としての効果を十分に発現させることができる。また、剥離作業時の被着体の割れを効果的に防止することもできる。本実施形態のベースポリマーは、1種の水酸基含有モノマーを用いてもよいし、2種以上の水酸基含有モノマーを用いてもよい。
【0057】
水酸基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等が挙げられる。
【0058】
水酸基含有モノマーの含有量は、特に限定されず、例えば、ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、水酸基含有モノマーの含有量が、1~5重量部、好ましくは2~4重量部である。水酸基含有モノマーの含有量が上記範囲内にあると、被着体との水素結合等の2次結合が形成されるため、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の凝集力が高まり、粘着力の経時的な変化をより効果的に抑制することができ、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有する。水酸基含有モノマーの含有量が1重量部未満であると、十分な接着性が得られない。水酸基含有モノマーの含有量が5重量部を超えると、粘着力が大きくなりすぎ、ブロッキングが生じやすくなるおそれがある。また、剥離作業時に被着体の割れが生じやすくなるおそれがある。
【0059】
カルボキシル基含有モノマーとは、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有するモノマーを意味する。ベースポリマーの原料モノマーにカルボキシル基含有モノマーを含ませることにより、被着体との水素結合等の2次結合が形成されるため、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の凝集力が高まり、粘着力の経時的な変化をより効果的に抑制することができ、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有する。また、ベースポリマーの原料モノマーにカルボキシル基含有モノマーを含有させることにより、架橋剤を用いる場合に、該架橋剤との架橋反応を効果的に生じることができ、粘着剤としての効果を十分に発現させることができ、また、剥離作業時の被着体の割れを効果的に防止することもできる。
【0060】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラクン酸、マレイン酸無水物及びイタコン酸無水物などが挙げられる。なかでも、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。上記のカルボキシル基含有モノマーは、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
カルボキシル基含有モノマーの含有量は、特に限定されず、例えば、ベースポリマーの全モノマー成分100重量部に対して、カルボキシル基含有モノマーの含有量が、好ましくは1~5重量部、より好ましくは2~4重量部である。カルボキシル基含有モノマーの含有量が上記範囲内にあると、被着体との水素結合等の2次結合が形成されるため、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の凝集力が高まり、粘着力の経時的な変化をより効果的に抑制することができ、また、剥離後の被着体への糊残りがより少なく、より高い凝集性を有する。カルボキシル基含有モノマーの含有量が5重量部を超えると、粘着力が大きくなりすぎ、ブロッキングが生じやすくなるおそれがある。また、剥離作業時に被着体の割れが生じやすくなるおそれがある。カルボキシル基含有モノマーの含有量が1重量部未満であると、十分な接着性が得られない。
【0062】
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0063】
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
【0064】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0065】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-イソシアナートエチルなどが挙げられる。
【0066】
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0067】
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等が挙げられる。
【0068】
スクシンイミド骨格を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等が挙げられる。
【0069】
マレイミド系としては、例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられる。
【0070】
イタコンイミド系としては、例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミドが挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリル酸アミノアルキル系としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等が挙げられる。
【0072】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系としては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等が挙げられる。
【0073】
ビニルエーテル系としては、例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル等が挙げられる。
【0074】
オレフィン系としては、例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等が挙げられる。
【0075】
ベースポリマーを得る方法は、特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の各種公知の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。溶液重合を行う際の重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~170℃程度(典型的には40℃~140℃程度)とすることができる。
【0076】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0077】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005重量部~1重量部程度(典型的には凡そ0.01重量部~1重量部程度)の範囲から選択することができる。
【0078】
(粘着付与樹脂)
粘着剤組成物は粘着付与樹脂をさらに含む。粘着付与樹脂を用いることにより、接着力を高めることができる。
【0079】
粘着付与樹脂としては、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、変性テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂及び炭化水素系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの粘着付与樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
フェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。
【0081】
テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基及びフェノール残基を含むポリマーをいい、テルペンとフェノール化合物の共重合体(テルペン-フェノール共重合樹脂)と、テルペンの単独重合体または共重合体をフェノールで変性して得られる樹脂(フェノール変性テルペン樹脂)との両方の概念を含む。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン系の好適な例としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、I体、及びd/l体(ジペンテン)を含む)等のモノテルペンが挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素添加して得られる構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水素化テルペンフェノール樹脂と呼ばれることもある。
【0082】
アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドから得られる樹脂(油性フェノール樹脂)である。アルキルフェノール樹脂の例としては、例えば、ノボラック型、レゾール型が挙げられる。
【0083】
テルペン系粘着付与樹脂としては、その実例は、例えば、α-ピネン、β-ピネン、d-リモネン、1-リモネン、ジペンテン等のテルペン系(典型的にはモノテルペン系)のポリマーを含み得る。1種のテルペンの単独重合体であってもよいし、2種以上のテルペンの共重合体であってもよい。1種のテルペン系の単独重合体としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。
【0084】
変性テルペン系粘着付与樹脂の例としては、例えば、上記テルペン系粘着付与樹脂を変性したものが挙げられる。具体的には、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示できる。
【0085】
ロジン系粘着付与樹脂の概念には、ロジン類とロジン誘導体樹脂の両方が含まれる。
【0086】
ロジン類の例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水素添加、不均化、重合等により変性して得られる変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学修飾したロジンなど)を含む。
【0087】
ロジン誘導体樹脂は、典型的には、前記のようなロジン類の誘導体である。ここでいうロジン系粘着付与樹脂の概念には、未変性ロジンの誘導体および変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジンを含む)の誘導体が含まれる。
【0088】
ロジン誘導体樹脂としては、例えば、未変性ロジンとアルコール類とのエステルである未変性ロジンエステル、変性ロジンとアルコール類とのエステルである変性ロジンエステル等のロジンエステル類;例えば、ロジンを不飽和脂肪酸で変性して得られる不飽和脂肪酸変性ロジン類;例えば、ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性して得られる不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;例えば、ロジン類又は前記した各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類及び不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を含む)のカルボキシル基を還元処理して得られるロジンアルコール類;例えば、ロジン類や前記した各種ロジン誘導体の金属塩;等が挙げられる。
【0089】
ロジンエステル類の具体例としては、未変性ロジンまたは変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)のメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステルなどが挙げられる。
【0090】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族環式炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂(C8~C10石油樹脂など)、脂肪族・芳香族石油樹脂(スチレン-オレフィン共重合体等など)、脂肪族・脂環族石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロン-インデン系樹脂等の各種炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0091】
脂肪族炭化水素樹脂としては、炭素数4~5程度のオレフィン及びジエンから選ばれる1種又は2種以上の脂肪族炭化水素のポリマーが挙げられる。上記オレフィンの例としては、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン等が挙げられる。上記ジエンの例としては、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0092】
芳香族炭化水素樹脂としては、炭素数8~10程度のビニル基含有芳香族炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)のポリマー等が挙げられる。脂肪族環式炭化水素樹脂の例としては、いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量化して重合して得られる脂環式炭化水素樹脂;環式ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体又はそれらの水素添加物;芳香族炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族石油樹脂の芳香環などを水素添加して得られる脂環式炭化水素系樹脂等が挙げられる。
【0093】
好ましい一実施形態において、粘着剤組成物は、水酸基価が70~110mgKOH/gである粘着付与樹脂を含むことが好ましい。このような水酸基価が高い樹脂を使用することにより、接着力等の粘着剤の特性を損なうことなく、良好な耐高温性を得ることができる。ベースポリマーとのより良い相溶性等の観点から、粘着付与樹脂の水酸基価は80~110mgKOH/gであることが好ましい。上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定される電位差滴定法により測定される値を用いることができる。
【0094】
好ましい一実施形態において、凝集性向上の観点から、粘着付与樹脂は、低軟化点粘着付与樹脂と、中軟化点粘着付与樹脂及び高軟化点粘着付与樹脂から選ばれる少なくとも1種との組み合わせであり、前記低軟化点粘着付与樹脂の軟化点は5~70℃であり、前記中軟化点粘着付与樹脂の軟化点は70℃超130℃未満であり、前記高軟化点粘着付与樹脂の軟化点は130℃~170℃である。粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902及びJIS K 2207に規定される軟化点試験法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0095】
本発明において、「低軟化点粘着付与樹脂と、中軟化点粘着付与樹脂及び高軟化点粘着付与樹脂から選ばれる少なくとも1種との組み合わせ」とは、低軟化点粘着付与樹脂と中軟化点粘着付与樹脂との組み合わせ、低軟化点粘着付与樹脂と高軟化点粘着付与樹脂、および低軟化点粘着付与樹脂と中軟化点粘着付与樹脂と高軟化点粘着付与樹脂との組み合わせを意味する。
【0096】
本発明において、低軟化点粘着付与樹脂としては、ロジンメチルエステル、液状テルペン樹脂等が例示され、中軟化点粘着付与樹脂としては、ロジンペンタエリスリトールエステル(数平均分子量1800~2500)、テルペン樹脂(数平均分子量1800~2500)等が例示され、高軟化点粘着付与樹脂としては、ロジンペンタエリスリトールエステル(数平均分子量2500超)、テルペン樹脂(数平均分子量2500超)、ロジンテルペンフェノール等が例示される。
【0097】
好ましい一実施形態において、前記粘着付与樹脂の含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対して、30~50重量部であり、好ましくは、低軟化点粘着付与樹脂が3~15重量部、中軟化点粘着付与樹脂が15~35重量部、及び高軟化点粘着付与樹脂が7~20重量部であり、より好ましくは、低軟化点粘着付与樹脂が3~10重量部、中軟化点粘着付与樹脂が20~27重量部、及び高軟化点粘着付与樹脂が7~13重量部である。
【0098】
(架橋剤)
本発明において、凝集力等を調整するには、粘着剤組成物は、架橋剤を含む。架橋剤は、通常用いる架橋剤を使用することができ、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤を使用することにより、適度な架橋反応を生じ、凝集力を十分に向上させ、良好な粘着性を確保することができるとともに、剥離作業時の被着体の割れを効果的に防止することができる。これらの架橋剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0099】
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく使用することができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有する(エポキシ官能価3~5)エポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
エポキシ系架橋剤の具体例としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-C」及び商品名「TETRAD-X」、DIC社製の商品名「EPICLON CR-5L」、ナガセケムテックス(株)製の商品名「DENACOL EX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」などが挙げられる。
【0101】
エポキシ系架橋剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1~5重量部、より好ましくは2~4重量部である。
【0102】
エポキシ系架橋剤を含有する実施形態において、エポキシ系架橋剤のエポキシ当量は、80~120g/eqであることが好ましい。
【0103】
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0105】
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネートなどのブチレンジイソシアネート;1,2-ヘキシレンジイソシアネート、1,3-ヘキシレンジイソシアネート、1,4-ヘキシレンジイソシアネート、1,5-ヘキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキシレンジイソシアネート、2,5-ヘキシレンジイソシアネートなどのヘキシレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0106】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネートなどのシクロヘキシレンジイソシアネート;1,2-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネートなどのシクロペンチレンジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0107】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0108】
好ましい多官能イソシアネートとしては、1分子当たり3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。前記3官能以上のイソシアネートは、2官能又は3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には、2量体又は3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物などであってもよい。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体又は3量体、ヘキシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキシレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどの多官能イソシアネートが挙げられる。前記多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成化学製の商品名「DURANATE TPA-100」、日本ポリウレタン工業製の商品名「コロネート L」、日本ポリウレタン工業製の商品名「コロネート HL」、日本ポリウレタン工業製の商品名「コロネート HK」、日本ポリウレタン工業製の商品名「コロネート HX」、日本ポリウレタン工業製の商品名「コロネート2096」などが挙げられる。
【0109】
イソシアネート系架橋剤を含有する実施形態において、イソシアネート系架橋剤におけるイソシアネート基含有量(NCO含有量)は7~15%であることが好ましく、イソシアネート官能価は3である。
【0110】
イソシアネート系架橋剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1~5重量部であり、好ましくは2~4重量部である。
【0111】
メラミン系架橋剤の例としては、ヘキサメチロールメラミン、ブチル化メラミン樹脂(例えば、DIC社から入手できる商品名「SUPER BECKAMINE J-820-60N」)などが挙げられる。
【0112】
アジリジン系架橋剤の例としては、例えばが挙げられる:トリメチロールプロパントリ[3-(1-アジリジニル)プロピオンネート]、トリメチロールプロパントリ[3-(1-(2-メチル)アジリジニルプロピオンネート)]。アジリジン系架橋剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、Chemitite PZ-33、Chemitite DZ-22EなどのChemititeシリーズ(NipponShokubai Co.,Ltd.製)などを使用してもよい。
【0113】
金属キレート系架橋剤の例としては、例えば、アルミニウムキレート系化合物、チタンキレート系化合物、亜鉛キレート系化合物、ジルコニウムキレート系化合物、鉄キレート系化合物、コバルトキレート系化合物、ニッケルキレート系化合物、スズキレート系化合物、マンガンキレート系化合物、クロムキレート系化合物などが挙げられる。
【0114】
架橋剤の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、1~5重量部である。架橋剤の使用量を大きくすることにより、より高い凝集力を得る傾向がある。いくつかの実施形態において、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、3重量部以上であることが好ましい。また、過度な凝集力向上によるタック低下を避ける観点から、ベースポリマー100重量部に対する架橋剤の使用量は、5重量部以下であることが好ましい。
【0115】
上述した架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒としては、例えばスズ系触媒(例えばジラウリン酸ジオクチルスズ)を好適に用いることができる。架橋触媒の使用量は、特に制限されないが、例えばベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.0001~1重量部である。
【0116】
上述した各成分以外に、本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有してもよい。このような各種の添加剤は、従来公知のものを常法により使用することができる。
【0117】
(粘着剤層の形成)
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、基材層に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材層に転写する方法(転写法)を採用してもよい。生産性の観点から、転写法が好ましい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材層裏面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0118】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
【0119】
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40~150℃程度とすることができ、通常は60~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材フィルムや粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的で、さらにエージングを行ってもよい。
【0120】
粘着剤層の厚みは特に制限されないが、被着体への接着性と凝集性とのバランスを考慮して、粘着剤層の厚みは、好ましくは5~30μmであり、より好ましくは8~20μmである。粘着剤層の厚みを上記範囲とすることにより、良好な接着性を達成することができる。
【0121】
[離型フィルム]
本発明の粘着シートは、必要に応じて、離型フィルムをさらに備えていてもよい。離型フィルムは、少なくとも一方側の面が剥離面となり、本発明の粘着剤層を保護するために設けられてもよい。図2に示すように、本発明の粘着シートは、粘着剤層における基材層とは反対側に設けられる離型フィルムを備えている。
【0122】
離型フィルムは、当業界で通常使用される材料を用い、単層構造または多層構造で形成される。例えば、離型フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの一方側に形成された離型剤層とを備えるシートであって、本発明の粘着シートを使用する前に粘着剤層の各面を露出させるために剥離されるシートである。
【0123】
離型フィルムの基材フィルムは、任意の適切な材料で構成することができ、例えば、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムから選択され得る。
【0124】
離型剤層は、粘着剤層のベースポリマーに応じて、フッ化シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン系樹脂および長鎖アルキル化合物等の一般的な離型剤から適切な離型剤を選択し、当該ベースポリマーに選択した離型剤を含有させてなる層であってもよい。
【0125】
[剥離ライナー]
本発明において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に剥離ライナーを使用することができる。剥離ライナーとしては、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー;フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)のような低粘着性材料から形成される剥離ライナー等を使用してもよい。上記剥離ライナーは、例えば、上記ライナー基材をシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤で表面処理することにより形成することができる。
【0126】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。例えば、粘着剤組成物を基材層に塗布する方法、あるいは粘着剤組成物を任意の適切な基体にコーティングして形成されたコート層を基材層に転写する方法等が挙げられる。
【0127】
<粘着シートの用途>
ここに開示される粘着シートは、例えば様々な部品や機器に貼り付け、遮蔽や保護の用途として用いられる。ここに開示される粘着シートは、例えば、自動車、船舶、汽車、運転室、家具等の製品を塗装する際のペンキのマスキング、塗料のマスキング、及び内装等に使用することができる。
【実施例
【0128】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に断りがない限り「部」および「%」は重量基準である。
【0129】
実施例において、具体的な条件を明記しないものは、通常の条件又はメーカーの勧めの条件に従って行う。使用する材料又は器械は、特に断りがない限り、市販から入手される一般的な製品を使用することが可能である。
【0130】
(ベースポリマーA1の調製)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート(BA)(浙江衛星製)90.0部、酢酸ビニル(VAc)7.0部、アクリル酸(AA)2.9部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.1部、および重合溶媒としての酢酸エチル120部を仕込み、65℃、窒素雰囲気下で1.5時間撹拌した後、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を仕込み、65℃で6~8時間反応を行い、ベースポリマーA1の溶液を得た。
【0131】
(ベースポリマーA2~A5の調製)
モノマー成分の種類及び使用量を表1に示すように変更した以外は、ベースポリマーA1と同様にしてベースポリマーA2~A5を調製した。
【0132】
【表1】
【0133】
<粘着シートの作製>
実施例1
上記ベースポリマーA1の溶液に、該溶液に含まれるベースポリマーA1 100部に対して、低軟化点粘着付与樹脂(MGDR、軟化点10℃)10.0部、中軟化点粘着付与樹脂(PEDR-105、軟化点105℃;PEDR-120、軟化点120℃、それぞれ10.0部)20.0部、高軟化点粘着付与樹脂(PR12603N、軟化点135℃)10.0部、イソシアネート架橋剤(品番:コロネート L、日本ポリウレタン工業社製)2.0部、及びエポキシ系架橋剤(品番:TETRAD C 、三菱ガス化学社製)0.1部を加え、均一に混合して粘着剤組成物C1を調製した。
基材層としての厚み50μmのPTFEフィルムの一面に粘着剤組成物C1を塗布し、130℃で2分間加熱して厚み10μmの粘着剤層を形成した。このようにして、粘着シートを得た。評価結果を表2に示す。
【0134】
実施例2~4及び比較例1~3
ベースポリマーの種類、粘着付与樹脂の種類及び使用量、架橋剤の使用量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。評価結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
<評価試験>
(1)Ra及びRz
Ra及びRzはJIS-B0601-1994の測定方法に準して測定した。
【0137】
(2)ゲル分率
粘着剤組成物からなる粘着剤サンプル約0.1g(重量Wg1)を、平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム(重量Wg2)で巾着状に包み、口部をタコ糸(重量Wg3)でしっかりと締めた。この包みを酢酸エチル50mLに浸漬し、室温(典型的には23℃)で7日間保存した後、上記包みを取り出して外面に付着した酢酸エチルを拭き取り、130℃で2分間乾燥させ、該包みの重量(Wg4)を測定した。ゲル率は、各値を下記式に代入して求めた。
ゲル分率(%)=[(Wg4-Wg2-Wg3)/Wg1]×100
【0138】
(3)粘着力
各実施例及び各比較例で作製した粘着シートを幅20mm×長さ150mmに切り出して試験片とした。被着体としてはトルエンで洗浄したSUS板(SUS430BA板)を使用した。23℃、50%RHの標準環境下で、各試験片の粘着面を被覆していた剥離ライナーを剥がし、露出した粘着面を2kgのローラーを1往復させることにより被着体に圧着した。このようにして被着体に圧着した試験片を、上記標準環境下にそれぞれ0.5時間及び24時間放置した後、JIS Z 0237に準じて、万能材料試験機(島津製作所製、商品名「AG-Xプラス電子万能試験機」」)を用いて、引張速度:300mm/min、剥離角度:180°で剥離し、当該剥離に必要な力(180°剥離粘着力)(N)を測定した。
【0139】
(4)揃えて貼り合わせた領域の分離量
図3に示すように、市販の両面テープを用いて、その一面を被着体としてのトルエンで洗浄したSUS板(SUS430BA板)に貼り付けた。1枚の粘着シートを上記両面テープにおけるSUS板とは反対側の一面に貼り付けた。別の1枚の粘着シートを切り出して、上記2枚の粘着シートの粘着剤層面を揃えて貼り付け、貼り付け面積を20mm×100mmとし、貼り付け面は図3に接着面として示した。上記別の1枚の粘着シートの一方側に400gの重りを吊り下げ、23℃×50RH%で24時間放置し、前記揃えて貼り付けた領域の分離量を測定した。
【0140】
(5)貯蔵弾性率及び損耗弾性率
実施例、比較例の各粘着剤組成物を用いて、それぞれ測定用の粘着剤層(厚み:50μm)を作製した。次に、粘着剤層を直径7.9mmに打ち抜き、平行板で挟むように固定し、このように得られたサンプルを測定サンプルとした。上記測定サンプルについて、動的粘弾性測定装置(レオメトリック社製、商品名「ARES」)を用いて、以下の条件で動的粘弾性を測定し、0℃及び23℃での貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。
測定模式:せん断モード
温度範囲:-70℃~150℃
昇温速度:5℃/分間
測定周波数:1Hz
【0141】
(6)定荷重(RT×400g)
上記(4)揃えて貼り合わせた領域の分離量に基づいて評価し、前記揃えて貼り合わせた領域の分離量が40mm未満の場合は◎とし、40~80mmの場合は○とし、80mm以上の場合は×とした。
【0142】
(7)糊残り性
上記実施例及び比較例で得られた粘着シートをステンレス板(SUS430BA板)に貼り付け、貼り付け面積を200mm×200mmとし、140℃で2分間放置し、室温までに冷却した後、手で粘着シートを剥がし、以下の基準に従って評価した。
○:糊残りなし
×:糊残りあり
【0143】
(8)平坦性
上記実施例及び比較例で得られた粘着シートを2Kgのローラーを用いてステンレス板(SUS430BA板)に貼り付け、貼り付け面積を50mm×100mmとし、貼り付けた後にシワや気泡がない場合はOとし、気泡やシワがある場合は×とした。
【0144】
(9)リワーク性
上記実施例及び比較例で得られた粘着シートを2Kgのローラーを用いてステンレス板(SUS430BA板)に貼り付け、貼り付け面積を50mm×100mmとした。貼付後2時間以内にはスムーズに剥がすことができ、粘着テープ及び被着体の外観に明らかな変化はなく、貼り直し可能である場合は◎とし、貼付後1時間以内にはスムーズに剥がすことができ、粘着テープの外観や被着体の外観に明らかな変化はなく、貼り直し可能である場合はOとし、スムーズに剥がせなかったり、外観に明らかな変化があったり、貼り直しができなかったりする場合は×とする。
【0145】
表2から明らかなように、実施例1~4の粘着シートは、優れた粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)を有し、かつ使用後に容易に剥離することが可能であった。一方、比較例1~3では、粘着剤層の表面粗さが本発明の範囲外であるか、又は本発明の他の要件を満足できないと、良好な粘着性、平坦性及び再利用性(リワーク性)が得られず、使用後に容易に剥離することができなかった。
図1
図2
図3
【国際調査報告】