(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240313BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20240313BHJP
G02B 5/23 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/10
G02B5/23
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560097
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 IB2022053964
(87)【国際公開番号】W WO2022229902
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520000722
【氏名又は名称】アルコン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】グゥー,ジュンハオ
(72)【発明者】
【氏名】ブライトコプフ,リチャード・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,スティーブ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】クミ,オーガスティン・トワム
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
【Fターム(参考)】
2H006BB03
2H006BB08
2H006BC06
2H006BC07
2H006BE02
2H148DA05
2H148DA09
2H148DA24
(57)【要約】
本発明は、瞳孔セクションと、瞳孔セクションを取り囲む略環状の虹彩セクションとを含み、少なくとも瞳孔セクションはフォトクロミックであり、虹彩セクションは着色され印刷された不透明の断続的パターンを有し、前記パターンはクリアインク層によって覆われ、クリアインク層は観察者にとってレンズの外表面にある、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズを対象としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズであって、瞳孔セクションと、前記瞳孔セクションを取り囲む略環状の虹彩セクションとを含み、少なくとも前記瞳孔セクションはフォトクロミックであり、前記虹彩セクションは着色され印刷された不透明の断続的パターンを有し、前記パターンはクリアインク層によって覆われ、前記クリアインク層は観察者にとってレンズの外表面にあり、前記パターンは、a)第1のシェードを有するカラーの環状パターンであって、前記環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、前記環状パターンは実質的に平坦な外周縁及び実質的に平坦な内周縁を有し、前記外周縁は約13.5mm~約12.5mmの直径を有し、前記内周縁は約5mm~約7mmの直径を有する、環状パターンと、最も外側の星形パターン、外側の星形パターン及び内側の星形パターンからなるパターンの群から選択される、前記虹彩セクションの一部に広がる少なくとも少なくとも2つの他の着色パターンであって、前記最も外側の星形パターンは第2のシェードのドットを含み、前記外側の星形パターンは第3のシェードのドットを含み、内側の星形パターンは第4のシェードのドットを含む、着色パターンとを含み、4つの全てのシェードは互いに同じか又は異なっており、前記環状着色パターンの前記着色ドットのサイズ及び/又は前記着色ドット間のスペース量は、局所着色ドット被覆率が前記環状虹彩セクションの内周から前記環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御されて変化しており、環状着色パターンは、目の色を変化させるか、又は目の色を強調させるために、前記目の虹彩の大部分又は全体を覆うのに十分なサイズを有し、前記実質的に環状の着色パターンと前記他の着色パターンの組み合わせは、前記フォトクロミックレンズが活性化状態にある間、暗色と、虹彩セクションの前記着色され印刷された不透明の断続的パターンとが混じり合った外観を作り出すことによって、見る者からの異常な外観を隠すか又は低減する、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記虹彩セクションはフォトクロミックである、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記着色パターンは、2・45超の高屈折率を有する顔料を含む、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項4】
高屈折率顔料は、ルチル二酸化チタン、アナターゼ二酸化チタン、ブルッカイト二酸化チタン及びアカオギ石二酸化チタンからなる群から選択される、請求項2に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項5】
高屈折率顔料は、ルチル二酸化チタンである、請求項4に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記虹彩セクション上の前記インク層は、前記インクの重量に基づいて1%(w/w)~15%(w/w)の前記高屈折率顔料を含む、請求項4に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記第2のシェードのドットを含む前記最外側星形パターン及び前記外側星形パターンを含み、前記外側星形パターンは、前記第3のシェードのドットを含み、前記最外側星形パターンの少なくとも一部と重なり合っている、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記第2のシェードのドットを含む前記最外側星形パターン及び前記内側星形パターンを含み、前記内側星形パターンは、前記第4のシェードのドットを含み、前記最外側星形パターンの少なくとも一部と重なり合っている、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記第3のシェードのドットを含む前記外側星形パターン及び前記内側星形パターンを含み、前記内側星形パターンは、前記第4のシェードのドットを含み、前記外側星形パターンの少なくとも一部と重なり合っている、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項10】
a)前記第2のシェードのドットを含む前記最外側星形パターン、b)前記第3のシェードのドットを含み、前記最外側星形パターンの少なくとも一部と重なり合っている、前記外側星形パターン、並びにc)前記第4のシェードのドットを含み、前記外側星形パターンの少なくとも一部及び前記最外側星形パターンの少なくとも一部と重なり合っている前記内側星形パターンを含む、請求項9に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項11】
実質的に環状のパターンの前記シェードは、前記瞳孔セクションと調和するハシバミ色、黄色、黄緑色、褐色、黄褐色、金色及び橙色の少なくとも1種である、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記環状着色パターンの周縁の近傍に位置する暗色の輪部リングをさらに含み、前記輪部リングは暗色の着色剤で構成され、実質的に平坦な外周縁とギザギザの又は実質的に平坦な内周縁とを有する、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記輪部リングは、前記環状着色パターンとある程度重なり合っている、請求項12に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記ドットのサイズ、及び2つのドット間のスペース量の双方は、各ドットのサイズが半径方向に徐々に増加する一方、ドット間のスペース量は半径方向に徐々に減少するように変化している、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項15】
各ドットの前記サイズは実質的に一定であり、一方、ドット間のスペース量は半径方向に徐々に減少している、請求項1に記載のカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズ。
【請求項16】
色覚異常補正用カラーコンタクトレンズを作製するための方法であって、
(a)コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半体と、前記コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半体とを含む成形型を提供する工程であって、前記第1及び第2の成形型半体はコンタクトレンズ形成キャビティが前記第1及び第2の成形面の間に形成されるように、互いに受け入れるように構成されている、工程と;
(b)レンズ成形型の少なくとも1つの成形面上にクリアインク層を適用して、前記成形型表面の少なくとも虹彩部分を覆う工程と;
(c)UV/可視光で前記クリアインク層を少なくとも部分的に硬化させる工程と;
(d)パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、最外星型パターン、外側星型パターン及び内側星型パターンからなる群から選択されるコスメティックパターンを有する少なくとも1つのインク層を、前記成形型表面の少なくとも1つに適用する工程であって、前記部分のそれぞれは複数の点で互いに重なり合っている、工程と、
(e)パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、環状着色パターンを前記成形型表面の少なくとも1つに適用する工程であって、前記環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、前記環状着色パターンの前記ドットの大きさ及び/又は前記ドット間のスペース量は、局所着色ドット被覆率が前記環状虹彩セクションの内周から前記環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御されて変化している、工程と、
(f)UV/可視光で前記着色パターンインク層を少なくとも部分的に硬化させる工程と;
(g)工程(g)の後、パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、少なくとも成形面の1つに第2のクリアインク層を適用して、前記成形型表面の1つの中央部分を少なくとも覆う工程と;
(h)前記成形型に印刷された前記インク層を部分的に又は完全に硬化させて、前記インク層コーティングを膜に変換する工程と;
(j)前記レンズ形成キャビティ内にフォトクロメートを含有するレンズ形成材料を分配する工程と;
(k)前記レンズ形成キャビティ内の前記レンズ形成材料を硬化させて、カラーコンタクトレンズを形成する工程であって、これにより、前記膜は前記成形面から剥離し、前記コンタクトレンズの本体と一体化し、前記膜は前記カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズの前面及び後面のうちの1つの一部になる、工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、瞳孔セクションと、瞳孔セクションを取り囲む略環状の虹彩セクションとを含み、少なくとも瞳孔セクションはフォトクロミックであり、虹彩セクションは着色され印刷された不透明の断続的パターンを有し、前記パターンはクリアインク層によって覆われ、クリアインク層は観察者にとってレンズの外表面にある、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズに関する。本発明はまた、コスメフォトクロミックコンタクトレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より最近では、日常的に着用することができ、特定の波長範囲の光を吸収することができるフォトクロミック色素を利用して、着色状態と非着色状態との間を迅速に移行するフォトクロミックコンタクトレンズに向けた努力がなされている。いくつかの例では、色素は、好ましくは光を吸収することができる単層を有するように、コンタクトレンズを構成するポリマー材料中でフォトクロミズムを示すことができるレンズ中に分配される。しかしながら、フォトクロミックコンタクトレンズでは、レンズが活性化状態にある間、レンズ全体が瞳孔及び虹彩全体にわたって暗色に変わり、装着者にとって望ましくない外観を作り出す。
【0003】
したがって、フォトクロミックコンタクトレンズを改良する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、瞳孔セクションと、瞳孔セクションを取り囲む略環状の虹彩セクションとを含み、少なくとも瞳孔セクションはフォトクロミックであり、虹彩セクションは着色され印刷された不透明の断続的パターンを有し、前記パターンはクリアインク層によって覆われ、クリアインク層は観察者にとってレンズの外表面にあり、前記パターンは、a)第1のシェードを有するカラーの環状パターンであって、環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、環状パターンは実質的に平坦な外周縁及び実質的に平坦な内周縁を有し、外周縁は約13.5mm~約12.5mmの直径を有し、内周縁は約5mm~約7mmの直径を有する、環状パターンと、最も外側の星形パターン、外側の星形パターン及び内側の星形パターンからなるパターンの群から選択される、虹彩セクションの一部に広がる少なくとも少なくとも1つの他の着色パターンであって、最も外側の星形パターンは第2のシェードのドットを含み、外側の星形パターンは第3のシェードのドットを含み、内側の星形パターンは第4のシェードのドットを含む、着色パターンとを含み、4つの全てのシェードは互いに同じか又は異なっており、環状着色パターンの着色ドットのサイズ及び/又は着色ドット間のスペース量は、局所着色ドット被覆率が環状虹彩セクションの内周から環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御されて変化しており、環状着色パターンは、目の色を変化させるか、又は目の色を強調させるために、目の虹彩の大部分又は全体を覆うのに十分なサイズを有し、実質的に環状の着色パターンと他の着色パターンの組み合わせは、フォトクロミックレンズが活性化状態にある間、暗色と、虹彩セクションの着色され印刷された不透明の断続的パターンとが混じり合った外観を作り出すことによって、見る者からの異常な外観を隠すか又は低減する、コスメティックフォトクロミックコンタクトレンズを提供する。
【0005】
別の点では、本発明は、色覚異常補正用カラーコンタクトレンズを作製するための方法であって、
(a)コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半体と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半体とを含む成形型を提供する工程であって、第1及び第2の成形型半体はコンタクトレンズ形成キャビティが第1及び第2の成形面の間に形成されるように、互いに受け入れるように構成されている、工程と;
(b)レンズ成形型の少なくとも1つの成形面上にクリアインク層を適用して、成形型表面の少なくとも虹彩部分を覆う工程と;
(c)UV/可視光でクリアインク層を少なくとも部分的に硬化させる工程と;
(d)パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、最外側星型パターン、外側星型パターン及び内側星型パターンからなる群から選択されるコスメティックパターンを有する少なくとも1つのインク層を、少なくとも成形型表面の1つに適用する工程であって、前記部分のそれぞれは複数の点で互いに重なり合っている、工程と;
(e)パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、環状着色パターンを少なくとも成形型表面の1つに適用する工程であって、環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、環状着色パターンのドットのサイズ及び/又はドット間のスペース量は、局所着色ドット被覆率が環状虹彩セクションの内周から環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御されて変化している、工程と;
(f)UV/可視光で着色パターンインク層を少なくとも部分的に硬化させる工程と;
(g)工程(g)の後、パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、少なくとも成形面の1つに第2のクリアインク層を適用して、成形型表面の1つの中央部分を少なくとも覆う工程と;
(h)成形型に印刷されたインク層を部分的に又は完全に硬化させて、インク層コーティングを膜に変換する工程と;
(j)レンズ形成キャビティ内にフォトクロメートを含有するレンズ形成材料を分配する工程と;
(k)レンズ形成キャビティ内のレンズ形成材料を硬化させて、カラーコンタクトレンズを形成する工程であって、これにより、膜は成形面から剥離し、コンタクトレンズの本体と一体化し、膜はカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズの前面及び後面のうちの1つの一部になる、工程と
を含む方法に関する。
【0006】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の図面と併せて、以下の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。当業者に明らかであるように、本開示の新規な概念の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの変形形態及び修正形態が実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、従来技術のコンタクトレンズを示す。
【
図2】
図2は、本発明による勾配ドットマトリクスの環状リングのパターンである環状着色パターンを示す。
【
図3】
図3は、本発明による「最外側星側パターン」を示す。
【
図4】
図4は、本発明による「外側星側パターン」を示す。
【
図5】
図5は、本発明による「内側星形パターン」を示す。
【
図6】
図6は、一例として、「均等に離間した円形ボイドを有する輪部リング」を概略的に示す。
【
図7】
図7は、UV露光の直後にフォトクロミックレンズの上に重ねられたAO Colors Amethystレンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本発明に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示又は説明する特徴は、別の実施形態に使用して、さらに別の実施形態を生み出すことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に入るような修正及び変形を包含することが意図される。本発明の他の目的、特徴及び態様は、以下の詳細な説明において開示されるか、又は以下の詳細な説明から明らかになる。当業者であれば、本開示が、例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明のより広い態様を限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0009】
特に定義されていない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で用いられる命名法、及び実験手順は、よく知られており、当該技術分野において一般的に用いられている。当該技術分野及び様々な一般参考文献において提供されるものなどの、従来の方法が、これらの手順のために用いられる。用語が単数形で与えられている場合、本発明者らはまた、その用語の複数形も想定している。本明細書において使用される命名法、及び以下で記載される実験室手順は、当該技術分野でよく知られており、一般的に採用されているものである。
【0010】
「コンタクトレンズ」は、装着者の目上又は目内に配置することができる物体を指す。コンタクトレンズは、使用者の視力を矯正、改善又は変化させることができるが、そうである必要はない。コンタクトレンズは、当該技術分野で知られた又は後に開発された任意の適切な材料からなるものであり得、ソフトレンズ、ハードレンズ又はハイブリッドレンズであり得る。コンタクトレンズは、任意の着色パターンを印刷する前に着色することができる。コンタクトレンズは、乾燥状態又は湿潤状態であり得る。「乾燥状態」とは、水和前の状態のソフトレンズ、又は保存若しくは使用条件下のハードレンズの状態を指す。「湿潤状態」とは、水和状態のソフトレンズを指す。
【0011】
コンタクトレンズの「前(front)面又は前(anterior)面」は、本明細書で使用される場合、装着中、目から見て外方に向くレンズの表面を指す。典型的には実質的に凸状である前面は、レンズのフロントカーブと呼ばれることもある。
【0012】
コンタクトレンズの「後(rear)面又は前(posterior)面」は、本明細書で使用される場合、装着中、目の方に向くレンズの表面を指す。典型的には実質的に凹状である後面は、レンズのベースカーブと呼ばれることもある。
【0013】
「カラーコンタクトレンズ」は、その上に印刷されたカラー画像を有するコンタクトレンズ(ハード又はソフト)を指す。カラー画像は、コスメティックパターン、例えば虹彩様パターン、Wild EyeTMパターン、オーダーメイド(MTO)パターンなど;ユーザが容易にコンタクトレンズを取り扱い、挿入することを可能にする反転マーク;トーリックローテーションマーク、又は、例えば数字又はバーコードの形態の、コンタクトレンズストックキーピングユニット(SKU)であり得る。カラー画像は、単色画像又は多色画像であり得る。カラー画像はデジタル画像であることが好ましいが、アナログ画像であってもよい。
【0014】
「目の色」という用語は、虹彩の色を指す。
【0015】
「普通の観察者」という用語は、本発明のレンズを装着している人から約5フィート離れたところに立っている正常20/20バージョンを有する人を意味することが意図される。
【0016】
本明細書で使用される用語「非-不透明」は、透明若しくは半透明の色、或いは無色の、又は透明若しくは半透明の色で着色されたレンズの一部を表すことが意図される。
【0017】
「着色コート」は、物体上のコーティングであって、その中に印刷されたカラー画像を有するコーティングを指す。
【0018】
「着色剤」は、コンタクトレンズ上に着色要素のパターンを印刷するために使用される、1種以上の染料、1種以上の顔料、又はそれらの混合物を意味する。
【0019】
「染料」は、溶媒に可溶であり、色を付与するために使用される物質を意味する。染料は、典型的には透明又は半透明であり、光を吸収するが、散乱しない。染料は、コンタクトレンズの光学領域及びコンタクトレンズの非光学領域の両方を覆うことができる。
【0020】
「顔料」は、それが不溶性である液体中に懸濁される粉末物質を意味する。顔料は色を付与するために使用される。顔料は、一般に、染料よりも不透明である。
【0021】
本明細書で使用される「従来の又は非真珠光沢の顔料」という用語は、拡散散乱の光学原理に基づいて色を付与し、その色がその表面形状とは無関係である任意の吸収顔料を説明するものとする。任意の好適な非真珠光沢顔料を使用することができるが、現在のところ、非真珠光沢顔料は耐熱性で、非毒性であり、且つ水溶液に不溶であることが好ましい。好ましい非真珠光沢顔料の例としては、医療機器において許容され、FDAによって承認されている任意の着色剤、例えば、D&C Blue No.6、D&C Green No.6、D&C Violet No.2、カルバゾールバイオレット、特定の銅錯体、特定の酸化クロム、様々な酸化鉄、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、二酸化チタンなどが挙げられる。本発明で使用され得る着色剤のリストについては、Marmiom DM Handbook of U.S.Colorantsを参照されたい。非真珠光沢顔料のより好ましい実施形態としては、青色の場合、フタロシアニンブルー(ピグメントブルー15:3、C.I. 74160)、コバルトブルー(ピグメントブルー36、C.I. 77343)、トナーシアンBG(Clariant)、パーマジェットブルーB2G(Clariant);緑色の場合、フタロシアニングリーン(ピグメントグリーン7、C.I.74260)及びセスキ酸化クロム;黄色、赤色、褐色及び黒色の場合、種々の酸化鉄、PR122、PY154、紫色の場合、カルバゾールバイオレット;黒色の場合、モノリスブラックC-K(CIBA Specialty Chemicals)が挙げられるが、これらに限定されない(C.I.は、カラーインデックス番号である)。
【0022】
本明細書で使用される「凹凸の又はギザギザの又は不規則な境界又は周縁」は、位置が互いに少なくとも約10%異なる半径方向距離(すなわち、レンズ中心から)を有する境界又は周縁を指す。本明細書で使用される「実質的に平坦な境界又は周縁」は、位置が実質的に一定の半径方向距離(すなわち、レンズ中心から)を有する、すなわち互いに10%未満異なる境界又は周縁を指す。
【0023】
「ヒドロゲル」は、約10~90パーセントの平衡含水率を有する架橋ポリマーを意味する。
【0024】
「レンズ形成材料」は、架橋ポリマーを得るために、熱的又は化学線的に(すなわち、化学線によって)硬化(すなわち、重合及び/又は架橋)され得る重合性組成物を指す。化学線の例は、UV照射、電離放射線(例えば、ガンマ線又はX線照射)、マイクロ波照射などである。熱硬化又は化学線硬化方法は、当業者によく知られている。レンズ形成材料は、当業者によく知られている。
【0025】
「エチレン性不飽和基」又は「オレフィン性不飽和基」という用語は、本明細書では広い意味で用いられ、少なくとも1つの>C=C<基を含有する任意の基を包含することが意図される。例示的なエチレン性不飽和基としては、限定されないが、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニル、スチレニル又は他のC=C含有基が挙げられる。
【0026】
「HEMA系ヒドロゲル」は、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)を含む重合性組成物の共重合によって得られるヒドロゲルを指す。
【0027】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1種のシリコーン含有モノマー又は少なくとも1種のシリコーン含有マクロマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるヒドロゲルを指す。
【0028】
「親水性」は、本明細書で用いられる場合、脂質とよりも水とより容易に会合する材料又はその一部を表す。
【0029】
「プレポリマー」は、出発ポリマーよりもはるかに大きい分子量を有する架橋及び/又は重合ポリマーを得るために、化学線的に又は熱的に又は化学的に硬化(例えば、架橋及び/又は重合)され得る出発ポリマーを指す。「架橋性プレポリマー」は、化学線で架橋して、出発ポリマーよりもはるかに大きい分子量を有する架橋ポリマーを得ることができる出発ポリマーを指す。
【0030】
「モノマー」は、重合することができる低分子量化合物を意味する。低分子量は、典型的には、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「ビニルモノマー」は、エチレン性不飽和基を有し、化学線的に又は熱的に重合することができる低分子量化合物を指す。低分子量は、典型的には、700ダルトン未満の平均分子量を意味する。
【0032】
「親水性ビニルモノマー」は、本明細書で使用される場合、ホモポリマーとして、典型的には、水溶性であるか又は少なくとも10重量パーセントの水を吸収することができるポリマーを生じるビニルモノマーを指す。好適な親水性モノマーは、包括的なリストではないが、ヒドロキシル置換低級アルキル(C1~C8)アクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、(低級アリル)アクリルアミド及びメタクリルアミド、エトキシル化アクリレート及びメタクリレート、ヒドロキシル置換(低級アルキル)アクリルアミド及びメタクリルアミド、ヒドロキシル置換低級アルキルビニルエーテル、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-ビニルピロール、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルオキサゾリン、2-ビニル-4,4’-ジアルキルオキサゾリン-5-オン、2-及び4-ビニルピリジン、合計3~5個の炭素原子を有するビニル不飽和カルボン酸、アミノ(低級アルキル)(ここで、用語「アミノ」は第4級アンモニウムも含む)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)及びジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)アクリレート及びメタクリレート、アリルアルコールなどを含む。
【0033】
「疎水性ビニルモノマー」は、本明細書で使用される場合、ホモポリマーとして、典型的には、非水溶性であるか又は10重量パーセント未満の水を吸収することができるポリマーを生じるビニルモノマーを指す。
【0034】
「マクロマー」は、さらなる重合/架橋反応を受けることができる官能基を含有する中分子量及び高分子量の化合物又はポリマーを指す。中分子量及び高分子量とは、典型的には、700ダルトンを超える平均分子量を意味する。好ましくは、マクロマーは、エチレン性不飽和基を含有し、化学線的に又は熱的に重合することができる。
【0035】
「ポリマー」は、1種以上のモノマーを重合/架橋することによって形成される材料を意味する。
【0036】
「光開始剤」は、光の使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。好適な光開始剤としては、限定されないが、ベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocure(登録商標)タイプ、及びIrgacure(登録商標)タイプ、好ましくはDarocure(登録商標)1173、及びIrgacure(登録商標)2959が挙げられる。
【0037】
「熱開始剤」は、熱エネルギーの使用によりラジカル架橋/重合反応を開始する化学物質を指す。好適な熱開始剤の例としては、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパンニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、熱開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。
【0038】
本明細書で使用される「相互侵入高分子網目(IPN)」は、広義には、2種以上のポリマーの緊密な網目構造を指し、そのうちの少なくとも1種のポリマーは、他のポリマーの存在下で合成及び/又は架橋される。IPNを調製するための技法は、当業者に知られている。一般的な手順については、米国特許第4,536,554号明細書、同第4,983,702号明細書、同第5,087,392号明細書、及び同第5,656,210号明細書を参照されたい。これらの内容は全て、参照により本明細書に組み込まれる。重合は一般に、約室温~約145℃の範囲の温度で行われる。
【0039】
「カラーコンタクトレンズを製造するためのプリントオンモールド(print-on-mold)法」は、Rawlingsらの米国特許第5,034,166号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているカラーコンタクトレンズを成形するための方法を指す。
【0040】
インク又は着色コートに関して「成形型からコンタクトレンズへの良好な転写性」とは、インクで成形型の成形面に印刷されたカラー画像が、その成形型内で(熱的に又は化学線的に)硬化したコンタクトレンズ上に完全に転写され得ることを意味する。
【0041】
「界面活性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、その用語が当該技術分野でよく知られているように、表面活性化合物を指す。
【0042】
「架橋剤」は、当該技術分野で知られているように、2つ以上の官能基を含む化合物を指す。架橋剤分子は、2つ以上のモノマー又はポリマー分子を架橋するために使用することができる。本発明では、任意の知られた好適な架橋剤を使用することができる。例示的な好ましい架橋剤としては、限定されないが、ヘキサメチルジイソシアネート(HMDI)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ポリエチレンオキシドモノ-及びジアクリレート、並びに1,4-ブタンジオールジアクリレート(BDDA)が挙げられる。
【0043】
「保湿剤」とは、当該技術分野で知られているような、インクから水(又は湿分)を除去する化合物を指す。保湿剤の例としては、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び1,3-ジオキサン-5,5-ジメタノールが挙げられる。1種以上の保湿剤(例えば、グリセロール及びジエチレングリコール)を添加することによって、プリンタヘッドのノズルの目詰まりを最小限に抑えることができる。
【0044】
「化学線の空間的制限」とは、光線の形でのエネルギー放射が、例えば、マスク若しくはスクリーン又はそれらの組み合わせによって、空間的に制限された方法で方向付けられ、明確に画定された周辺境界を有する領域に衝突する動き又はプロセスを指す。例えば、UV線の空間的制限は、米国特許第6,627,124号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の
図1~9に概略的に示されているように、UV不透過性領域(マスクされた領域)によって囲まれた透明又は開放領域(マスクされていない領域)を有するマスク又はスクリーンを使用することによって達成され得る。マスクされていない領域は、マスクされていない領域と明確に画定された周辺境界を有する。
【0045】
一般に、本発明は、カラーフォトクロミックコンタクトレンズを対象とする。本発明は、フォトクロミックコンタクトレンズの装着者の外観に関連する問題を解決する。フォトクロミックコンタクトレンズでは、レンズが活性化状態にある間、レンズは、瞳孔セクションのみ、又は瞳孔セクションと虹彩セクションの両方にわたって暗色に変わり、装着者にとって望ましくない外見を作り出す。本発明は、この外観を光学ゾーンの周りのコスメティックパターンでマスクして、フォトクロミックカラーと、虹彩、内側輪部リング及び外側輪部リングの特性とが混じり合った外観を作り出すことを可能にする。
【0046】
そのような望ましくない効果は、コンタクトレンズにコスメティックパターンを適用することによって低減又は排除されることがわかった。瞳孔又は瞳孔セクション及び虹彩セクションの両方の暗色によって引き起こされる観察者からの異常な外観を、コスメティックパターンは、補正色と、着色され印刷された不透明の断続的パターンとが混じり合った外観を作り出すことによって低減する。レンズがUVに曝露されると、瞳孔セクション(瞳孔のみのフォトクロミックコンタクトレンズの場合)又はレンズ全体(全フォトクロミックコンタクトレンズでは)はより暗い色になり、装着者に対し、望ましくない外観を与える。本発明では、装着者の外観を改善するために、コスメティック印刷パターンとフォトクロミックレンズとを組み合わせる。パターンは、フロントカーブ用レンズ成形型に印刷され、次いで、レンズに転写されるか、又はレンズに直接印刷されて、フォトクロミックレンズバルクが着色されるときに、観察者に、より目に見えるコスメティックパターンを与える。
【0047】
フォトクロミックレンズでは、典型的なUV-VIS吸光度スペクトルは、405nm及び490nmにピーク吸光度を有する。光反射率を増加させる高屈折率(RI)のTiO2含有インクがレンズ表面に印刷されると、その外観は、レンズ着色時でも見ることができるように、可視光範囲全体にわたって十分に反射性であることがわかった。本出願によれば、高屈折率は、顔料が2.45以上の屈折率を有すると定義される。例えば、二酸化チタン(ルチル相)RIは2.609であり、二酸化チタン(アナターゼ相)RIは2.488であり、二酸化チタン(ブルッカイト相)RIは2.583である。本出願によれば、虹彩セクションのインク層は、インクの重量に基づいて、1%(w/w)~15%(w/w)、好ましくは約5%(w/w)~12%(w/w)、より好ましくは約8%(w/w)~10%(w/w)8~10約の高屈折率顔料を含む。
【0048】
前述したように、フォトクロミックコンタクトレンズには以下の2種類がある:それぞれ米国特許第10816822B2号明細書及び米国特許出願公開第2020/0362082A1号明細書(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように製造される、瞳孔のみのフォトクロミックレンズ及び全フォトクロミックコンタクトレンズ。
【0049】
着色され印刷された不透明の断続的コスメティックパターンであって、前記パターンは、a)第1のシェードを有するカラーの環状パターン(ここで、環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、環状パターンは実質的に平坦な外周縁及び実質的に平坦な内周縁を有し、外周縁は約13.5mm~約12.5mmの直径を有し得、内周縁は約5mm~約7mmの直径を有し得る)と、b)最も外側の星形パターン、外側の星形パターン及び内側の星形パターンからなるパターンの群から選択される、虹彩セクションの一部に広がる少なくとも少なくとも1つの他の着色パターンとを含む。
【0050】
環状着色パターンは、目の虹彩の大部分又は全体を覆うのに十分なサイズを有し、実質的に環状着色パターンと他の着色パターンとの組み合わせは、補正色と、虹彩セクションの着色され印刷された不透明の断続的パターンとが混じり合った外観を作り出すことによって、瞳孔上の赤みがかった色合いによって引き起こされる異常な外観を観察者からマスクする。
【0051】
本出願によれば、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズはまた、コンタクトレンズの少なくとも虹彩部分を覆うクリアインクコーティングを含む。クリアインクコーティングは、コンタクトレンズの少なくとも虹彩部分上に任意の着色剤又は顔料を含まないクリアインクの層を適用することによって、着色領域上に形成することができる。クリアインクコーティングは、虹彩セクション内の顔料又は虹彩セクション内のコスメティックパターンの着色剤と目との接触を最小限に抑え、装着者の快適さを向上させることができる。
【0052】
環状着色バックグラウンドのコントラストは、自然のパターンを失わずに、最終的なレンズ上の他の着色パターンの色をより鮮やかで且つより明瞭なものにする。コンタクトレンズの表面の少なくとも1つの虹彩ゾーン上に印刷され得る下位の環状カラー層は、環状の虹彩セクションの内周から環状の虹彩セクションの外周まで半径方向に色強度が明から暗に変化する、色強度の半径方向の勾配を有する環状着色パターンである。環状着色パターンは、コンタクトレンズの環状虹彩セクション上の、それらの間のスペース量が変化する、様々なサイズの不透明な着色ドットから構成される。ドットのサイズ及び/又はドット間のスペース量は、着色ドットの被覆率が環状虹彩セクションの内周から環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御される。カラーディスクの環状虹彩セクションの内周に近づくにつれて、より少ないか又はより小さい着色ドットがより遠く離れるように配置され、一方、カラーディスクの環状虹彩セクションの外周に近づくにつれて、より多いか又はより大きい黒色のドットがより接近するように配置される。顧客が目の色を増強することを望んでいる場合、そのような着色されたパターンを見ると、人の目はそれを平均化し、半径方向に色強度レベルが増加している(すなわち、環状の虹彩セクションの内周から環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加している)という錯覚を生じると考えられる。環状着色パターンは、好ましくは顧客の目の色に似た又は顧客の目の色を補完する単一の着色剤を使用して、コンタクトレンズの環状虹彩ゾーン上に印刷される。このような着色パターンでは、本発明のカラーコンタクトレンズの下に位置する目の虹彩の色及びテクスチャは、目の色を増強しながら、通常の観察者に非常に自然に見えるように、着色パターンを通して見え得る。しかしながら、顧客が色を変えたい場合、環状着色パターンは、好ましくは彼らの目の色を彼らの自然な目の色から変えたいと望む色に似るか又は補完する単一の着色剤を使用して、コンタクトレンズの環状虹彩ゾーン上に印刷される。加えて、下層で印刷されたカラーコンタクトレンズが、最外側星形パターン、外側星形パターン、及び内側星形パターンからなるパターンの群から選択される、虹彩セクションの一部に広がる少なくとも2つの他の着色パターンをさらに含む場合、それは、目が通常の観察者に非常に自然に見えるようにしながら、目の色をより効果的に強調又は変化させることができる。
【0053】
このような美容効果(すなわち、非常に自然な外観を提供しながら、装着者の眼の色を増強又は変更させること)は、少なくとも2つの他の着色パターンを最初にコンタクトレンズ上に適用し、次いで、2つの他の着色パターンの上に環状のカラーインク層を印刷することによって達成することができることもまたわかった。
【0054】
さらに、下層の少なくとも2つの他の着色パターンを印刷された上記のカラーコンタクトレンズは、その外周縁近傍の環状虹彩セクション上に黒い輪部リングを含むことができ、それにより、目が通常の観察者にとってより「若々しく」見えるようにすることができる。
【0055】
用語「輪部リング」は、レンズが目の上の中心にある場合、レンズ装着者の角膜輪部領域を部分的に又は実質的に完全に覆う、カラーの環状の帯を意味することが意図される。角膜輪部領域は、虹彩領域と強膜領域との間に位置する眼の領域である。好ましくは、輪部リングは、角膜輪部領域を実質的に完全に覆う。レンズの幾何学的中心に最も近い、輪部リングの最も内側の境界又は縁は、レンズの幾何学的中心から約5mm~約12mm、好ましくは約6~約11.5mm、より一層好ましくは約9~約11mmであり得る。リングは、任意の好適な幅であり得、好ましくは約0.5~約2.5mmの幅、より好ましくは約0.75~約1.75mmの幅、又はより一層好ましくは約0.8~約1.25mmの幅である。
【0056】
縁部リングは、外側星形パターン又は環状着色パターンを取り囲み、縁部リングは着色剤からなり、縁部リングは内周縁及び外周縁を有し、外周縁は実質的に平坦であり、内周縁は、凹凸(又はギザギザ若しくは不規則)であるか又は実質的に平坦である。
【0057】
輪部リングの内周縁は、カラーレンズの中心に最も近い縁を指す。輪部リングの外周縁は、カラーレンズの中心から最も遠い縁を指す。輪部リングは、レンズが目の上にあるときに、レンズ装着者の角膜輪部縁領域を部分的に又は実質的に完全に覆う。
【0058】
着色された外側星形パターン上又は着色された最外側星形パターン上に着色された輪部リングを有することによって、輪部リングが虹彩の自然な色に似た色であるか、又は輪部リングが虹彩の自然な色と同じ色であるが明度はより低いか、又は輪部リングが虹彩の自然な色より暗い色である場合に、本発明のカラーコンタクトレンズは、目が通常の観察者に、より「若々しく」見えるようにすることができる。
【0059】
着色された最外側星形パターン上の着色された外側星形パターン上に着色された輪部リングを有することによって、本発明のカラーコンタクトレンズは、虹彩の自然な色を画定又は強調することができる。
【0060】
輪部リングは、任意の形状の着色領域、好ましくは不透明なドットから構成することができる。輪部リングは、好ましくは、均等に離間した円形のボイドから構成される。
【0061】
一態様において、本発明は、瞳孔セクションと、瞳孔セクションを取り囲む略環状の虹彩セクションとを含み、少なくとも瞳孔セクションはフォトクロミックであり、虹彩セクションは着色され印刷された不透明の断続的パターンを有し、前記パターンはクリアインク層によって覆われ、クリアインク層は観察者にとってレンズの外表面にあり、前記パターンは、a)第1のシェードを有するカラーの環状パターンであって、環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、環状パターンは実質的に平坦な外周縁及び実質的に平坦な内周縁を有し、外周縁は約13.5mm~約12.5mmの直径を有し、内周縁は約5mm~約7mmの直径を有する、環状パターンと、最も外側の星形パターン、外側の星形パターン及び内側の星形パターンからなるパターンの群から選択される、虹彩セクションの一部に広がる少なくとも少なくとも1つの他の着色パターンであって、最も外側の星形パターンは第2のシェードのドットを含み、外側の星形パターンは第3のシェードのドットを含み、内側の星形パターンは第4のシェードのドットを含む、着色パターンとを含み、4つの全てのシェードは互いに同じか又は異なっており、環状着色パターンの着色ドットのサイズ及び/又は着色ドット間のスペース量は、局所着色ドット被覆率が環状虹彩セクションの内周から環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御されて変化しており、環状着色パターンは、目の色を変化させるか、又は目の色を強調させるために、目の虹彩の大部分又は全体を覆うのに十分なサイズを有し、実質的に環状着色パターンと他の着色パターンの組み合わせは、フォトクロミックレンズが活性化状態にある間、暗色と、虹彩セクションの着色され印刷された不透明の断続的パターンとが混じり合った外観を作り出すことによって、見る者からの異常な外観を隠すか又は低減する、コスメティックフォトクロミックコンタクトレンズを提供する。
【0062】
本発明のカラーの環状パターンでは、2つ以上の隣接するドットが特定の値の局所着色ドット被覆率で互いに関係し得ることが理解される。また、局所着色ドット被覆率が半径方向に全体的に増加する傾向がある限り、半径方向の局所着色ドット被覆率にいくらかの変動が存在し得ることも理解される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「局所着色ドット被覆率」又は「局所着色ドット密度」又は「ドット被覆率」又は「ドット密度」は式(1)によって定義される。
【数1】
[式中、C(x
i、y
j)は、局所領域内で決定される局所着色ドット被覆率(又は局所着色ドット密度又はドット被覆率又はドット密度)であり、その中心は位置(x
i、y
j)に位置し、(2Δx)の長さ及び(2Δy)の幅を有し、A
dot(x
i、y
j)は(2Δx)・(2Δy)内のドットの面積であり、A
space(x
i、y
jは2Δx・2Δy内のドット間スペースの面積である。]式(1)は、デカルト座標系に基づく。極座標系(r
i、θ
j)などの他の座標系も使用できることを理解されたい。当業者であれば、極座標をデカルト座標に、又はその逆に変換する方法を非常によく理解するであろう。当業者に知られた任意の既知の方法を使用して、局所着色ドット被覆率を決定することができる。例えば、まず、着色パターンを有するレンズ表面を任意の画定された領域(例えば、2Δx=2Δy=1mm)のグリッドに分割し、各領域内のドット及び/又はドット部分によって覆われる領域を測定し、次いで、各領域の中心である位置(i、j)における局所有色ドット被覆率を算出することができる。
【0064】
本発明によれば、ドット間のスペースは、異なる色で着色しても軽く着色してもよく、又は好ましくは透明(無色)にし得る。
【0065】
当該技術分野でよく知られているように、色は一般に、主に以下の相互に関連する用語で説明される:色相、彩度(chroma)、強度、彩度(saturation)、輝度、輝度値及び不透明度。
【0066】
「異なるシェード」という用語は、2つのシェードが、色相、彩度(chroma)、強度、彩度(saturation)、輝度、輝度値及び不透明度のうちの少なくとも1つが異なることを説明することを意図している。
【0067】
好ましい実施形態によれば、局所着色ドット被覆率C(xi、yj)は、Adot(xi、yj)が半径方向に(すなわち、レンズの中心から縁部に向けて)徐々に増加する一方、Aspace(xi、yj)が半径方向(すなわち、レンズの中心から縁部まで)に徐々に減少するように変化する。この効果を達成する1つの方法は、各ドットの中心の間隔を固定する一方、局所領域に位置するドットのサイズを大きくすることである。その結果、ドット間のスペースが小さくなる。ドットが中心から離れるほど、サイズは大きくなる。レンズの中心ゾーンの周辺部近傍に位置するドットがより大きいサイズを有し、且つより大きい領域を覆い、これによって、レンズの中心ゾーンの周辺部が中心部より暗く見えるようにすることができる。
【0068】
或いは、各ドットのサイズを実質的に一定に保つ一方、所与の局所領域に1つ以上のドットを追加することによって、半径方向に(中心から中心ゾーンの縁部又は縁部近傍の位置まで)局所着色ドット被覆率を徐々に増加させることができる。レンズの中心ゾーンの周辺部近傍の領域内の着色ドットの数が多いと、中心ゾーンの中心よりも周辺部が暗く見える。
【0069】
好ましい実施形態によれば、着色環状パターンは、少なくとも1つの数学的関数によって定義することができる局所着色ドット被覆率のプロファイルを有する。任意の数学的関数を使用することができる。例示的な数学的関数としては、円錐関数、二次関数、任意の次数の多項式、指数関数、三角関数、双曲線関数、有理関数、フーリエ級数、ウェーブレットなどが挙げられる。好ましい数学的関数の例としては、線形関数、任意の次数の多項式関数、三角関数、指数関数、双曲線関数、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
好ましい実施形態では、局所着色ドット被覆率のプロファイルが回転対称であり、式(2)、(3)及び(4)の少なくとも1つ、又はこれらの組み合わせによって定義される。
【数2】
[式中、C(r)は中心からrの距離における局所着色ドット被覆率であり、a
0、b
i、c
j及びk
iは係数であり、Rはカラーディスクの半径である。]カラーディスクの中心が(0,0)に位置するデカルト座標系においては、
【数3】
である。
【0071】
別の好ましい実施形態では、局所着色ドット被覆のプロファイルは、所与の角度(例えば、30°、36°、45°、60°、72°)に対して軸対称である。
【0072】
不透明な着色ドットは、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、細長い形状など、規則的又は不規則な任意の形状を有することができる。ドットは全て、同様の又は異なる形状を有することができる。好ましくは、全てのドットは実質的に同様の形状を有する。より好ましくは、全てのドットは円形形状を有する。
【0073】
ドット直径の範囲は、好ましくは0~約0.2mmである。ドット間の間隔は、中心領域の外側で0~約0.2mmが好ましい。
【0074】
本発明によれば、最も外側の星形パターン、外側の星形パターン及び内側の星形パターンからなるパターンの群から選択される虹彩セクションの一部に広がる少なくとも2つの他のパターンを、ドットの実質的に環状のパターンの上又は下に加えることができる。他の印刷パターンは、虹彩に追加の着色剤の構造体又はアクセントを追加することを意味し、筋条痕は虹彩にテクスチャを追加することを意味する。
【0075】
コンタクトレンズに関するゾーン、領域、着色パターンなどの任意の形状は、コンタクトレンズの頂点を法線方向に通る軸に垂直な平面上に投影されるゾーン、領域、着色パターンなどの形状を指すことを意図していると理解されたい。
【0076】
着色剤が不透明な着色ドットを提供することができる限り、任意の着色剤を本発明の着色パターンの印刷に使用することができる。例示的な着色剤としては、顔料が挙げられる。顔料は、可視光をほとんど散乱させないように十分に小さいサイズでなければならない。好ましくは、顔料のサイズは約1ミクロン未満である。
【0077】
図1は、一例として、従来技術のコンタクトレンズを示す。それは、レンズの中心に非不透明の瞳孔セクション20と、瞳孔セクションを囲む環状の虹彩セクション21とを有する。親水性レンズの場合、透明な周辺セクション22が虹彩セクション21を囲む。
図1に示すように、虹彩セクション21全体に、着色された不透明の断続的なパターンが配置される。パターンは、パターンの隙間にある虹彩セクションの実質的な部分を非不透明なままにする。虹彩セクション21の非不透明領域は、
図1では白く見える。
【0078】
図2は、一例として、勾配ドットマトリクスの環状リングからなる環状着色パターンの一例を概略的に示す。ドット、好ましくは不透明なドットは、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、細長い形状など、規則的又は不規則な任意の形状を有することができる。全てのドットは、同様の又は異なる形状を有することができる。好ましくは、全てのドットは実質的に同様の形状を有する。より好ましくは、全てのドットは円形形状を有する。第1の印刷パターンはレンズの中心と同心であり、実質的に平坦な外周縁と実質的に平坦な内周縁とを有する。外周縁は、約13.5mm~約12.5mmの直径を有することができ、内周縁は、約5mm~約7mmの直径を有することができる。環状着色パターンは目の虹彩の大部分又は全体を覆うのに十分なサイズを有し、実質的に環状の着色パターンと他の着色パターンとの組み合わせは、虹彩セクションの着色され印刷された不透明の断続的パターンと補正色とが混じり合った外観を作り出すことによって、瞳孔上の赤みがかった色合いによって引き起こされる異常な外観を観察者からマスクする。
【0079】
環状カラーのドット被覆率(印刷領域)は、外側透明周辺領域(
図1のセクション22)を除くコンタクトレンズ領域の少なくとも10パーセント、又は約10パーセント~約35パーセント、好ましくは約20パーセント~約30パーセント、より好ましくは約25パーセントである。外側透明周辺領域は環状着色パターン印刷領域の外側の領域であり、非印刷領域である。この領域は、眼の外周の強膜に対応する。「印刷被覆率又はドット被覆率のパーセント」という用語は、Adobe Photoshop(グラフィック画像編集ソフトウェア)を使用して領域上の画素数を決定することによって測定される、カラードットによって覆われた領域内の全領域の部分を指す。印刷被覆率のパーセントは、以下のように計算される。
印刷被覆率%=[(ドット被覆率領域の画素数)/(全領域の画素数)]×100
全領域=印刷領域+非印刷領域
【0080】
本発明の改善は、装着者の虹彩の自然な外観を維持しながら、装着者の目の自然な色を増強又は変化させる有効性を大幅に改善する、少なくとも2つの他の色パターンと環状の色パターンを組み合わせることである。少なくとも2つの他の着色パターンは、最も外側の星形パターン、外側の星形パターン、及び内側の星形パターンからなるパターンの群から選択される。この改善をもたらすために、少なくとも2つの他の着色パターンが、上述のような環状着色パターンに加えて、2つ以上の部分に印刷される。本発明によれば、少なくとも2つの他のパターンの要素は、好ましくはドットであり、特に好ましくは、その一部が重なり合うドットである。少なくとも2つの他のパターンは不透明であり、規則的又は不規則な、均一な又は不均一な形状、例えば、円形、四角形、六角形、細長い、又は他のドット形状を有するドットから構成され得る。
【0081】
少なくとも2つの他のパターンの要素の第1の部分は、第2のシェード(第1のシェードは環状着色パターンにある)であり、一般に虹彩セクションの外側(しかし、虹彩セクション内)に位置する、すなわち、環状虹彩セクションの外周又はその近傍に位置する最大濃度のドット又は他の要素の一般に有する。このセクションには、最も外側の星形が印刷され得る。最も外側の星形パターンを
図3に示す。最も外側の星形の色としては、黒色、又は灰色、暗褐色若しくは暗青色などのいくつかの他の暗色が最もよく使用される。
【0082】
要素の第2の部分は、第2のシェードとは異なる第3のシェードであり、一般に最も外側の星形の内側に位置し、一般に、常にではないが、最も外側の星形部分によって囲まれている、最大濃度の要素を有する。このセクションには、外側の星形パターンが印刷され得る。外側の星形を
図4に示す。外側星形パターンは多くの色、例えば、青色、灰色、褐色、淡青色、青緑色、紫色、青紫色、水色、黄色又は緑色であり得る。
【0083】
要素の第3の部分は、第3のシェードとは異なり、第2のシェードと同じか又は異なる第4のシェードである。この第3の部分は、一般に、常にではないが、他の2つの部分の内側に位置する最大濃度の要素を有する。一般に、第3の部分の最大濃度の要素は、他の2つの部分の濃度の要素によって囲まれている。このセクションには、
図5に示す内側星形が印刷され得る。
【0084】
環状着色パターンと少なくとも他のパターンとの組み合わせの印刷被覆率又はドット被覆率のパーセントは、外側透明周辺領域(
図1のセクション22)を除くコンタクトレンズ領域の30~80パーセントであり、好ましくは40~65パーセントであり、より好ましくは45~60パーセントである。外側透明周辺領域は、印刷領域の外側の領域であり、非印刷領域である。この領域は、眼の強膜に対応する。したがって、パターンの隙間にある虹彩セクションの実質的な部分は、非不透明である。虹彩の部分を構成するパターンは、色の島、又はウォーム、コルクスクリュー、星形、スポーク、スパイク、筋条痕、放射状ストライプ、ジグザグ及びストリークであり得る。特定の例では、単一色のバックグラウンドがマルチパターン設計を補完するために使用される。これらのパターンは、互いに混ざり合っていて、レンズを装着する人の虹彩の構造を強化するカラーコンタクトレンズを提供する。「印刷被覆率又はドット被覆率のパーセント」という用語は、Adobe Photoshop(グラフィック画像編集ソフトウェア)を使用して領域上の画素数を決定することによって測定される、カラードットによって覆われた領域内の全領域の部分を指す。印刷被覆率のパーセントは、以下のように計算される。
印刷被覆率%=[(ドット被覆率領域の画素数)/(全領域の画素数)]×100
全領域=印刷領域+非印刷領域
【0085】
好ましい実施形態では、第1の凹凸の境界はパターン要素の最も外側の星形部分と外側の星形部分とを区別するが、最も外側の星形と外側の星形の要素は、実際に、又は単に知覚的に、重なり合い、混合され且つ混ざり合って、所望の効果を作り出す。第2の凹凸の境界は、パターンの外側星形部分と内側星形部分とを区別し、外側星形と内側星形の要素は、実際に又は知覚的に、重なり合い、混合され且つ混ざり合う。
図3、4、及び5のパターンが融合して3色レンズが形成され、同じ色の最外側星形パターン、外側星形パターン及び内側星形パターンを有しても又は有さなくてもよい環状パターンの色を含まない場合、
図3に示されるパターンの凹凸の縁は
図4に示されるパターンと融合し重なり合って、最外側星形と外側星形との間に第1の凹凸の境界を形成する。さらに、
図5に示されるパターンの凹凸の縁は
図4に示されるパターンと融合し重なり合って、外側星形と内側星形との間に第2の凹凸の境界を形成する。
【0086】
特定のパターンでは、外側星形は、最外側星形のパターンよりもレンズの周辺に向かってさらに広がるパターンを含んでもよい。他のパターンでは、外側星形は、内側星形のパターンよりもレンズの瞳孔セクションに向かってさらに広がるパターンを含んでもよい。
【0087】
本発明の代替の実施形態は、虹彩セクションの外周からの凹凸の境界の最小距離及び最大距離を含む。例えば、代替の一実施形態では、虹彩セクションの外周からの第1の凹凸の境界の最小距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約5%~約60%であり、虹彩セクションの外周からの凹凸の境界の最大距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約25%~約95%であり、また、虹彩セクションの外周からの第2の凹凸の境界の最小距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約15%~約75%であり、虹彩セクションの外周からの凹凸の境界の最大距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約50%~約95%である。
【0088】
別の一実施形態では、虹彩セクションの外周からの第1の凹凸の境界の最小距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約15%~約50%であり、虹彩セクションの外周からの凹凸の境界の最大距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約45%~約95%であり、また、虹彩セクションの外周からの第2の凹凸の境界の最小距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約15%~約65%であり、虹彩セクションの外周からの凹凸の境界の最大距離は虹彩セクションの半径方向の幅の約60%~約95%である。
【0089】
さらに別の代替の実施形態では、外側星形を構成する一部の要素が最外側星形パターンを構成する全ての要素の外側にあるように、外側星形パターンはコンタクトレンズの虹彩セクションの周辺まで広がってもよく、且つ/又は外側星形パターンを構成する要素が、それらの要素の一部が内側星形パターンの全ての要素の内側にあるように、瞳孔セクションのより近くまで広がってもよい。
【0090】
さらに別の代替の実施形態では、内側星形パターンは、最外側星形パターン又は外側星形パターン又は両方のパターンと相互嵌合構造を作る。さらに、最外側星形パターンが、外側星形パターンと相互嵌合構造を作ってもよい。相互嵌合構造では、一方のパターンが別のパターンと、他方のフィンガ間に一方のフィンガが配置されているように、平面的に交差する。
【0091】
図6は、一例として、「均等に離間した円形ボイドを有する輪部リング」を概略的に示す。輪部リングは、均等に離間した円形のボイドを有する印刷領域からなり、レンズの中心と同心であり、実質的に平坦な外周縁と実質的に平坦な内周縁とを有する。外周縁は、約12.5mm~約14mmの直径を有し得る。輪部リングの幅は、約0.5mm~約2.5mm、好ましくは1.0mm~2.0mmである。典型的には、円形ボイドの直径は、約0.0mm~約0.5mm、好ましくは約0.1mm~約0.4mm、より好ましくは0.2mm~0.3mmである。本発明によれば、輪部リングは、べた(ボイドなし)で印刷されたカラー領域で構成され得、レンズの中心と同心であり、実質的に平坦な外周縁と実質的に平坦な内周縁とを有する。
【0092】
インクは、典型的には、少なくとも1種の着色剤、バインダーポリマー、及び溶媒を含む。インクは、任意選択により、架橋剤、保湿剤、界面活性剤、モノマー、重合開始剤、抗微生物剤、抗酸化剤、抗コゲーティング剤、及び当該技術分野で知られた他の添加剤を含むことができる。
【0093】
着色剤は、少なくとも1種の染料、又は好ましくは1種の顔料を含む。本発明においては、従来の顔料及び/又は真珠光沢顔料を使用することができる。
【0094】
溶媒は、水(水性インク)又は任意の適切な有機溶媒(有機溶媒系インク)であり得る。本発明のインク中にバインダーを溶解し、着色剤の安定性を助けることができる限り、任意の知られた好適な溶媒を使用することができる。好ましい溶媒の例としては、水、1種以上の共溶媒と混合された水、アルコール、グリコール、ケトン、エステル、メチルエチルケトン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンが挙げられる。
【0095】
「バインダーポリマー」は、当該技術分野で知られている用語のように、架橋性基を含む架橋性ポリマーを指し、架橋剤によって、又は開始時に化学的若しくは物理的手段(例えば、水分、加熱、UV照射など)によって架橋されて、着色剤をコンタクトレンズ上又はコンタクトレンズ内に捕捉又は結合させることができる。
【0096】
架橋性基という用語は、本明細書において広い意味で使用され、例えば、官能基及び光架橋性基又は熱架橋性基(これらは、当業者によく知られている)を包含することが意図されている。一対の適合する架橋性基が、酸化還元条件、脱水縮合条件、付加条件、置換(substitution)(又は置換(displacement))条件、フリーラジカル重合条件、2+2シクロ付加条件、ディールス・アルダー反応条件、ROMP(リング開環メタセシス重合)条件、加硫条件、カチオン架橋条件、及びエポキシ硬化条件などの既知の反応条件下で共有結合(covalent bond)又は共有結合(covalent linkage)を形成し得ることは、当該技術分野においてよく知られている。例えば、アミノ基はアルデヒドと共有結合可能であり(アルデヒド基及びアミノ基から形成されるシッフ塩基はさらに還元され得る);ヒドロキシル基及びアミノ基はカルボキシル基と共有結合可能であり;カルボキシル基及びスルホ基はヒドロキシル基と共有結合可能であり;メルカプト基はアミノ基と共有結合可能であり;又は炭素-炭素二重結合は別の炭素-炭素二重結合と共有結合可能である。
【0097】
架橋性基の対の間で形成される例示的な共有結合(covalent bond)又は共有結合(covalent linkage)としては、限定されないが、アルカン(炭素-炭素単結合)、アルケン(炭素-炭素二重結合)、エステル、エーテル、アセタール、ケタール、ビニルエーテル、カルバメート、尿素、アミン、アミド、エナミン、イミン、オキシム、アミジン、イミノエステル、カーボネート、オルトエステル、ホスホネート、ホスフィネート、スルホネート、スルフィネート、スルフィド、サルフェート、ジスルフィド、スルフィンアミド、スルホンアミド、チオエステル、アリール、シラン、シロキサン、複素環、チオカーボネート、チオカルバメート、及びホスホンアミドが挙げられる。
【0098】
例示的な架橋性基としては、限定されないが、ヒドロキシル基、アミン基、アミド基、スルフヒドリル基、-COOR(R及びR’は、水素又はC1~C8アルキル基である)、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化アシル、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ-又はジハロゲン置換ピリジン、モノ-又はジハロゲン置換ジアジン、ホスホルアミダイト、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アキシドニトロフェニル基、アジド、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド、グリオキサール、アルデヒド、エポキシ、オレフィン性不飽和基が挙げられる。
【0099】
インク中のバインダーポリマーは、レンズ材料と相溶性である任意のポリマーであり得る。バインダーポリマーは、ビニルアルコール、ビニルブチラール、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のヒドロキシC1~C6アルキルエステル、アクリル酸とメタクリル酸のアミノC1~C8アルキルエステル、アクリル酸とメタクリル酸のグリセロールエステル、ビニルピロリドン、塩化ビニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ジメチルアクリルアミドなどを含有するモノマーの重合によって調製することができる。これらの種々のモノマーの混合物は、様々なコポリマーを形成するために作製することができる。他のポリマーとしては、少なくとも1つの架橋性基を有する様々なセルロース樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、又はポリアミドを挙げ得る。好ましくは、結合ポリマーを調製する際に使用されるモノマーは、レンズを作製する際に使用されるモノマーと同じである。
【0100】
本発明のカラーレンズを印刷するためのインクは、任意の知られた好適な方法に従って調製することができる。例えば、まず、結合ポリマーと溶媒の溶液を調製し、この溶液を着色剤を含有するペーストと混合してインクを形成する。現在、約40,000cpsの粘度を有する結合ポリマー溶液からインクを形成することが好ましい。
【0101】
パッド転写印刷は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、Spivackによる米国特許第3,536,386号明細書;Knappによる米国特許第4,582,402号明細書及び同第4,704,017号明細書;Rawlingsらによる米国特許第5,034,166号明細書を参照されたい。これらの文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この印刷の典型的な例を以下に示す。画像を金属にエッチングして、クラッチ版を形成する。クラッチ版をプリンタに配置する。プリンタに配置すると、クラッチ版は、開放インクウェルドクターブレードシステム、又は画像を横切ってスライドするクローズドインクカップによって、インク付けされる。次いで、シリコーンパッドがインク画像をクラッチ版からピックアップし、その画像をコンタクトレンズに転写する。シリコーンパッドは、弾性が変化し得るシリコーンを含む材料で作られている。シリコーン材料の特性は、インクがコンタクトレンズ又は成形型に接触したときに、パッドから一時的且つ完全に剥離することを可能にする。適切なパッド転写印刷構造としては、以下に限定されないが、当該技術分野で知られているような、タンポ型印刷構造(Tampo vario 90/130)、ゴムスタンプ、シンブル、ドクターブレード、直接印刷、又は転写印刷が挙げられる。
【0102】
本発明においては、任意の知られた好適なシリコーンパッドを使用することができる。シリコーンパッドは市販されている。しかしながら、異なるパッドは、異なる印刷品質を与え得る。当業者であれば、所与のインクのためのパッドを選択する方法を知っているであろう。
【0103】
クラッチ版は、セラミック又は金属(例えば、鋼鉄)から作ることができる。クラッチ版が鋼鉄で作られている場合、緩衝剤(例えば、リン酸塩)を添加することによって、水性インクのpHを中性にする(例えば、pHを6.8~7.8に調整)ことが望ましい。画像は、当業者に知られた任意の方法、例えば化学エッチング又はレーザーアブレーションなどにより、クラッチ版にエッチングすることができる。また、使用後のクラッチ版は、例えば溶媒への浸漬、超音波処理又は機械的研磨などの、当業者に知られた標準的な洗浄技法により、洗浄することが望ましい。
【0104】
レンズの前面(凸面)又は後面(凹面)に印刷され得るものの、前面の印刷することが現在好ましいことは理解されている。
【0105】
インクジェット印刷プロセスを用いたレンズの印刷は、米国特許出願公開第2001/0050753号明細書、同第2001/0085934号明細書、同第2003/0119943号明細書、及び同第2003/0184710号明細書(これらの文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0106】
或いは、本発明のカラーコンタクトレンズは、Rawlingsらによる米国特許第5,034,166号明細書(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものと同様のプリントオンモールド(print-on-mold)法により作製することができる。まずインクをパッド転写印刷(又はパッド印刷)又はインクジェット印刷を使用して、一方又は両方の成形型部分の成形面に適用して、(カラー画像を有する)着色コートを形成することができる。着色コートは、コンタクトレンズの後面(凹面)を画定する成形面に、又はコンタクトレンズの前面を画定する成形面に、又は両成形部分に適用することができる。好ましくは、(カラー画像を有する)着色コートは、コンタクトレンズの前面を画定する成形面に適用される。
【0107】
任意選択により、パッド転写印刷によってインクを適用する前に、転写可能なコーティングを成形型の成形面に適用することができる。転写コーティングは、成形型の成形面から分離され、成形型内に成形されたコンタクトレンズの本体と一体化することができるコーティングを説明することを意図している。転写可能なコーティングは、例えば、噴霧、印刷、スワビング、又は浸漬などの任意の好適な技術によって、成形型の成形面に適用することができる。転写可能なコーティングは、重合性成分を含み、着色剤を含まない溶液から調製することができる。例えば、実質的に均一な厚さ(200ミクロン未満)を有する転写可能なコーティングは、使用されるインクの組成(着色剤なし)を有する溶液、又は使用されるプレポリマーの溶液若しくはレンズ形成材料の溶液を成形面に噴霧することによって調製することができる。任意選択により、この転写可能なコーティングを乾燥又は硬化させて、転写可能な透明膜(顔料を含まないが、任意選択により、反応性染料を含む染料を含む)を形成することができる。次いで、1つ又は複数の着色パターンをこの転写可能なコーティング又は膜上に印刷することができる。印刷前に転写可能なコーティングを適用することによって、印刷された着色パターンが転写可能なコーティングに由来する膜の直下に埋め込まれたカラーレンズを作製することができる。このようなレンズは、装着がより快適であり、カラーレンズから着色剤が浸出する可能性がはるかに低い。
【0108】
成形型の成形面に本発明のインクを印刷した後、印刷されたインクをUV又は他の化学線によって硬化させて、本発明による着色膜を形成することができる。印刷されたインクは、レンズ形成材料のその後の充填に起因する着色コートのパターン画定の損失を最小限に抑える程度まで化学線により硬化させることが望ましい。
【0109】
コンタクトレンズを作製するためのレンズ成形型は、当業者によく知られており、例えば、注型成形又は回転成形に使用される。例えば、(注型成形用の)成形型は、一般に、少なくとも2つの成形型片(若しくは部分)又は成形型半体、すなわち第1及び第2の成形型半体を含む。第1の成形型半体は、第1の成形(又は光学)面を画定し、第2の成形型半体は、第2の成形(又は光学)面を画定する。第1及び第2の成形型半体は、第1の成形面と第2の成形面との間にレンズ形成キャビティが形成されるように、互いを受け取るように構成される。成形型半体の成形面は、成形型のキャビティ形成面であり、重合性組成物と直接接触する。
【0110】
コンタクトレンズを注型成形するための成形型片を製造する方法は、一般に当業者によく知られている。本発明の方法は、成形型を形成する特定の方法に限定されない。実際、本発明では、成形型を形成するための任意の方法を使用することができる。第1及び第2の成形型半体は、射出成形又は旋盤などの様々な手法により形成することができる。成形型半体の形成に好適なプロセスの例は、Schadによる米国特許第4,444,711号明細書、Boehmらによる同第4,460,534号明細書、Morrillによる同第5,843,346号明細書、及びBonebergerらによる同第5,894,002号明細書(これらの文献もまた参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0111】
成形型を製造するための当該技術分野で知られる事実上全ての材料を、コンタクトレンズを作製するための成形型の製造に使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007-S10(Frankfurt、Germany及びSummit、New JerseyのTicona GmbH製の、エチレンとノルボルネンとの透明な非晶質コポリマー)などの、ポリマー材料を使用することができる。石英ガラス及びサファイアなどの、UV光を透過可能な他の材料を使用することができるであろう。
【0112】
本発明においては、任意のレンズ形成材料を使用することができ、本発明のこの態様の重要な部分であると現在考えられていない。コンタクトレンズの製造に好適なレンズ形成材料は、多くの発行された米国特許に例示されており、当業者によく知られている。好ましいレンズ形成材料は、ヒドロゲルを形成することができる。レンズ形成材料は1種以上のプレポリマー、任意選択により1種以上のビニルモノマー及び/又はマクロマーを含むことができ、任意選択により、光開始剤、可視着色剤、充填剤などの様々な成分をさらに含むことができる。任意のシリコーン含有プレポリマー又は任意のシリコーン非含有プレポリマーを本発明において使用することができることを理解されたい。
【0113】
レンズ形成材料の好ましい群は、上記のように水溶性及び/又は溶融性であるプレポリマーである。レンズ形成材料は、好ましくは(例えば、限外濾過によって精製された)実質的に純粋な形態である1種以上のプレポリマーを主に含むことが有利であろう。したがって、化学線による架橋/重合の後、コンタクトレンズは、未重合成分の複雑な抽出などのその後の精製を事実上必要としない場合がある。さらに、架橋/重合は無溶媒又は水溶液中で行い、その結果、その後の溶媒交換又は水和工程を不要とすることができる。
【0114】
当業者であれば、コンタクトレンズを形成するために、レンズ形成キャビティ内のレンズ形成材料を化学的又は熱的に硬化させる方法をよく知っているであろう。
【0115】
レンズ形成材料が、任意選択的に他の成分の存在下、溶液、溶媒非含有液体、又は1種以上のプレポリマーの溶融物である好ましい実施形態においては、再利用可能な成形型が使用され、レンズ形成材料は化学線の空間的制限下で化学線により硬化されて、カラーコンタクトレンズが形成される。好ましい再利用可能な成形型の例は、1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号明細書、2003年12月10日出願の同第10/732,566号明細書、2003年11月25日出願の同第10/721,913号明細書、及び米国特許第6,627,124号明細書(これらの文献はその全体が参照により組み込まれる)に開示されているものである。
【0116】
この場合、レンズ形成材料は、2つの成形型半体からなる成形型に入れられ、2つの成形型半体は互いに接触せず、それらの間に配置された環状設計の薄い間隙を有する。間隙は、余分なレンズ材料が間隙に流れ出ることができるように、成形型キャビティに接続される。一度しか使用できないポリプロピレンモールドの代わりに、再利用可能な石英、ガラス、サファイア成形型を使用することが可能であり、なぜなら、レンズの製造に続いて、これらの成形型は、未架橋のプレポリマー及び他の残留物を効果的に除去するために、水又は好適な溶媒を使用して迅速に洗浄及び乾燥することができるからである。再利用可能な成形型はまた、Ticona GmbH(Frankfurt、Germany及びSummit、New Jersey)製のTopas(登録商標)COCグレード8007-S10(エチレンとノルボルネンとの透明な非晶質コポリマー)から作製することができる。成形型半体は、製造されるレンズの領域、すなわちキャビティ又は実際の成形面において互いに接触しないので、接触の結果としての損傷は除外される。これは、成形型の高い耐用年数を保証し、特に、製造されるコンタクトレンズの高い再現性も保証する。
【0117】
コンタクトレンズの2つの反対側の面(前面及び後面)は2つの成形面によって画定され、一方、縁部はモールド壁によるよりもむしろ化学線照射の空間的制限によって画定される。典型的には、2つの成形面によって結合された領域内のレンズ形成材料と、空間的制限の明確に規定された周辺境界の突出部のみが架橋され、一方、空間的制限の周辺境界の外側とすぐ周りのレンズ形成材料は架橋されず、それによって、コンタクトレンズの縁部は化学線の空間的制限の寸法及び幾何学的形状の滑らかで正確な複製になるであろう。このようなコンタクトレンズの製造方法は、1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号明細書、2003年12月10日出願の同第10/732,566号明細書、2003年11月25日出願の同第10/721,913号明細書、及び米国特許第6,627,124号明細書(これらの文献はその全体が参照により組み込まれる)に記載されている。
【0118】
化学線の空間的制限(又はエネルギー衝突の空間的制限)は、1994年7月14日出願の米国特許出願第08/274,942号明細書及び米国特許第6,627,124号明細書(これらの文献はその全体が参照により組み込まれる)に例示されているように、使用される特定の形態のエネルギーに対して少なくとも部分的に不透過性である成形型をマスクすることよって、又は2003年12月10日出願の米国特許出願第10/732,566号明細書、2003年11月25日出願の同第10/721,913号明細書、及び米国特許第6,627,124号明細書(これらの文献はその全体が参照により組み込まれる)に例示されているように、架橋を引き起こすエネルギー形態に対して、少なくとも一方の側が高透過性であり、且つエネルギーに対して不透過性であるか若しくは低透過性であるモールド部分を有する成形型によって達成される。架橋のために使用されるエネルギーは、放射線エネルギー、特にUV線、ガンマ線、電子線又は熱放射であり、放射線エネルギーは、一方では良好な制限を達成し、他方ではエネルギーの効率的な使用を達成するために、実質的に平行なビームの形態であることが好ましい。
【0119】
本発明のインクは、成形型からコンタクトレンズへの着色コートの良好な転写性、及び成形レンズへの良好な接着性を有するべきであることを理解されたい。得られるカラーコンタクトレンズは、実質的に平滑であり、着色膜を含む表面で連続的である。
【0120】
良好な転写性及び接着性は主に、成形型内のレンズ形成材料の硬化中の相互侵入網目の形成から生じ得る。本発明を特定の機構又は理論に限定するものではないが、本発明のインクバインダーは、ヒドロゲルレンズのレンズ材料と相互貫入網目(IPN)を形成することができると考えられる。IPN形成による本発明のインクのレンズへの接着は、レンズポリマー中の反応性官能基の存在を必要としない。レンズ形成材料は、着色膜中の架橋バインダーポリマーの存在下で架橋され、IPNを形成する。バインダーポリマー中のいくつかの(残留)エチレン性不飽和基が、着色膜を形成するための着色コートの硬化中に消費されないことがあることは理解されている。これらの残留エチレン性不飽和基は、成形型内のレンズ形成材料の硬化中にバインダーポリマーをレンズ材料に結合させる架橋反応を受ける可能性がある。
【0121】
レンズとインクとの間の接着が、バインダーポリマーとレンズポリマーとの間の直接的な連結(結合形成)によって強化され得ることも理解されている。例えば、求核基を含有するバインダーポリマーは、エポキシ、無水物、ハロゲン化アルキル及びイソシアネートなどの求電子基を含有するレンズポリマーと反応する可能性がある。或いは、インクバインダーポリマー中に求電子基を有し、レンズポリマー中に求核基を有することによって、インクをレンズに結合させることができる。硬化性インクはまた、バインダーポリマーに求核性官能基と求電子性官能基の両方を組み込むことによって作製することができる。
【0122】
本発明は、色覚異常補正用カラーコンタクトレンズを作製するための方法であって、
(a)コンタクトレンズの前面を画定する第1の成形面を有する第1の成形型半体と、コンタクトレンズの後面を画定する第2の成形面を有する第2の成形型半体とを含む成形型を提供する工程であって、第1及び第2の成形型半体はコンタクトレンズ形成キャビティが第1及び第2の成形面の間に形成されるように、互いに受け入れるように構成されている、工程と;
(b)レンズ成形型の少なくとも1つの成形面上にクリアインク層を適用して、成形型表面の少なくとも虹彩部分を覆う工程と;
(c)UV/可視光でクリアインク層を少なくとも部分的に硬化させる工程と;
(d)パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、最外星型パターン、外側星型パターン及び内側星型パターンからなる群から選択されるコスメティックパターンを有する少なくとも1つのインク層を、成形型表面の少なくとも1つに適用する工程であって、前記部分のそれぞれは複数の点で互いに重なり合っている、工程と、
(e)パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、環状着色パターンを成形型表面の少なくとも1つに適用する工程であって、環状パターンは不透明である着色ドットから構成され、環状着色パターンのドットの大きさ及び/又はドット間のスペース量は、局所着色ドット被覆率が環状虹彩セクションの内周から環状虹彩セクションの外周まで半径方向に増加するように、半径方向に制御されて変化している、工程と、
(f)UV/可視光で着色パターンインク層を少なくとも部分的に硬化させる工程と;
(g)工程(g)の後、パッド転写又はインクジェット印刷技法を使用することによって、少なくとも成形面の1つに第2のクリアインク層を適用して、成形型表面の1つの中央部分を少なくとも覆う工程と;
(h)成形型に印刷されたインク層を部分的に又は完全に硬化させて、インク層コーティングを膜に変換する工程と;
(j)レンズ形成キャビティ内にフォトクロメートを含有するレンズ形成材料を分配する工程と;
(k)レンズ形成キャビティ内のレンズ形成材料を硬化させて、カラーコンタクトレンズを形成する工程であって、これにより、膜は成形面から剥離し、コンタクトレンズの本体と一体化し、膜はカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズの前面及び後面のうちの1つの一部になる、工程と
を含む方法に関する。
【0123】
本発明を実施するために、任意のレンズ形成材料で作製された任意の既知の好適なレンズを使用することができる。好ましくは、ヒドロゲルレンズ又はシリコーン含有ヒドロゲルレンズが本発明を実施するために使用される。好ましいレンズの例としては、限定されないが、Loshaekの米国特許第4,668,240号明細書(この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているレンズ、米国特許第5,583,163号明細書及び同第6,303,687号明細書(この文献はその全体が参照により組み込まれる)に記載されているような水溶性架橋性ポリ(ビニルアルコール)プレポリマーから調製されるレンズ、米国特許第6,479,587号明細書(この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)及び2003年11月25日出願の発明の名称が「架橋性ポリ尿素プレポリマー」である同時係属中の米国特許出願第60/525,100号明細書(この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)などに記載されているような水溶性架橋性ポリ尿素プレポリマーから作製されるレンズが挙げられる。例えば、FOCUS DAILIES(登録商標)、ACUVUE(登録商標)などの任意の市販のレンズを使用して、本発明を実施することができることが理解されている。
【0124】
当業者であれば、上記開示により、本発明を実施することができるであろう。特定の実施形態及びそれの利点を読者がより十分に理解できるようにするために、以下の実施例を参照することを提言する。配合物中の百分率は、別段の指定がない限り、重量百分率に基づく。
【0125】
本発明を実施するために使用される好ましいレンズ及びインク成分は知られており、Loshaekの米国特許第4,668,240号(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。具体的な成分及び目標重量は、以下に詳細に記載する。非常に簡潔に記載すると、-COOH、-OH、又は-NH.sub.2基を有するポリマーで構成されたレンズは、同じ官能基を有する結合ポリマー、不透明な着色物質、及びジイソシアネート化合物を含有するインクで印刷される。まず、結合ポリマーと溶媒の溶液を調製し、この溶液を着色物質を含有するペーストと混合してインクを生成する。好ましい結合ポリマー溶液は、青色、灰色、褐色及び黒色の場合、約35,000CPS、緑色の場合、50,000CPSの粘度を有する。不透明なインクを、レンズ表面に印刷し硬化させる。クリアインクを、同じバインダー溶液を用いて調製するが、いかなる着色剤も顔料も含まれない。
【0126】
本発明において使用することができるインクペースト及び顔料は、以下の表1に記載されるような成分及び(重量)百分率を使用して、多くの異なる方法で作製することができる。例えば、ハシバミ色インクペーストは、63.49(重量)パーセントのバインダー溶液、30.00パーセントの乳酸エチル、0.61パーセントの二酸化チタン、0.06重量パーセントのPCNブルー、4.30重量パーセントの黄色酸化鉄、及び1.54重量パーセントの赤色酸化鉄を使用して作製することができる。これらの色は好ましい実施形態で使用されるが、他の色又は変動させた重量百分率が使用されてもよい。以下の表は、可能なインク及び顔料レベルの代表的な例を単に提供しているに過ぎず、完全なリストではない。当業者であれば、コンタクトレンズを装着している人の虹彩に対する増強効果を提供する他のインク及び顔料レベルを開発することができるであろう。
【0127】
【0128】
大気圧におけるチタンの唯一の天然に存在する酸化物である二酸化チタンは、次の3つの多形体を示す:ルチル、アナターゼ及びブルッカイト[1-7]。ルチルは安定相であるが、アナターゼ及びブルッカイトはいずれも準安定である;
高い光反射率を有する高屈折率顔料からなる上記の印刷インク:
〇 二酸化チタン(ルチル相)RI約2.609
〇 二酸化チタン(アナターゼ相)RI約2.488
〇 二酸化チタン(ブルッカイト相)RI約2.583
〇 赤色酸化鉄(Fe2O3)RI約2.42
〇 黄色酸化鉄(FeO(OH))RI約2.40
〇 マイカ RI約1.563
〇 マイカ系真珠光沢顔料:
・塩基性溶液からマイカ上にチタン塩又は鉄塩を堆積させ、続いて焼成して、雲母上に二酸化チタン又は酸化鉄を生成することによって形成される。
【0129】
まず、ドーナツ形状(中心が空いている)のクリアコートを、パッド印刷を用いてメス型半体の成形面に適用し、クリアインクで丸い形状を印刷する。後続の印刷の前に、約1~5秒間、UV光を照射してクリアコートを硬化させる。
【0130】
最外側星型着色パターンを雌型半体の成形面上の硬化させたクリアコート上に印刷し、内側の型着色パターンを雌型半体の成形面上の硬化させたクリアコート上に印刷し、環状着色パターンを、パッド印刷を使用して、雌型半体の成形面上の硬化させたクリアコート上に印刷する。
【0131】
クリア層及び着色パターンを有する雌型半体に、フォトクロメートを含有するレンズ形成材料を分配し、レンズ形成キャビティ内のレンズ形成材料を硬化させて、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズを形成し、それによって、膜が成形面から剥離して、カラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズの本体と一体となり、膜がカラーコスメティックフォトクロミックコンタクトレンズの前面及び後面の一方の一部となり、レンズに対して良好な接着性を有する。
【実施例】
【0132】
実施例1
化学物質
以下の実施例において、以下の略語が使用される:NVPは、N-ビニルピロリドンを示し;DMAは、N,N-ジメチルアクリルアミドを示し;MMAは、メタクリル酸メチルを示し;TEGDMAは、トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートを示し;EGMAは、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレートを示し;AMAは、メタクリル酸アリルを示し;V64は、2,2’-ジメチル-2,2’アゾジプロピオニトリルを示し;V88は、10時間半減期温度が88℃の1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)を示し;Noblocは、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレートであり;RB247は、リアクティブブルー247であり;TAAはtert-アミルアルコールを示し;PrOHは1-プロパノールを示し;IPAは、イソプロパノールを示し;PBSは、25℃で7.2±0.2のpHを有し、約0.044wt%のNaH
2PO
4・H
2O、約0.388wt%のNa
2HPO
4・2H
2O、及び約0.79wt%のNaClを含むリン酸緩衝生理食塩水を示し;wt%は、重量パーセントを示し;D6は、モノブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(M.W.700~800g/mol Shin Etsu製)を示し;「G1」マクロマーは、上記式(A)のジメタクリロイルオキシプロピル末端ポリシロキサン(Mn約7.5~8.1Kg/mol、OH含量約1.25~1.55meq/g)を示す。
G-PDMS 1661は、以下の構造式で表されるジメタクリレート末端ポリシロキサン(MW.9Kg/mol)を示す。
【化1】
【0133】
実施例3
この実施例は、レンズ配合物中のフォトクロミック化合物のレンズ脱型時に及ぼす有害な影響を説明する。
【0134】
重合性組成物の調製
3種のレンズ配合物(重合性組成物)、I~IIIを、表2に示す組成(重量単位 部)を有するように調製する。
【0135】
【0136】
これらの配合物を、列挙した成分を清浄なボトルに添加し、撹拌子を用いて室温にて600rpmで30分間混合することにより調製する。全ての固形物が溶解した後、2.7μmのGMFフィルターを使用して、配合物の濾過を行う。
【0137】
注型成形
レンズ配合物を、室温で30~35分間、窒素でパージする。N2パージしたレンズ配合物をポリプロピレン製成形型内に入れ、以下の硬化条件で熱硬化させる:約7℃/分の昇温速度で室温から55℃まで昇温、55℃で約30分間保持、約7℃/分の昇温速度で55℃から80℃まで昇温、55℃で約30分間保持、約7℃/分の昇温速度で80℃から100℃まで昇温、及び100℃で約30分間保持。
【0138】
成形型分離及びレンズの脱型
その中に成形されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ前駆体をそれぞれ有するレンズ成形型を、
図2に示され、上述されるように、機械的に開く。成形された未処理のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ前駆体は雄型半体に接着しており、雄型半体から機械的に取り出す(すなわち、ドライ脱型する)。
【0139】
成形後のプロセス
離型及びレンズ脱型の後、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをプラスチックトレイに置く。次いで、レンズを有するトレイを、上で調製したPAA溶液中に約2時間浸漬し、次いで、PAAでコーティングされたSiHyレンズを形成するために、PBS中に約5分間~1時間室温で浸漬する。浸漬中のPAA溶液及びPBSの適切な流れを確実にするために、適切な撹拌(例えば、水平振盪又は上下運動)を使用する。
【0140】
次いで、上で調製したPAAコーティングSiHyレンズを、0.55mL又は0.65mlのIPC生理食塩水と共に、ポリプロピレンレンズ包装シェル(1シェル当たり1つのレンズ)に入れる(生理食塩水の約半分をレンズ挿入前に加えておいてもよい)。次いで、ブリスターをホイルで密封し、約121℃で約45分間オートクレーブ処理して、架橋コーティング(PAA-x-親水性ポリマー材料)をその上に有するSiHyコンタクトレンズを形成する。
【0141】
本発明が従来の材料に比べて有する主な利点は、瞳孔領域を取り囲むコスメティックパターンの存在によってもたらされる目のより自然な外観である。潜在的な増強を
図7に示す(注:これは、UV露光の直後にフォトクロミックレンズの上に重ね合わされたAO Colorsアメジストレンズである)。
【0142】
本発明の様々な実施形態を、特定の用語、デバイス、及び方法を用いて記載してきたが、このような記載は、例示目的のみのためである。用いられている語は、限定の語よりもむしろ説明の語である。以下の特許請求の範囲において明記される、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく当業者によって変更及び変動が行われ得ることが理解されるべきである。さらに、様々な実施形態の態様が全体的に又は部分的に交換し得ることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、その中に含まれる好ましいバージョンの説明に限定されるべきではない。
【国際調査報告】