(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】摩擦パッド、摩擦プレート、及び摩擦プレートを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
F16D 13/62 20060101AFI20240313BHJP
F16D 69/00 20060101ALI20240313BHJP
F16D 69/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F16D13/62 A
F16D69/00 B
F16D69/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560130
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 DE2022100164
(87)【国際公開番号】W WO2022228598
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】102021110830.6
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ベアヴァルト
【テーマコード(参考)】
3J056
3J058
【Fターム(参考)】
3J056AA60
3J056BC01
3J056BE09
3J058CA44
3J058CB20
3J058DD13
3J058GA94
(57)【要約】
本発明は、締結面と、締結面から離れる方向に面しており、かつ外周切断縁部(11)によって画定された形状を有する摩擦面(9)とを有する摩擦パッド(5)に関する。摩擦パッド(5)の機能を改善するために、摩擦パッド(5)は、外周切断縁部(11)に沿って延在するベースリム(12)を含み、ベースリム(12)内の摩擦パッド(5)よりも圧縮されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結面(10)と、前記締結面(10)から離れる方向に面しており、かつ外周切断縁部(11)によって画定された形状を有する摩擦面(9)とを有する摩擦パッド(5)であって、前記摩擦パッド(5)は、前記外周切断縁部(11)に沿って延在するベースリム(12)を有し、前記ベースリム(12)内の前記摩擦パッド(5)よりも圧縮されていることを特徴とする、摩擦パッド(5)。
【請求項2】
前記ベースリム(12)が、前記摩擦パッド(5)のパッド高さ(14)の少なくとも4分の1に相当するベース高さ(13)を有することを特徴とする、請求項1に記載の摩擦パッド。
【請求項3】
前記ベースリム(12)が、前記摩擦パッド(5)の前記パッド高さ(14)と少なくとも同程度のベース幅(15)を有することを特徴とする、請求項2に記載の摩擦パッド。
【請求項4】
前記ベースリム(12)が、外周段として構成されており、前記外周段が、断面において、前記摩擦面(9)から角度がつけられた第1の脚部(16)を有し、前記第1の脚部(16)から第2の脚部(17)が角度をつけられており、前記第2の脚部(17)が、前記ベースリム(12)を表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の摩擦パッド。
【請求項5】
前記摩擦面(9)と前記第1の脚部(16)との間の角度、並びに前記第1の脚部(16)と前記第2の脚部(17)との間の角度が、90~120度の角度として構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の摩擦パッド。
【請求項6】
前記摩擦面(9)と前記第1の脚部(16)との間に曲率半径(18)が形成されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の摩擦パッド。
【請求項7】
前記第1の脚部(16)と前記第2の脚部(17)との間に曲率半径(19)が形成されていることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の摩擦パッド。
【請求項8】
前記曲率半径(18、19)が、10分の1~1ミリメートルのサイズを有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の摩擦パッド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの摩擦パッド(5)を有する摩擦プレート(1)。
【請求項10】
請求項9に記載の摩擦プレート(1)を製造するためのプロセスであって、中間パッド製品が、打ち抜きプロセスにおいてライニング材料から打ち抜かれた後に、前記打ち抜かれた中間パッド製品が、後続の接着プロセスにおいてキャリア要素(2)に接着され、前記ベースリム(12)が、前記接着プロセスにおいて前記中間パッド製品にエンボス加工されることを特徴とする、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結面と、締結面から離れる方向に面しており、かつ外周切断縁部によって画定された形状を有する摩擦面とを有する摩擦パッドに関する。本発明は更に、少なくとも1つのそのような摩擦パッドを有する摩擦プレートに関する。本発明は更に、そのような摩擦プレートを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102017124330号明細書から、流体通路開口部を有するプレートキャリアに対して、回転不可であるが軸方向に変位可能なように接続されている、クラッチプレートを有する湿式ランニングマルチプレートクラッチが知られており、クラッチプレートのうちの少なくとも1つは、半径方向内向き及び/又は半径方向外向きに少なくとも1つの窪みを有し、その窪みによって、プレートキャリアのうちの1つにおける近傍流体通路開口部を通る流量が改善される。独国特許出願公開第102013010651号明細書は、閉じられたクラッチハウジング及びクラッチハウジングに配置された少なくとも1つのクラッチプレートを有する湿式クラッチ装置であって、クラッチハウジングは、プレートキャリアと、プレートキャリア上に配置された少なくとも2つの摩擦パッドとを有し、摩擦パッドは、周方向において互いに離れて配置され、少なくとも実質的に半径方向に延びており、少なくとも部分領域において周方向に傾斜している冷媒ダクトを画定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、締結面と、締結面から離れる方向に面しており、かつ外周切断縁部によって画定された形状を有する摩擦面とを有する摩擦パッドを機能的に改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本目的は、締結面と、締結面から離れる方向に面しており、外周切断縁部によって画定された形状を有する摩擦面とを有する摩擦パッドであって、摩擦パッドは、外周切断縁部に沿って延在するベースリムを有し、ベースリム内の摩擦パッドよりも圧縮されている、摩擦パッドを用いて達成される。この摩擦パッドは、繊維を含有する摩擦ライニング材料から形成されていることが好ましい。繊維を有する摩擦ライニング材料は、製紙において使用される原材料と類似している。したがって、摩擦ライニング材料はまた、紙材、更には短縮して紙と称される。動作中において、摩擦パッドは、油などの冷媒と接触される。したがって摩擦パッドは、湿式ランニング摩擦パッドとも称される。同様に、摩擦パッドが形成される紙はまた、湿式ランニング紙と称される。摩擦パッドは、例えば穿孔によってその切断縁部に沿って摩擦ライニング材料から分離される。ただし、摩擦パッドはまた、何らかの他の方法で摩擦ライニング材料から切り出されることも可能である。切り出し又は穿孔時に、例えば安価な工具を用いると、摩擦パッドが裂ける、又は繊維が湿式ランニング紙から引きちぎられることが起こり得る。キャリア要素に取り付けられた摩擦パッドの一部及び/又は繊維が分離した場合、これは剥離とも称される。摩擦パッドのより強力に圧縮されたベースリムのため、その摩擦パッドを備えた摩擦プレートの動作中の剥離は、実質的に防止される、又は少なくとも著しく低減されることが可能である。切断縁部上の損傷領域が全体的なエンボス加工によって強化され、欠陥がなくなるため、摩擦パッドの強度は、実質的に高まる。加えて、例えば、鋼プレートと接触されるのは、繊維性の切断縁部ではなく、エンボス加工された丸みのある縁部であるため、摩擦パッドを備えた摩擦プレートの動作中に、ドラッグトルクが低減可能である。この構成に応じて、摩擦パッドの基礎領域がベースリムによって拡大されることが、既知の方法において許容される。
【0005】
摩擦パッドの好適な例示的実施形態は、ベースリムが、摩擦パッドのパッド高さの少なくとも4分の1に相当するベース高さを有することを特徴とする。締結面又は摩擦面に対する交差する方向の摩擦パッドの寸法は、パッド高さ及びベース高さと称され、ここで、締結面は、摩擦面に対して平行に配置されている。特許請求の範囲に記載のベース高さによって、摩擦パッドはまた、ベースリムの領域において十分に安定してキャリア要素に取り付けられ得る。
【0006】
摩擦パッドの別の好適な例示的実施形態は、ベースリムが摩擦パッドのパッド高さと少なくとも同程度のベース幅を有することを特徴とする。切断縁部に対して交差する方向のベースリムの寸法は、幅と称される。特許請求の範囲に記載のベース幅によって、摩擦パッドの十分に安定した取り付けも、キャリアプレート上のベースリムの領域において確実となり得る。
【0007】
摩擦パッドの更に好適な例示的実施形態は、ベースリムが、外周段として構成されており、外周段が、断面において、摩擦面から角度がつけられた第1の脚部を有し、第1の脚部から第2の脚部が角度をつけられており、第2の脚部が、ベースリムを表すことを特徴とする。したがって、例えば、摩擦パッドに対する穿孔時に生成された切断縁部は、第1の脚部から離れる方向に面している第2の脚部の端部から角度がつけられている。摩擦パッドの形状は、ほぼいかようにも実施され得る。外周段は、摩擦パッド上の切断縁部全体に沿って延在する。
【0008】
摩擦パッドの別の好適な例示的実施形態は、摩擦面と第1の脚部との間の角度、並びに第1の脚部と第2の脚部との間の角度が、90~120度であることを特徴とする。これは、所望の機能に関して、並びに摩擦パッドの作製及び摩擦パッドを備えた摩擦プレートの作製に関して有益であると証明されている。
【0009】
摩擦パッドの別の好適な例示的実施形態は、摩擦面と第1の脚部との間に曲率半径が形成されていることを特徴とする。とりわけ、これは、摩擦パッドと、摩擦プレート及び摩擦パッドを備えた摩擦クラッチの動作中に接触する鋼プレートとの間の接触領域又は接触面において繊維性の切断縁部又は鋭利な縁部が発生しないという利点を提供する。その結果、摩擦クラッチ、特にマルチプレートクラッチの動作中の摩擦パッドの摩耗が、実質的に低減され得る。
【0010】
摩擦パッドの別の好適な例示的実施形態は、第1の脚部と第2の脚部との間に曲率半径が形成されていることを特徴とする。この曲率半径は、摩擦パッドの周辺を流れる冷媒に関して有益であると証明されている。
【0011】
摩擦パッドの別の好適な例示的実施形態は、曲率半径が、10分の1~1ミリメートルのサイズを有することを特徴とする。曲率半径の特許請求の範囲に記載のサイズは、有益なことに、摩擦面と第1の脚部との間の曲率半径及び第1の脚部と第2の脚部との間の曲率半径に関係する。
【0012】
本発明は更に、上述したような少なくとも1つの摩擦パッドを有する摩擦プレートに関する。摩擦プレートは、上述した複数の摩擦パッドが接着されるキャリアプレートを備えることが好ましい。全ての摩擦パッドは、有益なことに、ベースリムを有する。ただし、摩擦プレートのいくつかの摩擦パッドのみ、すなわち全てではない摩擦パッドがベースリムを有することも可能である。
【0013】
上述したような摩擦プレートを製造するためのプロセスにおいて、上述した目的は、代替的又は追加的に、中間パッド製品が、打ち抜きプロセスにおいて被覆材料から打ち抜かれた後に、打ち抜かれた中間パッド製品が、後続の接着プロセスにおいてキャリア要素に接着され、ベースリムが、接着プロセス中に中間パッド製品にエンボス加工されることにおいて達成される。繊維は、穿孔から切断縁部において引っ張り出される場合があり、これは摩擦パッドへの事前の損傷をもたらすため、それ自体が望ましくない。ベースの縁部をエンボス加工することによって、事前に損傷された領域は、有益なことに、摩擦パッドの切断縁部上又はその内部の開放領域が閉じられる程度に圧縮される。接着中に生成される周辺エンボス加工に起因して、摩擦ライニング材料、特に湿式ランニング紙は、穿孔中に損傷を受けた領域において大きく圧縮又は圧縮され、キャリア要素上の摩擦パッドの強度を増加させる。これは、結果として、動作中に鋼プレートと接触する摩擦パッドの接触面上、又は側面上に、鋭利な切断縁部がないエンボス加工された輪郭をもたらす。このように、トルクは、実質的に低減可能であり、同時に剥離のリスクを下げる。とりわけ、特許請求の範囲に記載の解決策は、溝パターン又は溝構成がより小さい摩擦パッドを用いて実現可能であるという利点を提供する。
【0014】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、様々な例示的な実施形態が図面を参照して詳細に説明される以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】エンボス加工されたベースリムを有する摩擦パッドが締結されるキャリア要素を有する摩擦プレートの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、キャリア要素2を有する摩擦プレート1の斜視表現を示す。キャリア要素2は、円環ディスクの形状を有する。半径方向内向きに、キャリア要素2は内部歯部3を有する。
【0017】
キャリア要素2上の内部歯部3は、プレートキャリア(
図1では図示せず)との回転しない接続をもたらすために使用され、プレートキャリアのマルチプレートクラッチは、摩擦プレート1及び鋼プレートを交互に有する。鋼プレートは、トルクを伝えるために摩擦プレート1と摩擦接触される。そのようなマルチプレートクラッチの構造及び機能は知られている。
【0018】
摩擦パッド4、5、6、7、8は、キャリア要素2に取り付けられている。摩擦パッド4~8は全て、同じ五角形の形状を有する。摩擦パッド4~8は、2列に配置されている。摩擦パッド4~8は、有利なことに、国際公開第2018/171834号及び国際公開第2018/171835号と同じ方法又は類似した方法で配置されている。
【0019】
摩擦パッド5は、
図1の上部に配置された摩擦面9を備える。摩擦パッド5は、締結面10が摩擦面9から離れる方向に面する状態で、キャリア要素2に接着されている。摩擦パッド5は、紙状の摩擦ライニング材料が穿孔されたものである。
【0020】
穿孔時に生成された切断縁部11は、例えば、摩擦パッド5の五角形の形状を画定する。摩擦パッド5は、切断縁部11に沿ってベースリム12を有する。ベースリム12の領域において、摩擦パッド5は、ベースリム12の内側よりも圧縮されている。
【0021】
図2には、
図1の線II-IIに沿った断面図が拡大して示されている。ベース高さは、
図2の断面図において両方向矢印13で示されている。パッド高さは、両方向矢印14によって示されている。ベース幅は、両方向矢印15によって示されている。
【0022】
パッド高さ14は、より圧縮されているベースリム12の領域において、ベース高さ13よりも非常に大きい。摩擦パッド5は、断面で見たときにベースリム12を示す外周段を備えている。
【0023】
この段は、摩擦面9から角度がつけられている第1の脚部16を備える。第2の脚部17は、第1の脚部16から角度がつけられている。第2の脚部17は、ベースリム12を表す役割を果たす。切断縁部11もまた、第2の脚部17から角度がつけられている。
【0024】
摩擦面9は、ベースリム12に対して平行に配置されている。第2の脚部17は、示された断面で見たときに切断縁部11に対して平行に配置されている。摩擦面9と第1の脚部16との間で直角が形成されている。2つの脚部16、17の間でも直角が形成されている。
【0025】
摩擦面9と第1の脚部16との間に、曲率半径18が設けられている。第1の脚部16と第2の脚部17との間に、曲率半径19が設けられている。
【符号の説明】
【0026】
1 摩擦プレート
2 キャリア要素
3 内部歯部
4 摩擦パッド
5 摩擦パッド
6 摩擦パッド
7 摩擦パッド
8 摩擦パッド
9 摩擦面
10 締結面
11 切断縁部
12 ベースリム
13 ベース高さ
14 パッド高さ
15 ベース幅
16 第1の脚部
17 第2の脚部
18 曲率半径
19 曲率半径
【国際調査報告】