(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】アノードリードタブおよび電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/012 20060101AFI20240313BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01G9/012 303
H01G9/00 290D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560814
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2022058947
(87)【国際公開番号】W WO2022218748
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021109472.0
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ドバイ,ラースロー
(72)【発明者】
【氏名】ドミンコヴィッチ,ツィタ
(57)【要約】
本発明は、電解コンデンサ(1)内のアノード箔(3)を外部と接触させるように構成されたアノードリードタブ(7)であって、アノードリードタブ(7)を表面溶解から保護する粗面化表面を提供する、アノードリードタブ(7)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードリードタブであって、
電解コンデンサ内のアノード箔を外部に接触させるように構成され、
当該アノードリードタブを表面溶解から保護する粗面化表面を提供する、アノードリードタブ。
【請求項2】
前記粗面化表面の比表面積は、平滑表面の比表面積に比べて少なくとも10倍大きい、請求項1に記載のアノードリードタブ。
【請求項3】
前記粗面化表面の比容量は、3μF/cm
2以上である、請求項1または2に記載のアノードリードタブ。
【請求項4】
主材料としてアルミニウムを含む、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のアノードリードタブ。
【請求項5】
前記粗面化表面は、酸化物層により不動態化される、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のアノードリードタブ。
【請求項6】
前記酸化物層は、少なくとも3nmの厚さを有する、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のアノードリードタブ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載のアノードリードタブを有する、アルミニウム電解コンデンサ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の少なくとも2つのアノードリードタブ(7)を有する、アルミニウム電解コンデンサ。
【請求項9】
粗面化表面を提供するアノードリードタブを製造する方法であって、
平滑表面を有するアノードリードタブを提供するステップと、
3μF/cm
2以上の比容量が達成されるまで、化学エッチング、電気化学エッチング、機械的処理、プラズマ処理、レーザ処理、または前記プロセスの組み合わせにより、前記平滑表面を粗面化するステップと、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノードリードタブ、アノードリードタブを有する電解コンデンサ、およびアノードリードタブを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサの寿命は、原料の限られた純度のため短くなっている。
【0003】
1つの一般的な不具合モードは、コンデンサのアノードリードタブの電気化学的腐食であり、これによりリードタブの損壊が生じる。
【0004】
アノードリードタブの電気化学的腐食は、ハロゲンイオンによって引き起こされ、これによりアルミニウムアノードリードタブの材料との電気化学的反応が開始される。最も多いハロゲンはClであり、これは、ほぼ全ての原料の自然不純物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願第102016125733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
独国特許出願第DE102016125733A1号には、アルミニウムアノードを環境的影響から保護する酸化物層が開示されている。
【0007】
しかしながら、酸化物層内のボイドおよびクラックは、避けられない。
【0008】
本発明の一つの目的は、改良されたアノードリードタブおよび改良された電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、電解コンデンサ内のアノード箔を外部に接触させるように構成されたアノードリードタブであって、当該アノードリードタブを表面溶解から保護する粗面化表面が提供された、アノードリードタブが提供される。
【0010】
本発明による電解コンデンサは、液体電解質、アノード箔、カソード箔、アノード箔とカソード箔との間のセパレータ、さらにアノード箔とカソード箔を外部コンタクトと電気的に接続するタブを有するコンデンサである。
【0011】
特に、アルミニウム電解コンデンサは、アノードがアルミニウム製である分極コンデンサであり、アノードの上には、陽極酸化により絶縁酸化物層が形成される。酸化物層は、アルミニウム電解コンデンサの誘電体として機能する。液体電解質は、酸化物層の表面を覆い、原理上、カソード箔と電気的に接触する、コンデンサの第2の電極として働く。アノードとカソード箔の間には、セパレータが配置される。セパレータは、液体電解質が含浸された紙シートを含んでもよい。
【0012】
アルミニウム電解コンデンサは、液体電解質と導電性ポリマー粒子の固体電解質とを有する電解コンデンサである、ハイブリッドポリマー電解コンデンサとして構成されてもよい。ポリマーは、アノード箔、カソード箔、セパレータ、およびアノード箔とカソード箔を電気的に接続するタブを被覆してもよい。
【0013】
アノードリードタブは、電解コンデンサのアノード箔と外部コンタクトとを電気的におよび機械的に接続する、導電性リードタブである。
【0014】
アノードリードタブは、一方の側がアノード箔に固定され、他方の側が外部コンタクトに固定された、可撓性金属ストリップとして構成されてもよい。
【0015】
金属ストリップは、導電性金属、好ましくはアルミニウム(Al)を含んでもよい。金属ストリップは、金属箔、好ましくはアルミニウム箔を含んでもよい。
【0016】
外部コンタクトは、電解コンデンサを収容する缶の底部またはカバーとして構成されてもよい。一実施形態では、缶は、コンデンサおよび液体電解質を収容できる。
【0017】
外部コンタクトは、別個の素子として構成されてもよい。好ましくは、外部コンタクトは、缶のカバーまたは缶の底部に一体化されてもよい。
【0018】
電解コンデンサは、巻き回し素子を有してもよい。
【0019】
コンデンサおよび一実施形態による巻き回し素子は、アノード箔、カソード箔、およびセパレータを有する。セパレータは、アノード箔とカソード箔を分離する。
【0020】
アノードリードタブは、アノード箔および外部コンタクトに、クランプまたは溶接により固定されてもよい。アノードリードタブは、溶接により固定されることが好ましい。
【0021】
電解コンデンサは、液体電解質で含浸される。
【0022】
電気リードタブは、電解コンデンサの液体電解質と直接接触される。
【0023】
一般にそのようなキャパシタでは、その液体電解質と電気リード材料との間に、望ましくない副反応が生じ得る。
【0024】
電気リードタブの表面が、少なくとも最小限の不純物量を含むことは避けられない。また、液体電解質は、不可避不純物を含む。不純物は、望ましくない副反応の引き金となり、これを助長させる。典型的な望ましくない不純物には、塩素(Cl)、ヨウ素(I)、臭素(Br)およびフッ素(F)のような、ハロゲンが含まれる。特に、Clの最小源の含有は避けられない。
【0025】
リードタブの表面を粗面化することにより、リードタブの表面積が増加する。不純物は、増加した表面に広く分布される。これは、単一の不純物粒子同士の間の空間距離が増加し、従って、単位表面積当たりの不純物濃度が減少することを意味する。
【0026】
ハロゲンイオンおよび有機(ハロゲン)化合物のような不純物は、アノードリードタブ材料と、該リードタブを取り囲む液体電解質との間に、望ましくない副反応を引き起こす。
【0027】
前記副反応において、リードタブ材料は、水性液体電解質に溶解する可溶性(ハロゲン)塩に化学的に変換される。
【0028】
最悪の場合、そのような副反応により、アノードリードタブが完全に溶解する。そのような不純物が広く分散されると、前記副反応を促進する不純物のクラスタの形成が妨げられる。
【0029】
別の実施形態では、アノードリードタブは、酸化物層により保護される。しかしながら、酸化物層には、層の内側にクラックまたはボイドが形成されるというリスクがある。そのようなクラックまたはボイドは、反応のホットスポットを提供し、ここは、副反応が好適に生じる位置となる。
【0030】
副反応は、ホットスポットの位置に僅かの不純物成分しか提供しないことにより、抑制することができる。表面を粗面化し、表面を増加させることにより、表面上の不純物の濃度およびそのようなホットスポットにおける不純物の濃度を低減することができる。
【0031】
液体電解質は、Clのようなハロゲンイオンおよび化合物のような、不可避不純物を含む。
【0032】
電気リードタブの単一の箇所に不純物が蓄積されると、副反応が促進される。
【0033】
副反応により、該副反応が生じる反応サイトでは不純物成分の濃度が減少する。これにより、さらなる不純物化合物の反応サイトへの拡散が生じる。
【0034】
また、副反応は、反応サイトでの正のカチオンの供給過多をもたらし、これにより、さらに、ハロゲンイオンのような負に帯電したアニオンの反応サイトへの拡散が生じる。
【0035】
これらの効果により、副反応が促進され、リードタブが溶解する。
【0036】
表面を粗面化することにより、前述の望ましくない影響が生じるリードタブの表面での、不純物の濃縮ホットスポットの形成を抑制できる。
【0037】
ある実施形態では、粗面化表面の比表面積は、平滑表面の比表面積よりも少なくとも10倍大きい。
【0038】
前述の粗さは、電気リードタブの表面での不純物成分の好ましくない蓄積を防止する。不純物成分の濃縮クラスタの形成は、さらに抑制される。
【0039】
ある実施形態では、粗面化表面の比容量は、3μF/cm2以上である。好ましい実施形態では、粗面化表面の比容量は、5μF/cm2以上であり、より好ましくは30μF/cm2以上である。
【0040】
比容量は、平面に投影された表面の面積に対する粗面化表面の電気容量である。
【0041】
比容量は、実験的に決定することができる。
【0042】
例えば、LCRメータ(インダクタンスL、キャパシタンスC、抵抗R)を用いて、高導電性電解質中での比容量を測定することができる。2つのタブ試料が、相互に対して測定される。
【0043】
比容量が大きい場合、望ましくない副反応および電気的漏電、または短絡現象のリスクが低下する。
【0044】
高表面アノードリードタブの追加の利点は、高表面アノードリードタブの比容量の値がアノード箔容量値の通常の比容量の値に近づくことである。従って、アノード箔の表面とアノードリードタブの表面との間の不均衡な電流分布のリスクが低減し、その結果、アノードリードタブとキャパシタのカソードとの間の破壊的な短絡のリスクが最小化される。
【0045】
ある実施形態では、アノードリードタブは、主材料としてアルミニウムを含む。
【0046】
ベース金属としてのアルミニウムは、良好な導電性を有し、低価格である。
【0047】
さらに、アルミニウムは、良好な成形性および良好な可撓性を有する。
【0048】
従って、所望の形状の可撓性タブを容易に製造することができ、外部の機械的衝撃に対して高いロバスト性が得られる。
【0049】
大気雰囲気において、アルミニウムは空気中酸素と反応し、自発的に酸化アルミニウム保護層を形成する。
【0050】
ある実施形態では、粗面化表面は、酸化物層により不動態化される。
【0051】
アノードリードタブがアルミニウムを含む場合、酸化物層は、アルミニウムと空気中酸素との反応により、自発的に形成されてもよい。
【0052】
その他に、またはこれとは別に、酸化物層は、リードタブの製造中に設置されてもよい。
【0053】
酸化物層は、追加で、化学的表面反応のような外部因子からリードタブを保護する。
【0054】
酸化物層の内部に望ましくないクラックまたはボイドが生じる場合、第2の保護手段として、表面の粗面化が作用する。
【0055】
ある実施形態では、酸化物層は、少なくとも3nmの厚さを有する。
【0056】
前記厚さを有する酸化物層では、液体電解質とアノードリードタブの表面の間の接触のリスクを最小限に抑制することができる。
【0057】
本発明では、さらに、前述の任意の実施形態によるアノードリードタブを有する、アルミニウム電解コンデンサが提供される。
【0058】
ある実施形態では、アルミニウム電解コンデンサは、少なくとも2つ以上のアノードリードタブを含む。アノードリードタブの少なくとも1つまたは全ては、前述の任意の実施形態により構成される。
【0059】
アノード箔を外部コンタクトまたはいくつかの外部コンタクトに接続するため2つ以上のアノードリードタブを使用することにより、長くて広いアノード箔を使用することができる。また、複数のタブを使用することにより、巻き回し素子の金属抵抗が低下し、複数の位置で、電流を巻き回し素子に供給することが可能となり、従って、巻き回し素子内を移動すべき電流の長さを抑制することができる。
【0060】
本発明では、さらに、粗面化表面を提供するアノードリードタブを製造する方法が提供される。
【0061】
これは、前述の任意の実施形態に従って構成されてもよい。
【0062】
本製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。
【0063】
第1のステップでは、平滑な表面を有するアノードリードタブが提供される。
【0064】
第2のステップでは、3μF/cm2以上の比容量が達成されるまで、化学エッチング、電気化学エッチング、機械的処理、プラズマ処理、レーザ処理、または前記プロセスの組み合わせにより、平滑表面が粗面化される。
【0065】
比容量は、表面積に直接対応し、従って、アノードリードタブの表面の表面粗さに対応する。
【0066】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態をより詳細に説明する。図面において、同様のまたは見かけ上同一の素子は、同じ参照符号で表される。図面および図内の割合には、スケールは示されていない。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】電解コンデンサの巻き回し素子の第1の実施形態を概略的に示した図である。
【
図2】最新の平滑なリードタブ表面の写真を示した図である。
【
図3】本発明の粗面化リードタブ表面を示した図である。
図2および
図3の写真は、SEM(走査型電子顕微鏡)で撮影されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1には、電解コンデンサ1の巻き回し素子の第1の実施形態の図を示す。
【0069】
巻き回し素子2は、例えば、10mmを超える直径、および12mmを超える高さを有する。
【0070】
巻き回し素子2は、円筒形の缶に収容されてもよい。缶は、底部および壁を有してもよく、キャップまたはカバー(
図1には示されていない)により覆われてもよい。
【0071】
巻き回し素子2は、アノード箔3と、カソード箔4と、共通軸の周りに巻き付けられたセパレータ5とを有する。セパレータ5は、アノード箔3とカソード箔4との間に配置される。巻き回し素子2は、さらに、別のセパレータを有し、これもアノード箔3とカソード箔4との間に配置される。ただし、図面の簡略化のため、
図1には示されていない。特に、アノード箔3、セパレータ5、カソード箔4、および他のセパレータは、この順に積層され、その後、軸の周囲に巻回される。巻き回し素子2は、電解質(標準的なアルミニウム電解コンデンサ)、またはポリマーと作動電解質(ハイブリッドポリマーコンデンサ)で含浸されてもよい。
【0072】
キャパシタ1は、さらに、液体電解質6を有する。
【0073】
アノード箔3は、アルミニウム箔を含む。アルミニウム箔の表面は、例えば、エッチング処理により、粗面化されてもよい。
【0074】
自己酸化または酸化処理により、表面に誘電体酸化膜が形成される。従って、アノード箔3は、その表面に酸化物層を有するアルミニウム箔を有する。
【0075】
また、カソード箔4は、アルミニウム箔を含み、アルミニウム箔の表面は、エッチング処理により粗面化されてもよく、自己酸化または酸化処理により、表面に誘電体酸化膜が形成される。従って、カソード箔4は、その表面に酸化物層を有するアルミニウム箔も有する。
【0076】
セパレータ5の各々は、含浸可能な紙である。
【0077】
巻き回し素子2が巻回される共通軸は、軸方向を定める。
【0078】
巻き回し素子2は、さらにタブ7、8を有し、これらは、巻き回し素子2との電気的に接触に使用される。巻き回し素子2は、2つのアノードリードタブ7を有し、これらはいずれも、アノード箔3に接続される。アノード箔3に接続されたアノードリードタブ7は、正の軸方向に延在する。
【0079】
さらに、巻き回し素子2は、2つのカソードリードタブ8を有し、これらがカソード箔4に接続される。カソード箔4に接続されたカソードリードタブ8は、負の軸方向、すなわち、アノード箔3に接続されたアノードリードタブ7とは反対の方向、または正の軸方向に、延在する。
【0080】
アノード箔3を接続するための複数のアノードリードタブ7を使用することにより、長くて広い箔3を使用することが可能となる。また、複数のタブ7を使用することにより、巻き回し素子2の金属抵抗が低下し、複数の位置で電流を巻き回し素子2に供給することが可能となり、従って、電流が巻き回し素子2の内部を移動すべき長さを抑制することができる。
【0081】
導電性リードタブ7、8は、一方の側がアノード箔3またはカソード箔4に固定され、他方の側が外部コンタクトに固定された、可撓性金属ストリップとして構成される。
【0082】
外部コンタクトは、別個の素子であってもよい。好ましくは、外部コンタクトは、缶のカバーまたは缶の底部に一体化されていてもよい。
【0083】
アノードリードタブ7は、電気的および機械的にアノード箔3を外部コンタクトに接続する。
【0084】
アノードリードタブ7の金属ストリップは、導電性金属を含む。本実施例では、金属ストリップは、主材料としてアルミニウム(Al)を含む。
【0085】
具体的には、アノードリードタブ7は、高表面積アルミニウム箔を含む。
【0086】
高表面積アルミニウム箔を提供するため、平滑表面の比表面積よりも少なくとも5倍大きい粗面化表面の表面積が達成されるまで、化学エッチング、電気化学エッチング、機械的処理、プラズマ処理、レーザ処理、または前記プロセスの組み合わせにより、アルミニウム箔の通常の平滑表面が粗面化される。
【0087】
好ましくは、面積は、平滑表面の比表面積よりも少なくとも10倍大きい。
【0088】
比表面積は、絶対表面積と投影面の表面積との比である。
【0089】
表面を粗面化することにより、3μF/cm2以上、好ましくは5μF/cm2以上、またはより好ましくは30μF/cm2以上の比容量が達成される。アルミニウム箔の比容量は、その比表面積に直接対応する。
【0090】
アノードリードタブ7を含む巻き回し素子2の全体が、液体電解質により含浸される。
【0091】
図2に示すような最新の平滑なリードタブ表面では、ハロゲンアニオンまたはハロゲンを含む有機ハロゲン化合物による電気化学的腐食により、アノードリードタブの崩壊が生じる。
【0092】
アルミニウム電解コンデンサの原料に含まれるハロゲン量は、完全に排除することはできない。従って、電解質6およびアノードリードタブ7の表面は、少なくとも少量のハロゲンを含み、通常約0.1~0.2mg/m2(ハロゲン/アノードリードタブ7の表面)、または0.1~0.2mg/kg(ハロゲン/電解質)、好ましくは0.5mg/m2(ハロゲン/アノードリードタブ7の表面)または0.5mg/kg(ハロゲン/電解質)のハロゲンを含む。
【0093】
一方、Cl、Br、IおよびFのイオンのような少量のハロゲンは、腐食反応を開始し得る。
【0094】
最も多いハロゲンは、Clであり、これは、ほぼ全ての原料の自然不純物である。ハロゲンイオンのアルミニウムアノードリードタブ7との反応は、自己促進的であり、コンデンサの温度および印加電圧が上昇すると、最新のコンデンサに早期不具合が生じる。
【0095】
ハロゲンの金属Alとの反応では、比較的速い反応R2において、ハロゲンイオンの可溶性Al塩が生成される。また、酸化アルミニウムは、酸性電解質の存在下、比較的遅い反応R1において、ハロゲンイオンと反応する。一般的な電解質は、例えば、カルボン酸および/またはジカルボン酸および/またはホウ酸を含む。また、電解質中に常に存在する水も、酸として機能できる。
【0096】
水の存在下では、ハロゲンイオンは、反応R3において、再び解離し、アルミニウムまたは酸化アルミニウムとの新たな反応が開始される(R1、R2)。最終的に、連鎖反応が開始される。また、電解質中の水分の含有量が少ないと、前述の反応が誘発される。全ての一般的な電解質は、少なくとも少量の水を含む。電解質中の水の典型的な比率は、0.5%と16%の間であり、高圧コンデンサに使用される電解質の場合、好ましくは3%と5%の間である。
【0097】
次式において、Xは、任意のハロゲン(Cl、Br、I、F)を表す。
Al2O3 + 6H+ + 6X- → 2AlX3 + 3H2O(R1)
Al + 3X- → AlX3 + 3e-(R2)
2AlX3 + 6H2O → 2Al(OH)3 + 6H+ + 6X-(R3)
【0098】
反応において、R2の電子は、アノードに受容されるため、より負に帯電したアニオンが反応サイトに蓄積する。
【0099】
表面のある位置におけるハロゲンイオンの濃度が高すぎる場合、金属アルミニウムが完全に反応し、いわゆるクラスタが生じる。これは、アルミニウム箔、さらにはアノードリードタブの破損につながる。
【0100】
特に、完全には回避できない酸化物層のクラックまたはボイド9は、そのようなクラスタの形成につながる。
【0101】
図2には、前述のボイドおよびクラックを示す酸化物層を有するアノードリードタブ表面を示す。
【0102】
一方、表面のハロゲンイオンの濃度が低い場合、比較的遅い反応で電解質中の酸がアルミニウムと反応し、酸化アルミニウム層が形成される。この酸化アルミニウム層は、外部の化学的因子からアノードタブ7のアルミニウム材料を保護する。
【0103】
例えば、アルミニウムは、液体電解質の酸化性のジカルボン酸またはホウ酸と反応し得る:
2Al + 3O2- → Al2O3 + 6e-
【0104】
図3に示すように、粗面化されたアルミニウム箔の高い表面により、ハロゲンイオンが表面に均一に分配され、局部的に高い電流密度を有するクラスタは、表面に到達しない。比表面積を10倍に高めることにより、好ましくは0.05mg/m
2未満までハロゲンの表面濃度が低減されてもよい。従って、局部的に制限されたハロゲンイオンのため、前述の連鎖反応が遅くなる。
【0105】
この場合、高温および高電圧であっても、電解質は、アノードリードタブ7の表面を酸化層よりも速く酸化し、または極めて低いハロゲン濃度のため、アルミニウム箔自体がハロゲンイオンにより損壊される。
【0106】
酸化物層の厚さは、3nmよりも大きいことが好ましい。
【0107】
前述のコンデンサの典型的な作動条件は、550V以上の高電圧、および約105℃の温度である。
【0108】
アノードリードタブが損壊するまでの前述のコンデンサの寿命は、3000時間を超える。好ましくは、寿命は5000時間を超える。
【符号の説明】
【0109】
1 電解コンデンサ
2 巻き回し素子
3 アノード箔
4 カソード箔
5 セパレータ
6 電解質
7 アノードリードタブ
8 カソードリードタブ
9 酸化物層のクラック
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードリードタブであって、
電解コンデンサ内のアノード箔を外部に接触させるように構成され、
当該アノードリードタブを表面溶解から保護する粗面化表面を提供する、アノードリードタブ。
【請求項2】
前記粗面化表面の比表面積は、平滑表面の比表面積に比べて少なくとも10倍大きい、請求項1に記載のアノードリードタブ。
【請求項3】
前記粗面化表面の比容量は、3μF/cm
2以上である、請求項
1に記載のアノードリードタブ。
【請求項4】
主材料としてアルミニウムを含む、請求項
1に記載のアノードリードタブ。
【請求項5】
前記粗面化表面は、酸化物層により不動態化される、請求項
1に記載のアノードリードタブ。
【請求項6】
前記酸化物層は、少なくとも3nmの厚さを有する、請求項
1に記載のアノードリードタブ。
【請求項7】
請求項
1に記載のアノードリードタブを有する、アルミニウム電解コンデンサ。
【請求項8】
請求項
1に記載の少なくとも2つのアノードリードタブを有する、アルミニウム電解コンデンサ。
【請求項9】
粗面化表面を提供するアノードリードタブを製造する方法であって、
平滑表面を有するアノードリードタブを提供するステップと、
3μF/cm
2以上の比容量が達成されるまで、化学エッチング、電気化学エッチング、機械的処理、プラズマ処理、レーザ処理、または前記プロセスの組み合わせにより、前記平滑表面を粗面化するステップと、
を有する、方法。
【国際調査報告】