(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240313BHJP
H10K 30/57 20230101ALI20240313BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240313BHJP
H10K 30/85 20230101ALI20240313BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20240313BHJP
H10K 85/40 20230101ALI20240313BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/57
H10K30/40
H10K30/85
H10K85/50
H10K85/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560868
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 KR2022004831
(87)【国際公開番号】W WO2022215990
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0045300
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【氏名又は名称】冨所 剛
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウン セオク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,イン テク
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
3K107EE68
5F251AA11
5F251DA03
5F251DA04
5F251DA16
5F251FA04
5F251GA03
5F251XA01
5F251XA54
(57)【要約】
本発明は、基板、透明電極、正孔伝達層、ペロブスカイト光吸収層、電子伝達層及び金属電極を含むペロブスカイト太陽電池において、前記電子伝達層は、下部から上部に行くほど前記電子伝達層を構成する各元素の化学的結合状態が漸進的に変わる差等薄膜であることを特徴とするペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極、正孔伝達層、ペロブスカイト光吸収層、電子伝達層及び金属電極を含むペロブスカイト太陽電池において、
前記電子伝達層は、下部から上部に行くほど前記電子伝達層を構成する各元素の化学的結合状態が漸進的に変わる差等薄膜であることを特徴とするペロブスカイト太陽電池。
【請求項2】
前記正孔伝達層は前記透明電極の上部に位置し、
前記ペロブスカイト光吸収層は前記正孔伝達層の上部に位置し、
前記電子伝達層は前記ペロブスカイト光吸収層の上部に位置し、
前記金属電極は前記電子伝達層の上部に位置することを特徴とする、請求項1に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項3】
前記差等薄膜は、SnOx、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxのうちいずれか一つからなり、
前記差等薄膜を構成するそれぞれのSn、Ti、Zn、W、Nb、In、及びCeに化学的に結合される酸素の個数は、下部薄膜から上部薄膜に漸進的に変化することを特徴とする、請求項1又は2に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項4】
前記差等薄膜は、SnOからなる下部薄膜からSnO
2からなる上部薄膜に漸進的に変化する薄膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項5】
前記電子伝達層と前記ペロブスカイト光吸収層との間にPCBMやC60からなるフラーレン系列の電子輸送層をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のペロブスカイト太陽電池。
【請求項6】
シリコン太陽電池と、前記シリコン太陽電池の上部に位置するペロブスカイト太陽電池と、を含むタンデム太陽電池において、
前記ペロブスカイト太陽電池は、第1透明電極、正孔伝達層、ペロブスカイト光吸収層、電子伝達層、第2透明電極、及び金属電極を含み、
前記電子伝達層は、下部から上部に行くほど前記電子伝達層を構成する各元素の化学的結合状態が漸進的に変わる差等薄膜であることを特徴とするタンデム太陽電池。
【請求項7】
前記第1透明電極は前記シリコン太陽電池の上部に位置し、
前記正孔伝達層は前記第1透明電極の上部に位置し、
前記ペロブスカイト光吸収層は前記正孔伝達層の上部に位置し、
前記電子伝達層は前記ペロブスカイト光吸収層の上部に位置し、
前記第2透明電極は前記電子伝達層の上部に位置し、
前記金属電極は前記第2透明電極の上部に位置することを特徴とする、請求項6に記載のタンデム太陽電池。
【請求項8】
前記差等薄膜は、SnOx、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxのうちいずれか一つからなり、
前記差等薄膜を構成するそれぞれのSn、Ti、Zn、W、Nb、In、及びCeに化学的に結合される酸素の個数は、下部薄膜から上部薄膜に漸進的に変化することを特徴とする、請求項6又は7に記載のタンデム太陽電池。
【請求項9】
前記差等薄膜は、SnOからなる下部薄膜からSnO
2からなる上部薄膜に漸進的に変化する薄膜であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のタンデム太陽電池。
【請求項10】
前記電子伝達層と前記ペロブスカイト光吸収層との間にPCBMやC60からなるフラーレン系列の電子輸送層をさらに含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載のタンデム太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池に関し、より詳細には、原子蒸着法を活用して改善された電子伝達層を含むペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光エネルギーを電気に変換する集合体であって、次世代エネルギーとして注目され、長い期間研究されており、シリコン、CIGS及びペロブスカイトなどの様々な物質をベースにして高い光電効率が報告されている。近年商業化され、最も多く使用されている太陽電池は、シリコンベースの太陽電池であって、太陽電池市場の90%以上を占めている。
【0003】
シリコン太陽電池に結晶質シリコン太陽電池及び非結晶質シリコン太陽電池が含まれていると、結晶質の場合は、製造単価が高いという短所があるが、エネルギー効率が高いので広く商用化されている。その一方で、非結晶質の場合は、工程技術が難しく、且つ装備依存度が高く、何よりも効率が低いので、現在はほとんど開発されていない状況である。シリコン太陽電池を1世代として分類すると、近年、環境にやさしい未来の有望アイテムとして世界的に活発に研究されている3世代太陽電池の代表走者として、ペロブスカイトベースの太陽電池がある。
【0004】
ペロブスカイト太陽電池は、無機物と有機物との結合によって形成されたペロブスカイト結晶構造を有する素材を活用する。ペロブスカイトは、不導体・半導体・導体性質と共に、超伝導現象まで示す非常に特別な構造を有する。
【0005】
このような有・無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池は、製造費用が低く、溶液工程で薄膜の製作が可能であるので、近年、次世代薄膜太陽電池として脚光を浴びている。
図1に示したように、従来のペロブスカイト太陽電池は、基板(Glass)、透明電極(Transparent anode)、正孔伝達層(HTL)、光吸収層(Perovskite)、電子伝達層(ETL)、及び金属電極(Metal cathode)が順次積層された構造からなる。ここで、透明電極としては、仕事関数が低いITO(Indium Tin Oxide)又はFTO(Fluorine doped Tin Oxide)が使用され、金属電極としては、高い仕事関数を有するAu又はAgなどが使用される。
【0006】
ペロブスカイトベースの太陽電池は、研究が開始されてから10年目に速い速度で効率が増加しており、高い光電効率が報告されている。しかし、上記のような単一接合(single-juction)太陽電池の場合、限定された波長領域の太陽エネルギーのみを吸収することができ、バンドギャップ以下の太陽エネルギーでは劣化損失が発生し、S-Q限界効率以上の高い効率を得ることができない。
【0007】
このような単一接合のペロブスカイトベースの太陽電池の短所を補完するために、多接合タンデム太陽電池に対する研究が継続されている。多接合タンデム太陽電池は、大きいバンドギャップを有する上部セル(Cell)が低い波長帯の太陽エネルギーを吸収し、低いバンドギャップを有する下部セルが高い波長帯の太陽エネルギーを吸収するので、損失を減少させ、広い波長帯の太陽エネルギーを運用することができ、単一接合で得られない30%以上の高効率を得ることができる。
【0008】
特に、ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、それぞれ小さいバンドギャップと大きいバンドギャップを有し、光の運用に有利であるので研究が活発に進められている。
【0009】
上述したペロブスカイト太陽電池又はペロブスカイト・シリコン太陽電池における問題の一つは、共通的に含んでいるペロブスカイト太陽電池の電子伝達層に関するものである。電子伝達層を形成するSnO結合薄膜などの薄膜は、p型半導体特性を有し、電子移動抵抗が高いので、太陽電池のFF(Fill Factor)値が低く、よって、エネルギー変換効率が低下するという問題を有していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、改善された電子伝達層を形成し、太陽電池のFF(Fill Factor)値及びエネルギー変換効率を向上できるペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するための手段として、本発明は、透明電極、正孔伝達層、ペロブスカイト光吸収層、電子伝達層及び金属電極を含むペロブスカイト太陽電池において、前記電子伝達層は、下部から上部に行くほど前記電子伝達層を構成する各元素の化学的結合状態が漸進的に変わる差等(graded)薄膜であることを特徴とするペロブスカイト太陽電池を提供する。
【0012】
前記透明電極は前記基板の上部に位置し、前記正孔伝達層は透明電極の上部に位置し、前記ペロブスカイト光吸収層は正孔伝達層の上部に位置し、前記電子伝達層は前記ペロブスカイト光吸収層の上部に位置し、前記金属電極は前記電子伝達層の上部に位置することを特徴とすることができる。
【0013】
前記差等薄膜は、SnOx、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxのうちいずれか一つからなり、前記差等薄膜を構成するそれぞれのSn、Ti、Zn、W、Nb、In、及びCeに化学的に結合される酸素の個数は、下部薄膜から上部薄膜に漸進的に変化することを特徴とすることができる。
【0014】
前記差等薄膜は、SnOからなる下部薄膜からSnO2からなる上部薄膜に漸進的に変化する薄膜であることを特徴とすることができる。
【0015】
前記電子伝達層と前記ペロブスカイト光吸収層との間にPCBMやC60からなるフラーレン系列の電子輸送層をさらに含むことを特徴とすることができる。
【0016】
また、本発明は、シリコン太陽電池と、前記シリコン太陽電池の上部に位置するペロブスカイト太陽電池とを含むタンデム太陽電池において、前記ペロブスカイト太陽電池は、第1透明電極、正孔伝達層、ペロブスカイト光吸収層、電子伝達層、第2透明電極、及び金属電極を含み、前記電子伝達層は、下部から上部に行くほど前記電子伝達層を構成する各元素の化学的結合状態が漸進的に変わる差等薄膜であることを特徴とするタンデム太陽電池を提供する。
【0017】
前記第1透明電極は前記シリコン太陽電池の上部に位置し、前記正孔伝達層は第1透明電極の上部に位置し、前記ペロブスカイト光吸収層は前記正孔伝達層の上部に位置し、前記電子伝達層は前記ペロブスカイト光吸収層の上部に位置し、前記第2透明電極は前記電子伝達層の上部に位置し、前記金属電極は前記第2透明電極の上部に位置することを特徴とすることができる。
【0018】
前記差等薄膜は、SnOx、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxのうちいずれか一つからなり、前記差等薄膜を構成するそれぞれのSn、Ti、Zn、W、Nb、In、及びCeに化学的に結合される酸素の個数は、下部薄膜から上部薄膜に漸進的に変化することを特徴とすることができる。
【0019】
前記差等薄膜は、SnOからなる下部薄膜からSnO2からなる上部薄膜に漸進的に変化する薄膜であることを特徴とすることができる。
【0020】
前記電子伝達層と前記ペロブスカイト光吸収層との間にPCBMやC60からなるフラーレン系列の電子輸送層をさらに含むことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例に係るペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池の場合、ペロブスカイト太陽電池の電子伝達層が、下部から上部に行くほどSnOからSnO2に漸進的に変化する差等薄膜で形成されることによって、FF(Fill Factor)値及びエネルギー変換効率が著しく向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来のペロブスカイト太陽電池の一例を示した図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池を示した図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るSnOxからなる差等薄膜を形成するALD工程のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池を含むタンデム太陽電池を示した図である。
【
図5】TDMASn流量を変化させながら形成した薄膜のXPS分析結果を示した図である。
【
図6】TDMASn流量を変化させながら電子伝達層を形成した場合における、ペロブスカイト太陽電池のFF及びエネルギー変換効率を示した図である。
【
図7】TDMASn流量をさらに変化させながら形成した薄膜のXPS分析結果を示した図である。
【
図8】TDMASn流量をさらに変化させながら電子伝達層を形成した場合における、ペロブスカイト太陽電池のFF及びエネルギー変換効率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下で、添付の図面を参照して各実施例を詳細に説明する。しかし、各実施例は多様に変更され得るので、特許出願の権利範囲がこのような各実施例によって制限又は限定されることはない。各実施例に対する全ての変更、均等物及び代替物は、権利範囲に含まれるものと理解しなければならない。
【0024】
実施例で使用した用語は、説明の目的で使用されたものに過ぎなく、限定しようとする意図で解釈してはならない。単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせの存在又は付加可能性を予め排除するものではないと理解しなければならない。
【0025】
異なる方式で定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含めて、ここで使用される全ての用語は、実施例の属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。一般的に使用される事前に定義されている各用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有するものと解釈しなければならなく、本出願で明らかに定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈しない。
【0026】
また、添付の図面を参照して説明するにおいて、図面符号とは関係なく、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、これに対する重複する説明は省略する。実施例を説明するにおいて、関連した公知技術に対する具体的な説明が実施例の要旨を不要に不明瞭にし得ると判断される場合、それについての詳細な説明は省略する。
【0027】
構成要素(element)又は層が他の要素又は層「上に(on)」、「に連結された(connected to)」、又は「に結合された(coupled to)」ものとして示すとき、これは、他の構成要素又は層に直接存在したり、連結又は結合されたり、又は干渉構成要素又は層(intervening elements and layer)が存在し得るものと理解され得る。
【0028】
以下、本発明のペロブスカイト太陽電池及びこれを含むタンデム太陽電池に対して、実施例及び図面を参照して具体的に説明する。しかし、本発明がこのような実施例及び図面に制限されることはない。
【0029】
ペロブスカイト太陽電池
【0030】
図2は、本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池1の一実施例を示した図である。
【0031】
図2に示したように、本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池1は、基板11と、基板11の上部に位置する第1透明電極12と、第1透明電極12の上部に位置する正孔伝達層13と、正孔伝達層13の上部に位置するペロブスカイト光吸収層14と、ペロブスカイト光吸収層14の上部に位置するフラーレン(fullerene)系列の電子輸送層15と、電子輸送層15の上部に位置する電子伝達層16と、電子伝達層16の上部に位置する第2透明電極17と、第2透明電極17の上部に位置する金属電極18とを含み、電子伝達層16は、下部から上部に行くほど前記電子伝達層を構成する各元素の化学的結合状態が漸進的に変わる差等薄膜からなることを特徴とする。
【0032】
図2に示した本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池1は、一般的なペロブスカイト太陽電池の4つの構造、すなわち、メゾスコピック正構造(n-i-p mesoscopic)、平板型正構造(n-i-p planar)、平板型逆構造(p-i-n planar)、及びメゾスコピック逆構造(p-i-n mesoscopic)のうち平板型逆構造(p-i-n planar)に関するものである。
【0033】
ただし、
図2に示したペロブスカイト太陽電池1の構造は、一つの実施例に過ぎないので、これに限定されることはなく、これと異なる構造又はこれと異なる積層順序や異なる構成からなる変形したペロブスカイト太陽電池に対しても、本発明の実施例に係る差等薄膜からなる電子伝達層の構成が同一に適用され得ることは当然である。
【0034】
前記基板11は、ボロシリケート(borosilicate)ガラス、石英(quartz)ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)又はポリエーテルスルホン(PES)であってもよいが、これに限定されない。
【0035】
前記第1透明電極12は、透光性を有する導電性素材で形成されてもよく、本発明の実施例によると、酸化インジウムスズ(ITO;indium-tin oxide)であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、透光性を有する導電性素材は、例えば、透明伝導性酸化物、炭素質伝導性素材及び金属性素材などを含むことができる。透明伝導性酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ZnOなどが使用されてもよい。炭素質伝導性素材としては、例えば、グラフェン又はカーボンナノチューブなどが使用されてもよく、金属性素材としては、例えば、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Tiなどの多層構造の金属薄膜が使用されてもよい。本明細書において、「透明」という用語は、光を一定の程度以上透過し得るものを言い、必ずしも完全な透明を意味するものとは解釈しない。以上説明した各物質は、必ずしも上で説明した各実施例に限定されるものではなく、多様な材質で形成可能であり、その構造も単層又は多層などに多様に変形可能である。
【0036】
前記正孔伝達層13は、タングステンオキサイド(WOx)、モリブデンオキサイド(MoOx)、バナジウムオキサイド(V2O5)、ニッケルオキサイド(NiOx)及びこれらの混合物から選ばれる金属酸化物のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。また、前記正孔伝達層13は、単分子正孔輸送物質及び高分子正孔輸送物質からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つを含み得るが、これに限定されることなく、当該業界で使用される物質であれば限定なく使用することができる。例えば、前記単分子正孔輸送物質としては、spiro-MeOTAD[2,2’ ,7,7’-テトラキス(N,N-p-ジメトキシ-フェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン]を使用することができ、前記高分子正孔輸送物質としては、P3HT[ポリ(3-ヘキシルチオフェン)]、PTAA(ポリトリアリールアミン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を使用できるが、これに制限されない。
【0037】
また、前記正孔伝達層13には、ドーピング物質がさらに含まれてもよく、前記ドーピング物質としては、Li系列ドーパント、Co系列ドーパント、Cu系列ドーパント、Cs系列ドーパント及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるドーパントを使用できるが、これに制限されない。
【0038】
前記正孔伝達層13は、第1透明電極12上に正孔伝達層用前駆体溶液を塗布し、これを乾燥させることによって形成され得る。
【0039】
前記ペロブスカイト光吸収層14は、ABX3(ここで、Aは、1価の有機アンモニウム陽イオン又は金属陽イオンを意味し、Bは、2価の金属陽イオンを意味し、Xは、ハロゲン陰イオンを意味する。)で表される物質を含む。
【0040】
一つ又は多数の実施例において、前記ペロブスカイト光吸収層14は、前記Aがメチルアンモニウム(CH3NH3
+)又はエチルアンモニウム(CH3CH2NH3
+)を示し、BがPb又はSnを示し、XがI、Br又はClを示す、前記と同様の化学式を有するペロブスカイトを含み得るが、これに制限されるものではなく、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0041】
ペロブスカイト化合物としては、例えば、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbIxCl3-x、MAPbI3、CH3NH3PbIxBr3-x、CH3NH3PbClxBr3-x、HC(NH2)2PbI3、HC(NH2)2PbIxCl3-x、HC(NH2)2PbIxBr3-x、HC(NH2)2PbClxBr3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbI3、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbIxCl3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbIxBr3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbClxBr3-xなどが使用されてもよい(0≦x、y≦1)。また、ABX3のAにCsが一部ドーピングされた化合物も使用され得る。
【0042】
ペロブスカイトは、吸収係数が大きく(strong solar absorption)、低い非発光キャリア再結合率(low non-radiative carrier recombination rate)の特徴を有しており、キャリア移動度が大きく、非発光キャリア再結合を誘発する欠陥がバンドギャップ内に又は深い準位(deep level)に形成されないという特性によって変換効率を増加させるものと知られている。
【0043】
前記電子輸送層15は、前記ペロブスカイト光吸収層14の上部に位置し、PCBMやC60からなるフラーレン系列で形成されてもよい。ただし、これは、必須的なものではなく、選択的には、
図2に示した本発明の実施例において、このような電子輸送層15を含まずペロブスカイト光吸収層14の直上部に上部電子伝達層16が形成されてもよい。
【0044】
ペロブスカイト光吸収層14上に電子伝達層16がTiOxやZnOxなどで形成される場合、電子伝達層16がペロブスカイト光吸収層14と直接当接すると、ペロブスカイトを分解するという問題がある。
【0045】
特に、ZnOの場合、熱処理などによってZnO/ペロブスカイト界面でZnOによってメチルアンモニウム陽イオンの脱プロトン化が進められ、メチルアンモニウムがメチルアミンに変わる。メチルアミンは、沸点が非常に低いので、常温でも容易に気体になる。これによって、メチルアンモニウムが損失し、ペロブスカイトが分解されるという問題がある。
【0046】
本発明の実施例によると、電子伝達層16とペロブスカイト光吸収層14との間に前記PCBMやC60からなるフラーレン系列の電子輸送層15が形成されることによって、TiOxやZnOxなどからなる電子伝達層がペロブスカイト光吸収層に接触することによって生じるペロブスカイトの分解を防止することができる。
【0047】
前記電子伝達層16は、前記電子輸送層15の上部に位置し、前記ペロブスカイト光吸収層で生成された電子を前記第2透明電極に伝達する。
【0048】
本発明の一実施例によると、
図2に示したように、前記電子伝達層16は、SnOxからなる薄膜であって、SnOからなる下部薄膜からSnO
2からなる上部薄膜に漸進的に変化する差等薄膜からなってもよい。
【0049】
このような本発明の一実施例に係るSnOxからなる差等薄膜は、150℃以下の低温で原子蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)によって形成されてもよい。
【0050】
図3は、本発明の一実施例に係るSnOxからなる差等薄膜を形成するALD工程のフローチャートである。
【0051】
図3に示したように、まず、差等薄膜を構成するスズ(Sn)のソースになる前駆体ガスを注入し、これを表面に吸着させる(S1)。前記スズ(Sn)のソースは、TDMASn、TEMASn、Sn(dmamp)
2、及びSnCl
4のうちいずれか一つになってもよい。本発明の実施例では、スズ(Sn)のソースとしてTDMASnを使用する。
【0052】
その次に、残留物質を除去するためのパージ(purge)段階を実施する(S2)。
【0053】
その次に、差等薄膜を構成する反応物として酸素(O)のソースを注入する(S3)。酸素(O)のソースは、H2O、H2O2、O3、及びO2のうちいずれか一つになってもよい。本発明の実施例では、酸素(O)のソースとしてH2Oを使用する。
【0054】
その次に、残留物質を除去するためのパージ段階を実施する(S4)。
【0055】
本発明の実施例に係るALD工程では、前記S1乃至S4段階を一つのサイクルとし、このサイクルを繰り返す。
【0056】
このようなサイクルを繰り返すと、電子伝達層16の最下部では、概してSnOのみが形成されるが、上側に行くほどSnOに対するSnO2の比率が漸進的に上昇し、電子伝達層16の最上部では実質的にSnO2のみが形成される。
【0057】
このとき、前記SnOからなる下部薄膜からSnO2からなる上部薄膜に漸進的に変化する差等薄膜を形成するために重要なものは、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量である。
【0058】
スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を確保できない場合は、差等薄膜が形成されず、SnOのみからなる薄膜が形成され、電子移動抵抗が高いので太陽電池のFF(Fill Factor)値が低く、よって、エネルギー変換効率が低下するという問題がある。そこで、本発明では、TDMASn流量を30sccm以上に限定しようとする。
【0059】
本発明の実施例によると、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を30sccm~90sccmにした場合、表面にSnOからなる下部薄膜からSnO2からなる上部薄膜に漸進的に変化する差等SnOx薄膜が形成され得る。このとき、酸素(O)のソースであるH2Oの流量は10sccm~100sccmで、工程温度は80℃である。
【0060】
本発明の実施例に係る電子伝達層に上述した差等SnOx薄膜が形成されたかどうかは、XPS(X-ray Phothelectron Spectroscopy)表面分析装備を通じて確認することができた。
【0061】
XPS表面分析装備は、サンプルにX線を入射し、サンプルの表面から放出される光電子の運動エネルギー及び強度(intensity)を測定することによって、サンプルの成分及び結合特性などを測定する装備である。
【0062】
一方、上述したSnOxの差等薄膜からなる上部電子伝達層16は、本発明の一実施例に過ぎなく、本発明の差等薄膜は、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxのうちいずれか一つによっても形成され得る。
【0063】
すなわち、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxの差等薄膜の場合にも、SnOx差等薄膜と同様に、それぞれのTi、Zn、W、Nb、In、及びCeに化学的に結合される酸素の個数が相対的に少ない所定の下部薄膜から、化学的に結合される酸素の個数が相対的に多い所定の上部薄膜に漸進的に変化する。
【0064】
TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxの差等薄膜の場合にも、
図3に示した低温原子蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)によって形成され得る。
【0065】
このとき、それぞれのTiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxを構成する反応物のソースの流量及び工程温度などはSnOxと異なり得るが、それぞれのTiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOxで酸素(O)と結合される反応物の流量が所定流量以上になると、ALD工程時に下部薄膜から上部薄膜に漸進的に変化する差等SnOx薄膜が形成され得ることは同様である。
【0066】
前記第2透明電極17は、本発明の実施例によると、IZO(Indium Zinc Oxide)であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記第2透明電極17は、酸化亜鉛(AZO;Aluminium-zinc oxide;ZnO:Al)、酸化インジウムスズ(ITO;indium-tin oxide)、フッ素含有酸化スズ(FTO:Fluorine-doped tin oxide)などの前記第1透明電極と同じ素材で形成されてもよい。
【0067】
本発明の実施例では、第2透明電極17とペロブスカイト光吸収層14との間に電子伝達層16及び電子輸送層15が存在し、これらがバッファー層としての役割をするので、ペロブスカイト光吸収層14にスパッター方式で蒸着し、IZOからなる第2透明電極17を形成したとしてもペロブスカイト光吸収層14が保護され得る。
【0068】
前記金属電極18は、外部と電気的に連結される部分であって、パターン化された銀(Ag)薄膜を蒸着させることによって形成され得る。
【0069】
ペロブスカイト太陽電池を含むタンデム太陽電池
【0070】
図4は、本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池を含むタンデム太陽電池2の一実施例を示す。
【0071】
図4に一実施例として示したように、本発明の一実施例に係るペロブスカイト太陽電池を含むタンデム太陽電池は、シリコン太陽電池(下部セル)20と、シリコン太陽電池上に形成されるペロブスカイト太陽電池(上部セル)30とを含むことができ、シリコン太陽電池20とペロブスカイト太陽電池30との間には、両者を接合させながら電気的に連結する接合層(図示せず)が備えられてもよい。このような接合層は、ペロブスカイト太陽電池30を透過する長波長の光が、透過損失をすることなく下部に配置されたシリコン太陽電池20に入射され得るように、透明伝導性酸化物(TCO)、炭素質伝導性素材、金属性素材又は伝導性高分子を用いて具現され得る。
【0072】
一つ又は多数の実施例において、前記タンデム太陽電池2は、接合層溶液を前記シリコン太陽電池20の上部にスピンコーティングする段階と、前記スピンコーティングされた透明接合層溶液の表面に前記ペロブスカイト太陽電池30を接着させ、UV処理又は熱処理をして硬化させることによって製造され得る。ただし、これは、一つの実施例に過ぎないので、周知の他の方法によってタンデム太陽電池を製造可能であることは当然である。
【0073】
前記シリコン太陽電池20は、バンドギャップが1.0eV~1.2eV付近であるシリコン太陽電池であってもよい。前記基板上に配置された金属又は金属合金の裏面電極21と、前記裏面電極上に配置されたシリコン半導体層22とを含むことができる。
【0074】
前記裏面電極(back-electrode)21は、外部への電気的連結のために基板(図示せず)上に形成されてもよい。一つ又は多数の実施例において、前記裏面電極は、E-ビーム真空蒸着(e-beam evaporation)を通じて形成されてもよく、Ag、Ti、Auなどで形成されてもよい。
【0075】
前記シリコン半導体層22は、p型シリコン半導体層、及び前記p型シリコン半導体層上に配置されたn型シリコン半導体層を含むことができる。
【0076】
前記ペロブスカイト太陽電池30は、第1透明電極31、正孔伝達層32、ペロブスカイト光吸収層33、電子輸送層34、電子伝達層35、第2透明電極36、及び金属電極37を含むことができる。
【0077】
図4に一実施例として示したように、前記第1透明電極31は前記シリコン太陽電池20の上部に形成され、前記正孔伝達層32は第1透明電極31の上部に形成され、前記ペロブスカイト光吸収層33は前記正孔伝達層32の上部に形成され、前記電子輸送層34は前記ペロブスカイト光吸収層33の上部に形成され、前記電子伝達層35はフラーレン(fullerene)系列の前記電子輸送層34の上部に形成され、前記第2透明電極36は前記電子伝達層35の上部に形成され、前記金属電極37は前記第2透明電極36の上部に形成されてもよい。
【0078】
前記第1透明電極31は、透光性を有する導電性素材で形成されてもよく、本発明の実施例によると、酸化インジウムスズ(ITO;indium-tin oxide)であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、透光性を有する導電性素材は、例えば、透明伝導性酸化物、炭素質伝導性素材及び金属性素材などを含むことができる。透明伝導性酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ICO(Indium Cerium Oxide)、IWO(Indium Tungsten Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、ZIO(Zinc Indium Oxide)、ZTO(Zinc Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、GIO(Gallium Indium Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、AZO(Aluminum doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、ZnOなどが使用されてもよい。炭素質伝導性素材としては、例えば、グラフェン又はカーボンナノチューブなどが使用されてもよく、金属性素材としては、例えば、金属(Ag)ナノワイヤ、Au/Ag/Cu/Mg/Mo/Tiなどの多層構造の金属薄膜が使用されてもよい。本明細書において、「透明」という用語は、光を一定程度以上透過し得るものを言い、必ずしも完全な透明を意味するものとは解釈しない。以上で説明した各物質は、必ずしも上で説明した各実施例に限定されるものではなく、多様な材質で形成可能であり、その構造も単層又は多層などに多様に変形可能である。
【0079】
前記正孔伝達層32は、タングステンオキサイド(WOx)、モリブデンオキサイド(MoOx)、バナジウムオキサイド(V2O5)、ニッケルオキサイド(NiOx)及びこれらの混合物から選ばれる金属酸化物のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。また、前記正孔伝達層32は、単分子正孔輸送物質及び高分子正孔輸送物質からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つを含み得るが、これに限定されなく、当該業界で使用される物質であれば限定なく使用することができる。例えば、前記単分子正孔輸送物質としては、spiro-MeOTAD[2,2’ ,7,7’-テトラキス(N,N-p-ジメトキシ-フェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン]を使用することができ、前記高分子正孔輸送物質としては、P3HT[ポリ(3-ヘキシルチオフェン)]、PTAA(ポリトリアリールアミン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を使用できるが、これに制限されない。
【0080】
また、前記正孔伝達層32には、ドーピング物質がさらに含まれてもよく、前記ドーピング物質としては、Li系列ドーパント、Co系列ドーパント、Cu系列ドーパント、Cs系列ドーパント及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるドーパントを使用できるが、これに制限されない。
【0081】
前記正孔伝達層32は、第1透明電極31上に正孔伝達層用前駆体溶液を塗布し、これを乾燥させることによって形成され得る。
【0082】
前記ペロブスカイト光吸収層33は、ABX3(ここで、Aは、1価の有機アンモニウム陽イオン又は金属陽イオンを意味し、Bは、2価の金属陽イオンを意味し、Xは、ハロゲン陰イオンを意味する。)で表される物質を含む。
【0083】
一つ又は多数の実施例において、前記ペロブスカイト光吸収層33は、前記Aがメチルアンモニウム(CH3NH3
+)又はエチルアンモニウム(CH3CH2NH3
+)を示し、BがPb又はSnを示し、XがI、Br又はClを示す、前記と同様の化学式を有するペロブスカイトを含み得るが、これに制限されるものではなく、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0084】
ペロブスカイト化合物としては、例えば、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbIxCl3-x、MAPbI3、CH3NH3PbIxBr3-x、CH3NH3PbClxBr3-x、HC(NH2)2PbI3、HC(NH2)2PbIxCl3-x、HC(NH2)2PbIxBr3-x、HC(NH2)2PbClxBr3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbI3、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbIxCl3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbIxBr3-x、(CH3NH3)(HC(NH2)2)1-yPbClxBr3-xなどが使用されてもよい(0≦x、y≦1)。また、ABX3のAにCsが一部ドーピングされた化合物も使用され得る。
【0085】
前記電子輸送層34は、前記ペロブスカイト光吸収層33の上部に位置し、PCBMやC60からなるフラーレン系列で形成されてもよい。ただし、これは、必須的なものではなく、選択的には、このような電子輸送層34を含まずペロブスカイト光吸収層33の直上部に上部電子伝達層が形成されてもよい。
【0086】
前記電子輸送層34は、電子伝達層35がTiOxやZnOxなどからなる場合、電子伝達層35とペロブスカイト光吸収層33との間に位置し、電子伝達層がペロブスカイト光吸収層に直接接触できないようにし、その結果、TiOxやZnOxなどによってペロブスカイトが分解されることを防止することができる。
【0087】
前記電子伝達層35は、前記電子輸送層34の上部に位置し、前記ペロブスカイト光吸収層33で生成された電子を前記第2透明電極36に伝達する。
【0088】
本発明の一実施例によると、
図2に示したように、前記電子伝達層35は、SnOxからなる薄膜であって、SnOからなる下部薄膜からSnO
2からなる上部薄膜に漸進的に変化する差等薄膜からなってもよい。
【0089】
このような本発明の一実施例に係るSnOxからなる差等薄膜は、
図3に示したALD工程によって形成されてもよい。
【0090】
前記SnOからなる下部薄膜からSnO2からなる上部薄膜に漸進的に変化する差等薄膜を形成するために、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を30sccm~90sccmにし、酸素(O)のソースであるH2Oの流量は10sccm~100sccmにし、工程温度を80℃にすることができる。
【0091】
前記SnOxの差等薄膜からなる上部電子伝達層は、本発明の一実施例に過ぎなく、本発明の差等薄膜は、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxのうちいずれか一つによっても形成され得る。
【0092】
すなわち、TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxの差等薄膜の場合にも、SnOx差等薄膜と同様に、それぞれのTi、Zn、W、Nb、In、及びCeに化学的に結合される酸素の個数が相対的に少ない所定の下部薄膜から、化学的に結合される酸素の個数が相対的に多い所定の上部薄膜に漸進的に変化する。
【0093】
TiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxの差等薄膜の場合にも、
図3に示した原子蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)によって形成され得る。
【0094】
このとき、それぞれのTiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOx、及びCeOxを構成する反応物のソースの流量及び工程温度などはSnOxの場合と異なり得るが、それぞれのTiOx、ZnOx、WOx、NbOx、InOxで酸素(O)と結合される反応物の流量が所定流量以上になると、ALD工程時に下部薄膜から上部薄膜に漸進的に変化する差等SnOx薄膜が形成され得ることは同様である。
【0095】
前記第2透明電極36は、本発明の実施例によると、IZO(Indium Zinc Oxide)であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記第2透明電極36は、酸化亜鉛(AZO;Aluminium-zinc oxide;ZnO:Al)、酸化インジウムスズ(ITO;indium-tin oxide)、フッ素含有酸化スズ(FTO:Fluorine-doped tin oxide)などの前記第1透明電極31と同じ素材で形成されてもよい。
【0096】
本発明の実施例に係るタンデム太陽電池の構造では、第2透明電極36が必須的である。すなわち、
図4に示したタンデム太陽電池2の上部から下部に太陽光が照射される場合、太陽光の透過のために金属電極37が格子パターンで形成されなければならないので、格子パターンの間に空のスペースが生じることになり、下側のペロブスカイト光吸収層33で生成され、この空のスペースに到逹する各電子が、側面移動を通じて金属電極37に移動できるようにするためには第2透明電極36が必要である。
【0097】
前記金属電極37は、外部と電気的に連結される部分であって、太陽光が透過し得るように格子パターン(grid)に銀(Ag)薄膜を蒸着させることによって形成され得る。
【0098】
差等薄膜からなる本発明の電子伝達層の効果
【0099】
以下では、上述したペロブスカイト太陽電池及びこれを備えたタンデム太陽電池に使用される本発明の実施例に係る差等薄膜の効果について説明する。
【0100】
図5は、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccmにしながら薄膜を形成した場合と、30sccmにしながら薄膜を形成した場合のXPS分析結果を示しており、
図6は、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccmにしながら電子伝達層を形成することによってペロブスカイト太陽電池を製造した場合と、30sccmにしながら薄膜を形成することによってペロブスカイト太陽電池を製造した場合におけるFF及びエネルギー変換効率を示している。
【0101】
図5のAに示した薄膜は、ITO透明電極上にスズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccmにし、酸素(O)のソースであるH
2Oの流量は30sccmにし、工程温度を80℃にし、
図3に示した原子蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)によって薄膜を形成したものであって、
図5のBに示した薄膜は、
図5のAと同一の実験条件下でスズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量のみを30sccmにし、原子蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)によって薄膜を形成したものである。
【0102】
XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析装備は、試料にX線を入射し、光電効果によって放出される光電子の運動エネルギー及び強度(intensity)を測定することによって、材料の成分及び結合特性を測定する表面分析装備である。
【0103】
図5のXPS分析グラフに示したように、
図5のAの薄膜の場合、ピーク(peak)値を示す一つの結合エネルギー(Binding energy)が486.6eVであって、SnOの単一層構造で形成されており、本発明で説明する差等薄膜が形成されていないことが分かる。
【0104】
一方、
図5のBの薄膜の場合、XPS分析グラフを見ると、ピーク値を示す結合エネルギーが、下部から上部に行くほど486.6eV(SnO)から487.2eV(SnO
2)に漸進的に変化していることが分かる。
【0105】
図5のBの薄膜の場合、最下部層は、実質的にSnOでのみ形成されているが、上部に行くほどSnOに比べてSnO
2の比率が増加しながら、最上部層は実質的にSnO
2でのみ形成されている。すなわち、
図5のBの場合、本発明で説明する差等薄膜が形成されたことが分かる。
【0106】
図6のAは、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccmにし、原子蒸着法によって
図5のAのような単一SnO薄膜(差等薄膜ではない薄膜)で電子伝達層を形成し、ペロブスカイト太陽電池を製造した場合を示し、これに対して実験した結果、FF(Fill Factor)値は61.96%で、エネルギー変換効率は11.69%であることが確認された。
【0107】
図6のBは、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を30sccmにし、原子蒸着法によって
図5のBのような差等薄膜で電子伝達層を形成し、ペロブスカイト太陽電池を製造した場合を示し、これに対して実験した結果、FF(Fill Factor)値は73.88%で、エネルギー変換効率は14.39%であることが確認された。
【0108】
すなわち、本発明の実施例によって、下部から上部に行くほどSnOからSnO2に漸進的に変化する差等薄膜で電子伝達層を形成し、ペロブスカイト太陽電池を製造した場合の方が、SnO単一薄膜で電子伝達層を形成した場合に比べてFF(Fill Factor)及びエネルギー変換効率が著しく高いことが分かる。
【0109】
図7は、追加的にスズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccm、30sccm、60sccm、及び90sccmに変更しながら薄膜を形成した場合のXPS分析結果を比較して示しており、
図8は、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccm、30sccm、60sccm、及び90sccmに変更しながら電子伝達層を形成することによってペロブスカイト太陽電池を製造した場合における、FF及びエネルギー変換効率を比較して示している。
【0110】
図7に示したそれぞれの薄膜は、ITO透明電極上にスズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量のみを20sccm、30sccm、60sccm、及び90sccmに変更し、他の実験条件は同一にし(すなわち、酸素のソースであるH
2Oの流量は30sccmにし、工程温度を80℃にし)、
図3に示した原子蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)によって薄膜を形成したものである。
【0111】
図7のXPS分析グラフに示したように、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccmにした場合を除いて、30sccm、60sccm、及び90sccmにした全ての場合において、ピーク値を示す結合エネルギーが、下部から上部に行くほど漸進的にSnOを示す値からSnO
2を示す値に変化していることが分かる。
【0112】
したがって、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量が30sccm以上である場合(すなわち、30sccm、60sccm、及び90sccmである場合)、下部から上部に行くほどSnOからSnO2に漸進的に変化する差等薄膜が形成されることが分かる。
【0113】
図8に示したように、スズ(Sn)のソースであるTDMASnの流量を20sccm、30sccm、60sccm、及び90sccmに変更し、他の条件は
図7と同一にし(すなわち、酸素のソースであるH
2Oの流量は30sccmにし、工程温度を80℃にし)、原子蒸着法によって差等薄膜からなる電子伝達層を形成し、ペロブスカイト太陽電池を製造した場合の実験データを示している。
【0114】
図8に示したように、本発明の実施例に係る差等薄膜で電子伝達層が形成される場合(すなわち、TDMASnの流量が20sccm、30sccm、60sccm、及び90sccmである場合)、FF(Fill Factor)値が66.46%~73.88%で、エネルギー変換効率は12.92%~14.39%であって、そうでない場合(TDMASnの流量が20sccmである場合)に比べて遥かに高いことが分かる。
【0115】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解できるだろう。そのため、以上で記述した各実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないと理解しなければならない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は、分散されて実施されてもよく、同様に、分散されたものと説明されている各構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0116】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導出される全ての変更又は変形した形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、ペロブスカイト太陽電池の製造分野に利用可能である。
【国際調査報告】