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特表2024-513070脊椎椎間関節治療のための外科器具セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】脊椎椎間関節治療のための外科器具セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20240313BHJP
   A61B 18/02 20060101ALI20240313BHJP
   A61B 18/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61B17/32
A61B18/02
A61B18/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561029
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021058516
(87)【国際公開番号】W WO2022207105
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374770
【氏名又は名称】ホーグラント・スパイン・プロダクツ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤープ・ホーグラント
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ケムシュテット
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF21
4C160FF41
4C160JJ07
4C160KK03
4C160KK47
4C160LL04
4C160LL07
4C160LL09
(57)【要約】
脊椎痛を緩和するために脊椎椎間関節治療を行うための、具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した低侵襲性の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の治療および/または手術を行うための、外科器具セット(100)が提供される。この外科器具セットは、標的の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の一部の機械アブレーションを実施するための第1の器具(110)と、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または神経および/または一部のアブレーション、および/または標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部の凝結を行うための電磁波を利用した第2の器具(120)とを備える。第1の器具(110)は、手持ちグリップにより駆動されるように構成される。さらに、本発明は、具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した低侵襲脊椎治療および/または低侵襲脊椎手術を実施することによって、腰痛を治療するための方法を提供する。この方法は、標的の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の機械アブレーションを実施するための第1の器具(110)を前進させるステップ、および/または標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または神経および/または一部をアブレーションし標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部を凝結するために電磁波を利用する、第2の器具(120)を前進させるステップを含み、第1の器具(110)および第2の器具(120)は、交互に使用され、その順序は、実施される治療および/または手術により決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎痛を緩和するために脊椎椎間関節治療を行うための、具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した低侵襲性の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の治療および/または手術を行うための、外科器具セット(100)であって、
標的の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の一部の機械アブレーションを実施するための第1の器具(110)と、
前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または神経および/または一部の(熱)アブレーション、および/または前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部の凝結を行うための電磁波を利用した第2の器具(120)と
を備え、
前記第1の器具(110)は、手持ちグリップにより駆動されるように構成されている、外科器具セット(100)。
【請求項2】
前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで患者の背部に設けられた切開部に挿入されるように構成された具体的にはKワイヤであるガイドワイヤ(101)、および/または
前記ガイドワイヤ上に配置され、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かって前記ガイドワイヤにより案内されるように構成された拡張器(102)、および/または
前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで前記ガイドワイヤ(101)および/または前記拡張器(102)の上において前記切開部に挿入され、作業チャネル(103A)を設けるように構成されたスリーブ(103)
をさらに備える、請求項1に記載の外科器具セット(100)。
【請求項3】
前記作業チャネル(103A)に挿入可能であり、機械アブレーションおよび/または電磁(波)アブレーションを実施する前および/または後に前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包を可視化するために使用されるように構成された内視鏡(130)をさらに備える、請求項2に記載の外科器具セット(100)。
【請求項4】
前記スリーブ(103)は、前記スリーブ(103)の長さに沿って長手方向に延在するシャフトと、前記標的の脊椎椎間関節または脊椎関節包上に前記スリーブ(103)を固定するための固定セクション(103B)とを備え、前記固定セクション(103B)は、前記シャフトの遠位部分に位置し、前記固定セクション(103B)は、好ましくは、前記シャフトの周縁部の一部に沿って延在するように前記シャフトの側方表面にまたは側方表面中に設けられる、請求項2に従属する請求項3に記載の外科器具セット(100)。
【請求項5】
前記固定セクションは、前記スリーブ(103)の前記長手方向に沿って所定の距離にわたり前記スリーブ(103)の前記遠位端部から前記スリーブの近位端部に向かって延在する少なくとも1つの切込み部を備える、請求項4に記載の外科器具セット(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの切込み部、好ましくは3つの切込み部は、1~4mmの長さ、好ましくは2~3mmの長さと、1~3mmの幅、好ましくは1.5~2.5mmの幅とを有する、請求項5に記載の外科器具セット(100)。
【請求項7】
前記固定セクションは、前記スリーブ(103)の前記長手方向に沿って延在するように前記シャフトの前記側方表面上に設けられた少なくとも1つの固定ピンを備え、前記少なくとも1つの固定ピンは、前記遠位端部に位置する前記スリーブ(103)の前記端部面から突出し、前記固定ピンは、好ましくは0.2mm~2mmの範囲内で、より好ましくは0.5mm~1.5mmの範囲内で突出する、請求項4から6のいずれか一項に記載の外科器具セット(100)。
【請求項8】
機械アブレーションを実施するための前記第1の器具(110)は、骨を切断するための切断セクションを有するドリル部材(110A)を備え、前記切断セクションは、前記ドリル部材の遠位端部に位置する、請求項1から7のいずれか一項に記載の外科器具セット。
【請求項9】
前記切断セクションは、前記ドリル部材(110A)の前方表面上に設けられ径方向外方に延在する複数の切断エッジを備える、請求項7または8に記載の外科器具セット。
【請求項10】
機械アブレーションを実施するための前記第1の器具(110)は、前記第1の器具(110)の近位端部に位置する、具体的には前記第1の器具(110)のドリル部材(110A)の近位端部に位置するハンドル(110B)を備え、前記ハンドル(110B)は、好ましくは、外科医の手に快適にフィットするように球状形状または湾曲形状を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の外科器具セット。
【請求項11】
前記ハンドル(110B)は、球状部分または湾曲状部分を有し、直線状部分がそれに続き、両部分は中空であり、前記球状部分または前記湾曲状部分は、好ましくは貫通穴を備え、前記直線状部分は、好ましくは前記外周部上に切欠部を備える、請求項10に記載の外科器具セット。
【請求項12】
前記ハンドル(110B)は、25mm~40mmの範囲の、好ましくは30mm~35mmの範囲の半径を有する少なくとも部分的に球状または湾曲状の形状を有する、請求項10または11に記載の外科器具セット。
【請求項13】
前記ハンドルは、触覚フィードバック、具体的には導入される力および/またはトルクに関する触覚フィードバックを外科医または術者に提供するように構成される、請求項10から12のいずれか一項に記載の外科器具セット。
【請求項14】
前記第2の器具(120)は、電磁プローブまたはRF(高周波)プローブまたは焼灼素子を備え、前記第2の器具(120)は、好ましくは、前記電磁プローブ、前記RFプローブ、または前記焼灼素子に対して電力を供給する電気外科用発電機を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の外科器具セット。
【請求項15】
前記スリーブ(103)の前記作業チャネル(103A)の内径は、前記第1の器具(110)、具体的には前記ドリル部材(110A)が挿入されるまたは受けられるときに、前記第1の器具(110)またはそのドリル部材(110A)が回転可能になるような内径である、請求項1から14のいずれか一項および請求項3に記載の外科器具セット。
【請求項16】
好ましくは請求項1から15のいずれか一項に記載の前記外科器具セットを使用することにより、具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した低侵襲脊椎治療および/または低侵襲脊椎手術を実施することによって、腰痛を治療するための方法であって、
標的の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の機械アブレーションを実施するための第1の器具(110)を前進させるステップ、および/または
標的の脊椎椎間関節もしくは椎間関節包の組織および/または神経および/または一部をアブレーションし前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部を凝結するために電磁波を利用する、第2の器具(120)を前進させるステップ
を含み、
前記第1の器具(110)および前記第2の器具(120)は、交互に使用され、その順序は、実施される治療および/または手術により決定される、方法。
【請求項17】
腰痛を治療するための方法であって、
第1のステップにおいて、第2の器具(120)が、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または神経をアブレーションするために使用され、
第2のステップにおいて、第1の器具(110)が、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包をアブレーションするまたは削るために使用され、
第3のステップにおいて、前記第2の器具(120)が、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部を凝結するために使用される、方法。
【請求項18】
前記第1の器具(110)および/または前記第2の器具(120)の使用の前および/または後に、内視鏡(130)が、前記標的の脊椎椎間関節もしくは椎間関節包または実施される治療および/または手術の領域を検査および/または記録するために使用される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の器具(120)は、前記内視鏡により提供される視界下において、前記内視鏡に通して、具体的には前記内視鏡の作業チャネルに通して設けられるまたは前進される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記内視鏡は、具体的には標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の水潅注のために使用され、それによりバイポーラRFプローブに必要な流体を供給する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の器具(110)および/または前記第2の器具(120)ならびに前記内視鏡(130)は、前記第1の器具(110)および/または前記第2の器具(120)によるアブレーションの前および/または最中に前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包あるいは治療領域および/または手術領域の可視化のために、同時に使用することが可能であり、具体的にはスリーブ(103)の作業チャネル(103A)に共に挿入可能である、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の器具(110)、具体的にはドリル要素(110A)は、例えば除去すべき肥大した椎間関節包もしくは骨、滑液嚢胞、または腫瘍などの病理組織中に前進する、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
最初に、ガイドワイヤ(101)、具体的にはKワイヤが、切開部に挿入され、好ましくはこの挿入は、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するために必要なアプローチ角度を考慮したものであり、
前記ガイドワイヤ(101)は、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで、前記切開部内へと前進され、次いで、
前記ガイドワイヤ(101)は、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の中に優しく叩き込まれる、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ガイドワイヤ(101)が位置決めされ、前記位置が、蛍光透視法により確認された後に、拡張器(102)が、前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かって前記ガイドワイヤ(101)の上を前進され、前記ガイドワイヤ(101)および前記拡張器(102)の正確な位置が、蛍光透視法により確認される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記拡張器(102)および前記ガイドワイヤ(101)の上において、作業チャネル(103A)を備えるスリーブ(103)を前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かって挿入および前進するステップと、好ましくは、前記スリーブ(103)上に設けられた固定セクション(103B)により前記標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に前記スリーブ(103)を固定するステップとをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎椎間関節治療のための外科器具セットに関する。詳細には、本発明は、例えば機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した椎間関節症候群に対する低侵襲脊椎治療および/または低侵襲脊椎手術の分野などにおいて使用するための外科器具セットに関する。さらに、本発明は、機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した、腰痛の治療とりわけ椎間関節症候群の治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
椎間関節症候群を理解するためには、先ずその位置を理解する必要がある。椎間関節は、脊柱の2つの椎骨の間に位置する。椎間関節は、背中を撓曲可能にし、背中の曲げおよび捻りをもたらす関節である。椎間関節は、1つの神経源を介した神経支配を有する点においてユニークなものである。脊髄の神経は、椎間関節を通り出る。健康な関節においては、軟骨と、関節に潤滑性を与える滑液とにより、脊柱は過度のきしみを伴わずに平滑に動くことが可能になる。
【0003】
椎間関節症候群は、加齢、関節への過負荷(過体重および職業であり得る)または傷害を含む複数の要因に起因して起こり得る。これらの要因は、椎骨間の椎間板を変質させ、最終的には座屈させて、空間を狭めてしまう場合がある。椎間関節の表面に対する過度の圧力は、より大きな損傷をもたらし、骨は、骨に対接してきしむ状態になる。患者は、脊柱を伴う動きがある場合に疼痛を感じることになる。
【0004】
従来より、脊柱関節炎痛を一時的に緩和するために、椎間関節神経根切断術または高周波熱凝固法(RFL)が利用されてきた。RFL手技は、神経に凍傷または熱傷のいずれかを与えるための凍結療法または高周波技術を伴う。RFLは、暫定的なものである。なぜならば、後根神経節(神経細胞体)と運動終板感覚受容器(関節における疼痛刺激位置)との間の箇所において神経が破壊され、したがって、あらゆる末梢神経と同様にこの神経は次第に再生され、最終的には疼痛が再開するからである。したがって、ほとんどのRFL手技は、4~8か月にわたり継続し、疼痛が再開した場合には、有効な疼痛緩和のためには患者の終生にわたり繰り返し実施する必要がある。
【0005】
椎間関節症候群に関して、通常は、外科手術は、従来的な治療オプションが患者にとってもはや有効になり得ない場合にのみオプションとして考慮される。椎間関節症候群に対する従来の観血手術は、術後の合併症リスクが非常に高い大きな切開を必要とするため、複雑なものとなるおそれがある。また、観血手術では、回復およびリハビリテーションの過程がより長期化する。
【0006】
脊髄手術の実施時には、後面アプローチまたは後側面アプローチにより椎間関節および椎間関節包の一部を除去することによって脊髄内構造を露出させる必要がある。この脊柱の骨構造の一部の除去は、神経構造で充填された脊柱管にアクセスするために実施される。脊柱管内の神経構造は、脆弱な組織構造および樹状構成を有し、脊柱管の中央部分は、神経線維で充填された長尺の嚢(硬膜)で充填される。神経で充填されたこの長尺の嚢から、神経根が、各椎間位置にて左右へと分枝しており、一方で神経根は、両側のトンネルすなわち孔を通じて脊柱管から退出している。
【0007】
ヒトにおいて、神経線維およびその神経枝を備える硬膜嚢は、以下のものにより、脊柱管の高さおよび孔(トンネル)の内部にて病的に圧迫される。
-椎間板膨隆物質または椎間板脱出物質
-肥大した椎間関節
-肥大した椎間関節包
-椎間関節の滑液嚢胞
-髄内腫瘍、または
-椎間板座屈。これは孔の狭小化を引き起こし得る。
【0008】
かような硬膜嚢および硬膜嚢内部の各神経線維の圧迫により、患者に疼痛、痺れ、またはさらには麻痺が生じる。もっとも一般的な合併症は、椎間板ヘルニアの合併症である。
【0009】
術後の合併症リスクを低下させるために、近年においては、椎間関節症候群に対する低侵襲脊髄手術がより好まれるようになりつつある。なぜならば、この低侵襲脊髄手術は、合併症の発症率を低下させ、外来処置としての実施が可能であるため、患者が術後にその日のうちに快適な自宅へ戻ることが可能となるからである。椎間関節症候群の対する手技としては、例えば椎間関節熱アブレーション、椎間板切除、椎弓切開、および椎間孔天蓋切除などの、任意の低侵襲減圧手術が含まれる。
【0010】
椎間板切除は、圧迫を引き起こしている椎間板の部分を除去することを目的とする。したがって、前記椎間関節治療は、ヒトの脊柱の頸椎、胸椎、または腰椎の椎間関節に対して実施し得るデブリードマン処置であると説明することができる。椎間関節デブリードマンの最中に、椎間関節同士の間の滑液包は、骨の切除およびこの関節からの神経除去(神経再支配の防止)のために除去される。
【0011】
病理組織の治療または除去のために脊柱管へアクセスするために、周辺の骨物質を除去する必要がある。椎間関節包の一部および椎間関節骨の一部を除去することにより、作業カニューレを挿通し得る6~11mm直径の開口が形成され得る。この作業カニューレを介して、外科医は、病理棘突間組織を操作し、例えば把持器、掻爬器、リーマ、レーザ等の標準的な機器を用いてかかる組織を除去することが可能である。かような作業カニューレを通じて、椎間板同士の間の空間の洗浄を行うことも可能であり、必要に応じて、椎間板同士の間の空間またはケージを挿入することも可能である。作業カニューレを導入した後に、内視鏡の支援により脊柱管内の病理構造の除去を行うことがさらに可能になる。
【0012】
かかる手術は、通常は「蛍光透視法」とも呼ばれる2方向X線イメージインテンシファイアの制御下で実施される。
【0013】
脊柱管へのアクセスのために骨構造を除去することは、非常に繊細かつ難しい手技である。神経嚢(硬膜)または分枝する神経根の中の1つが誤って損傷を被るまたは切断されるようなことは、絶対に避けなければならない。なぜならば、かような損傷は非常に危険であり、患者が回復できなくなる場合があるからである。
【0014】
かかる低侵襲脊髄治療および/または脊髄手術の実施のために、米国特許出願公開第2019/0343575A1号は、脊椎椎間関節治療システムについて説明している。このシステムは、60ワットの最大ワット数で一定の動作出力曲線を有する電気外科用発電機と、細長回転可能シャフトを有する脊椎椎間関節治療器具とを備える。このシャフトは、焼灼素子を有する遠位端部を有する。この器具は、電気外科用発電機と接続状態にあり、脊椎椎間関節の滑液包を有する運動終板感覚受容器領域を除去するために約10rpm~約5000rpmの間で自動的に回転するように構成される。電気外科用発電機またはRF発電機は、シャフトが回転するまたは静止状態にある間に、焼灼素子に対して電力を供給する。
【0015】
説明されるこのシステムは、1つの器具またはシステムにより、切除、デブリードマン、凝結、および/または焼灼の実施が可能であるという利点を有する。しかし、多くの外科医は、例えば触覚フィードバックをもたらすドリルまたはリーマなどの外科器具を用いて脊椎椎間関節または椎間関節包の切除および/またはデブリードマンを実施することを好む。さらには、外科医は、治療領域または外科手術領域を可視化するために内視鏡を使用しつつ神経除去を行うことを好む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0343575A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記を鑑みて、手技のある段階の最中に治療領域または外科手術領域を可視化することが可能であり、外科医が触覚フィードバックをもたらす外科器具を用いて切除および/またはデブリードマンを実施することができる、椎間関節症候群の低侵襲脊椎治療および/または低侵襲脊椎外科手術を可能にする外科器具セットを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
望ましいこれらのことは、請求項1に記載の脊椎痛を緩和するために脊椎椎間関節治療を行うための外科器具セットにより対処される。また、本発明は、請求項16に記載の腰痛を治療するための方法に関する。実施形態は、従属請求項、以降の説明、および添付の図面においてみることができる。
【0019】
本発明は、脊椎痛を緩和するために脊椎椎間関節治療を行うための、具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した低侵襲性の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の治療および/または手術を行うための、外科器具セットであって、
標的の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の一部の機械アブレーションを実施するための第1の器具と、
標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または神経および/または一部の(熱)アブレーション、および/または標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部の凝結を行うための電磁波を利用した第2の器具と
を備え、
第1の器具は、手持ちグリップにより駆動されるように構成されている、外科器具セットを提供する。
【0020】
したがって、本発明は、脊椎椎間関節治療を実施するための、具体的には低侵襲性の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の治療および/または手術を実施するための外科器具セットを提供する。このセットは、この治療または手術の実施の最中に、具体的には切除および/またはデブリードマンの最中に触覚フィードバックを外科医に対して与えることが可能であり、これにより、医療手技の最中に神経、組織、および/または硬膜を保護しつつ緩やかな方法で滑液包および脊椎椎間関節の外方表面の一部を除去することが可能となり、生物体または人体の極めて繊細な領域の近くにおける医学的治療が容易になるため、術後の治癒プロセスを加速することができる。
【0021】
本発明のコンテクストにおいて、実施される治療または手術に関連する「切除」という用語は、椎間関節の軟組織をポリッシング、(緩やかな)グラインディング、スクレイピング、ファイリング、グレーティング、クレンジング、および/またはラスピングすることにより、骨の切断または除去を伴わずに組織を切除し下層の骨を露出させるような手技を指すものとして理解されるべきである(例えばナイフなどの先鋭な切断エッジとは対照的に)。この切除器具は、小歯を備え得る研磨性のテクスチャおよび/または構成を有する表面を有することが可能である。
【0022】
他方において、「デブリードマン」という用語は、本発明のコンテクストにおいて、滑液包および組織を含む標的の脊椎椎間関節の運動終板感覚受容器領域に関連する軟組織の除去により、この関節の外方骨表面をスクレイピングすることを指す。
【0023】
さらに、本発明のコンテクストでは、「電磁アブレーション」という用語は、高周波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、およびガンマ線などの電磁放射(電磁波)の印加により実現される熱アブレーションを指す。このコンテクストにおいて、高周波、具体的にはバイポーラ電波の利用は、極めて実用的かつ効率的であることが判明している。
【0024】
一般的に、本発明の実施形態により、椎間関節のデブリードマン処置による、滑液包および脊椎椎間関節の外方表面を含む運動終板感覚受容器領域の除去が可能になる。滑液包およびこの関節の外方表面が切除される場合には、神経は、関節に対して再装着するための場所を失い、したがって関節は、永久的に神経支配除去される。換言すれば、この患者は、疼痛から永久的に解放される。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、外科器具セットは、
標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで患者の背部に設けられた切開部に挿入されるように構成されたガイドワイヤ、および/または
ガイドワイヤ上に配置され、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かってガイドワイヤにより案内されるように構成された拡張器、および/または
標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまでガイドワイヤおよび/または拡張器の上において切開部に挿入され、作業チャネルを設けるように構成されたスリーブ
をさらに備え得る。
【0026】
さらに、いくつかの実施形態では、外科器具セットは、スリーブの作業チャネルに挿入可能であり、機械アブレーションおよび/または電磁アブレーションを実施する前および/または後に標的の脊椎椎間関節または椎間関節包を可視化するために使用されるように構成された内視鏡をさらに備え得る。
【0027】
したがって、この内視鏡は、スリーブの作業チャネルを通過して標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かって設けられまたは前進され、第2の器具、具体的にはRFプローブが、作業チャネルに挿入された内視鏡を通過して設けられまたは前進され、それにより電磁アブレーションが、内視鏡による視覚制御下で実施される。
【0028】
本発明のさらなる一実施形態によれば、スリーブは、スリーブの長さに沿って長手方向に延在するシャフトと、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包上にスリーブを固定するための固定セクションとを備えてもよく、この固定セクションは、シャフトの遠位部分に位置し、固定セクションは、好ましくは、シャフトの周縁部の一部に沿って延在するようにシャフトの側方表面にまたは側方表面中に設けられる。
【0029】
したがって、具体的には正確な位置が蛍光透視法により確認された後に、スリーブを固定し、それにより標的の脊椎椎間関節または椎間関節包上の治療領域および/または手術領域を固定することを可能にする。
【0030】
さらに、本発明のコンテクストにおいて、「遠位」および「近位」という用語は、外科器具に関連する用語に対して通常与えられる意味において使用され、すなわち「遠位」という用語は、器具の使用時に外科医から遠い外科器具の端部を意味し、「近位」という用語は、外科器具の使用時に外科医に近い外科器具の端部を意味する。換言すれば、遠位端部は、患者の体内に最初に挿入される、および典型的には各外科手術側を操作するための端部である、外科器具の端部であり、近位端部は、外科医の手の中に位置する。
【0031】
さらに、固定セクションは、スリーブの長手方向に沿って所定の距離にわたりスリーブの遠位端部からスリーブの近位端部に向かって延在する少なくとも1つの切込み部を備え得る。
【0032】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、この少なくとも1つの切込み部、好ましくは3つの切込み部は、1~4mmの長さ、好ましくは2~3mmの長さと、1~3mmの幅、好ましくは1.5~2.5mmの幅とを有し得る。切込み部の長さは、スリーブの長手方向に対して平行であり、幅は、スリーブの長手方向に対して垂直である。
【0033】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、固定セクションは、スリーブの長手方向に沿って延在するようにシャフトの側方表面上に設けられた少なくとも1つの固定ピンを備える。この場合に、少なくとも1つの固定ピンは、好ましくは遠位端部にてスリーブの端部面から突出し、固定ピンは、好ましくは0.2mm~2mmの範囲で突出し、さらに好ましくは0.5mm~1.5mmの範囲で突出する。
【0034】
いくつかの実施形態では、機械アブレーションを実施するための第1の器具は、骨を切断するための切断セクションを有するドリル部材を備えてもよく、切断セクションは、ドリル部材の遠位端部に位置してもよい。
【0035】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、ドリル部材は、神経、組織、または硬膜を切断から保護するための非切断保護先端部を備えてもよく、この非切断保護先端部は、切断セクションの遠位に位置する。
【0036】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、切断セクションは、ドリル部材の前方表面上に設けられ径方向外方に延在する複数の切断エッジを備える。
【0037】
いくつかの実施形態では、機械アブレーションを実施するための第1の器具は、第1の器具の近位端部に位置する、具体的には第1の器具のドリル部材の近位端部に位置するハンドルを備えてもよい。さらに、このハンドルは、好ましくは外科医の手に快適にフィットするように球状形状または湾曲形状を有してもよい。さらに、このハンドルは、具体的には螺合連結により第1の器具に対して除去可能または取外し可能に固定され得る。
【0038】
さらに、第1の器具の、具体的にはドリル部材のハンドルは、球状部分または湾曲状部分を有し、直線状部分がそれに続き、それによりマッシュルーム形状部が形成される。さらに、これらの両部分は、中空であってもよく、球状部分または湾曲状部分は、複数の貫通穴を追加的に備えてもよい。これにより、ハンドルの総重量の削減と、把持の容易化とが可能になる。さらに、この直線状部分は、外周部上に切欠部を備えてもよく、好ましくはこれらの切欠部は、第1の器具の長手方向に対して、具体的には第1の器具のシャフトに対して平行に延在する。
【0039】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、ハンドルは、25mm~40mmの範囲の、好ましくは30mm~35mmの範囲の半径を有する少なくとも部分的に球状形状または湾曲形状を有する。ハンドルに球状形状または湾曲状形状を与えることにより、従来の直線状のハンドルに比べて力の印加が改善および/または向上し得る。具体的には、外科医が、印加力に関して改善されたフィードバックを受け取る。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態では、ハンドルは、触覚フィードバック、具体的には導入または印加される力および/またはトルクに関する触覚フィードバックを外科医または術者に提供するように構成され得る。
【0041】
本発明のさらなる一実施形態によれば、第2の器具は、電磁プローブまたはRF(高周波)プローブまたは焼灼素子を備え得る。さらに、第2の器具は、電磁プローブ、RFプローブ、または焼灼素子に対して電力を供給する電気外科用発電機を備え得る。
【0042】
さらに、スリーブの作業チャネルの内径は、第1の器具、具体的にはドリル部材が挿入されるまたは受けられるときに、第1の器具またはそのドリル部材が回転可能になるような、内径であり得る。
【0043】
本発明は、好ましくは前記請求項のいずれか一項に記載の外科器具セットを使用することにより、具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用した低侵襲脊椎治療および/または低侵襲脊椎手術を実施することによって、腰痛を治療するための方法をさらに提供する。
【0044】
この方法は、
標的の脊椎椎間関節または脊椎椎間関節包の機械アブレーションを実施するための第1の器具を前進させるステップ、および/または
標的の脊椎椎間関節もしくは椎間関節包の組織および/または神経および/または一部をアブレーションし標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部を凝結するために電磁波を利用する、具体的には電波(高周波)を利用する、さらに具体的にはバイポーラ電波を利用する第2の器具を前進させるステップを含み、
第1の器具および第2の器具は、交互に使用され、その順序は、実施される治療および/または手術により決定される。
【0045】
換言すれば、第1の器具および第2の器具は、別個に利用される。すなわち、第1の器具または第2の器具のいずれかがスリーブの作業チャネルに挿入され、このスリーブは、以前に配置されたものである。さらに、第1の器具および第2の器具を使用する順序は、またはそれとは逆に、実施される各治療または手術に応じて決定される。したがって、最初に、神経のアブレーションまたは除去を行うために第2の器具を使用し、次いで具体的には手によりドリル要素を駆動することによって、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の一部を機械的に除去するために第1の器具を使用し、スリーブから第1の器具を除去し、内視鏡により標的の脊椎椎間関節または椎間関節包を検査し、必要な場合には再度第2の器具を使用することにより脊椎椎間関節または椎間関節包を凝結することが可能である。
【0046】
本発明のさらなる一実施形態によれば、この方法は、
第1のステップにおいて、第2の器具が、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または神経をアブレーションするために使用され、
第2のステップにおいて、第1の器具が、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包をアブレーションするまたは削るために使用され、
第3のステップにおいて、第2の器具は、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の組織および/または一部を凝結するために使用される。
【0047】
上述のように、いくつかの実施形態では、内視鏡が、標的の脊椎椎間関節もしくは椎間関節包または実施される治療および/または手術の領域を検査および/または可視化および/または記録するために、第1の器具の使用および/または第2の器具の使用の前および/または後に使用され得る。
【0048】
さらに、いくつかの実施形態では、第2の器具は、好ましくは内視鏡により提供される視界下において、内視鏡に通して、具体的には内視鏡の作業チャネルに通して設けられ得るまたは前進され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、内視鏡は、具体的には標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の水潅注のために使用され、それによりバイポーラRFプローブに必要な流体を供給し得る。
【0050】
さらに、いくつかの実施形態では、第1の器具および/または第2の器具ならびに内視鏡は、第1の器具および/または第2の器具によるアブレーションの前および/または最中に標的の脊椎椎間関節または椎間関節包あるいは治療領域および/または手術領域の検査または可視化のために、同時に使用することが可能であり、具体的にはスリーブの作業チャネルに共に挿入可能であり得る。
【0051】
さらに、第1の器具、具体的にはドリル要素は、例えば除去すべき肥大した椎間関節包もしくは骨、滑液嚢胞、または腫瘍などの病理組織中に前進し得る、または前進され得る。
【0052】
さらに、いくつかの実施形態では、最初に、ガイドワイヤ、具体的にはKワイヤが、切開部に挿入されてもよく、好ましくはこの挿入は、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するために必要なアプローチ角度を考慮したものである。ガイドワイヤは、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで、切開部内へと前進され得る。次いで、ガイドワイヤは、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の中に優しく叩き込まれる。
【0053】
さらに、いくつかの実施形態では、Kワイヤは、1.2mm~1.8mmの範囲の直径を、好ましくは1.5mmの直径を有し得る。Kワイヤの直径を1.2mm~1.8mmの範囲内になるように拡大することにより、Kワイヤのガイド安定性を改善し、Kワイヤの固定を改善することが可能になる。
【0054】
さらに、この方法は、ガイドワイヤが位置決めされ、この位置が好ましくは蛍光透視法により確認された後に、拡張器が、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かってガイドワイヤの上を前進され、ガイドワイヤおよび拡張器の正確な位置が、好ましくは蛍光透視法により確認されるステップをさらに含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、この方法は、拡張器およびガイドワイヤの上において、作業チャネルを備えるスリーブを標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かって挿入および前進するステップと、好ましくはスリーブ上に設けられた固定セクションにより標的の脊椎椎間関節または椎間関節包にスリーブを固定するステップとをさらに含む。
【0056】
具体的には機械アブレーションならびに電磁アブレーションおよび/または凝結を利用して低侵襲性の脊椎治療および/または脊椎手術を実施することにより、腰痛を治療するための方法は、本発明の脊椎痛を緩和するための脊椎椎間関節治療を行うための外科器具セットを使用することができる。したがって、外科器具セットの上記説明に関連して開示されるさらなる特徴は、腰痛治療のための方法に対しても該当し得るものであり、その逆もまた真である。
【0057】
本発明およびその関連する利点の多くは、添付の図面との関連において考慮しつつ以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されるため、本発明およびその関連する利点の多くに関するより十分な理解が容易に得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】先行技術による標的の脊椎椎間関節の治療の最中における外科器具の概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態による外科器具セットの一部の概略等角断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態による外科器具セットの一部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、これらの図面を参照として本開示の実施形態を説明する。以下の実施形態の説明は、もっぱら例示として提示されるものであり、本開示を限定することを目的とするものではないことが、脊椎医療手技分野の当業者には明らかになろう。また、以降で説明する実施形態の特徴は、特許請求の範囲において定義されるデバイスの特徴をさらに説明するために使用され得る。
【0060】
特徴の修正同士を組み合わせることにより、さらなる実施形態を構成することができる。個々の実施形態において説明される特徴同士は、相互に両立する限りにおいては単一の実施形態において実現することができる。同様に、1つの実施形態において説明される特徴は、複数の実施形態において個別にまたは任意の適切な下位組合せにおいて実現することができる。本明細書および添付の特許請求の範囲において、「1つの(a、an)」および「その(the)」等の単数形表現は、別様のことが文脈により明示されない限り複数形表現への言及を含む。それぞれ異なる図面に示される同一の参照数字は、同一の、対応する、または機能的に類似の要素を示す。以降において説明されるように、本開示の例示の実施形態は、脊椎痛の緩和のための脊椎椎間関節治療のための外科器具セットに関する。
【0061】
別様のことが述べられない限り、本明細書において用いられるあらゆる用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明に関連する技術の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書に定義されるものなどの用語は、本明細書および関連技術の文脈におけるそれらの用語の意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明確に定義されない限りは理想化された意味または過度に型通りの意味で解釈されるべきではない点が理解されよう。周知の機能または構造は、簡略化および明快化のために詳細には説明されない場合がある。
【0062】
さらに、ある要素が別の要素の「上に」位置する、別の要素に対して「装着される」、別の要素に対して「連結される」、別の要素に対して「結合される」、別の要素に「接触している」等として言及される場合に、このある要素は、他方の要素の上に直接的に位置する、他方の要素に対して直接的に装着される、他方の要素に対して直接的に連結される、他方の要素に対して直接的に結合される、または他方の要素に直接的に接触していることが可能であり、あるいは介在要素がさらに存在してもよい。対照的に、ある要素が、例えば別の要素の「上に直接的に位置する」、別の要素に対して「直接的に装着される」、別の要素に対して「直接的に連結される」、別の要素に対して「直接的に連結される」、別の要素に対して「直接的に結合される」、または別の要素に「直接的に接触している」として言及される場合には、介在要素は存在しない。また、別の特徴に「隣接して」配設される構造物または特徴への言及は、この隣接する特徴物に重畳するまたはこの隣接する特徴物の下に位置する部分を有してもよいことが、当業者には理解されよう。
【0063】
図1は、先行技術による標的の脊柱椎間関節(脊柱300)の治療の最中における外科器具200の概略図を示す。図1から分かるように、脊椎痛を緩和するための脊椎椎間関節治療において使用される従来の外科器具200は、ガイドワイヤ、スリーブ201、内視鏡202、および把持鉗子203またはドリルなどの外科道具からなる。従来的には、患者はうつ伏せ姿勢にされ、治療部位が滅菌した布で覆われ、標準的な技術にしたがって準備され、所望の治療位置が蛍光透視法の利用により決定され、皮膚がマーキングされる。次の段階で、10~15mmの切開部が、標的の脊椎椎間関節に到達するために必要なアプローチ角度を考慮した位置に形成される。次いで、蛍光透視ガイダンスを利用して、ガイドワイヤ(Kワイヤ)が、椎間間接に到着するまで切開部中に前進される。ガイドワイヤは、蛍光透視法の利用によりガイドワイヤの正確な位置を確認しつつ、小型ハンマーを利用して骨中に優しく叩き込まれる。次の段階において、拡張器が、ガイドワイヤ上において挿入されて、スリーブのために設けられたチャネルを広げ、次いでこのスリーブが、ガイドワイヤの拡張器の上において挿入される。次いで、ガイドワイヤおよび/または拡張器が除去され、それによりスリーブ内の作業チャネルがアクセス可能になる。所望に応じて、内視鏡が、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の検査のために作業チャネルに挿入される。図1は、内視鏡202が把持鉗子203と並行して使用され得る外科システムを示す。治療の最中に、外科医が標的の脊椎椎間関節または椎間関節包を可視化することを可能にすること。
【0064】
図2は、本発明の第1の実施形態による外科器具セット100の一部の概略等角断面図を示す。図2から分かるように、外科器具セット100は、ガイドワイヤ101、具体的にはKワイヤを備え、これは、図1に関連して上述したように患者の背部に設けられた切開部に挿入されるように構成される。ガイドワイヤ101は、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで切開部内へと前進され得る。蛍光透視法によりガイドワイヤの正確な位置を確認した後に、ガイドワイヤの位置は、通常は小型ハンマーを使用して骨中に優しくワイヤ101を叩き込むことによって固定される。また、外科器具セット100は、拡張器102を備え、この拡張器102は、ガイドワイヤ上に配置され、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包へと前進される最中にガイドワイヤにより案内されるように構成される。さらに、このセットは、スリーブ103を備え、このスリーブ103は、ガイドワイヤ101が先に除去される場合に備えて、ガイドワイヤ101および/または拡張器102の上において切開部に挿入されるように構成される。前述のように、スリーブ103は、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に到達するまで切開部に挿入または前進され得る。さらに図示する外科器具セット100は、スリーブ103に対して連結されるまたは連結可能なハンドグリップ104を備え、外科医が切開部内にスリーブ103を前進させるおよび/または位置決めするのをさらに容易にする。
【0065】
図3は、本発明の第2の実施形態による外科器具セット100の一部の概略平面図を示す。図3に示すように、このセットは、図示する実施形態では手動ドリルである第1の器具110と、図示する実施形態では高電磁波または高周波を発し得る電磁プローブである第2の器具120とをさらに備える。このセットは、内視鏡130、複数のガイドワイヤまたはKワイヤ(101)、および拡張器102をさらに備える。また、図3では、拡張器102が、具体的にはガイドワイヤ101を介して標的の脊椎椎間関節または椎間関節包に向かって案内するために使用されるガイドワイヤチャネル102Aである、チャネルを備えることが分かる。
【0066】
ドリル110は、例えば標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の一部に対して機械アブレーションを実施するために使用される。第2の器具120、具体的には電磁プローブは、種々の目的に対して使用され得る。第1に、第2の器具120は、治療済みの脊椎椎間関節または椎間関節包を凝結するために使用され得る。さらに、所望に応じて、組織、および/または神経、および/または標的の脊椎椎間関節もしくは椎間関節包の(小さい)一部に対するアブレーション、具体的には熱アブレーションを行うためにも使用可能である。提供されるこの外科器具セット100は、同一のスリーブ103を介して内視鏡30を使用する機会をもたらし、それによる標的の治療領域の検査が可能になるため、最初に機械アブレーションによる大まかな治療を実施し、治療領域を検査し、必要または所望に応じて第2の器具120を介した微細な熱アブレーションを実施することが可能になる。したがって、実施される治療および/または手術の質を高め、ならびに具体的には神経の損傷リスクの可能性を低下させる。
【0067】
さらに、図3に示すように、スリーブ103は、スリーブ103の長さ方向に沿って長手方向に延在するシャフトを備える。換言すれば、切開部内へスリーブ103の挿入方向に沿って。このシャフトは、標的の脊椎椎間関節または椎間関節包の上にスリーブ103を固定するように構成された固定セクション103Bを備える。図3に示すように、固定セクション103Bは、シャフトの遠位部分に位置決めされる。図示する固定セクション103Bは、1~4mmの範囲内の所定距離にわたりスリーブ103の遠位端部からスリーブ103内へと、具体的にはスリーブ103の長手方向に沿って延在する、3つの切込み部または凹部からなる。また、図3に示すように、スリーブ103は、第1の器具110、第2の器具120、および内視鏡130を挿入するまたは前進させるために使用される作業チャネル103Aをさらに備える。しかし、好ましくは、第1の器具110および第2の器具120は、同様に作業チャネル(図示せず)を備える内視鏡130に通して挿入または前進される。
【0068】
さらに図3から分かるように、ドリル110は、骨を切断することが可能な切断セクションを有するドリル部材110Aを備える。前記切断セクションは、ドリル部材110Aの遠位端部に位置する。図示するドリル110は、ドリル部材110Aの近位端部に設けられたハンドル110Bをさらに備え、ハンドル110Bは、球状部分を有し、この球状部分は、その後に直線状部分が続く、または直線状部分へと変化する(変わる)。これにより、ハンドル110Bは、外科医の手に快適にフィットするマッシュルーム形状になる。これらの両部分は、共に中空であるため、ハンドル110Bが軽量化される。さらに、この球状部分は、複数の穴を備えるため、ハンドル110Bのさらなる軽量化と、ハンドル110Bの触感の改善とが得られる。さらに、直線状部分は、外周部上に切欠部を備え、これらの切欠部により、外科医がハンドル110Bをしっかりと保持または把持することがさらに容易になる。
【符号の説明】
【0069】
100 外科器具セット
101 ガイドワイヤ(Kワイヤ)
102 拡張器
102A ガイドワイヤチャネル(拡張器)
103 スリーブ
103A 作業チャネル
103B 固定セクション
104 ハンドグリップ
110 第1の器具(機械アブレーション器具)
110A ドリル部材(第1の器具)
110B ハンドル(第1の器具)
120 第2の器具(電磁アブレーションおよび/または凝結器具)
130 内視鏡
200 外科器具(先行技術)
201 スリーブ
202 内視鏡
203 把持鉗子
300 脊柱
図1
図2
図3
【国際調査報告】