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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】細菌株及び組成物、併用薬物と使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20240313BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240313BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P1/04
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/10
A61K39/02
A61K45/00
A61K38/17
A61K38/26
C12N1/20 E ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561061
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 CN2021106579
(87)【国際公開番号】W WO2022213507
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110369840.5
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110370249.1
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523375537
【氏名又は名称】慕恩(広州)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MOON (GUANGZHOU) BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3rd Floor, B5 Building, No. 11 Kaiyuan Avenue, Guangzhou Science City, High-tech Industrial Development Zone Guangzhou, Guangdong 510535 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】林 詮盛
(72)【発明者】
【氏名】蒋 先芝
(72)【発明者】
【氏名】賢 一博
(72)【発明者】
【氏名】▲こう▼ 祖鵬
(72)【発明者】
【氏名】黄 宝家
(72)【発明者】
【氏名】孔 ▲苹▼
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼ 茜塋
(72)【発明者】
【氏名】趙 塋塋
(72)【発明者】
【氏名】肖 晨
(72)【発明者】
【氏名】張 騰勲
(72)【発明者】
【氏名】▲こう▼ 茜▲文▼
(72)【発明者】
【氏名】泰 利宏
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BA22
4B065CA44
4B065CA45
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA18
4C084CA43
4C084DC50
4C084NA05
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA03
4C085BA15
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC54
4C087CA08
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZA68
4C087ZA70
4C087ZA75
4C087ZC35
4C087ZC75
(57)【要約】
クリステンセネラ菌並びに組成物、及びその製薬使用を提供する。このクリステンセネラ菌は、肝臓機能障害及び関連疾患、消化管粘膜障害及び関連疾患、糖尿病、肥満症及び関連疾患を治療又は予防するために用いられることができる。血糖降下又は脂質降下薬と併用して、肝臓機能障害及び関連疾患、糖尿病、肥満及び関連疾患に対して、相乗的に効果を高める技術的効果を果たすこともできる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株の、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するための薬物の製造における使用。
【請求項2】
前記肝臓機能障害関連疾患は、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎と肝硬変のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
前記消化管粘膜障害とは、消化管粘膜の透過性の上昇、粘膜バリア作用の損傷であり、消化管粘膜障害関連疾患は、腸管壁侵漏、消化性潰瘍、胃腸炎、炎症性腸疾患のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
前記肥満関連疾患は、心血管疾患、高脂血症、インスリン抵抗性症候群、肥満に関連する胃食道逆流症と脂肪性肝炎のうちの少なくとも一つの疾患を含み、及び
前記糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、グルコース不耐症、脂質代謝異常、糖尿病性腎症合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病性眼障害、心血管疾患、糖尿病性足と妊娠糖尿病のうちの少なくとも一つの疾患を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも98.65%一致する16s rRNA配列を有し、
好ましくは、前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有し、及び
好ましくは、前記細菌株は、SEQ ID NO.1と99%、99.5%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記薬物は、凍結乾燥されており、
好ましくは、前記薬物は、薬学的に許容される一つ又は複数の賦形剤又はキャリアをさらに含み、及び
好ましくは、前記薬物は、ワクチン組成物である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株の細胞。
【請求項6】
組成物であって、請求項5に記載のクリステンセネラ菌株及び/又はその代謝産物を含み、及び
好ましくは、前記組成物は、薬学的に許容される賦形剤又はキャリアをさらに含む、ことを特徴とする組成物。
【請求項7】
前記賦形剤は、酸化防止剤、キレート剤、乳化剤、溶媒を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物の、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は症状を治療又は予防するための薬物の製造における使用であって、前記微生物は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌であり、前記血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする使用。
【請求項9】
前記血糖降下又は脂質降下薬は、GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体、GIP受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤のうちの少なくとも一つであり、
好ましくは、前記GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体は、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、経口投与型セマグルチド、ベナグルチド、リキシセナチドとエキセナチド週製剤から選択される少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記クリステンセネラ菌は、SEQ ID NO.1と少なくとも98.65%一致する16s rRNA配列を有し、
好ましくは、前記クリステンセネラ菌は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有し、及び
好ましくは、前記クリステンセネラ菌は、SEQ ID NO.1と99%、99.5%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記微生物は、寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株である、ことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
併用薬物であって、微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含み、前記微生物は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌であり、前記血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする併用薬物。
【請求項13】
請求項6又は7に記載の組成物又は請求項12に記載の併用薬物の、薬物又は製剤の製造における使用であって、前記薬物又は製剤は、
肝臓の重量を減少させることと、
初期脂肪肝炎病巣を治療することと、
肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせることと、
血清AST、ALTを低減させることと、
腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させることと、
哺乳類の体重を軽減させることと、
哺乳類の摂食量を減少させることと、
休薬後の肥満再発幅を遅らせることと、
哺乳類の体脂肪を低減させることと、
哺乳類の血清における総コレステロールレベル、低密度リポタンパク質とトリグリセリドレベルのうちの少なくとも一つの指標のレベルを低減させることと、
哺乳類の血清高密度リポタンパク質のレベルを向上させることと、
哺乳類の経口グルコース負荷損傷を改善することと、
哺乳類の空腹血糖を低減させることと、
哺乳類のHOMA-IR指標を低減させることと、
GLP-1感受性を補強することと、
腸管障害によるGLP-1RAの抵抗性及び関連副作用を回避することと、
消化管粘膜障害を修復することとから選択される少なくとも一つの使用に用いられる、ことを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか1項に記載のクリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株又は請求項5に記載のクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株及び/又はその代謝産物を含み、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するために用いられる、組成物。
【請求項15】
前記肝臓機能障害関連疾患は、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎と肝硬変のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
前記消化管粘膜障害とは、消化管粘膜の透過性の上昇、粘膜バリア作用の損傷であり、消化管粘膜障害関連疾患は、腸管壁侵漏、消化性潰瘍、胃腸炎、炎症性腸疾患のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
前記肥満関連疾患は、心血管疾患、高脂血症、インスリン抵抗性症候群、肥満に関連する胃食道逆流症と脂肪性肝炎のうちの少なくとも一つの疾患を含み、及び
前記糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、グルコース不耐症、脂質代謝異常、糖尿病性腎症合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病性眼障害、心血管疾患、糖尿病性足と妊娠糖尿病のうちの少なくとも一つの疾患を含む、ことを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも98.65%一致する16s rRNA配列を有し、
好ましくは、前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有し、及び
好ましくは、前記細菌株は、SEQ ID NO.1と99%、99.5%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する、ことを特徴とする請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
疾患又は病症を治療又は予防する方法であって、それを必要とする被験者に請求項14から16のいずれか1項に記載の組成物又は請求項6又は7に記載の組成物を投与することを含み、前記疾患又は病症は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つである、疾患又は病症を治療又は予防する方法。
【請求項18】
微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物であって、
前記微生物は、請求項1から4のいずれか1項に記載のクリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株又は請求項5に記載のクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株及び/又はその代謝産物であり、
前記血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数であり、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するために用いられる、併用薬物。
【請求項19】
疾患又は病症を治療又は予防する方法であって、それを必要とする被験者に請求項14から16のいずれか1項に記載の組成物又は請求項6又は7に記載の組成物又は請求項8から11のいずれか1項に記載の併用薬物又は請求項12又は18に記載の併用薬物を投与することを含み、前記疾患又は病症は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つである、疾患又は病症を治療又は予防する方法。
【請求項20】
請求項12又は18に記載の併用薬物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本開示は、出願番号が202110369840.5(出願日が2021年04月06日であり、発明名称が「細菌株及び組成物と使用」である)と202110370249.1(出願日が2021年04月06日であり、発明名称が「微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物」である)である中国特許出願の優先権を主張しており、その内容のすべては、援用により本開示に組み込まれている。
【0002】
本開示は、菌株の単離と応用技術分野に関し、具体的には、細菌株及び組成物、併用薬物と使用に関し、この併用薬物は、この細菌株と血糖降下又は脂質降下薬とを含む。
【背景技術】
【0003】
現在、肝臓疾患は、主に肝炎ワクチンの接種、飲酒の減少、食事構造の改善と身体鍛練の実施によって予防治療される。しかし、これらのポリシーは、往々にして予防作用を果たすことしかできず、且つ収益も少なく、効果も個人の体質によって異なり、一旦すでに発生した肝臓疾患に直面すると、どうすることもできないように見える。そのため、現在、肝臓疾患を効果的に予防治療することができる対応措施が急がれており、有効であり、且つ副作用が小さく、肝臓疾患を予防治療することができる方法又は薬物を開発する必要がある。
【0004】
消化管粘膜障害、特に腸管粘膜障害営養物質の消化と吸収に影響を与えるだけでなく、粘膜バリア機能と生体免疫機能に極めて不利な影響を与える。消化管粘膜障害に対して常用する中西結合薬物修復方法は、常に漢方薬の薬効が遅く、根治が難しく、再発しやすく、及び西洋薬が消化系に対して刺激作用と不良反応を起こしやすいなどの欠点を伴う。消化管粘膜障害の修復に対して薬効が速く、薬力が持続的であり、且つ毒性副作用のない薬物の開発は、急務となっている。
【0005】
糖尿病については、現在まだ根治方法がなく、主にやはり薬物治療の手段により糖尿病を制御する。しかし、現在の糖尿病の薬物治療は、経口薬物治療、例えばスルホニル尿素類薬物、ビグアナイド類血糖降下薬、αグルコシダーゼ阻害剤、インスリン増感剤など、及びインスリン注射治療を含む。複数の薬物は、T2D(2型糖尿病)の治療に用いられることができるが、薬物の治療効果は、人によって異なり、そして懸念される潜在的な副作用が存在し、副作用は、(1)吐き気、嘔吐と下痢を含む胃腸管の不良反応を引き起こすこと、(2)膵島の負担を重くし、膵炎を引き起こす可能性があること、(3)甲状腺腫大と甲状腺癌を引き起こす可能性があること、(4)他のいくつかの腸管、腎機能、低血糖などの副作用、及び(5)うつを引き起こす傾向があることを含む。そのため、有効であり、且つ副作用の小さい糖尿病を治療する方法又は薬物の開発は、急務となっている。
【0006】
肥満症の薬物治療は、すでに長い歴史があり、現代常用する痩せ薬は、リラグルチド、オルリスタット、シブトラミンとリモナバンなどを含む。しかし、多くの痩せ薬は、市場に制限され又は臨床応用から撤退しており、そのうちのいくつかの薬物が期待した効果を達成できないか、又はそのうちのいくつかの薬物が患者に深刻な不良反応を発生させるからである。そのため、有効であり、且つ副作用の小さい肥満症及びその関連疾患を治療する方法又は薬物の開発は、急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、以下を含み、例えば、上記技術問題を解決するために細菌株及び組成物、併用薬物と使用を提供し、この併用薬物は、微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む。
【0008】
腸管微生物の肥満症と糖尿病における新しい作用により、腸管微生物自体を利用して糖尿病、腸管微生物と抗糖尿病薬物との相互作用及びその薬物機能への影響などを改善することは、現在の研究の焦点となっている。一方では、腸管微生物は、短鎖脂肪酸の分泌などの経路を通じて宿主の代謝、免疫機能と脳機能に影響を与えることができ、これらは、人体健康に不可欠な作用を持つ。他方では、腸管微生物及びその代謝物の代謝活動は、薬物の代謝と薬効に影響を与え、且つ薬物は、腸管微生物の組成及びその代謝能力を操縦することもできる。
【0009】
本開示は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)を提供し、初期脂肪肝炎病巣を治療し、肝臓の脂肪蓄積を遅らせ、肝臓病変を緩和することができ、それによって肝臓機能障害及びその関連疾患を効果的に予防治療し、この菌株は、同時に消化管粘膜バリアを修復する機能を有し、生体の空腹血糖を低減させ、インスリンレベルを調節し、体重を低減させ、血中脂質四項を調節するなどの機能をさらに有し、それによって消化管粘膜障害及びその関連疾患、糖尿病、肥満症及び肥満症関連疾患を予防と治療する作用を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株の、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するための薬物の製造における使用を提供する。
【0011】
肝臓機能障害関連疾患は、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肝繊維化、肝硬変と肝癌のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
消化管粘膜障害とは、消化管粘膜の透過性の上昇、粘膜バリア作用の損傷であり、消化管粘膜障害関連疾患は、腸管壁侵漏、消化性潰瘍、胃腸炎、炎症性腸疾患のうちの少なくとも一つの疾患を含み、及び
肥満症関連疾患は、肥満症、メタボリック症候群、心血管疾患、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧、インスリン抵抗性症候群、肥満に関連する胃食道逆流症と脂肪性肝炎のうちの少なくとも一つの疾患を含む。
【0012】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも98.65%一致する16s rRNA配列を有する。
【0013】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有する。
【0014】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、細菌株は、SEQ ID NO.1と99%、99.5%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する。
【0015】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、凍結乾燥されている。
【0016】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、薬学的に許容される一つ又は複数の賦形剤又はキャリアをさらに含む。
【0017】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、ワクチン組成物である。
【0018】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、経口投与、注射投与又は胃内投与のために配合される。
【0019】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、グルコース不耐症、脂質代謝異常、糖尿病性腎症合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病性眼障害、心血管疾患、糖尿病性足と妊娠糖尿病のうちの少なくとも一つの疾患を含む。
【0020】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物の剤形は、錠剤、丸薬、散剤、懸濁剤、ゲル、エマルジョン、クリーム、顆粒剤、ナノ粒子、カプセル、座薬、注射剤、スプレー剤と注射剤を含む。
【0021】
本開示は、寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株の細胞を提供する。
【0022】
本開示は、組成物を提供し、この組成物は、上記クリステンセネラ菌株及び/又はこの菌株の代謝産物を含む。
【0023】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記組成物は、薬学的に許容される賦形剤又はキャリアをさらに含む。
【0024】
本開示は、微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物の、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は症状を治療又は予防するための薬物の製造における使用を提供し、前記微生物は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌であり、前記血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1(即ちGLP-1)の経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である。
【0025】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記血糖降下又は脂質降下薬は、GLP-1受容体アゴニスト(即ちGLP-1RA)又はGLP-1模倣体、GIP受容体アゴニスト(即ちグルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド受容体アゴニストであり、胃抑制ポリペプチドとも呼ばれる)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(即ちDPP-4)阻害剤のうちの少なくとも一つである。
【0026】
GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体は、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、経口投与型セマグルチド、ベナグルチド、リキシセナチドとエキセナチド週製剤から選択される少なくとも一つである。
【0027】
本開示は、併用薬物を提供し、この併用薬物は、血糖降下又は脂質降下薬と微生物とを含み、微生物は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌である。血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である。
【0028】
本開示は、上記のような組成物又は上記のような併用薬物の、薬物又は製剤の製造における使用を提供し、薬物又は製剤は、
肝臓の重量を減少させることと、
初期脂肪肝炎病巣を治療することと、
肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせることと、
血清AST、ALTを低減させることと、
腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させることと、
哺乳類の体重を軽減させることと、
哺乳類の摂食量を減少させることと、
休薬後の肥満再発幅を遅らせることと、
哺乳類の体脂肪を低減させることと、
哺乳類の血清における総コレステロールレベル、低密度リポタンパク質とトリグリセリドレベルのうちの少なくとも一つの指標のレベルを低減させることと、
哺乳類の血清高密度リポタンパク質のレベルを向上させることと、
哺乳類の経口グルコース負荷損傷を改善することと、
哺乳類の空腹血糖を低減させることと、
哺乳類のHOMA-IR指標を低減させることと、
GLP-1感受性を補強することと、
インスリン感受性を補強することと、
腸管障害によるGLP-1RAの抵抗性及び関連副作用を回避することと、及び
消化管粘膜障害を修復することとから選択される少なくとも一つの使用に用いられる。
【0029】
本開示は、組成物を提供し、この組成物は、上記クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株又は上記クリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株及び/又はその代謝産物を含み、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するために用いられる。
【0030】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記賦形剤は、酸化防止剤、キレート剤、乳化剤、溶媒を含む。
【0031】
本開示は、微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物を提供し、この微生物は、上記のクリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株又は上記のクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株及び/又はその代謝産物であり、この血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数であり、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するために用いられる。
【0032】
本開示は、疾患又は病症を治療又は予防する方法を提供し、この方法は、それを必要とする被験者に上記組成物又は上記の併用薬物を投与することを含み、この疾患又は病症は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つである。
【0033】
本開示は、キットを提供し、このキットは、上記の併用薬物を含む。
【発明の効果】
【0034】
本開示は、以下の有益な効果を有する。
【0035】
本開示によるクリステンセネラ菌は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満症及び肥満症関連疾患を治療又は予防するために用いられることができる。出願人の験証によると、本開示によるクリステンセネラ菌は、腎臓に対して毒性副作用がなく、且つ、肝臓の重量を減少させ、初期脂肪肝炎病巣を治療し、肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせ、血清AST、ALTを低減させ、腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させることができることを含むが、それらに限らない。クリステンセネラ菌は、生体の空腹血糖を低減させ、且つ生体を明らかに改善してインスリン抵抗レベルを得ることもでき、糖尿病を予防治療する作用を有する。なお、クリステンセネラ菌は、哺乳類の体脂肪を低減させ、肥満症患者の代謝機能を向上させることもできる。クリステンセネラ菌は、損傷した消化管粘膜を修復し、粘膜障害関連疾患を予防治療する機能をさらに有する。
【0036】
本開示による血糖降下又は脂質降下薬と微生物との併用薬物は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患を治療又は予防するために用いられることができる。出願人の験証によると、本開示によるGLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体と微生物との併用薬物は、相乗的に効果を高める技術的効果を果たし、この併用薬物は、微生物の単独投与又はGLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体の単独投与よりも優れた治療効果を有し、微生物は、GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体の痩せ効果を補強し、耐糖能異常を改善し、空腹血糖を低減させることができる。なお、上記併用薬物は、腎臓に対して毒性副作用がなく、肝臓の重量を減少させることができる。併用薬物は、GLP-1感受性を補強し、腸管障害によるGLP-1RAの抵抗性及び関連副作用を回避することに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本開示の実施の形態の技術案をより明瞭に説明するために、以下は、実施の形態において使用する必要がある図面を簡単に紹介し、理解すべきこととして、以下の図面は、本開示のいくつかの実施例を示しているだけであり、そのため、範囲を限定するものとみなされるべきではなく、当業者にとって、創造的な労力を払うことなく、これらの図面に基づいて他の関連する図面を得ることもできる。
図1】単離された菌株のマクロ形態図である。
図2】単離された菌株のミクロ形態図である。
図3】単一コロニー嫌気性培養後のマクロプレート図である。
図4】系統発育進化樹である。
図5】NASH肝障害のスコア基準である。
図6】MNO-863による肥満モデルマウスの肝臓重量への影響である。
図7】肝臓組織のHE染色の結果図である。
図8】肝臓組織のオイルレッド染色の結果図である。
図9】NAFLD/NASH肝臓病理学的スコアである。
図10】肝臓脂肪変性程度の統計結果図である。
図11】肝小葉炎症スコアの統計結果図である。
図12】肝臓バルーニングスコアの統計結果図である。
図13】血清におけるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルである。
図14】マウスの腹部白色脂肪炎症性病変の顕微鏡図及び総面積統計図である。
図15】マウスの血中クレアチニン(CREA)、血中尿素(UREA)及び血中尿酸(UA)の含有量検出結果図である。
図16】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの経口グルコース負荷への影響である。
図17】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの空腹血糖(mmol/L)への影響である。
図18】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスのHOMA-IR指数への影響である。
図19】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの体重(g)への影響である。
図20】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの体重(%)への影響である。
図21】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの摂食量(g)への影響である。
図22】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスのTC、TG、LDL、HDL-Cへの影響である。
図23】MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの鼠径部脂肪、皮下脂肪、副睾丸脂肪への影響である。
図24】HFD対照群のマウス結腸組織の顕微鏡図である。
図25】HFD対照群のマウス回腸組織の顕微鏡図である。
図26】MNO-863処理群のマウス結腸組織の顕微鏡図である。
図27】MNO-863処理群のマウス回腸組織の顕微鏡図である。
図28】NCD対照群のマウス結腸組織の顕微鏡図である。
図29】NCD対照群のマウス回腸組織の顕微鏡図である。
図30】MNO-863とLiraglutideとの併用による肥満マウスの4週間の介入期間の絶対体重への影響及び体重変化率である。
図31】4週間の介入後の体重及び体重変化率である。
図32】4週間の介入と4週間の休薬後の体重及び体重変化率である。
図33】4週間の休薬肥満再発後の鼠径部脂肪重量である。
図34】MNO-863菌株の単独使用及び菌株とLiraglutideとの併用による肥満マウスのグルコース耐性への影響である。
図35】MNO-863菌株の単独使用及び菌株とLiraglutideとの併用による肥満マウスのグルコース高血糖への影響である。
図36】MNO-863菌株による肥満マウスの4週間の休薬肥満再発後の高血糖への影響作用である。
図37】MNO-863菌株の単独使用及び菌株とLiraglutideとの併用による4週間の休薬肥満再発後の肝臓重量への影響結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで、本開示の実施の形態の参照を詳細に提供し、その一つ又は複数の実例は、以下のように記述される。各実例は、本開示を制限するものではなく、解釈として提供される。実際には、当業者にとって、明らかなこととして、本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、本開示を様々に修正と変更することができる。例えば、一つの実施の形態の一部として説明又は記述される特徴は、別の実施の形態に用いられ、さらなる実施の形態を生成することができる。
【0039】
クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株の、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満症及び肥満症関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するための薬物の製造における使用である。
【0040】
微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物の、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は症状を治療又は予防するための薬物の製造における使用であって、前記微生物は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌であり、前記血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1(即ちGLP-1)の経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である。
【0041】
肝臓機能障害関連疾患は、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎と肝硬変のうちの少なくとも一つの疾患を含む。
【0042】
他の実施の形態では、肝臓機能障害関連疾患は、肝繊維化と肝癌とをさらに含む。
【0043】
消化管粘膜障害とは、消化管粘膜の透過性の上昇、粘膜バリア作用の損傷であり、消化管粘膜障害関連疾患は、腸管壁侵漏、消化性潰瘍、胃腸炎、炎症性腸疾患などの疾患のうちの少なくとも一つの疾患を含み、説明する必要のあることとして、腸管壁侵漏は、腸管の透過性の増加として表現される。
【0044】
肥満症関連疾患は、心血管疾患、高脂血症、インスリン抵抗性症候群、肥満に関連する胃食道逆流症と脂肪性肝炎のうちの少なくとも一つの疾患を含む。
【0045】
他の実施の形態では、肥満症関連疾患は、肥満症、メタボリック症候群、高コレステロール血症、高血圧をさらに含む。
【0046】
他の実施の形態では、上記「肥満症関連疾患」は、過食症(overeating)、暴食症(binge eating)、飢餓症、高血圧、糖尿病、血漿インスリン濃度上昇、インスリン抵抗性、高脂血症、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性症候群、肥満に関連する胃食道逆流症、動脈硬化症、高コレステロール血症、高尿酸血症、下背部痛、心臓肥大と左心室肥大、脂肪代謝障害、非アルコール性脂肪性肝炎、心血管疾患と多嚢胞性卵巣症候群、及び肥満に関連する疾患を有し、体重軽減の希望を含むそれらの対象から選択されてもよい。
【0047】
糖尿病の主な3つのタイプは、1型糖尿病(T1D)、2型糖尿病(T2D)と妊娠糖尿病(GDM)である。1型糖尿病は、自己免疫障害又は特発性原因による引き起こしたものであり、膵島機能の絶対破壊を特徴とする糖尿病であり、児童と青少年に多く発生し、インスリンで治療しなければ、満足な治療効果を得られず、そうでなければ生命に危害を及ぼす。2型糖尿病は、炭水化物/脂肪代謝異常を特徴とする多因子症候群であり、一般的には、高血糖、高血圧とコレステロール異常を含む。2型糖尿病は、インスリンが効果的に作用を発揮できない(受容体との結合含有量が少ない)ことによるものであるため、空腹血糖を検査するだけでなく、食後2時間の血糖を観察し、特に膵島機能検査を行うべきである。妊娠期間の糖尿病は、2つの状況があり、1つは、妊娠前にすでに糖尿病を患っていると診断され、「糖尿病合併妊娠」と呼ばれ、及び、もう1つは、妊娠前に糖代謝が正常であり又は潜在的な耐糖能減退があり、妊娠期になってから出現し又は診断された糖尿病であり、「妊娠糖尿病(GDM)」とも呼ばれ、糖尿病妊婦の80%以上は、GDMである。
【0048】
説明する必要のあることとして、上記の製薬使用の糖尿病に対する応用は、1型糖尿病(T1D)、2型糖尿病(T2D)と妊娠糖尿病(GDM)の治療又は予防を含むが、それらに限らない。
【0049】
さらに説明する必要のあることとして、上記の、肥満及び肥満関連疾患を治療する使用は、本開示による細菌株と血糖降下又は脂質降下薬との併用薬物を含むだけでなく、他の活性化合物をさらに含み、他の活性化合物は、2つ又は複数の他の活性化合物の結合であってもよい。例えば、上記併用薬物と抗肥満症化合物との併用では、抗肥満症化合物は、例えば、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、神経ペプチドY5阻害剤とβ3アドレナリン受容体アゴニストである。
【0050】
なお、上記併用薬物とコレステロール低減剤との併用では、コレステロール低減剤は、例えば、(i)HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ジバスタチン(rivastatin)、ピタバスタチン、ロスバスタチンと他のスタチン系薬物)、(ii)キレート化合物(コレスチラミン、コレスチポールと架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又は他の塩、(iv)PPARα激動剤、例えばフェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラートとベザフィブラート)、(v)PPARα/γ二重作用性アゴニスト、例えばKRP-297、(vi)コレステロール吸収阻害剤、例えばβ-シトステロールとエゼチミブ、(vii)アセチルCoA、コレステロールアシル転移酵素阻害剤、例えばアバシミベ、及び、(viii)酸化防止剤、例えばプロブコールである。
【0051】
他の実施の形態では、他の炎症用の薬物、例えばアスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、グルココルチコステロイド、スルファサラジンとシクロオキシゲナーゼII選択的阻害剤と併用してもよい。
【0052】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも98.65%一致する16s rRNA配列を有する。例えば、SEQ ID NO.1と98.7%、98.75%、98.8%、98.85%、98.9%、98.95%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する。
【0053】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、クリステンセネラ菌細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有する。
【0054】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、クリステンセネラ菌細菌株は、SEQ ID NO.1と99%、99.5%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する。
【0055】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、凍結乾燥されている。凍結乾燥は、細菌の送達を許容する安定な組成物を製造する効果的で便利な技術である。上記薬物は、凍結乾燥により粉末化又は錠剤化することによってコーティング又は輸送が容易である。
【0056】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、薬学的に許容される一つ又は複数の賦形剤又はキャリアをさらに含む。
【0057】
薬学的に許容される賦形剤は、酸化防止剤、キレート剤、乳化剤、溶媒などであってもよい。
【0058】
薬物の剤形は、錠剤、丸薬、散剤、懸濁剤、ゲル、エマルジョン、クリーム、顆粒剤、ナノ粒子、カプセル、座薬、注射剤、スプレー剤と注射剤を含むが、それらに限らない。
【0059】
上記薬物は、その薬学的に許容される塩、その溶媒化合物又はその立体異性体をさらに含み、一つ又は複数の薬用担体及び/又は希釈剤と形成される薬物組成物は、当分野で既知の方式で臨床的又は薬学的に許容されるいずれか一つの剤形に配合され、経口、注射又は胃内投与などの方式でこのような治療を必要とする患者に投与されてもよい。経口投与に用いられる場合、通常の固形製剤、例えば錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤などに製造されてもよく、経口液剤、例えば経口液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などに製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適切な充填剤、粘着剤、崩壊剤、潤滑剤などを加えてもよい。
【0060】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、ワクチン組成物である。
【0061】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、経口投与、注射投与又は胃内投与のために配合される。マウス胃内投与実験の結果、本開示の細菌株の投与は、糖尿病治療薬であるリラグルチド(Liraglutide)に相当する治療効果を示す。
【0062】
他の一つ又は複数の実施の形態では、上記薬物は、薬学的に許容される塩をさらに含み、「薬学的に許容される塩」とは、以下の塩であり、それは、正しい医療判断内において、ヒトと下等動物の組織との接触に適切に用いられ、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを有さず、且つ合理的な利益/リスク比に見合う。
【0063】
寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株の細胞である。
【0064】
本開示によるクリステンセネラ菌Christensenella sp.MNO-863は、広東省広州市の一人の漢族の健康な男性ボランティアの糞便サンプルから単離されたものである。2020年8月4日に広東省微生物寄託センターに寄託された。寄託番号は、GDMCC No:61117であり、寄託住所は、広州市先烈中路100号大院59号棟5階、広東省微生物研究所であり、検出結果は、生存であり、その分類学名称は、Christensenella sp.である。
【0065】
マクロ形態:37℃で72h嫌気的に培養し、コロニーは、淡黄色、円形であり、表面が潤っており、半透明であり、縁が整然している。菌体は、短い棒状を呈し、芽胞がなく、鞭毛がなく、運動がなく、0.3-0.4μm×0.6-1.1μmであり、単一又は対に配列し、グラム陰性である。コロニーの特徴:MNO-863は、104プレートにおいて、37℃で72h嫌気的に培養し、単一コロニーは、円形微突起を呈し、透明、白色であり、表面が滑りであり、コロニー直径は、約0.46-0.50mmである。
【0066】
本開示は、組成物をさらに提供し、この組成物は、上記クリステンセネラ菌株及び/又はこの菌株の代謝産物を含む。
【0067】
上記のクリステンセネラ菌株は、上記の寄託番号GDMCC No:61117で寄託された菌株を直接培養して得られたものであってもよく、子株(子孫株)又は元の菌株(サブクローニング菌株)から培養された菌株、例えば、単離細胞であってもよい。
【0068】
説明する必要のあることとして、本開示によるクリステンセネラ菌株は、その誘導体をさらに含み、例えば、その生物学的活性を消去することなく遺伝子レベルでそれを改変することができる。上記の誘導体菌株は、治療活性を有し、且つ寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株に相当する活性を有する。
【0069】
本開示の一つ又は複数の実施の形態では、上記組成物は、薬学的に許容される賦形剤又はキャリアをさらに含む。
【0070】
上記のような組成物の、薬物又は製剤の製造における使用であって、この薬物又は製剤は、
肝臓の重量を減少させることと、初期脂肪肝炎病巣を治療することと、肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせることと、血清AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)を低減させることと、腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させることと、哺乳類の体重を軽減させることと、哺乳類の摂食量を減少させることと、哺乳類の体脂肪を低減させることと、哺乳類の血清における総コレステロールレベル、低密度リポタンパク質とトリグリセリドレベルのうちの少なくとも一つの指標のレベルを低減させることと、哺乳類の血清高密度リポタンパク質のレベルを向上させることと、哺乳類の経口グルコース負荷損傷を改善することと、哺乳類の空腹血糖を低減させることと、哺乳類のHOMA-IR指標を低減させることと、消化管粘膜障害を修復することとから選択される少なくとも一つの使用に用いられる。
【0071】
以下は、肝臓障害及びその関連疾患の治療における使用であり、即ち、肝臓の重量を減少させ、初期脂肪肝炎病巣を治療し、肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせ、血清AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルを低減させ、及び、腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させることである。
【0072】
以下は、肥満及びその関連疾患の治療又は予防における使用であり、即ち、哺乳類の体重を軽減させ、哺乳類の摂食量を減少させ、哺乳類の体脂肪を低減させ、哺乳類の血清における総コレステロールレベル、低密度リポタンパク質とトリグリセリドレベルのうちの少なくとも一つの指標のレベルを低減させ、哺乳類の血清高密度リポタンパク質のレベルを向上させることである。
【0073】
以下は、糖尿病の治療又は予防における応用又は使用であり、即ち、哺乳類の経口グルコース負荷損傷を改善し、哺乳類の空腹血糖を低減させ、哺乳類のHOMA-IR指標を低減させることである。
【0074】
上記の消化管粘膜障害の修復とは、胃腸管粘膜障害の修復であり、典型的には腸管粘膜障害の修復である。腸管粘膜障害の修復とは、腸管粘膜組織の構造完全性の回復、腸絨毛萎縮程度と菌糸数の低減の指標のうちの少なくとも一つを達成することである。
【0075】
併用薬物であって、この併用薬物は、微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含み、微生物は、クリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌である。血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である。
【0076】
上記血糖降下又は脂質降下薬は、GLP-1受容体アゴニスト(即ちGLP-1RA)又はGLP-1模倣体、GIP受容体アゴニスト(即ちグルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド受容体アゴニスト、胃抑制ポリペプチドとも呼ばれる)、ジペプチジルペプチダーゼ-4(即ちDPP-4)阻害剤のうちの少なくとも一つである。GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体は、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、経口投与型セマグルチド、ベナグルチド、リキシセナチドとエキセナチド週製剤から選択される少なくとも一つである。
【0077】
上記の併用薬物の、薬物又は製剤の製造における使用であって、薬物又は製剤は、
肝臓の重量を減少させることと、
哺乳類の経口グルコース負荷損傷を改善することと、
哺乳類の空腹血糖を低減させることと、
哺乳類の体重を軽減させることと、
哺乳類の摂食量を減少させることと、
休薬後の肥満再発幅を遅らせることと、
哺乳類の血清における総コレステロールレベル、低密度リポタンパク質コレステロールレベルとトリグリセリドレベルのうちの少なくとも一つの指標のレベルを低減させることと、
GLP-1感受性を補強することと、
腸管障害によるGLP-1RAの抵抗性及び関連副作用を回避することとから選択される少なくとも一つの使用に用いられる。
【0078】
腸内細菌叢の凝集は、GLP-1薬物の無効と抵抗性を招きやすいが、発明者の提案によってプロバイオティクスとGLP-1とを併用することによって、GLP-1感受性を補強し、腸管障害によるGLP-1RAの抵抗性及び関連副作用を回避することができる。
【0079】
本開示の実施例の目的、技術案と利点をより明瞭にするために、以下は、本開示の実施例における技術案を明瞭、完全に記述する。実施例に具体的な条件が明記されていない場合、通常の条件又は製造業者が提案する条件に従って行う。使用される試薬又は機器は、生産メーカーが明記されていない場合、いずれも市販で購入することができる通常の製品である。
【0080】
以下は、実施例を結び付けて、本開示の特徴と性能をさらに詳細に記述する。
【0081】
実施例1
本実施例は、クリステンセネラ菌Christensenella sp.MNO-863の単離と同定を提供した。
【0082】
(1)MNO-863の単離
本開示のクリステンセネラ菌Christensenella sp.MNO-863は、広東省広州市の一人の漢族の健康な男性ボランティアの糞便サンプルから単離されたものであり、サンプルを採取した時にこのボランティアは、最初の3ヶ月間抗生物質をしていなかった。
【0083】
生物安全キャビネットにおいて生理食塩水を無菌の10ml遠心管に分けて入れ、24h前に嫌気性血液プレート(江門凱林嫌気性血液寒天培地、粤械注準20172400940)と無菌生理食塩水を嫌気作業台に移し、5-7個の無菌のガラスビーズをすでに凝固した嫌気性血液プレートに入れた。
【0084】
ボランティアの新鮮な糞便サンプルを適量に取って無菌保存液(3%PEG溶液、即ち30gのポリエチレングリコール3350を秤量して1000mLの生理食塩水に溶解し、121℃、15min条件でオートクレーブ滅菌した)を含有するサンプル保存管に置き、ボルテックスミキサーで10分間揺らして均一に混合し、その後、嫌気性ワークステーションにおいて1mLの溶液を吸引し、無菌生理食塩水で10-6希釈度に希釈し、0.1mLの希釈菌液を吸引して嫌気性血液寒天プレートに塗布し、嫌気性ワークステーションにおいて37℃で72時間培養した。分画線法を採用し、無菌楊枝で異なる形態の単一コロニーを選んで嫌気性血液寒天プレートにおいて線を引き、単離培養した。72時間培養した後、分画プレートにおいて単離効果の良いコロニーを抽出して継代培養を行った。
【0085】
(2)MNO-863の同定
(1)MNO-863の微生物学的特徴:
微生物学的特徴を観察するためにMNO-863を固体プレート塗布及び液体培養し、菌株塗布プレートと液体培養溶液は、104培地を使用し、この培地の1Lの処方は、以下の表1に示すとおりである。
【0086】
表1 104培地の処方表。
【0087】
形態学的特徴:図1に示すマクロ形態を参照すると、37℃で72h嫌気的に培養し、コロニーは、淡黄色、円形であり、表面が潤っており、半透明であり、縁が整然していた。
【0088】
ミクロ形態:MNO-863を104培地のプレートにおいて、37℃で72h嫌気的に培養し、MNO-863に対してグラム染色(図2における上図)と芽胞染色鏡検(図2における下図)を行った。図2を参照すると、菌体は、短い棒状を呈し、芽胞がなく、鞭毛がなく、運動がなく、0.3-0.4μm×0.6-1.1μmであり、単一又は対に配列し、グラム陰性である。
【0089】
コロニーの特徴:MNO-863は、104培地のプレートにおいて、37℃で72h嫌気的に培養し、単一コロニーは、円形微突起を呈し、透明、白色であり、表面が滑りであり、コロニー直径は、約0.46-0.50mm(図3参照)である。
【0090】
単離された菌株の生理生物化学的特徴の同定を継続した。MNO-863は、好気性条件で成長せず、嫌気性条件で良好に成長し、最適成長温度は、37℃である。API 20A反応キットを用いてMNO-863及び標準菌株Christensenella minuta(DSM 22607)を測定し、基質の利用状況を比較分析した。
【0091】
試験結果を表2に示し、表2から分かるように、単離されたMNO-863は、標準菌株DSM 22607の生理生物化学的特徴とほぼ一致し、基質がグリセロール、ゼラチン加水分解、マンノース、マンニトールとサリシンである場合に差があった。
【0092】
表2 MNO-863及び標準菌株DSM 22607による基質の利用状況の比較表。
上表における符号の説明:「+」、陽性、「+w」、弱陽性、「-」、陰性である。
【0093】
細胞脂肪酸の分析の実施:ガスクロマトグラフィー法を用いて培養後のMNO-863及び標準菌株Christensenella minuta(DSM 22607)のリン脂質脂肪酸の組成と含有量をそれぞれ比較分析した。比較分析結果を表3に示し、表3から分かるように、標準菌株に比べて、本開示の単離されたMNO-863の細胞脂肪酸組成の差が明らかである。
【0094】
表3 細胞脂肪酸分析結果表。
【0095】
(2)核酸の分析同定
16srRNAシーケンシング:
MNO-863菌株の配列に対して16S配列断片(増幅プライマーとシーケンシングプライマーは、27F:5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’と1492R:5’-GGTTACCTTGTTACGACTT-3’である)を測定し、16s rRNAの測定結果は、配列SEQ ID NO.1に示すとおりであり、
1 AGTCGAACGA AGTTGCTCTT TGTGAAGCCC TCGGGTGGAA CTGCGAGTAT
51 ACTTAGTGGC GGACGGGTGA GTAACGCGTG AGCAATCTGC CCTGCAATGG
101 GGGACAACAG TTGGAAACGA CTGCTAATAC CGCATGAGAC CACGAAACCG
151 CATGGTTTTG AGGTAAAAGG ATTTATTCGA TGCAGGATGA GCTCGCGTCC
201 CATTAGATAG TTGGTGAGGT AACGGCCCAC CAAGTCAACG ATGGGTAGCC
251 GACCTGAGAG GGTGATCGGC CACACTGGAA CTGAGACACG GTCCAGACTC
301 CTACGGGAGG CAGCAGTGGG GAATATTGGG CAATGGGGGA AACCCTGACC
351 CAGCAACGCC GCGTGAGGGA AGAAGGTCTT CGGATTGTAA ACCTTTGTCC
401 TATGGGACGA AACAAATGAC GGTACCATAG GAGGAAGCTC CGGCTAACTA
451 CGTGCCAGCA GCCGCGGTAA TACGTAGGGA GCAAGCGTTG TCCGGAATTA
501 CTGGGCGTAA AGGGTGCGTA GGTGGCTATG TAAGTCAGAT GTGAAAGACC
551 GGGGCTTAAC CCCGGGGTTG CATTTGAAAC TGTGTGGCTT GAGTACAGGA
601 GAGGGAAGTG GAATTCCTAG TGTAGCGGTG AAATGCGTAG ATATTAGGAG
651 GAACACCAGT GGCGAAGGCG ACTTTCTGGA CTGTAACTGA CACTGAAGCA
701 CGAAAGCGTG GGGAGCAAAC AGGATTAGAT ACCCTGGTAG TCCACGCCGT
751 AAACGATGGA TACTAGGTGT GGGGCCCGAT AGGGTTCCGT GCCGAAGCTA
801 ACGCATTAAG TATCCCGCCT GGGGAGTACG ATCGCAAGGT TGAAACTCAA
851 AGGAATTGAC GGGGGCCCGC ACAAGCAGCG GAGCATGTGG TTTAATTCGA
901 AGCAACGCGA AGAACCTTAC CAAGGCTTGA CATCCTCTGA CGACTGTAGA
951 GATACAGTTT CCCTTCGGGG CAGAGAGACA GGTGGTGCAT GGTTGTCGTC
1001 AGCTCGTGTC GTGAGATGTT GGGTTAAGTC CCGCAACGAG CGCAACCCTT
1051 ATTGCTAGTT GCCAGCGCGT AAAGGCGGGA ACTCTAGTGA GACTGCCGGG
1101 GACAACTCGG AGGAAGGTGG GGACGACGTC AAATCATCAT GCCCCTTATG
1151 TCTTGGGCTA CACACGTGCT ACAATGGCCG GTACAAAGGG CAGCGAACCC
1201 GTAAGGGGAA GCGAATCTCA AAAAGCCGGT CCCAGTTCGG ATTGTGGGCT
1251 GCAACCCGCC CACATGAAGT CGGAGTTGCT AGTAATCGCG AATCAGCATG
1301 TCGCGGTGAA TGCGTTCCCG GGCCTTGTAC ACACCGCCCG TCACACCACG
1351 GAAGTTGGGA GCACCCGAAG CCAGTGGCTT AACCGTAAGG AGAGAGC
【0096】
進化分析:
MNO-863に対して全ゲノムシーケンシングを行い、MEGA5.0ソフトウェアを用いて、近接ライゲーションアッセイ法により「MNO-863」と関連種の16S rDNA配列系統発育樹を表示し、1000回の類似度反復計算を行い、結果をNCBIにおけるクリステンセネラ属菌(Christensenellaceae family)の標準菌株ゲノム配列と互いに比較した。系統発育樹の表示によると(図4参照)、MNO-863と三つの標準菌株Christensenella minuta(DSM 22607)、Christensenella timonensis(Marseille-P2437)及びChristensenella massiliensis(Marseille-P2438)は、同一の分岐にあり、MNO-863がクリステンセネラ菌属(Christensenella sp.)範囲内に属する種であることを示した。
【0097】
以上の従来の微生物の形態分析と核酸分析の方式による同定、及び標準菌株との比較結果によると、分類学の角度からMNO-863がChristensenella属に属する種であると考えられてもよく、Christensenella sp.MNO-863と命名された。2020年8月4日に広東省微生物寄託センターに寄託された。寄託番号は、GDMCC No:61117であり、寄託住所は、広州市先烈中路100号大院59号棟5階、広東省微生物研究所であり、検出結果は、生存である。分類学名称は、Christensenella spである。
【0098】
実施例2
本実施例は、MNO-863の、肝臓機能障害及びその関連疾患の治療又は予防における使用を検証するために、その高脂肪食誘導肥満マウスモデルにおけるインビボ試験を行った。
【0099】
実験材料:
(1)実験動物:C57BL/6J雄マウス(江蘇集萃薬康生物科技有限公司より購入)32匹を購入し、正常飼育マウス、5週齢である。マウス成長過程は、同一の環境にあり、ここで、8匹にSPF級のラット・マウス維持飼料(広州市瀚程実験器材有限公司)を与え、残りの24匹にD12492高脂肪飼料(パーカー社)を与え、約8-10週間給餌した後、体重を測り、食誘導肥満モデルのモデル形成標準の体重は、38.00±2.00gに達した。
【0100】
(2)供試菌株:嫌気的に培養されたMNO-863であり、培地は、実施例1における104液体培地であり、37℃の嫌気性条件で48h培養し、菌の濃度が約1011CFU/mLのオーダーになってからのみ、実験群の胃内投与とすることができる。菌液を4℃の条件で嫌気的に貯蔵した。
【0101】
(3)PBSリン酸緩衝食塩水:弱酸及びその塩、弱アルカリ及びその塩からなる混合溶液であり、補強された酸又は強アルカリによる溶液のペーハーへの影響をある程度で相殺し、軽減させることができ、それによって溶液のpH値が相対的に安定しているように維持した。PBSリン酸緩衝食塩水の処方は、以下の表4に示すとおりである。
【0102】
表4 PBSリン酸緩衝食塩水処方
【0103】
試験過程:
(1)試験グループ分け
SPF級のラット・マウス維持飼料を与えられた8匹のマウスを完全無作為に2ケージに分け、4匹/ケージとし、第一群とした。24匹の肥満マウスから体重が38.00g±2.00gに達したマウス16匹を選別し、2群(第二群と第三群として)に分け、群ごとに8匹で、4匹/ケージとした。第一群は、通常の飼料を給餌した対照群(NCD-対照群)であり、第二群は、高脂肪食誘導肥満マウスモデル群(HFD-対照群)であり、第三群は、菌剤治療群(MNO-863)であり、第二群と第三群に高脂肪飼料を給餌し、グループ分け状況は、表5に示すとおりである。動物をグループ分けした後に仮想投与を開始し、1週間後に投与を開始し、第一群と第二群に同量のPBSリン酸緩衝食塩水を胃内投与し、第三群は、MNO-863供試菌株を用いて胃内投与介入を行い、介入を4週間続けた。胃内投与菌液の量は、0.2mL/10gマウスの体重である。それぞれモデル作成の前後、介入の前後3日ごとにマウスの体重、状態、摂食量などのデータを記録した。投与終了後、動物を解剖し組織を採取した。実験動物の使用は、動物福祉に注目し、「減少、代替と最適化」の原則に従い、当機関の実験動物倫理委員会の承認を得た。試験過程において実験動物倫理委員会の監督検査を受けた。
【0104】
表5 試験グループ分け
【0105】
すべての動物は、試験期間に死亡した動物、安楽死した動物と試験終了に処刑された動物を含み、いずれも大まかな解剖検査を行い、各動物の大まかな病理学的変化を記録する必要があった。肝臓の体重を測り、大葉肝臓のうちの1本を切り取ってホルマリン溶液に置き、残りの組織を液体窒素で急速凍結した後、-80℃に保存した。その後、肝臓をパラフィン包埋した肝臓病理学的切片に作製し、HE染色、Masson染色及びオイルレッド染色を行い、元拡大時にキャプチャした顕微写真をスコアすることによって肝臓組織とNAS病理学的判読を評価した。NASH肝障害スコアシステム(Kleiner DE、Brunt EM、Van NM、Behling C、Contos MJ、Cummings OWら、Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology 2005、41:1313-21.)(Brunt EM.Histopathology of non-alcoholic fatty liver disease.Clin Liver Dis 2009、13:533-44.)に基づいてスコアし、スコア基準は、図5に示すとおりである(0-2点:非NASH、3-4点:所属不明、5-8:NASH)。
【0106】
実験結果:
MNO-863による肥満モデルマウスの肝臓重量への影響は、図6に示すとおりであり、HFD対照群に比べて、MNO-863処理群は、肥満マウスの肝臓重量を有意に減少させ、正常NCD対照群のマウスの肝臓重量レベルまで回復することができた。肥満モデルマウスの肝臓重量への影響データは、表6に示すとおりである。
【0107】
表6 異なる処理群のマウスの肝臓重量
注:結果は、平均値で表され、*p<0.05とHFD-対照群とを比較した。
【0108】
(2)さらに病理学による肥満モデルマウスの肝臓病変の判読:結果によると、MNO-863は、初期脂肪肝炎病巣を治療し、肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせ、且つ肝臓病変を緩和することができた。
【0109】
具体的には、上記各処理群のマウスの肝臓組織に対してそれぞれHE染色とオイルレッド染色を行った。実験結果は、それぞれ図7図8に示すとおりである。高脂肪食条件で飼育した場合、MNO-863は、肥満マウス初期脂肪肝炎病巣を治療し、脂肪蓄積を遅らせることができた。
【0110】
NAFLD/NASH肝臓病理学的スコアは、図9に示すとおりである。スコアから分かるように、MNO-863は、肥満マウス初期脂肪肝炎病巣を治療し、脂肪蓄積を遅らせることができた。
【0111】
図10において肝臓脂肪変性程度を示し、図10から分かるように、MNO-863は、肝臓脂肪変性を効果的に緩解することができた。図11において肝小葉炎症スコアを示し、図11から分かるように、HFD対照群に比べて、MNO-863は、肝小葉炎症の発生を効果的に抑制することができた。図12において肝臓バルーニングスコアを示し、図12から分かるように、HFD対照群に比べて、MNO-863肝臓バルーニングスコアは、明らかに低下した。
【0112】
(3)出願人は、MNO-863による肥満モデルマウス血清ALTとASTへの影響をさらに探求し、結果によると、MNO-863は、肥満マウスの血清ALT及びAST指標を有意に低減させることができた。
【0113】
血清におけるAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)レベルは、図13に示すとおりである。
【0114】
(4)出願人は、MNO-863による高脂肪食誘導肥満モデルマウスの腹部白色脂肪炎症性病変への影響をさらに探求し、結果によると、MNO-863は、肥満モデルマウスの腹部白色脂肪炎症性病変を有意に減少させることができた。
【0115】
マウスの腹部白色脂肪炎症性病変の顕微鏡図及び総面積統計図は、図14に示すとおりである。
【0116】
(5)出願人は、MNO-863による高脂肪食誘導肥満モデルマウスの血中クレアチニン(CREA)、血中尿素(UREA)及び血中尿酸(UA)への影響をさらに探求し、結果によると、MNO-863は、腎臓に毒性がなかった。
【0117】
マウスの血中クレアチニン(CREA)の含有量検出は、酵素法の検出原理に従って、エンドポイント法(クレアチニン測定キットを採用し、雷社、S03076)により、全自動生化分析装置を用いて検出した。血中尿素(UREA)の含有量検出は、ウレアーゼ-グルタミン酸脱水素酵素法の検出原理に従って、2点法(尿素測定キットを採用し、雷社生命科学股▲分▼有限公司、S03036)により、全自動生化分析装置を用いて検出した。血中尿酸(UA)の含有量検出は、尿酸酵素法の検出原理に従って、エンドポイント法(尿酸測定キットを採用し、雷社生命科学股▲分▼有限公司、S03035)により、全自動生化分析装置を用いて検出した。
【0118】
マウスの血中クレアチニン(CREA)、血中尿素(UREA)及び血中尿酸(UA)の測定結果図は、図15に示すとおりである。
【0119】
実施例3
本実施例は、MNO-863の、糖尿病の治療又は予防における使用を検証するために、その高脂肪食誘導肥満マウスモデルにおけるインビボ試験を行った。
【0120】
実験材料:
(1)実験動物:C57BL/6J雄マウス(江蘇集萃薬康生物科技有限公司より購入)40匹を購入し、正常飼育マウス、5週齢である。マウス成長過程は、同一の環境にあり、ここで、8匹にSPF級のラット・マウス維持飼料(広州市瀚程実験器材有限公司)を与え、32匹にD12492高脂肪飼料(パーカー社)を与え、約8-10週間給餌した後、体重を測り、食誘導肥満モデルのモデル形成標準の体重は、38.00±2.00gに達した。
【0121】
(2)供試菌株:嫌気的に培養されたMNO-863であり、培地は、104液体培地であり、37℃の嫌気性条件で48h培養し、菌の濃度が約1011CFU/mLのオーダーになってから、実験群の胃内投与とすることができる。菌液を4℃の条件で嫌気的に貯蔵した。
【0122】
(3)PBSリン酸緩衝食塩水:弱酸及びその塩、弱アルカリ及びその塩からなる混合溶液であり、補強された酸又は強アルカリによる溶液のペーハーへの影響をある程度で相殺し、軽減させることができ、それによって溶液のpH値が相対的に安定しているように維持した。PBSリン酸緩衝食塩水の処方は、実施例2における表4と同じである。
【0123】
(4)リラグルチド(Liraglutide)(陽性対照):リラグルチドは、糖尿病の治療に用いられるヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログである。ノボノルディスク社より購入され、商品名は、Victoza(登録商標)-Novo Nordiskであり、使用時は、15μg/kg/dで皮下注射した。
【0124】
試験過程:
(1)試験グループ分け
SPF級のラット・マウス維持飼料を与えられた8匹のマウスを完全無作為に2ケージに分け、4匹/ケージとし、第一群とした。32匹の肥満マウスから体重が38.00g±2.00gに達したマウス24匹を選別し、合計で3群(それぞれ第二群、第三群、第四群として)に分け、群ごとに8匹で、4匹/ケージとした。第一群は、通常の飼料を給餌した対照群(NCD-対照群)であり、第二群は、高脂肪食誘導肥満マウスモデル群(HFD-対照群)であり、第三群は、菌剤治療群(MNO-863)であり、第四群は、リラグルチド陽性対照群であり、第二群、第三群と第四群に高脂肪飼料を給餌し、グループ分け状況は、表7に示すとおりである。動物をグループ分けした後に仮想投与を開始し、1週間後に投与を開始し、第一群と第二群に同量のPBSリン酸緩衝食塩水を胃内投与し、第三群は、MNO-863供試菌株を用いて胃内投与介入を行い、介入を4週間続けた。胃内投与菌液の量は、0.2mL/10gマウスの体重である。それぞれモデル作成の前後、介入の前後3日ごとにマウスの体重と状態などのデータを記録した。実験動物の使用は、動物福祉に注目し、「減少、代替と最適化」の原則に従い、当機関の実験動物倫理委員会の承認を得た。試験過程において実験動物倫理委員会の監督検査を受けた。
【0125】
表7 試験グループ分け
【0126】
経口グルコース負荷検査(OGTT):動物投与後の28日目に、12h断食した(例えば夜20:30:00から翌日08:30:00まで断食した)OGTTを測定した。マウスの断食体重を称量し、マウスの断食体重値に従ってグルコースを胃内投与し、グルコースを胃内投与した投与量を2g/kg(グルコースg/マウスの断食体重kg)とし、空腹血糖及びグルコース投与後15min、30min、60min、90min、120minの血糖値をそれぞれ測定した。各マウスは、時間を厳密に記録し、正確に6つの時点で血糖値を測定した。経口グルコース負荷試験は、グルコース負荷試験の一つであり、膵島β細胞機能と生体による血糖の調節能力を理解し、患者のグルコース負荷能力を観察するために用いられ、現在公認されている糖尿病診断のゴールドスタンダードである。
【0127】
介入実験の終了後、マウスを一晩10-12h断食させ、翌日に断食体重を称量し、イソフルラン(瑞沃徳生命科技有限公司)で麻醉した後にマウスに眼球採血を行い、血糖計(ACCU-CHEK型、Roche)を使用して空腹血糖の血糖値を検出し、血液を4℃冷蔵庫に3-4h置いた後、血液が凝固し血の塊が収縮した後、4℃で4500r/minで15min遠心単離し、上層血清を収集し、マウスインスリン(INS)酵素結合免疫キット(武漢華美生物工程有限公司)を使用して血清におけるインスリンの含有量を検出した。血清における空腹血糖レベルとインスリンレベルに基づいてHOMA-IRを算出した。HOMA-IRは、個体のインスリン抵抗レベルを評価するための指標であり、現在すでに臨床に広く応用されている糖尿病患者のインスリン感受性、インスリン抵抗レベルと膵島β細胞機能を評価するための常用指標となり、その計算方法は、空腹血糖レベル(FPG、mmol/L)×空腹インスリンレベル(FINS、μU/mL)/22.5であり、正常個体のHOMA-IR指数は、1である。インスリン抵抗レベルの上昇に伴い、HOMA-IR指数は、1よりも高くなる。インスリン抵抗とは、様々な原因によりインスリンがグルコース摂取を促進し、利用の効率が低下し、生体が代償的に過剰なインスリンを分泌し高インスリン血症を産生することで、血糖の安定性を維持することであり、インスリン抵抗は、メタボリックシンドロームと2型糖尿病を招きやすい。
【0128】
実験結果:
(1)MNO-863による肥満モデルマウスの経口グルコース負荷への影響:MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの経口グルコース負荷への影響は、表8と図16に示すとおりである。
【0129】
表8 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの経口グルコース負荷への影響
注:結果は、平均値±標準差(SD)で表され、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001とHFD-対照群とを比較した。
【0130】
糖代謝が乱れていた時、一定量のグルコースを経口投与した後に血糖が急激に上昇し、又は上昇が明らかではなかったが、短時間内で空腹レベル(又は本来のレベル)まで低下できず、これを耐糖能異常(IGT)又は耐糖能低減とした。耐糖能異常(IGT)は、生体のグルコースに対する代謝能力の低下を示し、2型糖尿病と肥満症などによく見られる。
【0131】
表8と図16の結果から分かるように、MNO-863の4週間の介入後、MNO-863処理群の高脂肪食誘導肥満マウスは、グルコースを15min胃内投与した後に血糖上昇程度がHFD対照群より有意に低かった。後続の検出において、MNO-863処理群のマウスの血糖の血糖値は、徐々に低下し、且つ120min後に血糖値は、NCD対照群に近くまで回復し、HFD対照群よりはるか低く、且つ有意差があった。同時、MNO-863は、糖尿病の治療薬物リラグルチドに相当する治療効果を表現した。
【0132】
(2)MNO-863による肥満モデルマウスの空腹血糖への影響:MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの空腹血糖への影響は、表9と図17に示すとおりである。
【0133】
表9 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの空腹血糖(mmol/L)への影響
注:結果は、平均値で表され、*p<0.05、****p<0.0001とHFD-対照群とを比較した。
【0134】
表9と図17の結果から分かるように、HFD対照群に比べて、MNO-863処理群は、高脂肪食誘導肥満マウスの血糖値を有意に低減させることができ、HFD対照群に比べて有意差を認めた。そして糖尿病の治療薬物リラグルチドに比べて、MNO-863による血糖の制御は、より明らかにである。MNO-863が明らかな血糖降下効果を有し、糖尿病症状を改善できることを示した。
【0135】
(3)MNO-863による高脂肪食誘導肥満モデルマウスのHOMA-IR指数への影響:MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスのHOMA-IR指数への影響は、表10と図18に示すとおりである。
【0136】
表10 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスHOMA-IRへの影響
注:結果は、平均値で表される。
【0137】
インスリン抵抗(IR)は、2型糖尿病発生の主な原因であり、2型糖尿病患者の合併症の発生及び進展を促進することができる。HOMA-IRに関連する生化指標は、IR発生の原因を明らかにするのに有効である。しかし、一般的には糖尿病患者のHOMA-IRは、正常集団よりも明らかに高い。
【0138】
表10と図18の結果から分かるように、HFD対照群に比べて、MNO-863の介入で高脂肪食誘導肥満マウスのHOMA-IRを明らかに低減させることができた。MNO-863が生体インスリン抵抗と膵島β細胞機能を改善する作用を有し、それによって糖尿病を予防治療する目的を達成することを示した。
【0139】
実施例4
本実施例は、MNO-863の、肥満症及びその関連疾患の治療と予防における応用を検証するために、MNO-863の高脂肪食誘導肥満マウスモデルにおけるインビボ試験を行った証。実験材料(実験動物、供試菌株、PBSリン酸緩衝食塩水及び陽性対照を含む)は、実施例3における実験材料と同じである。
【0140】
試験過程:
(1)試験グループ分け
SPF級のラット・マウス維持飼料を与えられた8匹のマウスを完全無作為に2ケージに分け、4匹/ケージとし、第一群とした。32匹の肥満マウスから体重が38.00g±2.00gに達したマウス24匹を選別し、合計で3群(それぞれ第二群、第三群、第四群として)に分け、群ごとに8匹で、4匹/ケージとした。第一群は、通常の飼料を給餌した対照群(対照群)であり、第二群は、高脂肪食誘導肥満マウスモデル群(model群)であり、第三群は、菌剤治療群であり、第四群は、リラグルチド陽性対照群であり、第二群、第三群と第四群に高脂肪飼料を給餌し、グループ分け状況は、表11に示すとおりである。動物をグループ分けした後に仮想投与を開始し、1週間後に投与を開始し、第一群と第二群に同量のPBSリン酸緩衝食塩水を胃内投与し、第三群は、MNO-863供試菌株を用いて胃内投与介入を行い、介入を4週間続けた。胃内投与菌液の量は、0.2mL/10gマウスの体重である。それぞれモデル作成の前後、介入の前後3日ごとにマウスの体重、状態、摂食量などのデータを記録した。投与終了後、動物を解剖し組織を採取した。実験動物の使用は、動物福祉に注目し、「減少、代替と最適化」の原則に従い、当機関の実験動物倫理委員会の承認を得た。試験過程において実験動物倫理委員会の監督検査を受けた。
【0141】
表11 試験グループ分け
【0142】
実験終了後にマウスを処刑し、脂肪含有量を記録し、採血し、4℃で4500r/minで15min遠心単離し、血清を収集し、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパク質(HDL-C)と低密度リポタンパク質(LDLC)測定キット(南京建成生物工程研究所)を使用して血清における血中脂質の含有量を検出した。
【0143】
実験結果:
(1)MNO-863による肥満モデルマウスの体重への影響:表12、表13と図19図20の結果から分かるように、HFD-対照群に比べて、MNO-863介入群は、3週間以内に高脂肪食誘導肥満マウスの体重を3g以上及び体重百分率を約10%効果的に低減させることができ、且つ有意差を認め、陽性対照痩せ薬リラグルチドの減重効果に相当し、MNO-863が高脂質摂取での生体に対して体重軽減の効果を有することを示した。
【0144】
表12 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの体重(g)への影響
【0145】
表13 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの体重(g)への影響
注:結果は、平均値±標準差で表され、****p<0.0001とHFD-対照群とを比較した。
【0146】
(2)MNO-863による肥満モデルマウスの摂食量への影響:表14と図21の結果から分かるように、HFD-対照群に比べて、MNO-863介入群は、3週間以内に高脂肪食誘導肥満マウスの摂食量を低減させることができた。
【0147】
表14 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの摂食量(g)への影響
注:結果は、平均値で表される。
【0148】
(3)MNO-863による高脂肪食誘導肥満モデルマウスの血中脂質への影響:表15と図22の結果から分かるように、MNO-863介入群は、持続的な高脂質摂取でのマウスの血中脂質レベルに対して明らかな制御効果を有し、原発性高脂血症などの心血管疾患に関連する指標である総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)と低密度リポタンパク質(LDLC)を低減させ、且つ血中高密度リポタンパク質(HDL-C)レベルを向上させることができたが、HDLは、心血管疾患の発病率と病変程度と負の相関を呈し、そのうちの総コレステロール(TC)とトリグリセリド(TG)の結果に有意差を認めた。
【0149】
表15 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの血中脂質四項への影響
注:結果は、平均値で表され、*p<0.05、**p<0.01とHFD-対照群とを比較した。
【0150】
(4)MNO-863菌による高脂肪食誘導肥満モデルマウスの体脂肪への影響:表16と図23の結果から分かるように、HFD-対照群に比べて、MNO-863介入で高脂肪食誘導肥満マウスの鼠径部脂肪、皮下脂肪と副睾丸脂肪の重量を有意に低減させ、MNO-863が哺乳類の体脂肪を低減させる作用を有することを示した。
【0151】
表16 MNO-863による高脂肪食誘導肥満マウスの体脂肪(g)への影響
注:結果は、Meanで表され、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001とHFD-対照群とを比較した。
【0152】
実験例5
本実施例は、MNO-863の、消化管粘膜障害の修復及び消化管粘膜障害関連疾患の予防治療における応用を検証するために、MNO-863によるマウスモデル回腸と結腸組織粘膜修復のインビボ試験を行った。
【0153】
動物実験過程:
SPF級のラット・マウス維持飼料を与えられた8匹のマウスを完全無作為に2ケージに分け、4匹/ケージとし、第一群とした。24匹の肥満マウスから体重が38.00g±2.00gに達したマウス16匹を選別し、2群(第二群と第三群として)に分け、群ごとに8匹で、4匹/ケージとした。第一群は、通常の飼料を給餌した対照群(NCD-対照群)であり、第二群は、高脂肪食誘導肥満マウスモデル群(HFD-対照群)であり、第三群は、菌剤治療群(MNO-863)であり、第二群と第三群に高脂肪飼料を給餌し、グループ分け方式は、実施例2の表5と同じである。動物をグループ分けした後に仮想投与を開始し、1週間後に投与を開始し、第一群と第二群に同量のPBSリン酸緩衝食塩水を胃内投与し、第三群は、MNO-863供試菌株を用いて胃内投与介入を行い、介入を4週間続けた。胃内投与菌液の量は、0.2mL/10gマウスの体重である。それぞれモデル作成の前後、介入の前後3日ごとにマウスの体重、状態、摂食量などのデータを記録した。投与終了後、動物を解剖し組織を採取した。実験動物の使用は、動物福祉に注目し、「減少、代替と最適化」の原則に従い、当機関の実験動物倫理委員会の承認を得た。試験過程において実験動物倫理委員会の監督検査を受けた。
【0154】
解剖、観察過程:すべての動物は、試験期間に死亡した動物、安楽死した動物と試験終了に処刑された動物を含み、いずれも大まかな解剖検査を行う必要があった。マウスの回腸及び結腸を切り取ってホルマリン溶液に保存した。武漢賽維爾生物科技有限公司に送って病理切片を作製し、写真を撮って観察した。
【0155】
結果表示:MNO-863供試菌株は、マウス回腸と結腸組織粘膜層障害に修復機能を有した(表17参照):HFD-対照群に比べて、MNO-863介入で、マウス結腸組織の各層構造が明晰であり、粘膜上皮が完全であり、腸腺の数が豊富であり、配列が緊密であり、明らかな異常が見られなかった(図26参照)。マウス回腸組織の各層構造が明晰であり、腸絨毛数が豊富であり、粘膜上皮が完全であり、腸腺の数が豊富であり、配列が緊密であり、他の明らかな異常が見られなかった(図27参照)。一方、HFD-対照群の顕微鏡図によると、マウス結腸組織に多数の粘膜層障害、粘膜上皮細胞脱落、少量の腸腺構造破壊が見られ、腸腔内に大量の好塩基性菌糸(図24参照)、マウス回腸組織粘膜層障害、局所腸絨毛及び粘膜上皮欠損、腸腺構造消失、少量の上皮細胞腫脹、胞質粗疎淡染が見られ、腸腔内に大量の好塩基性菌糸が見られた(図25参照)。
【0156】
NCD-対照群の顕微鏡図によると、マウス結腸組織の各層構造が明晰であり、粘膜上皮が完全であり、腸腺の数が豊富であり、配列が緊密であり、明らかな異常が見られず(図28参照)、マウス回腸組織の各層構造が明晰であり、腸絨毛数が豊富であり、粘膜上皮が完全であり、腸腺の数が豊富であり、配列が緊密であり、明らかな異常が見られなかった(図29参照)。
【0157】
MNO-863が回腸と結腸粘膜を修復する機能を有し、その投与が消化管粘膜を効果的に修復し、消化管粘膜障害関連疾患の予防治療に積極的な効果を発生させることができることを示した。
【0158】
表17 MNO-863マウス結腸粘膜障害と回腸粘膜障害に対する病理学的スコア結果
【0159】
以下は、実施例を結び付けて、本開示による併用薬物をさらに詳細に記述する。
【0160】
本実施例は、MNO-863菌株及び/又はLiraglutide(リラグルチド)薬物の、肥満症、糖尿病及び肝臓疾患の治療又は予防における使用を検証するために、その使用の高脂肪食誘導肥満マウスモデルにおけるインビボ試験を行った。
【0161】
(1)実験動物:C57BL/6J雄マウス(江蘇集萃薬康生物科技有限公司より購入)50匹を購入し、いずれも正常飼育マウス、5週齢である。マウス成長過程は、同一の環境にあり、ここで、8匹にSPF級のラット・マウス維持飼料(広州市瀚程実験器材有限公司より購入)を与え、42匹にD12492高脂肪飼料(パーカー社より購入)を与えて約8-10週間給餌した後、体重を測り、食誘導肥満モデルのモデル形成標準は、体重が38.00±2.00gに達することである。
【0162】
(2)供試菌株:嫌気的に培養されたMNO-863であり、培地は、104液体培地(処方は上表1に示す)であり、37℃の嫌気性条件で48h培養し、菌の濃度が約10CFU/mLのオーダーになってからのみ、実験群の胃内投与とすることができる。菌液保存は、4℃の条件で嫌気的に貯蔵することである。
【0163】
(3)PBSリン酸緩衝食塩水:弱酸及びその塩、弱アルカリ及びその塩からなる混合溶液であり、補強された酸又は強アルカリによる溶液のペーハーへの影響をある程度で相殺し、軽減させることができ、それによって溶液のpH値が相対的に安定しているように維持した。PBSリン酸緩衝食塩水の処方は、上表4に示すとおりである。
【0164】
試験過程は、以下のとおりである。
【0165】
(1)試験グループ分けは、以下のとおりである。
【0166】
42匹の肥満マウスは、体重が38.00g±2.00gに達した32匹を選別し、合計で4組に分け、群ごとに8匹で、4匹/ケージとした。第一群は、通常の飼料を給餌した対照群(NCD対照群)であり、第二群は、高脂肪食誘導肥満マウスモデル群(HFD対照群)であり、第三群は、MNO-863菌剤治療群であり、第四群は、Liraglutide薬物治療群(Lira群)であり、第五群は、MNO-863菌剤とLiraglutide薬物結合使用治療群(Lira+MNO-863)である。ここで、第二群、第三群、第四群と第五群に高脂肪飼料を給餌し、グループ分けは、表18に示すとおりである。動物をグループ分けした後に仮想投与を開始し、1週間後に投与を開始し、介入を4週間続けた。胃内投与菌液の量は、0.2mL/10gマウスの体重である。
【0167】
それぞれモデル作成の前後、介入の前後3日ごとにマウスの体重、状態、摂食量などのデータを記録した。動物への投与が終了した時に解剖組織を採取した。実験動物の使用は、動物福祉に注目し、「減少、代替と最適化」の原則に従い、当機関の実験動物倫理委員会の承認を得た。試験過程において実験動物倫理委員会の監督検査を受けた。
【0168】
表18 試験グループ分け
【0169】
(2)Liraglutide薬物とMNO-863菌剤との併用療法による体重への影響。
【0170】
MNO-863とLiraglutideとの併用による肥満マウスの4週間の介入期間の絶対体重への影響及び体重変化率は、図30に示すとおりであり、4週間の介入後の体重及び体重変化率は、図31に示すとおりであり、4週間の介入と4週間の休薬後の体重及び体重変化率は、図32に示すとおりであり、4週間の休薬肥満再発後の鼠径部脂肪重量は、図33に示すとおりである。図30図31図32図33から分かるように、MNO-863菌剤とLiraglutide薬物は、いずれも肥満マウスの体重を低減させ、その体重増加を抑制し、及び鼠径部脂肪を低減させることができたが、MNO-863菌剤とLiraglutide薬物との併用群は、体重を低減させ、体重増加を抑制し及び鼠径部脂肪を低減させる効果がMNO-863菌株の単独使用又はLiraglutide薬物の単独使用の効果よりも明らかに優れており、微生態製剤が薬物の痩せ効果を補強する作用を果たすことを説明した。
【0171】
(3)Liraglutide薬物とMNO-863菌剤との併用療法による糖尿病の治療作用。
【0172】
糖代謝が乱れていた時、一定量のグルコースを経口投与した後に血糖が急激に上昇し、又は上昇が明らかではなかったが、短時間内で空腹レベル(又は本来のレベル)まで低下できず、これを耐糖能異常(IGT)又は耐糖能低減とした。耐糖能異常(IGT)は、生体のグルコースに対する代謝能力の低下を示し、2型糖尿病と肥満症などによく見られる。
【0173】
糖代謝試験により薬物と菌剤による糖尿病の治療作用を評価することができた。
【0174】
MNO-863菌株の単独使用及び菌株とLiraglutideとの併用による肥満マウスのグルコース耐性への影響は、図34に示すとおりであり、MNO-863菌株の単独使用及び菌株とLiraglutideとの併用による肥満マウスのグルコース高血糖への影響は、図35に示すとおりであり、MNO-863菌株による肥満マウスの4週間の休薬肥満再発後の高血糖への影響作用は、図36に示すとおりである。
【0175】
図34図35図36から分かるように、MNO-863菌剤とLiraglutide薬物は、いずれも肥満マウスの耐糖能異常状況を改善することができ、且つ空腹血糖を低減させることができたが、菌剤と薬物との併用群の効果は、菌剤又は薬物の単独使用よりも有意であり、微生態菌剤が糖尿病の薬物治療効果を補強する作用を果たすことができることを説明した。
【0176】
(4)Liraglutide薬物とMNO-863菌剤との併用療法による肝臓疾患の治療作用。
【0177】
図37は、MNO-863菌株の単独使用及び菌株とLiraglutideとの併用による4週間の休薬肥満再発後の肝臓重量への影響結果図であり、図37から分かるように、MNO-863菌剤とLiraglutide薬物は、いずれも肥満マウスの肝臓重量を低減させることができたが、菌剤と薬物との併用群の効果は、菌剤又は薬物の単独使用よりも有意であり、微生態菌剤が肝臓疾患の薬物治療効果を補強する作用を果たすことができることを説明した。
【0178】
上述は、本開示の典型的な実施例にすぎず、本開示を制限するためのものではなく、当業者にとって、本開示は、様々な変更と変化が可能である。本開示の精神と原則内において、行った任意の修正、同等の置き換え、改良などは、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本開示によるクリステンセネラ菌は、工業的に大量に培養することができ、且つ本開示によるクリステンセネラ菌は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満症及び肥満症関連疾患を治療又は予防するために用いられることができる。本開示によるクリステンセネラ菌は、さらに腎臓に対して毒性副作用がなく、肝臓の重量を減少させ、初期脂肪肝炎病巣を治療し、肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせ、血清AST、ALTを低減させ、腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させることができる。クリステンセネラ菌は、消化管粘膜を修復し、粘膜バリア機能を回復させ、バリア機能の損傷による腸瘻、消化性潰瘍などの疾患を予防治療することもできる。クリステンセネラ菌は、生体の空腹血糖を低減させ、インスリンレベルを調節し、哺乳類の体脂肪を低減させる効果をさらに有し、且つ糖尿病を予防治療し、肥満症患者の代謝機能を向上させるなどの作用を有する。クリステンセネラ菌は、損傷した消化管粘膜を修復し、粘膜障害関連疾患を予防治療する機能をさらに有する。本開示によるクリステンセネラ菌と血糖降下又は脂質降下薬とを含む併用薬物は、工業的に大量に生産することができ、且つこの併用薬物は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患を治療又は予防するために用いられることができる。本開示による併用薬物は、相乗的に効果を高める技術的効果を果たし、即ちこの併用薬物は、クリステンセネラ菌の単独投与又は血糖降下又は脂質降下薬の単独投与よりも優れた治療効果を有し、且つこの併用薬物は、腎臓に対して毒性副作用がなく、肝臓の重量を減少させることができる。
図1
図2
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図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
【配列表】
2024513071000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、グラム染色陰性のクリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株及び/又はその代謝産物を含み、前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有し、
前記組成物は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防するための組成物である、組成物。
【請求項2】
前記細菌株は、寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株の細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、薬学的に許容される賦形剤又はキャリアをさらに含み、
前記賦形剤は、酸化防止剤、キレート剤、乳化剤、溶媒を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
併用薬物であって、微生物と血糖降下又は脂質降下薬とを含み、前記微生物は、グラム染色陰性のクリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株であり、前記血糖降下又は脂質降下薬は、グルカゴン様ペプチド-1経路感受性を改善し、GLP-1作用を補完及び/又は促進することができる薬物のうちの一つ又は複数である、ことを特徴とする併用薬物。
【請求項5】
前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも98.65%一致する16s rRNA配列を有する、請求項4に記載の併用薬物。
【請求項6】
前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有する、請求項4に記載の併用薬物。
【請求項7】
前記細菌株は、SEQ ID NO.1と99%、99.5%、99.9%又は100%一致する16s rRNA配列を有する、請求項4に記載の併用薬物。
【請求項8】
前記細菌株は、寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株の細胞である、請求項5~7の何れか1項に記載の併用薬物。
【請求項9】
前記血糖降下又は脂質降下薬は、GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体、GIP受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤のうちの少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項4に記載の併用薬物。
【請求項10】
前記GLP-1受容体アゴニスト又はGLP-1模倣体は、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、経口投与型セマグルチド、ベナグルチド、リキシセナチドとエキセナチド週製剤から選択される少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項9に記載の併用薬物。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか一項に記載の併用薬物を含む、キット。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物又は請求項4から7のいずれか1項に記載の併用薬物は、肝臓機能障害及び肝臓機能障害関連疾患、消化管粘膜障害及び消化管粘膜障害関連疾患、糖尿病、肥満及び肥満関連疾患から選択される少なくとも一つの疾患又は病症を治療又は予防する薬を生産するための使用。
【請求項13】
前記肝臓機能障害関連疾患は、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎と肝硬変のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
前記消化管粘膜障害とは、消化管粘膜の透過性の上昇、粘膜バリア作用の損傷であり、消化管粘膜障害関連疾患は、腸管壁侵漏、消化性潰瘍、胃腸炎、炎症性腸疾患のうちの少なくとも一つの疾患を含み、
前記肥満関連疾患は、心血管疾患、高脂血症、インスリン抵抗性症候群、肥満に関連する胃食道逆流症と脂肪性肝炎のうちの少なくとも一つの疾患を含み、及び
前記糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、グルコース不耐症、脂質代謝異常、糖尿病性腎症合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病性眼障害、心血管疾患、糖尿病性足と妊娠糖尿病のうちの少なくとも一つの疾患を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記細菌株は、寄託番号GDMCC No:61117で寄託されたクリステンセネラ菌株又はその子株又はサブクローニング菌株である、ことを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項15】
組成物の使用であって、
前記組成物は、グラム染色陰性のクリステンセネラ菌(Christensenella sp.)種の細菌株及び/又はその代謝産物を含み、前記細菌株は、SEQ ID NO.1と少なくとも99%一致する16s rRNA配列を有し、
前記組成物は、以下の薬を生産するための使用。
肝臓の重量を減少させる薬、
初期脂肪肝炎病巣を治療する薬、
肝臓細胞の脂肪蓄積を遅らせる薬、
血清AST、ALTを低減させる薬、
腹部白色脂肪の炎症性病変を減少させる薬、
哺乳類の体重を軽減させる薬、
哺乳類の摂食量を減少させる薬、
休薬後の肥満再発幅を遅らせる薬、
哺乳類の体脂肪を低減させる薬、
哺乳類の血清における総コレステロールレベル、低密度リポタンパク質とトリグリセリドレベルのうちの少なくとも一つの指標のレベルを低減させる薬、
哺乳類の血清高密度リポタンパク質のレベルを向上させる薬、
哺乳類の経口グルコース負荷損傷を改善する薬、
哺乳類の空腹血糖を低減させる薬、
哺乳類のHOMA-IR指標を低減させる薬、
GLP-1感受性を補強する薬、
腸管障害によるGLP-1RAの抵抗性及び関連副作用を回避する薬、
または、消化管粘膜障害を修復する薬。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図15
【補正方法】変更
【補正の内容】
図15
【国際調査報告】