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特表2024-513075人工油体共固定化多酵素によるタガトースの生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】人工油体共固定化多酵素によるタガトースの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 11/04 20060101AFI20240313BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240313BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20240313BHJP
   C13K 13/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C12N11/04 ZNA
C12N15/52
C12N15/62 Z
C12P1/00 A
C13K13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561119
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 CN2022076063
(87)【国際公開番号】W WO2022213721
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110370762.0
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523375032
【氏名又は名称】天津怡和生物科技有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】馬 延和
(72)【発明者】
【氏名】シー ティン
(72)【発明者】
【氏名】韓 平平
(72)【発明者】
【氏名】李 運杰
【テーマコード(参考)】
4B033
4B064
【Fターム(参考)】
4B033NA22
4B033NB14
4B033NC04
4B033ND08
4B033NJ05
4B064AF02
4B064CA31
4B064CC24
4B064CD01
4B064CD19
4B064CD24
4B064CE03
(57)【要約】
人工油体に基づく共固定化多酵素及びタガトースの製造におけるその使用を提供する。具体的には、人工油体を用いて、発現させる標的プロテアーゼ-油体タンパク質の融合タンパク質と油体とを混合し、超音波処理し、人体タンパク質の特異的な疎水性により融合タンパク質を油体の表面にアンカーし、標的プロテアーゼを含有する人工油体を形成することによって、酵素の精製と固定化を同時に行う。前記タガトースの生産に有用な共固定化多酵素は、人工油体を固定化酵素のマトリックスとして用いることによって、固定化酵素の安定性を顕著に向上させ、現在の酵素法によるタガトースの製造時の生産コストを削減させ、しかも、製造プロセスが簡単である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工油体固定化酵素であって、
α-グルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、グルコホスホムターゼ-油体タンパク質融合タンパク質、グルコースリン酸イソメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼ-油体タンパク質融合タンパク質を混合してから、油体、リン脂質と混合して超音波処理し、遠心分離し上層物質を収集し、人工油体固定化酵素を得る、ことを特徴とする人工油体固定化酵素。
【請求項2】
遺伝子工学的手法によって、油体タンパク質遺伝子を各酵素の遺伝子のそれぞれと発現ベクターを構築し、組換え菌を形質転換して発現させ、各融合タンパク質を取得する、ことを特徴とする請求項1に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項3】
前記油体タンパク質遺伝子は、ゴマのoleosinタンパク質遺伝子、大豆のoleosinタンパク質遺伝子、落花生のoleosinタンパク質遺伝子である、ことを特徴とする請求項1に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項4】
前記油体タンパク質遺伝子のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1で示される、ことを特徴とする請求項3に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項5】
各酵素遺伝子がコードする酵素は耐熱性酵素である、ことを特徴とする請求項1に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項6】
各酵素遺伝子は、ジオバチルス・カウストフィルス(Geobacillus kaustophilus)、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、シュードサーモトガ・サーマルム(Pseudothermotoga thermarum)、サーモコッカス・コダレンシス(Thermococcus kodakarensis)、アーケオグロブス・フルギドゥス(Archaeoglobus fulgidus)、サーモアナエロバクター・インディエンシス(Thermoanaerobacter indiensis)、ディクチオグロムス・サーモフィラム(Dictyoglomus thermophilum)、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシス(Caldicellulosiruptor kronotskyensis)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、カルディリネア・アエロフィラ(Caldilinea aerophila)、ピュロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、メタノサーモバクター・マーブルゲンシス(Methanothermobacter marburgensis)、アルカエオグロブス・プロファンデュス(Archaeoglobus profundus)に由来する、ことを特徴とする請求項5に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項7】
α-グルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:グルコホスホムターゼ-油体タンパク質融合タンパク質:グルコースリン酸イソメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:タガトース-6-リン酸ホスファターゼ-油体タンパク質融合タンパク質を(1~2):(1~2):(1~2):(2~4):(2~4)の質量比で混合する、ことを特徴とする請求項1に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項8】
油体は、トリグリセリド又はトリグリセリドを含有する動植物油であり、前記リン脂質は、レシチン、セファリン又はカルジオリピンである、ことを特徴とする請求項1に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項9】
融合タンパク質の全量とトリグリセリドとを0.5~3:1の質量比で混合し、トリグリセリドとレシチンとを100:1の質量比で混合し、次に、サンプルを超音波処理する、ことを特徴とする請求項8に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項10】
前記超音波処理は、電力が20~30%、処理時間が5~15分間であり、前記遠心分離は、8000~12000rpm/minで5~15min遠心分離する、ことを特徴とする請求項1に記載の人工油体固定化酵素。
【請求項11】
タガトースの製造における、請求項1~10のいずれか1項に記載の人工油体固定化酵素の使用。
【請求項12】
澱粉又は澱粉誘導体を原料として、人工油体共固定化多酵素を利用して、酵素触媒変換法によりタガトースを製造する、ことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
具体的なステップは、澱粉又は澱粉誘導体50~150g/L、pH 6.0~7.0のHEPES緩衝液80~120mM、無機リン酸塩8~12mM、二価マグネシウムイオン3~7mM、亜鉛イオン又はマンガンイオン0.3~0.7mM、枝切り酵素3~7U/ml、前記人工油体共固定化多酵素1~5mg/mlを、40~70℃で酵素触媒変換反応させ、生成したタガトースを収集することである、ことを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
反応終了後、固液分離を行い、前記人工油体共固定化多酵素を収集し、タガトースの製造にリサイクルする、ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学分野に関し、具体的には、酵素タンパク質の発現、及び共固定化多酵素を製造してタガトースを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、タガトースの主な生産方法は、ガラクトースの異性化、脱塩、脱色、分離、濃縮、結晶化などのステップを経てタガトース純品を製造するものである。しかし、このような方法では、ガラクトースを完全にタガトースに変換することができず、最終生成物がガラクトースとタガトースの混合物であるため、タガトースの分離工程が複雑で、転化率が低く、分離コストが高く、また、原料のガラクトースの価格が安くなく、その結果として、タガトースの生産コストが高くなるという欠点もある(Rhimi M, Aghajari N, Juy M, Chouayekh H, Maguin E, Haser R, Bejar S: Rational design of Bacillus stearothermophilus US100l-arabinose isomerase: Potential applications for d-tagatose production. Biochim. 2009, 91:650-653. Oh H-J, Kim H-J, Oh D-K: Increase in d-tagatose production rate by site-directed mutagenesis of l-arabinose isomerase from Geobacillus thermodenitrificans. Biotechnol. Lett. 2006, 28:145-149. Bosshart A, Hee CS, Bechtold M, Schirmer T, Panke S:Directed divergent evolution of a thermostable D-tagatose epimerase towards improved activity for two hexose substrates. ChemBioChem 2015,16:592-601.)。韓国CJ社と中国科学院天津工業生物技術研究所はいずれも、インビトロ多酵素でタガトースを合成する(WO2018004310A1、CN109790524A、CN107988286A、CN109666620A)の新経路を開発した。このインビトロ多酵素でタガトースを合成する新経路は、デンプン、マルトデキストリン、スクロースを原料とし、多段階の酵素触媒反応によりタガトースを合成することができ、異性化によるタガトースの生産プロセスを根本的に変えた。しかし、この合成のための新経路は、複数の酵素分子に関連しており、酵素分子は煩雑な抽出と精製を経て初めて触媒反応に用いることができ、その結果として、酵素の生産コストが高価になる。また、バイオ酵素は水溶性分子であり、触媒反応終了後の水溶性酵素分子の回収・再利用が困難であり、酵素の浪費を招く。これらの要因により、タガトースを合成する新経路の製造コストが高くなり、多酵素の再利用が可能となり、製造コストを削減させることができる、タガトースを合成する新経路中の多酵素を固定化する多酵素固定化方法の開発が急務となっている。
【0003】
油体は、植物種子、特に油料植物種の重要な脂質貯蔵細胞小器官であり、油体構造モデルは、単分子リン脂質層とその中に埋め込まれた油体結合タンパクが液体基質のトリアシルグリセロールを包むことで形成された弾性球体又は楕円球体であり、顕著な物理的安定性や化学的安定性を有する。油体は、タンパク質発現、精製及び固定化、プロバイオティクス、生物活性物質の包埋、乳化剤としての使用など、バイオテクノロジー分野で広く開発され、応用されている。人工油体は、主成分のトリアシルグリセロール、リン脂質、及び油体タンパク質を体外で一定の割合で混合し、再結合して安定化した油体である。人工油体に関する技術の流れは以下の通りである。まず、組換え油体タンパク-標的タンパク発現ベクターを構築し、次に、大腸菌にて封入体の形式で組換え融合タンパクを効率的に発現させ、さらに、菌体を破砕し、遠心分離して沈殿を収集し、最後に、リン脂質とトリアシルグリセロールと組み換えて人工油体にする。
【0004】
人工油体を構築することにより、タンパク質の精製、固定化や復元などの複数のステップを簡単なワンステップで同時に実現することができ、従来のタンパク質の固定化におけるタンパク質の精製ステップを省略することができ、タンパク質固定化時間の節約とタンパク質の固定化コストの低減を図ることができる。現在、この方法を用いて組換えセルラーゼ(Chiang C J, Chen P T, Yeh C Y, et al. A useful method integrating production and immobilization of recombinant cellulose. Appl. Microbiol. Biotechnol. 2013, 97 (20 ): 9185-9192.)、リパーゼ(CN102321693A)、プシコースエピメラーゼ(Immobilization of Clostridium cellulolyticumd-Psicose 3-Epimerase on Artificial Oil Bodies, J. Agric. Food Chem. 2014, 62, 28, 6771-6776)などが固定化されている。
【0005】
以上から、人工油体固定化多酵素は研究の重点であり、依然として人工油体を多酵素共固定化に応用する策略を探したり確立したりし、人工油体固定化多酵素を利用してタガトースを触媒生産する新技術を確立する必要があり、それによって、カスケード触媒反応の触媒効率を高めると同時に、酵素触媒の生産コストを下げる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工油体を単一の酵素の固定化に応用すると、コストが安く、プロセスが簡単で、固定化酵素の安定性と再利用性が顕著に向上するなどの利点があるが、人工油体固定化単一酵素を酵素カスケード触媒反応に応用してタガトース系を生産することには、深刻な欠陥が存在する。本発明者らの研究により、多酵素触媒によるタガトースの生産経路は5種類の異なる酵素分子に係わり、この5種類の酵素をそれぞれ固定化して混合したものが触媒反応に用いられる場合、基質/生成物の物質移動に関する問題が深刻であり、上流の生成物が下流の固定化酵素に迅速に捕捉されにくく、カスケード触媒反応の触媒効率が極めて低下することが分かった。したがって、本発明で提案された5種類の酵素を共固定化して触媒反応に用いることで効果が大幅に向上した。
【0007】
したがって、本発明は、固定化酵素によるカスケード触媒反応における基質/生成物の物質移動に関する深刻な問題を低減し、固定化多酵素によるカスケード触媒反応の触媒効率を向上させることを目的とする。タガトースの生産における5つの酵素分子を人工油体で共固定化し、5種類の酵素分子を特定の割合で混合し、人工油体を利用して多酵素の精製と固定化を同時に行うことが可能とされている。人工油体による多酵素の共固定化は、酵素を個別に固定化することによる物質移動に関する問題を回避し、多酵素のカスケード触媒効率を高め、多酵素体系の安定性や再使用の効果を高める。本発明は、タガトースを生産するための新規な酵素固定化技術を提供し、現在の酵素法によるタガトース生産のコストを削減させ、製造プロセスを簡素化させる。
【0008】
本発明は、人工油体固定化酵素であって、
α-グルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、グルコホスホムターゼ-油体タンパク質融合タンパク質、グルコースリン酸イソメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼ-油体タンパク質融合タンパク質を混合してから、油体、リン脂質と混合して超音波処理し、遠心分離し上層物質を収集し、人工油体固定化酵素を得る、ことを特徴とする人工油体固定化酵素を提供する。
【0009】
具体的な実施形態では、遺伝子工学的手法によって、油体タンパク質遺伝子を各酵素の遺伝子のそれぞれと発現ベクターを構築し、組換え菌を形質転換して発現させ、各融合タンパク質を取得する。
【0010】
具体的な実施形態では、前記油体タンパク質遺伝子は、ゴマのoleosinタンパク質遺伝子、大豆のoleosinタンパク質遺伝子、落花生のoleosinタンパク質遺伝子である。より具体的には、前記油体タンパク質遺伝子のヌクレオチド配列がSEQ ID NO.1で示される。
【0011】
具体的な実施形態では、前記の各種酵素は耐熱性のもの、すなわち、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性グルコホスホムターゼ、耐熱性グルコースリン酸イソメラーゼ、耐熱性タガトース-6-リン酸4位エピメラーゼ、及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼである。耐熱性ではない常温酵素よりも、耐熱性酵素は菌株の不活性化に関しては優位性があり、すなわち、後者の場合は、発酵終了後、タガトースの合成に関する酵素の活性を維持しながら加熱処理により菌株を不活性化することができ、これによって、不活性化菌株を混合してタガトースの生産に用いることができ、工業的用途により適している。
【0012】
具体的には、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上で、澱粉をグルコース-1-リン酸(G1P)にリン酸化する機能を有する酵素である。さらに好ましくは、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼは、好熱性微生物、例えば、ジオバチルス・カウストフィルス、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス、サーモトガ・マリティマ、シュードサーモトガ・サーマルム、サーモコッカス・コダレンシス、アーケオグロブス・フルギドゥス、サーモアナエロバクター・インディエンシス、ディクチオグロムス・サーモフィラム、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシス、クロストリジウム・サーモセラム、カルディリネア・アエロフィラ、ピュロコックス・フリオスス、サーマス・サーモフィルス、メタノサーモバクター・マーブルゲンシス、アルカエオグロブス・プロファンデュスなどに由来し、又は、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は前記好熱性微生物に由来の耐熱性α-グルカンホスホリラーゼとは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼはサーモトガ・マリティマに由来する。
【0013】
具体的には、耐熱性グルコホスホムターゼは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上で、グルコース-1-リン酸(G1P)をグルコース-6-リン酸(G6P)に転換する機能を有する酵素である。さらに好ましくは、前記耐熱性グルコホスホムターゼは、好熱性微生物、例えば、ジオバチルス・カウストフィルス、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス、サーモトガ・マリティマ、シュードサーモトガ・サーマルム、サーモコッカス・コダレンシス、アーケオグロブス・フルギドゥス、サーモアナエロバクター・インディエンシス、ディクチオグロムス・サーモフィラム、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシス、クロストリジウム・サーモセラム、カルディリネア・アエロフィラ、ピュロコックス・フリオスス、サーマス・サーモフィルス、メタノサーモバクター・マーブルゲンシス、アルカエオグロブス・プロファンデュスなどに由来し、又は前記耐熱性グルコホスホムターゼのアミノ酸配列は、前記好熱性微生物に由来の耐熱性グルコホスホムターゼとは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐熱性グルコホスホムターゼは、ピュロコックス・フリオススに由来する。
【0014】
具体的には、耐熱性グルコースリン酸イソメラーゼは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上で、グルコース-6-リン酸(G6P)をフルクトース-6-リン酸(F6P)に転換する機能を有する酵素である。さらに好ましくは、前記耐熱性グルコースリン酸イソメラーゼは、好熱性微生物、例えば、ジオバチルス・カウストフィルス、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス、サーモトガ・マリティマ、シュードサーモトガ・サーマルム、サーモコッカス・コダレンシス、アーケオグロブス・フルギドゥス、サーモアナエロバクター・インディエンシス、ディクチオグロムス・サーモフィラム、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシス、クロストリジウム・サーモセラム、カルディリネア・アエロフィラ、ピュロコックス・フリオスス、サーマス・サーモフィルス、メタノサーモバクター・マーブルゲンシス、アルカエオグロブス・プロファンデュスなどに由来し、又は前記耐熱性グルコースリン酸イソメラーゼのアミノ酸配列は、前記好熱性微生物に由来の耐熱性グルコースリン酸イソメラーゼとは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐熱性グルコースリン酸イソメラーゼはサーマス・サーモフィルスに由来する。
【0015】
具体的には、耐熱性タガトース-6-リン酸4位エピメラーゼは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上で、フルクトース-6-リン酸(F6P)をタガトース-6-リン酸(T6P)に異性化する機能を有する酵素である。さらに好ましくは、前記耐熱性タガトース-6-リン酸4位エピメラーゼは、好熱性微生物、例えば、ジオバチルス・カウストフィルス、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス、サーモトガ・マリティマ、シュードサーモトガ・サーマルム、サーモコッカス・コダレンシス、アーケオグロブス・フルギドゥス、サーモアナエロバクター・インディエンシス、ディクチオグロムス・サーモフィラム、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシス、クロストリジウム・サーモセラム、カルディリネア・アエロフィラ、ピュロコックス・フリオスス、サーマス・サーモフィルス、メタノサーモバクター・マーブルゲンシス、アルカエオグロブス・プロファンデュスなどに由来し、又は前記耐熱性タガトース-6-リン酸4位エピメラーゼのアミノ酸配列は、前記好熱性微生物に由来の耐熱性タガトース-6-リン酸4位エピメラーゼとは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐熱性タガトース-6-リン酸4位エピメラーゼは、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシスに由来する。
【0016】
具体的には、前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上で、タガトース-6-リン酸(T6P)からリン酸基を除去して産物タガトース(Tagatose)にする機能を有する酵素である。さらに好ましくは、前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼは、好熱性微生物、例えば、ジオバチルス・カウストフィルス、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス、サーモトガ・マリティマ、シュードサーモトガ・サーマルム、サーモコッカス・コダレンシス、アーケオグロブス・フルギドゥス、サーモアナエロバクター・インディエンシス、ディクチオグロムス・サーモフィラム、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシス、クロストリジウム・サーモセラム、カルディリネア・アエロフィラ、ピュロコックス・フリオスス、サーマス・サーモフィルス、メタノサーモバクター・マーブルゲンシス、アルカエオグロブス・プロファンデュスなどに由来し、又は前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼのアミノ酸配列は、前記好熱性微生物に由来のタガトース-6-リン酸ホスファターゼとは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記タガトース-6-リン酸ホスファターゼは、アーケオグロブス・フルギドゥスに由来する。
【0017】
好ましい実施形態では、α-グルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:グルコホスホムターゼ-油体タンパク質融合タンパク質:グルコースリン酸イソメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:タガトース-6-リン酸ホスファターゼ-油体タンパク質融合タンパク質を(1~2):(1~2):(1~2):(2~4):(2~4)の質量比で混合する。
【0018】
好ましくは、前記油体は、トリグリセリド又はトリグリセリドを含有する動植物油であり、前記リン脂質は、例えば動物由来のリン脂質、具体的には、レシチン、セファリン、又はカルジオリピンなどである。
【0019】
好ましい実施形態では、融合タンパク質の全量とトリグリセリドとを0.5~3:1の質量比で混合し、トリグリセリドとレシチンとを100:1の質量比で混合し、次に、サンプルを超音波処理する。
【0020】
好ましい実施形態では、前記超音波処理は、電力が20~30%、処理時間が5~15分間であり、前記遠心分離は、8000~12000rpm/minで5~15min遠心分離する。
【0021】
本発明はまた、タガトースの製造における、前記人工油体固定化酵素の使用を提供する。
【0022】
具体的な実施形態では、澱粉又は澱粉誘導体を原料として、前記人工油体共固定化多酵素を利用して、酵素触媒変換法によりタガトースを製造する。より具体的なステップは、澱粉又は澱粉誘導体50~150g/L、pH 6.0~7.0のHEPES緩衝液80~120mM、無機リン酸塩8~12mM、二価マグネシウムイオン3~7mM、亜鉛イオン又はマンガンイオン0.3~0.7mM、枝切り酵素3~7U/ml、前記人工油体共固定化多酵素1~5mg/mlを、40~70℃で酵素触媒変換反応させ、生成したタガトースを収集することである。
【0023】
さらに、反応終了後、固液分離を行い、前記人工油体共固定化多酵素を収集し、タガトースの製造にリサイクルする。例えば、前記人工油体共固定化多酵素は2~20回もリサイクル可能である。
【発明の効果】
【0024】
人工油体共固定化多酵素を用いることにより、多酵素のカスケード触媒反応において固定化単一酵素を混合して使用することによる物質移動に関する問題を回避し、多酵素の精製と固定化を同時に行うことを可能にし、固定化酵素の製造プロセスを簡略化する。人工油体は、固定化酵素のマトリックとされると、安価であるだけでなく、固定化酵素の安定性を向上させることができる。この人工油体固定化多酵素は、タガトースを生産する反応に用いられると、簡単な処理だけで再利用することができ、生産コストを削減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】プラスミド構築の模式図である。
図2】融合タンパク質のSDS-PAGE電気泳動分析である。レーンMはタンパク質markerであり、レーン1-3はグルカンホスホリラーゼ細胞総タンパク質、超音処理上清、超音処理沈殿であり、レーン4-6はグルコホスホムターゼ細胞総タンパク質、超音処理上清、超音処理沈殿であり、レーン7-9はグルコースリン酸イソメラーゼ細胞総タンパク質、超音処理上清、超音処理沈殿であり、レーン10-12はタガトース6-リン酸4-エピメラーゼ細胞総タンパク質、超音処理上清、超音処理沈殿であり、レーン13~15はタガトース-6-リン酸ホスファターゼ細胞総タンパク質、超音処理上清、超音処理沈殿である。
図3】人工油体固定化酵素の製造の流れである。
図4】人工油体固定化グルカンホスホリラーゼの活性検出である。
図5】人工油体固定化グルコホスホムターゼの活性検出である。
図6】人工油体固定化グルコースリン酸イソメラーゼの活性検出である。
図7】人工油体固定化タガトース6-リン酸4-エピメラーゼの活性検出である。
図8】人工油体固定化タガトース-6-リン酸ホスファターゼの活性検出である。
図9】人工油体固定化単一酵素を混合して反応を行うことによるタガトースの生産である。
図10】人工油体共固定化多酵素によるタガトース生産における濃度検出である。
図11】人工油体共固定化多酵素のリサイクルである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について、具体的な実施形態及び実施例によってさらに説明する。当業者は本明細書の内容を参考にして、プロセスパラメータの実装を適切に改善することができる。特に、類似したすべての置換及び変更は当業者にとって自明であり、これらはすべて本発明に含まれるものとみなされる。当業者であれば、本発明の内容、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された方法及び使用を修正したり、適切に変更したり、組み合わせたりして、本発明の技術を実施し、使用できることが明らかである。
【0027】
実施例1 発現ベクターの構築及び融合タンパク質の発現
1、発現ベクターの構築
遺伝子組換え技術を利用して、グルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、グルコホスホムターゼ-油体タンパク質融合タンパク質、グルコースリン酸イソメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質、及びタガトース-6-リン酸ホスファターゼ-油体タンパク質融合タンパク質の遺伝子をそれぞれ発現ベクター上に構築した。
【0028】
本実施例では、まず、遺伝子合成によって、ゴマ由来のoleosinタンパク質(NCBI Reference Sequence:XP_011076526.1)の最初の140アミノ酸コード遺伝子についてコドン最適化を行ったもの(SEQ ID NO.1)をベクターpET20b(酵素消化部位はNdeI和XhoI)に合成し、pET20b-oleosinを得た。次に、サーモトガ・マリティマに由来のα-グルカンホスホリラーゼ(KEGGにおける遺伝子の番号はTM1168)、ピュロコックス・フリオススに由来のグルコホスホムターゼ(KEGGにおける遺伝子の番号はPF0588、サーマス・サーモフィルスに由来のグルコースリン酸イソメラーゼ(KEGGにおける遺伝子の番号はTTHA0277)、カルディセルロシロプトル・クロノツキーエンシスに由来のタガトース-6-リン酸4位エピメラーゼ(遺伝子がコードする酵素のKEGGにおける番号はCalkro_0564)、アーケオグロブス・フルギドゥスに由来のタガトース-6-リン酸ホスファターゼ(KEGGにおける遺伝子の番号はAF_0444)という5つの遺伝子を遺伝子合成により取得して、pET20b-oleosinベクターにクローニングし、対応する発現ベクターpET20b-TmαGP-oleosin、pET20b-pfuPGM-oleosin、pET20b-TtcPGI-oleosin、pET20b-CkTPE-oleosin、及びpET20b-AfTPP-oleosinを得た。それらのプラスミドの構築の示意図を図1に示す。
【0029】
2、融合タンパク質の発現
上記のプラスミドのすべてを大腸菌発現菌BL21(DE3)(Invitrogen ,Carlsbad,CA)に形質転換し、単クローンを選択して発酵培養を行い、そのOD600が0.8~1.0になると、イソプロピル-β-Dチオガラクトピラノシド(IPTG、200mM/L)による誘導によりこの単クローンに融合タンパク質を大量で発現させた。菌液を収集し、6000rpm/minの回転数で菌液を10分間遠心分離し、次に、0.9%塩化ナトリウム溶液で菌体を洗浄し、菌体を収集した後、超音波破砕(電力50%;破砕時間10min)を行い、遠心分離して沈殿を収集し、融合タンパク質を得た。得た融合タンパク質をドデシルスルホン酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりタンパク質電気泳動分析を行った。結果を図2に示す。
【0030】
実施例2 人工油体固定化単一酵素及びその酵素活性検出
1、人工油体固定化グルカンホスホリラーゼ
図3に示す製造の流れに従って、本発明の人工油体固定化グルカンホスホリラーゼを構築した。
【0031】
実施例1で製造されたグルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質(100mg)を試験管に加え、トリグリセリド75mg、レシチン750μgを添加してから、サンプルを超音波処理し(電力20~30%)、10min後、10000rpm/minで遠心分離し、上層白色物質を収集し、人工油体固定化グルカンホスホリラーゼを得た。
【0032】
2、人工油体固定化グルコホスホムターゼ:方法では、固定化される酵素をグルカンホスホリラーゼからグルコホスホムターゼに変更した以外、上記の第1点とステップが同様であった。
【0033】
3、人工油体固定化グルコースリン酸イソメラーゼ:方法では、固定化される酵素をグルカンホスホリラーゼからグルコースリン酸イソメラーゼに変更した以外、上記の第1点とステップが同様であった。
【0034】
4、人工油体固定化タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ:方法では、固定化される酵素をグルカンホスホリラーゼからタガトース6-リン酸4-エピメラーゼに変更した以外、上記の第1点とステップが同様であった。
【0035】
5、人工油体固定化タガトース-6-リン酸ホスファターゼ:方法では、固定化される酵素をグルカンホスホリラーゼからタガトース-6-リン酸ホスファターゼに変更した以外、上記の第1点とステップが同様であった。
【0036】
6、人工油体固定化単一酵素の酵素活性検出
本実施例の上記で製造された各固定化単一酵素をそれぞれ使用して、以下の方法によってタガトースを製造した。
澱粉10g/L、pH 6.5のHEPES緩衝液100mM、無機リン酸塩40mM、二価マグネシウムイオン5mM、亜鉛イオン又はマンガンイオン0.5mM、枝切り酵素1U/ml、グルカンホスホリラーゼ0.1g/L、グルコホスホムターゼ0.1g/L、グルコースリン酸イソメラーゼ0.1g/L、タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ0.2g/L、タガトース-6-リン酸ホスファターゼ0.2g/Lを70℃で反応させ、高速液体クロマトグラフィーによってタガトースの濃度を検出した。上記の実施例の固定化単一酵素の酵素活性検出には、本実施例の上記で製造された各固定化単一酵素のそれぞれを、これらに対応する遊離酵素の代わりに活性検出にかけた。
【0037】
本実施例で製造された固定化グルカンホスホリラーゼを用いて上記の反応を行う場合、1h反応させると、2.5g/Lタガトースを生産し、8h反応させると反応の平衡を達成させ、5.5g/Lタガトースを生成した。遊離酵素を用いる場合、1h反応させると、5.0g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.0g/Lタガトースを生成した。遊離酵素と比較して、人工油体固定化グルカンホスホリラーゼは、50%の初期相対酵素活性を有する(図4)。
【0038】
本実施例で製造された固定化グルコホスホムターゼを用いて上記の反応を行う場合、1h反応させると、5.0g/Lタガトースを生産し、6h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.4g/Lタガトースを生成した。遊離酵素を用いる場合、1h反応させると、5.0g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.0g/Lタガトースを生成した。遊離酵素と比較して、人工油体固定化グルコホスホムターゼは、100%の初期相対酵素活性を有する(図5)。
【0039】
本実施例で製造された固定化グルコースリン酸イソメラーゼを用いて上記の反応を行う場合、1h反応させると、5.7g/Lタガトースを生産し、8h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.5g/Lタガトースを生成した。遊離酵素を用いる場合、1h反応させると、5.0g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.0g/Lタガトースを生成した。未固定化酵素と比較して、人工油体固定化グルコースリン酸イソメラーゼは、114%の初期相対酵素活性を有する(図6)。
【0040】
本実施例で製造された固定化タガトース6-リン酸4-エピメラーゼを用いて上記の反応を行う場合、1h反応させると、5.5g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、6.6g/Lタガトースを生成した。遊離酵素を用いる場合、1h反応させると、5.0g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.0g/Lタガトースを生成した。遊離酵素と比較して、人工油体固定化タガトース6-リン酸4-エピメラーゼは、110%の初期相対酵素活性を有する(図7)。
【0041】
本実施例で製造された固定化人工油体固定化タガトース-6-リン酸ホスファターゼを用いて上記の反応を行う場合、1h反応させると、4.5g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、6.8g/Lタガトースを生成した。遊離酵素を用いた場合、1h反応させると、5.0g/Lタガトースを生産し、5h反応させると、反応の平衡を達成させ、7.0g/Lタガトースを生成した。遊離酵素と比較して、人工油体固定化タガトース-6-リン酸ホスファターゼは、90%の相対酵素活性を有する(図8)。
【0042】
実施例3 人工油体固定化単一酵素を混合して反応を行うことによるタガトースの生産
実施例2による各固定化単一酵素を用いて、以下の方法によってタガトースを製造した。
澱粉100g/L、pH 6.5のHEPES緩衝液100mM、無機リン酸塩40mM、二価マグネシウムイオン5mM、亜鉛イオン又はマンガンイオン0.5mM、枝切り酵素5U/ml、実施例2で製造された各固定化単一酵素(ここで、グルカンホスホリラーゼ0.1g/L、グルコホスホムターゼ0.1g/L、グルコースリン酸イソメラーゼ0.1g/L、タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ0.2g/L、タガトース-6-リン酸ホスファターゼ0.2g/L)を70℃で反応させ、高速液体クロマトグラフィーによって、タガトースの濃度を検出した。
【0043】
図9に示す結果から、2h反応後、生産されたタガトースの濃度は14g/Lであり、12h反応後、タガトースを生産する反応は平衡になり、生産されたタガトースの濃度が50g/Lであった。
【0044】
実施例4 人工油体共固定化多酵素によるタガトースの生産
実施例1で製造された5種類の融合タンパク質(100mg)を、グルカンホスホリラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:グルコホスホムターゼ-油体タンパク質融合タンパク質:グルコースリン酸イソメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ-油体タンパク質融合タンパク質:タガトース-6-リン酸ホスファターゼ-油体タンパク質融合タンパク質=1.5:1.5:1.5:2:2の質量比で、試験管に加え、トリグリセリド75mg、レシチン750μgを加え、サンプルを超音波処理し(電力20~30%)、10分間後、10000rpm/minで遠心分離し、上層白色物質を収集し、人工油体共固定化多酵素を得た。
【0045】
該実施例で提供された共固定化多酵素を用いて、以下の方法によりタガトースを製造した。
澱粉100g/L、pH 6.5のHEPES緩衝液100mM、無機リン酸塩40mM、二価マグネシウムイオン5mM、亜鉛イオン又はマンガンイオン0.5mM、枝切り酵素5U/ml、上記実施例で提供される固定化酵素(又は未固定化酵素)(グルカンホスホリラーゼ0.1g/L、グルコホスホムターゼ 0.1g/L、グルコースリン酸イソメラーゼ0.1g/L、タガトース6-リン酸4-エピメラーゼ0.2g/L、タガトース-6-リン酸ホスファターゼ0.2g/L)を70℃で反応させ、高速液体クロマトグラフィーによってタガトースの濃度を検出した。
【0046】
図10に示すように、高速液体クロマトグラフィーによって検出して分析した結果、2h反応させると、生産されたタガトースの濃度は21g/Lであり、12h反応させると、タガトースを生産する反応は反応の平衡を達成させ、生産されたタガトースの濃度が70g/Lである。実施例2と比較して、実施例3は、タガトースの初期生産速度がより速く、生産されたタガトースの濃度がより高い。
【0047】
実施例5 人工油体共固定化多酵素のリサイクル
実施例3で提供された方法によってタガトースを製造した後、固液分離を行い、共固定化多酵素を収集し、タガトースの製造にリサイクルした。高速液体クロマトグラフィーによって、サイクルごとのタガトースの濃度を検出し、その結果、生産されたタガトースの相対濃度で表し、1回目の反応のサイクルに生じたタガトースの濃度を100%とした。その結果、図11に示すように、人工油体共固定化多酵素は、20回リサイクルしていても、50%の相対酵素活性を維持できる。
【0048】
本発明は、一般的な説明、具体的な実施形態、及び試験を用いて、上述したように詳細に説明されているが、本発明に基づいて、いくつかの修正又は改良がなされてもよいことは、当業者にとって自明である。したがって、本発明の精神を逸脱することなく行われたこれらの修正又は改良は、いずれも本発明の請求項に係る範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024513075000001.app
【国際調査報告】