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特表2024-513087部位特異的改変のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】部位特異的改変のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240313BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240313BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240313BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N5/10
C12N9/22
C12N15/11 Z
C12N15/55
C07K19/00
C07K14/47
C07K14/195
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561238
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2022059070
(87)【国際公開番号】W WO2022214522
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,651
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/292,144
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】リィ,ソンユエン
(72)【発明者】
【氏名】マレスカ,マルチェッロ
(72)【発明者】
【氏名】スヴィコヴィッチ,サーシャ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、RNAガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本開示はまた、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、並びにガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。本開示は更に、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及びDNAポリメラーゼ動員部分を含む融合タンパク質を提供する。また、細胞の標的DNAにおいて標的挿入を提供するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、前記DNA鋳型配列が、前記ポリヌクレオチドの3’末端にある、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記DNA鋳型配列が、修飾ヌクレオチド、非B型DNA構造体、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ動員部分、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記修飾ヌクレオチドが、脱塩基部位、共有結合リンカー、異種核酸(XNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、DNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、メチル化ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記共有結合リンカーが、トリエチレングリコール(TEG)を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記DNA損傷体が、8-オキソグアニン、チミン-グリコール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記DNA光産物が、シクロブタンピリミジン二量体(CPD)、ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記修飾デオキシリボヌクレオシドが、デオキシウリジンを含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記メチル化ヌクレオチドが、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシトシン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記非B型DNA構造体が、ヘアピン、十字形、Z-DNA、H-DNA(三重らせんDNA)、グアニン四重鎖DNA(四重らせんDNA)、スリップDNA、粘着性DNA、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記DNAポリメラーゼ動員部分が、前記DNA鋳型配列に連結されたDNAポリメラーゼ動員タンパク質を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記DNAポリメラーゼ動員タンパク質が、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記DNAリガーゼ動員部分が、前記DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、前記DNA鋳型配列が前記ポリヌクレオチドの3’末端にあり、前記DNA鋳型配列がホスホロチオエート結合を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記DNA鋳型配列が、プライマー結合配列及び目的配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記Cas結合領域がRNAを含むか、又は前記Cas結合領域がRNA及びDNAの組み合わせを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記Cas結合領域が、tracrRNAを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記Cas結合領域が、tracrRNAにハイブリダイズすることができる、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記tracrRNAが、Casヌクレアーゼに結合することができる、請求項16又は17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記Casヌクレアーゼが、Cas9又はCas12aである、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記Casヌクレアーゼが、II-B型Casである、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
前記tracrRNAが、Casニッカーゼに結合することができる、請求項16又は17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記Casニッカーゼが、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記DNA鋳型配列が、約8~約10000ヌクレオチド長である、請求項1~22のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記プライマー結合配列が、約4~約300ヌクレオチド長である、請求項14~23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記目的配列が、約4~約100ヌクレオチド長である、請求項14~24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記RNAガイド配列が、約15~約25ヌクレオチド長である、請求項1~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記Cas結合領域と前記DNA鋳型配列との間に位置するスペーサーを更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
前記スペーサーが、DNAポリメラーゼの停止配列を含む、請求項27に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記スペーサーが、2つ以上の停止配列を含む、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記停止配列が、二次構造から構成される、請求項28又は29に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
前記二次構造が、ステムループから構成される、請求項30に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記スペーサーが、約10~約200ヌクレオチド長である、請求項27~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む細胞。
【請求項34】
Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、
(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、前記DNA鋳型配列が前記ポリヌクレオチドの3’末端にある、ポリヌクレオチドと、
を含む組成物。
【請求項35】
Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、
(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記第1のハイブリダイゼーション領域が前記第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、
(i)前記第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)DNA鋳型配列を含む、第2のポリヌクレオチドと、
を含む組成物。
【請求項36】
Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、
(i)ガイド配列、及び(ii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記第1のハイブリダイゼーション領域が前記第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、
(i)前記第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドと、
を含む組成物。
【請求項37】
前記DNA鋳型配列が、プライマー結合配列及び目的配列を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記DNA鋳型配列が、修飾ヌクレオチド、非B型DNA構造体、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ動員部分、又はこれらの組み合わせを含む、請求項34~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記修飾ヌクレオチドが、脱塩基部位、共有結合リンカー、異種核酸(XNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、DNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、メチル化ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記修飾ヌクレオチドが、ホスホロチオエート結合を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記共有結合リンカーが、トリエチレングリコール(TEG)を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
前記DNA損傷体が、8-オキソグアニン、チミン-グリコール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項43】
前記DNA光産物が、シクロブタンピリミジン二量体(CPD)、ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項44】
前記デオキシリボヌクレオシドが、デオキシウリジンを含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項45】
前記メチル化ヌクレオチドが、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシトシン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項46】
前記非B型DNA構造体が、ヘアピン、十字形、Z-DNA、H-DNA(三重らせんDNA)、グアニン四重鎖DNA(四重らせんDNA)、スリップDNA、粘着性DNA、又はこれらの組み合わせを含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項47】
前記DNAポリメラーゼ動員部分が、前記DNA鋳型配列に連結されたDNAポリメラーゼ動員タンパク質から構成される、請求項38に記載の組成物。
【請求項48】
前記DNAポリメラーゼ動員タンパク質が、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記DNAリガーゼ動員部分が、前記DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる、請求項38に記載の組成物。
【請求項50】
前記ガイド配列がRNAを含むか、又は前記ガイド配列がRNA及びDNAの組み合わせを含む、請求項34~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記Cas結合領域がRNAを含むか、又は前記Cas結合領域がRNA及びDNAの組み合わせを含む、請求項34~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記Cas結合領域が、tracrRNAを含む、請求項34~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
前記Cas結合領域が、tracrRNAにハイブリダイズすることができ、前記組成物が、tracrRNAを更に含む、請求項34~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
前記tracrRNAが、前記Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼに結合することができる、請求項52又は53に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物が、Casヌクレアーゼを含む、請求項34~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
前記Casヌクレアーゼが、Cas9又はCas12aである、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記組成物がCasヌクレアーゼを含み、前記CasヌクレアーゼがII-B型Casである、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記組成物が、Casニッカーゼを含む、請求項34~54のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記Casニッカーゼが、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記DNA鋳型配列が、約8~約500ヌクレオチド長である、請求項34~59のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
前記プライマー結合配列が、約4~約30ヌクレオチド長である、請求項34~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記目的配列が、約4~約100ヌクレオチド長である、請求項34~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記ガイド配列が、約15~約25ヌクレオチド長である、請求項34~62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記第1のハイブリダイゼーション領域及び前記第2のハイブリダイゼーション領域がRNAである、請求項35~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記第1のハイブリダイゼーション領域及び前記第2のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAである、請求項35~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
前記第1のハイブリダイゼーション領域がRNAであり、前記第2のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAであるか、又は前記第1のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAであり、前記第2のハイブリダイゼーション領域がRNAである、請求項35~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
前記第1のハイブリダイゼーション領域が、約4~約5000ヌクレオチド長である、請求項36~66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
前記第2のハイブリダイゼーション領域が、約4~約5000ヌクレオチド長である、請求項36~66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
前記ポリヌクレオチドが、前記DNA鋳型配列の5’に位置するスペーサーを更に含む、請求項34又は37~63のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記第2のポリヌクレオチドが、前記DNA鋳型配列の5’に位置するスペーサーを更に含む、請求項35~68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
前記スペーサーが、DNAポリメラーゼの停止配列を含む、請求項69又は70に記載の組成物。
【請求項72】
前記スペーサーが、2つ以上の停止配列を含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記停止配列が、二次構造から構成される、請求項71又は72に記載の組成物。
【請求項74】
前記二次構造が、ステムループから構成される、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
前記スペーサーが、約10~約200ヌクレオチド長である、請求項69~74のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項76】
前記Casヌクレアーゼ又は前記Casニッカーゼが、DNAポリメラーゼ動員タンパク質に融合されている、請求項34~75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
前記DNAポリメラーゼ動員タンパク質が、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合、ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、
(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記プライマー結合配列が前記第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、
(i)前記第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドと、
を含む組成物。
【請求項79】
Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、
(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記第1のハイブリダイゼーション領域が前記第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、
(i)前記第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、前記プライマー結合配列が前記第2のポリヌクレオチドの3’末端にある、第2のポリヌクレオチドと、
(i)前記第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第3のポリヌクレオチドと、
を含む組成物。
【請求項80】
前記第1のポリヌクレオチド及び/又は前記第2のポリヌクレオチドが、RNA、DNA、修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項78に記載の組成物。
【請求項81】
前記第1のポリヌクレオチド及び/又は前記第2のポリヌクレオチドが、相同配列を更に含む、請求項78又は80に記載の組成物。
【請求項82】
前記第1のポリヌクレオチドが、(v)前記相同配列を更に含み、前記第2のポリヌクレオチドが、前記第2のハイブリダイゼーション領域と、前記SOIと、前記第1のポリヌクレオチドとハイブリダイズする更なるハイブリダイゼーション領域とを含み、前記第2のハイブリダイゼーション領域及び前記更なるハイブリダイゼーション領域が、前記SOIを挟んでいる、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
前記第1のポリヌクレオチド、前記第2のポリヌクレオチド、及び/又は前記第3のポリヌクレオチドのいずれかが、RNA、DNA、修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項79に記載の組成物。
【請求項84】
前記第1のポリヌクレオチド、前記第2のポリヌクレオチド、及び/又は前記第3のポリヌクレオチドのいずれかが、相同配列を更に含む、請求項79又は83に記載の組成物。
【請求項85】
前記修飾ヌクレオチドが、脱塩基部位、共有結合リンカー、異種核酸(XNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、DNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、メチル化ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項80又は83に記載の組成物。
【請求項86】
前記SOIに相補的な配列から構成されるSOI相補的オリゴヌクレオチドを更に含む、請求項78~85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
前記SOI相補的オリゴヌクレオチドが、相同配列を更に含む、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
前記Casヌクレアーゼ又は前記Casニッカーゼが、DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせに融合されている、請求項78~87のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
前記DNAポリメラーゼ動員部分が、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合、ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
前記DNAリガーゼが、T4 DNAリガーゼ、PCBV-1 DNAリガーゼ、LigD、ヒトリガーゼタンパク質、又はこれらの組み合わせを含む、請求項88に記載の組成物。
【請求項91】
前記DNAリガーゼ動員部分が、前記DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる、請求項88に記載の組成物。
【請求項92】
前記DNA結合タンパク質が、複製タンパク質A(RPA)若しくはそのサブユニット、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項91に記載の組成物。
【請求項93】
前記DNA修復タンパク質が、チロシル-DNAホスホジエステラーゼ1(TDP1)、アプラタキシン、トポイソメラーゼI、又はこれらの組み合わせを含む、請求項88に記載の組成物。
【請求項94】
前記Cas結合領域が、tracrRNAを含む、請求項78~93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項95】
前記Cas結合領域が、tracrRNAにハイブリダイズすることができ、前記組成物が、tracrRNAを更に含む、請求項78~93のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項96】
前記tracrRNAが、前記Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼに結合することができる、請求項94又は95に記載の組成物。
【請求項97】
前記組成物が、Casヌクレアーゼを含む、請求項78~96のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項98】
前記Casヌクレアーゼが、Cas9又はCas12aである、請求項97に記載の組成物。
【請求項99】
前記Casヌクレアーゼが、II-B型Casである、請求項97に記載の組成物。
【請求項100】
前記組成物が、Casニッカーゼを含む、請求項78~96のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
前記Casニッカーゼが、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
前記目的配列が、約4~約100ヌクレオチド長である、請求項78~101のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項103】
前記プライマー結合配列が、約4~約30ヌクレオチド長である、請求項78~102のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項104】
前記ガイド配列が、約15~約25ヌクレオチド長である、請求項78~103のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項105】
前記第1のハイブリダイゼーション領域、及び/又は前記第2のハイブリダイゼーション領域が、それぞれ約4~約5000ヌクレオチド長である、請求項78~104のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項106】
請求項34~105のいずれか一項に記載の組成物を含む細胞。
【請求項107】
外来性DNAポリメラーゼ、外来性DNAリガーゼ、又はその両方を更に含む、請求項106に記載の細胞。
【請求項108】
(i)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及び(ii)DNAポリメラーゼ動員タンパク質、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせを含む、融合タンパク質。
【請求項109】
前記融合タンパク質が、Casヌクレアーゼを含む、請求項108に記載の融合タンパク質。
【請求項110】
前記Casヌクレアーゼが、Cas9又はCas12aである、請求項109に記載の融合タンパク質。
【請求項111】
前記Casヌクレアーゼが、II-B型Casである、請求項109に記載の融合タンパク質。
【請求項112】
前記融合タンパク質が、Casニッカーゼを含む、請求項108に記載の融合タンパク質。
【請求項113】
前記Casニッカーゼが、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである、請求項112に記載の融合タンパク質。
【請求項114】
前記DNAポリメラーゼ動員タンパク質が、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む、請求項108~113のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項115】
前記DNAリガーゼが、T4 DNAリガーゼ、PCBV-1 DNAリガーゼ、LigD、ヒトリガーゼタンパク質、又はこれらの組み合わせを含む、請求項108~113のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項116】
前記DNAリガーゼ動員部分が、前記DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる、請求項108~113のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項117】
前記DNA結合タンパク質が、複製タンパク質A(RPA)若しくはそのサブユニット、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、又はこれらの組み合わせを含む、請求項108~113のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項118】
前記DNA修復タンパク質が、チロシル-DNAホスホジエステラーゼ1(TDP1)、アプラタキシン、トポイソメラーゼI、又はこれらの組み合わせを含む、請求項108~113のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項119】
請求項108~118のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項120】
請求項119に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項121】
請求項108~118のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項119に記載のポリヌクレオチド、請求項120に記載のベクター、又はこれらの組み合わせを含む細胞。
【請求項122】
請求項1~32のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを更に含む、請求項121に記載の細胞。
【請求項123】
細胞内の標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法であって、請求項34~77のいずれか一項に記載の組成物を前記細胞に導入することを含み、前記ガイド配列が、前記標的DNAにハイブリダイズすることができる方法。
【請求項124】
前記方法が、DNAポリメラーゼを前記細胞に導入することを含まない、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記Casヌクレアーゼが、前記標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、前記細胞の内在性DNAポリメラーゼが、前記DNA鋳型配列を伸長する、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記方法が、外来性DNAポリメラーゼを前記細胞に導入することを更に含む、請求項123に記載の方法。
【請求項127】
前記Casヌクレアーゼが、前記標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、前記外来性DNAポリメラーゼが、前記DNA鋳型配列を伸長する、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記DNA鋳型配列が、プライマー結合配列及び目的配列を含み、前記DNAポリメラーゼが、前記目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、前記目的配列を含む二本鎖配列を形成する、請求項125~127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
前記二本鎖配列が、前記開裂された標的DNAに挿入される、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記二本鎖配列が、非相同末端連結(NHEJ)により、前記開裂された標的DNAに挿入される、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記二本鎖配列が、DNAリガーゼにより、前記開裂された標的DNAに挿入される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記DNAリガーゼが、前記細胞の内在性DNAリガーゼである、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記DNAリガーゼが、外来性DNAリガーゼである、請求項131に記載の方法。
【請求項134】
細胞内の標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法であって、請求項78~105のいずれか一項に記載の組成物を前記細胞に導入することを含み、前記ガイド配列が、前記標的DNAにハイブリダイズすることができる方法。
【請求項135】
前記方法が、DNAポリメラーゼ又はDNAリガーゼを前記細胞に導入することを含まない、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記Casヌクレアーゼが、前記標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、前記細胞の内在性DNAリガーゼが、前記開裂された標的DNAに前記目的配列をライゲートする、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記方法が、外来性DNAリガーゼを前記細胞に導入することを更に含む、請求項134に記載の方法。
【請求項138】
前記Casヌクレアーゼが、前記標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、前記外来性DNAリガーゼが、前記開裂された標的DNAに前記目的配列をライゲートする、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記目的配列が、前記細胞のDNA修復経路により二本鎖配列に変換される一本鎖配列である、請求項134~138のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法であって、請求項78~105のいずれか一項に記載の組成物を前記標的DNAと接触させることを含み、前記ガイド配列が、前記標的DNAにハイブリダイズすることができる方法。
【請求項141】
前記標的DNAをDNAリガーゼと接触させることを更に含む、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
前記Casヌクレアーゼが、前記標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、前記DNAリガーゼが、前記開裂された標的DNAに前記目的配列をライゲートする、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記標的DNAを、DNAポリメラーゼ、DNA修復経路内のタンパク質、又はこれらの組み合わせと接触させることを更に含む、請求項140~143のいずれか一項に記載の方法。
【請求項144】
Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、
(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記プライマー結合配列が前記第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、
(i)前記第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドと、
(i)前記第2のポリヌクレオチドと部分的に相補的な第3のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第3のポリヌクレオチドと、
を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RNAガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本開示はまた、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、並びにガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。本開示は更に、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及びDNAポリメラーゼ動員部分を含む融合タンパク質を提供する。また、細胞の標的DNAにおいて標的挿入を提供するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
CRISPR/Cas9などのプログラム可能なヌクレアーゼは、標的部位に挿入と欠失との組み合わせ(インデル)を誘導することによって遺伝子を破壊することができる、部位特異的二本鎖切断(DSB)を生じさせることができる。しかしながら、鋳型依存性の相同性配向型修復(HDR)に依拠するDSB修復では、頻度が低い可能性があるが、一方で、高効率の鋳型非依存性の非相同末端連結(NHEJ)では、エラーが発生しやすく、所望の挿入が優先されない場合がある。
【0003】
非特許文献1では、Cas9ニッカーゼ-逆転写酵素融合酵素を利用して開裂部位に短い配列を挿入するプライム編集の開発が記載されている。プライム編集は、RNAの除去と、標的部位への一本鎖DNAのハイブリダイゼーションとの複雑なメカニズムに依拠するものであり、細胞平衡による重複する「フラップ」配列を除去することも必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Anzalone et al.(Nature 576;149-157(2019)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にある、ポリヌクレオチドを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、修飾ヌクレオチド、非B型DNA構造体、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ動員部分、又はこれらの組み合わせを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、脱塩基部位、共有結合リンカー、異種核酸(XNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、DNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、メチル化ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、共有結合リンカーは、トリエチレングリコール(TEG)を含む。いくつかの実施形態では、DNA損傷体は、8-オキソグアニン、チミン-グリコール、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA光産物は、シクロブタンピリミジン二量体(CPD)、ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオシドは、デオキシウリジンを含む。いくつかの実施形態では、メチル化ヌクレオチドは、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシトシン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、非B型DNA構造体は、ヘアピン、十字形、Z-DNA、H-DNA(三重らせんDNA)、グアニン四重鎖DNA(四重らせんDNA)、スリップDNA、粘着性DNA、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員部分は、DNA鋳型配列に連結されたDNAポリメラーゼ動員タンパク質から構成される。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼ動員部分は、DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にあり、DNA鋳型配列がホスホロチオエート結合を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、DAN鋳型配列は、ポリヌクレオチドの5’末端にある。
【0010】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、プライマー結合配列及び目的配列を含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域はRNAを含むか、又はCas結合領域はRNA及びDNAの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAにハイブリダイズすることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、tracrRNAは、Casヌクレアーゼに結合することができる。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas9又はCas12aである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、II-B型Casである。いくつかの実施形態では、tracrRNAは、Casニッカーゼに結合することができる。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである。
【0012】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約8~約10000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約4~約300ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約4~約100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、RNAガイド配列は、約15~約25ヌクレオチド長である。
【0013】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、Cas結合領域とDNA鋳型配列との間に位置するスペーサーを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、DNAポリメラーゼの停止配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、2つ以上の停止配列を含む。いくつかの実施形態では、停止配列は、二次構造から構成される。いくつかの実施形態では、二次構造は、ステムループから構成される。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約10~約200ヌクレオチド長である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含む細胞を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドとを含む組成物であって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にある組成物を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む組成物を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、及び(ii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む組成物を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、プライマー結合配列及び目的配列を含む。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、修飾ヌクレオチド、非B型DNA構造体、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ動員部分、又はこれらの組み合わせを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、脱塩基部位、共有結合リンカー、異種核酸(XNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、DNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、メチル化ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含む。いくつかの実施形態では、共有結合リンカーは、トリエチレングリコール(TEG)を含む。いくつかの実施形態では、DNA損傷体は、8-オキソグアニン、チミン-グリコール、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA光産物は、シクロブタンピリミジン二量体(CPD)、ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、デオキシリボヌクレオシドは、デオキシウリジンを含む。いくつかの実施形態では、メチル化ヌクレオチドは、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシトシン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、非B型DNA構造体は、ヘアピン、十字形、Z-DNA、H-DNA(三重らせんDNA)、グアニン四重鎖DNA(四重らせんDNA)、スリップDNA、粘着性DNA、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員部分は、DNA鋳型配列に連結されたDNAポリメラーゼ動員タンパク質から構成される。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼ動員部分は、DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、ガイド配列はRNAを含むか、又はガイド配列はRNA及びDNAの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域はRNAを含むか、又はCas結合領域はRNA及びDNAの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAにハイブリダイズすることができ、組成物はtracrRNAを更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、tracrRNAは、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼに結合することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、Casヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas9又はCas12aである。いくつかの実施形態では、組成物はCasヌクレアーゼを含み、CasヌクレアーゼはII-B型Casである。いくつかの実施形態では、組成物は、Casニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである。
【0023】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約8~約500ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約4~約30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約4~約100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、RNAガイド配列は、約15~約25ヌクレオチド長である。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域及び第2のハイブリダイゼーション領域は、RNAである。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域及び第2のハイブリダイゼーション領域は、一本鎖DNAである。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域がRNAであり、第2のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAであるか、又は第1のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAであり、第2のハイブリダイゼーション領域がRNAである。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約4~約5000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約4~約5000クレオチド長である。
【0025】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNA鋳型配列の5’に位置するスペーサーを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、DNA鋳型配列の5’に位置するスペーサーを更に含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、DNAポリメラーゼの停止配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、2つ以上の停止配列を含む。いくつかの実施形態では、停止配列は、二次構造から構成される。いくつかの実施形態では、二次構造は、ステムループから構成される。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約10~約200ヌクレオチド長である。
【0026】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ動員タンパク質に融合されている。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、外来性DNAポリメラーゼ、外来性DNAリガーゼ、又はその両方を更に含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及び(ii)DNAポリメラーゼ動員タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、Casヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas9又はCas12aである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、II-B型Casである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、Casニッカーゼを含む。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas9ニッカーゼ、Cas12aニッカーゼ、又はII-B型Casニッカーゼである。
【0030】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、融合タンパク質、ベクター、又はポリヌクレオチドを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む本明細書に記載されるポリヌクレオチドであって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にある、ポリヌクレオチドを更に含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞内の標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法であって、本明細書に記載される組成物を細胞に導入することを含み、ガイド配列が標的DNAにハイブリダイズすることができる方法を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、DNAポリメラーゼを細胞に導入することを含まない。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼが、標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、細胞の内在性DNAポリメラーゼが、DNA鋳型配列を伸長する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、外来性DNAポリメラーゼを細胞に導入することを更に含む。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼが、標的DNAに二本鎖開裂を生じさせ、外来性DNAポリメラーゼが、DNA鋳型配列を伸長する。
【0035】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、プライマー結合配列及び目的配列を含み、DNAポリメラーゼが、目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、目的配列を含む二本鎖配列を形成する。いくつかの実施形態では、二本鎖配列は、開裂された標的DNAに挿入される。いくつかの実施形態では、二本鎖配列は、非相同末端連結(NHEJ)により、開裂された標的DNAに挿入される。いくつかの実施形態では、二本鎖配列は、DNAリガーゼにより、開裂された標的DNAに挿入される。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼは、細胞の内在性DNAリガーゼである。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼは、外来性DNAリガーゼである。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドとを含む組成物に関する。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第2のポリヌクレオチドの3’末端にある、第2のポリヌクレオチドと、(d)(i)第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第3のポリヌクレオチドとを含む組成物に関する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及び(ii)DNAポリメラーゼ動員タンパク質、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせを含む融合タンパク質に関する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるような組成物を細胞に導入することを含み、ガイド配列が標的DNAにハイブリダイズすることができる、細胞内の標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法を提供する。
【0040】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、更に本発明の特定の態様の例示的な実施形態を実証するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本明細書の実施形態に記載される例示的な方法を示す。Casヌクレアーゼがガイド配列により細胞内の標的DNAに誘導され、標的DNAを開裂する。DNA鋳型配列は、(i)プライマーとしての役割を果たす、開裂されたDNAとハイブリダイズする、プライマー結合配列、及び(ii)目的配列を含む。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞の内在性DNAポリメラーゼは、プライマーに結合して目的配列と相補的なDNA鎖を合成し、それによって目的配列を含む二本鎖配列が形成される。二本鎖配列は、DNA修復経路、例えば、NHEJにより、開裂された標的DNAに挿入され得る。
図2A-2D】本明細書に記載されるインビボでの標的挿入実験で試験された、例示的なポリヌクレオチド構築物(「springRNA」)を示す。図2Aは、RNAガイド配列、tracrRNA、及びRNA鋳型配列から構成された、RNAのみのポリヌクレオチドを示す。図2Bは、RNAガイド配列、tracrRNA、及びDNA鋳型配列(「DNA」)又はホスホロチオエート結合を有するDNA鋳型配列(「PS-DNA」)から構成された、RNA-DNAハイブリッドポリヌクレオチドを示す。図2Cは、RNAガイド配列、tracrRNA、及び脱塩基部位を有するRNA鋳型配列から構成された、RNAのみのポリヌクレオチドを示す。図2Dは、RNAガイド配列、tracrRNA、及びTEGを有するRNA鋳型配列から構成された、RNAのみのポリヌクレオチドを示す。
図3】実施例1に関連し、様々なspringRNA構築物による、SpCas9単独又はSpCas9-逆転写酵素(SpCas9-RT)融合タンパク質を使用した標的挿入の結果を示す。図3のパネルA~Eは、SpCas9及び図2A~2DのspringRNA構築物の各々による標的挿入を示す。図3のパネルF~Jは、SpCas9-RT(「PE0」)及び図2A~2DのspringRNA構築物の各々による標的挿入を示す。
図4】実施例1に関連し、図2A~2DのspringRNA構築物の各々と組み合わせた、SpCas9又はSpCas9-RTによる挿入の相対頻度を示す。各々の点は独立した複写物を表している。3回の実験の平均値及び標準偏差をウィスカープロットとして示す。
図5A-5F】実施例2に関連し、SpCas9単独又はSpCas9-RTを使用した標的挿入の結果を示す。図5A~5Cは、SpCas9-RT(「PE0」)と、RNAのみのspringRNA(図5A)、DNAテールを有するspringRNA(図5B)、及びPS-DNAを有するspringRNA(図5C)とによる標的挿入を示す。図5D~5Fは、SpCas9と、RNAのみのspringRNA(図5D)、DNAテールを有するspringRNA(図5E)、及びPS-DNAを含むspringRNA(図5F)とによる標的挿入を示す。
図6】本明細書に記載されるインビトロアッセイの概要を示す。2本の相補的なDNA鎖が、異なるフルオロフォアで標識される(6 FAM標識非標的鎖及びHEX標識標的鎖)。ガイド配列は、Cas9開裂によって長さの異なる2本の鎖が生成されるように設計されている。DNAポリメラーゼにより、springRNAのプライマー結合配列にハイブリダイズした6 FAM標識非標的鎖が伸長する。生成物を変性してキャピラリー電気泳動により分離し、フルオロフォアと結合した鎖を検出する。
図7A-7F】実施例3に関連し、図6に示すインビトロアッセイの結果を示す。青色の線は非標的鎖に対応し、緑色の線は標的鎖に対応する。アスタリスクは開裂した合成標的DNA基質を示し、黒い矢印はDNAポリメラーゼによる伸長生成物を示す。図7Aは、Cas9及びspringRNAによるアッセイ結果を示す。図7Bは、Cas9、クレノウ断片、及びspringRNAによるアッセイ結果を示す。図7C~7Fは、Cas9、Bst 3.0ポリメラーゼ、及び、springRNA(図7C及び7D)、脱塩基部位を有するspringRNA(図7E)、又はTEGを有するspringRNA(図7F)によるアッセイ結果を示す。
図8】Bst 3.0ポリメラーゼ及びクレノウ断片、実施例3のインビトロアッセイで使用したDNAポリメラーゼの伸長反応のカイネティクスを示す。
図9】Casタンパク質(例えば、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ)と、ガイド配列(「スペーサー」と称する)、Cas結合領域(「gRNA足場」と称する)、第1のハイブリダイゼーション領域(「ランディングパッド」と称する)、及びプライマー結合配列(PBS)から構成される第1のポリヌクレオチドと、第2のハイブリダイゼーション領域(「ハイブリダイゼーション配列」と称する)、SOI(「挿入断片」と称する)、及び相同配列から構成される第2のポリヌクレオチドとを含む、本明細書の実施形態に記載される例示的な組成物を示す。図9の組成物の様々な構成成分に関する用語が、図9~23の全体を通して使用されている。
図10A-10C】本明細書の実施形態に記載される例示的な方法を示す。図10Aでは、ガイド配列、Cas結合領域、第1のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合部位が、第1のポリヌクレオチド上に位置している。ガイド配列によって標的DNAに誘導されたCasヌクレアーゼにより、標的DNAに二本鎖切断が生じる。プライマー結合部位は、開裂されたDNAにハイブリダイズされ、第2のポリヌクレオチドは、相補的配列を含む第1及び第2のハイブリダイゼーション領域を介して第1のポリヌクレオチドにハイブリダイズする。第2のポリヌクレオチドは目的配列を含み、この配列がリガーゼにより5’末端と3’末端の両方で開裂されたDNAにライゲートされる(図10A)。第2のポリヌクレオチドは、更に相同配列を含むことができ、その5’末端が、開裂されたDNAにリガーゼによってライゲートされ、その3’末端が、相同性媒介メカニズムによって組み込まれる(図10B)。複合体は、ライゲーション及び/又は相同性媒介組み込みの後に二本鎖DNAへと変換され、それによって標的DNAに目的配列が組み込まれる(図10C)。
図11A-11J】本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図11(A)は、3つのエレメントである、第2のハイブリダイゼーション配列、目的配列、及び相同配列を全て含むドナーを示す。図11(B)は、相同配列を含まないドナーを示す。図11(C)は、第2のハイブリダイゼーション配列を含まないドナーを示す。図11(D)は、5’と3’の両方にオーバーハングを有する二本鎖領域の目的配列を形成するように、目的配列に相補的な配列がハイブリダイズされている標準的なドナーを表す。この構成は「オーバーハング」と称される。図11(E)は、図11(A)のようなドナーを示しているが、plugRNAが2つの核酸で構成されている。sgRNAは、3’末端に付加された、約30ntの長さの配列を有する。この3’配列は相補的なポリヌクレオチドと対合することができ、次いで第1のハイブリダイゼーション配列及びプライマー結合配列が続く。この構成は、「スプリットplugRNA」又は「スプリットシステム」と称される。図11(F)は、図11(A)のような構成を示しているが、ハイブリダイゼーション配列が短く、プライミングされる標的部位の3’末端とドナーの5’末端との間にギャップが生じている。この構成は「ギャップ」と称される。図11(G)は、図11(A)と同一であるが、ドナーは5’末端に追加のヌクレオチドを有しており、いくつかの実施形態ではFEN1及び他の修復機構に関与し得るフラップが生成されている。この構成は「フラップ」と称される。図11(H)は、図11(B)と同一であるが、目的配列に相補的な配列がアニーリングされ、ドナーの3’末端に平滑末端が生成されている。この構成は「平滑」と称される。図11(I)では、ドナーが2つのポリヌクレオチドに分割されている。第1のドナー鎖は、第2のハイブリダイゼーション配列及び目的配列から構成される。第2の配列は、相同配列、及び目的配列に相補的な配列から構成される。この構成は「ブリッジ」と称される。図11(J)では、相同配列が、gRNA足場のすぐ下流のplugRNAに埋め込まれている。この相同配列は、Casによって誘導された切断の3’側にアニーリングする。ドナーは、2つのハイブリダイゼーション配列:第2のハイブリダイゼーション配列及び更なるハイブリダイゼーション配列に挟まれた目的配列から構成され、第2のハイブリダイゼーション配列は第1のハイブリダイゼーション配列と相補的であり、更なるハイブリダイゼーションは相同配列に隣接する領域に相補的である。この構成により、ドナーの5’側と3’側の両方が二本鎖切断に近接する。この構成は「デュアルハイブリダイゼーション」と称される。
図12A-12C】図12Aは、実施例8に記載されるような、例示的なインビトロアッセイの実験設計を示す。図12B及び図12Cは、アッセイの結果を示し、図12Bはライゲーション生成割合を示し、図12Cはライゲーション効率割合を示している。
図13A-13C】図13Aは、実施例9に記載されるような、HeLa核抽出物を使用した例示的なインビトロライゲーションアッセイの実験設計を示す。図13B及び図13Cは、アッセイのヒートマップ結果を示し、図13Bはライゲーション生成割合を示し、図13Cはライゲーション効率割合を示している。
図14A-14B】図14Aは、実施例10に記載されるような、得られたDNAを増幅し、標的挿入について解析した、HeLa核抽出物を使用した例示的なアッセイの実験設計を示す。図14Bは、標的挿入配列の次世代シーケンシング(NGS)結果の表示を示す。
図15】実施例11に記載されるような、図11A~11Jに示される様々な構成の組成物によって実施された例示的なアッセイの結果を示す。
図16A-16B】図16Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図16Bは、実施例12に記載されるような、組成物の異なる構成成分の長さを変更して実施された例示的なアッセイの結果を示す。
図17A-17B】図17Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図17Bは、実施例13に記載されるような、組成物の異なる構成成分の長さを変更して実施された例示的なアッセイの結果を示す。
図18A-18B】図18Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図18Bは、実施例14に記載されるような、組成物の異なる構成成分の長さ及び/又は修飾を変更して実施された例示的なアッセイの結果を示す。
図19A-19B】図19Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図19Bは、実施例15に記載されるような、組成物の異なる構成成分の長さを変更して実施された例示的なアッセイの結果を示す。
図20A-20B】図20Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図20Bは、実施例16に記載されるような、DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)阻害剤の存在下又は非存在下で、組成物の異なる構成成分の長さ及び/又は修飾を変更して実施された例示的アッセイの結果を示す。
図21A-21B】図21Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図21Bは、実施例17に記載されるような、様々な組成物の構成で、且つ同時発現させたDNAリガーゼの存在下で実施した例示的なアッセイの結果を示す。
図22】実施例18に記載されるような、本明細書に記載される組成物の異なる構成で実施したアッセイの結果をまとめたものである。
図23A-23B】図23Aは、本明細書に記載される組成物の例示的な実施形態を示す。図23Bは、実施例19に記載されるような、組成物及び異なるリガーゼ又はDNAポリメラーゼ動員タンパク質によって実施した例示的なアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、改善されたCRISPRシステム及びその構成成分、並びにそれらを使用する方法に関する。一般に、CRISPRシステム、例えばCRISPR/Casシステムは、標的ポリヌクレオチド、例えば標的DNA配列の部位で、ガイドポリヌクレオチド及びCasタンパク質などのCRISPR複合体の形成を促進するエレメントを含む。天然に存在するCRISPRシステム(例えば、細菌性免疫CRISPR/Cas9システム)では、外来性DNAがCRISPRアレイに組み込まれ、次いでCRISPR-RNA(crRNA)を生成する。crRNAは、外来性DNA部位に相補的なRNAガイド配列領域を含み、トランス活性化CRISPR-RNA(tracrRNA)とハイブリダイズするが、このRNAはCRISPRシステムにもコードされている。tracrRNAは、ステムループなどの二次構造を形成し、Cas9タンパク質に結合することができる。crRNA/tracrRNAハイブリッドは、Cas9と会合し、このcrRNA/tracrRNA/Cas9複合体が、プロトスペーサー配列を有する外来性DNAを認識して開裂させることにより、侵入してくるウイルス又はプラスミドに対する免疫が付与される。CRISPR/Casシステムは、更に、例えば、Jinek et al.,Science 337(6096):816-821(2012);Cong et al.,Science 339(6121):819-823(2013);Mali et al.,Science 339(6121):823-826(2013);及びSander et al.,Nat Biotechnol 32:347-355(2014)に記載されている。
【0043】
CRISPR/Casシステムは、標的ポリヌクレオチドへの挿入を導入するように操作されており、標的挿入としても知られている。典型的には、ガイドポリヌクレオチドは、Casタンパク質が標的ポリヌクレオチドで二本鎖開裂を生じさせ、目的配列を含む別個のドナー鋳型が、細胞のDNA修復機構、例えば、非相同末端連結(NHEJ)又は相同性配向型修復(HDR)により、この開裂された標的ポリヌクレオチドに挿入されるように設計されている。挿入の効率は、ドナー鋳型、Casタンパク質、及びガイドポリヌクレオチドのトランスフェクション比;ドナー鋳型の配列及びサイズ;並びに誘発されるDNA修復機構の種類を含む、いくつかの要因に依存する。例えば、HDRは、高い忠実度のDNA修復を提供するが、挿入頻度が低く、その一方で、NHEJは、挿入頻度は高いが、標的DNAに突然変異を導入してしまう可能性もある。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示は、改良された標的挿入方法のための組成物、ポリヌクレオチド、及び/又は融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の組成物、ポリヌクレオチド、及び/又は融合タンパク質により、高度に正確な目的配列の挿入が提供される。いくつかの実施形態では、本開示の組成物、ポリヌクレオチド、及び融合タンパク質により、高度に効率的な目的配列の挿入が提供される。
【0045】
本開示において使用される科学技術用語は、本明細書において特に定義しない限り、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。本明細書で使用される場合、「a」又は「an」(1つの)は、1つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という語と共に使用される場合の「a」又は「an」という語は、1つ又は2つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」又は「更なる」は、少なくとも第2のもの以上を意味し得る。
【0046】
本明細書全体を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために利用される方法/装置に固有の誤差の変動、又は試験対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、「約」という用語は、状況に応じておよそ又は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%未満の変動性を包含することを意味する。
【0047】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すものと明示されない限り、又はその代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ、及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」(及び含む(comprising)の任意の変形又は形態、例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)、「有する(having)」(及び有する(having)の任意の変形又は形態、例えば、「有する(have)」及び「有する(has)」)、「含む(including)」(及び含む(including)の任意の変形又は形態、例えば、「含む(includes)」及び「含む(include)」)、又は「含有する(containing)」(及び含有する(containing)の任意の変形又は形態、例えば、「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」)という用語は、包含的であるか又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法の工程を排除しない。本明細書で説明される任意の実施形態は、本開示の任意のタンパク質、組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、方法及び/又はキットに対して実行することができることが企図される。更に、本開示の組成物、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞及び/又はキットを使用して、本開示の方法及びタンパク質を得ることができる。
【0049】
「例えば」という用語、及びその対応する略語である「例えば(e.g.(イタリック体かそうでないかを問わない)」の使用は、列挙される特定の用語が、別途明示されない限り、参照又は列挙された具体例に限定されることが意図されない本開示の代表的な例及び実施形態であることを意味する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「~」とは、範囲の両端を含む範囲である。例えば、x~yの数は、xとyの数、及びxとyの範囲に入るあらゆる数が明示的に含まれる。
【0051】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、共有結合されたヌクレオチドを含むポリマー化合物を意味する。「核酸」という用語には、リボ核酸(RNA)及びデオキシリボ核酸(DNA)が含まれ、その両方が一本鎖又は二本鎖であり得る。ポリヌクレオチドは、天然に存在する核酸塩基(例えば、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、及びウラシル)、修飾核酸塩基(例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン)、並びに/又は人工核酸塩基(例えば、イソグアニン若しくはイソシトシン)を含み得る。核酸は、5’末端から3’末端に転写される。いくつかの実施形態では、本開示は、RNA及びDNAヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。RNA及びDNAヌクレオチドの両方を含むポリヌクレオチドを生成する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、ライゲーション法又はオリゴヌクレオチド合成法が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるようなCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと複合体を形成することができるポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるタンパク質のいずれか一つ、例えば、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0052】
「遺伝子」は、ポリペプチドをコードするヌクレオチドの集合体を指し、cDNA及びゲノムDNA核酸分子が含まれる。いくつかの実施形態では、「遺伝子」はまた、コード配列の前(すなわち5’)及び後(すなわち3’)の調節配列として機能することができる非コード核酸断片を指す。
【0053】
温度及び溶液イオン強度の適切な条件下で一本鎖形態の核酸分子が別の核酸分子にアニーリングすることができる場合、核酸分子は、もう一方の核酸分子、例えばcDNA、ゲノムDNA、又はRNAに「ハイブリダイズ可能である」か、又は「ハイブリダイズされる」。ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は公知であり、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(1989)、特にその中の第11章及び表11.1に例示されている。温度及びイオン強度の条件により、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーが決定される。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは、潜在的に交差反応又は干渉する他のポリヌクレオチドの存在下で、2つの相補的なポリヌクレオチドの所望のハイブリダイゼーション産物の選択的な形成又は維持をもたらすように選択することができる。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、典型的には、相補的配列が長いほど、より短い相補的配列よりも高温で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、定義されたイオン強度、化学変性剤の濃度、pH、及びハイブリダイゼーションパートナーの濃度における特定のポリヌクレオチドの熱融解点T(すなわち、配列の50%が実質的に相補的な配列にハイブリダイズする温度)よりも約5℃~約10℃低いものである。一般に、ヌクレオチド配列は、G塩基及びC塩基のパーセンテージが高いほど、G塩基及びC塩基のパーセンテージがより低いヌクレオチド配列よりも更にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。一般に、温度を上昇させること、pHを上昇させること、イオン強度を低下させること、且つ/又は化学核酸変性剤(例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、及び炭酸エチレン)の濃度を上昇させることによって、ストリンジェンシーを増大させることができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的には、約1M、500mM、200mM、100mM、又は50mM未満の塩濃度又はイオン強度;約20℃、30℃、40℃、60℃、又は80℃超のハイブリダイゼーション温度;及び約10%、20%、30%、40%、又は50%を上回る化学変性剤濃度を含む。多くの要因がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす可能性があるため、任意のパラメータ単独の絶対値以上にパラメータの組み合わせがより重要となり得る。
【0054】
「相補的」という用語は、互いにハイブリダイズすることができるヌクレオチド塩基間の関係を説明するために使用される。例えば、DNAに関しては、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。2つの核酸が「相補的」である場合、第1の核酸又はその1つ以上の領域が、第2の核酸又はその1つ以上の領域と水素結合することができることを意味する。相補的な核酸は、各ヌクレオシドで相補性を有する必要はなく、1つ以上のヌクレオチドミスマッチ、すなわち水素結合が生じない点を含んでもよい。例えば、相補的なオリゴヌクレオチドは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のヌクレオチドの水素結合を有し得る。対照的に、オリゴヌクレオチドに関する「完全に相補的」又は「100%相補的」は、いかなるヌクレオチドミスマッチもない状態で各ヌクレオシドが水素結合していることを意味する。
【0055】
「相同組換え」という用語は、外来性ポリヌクレオチド(例えば、DNA)の別の核酸(例えば、DNA)分子への挿入、例えば染色体におけるベクターの挿入を指す。いくつかの場合では、ベクターは、相同組換えのために特異的な染色体部位を標的化する。特異的相同組換えのために、ベクターは、典型的には、ベクターが染色体に相補的に結合して組み込まれることができるように、染色体の配列と相同な十分に長い領域を含有する。相補性領域がより長く、配列類似性の程度がより大きいと、相同組換えの効率を増大させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチド又は組成物は、核酸配列に切断、例えば二本鎖切断を生じさせることにより、相同組換えを促進する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、目的のポリヌクレオチド、例えばヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドが、ポリヌクレオチドを発現させることができるような方法で調節エレメントに連結されていることを意味する。調節エレメントは、シス調節エレメントであってもよく、又はトランス調節エレメントであってもよい。調節エレメントとしては、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、5’UTR及び3’UTR、インスレーター、サイレンサー、オペレーターなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、調節エレメントは、プロモーターである。いくつかの実施形態では、目的タンパク質を発現するポリヌクレオチドは、発現ベクター上のプロモーターに作動可能に連結される。
【0057】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」、「プロモーター配列」、又は「プロモーター領域」は、RNAポリメラーゼに結合することができ、下流コード配列又は非コード配列の転写の開始に関与するDNA調節領域又はポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、転写開始部位を含み、バックグラウンドを超えた検出可能なレベルで転写を開始するために使用される最小数の塩基又はエレメントを含むように上流に伸長している。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、転写開始部位、及びRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインを含む。真核生物のプロモーターは通常、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。種々のプロモーター、例えば誘導性プロモーターを使用して、本開示の種々のベクターの発現を駆動してもよい。
【0058】
「ベクター」は、宿主細胞に核酸をクローニング及び/又は導入するための任意の手段である。ベクターは、結合されたセグメントの複製が生じるように、別のDNAセグメントが結合され得るレプリコンであってよい。「レプリコン」は、インビボにおけるDNA複製の自律的単位として機能する、すなわち、それ自身の制御下で複製することができる、任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)である。いくつかの実施形態では、ベクターは、例えば、非対称分配によって多くの細胞世代後に細胞集団から除去/消去されるエピソーマルベクターである。「ベクター」という用語には、インビトロ、エクスビボ又はインビボで細胞に核酸を導入するための、ウイルス性及び非ウイルス性手段の両方が含まれる。当該技術分野で公知の多数のベクターを使用して核酸を操作し、応答エレメント及びプロモーターを遺伝子に組み込んだりすることができる。ベクターは、1つ以上の調節領域、並びに/又は、核酸導入結果(組織への導入、発現期間など)の選択、測定、及びモニタリングに有用な選択マーカーを含み得る。
【0059】
考えられるベクターとしては、例えば、プラスミド又は改変ウイルス、例として、例えば、バクテリオファージ、例えば、ラムダ誘導体、又はプラスミド、例えば、PBR322若しくはpUCプラスミド誘導体、又はBluescriptベクターが挙げられる。例えば、好適なベクターへの応答エレメント及びプロモーターに対応するDNA断片の挿入は、適切なDNA断片を相補的な付着端を有する選択されたベクターにライゲートすることによって達成することができる。或いは、DNA分子の末端を酵素的に改変してもよく、又はポリヌクレオチド(リンカー)をDNA末端にライゲートすることによって任意の部位を生成してもよい。このようなベクターは、細胞ゲノムにマーカーが組み込まれている細胞の選択を提供する選択マーカー遺伝子を含有するように改変してもよい。このようなマーカーにより、マーカーを組み込み、そのマーカーによりコードされるタンパク質を発現する宿主細胞を同定及び/又は選択することが可能となる。
【0060】
ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、細胞だけでなく、生きている動物対象においても、多種多様な遺伝子送達用途で使用されている。使用可能なウイルスベクターとしては、限定されるものではないが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスベクター、バキュロウイルスベクター、ワクシニアベクター、単純ヘルペスベクター、エプスタイン・バーベクター、アデノウイルスベクター、ジェミニウイルスベクター、及びカリモウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを提供するために、ウイルスベクターが利用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供するために、ウイルスベクターが利用される。
【0061】
ベクターは、トランスフェクション、形質導入、細胞融合、及びリポフェクションを含むがこれらに限定されない公知の方法により、所望の宿主細胞に導入され得る。ベクターは、プロモーターを含む種々の調節エレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、ベクターの設計は、Mali et al.,Nat Methods 10:957-63(2013)により設計された構築物をベースとすることができる。
【0062】
本明細書に提供されるポリヌクレオチド及び/又はベクターを増殖させるために、当該技術分野において公知の方法を使用してもよい。好適な宿主系及び増殖条件が確立されれば、組換え発現ベクターを増殖させ、大量に調製することが可能となる。本明細書に記載されるように、使用可能な発現ベクターとしては、以下のベクター又はそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない:ヒト又は動物ウイルス、例えばワクシニアウイルス又はアデノウイルス、昆虫ウイルス、例えばバキュロウイルス、酵母ベクター、バクテリオファージベクター(例えば、ラムダ)、並びにプラスミド及びコスミドDNAベクター。
【0063】
「プラスミド」という用語は、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子をしばしば有し、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である外部染色体エレメントを指す。このようなエレメントは、多数のポリヌクレオチドが、適切な3’非翻訳配列と共に選択遺伝子を産生させるためのプロモーター断片及びDNA配列を細胞に導入することが可能な独自の構築物に結合されるか、又は組換えられている、任意の源に由来する自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列、線状、環状、若しくはスーパーコイル状の一本鎖又は二本鎖DNA又はRNAであってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを提供するために、プラスミドが利用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供するために、プラスミドが利用される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」という用語は、ベクターを含む外来性核酸分子を細胞に導入することを意味する。例えば、本明細書に記載されるCRISPR/Cas組成物の構成成分のトランスフェクション法は、当業者に公知である。「トランスフェクト」細胞は、細胞内部に外来性核酸分子を含み、「形質転換」細胞は、細胞内の外来性核酸分子が細胞の表現型の変化を誘導する。トランスフェクトされた核酸分子は、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれることができ、及び/又は一時的若しくは長期間にわたり染色体外で細胞により維持され得る。外来性核酸分子又は断片を発現する宿主細胞又は生物は、本明細書では、「組換え」生物、「形質転換」生物、又は「トランスジェニック」生物と称される。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される発現ベクターのいずれか、例えば、本明細書に記載されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0065】
「宿主細胞」という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指すか、又は、そのような細胞の後代を指すこともある。例えば、突然変異又は環境の影響によって改変が後の世代に発生し得るため、そのような後代は、親細胞と同一ではない可能性があるが、それでもなお「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0066】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、コード及び非コードアミノ酸、化学的若しくは生化学的に改変された又は誘導体化されたアミノ酸、並びに改変ペプチド骨格を有するポリペプチドを挙げることができる。
【0067】
タンパク質又はポリペプチドの始点は、「N末端」(及びアミノ末端、NH末端、N末端部、又はアミン末端とも称される)として公知であり、タンパク質又はポリペプチドの最初のアミノ酸残基の遊離アミン(-NH)基を指す。タンパク質又はポリペプチドの終点は、「C末端」(及びカルボキシ末端、カルボキシル末端、C末端部、又はCOOH末端とも称される)として公知であり、タンパク質又はポリペプチドの最後のアミノ酸残基の遊離カルボキシル基(-COOH)を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、カルボキシル(-COOH)基及びアミノ(-NH)基の両方を含む化合物を指す。「アミノ酸」は、天然アミノ酸と非天然(すなわち合成)アミノ酸との両方を指す。3文字及び1文字の略記を有する天然アミノ酸としては、アラニン(Ala;A);アルギニン(Arg、R);アスパラギン(Asn;N);アスパラギン酸(Asp;D);システイン(Cys;C);グルタミン(Gln;Q);グルタミン酸(Glu;E);グリシン(Gly;G);ヒスチジン(His;H);イソロイシン(Ile;I);ロイシン(Leu;L);リジン(Lys;K);メチオニン(Met;M);フェニルアラニン(Phe;F);プロリン(Pro;P);セリン(Ser;S);トレオニン(Thr;T);トリプトファン(Trp;W);チロシン(Tyr;Y);及びバリン(Val;V)が挙げられる。非天然又は合成アミノ酸としては、上記で提供される天然アミノ酸と異なる側鎖を含み、例えば、フルオロフォア、翻訳後修飾、金属イオンキレート剤、光ケージド部分及び光架橋部分、独自の反応性官能基、並びにNMR、IR、及びX線結晶プローブが挙げられ得る。例示的な非天然又は合成アミノ酸は、例えば、Mitra et al.,Mater Methods 3:204(2013)及びWals et al.,Front Chem 2:15(2014)に提供されている。非天然アミノ酸はまた、例えば、シトルリン(Cit)、セレノシステイン(Sec)、及びピロリジン(Pyl)などの、典型的にはタンパク質又はポリペプチドに組み込まれることのない、天然に存在する化合物を含み得る。
【0069】
「アミノ酸置換」は、そのアミノ酸残基において、野生型又は天然に存在するアミノ酸に対して異なるアミノ酸による、野生型又は天然に存在するアミノ酸の1つ以上の置換を含むポリペプチド又はタンパク質を指す。置換アミノ酸は、合成アミノ酸であってもよく、又は天然に存在するアミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、A、R、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、及びVからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、置換アミノ酸は、非天然又は合成アミノ酸である。置換変異体は、略記方式を用いて記載され得る。例えば、5番目のアミノ酸残基が置換されている置換変異体は、「X5Y」と略記することができ、「X」は、置き換えられる野生型又は天然に存在するアミノ酸であり、「5」は、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列内のアミノ酸残基位置であり、「Y」は、置換アミノ酸、又は非野生型若しくは天然に存在しないアミノ酸である。
【0070】
「単離」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、又は核酸は、その天然環境から取り出された分子である。「単離」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、又は核酸は、希釈剤又は助剤などの賦形剤と配合されてもよく、それでもなお単離されているとみなされることも理解される。本明細書で使用される場合、「単離」は、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、又は核酸の任意の特定のレベルの純度を必ずしも意味するものではない。
【0071】
「組換え」という用語は、核酸分子、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に関して使用される場合、自然界に存在することが公知でない遺伝物質の新たな組み合わせを意味するか、又はその組み合わせから生じるものである。組換え分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、(例えば、制限エンドヌクレアーゼを使用する)遺伝子スプライシング、及び核酸分子、ペプチド又はタンパク質の固相合成を含むがこれらに限定されない、組換え技術の分野で利用可能な技術のいずれかによって産生することができる。
【0072】
「外来性」という用語は、宿主細胞に導入される参照分子又は活性を意味する。この分子は、例えば、宿主の遺伝物質にコード核酸を導入することによって、例えば、非染色体性遺伝物質、例えばプラスミドとして宿主の染色体に組み込むことによって導入することができる。「外来性」タンパク質は、このタンパク質をコードする「外来性」核酸を介して宿主細胞に導入することができる。「内在性」という用語は、宿主細胞内に自然に存在する参照分子又は活性を指す。「内在性」タンパク質は、宿主細胞内に含まれる核酸によって発現される。「異種」という用語は、参照生物/種以外の源に由来する分子又は活性を指す一方で、「相同」は、宿主生物/種に由来する分子又は活性を指す。従って、コード核酸の外来性発現は、異種コード核酸又は相同コード核酸の一方又はその両方を利用することができる。
【0073】
「ドメイン」という用語は、ポリペプチド又はタンパク質に関して使用される場合、タンパク質の別個の機能的単位及び/又は構造的単位を意味する。ドメインは、タンパク質の全体的な役割に寄与する特定の機能又は相互作用に関与する場合がある。ドメインは、種々の生物学的コンテクストにおいて存在し得る。類似のドメインは、異なる機能を有するタンパク質で見出され得る。或いは、配列同一性が低い(すなわち、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満の配列同一性)ドメインは、同一の機能を有し得る。
【0074】
「モチーフ」という用語は、ポリペプチド又はタンパク質に関して使用される場合、一般に、典型的には20アミノ酸長よりも短い保存アミノ酸残基の組を指し、タンパク質の機能に重要なものであり得る。特定の配列モチーフは、様々なタンパク質内の、特定の細胞内位置に対するタンパク質の結合又は標的化などの一般的な機能を媒介することができる。モチーフの例としては、核局在化シグナル、ミクロボディ標的化モチーフ、分泌を阻止又は促進するモチーフ、並びにタンパク質の認識及び結合を促進するモチーフが挙げられるが、これらに限定されない。モチーフのデータベース及び/又はモチーフ検索ツールは、当該分野で公知であり、例えば、PROSITE、PFAM、PRINTS、及びMiniMotif Minerが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「改変」タンパク質とは、所望の特性を得るために、タンパク質に1つ以上の改変を含むタンパク質を意味する。例示的な改変としては、挿入、欠失、置換、及び/又は別のドメイン若しくはタンパク質との融合が挙げられるが、これらに限定されない。「融合タンパク質」(「キメラタンパク質」とも称される)は、典型的には、単一のユニットとして転写及び翻訳されるように結合されている、2つの別個の遺伝子によってコードされる少なくとも2つのドメインを含むタンパク質であり、これによってドメインの各々の機能的特性を有する単一のポリペプチドが生成される。本開示の改変タンパク質には、Casヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、並びにCasタンパク質とDNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、及び/又はDNAポリメラーゼ結合タンパク質との融合体が含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、改変タンパク質は、野生型タンパク質から生成される。本明細書で使用される場合、「野生型」タンパク質又は核酸は、天然に存在する未改変タンパク質又は核酸である。例えば、野生型Cas9タンパク質は、生物であるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)から単離することができる。野生型は「変異型」と対比することができ、変異型は、タンパク質又は核酸のアミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列に1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、改変タンパク質は、野生型タンパク質と実質的に同一の活性、例えば、野生型タンパク質の約80%超、約85%超、約90%超、約95%%超、又は約99%超の活性を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される融合タンパク質のCasヌクレアーゼは、野生型Casヌクレアーゼと実質的に同一の活性を有する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「配列類似性」又は「%の類似性」という用語は、核酸配列間又はアミノ酸配列間の同一性又は一致性の程度を指す。ポリヌクレオチドの文脈における「配列類似性」は、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化によって1つ以上のアミノ酸の置換が生じるが、ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の機能的特性に影響しない核酸配列を指す場合がある。「配列類似性」はまた、結果として生じる転写産物の機能的特性に実質的に影響しないポリヌクレオチドの修飾、例えば、1つ以上のヌクレオチド塩基の欠失又は挿入を指す場合もある。従って、本開示は、特定の例示的な配列よりも多くのものを包含することが理解される。ヌクレオチド塩基の置換を形成する方法は、コードされるポリペプチドの生物活性の保持を判定する方法と同様に公知である。
【0078】
更に、当業者であれば、本開示に包含される類似のポリヌクレオチドが、ストリンジェントな条件下で本明細書に例示される配列とハイブリダイズする能力によって定義されることも認識する。本開示の類似のポリヌクレオチドは、本明細書に開示されるポリヌクレオチドと、約70%、少なくとも約70%、約75%、少なくとも約75%、約80%、少なくとも約80%、約85%、少なくとも約85%、約90%、少なくとも約90%、約95%、少なくとも約95%、約99%、少なくとも約99%、又は約100%同一である。
【0079】
ポリペプチドの文脈における「配列類似性」は、アミノ酸の約40%超が同一であり、又はアミノ酸の約60%超が機能的に同一である2つ以上のポリペプチドを指す。「機能的に同一」又は「機能的に類似の」アミノ酸は、化学的に類似の側鎖を有する。例えば、アミノ酸は、機能的類似性に従って以下のようにグループ分けすることができる:(i)正荷電側鎖:Arg、His、Lys;(ii)負荷電側鎖:Asp、Glu;(iii)極性非電荷側鎖:Ser、Thr、Asn、Gln;(iv)疎水性側鎖:Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Tyr、Trp;及び(v)その他:Cys、Gly、Pro。
【0080】
いくつかの実施形態では、本開示の類似のポリペプチドは、約40%、少なくとも約40%、約45%、少なくとも約45%、約50%、少なくとも約50%、約55%、少なくとも約55%、約60%、少なくとも約60%、約65%、少なくとも約65%、約70%、少なくとも約70%、約75%、少なくとも約75%、約80%、少なくとも約80%、約85%、少なくとも約85%、約90%、少なくとも約90%、約95%、少なくとも約95%、約97%、少なくとも約97%、約98%、少なくとも約98%、約99%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、本開示の類似のポリペプチドは、約60%、少なくとも約60%、約65%、少なくとも約65%、約70%、少なくとも約70%、約75%、少なくとも約75%、約80%、少なくとも約80%、約85%、少なくとも約85%、約90%、少なくとも約90%、約95%、少なくとも約95%、約97%、少なくとも約97%、約98%、少なくとも約98%、約99%、少なくとも約99%、又は約100%機能的に同一であるアミノ酸を有する。
【0081】
配列類似性は、当該分野において公知の方法を使用する配列アライメント、例えば、BLAST、MUSCLE、Clustal(ClustalW及びClustalXを含む)、並びにT-Coffee(例えば、M-Coffee、R-Coffee、及びExpressoなどの亜種を含む)などによって決定することができる。
【0082】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が指定された比較ウィンドウに対してアライメントされる場合に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの同一性パーセントを決定することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列の特定の部分のみをアライメントして、配列同一性を決定する。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列の特定のドメインのみをアライメントして、配列類似性を決定する。比較ウィンドウは、配列をアライメントして比較することが可能な、少なくとも10~1000個超の残基、少なくとも20~約1000個の残基、又は少なくとも50~500個の残基のセグメントであり得る。配列同一性を決定するためのアライメント方法はよく知られており、BLASTなどの公的に利用可能なデータベースを使用して実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul,Proc Nat Acad Sci USA 87:2264-2268(1990)(Karlin and Altschul,Proc Nat Acad Sci USA 90:5873-5877(1993)として修正されている)のアルゴリズムを用いて決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al.,J Mol Biol,215:403-410(1990)に記載されているBLASTプログラム、例えばBLAST+又はNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTタンパク質の検索は、本開示のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、例えば、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長さ=3)などのプログラムによって実施することができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res 25(17):3389-3402(1997)に記載されるように、Gapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合は、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、本明細書に提供される参照ポリペプチド若しくはポリヌクレオチド(又は参照ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドの断片)と、70%、少なくとも70%、75%、少なくとも75%、80%、少なくとも80%、85%、少なくとも85%、90%、少なくとも90%、95%、少なくとも95%、97%、少なくとも97%、98%、少なくとも98%、99%、又は少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、本明細書に提供される参照ポリペプチド若しくはポリヌクレオチド(又は参照ポリペプチド若しくは核酸分子の断片)と、約70%、少なくとも約70%、約75%、少なくとも約75%、約80%、少なくとも約80%、約85%、少なくとも約85%、約90%、少なくとも約90%、約95%、少なくとも約95%、約97%、少なくとも約97%、約98%、少なくとも約98%、約99%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する。
【0084】
本明細書で使用される場合、「複合体」は、会合する2つ以上のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの群を指す。複合体形成の文脈における「会合する」又は「会合」という用語は、共有結合することなく、静電相互作用、疎水性/親水性相互作用、及び/又は水素結合相互作用によって互いに結合した分子を指す。互いに共有結合された異なる部分を含む分子は、公知である。いくつかの実施形態では、複合体は、複合体の全ての構成成分が共に存在する場合に形成され、すなわち自己集合複合体である。いくつかの実施形態では、複合体は、複合体の異なる構成成分間の化学的相互作用、例えば、水素結合などによって形成される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、タンパク質によるポリヌクレオチドの二次構造認識により、本明細書に提供されるタンパク質と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるポリヌクレオチドのCas結合領域は、本明細書に提供されるCasヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、又は融合タンパク質により認識される二次構造から構成される。
【0085】
組成物
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドとを含む組成物であって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にある組成物を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む組成物を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、及び(ii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む組成物を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドとを含む組成物を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第2のポリヌクレオチドの3’末端にある、第2のポリヌクレオチドと、(i)第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、(ii)目的配列(SOI)を含む第3のポリヌクレオチドとを含む組成物を提供する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「Casタンパク質」は、CasヌクレアーゼとCasニッカーゼの両方を包含する。Casタンパク質は、本明細書に記載されるCRISPR/Casシステムの一部である。Casタンパク質及びポリヌクレオチド(「ガイドポリヌクレオチド」とも称される)を含むCRISPR/Casシステムは、部位特異的ゲノム改変に利用することができる。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、Casタンパク質と、Cas結合領域(Casタンパク質に結合し、及び/又はCasタンパク質を活性化する)及びガイド配列(標的配列にハイブリダイズする)を含むガイドポリヌクレオチドとを含み、Casタンパク質とガイドポリヌクレオチドとは、本明細書に記載されるように複合体を形成する。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、Casタンパク質と、ガイド配列を含む第1のポリヌクレオチドと、Cas結合領域を含む第2のポリヌクレオチドとを含み、第1及び第2のポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズし、Casタンパク質と複合体を形成する。
【0091】
CRISPR/Casシステムは、システム内のCasタンパク質に基づいて、I型~VI型に分類することができる。例えば、Cas9はII型システムで見られるが、Cas12はV型システムで見られるものである。それぞれの型は、更にサブタイプに分類することができる。例えば、II型はサブタイプII-A、II-B、及びII-Cを含むことができ、V型はサブタイプV-A及びV-Bを含むことができる。CRISPR/Casシステム及びCasヌクレアーゼの分類は、例えば、Makarova et al.,Methods Mol Biol 1311:47-75(2015);Makarova et al.,The CRISPR Journal Oct 2018;325-336;及びKoonin et al.,Phil Trans R Soc B 374:20180087(2018)で更に説明されている。本明細書に記載されるCasヌクレアーゼは、別段の指定がない限り、任意の型又は変異体を包含することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、組成物は、Casヌクレアーゼを含む。一般に、Casヌクレアーゼは、二本鎖ポリヌクレオチド開裂、例えば、二本鎖DNA開裂を生じさせることができる。一般に、Casヌクレアーゼは、RuvC及びHNHなどの1つ以上のヌクレアーゼドメインを含むことができ、二本鎖DNAを開裂させることができる。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、RuvCドメインとHNHドメインとを含み、その各々が二本鎖DNAの1本の鎖を開裂させる。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼにより、平滑末端が生成される。いくつかの実施形態では、CasヌクレアーゼのRuvC及びHNHは、各DNA鎖を同じ位置で開裂させ、それによって平滑末端が生成される。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼにより、付着末端が生成される。いくつかの実施形態では、CasヌクレアーゼのRuvC及びHNHが、異なる位置で各DNA鎖を開裂させ(すなわち、「オフセット」で切断し)、それによって付着末端が生成される。本明細書で使用される場合、「付着末端(cohesive ends)」、「付着末端(staggered ends)」、又は「粘着末端(sticky ends)」という用語は、不均等な長さの鎖を有する核酸断片を指す。「平滑末端」とは対照的に、付着末端は、二本鎖核酸(例えば、DNA)を互い違いに切断することによって生成される。粘着末端又は付着末端は、不対ヌクレオチドによる突出した一本鎖、すなわち「オーバーハング」、例えば3’又は5’オーバーハングを有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。例示的なCas9ヌクレアーゼとしては、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebisella pneumoniae)、及びその他多数の細菌由来のCas9が挙げられるが、これらに限定されない。更なる例示的なCas9ヌクレアーゼは、例えば、米国特許第8,771,945号明細書、同第9,023,649号明細書、同第10,000,772号明細書、及び同第10,407,697号明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Cas9ヌクレアーゼは、S.ピオゲネス(S.pyogenes)由来のものである(SpCas9)。
【0094】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas12ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼである(以前は「Cpf1」又は「C2c1」として知られている)。Cas12ヌクレアーゼは、一般にCas9ヌクレアーゼよりも小さく、典型的には付着末端を生成することができる。例示的なCas12タンパク質としては、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)、アシダミノコッカス種(Acidaminococcus sp.)、ラクノスピラ種(Lachnospiraceae sp.)、プレボテラ種(Prevotella sp.)、及びその他多数の細菌由来のCas12タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。更なるCas12ヌクレアーゼは、例えば、米国特許第9,580,701号明細書、米国特許出願公開第2016/0208243号明細書、Zetsche et al.,Cell 163(3):759-771(2015)、及びChen et al.,Science 360:436-439(2018)に記載されている。
【0095】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、II-B型Casヌクレアーゼである。II-B型Casヌクレアーゼは、本明細書に記載されるように付着末端を生成することができる。例示的なIIB型Cas9タンパク質としては、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)、パラサテレラ・エクスクレメンティホミニス(Parasutterella excrementihominis)、サテレラ・ワズワーセンシス(Sutterella wadsworthensis)、ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、配列決定された腸メタゲノムであるMH0245_GL0161830.1、及びその他多数の細菌由来のCas9タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。更なるII-B型Cas9タンパク質は、例えば、国際公開第2019/099943号パンフレットに記載されている。いくつかの実施形態では、II-B型Casヌクレアーゼは、配列決定された腸メタゲノムであるMH0245_GL0161830.1由来のものである(MHCas9)。
【0096】
いくつかの実施形態では、組成物は、Casニッカーゼを含む。ニッカーゼは、二本鎖ポリヌクレオチド(例えばDNA)に一本鎖開裂を生じさせるものであり、二本鎖ポリヌクレオチド(例えばDNA)の両鎖を開裂させるヌクレアーゼとは区別される。本明細書で説明されるように、野生型Casヌクレアーゼは、典型的には2つの触媒ヌクレアーゼドメインであるRuvC及びHNHを含み、各ヌクレアーゼドメインが二本鎖DNAの一方の鎖の開裂に関与する。従って、いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Casヌクレアーゼと比較して触媒ドメインにアミノ酸変異を含んでいる。Casニッカーゼは、例えば、Cho et al.,Genome Res 24:132-141(2013)、Ran et al.,Cell 154:1380-1389(2013)、及びMali et al.,Nat Biotechnol 31:833-838(2013)に更に記載されている。
【0097】
いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas9ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas12aニッカーゼである。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、II-B型Casニッカーゼである。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Casヌクレアーゼに突然変異をもたらすことによって生成される。例えば、SpCas9ニッカーゼは、野生型SpCas9ヌクレアーゼと比較してD10A変異又はH840A変異を含んでいる。本明細書に記載されるようなアライメント方法は、他のCasヌクレアーゼ(例えば、Cas12a又はII-B型Casヌクレアーゼ)の対応するアミノ酸残基を決定し、Casニッカーゼを生成するために使用することができることが当業者には理解されるであろう。
【0098】
いくつかの実施形態では、組成物のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、異種タンパク質ドメインに融合されていない。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、又は逆転写酵素に融合されていない。
【0099】
いくつかの実施形態では、組成物のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、異種タンパク質ドメインに融合されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせに融合されている。Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼを含む融合タンパク質は、更に本明細書に記載されている。
【0100】
ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含み、DNA鋳型配列は、ポリヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、RNAガイド配列である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列(例えば、RNAガイド配列)、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、第1及び第2のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含み、第1のハイブリダイゼーション領域は、第1のポリヌクレオチドの3’末端にあり、第2のポリヌクレオチドは、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)DNA鋳型配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列、Cas結合領域、及び第1のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域及びDNA鋳型配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、(i)ガイド配列、及び(ii)第1のハイブリダイゼーション領域を含み、第1のハイブリダイゼーション領域は、第1のポリヌクレオチドの3’末端にあり、第2のポリヌクレオチドは、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列及び第1のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、第1及び第2のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含み、プライマー結合配列は、第1のポリヌクレオチドの3’末端にあり、第2のポリヌクレオチドは、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列、Cas結合領域、第1のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域及びSOIを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び/又は第2のポリヌクレオチドは、RNA、DNA、修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載されている。本明細書に記載されるような第1及び第2のポリヌクレオチドを含む組成物の限定されない例示的な図を、図11(B)に示す。
【0104】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド及び/又は第2のポリヌクレオチドは、相同配列を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列、Cas結合領域、第1のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域、SOI、及び相同配列を含む。いくつかの実施形態では、相同配列は、(例えば、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼによって生じた)開裂された標的ポリヌクレオチドと近接する配列とハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、図9又は図11(A)に図示されるように、ガイド配列は開裂部位の一方の側の領域にハイブリダイズし、相同配列は開裂部位の他方の側の領域にハイブリダイズする。図9及び図11(A)では、第1のポリヌクレオチドは、ガイド配列(「スペーサー」と称する)、Cas結合領域(「gRNA足場」と称する)、第1のハイブリダイゼーション領域(「ランディングパッド」と称する)、及びプライマー結合配列(PBS)から構成され、第2のポリヌクレオチドは、第2のハイブリダイゼーション領域(「ハイブリダイゼーション配列」と称する)、SOI(「挿入断片」と称する)、及び相同配列から構成される。
【0105】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列、Cas結合領域、相同配列、第1のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域、SOI、及び更なるハイブリダイゼーション領域を含み、第2のハイブリダイゼーション領域及び更なるハイブリダイゼーション領域が、第1のハイブリダイゼーション領域の非重複部分でハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、例えば、図11(J)で図示されるように、第2のハイブリダイゼーション領域及び更なるハイブリダイゼーション領域がSOIを挟んでおり、第1のハイブリダイゼーション領域の隣接した一部とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、例えば、図11(J)に図示されるように、ガイド配列は開裂部位の一方の側の領域にハイブリダイズし、相同配列は開裂部位の他方の側の領域にあり、この開裂部位の対向するDNA鎖にハイブリダイズする。
【0106】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、第1、第2及び第3のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含み、第1のハイブリダイゼーション領域は、第1のポリヌクレオチドの3’末端にあり、第2のポリヌクレオチドは、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含み、プライマー結合配列は、第2のポリヌクレオチドの3’末端にあり、第3のポリヌクレオチドは、(i)第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、(ii)目的配列(SOI)を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列、Cas結合領域、及び第1のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域、第3のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合配列を含む。いくつかの実施形態では、第3のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第4のハイブリダイゼーション領域及びSOIを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び/又は第3のポリヌクレオチドのいずれかは、RNA、DNA、修飾ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載されている。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチド、第2のポリヌクレオチド、及び/又は第3のポリヌクレオチドのいずれかは、例えば、図11(E)に図示されるように、本明細書に記載されるような相同配列を更に含む。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列、Cas結合領域、及び第1のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第2のハイブリダイゼーション領域、第3のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合配列を含む。いくつかの実施形態では、第3のポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、第4のハイブリダイゼーション領域、SOI、及び相同配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、例えば、第1、第2及び/又は第3のポリヌクレオチドを含む本明細書の組成物は、SOIに相補的な配列から構成されるSOI相補的オリゴヌクレオチドを更に含む。いくつかの実施形態では、SOI相補的オリゴヌクレオチドは、図11(D)に図示されるように、5’末端及び3’末端の一方又は両方においてSOIよりも長く、それによってオーバーハング末端を有する二本鎖配列が生成される。いくつかの実施形態では、SOI相補的オリゴヌクレオチドは、例えば、図11(H)に図示されるように、SOIと同じ長さであり、それによって平滑末端を有する二本鎖配列が生成される。いくつかの実施形態では、SOI相補的オリゴヌクレオチドは、SOIとハイブリダイズして二本鎖SOIを形成する。いくつかの実施形態では、二本鎖SOIは、一本鎖SOIと比較して、より正確な挿入効率を有する。いくつかの実施形態では、SOI相補的オリゴヌクレオチドは、例えば、図11(I)に図示されるように、相同配列を更に含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、第1のハイブリダイゼーション領域の全長にわたってハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、第1のハイブリダイゼーション領域よりも、例えば、約1~約10ヌクレオチド、又は約2~約8ヌクレオチド、又は約3~約6ヌクレオチド、又は約4~約5ヌクレオチドだけ短い。いくつかの実施形態では、例えば、図11(F)で図示されるように、第2のハイブリダイゼーション領域は、第1のハイブリダイゼーション領域よりも、第2のハイブリダイゼーション領域の5’末端部分で短く、それによって第2のハイブリダイゼーション領域と開裂されたDNAの間にギャップが残される。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、第1のハイブリダイゼーション領域よりも、例えば、約1~約10ヌクレオチド、又は約2~約8ヌクレオチド、又は約3~約6ヌクレオチド、又は約4~約5ヌクレオチドだけ長い。いくつかの実施形態では、例えば、図11(G)で図示されるように、第2のハイブリダイゼーション領域は、第1のハイブリダイゼーション領域よりも、第2のハイブリダイゼーション領域の5’末端部分で長く、それによってハイブリダイゼーション後に第1のハイブリダイゼーション領域と第2のハイブリダイゼーション領域の間にフラップがもたらされる。いくつかの実施形態では、フラップは、FEN1などの修復機構を動員及び/又は結合させ、それによって目的配列の正確な挿入が容易となる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本開示は、(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にあるポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、(i)RNAガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドであって、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にあり、DNA鋳型配列がホスホロチオエート結合を含むポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、5’から3’の順に、ガイド配列(例えば、RNAガイド配列)、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、ガイド配列は、標的ポリヌクレオチド、例えば、宿主細胞ゲノム内の標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、標的ポリヌクレオチドと相補的である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼによって開裂させることが意図される標的DNAである。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、RNAを含み、すなわちRNAガイド配列である。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、RNA及びDNAの組み合わせを含む。ハイブリッドRNA-DNAガイド配列は、例えば、Rueda et al.,Nat Comm 8:1610(2017)に更に記載されている。
【0112】
いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約10~約40ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約12~約30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約15~約20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、又は約40ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするのに十分な長さである。
【0113】
いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、組成物中のCasタンパク質(例えば、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ)に結合することができ、それによってCasタンパク質と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、RNAを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、RNA及びDNAの組み合わせを含む。Casタンパク質に結合するか、及び/又はCasタンパク質を活性化するハイブリッドRNA-DNA配列は、例えば、Rueda et al.,Nat Comm 8:1610(2017)に更に記載されている。
【0114】
いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、Casタンパク質に結合し、Casタンパク質を活性化するtracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAとハイブリダイズすることができ、組成物はtracrRNAを更に含む。いくつかの実施形態では、tracrRNAは、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼに結合することができる。いくつかの実施形態では、tracrRNAは、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼを活性化させることができる。いくつかの実施形態では、活性化させることには、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼの開裂活性を惹起又は増大させることが含まれる。いくつかの実施形態では、活性化させることには、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼを(例えば、ガイド配列により誘導することで)標的ポリヌクレオチドに結合させることを促進することが含まれる。いくつかの実施形態では、活性化させることには、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼを標的ポリヌクレオチドに結合するのを促進すること、及びCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼの開裂活性を惹起又は増大させることの組み合わせが含まれる。Casタンパク質(例えば、本明細書に記載されるCas9、Cas12a、又はII-B型Casタンパク質)のTracrRNA配列は、RNAcentral及びRfamを含む公的データベースから入手可能であり、例えば、Chylinski et al.,RNA Biol 10(5):726-737(2013)及びGasiunas et al.,Nat Comm 11:5512(2020)に更に記載されている。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの3’末端にDNA鋳型配列を含む。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、一本鎖DNAを含む。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、目的配列を含む。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、プライマー結合配列及び目的配列を含む。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、DNAポリメラーゼにより増幅させるための鋳型を含む。いくつかの実施形態では、目的配列は、DNAポリメラーゼにより増幅させるための鋳型を含む。いくつかの実施形態では、組成物のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、ガイド配列によって標的ポリヌクレオチドに誘導されて標的ポリヌクレオチドを開裂し、開裂された標的ポリヌクレオチドの一方の鎖が、プライマー結合配列にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼのプライマーとして機能する。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、目的配列を含む二本鎖配列を形成することができる。いくつかの実施形態では、目的配列を含む二本鎖配列は、例えば、本明細書に記載されるライゲーション又はDNA修復経路により、開裂された標的ポリヌクレオチドに挿入される。Casによって媒介される目的配列の標的挿入の例示的で限定されない概要を、図1に図示する。図1では、Casヌクレアーゼがガイド配列によって細胞内の標的DNAに誘導され、標的DNAを開裂させている。DNA鋳型配列は、(i)プライマーとしての役割を果たす、開裂されたDNAとハイブリダイズするプライマー結合配列、及び(ii)目的配列を含む。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞の内在性DNAポリメラーゼは、プライマーに結合して目的配列と相補的なDNA鎖を合成し、それによって目的配列を含む二本鎖配列が形成される。この二本鎖配列を、DNA修復経路、例えばNHEJにより、開裂された標的DNAに挿入することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるDNA鋳型配列の構成成分、例えば、目的配列及びプライマー結合配列は、別々の2つのポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるような第1及び第2のポリヌクレオチド上に位置する。目的配列とプライマー結合配列とが別々の2つのポリヌクレオチド上に位置している、例示的で限定されない一実施形態の概要を、図10A~10Cに図示する。図10Aでは、ガイド配列、Cas結合領域、第1のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合部位が、第1のポリヌクレオチド上に位置している。ガイド配列によって標的DNAに誘導されたCasヌクレアーゼにより、標的DNAに二本鎖切断が生じる。プライマー結合部位は、開裂されたDNAにハイブリダイズし、第2のポリヌクレオチドは、相補的配列を含む第1及び第2のハイブリダイゼーション領域によって第1のポリヌクレオチドにハイブリダイズする。第2のポリヌクレオチドは目的配列を含み、この配列が、5’末端と3’末端の両方で開裂されたDNAに、リガーゼによってライゲートされる(図10A)。第2のポリヌクレオチドは、更に相同配列を含むことができ、その5’末端は、開裂されたDNAにリガーゼによってライゲートされ、その3’末端は、相同性媒介メカニズムによって組み込まれる(図10B)。いくつかの実施形態では、相同性媒介メカニズムは、HDR、合成依存的単鎖アニーリング(SDSA)、一本鎖アニーリング(SSA)、代替的末端連結(alt-EJ)、又はこれらの組み合わせを含む。複合体は、ライゲーション及び/又は相同性媒介組み込みの後に二本鎖DNAへと変換され、それによって標的DNAに目的配列が組み込まれる(図10C)。
【0117】
いくつかの実施形態では、目的配列は、目的遺伝子を含む。本明細書で使用される場合、「目的遺伝子」という用語は、目的の生体分子(例えば、タンパク質又はRNA分子)をコードする遺伝子を指す。いくつかの実施形態では、目的配列は、目的タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、目的タンパク質は、細胞内タンパク質、膜タンパク質、細胞外タンパク質、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、目的タンパク質は、核タンパク質、転写因子、核膜トランスポーター、細胞内小器官関連タンパク質、膜受容体、触媒タンパク質、酵素、治療用タンパク質、膜タンパク質、膜輸送タンパク質、シグナル伝達タンパク質、免疫学的タンパク質、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、免疫学的タンパク質は、抗体、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、目的配列は、宿主細胞の在来遺伝子のコピーをコードする。いくつかの実施形態では、目的配列は、宿主細胞において欠損した在来遺伝子のコピーをコードする。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、遺伝子に突然変異を含み、目的配列は、その遺伝子の野生型コピーをコードする。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、野生型遺伝子を含み、目的配列は、目的の突然変異を含む遺伝子のコピーをコードする。いくつかの実施形態では、目的配列は、宿主細胞に天然に存在しない異種遺伝子をコードする。
【0118】
いくつかの実施形態では、目的遺伝子は、目的RNAをコードする。いくつかの実施形態では、目的RNAは、治療用RNAを含む。いくつかの実施形態では、目的RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、セルフリーRNA(cfRNA)、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、目的配列は、目的の調節エレメントを含む。いくつかの実施形態では、目的配列は、目的配列上の調節エレメントが宿主細胞の在来遺伝子を調節することができるように、宿主細胞の標的ポリヌクレオチドに挿入される。調節エレメントは、本明細書に記載されており、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、オペレーター、応答エレメント、5’UTR、3’UTR、インスレーターなどが挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約5ヌクレオチド~約5000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約6ヌクレオチド~約1000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約7ヌクレオチド~約750ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約8ヌクレオチド~約500ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約9ヌクレオチド~約250ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約15ヌクレオチド~約90ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約20ヌクレオチド~約80ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約25ヌクレオチド~約70ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約30ヌクレオチド~約50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、約10ヌクレオチド長より大きく、約15ヌクレオチド長より大きく、約20ヌクレオチド長より大きく、約25ヌクレオチド長より大きく、約30ヌクレオチド長より大きく、約35ヌクレオチド長より大きく、約40ヌクレオチド長より大きく、約45ヌクレオチド長より大きく、又は約50ヌクレオチド長より大きい。
【0120】
いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約3~約50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約4~約45ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約5~約40ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約6~約35ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約7~約30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約8~約25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約10~約20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約4~約30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、開裂された標的DNA配列の領域とハイブリダイズするのに十分な長さを有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、目的配列は、約3~約500ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約4~約100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約5~約90ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約6~約80ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約7~約70ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約8~約60ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約9~約50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約10~約40ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約11~約30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約12~約20ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、目的配列は、約10ヌクレオチド長より大きく、約15ヌクレオチド長より大きく、約20ヌクレオチド長より大きく、約25ヌクレオチド長より大きく、約30ヌクレオチド長より大きく、約35ヌクレオチド長より大きく、約40ヌクレオチド長より大きく、約45ヌクレオチド長より大きく、又は約50ヌクレオチド長より大きい。
【0122】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、修飾ヌクレオチド、非B型DNA構造体、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ動員部分、又はこれらの組み合わせを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、脱塩基部位、共有結合リンカー、異種核酸(XNA)、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、DNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、メチル化ヌクレオチド、又はこれらの組み合わせを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、DNAポリメラーゼによる目的配列の過度な伸長を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼによる目的配列の過度な伸長を低減又は防止することにより、目的配列を含む二本鎖配列の挿入の精度が向上する。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、脱プリン塩基/脱ピリミジン塩基部位(AP部位)としても公知の脱塩基部位を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、共有結合リンカーを含む。いくつかの実施形態では、共有結合リンカーは、トリエチレングリコール(TEG)リンカーを含む。いくつかの実施形態では、共有結合リンカーは、アミノリンカーを含む。TEGリンカー及びアミノリンカーは、ポリメラーゼ伸長を阻害することが示されており、例えば、Strobel et al.,bioRxiv doi:10.1101/2019.12.26.888743(23 January 2020)を参照されたい。
【0125】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、本開示のポリヌクレオチドのヌクレアーゼ分解を低減又は防止する。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ゼノ核酸(XNA)を含む。XNAは、DNAのデオキシリボース又はRNAのリボースとは異なる糖基を有する合成ヌクレオチド類似体である。XNAの例示的な糖基としては、トレオース、シクロヘキセン、グリコール、又はロックドリボースが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、XNAは、1,5-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)、及びペプチド核酸(PNA)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、架橋型核酸(BNA)としても公知のロックド核酸(LNA)を含む。LNAは、リボース部分が2’酸素と4’炭素を接続する更なる架橋によって修飾されている修飾RNAヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)を含む。DNA又はRNAのデオキシリボース骨格又はリボース骨格とは異なり、PNAポリマーの骨格は、ペプチド結合によって連結されたN-(2-アミノエチル)-グリシン単位から構成されており、メチレン架橋及びカルボニル基によってプリン塩基及びピリミジン塩基がPNA骨格に連結されている。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含む。ホスホロチオエート結合は、2つのヌクレオチドを連結するホスフェート基中の酸素の1つの代わりに硫黄原子を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド中にXNA、例えばLNA若しくはPNA、又はホスホロチオエート結合が存在することにより、ポリヌクレオチドのヌクレアーゼ分解に対する安定性が向上する。
【0126】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、本明細書で提供される組成物のポリヌクレオチド)中に修飾ヌクレオチドが存在することにより、ポリヌクレオチドにDNAポリメラーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼを動員することには、例えば、ポリヌクレオチド中に修飾ヌクレオチドが存在することによりDNAポリメラーゼがポリヌクレオチドを認識する可能性を増大させること;DNAポリメラーゼがポリヌクレオチドに結合することを促進すること;及び/又はDNAポリメラーゼを活性化すること、例えば、DNAポリメラーゼの活性を惹起又は増大させることが含まれる。いくつかの実施形態では、動員されたDNAポリメラーゼは、本明細書に記載されるように、開裂された標的ポリヌクレオチドの鎖に結合し、DNA鋳型配列上の目的配列を伸長する。
【0127】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、DNA損傷体を含む。本明細書で使用される場合、「DNA損傷体」とは、DNA損傷を典型的に示す塩基の変異、塩基の欠失、及び/又は糖の変異を含有するDNAポリヌクレオチドの領域を指す。DNA損傷体は、核酸塩基の加水分解、酸化、アルキル化、脱プリン化、脱ピリミジン化、及び/又は脱アミノ化によって生じる可能性のあるものである。いくつかの実施形態では、DNA損傷体は、DNAポリメラーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、DNA損傷体は、8-オキソグアニン、チミン-グリコール、N7-(2-ヒドロキシエチル)グアニン(7HEG)、7-(2-オキソエチル)グアニン、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA損傷体は、8-オキソグアニン、チミン-グリコール、又はこれらの組み合わせを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、DNA光産物を含む。DNA光産物は、紫外線(UV)誘発性のDNA損傷体であり、例えば、Yokoyama et al.,Int J Mol Sci 15(11):20321-20338(2014)に更に記載されている。いくつかの実施形態では、DNA光産物は、DNAポリメラーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、DNA光産物は、ピリミジン二量体、シクロブタンピリミジン二量体(CPD)、ピリミジン(6-4)ピリミドン光産物(「(6-4)光産物」とも称される)、アデニン-チミンヘテロ二量体、デュワーピリミジノン、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA光産物は、CPD、(6-4)光産物、又はこれらの組み合わせを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、修飾デオキシリボヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオシドは、DNAポリメラーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオシドは、DNAには典型的に存在しない塩基、すなわち、アデニン、シトシン、グアニン、又はチミンを含む。いくつかの実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオシドは、デオキシウリジン、アクロレイン-デオキシグアニン、マロンジアルデヒド-デオキシグアニン、デオキシイノシン、デオキシキサントシン、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、修飾デオキシリボヌクレオシドは、デオキシウリジンを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、メチル化ヌクレオチド、例えば、メチル化シトシンは、DNAポリメラーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、メチル化ヌクレオチドは、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-メチルシトシン、又はこれらの組み合わせを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、非B型DNA構造体を含む。本明細書で使用される場合、「非B型DNA構造体」とは、標準的な右巻きのB型DNAヘリックスではないDNAの二次構造のコンフォメーションのことである。非B型DNA構造体の非限定的な例としては、グアニン四重鎖、三重鎖DNA(H-DNA)、Z-DNA、十字形、スリップDNA鎖、Aトラクトベンディング、粘着性DNAが挙げられる。非B型DNA構造体は、例えば、Guiblet et al.,Nucleic Acids Res 49(3):1497-1516(2021)に更に記載されている。いくつかの実施形態では、非B型DNA構造体は、DNAポリメラーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、非B型DNA構造体は、ヘアピン、十字形、Z-DNA、H-DNA(三重らせんDNA)、グアニン四重鎖DNA(四重らせんDNA)、スリップDNA、粘着性DNA、又はこれらの組み合わせを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、DNAポリメラーゼ動員部分を含む。DNAポリメラーゼの動員は、本明細書に記載されている。DNAポリメラーゼ動員部分によって動員することができるDNAポリメラーゼの非限定的な例としては、Pol I(そのクレノウ断片を含む)、Pol II、Pol III、Pol IV、若しくはPol Vなどの細菌性DNAポリメラーゼ;Pol α、Pol β、Pol λ、Pol γ、Pol σ、Pol μ、Pol δ、Pol ε、Pol η、Pol ι、Pol κ、Pol ζ、Pol θ、REV1、若しくはREV3などの真核生物DNAポリメラーゼ;Bst、T4、若しくはΦ29(phi29)DNAポリメラーゼなどの等温DNAポリメラーゼ;Taq、Pfu、KOD、Tth、若しくはPwo DNAポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼ;又はそれらの変異体若しくは相同体が挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員部分は、修飾ヌクレオチド、例えば、本明細書に記載されるDNA損傷体、DNA光産物、修飾デオキシリボヌクレオシド、及び/又はメチル化ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、損傷乗り越えDNA合成(TLS)ポリメラーゼを動員する。TLSポリメラーゼは、本明細書に記載される修飾ヌクレオチドを含むDNAを伸長することができる。例示的なTLSポリメラーゼとしては、大腸菌(E.coli)由来のPol II、Pol IV、及びPol V;S.セレビシエ(S.cerevisiae)由来のRev1p、Rev3p、及びPol η;並びにヒトREV1、REV3、Pol η、Pol ι、及びPol κが挙げられるが、これらに限定されない。更なるTLSポリメラーゼは、例えば、Goodman et al.,Cold Spring Harb Perspect Biol 5(10);a010363(2013)及びWaters et al.,Microbiol Mol Biol Rev 73(1):134-154(2009)に記載されている。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員部分は、本明細書に記載される非B型DNA構造体を含む。いくつかの実施形態では、非B型DNA構造体により動員されたDNAポリメラーゼが、非B型DNA構造体を介してDNAを伸長することができる。いくつかの実施形態では、非B型DNA構造体は、PrimPol、REV1、REV3、Pol δ、Pol η、Pol ι、Pol κ、及びPol θから選択されるDNAポリメラーゼを動員する。
【0134】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員部分は、DNAポリメラーゼ動員タンパク質から構成される。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、DNAポリメラーゼを認識して結合することができる。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、DNA鋳型配列に連結されている。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、プライマー結合配列に架橋されている。タンパク質をポリヌクレオチドに連結する方法は、当業者に公知であり、例えば、銅触媒環化付加、ひずみ促進型アジド-アルキン付加環化、及び逆電子要請型ディールス-アルダー反応(例えば、シクロプロペンとテトラジンとの間の反応)などの共有結合方法;又は親和性に基づく方法、例えば、ビオチン部分を含むポリヌクレオチドをアビジン若しくはストレプトアビジン部分を含むタンパク質と連結させる方法が挙げられる。
【0135】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、DNAリガーゼ動員部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、本明細書で提供される組成物のポリヌクレオチド)中にDNAリガーゼ動員部分が存在することにより、ポリヌクレオチドにDNAリガーゼを動員することができる。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼを動員することには、例えば、ポリヌクレオチド中にDNAリガーゼ動員部分が存在することによりDNAリガーゼがポリヌクレオチドを認識する可能性を増大させること;DNAリガーゼがポリヌクレオチドに結合することを促進すること;及び/又はDNAリガーゼを活性化すること、例えば、DNAリガーゼの活性を惹起又は増大させることが含まれる。いくつかの実施形態では、動員されたDNAリガーゼは、本明細書に記載されるように、DNAポリメラーゼによって生成された目的配列を含む二本鎖配列に結合し、開裂された標的ポリヌクレオチドに二本鎖配列をライゲートする。
【0137】
いくつかの実施形態では、DNAリガーゼ動員部分は、DNA鋳型配列の5’アデニル化からなる。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼ動員部分は、DNAリガーゼ動員タンパク質から構成される。例示的なDNAリガーゼ動員タンパク質としては、DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)、増殖細胞核抗原(PCNA)、又はX線修復交差補完タンパク質1(XRCC1)が挙げられるが、これらに限定されない。DNAリガーゼ部分によって動員することができるDNAリガーゼの非限定的な例としては、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼなどの細菌性DNAリガーゼ、DNAリガーゼI、DNAリガーゼII、DNAリガーゼIII、若しくはDNAリガーゼIVなどの哺乳類DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼなどの熱安定性DNAリガーゼ、又はこれらの変異体若しくは相同体が挙げられる。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列は、組成物中の単一のポリヌクレオチド上に存在する。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、ガイド配列及びCas結合領域の3’に位置する。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、ポリヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの3’末端に位置するDNA鋳型配列は、本明細書に記載されるように、DNAポリメラーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドの結合及び/又は伸長を促進し、目的配列を含む二本鎖配列を形成する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの3’末端に位置するDNA鋳型配列は、本明細書に記載されるように、DNAリガーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドへの二重鎖配列のライゲーションを促進する。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列は、組成物中の2つ以上のポリヌクレオチド上に存在する。いくつかの実施形態では、ガイド配列とCas結合領域が第1のポリヌクレオチド上にあり、DNA鋳型配列が第2のポリヌクレオチド上にある。いくつかの実施形態では、ガイド配列が第1のポリヌクレオチド上にあり、Cas結合領域とDNA鋳型配列が第2のポリヌクレオチド上にある。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、第1のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域及び第2のハイブリダイゼーション領域は、ハイブリダイズ可能である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域及び第2のハイブリダイゼーション領域は、RNAから構成される。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域及び第2のハイブリダイゼーション領域は、一本鎖DNAから構成される。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域がRNAから構成され、第2のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAから構成される。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域が一本鎖DNAから構成され、第2のハイブリダイゼーション領域がRNAから構成される。いくつかの実施形態では、RNA及び一本鎖DNAは、ハイブリダイズ可能である。
【0140】
いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、第1のポリヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、第2のポリヌクレオチドの5’末端にある。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域が第2のハイブリダイゼーション領域にハイブリダイズする際に、DNA鋳型配列がガイド配列及びCas結合領域の両方の3’に位置する。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、第2のポリヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドの3’末端に位置するDNA鋳型配列は、本明細書に記載されるように、DNAポリメラーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドの結合及び/又は伸長を促進し、目的配列を含む二本鎖配列を形成する。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドの3’末端に位置するDNA鋳型配列は、本明細書に記載されるように、DNAリガーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドへの二重鎖配列のライゲーションを促進する。
【0141】
いくつかの実施形態では、ガイド配列、Cas結合領域、目的配列(SOI)、及びプライマー結合配列は、本明細書に記載されるように、2つ以上のポリヌクレオチド上に存在する。いくつかの実施形態では、ガイド配列、Cas結合領域、及びプライマー結合配列が第1のポリヌクレオチド上にあり、SOIが第2のポリヌクレオチド上にあり、第1及び第2のポリヌクレオチドは、互いにハイブリダイズすることが可能な第1及び第2のハイブリダイゼーション領域をそれぞれ含む。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するプライマー結合配列は、本明細書に記載されるように、DNAリガーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドへのSOIの結合及び/又はライゲーションを促進する。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するプライマー結合配列は、本明細書に記載されるように、DNAポリメラーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドの結合及び/又は伸長を促進し、SOIを含む二本鎖配列を形成する。
【0142】
いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約3~約10000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約4~約5000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約5~約1000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約10~約800ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約20~約600ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約30~約500ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約40~約400ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約50~約300ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約100~約200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1のハイブリダイゼーション領域は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、又は5000ヌクレオチド長である。
【0143】
いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約3~約10000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約4~約5000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約5~約1000ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約10~約800ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約20~約600ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約30~約500ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約40~約400ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約50~約300ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約100~約200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第2のハイブリダイゼーション領域は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、又は5000ヌクレオチド長である。
【0144】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、実質的に同じ長さである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、約1ヌクレオチド未満、約2ヌクレオチド未満、約3ヌクレオチド未満、約4ヌクレオチド未満、約5ヌクレオチド未満、約6ヌクレオチド未満、約7ヌクレオチド未満、約8ヌクレオチド未満、約9ヌクレオチド未満、約10ヌクレオチド未満、約15ヌクレオチド未満、約20ヌクレオチド未満、約25ヌクレオチド未満、約30ヌクレオチド未満、約35ヌクレオチド未満、約40ヌクレオチド未満、約45ヌクレオチド未満、約50ヌクレオチド未満、約55ヌクレオチド未満、約60ヌクレオチド未満、約65ヌクレオチド未満、約70ヌクレオチド未満、約75ヌクレオチド未満、約80ヌクレオチド未満、約85ヌクレオチド未満、約90ヌクレオチド未満、約95ヌクレオチド未満、又は約100ヌクレオチド未満だけ長さが異なる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、第1のハイブリダイゼーション領域又は第2のハイブリダイゼーション領域のヌクレオチドの数の約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、又は約1%未満だけ長さが異なる。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、長さが実質的に同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、完全に相補的である。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%相補的である。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、例えば、Herzer and Englert,“Chapter 14.Nucleic Acid Hybridization,”in Molecular Biology Problem Solver;A Laboratory Guide,(2001)ed.Alan S.Gersterin;Wiley-Liss,Incに記載されているように、標準的な核酸ハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、ガイド配列が第1のポリヌクレオチド上にあり、Cas結合領域が第2のポリヌクレオチド上にあり、DNA鋳型配列が第3のポリヌクレオチド上にある。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドは、3’末端に第1のハイブリダイゼーション領域を含み、第2のポリヌクレオチドは、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な5’末端の第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)第4のハイブリダイゼーション領域に相補的な3’末端の第3のハイブリダイゼーション領域を含み、第3のポリヌクレオチドは、5’末端に第4のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、3’末端に第1のハイブリダイゼーション領域を含み、第1のポリヌクレオチドは、(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な5’末端の第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)第4のハイブリダイゼーション領域に相補的な3’末端の第3のハイブリダイゼーション領域を含み、第3のポリヌクレオチドは、5’末端に第4のハイブリダイゼーション領域を含む。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、及び第4のハイブリダイゼーション領域がハイブリダイズする際に、DNA鋳型配列がガイド配列及びCas結合領域の両方の3’に位置する。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、及び第4のハイブリダイゼーション領域の各々は、約3~約10000ヌクレオチド長、又は約4~約5000ヌクレオチド長、又は約5~約1000ヌクレオチド長、又は約10~約800ヌクレオチド長、又は約20~約600ヌクレオチド長、又は約30~約500ヌクレオチド長、又は約40~約400ヌクレオチド長、又は約50~約300ヌクレオチド長、又は約100~約200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は実質的に同じ長さであり、第3及び第4のハイブリダイゼーション領域は実質的に同じ長さである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%相補的である。いくつかの実施形態では、第3及び第4のハイブリダイゼーション領域は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%相補的である。
【0146】
いくつかの実施形態では、ガイド配列、Cas結合領域、SOI、及びプライマー結合配列は、本明細書に記載されるように、第1、第2、及び第3のポリヌクレオチド上に存在する。いくつかの実施形態では、ガイド配列及びCas結合領域が第1のポリヌクレオチド上に存在し、プライマー結合配列が第2のポリヌクレオチド上に存在し、SOIが第3のポリヌクレオチド上に存在し、第1及び第2のポリヌクレオチドは、互いにハイブリダイズすることが可能な第1及び第2のハイブリダイゼーション領域をそれぞれ含み、第2及び第3のポリヌクレオチドは、互いにハイブリダイズすることが可能な第3及び第4のハイブリダイゼーション領域をそれぞれ含む。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、第2のポリヌクレオチドの3’末端に位置する。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドの3’末端に位置するプライマー結合配列は、本明細書に記載されるように、DNAリガーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドへのSOIの結合及び/又はライゲーションを促進する。いくつかの実施形態では、第1のポリヌクレオチドの3’末端に位置するプライマー結合配列は、本明細書に記載されるように、DNAポリメラーゼによる開裂された標的ポリヌクレオチドの結合及び/又は伸長を促進し、SOIを含む二本鎖配列を形成する。いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、及び第4のハイブリダイゼーション領域の各々は、約3~約10000ヌクレオチド長、又は約4~約5000ヌクレオチド長、又は約5~約1000ヌクレオチド長、又は約10~約800ヌクレオチド長、又は約20~約600ヌクレオチド長、又は約30~約500ヌクレオチド長、又は約40~約400ヌクレオチド長、又は約50~約300ヌクレオチド長、又は約100~約200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は実質的に同じ長さであり、第3及び第4のハイブリダイゼーション領域は実質的に同じ長さである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のハイブリダイゼーション領域は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%相補的である。いくつかの実施形態では、第3及び第4のハイブリダイゼーション領域は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%相補的である。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、DNA鋳型配列の5’に位置するスペーサーを更に含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含み、スペーサーがCas結合領域とDNA鋳型配列との間に位置している。いくつかの実施形態では、本開示の第2のポリヌクレオチドは、DNA鋳型配列の5’に位置するスペーサーを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、第2のハイブリダイゼーション領域、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含み、スペーサーがCas結合領域とDNA鋳型配列との間に位置している。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、第2のハイブリダイゼーション領域及びDNA鋳型配列を含み、スペーサーが第2のハイブリダイゼーション領域とDNA鋳型配列との間に位置している。
【0148】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、DNAポリメラーゼが目的配列の相補鎖を合成した後に停止するような、DNAポリメラーゼの停止配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、2つ以上の停止配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は5つを超える停止配列を含む。いくつかの実施形態では、停止配列が複数存在すると、DNAポリメラーゼを停止する際に冗長性がもたらされる。いくつかの実施形態では、停止配列は、DNAポリメラーゼの活性化を阻害する。いくつかの実施形態では、停止配列は、DNA鋳型配列からのDNAポリメラーゼの解離を促進する。
【0149】
いくつかの実施形態では、停止配列は、二次構造から構成される。いくつかの実施形態では、二次構造は、DNAポリメラーゼ活性の阻害物質である。いくつかの実施形態では、二次構造は、DNA鋳型配列からのDNAポリメラーゼの解離を促進する。いくつかの実施形態では、二次構造は、ヘアピンループである(ステムループとしても公知である)。いくつかの実施形態では、二次構造は、シュードノットである。
【0150】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、約5~約500ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約10~約400ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約10~約300ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約10~約200ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約20~約150ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約30~約100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約50~約100ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約75、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、又は約200ヌクレオチド長である。
【0151】
本明細書の開示は、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドの要素及び特徴を任意の組み合わせで組み合わせることができることを想定するものである。単なる例示的な目的のために、ポリヌクレオチドは表1に示すような特徴を含むことができる(5’~3’):
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ結合領域のいずれかは、Cas9又はCas12aヌクレアーゼに結合する。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼ結合領域のいずれかは、Cas9ニッカーゼ又はCas12aニッカーゼに結合する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、上記に記載されるガイド配列(例えば、RNAガイド配列又はRNA/DNAガイド配列)、Cas結合領域(例えば、Casヌクレアーゼ結合領域又はCasニッカーゼ結合領域)、及びDNA鋳型配列のいずれかの間にスペーサーを含む。
【0159】
本明細書の開示は、本明細書に記載される組成物が2つ以上のポリヌクレオチド、例えば2つのポリヌクレオチドを含み得ることを想定するものである。単なる例示的な目的のために、組成物は表又は表3に示すような特徴を含み得る2つのポリヌクレオチドを含むことができる(5’~3’):
【0160】
【表7】
【0161】
【表8】
【0162】
【表9】
【0163】
【表10】
【0164】
【表11】
【0165】
【表12】
【0166】
【表13】
【0167】
【表14】
【0168】
【表15】
【0169】
【表16】
【0170】
【表17】
【0171】
いくつかの実施形態では、上記に記載される第2のポリヌクレオチドのいずれかのDNA鋳型配列は、プライマー結合配列及び目的配列を含む。いくつかの実施形態では、上記に記載される第2のポリヌクレオチドのいずれかのDNA鋳型配列は、プライマー結合配列、目的配列、及び修飾ヌクレオチド、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ動員部分の1つ以上を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ結合領域のいずれかは、Cas9又はCas12aヌクレアーゼに結合する。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼ結合領域のいずれかは、Cas9ニッカーゼ又はCas12aニッカーゼに結合する。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のポリヌクレオチドは、上記に記載されるガイド配列(例えば、RNAガイド配列又はRNA/DNAガイド配列)、Cas結合領域(例えば、Casヌクレアーゼ結合領域又はCasニッカーゼ結合領域)、及びDNA鋳型配列のいずれかの間にスペーサーを含む。
【0173】
融合タンパク質
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼを含み、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ動員タンパク質に融合されている。いくつかの実施形態では、本開示は、(i)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及び(ii)DNAポリメラーゼ動員タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、(i)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ、及び(ii)DNAポリメラーゼ動員タンパク質、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせを含む融合タンパク質を提供する。
【0174】
本明細書で説明されるように、融合タンパク質は、典型的には異なる機能を有する少なくとも2つのドメインを含む。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、Casヌクレアーゼを含む。Casヌクレアーゼは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、II-B型Casヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、Casニッカーゼを含む。Casニッカーゼは、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas9ニッカーゼである。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、Cas12aニッカーゼである。いくつかの実施形態では、Casニッカーゼは、II-B型Casニッカーゼである。
【0175】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、DNAポリメラーゼ動員タンパク質を含む。DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、増殖細胞核抗原(PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、腫瘍壊死因子α誘導タンパク質(TNFAIP)、ポリメラーゼデルタ相互作用タンパク質(PolDIP)、X線修復交差補完タンパク質(XRCC)、5-ヒドロキシメチルシトシン結合ES細胞特異的(HMCES)タンパク質、RAD1、RAD9、HUS1、又はこれらの組み合わせを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員タンパク質は、DNAポリメラーゼを動員することができ、DNAポリメラーゼは、Pol I若しくはそのクレノウ断片、Pol II、Pol III、Pol IV、Pol V、Pol α、Pol β、Pol λ、Pol γ、Pol σ、Pol μ、Pol δ、Pol ε、Pol η、Pol ι、Pol κ、Pol ζ、Pol θ、REV1、REV3、Bst DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Φ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼ、又はそれらの変異体若しくは相同体を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、DNAリガーゼは、T4 DNAリガーゼ、パラメシウム・ブルサリア・クロレラウイルス1(Paramecium bursaria Chlorella virus 1)(PCBV-1)DNAリガーゼ、マイコバクテリウムリガーゼD(Mycobacterium Ligase D)(LigD)、ヒトリガーゼ1(Lig1)、ヒトリガーゼ3(Lig3α)、ヒトリガーゼ4(Lig4)、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼ動員部分は、5’-アデニルピロホスホリルキャップを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質は、複製タンパク質A(RPA)又はそのサブユニット、例えばRPA1、RPA2、及びRPA3、一本鎖DNA結合タンパク質(SSBP)、例えばSSBP1、SSBP2、SSBP3、及びSSBP4、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、DNA修復タンパク質は、チロシル-DNAホスホジエステラーゼ1(TDP1)、アプラタキシン、トポイソメラーゼI、又はこれらの組み合わせを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドは、融合タンパク質に提供される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、標的ポリヌクレオチドに結合して開裂させることができる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質のDNAポリメラーゼ動員部分は、開裂された標的ポリヌクレオチドにDNAポリメラーゼを動員する。いくつかの実施形態では、動員されたDNAポリメラーゼは、DNA鋳型配列上の目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、それにより、開裂された標的ポリヌクレオチドに挿入することが可能な目的配列を含む二本鎖配列が生成される。
【0180】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、及び/又はDNA修復タンパク質を動員することにより、開裂された標的ポリヌクレオチドに二本鎖配列を挿入する効率が向上し、それによって二本鎖配列を生成する効率が向上する。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせを含む融合タンパク質は、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせに融合されていないCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと比較して、より高い挿入効率を有する。
【0181】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、核局在化シグナル(NLS)を更に含む。本明細書で使用される場合、「核局在化シグナル」又は「核局在配列」(NLS)は、核移行により細胞核に移送するためのタンパク質を「タグ付けする」ポリペプチドを指すものであり、すなわち、NLSを有するタンパク質は、細胞核に移行される。典型的には、NLSは、タンパク質表面に露出した、正電荷のLys又はArg残基を含む。例示的なNLSとしては、SV40ラージT抗原、ヌクレオプラスミン、EGL-13、c-Myc、及びTUS-タンパク質由来のNLSが挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼとDNAポリメラーゼ動員タンパク質とを連結するリンカーを更に含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼがDNAポリメラーゼ動員タンパク質から立体障害のない状態で位置することができるように、十分な長さ及び/又は可動性を有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、約3~約100アミノ酸長を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、約5~約80アミノ酸長を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~約60アミノ酸長を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、約20~約50アミノ酸長を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、約25~約40アミノ酸長を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、細菌細胞中で発現するようにコドン最適化されたポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、真核細胞中で発現するようにコドン最適化されたポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、哺乳類細胞中で発現するようにコドン最適化されたポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ヒト細胞中で発現するようにコドン最適化されたポリヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、「コドン最適化」は、組換え又は異種タンパク質発現の収量及び効率を向上させるために、発現を宿主tRNAの存在量と一致するようにコドンを調整することを指す。コドン最適化方法は当該技術分野で公知であり、例えば、Integrated DNA Technologies社のコドン最適化ツール、Entelechon社のコドン使用表解析ツールなどのソフトウェアプログラムを使用して実施することができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。様々な種類のベクター、例えば、ウイルス及び非ウイルスベクターが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、細菌発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、哺乳類発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、ヒト発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、植物発現ベクターである。
【0185】
いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスベクター、バキュロウイルスベクター、ワクシニアベクター、単純ヘルペスベクター、エプスタイン・バー・ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ジェミニウイルスベクター、又はカリモウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、及びレンチウイルスベクターによるウイルス形質導入(この場合、投与は局所的、標的化、又は全身的であり得る)は、インビボでの遺伝子療法用の送達方法として使用されている。ウイルスベクターなどのベクターを細胞に導入する方法(例えば、トランスフェクション)は、本明細書に記載されている。
【0186】
いくつかの実施形態では、ベクターは、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節エレメントを更に含む。いくつかの実施形態では、調節エレメントは、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、5’UTR、3’UTR、又はこれらの組み合わせを含む。調節エレメントは、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、調節エレメントは、プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、細菌プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、ウイルスプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、哺乳類プロモーターである。
【0187】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キット内の融合タンパク質は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして提供される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ベクター、例えば、本明細書に記載されるベクター上で提供される。
【0188】
いくつかの実施形態では、キットはポリヌクレオチドを更に含み、ポリヌクレオチドはCas結合領域を含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、融合タンパク質のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼに結合することができる。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、Cas結合領域は、tracrRNAとハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、キットは、tracrRNAを更に含む。Cas結合領域を含むポリヌクレオチドは、更に本明細書に記載されている。
【0189】
いくつかの実施形態では、キットは、DNAポリメラーゼを更に含む。いくつかの実施形態では、DNAポリメラーゼは、phi29 DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼμ、DNAポリメラーゼδ、又はDNAポリメラーゼεを含む。いくつかの実施形態では、キットは、DNAリガーゼを更に含む。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼは、T4 DNAリガーゼ、PCBV-1 DNAリガーゼ、LigD、ヒトLig1、ヒトLig3α、又はヒトLig4を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、キットは、融合タンパク質、DNAポリメラーゼ、及び/若しくはDNAリガーゼのための反応緩衝液並びに/又は保存緩衝液を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、DNA開裂反応、DNAポリメラーゼ反応、及び/又はDNAリガーゼ反応を行うための試薬を更に含む。いくつかの実施形態では、試薬は、ATP、dNTP、MgCl、オリゴ(dT)、及び/又はRNアーゼ阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の対照、例えば、対照標的DNAを含む。例えば、対照標的DNAは、融合タンパク質のCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼによって一定の効率で特異的に開裂されるように設計することができ、それによってCasヌクレアーゼ又はCasニッカーゼの活性を較正することができる。
【0191】
細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で提供される融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを更に含み、ポリヌクレオチドは、ガイド配列(例えば、RNAガイド配列)、Cas結合タンパク質、及びDNA鋳型配列を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含む細胞であって、ポリヌクレオチドが、RNAガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞であって、組成物が、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、ガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドとを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞であって、組成物が、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)ガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドとを含み、DNA鋳型配列がポリヌクレオチドの3’末端にある細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞であって、組成物が、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞であって、組成物が、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、及び(ii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む細胞を提供する。ポリヌクレオチド及び組成物の構成成分は、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ動員タンパク質に融合されている。Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼ及びDNAポリメラーゼ動員タンパク質を含む融合タンパク質は、更に本明細書に記載されている。
【0193】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞であって、組成物が、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドとを含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞であって、組成物が、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第2のポリヌクレオチドの3’末端にある、第2のポリヌクレオチドと、(d)(i)第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第3のポリヌクレオチドとを含む細胞を提供する。組成物の構成成分は、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせに融合されている。融合タンパク質は、更に本明細書に記載されている。
【0194】
いくつかの実施形態では、細胞は、内在性DNAポリメラーゼ、内在性DNAリガーゼ、又はその両方を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、外来性DNAポリメラーゼを含まない。いくつかの実施形態では、細胞は、外来性DNAリガーゼを含まない。
【0195】
いくつかの実施形態では、細胞は、外来性DNAポリメラーゼ、外来性DNAリガーゼ、又はその両方を更に含む。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、細胞に対して相同である。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、細胞に対して異種である。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、細胞とは異なる生物に由来するものである。例えば、細胞は、大腸菌(E.coli)細胞であってよく、DNAポリメラーゼは、T4 DNAポリメラーゼであってよい。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、Pol I若しくはそのクレノウ断片、Pol II、Pol III、Pol IV、Pol V、Pol α、Pol β、Pol λ、Pol γ、Pol σ、Pol μ、Pol δ、Pol ε、Pol η、Pol ι、Pol κ、Pol ζ、Pol θ、REV1、REV3、Bst DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Φ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼ、又はそれらの変異体若しくは相同体を含む。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、細胞に対して相同である。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、細胞に対して異種である。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、細胞とは異なる生物に由来するものである。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、DNAリガーゼI、DNAリガーゼII、DNAリガーゼIII、DNAリガーゼIV、Taq DNAリガーゼ、又はこれらの変異体若しくは相同体を含む。例えば、細胞は、大腸菌(E.coli)細胞であってよく、DNAリガーゼは、T4リガーゼであってよい。
【0196】
いくつかの実施形態では、細胞は、細菌細胞である。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、実験室株である。このような細菌細胞の例としては、大腸菌(E.coli)、S.アウレウス(S.aureus)、V.コレラ(V.cholerae)、S.ニューモニエ(S.pneumoniae)、B.サブチルス(B.subtilis)、C.クレセンタス(C.crescentus)、M.ジェニタリウム(M.genitalium)、A.フィシェリ(A.fischeri)、シネコシスティス(Synechocystis)、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)、A.ビネランジイ(A.vinelandii)、S.コエリカラー(S.coelicolor)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、食品及び/又は飲料の調製に用いられる細菌の細胞である。このような細胞の限定されない例示的な属としては、アセトバクター(Acetobacter)、アルスロバクター(Arthrobacter)、バチルス(Bacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ブラキバクテリウム(Brachybacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、カルノバクテリウム(Carnobacterium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)、ハフニア(Hafnia)、ハロモナス(Halomonas)、Kocuria(コクリア)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、(L.アセトトレランス(L.acetotolerans)、L.アシジピスシス(L.acidipiscis)、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.アリメンタリウス(L.alimentarius)、L.ブレビス(L.brevis)、L.ブチェリ(L.bucheri)、L.カゼイ(L.casei)、L.カルバツス(L.curvatus)、L.ファーメンタム(L.fermentum)、L.ヒルガルジイ(L.hilgardii)、L.ジェンセニイ(L.jensenii)、L.キムチイ(L.kimchii)、L.ラクチス(L.lactis)、L.パラカゼイ(L.paracasei)、L.プランタルム(L.plantarum)及びL.サケイ(L.sakei)を含む)、リューコノストック(Leuconostoc)、ミクロバクテリウム(Microbacterium)、ペジオコッカス(Pediococcus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ワイセラ(Weissella)、並びにザイモモナス(Zymomonas)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
いくつかの実施形態では、細胞は、真核細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、動物細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、動物若しくはヒト細胞、細胞系(cell line)、又は細胞株(cell strain)である。動物若しくは哺乳類細胞、細胞系、又は細胞株の例としては、限定されるものではないが、マウス骨髄腫(NSO)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HT1080細胞、H9細胞、HepG2細胞、MCF7細胞、MDBK細胞、ジャーカット細胞、NIH3T3細胞、PC12細胞、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、EBX細胞、EB14細胞、EB24細胞、EB26細胞、EB66細胞、又はEbvl3細胞、VERO細胞、SP2/0細胞、YB2/0細胞、Y0細胞、C127細胞、L細胞、COS(例えば、COS1及びCOS7)細胞、QC1-3細胞、HEK293細胞、VERO細胞、PER.C6細胞、HeLA細胞、EB1細胞、EB2細胞、EB3細胞、腫瘍溶解細胞又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、真核細胞は、CHO細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CHO-K1細胞、CHO-K1 SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN又はCHO由来細胞である。CHO GSノックアウト細胞(例えば、GSKO細胞)は、例えば、CHO-K1 SV GSノックアウト細胞であってよい。
【0198】
いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト幹細胞である。幹細胞は、例えば、胚性幹細胞(ESC)、成体幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、組織特異的幹細胞(例えば、造血幹細胞)及び間葉系幹細胞(MSC)を含む多能性幹細胞であってよい。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載される細胞のいずれかの分化した形態である。いくつかの実施形態では、真核細胞は、培養中の任意の初代細胞に由来する細胞である。
【0199】
いくつかの実施形態では、真核細胞は、ヒト肝細胞、動物肝細胞、又は非実質細胞などの肝細胞である。例えば、真核細胞は、付着型代謝試験用ヒト肝細胞、付着型誘導試験用ヒト肝細胞、付着型ヒト肝細胞、懸濁液試験用ヒト肝細胞(10ドナー及び20ドナープール肝細胞を含む)、ヒト肝クッパー細胞、ヒト肝星細胞、イヌ肝細胞(単一及びプールビーグル肝細胞を含む)、マウス肝細胞(CD-1及びC57BI/6肝細胞を含む)、ラット肝細胞(Sprague-Dawley、Wistar Han及びWistar肝細胞を含む)、サル肝細胞(カニクイザル又はアカゲザル肝細胞を含む)、ネコ肝細胞(ドメスティックショートヘア肝細胞を含む)、並びにウサギ肝細胞(ニュージーランドホワイト肝細胞を含む)であってよい。
【0200】
いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞である。例えば、植物細胞は、キャッサバ、トウモロコシ、モロコシ、コムギ又はイネなどの作物の細胞であってよい。植物細胞は、藻類、樹木又は野菜の細胞であってよい。植物細胞は、単子葉若しくは双子葉植物の細胞、又は作物若しくは穀類植物、生産植物、果実若しくは野菜の細胞であってよい。例えば、植物細胞は、樹木、例えば、オレンジ、グレープフルーツ又はレモン樹木などの柑橘樹木;モモ又はネクタリン樹木;リンゴ又はナシ樹木;アーモンド又はクルミ又はピスタチオ樹木などの堅果樹木;ナス属の植物、例えばジャガイモ、トマト、ナス、コショウ、パプリカ;ブラシカ属(Brassica)の植物、ラクツカ属(Lactuca)の植物、スピナシア属(Spinacia)の植物;カプシカム属(Capsicum)の植物;綿、タバコ、アスパラガス、ニンジン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、ホウレンソウ、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ブドウ、コーヒー、ココアなどの細胞であってよい。
【0201】
方法
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の組成物を細胞に導入することを含む、細胞内の標的ポリヌクレオチドにおいて標的挿入を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、標的DNAである。いくつかの実施形態では、組成物は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、ガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)ガイド配列、Cas結合領域、及びDNA鋳型配列を含むポリヌクレオチドとを含み、DNA鋳型配列はポリヌクレオチドの3’末端にある。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、及び(ii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)Cas結合領域、及び(iii)DNA鋳型配列を含む第2のポリヌクレオチドとを含む。ポリヌクレオチド及び組成物の構成成分は、更に本明細書に記載されている。
【0202】
方法の例示的な限定されない概要を、図1に図示する。図1では、Casヌクレアーゼがガイド配列により細胞内の標的DNAに誘導され、標的DNAを開裂する。DNA鋳型配列は、(i)プライマーとしての役割を果たす、開裂されたDNAとハイブリダイズするプライマー結合配列、及び(ii)目的配列を含む。DNAポリメラーゼ、例えば、細胞の内在性DNAポリメラーゼは、プライマーに結合して目的配列と相補的なDNA鎖を合成し、それによって目的配列を含む二本鎖配列が形成される。二本鎖配列は、DNA修復経路、例えば、NHEJにより、開裂された標的DNAに挿入され得る。
【0203】
いくつかの実施形態では、細胞内の標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法は、本明細書に記載される組成物を細胞に導入することを含み、ガイド配列は、標的DNAにハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、一本鎖DNAを含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、標的DNAにハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、ガイド配列及び標的DNAをハイブリダイズすることにより、標的DNAに誘導される。いくつかの実施形態では、方法は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼが標的DNAに開裂を生じさせるのに十分な条件下で行われる。
【0204】
いくつかの実施形態では、開裂された標的DNAの一方の鎖が、DNAポリメラーゼのプライマーとなる。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、プライマー結合配列及び目的配列を含む。いくつかの実施形態では、プライマー結合配列は、プライマーに結合することができる。いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAポリメラーゼを細胞に導入することを含まない。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の内在性DNAポリメラーゼがプライマーに結合し、DNA鋳型配列を伸長させるのに十分な条件下で行われる。いくつかの実施形態では、伸長することには、目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、目的配列を含む二本鎖配列を形成することが含まれる。
【0205】
いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAポリメラーゼを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼをコードするポリヌクレオチドにより、外来性DNAポリメラーゼが細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを含むベクターにより、外来性DNAポリメラーゼが細胞に導入される。外来性成分、例えば外来性DNAポリメラーゼを細胞に導入する方法は、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、細胞に対して相同である。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、細胞に対して異種である。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、細胞とは異なる生物に由来するものである。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、Pol I若しくはそのクレノウ断片、Pol II、Pol III、Pol IV、Pol V、Pol α、Pol β、Pol λ、Pol γ、Pol σ、Pol μ、Pol δ、Pol ε、Pol η、Pol ι、Pol κ、Pol ζ、Pol θ、REV1、REV3、Bst DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、Φ29(phi29)DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pwo DNAポリメラーゼ、又はそれらの変異体若しくは相同体を含む。いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAポリメラーゼがプライマーに結合し、DNA鋳型配列を伸長させるのに十分な条件下で行われる。いくつかの実施形態では、伸長することには、目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、目的配列を含む二本鎖配列を形成することが含まれる。
【0206】
いくつかの実施形態では、二本鎖配列は、開裂された標的DNAに挿入される。いくつかの実施形態では、目的配列を含む二本鎖配列は、DNA修復経路により、開裂された標的配列に挿入される。DNA修復経路としては、非相同末端連結(NHEJ)経路、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)経路、相同性配向型修復(HDR)経路、合成依存的単鎖アニーリング(SDSA)、一本鎖アニーリング(SSA)、及び代替的末端連結(Alt-EJ)が挙げられる。NHEJは相同な鋳型を必要としない。一般に、NHEJは、HDRと比較した場合に高い修復効率を有するが、忠実度が低い。しかし、二本鎖切断に適合可能な付着末端又はオーバーハングがある場合には、エラーが低減する。MMEJは、二本鎖切断の両側に(例えば、約2~約10塩基対の)マイクロホモロジーを有するものである。HDRは、修復を誘導するために相同な鋳型を必要とするものであり、HDR修復は、典型的にはNHEJ及びMMEJと比較して忠実度は高いが、効率が低い。SDSA、SSA、及びAlt-EJは、HDRをベースとした修復経路である。SDSAは、例えば、Sung et al.,Nat Rev Mol Cell Biol 7:741(2006)に更に記載されている。SSA及びAlt-EJは、例えば、Bhargava et al.,Trends Genet 32(9):566-575(2016)に更に記載されている。いくつかの実施形態では、方法は、非相同末端連結(NHEJ)に十分な条件下で行われる。いくつかの実施形態では、NHEJにより、目的配列を含む二本鎖配列が、開裂された標的配列に挿入される。いくつかの実施形態では、方法は、HDR、SDSA、SSA、Alt-EJ、又はこれらの組み合わせに十分な条件下で行われる。
【0207】
いくつかの実施形態では、ライゲーションにより、開裂された標的DNAに二本鎖配列が挿入される。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼにより、開裂された標的配列に目的配列を含む二本鎖配列が挿入される。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼは、細胞の内在性DNAリガーゼである。いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAリガーゼを細胞に導入することを含まない。
【0208】
いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAリガーゼを細胞に導入することを更に含み、この外来性DNAリガーゼが、開裂された標的DNAに二本鎖配列を挿入する。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼをコードするポリヌクレオチドにより、外来性DNAリガーゼが細胞に導入される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを含むベクターにより、外来性DNAリガーゼが細胞に導入される。外来性成分、例えば、外来性DNAリガーゼを細胞に導入する方法は、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、細胞に対して相同である。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、細胞に対して異種である。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、細胞とは異なる生物に由来するものである。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼは、大腸菌(E.coli)DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、DNAリガーゼI、DNAリガーゼII、DNAリガーゼIII、DNAリガーゼIV、Taq DNAリガーゼ、又はこれらの変異体若しくは相同体を含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、二本鎖配列は、エンドヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、又はリコンビナーゼの認識部位を更に含む。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、又はリコンビナーゼにより、二本鎖配列が標的DNAに組み込まれる。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、又はリコンビナーゼは、細胞に内在するものである。エンドヌクレアーゼ、トランスポザーゼ、及びリコンビナーゼによる配列組み込みのメカニズムは、当業者には公知であり、例えば、Carlson et al.,Mol Microbiol 27(4):671-676(1998)、Nesmelova et al.,Adv Drug Deliv Rev 62:1187-1195(2010)、及びHallet et al.,FEMS Microbiol Rev 21(2):157-178(1997)に更に記載されている。
【0210】
いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列は、ガイド配列及びCas結合領域と同一のポリヌクレオチド上にあり、従って、標的DNAの開裂部位に近接している。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列、ガイド配列、及びCas結合領域を含む1つ以上のポリヌクレオチドがハイブリダイズし、従って、DNA鋳型配列が標的DNAの開裂部位に近接している。いくつかの実施形態では、DNA鋳型配列が開裂部位に近接していることにより、DNAポリメラーゼによって形成される二本鎖配列の開裂された標的配列への挿入が促進される。
【0211】
いくつかの実施形態では、本方法は、開裂された標的DNAに近接した二本鎖配列を提供することにより、開裂された標的DNAに二本鎖配列を挿入する効率が向上する。いくつかの実施形態では、本方法は、開裂された標的DNAの再ライゲーションを減少させることにより、開裂された標的DNAに二本鎖配列を組み込む効率が向上する。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA鋳型配列を開裂された標的DNAと近接させない方法と比較して、改善された効率を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、DNA鋳型配列を開裂された標的DNAと近接させない方法と比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、少なくとも90倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、若しくは少なくとも200倍、又はそれ以上の効率を有する。
【0212】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される組成物を標的DNAと接触させることを含む、標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法であって、ガイド配列が標的DNAにハイブリダイズすることができる方法を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、ガイド配列、Cas結合領域、プライマー結合配列、及び目的配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第2のポリヌクレオチドの3’末端にある、第2のポリヌクレオチドと、(d)(i)第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、及び(ii)目的配列(SOI)を含む第3のポリヌクレオチドとを含む。組成物の構成成分は、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせに融合されている。融合タンパク質は、更に本明細書に記載されている。
【0213】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、ガイド配列及び標的DNAをハイブリダイズすることにより、標的DNAに誘導される。いくつかの実施形態では、方法は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼが標的DNAに開裂を生じさせるのに十分な条件下で行われる。いくつかの実施形態では、開裂された標的DNAの一方の鎖が、DNAポリメラーゼのプライマーとなる。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のポリヌクレオチドのプライマー結合配列は、プライマーに結合することができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、方法は、標的DNAをDNAリガーゼと接触させることを更に含む。DNAリガーゼは、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼは、T4リガーゼ、PCBV-1 DNAリガーゼ、LigD、ヒトリガーゼタンパク質、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、DNAリガーゼにより、開裂された標的DNAに目的配列がライゲートされる。
【0215】
いくつかの実施形態では、方法は、標的DNAを、DNAポリメラーゼ、DNA修復経路内のタンパク質、又はこれらの組み合わせと接触させることを更に含む。いくつかの実施形態では、目的配列は、DNAポリメラーゼ、DNA修復経路内のタンパク質、又はこれらの組み合わせにより、二本鎖配列に変換される一本鎖配列である。DNAポリメラーゼ及びDNA修復経路は、本明細書に記載されている。
【0216】
いくつかの実施形態では、方法は、標的DNAを細胞抽出物と接触させることを含み、細胞抽出物は、本明細書に記載されるDNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、及び/又はDNA修復経路タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、標的DNAを、組換えDNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、及び/又はDNA修復経路タンパク質と接触させる。
【0217】
いくつかの実施形態では、方法はインビボで行われる。いくつかの実施形態では、方法はインビトロで行われる。いくつかの実施形態では、方法はエクスビボで行われる。いくつかの実施形態では、標的DNAは、プラスミド、PCR産物、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、又はこれらの組み合わせを含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の組成物を細胞に導入することを含む、細胞内の標的ポリヌクレオチドにおいて標的挿入を提供する方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、標的DNAである。いくつかの実施形態では、組成物は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、ガイド配列、Cas結合領域、プライマー結合配列、及び目的配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、(iii)第1のハイブリダイゼーション領域、及び(iv)プライマー結合配列を含む第1のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)目的配列(SOI)を含む第2のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼと、(b)(i)ガイド配列、(ii)Cas結合領域、及び(iii)第1のハイブリダイゼーション領域を含む第1のポリヌクレオチドであって、第1のハイブリダイゼーション領域が第1のポリヌクレオチドの3’末端にある、第1のポリヌクレオチドと、(c)(i)第1のハイブリダイゼーション領域に相補的な第2のハイブリダイゼーション領域、(ii)第3のハイブリダイゼーション領域、及び(iii)プライマー結合配列を含む第2のポリヌクレオチドであって、プライマー結合配列が第2のポリヌクレオチドの3’末端にある、第2のポリヌクレオチドと、(d)(i)第3のハイブリダイゼーション領域に相補的な第4のハイブリダイゼーション領域、(ii)目的配列(SOI)を含む、第3のポリヌクレオチドとを含む。組成物の構成成分は、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、DNAポリメラーゼ動員部分、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ動員部分、DNA結合タンパク質、DNA修復タンパク質、又はこれらの組み合わせに融合されている。融合タンパク質は、更に本明細書に記載されている。
【0219】
方法の例示的な限定されない概要を、図10A~10Cに図示する。図10Aでは、ガイド配列、Cas結合領域、第1のハイブリダイゼーション領域、及びプライマー結合部位が、第1のポリヌクレオチド上に位置している。ガイド配列によって標的DNAに誘導されたCasヌクレアーゼにより、標的DNAに二本鎖切断が生じる。プライマー結合部位は、開裂されたDNAにハイブリダイズされ、第2のポリヌクレオチドは、相補的配列を含む第1及び第2のハイブリダイゼーション領域を介して第1のポリヌクレオチドにハイブリダイズする。第2のポリヌクレオチドは目的配列を含み、この配列がリガーゼにより5’末端と3’末端の両方で開裂されたDNAにライゲートされる(図10A)。第2のポリヌクレオチドは、更に相同配列を含むことができ、その5’末端が、開裂されたDNAにリガーゼによってライゲートされ、その3’末端が、相同性媒介メカニズムによって組み込まれる。いくつかの実施形態では、相同性媒介メカニズムは、HDR、合成依存的単鎖アニーリング(SDSA)、一本鎖アニーリング(SSA)、代替的末端連結(alt-EJ)、又はこれらの組み合わせを含む(図10B)。複合体は、ライゲーション及び/又は相同性媒介組み込みの後に二本鎖DNAへと変換され、それによって標的DNAに目的配列が組み込まれる(図10C)。
【0220】
いくつかの実施形態では、細胞内の標的DNAにおいて標的挿入を提供する方法は、本明細書に記載される組成物を細胞に導入することを含み、ガイド配列は、標的DNAにハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼは、ガイド配列及び標的DNAをハイブリダイズすることにより、標的DNAに誘導される。いくつかの実施形態では、方法は、Casヌクレアーゼ又はCasニッカーゼが標的DNAに開裂を生じさせるのに十分な条件下で行われる。
【0221】
いくつかの実施形態では、開裂された標的DNAの一方の鎖が、DNAポリメラーゼのプライマーとなる。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のポリヌクレオチドのプライマー結合配列は、プライマーに結合することができる。いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAポリメラーゼを細胞に導入することを含まない。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の内在性DNAポリメラーゼがプライマーに結合し、目的配列を伸長させるのに十分な条件下で行われる。いくつかの実施形態では、伸長することには、目的配列に相補的なDNA鎖を合成し、目的配列を含む二本鎖配列を形成することが含まれる。いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAリガーゼを細胞に導入することを含まない。いくつかの実施形態では、方法は、細胞の内在性DNAリガーゼが、開裂された標的DNAに目的配列をライゲートするのに十分な条件下で行われる。
【0222】
いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAポリメラーゼを細胞に導入することを含む。外来性DNAポリメラーゼは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、外来性DNAポリメラーゼは、目的配列に相補的なDNA鎖を合成する。いくつかの実施形態では、方法は、外来性DNAリガーゼを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、外来性DNAリガーゼにより、開裂された標的DNAに目的配列がライゲートされる。いくつかの実施形態では、目的配列は、細胞のDNA修復経路により二本鎖配列に変換される一本鎖配列である。
【0223】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞をDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)阻害剤と接触させることを更に含む。いくつかの実施形態では、DNA-PKを阻害することにより、NHEJが減少してHDRが促進される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物と接触させる前に、細胞をDNA-PK阻害剤と接触させる。いくつかの実施形態では、DNA-PK阻害剤は、AZD7648である。
【0224】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物、ポリヌクレオチド、及び/又は融合タンパク質は、トランスフェクションによって細胞に導入される。トランスフェクション法は、更に本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、例えば、ガイド配列、Cas結合領域、DNA鋳型配列、又はそれらの任意の組み合わせを含む本開示のポリヌクレオチドが、細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、1つ以上のベクター上にある。
【0225】
いくつかの実施形態では、本開示のタンパク質、例えば、融合タンパク質、Casヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、DNAポリメラーゼ、及び/又はDNAリガーゼが、タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドによって細胞に導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドが、1つ以上のベクター上にある。いくつかの実施形態では、方法は、複数のタンパク質、例えば、融合タンパク質、Casヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、DNAポリメラーゼ、及びDNAリガーゼの任意の組み合わせを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、Casヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、又は融合タンパク質及びDNAポリメラーゼを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、Casヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、又は融合タンパク質及びDNAリガーゼを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、Casヌクレアーゼ、Casニッカーゼ、又は融合タンパク質、DNAポリメラーゼ、及びDNAリガーゼを細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、複数のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、単一のベクター上にある。いくつかの実施形態では、複数のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、2つ以上のベクター上にある。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の構成成分が、単一のベクター上にある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の構成成分が、2つ以上のベクター上にある。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上のベクターを細胞にトランスフェクトすることを含み、1つ以上のベクターは、融合タンパク質、Casヌクレアーゼ、又はCasニッカーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドと、ガイド配列、Cas結合領域、DNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1のベクター及び第2のベクターを細胞にトランスフェクトすることを含み、第1のベクターは、融合タンパク質、Casヌクレアーゼ、又はCasニッカーゼをコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、ガイド配列、Cas結合領域、DNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、方法は、単一のベクターを細胞にトランスフェクトすることを含み、単一のベクターは、(i)融合タンパク質、Casヌクレアーゼ、又はCasニッカーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドと、(ii)ガイド配列、Cas結合領域、DNA鋳型配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドとを含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物、ポリヌクレオチド、及び/又は融合タンパク質は、送達粒子によって細胞に導入される。いくつかの実施形態では、組成物の構成成分は、単一の送達粒子で送達される。いくつかの実施形態では、組成物の構成成分は、複数の送達粒子で送達される。送達粒子は、例えば、本明細書に記載されるポリヌクレオチド及びタンパク質などの外来性生体物質を送達するために使用することができる。いくつかの実施形態では、送達粒子は、固体、半固体、エマルション、又はコロイドである。いくつかの実施形態では、送達粒子は、脂質ベースの粒子、リポソーム、ミセル、小胞、又はエキソソームである。いくつかの実施形態では、送達粒子は、ナノ粒子である。送達粒子は、例えば、米国特許出願公開第2011/0293703号明細書、同第2012/0251560号明細書、同第2013/0302401号明細書、米国特許第5,543,158号明細書、米国特許第5,855,913号明細書、米国特許第5,895,309号明細書、米国特許第6,007,845号明細書、及び米国特許第8,709,843号明細書に更に記載されている。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物、ポリヌクレオチド、及び/又は融合タンパク質は、小胞によって細胞に導入される。いくつかの実施形態では、組成物の構成成分は、単一の小胞で送達される。いくつかの実施形態では、組成物の構成成分は、複数の小胞で送達される。いくつかの実施形態では、小胞は、エキソソーム又はリポソームから構成される。標的細胞への外来性生体物質を送達するように改変された小胞は、例えば、米国特許出願公開第2008/0234183号明細書;同第2019/0167810号明細書;同第2020/0207833号明細書;及びAlvarez-Erviti et al.,Nat Biotechnol 29:341(2011)に記載されている。
【0229】
本明細書に引用される全ての参考文献、例えば特許、特許出願、論文、教科書など、及びこれらに引用される参考文献は、それらが既に引用されていない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0230】
実施例1.ポリヌクレオチドの標的挿入に関する評価
S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9タンパク質(SpCas9)単独、又は逆転写酵素に融合させたSpCas9(SpCas9-RT)を、AAVS1遺伝子座を標的とするRNAガイド配列、SpCas9に結合するためのtracrRNA、及び3’末端の鋳型配列から構成されるガイドポリヌクレオチド(本明細書では「springRNA」と称する)によりインビボ標的挿入について試験した。springRNA構築物を5つ調製した:
【0231】
(1)RNAのみのspringRNA - RNAヌクレオチドからなり、RNAガイド配列、tracrRNA、6bpの挿入配列(AATATG)、及びプライマー結合配列から構成されるポリヌクレオチド(図2Aを参照されたい);
【0232】
(2)DNAテールを有するspringRNA(「DNA」) - RNAのみのspringRNAと同一の配列であり、DNAヌクレオチドからなる挿入配列及びプライマー結合配列を除く全てのRNAヌクレオチドを含んでいる(図2Bを参照されたい);
【0233】
(3)DNAテール及びホスホロチオエート結合を有するspringRNA(「PS-DNA」) - DNA挿入断片を有するspringRNAと同一であるが、挿入配列及びプライマー結合配列がホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオエート結合を含むことを除く(図2Bを参照されたい);
【0234】
(4)脱塩基部位を有するspringRNA - RNAのみのspringRNAと同一であり、RNAヌクレオチドからなるが、挿入配列の3番目の塩基が脱塩基部位、dSpacerヌクレオチドの1’2’-ジデオキシリボースで置換されていることを除く(図2Cを参照されたい);
【0235】
(5)TEGリンカーを有するspringRNA - RNAのみのspringRNAと同一であり、RNAヌクレオチドからなるが、挿入配列の3番目の塩基がトリエチレングリコール(TEG)に共有結合されていることを除く(図2Dを参照されたい)。
【0236】
FUGENEHD(登録商標)を使用して、HEK293T細胞をSpCas9又はSpCas9-RTのいずれかを発現するプラスミドでトランスフェクトした。24時間後、LIPOFECTAMINE(商標)RNAiMAXを使用して、上記に列挙した2pmolのspringRNA構築物で細胞を更にトランスフェクトした。
【0237】
springRNAをトランスフェクトして48時間後に細胞を採取した。AAVS1遺伝子座をPCRで増幅し、Illuminaシーケンスプラットフォームを使用して配列決定した。結果を図3及び図4に示す。図3のパネルA~Eは、SpCas9及び上記のspringRNA構築物の各々による標的挿入を示す。図3のパネルF~Jは、SpCas9-RT(「PE0」)及び上記のspringRNA構築物の各々による標的挿入を示す。図4は、上記のspringRNA構築物の各々と組み合わせたSpCas9単独又はSpCas9-RTによる挿入の相対頻度を示す。
【0238】
図3及び図4の結果は、DNAテール又はホスホロチオエート結合を有するDNAテールを含有するspringRNA(すなわち、上記の構築物(2)及び(3)に関して記載したようなDNAヌクレオチドを含む挿入配列及びプライマー結合配列)と、SpCas9発現プラスミドとをコトランスフェクトすることにより、SpCas9に融合された逆転写酵素が存在しない場合であっても、挿入配列の標的挿入がもたらされたことを示している。従って、内在性の細胞性因子、例えば内在性の細胞性DNAポリメラーゼが、挿入配列をDNA合成の鋳型として使用することが可能となる。従って、標的挿入は、Cas9単独並びにDNA挿入断片、すなわちDNA挿入配列及びDNAプライマー結合配列を含むspringRNAを使用して行うことができる。
【0239】
実施例2.ポリヌクレオチドの標的挿入に関する更なる評価
RNAのみのspringRNA、DNAテールを有するspringRNA、並びにDNAテール及びホスホロチオエート結合を有するspringRNA(PS-DNA)を、SpCas9単独、又はSpCas9-RT融合体により更に試験した。springRNA構築物は、実施例1のように、AAVS1を標的とするガイド配列と、SpCas9のtracrRNA配列とを含むものであった。springRNAの配列を表4に示す。挿入配列及びプライマー結合配列には下線が引かれており、二重下線はDNAヌクレオチドを表している。springRNAはAgilentにより合成した。
【0240】
【表18】
【0241】
SpCas9又はSpCas9-RTとspringRNAとを細胞にトランスフェクトし、細胞を採取し、実施例1に記載されるようにAAVS1遺伝子座を解析した。結果を図5A~5Fに示す。図5A~5Cは、SpCas9-RT(「PE0」)と、RNAのみのspringRNA(図5A)、DNAテールを有するspringRNA(図5B)、及びPS-DNAを有するspringRNA(図5C)とによる標的挿入を示す。図5D~5Fは、SpCas9と、RNAのみのspringRNA(図5D)、DNAテールを有するspringRNA(図5E)、及びPS-DNAを有するspringRNA(図5F)とによる標的挿入を示す。
【0242】
この結果は、SpCas9と、DNAテール又はPS-DNAを有するPS-DNAテールを含有するspringRNAとの組み合わせ、すなわちDNAヌクレオチドを含む挿入配列及びプライマー結合配列が、SpCas9-RTとspringRNAとの組み合わせと同様の挿入パターンを達成したことを示している。
【0243】
実施例3.インビトロアッセイ
Cas9を使用した標的挿入におけるDNAポリメラーゼの役割を評価するために、インビトロアッセイを実施した。アッセイの概要を図6に示す。インビトロアッセイでは、2本の相補的なDNA鎖が、異なるフルオロフォアで標識される(6 FAM標識非標的鎖及びHEX標識標的鎖)。ガイド配列は、Cas9開裂によって長さの異なる2本の鎖が生成されるように設計されている。DNAポリメラーゼにより、springRNAのプライマー結合配列にハイブリダイズした6 FAM標識非標的鎖が伸長する。生成物を変性してキャピラリー電気泳動により分離し、フルオロフォアと結合した鎖を検出する。
【0244】
2つの相補鎖である6 FAM標識非標的鎖とHEX標識標的鎖とをアニーリングすることにより、合成標的DNA基質を調製した。Cas9とspringRNAとを等モル比で混合すると、室温でリボ核タンパク質複合体が形成された。Cas9:springRNA複合体を15倍モル過剰で合成標的DNA基質に添加した。DNAポリメラーゼ(最適緩衝液中のBst 3.0 DNAポリメラーゼ又は大腸菌(E.coli)DNA Pol Iのクレノウ断片のいずれか)を反応混合物に添加し、37℃で1時間インキュベートした。プロテイナーゼK消化により反応を停止した。1μLの反応混合物をHIDI(商標)ホルムアミドに添加し、95℃で3分間変性させた。この変性生成物を、3730 DNAアナライザー(Applied Biosystems)上でキャピラリー電気泳動により分離し、解析を行った。
【0245】
結果を図7A~7Fに示す。青色の線は非標的鎖に対応し、緑色の線は標的鎖に対応する。アスタリスクは開裂した合成標的DNA基質を示し、黒い矢印はDNAポリメラーゼによる伸長生成物を示す。図7Aは、Cas9及びspringRNAによるアッセイ結果を示す。図7Bは、Cas9、クレノウ断片、及びspringRNAによるアッセイ結果を示す。図7C~7Fは、Cas9、Bst 3.0ポリメラーゼ、及び、springRNA(図7C~7D)、脱塩基部位を有するspringRNA(図7E)、又はTEGを有するspringRNA(図7F)によるアッセイ結果を示す。インビトロアッセイ結果は、DNAポリメラーゼがCas9と融合することなく標的挿入を行うことができることを示している。図8は、クレノウ断片又はBst 3.0ポリメラーゼによる伸長反応のカイネティクスを示す。
【0246】
実施例4.gRNA上流の近接ライゲーション
以下の実施例5~19は、gRNA上流の近接ライゲーション(「plugRNA」)に関するものである。
【0247】
本開示及び実施例全体を通して記載されているように、plugRNAは、3’末端にポリヌクレオチドが付加されたgRNA分子を含む。ポリヌクレオチドは、2つのエレメント:第1のハイブリダイゼーション領域(実施例及び図中では「ランディングパッド」とも称される)と、Casタンパク質によって誘導された切断部の上流の配列にハイブリダイズするプライマー結合配列(PBS)とから構成される。plugRNAは単一分子であってもよく、又は互いにアニーリングして二元、三元若しくは四元複合体を形成する複数のポリヌクレオチドから構成されてもよい。plugRNAの任意のエレメントは、DNA、RNA、LNA、PNA、又は化学的に修飾されたヌクレオチドを含み得る。
【0248】
本開示及び実施例全体を通して記載されるように、Casタンパク質は、plugRNAに結合することができる任意のCasタンパク質であってよい。Casタンパク質は、Cas9、Cas12、Cascade複合体を含むがこれらに限定されない、任意のI型又はII型Casタンパク質であってよい。Casタンパク質は、蛍光タグ、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、DNAリガーゼ(例えば、限定するものではないが、T4 DNAリガーゼ、パラメシウム・ブルサリア・クロレラウイルス1(Paramecium bursaria Chlorella virus 1)(PBCV-1)リガーゼ、マイコバクテリウムリガーゼD(Mycobacterium Ligase D)(LigD)、ヒトリガーゼ1、ヒトリガーゼ3、ヒトリガーゼ4)、リガーゼアダプタータンパク質(例えば、限定するものではないが、XRCC1、XRCC4、PCNA)、一本鎖DNA結合タンパク質(RPA1/2/3、SSBP1-4など)、DNA修復タンパク質(TDP1、アプラタキシン、トポイソメラーゼI)、又はこれらの組み合わせに融合することができる。
【0249】
本明細書の実施例は更に、本開示において「第2のポリヌクレオチド」とも称される「ドナー」ポリヌクレオチドについて言及する。ドナーポリヌクレオチドは、plugRNAの第1のハイブリダイゼーション領域と相補的な第2のハイブリダイゼーション領域と、目的配列(実施例及び図中では「挿入断片」とも称される)と、標的開裂部位に近接する配列と相補的又は実質的に相補的な相同配列とから構成される。ドナー設計では、これらのエレメントのいずれかを省略することができ、互いにハイブリダイズする2つ以上のポリヌクレオチドから構成することができ、又は別のポリヌクレオチドと対合して二本鎖領域を形成することができる。ドナーの任意の部分は、DNA、RNA、PNA、LNA、又は化学的に修飾されたヌクレオチドを含み得る。ドナーの5’末端及び3’末端は、リン酸化、アデニル化、ホスホロチオエート化などであってよい。
【0250】
本開示は、本明細書ではノックインヌクレオチド誘導(knock-in nucleotide guided)(「KING」)編集とも称される、部位特異的修飾を行う方法を提供する。KING編集の一般的な方式を図10に示す。要約すると、Cas9は、本明細書に記載されるように、plugRNA及びドナーと三元(又はそれよりも高次の)複合体を形成する。Cas9により、二本鎖切断が誘発される。plugRNAのPBSが標的部位にアニーリングし、ドナーを切断部位に並列させる。内因性DNAリガーゼ又は外来的に提供されるDNAリガーゼによって、ドナーを直接ライゲートすることができる(図10A及び10B)。或いは、DNAリガーゼと、相同性に基づくメカニズム(相同組換え、一本鎖アニーリング[SSA]、マイクロホモロジー媒介末端結合[MMEJ]、合成依存的単鎖アニーリング[SDSA]、DNA又はRNA鋳型DNA修復)との協働作用により、ドナーを組み込むことができる。ドナーが標的鎖に組み込まれると、内在性の細胞機構が中間体を分解し、標的DNAに所望の配列の挿入を生じさせることが可能となる。
【0251】
実施例5:plugRNA及びドナーの設計
図9は、ドナー、及び関連するエレメントを含むplugRNAの一般的な設計を示す。plugRNAは、ガイド配列(「特異配列標的化スペーサーRNA」)(1)からなり、その後にCas9タンパク質を結合して活性化させることができるgRNA足場が続く。スペーサー-gRNA足場の3’末端は、ポリヌクレオチドへと伸長している。このポリヌクレオチド(様々な化学的方法で修飾されたDNA、RNA、及びこれらの組み合わせから作製される)は、2つのエレメント:第1のハイブリダイゼーション配列(「ランディングパッド」)(2)、及びCasタンパク質によって誘導される切断部の上流の配列にハイブリダイズするプライマー結合配列(3)からなる。切断(すなわち、第1のハイブリダイゼーション配列とプライマー結合配列との間にある接合部)のすぐ近くのヌクレオチドは、DNAからなる。
【0252】
第1のハイブリダイゼーション配列は、ドナーの第2のハイブリダイゼーション配列(「ハイブリダイゼーション配列」)(4)にハイブリダイズし、ドナーの5’末端を切断部位に並列させる。この構成では、3つのポリヌクレオチドが、DNAリガーゼにとって絶妙な基質であるニック核酸となる。
【0253】
ハイブリダイゼーション配列は、リン酸化、アデニル化、タンパク質への共有結合、又は化学的に異なる方法で修飾することができる。ドナーは更に、目的配列(「挿入配列」)(5)と、切断部位に近接する配列と相同な相同配列(6)とからなる。相同配列は、相同性に基づくメカニズム(HR、SSA又はMMEJ)に関与するために使用され、潜在的に編集効率を向上させる。
【0254】
ドナー及びplugRNAのどちらもが、追加のエレメントを含むことができるか、いくつかのエレメントを省略することができるか、又は複数のオリゴヌクレオチドに分割することができる(図11及び実施例7を参照されたい)。明確にするために、ドナーとplugRNA間の塩基対は示されていない。
【0255】
実施例6:リガーゼの活性により正確な挿入を生じさせる方法
図10は、ノックインヌクレオチド誘導(「KING」)編集の一般的な方式を示す。plugRNAによって誘導されたCasタンパク質は、特定のDNA配列で切断を誘発させることができる。プライマー結合配列(「PBS」)が切断部位にハイブリダイズすることにより、ドナーが切断部位と並列する。ドナーは、5’末端と3’末端の両方で直接ライゲートされてもよく、又は一方の末端(ここでは5’で示されている)でライゲートされ、他方の末端で相同性媒介メカニズム(HR、SDSA、SSA、alt-EJなど)により組み込まれてもよい。生成されたキメラ分子はdsDNAに変換され、標的部位に所望の配列が組み込まれる。
【0256】
実施例7:異なるplugRNA:ドナー構成の例
図11は、KING編集を行うための方式の一部を示す。図11(A)は、3つのエレメントである、第2のハイブリダイゼーション配列、目的配列、及び相同配列を全て含むドナーを示す。図11(B)は、相同配列を含まないドナーを示す。図11(C)は、第2のハイブリダイゼーション配列を含まないドナーを示す。図11(D)は、5’と3’の両方にオーバーハングを有する二本鎖領域の目的配列を形成するように、目的配列に相補的な配列がハイブリダイズされている標準的なドナーを表す。この構成は「オーバーハング」と称される。図11(E)は、図11(A)のようなドナーを示しているが、plugRNAが2つの核酸で構成されている。sgRNAは、3’末端に付加された、約30ntの長さの配列を有する。この3’配列は相補的なポリヌクレオチドと対合することができ、次いで第1のハイブリダイゼーション配列及びプライマー結合配列が続く。この構成は、「スプリットplugRNA」又は「スプリットシステム」と称される。図11(F)は、図11(A)のような構成を示しているが、ハイブリダイゼーション配列が短く、プライミングされる標的部位の3’末端とドナーの5’末端との間にギャップが生じている。この構成は「ギャップ」と称される。図11(G)は、図11(A)と同一であるが、ドナーは5’末端に追加のヌクレオチドを有しており、いくつかの実施形態ではFEN1及び他の修復機構に関与し得るフラップが生成されている。この構成は「フラップ」と称される。図11(H)は、図11(B)と同一であるが、目的配列に相補的な配列がアニーリングされ、ドナーの3’末端に平滑末端が生成されている。この構成は「平滑」と称される。図11(I)では、ドナーが2つのポリヌクレオチドに分割されている。第1のドナー鎖は、第2のハイブリダイゼーション配列及び目的配列から構成される。第2の配列は、相同配列、及び目的配列に相補的な配列から構成される。この構成は「ブリッジ」と称される。図11(J)では、相同配列が、gRNA足場のすぐ下流のplugRNAに埋め込まれている。この相同配列は、Casによって誘導された切断の3’側にアニーリングする。ドナーは、2つのハイブリダイゼーション配列:第2のハイブリダイゼーション配列及び更なるハイブリダイゼーション配列に挟まれた目的配列から構成され、第2のハイブリダイゼーション配列は第1のハイブリダイゼーション配列と相補的であり、更なるハイブリダイゼーションは相同配列に隣接する領域に相補的である。この構成により、ドナーの5’側と3’側の両方が二本鎖切断に近接する。この構成は「デュアルハイブリダイゼーション」と称される。
【0257】
実施例8:インビトロアッセイにおける概念実証
材料及び方法
HEX標識DNAオリゴを、アニーリング緩衝液(pH 7.5の10mMのトリス、50mMのNaCl)中で、95℃で2分間変性させ、次いで0.1℃/秒で4℃まで一定に低下させることにより、200nMの相補的配列とアニーリングさせた。plugRNAをドナーオリゴ(アニーリング緩衝液中、終濃度1μM)と等モル比で混合し、上記のようにアニーリングさせた。Cas9ヌクレアーゼを反応緩衝液(1X T4 DNAリガーゼ緩衝液、NEB)に等モル量で溶解し、混合した(終濃度150nM)。周囲温度で10分間インキュベートすることにより、Cas9-plugRNA-ドナー複合体を組み立てた。組み立てられたRNPに、蛍光二本鎖DNA基質を添加した(10nMの終濃度)。標的DNAを切断するために、反応物を37℃で10分間インキュベートした。インキュベート後、200UのT4 DNAリガーゼを添加し、反応を37℃で1時間継続させた。反応を停止液(終濃度:0.1mg/mlのプロテイナーゼK、0.1%のSDS、12.5mMのEDTA)を添加することで終了させ、56℃で30分間インキュベートした。反応生成物をGeneScan LIZ500を用いてHiDiホルムアミドに溶解させ、95℃で変性させ、次いでキャピラリー電気泳動で分離した。
【0258】
図12Aは、アッセイのレイアウトを表す。図12B及び図12Cは、plugRNAを、それぞれ異なる長さの第1及び第2のハイブリダイゼーション配列を含むドナーと組み合わせた、インビトロアッセイの定量化を表す。2つのパラメータ:ライゲートされたDNAに相当する、アッセイで検出されたDNA全体の割合として算出されるライゲーション生成%;及びライゲートされた切断DNAの割合として算出されるライゲーション効率%について計算を行った。図12Bは、plugRNAが20bpのランディングパッドと15bpのハイブリダイゼーション配列を含む場合、ライゲーション生成物が高頻度で生成され、最大量に達することを示している。plugRNAがランディングパッドを含まない場合、ライゲーションは観察されず、ドナーDNAにplugRNAをアニーリングすることが必要となることを示している。図12Cは、組み合わせに関わらず、ライゲーションが極めて効率的であり、>90%のライゲーション効率に達することを示している。
【0259】
実施例9.HeLa核抽出物を使用したインビトロライゲーション
材料及び方法
HEX標識DNAオリゴを、アニーリング緩衝液(pH 7.5の10mMのトリス、50mMのNaCl)中で、95℃で2分間変性させ、次いで0.1℃/秒で4℃まで一定に低下させることにより、200nMの相補的配列とアニーリングさせた。plugRNAをドナーオリゴ(アニーリング緩衝液中、終濃度1μM)と等モル比で混合し、上記のようにアニーリングさせた。Cas9ヌクレアーゼを反応緩衝液(50mMのトリス-HCl(pH7.5)、0.5mMの酢酸マグネシウム、60mMの酢酸カリウム、及び0.1mg/mlのBSA)に等モル量で溶解し、混合した(終濃度150nM)。周囲温度で10分間インキュベートすることにより、Cas9-plugRNA-ドナー複合体を組み立てた。組み立てられたRNPに、蛍光二本鎖DNA基質を添加した(10nMの終濃度)。標的DNAを切断するために、反応物を37℃で10分間インキュベートした。インキュベート中にHeLa核抽出物(Ipracell)をdNTP及びrNTP混合物と予備混合し、室温で10分間インキュベートした。インキュベート後、予備混合したHeLa核抽出物を、RNP/基質混合物(2.5mg/mlのHeLa核抽出物、5mMのATP、0.2mMのCTP、0.2mMのGTP、0.2mMのUTP、0.2mMのdATP、0.2mMのdCTP、0.2mMのdGTP、0.2mMのdUTP)に添加した。反応物を37℃で更に1時間インキュベートした。反応を停止液(終濃度:0.1mg/mlのプロテイナーゼK、0.1%のSDS、12.5mMのEDTA)を添加することで終了させ、37℃で30分間インキュベートした。反応生成物をGeneScan LIZ500を用いてHiDiホルムアミドに溶解させ、95℃で変性させ、次いでキャピラリー電気泳動で分離した。
【0260】
図13Aは、実験のレイアウトを表す。HeLa核抽出物は、大部分のタンパク質の活性を保持しているため、生化学的研究に広く使用されており、様々な複雑なプロセス(複製、修復、及び転写を含む)を再構成するために使用することができる。ウイルス組換えリガーゼの使用に加えて、HeLa核抽出物は、ヒト細胞に存在する酵素活性を使用するKING編集の実現可能性に知見をもたらし得る。
【0261】
図13B及び13Cは、HeLa核抽出物によるインビトロアッセイの定量化を示す。図12及び実施例8のように、(ライゲーション生成物に相当するDNA全体の割合としての)生成物の存在量と、(ライゲートされた生成物に変換された切断DNAの割合としての)ライゲーションの効率との両方を定量化した。図13B及び13Cの結果のヒートマップにより、KING編集が効率的であることが実証された。第1のハイブリダイゼーション領域(「ランディングパッド」)と第2のハイブリダイゼーション領域(「ハイブリダイゼーション配列」)の大きさが増大するにつれて、ライゲーション生成物が多くなることが観察された。また、HeLa核抽出物を使用した場合に、ライゲーションが例外的に効率的となることが観察された。
【0262】
実施例10.核抽出物を使用したKING編集の再構成
材料及び方法
plugRNAをドナーオリゴ(アニーリング緩衝液中、終濃度1μM)と等モル比で混合し、95℃で2分間変性させ、次いで0.1℃/秒で4℃まで一定に低下させることによりアニーリングした。Cas9ヌクレアーゼを反応緩衝液(50mMのトリス-HCl(pH7.5)、0.5mMの酢酸マグネシウム、60mMの酢酸カリウム、及び0.1mg/mlのBSA)に等モル量で溶解し、混合した(終濃度150nM)。周囲温度で10分間インキュベートすることにより、Cas9-plugRNA-ドナー複合体を組み立てた。組み立てられたRNPに、標的AAVS1配列を含むプラスミドを添加した(10nMの終濃度)。標的DNAを切断するために、反応物を37℃で10分間インキュベートした。インキュベート中にHeLa核抽出物(Ipracell)をdNTP及びrNTP混合物と予備混合し、室温で10分間インキュベートした。インキュベート後、予備混合したHeLa核抽出物を、RNP/基質混合物(2.5mg/mlのHeLa核抽出物、5mMのATP、0.2mMのCTP、0.2mMのGTP、0.2mMのUTP、0.2mMのdATP、0.2mMのdCTP、0.2mMのdGTP、0.2mMのdUTP)に添加した。反応物を37℃で更に1時間インキュベートした。反応液のマイクロリットルの半分をPCR反応の鋳型として使用し、標的AAVS1配列を増幅した。PCR産物をキャピラリー電気泳動を使用して分離した、又はNextSeq500を使用して次世代シーケンシングにかけた。配列決定結果を参照配列とアライメントし、RIMAによって編集を解析した(例えば、Taheri-Ghahfarokhi et al.,PMID;30032200を参照されたい)。
【0263】
図14Aは、手順のレイアウトを示す。図14Bは、NGS後の代表的な結果を示す。回収したAAVS1標的部位で検出された挿入変異体の上位10個を示す。>75%の編集されたリードを含む上位の変異体は、予測された所望の配列(ハイブリダイゼーション配列[ドット]及び挿入[クロスハッチ])に相当するものであった。短縮された挿入も、はるかに低い頻度で検出された。エラーを伴う所望の配列の挿入も、0.5%より低い頻度で検出された。これらの結果は、KING反応全体が再構成され、高精度且つ高い忠実度で標的部位に所望の配列の挿入をもたらすことができることを示している。
【0264】
実施例11.様々な基質を用いて再構成されたKINGアッセイにおける挿入効率
材料及び方法
plugRNAをドナーオリゴ(アニーリング緩衝液中、終濃度1μM)と等モル比で混合し、95℃で2分間変性させ、次いで0.1℃/秒で4℃まで一定に低下させることによりアニーリングした。Cas9ヌクレアーゼを反応緩衝液(50mMのトリス-HCl(pH7.5)、0.5mMの酢酸マグネシウム、60mMの酢酸カリウム、及び0.1mg/mlのBSA)に等モル量で溶解し、混合した(終濃度150nM)。周囲温度で10分間インキュベートすることにより、Cas9-plugRNA-ドナー複合体を組み立てた。組み立てられたRNPに、標的AAVS1配列を含むプラスミドを添加した(10nMの終濃度)。標的DNAを切断するために、反応物を37℃で10分間インキュベートした。インキュベート中にHeLa核抽出物(Ipracell)をdNTP及びrNTP混合物と予備混合し、室温で10分間インキュベートした。インキュベート後、予備混合したHeLa核抽出物を、RNP/基質混合物(2.5mg/mlのHeLa核抽出物、5mMのATP、0.2mMのCTP、0.2mMのGTP、0.2mMのUTP、0.2mMのdATP、0.2mMのdCTP、0.2mMのdGTP、0.2mMのdUTP)に添加した。反応物を37℃で更に1時間インキュベートした。反応液のマイクロリットルの半分をPCR反応の鋳型として使用し、標的AAVS1配列を増幅した。PCR産物をキャピラリー電気泳動を使用して分離した、又はNextSeq500を使用して次世代シーケンシングにかけた。配列決定結果を参照配列とアライメントし、RIMAによって編集を解析した(PMID;30032200)。
【0265】
図15は、異なる方式(図11を参照されたい)を使用した場合の、(NGSによってアッセイされた)所望の挿入の頻度を示す。図15に示すように、ハイブリダイゼーション配列及び相同配列、並びに/又は二本鎖ドナーが存在すると、正確なKING編集の頻度が高くなった。これらのエレメントの構成が異なるplugRNA:ドナー複合体により、様々なレベルで挿入を生じさせることができた。
【0266】
実施例12.正確な挿入のためのKING編集成分の最適化
本実施例では、より正確な挿入を生じさせる能力について、様々なKING編集成分を試験した(図16Aを参照されたい)。
【0267】
方法:
FugeneHDを使用して、Cas9の発現を誘導するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトした。24時間後、plugRNA及びssDNAドナーを、以下の条件を用いて組み立てた:95℃で2分間変性させ、次いで0.1℃/秒の速度で4℃まで一定に低下させた。RNAiMAXを使用して、2pmolの組み立てられたplugRNA及びssDNAドナーで細胞をトランスフェクトした。plugRNA用の異なる長さの第1のハイブリダイゼーション領域(「ランディングパッド」)と、ssDNAドナー用の異なる長さの第2のハイブリダイゼーション領域(「ハイブリダイゼーション配列」)及びssDNAドナーの相同配列とを、様々なAAVS部位を標的化して試験した。48時間後のトランスフェクト細胞からゲノムDNAを採取し、増幅してからILLUMINA次世代シーケンシングによって解析した。
【0268】
結果:
ランディングパッド、相同配列、及びハイブリダイゼーション配列が、ssDNAドナーを使用したKING編集による正確な挿入を導入するために使用されたことが観察された。図16Bを参照されたい。plugRNA1.2(+AAVS6)、plugRNA1.4(+AAVS7)及びplugRNA1.5(+AAVS7又は+AAVS8)を使用すると、意図した正確な挿入が認められた。
【0269】
実施例13.ssDNAドナーによるKING編集
本実施例では、KING編集のためのssDNAドナー及び様々な長さの相同配列について試験した。
【0270】
方法:
FugeneHDを使用して、Cas9の発現を誘導するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトした。24時間後、plugRNA及びssDNAドナーを、以下の条件を用いて組み立てた:95℃で2分間変性させ、次いで0.1℃/秒の速度で4℃まで一定に低下させた。RNAiMAXを使用して、2pmolの組み立てられたplugRNA及びssDNAドナーで細胞をトランスフェクトした。ssDNAドナー、又はギャップ若しくはフラップを有するssDNAに対し、異なる長さの相同配列(図17A)を試験した。48時間後のトランスフェクト細胞からゲノムDNAを採取し、増幅してからILLUMINA次世代シーケンシングによって解析した。
【0271】
結果:
ssDNAドナーの相同配列の長さを最適化することにより、KINGの絶対的及び相対的な正確な編集効率が更に改善されたことが観察された。図17Bを参照されたい。plugRNA1.5では、10bp又は50bpの相同配列を含むssDNAドナーを使用すると、最も高い絶対的な正確な編集効率のKING編集が認められた。plugRNA1.4では、50bpの相同配列を含むssDNAドナーを使用すると、最も高い絶対的な正確な編集効率のKING編集が認められた。図17Bでは、更に、ギャップ又はフラップを含むドナーを使用したKING編集により、正確な挿入を導入することが可能となることが実証された。
【0272】
実施例14.dsDNAドナーによるKING編集
本実施例では、図18Aに図示される様々な構成のdsDNAドナーによってKING編集を試験した。
【0273】
方法:
FugeneHDを使用して、Cas9の発現を誘導するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトした。24時間後、plugRNA及びssDNAドナーを、以下の条件を用いて組み立てた:95Cで2分間変性させ、次いで0.1℃/秒の速度で4℃まで一定に低下させた。RNAiMAXを使用して、2pmolの組み立てられたplugRNA及びssDNA/dsDNAドナーで細胞をトランスフェクトした。異なる設計のdsDNA又は対照ssDNA(図18A)を試験した。48時間後のトランスフェクト細胞からゲノムDNAを採取し、増幅してからILLUMINA次世代シーケンシングによって解析した。
【0274】
結果:
平滑、オーバーハング、又はブリッジ設計のdsDNAドナーを用いたKING編集により、正確な挿入が導入されたことが観察された。平滑及びオーバーハング設計のドナーを使用する場合、ドナーオリゴのホスホロチオエート結合を修飾することにより、絶対的及び相対的な正確な編集効率が更に向上した(図18B)。
【0275】
実施例15.Cas9(H840A)ニッカーゼによるKING編集
本実施例では、Cas9(H840A)ニッカーゼによってKING編集を試験した。
【0276】
方法:
FugeneHDを使用して、SpCas9(H840A)ニッカーゼの発現を誘導するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトした。24時間後、plugRNA及びssDNAドナーを、以下の条件を用いて組み立てた:95Cで2分間変性させ、次いで0.1℃/秒の速度で4℃まで一定に低下させた。RNAiMAXを使用して、2pmolの組み立てられたplugRNA及びssDNAドナーで細胞をトランスフェクトした。異なる設計のssDNA(図19A)を試験した。48時間後のトランスフェクト細胞からゲノムDNAを採取し、増幅してからILLUMINA次世代シーケンシングによって解析した。
【0277】
結果:
SpCas9(H840A)ニッカーゼを使用したKING編集により、正確な挿入が導入されたことが観察された。SpCas9(H840A)ニッカーゼを使用した場合、最大36%の相対的な正確な編集効率が達成され(図19B)、この編集効率はSpCas9ヌクレアーゼで達成された正確な編集効率よりも高かった(5%未満)。
【0278】
実施例16.DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)阻害剤で処理した際のKING編集
本実施例では、DNA-PK阻害剤によってKING編集を試験した。DNA-PKは非相同末端連結(NHEJ)修復経路の一部である。
【0279】
方法:
トランスフェクトする前に、HEK293T細胞を1μMのDNAPK阻害剤(AZD7648)で1時間前処理した。モック対照としてDMSOを使用した。1時間後、FugeneHD試薬を使用して、Cas9及びPEnの発現を誘導するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトした。24時間後、RNAiMAXを使用して、2pmolの合成RNAで細胞をトランスフェクトした。合成plugRNAを95℃で2分間変性させることによりドナー配列にアニーリングさせ、次いで4℃となるまでゆっくりと冷却した。いくつかの異なるplugRNA及びドナー構成を試験した(図20Aを参照されたい)。
【0280】
RNAをトランスフェクトして48時間後に細胞を採取し、AAVS1遺伝子座をPCRで増幅し、Illuminaプラットフォームを使用して配列決定した。リードを参照配列にアライメントすることによってデータを解析し、RIMAによって編集頻度を解析した(PMID:30032200)。
【0281】
結果は、合成オリゴヌクレオチドと組み合わせたCas9及びPEnにより、KING挿入が行われたことを示している。DNAPK阻害剤で前処理することにより、HEK293T細胞における正確な編集が改善された。
【0282】
図20Bは、異なる組み合わせのトランスフェクトplugRNA:ドナーの絶対的な所望の編集割合を示す。DNA-PK阻害剤で前処理することにより、DMSO対照(濃い灰色)と比較して、絶対的な所望の編集が改善された(薄い灰色)。
【0283】
実施例17.同時発現させたリガーゼの存在下におけるKING編集
本実施例では、リガーゼ又はリガーゼアダプタータンパク質(「リガーゼ動員タンパク質」とも称される)の存在下でKING編集を行った。
【0284】
方法:
FugeneHD試薬を使用して、Cas9及びリガーゼ/リガーゼアダプターの発現を誘導するプラスミド(複数可)でHEK293T細胞をトランスフェクトした。それぞれが異なる9つのリガーゼ条件を有する、異なる3つのドナー構成(図21A)のパネル:細菌起源のリガーゼ(T4 DNAリガーゼ、LigD及びPBCV1);ヒト起源のリガーゼ(Lig1、Lig3α、Lig4);及びヒトDNA修復タンパク質(XRCC1、XRCC4、PCNA)を試験した。Cas9及びリガーゼは、別々のプラスミドから発現させた。
【0285】
RNAをトランスフェクトして48時間後に細胞を採取し、AAVS1遺伝子座をPCRで増幅し、Illuminaプラットフォームを使用して配列決定した。リードを参照配列にアライメントすることによってデータを解析し、RIMAによって編集頻度を解析した(PMID:30032200)。
【0286】
図21Bは、同時発現させたCas9と異なるリガーゼとの組み合わせに関する絶対的な所望の編集割合を示す。結果は、リガーゼの存在下のCas9によってKING挿入が行われたことを示している。
【0287】
実施例18.異なるドナーの組成物並びにそれらのインビトロアッセイ及び細胞内における能力のまとめ
図22の表は、本明細書の実施例に示すようなplugRNA:ドナー複合体の構成と、各構成の編集効率とをまとめたものである。例えば、「-」はKING編集が観察されなかったことを意味し、「++++」は非常に効率的な編集であったことを意味する。
【0288】
実施例19.デュアルハイブリダイゼーション設計
本実施例では、デュアルハイブリダイゼーション構成(図23A)を試験した。
【0289】
方法:
FugeneHDを使用して、Cas9の発現を誘導するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトした。24時間後、RNAiMAXを使用して、2pmolの合成RNAで細胞をトランスフェクトした。合成plugRNAを95℃で2分間変性させることによりドナー配列にアニーリングさせ、次いで4℃となるまでゆっくりと冷却した。
【0290】
トランスフェクトして48時間後に細胞を採取し、AAVS1遺伝子座をPCRで増幅し、Illuminaプラットフォームを使用して配列決定した。リードを参照配列にアライメントすることによってデータを解析し、RIMAによって編集頻度を解析した(PMID:30032200)。
【0291】
結果:
プライム編集の挿入が観察された。図23Bの結果は、全ての編集と正確な編集(PE)との挿入の頻度を示している。
図1
図2A-2D】
図3A-3B】
図3C-3D】
図3E-3F】
図3G-3H】
図3I-3J】
図4
図5A-5B】
図5C
図5D-5E】
図5F
図6
図7A-7B】
図7C-7D】
図7E-7F】
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B-12C】
図13A
図13B-13C】
図14A
図14B
図15
図16A-16B】
図17A-17B】
図18A
図18B
図19A-19B】
図20A
図20B
図21A-21B】
図22
図23A-23B】
【配列表】
2024513087000001.app
【国際調査報告】