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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】電気駆動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240313BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240313BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240313BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240313BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240313BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240313BHJP
【FI】
B60K11/04 H
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/6568
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561262
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 IB2022053258
(87)【国際公開番号】W WO2022215023
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021000008633
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペッツァーティ アンドレア
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA02
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC14
3D235DD12
3D235DD13
3D235FF25
3D235FF34
5H031KK08
(57)【要約】
車両(1)は、蓄電システム(6)と、蓄電システム(6)内に熱調節液を分配する主熱調節回路(10)と、前方位置に配置され、主熱調節回路(10)内で熱調節液を循環させるように構成された、熱調節システム(13)と、後部にある後方位置に配置された、少なくとも1つの構成要素(18、19、20)と、後方位置に配置され、構成要素(18、19、20)に結合された、副熱調節回路(21)と、を備える。主熱調節回路(10)は、蓄電システム(6)の後壁(9)を経由して、副熱調節回路(21)に熱調節液を供給する吸引箇所(22)、並びに、蓄電システム(6)の後壁(9)を経由して、副熱調節回路(21)から熱調節液を受け取る戻し箇所(23)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)であって、
少なくとも1つの電気機械(4)と、
中央位置に配置され、前記車両(1)の前部に向く前壁(8)、並びに、前記前壁(8)の反対側にあり、前記車両(1)の後部に向く後壁(9)を有する、蓄電システム(6)と、
前記蓄電システム(6)内に配置され、前記蓄電システム(6)内で熱調節液を分配するように構成され、前記熱調節液の吸入口(11)及び排出口(12)を有する、主熱調節回路(10)と、
前記蓄電システム(6)の前記前壁(8)の前方にある、前方位置に配置され、前記吸入口(11)に前記熱調節液を導入し、かつ、排出口(12)から前記温調液を受け入れ、前記主熱調節回路(10)内で前記熱調節液を循環させるように構成された、熱調節システム(13)と、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)の後方にある、後方位置に配置された、少なくとも1つの構成要素(18、19、20)と、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)の後方にある、後方位置に配置され、前記構成要素(18、19、20)に結合された、副熱調節回路(21)と、を備え、
前記主熱調節回路(10)が、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)を経由して、前記副熱調節回路(21)に前記熱調節液を供給する、吸引箇所(22)と、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)を経由して、前記副熱調節回路(21)から前記熱調節液を受け取る、戻し箇所(23)を備えることを特徴とする、車両(1)。
【請求項2】
前記副熱調節回路(21)には、前記熱調節液を冷却するための構成要素が設けられていない、請求項1に記載の車両(1)。
【請求項3】
前記熱調節システム(13)が、前記主熱調節回路(10)を通って、前記熱調節液を循環させるように構成された、第1のポンプ(24)を備え、
前記副熱調節回路(21)が、前記吸引箇所(22)から前記熱調節液を吸引することによって、前記副熱調節回路(21)を通って、前記熱調節液を循環させるように構成された、第2のポンプ(25)を備える、請求項1又は2に記載の車両(1)。
【請求項4】
前記熱調節システム(13)が、前記熱調節液を冷却するときにのみ、かつ、前記構成要素(18、19、20)を冷却する必要があるときにのみ、前記第2のポンプ(25)を作動させるように構成された、制御ユニット(32)を備える、請求項3に記載の車両(1)。
【請求項5】
前記蓄電システム(6)のための車載充電器からなる、第1の構成要素(18)と、
低電圧ユーティリティに給電するDC/DCコンバータからなる、第2の構成要素(19)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項6】
分岐部(26)において、前記副熱調節回路(21)が、前記第1の構成要素(18)がそれに沿って配置される第1の支流(27)と、前記第2の構成要素(19)がそれに沿って配置される第2の支流(28)に分岐する、請求項5に記載の車両(1)。
【請求項7】
前記副熱調節回路(21)が、前記分岐部(26)の上流に配置され、前記吸引箇所(22)から前記熱調節液を吸引することによって、前記副熱調節回路(21)を通じて、前記熱調節液を循環させるように構成された、第2のポンプ(25)を備える、請求項6に記載の車両(1)。
【請求項8】
前記第1の支流(27)に沿って配置された第1のストップバルブ(29)、及び、前記第2の支流(28)に沿って配置された、第2のストップバルブ(30)と、
一方の前記ストップバルブ(28、29)を閉じたままにしておきつつ、他方の前記ストップバルブ(29、28)を開いたままにするように構成された、制御ユニット(32)を備える、請求項6又は7に記載の車両(1)。
【請求項9】
前記第2の支流(28)に沿って、前記第1の構成要素(18)と直列に配置され、電子制御式アクティブサスペンションシステムに使用される油圧回路からなる、第3の構成要素(20)を備える、請求項6、7、又は8に記載の車両(1)。
【請求項10】
前記2つの支流(27、28)が、前記戻し箇所(23)に一緒に流入するように、前記構成要素(18、19、20)の下流で互いに接合する、請求項6から9のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項11】
前記副熱調節回路(21)の前記熱調節液の定格流量が、前記主熱調節回路(10)の前記熱調節液の定格流量の10%から35%の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願は、2021年4月7日に出願されたイタリア特許出願第102021000008633号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、電気駆動車両に関する。
【背景技術】
【0003】
車両は、1つ又はそれ以上の電気モータのみを備えることができる(この場合、駆動装置は電気式のみのものである)。あるいは、熱機関と組み合わせて、1つ又はそれ以上の電気モータを備えることができる(この場合、駆動装置は、電気式のみ、熱式のみ、又はハイブリッド式のものである)。
【0004】
電気モータ(又は、各電気モータ)は、駆動輪に機械的に接続され、かつ、電力変換器を介して、蓄電システムに電気的に接続される。
【0005】
蓄電システムは、(全体的な電圧を増加させるために)互いに直列に接続された、電気化学セルのグループからなる(これは、一般に「パウチ」又はプリズム構造のものである)。電気化学セルのグループは、一般に、(全体的な電流の強度を増加させるために)互いに並列に接続される。蓄電システムは、非常に大型の、重量物であり得る(特に、駆動装置が電気式のみのものである場合には、蓄電システムの重量は、500kgを超えることがある)。
【0006】
より最新の車両では、蓄電システムは、シャシーの内側に一体化するために、平坦であり、(比較的)薄型の形状である。この構成では、蓄電システムは、(路面に面する車両の底部を構成する)下壁を有し、電気化学セルの様々なグループを内部に収容する容器を備え、それぞれの電気化学セルが、対応するモジュールを形成する。
【0007】
正確に動作し、急速な劣化を回避するためには、蓄電システムを、極めて一貫した動作温度に維持する必要がある。したがって、蓄電システムに、(静止した車両を再充電しているときを含め)過剰な熱があるときには冷却することができ、蓄電システムが、(通常はコールドスタート後の)非常に冷たいときには加熱することができる熱調節システムと、蓄電システムを結合しなければならない。実際に、電池が最適に動作する温度区間は、10°から30°の間である(一部の使用条件では、リチウム電池は、限界動作温度と考えられる45°に達することがある)。この区間を超えると、一部の構成要素が劣化するリスクがあり、70°を超えて過熱されると、電解質を構成する酸及び溶媒などの可燃性要素が、発火するリスクが増加する。それに対し、この間隔未満では、バッテリは、効率の不均衡を余儀なくされ、0°未満では、最大で40%もの航続距離の損失に至るおそれがある。
【0008】
一般に、熱調節システムによって使用されるラジエータを、前方位置に配置することがより容易で効果的であることから、蓄電システムの熱調節システムは、前方位置(すなわち、車室の前方)に配置される。
【0009】
いくつかの車両では、(例えば、前部が特に低く、空力学的な理由で先細りになっている場合)その容積のために、使用時に冷却する必要があるいくつかの構成要素、例えば、車載充電器(OBC:On-Board Charger)、低電圧ユーティリティに給電するためのDC/DCコンバータ、及び、アクティブサスペンションに使用される油圧回路などを、前方位置(すなわち、車室の後方)に収容する必要がある。
【0010】
後方位置に配置された構成要素を冷却するために、専用の冷却システムを備えることができる。いずれにせよ、このソリューションでは、後方位置に、少なくとも1つのラジエータを配置する必要がある。この配置は、空力学的効率及び審美的構成の両方に悪影響を及ぼす、(ラジエータの上流の)吸気口、及び(ラジエータの下流の)排気口を後方に形成する必要があるため、大きな問題となり得る。後方位置に配置された構成要素を冷却するために、蓄電システムの熱調節システムを使用することもできる。いずれにせよ、この熱調節システムは前方位置に配置され、したがって、前方から後方にかけて、重量及び嵩高性の著しい増加を伴って車室空間を横断する、(過度の圧力損失がないように)比較的大きなパイプを配置する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上述した欠点がなく、同時に、製造が容易で経済的な、電気駆動車両を提供することである。
【0012】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されるもの従った、電気駆動車両が提供される。
【0013】
特許請求の範囲は、本明細書の不可欠な部分を形成する、本発明の好ましい実施形態を記載するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
次に、本発明の非限定的な実施形態を示す、添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。
図1】本発明に従って製造された電気駆動装置を備えた、道路車両の概略平面図である。
図2図1の車両の、一部の部品の概略図である。
図3図1の車両の、一部の部品の斜視図である。
図4図3の詳細部の、拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、参照番号1は、全体として、4つの駆動輪2(2つの前駆動輪2及び2つの後駆動輪2)を備える、電気推進力を有する車両を特定するものである。
【0016】
車両1は、前方位置に配置された(すなわち、2つの前駆動輪2に接続された)電気駆動系システム3、並びに、後方位置に配置された(すなわち、2つの後駆動輪2に接続された)、電気駆動系システム3を備える。後方位置の電気駆動系システム3は、前方位置の電気駆動系システム3と構造的に同一であり、前方位置に配置された電気駆動系システム3から機械的に独立して分離している。
【0017】
図示されていない別の実施形態によれば、車両1は、(前方位置、又は後方位置に配置された)単一の電気駆動系システム3を備え、したがって、2つの駆動輪2のみを有する。この実施形態では、車両1は、単一の電気駆動系システム3からは運動を受け取らない、駆動輪2に接続された、熱駆動系システムを備えることもできる。
【0018】
各電気駆動系システム3は、それぞれのシャフトが設けられた一対の可逆電気機械4(すなわち、電気を吸収して機械的トルクを発生させる電気モータ、及び、機械的エネルギーを吸収して電気を発生させる発電機、の両方として機能することができる機械)、並びに、クラッチを介さずに、対応する駆動輪2に、電気機械4(すなわち、電気機械4のシャフト)を接続する、一対の変速機5を備える。
【0019】
各電気機械4は、化学電池を備えた蓄電システム6に接続された、対応するAC/DCコンバータ(すなわち、インバータ)によって駆動される。すなわち、各AC/DCコンバータは、双方向式であり、蓄電システム6に接続された直流側、及び、対応する電気機械4に接続された三相交流側を含む。
【0020】
図3に示すものによれば、蓄電システム6は、車両1のシャシーの内側に一体化するために、平坦であり、(比較的)薄型の形状である。具体的には、蓄電システム6は、直方体の(すなわち、「パウチ」構造、又はプリズム構造である)、それぞれの電気化学セルが設けられた複数のモジュールを内部に収容する、容器7を備える。容器7は、下壁(これは、路面に面する車両1の底部を構成し、当然ながら、水平に向けられる)、下壁と平行に対向する上壁、車両1の前部に面する(すなわち、前進方向Dに対して車両1の前方を向く)前壁8、及び、前壁8の反対側にあり、車両1の後部に面する(すなわち、前進方向Dに対して車両1の後方を向く)後壁9を有する。
【0021】
図2に示すものによれば、蓄電システム6は、蓄電システム6の内部(すなわち、容器7の内部)に配置され、蓄電システム6の内部(すなわち、容器7の内部)に熱調節液(典型的には水性のもの)を分配するように構成された、主熱調節回路10に結合される(一体化される)。主熱調節回路10は、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)前壁8を貫通して配置された、熱調節液の吸入口11(すなわち、熱調節液が主熱調節回路10に入る箇所)を有する。更に、主熱調節回路10は、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)前壁8を貫通して配置された、熱調節液の排出口12(すなわち、熱調節液が主熱調節回路10を出る箇所)を有する。使用時に、熱調節液体は、吸入口11を通って入り、排出口12を通って(等しい分量で)出ることで、主熱調節回路10を通じて循環する。
【0022】
車両1は、熱調節システム13を備える。熱調節システム13は、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)前壁8の前にある前方位置に配置され、熱調節液を吸入口11に導入し、排出口12から熱調節液を(等しい分量で)受け取ることで、主熱調節回路10内で熱調節液を循環させるように構成される。使用時に、熱調節システム13は、(蓄電システム6を冷却する必要がある場合には)熱調節液を冷却し、(蓄電システム6を加熱する必要がある場合には)熱調節液を加熱する。
【0023】
添付の図面に示す例示的な実施形態では、熱調節システム13は、(とりわけ)圧縮機15、並びに、熱調節液と熱を交換する(すなわち、熱調節液を加熱及び冷却することができる)熱交換器16が設けられた、ヒートポンプ回路14を備える。明らかに、ヒートポンプ回路14は、電気ヒータ、及び従来の冷却回路に置き換えることができる。熱調節システム13はまた、好ましくは、ヒートポンプ回路14と組み合わせて、又は、ヒートポンプ回路14と交互に、(環境条件が適正な場合に)熱調節液を冷却するために使用することのできる、ラジエータ17を備える。
【0024】
車両1は、蓄電システム6のための車載充電器からなる、構成要素18を備える。すなわち、構成要素18は、ケーブルを介して接続された外部電源を用いて、蓄電システム6を充電するために、車両1の駐車時にのみ使用される。
【0025】
車両1は、車両1自体の低電圧ユーティリティに電力を供給するDC/DCコンバータからなる、構成要素19を備える。すなわち、車両1が使用されているときにのみ、DC/DCコンバータは、蓄電システム6内の高電圧(数百ボルトの定格電圧)で貯えられた電力の一部を、車両1の一連の低電圧ユーティリティが接続される、付加的な低電圧電気回路に伝送する(通常、低電圧電気回路は定格12ボルトであり、一般にそれ自体のバックアップ電源を備える)。
【0026】
車両1は、電子制御式アクティブサスペンションシステムに使用される油圧回路からなる、構成要素20を備える。すなわち、アクティブサスペンションシステムは、サスペンション応答を調整するために、油圧回路を流れる加圧オイルを使用する。
【0027】
各構成要素18、19、及び20は、いずれも、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)後壁9よりも後ろにある後方位置に配置され、したがって、(前方に配置された)熱調節システム13の反対側に配置される。
【0028】
車両1は、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)後壁9よりも後ろにある後方位置に配置され、3つの構成要素18、19、及び20に接続されて、(必要に応じて)構成要素18、19、20自体を冷却する、副熱調節回路21を備える。構成要素18、19、及び20の内部温度が高いときに、それらをどのように冷却しなければならないかを、明らかにすることが重要である。しかし、それらには、その性能が劣化する最低使用温度がないため、(車両1を合理的に使用することのできる環境を考慮すれば)決して加熱されることはない。
【0029】
主熱調節回路10は、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)後壁9を経由して、副熱調節回路21に熱調節液を供給する、吸引箇所22を備える。加えて、主熱調節回路10は、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)後壁9を経由して、副熱調節回路21から熱調節液を受け取る、戻し箇所23を備える。2つの箇所22及び23は、主熱調節回路10に沿って、互いに比較的近接して配置されることが好ましい。すなわち、吸引箇所22と戻し箇所23との間では、主熱調節回路10は、蓄電システム6内のいかなる構成要素とも熱交換を行わない、単一の(短い)接続管のみを有する。
【0030】
これにより、副熱調節回路21は、熱調節システム13で処理され(すなわち、冷却又は加熱され)、主熱調節回路10から排出された熱調節液を(一時的に、すなわち「流用」して)、それ自体の動作のために使用する。実際に、副熱調節回路21は、主熱調節回路10から排出され(「流用」され)、熱調節システム13によって処理された(すなわち、冷却又は加熱された)熱調節液を、循環させる機能しか有さないため、熱調節液を冷却するように設計された構成要素を全く含まない。
【0031】
熱調節システム13は、(明らかに前方位置に配置された)ポンプ24を備える。このポンプ24は、主熱調節回路10を通って、熱調節液を循環させるように構成される。更に、副熱調節回路21は、(明らかに後方位置に配置された)ポンプ25を備える。このポンプ25は、吸引箇所22から熱調節液を吸引することによって、副熱調節回路21を通って、熱調節液を循環させるように構成される。実際には、ポンプ25からの十分な吸引がなければ、熱調節液の最低限の無視できる部分のみが、自然に、副熱調節回路21を通って吸引箇所21から戻し箇所22まで流れる。
【0032】
副熱調節回路21は、構成要素18のみが、それ沿って配置される支流27、並びに、構成要素20及び19が順に直列に配置される支流28に、副熱調節回路21が分岐される、分岐部26を有する。2つの支流27、28は、戻し箇所23に一緒に流れるように、構成要素18、19、20の下流で、互いに接合される。ポンプ25は、分岐部26の上流に配置され、すなわち、吸引箇所22と分岐部26との間に配置される。
【0033】
支流27に沿って、支流27を通る通路を開閉するように設計された、電子制御式ストップバルブ29が配置される。同様に、支流28に沿って、支流28を通る通路を開閉するように設計された、電子制御式ストップバルブ30が配置される。
【0034】
特に、構成要素20(すなわち、電子制御式アクティブサスペンションシステムに使用される油圧回路)は、油圧回路を流れる加圧オイルが、副熱調節回路21の支流28に沿って流れる熱調節液に熱を伝達する、熱交換器31を備える。
【0035】
車両1は、熱調節回路10及び21の動作を監視する、制御ユニット32を備える。具体的には、この制御ユニット32は、常に一度に一方のストップバルブ28又は29のみを開き、他方の29又は28を、閉じたままにするように構成される。実際に、構成要素18は、車両1が駐車しているときにのみ熱調節(具体的には冷却)を必要とし、構成要素19及び20は、車両1が動いているときにのみ熱調節(具体的には冷却)を必要とする。したがって、それぞれの冷却要件は、相互排他的であることが明らかである。また、制御ユニット32は、熱調節システム13が熱調節液を冷却するときのみ、かつ、構成要素18、19、及び20を冷却する必要があるときのみ、ポンプ25を駆動するように構成される。実際に、外部温度が低く、蓄電システム6を加熱する必要がある場合(したがって、熱調節液が外部環境よりも高温である場合)に、構成要素18、19、20を加熱する必要は全くない。
【0036】
好ましい実施形態によれば、副熱調節回路21の熱調節液の定格流量は、主熱調節回路10の熱調節液の定格流量(例えば、45から55リットル/分)の、10%から35%の範囲(例えば、8から10リットル/分)である。この条件により、主熱調節回路10に対する、副熱調節回路21の存在の影響は小さく、したがって許容可能であることが確実となる。言い換えれば、副熱調節回路21を使用することは、全体として、熱調節液の数度の温度上昇を伴うが、この数度の上昇は、主熱調節回路10によって保証される冷却の均一性に、大きな影響を及ぼさない。言い換えれば、副熱調節回路21が存在するために、戻し箇所23における熱調節液の温度は、吸引箇所22における熱調節液の温度よりも、数度高い。いずれにせよ、この熱調節液の数度の温度上昇は、主熱調節回路10によって保証される冷却の均一性に、大きな影響を及ぼさない。
【0037】
本明細書に記載の各実施形態は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、それらの間で組み合わせることができる。
【0038】
上述した車両1には、数々の利点がある。
【0039】
まず、上述した車両1では、後方に配置された(すなわち、構成要素18、19、及び20から遠くに配置された)熱調節システム13による冷却を利用して、必要に応じて、後方に配置された構成要素18、19、及び20を冷却することができるため、後部にラジエータを設置する必要がない。
【0040】
また、上述した車両1には、車室内の空間を横断して前方から後方へ流れる、大型の油圧パイプがなく、重量及び嵩高性を低減できることが明らかである。この結果は、熱調節システム13で処理された(すなわち、冷却又は加熱された)熱調節液の一部を、前方から後方に搬送するために、蓄電システム6全体を、大型の「パイプ」として使用ことによって得られる。
【0041】
最後に、上述した車両1では、蓄電システム6の(すなわち、容器7の)後壁9において、箇所22及び23を形成することのみが事実上の変化点であるため、コスト及び製造の複雑さが大きく低減される。
【符号の説明】
【0042】
1 車両
2 車輪
3 駆動系システム
4 電気機械
5 変速機
6 蓄電システム
7 容器
8 前壁
9 後壁
10 熱調節回路
11 吸入口
12 排出口
13 熱調節システム
14 ヒートポンプ回路
15 圧縮機
16 ラジエータ
17 熱交換器
18 構成要素
19 構成要素
20 構成要素
21 副熱調節回路
22 吸引箇所
23 戻し箇所
24 ポンプ
25 ポンプ
26 分岐部
27 支流
28 支流
29 ストップバルブ
30 ストップバルブ
31 熱交換器
32 制御ユニット
D 前進方向
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)であって、
少なくとも1つの電気機械(4)と、
中央位置に配置され、前記車両(1)の前部に向く前壁(8)、並びに、前記前壁(8)の反対側にあり、前記車両(1)の後部に向く後壁(9)を有する、蓄電システム(6)と、
前記蓄電システム(6)内に配置され、前記蓄電システム(6)内で熱調節液を分配するように構成され、前記熱調節液の吸入口(11)及び排出口(12)を有する、主熱調節回路(10)と、
前記蓄電システム(6)の前記前壁(8)の前方にある、前方位置に配置され、前記吸入口(11)に前記熱調節液を導入し、かつ、排出口(12)から前記温調液を受け入れ、前記主熱調節回路(10)内で前記熱調節液を循環させるように構成された、熱調節システム(13)と、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)の後方にある、後方位置に配置された、少なくとも1つの構成要素(18、19、20)と、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)の後方にある、後方位置に配置され、前記構成要素(18、19、20)に結合された、副熱調節回路(21)と、を備え、
前記主熱調節回路(10)が、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)を経由して、前記副熱調節回路(21)に前記熱調節液を供給する、吸引箇所(22)と、
前記蓄電システム(6)の前記後壁(9)を経由して、前記副熱調節回路(21)から前記熱調節液を受け取る、戻し箇所(23)を備えることを特徴とする、車両(1)。
【請求項2】
前記副熱調節回路(21)には、前記熱調節液を冷却するための構成要素が設けられていない、請求項1に記載の車両(1)。
【請求項3】
前記熱調節システム(13)が、前記主熱調節回路(10)を通って、前記熱調節液を循環させるように構成された、第1のポンプ(24)を備え、
前記副熱調節回路(21)が、前記吸引箇所(22)から前記熱調節液を吸引することによって、前記副熱調節回路(21)を通って、前記熱調節液を循環させるように構成された、第2のポンプ(25)を備える、請求項1に記載の車両(1)。
【請求項4】
前記熱調節システム(13)が、前記熱調節液を冷却するときにのみ、かつ、前記構成要素(18、19、20)を冷却する必要があるときにのみ、前記第2のポンプ(25)を作動させるように構成された、制御ユニット(32)を備える、請求項3に記載の車両(1)。
【請求項5】
前記蓄電システム(6)のための車載充電器からなる、第1の構成要素(18)と、
低電圧ユーティリティに給電するDC/DCコンバータからなる、第2の構成要素(19)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両(1)。
【請求項6】
分岐部(26)において、前記副熱調節回路(21)が、前記第1の構成要素(18)がそれに沿って配置される第1の支流(27)と、前記第2の構成要素(19)がそれに沿って配置される第2の支流(28)に分岐する、請求項5に記載の車両(1)。
【請求項7】
前記副熱調節回路(21)が、前記分岐部(26)の上流に配置され、前記吸引箇所(22)から前記熱調節液を吸引することによって、前記副熱調節回路(21)を通じて、前記熱調節液を循環させるように構成された、第2のポンプ(25)を備える、請求項6に記載の車両(1)。
【請求項8】
前記第1の支流(27)に沿って配置された第1のストップバルブ(29)、及び、前記第2の支流(28)に沿って配置された、第2のストップバルブ(30)と、
一方の前記ストップバルブ(28、29)を閉じたままにしておきつつ、他方の前記ストップバルブ(29、28)を開いたままにするように構成された、制御ユニット(32)を備える、請求項6に記載の車両(1)。
【請求項9】
前記第2の支流(28)に沿って、前記第1の構成要素(18)と直列に配置され、電子制御式アクティブサスペンションシステムに使用される油圧回路からなる、第3の構成要素(20)を備える、請求項6に記載の車両(1)。
【請求項10】
前記2つの支流(27、28)が、前記戻し箇所(23)に一緒に流入するように、前記構成要素(18、19、20)の下流で互いに接合する、請求項6に記載の車両(1)。
【請求項11】
前記副熱調節回路(21)の前記熱調節液の定格流量が、前記主熱調節回路(10)の前記熱調節液の定格流量の10%から35%の範囲である、請求項1からのいずれか一項に記載の車両(1)。
【国際調査報告】