(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】リチウム二次電池のための液体電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20240313BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240313BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240313BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240313BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240313BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240313BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240313BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561299
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2022059024
(87)【国際公開番号】W WO2022214493
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ムン, ウンジ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ヒョンクォン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA13
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池のための液体電解質であって、a)式(I)R
1-O-R
2-O-R
3(式中、R
1及びR
3は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R
2は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキレン基を表し;且つR
1、R
2及びR
3の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルと;b)式(II)R
4-C(O)O-R
5(式中、R
4及びR
5は、それぞれアルキル基を表し;R
4及びR
5の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR
5の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルと;c)少なくとも1種の有機カーボネートと;d)少なくとも1種のリチウム塩とを含む液体電解質に関する。本発明は、アノードと、カソードと、セパレートと、本発明による液体電解質とを含むリチウム二次電池にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)
R
1-O-R
2-O-R
3 (I)
(式中、R
1及びR
3は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R
2は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキレン基を表し;且つR
1、R
2及びR
3の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルと;
b)式(II)
R
4-C(O)O-R
5 (II)
(式中、R
4及びR
5は、それぞれアルキル基を表し;R
4及びR
5の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR
5の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルと;
c)少なくとも1種の有機カーボネートと;
d)少なくとも1種のリチウム塩と
を含む、リチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項2】
R
4及びR
5は、CH
2F-基も-CHF-基も含有しない、請求項1に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項3】
a)前記フッ素化非環状ジエーテルは、前記液体電解質の総重量を基準として0.05~45.0重量%(wt%)、好ましくは0.5~40.0重量%の量である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項4】
a)前記フッ素化非環状ジエーテルにおけるモル比F/Hは、1.3~13.0、好ましくは2.5~6.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項5】
a)前記フッ素化非環状ジエーテルは、CF
3CH
2-O-CF
2CHF-O-CF
3、CHF
2CH
2-O-CF
2CF
2-O-CF
3、CF
3CF
2-O-CHFCHF-O-CHF
2、CHF
2CF
2-O-CHFCHF-O-CF
3、CF
3CHF-O-CHFCF
2-O-CHF
2、CF
3CHF-O-CF
2CHF-O-CHF
2、CH
3CF
2-O-CF
2-O-CF
2CF
3、CFH
2CHF-O-CF
2-O-CF
2CF
3、CF
3CF
2-O-CHF-O-CHFCHF
2、CF
3CF
2-O-CHF-O-CHFCHF
2、CF
3CH
2-O-CF
2CF
2-O-CF
3、CHF
2CHF-O-CF
2CF
2-O-CF
3、CH
2FCF
2-O-CF
2CF
2-O-CF
3、CF
3CF
2-O-CHFCHF-O-CF
3、CF
3CF
2-O-CF
2CH
2-O-CF
3、CF
3CF
2-O-CH
2CF
2-O-CF
3、CF
3CF
2-O-CF
2CFH-O-CHF
2、CF
3CHF-O-CHFCF
2-O-CF
3、CF
3CHF-O-CF
2CHF-O-CF
3、CHF
2CF
2-O-CF
2CHF-O-CF
3、CHF
2CF
2-O-CHFCF
2-O-CF
3、CHF
2CF
2-O-CF
2CF
2-O-CHF
2、CF
3CHF-O-CF
2CF
2-O-CHF
2、CF
3CF
2-O-CF
2-O-CHFCF
3、CF
2HCF
2-O-CF
2-O-CF
2CF
3、CF
3CHF-O-CF
2-O-CF
2CF
3、CF
3CF
2-O-CHF-O-CF
2CF
3、CF
3CF
2-O-CF
2-O-CF
2CHF
2、CF
2HCF
2-O-CF
2CH
2-O-CF
2CF
2H、CF
2HCF
2-O-CH
2CH
2-O-CF
2CF
2H、CF
3CF
2-O-CH
2CH
2-O-CF
2CF
3、CF
2HCF
2-O-CHFCHF-O-CF
2CF
2H、CF
3CF
2-O-CHFCH
2-O-CF
2CF
2H、CF
2HCF
2-O-CHFCHF-O-CF
2CF
2H、CF
3CF
2-O-CH
2CHF-O-CF
2CF
2H、CF
3-O-CHFCF
2CH
2-O-CF
2CF
2H、CF
2HCF
2-O-CF
2CF
2-O-CF
2CF
2H、CF
3CF
2-O-CF
2CHF-O-CF
2CF
2H、CF
3CF
2-O-CHFCF
2-O-CF
2CF
2H、CF
3CF
2-O-CF
2CH
2-O-CF
2CF
3、CF
3CF
2-O-CHFCHF-O-CF
2CF
3、CF
3CF
2-O-CHFCHF-O-CF
2CF
3及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはCF
2HCF
2-O-CH
2CH
2-O-CF
2CF
2Hである、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項6】
b)前記フッ素化非環状カルボン酸エステルは、CH
3-C(O)O-CH
2CF
2H、CH
3-C(O)O-CH
2CH
2CF
2H、CH
3CH
2-C(O)O-CH
2CH
2CF
2H、CH
3-C(O)O-CH
2CF
3、CH
3CH
2-C(O)O-CH
2CF
2H、CH
3CH
2-C(O)O-CH
2CF
3、CH
3CH
2-C(O)O-CH
2CF
2H又はそれらの混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項7】
c)前記有機カーボネートは、4-フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4,5-トリフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、テトラフルオロエチレンカーボネート、4-(2,2-ジフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、エチルプロピルカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はそれらの混合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項8】
c)前記有機カーボネートは、式(III)
R
6-OC(O)O-R
7
(式中、R
6及びR
7は、それぞれアルキル基を表し;R
6及びR
7の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR
6及び/又はR
7の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
によって表されるフッ素化非環状カーボネートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項9】
前記フッ素化非環状カーボネートは、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
2CF
2H(メチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルカーボネート)、CF
2HCH
2-OC(O)O-CH
2CF
3(エチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CF
3CH
2-OC(O)O-CH
2CH
3(エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)又はそれらの混合物を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項10】
d)前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF
6)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF
6)、ヘキサフルオロタンタル酸リチウム(LiTaF
6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl
4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、クロロホウ酸リチウム(Li
2B
10Cl
10)、フルオロホウ酸リチウム(Li
2B
10F
10)、Li
2B
12F
xH
12-x(式中、x=0~12である);LiPF
x(R
F)
6-x及びLiBF
y(R
F)
4-y(式中、R
Fは、過フッ素化C
1~C
20アルキル基又は過フッ素化芳香族基を表し、x=0~5であり、及びy=0~3である)、LiBF
2[O
2C(CX
2)
nCO
2]、LiPF
2[O
2C(CX
2)
nCO
2]
2、LiPF
4[O
2C(CX
2)
nCO
2](式中、Xは、H、F、Cl、C
1~C
4アルキル基及びフッ素化アルキル基からなる群から選択され、及びn=0~4である)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(FSO
2)
2N(LiFSI)、LiN(SO
2C
mF
2m+1)(SO
2C
nF
2n+1)及びLiC(SO
2C
kF
2k+1)(SO
2C
mF
2m+1)(SO
2C
nF
2n+1)(式中、k=1~10であり、m=1~10であり、及びn=1~10である)、LiN(SO
2C
pF
2pSO
2)並びにLiC(SO
2C
pF
2pSO
2)(SO
2C
qF
2q+1)(式中、p=1~10であり、及びq=1~10である)又はそれらの混合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項11】
e)前記液体電解質の総重量に対して0.05~5.0重量%、好ましくは0.05~3.0重量%の量の少なくとも1種のフィルム形成添加剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項12】
e)前記フィルム形成添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルファイト及びプロパ-1-エン-1,3-スルトンを含む硫黄化合物;ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホランとしても知られる)、エチルメチルスルホン及びイソプロピルメチルスルホンを含むスルホン誘導体;スクシノニトリル、アジポニトリル及びグルタロニトリルを含むニトリル誘導体;並びに硝酸リチウム(LiNO
3);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C
2O
4)
2;LiBOB)、リチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(LiB(O
2CCHFCO
2)
2;LiFMDFB)、リチウムビス(マロナト)ボレート[LiB(O
2CCH
2CO
2)
2]、リチウムビス(ジフルオロマロナト)ボレート[LiB(O
2CCF
2CO
2)
2]、リチウム(マロナトオキサラト)ボレート[LiB(C
2O
4)(O
2CCH
2CO
2)]、リチウム(ジフルオロマロナトオキサラト)ボレート[LiB(C
2O
4)(O
2CCF
2CO
2)]を含むホウ素誘導体塩、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート[LiP(C
2O
4)
3]、リチウムトリス(ジフルオロマロナト)ホスフェート[LiP(O
2CCF
2CO
2)
3]、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO
2F
2)、酢酸ビニル、ビフェニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィナイト、トリエチルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト、無水マレイン酸、セシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CsTFSI)、フッ化セシウム(CsF)並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載のリチウム二次電池のための液体電解質。
【請求項13】
リチウム二次電池であって、
- アノードと;
- カソードと;
- セパレータと;
- 請求項1~12のいずれか一項に記載の液体電解質と
を含むリチウム二次電池。
【請求項14】
前記アノードは、黒鉛炭素、ケイ素又はケイ素-炭素複合材料を含む、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記カソードは、式LiNi
xMn
yCo
zO
2(x+y+z=1である)のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系金属酸化物、式LiNi
xCo
yAl
zO
2(x+y+z=1である)のリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系金属酸化物、リチウム-コバルト系金属酸化物又はリチウム-ニッケル-マンガン系金属酸化物(LNMO)を含む、請求項13又は14に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月8日出願の欧州特許出願公開第21167334.8号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、
a)式(I)
R1-O-R2-O-R3 (I)
(式中、R1及びR3は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R2は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキレン基を表し;且つR1、R2及びR3の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルと;
b)式(II)
R4-C(O)O-R5 (II)
(式中、R4及びR5は、それぞれアルキル基を表し;R4及びR5の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR5の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルと;
c)少なくとも1種の有機カーボネートと;
d)少なくとも1種のリチウム塩と
を含む、リチウム二次電池のための液体電解質に関する。
【0003】
本発明は、アノードと、カソードと、セパレータと、本発明による液体電解質とを含むリチウム二次電池にも関する。
【背景技術】
【0004】
20年超にわたり、リチウムイオン電池を含むリチウム二次電池は、軽量、適度なエネルギー密度及び良好なサイクル寿命を含むその多くのメリットのため、再充電可能なエネルギー貯蔵デバイスの市場で支配的な地位を保持してきた。それにもかかわらず、現行のリチウム二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、グリッドエネルギー貯蔵等などの高出力用途向けに増え続ける必要なエネルギー密度に対して比較的低いエネルギー密度という問題を依然として抱えている。
【0005】
約4.2Vよりも高いカットオフ電圧では、溶媒、導電性塩及び添加剤、とりわけ保護層(多くの場合に「固体電解質界面相(SEI)」と呼ばれる)を初期充電時に電極の表面上に形成すると考えられるフィルム形成添加剤など、電解質の構成要素がそのような高電圧に耐えることができないため、電解質系は、多くの場合に劣化する。むしろ、(5.0Vまでの)より高い電圧で運転することができる電池が当技術分野において望まれており、したがって高電圧電池に好適な電解質及び/又はそのような電解質のための構成要素の開発が当技術分野で一貫して必要とされている。充電カットオフ電圧の観点から、そのような高電圧電池は、4.2Vより高い、特に少なくとも4.35Vの充電カットオフ電圧を有する。
【0006】
リチウム二次電池のための電解質溶媒として、従来、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなどの非環状カーボネート及びエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートなどの環状カーボネートを含む有機カーボネートが使用されてきた。しかしながら、これらの有機カーボネートは、4.35V超で容易に分解し得、且つ電池性能の劣化をもたらし得る、それらの比較的低い沸点及び高い可燃性のため、有機カーボネートの使用に対して安全性への懸念もある。
【0007】
したがって、高い安全性を確実にしながら、有機カーボネートをベースとする一般的に使用される液体電解質の限界を克服し、とりわけより高い電圧でのエネルギー密度を上げ、高温でのサイクル性能を改善し、且つ電池の膨張を減らすための様々なアプローチが研究されている。
【0008】
そのような目的での多様な研究努力の1つとして、リチウム二次電池における液体電解質として使用するための特定の溶媒混合物であって、エチレンカーボネートと、一定の濃度でのフッ素含有カルボン酸エステルとを含む溶媒混合物が特に高電圧カソードで高温でのサイクリング性能の改善に寄与すると国際公開第2013/033579号パンフレット(E.I.DUPONT DE NEMOURS AND COMPANY)に報告された。
【0009】
その上、リチウムイオン電池のための電解質の必須の構成要素として特定のハイドロフルオロエーテルを使用することからなる、同じ目的の幾つかのアプローチがあった。例えば、米国特許第5,916,708号明細書(HOESHST AKTIENGESELLSHAFT)は、式(i)及び/又は(ii)
RO-[CH2]mO]n-CF2-CFHX (i)
X-CFH-CF2O-[(CH2)mO]n-CF2-CFH-X (ii)
(式中、Rは、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基又は3~10個の炭素原子を有する分岐アルキル基であり;Xは、フッ素、塩素又はエーテル酸素も含有し得る、1~6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり;mは、2~6の整数であり、及びnは、1~8の整数である)
によって表される特定のハイドロフルオロエーテルを開示している。
【0010】
国際公開第2015/078791号パンフレット(Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A)は、国際公開第2012/084745A号パンフレット(Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A)に開示されたプロセスで得られる、高いフッ素化率を有するある種のハイドロフルオロエーテルを含む液体電解質がリチウム塩の溶解性、動作温度範囲、イオン伝導率、高電圧での酸化安定性及び低い可燃性の観点から有利な特性を示すことを開示している。
【0011】
上記で手短に記載されたように、この分野における努力にもかかわらず、高温において、特に高電圧カソードで改善されたサイクリング性能を有する、リチウム二次電池のための液体電解質に対する未解決の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、
a)式(I)
R1-O-R2-O-R3 (I)
(式中、R1及びR3は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R2は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキレン基を表し;且つR1、R2及びR3の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルと;
b)式(II)
R4-C(O)O-R5 (II)
(式中、R4及びR5は、それぞれアルキル基を表し;R4及びR5の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR5の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルと;
c)少なくとも1種の有機カーボネートと;
d)少なくとも1種のリチウム塩と
を含む、リチウム二次電池のための液体電解質に関する。
【0013】
驚くべきことに、上述の技術的課題は、本発明による液体電解質を使用することにより解決され得ることが本発明者らよって見出され、それは、優れた容量保持率及びクーロン効率によって明らかに証明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】25℃でのE1~E2及びCE1~CE3のサイクル保持率(%)を示す。
【
図2】45℃でのE1~E2及びCE1~CE3のサイクル保持率(%)を示す。
【
図3】60℃で4週間のE1~E2及びCE1~CE3の厚さ変化(mm単位)の観点における貯蔵膨張性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書の全体にわたり、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、用語「含む(comprise)」若しくは「包含する(include)」又は「含む(comprises)」、「含んでいる」、「包含する(includes)」、「包含している」などの変形は、述べられた要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の包含を意味するが、任意の他の要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の排除を意味しないと理解されるであろう。好ましい実施形態によれば、用語「含む」及び「包含する」並びにそれらの変形は、「のみからなる」を意味する。
【0016】
本明細書において用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈がそうでないと明確に示さない限り、複数態様を包含する。用語「及び/又は」は、意味「及び」、「又は」及びまたこの用語と関係した要素の他の可能な組合せを全て包含する。
【0017】
用語「~」は、限界点を含むと理解されるべきである。
【0018】
用語「脂肪族基」は、1~18個の炭素原子を典型的に有する、直鎖又は分岐鎖を特徴とする有機部分を包含する。複雑な構造において、鎖は、分岐、橋架け又は架橋され得る。脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が含まれる。
【0019】
本発明において、用語「カットオフ電圧」は、放電が完了したと考えられる所定の下限電圧を意味することを意図する。カットオフ電圧は、通常、電池の最大有効容量が達成されるように選択される。カットオフ電圧は、電池ごとに異なり、電池のタイプ、例えばカソート又はアノードのタイプに高度に依存する。
【0020】
本明細書で用いる場合、有機基に関する専門用語「(Cn~Cm)」(式中、n及びmは、それぞれ整数である)は、この基が1つの基当たりn個の炭素原子~m個の炭素原子を含有し得ることを示す。
【0021】
比、濃度、量及び他の数値データは、本明細書では、範囲形式で示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために用いられること並びに範囲の限界点として明示的に列挙された数値を包含するのみならず、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て包含すると柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、約120℃~約150℃の温度範囲は、約120℃~約150℃の明示的に列挙された限界点のみならず、125℃~145℃、130℃~150℃等などの部分範囲並びに例えば122.2℃、140.6℃及び141.3℃などの明記された範囲内の小数量などの個々の量も包含すると解釈されるべきである。
【0022】
特に明記しない限り、本発明に関連して、組成物中の構成要素の量は、100を乗じた構成要素の体積と組成物の総体積との間の比、すなわち体積による%(体積%)又は100を乗じた構成要素の重量と組成物の総重量との間の比、すなわち重量%(wt%)として示される。前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、例示的なものであり、特許請求される本発明の更なる説明を提供することを意図することが理解されるべきである。したがって、本明細書に記載される様々な変更形態及び修正形態は、当業者に明らかであろう。更に、周知の機能及び構造の説明は、明確するために且つ簡潔にするために省略されている場合がある。
【0023】
本発明は、
a)式(I)
R1-O-R2-O-R3 (I)
(式中、R1及びR3は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R2は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキレン基を表し;且つR1、R2及びR3の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルと;
b)式(II)
R4-C(O)O-R5 (II)
(式中、R4及びR5は、それぞれアルキル基を表し;R4及びR5の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR5の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルと;
c)少なくとも1種の有機カーボネートと;
d)少なくとも1種のリチウム塩と
を含む、リチウム二次電池のための液体電解質に関する。
【0024】
一実施形態において、R4及びR5は、CH2F-基も-CHF-基も含有しない。
【0025】
一実施形態において、式(II)におけるR4の炭素原子の数は、1、3、4又は5である。好ましい実施形態において、式(II)におけるR4の炭素原子の数は、1である。
【0026】
本発明において、用語「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖アルキル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルなどの環状アルキル基(又は「シクロアルキル」若しくは「脂環式」若しくは「炭素環式」基);イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル及びイソブチルなどの分岐鎖アルキル基;並びにアルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基などのアルキル置換アルキル基を含む、1個以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を意味することを意図する。
【0027】
本発明において、用語「フッ素化非環状ジエーテル」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素によって置換されている、非環状ジエーテル化合物を意味することを意図する。1つ、2つ、3つ又はそれを超える数の水素原子がフッ素で置換され得る。
【0028】
本発明において、用語「沸点」は、液体物質の蒸気圧が液体を取り囲む圧力に等しく、液体がその物理的状態を蒸気に変化させる温度を示すことを意図する。液体物質の沸点は、周囲の環境圧力に応じて変わり、本発明による沸点は、液体が大気圧沸点としても知られる、大気圧にあるときの沸点に対応する。
【0029】
一実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルの沸点は、少なくとも80℃、好ましくは80℃~160℃、より好ましくは120℃~160℃である。
【0030】
一実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルは、液体電解質の総重量を基準として0.05~45重量%(wt%)、好ましくは0.5~40重量%の量である。
【0031】
別の実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルは、液体電解質の総重量を基準として10~45重量%、好ましくは20~40重量%の量である。
【0032】
一実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルにおけるモル比F/Hは、1.3~13.0、好ましくは2.5~6.0である。
【0033】
好ましい実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルは、6個の炭素原子を含有する。
【0034】
より好ましい実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルは、CHF2CF2-O-CH2CH2-O-CF2CF2Hである。
【0035】
本発明による好適なa)フッ素化非環状ジエーテルの非限定的な例としては、とりわけ、CF3CH2-O-CF2CHF-O-CF3、CHF2CH2-O-CF2CF2-O-CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CHF2、CHF2CF2-O-CHFCHF-O-CF3、CF3CHF-O-CHFCF2-O-CHF2、CF3CHF-O-CF2CHF-O-CHF2、CH3CF2-O-CF2-O-CF2CF3、CFH2CHF-O-CF2-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHF-O-CHFCHF2、CF3CF2-O-CHF-O-CHFCHF2、CF3CH2-O-CF2CF2-O-CF3、CHF2CHF-O-CF2CF2-O-CF3、CH2FCF2-O-CF2CF2-O-CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CF3、CF3CF2-O-CF2CH2-O-CF3、CF3CF2-O-CH2CF2-O-CF3、CF3CF2-O-CF2CFH-O-CHF2、CF3CHF-O-CHFCF2-O-CF3、CF3CHF-O-CF2CHF-O-CF3、CHF2CF2-O-CF2CHF-O-CF3、CHF2CF2-O-CHFCF2-O-CF3、CHF2CF2-O-CF2CF2-O-CHF2、CF3CHF-O-CF2CF2-O-CHF2、CF3CF2-O-CF2-O-CHFCF3、CF2HCF2-O-CF2-O-CF2CF3、CF3CHF-O-CF2-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHF-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CF2-O-CF2CHF2、CF2HCF2-O-CF2CH2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CH2CH2-O-CF2CF3、CF2HCF2-O-CHFCHF-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CHFCH2-O-CF2CF2H、CF2HCF2-O-CHFCHF-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CH2CHF-O-CF2CF2H、CF3-O-CHFCF2CH2-O-CF2CF2H、CF2HCF2-O-CF2CF2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CF2CHF-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CHFCF2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CF2CH2-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CF2CF3及びそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
別の実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルは、7個の炭素原子を含有する。
【0037】
別の実施形態において、a)フッ素化非環状ジエーテルは、8個の炭素原子を含む。
【0038】
一実施形態において、本発明による液体電解質は、非フッ素化エーテルもフッ素化モノエーテルも含まない。
【0039】
本発明において、用語「非フッ素化エーテル」は、フッ素原子が存在しない、エーテル化合物を意味することを意図する。
【0040】
本発明において、用語「フッ素化モノエーテル」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素によって置換されている、モノエーテル化合物を意味することを意図する。1つ、2つ、3つ又はそれを超える数の水素原子がフッ素で置換され得る。
【0041】
本発明による好適なフッ素化非環状カルボン酸エステルの非限定的な例としては、とりわけ、CH3-C(O)O-CH2CF2H、CF3-C(O)O-CH2CF3、CH3-C(O)O-CH2CF3、CF3-C(O)O-CH2CF2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CF2CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CH2CF2H、CF2H-C(O)O-CH2CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CH2CH2CF2CF3、CH3-C(O)O-CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CF3、CH3CH2-C(O)O-CH2CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CF3及びそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
好ましい実施形態において、b)フッ素化非環状カルボン酸エステルは、CH3-C(O)O-CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CH2CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CF3、CH3CH2-C(O)O-CH2CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CF3、CH3CH2-C(O)O-CH2CF2H又はそれらの混合物を含む。
【0043】
より好ましい実施形態において、b)フッ素化非環状カルボン酸エステルは、CH3-C(O)O-CH2CF2H(2,2-ジフルオロエチルアセテート)である。
【0044】
一実施形態において、b)フッ素化非環状カルボン酸エステルは、液体電解質の総重量を基準として10~50重量%、好ましくは20~45重量%の量である。
【0045】
本発明による液体電解質は、フッ素化環状カルボン酸エステル、例えば1-オキサシクロアルカン-2-オン構造を含有するフッ素化ラクトンを含まない。
【0046】
c)本発明による有機カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、4-フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4,5-トリフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、テトラフルオロエチレンカーボネート、4-(2,2-ジフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、エチルプロピルカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、ビスフェノールA、B及びFカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
一実施形態において、c)少なくとも1種の有機カーボネートの総量は、液体電解質の総重量に対して10~80重量%、好ましくは15~60重量%である。
【0048】
特定の実施形態において、c)有機カーボネートは、液体電解質の総重量を基準として1~15重量%、好ましくは2~12重量%、より好ましくは4~10重量%の量のフッ素化環状カーボネートを含む。
【0049】
一実施形態において、c)有機カーボネートは、式(III)
R6-OC(O)O-R7 (III)
(式中、R6及びR7は、それぞれアルキル基を表し:R6及びR7の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR6及び/又はR7の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
によって表されるフッ素化非環状カーボネートを含む。
【0050】
一実施形態において、R6及びR7は、CH2F-基も-CHF-基も含有しない。
【0051】
特定の実施形態において、式(III)におけるR6は、フッ素を含有せず、R7は、フッ素を含有する。
【0052】
別の特定の実施形態において、R6及びR7は、2~7個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基を独立して表し、ここで、少なくとも2個の水素は、フッ素によって置換されている(すなわち、R6の少なくとも2個の水素は、フッ素によって置換されているか、又はR7の少なくとも2個の水素は、フッ素によって置換されているか、又はR6の少なくとも2個の水素及びR7の少なくとも2個の水素は、フッ素によって置換されている)。
【0053】
本発明による好適なフッ素化非環状カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、CH3-OC(O)O-CH2CF2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF2CF2H(メチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルカーボネート)、CF2HCH2-OC(O)O-CH2CF3(エチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CF3CH2-OC(O)O-CH2CH3(エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CF3CH2-OC(O)O-CH2CF3(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート)、CF2HCH2-OC(O)O-CH2CF2H(ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CF3-OC(O)O-CF3、CFH2-OC(O)O-CH3、CF3CHF-OC(O)O-CF3、CH3CH2-OC(O)O-CHFCH3、CH3CHF-OC(O)O-CHFCH3、CH3CHF-OC(O)O-CH2CF3、CH3CHF-OC(O)O-CH2CH2CH3及びそれらの混合物が挙げられる。
【0054】
d)本発明によるリチウム塩の非限定的な例としては、とりわけ、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF6)、ヘキサフルオロタンタル酸リチウム(LiTaF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、クロロホウ酸リチウム(Li2B10Cl10)、フルオロホウ酸リチウム(Li2B10F10)、Li2B12FxH12-x(式中、x=0~12である)、LiPFx(RF)6-x及びLiBFy(RF)4-y(式中、RFは、過フッ素化C1~C20アルキル基又は過フッ素化芳香族基を表し、x=0~5であり、及びy=0~3である)、LiBF2[O2C(CX2)nCO2]、LiPF2[O2C(CX2)nCO2]2、LiPF4[O2C(CX2)nCO2](式中、Xは、H、F、Cl、C1~C4アルキル基及びフッ素化アルキル基からなる群から選択され、及びn=0~4である)、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li(FSO2)2N(LiFSI)、LiN(SO2CmF2m+1)(SO2CnF2n+1)及びLiC(SO2CkF2k+1)(SO2CmF2m+1)(SO2CnF2n+1)(式中、k=1~10であり、m=1~10であり、及びn=1~10である)、LiN(SO2CpF2pSO2)及びLiC(SO2CpF2pSO2)(SO2CqF2q+1)(式中、p=1~10であり、及びq=1~10である)並びにそれらの混合物などのリチウムイオン錯体が挙げられる。
【0055】
一実施形態において、d)リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2;LiTFSI)である。
【0056】
別の実施形態において、d)リチウム塩は、LiPF6である。
【0057】
別の実施形態において、d)リチウム塩は、LiFSIである。
【0058】
一実施形態において、本発明による液体電解質中のリチウム塩のモル濃度(M)は、1M~8M、好ましくは1M~4M、より好ましくは1M~2Mである。
【0059】
本発明によるリチウム塩は、イミダゾールなどの複素環上に窒素原子を有するリチウム塩、例えばリチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾール(LiTDI)を含まない。
【0060】
一実施形態によれば、本発明による液体電解質は、電極表面上に溶媒を予め反応させることによって負極表面での固体電解質界面(SEI)層の形成を促進する、e)少なくとも1種のフィルム形成添加剤を更に含む。SEI層に関して、主成分は、そのため、Li2CO3(正極としてのLiCoO2の場合)、リチウムアルキルカーボネート、リチウムアルキルオキシド及びLiPF6系電解質のためのLiFなどの他の塩部分を含み得る電解質溶媒及び塩の分解生成物を含む。別の実施形態によれば、e)フィルム形成添加剤は、とりわけ高電圧下において、正極の構造変化を防ぐことによって正極表面でのカソード電解質界面(CEI)層を安定させる。通常、フィルム形成添加剤の還元電位は、反応が負極表面で起こるときの溶媒の還元電位よりも高く、フィルム形成添加剤の酸化電位は、反応が正極側で起こるときの溶媒の酸化電位よりも低い。
【0061】
一実施形態において、e)本発明によるフィルム形成添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4-エチニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4-エテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4,5-ジエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4-メチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4,5-ジメチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4-エチニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-5-エチニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4-エテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-5-エテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,5-ジエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,6-ジエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,5,6-トリエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4-メチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-5-メチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,5-ジメチル-2,2-ジオキシド、ジオキサチアン-4,6-ジメチル-2,2-ジオキシド、ジオキサチアン-4,5,6-トリメチル-2,2-ジオキシド;1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、4-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、5-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、3-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、4-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、5-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、6-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、好ましくは1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、オキサチオラン-2,2-ジオキシド(1,3-プロパンスルトン)、1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシド(エチレンサルファイト)及びプロパ-1-エン-1,3-スルトン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホランとしても知られる)、エチルメチルスルホン及びイソプロピルメチルスルホンを含む硫黄化合物;スクシノニトリル、アジポニトリル及びグルタロニトリルを含むニトリル誘導体;硝酸リチウム(LiNO3);リチウムジフルオロオキサラトボレートボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2;LiBOB)、リチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(LiB(O2CCHFCO2)2;LiFMDFB)、リチウムビス(マロナト)ボレート[LiB(O2CCH2CO2)2]、リチウムビス(ジフルオロマロナト)ボレート[LiB(O2CCF2CO2)2]、リチウム(マロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCH2CO2)]、リチウム(ジフルオロマロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCF2CO2)]を含むホウ素誘導体塩;リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート[LiP(C2O4)3]、リチウムトリス(ジフルオロマロナト)ホスフェート[LiP(O2CCF2CO2)3]、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、酢酸ビニル、ビフェニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィナイト、トリエチルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト、無水マレイン酸、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、セシウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(CsTFSI)、ヘキサフルオロリン酸セシウム(CsPF6)、フッ化セシウム(CsF)、トリメチルボロキシン(TMB)、ホウ酸トリブチル(TBB)、2-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)-1,3,2-ジオキサホスホラン(PFPOEPi)、2-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)-4-(トリフルオロメチル)-1,3,2-ジオキサホスホラン(PFPOEPi-1CF3)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、硝酸銀(AgNO3)、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF6)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMSP)、1,6-ジビニルパーフルオロヘキサン並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0062】
好ましい実施形態において、e)フィルム形成添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルファイト及びプロパ-1-塩-1,3-スルトンを含む硫黄化合物;ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホランとしても知られる)、エチルメチルスルホン及びイソプロピルメチルスルホンを含むスルホン誘導体;スクシノニトリル、アジポニトリル及びグルタロニトリルを含むニトリル誘導体;並びに硝酸リチウム(LiNO3);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2;LiBOB)、リチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(LiB(O2CCHFCO2)2;LiFMDFB)、リチウムビス(マロナト)ボレート[LiB(O2CCH2CO2)2]、リチウムビス(ジフルオロマロナト)ボレート[LiB(O2CCF2CO2)2]、リチウム(マロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCH2CO2)]、リチウム(ジフルオロマロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCF2CO2)]を含むホウ素誘導体塩;リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート[LiP(C2O4)3]、リチウムトリス(ジフルオロマロナト)ホスフェート[LiP(O2CCF2CO2)3]、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、酢酸ビニル、ビフェニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィナイト、トリエチルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト、無水マレイン酸、セシウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(CsTFSI)、フッ化セシウム(CsF)並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0063】
より好ましい実施形態において、e)本発明によるフィルム形成添加剤は、LiBOBである。
【0064】
別のより好ましい実施形態において、e)本発明によるフィルム形成添加剤は、無水マレイン酸である。
【0065】
別のより好ましい実施形態において、e)本発明によるフィルム形成添加剤は、無水マレイン酸とLiBOBとの混合物である。
【0066】
別の実施形態において、e)本発明によるフィルム形成添加剤は、イオン液体である。
【0067】
本明細書で用いられる用語「イオン液体」は、正に帯電したカチオンと、負に帯電したアニオンとを含む化合物であって、大気圧下で100℃以下の温度で液体状態である化合物を指す。水などの通常の液体は、主に電気的に中性の分子からできている一方、イオン液体は、大部分がイオン及び短寿命のイオン対からできている。本明細書で用いる場合、用語「イオン液体」は、溶媒を含まない化合物を示す。
【0068】
本明細書で用いられる用語「オニウムカチオン」は、その電荷の少なくとも一部がO、N、S又はPなどの少なくとも1つの非金属原子上に局在する正に帯電したイオンを指す。
【0069】
本発明において、イオン液体は、An-Ql+
(n/l)
(式中、
- An-は、アニオンを表し;
- Ql+
(n/l)は、カチオンを表し;
- n及びlは、1~5で独立して選択され、それぞれアニオンAn-及びカチオンQl+
(n/l)の電荷を表す)
の一般式を有する。
【0070】
カチオンは、互いに独立して、金属カチオン及び有機カチオンから選択され得る。カチオンは、一価カチオン又は多価カチオンであり得る。
【0071】
金属カチオンとして、好ましくは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン及びd-ブロック元素のカチオンが挙げられ得る。
【0072】
本発明において、Ql+
(n/l)は、オニウムカチオンを表し得る。オニウムカチオンは、3つ又は4つの炭化水素鎖を有するVB族及びVIB族の元素(元素の周期表に従って古い欧州のIUPACシステムで定義されたような)によって形成されるカチオンである。VB族は、N、P、As、Sb及びBi原子を含む。VIB族は、O、S、Se、Te及びPo原子を含む。オニウムカチオンは、特に、N、P、O及びS、より好ましくはN及びPからなる群から選択される原子と、3つ又は4つの炭化水素鎖とによって形成されるカチオンであり得る。
【0073】
オニウムカチオンQ
l+
(n/l)は、
- 複素環式オニウムカチオン、特に、
【化1】
からなる群から選択されるもの;
- 不飽和の環状オニウムカチオン、特に、
【化2】
からなる群から選択されるもの;
- 飽和の環状オニウムカチオン、特に、
【化3】
からなる群から選択されるもの;及び
- 非環状オニウムカチオン、特に一般式
+L-R’
s(式中、Lは、N、P、O及びS、より好ましくはN及びPからなる群から選択される原子を表し、sは、元素Lの価数に応じて2、3又は4から選択されるR’基の数を表し、各R’は、独立して、水素原子又はC
1~C
8アルキル基を表し、L
+とR’との間の結合は、単結合又は二重結合であり得る)のもの
から選択することができる。
【0074】
上の式において、各「R」記号は、互いに独立して、水素原子又は有機基を表す。好ましくは、各「R」記号は、上の式において、互いに独立して、水素原子又はハロゲン原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基若しくはサルファイト基によって1回以上任意選択的に置換された飽和若しくは不飽和の直鎖、分岐若しくは環状のC1~C18炭化水素基を表すことができる。
【0075】
カチオンQl+
(n/l)は、より具体的には、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピラゾリニウム、イミダゾリウム、アルセニウム、第四級ホスホニウム及び第四級アンモニウムカチオンから選択することができる。
【0076】
第四級ホスホニウム又は第四級アンモニウムカチオンは、より好ましくは、テトラアルキルアンモニウム若しくはテトラアルキルホスホニウムカチオン、トリアルキルベンジルアンモニウム若しくはトリアルキルベンジルホスホニウムカチオン又はテトラアリールアンモニウム若しくはテトラアリールホスホニウムカチオンから選択することができ、同一であるか又は異なるかのいずれかであるそれらのアルキル基は、4~12個の炭素原子、好ましくは4~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖を表し、同一であるか又は異なるかのいずれかであるそれらのアリール基は、フェニル基又はナフチル基を表す。
【0077】
特定の実施形態において、Ql+
(n/l)は、第四級ホスホニウム又は第四級アンモニウムカチオンを表す。
【0078】
好ましい一実施形態において、Ql+
(n/l)は、第四級ホスホニウムカチオンを表す。第四級ホスホニウムカチオンの非限定的な例は、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム及びテトラアルキルホスホニウムカチオン、特にテトラブチルホスホニウム(PBu4)カチオンを含む。
【0079】
別の実施形態において、Ql+
(n/l)は、イミダゾリウムカチオンを表す。イミダゾリウムカチオンの非限定的な例は、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(4-スルホブチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3H-イミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムを含む。
【0080】
別の実施形態において、Ql+
(n/l)は、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、メチルトリブチルアンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウム、N-トリブチル-N-メチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウム、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム及びAliquat 336(メチルトリ(C8~C10アルキル)アンモニウム化合物の混合物)からなる群から特に選択される第四級アンモニウムカチオンを表す。
【0081】
一実施形態において、Ql+
(n/l)は、ピペリジニウムカチオン、特にN-ブチル-N-メチルピペリジニウム、N-プロピル-N-メチルピペリジニウムを表す。
【0082】
別の実施形態において、Ql+
(n/l)は、ピリジニウムカチオン、特にN-メチルピリジニウムを表す。
【0083】
より好ましい実施形態において、Ql+
(n/l)は、ピロリジニウムカチオンを表す。特定のピロリジニウムカチオンの中でも、C1~12アルキル-C1~12アルキル-ピロリジニウム、より好ましくはC1~4アルキル-C1~4アルキル-ピロリジニウムが挙げられ得る。ピロリジニウムカチオンの例は、N,N-ジメチルピロリジニウム、N-エチル-N-メチルピロリジニウム、N-イソプロピル-N-メチルピロリジニウム、N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、N-ブチル-N-メチルピロリジニウム、N-オクチル-N-メチルピロリジニウム、N-ベンジル-N-メチルピロリジニウム、N-シクロヘキシルメチル-N-メチルピロリジニウム、N-[(2-ヒドロキシ)エチル]-N-メチルピロリジニウムを含むが、それらに限定されない。より好ましいものは、N-メチル-N-プロピルピロリジニウム(PYR13)及びN-ブチル-N-メチルピロリジニウム(PYR14)である。
【0084】
イオン液体のアニオンの非限定的な例は、ヨージド、ブロミド、クロリド、硫酸水素、ジシアンアミド、アセテート、ジエチルホスフェート、メチルホスフェート、フッ素化アニオン、例えばヘキサフルオロホスフェート(PF
6
-)及びテトラフルオロボレート(BF
4
-)並びに以下の式
【化4】
のオキサラトボレートを含む。
【0085】
一実施形態において、An-は、フッ素化アニオンである。本発明に使用することができるフッ素化アニオンの中でも、フッ素化スルホンイミドアニオンが特に有利であり得る。有機アニオンは、特に、以下の一般式:
(Ea-SO2)N-R
(式中、
- Eaは、フッ素原子又はフルオロアルキル、パーフルオロアルキル及びフルオロアルケニルから選択される、好ましくは1~10個の炭素原子を有する基を表し、及び
- Rは、置換基を表す)
を有するアニオンから選択され得る。
【0086】
好ましくは、Eaは、F又はCF3を表し得る。
【0087】
第1の実施形態によれば、Rは、水素原子を表す。
【0088】
第2の実施形態によれば、Rは、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の環状又は非環状炭化水素ベースの基を表し、それは、1つ以上の不飽和を任意選択的に有することができ、及びそれは、任意選択的に、ハロゲン原子、ニトリル官能基又は任意選択的にハロゲン原子により数回のうちの1回置換されたアルキル基で1回以上置換されている。更に、Rは、ニトリル基-CNを表し得る。
【0089】
第3の実施形態によれば、Rは、スルフィネート基を表す。特に、Rは、基-SO2-Ea(Eaは、上に定義された通りである)を表し得る。この場合、フッ素化アニオンは、対称、すなわちアニオンの2つのEa基が同一であるようなものであり得るか、又は非対称、すなわちアニオンの2つのEa基が異なるようなものであり得る。
【0090】
更に、Rは、基-SO2-R’を表し得、R’は、好ましくは、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の環状又は非環状の炭化水素ベースの基を表し、それは、1つ以上の不飽和を任意選択的に有することができ、及びそれは、任意選択的に、ハロゲン原子、ニトリル官能基又は任意選択的にハロゲン原子により数回のうちの1回置換されたアルキル基で1回以上置換されている。特に、R’は、ビニル基又はアリル基を含み得る。更に、Rは、基-SO2-N-R’(R’は、上に定義された通りであるか、又はさもなければR’は、スルホネート官能基-SO3を表す)を表し得る。
【0091】
環状炭化水素ベースの基は、好ましくは、シクロアルキル基を又はアリール基を指し得る。「シクロアルキル」は、3~8個の炭素原子を有する単環式炭化水素鎖を指す。シクロアルキル基の好ましい例は、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。「アリール」は、6~20個の炭素原子を有する単環式又は多環式芳香族炭化水素基を指す。アリール基の好ましい例は、フェニル及びナフチルである。基が多環式基である場合、環は、σ(シグマ)結合によって縮合され又は結合され得る。
【0092】
第4の実施形態によれば、Rは、カルボニル基を表す。Rは、特に、式-CO-R’(R’は、上に定義された通りである)によって表され得る。
【0093】
本発明で使用することができる有機アニオンは、有利には、CF3SO2N-SO2CF3(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、一般にTFSIとして示される)、FSO2N-SO2F(ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、一般にFSIとして示される)、CF3SO2N-SO2F及びCF3SO2N-SO2N-SO2CF3からなる群から選択され得る。
【0094】
好ましい実施形態において、イオン液体は、
- 1つ以上のC1~C30アルキル基を任意選択的に含有するイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム及びピペリジニウムイオンからなる群から選択される正に帯電したカチオンと、
- ハライド、フッ素化アニオン及びボレートからなる群から選択される負に帯電したアニオンと
を含有する。
【0095】
C1~C30アルキル基の非限定的な例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル基が挙げられる。
【0096】
好ましい一実施形態において、本発明によるフィルム形成添加剤は、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(PYR13FSI)、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(PYR14FSI)、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)及びN-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR14TFSI)からなる群から選択される。
【0097】
本発明において、e)フィルム形成添加剤の総量は、液体電解質の総重量に対して0~10重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0~5重量%であり得る。
【0098】
e)フィルム形成添加剤の総量は、本発明の液体電解質に含有される場合、液体電解質の総重量に対して0.05~5.0重量%、好ましくは0.05~3.0重量%である。
【0099】
より好ましい実施形態において、e)フィルム形成添加剤の総量は、電解質組成物の少なくとも1.0重量%を占める。
【0100】
一実施形態において、本発明によるリチウム二次電池のための液体電解質は、
a)液体電解質の総重量に対して0.05~45重量%の量の、式(I)
R1-O-R2-O-R3 (I)
(式中、R1及びR3は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R2は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキル基を表し;且つR1、R2及びR3の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルと;
b)式(II)
R4-C(O)O-R5 (II)
(式中、R4及びR5は、それぞれアルキル基を表し;R4及びR5の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR5の少なくとも1個の水素は、フッ素で置換されており、R4及びR5は、CH2F-基も、-CHF-基も含有しない)
によって表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルと;
c)液体電解質の総重量に対して10~80重量%の量の少なくとも1種の有機カーボネートと;
d)少なくとも1種のリチウム塩と
を含む。
【0101】
特定の実施形態において、本発明によるリチウム二次電池のための液体電解質は、
- フッ素化非環状ジエーテルとしてのCF2HCF2-O-CH2CH2-O-CF2CF2Hと;
- フッ素化非環状カルボン酸エステルとしてのCH3-C(O)O-CH2CF2Hと;
- 有機カーボネートとしてのPCとFECとの混合物と;
- リチウム塩としての1MのLiPF6と;
- フィルム形成添加剤としてのLIBOB及び無水マレイン酸と
を含む。
【0102】
本発明は、
- アノードと;
- カソードと;
- セパレータと;
- 本発明による液体電解質と
を含むリチウム二次電池も提供する。
【0103】
本発明において、用語「アノード」は、放電中に酸化が起こる電気化学セルの電極を特に意味することを意図する。
【0104】
本発明において、用語「カソード」は、放電中に還元が起こる電気化学セルの電極を特に意味することを意図する。
【0105】
本発明において、「集電体」の種類は、それによって提供される電極がカソード又はアノードのいずれであるかに依存する。本発明の電極がカソードである場合、集電体は、典型的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属、好ましくはAlを含み、好ましくはそれらから構成される。本発明の電極がアノードである場合、集電体は、典型的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属、好ましくはCuを含み、好ましくはそれらから構成される。
【0106】
本発明において、用語電極、すなわちアノード及びカソードの「面積容量」は、特に電極の面積正規化比容量を意味することを意図する。
【0107】
電極、それらに含有される構成要素並びに電池中の場合により存在する他の構成要素の選択及び調製は、当技術分野において公知であり、そのため、目的に応じて適切に構成することができる。
【0108】
例えば、カソード及びアノードなどの電池の電極は、電極活物質、バインダー、溶媒及び任意選択的に1種以上の添加剤を含む電極形成組成物から形成することができる。
【0109】
本発明において、用語「電気活物質」は、電池の充電段階及び放電段階中にリチウムイオンをその構造中に組み入れるか又は挿入し、そこから実質的に放出することができる電気活物質を意味することを意図する。電気活物質の種類は、それがカソード又はアノードを形成するために使用されるかどうかに依存するであろう。電気活物質は、したがって、カソード電気活物質及びアノード電気活物質から選択することができる。
【0110】
リチウムイオン電池のためのカソードを形成する場合、カソード電気活物質は、特に限定されない。それは、式LiMQ2(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr及びVなどの遷移金属から選択される少なくとも1種の金属であり、及びQは、O又はSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲニドを含み得る。これらの中でも、式LiMO2(式中、Mは、上に定義されたものと同じものである)のリチウム系複合金属酸化物を使用することが好ましい。LiCoO2などのリチウム系複合金属酸化物は、層構造を含み得るか又はそれからなり得る。リチウム系複合金属酸化物などの複合金属カルコゲニドは、ナノ構造を含み得るか又はそれからなり得る。それらの好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)及びスピネル構造化LiMn2O4が挙げられ得る。その別の好ましい例としては、式LiNixMnyCozO2(x+y+z=1であり、NMCと言われる)のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系金属酸化物、例えばLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.5Mn0.2Co0.3O2、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、好ましくはLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2及び式LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1であり、NCAと言われる)のリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系金属酸化物、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.05O2が挙げられ得る。それにもかかわらず、式:
- LixMn1-yM’yA2(1)
- LixMn1-yM’yO2-zZz(2)
- LixMn2O4-zAz(3)
- LixMn2-yM’yA4(4)
- LixM1-yM’’yA2(5)
- LixMO2-zAz(6)
- LixNi1-yCoyO2-zAz(7)
- LixNi1-y-zCoyM’’zAa(8)
- LixNi1-y-zCoyM’’zO2-aZa(9)
- LixNi1-y-zMnyM’zAa(10)
- LixNi1-y-zMnyM’zO2-aZa(11)
(式中、
- 0.95≦x≦1.1であり、0≦y≦0.5であり、0≦z≦0.5であり、0≦a≦2であり;
- Mは、Ni又はCoであり、M’は、Al、Ni、Co、Cr、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群から選択される1つ以上の元素であり、M’’は、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群から選択される1つ以上の元素であり、Aは、O、F、S及びPからなる群から選択され、及びZは、F、S及びPからなる群から選択される)
によって表されるものなどのより広範囲のカルコゲニドが考えられ得る。
【0111】
別の好ましい例としては、リチウム-ニッケル-マンガン系金属酸化物(LNMOと言われる)、例えばLiNi0.5Mn0.5O2及びLiNi0.5Mn1.5O4が挙げられ得る。
【0112】
代替として、更にリチウムイオン電池のためのカソードを形成する場合、カソード電気活物質は、式M1M2(JO4)fE1-f(式中、M1は、M1金属の20%未満を表す別のアルカリ金属によって部分的に置換され得るリチウムであり、M2は、+1~+5の酸化レベルでの及び0を含めて、M2金属の35%未満を表す1種以上の追加の金属によって部分的に置換され得る、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、JO4は、任意のオキシアニオンであり、ここで、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシド又はクロリドアニオンであり、fは、0.75~1に一般に含まれる、JO4オキシアニオンのモル分率である)のリチウム化された又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電気活物質を含み得る。上に定義されたようなM1M2(JO4)fE1-f電気活物質は、好ましくは、ホスフェート系であり、規則正しい又は改質されたかんらん石構造を有し得る。より好ましくは、カソード電気活物質は、式Li3-xM’yM’’2-y(JO4)3(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同一であるか又は異なる金属であり、それらの少なくとも1つは、遷移金属であり、JO4は、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換され得るPO4であり、ここで、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかである)を有する。更により好ましくは、カソード電気活物質は、式Li(FexMn1-x)PO4(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは、1である(すなわち式LiFePO4のリチウム鉄ホスフェートである))のホスフェート系電気活物質である。
【0113】
好ましい実施形態において、カソード電気活物質は、LiMQ2(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr及びVから選択される少なくとも1種の金属であり、及びQは、O又はSである);LiNixCo1-xO2(0<x<1);スピネル構造化LiMn2O4;リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系金属酸化物(NMC)、例えばLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系金属酸化物(NCA)、例えばLiNi0.8Co0.15Al0.05O2並びにLiFePO4からなる群から選択される。
【0114】
一実施形態において、カソードは、式LiNixMnyCozO2(x+y+z=1である)のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系金属酸化物、式LiNixCoyAlzO2(x+y+z=1である)のリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系金属酸化物、リチウム-コバルト系金属酸化物又はリチウム-ニッケル-マンガン系金属酸化物(LNMO)をカソード電気活物質として含む。
【0115】
好ましい実施形態において、カソードは、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.5Mn1.5O4及びLiCoO2をカソード電気活物質として含む。
【0116】
リチウムイオン電池のためのアノードを形成する場合、アノード電気活物質は、特に限定されず、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的には存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素と;
- リチウム金属と;
- とりわけ米国特許第6203944号明細書(3M Innovative Properties Co.)及び国際公開第2000/03444号パンフレット(Minnesota Mining&Manufacturing Co.)において記載されたものなどのリチウム合金組成物と;
- 一般に式Li4Ti5O12によって表されるリチウムチタネート(これらの化合物は、移動性イオン、すなわちLi+を吸収したときに低いレベルの物理膨張を有する「ゼロ-歪み」挿入材料と一般に考えられる)と;
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般的に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウムと;
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金と;
- ケイ素と;
- ケイ素-炭素複合材料と
を含み得る。
【0117】
一実施形態において、アノードは、アノード電気活物質としてケイ素又はケイ素-炭素複合材料を含む。
【0118】
本発明の電池は、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池及びリチウム空気電池などのリチウム二次電池並びにナトリウムイオン電池及びナトリウム硫黄電池などのナトリウム二次電池、特にリチウムイオン電池であり得る。本発明において、高い充電カットオフ電圧を有する電池は、好ましくは、二次電池、特に二次リチウムイオン電池である。
【0119】
用語「セパレータ」とは、本明細書では、電気化学デバイス内の反対の極性の電極を電気的に及び物理的に分離し、それらの間を流れるイオンを透過させる、単層又は多層の高分子の不織セルロース又はセラミック材料/フィルムを意味することを意図する。
【0120】
本発明において、セパレータは、電気化学デバイスのセパレータのために一般的に使用される任意の多孔質基材であり得る。
【0121】
一実施形態において、セパレータは、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン又はそれらの混合物からなる群から選択される、無機ナノ粒子で任意選択的にコーティングされた少なくとも1つの材料を含む多孔質高分子材料である。
【0122】
無機ナノ粒子の非限定的な例は、SiO2、TiO2、Al2O3及びZrO2を含む。
【0123】
特定の一実施形態において、セパレータは、SiO2でコーティングされたポリエステルフィルムである。
【0124】
別の特定の実施形態において、セパレータは、Al2O3でコーティングされたポリエステルフィルムである。
【0125】
別の特定の実施形態において、セパレータは、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)でコーティングされた多孔質高分子材料である。
【0126】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0127】
ここで、以下の実施例に関連して本発明を詳細に説明するが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0128】
原材料
- BP160:Solvay内部で合成された、約160℃の沸点を有するC6F8H6O2(CF2HCF2-O-CH2CH2-O-CF2CF2H)のフッ素化ジエーテル
- BP120:Solvay内部で合成された、約120℃の沸点を有するC6F10H4O2を含む混合物としてのフッ素化ジエーテル
- FC4:Appolo Scientificから市販されているCF3-O-CH2CH2-O-CF3のC4フッ素化ジエーテル
- TTE:SynQuestから市販されている、約93℃の沸点を有する1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルの単一化合物としてのフッ素化モノエーテル
- DFEA:Solvay内部で合成されたCH3-C(O)O-CH2CF2Hのフッ素化非環状カルボン酸エステル
- PC:Enchemから市販されているプロピレンカーボネート
- FEC:Enchemから市販されているフルオロエチレンカーボネート
- DMC:Enchemから市販されているジメチルカーボネート
- LiBOB:Enchemから市販されているリチウムビス(オキサラト)ボレート
- MA:Enchemから市販されている無水マレイン酸
- TMSPa:Aldrichから市販されているトリス(トリメチルシリル)ホスフェート
- Li塩:Enchemから市販されているヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)
- パウチセル:Lifunから市販されているNCM811/AG(人造黒鉛)-575166
【0129】
A/液体電解質の処方:
液体電解質をE1~E2の本発明の実施例及びCE1~CE3の比較例のために調製した。それらの構成成分を以下の表1にまとめる。
【0130】
【0131】
E1の液体電解質を調製するとき、最初にDFEA及びBP160を混合し、次いでFEC及びPCを撹拌下で添加した。その後、溶液が透明になるまで、グローブボックス内で磁気攪拌機を使用して0.85重量%のLiBOBを混合した。その後、1MのLiPF6を添加した。溶液が透明になった後、0.5重量%のMAを最後に溶液に添加した。
【0132】
BP160の代わりにBP120を使用したことを除いて、E1と同様にE2の液体電解質を調製した。
【0133】
BP160の代わりにFC4を使用したことを除いて、E1と同様にCE1の液体電解質を調製した。
【0134】
CE2の液体電解質を調製するとき、FEC及びPCをDFEAに添加し、溶液が透明になるまで0.85重量%のLiBOBを撹拌下で一緒に混合した。次いで、1MのLiPF6を溶液に溶解させた。溶液が透明になった後、0.5重量%のMAをその後溶液に添加した。
【0135】
最初にDMC及びTTEを、続いてFECを撹拌下で混合することにより、CE3の液体電解質を調製した。溶液が透明になるまで1MのLiPF6を溶液に溶解させた。その後、2重量%のTMSPaを溶液に添加した。
【0136】
B/パウチセルの調製
使用前にヒートシールよりも下方でパウチセルをカットし、55℃で96時間真空下において乾燥させてあらゆる過剰の水分を除去した。乾燥後、セルに3.077mlの電解質溶液を充填し、真空シーラーを使用して-95kPa圧力で密封した。その後、セルを24時間25℃に保った。次いで、セルをMaccor 4000シリーズサイクラーに接続して3時間C/10でセルを充電することにより、SEI形成を行なった。次いで、セルを連続的に24時間25℃及び60℃に保った。次いで、パウチをカットして開けことによってセルを脱気し、真空シーラーを使用して再密封した。セルを25℃において3.0~4.35Vでサイクルにかけた。セルを3サイクルにわたってC/2レートで充放電した。
【0137】
C/セルの評価手順
- 25℃でのサイクリング:セルを25±0.1℃に維持し、3.0~4.2Vで1C充電/2C放電においてサイクルにかけた。
- 45℃でのサイクリング:セルを45±0.1℃に維持し、3.0~4.2Vで1C充電/2C放電においてサイクルにかけた。
- 貯蔵試験:セルを4.2Vまで充電し、貯蔵試験のためのサーマルチャンバに移した。セルの厚さを4週間にわたって週1回の頻度で測定し、容量保持率、回復及びDC-IR変化を最後の4週間において測定した。
【0138】
D/結果
室温(25℃)及び高温(45℃)での液体電解質E1~E2及びCE1~CE3のサイクル保持率をそれぞれ以下の表2並びに
図1及び
図2に示す。CE1のサイクリングは、依然として進行中である。
【0139】
【0140】
本発明による液体電解質E1~E2は、25℃及び45℃の両方でCE2及びCE3よりもはるかに高い優れたサイクリング性能を示す。特に、CE1、すなわちBP160(又はBP120)の代わりにCF3-O-CH2CH2-O-CF3(C4F6H4O2)のC4フッ素化ジエーテルを含有する液体電解質は、E1よりも劣るサイクル保持率(25℃で90%)を示した。加えて、E1のサイクル保持率(45℃で90%)は、370サイクルである一方、CE1のサイクル保持率(45℃で90%)は、90サイクルであった。
【0141】
更に、60℃で貯蔵後のE1~E2及びCE1~CE3の貯蔵膨張性能(初期と60℃で4週間の貯蔵後との間の厚さの差)を厚さ増加率(%単位)の観点で以下の表3に、且つ厚さ変化(mm単位)について
図3に示す。
【0142】
【0143】
本発明による液体電解質E1~E2は、CE1~CE3の液体電解質よりも高い容量保持率及び少ない膨張を提供することが明らかに実証された。
【国際調査報告】