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特表2024-513120可変減衰サスペンションを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】可変減衰サスペンションを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561718
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2022053228
(87)【国際公開番号】W WO2022215003
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021000008927
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522499601
【氏名又は名称】ウェイ アソート ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コット、ファビオ
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301DA38
3D301EA17
3D301EA34
3D301EA36
3D301EB13
3D301EC06
3D301EC66
(57)【要約】
本発明は、ヒーブ軸Zに沿った加速度、ロール軸X周りの角加速度、及びピッチ軸Y周りの角加速度を最小化する車両サスペンションの減衰係数の最適なパラメータを得るために、車両V用のサスペンション・システムを制御するための方法に関する。これらのパラメータは、調整段階中に記録されてもよく、又はエンド・ユーザによる車両の使用中に連続的に取得されてもよい。また、前記方法に従って有利に動作するように構成された車両V用のサスペンション・システムも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)用のサスペンション・システムを制御するための方法であって、前記サスペンション・システムが、
-前記車両(V)の車体(B)とそれぞれの車輪(W)との間にそれぞれ介装され、制御信号に応答して減衰係数を変化させるように構成された複数のセミアクティブ・ダンパ(1)であり、各ダンパ(1)の減衰力が、それぞれの減衰係数と、前記ダンパ(1)の減衰方向に沿った前記車体(B)の速度とそれぞれの車輪(W)の速度との差との関数である、複数のセミアクティブ・ダンパ(1)と、
-ヒーブ軸(Z)に沿った前記車両(V)の加速度h(t=0)、ロール軸(X)周りの前記車両(V)の角加速度r(t=0)、及びピッチ軸(Y)周りの前記車両(V)の角加速度p(t=0)の現在の測定値を取得するためのセンサ(2)と、
-前記車両(V)の少なくともM+1個の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-M),r(t=0,t=-1,...,t=-M),p(t=0,t=-1,...,t=-M)を記憶するように構成されたメモリ・モジュールと、
-前記ダンパ(1)及び前記メモリ・モジュールと機能的に接続されたコントローラであり、各ダンパ(1)のそれぞれの減衰係数を調整するために各ダンパ(1)にそれぞれの制御信号を送信するように構成されている、コントローラと、
を備える、方法において、
i)前記方法の各サイクルにおいて、前記センサ(2)から前記車両(V)の現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)を取得するステップと、
ii)以前のサイクルで取得され、前記メモリ・モジュールに記憶された前記車両の過去の加速度測定値h(t=-1,...,t=-N)、r(t=-1,...,t=-N)、p(t=-1,...,t=-N)の数Nを考慮に入れて、前記車両(V)の前記現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)をフィルタリングして、現在のフィルタリングされた加速度値、いわゆるインデックスIh(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)を取得するステップであり、ここでN≦Mである、取得するステップと、
iii)前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)のそれぞれを、それぞれの前のフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)と比較するステップと、
iv)ステップiii)における前記比較の結果に基づいて、前記ヒーブ減衰係数Chの状態、前記ロール減衰係数Crの状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの状態にそれぞれ適用される変動ステップの符号を決定するステップであり、各状態が前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前の出力値に基づいてそれぞれ得られる、変動ステップの符号を決定するステップで、前記変動ステップの前記符号を決定する前記ステップが、状態Ch、Cr、及びCpのそれぞれについて、前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きい場合は、前記変動ステップの前記符号を、前のサイクルにおける前記変動ステップの前記符号に対して反転させ、そうでない場合は、前記前の変動ステップの前記符号を変更しないままにする動作を含む、変動ステップの符号を決定するステップと、
v)各変動ステップを、前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態のそれぞれの値と合計することによって、前記ヒーブ減衰係数Ch(t=0)、前記ロール減衰係数Cr(t=0)、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=0)の現在の値を得るステップと、
vi)前記減衰係数の所望の値に対応する前記それぞれの制御信号を各ダンパ(1)に送信するステップであり、前記減衰係数の前記所望の値が、前記車両(V)の前記ヒーブ減衰係数Ch(t=0)、前記ロール減衰係数Cr(t=0)、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=0)の前記現在の値に基づいている、送信するステップと、
を周期的に実行することを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
ステップiv)が、前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態にそれぞれ適用される前記変動ステップの振幅を決定するステップも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態にそれぞれ適用される前記変動ステップの前記振幅を決定するステップが、前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きい場合は、前記変動ステップの前記振幅を、前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して減少させる動作を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変動ステップの前記振幅を前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して減少させる前記動作が、前記変動ステップを前のサイクルにおける前記変動ステップの50%~70%に減少させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態にそれぞれ適用される前記変動ステップの前記振幅を決定するステップが、前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きくない場合は、前記変動ステップの前記振幅を、前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して増加させる動作を含む、請求項2から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して前記変動ステップの前記振幅を増加させる前記動作が、前記変動ステップを、前のサイクルにおける前記変動ステップの110%~130%に増加させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変動ステップが、各ダンパ(1)の減衰係数の最大値と最小値との差の1%~5%に含まれる固定振幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記変動ステップが、各ダンパ(1)の前記減衰係数の最大値と最小値との差の1%~20%に含まれる可変振幅を有する、請求項2から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおける前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力にそれぞれ等しい、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおける前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力にそれぞれ基づいて、並びに前記ロール軸(X)に沿った前記車両(V)の少なくとも1つの現在の速度v(t=0)に基づいて計算される、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおけるヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及びピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力にそれぞれ基づいて、並びに前記ロール軸(X)に沿った前記車両(V)の前記現在の速度v(t=0)、及び前記道路状態を表すパラメータに基づいて計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおける前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力、前記ロール軸(X)に沿った前記車両(V)の前記現在の速度v(t=0)、並びに前記道路状態を表すパラメータをルックアップ・マップの入力として使用して、前記ルックアップ・マップから読み取られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、N+1個のそれぞれの現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の絶対振幅値の平均、又は前記それぞれのN+1個の現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の二乗平均平方根のいずれかである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記現在のフィルタリングされた加速度値、いわゆるインデックスIh(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、周波数領域に変換された前記それぞれのN+1個の現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の0~3Hzの低周波成分と3~20Hzの高周波成分との加重和によって計算される、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記車両(V)の前記現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)をフィルタリングするために前記ステップii)において使用される測定値の数Nが、前記車両速度の関数であり、前記車両速度が速いほど、測定値の数Nが少なくなる、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
車両(V)用のサスペンション・システムであって、
-前記車両(V)の車体(B)と車輪(W)との間にそれぞれ配置され、制御信号に応答して減衰係数を変化させるように構成された複数のセミアクティブ・ダンパ(1)であり、各ダンパ(1)の減衰力が、前記それぞれの減衰係数と、前記ダンパ(1)の減衰方向に沿った前記車体(B)の速度とそれぞれの車輪(W)の速度との差との関数である、複数のセミアクティブ・ダンパ(1)と、
-ヒーブ軸(Z)に沿った前記車両(V)の加速度h(t=0)、ロール軸(X)周りの前記車両(V)の角加速度r(t=0)、及びピッチ軸(Y)周りの前記車両(V)の角加速度p(t=0)の現在の測定値を取得するためのセンサ(2)と、
-前記車両(V)の少なくともM+1個の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-M),r(t=0,t=-1,...,t=-M),p(t=0,t=-1,...,t=-M)を記憶するように構成されたメモリ・モジュールと、
-前記ダンパ(1)及び前記メモリ・モジュールに機能的に接続されたコントローラであり、前記減衰係数を調整するために各ダンパ(1)にそれぞれの制御信号を送信するように構成されたコントローラで、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、コントローラと、
を備える、サスペンション・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両サスペンションの分野に関し、より詳細には、適応サスペンション又はセミアクティブ・サスペンション、すなわち可変減衰係数を有するサスペンションの正確な設定及び制御に関する。
【背景技術】
【0002】
適応サスペンション又はセミアクティブ・サスペンションは、ダンパの減衰係数を変化させることができるタイプのサスペンションである。アクティブ・サスペンションとは異なり、セミアクティブ・サスペンション又は適応サスペンションは、システムにエネルギーを追加せず、力の方向ではなく、車体と車輪との間の相対的な運きに対抗する力の強度のみを変えることができる。
【0003】
セミアクティブ・サスペンションの時定数は、非常に速い場合もあれば、遅い場合もある。この特性にかかわらず、速度及び路面状態の関数としての減衰係数の値は、一般に、車両又は一連の車両が市場に出る前の調整段階で定義される。しかしながら、この調整段階では、専門のオペレータによる、様々な条件下(天候、速度などに関して)での様々なタイプの道路での長時間のテストが必要であり、少なくとも部分的には主観的なパラメータの定義につながる。さらに、道路状態、速度、及びドライバによって設定された運転モードに依存するこれらのパラメータは、車両の使用中に変更することができないため、一般に最適なパラメータではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、垂直運動軸(Z)に沿った加速度、ロール軸(X)周りの角加速度、及びピッチ軸(Y)周りの角加速度を最小化する車両サスペンションの減衰係数の最適なパラメータを得るように、車両用のサスペンション・システムを制御するための方法を提供することである。これらのパラメータは、調整段階中に記録することができ、又は車両がエンド・ユーザによって使用されている間に連続的に取得することもできる。
【0005】
本発明のさらなる目的は、上述の方法に従って有利に動作するように構成された車両用のサスペンション・システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付の請求項1のステップi)~vi)のおかげで、車両サスペンションのこのような最適なパラメータを得ることが可能である。従属請求項2~15は、最適パラメータの定義をさらに改善するのに役立つ方法の追加のステップを定義する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明による車両サスペンション・システムを制御するための方法及び車両サスペンション・システムのさらなる利点及び特徴は、添付の図面を参照して、以下の詳細且つ非限定的な説明から当業者に明らかになるであろう。
【0008】
図1】車両サスペンション・システムの概略図である。
図2】車両サスペンション・システムを制御するための方法を実行するためのモードのブロック図である。
図3】ヒーブ減衰係数Ch、ロール減衰係数Cr、及びピッチ減衰係数Cpの観点から分割された、図2の方法のブロック図である。
図4】ヒーブ減衰係数Chの挙動の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、車両V用のサスペンション・システムは、
-車両Vの車体Bと各車輪Wとの間にそれぞれ介装され、制御信号に応じて減衰係数を変化させるように構成された複数のセミアクティブ・ダンパ1と、
-垂直運動(「ヒーブ」)軸(Z)に沿った車両(V)の加速度h(t=0)、ロール軸(X)周りの車両(V)の角加速度r(t=0)、及びピッチ軸(Y)周りの車両(V)の角加速度p(t=0)の現在の測定値を取得するためのセンサ2と、
-車両(V)の少なくともM+1個の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-M),r(t=0,t=-1,...,t=-M),p(t=0,t=-1,...,t=-M)を記憶するように構成されたメモリ・モジュールと、
-ダンパ1及びメモリ・モジュールに機能的に接続されたコントローラと、
を備える。
【0010】
コントローラは、減衰係数を調整するために各ダンパ1にそれぞれの制御信号を送信するように構成されている。特に、各ダンパ1の減衰力は、各ダンパ1の前記減衰係数と、ダンパ1の減衰方向に沿った車体Bの速度とそれぞれの車輪Wの速度との差との関数である。ダンパ1はセミアクティブ・タイプであるため、減衰力は、車体Bとそれぞれの車輪Wとの間の相対的な運きに対して常に反対方向に向けられる。コントローラは、以下のように定義されるサスペンション・システムを制御するための方法を実施するように構成されている。
【0011】
図2及び図3を参照すると、本方法は、本方法の各サイクルにおいて、すなわち各時点において、以下に詳細に記載される6つのステップi)~vi)を実行することを提供する。
【0012】
第1のステップi)は、センサ2から車両Vの現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)を取得することにある。
【0013】
第2のステップii)は、車両Vのこれらの現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)を、以前のサイクルで取得され、メモリ・モジュールに記憶された車両のN個の前記過去の加速度測定値h(t=-1,...,t=-N)、r(t=-1,...,t=-N)、p(t=-1,...,t=-N)を考慮に入れてフィルタリングして、現在のフィルタリングされた加速度値、いわゆるインデックスIh(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)を得ることにあり、ここでN≦Mである。
【0014】
第3のステップiii)は、現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)のそれぞれを、それぞれの前のフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)と比較することにある。
【0015】
第4のステップiv)は、ステップiii)の間に行われた比較の結果に基づいて、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態にそれぞれ適用される変動ステップの符号を決定することにあり、各状態がヒーブ減衰係数Ch(t=-1)、ロール減衰係数Cr(t=-1)、及びピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前の出力値に基づいてそれぞれ得られ、前記変動ステップの符号を決定するステップは、状態Ch、Cr、及びCpのそれぞれについて、現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかを検証する動作を含み、大きい場合は、前記変動ステップの符号を前のサイクルにおける変動ステップの符号に対して反転させ、そうでない場合は、前の変動ステップの符号を変更しないままにする。言い換えれば、各サイクルにおいて、本方法は、状態Ch、Cr、Cpに追加される変動ステップを生成する動作を含む。この変動ステップの符号は、前のステップにおける変動ステップの符号と、現在の時刻と時刻t=-1とにおけるインデックスIh、Ir、Ip間の比較とに依存する。各インデックスについて、現在のインデックスがt=-1におけるインデックスよりも大きい場合、対応する状態に追加される変動ステップの符号は、前のサイクルにおいて決定された変動ステップの符号に対して反転される。
【0016】
第5のステップv)は、ステップiv)で計算された各変動ステップを、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態のそれぞれの値と合計することによって、ヒーブ減衰係数Ch(t=0)、ロール減衰係数Cr(t=0)、及びピッチ減衰係数Cp(t=0)の現在の値を得ることにある。
【0017】
第6のステップvi)は、減衰係数の所望の値に対応するそれぞれの制御信号を各ダンパ1に送信することにあり、減衰係数の前記所望の値が車両のヒーブ減衰係数Ch(t=0)、ロール減衰係数Cr(t=0)、及びピッチ減衰係数Cp(t=0)の現在の値に基づいている。
【0018】
図2を参照すると、ステップii)は、インデックス計算ブロック12によって表されており、ステップiii)~v)は、パラメータ最適化ブロック13によって表されている。
【0019】
ステップii)~v)は、本発明によるいわゆるSELFTUNEアルゴリズムを定義する。特に、図3は、現在のヒーブ減衰係数Ch、現在のロール減衰係数Cr、及び現在のピッチ減衰係数Cpを得るために、センサ2によって提供される自動車の現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)から開始して、SELFTUNEアルゴリズムが3回同時に実行されることを示す。
【0020】
ヒーブ減衰係数Ch(t=0)、ロール減衰係数Cr(t=0)、及びピッチ減衰係数Cp(t=0)の現在の値から各ダンパ1の減衰係数の所望の値への変換は、当業者に知られている操作であり、様々な方法で実行することができる。図2において、このような操作はブロック14によって表されている。
【0021】
この公知の変換例を、4つのダンパ1が装備された車両の場合について以下に示す。センサ2は、加速度h、r、pの測定値に加えて、ヒーブ速度、ロール角速度、及びピッチ角速度の現在の測定値も取得するように構成されている。Ch、Cr、Cpの現在のパラメータに、これらのヒーブ速度、ロール速度、及びピッチ速度をそれぞれ乗じることによって、Z軸に沿った力(Fz)と、2つのトルク、すなわちX軸周りのトルク(Mx)及びY軸周りのトルク(My)とが得られる。これらの力を以下のように組み合わせることで、各ダンパに対する4つの所望の力(順番に、左前ダンパ、右前ダンパ、左後ダンパ、及び右後ダンパに対する所望の力)が得られる。
F_damper_FL=Fz/4+Mx/(T/2)-My/A
F_damper_FR=Fz/4-Mx/(T/2)-My/A
F_damper_RL=Fz/4+Mx/(T/2)+My/B
F_damper_RR=Fz/4-Mx/(T/2)+My/B
ここで、T=車両の輪距幅、A=前車軸と重心との間の距離、B=後車軸と重心との間の距離である。
【0022】
最後に、コントローラは、単一のダンパの測定された移動速度に基づいて、上記で決定された所望の力を達成するために各個々のダンパ1に必要な駆動電流IFL、IFR、IRL、IRRを制御するように構成されている。
【0023】
上述の方法を実行するための第1のモードでは、変動ステップは固定振幅を有する。ステップiv)は、現在の変動ステップの符号のみを決定する。シミュレーション及び実際のテストにより、変動ステップのこの固定振幅は、ダンパ1の減衰係数の最大値と最小値との差の1%~5%である場合に特に有利であることが示された。最適点に到達する速さと制御システムの安定性との間の妥協点として、1~5%の範囲が特に有利であることが証明されている。固定ステップ・モードは、計算の観点からあまり負担がかからないという利点を有し、したがって、方法の実施のためのコストを低減すること、及び/又は同じハードウェアを用いて方法サイクルの実行頻度を増加させることに適している。
【0024】
本方法を実行するための第2のモードでは、ステップiv)は、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態にそれぞれ適用される変動ステップの符号だけでなく振幅も決定することをさらに含む。シミュレーション及び実際のテストにより、変動ステップのこの可変振幅は、ダンパ1の減衰係数の最大値と最小値との差の1%~20%である場合に特に有利であることが示された。本方法の可変ステップ・モードの1~20%の範囲は、最適点に到達する速さと制御システムの安定性との間の妥協点として特に有利であることが証明されている。
【0025】
本方法のこの第2のモードの一態様によると、本方法のステップiv)は、現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きい場合は、前のサイクルにおける変動ステップの振幅に対して変動ステップの振幅を減少させる動作を含む。このようにして、前のステップに対して、符号の反転と振幅の減少が同時に起こる。この特徴のおかげで、本方法は、有利なことに、Ch、Cr、Cpの現在の値の振動を最適値の周りで漸減させることができ、それによって、漸近的に安定したシステムを得ることができる。好ましくは、前のサイクルにおける変動ステップの振幅に対して前記現在の変動ステップの振幅を減少させる動作は、現在の変動ステップを前のサイクルにおける変動ステップの50%~70%に減少させる。シミュレーション及び実際のテストにより、この範囲は、速度とシステム安定性との間の妥協点として特に有利であることが示された。
【0026】
本方法のこの第2のモードの一態様によると、本方法のステップiv)は、現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きくない場合は、前のサイクルにおける変動ステップに対して変動ステップの振幅を増加させる動作を含む。このようにして、前のステップに対して、符号を変えずに、同時にステップの振幅を増加させる。この特徴のおかげで、本方法は、最適点に近い領域に到達する速さを有利に向上させることができる。好ましくは、前のサイクルにおける変動ステップの振幅に対して変動ステップの振幅を増加させる動作は、前のサイクルにおける変動ステップの110%~130%までステップを増加させる。シミュレーション及び実際のテストにより、この範囲は、速度とシステム全体の安定性との間の妥協点として特に有利であることが示された。
【0027】
本方法の第1のモード及び第2のモードの両方の態様によると、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態は、前のサイクルにおけるヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の出力、ロール減衰係数Cr(t=-1)の出力、及びピッチ減衰係数Cp(t=-1)の出力にそれぞれ等しい。このようにして実施される方法は、計算が非常に簡単でロバストであるという利点を有する。
【0028】
本方法の第1のモード及び第2のモードの両方に適用される、前の段落に記載された第1の態様の代替であるさらなる態様によると、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態は、前のサイクルにおけるヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の出力、前のサイクルにおけるロール減衰係数Cr(t=-1)の出力、及び前のサイクルにおけるピッチ減衰係数Cp(t=-1)の出力、並びに軸Xに沿った車両Vの少なくとも1つの現在の速度v(t=0)に基づいてそれぞれ計算される。言い換えれば、図2を参照すると、パラメータ記録モジュール10は、t=-1における係数Ch、Cr、Cpの出力の関数として、例えば車両のコントローラ・エリア・ネットワーク・バス11によって提供される、軸Xに沿った車両Vの検出された速度に基づいて、現在の状態Ch、Cr、Cpの値を決定する。本方法のこの特徴により、ステップi)~vi)の実行中の車両速度の変化が考慮されるため、最適点に到達する速さが大幅に向上する。
【0029】
さらに好ましくは、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態は、前のサイクルにおけるヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の出力、前のサイクルにおけるロール減衰係数Cr(t=-1)の出力、前のサイクルにおけるピッチ減衰係数Cp(t=-1)の出力、X軸に沿った車両Vの現在の速度v(t=0)、及び道路状態を表すパラメータに基づいてそれぞれ計算される。言い換えれば、再び図2を参照すると、パラメータ記録モジュール10は、軸Xに沿った車両の検出された速度に基づいて、及び道路状態を示すパラメータに基づいて、前のサイクルにおける係数Ch、Cr、Cpの出力の関数として現在の状態Ch、Cr、Cpの値を決定し、このパラメータは、例えば、車両のコントローラ・エリア・ネットワーク・バス11によっても提供される。道路状態を示すこれらのパラメータは、当業者に知られているパラメータであり、典型的には、車輪にかかる応力に基づいて決定される。本方法のこの追加の特徴のおかげで、ステップi)~vi)の実行中の車両速度及び道路状態の変化が考慮されるため、最適点に到達する速さがさらに向上する。
【0030】
例えば、ヒーブ減衰係数Chの状態、ロール減衰係数Crの状態、及びピッチ減衰係数Cpの状態は、前のサイクルにおけるヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の出力、前のサイクルにおけるロール減衰係数Cr(t=-1)の出力、前のサイクルにおけるピッチ減衰係数Cp(t=-1)の出力、軸Xに沿った車両Vの現在の速度v(t=0)、及び道路状態を表すパラメータをルックアップ・マップの入力として使用して、ルックアップ・マップから読み取られる。
【0031】
ここで図4を参照すると、t=0からt=8までのヒーブ減衰係数Chの挙動の一例を観察することができる。時刻t=4及びt=6において、ステップiii)~v)は、前の時刻t=3及びt=5における変動ステップと同じ符号の変動ステップを生成する。逆に、時刻t=5及びt=7では、変動ステップの符号は、前の時刻t=4及びt=6におけるそれぞれの変動ステップの符号に対して反転している。時刻t=4及び時刻t=6における変動ステップの振幅は、それぞれの前の時刻t=3及びt=5における変動ステップの振幅よりも大きいことも観察することができる。再び、時刻t=5における変動ステップの振幅は、時刻t=4における変動ステップの振幅よりもはるかに小さいことを観察することができる。最後に、図4では、縦軸上にヒーブ減衰係数Chの値「Och」を観察することができ、この値は、時刻値が増加するごとに、本発明による制御方法が繰り返されるおかげで、ヒーブ減衰係数Chの現在の値が向かう仮想最適値を表す。
【0032】
これまでに提示された方法を実行するためのモードのいずれかに適用される態様によると、現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)は、N+1個のそれぞれの現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の絶対振幅値の平均、又はそれぞれのN+1個の現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の二乗平均平方根のいずれかである。
【0033】
或いは、現在のフィルタリングされた加速度値、いわゆるインデックスIh(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)は、周波数領域に変換された(transposed)それぞれのN+1個の現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の0~3Hzの低周波成分と3~20Hzの高周波成分との加重和によって計算される。
【0034】
さらに、車両の現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)をフィルタリングするためにステップii)で使用される測定値の数Nは、車両速度の関数であり、車両速度が速いほど、測定値の数Nは少なくなる。
【0035】
これまでに提示された方法を実行するためのモードのいずれかに適用可能な態様によると、本方法は、一定の間隔で又は特定の条件下で最適減衰係数Ch、Cr、Cpをメモリに記憶するステップも含み、その結果、これらの最適減衰係数Ch、Cr、Cpは、将来的に、例えば、車両がエンド・ユーザへの販売に提供される前に、本方法が車両の調整段階でのみ使用される場合に、同様の速度及び道路状態下で制御を高速化するために、又は、道路状態及び速度に応じて係数のルックアップ・テーブルで制御を直接置き換えるために使用することができるようになる。
【0036】
当業者であれば、以下の特許請求の範囲内に留まりながら、本明細書に記載及び例示された方法を実行するための形態に対して変形又は追加を行うことができる。特に、本方法のさらなる態様は、本明細書に記載された又は図面に示された1つ若しくは複数の技術的特徴が追加された、以下の請求項のいずれか1つの技術的特徴を、個々に又はそれらの任意の組合せで含むことができる。
【0037】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)用のサスペンション・システムを制御するための方法であって、前記サスペンション・システムが、
-前記車両(V)の車体(B)とそれぞれの車輪(W)との間にそれぞれ介装され、制御信号に応答して減衰係数を変化させるように構成された複数のセミアクティブ・ダンパ(1)であり、各ダンパ(1)の減衰力が、それぞれの減衰係数と、前記ダンパ(1)の減衰方向に沿った前記車体(B)の速度とそれぞれの車輪(W)の速度との差との関数である、複数のセミアクティブ・ダンパ(1)と、
-ヒーブ軸(Z)に沿った前記車両(V)の加速度h(t=0)、ロール軸(X)周りの前記車両(V)の角加速度r(t=0)、及びピッチ軸(Y)周りの前記車両(V)の角加速度p(t=0)の現在の測定値を取得するためのセンサ(2)と、
-前記車両(V)の少なくともM+1個の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-M),r(t=0,t=-1,...,t=-M),p(t=0,t=-1,...,t=-M)を記憶するように構成されたメモリ・モジュールと、
-前記ダンパ(1)及び前記メモリ・モジュールと機能的に接続されたコントローラであり、各ダンパ(1)のそれぞれの減衰係数を調整するために各ダンパ(1)にそれぞれの制御信号を送信するように構成されている、コントローラと、
を備える、方法において、
i)前記方法の各サイクルにおいて、前記センサ(2)から前記車両(V)の現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)を取得するステップと、
ii)以前のサイクルで取得され、前記メモリ・モジュールに記憶された前記車両の過去の加速度測定値h(t=-1,...,t=-N)、r(t=-1,...,t=-N)、p(t=-1,...,t=-N)の数Nを考慮に入れて、前記車両(V)の前記現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)をフィルタリングして、現在のフィルタリングされた加速度値、いわゆるインデックスIh(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)を取得するステップであり、ここでN≦Mである、取得するステップと、
iii)前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)のそれぞれを、それぞれの前のフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)と比較するステップと、
iv)ステップiii)における前記比較の結果に基づいて、前記ヒーブ減衰係数Chの状態、前記ロール減衰係数Crの状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの状態にそれぞれ適用される変動ステップの符号を決定するステップであり、各状態が前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前の出力値に基づいてそれぞれ得られる、変動ステップの符号を決定するステップで、前記変動ステップの前記符号を決定する前記ステップが、状態Ch、Cr、及びCpのそれぞれについて、前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きい場合は、前記変動ステップの前記符号を、前のサイクルにおける前記変動ステップの前記符号に対して反転させ、そうでない場合は、前記前の変動ステップの前記符号を変更しないままにする動作を含む、変動ステップの符号を決定するステップと、
v)各変動ステップを、前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態のそれぞれの値と合計することによって、前記ヒーブ減衰係数Ch(t=0)、前記ロール減衰係数Cr(t=0)、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=0)の現在の値を得るステップと、
vi)前記減衰係数の所望の値に対応する前記それぞれの制御信号を各ダンパ(1)に送信するステップであり、前記減衰係数の前記所望の値が、前記車両(V)の前記ヒーブ減衰係数Ch(t=0)、前記ロール減衰係数Cr(t=0)、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=0)の前記現在の値に基づいている、送信するステップと、
を周期的に実行することを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
ステップiv)が、前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態にそれぞれ適用される前記変動ステップの振幅を決定するステップも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態にそれぞれ適用される前記変動ステップの前記振幅を決定するステップが、前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きい場合は、前記変動ステップの前記振幅を、前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して減少させる動作を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変動ステップの前記振幅を前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して減少させる前記動作が、前記変動ステップを前のサイクルにおける前記変動ステップの50%~70%に減少させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態にそれぞれ適用される前記変動ステップの前記振幅を決定するステップが、前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、前のサイクルで取得されたそれぞれのフィルタリングされた加速度値Ih(t=-1)、Ir(t=-1)、Ip(t=-1)よりも大きいかどうかをチェックし、大きくない場合は、前記変動ステップの前記振幅を、前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して増加させる動作を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前のサイクルにおける前記変動ステップの前記振幅に対して前記変動ステップの前記振幅を増加させる前記動作が、前記変動ステップを、前のサイクルにおける前記変動ステップの110%~130%に増加させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記変動ステップが、各ダンパ(1)の減衰係数の最大値と最小値との差の1%~5%に含まれる固定振幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記変動ステップが、各ダンパ(1)の前記減衰係数の最大値と最小値との差の1%~20%に含まれる可変振幅を有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおける前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力にそれぞれ等しい、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおける前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力にそれぞれ基づいて、並びに前記ロール軸(X)に沿った前記車両(V)の少なくとも1つの現在の速度v(t=0)に基づいて計算される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおけるヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及びピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力にそれぞれ基づいて、並びに前記ロール軸(X)に沿った前記車両(V)の前記現在の速度v(t=0)、及び前記道路状態を表すパラメータに基づいて計算される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒーブ減衰係数Chの前記状態、前記ロール減衰係数Crの前記状態、及び前記ピッチ減衰係数Cpの前記状態が、前のサイクルにおける前記ヒーブ減衰係数Ch(t=-1)の前記出力、前記ロール減衰係数Cr(t=-1)の前記出力、及び前記ピッチ減衰係数Cp(t=-1)の前記出力、前記ロール軸(X)に沿った前記車両(V)の前記現在の速度v(t=0)、並びに前記道路状態を表すパラメータをルックアップ・マップの入力として使用して、前記ルックアップ・マップから読み取られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記現在のフィルタリングされた加速度値Ih(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、N+1個のそれぞれの現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の絶対振幅値の平均、又は前記それぞれのN+1個の現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の二乗平均平方根のいずれかである、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記現在のフィルタリングされた加速度値、いわゆるインデックスIh(t=0)、Ir(t=0)、Ip(t=0)が、周波数領域に変換された前記それぞれのN+1個の現在及び過去の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-N)、r(t=0,t=-1,...,t=-N)、p(t=0,t=-1,...,t=-N)の0~3Hzの低周波成分と3~20Hzの高周波成分との加重和によって計算される、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記車両(V)の前記現在の加速度値h(t=0)、r(t=0)、p(t=0)をフィルタリングするために前記ステップii)において使用される測定値の数Nが、前記車両速度の関数であり、前記車両速度が速いほど、測定値の数Nが少なくなる、請求項に記載の方法。
【請求項16】
車両(V)用のサスペンション・システムであって、
-前記車両(V)の車体(B)と車輪(W)との間にそれぞれ配置され、制御信号に応答して減衰係数を変化させるように構成された複数のセミアクティブ・ダンパ(1)であり、各ダンパ(1)の減衰力が、前記それぞれの減衰係数と、前記ダンパ(1)の減衰方向に沿った前記車体(B)の速度とそれぞれの車輪(W)の速度との差との関数である、複数のセミアクティブ・ダンパ(1)と、
-ヒーブ軸(Z)に沿った前記車両(V)の加速度h(t=0)、ロール軸(X)周りの前記車両(V)の角加速度r(t=0)、及びピッチ軸(Y)周りの前記車両(V)の角加速度p(t=0)の現在の測定値を取得するためのセンサ(2)と、
-前記車両(V)の少なくともM+1個の加速度測定値h(t=0,t=-1,...,t=-M),r(t=0,t=-1,...,t=-M),p(t=0,t=-1,...,t=-M)を記憶するように構成されたメモリ・モジュールと、
-前記ダンパ(1)及び前記メモリ・モジュールに機能的に接続されたコントローラであり、前記減衰係数を調整するために各ダンパ(1)にそれぞれの制御信号を送信するように構成されたコントローラで、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、コントローラと、
を備える、サスペンション・システム。
【国際調査報告】