(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】金属製品のための洗浄プラント
(51)【国際特許分類】
C23G 3/02 20060101AFI20240313BHJP
C23G 1/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C23G3/02
C23G1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561723
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 IB2022053283
(87)【国際公開番号】W WO2022215035
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021000008597
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523275190
【氏名又は名称】ダニエーリ エ チ.オフィシーネ メカニケ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニョーロ、ルチアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プリマヴェーラ、アレサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルチッロ、エマヌエレ
【テーマコード(参考)】
4K053
【Fターム(参考)】
4K053PA02
4K053PA12
4K053QA01
4K053TA02
4K053XA37
4K053XA50
4K053YA21
4K053YA28
(57)【要約】
表面酸化物層が設けられた熱間圧延金属ストリップのための洗浄プラントであって、圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すための巻き出し手段(1)と、前記圧延ストリップを酸洗するための酸洗手段(3)とを備え、前記巻き出し手段と前記酸洗手段との間に配置された、前記表面酸化物層の厚さを測定するための測定手段(11)が設けられ、かつ前記酸洗手段によって生成されたヒューム中のガス状水素の存在を検出するためのガス状水素検出手段(12)が設けられる。対応する洗浄方法も特許請求される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物の表層が設けられた圧延金属ストリップを洗浄するための洗浄プラントであって、
-圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すための巻き出し手段(1)と、
-前記圧延ストリップを酸洗するための化学的酸洗手段(3)と、
-前記巻き出し手段(1)と前記化学的酸洗手段(3)との間に配置された、酸化物の前記表層の厚さを測定するための測定手段(11)と
を備え、
前記測定手段(11)が、酸化物組成を分析するようにも適合された前記レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)システムを画定する光ファイバ分光計と協働する少なくとも1つのレーザ源を備え、
前記化学的酸洗手段(3)によって生成されたヒューム中のガス状水素の存在を検出するためガス状水素検出手段(12)が設けられ、かつ
少なくとも前記測定手段(11)および前記ガス状水素検出手段(12)からのデータを処理するように適合され、かつそれに応じて前記化学的酸洗手段(3)の動作パラメータを調整するように適合された処理ユニット(10)が設けられ、
洗浄プラント。
【請求項2】
前記化学的酸洗手段が、2つ以上の化学的酸洗槽を備え、前記ガス状水素検出手段(12)が、少なくとも最後の化学的酸洗槽(15)によって生成された前記ヒューム中のガス状水素の前記存在を検出するように位置決めされる、請求項1に記載の洗浄プラント。
【請求項3】
前記ガス状水素検出手段(12)が、熱伝導率測定を実行するように適合された検出機器を備えるか、または熱伝導率測定を実行するように適合された検出機器からなるかのいずれかである、請求項1または2に記載の洗浄プラント。
【請求項4】
前記ストリップの前記表面上の残留酸化物を検出するための第1の光学検出手段(13)が設けられ、前記第1の光学検出手段(13)が、前記最後の化学的酸洗槽(15)の入口に配置される、請求項2に記載の洗浄プラント。
【請求項5】
前記ストリップの清浄度のレベルを検出するためのさらなる光学検出手段(9、14)が設けられ、前記化学的酸洗手段(3)の下流に配置される、請求項4に記載の洗浄プラント。
【請求項6】
前記さらなる光学検出手段が、前記ストリップの少なくとも一方の表面の表面粗さおよび/または反射率および/または濃淡レベルおよび/または放射率を検出するための第2の光学検出手段(14)を備える、請求項5に記載の洗浄プラント。
【請求項7】
前記さらなる光学検出手段が、前記ストリップの前記表面上の残留酸化物を検出するための第3の光学検出手段(9)をさらに備える、請求項6に記載の洗浄プラント。
【請求項8】
-前記化学的酸洗手段(3)から来る排出された酸性溶液を再生し、かつ再生された酸性溶液を得るための再生手段(17)と、
-前記再生手段(17)に向けられた前記排出された酸性溶液の流量を測定するための第1の流量計(4)と、
-前記排出された酸性溶液中の酸および鉄の濃度を分析するための第1の分析器(6)と、
-前記化学的酸洗手段(3)に向けられた前記再生された酸性溶液の流量を測定するための第2の流量計(5)と、
-前記再生された酸性溶液中の酸および残留鉄の濃度を分析するための第2の分析器(7)と
が設けられ、
好ましくは、前記処理ユニット(10)がまた、少なくとも前記第1の流量計(4)、前記第1の分析器(6)、前記第2の流量計(5)、および前記第2の分析器(7)からのデータを処理し、かつそれに応じて前記化学的酸洗手段(3)の前記動作パラメータを調整するように適合される、請求項1から7のいずれか一項に記載の洗浄プラント。
【請求項9】
前記処理ユニット(10)がまた、前記第1の光学検出手段(13)からのデータを処理し、かつそれに応じて前記化学的酸洗手段(3)の前記動作パラメータを調整するように適合される、請求項4に記載の洗浄プラント。
【請求項10】
前記処理ユニット(10)がまた、前記第1の光学検出手段(13)および前記第2の光学検出手段(14)からのデータを処理し、かつそれに応じて前記化学的酸洗手段(3)の前記動作パラメータを調整するように適合される、請求項6に記載の洗浄プラント。
【請求項11】
前記処理ユニット(10)がまた、前記第1の光学検出手段(13)、前記第2の光学的手段(14)、および前記第3の光学検出手段(9)からのデータを処理し、かつそれに応じて前記化学的酸洗手段(3)の前記動作パラメータを調整するように適合される、請求項7に記載の洗浄プラント。
【請求項12】
-前記化学的酸洗手段(3)からの排出された酸性溶液を再生し、かつ再生された酸性溶液を得るための再生手段(17)と、
-前記再生手段(17)に向けられた前記排出された酸性溶液の流量を測定するための第1の流量計(4)と、
-前記排出された酸性溶液中の酸および鉄の濃度を分析するための第1の分析器(6)と、
-前記化学的酸洗手段(3)に向けられた前記再生された酸性溶液の流量を測定するための第2の流量計(5)と、
-前記再生された酸性溶液中の酸および残留鉄の濃度を分析するための第2の分析器(7)と
が設けられ、
好ましくは、前記処理ユニット(10)がまた、少なくとも前記第1の流量計(4)、前記第1の分析器(6)、前記第2の流量計(5)、および前記第2の分析器(7)からのデータを処理し、かつそれに応じて前記化学的酸洗手段(3)の前記動作パラメータを調整するように適合される、請求項9または10または11に記載の洗浄プラント。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のプラントによって実行される金属ストリップを洗浄する方法であって、
a)前記巻き出し手段(1)によって圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すステップと、
b)前記測定手段(11)によって前記圧延ストリップの前記表面酸化物層の前記厚さを測定するステップと、
c)前記化学的酸洗手段(3)によって前記圧延ストリップを酸洗するステップと
を含み、
ステップb)において、前記酸化物表面層の前記厚さの前記測定が、前記酸化物組成の分析と共に、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)システムを画定する光ファイバ分光計に関連する少なくとも1つのレーザ源によって行われ、前記光ファイバ分光計が、前記レーザ源のレーザが前記圧延ストリップ上に存在する前記酸化物表面層を貫通して前記非酸化母材に向かっている間に酸素の存在を測定し、そして、前記分光計が酸素の非存在を検出した場合、前記酸化物表面層の前記厚さは前記レーザ源によって前記圧延ストリップ内に掘削された深さに等しく、
ステップc)において、前記ガス状水素検出手段(12)によって、前記化学的酸洗手段(3)によって生成されたヒューム中のガス状水素の検出が提供され、かつ
前記処理ユニット(10)によって、前記測定手段(11)および前記ガス状水素検出手段(12)の両方からのデータの前記処理、およびそれに応じた前記化学的酸洗手段(3)の前記動作パラメータの前記調整が提供される、方法。
【請求項14】
前記処理ユニット(10)が、
-前記ストリップに沿った前記酸化物表面層のシミュレーションデータを生成する酸化物層シミュレーションモデル(21)と、
-前記化学的酸洗手段(3)内のストリップ送り速度および/または前記化学的酸洗手段(3)内に存在する前記酸性溶液の乱流レベルを含む酸洗パラメータ、好ましくは前記酸性溶液中の酸濃度および/または前記酸性溶液の温度をさらに含む前記酸洗パラメータを調整する酸洗調整モデル(20)と
を備え、
前記シミュレーションデータが前記酸洗調整モデル(20)に送られる、請求項13に記載の洗浄方法。
【請求項15】
前記シミュレーションデータを生成するために、前記酸化物層シミュレーションモデル(21)が、
前記コイルに巻き取られた状態の前記ストリップに関する第1の入力データ(22)と、プラントの動作中に前記測定手段(11)によって検出されたデータからなる第2の入力データ(23)と
の両方を取得する、請求項14に記載の洗浄方法。
【請求項16】
前記第1の入力データ(22)が、少なくともストリップ厚さ、ストリップ幅、金属材料グレード、ストリップ巻き取り温度を含み、かつ前記第2の入力データ(23)が、酸化物表面層厚さおよび酸化物組成を含む、請求項15に記載の洗浄方法。
【請求項17】
前記ストリップに沿った前記酸化物表面層の前記シミュレーションデータが、前記第1の入力データ(22)および前記第2の入力データ(23)と、異なる厚さ、幅、金属材料で、異なる巻き取り温度で巻き取られたストリップのセットに関連するデータを含むデータベースとを比較することによって得られ、好ましくは、前記シミュレーションデータが、以下のデータ:
-厚さ(マイクロメートル)、
-除去されるべき酸化物の重量(グラム/m
2)、
-平均酸化物組成の推定、
-ストリップの酸洗係数
のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の洗浄方法。
【請求項18】
少なくとも1つの制御ループが設けられることにより、前記ガス状水素検出手段(12)によって検出された前記ヒューム中のガス状水素値と、前記酸洗調整モデル(20)によって提供される前記ヒューム中のガス状水素値との差が閾値を超える場合、前記差が前記閾値を超えないように少なくとも1つの酸洗パラメータを調整するように前記酸洗調整モデル(20)に要求するフィードバックが生成される、請求項14から17のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化金属製品、特に熱間圧延ストリップのための洗浄プラントおよびその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のストリップ洗浄ラインは、熱間圧延された金属製品上に生成される表面酸化物層を除去することを目的としている。実際、熱間圧延プロセス中、連続鋳造機によって成形されるか、または高温装入として公知の再加熱炉によって外部ステーションからラインに導入されるスラブは、圧延されて厚さが減少し、一般に0.8~12mmに含まれる厚さの第1のストリップを画定する。
【0003】
熱間圧延は高温で行われ、圧延後、化学組成および最終製品の使用に応じて、200℃~750℃に含まれる温度でストリップが巻き取られるため、金属製品の表面のいくつかのストレッチは、空気および水などの酸化剤に曝される。実際、金属ストリップを不活性雰囲気で処理することは不可能であり、これは製品の表面層の酸化を引き起こし、これは、完成した材料の重量損失を決定することに加えて、形成された酸化物が冷間圧延中および/または塗装中に製品の表面品質を損傷する可能性があるため、後続の仕上げプロセスで解決されるべき問題でもある。この酸化物層は、一般に、金属に最も近い部分、すなわち最も内側の部分の酸化鉄と、外側のマグネタイトおよびヘマタイトとからなる。
【0004】
さらに、仕上げプロセスは、一般に、熱間圧延プロセスのすぐ下流では実行されない。熱間圧延ストリップは、通常、(圧延ラインから出るストリップの厚さに応じて)所望の重量または直径のコイルに巻き取られ、熱間圧延ラインの近くに配置された倉庫で周囲温度まで冷却される。したがって、これはストリップ表面のさらなる酸化を引き起こす可能性がある。
【0005】
熱間圧延および酸洗は異なる場所で行われることがあるため、ストリップコイルは、腐食攻撃の観点から非常に攻撃的な条件で、例えば、船で輸送される場合は塩分を含んだ空気の存在下で輸送される可能性がある。
【0006】
しかしながら、一般にスケールまたはフレークとして公知のこの酸化物の層が無傷のままであり、金属ストリップにしっかりと付着する場合、酸化物の層は金属ストリップの保護作用を実行する。しかしながら、輸送および貯蔵中の大気中の作用物質の作用、およびスケール自体の不可避の破損の両方のために、酸化物層を無傷に保つことは困難である。
【0007】
さらに、水分は亀裂を貫通し、金属表面に最も近い酸化鉄層、例えば鋼と反応して、水酸化鉄および水酸化第二鉄を形成し、体積の増加により、酸化物層のさらなる剥離を引き起こし、したがって金属の別の部分への攻撃を可能にする。
【0008】
熱間圧延ストリップは、製造要件に従って、後の段階において仕上げラインで仕上げられなければならない。
【0009】
前記ストリップは、完成する前の数日間であっても倉庫に留めることができるため、冷却して周囲温度に達するのに十分な時間があり、例えば、ストリップの1辺当たり5~20μmに達し得る酸化物層の生成を決定する。酸化物の厚さは、ストリップの公称厚さに正比例するが、その巻き取り中のストリップの温度にも正比例する。
【0010】
したがって、製品の冷間圧延処理およびその後のコーティング(例えば、亜鉛めっきまたは錫めっき、塗装など)を行う前に、材料から酸化物コーティングを洗浄する必要がある。この酸化物層またはスケールは、完成品の表面品質を損ない、圧延を困難にする可能性があるため、洗浄は特に重要である。
【0011】
現在の技術では、ストリップは、通常は冷間圧延に先行するスケール除去および酸洗ラインの特別なレイアウトによって洗浄される。通常、以前の熱間圧延ストリップのための巻き出しラインが設けられ、そして、その後の処理がスケールをより容易に除去することができるように、スケールを破壊するための装置が続く。スケールは、酸槽への製品の導入(化学酸洗)を含む連続工程によって製品から洗浄される。次いで、製品をブラッシングし、すすぐことができる。
【0012】
現在の経済状況および環境上のニーズにより、製造業者は、エネルギー消費、酸洗などの製品消費、ならびに材料収率および材料品質収率として意図された処理廃棄物を最小限に抑えながら、プロセス制御を最適化するように適合された方法または技術を適用することをますます推進されている。
【0013】
しかしながら、現在のところ、最小量の酸で正確な量の酸化物を除去するための最適なプロセスパラメータを事前に正確に特定することは不可能である。
【0014】
不都合なことに、代わりに、必要以上に多くの酸が使用される可能性が非常に高く、「良好」製品の一部、すなわちストリップの母材の金属の一部さえ除去して洗浄の成功を確実にするが、生産効率を犠牲にしている。実際、酸洗プロセスのオペレータは、前の化学的攻撃によって除去されなかった酸洗不足の酸化物の残留物が依然として酸洗手段出口に存在する場合、品質拒絶を回避するためにわずかに過酸洗されたストリップの製造を好むことが多い。
【0015】
過酸洗されたストリップは、とりわけ以下の欠点を有する:
-プラントの生産能力の低下、
-化学的攻撃の影響による収率のより大きな低下、
-ストリップの後続の圧延およびコーティングプロセスに悪影響を及ぼし得る、1つの同じストリップの異なる表面品質(粗さ)、
-消耗品の使用の増加。
【0016】
反対に、酸洗不足のストリップの場合、処理槽内で使用される酸または持続時間が十分でなかった可能性がある。したがって、ストリップは最適に洗浄されず、廃棄/区分解除または再処理されなければならない。
【0017】
さらに、弾性および引張強度ならびに破断伸び率の増加など、絶えず増加する性能要件を満たすために要求される鋼グレードの進化は、これらのカテゴリの鋼に対して実行される化学処理を複雑にしている。
【0018】
例えば、炭化水素系エネルギーのモビリティから電気モビリティへの移行への漸進的ではあるが強力な推進は、合金中のケイ素の高い存在を特徴とする非結晶粒配向シートの製造を増加させており、不都合なことに、酸化ケイ素は酸洗槽で除去することが特に困難である。
【0019】
これは、将来的に、柔軟でなければならず、処理される様々な異なる製品の反応速度の迅速な変化を可能にしなければならない化学酸洗プロセスに大きく影響する。
【0020】
したがって、前述の欠点を克服することができる金属ストリップ用の革新的な洗浄プラントを提供する必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、オペレータにとって有用な複数のデータを検出して、化学的酸洗の動作パラメータを最適に、好ましくは自動的に調整することを可能にし、化学的酸洗を非常に正確で、費用対効果が高く、生態学的に持続可能にする、金属ストリップのための洗浄プラントを提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、リアルタイムで前記複数のデータを検出および処理して、酸洗の動作パラメータを自動的かつ瞬時に調整し、したがって化学的酸洗プロセスの正確な制御を達成し、かつしたがって従来技術の解決策と比較して酸洗条件をさらに改善するプラントを提供することである。
【0023】
酸洗パラメータの自動調整は、例えば、ストリップに沿って酸化物層をシミュレートし、酸洗速度を制御するためのソフトウェアによって達成される。
【0024】
本発明の解決策は、非常に柔軟であり、処理される製品が異なっていても反応速度の迅速な変動を可能にする。
【0025】
したがって、本発明は、酸化物表面層が設けられた圧延金属ストリップを洗浄するための洗浄プラントによって上述した目的の少なくとも1つを達成し、前記プラントは、請求項1によると、
-圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すための巻き出し手段と、
-前記圧延ストリップを酸洗するための化学酸洗手段と、
-前記巻き出し手段と前記化学的酸洗手段との間に配置された、表面酸化物層の厚さを測定するための測定手段と
を備え、
前記測定手段は、厚さに加えて酸化物組成を分析するように適合されたLIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)システムを画定する光ファイバ分光計と協働する少なくとも1つのレーザ源を備え、
前記化学的酸洗手段によって生成されたヒューム中のガス状水素の存在を検出するためのガス状水素検出手段が、設けられ、かつ
少なくとも前記測定手段および前記ガス状水素検出手段からのデータを処理するように適合され、かつ前記化学的酸洗手段の動作パラメータを調整し、酸洗プロセスの最適条件を規定するように適合された処理ユニットが設けられる。
【0026】
本発明のさらなる態様は、前述のプラントによって実行される金属ストリップを洗浄する方法に関し、方法は、請求項14によると、
a)巻き出し手段によって圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すステップと、
b)測定手段によって圧延ストリップの表面酸化物層の厚さを測定するステップと、
c)化学的酸洗手段によって前記圧延ストリップを酸洗するステップと
を含み、
ステップb)において、酸化物表面層の厚さの測定は、酸化物組成の分析と共に、LIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)システムを画定する光ファイバ分光計に関連する少なくとも1つのレーザ源によって行われ、前記光ファイバ分光計は、前記レーザ源のレーザがストリップ上に置かれた酸化物表面層を貫通し、非酸化母材に向かっている間に酸素の存在を測定し、そして、前記分光計が酸素の非存在を検出した場合、酸化物表面層の厚さはレーザ源によって前記酸化物層に掘削された深さに等しく、
ステップc)において、ガス状水素検出手段によって、前記化学的酸洗手段によって生成されたヒューム中のガス状水素の検出が提供され、かつ
処理ユニットによって、前記測定手段および前記ガス状水素検出手段の両方からのデータの処理、およびそれに応じた前記化学的酸洗手段の動作パラメータの調整が提供される。
【0027】
有利には、本発明のプラントおよび方法は、
-化学的酸洗手段の生産能力の最大化、
-ストリップの酸化物を含まない表面への酸攻撃を最小限に抑えることによる材料収率の改善、
-ストリップの過酸洗または酸洗不足のストレッチを排除することによる製品品質の改善、
-エネルギーおよび酸消費の最適化
を可能にする。
【0028】
酸化物層の厚さおよびO2/Fe比の測定による知識、ならびに酸洗槽から放出されるヒューム中のガス状水素の検出は、より大きな柔軟性および酸洗パラメータ調整の最適な推定を可能にする。少なくとも1つのLIBSシステムおよびヒューム内のガス状水素検出手段によって検出されたデータの組み合わせ処理によって決定されるプロセス制御の最適化は、エネルギー消費、酸洗などの製品消費、ならびに材料収率および材料品質収率として意図された処理廃棄物を同時に最小限に抑えることを有利に可能にする。
【0029】
酸化物層の厚さは、酸化物層の除去および気化を達成するためにパルスレーザを使用するLIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)として公知の技術によって測定される。固体から気体状態への酸化物相変化は、プラズマ状態を生成し、そして、励起種の脱励起によって放出された放射線を分光計によって読み取ることにより、酸化層内に存在する様々な元素を特定することを可能にする。酸化層のスペクトルに酸素がなくなった時点で母材に到達していることを確認し、その時点までにレーザが照射したパルス数を知ることで、酸化層の厚さを規定することができる。
【0030】
例えば塩酸(特に低/中炭素鋼ストリップの酸洗に使用される)が主に使用される酸洗槽で生じる化学反応の知識は、未酸化の母材の化学的攻撃の組み合わせを評価するための興味深い指標を提供した。生じる反応は以下の通りである:
1)FeO+2HCl→FeCl2+H2O
2)Fe2O3+6HCl→2FeCl3+3H2O
3)Fe3O4+8HCl→FeCl2+2FeCl3+4H2O
4)Fe+2HCl→FeCl2+H2(ガス)
【0031】
反応1)~3)は、反応中の様々な種類の酸化物の存在の効果を表し、一方、反応4)は、酸が酸化物の存在なしに鉄と反応する場合、反応の結果はガス状水素の発生を含むことを示す。この観察から、ヒューム中に存在する水素の量を測定し、この値を酸洗プロセスの程度を評価するためのパラメータとして、有利にはLIBSシステムによって検出された酸化物層に関するデータと組み合わせて使用することが決定された。
【0032】
本発明の第1の変形例では、最後の化学的酸洗槽の入口に配置された第1の光学検出手段によるストリップ上の残留酸化物の検出が提供される。これにより、最後の酸洗槽の酸洗の動作パラメータを変更することができ、品質原因の廃棄をさらに最小限に抑えることができる。実際、ストリップの表面上に明らかに見える酸化物残留物の存在は、酸洗条件を最適化するための前述のソフトウェアによって、最後の酸洗槽の酸洗パラメータ、例えば移動速度、したがってストリップ送り速度、および/または最後の槽に存在する酸性溶液の乱流レベルについて、酸洗不足および迅速な介入のレベルを評価することを可能にする。
【0033】
本発明の第2の変形例では、酸洗手段の下流に配置された第2の光学検出手段によって、表面粗さおよび/または反射率および/または濃淡レベルおよび/または放射率などのストリップ表面の特性の検出が提供される。これらの特性は、材料の過酸洗のレベルの指標である。実際、酸化物を含まない表面への酸攻撃は、その粗さだけでなく、結晶粒の縁部への異なる攻撃の効果によってその結晶組織も変化させる。このフィードバックは、酸洗最適化ソフトウェアによって、酸洗の動作パラメータを酸洗ラインの上流で修正することを可能にし、品質原因の廃棄をさらに最小限に抑える。
【0034】
本発明の第3の変形例では、酸洗手段の下流に配置された第3の光学検出手段によるストリップ上の残留酸化物の検出が提供される。このフィードバックはまた、酸洗最適化ソフトウェアによって、酸洗の動作パラメータを酸洗ラインの上流で修正することを可能にし、品質原因の廃棄をまたさらに最小限に抑える。
【0035】
本発明の第4の変形例では、酸および鉄濃度分析器を使用して、使用済み酸性溶液および再生された酸性溶液中のマスバランスが提供され、これらの酸性溶液はそれぞれ酸洗手段から、および酸洗手段へと連続的に移動し、したがって酸洗制御のさらなる改良を可能にする。
【0036】
本発明の変形例の一部または全部の特徴は、有利に組み合わせることができる。
【0037】
一般に、過酸洗の場合、酸洗の動作パラメータは以下のように修正することができる:
-プラント条件が許せばプロセス速度を増加させる(生産能力の増加)、
-浴の乱流を減少させて反応速度を低下させる(エネルギー消費の低下)、
-浴温度を減少させて反応速度を低下させる(エネルギー消費の低下)、
-酸濃度を低下させる(酸消費の減少)。
【0038】
酸洗不足の場合、代わりに、酸洗の動作パラメータを以下のように修正することができる:
-プロセス速度を低下させる(生産能力の低下)、
-浴の乱流を増加させて反応速度を増加させる、
-浴温度を増加させて反応速度を増加させる、
-酸濃度を増加させる。
【0039】
従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を記載する。
【0040】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面の助けを借りて、非限定的な例として示される金属ストリップの洗浄プラントの好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明に照らしてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明によるプラントの一実施形態の概略図である。
【
図2】本発明による例示的な洗浄方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図は、酸化された金属ストリップのための洗浄プラントの実施形態のいくつかの例を示す。特に、
図1の破線の構成要素は任意選択であり、個別にまたは一緒に考慮することができる。
【0043】
本発明によるプラントは、そのすべての実施形態において、順に、
-酸化物表面層を有する圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すための巻き出し手段1と、
-酸化物表面層の厚さを測定するための測定手段11と、
-圧延ストリップを酸洗するための化学酸洗手段3と
を備える。
【0044】
第1の変形例では、巻き出し手段1は、単一の圧延ストリップ巻き出しライン、好ましくは単一の巻き出しリールを備える。
【0045】
巻き出し手段1の第2の変形例では、圧延ストリップのための二重巻き出しラインが設けられ、その後、酸洗される巻き出されたストリップに連続性を与えるために切断および溶接機が設けられる。
【0046】
特に、少なくとも2つの巻き出しリールと、巻き出しリールによって巻き出されたストリップ間にジョイントを生成することができ、したがって連続ストリップを画定する、すなわち、巻き出し手段の下流に金属ストリップを連続的に供給することを可能にする溶接機、好ましくはレーザ溶接機とを設けることができる。任意選択的に、ストリップ張力を調整するために張力装置を設けることができる。
【0047】
可能な貯蔵システム(図示せず)は、化学的酸洗手段3の上流および/または下流に設けられる。
【0048】
好ましくは、巻き出し手段1と酸洗手段5との間に、少なくとも1つのスケール破壊装置3を有利に設けることができ、前記スケール破壊装置は、例えば、酸化物層を破壊するための機械的システムを使用して、この酸化物層を後続の化学的酸洗手段によってより除去可能にする。
【0049】
酸化物層の厚さを測定するための測定手段11は、酸化物組成および/または酸化物構成元素の濃度を分析するようにも適合されたLIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)システムを画定する光ファイバ分光計と協働する少なくとも1つのレーザ源を備える、特にそれからなる。酸化物組成という用語は、個々の酸化物または酸化物の混合物の化学的性質を指す。酸化物構成元素の濃度という用語は、個々の酸化物を構成する個々のイオン種の濃度を指す。
【0050】
有利には、前記光ファイバ分光計は、レーザ源からのレーザが圧延ストリップの表面上に存在する酸化物層を貫通して未酸化の母材に向かっているときに酸素の存在を測定するように構成される。
【0051】
システムは、酸化物層のポイントアブレーションのためにレーザ源を使用する。レーザ源は、その厚さに沿ってアブレーションによって除去された酸化物層に属する種をプラズマ状態にするのに必要なエネルギーを提供する。プラズマを構成するイオンの脱励起は、分光計の使用により、存在する種およびその濃度の特定の両方を可能にする。酸化物層の厚さは、酸素信号の消失時に有利に検出される。
【0052】
したがって、光ファイバ分光計は、酸化物層のポイントアブレーション中に酸素の存在を測定することができる。分光計が浸食の時間「t」後、したがってアブレーション中に酸素の非存在を検出する場合、時間「t」における材料の浸食された層の深さの測定値は、酸化物表面層の厚さに対応する。
【0053】
言い換えれば、ソフトウェアは、酸素ピークの消失時の酸化物表面層の厚さに等しくなるであろう浸食深さを計算し、浸食の時間「t」および浸食速度は既知である。
【0054】
分光測定により、酸化物層の厚さと組成(例えば、O2/Fe比)の両方を知ることができる。これらのデータにより、酸洗プロセスの速度を最適化するための最適化ソフトウェアを使用して、酸洗の動作パラメータを最適に規定することが可能になる。LIBS技術を使用することのさらなる利点は、その最小限の侵襲性に起因し、引き起こされる唯一の損傷が、集束レーザスポットに応じた寸法を有するキャビティを形成する材料のアブレーションであるという点で、微小破壊技術であることである。
【0055】
有利な変形例では、圧延ストリップの供給ラインの上方および下方に配置された2つ以上の測定手段11、11’が設けられ、ストリップの上面および下面の両方の酸化物層の厚さ、ならびにストリップの縁部と中心との差を計算する。
【0056】
特に、圧延ストリップ8の供給ラインの上方に配置された少なくとも1つの測定手段11と、圧延ストリップ8の供給ラインの下方に配置された少なくとも1つの測定手段11’とが設けられている。
【0057】
2つ以上の測定手段11および2つ以上の測定手段11’が設けられる場合、それぞれの光ファイバ分光計に関連する少なくとも4つ以上のレーザ源が設けられ、4つ以上のLIBSシステムを画定する。
【0058】
測定手段11、したがってLIBSシステムまたはLIBSシステムは、圧延ストリップ8の供給ラインに対して固定または移動可能に配置することができる。
【0059】
酸化物層の厚さは、いくつかの方法で測定することができる。
【0060】
例えば、測定を静的に実行し、洗浄プラントへのストリップ流入を一時的に中断し(例えば、ストリップの溶接中に)、データが取得されると再開することが可能である。
【0061】
代替的に、測定は、例えば、金属ストリップと共に移動するように適合されたキャリッジ上に測定手段11を配置することによって、連続的に実行することができる。
【0062】
有利には、本発明のプラントのすべての実施形態において、前記化学的酸洗手段3によって生成されたヒューム中のガス状水素の存在を検出するためのガス状水素検出手段12が設けられる。
【0063】
そのようなガス状水素検出手段12は、熱伝導率測定を実行するように適合された検出機器を備えるか、またはそれからなる。例えば、そのようなガス状水素検出手段12は、1つ、2つまたはそれ以上の熱伝導率検出器を備える。
【0064】
特に、以下を備える検出機器を使用することができる(
図3):
-酸洗槽15によって生成されたヒュームの流れが分割されて進められる、2つの導管30、31、
-燃焼の点火のために、導管30などの前記2つの導管の一方に沿って配置された触媒炉などの燃焼室32であって、水素が、もし存在すれば、関連する導管30のヒューム流で燃焼されるようにする、燃焼室32、
-燃焼室32の下流の2つの導管の流れの間の熱伝導率の起こり得る差を検出するための熱伝導率検出器33、34。
【0065】
2つの導管の流れの間に熱伝導率の差が検出された場合、これにより、ヒューム内のガス状水素の存在、したがってストリップ表面の過酸洗が確認される。
【0066】
燃焼室では、ヒュームの温度は一般に80℃未満であるため、火花を点火して、火花に反応する唯一の成分であるガス状水素を燃焼させることができる。
【0067】
したがって、化学的酸洗手段によって生成されたヒューム中に存在するガス状水素の測定値は、(水素を含まない試料ガスおよび基準ガス中の)導電率検出器によって放出された2つの熱伝導率信号の比較によって得られ、したがって、高い測定精度が得られる。
【0068】
好ましくは、化学的酸洗手段3は、順に配置された、酸性溶液を含有する2つ以上の化学的酸洗槽を備えている。ガス状水素検出手段12は、少なくとも最後の化学的酸洗槽15によって生成されたヒューム、好ましくは前記2つ以上の化学的酸洗槽の間の最後の槽15のみによって生成されたヒューム中のガス状水素の存在を検出するように位置決めすることができる。
【0069】
本発明のプラントの変形例では、ストリップの表面上の残留酸化物を検出するために、前記最後の化学的酸洗槽15の入口に配置された第1の光学検出手段13が設けられている。そのような第1の検出手段13は、例えば、ストリップのビデオ分析のための少なくとも1つのシステムを備え、システムは、場合により対応する照明システムと共に1つ以上のカメラを含むことができ、ストリップの表面上で酸化物残留物が見えている場合に、上述のソフトウェアによって最後の酸洗槽15の酸洗の動作パラメータを修正することを可能にし、驚くべき最適な方法で、酸洗不足による品質不良をさらに最小限に抑える。特に、オペレータエッジ、モータエッジおよび中心などのストリップ表面の3つの異なる領域を分析するために、1つ以上のカメラが設けられる。
【0070】
このビデオ分析システムは、例えば、ストリップの色または輝度を、処理ユニット10のメモリに予めロードされた、製品の異なる洗浄度を示すクロマティックスケールと比較することを可能にする。画素密度の高いデジタルカメラを使用することにより、例えば、ストリップの各平方メートルについて、酸洗領域に対する欠陥領域の比、欠陥領域の最小および最大サイズ、ならびにストリップ上のその位置(上面/下面、中央/縁部、ヘッド/テールまたはコイル本体、すなわち、ヘッドとテールとの間のストリップの部分)を規定することが可能である。
【0071】
任意選択的に、化学的酸洗手段3の下流に配置された第2の光学検出手段14を設けて、ストリップの少なくとも1つの表面の表面粗さおよび/または反射率および/または濃淡レベルおよび/または放射率などの特性を検出することができる。そのような第2の光学検出手段14は、例えば、表面の残留表面効果、過酸洗の兆候を検出するように適合された光学センサを備える。このフィードバックはまた、上流での酸洗の動作パラメータを修正することを可能にし、したがって品質偏差を最小限に抑える。
【0072】
例えば、そのようなセンサは、酸洗表面の放射率を測定する高温計であり、放射率は、表面が熱を吸収し、次いで赤外線範囲で放射することによってそのようなエネルギーを伝達する能力を表す。
【0073】
ストリップの金属表面上の酸の作用は、表面粗さを修正し、その結果放射率も修正し、放射率は、ストリップ表面の酸洗不足または過酸洗の起こり得る影響を規定する指標となる。
【0074】
同じく化学的酸洗手段3の下流に配置された第3の光学検出手段9もまた、ストリップ表面上の残留酸化物を検出するために設けることができる。このフィードバックはまた、上流での酸洗の動作パラメータを修正することを可能にし、したがって、起こり得る酸洗不足による品質偏差を最小限に抑える。第3の光学検出手段9は、第1の光学検出手段13と同様のビデオ分析システムを備えることができる。
【0075】
第2の光学検出手段14および第3の光学検出手段9が化学的酸洗手段3の下流に配置される順序は無関係である。
【0076】
好ましくは、酸洗されたストリップをすすぐためのすすぎ手段は、化学的酸洗手段3と、第2および/または第3の光学検出手段14、9との間に配置される。
【0077】
本発明のプラントのすべての実施形態では、以下を提供することができる:
-化学的酸洗手段3から来る排出された酸性溶液を再生し、再生された酸性溶液を得るための再生手段17、
-排出された酸性溶液を化学的酸洗手段3から再生手段17に輸送するための少なくとも1つのパイプ18、
-再生手段17に向けられた前記排出された酸性溶液の流量を測定するための、好ましくはパイプ18に沿って配置された第1の流量計4、
-排出された酸性溶液中の酸および鉄の濃度を分析するための、好ましくはパイプ18に沿って配置された第1の分析器6、
-再生された酸性溶液を再生手段17から化学的酸洗手段3に輸送するための少なくとも1つのパイプ19、
-化学的酸洗手段3に向けられた、再生された酸性溶液の流量を測定するための、好ましくはパイプ19に沿って配置された第2の流量計5、
-再生された酸性溶液中の酸および残留鉄の濃度を分析するための、好ましくはパイプ19に沿って配置された第2の分析器7。
【0078】
再生手段17は、例えば、酸化物の形態の鉄が、排出された酸性溶液から熱加水分解反応によって分離され、次いで酸洗のために濃縮されて戻される化学反応器を備える。反応器内で、排出された酸性溶液(鉄含有量が高い)は、溶液の気化を決定する酸化性雰囲気中で加熱され、一方では遊離酸が回収されるが、他方では鉄が酸化物として除去される。
【0079】
この設定により、排出された酸性溶液および再生された酸性溶液中の酸および鉄濃度分析器を使用して、酸化物層を完全に除去するために要求される化学反応のマスバランスを得ることが可能になり、これらの酸性溶液はそれぞれ化学酸洗手段3から、および化学酸洗手段3に連続的に移動される。実際、これらの分析装置は、いくつかの処理に基づく周知の統計モデルによって、コイルから巻き出されたストリップから除去される初期酸化物の量を知ることによって、既に除去されたスケールの量を計算することを可能にするので、酸洗制御のさらなる改良を可能にする。
【0080】
有利には、少なくとも測定手段11、場合によってはさらに測定手段11’、およびガス状水素検出手段12からの測定データを処理し、それに応じて化学的酸洗手段3の動作パラメータを調整するように構成された処理ユニット10が設けられる。
【0081】
好ましくは、処理ユニット10はまた、
-場合によっては最後の酸洗槽の酸洗の動作パラメータを調整するための第1の光学検出手段13、
-場合によっては化学的酸洗手段3の動作パラメータをさらに調整するための第2の光学検出手段14および/または第3の検出手段9
のうちの少なくとも1つからのストリップ洗浄レベルデータを処理するように構成することができる。再生手段17が設けられている場合、処理ユニット10は、第1の流量計4、第1の分析器6、第2の流量計5、および第2の分析器7からのデータを処理して、それに応じて化学的酸洗手段3の動作パラメータを調整することもできる。
【0082】
上述のプラントによって実行することができる本発明の金属ストリップ洗浄方法に関して、前記方法は、以下のステップを含む:
a)巻き出し手段1によって圧延ストリップの少なくとも1つのコイルを巻き出すステップ、
b)測定手段11、11’によって圧延ストリップの表面酸化物層の厚さを測定するステップ、
c)前記化学的酸洗手段3によって圧延ストリップを酸洗するステップ。
【0083】
ステップb)において、酸化物表面層の厚さは、酸化物組成の分析と共に、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)システムを画定するそれぞれの光ファイバ分光計に関連する少なくとも1つのレーザ源によって測定される。
【0084】
有利には、ステップc)の間に、前記ガス状水素検出手段12によって化学的酸洗手段3によって生成されたヒューム中、好ましくは最後の酸洗槽15、すなわち巻き出し手段1から遠位の酸洗槽によって生成されたヒューム中のガス状水素の検出が提供される。
【0085】
処理ユニット10による、測定手段11およびガス状水素検出手段12から来るデータの組み合わせ処理、および結果としての化学的酸洗手段3の動作パラメータの調整は、驚くべきことに、酸洗プロセスを最適化することを可能にする。
【0086】
図2は、本発明による洗浄方法の一部のフローチャートの一例を示す。
【0087】
有利には、処理ユニット10は、以下のような酸洗パラメータのうちの1つ以上を調整するように構成された酸洗調整モデル、またはより単純には酸洗モデル20を含む、好ましくは前記処理ユニット10にインストールされたソフトウェアを使用する:
-プロセス速度、すなわち、ストリップが酸洗槽を通って移動するストリップ送り速度、
-酸洗槽の酸性溶液中の酸、例えば塩酸の濃度、
-酸洗槽内の酸性溶液の温度、
-酸性溶液の乱流レベル。
【0088】
次いで、酸洗モデル20はプロセス設定を生成し、このプロセス設定を酸洗槽に入るストリップに適用する。
【0089】
酸洗モデル20は、好ましくは前記処理ユニット10に含まれる、酸化物層シミュレーションモデル21、またはより単純には酸化物層モデルもしくはスケールモデル21と相互作用する。
【0090】
酸化物層シミュレーションモデル21は、ストリップに沿って、特にストリップの延伸全体に沿って、酸化物表面層のシミュレーションデータを生成する。
【0091】
酸洗調整モデル20は、化学的酸洗手段3におけるストリップ送り速度および/または前記化学的酸洗手段3に存在する酸性溶液の乱流レベルを含む酸洗パラメータを調整し、好ましくは、前記酸洗パラメータは、酸性溶液中の酸濃度および/または前記酸性溶液の温度をさらに含む。
【0092】
シミュレーションデータは、酸洗調整モデル20に送られる。
【0093】
シミュレーションデータを生成するために、酸化物層シミュレーションモデル21は、コイルに巻き取られた状態のストリップに関する第1の入力データ22と、プラントの動作中に測定手段11、11’によって検出されたデータからなる第2の入力データ23との両方を取得する。
【0094】
第1の入力データ22は、少なくともストリップ厚さ、ストリップ幅、金属グレード、ストリップ巻き取り温度を含み、一方、第2の入力データ23は、酸化物表面層の厚さおよび酸化物組成、好ましくはさらに酸化物構成元素の濃度も含む。
【0095】
ストリップに沿った酸化物表面層のシミュレーションデータは、第1の入力データ22および第2の入力データ23を、異なる厚さ、幅、金属材料で、異なる巻き取り温度で巻き取られたストリップのセットに関するデータを含むデータベースと比較することによって得られる。
【0096】
より詳細には、スケールモデル21は、コイルに巻き取られたときのストリップの初期データなどの第1の入力データ22を取得し、第1の入力データは、
-ストリップ厚さ、
-ストリップ幅、
-鋼グレード、
-ストリップ巻き取り温度、
-可能な製造データ
を含む。
【0097】
スケールモデル21はまた、本発明のプラントの動作中に、測定手段11、11’によって検出されたデータ、すなわち酸化物表面層の厚さ、酸化物組成および酸化物構成元素の濃度、特に酸素の存在からなる第2の入力データ23を取得する。
【0098】
第1の入力データ22および第2の入力データ23の両方を使用して、スケールモデル21は、例えば、好ましくは異なる厚さ、幅、材料で、異なる巻き取り温度で巻き取られたストリップのセットに関連する保管された酸化物測定値を含み、データベースとの比較によって、ストリップの延伸全体にわたる存在する酸化物の量のシミュレーションを生成する。
【0099】
好ましくは、酸化物表面層シミュレーションデータは、以下のデータのうちの少なくとも1つを含む:
-厚さ(マイクロメートル)、
-除去されるべき酸化物の重量(グラム/m2)、
-平均酸化物組成の推定、
-ストリップの酸洗係数。
【0100】
公知のように、酸洗係数は係数Kdとして規定され、その値は1以下であるが0.5より大きい。この値は、ストリップ送り速度または酸洗速度を規定するための乗算係数として使用される。最大速度は、Kd=1に対して生じる。酸洗が困難なストリップの場合、Kd=0.5である。
【0101】
この情報は、好ましくは処理されるストリップのヘッド、中心およびテールに合わせてカスタマイズされた、上に列挙したものなどの酸洗パラメータを規定するために酸洗モデル20に送られる。次いで、酸洗モデル20は、プロセス設定を生成する。
【0102】
酸洗プロセスの制御を改善するために、少なくとも1つの制御ループが設けられる。各制御ループについて、酸洗モデル20によって提供される1つ以上の値は、プラントに沿って設置された対応する機器類によって測定または分析されたそれぞれの値と比較される。測定値と酸洗モデル20によって提供される値との差が閾値を超えない場合(エラー:いいえ)、モデル推定値は適切であると考えられ、フィードバックは生成されない。逆に、測定値と酸洗モデル20によって提供される値との差が閾値を超える場合(エラー:はい)、プロセス制御を改善するために値オフセットを生成するように酸洗モデル20に要求するフィードバックが生成される。
【0103】
図2のフローチャートは、本発明のプラントの例示的な変形例に関するものであり、測定手段11に加えて、
-関連する第1の流量計4、第1の分析器6、第2の流量計5、および第2の分析器7を有する再生手段17、
-ガス状水素検出手段12、
-第1の光学検出手段13、
-第2の光学検出手段14、
-第3の光学検出手段9
が設けられ、以下の制御ループが互いに重ねてカスケード接続されている:
-第1の流量計4、第1の分析器6、第2の流量計5、および第2の分析器7によってそれぞれ検出される、排出された酸性溶液流量、排出された酸性溶液中の酸および鉄濃度、再生された酸性溶液流量、ならびに再生された酸性溶液中の酸および残留鉄濃度の値を使用する、化学的酸洗反応のマスバランスを場合により調整するための第1の制御ループ、
-少なくとも最後の酸洗槽のヒューム中の可能性のあるガス状水素の存在によって示される過酸洗を場合により低減/排除するための第2の制御ループであって、前記存在がガス状水素検出手段12によって検出される、第2の制御ループ、
-最後の酸洗槽に入るストリップの表面上の残留酸化物の存在によって示される酸洗不足を場合により低減/排除するための第3の制御ループであって、前記存在は第1の光学検出手段13によって検出される、第3の制御ループ、
-最後の酸洗槽の出口におけるストリップの表面上の残留酸化物の存在によって示される酸洗不足を場合により低減/排除するための第4の制御ループであって、前記存在が第3の光学検出手段9によって検出される、第4の制御ループ、
-第2の光学検出手段14によって検出された、ストリップの少なくとも一方の表面の表面粗さおよび/または反射率および/または濃淡レベルおよび/または放射率の値を使用して、過酸洗を場合により低減/排除するための第5の制御ループ。
【0104】
前述の第2の制御ループは、ガス状水素検出手段12によって検出されたヒューム中のガス状水素値と、酸洗調整モデル20によって提供されるヒューム中のガス状水素値との差が所定の閾値を超える場合、フィードバックが生成され、フィードバックは、前記差が前記閾値を超えないように少なくとも1つの酸洗パラメータを調整することを酸洗調整モデル20に要求する。第1の制御ループ、第3の制御ループ、第4の制御ループ、および第5の制御ループは、個別にまたはすべて一緒に、任意選択であってもよい。
【国際調査報告】