IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デジマ・ファルマ・ベー・フェーの特許一覧

特表2024-513155認知症の治療のためのオビセトラピブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】認知症の治療のためのオビセトラピブ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
A61K31/506
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553588
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2022000098
(87)【国際公開番号】W WO2022185120
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,586
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517045129
【氏名又は名称】ニューアムステルダム・ファルマ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディトマーシュ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】カステレイン,ヨハンネス・ヤーコプ・ピーテル
(72)【発明者】
【氏名】デビッドソン,マイケル・ハービー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
(57)【要約】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法が提示される。この方法は、治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法であって、
治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
オビセトラピブ又はその塩が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オビセトラピブが1日1回投与される、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
用量が、オビセトラピブ又はその塩の5~25mgQD経口投与である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
用量が、5mgQD経口投与である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
用量が、10mgQD経口投与である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
用量が、15mgQD経口投与である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
用量が、20mgQD経口投与である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
用量が、25mgQD経口投与である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも8週間、1日に1回投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも6ヶ月間、1日に1回投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも12ヶ月間、1日に1回投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも24ヶ月間、1日に1回投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管性若しくは多発脳梗塞性認知症、又は前頭側頭型認知症(FTD)と診断されているか、又はそのリスクがある、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、ADと診断されているか、又はADを発症するリスクがある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象がADと診断されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、2つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象においてApoE4対立遺伝子を検出する前工程をさらに含む、請求項17~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が軽度認知障害(MCI)と診断されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)血漿中のAβ42のレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NfL)のレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)CSF中のAβ42のレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が治療前に、タウPETイメージングに基づいて、タウの異常パターンを有すると判定されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
オビセトラピブが錠剤として経口投与される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記錠剤が、カルシウム塩としてオビセトラピブを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる治療に使用するための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項29】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる治療のための薬剤の製造に使用するための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月5日出願の米国特許仮出願第63/157,586号明細書の利益及び優先権を主張するものであり、当該出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
神経変性疾患、特に認知障害や認知症を引き起こす神経変性疾患は、患者やその家族、社会にとって大きな負担となっている。アルツハイマー病及び他の認知症は、2017年に米国で255万年の障害調整生存年(DALY)を費やすと計算されている。「Burden of neurological disorders across the US from 1990-2017,」JAMA Neurol.78(2):165-176(2021)を参照されたい。負担は、母集団の年齢中央値が高くなるにつれて増加すると予想される。
【0003】
効果的な治療の必要性にもかかわらず、神経変性疾患、特に認知障害及び認知症をもたらす変性疾患の進行を遅らせることができる効果的な疾患修飾治療は実証されていない。さらに、認知障害を有する患者は、慢性的に投与されなければならない、及び/又は患者制御装置を使用して投与されなければならない治療のためのコンプライアンスの課題を呈する。非経口投与を必要とする治療は、さらなる障害が課される。したがって、神経変性疾患、特に認知障害及び認知症をもたらす変性疾患の進行を遅らせることができ、経口投与が可能な疾患修飾治療の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Burden of neurological disorders across the US from 1990-2017,」JAMA Neurol.78(2):165-176(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3.発明の概要
アポリポタンパク質E遺伝子のε4対立遺伝子(APOE4)は、遅発性アルツハイマー病(AD)のリスク因子であることが長期にわたって知られている。この遺伝子型がADリスクを増加させる機序は不明なままであるが、この会合の強さが、リポタンパク質代謝をADの病態の中心として位置付けている。
【0006】
オビセトラピブは、コレステロールエステラーゼ転送タンパク質(CETP)の強力な阻害剤であり、血漿中のHDLレベル及びApoEレベルを増加させることが以前に示されている。本発明者らはここで、オビセトラピブが血液脳関門を通過し、経口投与後に測定可能なCNS蓄積を伴うことを示した。ヒトCETPを発現するようにさらに操作されたアルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルを使用して、本発明者らは、オビセトラピブが認知試験での成績の悪化を低減させ、脳の可溶性画分中のAβ断片の濃度を低下させることを実証する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法が提供される。この方法は、治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、オビセトラピブ又はその塩は、経口投与される。さまざまな実施形態では、オビセトラピブは1日1回投与される。ある特定の実施形態では、用量は、オビセトラピブ又はその塩の5mg~25mgのQD経口投与、例えば、5mgのQD経口投与、10mgのQD経口投与、15mgのQD経口投与、20mgのQD経口投与、又は25mgのQD経口投与である。
【0009】
いくつかの実施形態では、オビセトラピブ又はその塩は、少なくとも8週間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間、1日1回投与される。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象は、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管性若しくは多発脳梗塞性認知症、又は前頭側頭型認知症(FTD)と診断されているか、又はそのリスクがある。特に、実施形態では、対象は、ADと診断されているか、又はADを発症するリスクがある。特定の実施形態では、対象はADと診断されている。ある特定の実施形態では、対象は、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子又は2つのApoE4対立遺伝子を有する。特定の実施形態では、本方法は、対象においてApoE4対立遺伝子を検出する予備工程を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、対象は軽度認知障害(MCI)と診断されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、対象は治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)血漿中のAβ42のレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NfL)のレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、対象は治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)CSF中のAβ42のレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象は治療前に、Tau PETイメージングに基づいて、Tauの異常パターンを有すると判定されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、治療開始直前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である。
【0016】
いくつかの実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である。
【0017】
典型的な実施形態では、オビセトラピブは錠剤として投与される。ある特定の実施形態では、錠剤は、カルシウム塩としてオビセトラピブを含む。
【0018】
4.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】トランスジェニックマウス実験のタイムラインの視覚的説明である。
図2A】CETPトランスジェニックマウス及びhCETP/APP(アミロイド前駆体タンパク質)二重トランスジェニックマウスがヒトCETPを産生したこと、並びにこれらのトランスジェニックマウスにおけるCETP活性に対する30mg/kgのオビセトラピブの腹腔内投与の効果を示す棒グラフである。データは、ビヒクル注射を受けたトランスジェニックマウスが、CETPを欠く野生型マウスと比較してCETP活性を提示することを示している。データはまた、CETP活性がオビセトラピブ治療群において阻害されたことを示している。
図2B】CETPトランスジェニックマウス及びhCETP/APP(アミロイド前駆体タンパク質)二重トランスジェニックマウスがヒトCETPを産生したこと、並びにこれらのトランスジェニックマウスにおけるCETP活性に対する30mg/kgのオビセトラピブの腹腔内投与の効果を示す棒グラフである。データは、ビヒクル注射を受けたトランスジェニックマウスが、CETPを欠く野生型マウスと比較してCETP活性を提示することを示している。データはまた、CETP活性がオビセトラピブ治療群において阻害されたことを示している。
図3A図3Aから図3Bは、巣作り認知パフォーマンス試験の結果を提供する。図3Aは、さまざまな条件下におけるマウスの巣作りに対する効果の視覚的表示である。
図3B図3Aから図3Bは、巣作り認知パフォーマンス試験の結果を提供する。図3Bは、図3Aで撮像された巣作り能力を5段階で定量化する棒グラフである。データは、コレステロール含有食餌を与えられたhCETP/APPトランスジェニックマウスが、ビヒクル(陰性対照)で処置された場合、この認知試験に対するパフォーマンスの低下を示し、オビセトラピブの投与がこの加齢性認知低下を低減させることを示す。
図4A】ELISAを使用して分析したTBS可溶性脳抽出物中に見出されるアミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを定量する棒グラフを示す。データは、オビセトラピブが、特にHCETP/APP二重トランスジェニック群においてAβ産生を減少させることを示している。APPトランスジェニックマウスもまた、Aβ産生の減少を示す。
図4B】ELISAを使用して分析したTBS可溶性脳抽出物中に見出されるアミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを定量する棒グラフを示す。データは、オビセトラピブが、特にHCETP/APP二重トランスジェニック群においてAβ産生を減少させることを示している。APPトランスジェニックマウスもまた、Aβ産生の減少を示す。
図4C】ELISAを使用して分析したTBS可溶性脳抽出物中に見出されるアミロイド-ベータ(Aβ)ペプチドを定量する棒グラフを示す。データは、オビセトラピブが、特にHCETP/APP二重トランスジェニック群においてAβ産生を減少させることを示している。APPトランスジェニックマウスもまた、Aβ産生の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
5.発明の詳細な説明
5.1.定義
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0021】
「対象」又は「個体」という用語は互換的に使用され、限定するものではないが、ヒト及び非ヒト霊長類;ラット及びマウスを含むげっ歯類;ウシ;ウマ;ヒツジ;ネコ;並びにイヌを含む治療される動物を指す。
【0022】
「患者」という用語は、ヒト対象を指す。
【0023】
「治療する」、「治療」という用語、及びそれらの文法的変形は、臨床技術において理解される最も広い意味で使用される。したがって、これらの用語は、疾患の治癒又は完全寛解を必要とせず、任意の臨床的に望ましい薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを包含する。
【0024】
「治療有効量」という語句は、疾患、状態又は障害を治療するために対象に投与された場合に、疾患、状態又は障害の治療に効果を現すために十分な化合物の量を指す。
【0025】
「薬学的に許容される塩」という用語は、対象への投与に許容される塩を指す。薬学的に許容される塩の例としては、限定するものではないが、鉱酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩及び硝酸塩;スルホン酸塩、例えば、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネート及びトリフルオロメタンスルホネート;有機酸塩、例えば、オキザレート、タータレート、シトレート、マレエート、スクシネート、アセテート、トリフルオロアセテート、ベンゾエート、マンデレート、アスコルベート、ラクテート、グルコネート及びマレート;アミノ酸塩、例えば、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタメート及びアスパルテート;無機塩、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩;並びに有機塩基との塩、例えば、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩及びシクロヘキシルアミン塩が挙げられる。本明細書で使用される「(1又は複数の)塩」という用語は、(1又は複数の)水和物塩を包含する。薬学的塩の他の例としては、適切なカチオンと配合された本開示の化合物のアニオンが挙げられる。
【0026】
5.2.他の解釈規則
範囲:本開示を通して、本発明のさまざまな態様は、範囲形式で提示される。範囲は、列挙された終点を含む。範囲形式での説明は単に便宜上及び簡潔にするためのものと理解するべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈するべきではない。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、及びその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、5.3及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0027】
本開示において、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含む(including)」及びそれらの言語変形は、米国特許法においてそれらに帰される意味を有し、明示的に列挙されたものを超える追加の構成要素の存在を許容する。
【0028】
特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は包括的であると理解される。
【0029】
特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という用語は単数又は複数であると理解される。すなわち、冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1)を指すために使用される。例として、「(an)要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0030】
特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内であると理解される。特に明記しない限り、「約」は記載された値の±10%を意図する。組成物中の成分又は材料の量に関してパーセンテージが提供される場合、そのパーセンテージは、特に明記されない限り、又は文脈から理解されない限り、重量に基づくパーセンテージであると理解されるべきである。
【0031】
特定の立体化学が明示的に示されていない限り、化合物のすべてのキラル、ジアステレオマー及びラセミ形態が意図される。したがって、本明細書に記載される化合物は、描写から明らかなように、ありとあらゆる不斉原子の濃縮又は分割された光学異性体を含む。R-エナンチオマーとS-エナンチオマーとのラセミ混合物、及びR-とS-エナンチオマーとを含むエナンチオリッチ立体異性体混合物、及び個々の光学異性体は、それらのエナンチオマーパートナー又はジアステレオマーパートナーを実質的に含まないように単離又は合成することができ、これらの立体異性体はすべて本技術の範囲内である。
【0032】
5.3.実験観察の概要
オビセトラピブは、以前はTA-8995として公知であり、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)の強力な阻害剤である。
【0033】
本発明者らはここで、オビセトラピブが血液脳関門を通過し、経口投与後に測定可能なCNS蓄積を伴うことを示した。ヒトCETPを発現するようにさらに操作されたアルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルを使用して、本発明者らは、オビセトラピブの投与が認知機能の喪失を予防し、脳の可溶性画分中のAβ断片の濃度を低下させることを実証する。
【0034】
5.4.治療の方法
したがって、第1の態様では、神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法が提供される。この方法は、治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0035】
5.4.1.オビセトラピブ
オビセトラピブは、以前はTA-8995として公知の、式(I)の化合物である:
【0036】
【化1】
(2R,4S){[3,5ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-[5(3-カルボキシプロポキシ)ピリミジン-2-イル]アミノ}-2-エチル-6-トリフルオロメチル-3,4-ジヒドロ-2H-キノリン-1-カルボン酸エチルエステル
【0037】
オビセトラピブの合成方法は公知である。例えば、米国特許第7,872,126号明細書、第8,084,611号明細書及び第10,112,904号明細書を参照されたく、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
5.4.2.神経変性疾患
いくつかの実施形態では、対象は、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管性若しくは多発脳梗塞性認知症、又は前頭側頭型認知症(FTD)と診断されているか、又はそのリスクがある。
【0039】
ある特定の実施形態では、対象は、ADと診断されているか、又はADを発症するリスクがある。
【0040】
ある特定の実施形態では、対象はADと診断されている。特定の実施形態では、対象は、NIA-AA Research Framework基準に基づいて、(i)ADと一致するCSFプロファイル(Aβ42濃度<1000pg/mLとp-tau>19pg/mL、及び/又は(ii)p-tau/Aβ42の比≧0.024)に基づくA又はAのバイオマーカー分類によりADと診断されている。特定の実施形態では、バイオマーカーは、Elecsysアッセイによって測定される。
【0041】
ある特定の実施形態では、対象は、実証されたアミロイド陽電子放出断層撮影(PET)スキャンの所見に基づいてADと診断されている。ある特定の実施形態では、対象はADの臨床段階3又は4と診断されている。特定の実施形態では、対象は、NIA-AA Research Framework基準:(i)ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが20以上、及び/又は臨床的認知症評価尺度の総合得点(Sum of Boxes)(CDR-SB)でグローバルスコアが0.5以上1以下、メモリボックススコアが1.0以下、に基づいてAD臨床段階3又は4を有する。
【0042】
ある特定の実施形態では、対象はADを発症するリスクがある。特定の実施形態では、対象は、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する。特定の実施形態では、対象は、2つのApoE4対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象においてApoE4対立遺伝子の存在を検出する予備工程をさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、対象は軽度認知障害(MCI)と診断されている。ある特定の実施形態では、MCIの診断は、簡易精神状態検査(Short Test of Mental Status)、モントリオール認知評価(MoCA)又はミニメンタルステート検査(MMSE)を使用して行われる。
【0044】
さまざまな実施形態では、対象は治療前に、神経変性疾患を有していない健康な対照集団と比較して、(i)血漿中のAβ42のレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている。
【0045】
さまざまな実施形態では、対象は治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)CSF中のAβ42のレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている。
【0046】
さまざまな実施形態では、対象は治療前に、Tau PETイメージングに基づいて、Tauの異常パターンを有すると判定されている。
【0047】
5.4.3.用量レジメン
さまざまな実施形態では、オビセトラピブ又はその塩は、経口投与される。典型的な実施形態では、オビセトラピブは経口投与用の錠剤として投与される。さまざまな実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、1日当たり経口により2.5~25mg(2.5~25mg、QD経口投与)である。いくつかの実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、1日当たり経口により5~20mg(5~20mg、QD経口投与)である。いくつかの実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、1日当たり経口により10~20mg(10~20mg、QD経口投与)である。特定の実施形態では、1日用量は、2.5mgのQD経口投与、5mgのQD経口投与、10mgのQD経口投与、15mgのQD経口投与、20mgのQD経口投与、又は25mgのQD経口投与である。さまざまな実施形態では、用量は1日1回投与される。いくつかの実施形態では、用量は分割され、2.5~25mgの1日総量、又は5~20mgの1日総量、又は10~20mgの1日総量が複数の分割用量として投与される。
【0048】
さまざまな実施形態では、オビセトラピブは錠剤として投与される。いくつかの実施形態では、錠剤は、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、15mg、20mg又は25mgのオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、錠剤は、カルシウム塩としてのオビセトラピブを含有する。特定の実施形態では、錠剤は、カルシウム塩としての5mgのオビセトラピブを含有する。
【0049】
特定の実施形態では、錠剤は、カルシウム塩としての5mgのオビセトラピブを含有する、直径6mmの円形の白色フィルムコーティング錠である。特定の実施形態では、錠剤は、カルシウム塩としての10mgのオビセトラピブを含有する、直径6mmの円形の白色フィルムコーティング錠である。特定の実施形態では、錠剤コア中に存在する賦形剤は、微結晶セルロース、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムである。特定の実施形態では、市販のフィルムコーティング製剤(Opadry IIホワイト、例えばColorcon)をコアに適用する。
【0050】
さまざまな実施形態では、オビセトラピブ又はその塩は、少なくとも8週間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、又は少なくとも36ヶ月間1日1回投与される。
【0051】
5.5.さらなる実施形態
5.5.1.用量レジメン
さまざまな実施形態では、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩は、治療の開始前のレベルと比較して、血中の総ApoE-HDLのレベルを上昇させるのに有効な量で投与される。典型的な実施形態では、ApoE-HDLの血中レベルが血漿において測定される。好ましい実施形態では、オビセトラピブ又はその塩は、ApoC3を欠く粒子中のApoE-HDLの血漿レベル及び/又はApoC3を欠くHDL粒子中の血漿HDL-ApoEのパーセンテージを増大させるために有効な量で投与される。
【0052】
5.5.2.臨床的エンドポイント
さまざまな実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、治療開始前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である。
【0053】
さまざまな実施形態では、オビセトラピブ又はその塩の用量は、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である。
【0054】
5.5.3.さらなる番号付けされた実施形態
1.神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法であって、
治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法。
【0055】
2.前記量が、血中の総ApoE HDLのレベルを上昇させるために有効である、実施形態1に記載の方法。
【0056】
3.前記量が、血中のApoE HDLのレベルを上昇させるために有効である、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
【0057】
4.前記量が、血中のApoC3を欠く粒子中のApoE HDLのレベルを上昇させるために有効である、実施形態3に記載の方法。
【0058】
5.オビセトラピブ又はその塩が経口投与される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
6.オビセトラピブが1日1回投与される、実施形態5に記載の方法。
【0060】
7.用量が、5~20mg QD経口投与のオビセトラピブ又はその塩である、実施形態6に記載の方法。
【0061】
8.用量が、5mg QD経口投与である、実施形態7に記載の方法。
【0062】
9.用量が、10mg QD経口投与である、実施形態7に記載の方法。
【0063】
10.用量が、15mg QD経口投与である、実施形態7に記載の方法。
【0064】
11.用量が、20mg QD経口投与である、実施形態7に記載の方法。
【0065】
12.オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも8週間、1日に1回投与される、実施形態7~11のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
13.オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも6ヶ月間、1日に1回投与される、実施形態12に記載の方法。
【0067】
14.オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも12ヶ月間、1日に1回投与される、実施形態13に記載の方法。
【0068】
15.オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも24ヶ月間、1日に1回投与される、実施形態14に記載の方法。
【0069】
16.対象が、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管性若しくは多発脳梗塞性認知症、又は前頭側頭型認知症(FTD)と診断されているか、又はそのリスクがある、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
17.対象が、ADと診断されているか、又はADを発症するリスクがある、実施形態16に記載の方法。
【0071】
18.対象がADと診断されている、実施形態17に記載の方法。
【0072】
19.対象が、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する、実施形態17又は実施形態18に記載の方法。
【0073】
20.対象が、2つのApoE4対立遺伝子を有する、実施形態19に記載の方法。
【0074】
21.対象においてApoE4対立遺伝子を検出する予備工程をさらに含む、実施形態19~20のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
22.対象が軽度認知障害(MCI)と診断されている、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
23.対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)血漿中のAβ42のレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
24.対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)CSF中のAβ42のレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
25.対象が治療前に、Tau PETイメージングに基づいて、Tauの異常パターンを有すると判定されている、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
26.オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
27.オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
28.オビセトラピブが錠剤として経口投与される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
9.錠剤が、カルシウム塩としてオビセトラピブを含む、実施形態28に記載の方法。
【0083】
30.錠剤が、1つ以上の賦形剤を含む、実施形態28又は29に記載の方法。
【0084】
31.前記1つ以上の賦形剤が、微結晶セルロース、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウム又はそれらの組み合わせである、実施形態30に記載の錠剤。
【実施例
【0085】
6.実施例
6.1.[実施例1]定性的全身分析により、オビセトラピブが血液脳関門を通過することが実証される
投与後のオビセトラピブ及び/又はその代謝産物の組織分布を決定するために、特に脳組織への分布を決定するために、放射標識[14C]-オビセトラピブ及び定量的全身技術の使用を用いた。
【0086】
マウスを19~25℃の温度、40~70%の間の相対湿度の部屋に維持し、毎日蛍光(公称12時間)に曝露した。マウス達には、西洋型食餌(カカオバター15%、トウモロコシ油1%及びスクロース40.5を含有する半合成改変食餌)への自由なアクセスが許可された。同数の雄マウス(n=5)及び雌マウス(n=5)に、5g/kgの[14C]-オビセトラピブを強制経口投与によって単回投与した。投与の1時間、4時間、24時間、72時間及び168時間後にマウスを人道的に屠殺し、その後、血液及び組織試料を回収した。
【0087】
血漿を基準点として使用して、データ(下記の表1~4を参照されたい)は、雌マウスにおいて、投与後1時間で、脳の組織における[14C]-オビセトラピブの濃度が血漿中の濃度の約4%であることを示している。4時間の時点で、その相対濃度は血漿中濃度の約16%まで有意に上昇する。具体的には、脳脈絡叢において、放射標識された製剤は、血漿濃度のほぼ50%の濃度で見出される。小脳において観察されたほぼ17%の相対濃度もまた注目に値する。雌マウスと比較して、雄の対応物は脳内で同様の全体濃度を示したが、小脳ではわずかに低い濃度を示した。これらのデータは、5g/kgの経口投与の4時間後に、脳内への有意なオビセトラピブ分布があることを示している。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
6.2.[実施例2]アルツハイマー病(AD)の予防のための、CETP阻害剤オビセトラピブの前臨床評価
6.2.1.試験の方法論
アルツハイマー病(AD)の発症及び/又は進行を遅らせるためのオビセトラピブの潜在的な有効性を評価するために、本発明者らは以下の前臨床マウス実験を行った。
【0093】
マウスはCETPを発現しない。したがって、この試験に使用されるマウス系統には、ヒト内因性プロモーターの制御下でヒトCETPを発現するCETPトランスジェニックマウス系統(B6.CBA-Tg(CETP)5203Tall/J、Jackson Labs)が含まれる。プロモーターは、食餌性コレステロール摂取に対して感受性であるので、これらのマウスは、1%(w/w)の高コレステロール食餌を与えられた場合、CETP発現の増加を示す。
【0094】
この試験では、APP tgマウス系統McGill-Thy1-APP-Cuello-Tgも使用する。McGill-Thy1-APPトランスジェニックラットは、マウスThy1.2プロモーターの制御下で、Swedish変異及びIndiana変異を有するヒトAPP751を発現する。これらのラットは、既存のAPPトランスジェニックラット系統の中で最も広範囲に研究されている。ホモ接合動物は、アミロイド斑の年齢依存性蓄積、グリオーシス、コリン作動性シナプス喪失、及び認知障害を示す。Petrasek et al.,Front.Aging Neurosci.,vol.10,Article 250(2018)を参照されたい。
【0095】
導入遺伝子を各系統についてヘテロ接合的に維持した。試験に入るマウスの作製のために、CETP tgの雌又は雄をそれぞれAPP tgの雄又は雌と交配した。子孫は、野生型、CETP tgのみ、APP tgのみ、及びhCETP/APP tg遺伝子型を含んでおり、試験に入ったすべてのマウスは同腹仔である(図1)。食物及び飲料水を、12時間の昼/夜の光サイクルで自由に提供した。
【0096】
マウスを飼育し、標準的な食餌で維持した。12週齢で、マウスに1%(w/w)コレステロール食餌(Research Diets)を与えてCETP発現を誘導し、並行して、腹腔内注射によってオビセトラピブ(用量30mg/kg)又はビヒクル対照のいずれかを投与した。オビセトラピブを、30% Kolliphor(#C5135 Millipore Sigma)と60%等張グルコース溶液との混合物に、溶液を加温し粉末を超音波水浴中で溶解するというサイクルの反復下で溶解した。試験は、マウスが24週齢に達したときに終了し、したがって、マウスのコレステロール食餌及び治療への総曝露は合計で12週に達した(図1)。次いで、マウスを屠殺し、さまざまな組織抽出物を収集した。
【0097】
【表5】
【0098】
薬物がその標的に到達したことを確認するために、腹腔内注射の4時間後及び24時間後にマウスから血液を採取した。その後、以下のようにして、Roar Biomedical Inc.の蛍光CETP活性アッセイ(製品番号RB-CETP)を使用してCETP活性を測定した:1:15希釈の1マイクロリットルのマウス血漿を、30μLの反応緩衝液中の0.3μLのドナー粒子及び0.3μLのアクセプター粒子と一緒にインキュベートした。37℃の水浴中で3時間のインキュベーション期間後に蛍光を測定した。結果は、オビセトラピブが投与後4時間及び24時間に、マウス血漿中のヒトCETPを効果的に阻害したことを示している(図2)。
【0099】
6.2.2.オビセトラピブはhCETP/APP二重トランスジェニックマウスにおける認知パフォーマンスの悪化を低減させる
巣作りは、エネルギーを保ち、隠れ、交尾するマウスの自然な行動である。認知的に無傷のマウスは、適格な巣を作る。この巣作り現象は、海馬破壊に対して感受性であることが示されている。巣作りできないことは、認知低下を示す。
【0100】
試験期間の最終週(23~24週)に、各マウスを2.0~2.5グラムの床敷材が入った清潔なケージに10~12時間入れ、食物及び水は自由に摂取させた。翌朝、巣の質を5段階で評価した。データは、ビヒクルに対する野生型マウス、オビセトラピブに対する野生型マウス、ビヒクルに対するCETPマウス、及びオビセトラピブに対するCETPマウスが、ほぼ等しい巣作り行動を示すことを示す。対照的に、ビヒクルに対するAPPマウス、オビセトラピブに対するAPPマウス、及びビヒクルに対するhCETP/APP二重トランスジェニックマウスは、巣を構築するそれらの能力の大きな破壊を示す。しかしながら、オビセトラピブを投与されたhCETP/APP二重トランスジェニックマウスは、巣を構築する能力を保持しており、オビセトラピブがhCETP/APP二重トランスジェニックマウスにおける認知低下を低減させることを示している(図3A図3B)。
【0101】
6.2.3.オビセトラピブは、Hcetp/APP二重トランスジェニックマウスの脳における可溶性アミロイド-β断片を減少させる。ELISAによる定量
本発明者らの認知分析実験の後、マウスを屠殺し、脳試料を収集した。Aβ負荷を脳抽出物から定量した。Aβ負荷を、V-PLEX Plus Aβペプチドパネル1(6E10)キット(Mesoscale discovery)を製造者の説明書に従って使用して、測定した。簡潔には、平均50mgの皮質組織を5倍容量の冷組織ホモジナイゼーションバッファー(2mMトリス、pH7.4、250mMスクロース、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル)で機械的にホモジナイズした。得られたホモジネートを卓上遠心分離機で5000xgにて4℃で10分間遠心分離した。得られた上清から合計180μlを採取し、180μlのDEAバッファー(0.4% DEA、0.1M NaCl)と混合した。混合物から、200μlを新しい管に移し、120000xgにて4℃で1時間遠心分離した。150μLの上清を16μlの0.5M Tris-HCl、pH6.8バッファーで中和し、可溶性DEA抽出物を得た。ペレットを、125μLの冷70%ギ酸(FA)中で30分間氷上で分離させた後、120000xgにて4℃で1時間遠心分離した。105μLの上清を1400μLの中和バッファー(1Mトリス塩基、0.5M NaHPO、0.05% NaN)で中和し、FA可溶性抽出物を得た。25μLの可溶性DEA抽出物及びFA抽出物をELISAに使用した。
【0102】
図4において、APP単一トランスジェニックマウス及びhCETP/APP二重トランスジェニックマウスは、野生型と比較してより高いAβ負荷を示した。データはさらに、オビセトラピブが両方のトランスジェニックマウスモデルにおいてAβ負荷を減少させ、hCETP/APP二重トランスジェニックマウスにおいてより高い減少が観察されることを実証している。
【0103】
6.3.[実施例3]高強度スタチン療法の補助としてのオビセトラピブの効果を確認するための、プラセボ対照二重盲検無作為化第2相用量設定試験(Dose-Finding Study)
6.3.1.試験デザインの概要
高強度スタチン療法の補助としてのオビセトラピブの有効性、安全性及び忍容性を確認するために、無作為化プラセボ対照二重盲検第2相用量設定試験(ROSE試験、NCT04753606)を行った。
【0104】
6.3.2.具体的な目標
この研究の主な目的は、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を減少させることにおける、高強度スタチン療法の補助としての、プラセボと比較した56日目のオビセトラピブの有効性を確認することであった。
【0105】
6.3.3.治療期間
スクリーニング来院の2週間後までに、参加者は現場に戻り(1日目(来院2))、無作為化されて治療を開始する前に試験適格性を確認した。およそ114人の適格参加者(治療群あたり38人の参加者)を、以下の治療群の1つに1:1:1の比で無作為化した:
・オビセトラピブ5mg(オビセトラピブ5mg錠1錠+プラセボ錠1錠);
・オビセトラピブ10mg(オビセトラピブ5mg錠2錠);又は
・プラセボ(プラセボ錠剤2錠)。
【0106】
8週間の治療期間中、割り当てられた治験薬を1日1回、1日目から56日目に参加者に経口投与した。参加者は、有効性、安全性及び薬物動態(PK)評価のために4週間ごとに現場に戻った。参加者、治験責任医師、臨床研究機関(CRO)及び治験依頼者は、治療割り当てへの盲検化を保護するために、データベースロックを通して最初の参加者について1日目(来院2)のすべての脂質結果を盲検化した。
【0107】
6.3.4.安全性追跡期間
参加者は、安全性及びPK評価のための治療期間の終了のおよそ4週間後に、安全性追跡調査来院(来院5)のために現場に戻った。
【0108】
6.3.5.薬物動態期間
参加者は、安全性及びPK評価のための治療期間の終了後、2回のPK来院(来院6及び7)のため、それぞれ約8週間及び15週間後に現場に戻った。
【0109】
6.3.6.組み入れ基準
以下の基準のすべてを満たす参加者が、試験に参加する資格があった:
1.試験手順の理解、試験予定表を遵守する意思、及びスクリーニング手順の前に書面によるインフォームドコンセントを与えることによる試験への参加の同意;
2.スクリーニング来院時に18歳以上75歳以下の男性又は女性;
・以下の基準の3つすべてが満たされた場合、女性を登録することができる:
i.女性が妊娠していなかった;
ii.女性が授乳していなかった;及び
iii.女性が試験中に妊娠を計画していた;
・妊娠可能な女性は、スクリーニング来院時に尿妊娠検査が陰性でなければならない。注:治験責任医師によって以下の基準のうちの1つを満たすと記録された場合、女性は妊娠可能であるとは見なされなかった:
i.女性が、ICFに署名する最低1サイクル前に、子宮摘出若しくは卵管結紮を行った;又は
ii.女性が閉経後であり、55歳以上の女性では最後の月経期間から1年以上、又は55歳未満の女性では最後の月経期間から1年以上であり、閉経後の範囲の卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルを有していた;並びに
・妊娠可能な女性は、スクリーニングから最後の来院の90日後まで妊娠を回避する効果的な方法を使用することに同意していなければならない。・パートナーが妊娠可能な男性は、スクリーニングから最後の来院の90日後まで妊娠を回避する効果的な方法を使用することに同意していなければならない。妊娠を回避する効果的な方法は、一貫して正しく使用されるパール指数1未満を有する避妊法(埋め込み型避妊具、避妊注射、経口避妊薬、経皮避妊剤、子宮内避妊具、殺精子剤を含むペッサリー、殺精子剤を含む男性若しくは女性のコンドーム、又は子宮頸管キャップを含む)、又は不妊の性的パートナーである。
3.スクリーニング来院時の空腹時LDL-Cレベル>70mg/dL及びTGレベル<400mg/dL;並びに
4.スクリーニング前に8週間安定した用量で高強度スタチン療法(アトルバスタチン40mg若しくは80mg/日、又はロスバスタチン20若しくは40mg/日)を現在投与されており、試験期間を通して同じ安定用量を維持することを意図している。
【0110】
6.3.7.除外基準
以下の基準のいずれかを満たす参加者を、試験への参加から除外した:
1.スクリーニング来院時の肥満度指数≧40kg/m2;
2.限定するものではないが、以下を含む現在の臨床的に重大なCV疾患:
a.無作為化前3ヶ月以内の主要有害CV事象;又は
b.ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)機能分類クラスIII又はIVの心不全;
3.スクリーニング来院時のグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)≧10%;
4.コントロール不良高血圧、すなわち、座位収縮期血圧>160mmHg及び/又は座位拡張期血圧>90mmHg。1回の再検査が許可され、その時点で、再検査結果がもはや排除的ではない場合、参加者は無作為化され得る;
活動性筋疾患又は持続的にクレアチンキナーゼ濃度が正常値の上限(ULN)の3倍を超える。結果を検証するために1週間後に1回の再試験を許可し、その時点で、再試験結果がもはや排除的ではない場合、参加者は無作為化され得る。
【0111】
慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の方程式を用いて計算した推定糸球体濾過率が60mL/分未満;
以下のいずれかの検査所見異常によって証明される肝機能障害:γ-グルタミルトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ>2×ULN、又は総ビリルビン>1.5×ULN;
貧血は、男性ではヘモグロビン濃度<11g/dL及び女性ではヘモグロビン濃度<9g/dLとして定義される;
スクリーニング前5年以内の悪性腫瘍の病歴(非メラノーマ皮膚がんを除く);
スクリーニング前5年以内のアルコール及び/又は薬物の乱用歴;
スクリーニング前の30日間又は5半減期のいずれか長い方の期間内の他の治験製品又はデバイスによる治療;
無作為化前10週間以内の任意のプロタンパク質転換酵素スブチリシンケキシン9型(PCSK9)阻害剤又は無作為化前2週間以内のベンペド酸(bempedoic acid)による治療;
治験責任医師の見解で試験への参加が妨げられた、任意の他の臨床的に重大な非心臓疾患若しくは状態のエビデンス;又は
公知のCETP阻害剤アレルギー又は不耐性。
【0112】
6.3.8.再試験
スクリーニング中の検査所見異常が治験責任医師によって一過性であると考えられた場合、臨床検査はスクリーニング中に1回繰り返すことができた。再試験のための治験責任医師の理論的根拠を文書化した。再検査結果がもはや排除的ではなかった場合、参加者は無作為化され得た。
【0113】
6.3.9.再スクリーニング
スクリーニングされ、試験適格基準を満たさなかった参加者は、治験依頼者及び/又はメディカルモニターの相談及び承認の際に再スクリーニングを検討された。再スクリーニングされた参加者には、新しい参加者番号が割り当てられた。再スクリーニングは、最後のスクリーニング来院の5日以上後に行った。
【0114】
6.3.10.離脱基準
この試験への参加は、以下の理由のいずれかのために中止されていることがある。
【0115】
1.参加者が、何らかの理由で試験の同意を取り下げたか、又は試験の中止を要求した;
2.参加者が実質的なリスクに曝されたか、及び/又は参加者がプロトコルの要件を遵守できなかった何らかの医学的状態又は状況の発生;
3.参加の継続が参加者にとって最良の利益ではなかったことを治験責任医師に示した、何らかのSAE、臨床的に重大なAE、重篤な検査所見異常、併発症、若しくはその他の病状;
4.妊娠;
5.併用禁止薬の要件;
6.参加者がプロトコル要件若しくは試験関連手順を遵守できなかった;又は
7.治験依頼者又は規制当局による試験の終了。
【0116】
参加者が同意を取り下げない限り、治験薬を早期に中止した参加者は、早期終了来院のために予定された評価の全パネルを速やかに完了させ、最後の投与の4週間後に安全性追跡調査来院を完了させるように促された。参加者が上記の基準又は任意の他の理由のために試験から時期尚早に離脱した場合、早期終了来院のために予定された評価の全パネルを完了させ、最後の投与の4週間後に安全性追跡調査来院を完了させるためにあらゆる努力をしなければならなかった。同意を取り下げることなく治験薬を早期に中止した参加者又は試験途中で離脱した参加者については、PK試料を安全性追跡調査来院中に収集しなかった。参加者の離脱の理由は、電子症例報告書(eCRF)に記録された。
【0117】
追跡調査から参加者を見失った場合、参加者に連絡を取るための試みを行い、参加者の医療記録に記録する必要があった。離脱した参加者は入れ替えなかった。
【0118】
6.3.11.試験治療
6.3.11.1 治療群
参加者を以下の治療群の1つに1:1:1の比で無作為化した:
1.オビセトラピブ5mg(オビセトラピブ5mg錠1錠+プラセボ錠1錠);
2.オビセトラピブ10mg(オビセトラピブ5mg錠2錠);又は
3.プラセボ(プラセボ錠剤2錠)。
【0119】
6.3.11.2 投与の理論的根拠
健康なボランティア及び患者におけるオビセトラピブの以前の臨床試験では、5mgのオビセトラピブ用量レベルでほぼ最大の効果が観察され、HDL-Cレベルの上昇及びLDL-Cレベルの低下が観察された。ベースラインからのLp(a)レベルの統計学的に有意な減少も、10mgのオビセトラピブ用量レベルで観察された。したがって、本試験は、現在高強度スタチン療法を受けている参加者において5及び10mgの用量のオビセトラピブを利用した。
【0120】
6.3.11.3 無作為化及び盲検化
すべての適格基準を満たした参加者を本試験に無作為化した。参加者は、(i)5mgのオビセトラピブ、(ii)10mgのオビセトラピブ、又は(iii)プラセボ治療群に1:1:1の比で無作為化された。無作為化において、参加者を、スクリーニング来院(来院1)のLDL-Cレベル(≧100又は<100mg/dL)に従って階層化した。自動双方向応答技術(IRT)システムを使用して、参加者を3つの治療群のうちの1つに割り当てた。
【0121】
参加者、治験責任医師、CRO及び治験依頼者は、治療割り当てへの盲検化を保護するために、データベースロックを通して最初の参加者について1日目(来院2)のすべての脂質結果を盲検化した。
【0122】
6.3.12.薬物供給
6.3.12.1 製剤及び包装
治験薬は、5mgのオビセトラピブ錠剤及び対応するプラセボ錠剤からなっていた。すべての治験薬は、現在の医薬品製造管理基準(Good Manufacturing Practice)に従って製造される。
【0123】
オビセトラピブ錠剤は、5mgのオビセトラピブ原体を含有する、識別マークのない直径6mmの円形の白色フィルムコーティング錠である。一致するプラセボ錠剤も提供した。錠剤コア中に存在する賦形剤は、微結晶セルロース、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムである。市販のフィルムコーティング製剤(Opadry IIホワイト、例えばColorcon)をコアに適用する。
【0124】
オビセトラピブ及びプラセボ錠剤をフォイルブリスターに包装し、ブリスターカードに組み立て、各治療群に治験薬を提供した。ブリスターカードは、毎日どのブリスターを使用するかを示すために明確にラベル付けされた。錠剤を25℃(華氏77度)未満の周囲条件で保存した。
【0125】
オビセトラピブ錠剤の物理的、化学的及び薬学的製剤特性及び特徴は、治験薬概要書(Investigator’s Brochure)に記載されていた。
【0126】
すべての治験薬は、すべての適用可能な現地の規制要件に従ってラベル付けされた。
【0127】
6.3.12.2 治験薬の調製及び交付
この試験で使用した治験薬は以下の通りである:
1. 5mgのオビセトラピブ錠剤;及び
2. 一致するプラセボ錠剤
【0128】
上に列挙した治験薬は、5又は10mgのオビセトラピブ又はプラセボのみの用量を提供するように包装した。参加者は、1日目から56日目にのみ、オビセトラピブ又はプラセボの2つの用量のうちの1つを投与されるように無作為化された。
【0129】
各適切な来院(来院2及び3)で、参加者は、参加者の治療群に適切な治験薬を含むブリスターカードを4枚受け取った。各ブリスターカードは、1週間の投薬に十分な供給を提供し、参加者が次の来院を延期する必要がある場合には追加の日の投薬に十分な供給を提供した。参加者は、ブリスターカードから2単位を毎日取るように指示された。ブリスターカードは、毎日どのブリスターを使用するかを示すために明確にラベル付けされた。参加者は、次の来院時にすべての未使用の治験薬を現場に持って来るように指示された。
【0130】
6.3.13.治験薬の投与
2錠の治験薬を、参加者が1日1回、1日目から56日目に経口的に自己投与した。治験薬は、食物と共に、毎朝ほぼ同じ時間に投与された。来院が予定されている日には、すべての絶食時血液試料採取後に、治験薬が食物と共に投与された。参加者が所定の日に治験薬を服用することを忘れた場合、次の用量を正常に服用することになっており、忘れた用量を補うために2倍用量を服用すべきではない。
【0131】
6.3.14.治療のコンプライアンス
治験薬レジメンへのコンプライアンスは、未使用の錠剤を数えることによって評価する。参加者は、次の来院3及び4の際にすべての未使用の治験薬を現場に持って来るように指示された。治療期間中に、コンプライアンスが80%以上120%以下でなかった場合、参加者はレジメンに対するコンプライアンスの重要性について助言を受けた。2回連続した来院で限界を超えた場合、治験責任医師及び治験依頼者は、参加者を試験から離脱させるべきかどうかを決定した。
【0132】
6.3.15.保管及び管理
すべての治験薬は安全な領域で、25℃度(華氏77度)未満で保管し、アクセスは治験責任医師及び認可された現場職員に限定された。
【0133】
規制要件に従って、治験責任医師又は指定された現場職員は、参加者に交付及び/又は投与された治験薬の量、参加者が返却した量、並びに該当する場合は治験依頼者(又は代表者)から受け取った量及び返却した量を記録した。治験薬の管理の記録は、試験のクールを通して維持された。この研究の管理単位は錠剤であった。不一致は一致させるか、又は解決されなければならなかった。未使用の治験薬の最終処分の手順は、適切な試験マニュアルに提供した。
【0134】
6.3.16.事前薬及び併用薬及び/又は手順
6.3.16.1 除外される薬剤及び/又は手順
参加者は、スクリーニング前の30日間又は5半減期のいずれか長い方の期間内に、他の治験製品又はデバイスによる治療を受けなかった。
【0135】
参加者は、無作為化前10週間以内の任意のPCSK9阻害剤又は無作為化前2週間以内のベンペド酸(bempedoic acid)の服用を控えた。
【0136】
6.3.16.2 許容される薬剤及び/又は手順
参加者は、スクリーニング前に8週間安定した用量で高強度スタチン療法(アトルバスタチン40若しくは80mg/日、又はロスバスタチン20若しくは40mg/日)を現在投与されており、試験期間を通して同じ安定用量を維持することを意図している。
【0137】
6.3.16.3 事前薬及び併用薬使用の文書化
スクリーニング来院前28日以内に使用された薬剤を記録した。治験薬に加えて投与されたいずれの薬剤も、プロトコルに従って許容されるか否かにかかわらず、併用薬eCRFに記録されなければならなかった。
【0138】
6.3.17.試験手順
試験手順は、手順の予定表に従う。
【0139】
【表6】
【0140】
COVID-19=コロナウイルス疾患2019;ECG=心電図;FSH=卵胞刺激ホルモン;HbA1c=グリコシル化ヘモグロビン;IRT=双方向応答技術;LDL-C=低密度リポタンパク質コレステロール;PK=薬物動態;TG=トリグリセリド。
【0141】
6.3.18.臨床検査値の評価
化学及び血液学のための血液を、手順の予定表に示されるように得て、分析のために中央検査室に送った。特に、以下の脂質プロファイルデータを収集した:
アポリポタンパク質B
アポリポタンパク質E(ApoE)
高密度リポタンパク質-ApoE [1]
高密度リポタンパク質コレステロール
低密度リポタンパク質コレステロール [2]
非高密度リポタンパク質コレステロール
トリグリセリド
超低密度リポタンパク質コレステロール
【0142】
[注1]アポリポタンパク質C3あり及びなし。
【0143】
[注2]トリグリセリド≧400mg/dL又は低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)≦50mg/dLでない限り、Friedewald式を用いて算出;両方の場合において、LDL-Cレベルを、β定量法とも呼ばれる分取超遠心分離によって直接測定した。(出典:LDL calculated.MDCalc.https://www.mdcalc.com/ldl-calculated.2020年11月9日にアクセス)さらに、全患者について、ベースライン(来院2)及び8週間の治療期間の終わり(来院4)に、β定量法とも呼ばれる分取超遠心分離によってLDL-Cを測定した。
【0144】
化学及び血液学のための血液試料をファスティング条件下(すなわち、参加者が約10時間絶食した後)で得た。この試験の目的のために、ファスティングは、水及び任意の必須の薬剤以外何も口にしないことと定義された。参加者がファスティングをしていなかった場合、治験責任医師は可能な限り早く来院の予定を変更しなければならなかった。推定糸球体濾過率は、慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の方程式を用いて計算した。スクリーニング来院時のみ、化学パネルにはHbA1cが含まれる。
【0145】
尿妊娠検査を、試験への参加前のスクリーニング来院、最後のPK来院(来院7)及び早期終了来院時に、妊娠可能な女性に対して行った。
【0146】
最後の月経期間から1年以上経過している55歳未満の女性に、試験への参加前のスクリーニング来院時にFSH試験を実施した。
【0147】
PK評価のための血液試料を、手順の予定表に示されるように収集した。1日目に、PK試料を投与前に収集する。その後の投与後PK試料を、各来院時にほぼ同じ時間に1回収集した。
【0148】
6.3.19.体重及び身長
体重及び身長をスクリーニング来院時に測定し、肥満度指数を計算するために使用した。体重の測定は、参加者が室内着を着て、靴を脱ぎ、排尿して行った。
【0149】
6.3.20.人口統計
参加者の人口統計データ(例えば、性別、人種、民族性及び生年月日)を、スクリーニング来院時に収集した。
【0150】
6.3.21.心電図
スクリーニング来院時に、治験責任医師又は訓練を受けた現場職員によってシングルの標準12誘導ECGを実施し、現地で読み取った。
【0151】
6.3.22.身体検査
身体検査を、上記の手順の予定表に示すように行った。
【0152】
6.3.23.有効性評価
主要有効性エンドポイントは、プラセボ群と比較した、各オビセトラピブ群に対するLDL-Cの1日目から56日目までの変化率である。
【0153】
脂質プロファイルのための血液試料をファスティング条件下(すなわち、参加者が約10時間絶食した後)で得た。この試験の目的のために、ファスティングは、水及び任意の必須の薬剤以外何も口にしないことと定義された。参加者がファスティングしていなかった場合、治験責任医師は可能な限り早く来院の予定を変更した。TG≧400mg/dL又はLDL-C≦50mg/dLでない限り、LDL-Cレベルを、Friedewald式を用いて算出した;両方の場合において、LDL-Cレベルを、β定量法とも呼ばれる分取超遠心分離によって直接測定した。さらに、全患者について、ベースライン(来院2)及び8週間の治療期間の終わり(来院4)に、β定量法とも呼ばれる分取超遠心分離によってLDL-Cを測定した。
【0154】
6.3.24.結果
近年、大規模な前向きコホート研究により、高齢者では、高い総血漿apoEレベル及びHDL中の高いapoEレベルが、認知症又はアルツハイマー病のリスクの低下とは関連しないことが実証された。しかしながら、同じ研究において、ApoC3を欠くHDLにおけるapoEレベルが、より良好な認知機能及びより低い認知症リスクと関連することが実証された。Koch et al.,“Association of apolipoprotein E in lipoprotein subspecies with risk of dementia,” JAMA Network Open 3(7):e209250(2020)。
【0155】
強力なCETP阻害剤であるオビセトラピブは、総血漿apoEレベルを増加させることが以前に報告されている。Hovingh et al.,“Cholesterol ester transfer protein inhibition by TA-8995 in patients with mild dyslipidaemia(TULIP):a randomized,double-blind,placebo-controlled phase 2 trial,” Lancet 386:452-60(2015)及びvan Cappelleveen et al.,“Effects of the cholesteryl ester transfer protein inhibitor,TA-8995,on cholesterol efflux capacity and high-density lipoprotein particle subclasses,” J.Clin.Lipidology 10:1137-1144(2016)。HDL-apoEに対するオビセトラピブの効果、並びにApoC3を含む場合及び含まない場合のHDLにおけるapoEレベルは、報告されていない。
【0156】
上記のように、ROSE試験は、高強度スタチン治療にもかかわらず70mg/dLを超える空腹時LDL-コレステロール(LDL-C)レベルを有する患者における、高強度スタチン治療の補助としてのオビセトラピブの効果を試験する第2相プラセボ対照二重盲検無作為化の治験であった。結果は、5mg及び10mg/日のオビセトラピブによる8週間の治療の後、総血漿HDL-ApoEレベルが有意に上昇したことを示す(表6)
【0157】
【表7】
【0158】
ApoC3を欠く血漿HDL粒子におけるApoEが増大し、ApoC3を欠く粒子におけるHDL-ApoEのパーセンテージが増大する。ApoC3を欠くApoE-HDLの増大、及び、ApoC3を欠く粒子におけるHDL-ApoEのパーセンテージの増大は、オビセトラピブが、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病などを有する患者、又はそのリスクがある患者において、特に、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する対象において、神経変性疾患の進行を遅らせるために効果的であると思われることを実証している。
【0159】
6.4.[実施例4]早期アルツハイマー病の参加者(ヘテロ/ホモ接合体E4キャリア)におけるオビセトラピブの有効性及び安全性を確認するための初期第2相(Phase 2a)非盲検多施設共同試験
6.4.1.試験デザイン及び期間
この試験は、オビセトラピブ療法の有効性、安全性及び忍容性を確認するための、初期ADを有する参加者における多施設共同、概念実証、初期第2相試験である。個々の参加者の試験期間は約24週間である(スクリーニング及び追跡調査を除く)。
【0160】
6.4.2.目標
この試験の1つの目的は、脳脊髄液(CSF)におけるApoA-I、ApoEのレベル及びコレステロール排出能に対する、早期のアルツハイマー病(AD)を有する参加者におけるオビセトラピブの効果を確認することである。別の目的は、早期ADを有する参加者におけるオビセトラピブの安全性及び忍容性を確認することである。さらなる目的は、以下を確認することである:
・早期ADを有する参加者における、リポタンパク質プロファイル(薬力学[PD])に対するオビセトラピブの効果を確認すること。
・早期ADを有する参加者における、神経変性及び炎症に関与するバイオマーカーに対するオビセトラピブの効果を確認すること。
・早期ADを有する参加者における、他のPD探索的バイオマーカーに対するオビセトラピブの効果を確認すること。
・早期ADを有する参加者における、疾患進行の遅延における標準治療と比較したオビセトラピブの有効性を確認すること。
・早期ADを有する参加者における、認知に関するオビセトラピブの有効性を確認すること。
【0161】
6.4.3.組み入れ基準
以下の基準のすべてを満たす参加者が、試験に参加する資格がある:
1.年齢範囲:スクリーニング来院時の年齢が50~75歳
2.男性、又は閉経後であるか、そうでなければ妊娠可能性のない女性
3.NIA-AA Research Framework基準に基づくADの診断:
a.以下に基づいてバイオマーカー分類A+T+N+又はA+T+N-:
i.CSFプロファイルが、治験薬の最初の投与の日の前のスクリーニング期間中に取得されたAD(Aβ42濃度<1000pg/mL及びp-tau>19pg/mL、又はp-tau/Aβ42の比≧0.024(Elecsysアッセイ))と一致する、又は
ii.CSFプロファイルの文書化されたエビデンスが、過去12ヶ月以内に得られたADと一致する、又は
iii.過去12ヶ月以内に取得された文書化されたアミロイド陽電子放射断層撮影(PET)スキャンのエビデンス
4.NIA-AA Research Framework基準に基づいてAD臨床段階3又は4
a.スクリーニング及びベースラインで20以上のミニメンタルステート検査(MMSE)スコアを有する
b.臨床的認知症評価尺度の総合得点(Sum of Boxes)(CDR-SB)のグローバルスコアが0.5以上1以下、メモリボックススコアが1.0以上
5.現地の言語を流暢に話す、読み取る、及び書くことができる
6.E4/E4又はE3/E4のAPOE遺伝子型を有する
7.患者は以下のいずれかでなければならない:
a.病気の経過に基づいて、治療の必要性が差し迫っておらず、及び患者が試験の期間中に治療を開始すべきではないという合理的な予想の下で、ADについて承認された任意の治療で処置されていない、又は
b.ベースラインの前の少なくとも3ヶ月間、ADの治療のための承認された(1又は複数の)薬剤で安定化されている。AD治療の用量は、試験に入った後も同じままであるべきである。
8.患者及びケアパートナーが、すべての試験手順に同意する意思がある
【0162】
6.4.4.除外基準
以下の基準のいずれかを満たす参加者を、試験への参加から除外する:
【0163】
1.AD以外の、認知を損なう可能性がある神経学的又は医学的障害、例えば、頭部外傷、発作性障害、神経変性疾患、水頭症、脳/脊髄血腫、炎症性疾患、中枢神経系感染症(例えば、脳炎又は髄膜炎)、新生物、毒性曝露、代謝障害(低酸素又は低血糖エピソードを含む)、若しくは内分泌障害、又は治験責任医師の見解で試験への参加を禁止する任意の重大な医学的状態。
【0164】
2.現地の主席治験責任医師(PI)又は放射線科医によって判断された、磁気共鳴画像法(MRI)を受ける任意の禁忌の徴候。
【0165】
3.重大な異常を示す脳のMRI、例えば、限定するものではないが、1cmを超える以前の出血又は梗塞、3を超えるラクナ梗塞、ファゼカススコア3に対応する深部白質病変、脳挫傷、脳軟化症、動脈瘤、血管奇形、硬膜下血腫、水頭症、占拠性病変(例えば、膿瘍又は髄膜腫などの脳腫瘍)。小さな偶発的な髄膜腫は、メディカルモニターによって議論され承認された場合には許容され得る。
【0166】
4.以下の神経学的、精神医学的又は医学的状態のいずれかの病歴:
a.大血管脳卒中の病歴
b.過去12ヶ月以内の心筋梗塞又は不安定狭心症の病歴
c.又はアテローム硬化性血管疾患の他の臨床症状
d.1型糖尿病及びコントロール不良2型糖尿病(ヘモグロビンA1c[HbA1c]>8%)
e.3回の別々の測定で全身血圧>150/90mmHg
f.高アルドステロン症の病歴
g.重大な腎機能障害又は肝機能障害
h.現在又は過去のB型肝炎感染(B型肝炎表面抗原(HbSAg)及び/又はB型肝炎コア抗体(抗HBc)に対する検査陽性として定義される)。B型肝炎に対する免疫を有する被験者(陰性HBsAg、陽性B型肝炎抗体[抗HBs]及び陽性抗HBcとして定義される自然感染に起因する場合;陰性HBsAg、陰性HVc及び陽性抗HBsとして定義されるワクチン接種による場合)は、試験に参加する資格がある。
i.C型肝炎ウイルス抗体(抗HCV)のスクリーニングにおいて病歴又は検査陽性
j.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のスクリーニングにおいて病歴又は検査陽性
k.乳房若しくは子宮頸部の癌腫又は完全に切除された皮膚の基底細胞癌以外の、転移能を有するがんであるとの過去5年以内の診断
l.過去90日間以内の薬物治療又は入院の開始を必要とする大うつ病エピソード
m.幻覚又は妄想の存在
n.スクリーニングの12週間以内の手術
o.女性被験者の場合、妊娠又は授乳中。
【0167】
5.スクリーニング時の以下のいずれかの検査異常
a.臨床的に重大な(心臓専門医又は現地PIによって決定される)12誘導ECG異常
b.2週間未満の間隔での2回の連続した測定で、いずれかの血清化学値(例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、アルカリホスファターゼ、クレアチンキナーゼ[CK]、総ビリルビンなど)が正常値の上限(ULN)の2倍を超える
c.ULNを超える血清クレアチニン、又は推定糸球体濾過率(eGFR)が60mL/分未満
d.血小板数、国際標準化比(INR)、プロトロンビン時間(PT)若しくは部分トロンボプラスチン時間(PTT)が正常範囲内でないこと、又は出血の増加若しくはコントロール不良に関する他のリスク
e.APOE4対立遺伝子(例えばE3/E3;E3/E2;E2/E2)を保有していない。
【0168】
6.現地PIによって判断される腰椎穿刺に対する禁忌の存在。
【0169】
7.治験責任医師の見解で、MRIスキャン又は腰椎穿刺手順に耐えることができないことを含む、試験への参加を禁止する任意の他の重大な医学的状態。
【0170】
8.以下の薬剤のいずれかの摂取
a.ピマバンセリンを含む抗精神病薬
b.覚醒剤
c.用量が少なくとも90日間安定していない抗うつ薬
d.慢性コルチコステロイドを含む免疫抑制薬
e.注射又は注入された抗体療法、例えば、限定するものではないが、腫瘍壊死因子(TNF)に対する抗体、抗インターロイキン(IL)-6、ナタリズマブ、リツキシマブ及び類似の薬剤
f.インスリン
g.抗凝固薬又は抗血小板薬、例えば、ワルファリン、ヘパリン類似物質及び直接凝固因子阻害剤(例えばアピキサバン、ダギバトラン、リバーロキサバン)
100mg/日未満の用量のアスピリン又は75mg/日の用量のクロピドグレルのいずれかであるが、両方を組み合わせることは許可されない
【0171】
9.最初のスクリーニング来院前30日(又は下記のような薬剤の5半減期)以内の、任意の他の介入治験(interventional clinical trial)への参加又は任意の治験薬による治療若しくは承認された療法の治験使用への参加
【0172】
10.カンナビジオール(CBD)を含有する非処方箋製品を含む、大麻又は大麻製品の定期的な使用
【0173】
11.過去5年以内の薬物(大麻を含む)又はアルコールの乱用歴
【0174】
6.4.5.再試験
スクリーニング中の検査所見異常が治験責任医師によって一過性であると考えられる場合、臨床検査はスクリーニング中に1回繰り返すことができる。再試験のための治験責任医師の理論的根拠は文書化されなければならない。再検査結果がもはや除外的ではなかった場合、参加者を登録することができる。
【0175】
6.4.6.再スクリーニング
スクリーニングに不合格であった参加者は、メディカルモニターに相談した後、1回再スクリーニングすることが許可される。再スクリーニングは、以前の試験来院から少なくとも5日が経過した後に予定することができる。
【0176】
6.4.7.離脱基準
この臨床試験への参加は、以下の理由のいずれかのために中止されることがある:
1.参加者が、何らかの理由で試験への同意を取り下げるか、又は試験の中止を要求する;
2.参加者が実質的なリスクに曝されるか、及び/又は参加者がプロトコルの要件を遵守できない何らかの医学的状態又は状況の発生;
3.参加の継続が参加者にとって最良の利益ではないことを治験責任医師に示す、何らかのSAE、臨床的に重大な有害事象(AE)、重篤な検査所見異常、併発症、又はその他の病状;
4.妊娠;
5.併用禁止薬の要件;
6.プロトコル要件又は試験関連手順の遵守への参加者の失敗;又は
7.治験依頼者又は規制当局による試験の終了。
【0177】
参加者が上記の基準又は任意の他の理由のために試験から時期尚早に離脱する場合、試験スタッフは、早期終了来院のために予定された評価の全パネルを完了させるためにあらゆる努力をしなければならなかった。参加者の離脱の理由は、電子症例報告書(eCRF)に記録されなければならない。
【0178】
追跡調査から参加者を見失なった場合、参加者に連絡を取るための試みを少なくともと3回の行い、参加者の医療記録に記録しなければならない。離脱した参加者を入れ替えることはしない。
【0179】
6.4.8.試験治療
参加者は、オビセトラピブ10mg/日で治療される。
【0180】
6.4.8.1 投与の理論的根拠
健康な被験者及び患者におけるオビセトラピブの以前の複数回用量臨床試験では、5mgのオビセトラピブ用量でほぼ最大の効果が観察された。この用量レベルでは、CETPの活性及び濃度が効果的に低下し、HDL-Cレベルが上昇した一方で、LDL-Cレベルは低下した。
【0181】
6.4.8.2 無作為化及び盲検化
すべての適格基準を満たした参加者を本試験に登録する。すべての参加者が、オビセトラピブ10mg/日で治療される。このような非盲検試験は、盲検性の解除には該当しない。
【0182】
6.4.8.3 薬物供給
6.4.8.3.1 製剤及び包装
治験薬は5mgのオビセトラピブ錠剤からなる。すべての製品は、現在の欧州連合医薬品製造管理基準(Good Manufacturing Practice)に従って製造される。
【0183】
オビセトラピブ錠剤は、5mgのオビセトラピブカルシウム原体を含有する、識別マークのない円形の白色フィルムコーティング錠である。錠剤コア中に存在する賦形剤は、微結晶セルロース、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムである。市販のフィルムコーティング製剤(Opadry IIホワイト、例えばColorcon)をコアに適用する。
【0184】
オビセトラピブ錠剤は、フォイルブリスターに包装され、ブリスターカードに組み立てられる。ブリスターカードは、毎日どのブリスターを使用するかを示すために明確にラベル付けされる。ブリスターカードはキットに組み立てられ、各キットは必要な投与のための十分な供給を提供する。貯蔵寿命は、個々の製品の安定性に基づいて割り当てられる。キットは25℃未満で保管すべきである。
【0185】
オビセトラピブ錠剤の物理的、化学的及び薬学的製剤特性及び特徴は、治験薬概要書に記載されている。
【0186】
すべての治験薬は、すべての適用可能な現地の規制要件に従ってラベル付けされる。
【0187】
6.4.8.3.2 治験薬の調製及び交付
この試験で使用した治験薬は5mgオビセトラピブ錠剤である。
【0188】
それぞれの適切な来院時に、参加者は、参加者の治療群に適切な治験薬を含むブリスターカードを含有するキットを受け取った。参加者は、キット中のブリスターカードから2錠を毎日取るように指示された。ブリスターカードは、毎日どのブリスターを使用するかを示すために明確にラベル付けされる。各キットは、1ヶ月の投与に十分な供給量を提供する。参加者は、次の来院時にすべての未使用の治験薬を返却するように指示される。
【0189】
6.4.8.3.3 治験薬の投与
治験薬は、1日目から126日目に、参加者によって経口的に1日1回投与される。治験薬は、食物と共に、毎朝ほぼ同じ時間に投与されなければならない。来院が予定されている日には、治験薬は、すべての絶食時血液試料採取後に、食物と共に投与されるべきである。参加者が所定の日に治験薬を服用することを忘れた場合、次の用量を正常に服用すべきであり、忘れた用量を補うために2倍用量を服用すべきではない。
【0190】
6.4.8.3.4 治療のコンプライアンス
治験薬レジメンへのコンプライアンスは、未使用の錠剤及びカプセルを数えることによって評価する。治療期間中に、コンプライアンスが80%以上120%以下でない場合、参加者はレジメンに対するコンプライアンスの重要性について助言を受ける。2回連続した来院で限界を超える場合、治験責任医師及び治験依頼者は、参加者を試験から離脱させるべきかどうかを決定する。
【0191】
6.4.8.3.5 保管及び管理
すべての治験薬は安全な領域で、25℃未満で保管し、アクセスは治験責任医師及び認可された現場職員に限定される。
【0192】
規制要件に従って、治験責任医師又は指定された現場職員は、参加者に交付及び/又は投与された治験薬の量、参加者が返却した量、並びに該当する場合は治験依頼者(又は代表者)から受け取った量及び返却した量を記録しなければならない。治験薬の管理の記録は、試験のクールを通して維持されなければならない。不一致は一致させるか、又は解決されなければならない。未使用の治験薬の最終処分の手順は、適切な試験マニュアルに提供する。
【0193】
6.4.9.事前薬及び併用薬及び/又は手順
6.4.9.1 除外される薬剤及び/又は手順
治験薬以外のいずれの脂質変更療法も試験中は禁止する。
【0194】
6.4.9.2 事前薬及び併用薬使用の文書化
スクリーニング来院前28日以内に使用された薬剤を記録する。治験薬に加えて投与されたいずれの薬剤も、プロトコルに従って許容されるか否かにかかわらず、併用薬eCRFに記録されなければならない。
【0195】
6.4.10.試験手順
試験手順は、手順の予定表に従う。
【0196】
【表8】
【0197】
6.4.10.1.1 臨床検査値の評価
化学及び血液学のための血液を、手順の予定表に示されるように得て、分析のために中央検査室に送る。特に、以下の脂質プロファイルデータを収集する:
アポリポタンパク質B
アポリポタンパク質E(ApoE)
高密度リポタンパク質-ApoE [1]
高密度リポタンパク質コレステロール
低密度リポタンパク質コレステロール [2]
非高密度リポタンパク質コレステロール
トリグリセリド
超低密度リポタンパク質コレステロール
アポリポタンパク質AI
アポリポタンパク質AII
【0198】
[注1]アポリポタンパク質C3あり及びなし。
【0199】
[注2]β定量法とも呼ばれる分取超遠心分離によって測定される。
【0200】
手順の予定表に示されるように、CSF及び/又は血漿において収集されたADバイオマーカープロファイルデータには以下が含まれる:
Tau及びpTauエピトープ
Aβ1-42、Aβ1-40、Aβ1-42/Aβ1-40
ニューログラニン
ニューロフィラメント軽鎖
GFAP(グリア線維酸性タンパク質)
YKL40
PDGFRb.
【0201】
化学及び血液学のための血液試料は、ファスティング条件下(すなわち、参加者が約10時間以上絶食した後)で得なければならない。この試験の目的のために、ファスティングは、水及び任意の必須の薬剤以外何も口にしないことと定義される。参加者がファスティングしていない場合、治験責任医師は可能な限り早く来院の予定を変更しなければならない。推定糸球体濾過率は、慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の方程式を用いて計算した。スクリーニング来院時のみ、血液学パネルにはHbA1c、INR、PT及びPTTが含まれる。
【0202】
尿を、手順の予定表上に示されるように得て、尿検査のために中央検査室に送る。
【0203】
尿妊娠検査は、スクリーニング来院時に試験に参加する前にのみ行われる。
【0204】
6.4.10.1.2 心電図
スクリーニング来院時に、治験責任医師又は訓練を受けた現場職員によってシングルの標準12誘導ECGを実施し、中央で読み取った。
【0205】
6.4.10.1.3 身体検査
上記の手順の予定表に示すように、身体検査を行った。
【0206】
6.4.11.有効性評価
主要有効性エンドポイントは、24週目に測定されるCSFにおけるApoA-I、ApoE及びコレステロール排出能のレベルにおけるベースラインからの変化である。
【0207】
CSF及び血漿中の脂質プロファイル測定に特異的な副次的有効性エンドポイントの中には、以下がある:
・スクリーニング時(来院1)又はベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のHDL-Cの変化率。
・スクリーニング時(来院1)又はベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のHDL部分分画の変化率。
・スクリーニング時(来院1)又はベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のApoC3を欠くHDL粒子中のHDL-ApoEの変化率。
・スクリーニング時(来院1)又はベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のApoA-IIの変化率。
・ベースライン(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(来院6)における24S-ヒドロキシコレステロール及び27-ヒドロキシコレステロールの変化率。
【0208】
CSF中のADバイオマーカーに特異的な追加の副次的有効性エンドポイント:
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のTau及びpTauエピトープの変化率。
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のAβ1-42、Aβ1-40、Aβ1-42/Aβ1-40比の変化率。
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のニューログラニンの変化率。
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のニューロフィラメント軽鎖の変化率。
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のGFAPの変化率。
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のYKL40の変化率。
・スクリーニング時(来院1)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のPDGFRbの変化率。
【0209】
血漿中のADバイオマーカーに特異的な追加の副次的有効性エンドポイント:
・ベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のTau及びpTauエピトープの変化率。
・ベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のAβ1-42、Aβ1-40、Aβ1-42/Aβ1-40比の変化率。
【0210】
・ベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のニューログラニンの変化率。
・ベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)のニューロフィラメント軽鎖の変化率。
【0211】
疾患進行を追跡するための追加の副次有効性エンドポイントは以下の通りである:
・ベースライン時(来院2)及び治療終了時(168日目、来院6)に認知機能複合試験を行う。
・スクリーニング時(来院1)及び治療終了時(168日目、来院6)にCDR-SB試験を行う。
・スクリーニング時(来院1)、ベースライン時(来院2)、84日目(来院4)及び治療終了時(168日目、来院6)にミニメンタルステート検査を行う。
【0212】
6.4.12.結果
オビセトラピブの投与は、早期AD及び少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する患者において、総ApoE、HDL-ApoE、Apo-C3を有さない粒子におけるHDL-ApoEの血漿中レベル、及びApoC3を欠く粒子中のHDL-ApoEのパーセンテージを増大させるために、治療の終了時に効果的である。
【0213】
オビセトラピブの投与は、治療開始直前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇、及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに、治療の終了時に効果的である。
【0214】
オビセトラピブの投与は、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇、及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに、治療の終了時に効果的である。
【0215】
被験者は、登録と治療終了との間で認知状態の有意な低下を経験しない。
【0216】
7.均等物及び参照による組み込み
本発明は、好ましい実施形態及びさまざまな代替の実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細のさまざまな変更を行うことができることが当業者には理解されよう。
【0217】
本明細書で引用したすべての参考文献、発酵された特許及び特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法において使用するための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩であって、
前記方法が、治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管性若しくは多発脳梗塞性認知症、又は前頭側頭型認知症(FTD)である、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項2】
オビセトラピブ又はその塩が経口投与される、請求項1に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項3】
オビセトラピブが1日1回投与される、請求項1又は請求項2に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項4】
用量が、オビセトラピブ又はその塩の5~25mgQD経口投与である、請求項3に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項5】
用量が、5mgQD経口投与、10mgQD経口投与、15mgQD経口投与、20mgQD経口投与又は25mgQD経口投与である、請求項4に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項6】
オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも8週間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間又は少なくとも24ヶ月間、1日に1回投与される、請求項1~のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項7】
前記対象が、ADと診断されているか、又はADを発症するリスクがある、請求項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項8】
前記対象がADと診断されている、請求項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項9】
前記対象が、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項又は請求項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項10】
前記対象が、2つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項11】
前記対象においてApoE4対立遺伝子を検出する前工程をさらに含む、請求項10のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項12】
前記対象が軽度認知障害(MCI)と診断されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項13】
前記対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)血漿中のAβ42のレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NfL)のレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項14】
前記対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)CSF中のAβ42のレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項15】
前記対象が治療前に、タウPETイメージングに基づいて、タウの異常パターンを有すると判定されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項16】
オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項17】
オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項18】
オビセトラピブが錠剤として経口投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項19】
前記錠剤が、カルシウム塩としてオビセトラピブを含む、請求項18に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩
【請求項20】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法に使用するための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせための薬剤の製造に使用するための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
前記対象が、早期アルツハイマー病を有している患者である、請求項1又は20に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
前記対象が、ヘテロ又はホモ接合体ApoE4キャリアである、請求項1又は20に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
前記対象が、早期アルツハイマー病を有している、ヘテロ又はホモ接合体ApoE4キャリアである、請求項1又は20に記載の使用のための、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法において使用するための、医薬組成物であって、
前記方法が、治療有効量のオビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症、血管性若しくは多発脳梗塞性認知症、又は前頭側頭型認知症(FTD)であ
前記医薬組成物が、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を含む
医薬組成物
【請求項2】
オビセトラピブ又はその塩が経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
オビセトラピブが1日1回投与される、請求項1又は請求項2に記載の医薬組成物
【請求項4】
用量が、オビセトラピブ又はその塩の5~25mgQD経口投与である、請求項3に記載の医薬組成物
【請求項5】
用量が、5mgQD経口投与、10mgQD経口投与、15mgQD経口投与、20mgQD経口投与又は25mgQD経口投与である、請求項4に記載の医薬組成物
【請求項6】
オビセトラピブ又はその塩が、少なくとも8週間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間又は少なくとも24ヶ月間、1日に1回投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記対象が、ADと診断されているか、又はADを発症するリスクがある、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記対象がADと診断されている、請求項7に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記対象が、少なくとも1つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項7又は請求項8に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記対象が、2つのApoE4対立遺伝子を有する、請求項9に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記対象においてApoE4対立遺伝子を検出する前工程をさらに含む、請求項9~10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記対象が軽度認知障害(MCI)と診断されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)血漿中のAβ42のレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NfL)のレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記対象が治療前に、神経変性疾患を有していない、及びそのリスクが上昇していない健康な対照集団と比較して、(i)CSF中のAβ42のレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比の低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのレベル上昇、の少なくとも1つを有すると判定されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項15】
前記対象が治療前に、タウPETイメージングに基づいて、タウの異常パターンを有すると判定されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項16】
オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)血漿中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)血漿中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)血漿中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)血漿中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)血漿中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項17】
オビセトラピブ又はその塩の用量が、治療開始直前のレベルと比較して、(i)CSF中のAβ42のさらなるレベル低下、(ii)CSF中のAβ40のさらなるレベル上昇、(iii)CSF中のAβ42/Aβ40比のさらなる低下、(iv)CSF中のニューロフィラメント軽鎖(NFL)のさらなるレベル上昇及び(v)CSF中のニューログラニンのさらなるレベル上昇、のうちの少なくとも1つを予防するのに十分である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項18】
オビセトラピブが錠剤として経口投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項19】
前記錠剤が、カルシウム塩としてオビセトラピブを含む、請求項18に記載の医薬組成物
【請求項20】
象において神経変性疾患の進行を遅らせる方法に使用するための、医薬組成物であって、
前記医薬組成物が、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩を含み、及び
前記対象が、神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象である、
医薬組成物
【請求項21】
神経変性疾患を有するか、又は発症するリスクがある対象において神経変性疾患の進行を遅らせるための薬剤の製造における、オビセトラピブ又はその薬学的に許容される塩の使用
【請求項22】
前記対象が、早期アルツハイマー病を有している患者である、請求項1又は20に記載の医薬組成物
【請求項23】
前記対象が、ヘテロ又はホモ接合体ApoE4キャリアである、請求項1又は20に記載の医薬組成物
【請求項24】
前記対象が、早期アルツハイマー病を有している、ヘテロ又はホモ接合体ApoE4キャリアである、請求項1又は20に記載の医薬組成物
【国際調査報告】