(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】耐熱性が向上した電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20240314BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20240314BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 511L
H01G4/32 301F
H01G4/32 550
H01G2/10 J
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023554079
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022022738
(87)【国際公開番号】W WO2022212640
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ミケラッツィ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】カリダ,ビンチェンツォ,エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ファンティーニ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ボーニ,エバンジェリスタ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ,ワルター
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082BC23
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
5E082HH25
5E082HH27
5E082HH28
5E082HH43
5E082HH45
(57)【要約】
電子部品、特にフィルムコンデンサであって、誘電体からなる作動素子と、作動素子を封止体に封止した封止体とを備え、封止体が相変化材料からなる、フィルムコンデンサを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる作動素子と、
前記作動素子が封入された封止体であって、前記封止体が相変化材料からなる、封止体と、
を備えるフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体が、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、テトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素化オレフィン、環状オレフィン共重合体、シクロオレフィンポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料からなるフィルム誘電体である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記誘電体がポリプロピレンからなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記相変化材料が、合金、有機相変化材料、水性相変化材料、ワックス、水和塩系材料、固体-固体相変化材料、糖アルコール系材料、および固体-粘性-液体相変化材料からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記相変化材料が、InSnはんだ、InAgはんだ、InPbはんだ、およびBiSnはんだからなる群から選択される、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記相変化材料が、savE(登録商標) HS89、PureTemp(登録商標) 151、Paraffin 33-Carbon、PlusICE A118、およびPlusICE A164、ミツロウ、カルナバワックス、およびパラフィンワックスからなる群から選択される、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記相変化材料が、PlusICE H120、塩化マグネシウム六水和物、PlusICE S117、PlusICE X130、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、FSM-PCM95、および9005-H120からなる群から選択される、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記相変化材料が、0.1kJ/kg乃至4186kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記相変化材料が、50kJ/kg乃至600kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項8に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
前記相変化材料が、45℃乃至300℃の相変化温度を有する、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項11】
前記相変化材料が、80℃乃至200℃の相変化温度を有する、請求項10に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項12】
前記封止体が、少なくとも1重量%の前記相変化材料からなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項13】
前記封止体が、少なくとも5重量%の前記相変化材料からなる、請求項12に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項14】
前記封止体が、少なくとも10重量%の前記相変化材料からなる、請求項13に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項15】
前記封止体が、少なくとも20重量%の前記相変化材料からなる、請求項14に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項16】
前記封止体が、少なくとも50重量%の前記相変化材料からなる、請求項15に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項17】
前記封止体が、少なくとも80重量%の前記相変化材料からなる、請求項16に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項18】
前記封止体が、最大100重量%の前記相変化材料からなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項19】
前記封止体が包装体である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項20】
前記封止体が、被覆、塗装、吹き付け、モールド成形、鋳造、またはポッティングされている、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項21】
前記作動素子が巻線である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項22】
請求項1に記載のフィルムコンデンサを基板に実装してなる装置。
【請求項23】
前記装置が、車両、制御モジュール、またはソーラーパネルおよび風車システムからなる群からの蓄電モジュールからなる群から選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記フィルムコンデンサが、EMIサプレッサ、パルスコンデンサ、DCリンクコンデンサ、またはACフィルタリングコンデンサである、請求項1に記載のフィルムコンデンサを備える装置。
【請求項25】
誘電体からなる作動素子を形成する工程と、
前記作動素子を封止体に封入する工程であって、前記封止体が相変化材料からなる、工程と、
を含む、フィルムコンデンサの形成方法。
【請求項26】
前記封入工程に先だって、前記作動素子を巻回する工程をさらに含む、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項27】
前記誘電体が、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、テトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素化オレフィン、環状オレフィン共重合体、シクロオレフィンポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料からなるフィルム誘電体である、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項28】
前記誘電体がポリプロピレンからなる、請求項27に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項29】
前記相変化材料が、合金、有機相変化材料、水性相変化材料、ワックス、水和塩系材料、固体-固体相変化材料、糖アルコール系材料、および固体-粘性-液体相変化材料からなる群から選択される、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項30】
前記相変化材料が、InSnはんだ、InAgはんだ、InPbはんだ、およびBiSnはんだからなる群から選択される、請求項29に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項31】
前記相変化材料が、savE(登録商標) HS89、PureTemp(登録商標) 151、Paraffin 33-Carbon、PlusICE A118、およびPlusICE A164、ミツロウ、カルナバワックス、およびパラフィンワックスからなる群から選択される、請求項29に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項32】
前記相変化材料が、PlusICE H120、塩化マグネシウム六水和物、PlusICE S117、PlusICE X130、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、FSM-PCM95、および9005-H120からなる群から選択される、請求項29に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項33】
前記相変化材料が、0.1kJ/kg乃至4186kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項34】
前記相変化材料が、50kJ/kg乃至600kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項33に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項35】
前記相変化材料が、45℃乃至300℃の相変化温度を有する、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項36】
前記相変化材料が、80℃乃至200℃の相変化温度を有する、請求項35に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項37】
前記封止体が、少なくとも1重量%の前記相変化材料からなる、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項38】
前記封止体が、少なくとも5重量%の前記相変化材料からなる、請求項37に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項39】
前記封止体が、少なくとも10重量%の前記相変化材料からなる、請求項38に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項40】
前記封止体が、少なくとも20重量%の前記相変化材料からなる、請求項39に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項41】
前記封止体が、少なくとも50重量%の前記相変化材料からなる、請求項40に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項42】
前記封止体が、少なくとも80重量%の前記相変化材料からなる、請求項41に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項43】
前記封止体が、最大100重量%の前記相変化材料からなる、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項44】
前記封止体が包装体である、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項45】
前記封止体が、被覆、塗装、吹き付け、モールド成形、鋳造、またはポッティングされている、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項46】
請求項25に記載のフィルムコンデンサを装置の基板に実装する工程を含む、装置の形成方法。
【請求項47】
請求項25に記載の方法により形成されたフィルムコンデンサを基板に実装する工程を含む、装置の形成方法。
【請求項48】
前記装置が、車両、制御モジュール、またはソーラーパネルもしくは風車システムからなる群からの蓄電モジュールからなる群から選択される、請求項47に記載の装置の形成方法。
【請求項49】
装置の形成方法であって、請求項25に記載の方法により形成されたフィルムコンデンサを実装する工程は、前記フィルムコンデンサをEMIサプレッサ、パルスコンデンサ、DCリンクコンデンサ、またはACフィルタリングコンデンサに組み込む工程をさらに含む、装置の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱吸収材として相変化材料(PCM)を含むことにより熱的に安定した電子部品、特にフィルムコンデンサの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサ、特にポリプロピレンベースのフィルムコンデンサは、その電気的および物理的特性により、多くの用途で大きな支持を得ている。フィルムコンデンサの特性のひとつに、高温下でのコンデンサ内のフィルム、特にポリプロピレンフィルムの劣化による熱的不安定性がある。フィルムコンデンサは、回路基板への実装時や通常の使用時に有害な熱にさらされることがある。いずれの場合も、高温にさらされる可能性があるため、フィルムコンデンサは多くの利点のある用途に適さない。
【0003】
電子部品、特にフィルムコンデンサには、高温にさらされても電子部品の性能を維持できるものが求められてきた。本明細書で提供されるのは、有害な温度上昇に耐えることができる電子部品、特にフィルムコンデンサの改良である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、物理的または電気的に劣化することなく高温にさらすことができる電子部品、特にフィルムコンデンサの改良に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
より具体的には、本発明は、作動素子の外部に、好ましくは封止体内に、相変化材料を含むフィルムコンデンサの改良に関するものであり、高温過渡にさらされると、相変化材料は、作動素子が加熱される前に熱を吸収する。
【0006】
本発明の特別な利点は、従来の作動素子および製造工程を変更することなく使用できることにある。
【0007】
もう1つの特別な利点は、相変化材料が作動素子の電気的特性や意図した機能を妨げないことにある。
【0008】
これらおよび他の利点は、実現されるように、誘電体からなる作動素子と、作動素子が封止体内に封入された封止体とを備え、封止体が相変化材料からなる電子部品、特にフィルムコンデンサにおいて提供される。
【0009】
さらなる別の実施形態として、フィルムコンデンサを形成する方法が提供される。この方法は、誘電体からなる作動素子を形成することと、作動素子を封止体中に封止することとを含み、封止体は相変化材料からなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、フィルムコンデンサの作動素子を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態を概略的に示す部分切り取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電子部品、より具体的にはフィルムコンデンサ、特にポリプロピレンベースのフィルムコンデンサの改良に関するものであり、この電子部品は、高温になる可能性のある環境での使用に適している。より具体的には、本発明は、相変化材料からなるフィルムコンデンサの改良に関するものであり、高温にさらされると相変化材料が熱を吸収して相転移を起こし、それによってフィルムコンデンサの作動素子がさらされる温度を低減することができる。
【0012】
理論に束縛されることなく、フィルムコンデンサなどの電子部品が熱を受けると、相変化材料が熱を吸収するという仮説が成り立つ。熱膨張は、表面実装技術(SMT)処理などの回路形成の結果として、あるいは通常の作動中に発生する可能性がある。したがって、重要部品は相変化材料によって回路に関連付けられる熱から遮断され、熱は相変化材料の相変化の熱力学によって吸収される。
【0013】
即席の発明の特に有利な点は、表面実装技術(SMT)組立工程で低温高性能誘電体を使用できることにある。本発明により、フィルムコンデンサは、はんだ付け作業により誘電体が耐えられる温度範囲を超える温度上昇が生じるSMT用途に使用することができる。PCMは、はんだ付け組立工程中に熱を吸収し、誘電体が温度上昇に耐えられないことを保証し、誘電体を劣化から保護することができる。
【0014】
もう1つの利点は、電気的性能は優れていても、温度上昇に耐えられないために用途に適さない誘電体を使用できることにある。
【0015】
本発明のもう1つの利点は、フィルムコンデンサを、上述したようにそのような使用に適さないSMT用途に使用できることにある。同様の問題は他の電子部品でも起こる。コンデンサの複数のファミリーは、作動素子の誘電体を保護するために低温に維持する必要があるため、現在SMT用途からは除外されている。例えば、ポリプロピレンベースの電磁干渉(EMI)抑制コンデンサは、現在スルーホール技術でのみしか入手できない。ポリプロピレンベースのコンデンサは、誘電体の劣化のためリフローはんだ付けができない。本発明は、スルーホール技術を使用して実装することができ、従来のフィルムコンデンサよりもはるかに高い熱に耐えることができ、しかも、従来は適さなかったSMT用途にも適しているフィルムコンデンサを提供する。
【0016】
本発明は、本発明の明確性のために提供される本明細書の不可欠な、しかし非限定的な一部である図面を参照して説明される。様々な図を通して、類似した要素にはそれに従って符号が振られている。
【0017】
フィルムコンデンサの作動素子を断面図で概略的に示した
図1を参照して、作動素子を説明する。
図1では、作動素子10は金属化フィルム14からなり、隣接する金属化フィルムの間に誘電体フィルム12が設けられる。隣接する金属化フィルムは、逆極性の導体18に電気的に接触している。誘電体フィルムは、任意であるが、好ましくは、両端部16からなり、これらは、端部間の誘電体フィルムの誘電体部分の高い適合性を保証するための製造上の便宜である。引き出し端子20は、導体18に電気的に接触する。誘電体を挟んで対向する導体18で終端する隣接する金属化フィルム14の各対が容量性カップルを形成することは、当業者には理解できるであろう。作動素子内の層の数は相当多くすることができ、あるいは作動素子を巻くことができ、それによって巻き体によって形成される層構造体によって連続的な容量素子を設けることができる。
【0018】
図2を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図2には、本発明によるコンデンサ100が断面図に概略的に示されている。
図2において、引き出し端子20を備える作動素子10は、封止体22の中に設けられ、封止体はその中に相変化材料24を含んでいる。本明細書の説明から理解されるように、コンデンサが熱膨張にさらされると、相変化材料は熱を吸収して相転移を起こし、それによって作動素子への熱膨張の伝達が緩和される。
【0019】
図3を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図3には、装置201内の本発明によるコンデンサ200が部分切り取り図で概略的に示されている。引き出し端子20を備える作動素子10は、封止体として包装体26を備え、包装体はPCMからなるか、PCMを備える。包装体は、PCMが基板内の個別のPCM領域として、または基板の層もしくは部分的な層として埋め込まれた基板からなる。
【0020】
装置201は基板202からなり、本発明によるコンデンサは、いずれも当業者に周知であるSMTまたはスルーホール技術によって基板に実装される。本明細書において、本発明によるコンデンサを採用できる装置は特に限定されない。本発明によるコンデンサが特に適している特に好ましい装置には、消費者用途の電子装置、または自動車の駆動部品もしくは付属部品に使用されるものが含まれる。本発明によるコンデンサは、ソーラーパネルや風力発電機のコントローラーモジュールや蓄電モジュールなど、再生可能エネルギー分野に関連付けられる部品に使用するのにも適している。これに代えて、本発明を組み込むことができる装置には、電磁干渉(EMI)サプレッサ、パルスコンデンサ、DCリンクコンデンサ、およびACフィルタリングコンデンサとして、またはそれらに使用するのに特に適した容量素子が含まれる。
【0021】
相変化材料の非限定的な例としては、合金、有機相変化材料、水性相変化材料、ワックス、水和塩系材料、固体-固体相変化材料、糖アルコール系材料、固体-粘性-液体相変化材料などが挙げられる。
【0022】
特に好ましい相変化材料は、0.1kJ/kg乃至4186kJ/kg、より好ましくは50kJ/kg乃至600kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する。
【0023】
特に好ましい相変化材料は、45℃乃至300℃、より好ましくは80℃乃至200℃の相変化温度を有する。
【0024】
相変化材料として使用するのに特に好ましい合金には、融点が約117℃のIndalloy 1EのようなInSn系合金、融点が約154℃のIndalloy 164のようなInAg系合金、融点が約175℃のIndalloy 204のようなInPb系合金、融点が約138℃のIndalloy 281のようなBiSn系合金を含むはんだが含まれる。
【0025】
特に好ましい有機相変化材料としては、融点が約89℃のPluss(登録商標)社のsavE(登録商標) HS89、融点が約151℃のPure Temp LLC社のPureTemp(登録商標) 151、融点が約75.9℃のParaffin 33-Carbon、融点が約118℃のPlusICE A118、および融点が約164℃のPlusICE A164が挙げられる。
【0026】
水および水性PCMの相転移温度は約100℃である。
【0027】
特に好ましいワックスには、融点が約50℃乃至約80℃の市販のミツロウ、カルナバワックス、その他のパラフィンワックスが含まれる。
【0028】
特に好ましい水和塩系の材料としては、融点が約120℃のPlusICE H120、融点が約117℃の塩化マグネシウム六水和物、融点が約117℃のPlusICE S117などが挙げられる。
【0029】
特に好ましい固体-固体相変化材料としては、約130℃の相転移温度を有するPlusICE X130;約130℃の相転移温度を有するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;ならびに約134℃の相転移温度、約169℃の融点、および約293kJ/kgのエンタルピーエネルギーを有する、福斯曼科技(北京)有限公司(Forsman Scientific(Beijing)Co.,Ltd.)製のFSM-PCM95が挙げられる。
【0030】
特に好ましい固体-粘性-液体相変化材料は、例えば、広東金巴利新材料有限公司(Guangdong Kingbali New Material Co.LTD.)から入手可能な9005-H120シリーズのようなゴム充填剤をベースとするものであり、約120℃の相転移温度および約200kJ/kgのエンタルピーエネルギーを有する。
【0031】
固体-固体遷移PCMは、部品が遮熱性能を損なうことなく複数のリフローサイクルまたはリワークサイクルに耐久することができるため、特に好ましい。固体‐液体遷移型PCMも、液体を構造体内で維持し、液体が構造体から流出しない構造体であれば、特に好ましい。
【0032】
液体-蒸気または固体-蒸気遷移相変化材料は、製造時など一回必要となる場合の熱吸収時に使用するのに適している。
【0033】
本発明において使用に適した金属化フィルムは、本明細書では特に限定されない。特に好ましい実施形態では、金属化フィルムは、当業者に周知のように、誘電体膜の表面上に蒸着金属被膜として形成される。金属化フィルムは、当該技術分野において周知のように、導体に電気的に接続されていない側が絶縁マージンからなることが好ましい。金属は特に限定されるものではないが、アルミニウムおよび亜鉛が本発明の実証に特に適している。
【0034】
誘電体フィルムは特に限定されるものではないが、プラスチック誘電体フィルムが好ましい。本発明を実証するのに使用に特に適したフィルムには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン共重合体(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、およびそれらの組み合わせが含まれる。フッ素化フィルム、特にフッ素化オレフィンが特に適しており、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンが例示される。誘電体フィルムは、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸ベリリウムからなる群から選択される酸化物などのフィラーとしての複合酸化物粒子からなってもよい。本発明の実証に適した他の酸化物としては、周期表の第2周期乃至第5周期の第2族金属元素からなる材料、具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0035】
導体は特に本明細書に記載のものに限定されるものではない。金属蒸着または金属箔から形成された導体は、本発明の実証に特に適している。
【0036】
本明細書において、引き出し端子は特に限定されるものではなく、当該技術分野において一般的に採用されている任意の従来の引き出し端子が本発明の実証に適している。
【0037】
本明細書において、封止体は、相変化材料が温度勾配に曝されたときに相変化を起こす能力を相当阻害することなく、その中に相変化材料を封入することができるという但し書きにより特に限定されるものではない。封止体は、当該技術分野で一般的に採用されているように、被膜として、または箱の中に樹脂を含むことができる。封止体は、作動素子上またはその周囲に、塗装、吹き付け、モールド成形、鋳造、上へのポッティングなどの方法で施すことができる。特に好ましい実施形態では、封止体は少なくとも5重量%の相変化材料、好ましくは少なくとも10重量%の相変化材料、より好ましくは少なくとも20重量%の相変化材料、より好ましくは少なくとも50重量%の相変化材料、より好ましくは少なくとも80重量%の相変化材料、好ましくは最大100重量%の相変化材料からなる。
【0038】
作動素子の形成中、金属化フィルムおよび誘電体フィルムは層状構造体に組み合わされ、隣接する金属化フィルムは、当業者に周知のように、隣接する金属化層がその後コネクタに電気的に接続されるように配置される。層状構造体は、任意に、好ましくはロール状に巻かれて巻き体を形成する。
実施例
【0039】
サンプルのコンデンサは、金属化ポリプロピレン(PP)フィルムから形成される内巻き容量素子と、アルミニウムまたはスズの金属溶射被膜(SMD)で形成される終端部とで組み立てられた。本発明による容量素子(PP+PCM)は、相変化材料としてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンで包囲された。電気的接続にはリン青銅のリードフレームが使用された。包囲された容量素子は、エポキシ樹脂で密閉されたガラス繊維強化PPSボックスに挿入されて封止された。本実施例で使用したPCMの相対量は約50重量%であった。
【0040】
図4に典型的なリフローはんだ付けプロセスの臨界温度をグラフで示す。温度到達領域の温度曲線は、素子の外側ではあるが、素子の近傍の箇所で測定された温度であり、230℃でピークを示した。制御の内部温度は227℃で、温度到達領域の温度よりも3℃低いのみであった。本発明による実施例では、内部温度が133℃となり、これは、対照と比較して内部温度が94℃低下した。
【0041】
結果から理解されるように、PCMを添加して組み立てられたコンデンサは、PCM無しの制御コンデンサに比べてピーク温度がはるかに低い。PCM無しのコンデンサはリフロープロセスの温度に耐久することができない。
【0042】
表1に示す誘電体フィルムを使用して、それ以外は同一のフィルムコンデンサを組み立てた。PCMとしてトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(50%)からなる、PP+PCMと表示された本発明によるサンプルを調製した。各フィルムコンデンサの属性を表1に示す。
【0043】
【0044】
表1では、PP+PCMと呼ばれる、封止体内のポリプロピレン誘電体および相変化材料からなるフィルムは、表面実装技術(SMT)のリフロー温度での使用に適しており、散逸率(DF)は低く保たれ、自己回復(SH)能力は維持され、作動温度(OT、単位℃)は維持された。
【0045】
本発明を実証するため、リフロープロセスにおける電気的性能を評価した。表2にサンプルおよび結果を示す。表2において、ΔC/C%は静電容量偏差の割合、Δtgδ(1Khz)10-4は1Khzにおける絶対散逸率偏差、Δtgδ(10Khz)10-4は10Khzにおける絶対散逸率偏差、ΔIR%は絶縁抵抗偏差の割合、ΔFBDV%は第1降伏電圧偏差の割合である。
【0046】
【0047】
表に示した結果は、相変化材料の使用が当業者の予想に反して有益であることを示している。当業者には、絶縁抵抗偏差のような電気的パラメータの偏差において不利な結果が予想されるが、本発明は改善を示している。
【0048】
米国特許第10,522,286号明細書および米国特許出願公開第2003/0057265号明細書は、その全体がここに開示されたものとする。
【0049】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されたが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載され、規定される追加の実施形態を実現するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる作動素子と、
前記作動素子が封入された封止体であって、前記封止体が相変化材料からなる、封止体と、
を備えるフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体が、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、テトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素化オレフィン、環状オレフィン共重合体、シクロオレフィンポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料からなるフィルム誘電体である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記誘電体がポリプロピレンからなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記相変化材料が、合金、有機相変化材料、水性相変化材料、ワックス、水和塩系材料、固体-固体相変化材料、糖アルコール系材料、および固体-粘性-液体相変化材料からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記相変化材料が、InSnはんだ、InAgはんだ、InPbはんだ、およびBiSnはんだからなる群から選択される、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記相変化材料が
、Paraffin 33-Carbon、PlusICE A118、およびPlusICE A164、ミツロウ、カルナバワックス、およびパラフィンワックスからなる群から選択される、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記相変化材料が、PlusICE H120、塩化マグネシウム六水和物、PlusICE S117、PlusICE X130、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、FSM-PCM95、および9005-H120からなる群から選択される、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記相変化材料が、0.1kJ/kg乃至4186kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項9】
前記相変化材料が、50kJ/kg乃至600kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項8に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項10】
前記相変化材料が、45℃乃至300℃の相変化温度を有する、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項11】
前記相変化材料が、80℃乃至200℃の相変化温度を有する、請求項10に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項12】
前記封止体が、少なくとも1重量%の前記相変化材料からなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項13】
前記封止体が、少なくとも5重量%の前記相変化材料からなる、請求項12に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項14】
前記封止体が、少なくとも10重量%の前記相変化材料からなる、請求項13に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項15】
前記封止体が、少なくとも20重量%の前記相変化材料からなる、請求項14に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項16】
前記封止体が、少なくとも50重量%の前記相変化材料からなる、請求項15に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項17】
前記封止体が、少なくとも80重量%の前記相変化材料からなる、請求項16に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項18】
前記封止体が、最大100重量%の前記相変化材料からなる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項19】
前記封止体が包装体である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項20】
前記封止体が、被覆、塗装、吹き付け、モールド成形、鋳造、またはポッティングされている、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項21】
前記作動素子が巻線である、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項22】
請求項1に記載のフィルムコンデンサを基板に実装してなる装置。
【請求項23】
前記装置が、車両、制御モジュール、またはソーラーパネルおよび風車システムからなる群からの蓄電モジュールからなる群から選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記フィルムコンデンサが、EMIサプレッサ、パルスコンデンサ、DCリンクコンデンサ、またはACフィルタリングコンデンサである、請求項1に記載のフィルムコンデンサを備える装置。
【請求項25】
誘電体からなる作動素子を形成する工程と、
前記作動素子を封止体に封入する工程であって、前記封止体が相変化材料からなる、工程と、
を含む、フィルムコンデンサの形成方法。
【請求項26】
前記封入工程に先だって、前記作動素子を巻回する工程をさらに含む、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項27】
前記誘電体が、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、テトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素化オレフィン、環状オレフィン共重合体、シクロオレフィンポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される材料からなるフィルム誘電体である、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項28】
前記誘電体がポリプロピレンからなる、請求項27に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項29】
前記相変化材料が、合金、有機相変化材料、水性相変化材料、ワックス、水和塩系材料、固体-固体相変化材料、糖アルコール系材料、および固体-粘性-液体相変化材料からなる群から選択される、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項30】
前記相変化材料が、InSnはんだ、InAgはんだ、InPbはんだ、およびBiSnはんだからなる群から選択される、請求項29に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項31】
前記相変化材料が
、Paraffin 33-Carbon、PlusICE A118、およびPlusICE A164、ミツロウ、カルナバワックス、およびパラフィンワックスからなる群から選択される、請求項29に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項32】
前記相変化材料が、PlusICE H120、塩化マグネシウム六水和物、PlusICE S117、PlusICE X130、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、FSM-PCM95、および9005-H120からなる群から選択される、請求項29に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項33】
前記相変化材料が、0.1kJ/kg乃至4186kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項34】
前記相変化材料が、50kJ/kg乃至600kJ/kgの範囲の相変化エンタルピーを有する、請求項33に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項35】
前記相変化材料が、45℃乃至300℃の相変化温度を有する、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項36】
前記相変化材料が、80℃乃至200℃の相変化温度を有する、請求項35に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項37】
前記封止体が、少なくとも1重量%の前記相変化材料からなる、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項38】
前記封止体が、少なくとも5重量%の前記相変化材料からなる、請求項37に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項39】
前記封止体が、少なくとも10重量%の前記相変化材料からなる、請求項38に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項40】
前記封止体が、少なくとも20重量%の前記相変化材料からなる、請求項39に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項41】
前記封止体が、少なくとも50重量%の前記相変化材料からなる、請求項40に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項42】
前記封止体が、少なくとも80重量%の前記相変化材料からなる、請求項41に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項43】
前記封止体が、最大100重量%の前記相変化材料からなる、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項44】
前記封止体が包装体である、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項45】
前記封止体が、被覆、塗装、吹き付け、モールド成形、鋳造、またはポッティングされている、請求項25に記載のフィルムコンデンサの形成方法。
【請求項46】
請求項25に記載のフィルムコンデンサを装置の基板に実装する工程を含む、装置の形成方法。
【請求項47】
請求項25に記載の方法により形成されたフィルムコンデンサを基板に実装する工程を含む、装置の形成方法。
【請求項48】
前記装置が、車両、制御モジュール、またはソーラーパネルもしくは風車システムからなる群からの蓄電モジュールからなる群から選択される、請求項47に記載の装置の形成方法。
【請求項49】
装置の形成方法であって、請求項25に記載の方法により形成されたフィルムコンデンサを実装する工程は、前記フィルムコンデンサをEMIサプレッサ、パルスコンデンサ、DCリンクコンデンサ、またはACフィルタリングコンデンサに組み込む工程をさらに含む、装置の形成方法。
【国際調査報告】