IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイラー ユニバーシティの特許一覧 ▶ ウィズネスキー エンタープライゼスの特許一覧

特表2024-513167無負荷先端領域を備えるプロペラ及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】無負荷先端領域を備えるプロペラ及び方法
(51)【国際特許分類】
   B64U 30/21 20230101AFI20240314BHJP
   B64U 10/20 20230101ALI20240314BHJP
【FI】
B64U30/21
B64U10/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558715
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022021186
(87)【国際公開番号】W WO2022204048
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,439
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514239372
【氏名又は名称】ベイラー ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】523363257
【氏名又は名称】ウィズネスキー エンタープライゼス
【氏名又は名称原語表記】WISNIEWSKI ENTERPRISES
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ダブリュー ヴァン トリューレン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エフ ウィズネスキー
(57)【要約】
本開示は、高効率を維持すると共にノイズを減少させる回転プロペラ設計を供する。当該設計は、プロペラの目的(効果)に反して、あるとしても無視できる程度の正の揚力を有する先端の端部よりも先に無負荷先端領域に正の揚力を供する。前記無負荷先端領域は、先端渦の強度を減少させ、誘導抗力を減少させる。その結果、高機械効率を維持しながらノイズは顕著に減少する。さらにRPMが随意的に増加することにより、プロペラを長くする必要なく減少した揚力を補償する。少なくとも1つのプロペラ設計は、プロペラハブからのベータ角を、前記ハブから第1位置で異なるベータ角にして、その後前記ハブからさらに第2位置でのベータ角をも無負荷先端領域にして、二重中断プロペラを形成することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブに結合された少なくとも1つの翼を有して軸方向推力を生じさせるように構成される回転プロペラであって、前記翼は、当該プロペラの中心から、前記ハブから前記翼の遠端での翼端部までの翼長さを有し、前記プロペラの翼は、前記翼の先端へ向かって値が減少して迎え角を低下させることにより、前記先端より先に揚力係数がゼロ以下になるベータ角を有するように形成される、回転プロペラ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転プロペラであって、実質的にゼロ以下になるように値を減少させる前記ベータ角は、先端中断部で起こり、さらに前記ベータ角は、前記先端中断部で減少する前に、前記ハブに距離が近いハブ中断部で減少する、回転プロペラ。
【請求項3】
請求項2に記載の回転プロペラであって、前記プロペラの翼の揚力係数は、負荷領域内において前記ハブから前記翼の長さに沿って正の値を有し、前記翼の長さに沿って前記先端に向かって徐々に負の傾斜となるような減少を前記ハブ中断部で開始させ、前記先端中断部で実質的にゼロ以下の傾斜に変化する、回転プロペラ。
【請求項4】
請求項3に記載の回転プロペラであって、前記先端中断部で実質的にゼロ以下の傾斜にまで減少する前記翼の長さの一部は、前記実質的にゼロ以下の傾斜にまで漸近的に減少する、回転プロペラ。
【請求項5】
請求項1に記載の回転プロペラであって、前記先端よりも先にゼロ以下となる前記揚力係数を有する前記翼の長さは、実質的な揚力のない非ゼロ長さを有する無負荷先端領域を有する、回転プロペラ。
【請求項6】
軸方向スラストを発生させるように構成され、前記翼の遠端にて回転軸からの先端を有し、前記先端の端部よりも先に無負荷先端領域内において実質的にゼロ以下の揚力を生じさせるように構成される、回転プロペラの翼。
【請求項7】
請求項6に記載の回転プロペラであって、前記プロペラの翼の揚力係数は、負荷領域内において前記回転軸付近で正の値を有し、前記翼に沿って前記先端に向かって徐々に負の傾斜となるような減少を開始させ、前記先端中断部で実質的にゼロ以下の傾斜に変化する、回転プロペラの翼。
【請求項8】
請求項7に記載の回転プロペラであって、前記揚力係数は、前記先端中断部で前記実質的にゼロの傾斜に漸近的に減少する、回転プロペラの翼。
【請求項9】
請求項6に記載の回転プロペラであって、前記プロペラの翼の揚力係数は、ハブ中断部で減少し、さらに先端中断部で前記実質的にゼロ以下の傾斜に減少する、回転プロペラの翼。
【請求項10】
プロペラのハブに結合されように構成され、軸方向スラストを発生させるように構成され、前記ハブの近くから前記先端の近くへ向かってベータ角を小さくするように変化させ、前記先端の端部よりも先に実質的にゼロ以下の揚力の発生を開始させる無負荷先端領域を生成する、回転プロペラの翼。
【請求項11】
請求項10に記載の回転プロペラの翼であって、前記無負荷先端領域は先端中断部で生じ、さらに前記ベータ角は、前記先端中断部でベータ角に変化する前に、前記先端中断部よりも前記ハブに距離が近いハブ中断部で第1の小さなベータ角へ変化する、回転プロペラの翼。
【請求項12】
請求項11に記載の回転プロペラの翼であって、前記プロペラの翼の揚力係数は、負荷領域内において前記ハブから前記翼の長さに沿って正の値を有し、前記ハブ中断部から前記翼の長さに沿って前記先端へ向かって徐々に負の傾斜に変化し始めて、前記先端中断部で実質的にゼロの傾斜に変化する、回転プロペラの翼。
【請求項13】
請求項12に記載の回転プロペラの翼であって、前記先端中断部で前記実質的にゼロ以下の傾斜に変化する前記翼の長さの部分は、前記実質的にゼロ以下の傾斜に漸近的に変化する、回転プロペラの翼。
【請求項14】
プロペラのハブに結合されるように構成されるプロペラの翼であって、前記ハブから当該翼の遠端で前記ハブの中心から翼先端部までの翼の長さを有し、揚力を生じさせるように構成される負荷領域と、無負荷領域を備え、前記無負荷領域は、前記翼の長さの少なくとも3%の非ゼロ長さを有し、前記無負荷先端領域に実質的にゼロ以下の揚力係数を生じさせるように構成される、プロペラの翼。
【請求項15】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、揚力係数の値が、第1位置から減少し始め、前記翼の長さに沿って前記無負荷先端領域まで減少し続ける、プロペラの翼。
【請求項16】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、前記無負荷先端領域は、前記翼の動作中に前記翼の先端で発生する渦流を減少させるように構成される、プロペラの翼。
【請求項17】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、前記無負荷先端領域は、前記翼の長さの45%未満の長さを有する、プロペラの翼。
【請求項18】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、前記プロペラの翼の揚力係数は、前記負荷領域内において正の値を有し、前記翼の長さに沿って延びる距離に対して第1位置から徐々に負の傾斜に変化し始め、前記翼の長さに沿った距離が前記第1位置よりも長い第2位置で徐々に正の傾斜に変化することで、前記無負荷先端領域に正ではない揚力係数を生じさせる、回転プロペラの翼。
【請求項19】
ハブに結合される先端を有する翼を有するプロペラの翼によって発生する渦流を減少させる方法であって、前記ハブに近接する前記翼の負荷領域内において正の揚力を生じさせる段階と、前記先端に近接して非ゼロ長さを有する前記翼の無負荷先端領域内において正の揚力の発生を回避する段階を有する方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記先端へ向けてベータ角を減少させることで、前記先端より先に揚力係数が実質的にゼロ以下になるように迎え角を低下させる段階をさらに有する方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、ハブ中断部で前記ハブに近接するベータ角を変化させる段階と、前記ハブ中断部に対して前記ハブからの先端中断部遠端での前記ベータ角を変化させる段階をさらに有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年3月22日に出願された「無負荷先端領域を備えるプロペラ及び方法」と題された米国特許仮出願63/164439号の利益を享受する。上記参照特許出願の明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は概して低ノイズで高効率のプロペラに関する。より詳細には本開示は、無負荷の-つまり無視できる程度の小さな揚力を発生させる-先端部より前に先端領域に収束する翼の曲率を有するように設計されたプロペラに関する。
【背景技術】
【0003】
無人航空機システム(UAS)は、世界中で使用が増加し続けている。さらに、300以上の車両が何らかの電気揚力推進を使用しており、eVTOL航空機への関心が再び高まっている。どちらも、電気バッテリー/モーターシステムと組み合わされたプロペラ技術を幅広く利用している。eVTOLの用途は、商業分野と軍事分野の両方で見いだされる。これらの乗り物が都市環境で一般住民と共存するためには、ドローンの騒音レベルに対処し、許容レベルまで低減する必要がある。UASをより静かで効率的なものにできれば、社会にさらに大きな影響を与えるだろう。UASを作動させるのに必要な機械的動力を減らすと同時に、プロペラから発生する音を下げることが課題である。
【0004】
ほとんどのプロペラ設計プログラムは、古典的な翼素運動量理論(「BEMT」)を使用している。従来のBEMTアプローチを使用して設計されたプロペラは、プロペラの全スパンにわたって最大c/cに関連する迎え角に対応するcを設定し、この制約を満たすように半径方向(本明細書では「ベータ」またはβ)角度を調整する。この結果、プロペラ翼の先端が揚力と推力の大部分を発生する誘導損失が最小になるように設計されたプロペラが得られる。このような高負荷の先端条件は、主要な流れである強いコヒーレント渦を発生させる。
【0005】
図1Aは、翼素運動量理論(「BEMT」)形状で使用される変数を示すプロペラ翼の部分断面図を備えたプロペラの先行技術の概略斜視図である。図1Bは、追加のBEMT変数とその意味を示す、図1Aのプロペラ翼の概略断面図である。図1Cは、ハブを中心とする回転による翼に沿った接線誘導速度成分を示す先行技術のベクトル概略図である。
【0006】
プロペラブレード4の設計および評価において、最大幅としての翼弦長cを有するプロペラ2は、回転中心からの所定の半径rでハブ6からプロペラの翼の先端8までの断面セグメント14に分割することができる。ここで回転中心からのブレードの長さはRである。定義により、r/Rの最大比は1.0である。各セグメント14の回転速さは2πnrである。ここで、nは、1秒当たりのサイクルで表したプロペラ回転速度であり、距離rに正比例して変化する。ハブ付近のセグメントの速さは、1秒当たりの回転数が同じであれば、先端付近のセグメントよりも速度がはるかに遅い。これらのセグメントの各々は、設定された形状で動作する翼型から構成されている。各サブセクションでは、翼形は、迎え角(本明細書では、αまたはAOA)に基づいて揚力と抗力を発生する。翼形は、飛行機のようにプロペラが前進速度Vで移動するときの相対風の角度に対する迎え角をなして動作している。相対風はブレード回転面を基準としており、この角度は螺旋角φとして知られている。螺旋角は、軸方向速度と回転速度のためにプロペラから見える相対速度の角度である。揚力と抗力の発生は相対速度の影響を受けるため、各サブセクションでの相対速度を計算する必要がある。次に、β角から螺旋角を差し引くことで、翼型が各サブセクションで作動する迎え角を決定することができる。さらに計算と性能評価には、プロペラ翼の回転に伴ってプロペラ翼の長さ方向に誘起される風の接線速度Vが含まれる。接線速度Vは、回転プロペラの螺旋角φの余弦など、ベクトル成分に特徴付けることができる。セグメントに作用する揚力と抗力は、それぞれdLとdDである。変数dLは、Vと2πnrのベクトル和に垂直に作用し、dDはそのベクトル和と平行だが反対に作用する。力dTは翼素の実際のプロペラ推力である。dTに垂直な力は、プロペラトルクQ(ft-lbs単位など)を生成する力であり、dQ/rと表示される。
【0007】
プロペラ設計のための一般に利用可能なプログラムは、図1のA~1Cに記載されているようにプロペラをセグメントに分解し、翼形データに基づいて各セグメントの空力性能を分析する。そして、各セグメントはプロペラ全体の設計性能に寄与する。またBEMTの設計プロセスの一部として、誘導損失の最小化がある。これらの損失は、プロペラの回転によって生じるプロペラ内での誘起速度のために発生する。
【0008】
各プロペラセクションの設計迎え角は通常、揚力を最大にしながら抗力を最小にする揚力係数/抗力係数(c/c)比が最大になる迎え角である。この角度を一定に保つと、プロペラによって発生する推力の大部分は、翼部分に対する回転/相対速度が高いため、翼の外側部分で発生することになる。BEMTの目的は、軸方向および接線方向の誘導係数を最小化し、これらの損失を最小限に抑えることである。接線方向の誘導係数は、回転する翼部分の速度に依存する。速度はハブからの距離が長くなるにつれて増加するため、プロペラの設計では、ハブからの距離が長くなるにつれて増加する速度に起因する揚力分布をモデル化することが課題となる。これとは対照的に、固定翼は回転しないため、理想的には接線方向の誘導係数がない。
【0009】
航空機の固定翼では、典型的な揚力分布は、1921年に出版されたPrandtlL(1921) Applications of modern hydrodynamics to aeronautics,NACAReportNo116(Washington,DC)2に説明されているPrandtlの揚力線理論に従うため、楕円形の揚力分布になる。その結果、誘導抗力が最小となる最適な翼幅負荷が得られ、与えられた翼幅に対して最大の効率が得られると考えられた。揚力線理論は、航空機の翼の標準的な設計ツールとなった。この概念は設計概念を示すものではあるが、プロペラは航空機の翼のように楕円形の揚力分布を持たない。しかし、プロペラは先端渦と、そこから発生する誘導抗力に対処しなければならない。先端テーパー、スイープ、先端ノッチ、およびその他の修正を使用して、プロペラの先端渦を低減する試みが行われてきた。
【0010】
1933年に、Prandtlは別の論文(Prandtl L (1933) Liber tragflugel kleinsten induzierten widerstandes. Zeitschrift fur Flugtecknik und Motorluftschiffahrt, 1 VI 1933 (Munchen, Deustchland))を発表し、楕円分布は航空機固定翼の揚力分布の最適解ではないことを示唆した。彼は、与えられた構造に対して最大の効率をもたらす優れた翼幅負荷の解を発見した。最近、固定翼の代替的な揚力分布に関心が集まっている。Bowersは、固定翼の場合、プランドル分布は楕円分布よりも11%効率的な翼になるが、同様の楕円荷重のスパンと比較すると22%大きなスパンを必要とすると報告している。Bowers, A. H., Murillo, O. J., Eslinger, B., Technology, J., and Gelzer, C., 2016, On Wings of the Minimum Induced Drag: Spanload Implications for Aircraft and Birds," NASA/TP-2016- 219072は、この理論を使用して、鳥が垂直尾翼を使用せずに飛行し操縦する方法を説明し、航空機が垂直尾翼を回避できるかどうかを航空機の固定翼に適用しようとした。この理論は、鳥が飛ぶときに見られるような誘導抗力や固定翼の逆ヨー、逆ヨーについて適切に説明していた。事実上、プランドル曲線は翼の先端に負荷を与えず、翼の先端に見られる誘導抗力を減少させる。Bowersらは、サブスケールの航空機用固定翼を開発し、この理論が実際の航空機にどのように適用できるかを実証した。その結果、プランドル曲線が鳥の飛行や操縦の仕方をより正確に記述していることが検証された。楕円揚力プロファイルに代わるプランドル揚力分布は、ハブから回転翼のスパンに沿って接線方向誘導速度が増加するため、プロペラでは現実的に実現できない。しかし、このコンセプトは、より多くの揚力を発生させるために先端まで揚力係数を一定に保持する標準的なBEMTアプローチとの違いを示すものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先端渦を低減することは、回転プロペラにとって非常に望ましいことである。必要なことは、先端渦を考慮した、高効率で低騒音を可能にする回転プロペラ設計である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、高い機械効率を維持し、騒音を低減する回転プロペラ設計を提供する。古典的なプロペラ設計は、最大揚力対抗力比のために翼の翼幅にわたって一定の迎え角を維持するように半径方向に調整されるベータ角を有する。これとは対照的に、本発明のプロペラ設計は、プロペラの目的に直感的に反する、ごくわずかな-あるとして-正の揚力を有する先端の端より先に作動する無負荷先端領域を提供する。前記無負荷先端領域は、実質的に高い効率を維持しながら、騒音を大幅に低減する。この結果は、より長いプロペラを必要とすることなく、減少した揚力を補償するために回転数を上げても発生する。前記プロペラ設計は、前記先端付近のベータ角を先細りさせることで迎え角を下げることで、前記先端付近の揚力係数がゼロ以下にする。少なくとも一部の実施形態では、本発明のベータ角は、前記プロペラハブから翼長に沿った第1位置で標準ベータ角から外れ、その後、ベータ角を更に調整することにより前記無負荷先端領域へ滑らかに傾斜し、二重中断プロペラ(a double break propeller)を形成する。前記翼から正の揚力の前記先端領域を無負荷にすることで、先端渦の強さが減少し、誘導抗力が減少し、その結果、騒音シグネチャが低くなり、全体効率が高くなる。
【0013】
従来のプロペラ設計は、誘導損失を最小化する翼素運動量理論(BEMT)を利用するが、本発明は、前記プロペラの誘導抗力を最小化する前記プロペラ設計上のアプローチを利用する。この最小化は、通常のBEMTで受け入れられている設計基準とは逆に、前記プロペラ先端の推力負荷を減らすことで達成される。これにより、前記先端渦の強度が低下し、前記誘導抗力と前記プロペラを回転させるのに必要なトルクが大幅に低下する。誘導抗力が最小になるように設計すると、前記プロペラの空力効率が高くなる。また、前記先端渦の強度が低下することにより、ニアフィールド音圧レベル(SPL)も低下する。
【0014】
本開示は、ハブと結合された少なくとも1つの翼を有し、軸方向推力を生成するように構成された回転可能なプロペラを提供する。前記翼は、前記プロペラの中心から、前記ハブから前記翼の遠端の翼先端までの翼長さを有する。前記プロペラの翼は、前記翼の先端に向かって値が減少するベータ角で形成される。前記ベータ角は、前記先端より先の揚力係数がゼロ以下になるように迎え角を低くする。
【0015】
本開示はまた、軸方向の推力を発生するように構成され、前記翼の遠端に回転軸からの先端を有し、前記先端の端部より先に無負荷先端領域において実質的にゼロ以下の揚力を発生するように構成された、回転可能なプロペラの翼を提供する。
【0016】
本開示はさらに、プロペラのハブに結合されるように構成された回転可能なプロペラの翼を提供する。前記翼は、軸方向推力を発生するように構成され、前記ハブに近い方からのベータ角を、前記先端により近い小さいベータ角に変化させ、前記先端の端部より先に実質的にゼロの揚力を有する無負荷先端領域を形成する。
【0017】
本開示は、プロペラのハブに結合されるように構成されたプロペラの翼を提供する。当該翼は、前記ハブの中心から、前記ハブから見て前記翼の遠端の翼の先端までの翼長を有し、揚力を生成するように構成された負荷領域と、前記翼長の少なくとも3%の非ゼロ長さを有し、無負荷先端領域に対して実質的にゼロ以下の揚力係数を生成するように構成された無負荷先端領域と、を備える。
【0018】
本開示はまた、ハブに結合された先端部を有する翼を有するプロペラによって生成される渦流を低減する方法を提供する。当該方法は、前記ハブに近接する前記翼の負荷領域において正の揚力を生成することと、前記先端に近接する非ゼロ長さを有する前記翼の非負荷先端領域において正の揚力を生成することを回避することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1Aは、運動量理論(「BEMT」)構造において用いられる変数を表すプロペラの翼の部分断面図と共に従来技術に係るプロペラの概略的斜視図を表す。図1Bは,さらなるBEMT変数及びそれらの意味を表す図1Aのプロペラの翼の概略的断面図である。図1Cは、ハブの周りでの翼の回転によって前記翼に沿った誘導接線速度成分を表す従来技術に係るベクトル図である。
図2】本発明の二重中断プロペラ設計の例の側面図である。
図3図3の二重中断プロペラ設計の例の正面図である。
図4】従来技術に係る「ベースライン」と指称される楕円プロペラの翼の側面図である。
図5】本願の教示により改善されたプロペラの翼の実施形態の例の図である。
図6A】GM-15設計のプロペラの断面の代表的部分を表す図である。
図6B】GOE225設計のプロペラの断面の代表的部分を表す図である。
図6C】GOE358設計のプロペラの断面の代表的部分を表す図である。
図6D】S1223設計のプロペラの断面の代表的部分を表す図である。
図6E】クラークY設計のプロペラの断面の代表的部分を表す図である。
図7A】UAS用の通常動作設計条件について、図6A図6Eで表された既知の翼型の迎え角に対する揚力係数/抗力係数の比の翼型の航空力学データのグラフを表している。
図7B図7Aの翼型の迎え角に対する揚力係数の翼型の航空力学データのグラフを表している。
図7C図7Aの既知の翼型の迎え角に対する抗力係数の翼型の航空力学データのグラフを表している。
図8図8Aは、本願の教示による二重中断プロペラの翼の例と対比されるベースラインプロペラの翼の比r/Rに対する揚力係数を示すグラフを表している。図8Bは、図8Aのプロペラの比r/Rに対するβ角を示すグラフを表している。図8Cは、図8Aのプロペラの比r/Rに対する部分の揚力を示すグラフを表している。
図9A】試験された二重中断構成の試験マトリックスを示すグラフを表している。
図9B図9Aからの二重中断設計のサンプリングのCを示すグラフを表している。
図10】ハブの中断と先端の中断の割合の関数として全被試験プロペラの回転速さのグラフを表している。
図11】ハブの中断と先端の中断の割合の関数として全被試験プロペラに必要な機械動力のグラフを表している。
図12】ハブの中断点が90%、80%、及び70%のプロペラの半径方向SPL分布のグラフを表している。
図13】ハブの中断点が60%のプロペラの半径方向SPL分布のグラフを表している。
図14】ハブの中断点が50%のプロペラの半径方向SPL分布のグラフを表している。
図15】ハブの中断点が40%のプロペラの半径方向SPL分布のグラフを表している。
図16図16Aは、ハブの中断が80%~40%の機械動力のグラフを表している。先端の中断は90%で一定である。図16Bは、ハブの中断が80%~40%の機械動力のグラフを表している。先端の中断は90%で一定である。図16Cは、ハブの中断が80%~40%のSPLのグラフを表している。先端の中断は90%で一定である。図16Dは、被試験ハブの中断の先端の中断に必要な機械動力のグラフを表している。図16Eは、被試験ハブの中断の先端の中断に必要な機械動力のグラフを表している。
図17】ストックプロペラと対比して必要とされる動力の減少の関数としてのピーク音圧の減少のグラフを表している。
図18】すべての被試験ハブのAOAが-2.22、-2.72、及び-3.22での機械動力の関数としてのピークSPLを表すGM-15設計のプロペラのグラフである。
図19】すべての被試験ハブのAOAが-2.22及び-3.22でのRPMの関数としてのピークSPLを表すGM-15設計のプロペラのグラフである。
図20】すべての被試験ハブのAOAが-2.22、-2.72、及び-3.22でのRPMの関数としての機械動力を表すGM-15設計のプロペラのグラフである。
図21】ハブAOAが3.5°の50_90プロペラの1インチ後方で横方向に測定された翼に沿った半径方向距離の関数としてのSPLを表すGM-15設計のプロペラのグラフである。
図22】全先端AOAについての最大設計ハブAOAの機械動力の関数としてのピークSPLを表す被試験翼型のグラフである。
図23】全先端AOAについてのc/c最大設計ハブAOAの機械動力の関数としてのピークSPLを表す被試験翼型のグラフである。
図24】全先端AOAについてのc/c最大設計ハブAOAのRPMの関数としての機械動力を表す被試験翼型のグラフである。
図25】全c/cハブのAOAについてゼロ揚力先端AOAの機械動力の関数としてのピークSPLを表す被試験翼型のグラフである。
図26】全c/cハブのAOAについてゼロ揚力先端AOAのRPMの関数としてのピークSPLを表す被試験翼型のグラフである。
図27】全c/cハブのAOAについてゼロ揚力先端AOAのRPMの関数としてのピークSPLを表す被試験翼型のグラフである。
図28図28Aは、本願の教示による最小動力損失についての様々な翼弦長を有する所与のプロペラ設計のRPMの関数としての機械動力を示すグラフである。図28Bは、本願の教示による最小動力損失についての様々な翼弦長を有する所与のプロペラ設計のRPMの関数としての効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述の図および以下の特定の構造および機能の説明は、出願人が発明したものの範囲または添付の特許請求の範囲を限定するために提示されるものではない。むしろ、図および書面の説明は、特許保護を求める発明を製造し使用することを当業者に教示するために提供される。当業者であれば、明瞭性および理解のために、本発明の商業的実施形態のすべての特徴が記載または示されているわけではないことを理解するであろう。当業者であれば、本開示の態様を組み込んだ実際の商業的実施形態の開発には、商業的実施形態に対する開発者の最終的な目標を達成するための多数の実装特有の決定が必要であることも理解されよう。このような実装特有の決定には、システム関連、ビジネス関連、政府関連、およびその他の制約の遵守が含まれる可能性があるが、これらに限定されない。開発者の努力は、絶対的な意味では複雑で時間がかかるかもしれないが、そのような努力は、それでも、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な事業であろう。本明細書で開示され教示される発明は、多数の様々な修正および代替形態の影響を受けやすいことを理解しなければならない。に限定されないが、不定冠詞(“a”)のような単数形の用語の使用は、項目の数を限定することを意図するものではない。さらに、本システムの様々な方法および実施形態は、開示された方法および実施形態の変形例を生成するために、互いに組み合わせて含めることができる。単数形の要素についての考察は、複数の要素を含むことができ、逆もまた同様である。少なくとも1つの項目への言及は、1つ以上の項目を含み得る。また、実施形態の様々な態様は、本開示の理解された目標を達成するために互いに組み合わせて使用され得る。文脈が他に必要としない限り、用語「備える、含む、有する(comprise,comprises,comprising)」などの変形は、少なくとも記載された要素もしくはステップまたは要素もしくはステップの群もしくはそれらの等価物を含むことを意味し、より大きな数値量または他の要素もしくはステップまたは要素もしくはステップの群もしくはそれらの等価物を排除することを意味しないと理解されるべきである。「結合」、「結合工程」、「結合体」等の用語は、本明細書において広義に使用され、例えば、機械的、磁気的、電気的、化学的、作動的に、直接的または間接的に、中間要素を用いて、1つまたは複数の部材片を一緒に固定、結合、接着、締結、取り付け、接合、そこに挿入、その上またはその中に形成、通信、または他の方法で関連付けるための任意の方法または装置を含むことができ、さらに、1つの機能部材を他の機能部材と一体的に形成することを制限なく含むことができる。結合は、回転方向も含め、どの方向にも起こりうる。本装置またはシステムは、様々な方向や向きで使用することができる。ステップの順序は、特に限定しない限り、様々な順序で行うことができる。本明細書に記載された様々なステップは、他のステップと組み合わせることができ、記載されたステップと相互に並べることができ、及び/又は複数のステップに分割することができる。いくつかの要素は、簡略化のために装置名で命名され、システムまたはセクションを含むと理解されるであろう。例えば、コントローラは、プロセッサおよび当業者に公知であり、具体的に記載されないかもしれない関連コンポーネントのシステムを包含するであろう。本明細書および図には、様々な機能を実行し、形状、サイズ、説明において非限定的である様々な例が提供されているが、本明細書に含まれる教示が当業者に周知であるように変化させることができる例示的な構造として役立つ。パーセンテージ範囲および他の範囲の表現は、特に断らない限り、包括的であり、範囲の増分は、整数または分数で増減することができ、例えば、0から10の範囲は、0と10およびその間の任意のすべての整数(例えば、1、2、3...)および各整数の間の任意のすべての分数(例えば、0.1、0.2、0.3、...および0.01、0.02、0.03、...など)を含む。本明細書において、「機械的動力」(または本明細書において「所要動力」)とは、プロペラのためのモータまたはエンジンへの入力動力を意味する。「空気力学的動力」とは、推力に自由流速を乗じたものをいう。「機械的動力」とは、トルクに毎分回転数(または他の時間当たりの回転数)を乗じたものをいう。「機械効率」(本明細書では単に「効率」)とは、空力パワーを機械パワーで割ったものを意味する。本出願は、揚力係数、揚力、及び勾配について"ゼロ"を参照するが、ここで、用語"ゼロ"は、絶対的な数学的値ではないが、実質的にゼロであり、あたかも数学的値であるかのように、プロペラ翼の性能に実用的な影響を最小にするように、そのような値から多少の偏差を伴って変化し得ることは、当業者には理解されるであろう。
【0021】
本開示は、高効率を維持し、騒音を低減する回転プロペラ設計を提供する。古典的なプロペラ設計は、最大揚力抗力比のために翼の翼幅にわたって一定の迎え角を維持するように半径方向に調整されるベータ角を有する。これとは対照的に、本発明のプロペラ設計では、プロペラの目的に直感的に反する、あったとしてもごくわずかな正の揚力を持つ、先端の端の前から始まる無負荷先端領域が提供される。無負荷先端領域は、実質的に高い効率を維持しながら、騒音を大幅に低減する。この結果は、より長いプロペラを必要とすることなく、減少した揚力を補うために回転数を上げても発生する。このプロペラの設計では、先端付近でベータ角をテーパー加工して迎え角を下げ、先端以前の揚力係数がゼロ以下になるようにしている。少なくともいくつかの実施形態では、本発明のベータ角は、プロペラハブから翼幅長に沿った最初の位置で標準ベータ角から逸脱し、その後、ベータ角のさらなる調整により、無負荷の先端領域に滑らかに傾斜し、二重中断プロペラを形成する。翼から正の揚力の先端領域を無負荷にすることで、先端渦の強さが減少し、誘導抗力が減少するため、騒音シグネチャーが低くなり、全体効率が高くなる。
【0022】
図2は、本発明の二重中断プロペラ設計の一例の側面図である。例として、限定するものではないが、プロペラは、本明細書に記載されるように、回転のハブ軸20からの翼長さRを有し、負荷領域16と無負荷の先端領域12とを有する翼幅2Rが13.3インチのような、商業的に許容されるサイズのものとすることができる。「二重中断」プロペラ設計は、一意的に、ハブからある比率でハブ中断が形成され、先端の前に先端中断が形成される。少なくとも1つの実施形態では、本発明の翼は、ハブ近傍でベースライン設計と同様の揚力係数(ci)を有するように形成され得る。しかしながら、ベースライン設計とは対照的に、ciは、(1)本明細書において「ハブ中断」10と称される中央ハブから遠位の位置、および(2)本明細書において「先端中断」12と称されるハブ中断から遠位の位置で減少し始め、ここでciはX軸上でゼロに漸近する(いくつかの実施形態ではそれ以下)。多項式フィットを使用して、これらの2つの位置間、特に2つの中断点におけるci分布を平滑化することができる。二重中断」表記は、本明細書では2つの数字を記している。ハブ中断として最初の数字は、曲線がハブから先端に向かって中断し始めるr/Rの位置である。先端中断としての2つ目の数字は、先端の手前で揚力がゼロになるr/Rの位置である。例えば、限定するものではないが、本明細書における「50_90」二重中断プロペラ設計の指定は、ハブ中断がハブから翼幅の50%r/R位置で曲線を開始し、先端中断曲線が90%r/R位置で漸近的に揚力がゼロになる(又はいくつかの実施形態ではわずかに負になる)ことを意味する。
【0023】
図3は、図3の二重中断プロペラ設計の正面図である。二重中断コンセプトは、様々な形状のプロペラに適用することができるが、本発明者らは、楕円形状の先端部を有するプロペラが他の形状よりも効率的であり、二重中断コンセプトの恩恵を受けてさらに効率を高めることができることを見出した。少なくとも1つの実施形態では、プロペラは、一定のコード長で設計され、その後、選択されたr/R比で楕円形状のテーパを開始することができる。例えば、接触コード長は、約0.6r/Rで楕円形になり始めることができる。楕円形は先端渦をさらに減少させる。
【0024】
図4は、「ベースライン」プロペラ翼として指定された典型的な楕円プロペラ翼の側面写真である。本明細書におけるいくつかの比較は、「ベースライン」プロペラを参照する。本明細書におけるベースラインプロペラ翼4'は、プロペラの翼幅にわたって最大ci/cdに関連する迎え角(「AOA」)に対応する揚力係数(「Cl」)を設定し、この制約を満たすように半径方向β(ツイスト)角を調整する従来のBEMTアプローチを使用して設計されたプロペラ翼である。翼の翼幅に沿って接線速度が増加すると、これらの条件を維持するために、対応するβ角度を減少させなければならない。これらの制約により、プロペラ翼4'の先端8'が揚力と推力の大部分を発生する、誘導損失が最小になるように設計されたプロペラになる。これらの高負荷先端条件は、翼に関連する主要な流れの乱れである強いコヒーレント渦を発生させ、知覚される騒音の大部分を発生させる。
【0025】
図5は、本明細書の教示による、改良されたプロペラ翼の実施形態の一例の写真である。翼4を有する改良されたプロペラは、ベースラインプロペラ翼と比較して、先細りが急速に増加するのを止めるように設計されているので、いくつかの実施形態では、セクション揚力係数は、翼先端8でゼロの値をもたらし、他の実施形態では、先端でわずかに負のセクション揚力係数が存在する。その結果、先端に向かってプロペラの上面と下面との間の圧力差が小さくなり、揚力が小さくなり、プロペラ全体の騒音に大きく寄与する先端渦が減少する。上述したように、本発明のプロペラは、ハブ中断と先端中断を有する二重中断プロペラ設計を含む。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、プロペラの設計は、ハブから先端までのプロペラ翼の設計要素の各々について所定の揚力係数を含むことができる。設計にこのような柔軟性を持たせることにより、プロペラの設計に意図的に無負荷の先端領域を含めることができる。
【0027】
性能基準に応じて、ハブから先端までのプロペラ全長と比較した無負荷先端領域の様々な長さ(パーセンテージで表される)を設計し、製造することができる。いくつかの実施形態では、無負荷先端領域は、0%から60%より大きくすることができ、他の実施形態では、無負荷範囲は、0%から50%より大きくすることができ、他の実施形態では、無負荷範囲は、0%から40%より大きくすることができ、他の実施形態では、無負荷範囲は、0%から30%より大きくすることができる、他の実施形態では、無負荷範囲は0%~20%より大きくすることができ、他の実施形態では、無負荷範囲は0%~10%より大きくすることができ、または他の実施形態では、無負荷範囲は0%~3%より大きくすることができ、3%~50%などの任意の整数または分数を含む。したがって、プロペラの負荷された領域の長さのパーセンテージは、負荷された領域=1-負荷されていない先端領域のパーセンテージとなる。
【0028】
本発明は、特定の翼断面形状に限定されるものではなく、いくつかの既知の断面形状が試験されている。すべてではないにしても、多くの翼プロファイルが、本明細書の教示と無負荷先端領域の恩恵を受けて、騒音低減と効率化を図ることができる。しかし、多くの翼型が使用できるとしても、本明細書の教示を使用することを含む全体的な性能を最適化するためには、翼型を選択するための要因がある。適切な翼型を選択することは、性能目標を満たすよくできたプロペラにとって重要な決定となり得る。本発明者らによる研究に基づき、以下の7つのガイドラインを用いて、これらの要件を満たす翼型を評価する:1)十分な厚み、2)高い揚力係数、3)高い最大揚力対抗力比、4)最大揚力対抗力比における幅広いピーク、5)プロペラの翼型作動迎え角範囲にわたる直線的な揚力曲線勾配、6)作動迎え角範囲にわたる低い抗力、7)翼型空力データに対するレイノルズ数の影響。1つの翼形状でこれらの基準をすべて満たすことは考えにくいが、これらの要因は、動作条件の範囲にわたって最高の性能を発揮する可能性の高い翼形状に選択を絞り込むのに役立つ。
【0029】
図6Aは、GM-15設計プロペラの断面の代表的な部分を示す図である。GM-15は比較的薄く、コードわずか6.7%であり、後縁が薄く、これらの性質だけで判断すれば望ましい翼形ではない。図8Aに示すように、揚力係数/抗力係数(ci/cd)は全翼の中で最も高い。GM-15翼型は、空力特性を考慮すると良い翼型であるが、用途によっては薄いかもしれない。GM-15翼型は,コード20.5%で最大厚さ6.7%,コード49.3%で最大キャンバー4.8%である.
【0030】
図6Bは、GOE225設計プロペラの断面の代表部分を示す図である。この翼型は、おそらく第一次世界大戦中から1920年代および1930年代にかけて、航空時代の初期にドイツのゴッティンゲン大学で設計された一連の翼型の一部である。この番号は、新しい翼型が開発されたときに与えられた連番である。GOE225翼型は、19.7%のコードで12.8%の最大厚さおよび49.7%のコードで7.6%の最大キャンバーを有する。
【0031】
図6Cは、GOE358設計プロペラの断面の代表部分を示す図である。この設計は、ゴッティンゲン大学で設計された別の翼形である。番号から、GOE225よりも後の設計であることがわかる。GOE358翼型は、最大厚みが20%コードで10.9%、最大キャンバーが50%コードで5.6%である。
【0032】
図6Dは、S1223設計プロペラの断面の代表部分を示す図である。この設計は、設計レイノルズ数200,000で最大揚力を達成するために、凹型圧力回復と後流負荷の両方の有利な効果を組み合わせることを含む。200,000のレイノルズ数で2.11という高いci最大値を持つ。この翼型は高揚力翼型とみなされ、後面荷重が大きい。この翼型は、モータースポーツや動水力タービンの用途(ハイドロフォイル)、重量貨物機に使用されている。S1223翼型はコード19.8%で最大厚さ12.1%、コード50%で最大キャンバー8.1%である。
【0033】
図6Eは、クラークY設計プロペラの断面の代表部分を示す図である。クラークYは1920年代初頭に設計された。クラークY翼型は、1920年代半ばから1930年代半ばまで、ほとんどのアメリカのプロペラに使用された。クラークYは、圧縮性の影響が大きい高速での使用には向かず、1940年代前半には人気がなくなった。現在でも小型の自作機やラジコンモデルに広く使われている。多くの小型UASにも使用されている。クラークY翼型は、コード28%で最大厚さ11.7%、コード42%で最大キャンバー3.4%である。
【0034】
図7Aは、UASの通常の運用設計条件についての、図6A~6Eに例示された既知の翼形についての迎え角に対する揚力係数/抗力係数の比の翼形空力データの例示的なグラフである。図7Bは、図7Aの翼の迎え角に対する揚力係数の翼空力データの例示的なグラフである。図7Cは、図7Aの既知の翼の迎え角に対する抗力係数の翼空力データの例示的なグラフである。
【0035】
上記の基準を念頭に置いて、プロペラの用途に許容可能な性能を有する適切な翼型を選択することが重要である。公知で非限定的な翼型設計には、GM-15、GOE225、GOE358、およびS1223、ならびにクラークY設計が含まれる。GM-15設計プロペラは、本明細書で説明するような詳細な実験のために選択された設計であるが、異なる翼型設計は、異なる用途のために他のものより有利であり得ることが理解される。ここで教える原理は、他の翼型にも適用できる。初期段階では、標準的なBEMT基準を使用してプロペラを作成し、風洞で試験した。
【0036】
特に断りのない限り、本明細書におけるプロペラは、小型UASの典型的な設計条件であるレイノルズ数100,000、高度7000フィート(2134m)において、2.5ポンド力(「Ibf」)(11ニュートン)の推力(「T」)を、毎秒44フィート(「fps」)(毎秒13.4m)の自由流速度で設計した。
【0037】
各飛行翼には利点と欠点があるが、本発明の概念を説明する目的で、本明細書での議論および本発明の設計を使用した試験結果の大部分はGM-15翼に基づいている。これらの翼型の中で、GM-15プロペラは、例えば前段落で述べたような設計上の条件を満たすために必要な機械的出力が最も小さい。このプロペラはまた、ピーク音圧レベル(「SPL」)の測定値も最も低かった。本書で詳述する実験用に選択したGM-15翼の図7A-7Cのデータに基づき、設計迎え角(「AOA」)は、ci/cd最大範囲の中間に位置する5.2°、およびci/cdプロットが最大値に中断し始める位置の3.5°である。GM-15を使用しているが、コンセプトはどの翼型にも適用できる。
【0038】
図8Aは、本明細書の教示による二重中断プロペラ翼の例と比較した、ベースラインプロペラ翼のr/R比に対する揚力係数を示す例示的なグラフである。図8Bは、図8Aのプロペラのr/Rに対するβ角度を示す例示的なグラフである。図8Cは、図8Aのプロペラのr/R比に対するセクション揚力を示す例示的なグラフである。ベースラインプロペラのciとAOAは、翼の翼幅にわたって最大ci/cdを維持するために一定に保たれている。接線速度が翼の翼幅に沿って増加するにつれて、これらの条件を維持するために、対応するβ角度を減少させなければならない。少なくとも1つの実施形態では、革新的な二重中断設計アプローチは、ハブ付近のベースラインciおよびAOAから、先端で漸近的にゼロ揚力に近づく滑らかな遷移を有することができる。この設計手法は、プロペラの先端を効果的に無負荷にし、誘導抗力と先端渦の強さを低減する。
【0039】
楕円揚力プロファイルの代替としてPrandtlによって提案されたベル形揚力分布は、翼の翼幅を横切って接線速度が増加するため、プロペラでは実用的に達成できないことに留意すべきである。達成できる最善の方法は、先端付近で発生する揚力量を先細りにする揚力係数の低減である。プロペラの場合、高速の先端は通常、最も揚力と推力が発生する場所であるため、設計手法のバランスが必要となる。先端付近の荷重を減らすと、必要な推力を発生させるためにプロペラをわずかに速く回転させざるを得なくなる。
【0040】
一般に、プロペラ翼は、プロペラのハブに結合されるように構成される。翼は、ハブの中心から翼先端までの翼長を有する。翼は、ハブの近位にある揚力の負荷領域を有し、翼長さの約0.5r/R(約50%)であることが図8Aに例として示されている。翼はまた、ハブから翼の遠位端にある無負荷先端領域を有する。無負荷先端領域はゼロより大きい長さを有し、すなわち無負荷先端領域は先端端の前に始まる。無負荷先端領域は、翼の長さから負荷領域の長さを引いた任意の長さとすることができる。この例では、無負荷先端領域は約0.9r/R(約90%)から始まり、1.0r/R(100%)で先端まで続くため、約10%の長さを持つ。r/R値に対する揚力係数の値によって、図8Aに示す曲線上の任意の点に傾きを持つ揚力係数曲線が作成される。プロペラ翼の揚力係数は、揚力を発生させるために正の値を有する。図8Aに示す非限定的な実施形態では、負荷領域における揚力係数勾配は、負荷領域の長さに沿ってゼロであり、一般に、図示しない一定のAOAで、揚力係数は不変である。本明細書においてハブの中断として識別される、翼長さに沿った第1の位置において、負荷領域における揚力係数勾配は、揚力係数をより小さい正の値に減少させる第1の負の勾配に変化し、ハブの中断前の揚力係数勾配よりも急な勾配である。ハブ中断から遠位である翼長さに沿った別の位置において、揚力係数勾配は、第1の負の勾配よりも急峻でなく、第1の負の勾配よりも翼長さに沿って揚力係数を遅く減少させる第2の負の勾配に再び変化する。少なくとも1つの実施形態では、揚力係数勾配は、第2の負の勾配から、無負荷先端領域で再びゼロ勾配に滑らかに変化し、無負荷先端領域の長さにわたって継続することができる。ゼロの±0.05ciのような揚力係数値の僅かな変動は、実質的に依然として先端部を無負荷にするために許容可能であり、本明細書では「ゼロ」揚力係数と見なされる。
【0041】
図8Cは、2つの設計について、プロペラ翼の各半径断面で発生する設計揚力を示す。この例では、ベースラインプロペラは、翼翼幅の90%でセクション揚力のピークを示しているが、二重中断設計は、ピークを翼翼幅の(0.6)60%に戻している。また、二重中断設計では、翼幅の最後の10%では揚力が発生せず、プロペラ翼の吸込側と圧力側の間に効果的なバリアが形成されている。ベースラインプロペラの断面揚力が先細りになっているのは、翼設計に組み込まれたオーバル先端の弦長を短くしたためである。これらのプロペラは両方とも、同じ自由流速度(T=2.5Ibf、V=44ft/s)で同じ推力用に設計されているため、翼の翼幅にわたって積分されたセクション揚力は同じである。
【0042】
ベースライン設計では、最大ci/cdを達成するようにAOAを設定することによってciを一定に保持しているため、各放射状セクションは最大二次元効率の条件で動作する。ciの半径方向分布を先細りにすることで、二重中断設計は明らかにこの高効率条件を達成できない。しかし、先端に負荷がかからないことによる誘導抗力の減少によって、効率の一部を取り戻すことができる。二重中断デザインのアプローチには、翼のどれだけの部分の負荷をなくすかという固有のバランスがある。中断点をハブ側に移動させると、最大揚力発生位置が先端から遠ざかり、先端渦の強度が低下するため、発生する騒音が減少する可能性が高いが、全体的な効率も低下する。中断点を先端側に移動させると、効率と先端渦の強さが増加し、騒音が増加する可能性が高い。
【0043】
実験1
【0044】
この実験では、プロペラ先端でゼロ揚力への移行を開始する場所を調べるとともに、プロペラ翼のどこでゼロ揚力が発生すべきかを探った。この実験はまた、必要なパワーを減少させ、同時にプロペラ先端に負荷がかからない結果として発生する騒音を減少させる中断点の最適な組み合わせが存在するかどうかを決定しようとした。
【0045】
図9Aは、試験した二重中断構成の試験マトリックスを示す例示的なグラフである。この研究では、GM-15翼型を、先に説明したのと同じ設計点で使用し、ハブの例示的な3.5°AOAを使用した。グラフは、ゼロ揚力が-2.72°のAOAで発生したことを示している。ハブの中断位置は0.90r/Rから0.40r/Rの範囲であった。
【0046】
図9Bは、図9Aからの二重中断設計のサンプルのciを示す例示的なグラフである。二重中断構成テストの結果は、90%の一定の先端中断値を使用して、80%のハブ中断から40%のハブ中断までのデータを表示している。ハブ中断位置を変更することによる、図11に示す必要プロペラ機械出力と、図12および図17に示すSPLの両方への影響を、以下で確認することが可能である。
【0047】
図10は、ハブ中断と先端中断の割合の関数として、テストしたすべてのプロペラの回転速度の図解グラフである。上述したように、別段の記載がない限り、試験は、44ft/sの自由流速でT=2.5Ibfの設計条件であった。ハブ中断率は40%から90%の範囲で変化し、X軸は先端中断率を示している。実験結果はデータポイント間を実線で示し、BEMT予測結果はデータポイント間を破線で示している。ただし、90%のデータについては、実験結果は実線で、BEMT予測結果は空洞のデータポイントが1点のみ示されている。必要な回転速度は、ハブと先端の中断点の両方が増加するにつれて低下する。これは、高ciの場合、AOAで動作する翼の部分が大きくなるため、同じ全体揚力を得るために、より低い動圧が必要となるためである。細いコードを持つ純正プロペラは6450RPMを必要とするのに対し、90_97プロペラは5060RPMしか必要としない。純正プロペラは、40ハブ中断プロペラと先端中断が90以下の50ハブ中断プロペラ以外のすべてのプロペラより回転が速い。一般的なプロペラ設計の経験則では、回転数が低いほどSPLが低くなるが、これから示すように、これらの無負荷先端プロペラではそうではない。また、各プロペラについてBEMT設計コードによって予測された回転速度も示す。予測結果は、実験結果と同じように、ハブと先端の中断点が増加するにつれてRPMが減少する傾向を示している。
【0048】
特に図10に示すように、BEMTコードは、40および50のハブ中断プロペラの回転数と必要回転数を大幅に過大予測し、60および70のハブ中断プロペラの回転数をかなり良好に予測し、80および90のハブ中断プロペラの回転数を過小予測している。GM-15翼断面の空力データの不確実性が、この不一致の一部を説明することができたが、40と50のハブ中断プロペラの大きな過大予測は、BEMTフォーミュレーションが無負荷プロペラの先端付近の誘導速度を予測するのが困難であることを示している。さらに、特に図11に示すように、BEMT設計コードは、低率のハブ中断と先端中断に必要な機械動力を大幅に過大予測し、高率のハブ中断と先端中断点に必要な機械動力を過小予測している。このような不正確な予測は、BEMT設計コードでは予測できない、先端に負荷をかけないことで生じる誘導抗力の低減が原因であると理論化されている。
【0049】
図11は、ハブ中断および先端中断の割合の関数として、すべてのテスト済みプロペラに必要な機械的出力の例示グラフである。ハブ中断率は40%から90%まで変化し、X軸は先端中断率を示している。図10と同様に、実験結果はデータポイント間の実線で示し、BEMT予測結果はデータポイント間の破線で示している。ただし、90%のデータについては、実験結果は実線のデータポイント、BEMT予測結果は空洞のデータポイントが1点のみ示されている。ハブの中断線は互いに折れ曲がり、必要な電力は主に先端の中断位置の関数となる。この現象は、図10に示した回転速度の大きな違いや、ハブ中断が先端から遠ざかるにつれてトルクが大幅に低下するという直接的な結果を考慮すると、予想外の結果である。先端中断点が増加するにつれて必要な出力がわずかに減少するのは、最大ci/cdのAOA付近で動作していない翼の領域が小さくなるためと考えられる。BEMT設計コードは、低ハブおよび先端中断点に必要な機械的出力を大幅に過大に予測し、高ハブおよび先端中断点に必要な機械的出力を過小に予測している。この誤った予測は、BEMT設計コードでは予測できない、先端に負荷をかけないことで生じる誘導抗力の減少によるものであると推論されている。カスタムプロペラは、純正プロペラよりも効率的であり、これは、純正プロペラの未知の翼断面ではなく、GM-15翼の高いci/cdに一部起因していると考えられる。この効率は、適切な翼型断面の選択と最適化された翼幅方向のAOA設計により、航空機の航続距離と耐久性に悪影響を及ぼすプロペラの全体的な効率を犠牲にすることなく、先端に負荷をかけないことができることを示している。
【0050】
図12は、90、80および70ハブ中断点率プロペラの半径方向SPL分布の例示グラフである。純正プロペラは、先端で発生する揚力によって発生する強い渦のため、先端付近のSPLに大きなピークがある。SPLのピークがハブに向かってわずかに動いているのは、流れがプロペラによって回転平面を横切って加速されるときに、ストリームチューブが収縮するためである。ハブ近傍のSPLは、本発明のカスタムプロペラではかなり低くなっている。これは、コード長を大きくしてスラスト荷重を低減することにより、プロペラをより低速で回転させ、翼の吸込側と吸込側の間に生じる圧力差を小さくしているためである。ハブ中断点90のプロペラは、純正プロペラよりハブに近い位置でのピークSPLがわずかに低い。ハブと先端の中断点が減少し、プロペラ先端のより多くが無負荷になると、ピークSPLは減少し、ハブに向かって移動する。また、ハブと先端の中断点が減少し、揚力発生が先端から遠ざかるにつれて、ピークSPLは広くなる。
【0051】
図13は、60ハブ中断点パーセンテージプロペラの半径方向SPL分布の図解グラフである。60_94プロペラと60_90プロペラは、図12に見られる傾向を引き継いでおり、ピークSPLが減少し、ピークがハブに向かって移動している。60_86と60_81のピークは、さらにハブに向かって移動しているが、わずかに増加している。
【0052】
図14は、50ハブの中断点率プロペラの半径方向SPL分布の図解グラフである。50_94プロペラを除いて、このプロペラセットのSPLは、他のカスタム設計プロペラで明確に見ることができる先端渦のロールアップに関連した顕著なピークをもはや持っていない。SPLが減少するのは、先端付近の無負荷により先端渦が減少するためですが、先端の中断点が減少する(ハブに近づく)につれて増加する回転速度とのバランスもあり、SPLが増加する傾向がある。そのため、ハブに近い翼の領域は、より大きな推力を発生する必要があり、したがって、この領域でより高いSPLを生成する。本明細書で論じたように、50_90は、提供されたパラメータに対して有利な性能を提供した。
【0053】
図15は、40ハブ中断点パーセンテージプロペラの半径方向SPL分布の図解グラフである。同様の傾向が40ハブ中断セットのプロペラで見られる。明確なピークのないSPL半径方向等高線は、先端渦の急速な破壊または二重渦の巻き上がりを示す。
【0054】
図16Aは、80%から40%までのハブ中断の機械的パワーの例示的グラフである。図16Aは,ハブ中断が80%から40%まで,先端中断が90%で一定の場合の機械動力の例示的なグラフである.ハブ中断位置を減少させると、ハブ領域から利用可能な揚力が減少し、その結果、この実験の所望の設計例である推力2.5Ibfを達成するために回転数が高くなることがわかる。回転数が高くなると、必要な機械出力もわずかに高くなる。ベースラインのGM-15プロペラは、設計AOAである3.5°でプロペラ翼全体に推力を発生させる。市販の純正プロペラは、最も回転数が高く、必要な機械的出力が最も高くなる。従って、50_90プロペラは、通常のプロペラより約5.2%必要機械出力が低い。また、50_90プロペラは、ベースラインプロペラに対して必要な機械動力が約2.1%高い。
【0055】
図16Bは、90%の一定の先端中断で80%から40%のハブ中断に対するSPLの例示的グラフである。図16Cは、先端中断を90%に一定とし、ハブ中断を80%から40%に変化させた場合のSPLを示す別の図解グラフである。翼の負荷部分を先端から遠ざけるハブ中断が低いほど、SPLは低くなり、r/Rが50%と40%で横ばいになる。回転数が最も低く、必要な機械的パワーが低いにもかかわらず、ベースラインプロペラは最もうるさいプロペラである。ノーマルプロペラのSPLは、ベースラインプロペラよりわずかに小さい。したがって、50__90中断プロペラによって、ベースラインプロペラに比べてピークSPLを15dBA近く低減することが可能である。観察された傾向は、異なる一定の先端中断を持つハブ中断でも同様である。
【0056】
この実験では、様々なハブ中断に対する先端中断の効果も研究された。ハブ中断の程度に応じて、様々な先端中断が研究された。先端の中断は、ハブの中断に応じて、ハブから97%から77%のr/Rの範囲に及んだ。機械的出力とSPLの両方に対する先端破損のプロットを後述の図16D図16Eに示す。
【0057】
図16Dはテストされたハブ中断に対する必要な機械的パワー対先端中断(%)の図解グラフである。試験したすべてのハブ中断において、先端中断を先端側に移動させると、必要な機械的出力が低下した。この傾向は、試験したすべてのハブ中断で一貫している。
【0058】
図16Eは、テストしたハブ中断のピークSPL対先端中断(%)の図解グラフである。ハブ中断を減少させると、テストした先端中断のSPLが低下する。テストされた組み合わせの中で、50_90プロペラは、テストされたシリーズの最小値であるSPLが最も低いようであった。そのため、SPLが最も低い50_90コンフィギュレーションが最良のプロペラとして選ばれた。機械動力は、テストした他のプロペラと一致しており、次に小さい先端中断より4ワットだけ大きい。
【0059】
図17は、純正プロペラと比較した、必要なパワーの減少の関数としてのピーク音圧減少の例示的なグラフである。非限定的な例として試験された実施形態の試験データから、SPLと必要なパワーの観点から例示的な最良のプロペラ設計を決定するために、データは、純正プロペラと比較して知覚される音の減少とパワーの減少を比較するために分析された。これを行うために、以下のSPL方程式を各プロペラの音圧pについて解くために再整理し、巡航条件における純正プロペラの到達音圧と比較した。
【数1】
ここで、pref=20pPa。この式は、SPLの6dB減少は音圧の50%減少に相当することを示している。図17は、V=44ft/sでT=2.5Ibfを発生させながら、ノーマルプロペラと比較して必要なパワーの低減の関数として、測定されたピーク音圧レベル低減の概要を示している。この一連のテストは、必要なパワーが主に先端中断点の結果であることを示している。先端中断点が高いプロペラは、翼の翼幅の多くで最適な揚力抗力比に近い状態で作動し、必要なパワーを下げる。また、ピークSPLは、ハブ中断点が小さくなるにつれて減少し、先端中断点が大きくなるにつれて小さくなることが示されている。以前の調査では、SPLの減少は回転速度の低下と直接相関することが示された。ここでは、SPLは先端付近の負荷量にも関係することが示されている。先端部での負荷が少なければ、通常、同じ推力を発生させるために高い回転速度が必要となるため、これら2つの効果のバランスが、SPLを最大に低減するための最適な先端中断点を生み出している。先端荷重と回転速度の間のこの複雑な関係は、SPL低減傾向を予測することを困難にしている。
【0060】
プロペラ設計の選択基準を例示する目的で、基準は、最も高い音響低減率および最も高い効率増加率を有するものとして表すことができる。これらの基準に基づき、50%ハブ中断点、90%先端中断点のプロペラは、74.6%の知覚音の低減と5.2%の総合効率の増加で、テストされたプロペラの中で最も最適な設計であると決定された。ハブ中断点90%、先端中断点97%のプロペラは、総合効率が7.8%と最も大きく向上したが、音の低減は6%にとどまった。ハブ中断点50%、先端中断点90%のプロペラに比べて効率が上昇すると、騒音低減率はさらに低下した。これは、先端の渦の強さの減少が、モーターが克服しなければならない抗力の量よりも、SPLに大きな影響を与えるためである。SPL低減と比較した効率により、効率とSPLの加重を等しくして、ハブ中断点50%、先端中断点90%のプロペラがテストされた最良のプロペラとして選択された。
【0061】
まとめると、この実験の目標は、音圧レベルを低下させ、同時に必要なパワーを低下させるプロペラ設計アプローチを開発することであった。ハブと先端の迎え角中断点を変化させた設計プロペラは、これら両方の改善を提供した。パワーの低減は約2%からほぼ8%の範囲であり、SPLの低減は5%から75%の範囲であった。これらの性能向上は、プロペラ先端に負荷をかけないことで発生する先端渦の強度が低下した結果、誘導抗力が減少したためと思われる。このような改善により、UASはより低騒音でより長く運用できるようになり、人口密集地でのアーバン・エア・モビリティ・ビークル(Urban Air Mobility Vehicle)の受け入れを早めることができる。
【0062】
実験2
【0063】
この実験では、所望の設計性能を達成するために必要な機械的出力、および推力出力レベルおよび回転数における騒音レベルに対する迎え角(AOA)の効果に焦点を当てた。この実験では、本発明の二重中断設計の様々な実施形態を比較した。この実験の設計ポイントは、本明細書で論じた他のものと同様に、推力2.5Ibf、自由流速度44ft/s、高度7,000ftであり、1.87インチの定コードプロペラ構成、13.3インチのプロペラ直径、および楕円形状の先端部である。すべての翼型空力データは、XFOILに見られるレイノルズ数100,000で報告されている。
【0064】
誘導抗力を最小にする二重中断設計により、純正の市販プロペラやベースラインBEMTよりも静かで空気力学的に効率的なプロペラが得られる。有利な実施例では、二重中断プロペラ設計は、ハブからr/Rが50%まで一定の迎え角(AOA)を組み込み、セクションプロペラのスラスト負荷は、上述したように、50_90構成に対してr/Rが90%でゼロ揚力まで低下した。プロペラは、4つの異なる翼型を使用して設計された:GM-15、GOE225、GOE358、およびS1223である。
【0065】
上述したのと同じ設計点条件の50_90GM-15プロペラでは、ハブAOAと先端AOAの両方の影響を調べることが望まれた。GM-15プロペラでは、ハブAOAが3.5°であることが、この中断の組み合わせの最適設計であると決定された。図8Aに示すように、このAOAは、最大ci/cdレベル部分の曲線が曲がり始めるci/cd曲線上にある。もう1つの可能な設計点は、図8Aの曲線イオンのレベル部分の中央、5.5°のAOAであろう。したがって、この実験では、3.5、4.5、および5.5のAOAがテストされた。先端AOAもプロペラの性能、特に先端渦の発生に影響する。先端の揚力がゼロの状態は、-2.72°のAOAに相当する。試験された先端条件の範囲は、-2.22°、-2.72°、および-3.22°のAOAであり、ゼロ揚力AOA±0.5°に相当する。
【0066】
GM-15プロペラのバリエーションの結果を図18~21に示す。図18は、GM-15設計プロペラのグラフであり、テストした全てのハブAOAについて、-2.22、-2.72及び-3.22の先端AOAに対する機械的パワーの関数としてピークSPLを示す。グラフは、ハブAOAを増加させると、AOAが高いほどピークSPLが高くなり、より多くの機械動力が必要になるという一般的な傾向を示している。先端AOAがより負になると、SPL値はより低くなり、必要とされる機械的パワーもより大きくなる。
【0067】
図19は、テストしたハブAOAの-2.22と-3.22の先端AOAのRPMの関数としてのピークSPLを示すGM-15設計プロペラのグラフである。このグラフは、ハブAOAが低いほどRPMが高くなることを示している。ハブのAOAが低い場合、それに対応してci値も低くなるため、所望の推力を得るためにはより多くのRPMが必要となる。テストした先端AOAでは、-3.22の値(ゼロ揚力AOAよりもわずかにマイナス)が、与えられたハブAOAに対して最も低いピークSPLをもたらした。この結果は、ゼロ揚力AOAよりもわずかに負の先端AOAが、より効果的に先端渦を減少させ、SPLを低下させることを示している。市販の純正プロペラのピークSPLは128.7dBAである。ハブAOAが3.5°、先端AOAが-3.22の場合の最低ピークSPLは118.6dBAであり、純正プロペラより10.1dBA低い。
【0068】
図20は、テストしたすべてのハブAOAについて、-2.22、-2.72、および-3.22の先端AOAについて、RPMの関数としての機械的出力を示すGM-15設計プロペラのグラフである。このグラフは、先端AOAを減少させる(よりマイナスにする)と、機械動力とRPMが増加することを示している。これらのテストから、低いSPLが望まれる場合、ci/cd曲線上のハブAOAを使用することができる。GM-15プロペラの場合、その値は3.5°である。さらに、SPLを低く保つために、先端AOAはゼロ揚力よりわずかにマイナスが望ましい。これらのテストでは、-3.22°が最も低い値を示した。さらにテストを行った結果、-3.22°よりも負に近いAOAの方が、SPLが増加することがわかった。
【0069】
図21は、ハブAOAが3.5°の50_90プロペラの後方1インチをトラバースして測定した、翼に沿った半径方向距離の関数としてのSPLを示すGM-15設計プロペラのグラフである。このグラフから、SPL値が最も低いのは-3.22°であり、AOAが負になるほどSPL値が高くなることがわかる。
【0070】
まとめると、GM-15の研究では、ハブAOAを3.5°から6.5°まで変化させ、スラスト荷重ゼロの先端迎え角を-2.7°と一定にした。次に、各ハブ迎え角に対して、先端迎え角を-3.2°から-2.2°まで変化させた。迎え角-2.2°は、各ハブ迎え角で最もスラストパワーが小さい。しかし、より低い音圧レベルを望むのであれば、より低いハブ迎え角3.5°と4.5°では、先端迎え角-3.2°を使用すべきであり、その結果、ハブのAOA3.5°ではSPLが7.8%減少する。このデータからわかるように、ハブ迎え角と先端迎え角の様々な組合せを用いると、スラストパワーの低下とSPLの低下との間にトレードオフが存在する。
【0071】
図22~24は、テストしたすべての翼型の結果を示し、市販の純正プロペラのデータも含む。4つの翼型設計は、GM-15、GOE225、GOE358、およびS1223である。テストでは、先端での揚力がゼロになるような特定の設計の先端AOAを使用した。GM-15の設計では、先端AOAは-2.72°であった。GOE225設計では、先端AOAは-4.3°であった。GOE358設計では、先端AOAは-3.5°であった。S1223デザインでは、先端AOAは-5.25°であった。設計されたプロペラと比較するために、アエロノートのカムカーボン13x10プロペラを市販のストックプロペラとして選択した。これは直径13.3インチ、最大コード長1インチ、シミター形状の先端を持つ。
【0072】
図22は、すべての先端AOAにおける最大設計ハブAOAの機械動力の関数としてのピークSPLを示す試験済み翼形に関するグラフである。図23は、すべての先端AOAに対するci/cd最大設計ハブAOAについて、RPMの関数としてのピークSPLを示す試験済み翼形についてのグラフである。図24は、すべての先端AOAにおけるci/cd最大設計ハブAOAのRPMの関数としての機械動力を示すテスト済み翼形のグラフである。テストしたすべてのカスタムプロペラは、市販プロペラよりもピークSPLが低かった。GM-15とGOE358プロペラは、一般的に機械的パワー要求も低かった。このプロットのグループは、ハブAOAを設計AOAで一定に保ち、ゼロ揚力AOA上で先端AOAを±0.5°変化させた。GOE358は、GM-15と同様の挙動を示す。しかし、ci/cd最大値が低く、作動範囲にわたって抗力が高いため、必要な機械的出力が高くなる。GOE225は、より高い抗力値を持ち、より高い機械的動力を引き起こす。S1223は抗力値が最も高く、必要な機械的出力が最も高くなる。設計AOAでの抗力係数は、他の翼型よりもはるかに高い。その結果、テストした先端AOAでは性能に大きな差は見られなかった。一般に、GM-15とGOE358の両方において、先端AOAがマイナスになるにつれてピークSPLが低下する。GOE225では,ゼロ揚力AOAよりも先端AOAを小さくする(よりマイナスにする)ことは逆効果であり,ピークSPLも増加する.S1223では、ピークSPLに大きな差はない。ピークSPLと機械動力の対回転数のプロットも同様の傾向を示している。GM-15は、他のプロペラより回転数が高い(揚力係数が低い)が、機械動力は最も低い。最も低いピークSPL値はGOE358である。一般的に、GM-15で見られるように、特に抵抗が少なく、適度に適切なci/cd曲線を持つ翼型では、先端AOAが低い(より負)ほど、ピークSPLが低くなる。ゼロ揚力の先端AOAを使用することは、許容範囲内の選択ですが、先端AOAをゼロ揚力のAOAよりもわずかにマイナスにすることで、いくらかの追加性能が得られるかもしれない。その結果、必要な機械的パワーがわずかに増加する。
【0073】
図25は、すべてのci/cdハブAOAにおけるゼロ揚力先端AOAの機械動力の関数としてのピークSPLを示す試験済み翼形に関するグラフである。図26は、すべてのci/cdハブAOAにおけるゼロ揚力先端AOAのRPMの関数としてのピークSPLを示す試験済み翼形に関するグラフである。図27は,すべてのci/cdハブAOAにおけるゼロ揚力先端AOAのRPMの関数としての機械動力を示す試験済み翼形に関するグラフである.これらの図では、ゼロ揚力AOAは翼形に対して一定であり、ハブAOAは試験した範囲にわたって変化している。この傾向は、設計ハブAOA(各プロペラでテストした最低AOA)が、最低ピークSPLと最低機械動力をもたらすことを示している。この傾向は、ci/cd曲線が最大値に中断する選択されたAOAが有利な設計ポイントであることを補強している。また、このハブAOAを使用すると、各プロペラでテストしたハブAOAの範囲で最も高いRPMが得られる。
【0074】
実験3
【0075】
選択された先端領域の負荷をなくすことにより、プロペラを回転させるのに必要なトルクが減少し、機械的消費電力の減少につながる。機械的パワーの比較は、設計に最適なプロペラのコードと回転数を推奨するために行うことができる。
【0076】
図28Aは、本明細書の教示による、電力損失を最小にするための異なるコード長を有する所与のプロペラ設計のRPMの関数としての機械的動力を示す例示的なグラフである。図28Bは、本明細書の教示による、最小出力損失のための異なるコード長を有する所定のプロペラ設計のRPMの関数としての効率を示す例示的なグラフである。図28A及び図28Bにおいて、RPM及びコードは、推力パワー損失を最小化し、効率を最大化する最適な翼弦長、又はそれらの幾つかの組合せを見出すことを望んで、所与のプロペラ設計に対して変化することが許容された。非限定的な例では、特定の翼設計のための1インチの翼長は、良い選択であると思われる。
【0077】
上述した発明の1つ以上の態様を利用する他のさらなる実施形態は、特許請求の範囲に定義される開示された発明から逸脱することなく考案することができる。例えば、他の実施形態は、他の様々なピッチ角度、プロペラ長さに沿ったピッチ角度の変化、先端形状、全体的なプロペラ形状、及び、参照により本明細書に組み込まれる付録における議論及び変形を含む、特許請求の範囲内で本明細書に具体的に開示されたもの以外の他の変形を含むことができる。
【0078】
本発明は、好ましい実施形態および他の実施形態の文脈で説明されており、本発明のすべての実施形態が説明されているわけではない。記載された実施形態に対する明らかな修正および改変は、当業者に利用可能である。開示された実施形態および未開示の実施形態は、出願人らによって着想された発明の範囲または適用可能性を制限または限定することを意図するものではなく、むしろ、特許法に準拠して、出願人らは、以下の特許請求の範囲に含まれるすべてのそのような修正および改良を完全に保護することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブに結合された少なくとも1つの翼を有して軸方向推力を生じさせるように構成される回転プロペラであって、前記翼は、当該プロペラの中心から、前記ハブから前記翼の遠端での翼端部までの翼長さを有し、前記プロペラの翼は、前記翼の先端へ向かって値が減少して迎え角を低下させることにより、前記先端より先に揚力係数がゼロ以下になるベータ角を有するように形成される、回転プロペラ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転プロペラであって、実質的にゼロ以下になるように値を減少させる前記ベータ角は、先端中断部で起こり、さらに前記ベータ角は、前記先端中断部で減少する前に、前記ハブに距離が近いハブ中断部で減少する、回転プロペラ。
【請求項3】
請求項2に記載の回転プロペラであって、前記プロペラの翼の揚力係数は、負荷領域内において前記ハブから前記翼の長さに沿って正の値を有し、前記翼の長さに沿って前記先端に向かって徐々に負の傾斜となるような減少を前記ハブ中断部で開始させ、前記先端中断部で実質的にゼロ以下の傾斜に変化する、回転プロペラ。
【請求項4】
請求項3に記載の回転プロペラであって、前記先端中断部で実質的にゼロ以下の傾斜にまで減少する前記翼の長さの一部は、前記実質的にゼロ以下の傾斜にまで漸近的に減少する、回転プロペラ。
【請求項5】
請求項1に記載の回転プロペラであって、前記先端よりも先にゼロ以下となる前記揚力係数を有する前記翼の長さは、実質的な揚力のない非ゼロ長さを有する無負荷先端領域を有する、回転プロペラ。
【請求項6】
回転プロペラの翼であって、軸方向スラストを発生させるように構成され、前記翼の遠端にて回転軸からの先端を有し、前記先端の端部よりも先に無負荷先端領域内において実質的にゼロ以下の揚力を生じさせるように構成される、回転プロペラの翼。
【請求項7】
請求項6に記載の回転プロペラであって、前記プロペラの翼の揚力係数は、負荷領域内において前記回転軸付近で正の値を有し、前記翼に沿って前記先端に向かって徐々に負の傾斜となるような減少を開始させ、端中断部で実質的にゼロ以下の傾斜に変化する、回転プロペラの翼。
【請求項8】
請求項7に記載の回転プロペラであって、前記揚力係数は、前記先端中断部で前記実質的にゼロの傾斜に漸近的に減少する、回転プロペラの翼。
【請求項9】
請求項6に記載の回転プロペラであって、前記プロペラの翼の揚力係数は、ハブ中断部で減少し、さらに先端中断部で前記実質的にゼロ以下の傾斜に減少する、回転プロペラの翼。
【請求項10】
プロペラのハブに結合されように構成され、軸方向スラストを発生させるように構成され、前記ハブの近くから先端の近くへ向かってベータ角を小さくするように変化させ、前記先端の端部よりも先に実質的にゼロ以下の揚力の発生を開始させる無負荷先端領域を生成する、回転プロペラの翼。
【請求項11】
請求項10に記載の回転プロペラの翼であって、前記無負荷先端領域は先端中断部で生じ、さらに前記ベータ角は、前記先端中断部でベータ角に変化する前に、前記先端中断部よりも前記ハブに距離が近いハブ中断部で第1の小さなベータ角へ変化する、回転プロペラの翼。
【請求項12】
請求項11に記載の回転プロペラの翼であって、前記プロペラの翼の揚力係数は、負荷領域内において前記ハブから前記翼の長さに沿って正の値を有し、前記ハブ中断部から前記翼の長さに沿って前記先端へ向かって徐々に負の傾斜に変化し始めて、前記先端中断部で実質的にゼロの傾斜に変化する、回転プロペラの翼。
【請求項13】
請求項12に記載の回転プロペラの翼であって、前記先端中断部で前記実質的にゼロ以下の傾斜に変化する前記翼の長さの部分は、前記実質的にゼロ以下の傾斜に漸近的に変化する、回転プロペラの翼。
【請求項14】
プロペラのハブに結合されるように構成されるプロペラの翼であって、前記ハブから当該翼の遠端で前記ハブの中心から翼先端部までの翼の長さを有し、揚力を生じさせるように構成される負荷領域と、無負荷先端領域を備え、前記無負荷先端領域は、前記翼の長さの少なくとも3%の非ゼロ長さを有し、前記無負荷先端領域に実質的にゼロ以下の揚力係数を生じさせるように構成され、前記プロペラの翼の揚力係数は、前記負荷領域内において正の値を有し、前記翼の長さに沿って延びる距離に対して第1位置から徐々に負の傾斜に変化し始め、前記翼の長さに沿った距離が前記第1位置よりも長い第2位置で徐々に正の傾斜に変化することで、前記無負荷先端領域に正ではない揚力係数を生じさせる、プロペラの翼。
【請求項15】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、揚力係数の値が、第1位置から減少し始め、前記翼の長さに沿って前記無負荷先端領域まで減少し続ける、プロペラの翼。
【請求項16】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、前記無負荷先端領域は、前記翼の動作中に前記翼の先端で発生する渦流を減少させるように構成される、プロペラの翼。
【請求項17】
請求項14に記載のプロペラの翼であって、前記無負荷先端領域は、前記翼の長さの45%未満の長さを有する、プロペラの翼。
【請求項18】
ハブに結合される先端を有する翼を有するプロペラの翼によって発生する渦流を減少させる方法であって、前記ハブに近接する前記翼の負荷領域内において正の揚力を生じさせる段階と、前記先端に近接して非ゼロ長さを有する前記翼の無負荷先端領域内において正の揚力の発生を回避する段階を有する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記先端へ向けてベータ角を減少させることで、前記先端より先に揚力係数が実質的にゼロ以下になるように迎え角を低下させる段階をさらに有する方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、ハブ中断部で前記ハブに近接するベータ角を変化させる段階と、前記ハブ中断部に対して前記ハブからの先端中断部遠端での前記ベータ角を変化させる段階をさらに有する、方法。
【国際調査報告】