(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】極低温冷却装置のための熱交換器
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240314BHJP
F25B 9/12 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F25B9/00 J
F25B9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558891
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 GB2022050501
(87)【国際公開番号】W WO2022200761
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ アンソニー
(57)【要約】
【課題】半自動化又は全自動化が可能な、より単純な組立工程に適する熱交換器を提供する。
【解決手段】極低温冷却装置のための熱交換器が提供される。熱交換器は、第1の導管と、第2の導管と、チャンバとを有し、チャンバは、流体を第1の導管から受け取るように配置され、第2の導管は、チャンバの外側に熱的に結合される。チャンバは、第1の領域と第2の領域とを有し、第1の領域は、チャンバを通って延びるプレートによって第2の領域から分離され、プレートは、第1の領域から第2の領域への流体の流れを可能にする1又は2以上の開口を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷却装置のための熱交換器であって、
第1の導管、第2の導管、及びチャンバを備え、
前記チャンバは、前記第1の導管から流体を受け取るように配置され、前記第2の導管は、前記チャンバの外側に熱的に結合され、前記チャンバは、第1の領域と第2の領域とを有し、前記第1の領域は、前記チャンバを貫通して延びるプレートによって前記第2の領域から分離され、前記プレートは、前記第1の領域から前記第2の領域への前記流体の流れを可能にする1又は2以上の開口を含む、熱交換器。
【請求項2】
前記プレートは、前記チャンバを通る前記流体の流れを妨げるように配置される、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記チャンバは、前記第1の導管に沿って配置される、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1の導管は、前記第1の領域内で第1の位置で及び前記第2の領域内で第2の位置で前記チャンバの内側に流体的に結合され、前記1又は2以上の開口は、前記第1の位置及び/又は前記第2の位置から前記プレートに沿った方向において横方向にオフセットする、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記チャンバの中心を通って延びる中心軸を備え、前記第1の導管は、前記中心軸に沿って配置された2つの位置で前記チャンバに結合される、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記熱交換器は、前記中心軸の周りに回転対称である、請求項5に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第1の導管は、前記第2の導管の内側に配置される、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記チャンバは、前記第2の導管の内側に配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記チャンバは、それぞれ前記チャンバの反対側の側面を形成する第1の末端部と第2の末端部とを含み、前記第1の末端部は、流れ偏向体によって前記第2の末端部に結合され、前記流れ偏向体は、前記第1の末端部を前記第2の末端部から分離するカラーを含み、前記プレートは、前記流れ偏向体の一部を形成するために前記カラーを横切って延びる、請求項1から8のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記第1の末端部及び前記第2の末端部の一方又は両方は、前記チャンバの内側に配置された第1の面と、チャンバの外側に配置された第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に配置されたホイル部材とを含み、前記第1の面及び前記第2の面の各々は、前記ホイル部材に適用された焼結材料を含む、請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
周囲支持部材は、前記ホイル部材の各々の外周の周りに配置され、前記周囲支持部材は、カラーに融着される、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記ホイル部材及び/又は前記焼結材料の熱伝導率は、300Kの温度の場合に前記周囲支持部材及び/又は前記カラーの熱伝導率の少なくとも20倍の大きさである、請求項11に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記第1の面及び/又は前記第2の面は、前記ホイル部材上の前記焼結材料の厚さが前記中心軸からの半径方向の距離とともに増加するように輪郭形成される、請求項5、及び、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記チャンバは、前記流体を前記第1の領域及び前記第2の領域を通って搬送する流路を画定し、前記流路は、前記第1の末端部及び前記第2の末端部に適用された焼結物内に形成される、請求項9から13のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記流路は、前記チャンバを通る1又は2以上の流路を含み、前記1又は2以上の流路は、前記第1の末端部及び前記第2の末端部に適用された前記焼結物によって形成される、請求項14に記載の熱交換器。
【請求項16】
前記チャンバは、前記流体を前記第1の領域及び前記第2の領域を通って搬送する流路を画定する、請求項1から13のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項17】
前記流路の深さは、前記中心軸からの前記半径方向距離とともに減少する、請求項5及び16に記載の熱交換器。
【請求項18】
極低温冷却装置であって、
ターゲット冷凍機と、
請求項1から17のいずれか1項に記載の熱交換器と、
を備え、
前記第1の管路は、作動流体を前記ターゲット冷凍機へ搬送するように配置され、前記第2の管路は、前記作動流体を前記ターゲット冷凍機から搬送するように配置される、極低温冷却装置。
【請求項19】
希釈冷凍機であって、
分溜器と、混合チャンバと、
請求項1から17のいずれか1項に記載の熱交換器と、
を備え、
前記第1の導管は、作動流体を前記分溜器から前記混合チャンバに流すように配置され、前記第2の導管は、前記作動流体を前記混合チャンバから前記分溜器に流すように配置され、
前記熱交換器は、前記第1の導管内の前記作動流体を前記第2の導管内の前記作動流体と熱的に結合するように構成されている、希釈冷凍機。
【請求項20】
前記混合チャンバは、焼結物の質量体を備え、前記第1の導管は、開放されて前記焼結物の質量体の一部の周りに延びる末端部分を備え、前記焼結物の質量体の前記一部を前記作動流体と接触させるようになっており、前記第2の導管は、前記末端部分及び前記焼結物の質量体の周りに延び、前記作動流体を前記焼結物の質量体から離れる方向に搬送するようになっている、請求項19に記載の希釈冷凍機。
【請求項21】
前記希釈冷凍機は、前記希釈冷凍機の作動が、前記第1の導管の前記末端部分の内側の位置で相境界を前記作動流体に生じさせるように構成される、請求項20に記載の希釈冷凍機。
【請求項22】
前記熱交換器は、使用中に30mK未満の温度を取得するように配置される、請求項19から21のいずれか1項に記載の希釈冷凍機。
【請求項23】
前記分溜器と前記混合チャンバとの間に配置された冷却板をさらに備え、前記冷却板は、希釈冷凍機の作動中に前記分溜器と前記混合チャンバとの間の基準温度を取得するように配置され、前記希釈冷凍機は、前記冷却板と前記混合チャンバの間に延びる前記第1の導管の一部に沿って配置された1又は2以上の前記チャンバを含むチャンバ組立体をさらに備え、前記チャンバの各々は、前記作動流体を前記第1の導管から受け取るように配置され、前記第2の導管は、前記チャンバの各々の外側に熱的に結合されている、請求項19から22のいずれか1項に記載の希釈冷凍機。
【請求項24】
前記チャンバ組立体は、ステップ熱交換器を形作る、請求項23に記載の希釈冷凍機。
【請求項25】
前記チャンバ組立体は、第1の前記チャンバと第2の前記チャンバとを含み、前記第1の前記チャンバは、前記冷却板と前記第2の前記チャンバとの間に配置され、前記第2の前記チャンバの深さ、及び/又は、前記第2の前記チャンバの前記プレートを貫通する開口の数、又は、前記第2の前記チャンバの前記プレートを貫通する前記開口の大きさは、前記第1の前記チャンバのそれよりも大きい、請求項23又は24に記載の希釈冷凍機。
【請求項26】
前記チャンバ組立体及び前記混合チャンバは、前記第1の導管を貫通して延びる軸の周りで回転対称である、請求項23から25のいずれか1項に記載の希釈冷凍機。
【請求項27】
前記チャンバの各々は、前記流体をそれぞれの前記第1領域及びそれぞれの前記第2領域を通って搬送する1又は2以上の流路を含み、前記流路の各々は、焼結物内に形成され、前記チャンバ組立体は、前記希釈冷凍機の作動中に熱勾配に沿って配置され、第1の前記チャンバは、第2の前記チャンバよりも高い基準温度を取得するように配置されており、前記第1のチャンバ内の1又は2以上の流路の直径は、前記第2のチャンバ内の1又は2以上の流路の直径よりも小さい、請求項23から26のいずれか1項に記載の希釈冷凍機。
【請求項28】
前記第2の管路は、前記熱交換器の外部を形成し、前記第2の管路は、一緒に融着される複数のモジュールから形成される、請求項19から27のいずれか1項に記載の希釈冷凍機。
【請求項29】
前記第1の導管は、一緒に融着される複数のモジュールから形成される、請求項19から28のいずれか1項に記載の希釈冷凍機。
【請求項30】
極低温冷凍機のための熱交換器を形成する方法であって、
第1の導管と、第2の導管と、第1の末端部と、第2の末端部と、流れ偏向体とを提供するステップであって、前記流れ偏向体は、カラー及びプレートとを含み、前記プレートは、前記カラーを横切って延びる、ステップ、
を含み、
前記第1の末端部を提供するステップは、
第1の周囲支持部材を第1のホイル部材の外周の周りに融着し、その後、焼結材料を前記第1のホイル部材の反対側の面に適用するステップを含み、前記第1の周囲支持部材の熱伝導率は、300Kの温度の場合に前記第1のホイル部材の熱伝導率よりも少なくとも20倍低く、
前記方法は、さらに
チャンバを形成するように前記第1の周囲支持部材を前記カラーに融着するステップであって、前記チャンバは、前記プレートによって第2の領域から分離された第1の領域を有し、前記プレートは、前記第1の末端部と前記第2の末端部との間に配置される、ステップ、
を含み、
前記第1の導管は、流体を前記第1の領域の中へ及び前記第2の領域から外に搬送するように配置され、前記プレートは、前記第1の領域から前記第2の領域への前記流体の流れを可能にする1又は2以上の開口を含み、
第2の導管は、前記チャンバの外側に熱的に結合されている、方法。
【請求項31】
前記第1のホイル部材を通る流体の流れを容易にするように、前記第1の導管の第1の部分を前記第1のホイル部材に融着するステップをさらに含み、前記第1の導管の前記第1の部分は、好ましくは、溶接又は真空ろう付けによって前記第1のホイル部材に融着される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の末端部を提供するステップは、
第2の周囲支持部材を第2のホイル部材の外周の周りに融着し、その後、焼結材料を前記第2のホイル部材の反対側の面に適用するステップを含み、前記第2の周囲支持部材の前記熱伝導率は、300Kの温度の場合に、前記第2のホイル部材の前記熱伝導率よりも少なくとも20倍低い、ステップを含み、
前記チャンバを形成するステップは、前記第2の周囲支持部材を前記カラーに融着させるステップをさらに含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記第2のホイル部材を通る流体の流れを容易にするように、前記第1の導管の第2の部分を前記第2のホイル部材に融着するステップをさらに含み、前記第1の導管の前記第2の部分は、好ましくは、溶接又は真空ろう付けによって前記第2のホイル部材に融着される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記周囲支持部材の各々は、溶接又は真空ろう付けによって前記ホイル部材のそれぞれに融着される、請求項30から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記周囲支持部材の各々は、局所的な熱源によって、好ましくは、レーザー溶接又は電子ビーム溶接によって、前記カラーに融着される、請求項30から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記開口は、前記流体が、前記チャンバを通る直線でない経路をたどるように前記第1の導管に対して配置される、請求項30から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記流体が前記第1の領域及び前記第2の領域を通って流れる1又は2以上の経路を画定するために、前記焼結材料に流路をインプリントするステップをさらに含む、請求項28から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
希釈冷凍機を形成する方法であって、
分溜器及び混合チャンバを提供するステップと、
請求項1から17のいずれか1項に記載の熱交換器を形成するステップと、
を含み、
前記第1の導管は、作動流体を前記分溜器から前記混合チャンバに流すように配置され、
前記第2の導管は、前記作動流体を前記混合チャンバから前記分溜器に流すように配置される、方法。
【請求項39】
前記第1の導管は、前記チャンバから前記作動流体を受け取るように配置された末端部分を含み、前記混合チャンバを提供するステップは、
前記末端部分を焼結物の質量体の周りに配置して、前記焼結物の質量体の一部を前記作動流体と接触するようにさせるステップと、
前記第2の導管を前記末端部分及び前記焼結物の質量体の一部の周りに配置して、前記作動流体を前記焼結物の質量体から離れる方向に搬送するようにするステップと、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の導管を前記焼結物の質量体が取り付けられる支持体に対して封止するステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の導管及び前記第2の導管は、組み立て用の複数のモジュールから形成され、前記方法は、前記チャンバと前記末端部分との間の位置で、前記第1の導管の第1のモジュールを前記第1の導管の第2のモジュールと一緒に融着するステップ、及び/又は、前記チャンバと前記末端部分との間の位置で、前記第2の導管の第1のモジュールを前記第2の導管の第2のモジュールと一緒に融着するステップを含む、請求項38から40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記希釈冷凍機の作動中に、前記分溜器と前記混合チャンバとの間で基準温度を取得するように、冷却板を前記分溜器と前記混合チャンバとの間に配置するステップと、
前記冷却板と前記混合チャンバとの間に延びる前記第1の導管の一部に沿って配置された複数の前記チャンバを提供するステップと、をさらに含み、
前記チャンバの各々は、前記作動流体を前記第1の導管から受け取るように配置され、
第2の導管は、前記チャンバの各々の外側に熱的に結合され、
前記第1の導管及び前記第2の導管は、組み立て用の複数のモジュールから形成され、
前記方法は、
2つの前記チャンバの間の位置で前記第1の導管のモジュールを前記第1の導管の別のモジュールと一緒に融着するステップ、及び/又は、2つの前記チャンバの間の位置で、前記第2の導管のモジュールを前記第2の導管の別のモジュールと一緒に融着するステップ、をさらに含む、請求項38から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記モジュールは、局所的な熱源を使用して、好ましくは、レーザー溶接又は電子ビーム溶接によって一緒に融着される、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記冷却板から前記混合チャンバへ延びる前記第1の導管の一部及び前記チャンバは、前記第2の導管の内部に配置される、請求項41から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
希釈冷凍機であって、
分溜器及び混合チャンバと、
作動流体を前記分溜器から混合チャンバに搬送するために配置された第1の導管と、
前記作動流体を前記混合チャンバから前記分溜器に搬送するように配置された第2の導管と、
前記分溜器と前記混合チャンバとの間の位置で、前記第1の導管内の前記作動流体を前記第2の導管内の前記作動流体と熱的に結合させるように配置された熱交換器と、
を備え、
前記熱交換器は、前記第1の導管の一部に沿って配置された1又は2以上のチャンバを含み、前記チャンバの各々は、第1の領域及び第2の領域を有し、前記第1の領域は、前記チャンバを通って延びるプレートによって前記第2の領域から分離され、前記プレートは、前記第1の領域から前記第2の領域への前記作動流体の流れを可能にする1又は2以上の開口を含み、前記第2の導管は、前記チャンバの各々の外側の周りに配置される、希釈冷凍機。
【請求項46】
複数のチャンバが提供され、前記第2の導管は、前記チャンバの各々の間で一緒に溶接される複数のモジュールで形成され、前記第1の導管は、好ましくは、前記チャンバの各々の間で一緒に溶接される複数のモジュールで形成される、請求項45に記載の希釈冷凍機。
【請求項47】
前記チャンバの各々は、それぞれの前記チャンバの反対側の側面を形成する第1の末端部及び第2の末端部を備え、前記第1の末端部は、流れ偏向体によって第2の末端部に結合され、前記流れ偏向体は、前記第1の末端部を前記第2の末端部から分離するカラーを備え、前記プレートは、前記カラーを横切って延び、前記第1の末端部及び前記第2の末端部の各々は、前記チャンバの内側に配置された第1の面と、前記チャンバの外側に配置された第2の面とを有し、前記第1の面及び前記第2の面は、前記第1の面と前記第2の面との間に配置されたホイル部材に適用された焼結材料から形成され、前記第1及び第2の末端部の各々は、前記ホイル部材のそれぞれの外周の周りに延びるそれぞれの外側支持部材をさらに備え、前記外側支持部材は、前記カラーに融着される、請求項45又は46に記載の希釈冷凍機。
【請求項48】
前記ホイル部材の熱伝導率は、300Kの温度の場合に、前記外側支持部材の熱伝導率の少なくとも20倍である、請求項47に記載の希釈冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷却装置のための熱交換器に関する。特に好都合な実施態様では、熱交換器は、希釈冷凍機の一部を形成する。
【背景技術】
【0002】
ミリケルビン温度への冷却を必要とする多くの用途がある。このような温度は、希釈冷凍機の作動によって取得することができる。希釈ユニットは、希釈冷凍機の一部を形成することになり、希釈ユニットは、熱交換器のセットによって接続された分溜器及び混合チャンバを備える。作動中、ヘリウム-3/ヘリウム-4混合物で形成された作動流体は、希釈ユニット内を循環する。冷却は、ヘリウム-3がヘリウム-4に希釈されるときに混合エンタルピーから混合チャンバで取得される。それによって、混合チャンバは、希釈冷凍機の何らかの部分の最低温度を取得するように作動可能である。ヘリウム-3は、分溜器で沸騰し、分溜器は、気化潜熱によってエネルギーを除去する。冷却板は、分溜器と混合チャンバとの間に配置され、一般的に使用中はこれら2つの構成要素の間の温度を取得する。
【0003】
熱交換器は、希釈冷凍機デザインの重要な要素であり、混合チャンバから出る「冷たい」ヘリウム3を、混合チャンバに戻る「温かい」ヘリウム3に結合させるために使用される。この交換の品質によって、例えば、到達可能な最低温度が決まる。今日(全ての希釈冷凍機上で)使用されている熱交換器には、基本的に2つの形式があり、いわゆる「連続」交換器及び「ステップ」交換器である。
【0004】
先行技術の希釈ユニットの例を
図1に示す。作動流体は、熱交換ユニット内の2つの向流経路を通って、分溜器102と混合チャンバ105との間を流れる。熱交換ユニットは、分溜器102と冷却板103との間に配置された連続熱交換器101を備える。連続熱交換器101は、螺旋状に構成された同軸ユニットを備え、これを通って2つの経路が反対方向に進み、内部経路は、コイル状構成(図示せず)で外部経路に取り囲まれる。連続熱交換器は、一般に約30ミリケルビンまでの温度を取得するために使用することができる。連続熱交換器のみを使用した希釈冷凍機は、低温での液体ヘリウムと金属との間のカピッツァ(熱境界)抵抗の増大に起因して、約30ミリケルビンで作動するように制限される。より低い温度では、連続熱交換器は、熱境界抵抗の増加に打ち勝つのに十分な表面積を提供しない。ステップ熱交換器は、カピッツァ抵抗を克服するために大表面積焼結物を使用することによって、さらに低い温度を取得するために使用することができる。2つのステップ熱交換器104は、冷却板103と混合チャンバ105との間にスタック状に配置される。各ステップ熱交換器は、2つの経路がホイルによって分離される実質的に円盤状の構造体を形成する。設けられるステップ熱交換器の数は、用途に適合するように選択することができる。
【0005】
一般的な使用において、「向流ブロック」及び「半連続」の2つの幾何形状のステップ熱交換器がある。向流ブロックについては、薄い膜とすることができる支持媒体を通して焼結物によって熱的に結合される2つのヘリウム-3の向流の流れがある。半連続熱交換器は、一般に、連続熱交換器と同様のコイル形状を有する。しかしながら、内部管路は、ともに接合され、外管内に封入される個別の焼結物のセットから構成される。外管が露出される場合、半連続熱交換器は、連続熱交換器の外観を呈することができる。あるいは、外管は、ステップ熱交換器の外観を呈する溶接箱内の中に収容することができる。
【0006】
希釈ユニット、詳細には上記のステップ熱交換器の組み立ては、通常、複雑かつ労働集約的な手順であり、この手順は、高度な訓練を受けた技術者が完成させるのに数百時間を要する。希釈冷凍機の性能は、組み立て工程における些細な違いに敏感であり、手作業による組み立て技術への高い依存は、希釈冷凍機の最終的な性能を必ずしも事前に正確に保証することができるわけではないことを意味する。特定の工程に従って製造された熱交換器と希釈冷凍機の性能との間の標準偏差を低減することが望ましい。また、自動化に適する、これらの装置を構築するより簡単な方法を提供することが望ましい。本発明は、このような問題を解決するという文脈において規定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、極低温冷却装置のための熱交換器を提供し、熱交換器は、第1の導管と、第2の導管と、チャンバとを備え、チャンバは、第1の導管から流体を受け取るように配置され、第2の導管は、チャンバの外部に熱的に結合され、チャンバは、第1の領域と第2の領域とを有し、第1の領域は、チャンバを通って延びるプレートによって第2の領域から分離され、プレートは、第1の領域から第2の領域への流体の流れを可能にするための1又は2以上の開口を備える。
【0008】
熱交換器の構成は、半自動化又は全自動化が可能な、より単純な組立工程に適する。従って、熱交換器の性能の再現性は、いくつかの先行技術の熱交換器と比較して改善される。プレートは、好ましくは、チャンバを通る流体の流れを妨げるように配置される。従って、開口は、流体がチャンバを通る直線でない経路をたどるように、第1の導管に対して配置することができる。第2の導管は、チャンバの外部に熱的に結合されているので、直線でない経路は、チャンバ内の第1の導管からの流体と第2の導管内の流体との間の熱的結合を増加させる。
【0009】
チャンバは、第1の導管に沿って配置することができる。換言すると、チャンバは、流体を第1の導管の第1の部分から直接受け取るように配置することができ、第1の導管の第2の部分は、流体をチャンバから直接受け取るように配置することができる。第1の導管は、典型的には、第1の領域内で第1の位置において及び第2の領域内で第2の位置においてチャンバ内部に流体的に結合され、1又は2以上の開口は、プレートに沿った方向で第1の位置及び/又は第2の位置から横方向にオフセットする。これによって、チャンバ内の流体と第2の導管内の流体との間の熱的結合が向上する。熱交換器は、典型的には、チャンバの中心を通って延びる中心軸を備え、第1の導管は、中心軸に沿って配置された2つの位置でチャンバに結合される。従って、1又は2以上の開口は、中心軸から半径方向に分散することができる。第1の導管が中心軸に沿って延びることで、熱交換器は、適切に支持され、より簡単な組み立てが促進されることが保証される。熱交換器は、好ましくは、中心軸の周りに回転対称である。これによって、組み立て方法がさらに簡素化されるが、その理由は、例えば、溶接工程を使用して接合部を形成する必要がある場合に、この溶接工程中に熱交換器を中心軸の周りに回転させることが可能であるからである。
【0010】
熱交換器の目的は、使用中に、第1の導管内の流体を第2の導管内の流体と熱的に結合することである。これら2つの導管が効果的に熱的に係合されることを保証するために、第1の導管は、好ましくは、第2の導管の内側に配置される。同様に、チャンバは、好ましくは、第2の導管の内側に配置される。第2の導管の内側流体は、第1の導管の外側及びチャンバと直接接触することになる。
【0011】
チャンバは、好ましくは、それぞれチャンバの反対側の側面を形成する第1の末端部及び第2の末端部を備え、第1の末端部は、流れ偏向体によって第2の末端部に結合され、流れ偏向体は、第1の末端部を第2の末端部から分離するカラーを備え、プレートは、流れ偏向体の一部を形作るためにカラーを横切って延びる。これらの構成要素は、以下に説明するように一緒に融着することができる。典型的には、第1の末端部及び第2の末端部の一方又は両方は、チャンバの内側に配置された第1の面、チャンバの外側に配置された第2の面、及び、第1の面と第2の面との間に配置されたホイル部材を備え、第1の面及び第2の面の各々は、ホイル部材に適用された焼結材料を備える。焼結材料は、銀、銅、チタンなどの金属粉体とすることができ、典型的にはホイル部材に使用されるような金属である。焼結体は、多孔質であり、チャンバ内の流体と第2の導管内の流体との間の適切な熱交換が得られるように有効表面積が大きい。しかしながら、焼結材料は、一般に、溶接又は融着工程から生じる可能性がある高温に適合しない。従って、周囲支持部材は、好ましくは、各ホイル部材の外周の周りに配置され、周囲支持部材は、例えば、レーザー溶接又は電子ビーム溶接などの局所的な加熱工程によってカラーに融着される。
【0012】
第1の面及び/又は第2の面は、ホイル部材上の焼結物の厚さが中心軸からの半径方向の離隔距離とともに増大するように輪郭形成することができる。これは、特に、熱交換器がチャンバの中心を通って延びる中心軸を備え、第1の導管が、中心軸に沿って配置された2つの位置でチャンバに結合される場合に好都合である。このように焼結物を輪郭形成することによって、典型的には、熱交換器内の粘性加熱が低減される。典型的には、第1及び第2の末端部の両方は、同様の方法で輪郭形成される。プレス工具に機械加工できる何らかの形状又は輪郭は、輪郭形成された焼結物を適用するために使用することができる。例えば、第1及び第2の末端部上の焼結物は、第1の面とプレートとの間の離隔距離が、中心軸からの半径方向のオフセットとともに、典型的には直線的に減少するように輪郭形成することができる。同様に、第1及び第2の末端部の焼結物は、第2の面と第2の導管との間の離隔距離が中心軸からの半径方向のオフセットとともに、典型的には直線的に減少するように輪郭形成することができる。ホイル部材に適用される焼結物の厚さは、典型的には、焼結物が適用される第1及び第2の面に沿った任意の位置で0.1から3.0mm、好ましくは0.2から2.0mmの厚さである。例えば、焼結物の厚さは、ホイル部材の中央付近の最小0.5mmから端部付近の1mmまで変わる場合がある。特定の値は、熱交換器の作動温度に応じて選択することができる。第1の面上の焼結物とプレートとの間の最大離隔距離は、典型的には0.1から5.0mm、好ましくは0.1から3.0mm、さらに好ましくは0.2から1.50mmである(チャンバの中心軸に沿って測定)。これは、チャンバ内部の「チャンバの深さ」又は「流路の深さ」に相当する。
【0013】
同じ材料は、典型的には、カラー及び周囲支持部材の形成に使用される。例えば、カラー及び周囲支持部材の各々は、ステンレス鋼で形成することができる。焼結材料及びホイル部材は、好ましくは、同じ材料、例えば、銀、銅、又はチタンで形成される。ホイル部材及び/又は焼結材料の熱伝導率は、好ましくは、周囲支持部材及び/又はカラーの熱伝導率よりも実質的に高い。例えば、ホイル部材及び/又は焼結材料の熱伝導率は、300Kの温度の場合に、周囲支持部材及び/又はカラーの熱伝導率よりも少なくとも20倍大きくすることができる。材料の熱伝導率は、一般に、その温度に左右されるが、この場合、製造工程は、典型的には、名目「室温」で行われる。300Kでは、銅の熱伝導率は、約392W/m/Kであり、ステンレス鋼の熱伝導率は約15W/m/Kである。周囲支持部材の熱伝導率が低いほど、末端部をカラーに融着することによる入熱は、焼結材料の不要な液状化を引き起こすほどには焼結材料に効果的に伝達されないことが保証される。第1の末端部は、第2の末端部と同様に構成することができ、低温用途に適した単純かつ効果的な熱交換器を形成するようにチャンバを形成するために、カラーに融着することができる。
【0014】
チャンバは、流体を第1の領域及び第2の領域を通って搬送する流路を画定することができる。例えば、流体は、チャンバの入口から、末端部の第1の面とプレートとの間の離隔距離によって画定された内部容積を介してチャンバの出口に流れることができる。あるいは、流路は、第1の末端部及び第2の末端部に適用される焼結物内に、詳細には末端部の各々の「第1の面」(プレートに面する)に適用される焼結物内に、部分的に又は完全に形成することができる。流路は、チャンバを通る1又は2以上の流路を備えることができ、1又は2以上の流路は、第1の末端部及び第2の末端部に適用された焼結物によって成形される。従って、流路は、流体が第1の領域及び第2の領域を通って流れる1又は2以上の経路を画定するように焼結材料にインプリントすることができる。それによって、作動流体の流れ方向が制御され、これは、チャンバを通るより良好な熱分散及び熱交換器の熱性能の向上を可能にすることができる。また、1又は2以上の流路は、第2の導管の一部を形作る末端部の「第2の面」に適用される焼結物にインプリントすることができる。これによって、熱交換器全体にわたる熱結合が向上する。流路の深さは、ヘリウム-3の必要量に対する粘性加熱の影響をバランス調整するために、中心軸からの半径方向の離隔距離とともに減少する場合がある。
【0015】
上述したような同様の利点を共有する本発明のさらなる態様を以下に説明する。1つの態様に関連して説明するいずれの特徴も、残りの態様に同様に適用可能である。
【0016】
第1の態様の熱交換器は、液体ヘリウムを使用する先行技術のステップ熱交換器に取って代わるのに特に適しているが、様々な極低温冷却システムに応用することができる。本発明の第2の態様は、ターゲット冷凍機と、第1の態様による熱交換器とを備える極低温冷却装置を提供し、第1の管路は、作動流体をターゲット冷凍機に搬送するように配置され、第2の管路は、作動流体をターゲット冷凍機から搬送するように配置される。第1の導管に沿って搬送される作動流体は、典型的には、第2の導管に沿って搬送される作動流体とは異なる状態にあり、通常、異なる温度でもある。
【0017】
本発明の第3の態様は、分溜器と、混合チャンバと、第1の態様による熱交換器と備える希釈冷凍機を提供し、第1の導管は、作動流体を分溜器から混合チャンバに流すように配置され、第2の導管は、作動流体を混合チャンバから分溜器に流すように配置され、熱交換器は、第1の導管内の作動流体を第2の導管内の作動流体と熱的に結合するように構成される。
【0018】
混合チャンバは、典型的には、焼結物の質量体を備え、第1の導管は、開放されて、焼結物の質量体の一部を作動流体と接触させるように焼結物の質量体の一部の周りに延びる末端部分を備え、第2の導管は、焼結物の質量体から離れる方向作動流体を搬送するように、末端部分及び焼結物の質量体の周りに延びる。希釈冷凍機は、好ましくは、希釈冷凍機の作動が、第1の導管の末端部分の内側の位置で相境界を作動流体に生じさせるように構成される。この相境界は、典型的には希釈冷凍機の混合チャンバ内で生じるヘリウム-3の過濃相と希薄相との間の境界を指す。流入過濃相は、典型的には、分溜器の位置から混合チャンバまで第1の導管によって搬送され、これは、分溜器において及び第1の導管に沿って、第2の導管によって搬送される流出希薄相と熱接触するようになっている。過濃相及び希薄相は、典型的には、分溜器で混合しないことを理解されたい。
【0019】
熱交換器は、典型的には、先行技術のステップ熱交換器よりも構造が単純であるので、低温用途に適する。従って、特定の利点は、希釈冷凍機の作動中に30mK未満の温度を取得するように熱交換器が配置される場合に達成される。例えば、希釈冷凍機は、分溜器と混合チャンバとの間に配置された冷却板をさらに備えることができ、冷却板は、希釈冷凍機の作動中に基準温度を分溜器と混合との間で取得するように配置され、希釈冷凍機は、冷却板と混合チャンバとの間に延びる第1の導管の一部に沿って配置された1又は2以上のチャンバを含むチャンバ組立体をさらに備え、チャンバの各々は、作動流体を第1の導管から受け取るように配置され、第2の導管は、チャンバの各々の外側に熱的に結合される。
【0020】
定常作動において、全てのチャンバを通る流体の総流量は、等しいことになる。第1の導管からの流体の温度は、典型的には、チャンバ組立体を通ってより低い温度の領域に進むにつれて低くなる。多くの場合、流体の粘性は、温度が低減されるにつれて増大し、粘性流体の流れは、不要な加熱を引き起こす可能性があり、熱交換器の効率が低下する。これを緩和するために、いわゆる「流路」は、流体が流れる低インピーダンスの経路をもたらすために導入することができる。これらの流路の大きさは、一般に、チャンバ内の流体の総量を低減しながら、必要な流体流量をもたらすように制御される(結果的に、希少で高価な資源である、作動に必要なヘリウム3の量が低減される)。多くの既存の希釈冷凍機は、特注の独特な大きさ又は形状の部品に依存するが、大量生産及び自動化は、部品共通化を助ける。従って、好ましくは、各チャンバは、流体をそれぞれの第1の領域及びそれぞれの第2の領域を通って搬送する1又は2以上の流路を備え、各流路は、焼結物内に形成され、チャンバ組立体は、希釈冷凍機の作動中に熱勾配に沿って配置され、第1のチャンバは、第2のチャンバよりも高い基準温度を取得するように配置されるようになっており、第1のチャンバ内の1又は2以上の流路の直径は、第2のチャンバ内の1又は2以上の流路の直径よりも小さい。それによって、流路の直径は、流量と総流体量の所望のバランスを達成するように制御することができる。それによって、熱交換器全体にわたる熱性能が向上する。また、第2の導管は、熱交換器の熱性能をさらに向上させるためにチャンバの外側上の焼結物に形成される流路を備えることができる。また、流路を焼結物にインプリントすることによって、流路を、効率的かつ反復可能に量産することができる。
【0021】
チャンバ組立体は、ステップ熱交換器を形成することができ、各熱交換器は、それぞれのステップに対応し、希釈冷凍機の作動中にそれぞれの温度を取得するように構成される。チャンバ組立体は、第1の上記熱交換器及び第2の上記熱交換器を備えることができ、第1の上記熱交換器は、冷却板と第2の熱交換器チャンバとの間に配置され、第2の上記熱交換器のチャンバの深さ及び/又は第2の上記熱交換器のプレートを貫通する開口の数/大きさは、第1の上記熱交換器よりも大きい。これによって、チャンバ組立体を通る流体の流れは、上述したように、システムの性能を向上させるために最適化される。
【0022】
組み立て方法をさらに単純化するために、チャンバ組立体及び混合チャンバは、好ましくは、第1の導管を通って延びる軸の周りで回転対称である。さらに、第2の導管は、好ましくは、熱交換器の外側を形成し、一緒に融着される複数のモジュールを備える。同様に、第1の導管は、好ましくは、一緒に融着される複数のモジュールから形成される。この融着工程は、電子ビーム溶接又はレーザービーム溶接によって形成することができ、複雑で時間のかかる手動工程を必要とすることなく、信頼性のある接合部を生成する。
【0023】
本発明の第4の態様は、極低温冷凍機のための熱交換器を形成する方法であり、本方法は、第1の導管と、第2の導管と、第1の末端部と、第2の末端部と、流れ偏向体とを提供するステップであって、流れ偏向体は、カラー及びプレートを含み、プレートは、カラーを横切って延びるステップとを含み、第1の末端部を提供するステップは、第1の周囲支持部材を第1のホイル部材の外周に融着し、その後、焼結材料を第1のホイル部材の反対側の面に適用するステップを含み、第1の周囲支持部材の熱伝導率は、300Kの温度の場合に第1のホイル部材の熱伝導率よりも少なくとも20倍低く、本方法は、さらに、チャンバを形成するように第1の周囲支持部材をカラーに融着するステップであって、チャンバは、プレートによって第2の領域から分離された第1の領域を有し、プレートは、第1の末端部と第2の末端部との間に配置される、ステップを含み、第1の導管は、流体を第1の領域の中に及び第2の領域から外に搬送するように配置され、プレートは、第1の領域から第2の領域への流体の流れを可能にする1又は2以上の開口を備え、第2の導管は、チャンバの外側に熱的に結合されている。
【0024】
本方法は、先行技術のステップ熱交換器を組み立てるために一般的に必要とされる複雑な接合工程よりも、実質的に実施が容易である。また、本方法は、自動化により適する。その結果、熱交換器の組み立てにかかる時間が短く、同じ技術に従って製造された異なる熱交換器の性能における標準偏差が低減される。焼結材料(典型的には銀又は銅などの金属粉体から形成される)は、チャンバ内の流体と使用中の第2の導管内の何らかの流体との間の熱交換のための表面積を増大させるために、ホイル部材に適用される。焼結材料は、高温にさらされると溶融する傾向にある。従って、周囲支持部材は、焼結材料を適用する前にホイル部材に融着される。さらに、周囲支持部材は、焼結材料及び好ましくは同様にホイル部材よりも低い熱伝導率を有するように選択される。焼結材料が適用されると、周囲支持部材は、その後、焼結材料が溶融するリスクなしに、チャンバを形成するためにカラーに融着することができる。
【0025】
第1の導管の第1の部分は、好ましくは、第1のホイル部材を通る流体の流れを促進するように、第1のホイル部材に融着される。これは、典型的には、焼結材料を適用する前に行われ、第1の周囲支持部材が第1のホイル部材に融着される際に同時に行うことができる。第1の導管の第1の部分及び好ましくは同様に第1の周囲支持部材は、好ましくは溶接又は真空ろう付けによって第1のホイル部材に融着される。例えば、この部品は、一緒に組み立て、その後、融着するために真空チャンバ内で焼成することができる。同様の工程は、その後、第2の末端部を形成するために行うことができる。例えば、第2の末端部を提供するステップは、第2の周囲支持部材を第2のホイル部材の外周に融着し、その後、焼結材料を第2のホイル部材の反対側の面に適用するステップを含むことができ、第2の周囲支持部材の熱伝導率は、300Kの温度の場合に第2のホイル部材の熱伝導率よりも少なくとも20倍低く、チャンバを形成するステップは、第2の周囲支持部材をカラーに融着するステップをさらに含む。本方法は、第2のホイル部材を通る流体の流れを容易にするように、第1の導管の第2の部分を第2のホイル部材に融着するステップをさらに含むことができ、第1の導管の第2の部分は、好ましくは、溶接又は真空ろう付けによって第2のホイル部材に融着される。典型的には、第1の導管の第2の部分は、焼結材料が第2のホイル部材に適用される前に、好ましくは、第2の周囲支持部材が第2のホイル部材に融着されると同時に、第2のホイル部材に融着される。第1の導管の第2の部分及び好ましくは同様に第2の周囲支持部材は、好ましくは、溶接又は真空ろう付けによって第2のホイルル部材に融着される。第2の周囲支持部材は、好ましくは、第1の周囲支持部材と同時にカラーに融着される。各上記周囲支持部材は、好ましくは、真空ろう付けによってそれぞれのホイル部材に融着される。対照的に、各上記支持部材は、好ましくは、レーザー又は電子ビーム溶接などの、局所的な熱源によってカラーに融着される。局所的な加熱工程が好ましく、その理由は、焼結材料は、この段階で既にホイル部材に適用済みであり、焼結物に伝達される熱量を低減することが望ましいからである。
【0026】
本発明の第5の態様は、希釈冷凍機を形成する方法であり、本方法は、蒸発器及び混合チャンバを提供するステップと、第1から第4の態様のいずれかに記載の熱交換器を形成するステップとを含み、第1の導管は、作動流体を蒸発器から混合チャンバに流すように配置され、第2の導管は、作動流体を混合チャンバから蒸発器に流すように配置される。
【0027】
第1の導管は、好ましくは、作動流体をチャンバから受け取るように配置された末端部分を備え、混合チャンバを提供するステップは、次に、末端部分を焼結物の質量体の一部の周りに配置して、焼結物の質量体の一部を作動流体と接触するようにさせるステップと、第2の導管を末端部分及び焼結物の質量体の周りに配置して、作動流体を焼結物の質量体から離れる方向に搬送するようにするステップとを含む。焼結物の質量体は、焼結材料で又はいくつかのより小さな焼結質量体から形成することができ、第1の導管の末端部分によって受け取られるように形成される。次に、本方法は、第2の導管を焼結質量体が取り付けられる支持体に対して封止するステップをさらに含むことができる。これによって、支持体上の第2の導管の遠位端が閉鎖され、これは、希釈冷凍機の最低温度の熱ステージとすることができる。
【0028】
特定の利点は、第1の導管及び第2の導管が、組み立て用の複数のモジュールから形成される場合に達成することができ、本方法は、チャンバと末端部分との間の位置で、第1の導管の第1のモジュールを第1の導管の第2のモジュールと一緒に融着するステップ、及び/又は、チャンバと末端部分との間の位置で、第2の導管の第1のモジュールを第2の導管の第2のモジュールと一緒に融着するステップをさらに含む。結果的に得られる組立体は、完全に溶接された構造を有し、これによって、接合部は、高速かつ再現性の高い工程に従って確実に形成されることが保証される。
【0029】
第1の態様の熱交換器は、特に、30ミリケルビン未満を含む、低温での使用に適する。希釈冷凍機の冷却板は、典型的には、40から150ミリケルビン、より好ましくは40から60ミリケルビンの基準温度を有し、一方、混合チャンバは、典型的には、使用中に2、5ミリケルビン未満、好ましくは10ミリケルビン未満の基準温度を有する。従って、本方法は、希釈冷凍機の作動中に基準温度を分溜器と混合チャンバとの間で取得するように冷却板を分溜器と混合チャンバとの間に配置するステップと、冷却板と混合チャンバとの間に延びる第1の導管の一部に沿って配置された複数の上記チャンバを提供するステップとをさらに含み、各上記チャンバは、作動流体を第1の導管から受け取るように配置され、第2の導管は、各上記チャンバの外側に熱的に結合される。上述と同様に、第1の導管及び第2の導管は、好ましくは、組み立て用の複数のモジュールから形成され、本方法は、2つの上記チャンバの間の位置で、第1の導管の第1のモジュールを第1の導管の第2のモジュールと一緒に融着するステップ、及び/又は、2つの上記チャンバの間の位置で、第2の導管の第1のモジュールを第2の導管の第2のモジュールと一緒に融着するステップをさらに含む。これらのチャンバは、典型的には、同様に形成され、第1の態様に関連して説明した特徴を備えることになる。モジュールは、好ましくは局所的な熱源を使用して、好ましくは電子ビーム溶接によって融着され、これによって、焼結物への入熱が低減される。さらに、第1の導管内及び第2の導管内の作動流体の間の効果的な熱伝達を保証するために、冷却板から混合チャンバまで延びる第1の導管の一部は、好ましくは、第2の導管の内側に配置される。また、チャンバは、好ましくは、第2の導管の実質的に内側に配置される。
【0030】
本発明の第6の態様は、希釈冷凍機であり、希釈冷凍機は、分溜器及び混合チャンバと、作動流体を分溜器から混合チャンバに搬送するように配置された第1の導管と、作動流体を混合チャンバから分溜器へ搬送するように配置された第2の導管と、分溜器と混合チャンバとの間の位置で第1の導管内の作動流体を第2の導管内の作動流体と熱的に結合するように配置された熱交換器とを備え、熱交換器は、第1の導管の一部に沿って配置された1又は2以上のチャンバを含み、各上記チャンバは、第1の領域及び第2の領域を有し、第1の領域は、チャンバを通って延びるプレートによって第2の領域から分離され、プレートは、第1の領域から第2の領域への作動流体の流れを可能にする1又は2以上の開口を含み、第2の導管は、各上記チャンバの外側の周りに配置される。
【0031】
好ましくは、複数のチャンバが提供され、第2の導管は、各上記チャンバの間で一緒に溶接される複数のモジュールで形成され、第1の導管は、好ましくは、各上記チャンバの間で一緒に溶接される複数のモジュールで形成される。各上記チャンバは、好ましくは、それぞれ、チャンバの反対側の側面を形成する第1の末端部及び第2の末端部を備え、第1の末端部は、流れ偏向体によって第2の末端部に結合され、流れ偏向体は、第1の末端部を第2の末端部から分離するカラーを備え、プレートは、カラーを横切って延び、第1の末端部及び第2の末端部の各々は、チャンバの内側に配置された第1の面と、チャンバの外側に配置された第2の面とを有し、第1の面及び第2の面は、第1の面と第2の面との間に配置されたホイル部材に適用された焼結材料から形成され、第1及び第2の末端部の各々は、ホイル部材のそれぞれの外周の周りに延びるそれぞれの外側支持部材をさらに備え、外側支持部材は、カラーに融着される。ホイル部材の熱伝導率は、典型的には、300Kの温度の場合に外側支持部材の熱伝導率の少なくとも20倍である。
【0032】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】本発明の第1の実施形態の一部を形作るホイル部材の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の一部を形作る第1の導管の第1の部分の斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の一部を形作る周囲支持部材の斜視図ある。
【
図5】焼結材料を適用する前の本発明の第1の実施形態の一部を形作る第1の末端部の斜視図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の一部を形作る流れ偏向体の斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の一部を形作るチャンバの第1の断面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の一部を形作るチャンバの第2の断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の一部を形作る混合チャンバの第1の断面図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の一部を形作る混合チャンバの第2の断面図である。
【
図11】第1の実施形態による希釈冷凍機の概略図である。
【
図12】本発明の実施形態による方法を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第2の実施形態の一部を形作るチャンバの断面図である。
【
図14】第2の実施形態の一部を形作るホイル部材の説明図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態の一部を形作るチャンバの断面図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態の一部を形作るチャンバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、本発明の第1の実施形態による熱交換器及び希釈冷凍機を組み立てる方法について説明する。この方法は、ステップ201(
図12)で始まり、この時点で、第1及び第2の末端部は、熱交換器の一部を形作るように製造される。第1のホイル部材10(
図2)は、銀又は銅などの高熱伝導性材料から形成され、典型的には300Kで300W/m/Kよりも大きい熱伝導率を有する。この場合、第1のホイル部材10は、使用時に作動流体を搬送する第1の導管(後述する)の第1の部分を形成する入口管12を受け入れる中央開口を有する実質的に平面状の銀円板である。第1のホイル部材10は、約45mmの直径を有するが、より一般的には、通常、用途に応じて20から100mmの間である。第1の周囲支持部材14(
図4)が設けられ、ステンレス鋼などの比較的熱伝導率の低い材料から形成され、典型的には300Kで15W/m/K未満の熱伝導率を有する。第1の周囲支持部材14は、リング状であり、第1のホイル部材10を支持するように構成される。第1の周囲支持部材14は、第1のホイル部材10の外部の周りに広がり、第1のホイル部材10の外周及び第1のホイル部材10の反対側の面のうちの1つの外側部分に接触する。第1のホイル部材10、入口管12、及び周囲支持部材は、
図5に示すように組み立てられ、その後、例えば、溶接又は真空ろう付けによって一緒に融着される。
【0035】
次に、焼結される材料は、粉体として第1のホイル部材10の主要面に適用される。焼結材料は、高熱伝導性材料であり、典型的には、第1のホイル部材10として使用される材料と同じである。第1のホイル部材10の反対側の2つの面に焼結物15を形成するために圧力を加える。銀粉体の場合、この作業は圧力だけで十分であるが、銅粉体の場合は、典型的には、この作業中に焼成する必要もある。適切な工具を用いて、粉体を1回の作業で第1のホイル部材10の両側上に押し付けることができる。焼結物15は、典型的には、第1のホイル部材10の2つの主要面の表面全体に適用されるが、周囲支持部材14には適用されない。それによって、熱交換器用の第1の末端部22が製造される。その後、この工程は、第2の末端部24を形成するために、第2のホイル部材11、第2の周囲支持部材、及び出口管32を用いて繰り返される。
【0036】
第1の末端部22及び第2の末端部24は、流れ偏向体16の反対側の端部に対して嵌合するように構成され、これを
図6に示す。流れ偏向体16は、カラー17を備え、カラー17は、周囲支持部材とほぼ同じ円周を有する環状要素である。プレート18は、流れ偏向体16全体にわたって半径方向に延びる。プレート18は、カラー17内でほぼ中央に配置され、流れ偏向体16を、カラー17の内側でプレート18の反対側に設けられた上部分及び下部分に細分する。プレート18は、上部分及び下部分を流体的に結合するための複数の開口20を備える。
図6において、これらの開口は、プレート18の周りに一定の半径で分散され、隣接する各開口の間でほぼ一定の間隔が維持される。本実施形態において、流れ偏向体16は、一体部材として形成される。詳細には、流れ偏向体16は、「機械加工された本体」であり、開口は、放電機械加工などの工程によって追加することができる。あるいは、流れ偏向体16は、例えば、ホイル要素から形成することができ、エッチングによってホイル要素に開口が形成される。このホイル要素は、その後、流れ偏向体16を形成するために2つの環状支持体の間に溶接されることになる。
【0037】
本方法は、ステップ202に進み、ここで、熱交換チャンバ30が形成される。第1及び第2の末端部22、24は、
図7に示すように、流れ偏向体16の反対側の端部に対して配置され、焼結物15は、カラー17の内側に配置された各末端部の遠位面に適用され、周囲支持部材は、カラー17の対向する端部に接触する。その後、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、又はタングステン不活性ガス(TIG)溶接など、高度に制御された局所加熱工程は、周囲支持部材をカラー17の各端部に融着し、それによってチャンバ30を形成するために使用される。第1及び第2の末端部22、24をカラー17に融着するために使用される局部加熱工程は、ステンレス鋼の周囲支持部材の比較的低い熱伝導率と組み合わされて、焼結物15を溶接工程の熱から保護する。本実施形態の電子ビーム溶接の位置を
図7に示すが、溶接は、典型的には、周囲支持部材の円周の周りに行われることを理解されたい。従って、入口管12及び出口管32は、流れ偏向体16及びチャンバ30の中心軸に沿って延びることが好都合であり、その理由は、溶接手順を実行するときに、組立体を入口管12及び出口管32の周りに回転させることができ、加熱要素を移動させる必要ないからである。この工程は、自動化に適しており、信頼できる接合部が溶接されることを保証する。
【0038】
形成されたチャンバ30は、プレート18によって第2の領域28から分離された第1の領域26を有し、入口管12は、流体を第1の領域の中に流すように配置され、出口管32は、流体を第2の領域の外に流すように配置される。入口管12及び出口管32は、それぞれ、第1の管路46の第1の部分及び第2の部分を形成し、第1の管路46は、チャンバ30を通って流体を流すように配置される。希釈冷凍機内で使用される場合、第1の導管46及びチャンバ30は、定常作動中に分溜器から(分溜器の外側からを含む)希釈冷凍機の混合チャンバ45へのリウム-3過濃相の作動流体の流れに対応する。また、第1の導管46は、一般に、希釈冷凍機の「過濃相流路」と呼ばれる。矢印は、チャンバ30の内部を通る流体の流れ方向を示すために、
図8(縮尺通りではない)に含まれる。図示するように、入口管12及び出口管32が配置される中心軸から放射状に分散される開口20の配置は、流体がチャンバ30の内側で直線でない流路を辿ることを保証する。これは、第1及び第2の末端部22、24上での焼結材料15の使用と組み合わされて、大きな有効表面積が、チャンバ30の内側の流体と、チャンバ30の外部と接触する別の流体との間の熱交換のために提供されることを保証する。この周囲の流体の起源及び流は、
図12のステップ203及び204を参照して以下に説明する。
【0039】
この方法は、ステップ203に進み、この時点で、希釈冷凍機用の混合チャンバ45が形成される。焼結物36の質量体は、希釈冷凍機の最低温度ステージを形成する高熱伝導性支持体8上に直接形成されるか又はそこに取り付けられる。焼結物36の質量体を形成する材料は、典型的には、第1及び第2のホイル部材10、11に適用されたのと同じ材料(例えば、銀及び/又は銅)である。第1の導管46の末端部分40が設けられ、末端部分40は、第1の領域42及び第2の領域44を有し、第2の領域44は、第1の領域42よりも大きな直径を有する。末端部分40は、第1の領域42が出口管32からの流体の流れを受け取るように構成されるように配置され、第2の領域44は、焼結物の質量体の近位部分が第2の領域44の内側に配置され、焼結物の質量体の遠位部分が末端部分40の外側に配置されるように配置される。従って、末端部分40は、ヘリウム-3過濃相とヘリウム-3希薄相との間の作動流体の相境界が、端部40の内側に、好ましくは、
図9に破線で示すように、第2の領域44の内側に存在するように、焼結物36の質量体に対して配置される。
図9において、矢印は、末端部分40の第1の領域42に沿って、焼結物36の質量体の周りから混合チャンバ45を取り囲む領域への流体の流れ方向を示すために提示される。もちろん、この流れ方向は、希釈冷凍機が完全に組み立てられて作動するときにのみ可能である。使用中、濃縮蒸気は、典型的には、末端部分40の内側に収容されるので、末端部分40は、「濃縮蒸気キャップ」と呼ぶこともできる。
【0040】
図10は、第1の導管46を取り囲んで形成された第2の導管48を示す。第2の導管48は、流体を混合チャンバ45から分溜器に戻すように配置される「希薄相流路」とも呼ばれる。第2の導管48は、第1の導管46の外側の周りに同軸に配置される。第1の導管46及び第2の導管48の各々は、熱交換器組立体を形成するためにステップ204で一緒に溶接される一連のモジュールから形成される。末端部分40が(
図9を参照して説明したように)焼結物36の質量体上方に配置された状態で、第2の導管48の第1の部分50は、末端部分40の上方で末端部分40の周りに配置され、支持体8に取り付けられる。典型的には、第2の導管48の第1の部分50は、インジウムシールによって支持体8に封止されるが、代替的に、この取り付けを達成するためにコンフラット(CF)フランジを使用することができる。第2の導管48の第1の部分50は、それによって、第1の導管46の端部からの作動流体の流れを受け取るように配置される。
【0041】
その後、出口管32の遠位端は、末端部分40の第1の領域42の近位端に溶接される。これによって、入口管12は、混合チャンバ45及び第2の導管48と流体的に結合される。その後、第2の導管48の第2の部分52の遠位端は、第2の導管48の第1の部分50の近位端に融着される。この接合は、組立体の中心軸の周りで、チャンバ30と焼結物36の質量体との間の位置で、典型的には、第1の導管46の末端部分40の第1の領域42に沿って行われる。
図7から10は概略図であり、従って縮尺通りではないが、第2の導管48の内壁と第1の導管46の外壁との間にほぼ一定の離隔距離が維持される。第2の導管48は、チャンバ30の形状の周りに適合して、ステップ熱交換器53のステップを形成する。希釈冷凍機の通常の作動において、ヘリウム-3は、分溜器から蒸発してポンプシステムによって除去される。これは、分溜器内のヘリウム-3を補充するために、ヘリウム-3原子の流れが混合チャンバ45の相境界を越えるようにさせる(過濃相から希薄相へ)。希薄相へのヘリウム-3の希釈によって、混合チャンバ45での冷却が引き起こされる。従って、第2の導管48に沿って流れるヘリウムの希薄相は、第1の導管46に沿って搬送されるヘリウム-3の流入過濃相よりも低温になることになる。チャンバ30の比較的大きな表面積は、効果的な熱交換器を形成するので、第1の導管34及びチャンバ30内の流体は、混合チャンバ45に到達する前にさらに冷却される。
【0042】
熱交換器組立体は、複数のステップ熱交換器53又は「ステップ」を備えることができ、各ステップは、第1の導管46に沿って配置され、第2の導管48の一部によって取り囲まれるチャンバで形成される(
図7及び8を参照して説明したように)。
図10は、入口管12の近位端より上方に配置された、第1の導管46の対応する部分と共にこのような第2のチャンバ130を示す。第1及び第2の導管の各々の部分は、完成組立体を形成するために、上述したように、段階的様式で、中心軸の周りに一緒に融着される。
【0043】
希釈冷凍機内の熱交換器組立体の配置は
図11の概略図で示され、以下に説明される。外側の真空容器5を備える、典型的にはステンレス鋼又はアルミニウムから形成された大きな中空円筒を備える低温保持装置1が設けられる。低温保持装置1内には、第1のステージ6、第2のステージ7、及び第3のステージ8を含む空間的に分散された複数のステージが設けられる。各ステージは、高導電性材料(例えば、銅)から形成されたプラットフォームを提供し、低熱伝導性ロッド(図示せず)によって残りのステージから離間される。第2のステージ7は、一般に、「冷却板」と呼ばれ、第1のステージ6と第3のステージ8との間に中間ヒートシンクをもたらす。試料ホルダー55は、第3のステージ8に取り付けられて示されており、これはシステムの定常作動中に最低温度ステージを形成する。
【0044】
本例における低温保持装置1は、実質的に極低温剤フリーであり(また、当技術分野において「ドライ」とも呼ばれる)、極低温流体のリザーバーとの接触によって主に冷却されない。低温保持装置の冷却は、代わりに、スターリング冷凍機、ギフォードマクマホン(GM)冷凍機、又はパルス管冷凍機(PTR)とすることができる機械式冷凍機の使用によって達成される。しかしながら、実質的に極低温剤フリーであるにもかかわらず、何らかの極低温流体は、典型的には、希釈ユニットの通常の作動を容易にするために、使用時に低温保持装置内に存在する。低温保持装置1の主冷却動力は、本実施形態において、PTR2によって提供される。PTRは、外部圧縮機から高圧で供給される作動流体の圧縮及び膨張を制御することによって冷却を生成する。第1のPTRステージは、典型的には、第2のPTRステージと比較して相対的に高い冷却力を有する。この場合、PTR2は、第1のPTRステージ3を約50から70ケルビンに、第2のPTRステージ4を約3から5ケルビンに冷却する。従って、第2のPTRステージ4は、PTR2の最低温度ステージを形成する。
【0045】
外側真空容器5の内部には様々な熱放射シールドが設けられ、各シールドは、残りの低温構成要素の各々を封入する。第1のPTRステージ3は、第1の放射シールド19に熱的に結合され、第2のPTRステージ4は、第2の放射シールド54に熱的に結合される。第1の放射シールド19は第2の放射シールド54を取り囲み、第2の放射シールド54は、第1、第2、及び第3のステージ6-8の各々を取り囲む。さらに、第1及び第2ステージ6及び7は、理論的には、ステージ間の不要な熱伝導を低減するためにそれぞれの熱放射シールドに結合することができる。
【0046】
希釈冷凍機の分溜器9は、第1のステージ6を0.5-2ケルビンの基準温度に冷却するよう作動可能である。混合チャンバ45は、第3ステージ8に取り付けられ、第3のステージ8を10ミリケルビン未満の基準温度に冷却するように作動可能である。使用中、第2のステージ7は、第1のステージ6と第3のステージ8との間の基準温度、典型的には40-150ミリケルビンを取得する。
【0047】
分溜器9は、冷却回路37によって貯蔵容器50と流体的に結合される。貯蔵容器50は、低温保持装置1の外側に配置され、ヘリウム-3及びヘリウム-4の同位体の混合物の形の作動流体を含む。また、様々なポンプ17、39は、実線の矢印で示すように、回路の周りの作動流体の流れを制御する冷却回路37の導管に沿って低温保持装置1の外側に配置される。冷却回路37は、貯蔵容器50から凝縮ライン46’への作動流体の流れを促進するための導管をもたらす供給ライン41を備える。その後、この流体は、凝縮ライン46’に沿って分溜器9に搬送することができ、流体は、分溜器9の内側でヘリウムの希薄相と熱接触する。その後、凝縮ライン46’は、分溜器9から混合チャンバ45への過濃相流路46に続く。凝縮ライン46’及び過濃相流路46は、混合チャンバ45の方に流れる際にジュールトムソン効果に起因して作動流体の温度を低下させる1又は2以上のインピーダンス(図示せず)をさらに備える。圧縮機ポンプ13は、この流れを0.5から2バールの圧力で供給する凝縮ライン46’に沿って配置される。希薄相流路48は、作動流体を混合チャンバ45から分溜器9を通って搬送するために配置され、この流体は、分溜器ポンプライン48’によって低温保持装置1の外部の位置に搬送される。その後、作動流体は、この位置から凝縮ライン46’に戻って循環ささせることができる。ターボ分子ポンプ39は、回路の低圧側で(例えば、0.1mbar未満の)高真空をもたらすために、分溜器のポンプ送給ライン48’に沿って配置されるので、分溜器9から離れる作動流体の流れを可能にする。
【0048】
上述のように、過濃相流路46及び希薄相流路48は、それぞれ熱交換器の第1及び第2の導管を形成する。これらの管路は、明確にするために、
図11の概略図において、第1のステージ6と第3のステージ8との間には明示的に示されていない。第1及び第2の導管46、48は、第1のステージ6と第2のステージ又は「冷却板」7との間に配置された連続熱交換器26を形成するように配置される。連続熱交換器26内で、第1の導管46は、コイル状に配置され、第2の導管48は、第1の導管46に巻回される。これによって、第1の導管46に沿って流れる流体のヘリウム-3過濃相が、第2の導管48に沿って流れる流体のヘリウム-3希薄相によって冷却されることが保証される。連続熱交換器は、典型的には、30ミリケルビンを上回る温度でのみ有効である。従って、(
図2から0を参照して上述したように)複数のステップ熱交換器53、53’、53’’を備えるステップ熱交換器組立体は、第2のステージ7と第3のステージ8との間で低温領域に配置される。第1の導管46内の流体は、第2のステージ7から流れ偏向体を備える複数のチャンバを介して混合チャンバ45に流れる。流体のヘリウム-3希薄相は、混合チャンバ45から、チャンバを囲む第2の導管に沿って逆行して流れる。第2の導管内の流出流体は、第1の導管内の流入流体をさらに冷却するために第1の導管の外壁及びチャンバに直接接触する。
【0049】
流体の粘性は、温度が低下すると上昇する場合があり、粘性流体の流れは、不要な加熱を引き起こす可能性があり、熱交換器の効率が低減する。これを緩和するために、チャンバの深さ及び/又はチャンバの内側の開口の数又は大きさは、より低い温度で配置されるチャンバに関して増加する場合がある。例えば、(組立体の中心軸に沿った)チャンバの深さは、最上段の熱交換器については最小に(作動に必要されるヘリウム-3の総容積を低減するために)、最下段の熱交換器については最大に(粘性加熱を低減するために)することができる。これは、粘性加熱と総流体量のバランスを最適化することによってシステムの熱性能を向上させることが分かっている。
【0050】
第1の領域26及び第2の領域28の高さは、
図7及び8では説明を容易にするために比較的大きく描かれているが、特に、希釈冷凍機で使用される場合、好ましくは0.1から5.0mm、さらに好ましくは0.2から1.5mm程度である。この高さは、第1の導管46に沿った位置によって決まるような(上述したように)、熱交換器の作動温度によっては変わる場合がある。一般に、第1の領域26及び第2の領域28の形状及び寸法は、ヘリウム-3の循環を促進し、粘性加熱を低減し、浸透圧が分溜器9及び混合チャンバ45内で発生することを可能にし、使用されるヘリウム-3の量を低減して、流体力学的不安定性及び対流を低減するように選択される。同様の考察な、周囲の第2の導管48にも適用される。
【0051】
図13及び14は、本発明の第2の実施形態による熱交換器の要素を示す。
図13は、
図7と同等の断面図であり、同様の特徴を示すためにプライム記号付きの参照数字が使用されている。この実施形態において、流れ偏向体用のプレート18’は、2つの環状支持体の間に溶接されたホイル要素である。チャンバ30’は、その他の点では、基本的に、
図2から8を参照して第1の実施形態に説明したように形成されるが、この場合、専用の流路21’は、ヘリウム-3過濃相流体を入口管12’から開口を通って搬送して出口管32’に戻すために焼結物15’内に形成される(同様の特徴は、希薄相流体を搬送するために、ホイル部材10’、11’の反対側の焼結物15’に適用することができることも理解されたい)。焼結物15’は、第1及び第2のホイル部材10’、11’の両方の面に適用されるが、第1及び第2のホイル部材10’、11’は、チャンバ30’内に配置されるので、第1のホイル部材10’の第1の面及び第2のホイル部材11’の第1の面に適用された焼結物15は、典型的には、0.1-1.0mm、好ましくは0.2-0.6mm(構成による)の小さな間隙によって、流れ偏向板18’の反対側の面から分離されるようになっている。随意的に、流れ偏向板18’の反対側の面は、代わりに、そのような分離を残さないように、第1及び第2のホイル部材10’、11’の第1の面上の焼結物15’に当接する。流路21’は、典型的には、ステップ201中に焼結物にインプリントされ、作動流体の流れ方向を制御するための様々な異なるパターンを取ることができる。1又は2以上の流路は、流体の過濃相を第1の領域を通ってプレート18’の開口へ、その後、チャンバ30’の第2の領域を通って出口管32’へ搬送するために、チャンバ30’内に設けることができる。1又は2以上の流路は、さらに、希薄相の流体をチャンバ30’の外側上の第2の導管を通して搬送するために設けることができる。放射状又は螺旋状を含む、任意の数の異なるパターンを適用することができる。
図14は、
図13から平面X-X’で切り取った焼結物15’の斜視図である。
図14において、流路21’は、焼結物15’の大部分を作動流体と密接に接触させて熱交換器の性能を高めるために分岐している。
【0052】
流路21’の形状は、プレス金型に機械加工できるものによって制限される場合があるが、半円形、楕円形、三角形、矩形などとすることができる。流路21’は、典型的には、0.5から1.0mmの幅を有することになる。流体流れの速度は、流路21’の数及び幅に左右されることになる(所与の総流量で)。従って、流路の幅は、ステップ熱交換器組立体内の熱交換器チャンバ30’の相対的な配置によって変わる場合があり、幅は、組立体内の粘性加熱と流体体積との間のバランスを最適化するために温度が低いほど増大する。これによって、システムの熱性能は、さらに向上する。
【0053】
第1及び第2の実施形態において、チャンバ内の第1及び第2の領域は、一般に、プレートを横切る方向において一定の高さを有する(一般に0.5から4mmの間)。その結果、流体の流量は、典型的には、流体がより広い領域を横切って半径方向外向きに広がるにつれて減少する。これは、より多くの粘性加熱が中心軸の方に発生することを意味し、これによって、熱交換器が設置される極低温システムの性能が制限される可能性がある。
図15は、本発明の第3の実施形態による熱交換器の要素を示す。ダブルプライム付き参照数字は、同様の構成要素を表すために使用される。この実施形態は、チャンバ30’’の内側上の焼結物15’’は、第1の領域26’’及び第2の領域28’’の高さが中心軸からの半径が大きくなるほど連続的に減少するよう輪郭形成されることを除き、第1及び第2の実施形態と同様である。この輪郭形成は、ステップ201(
図12)において焼結物を成形工具で押圧することによって達成される。このように焼結物を輪郭形成することによって、「より深い」流路がより小さな半径でもたらされ、これによって、上記の効果が補償され、粘性加熱が低減される。第1の領域26’’及び第2の領域28’’の最大深さは、典型的には、約1.5mmであり、最小深さは、典型的には、約0.2mmである。しかしながら、特定のパラメータは、例えばこのような熱交換器のスタック内の位置によって決まるような熱交換器の作動温度に応じて変えることができる。
【0054】
図15の例において、第1及び第2のホイル部材10’’、11’’の対向する第1の主要面に適用される焼結物15’’は、焼結物15’’の厚さが半径とともに直線的に増加するように輪郭形成される。対照的に、第1及び第2のホイル部材10’’、11’’の反対側の第2の主要面に適用される焼結物15’’の厚さは、概ね一定のままである。しかしながら、チャンバ30’’の外側上の焼結物15’’は、(
図10によって示すように)チャンバを取り囲む第2の導管に沿って搬送された流体と接触することを記憶されたい。希釈冷凍機の観点から、これは、典型的には、ヘリウム-3の希薄相である。さらなる不要な粘性加熱は、第2の導管内で生じる可能性があり、これは、第1及び第2ホイル部材10’’、11’’の第2の主要面に適用される焼結物を輪郭形成することによって軽減することができる。この輪郭形成は、典型的には、同様に第1及び第2のホイル部材10’’、11’’に適用される焼結物の厚さが半径と共に直線的に増加するように実行される。実際には、第1及び第2のホイル部材の一方又は両方の主要面は、熱交換器内の何らかの粘性加熱を制御するために輪郭形成することができる。
図16は、第4の実施形態による熱交換器の一部を示し、この熱交換器において、第1及び第2のホイルの両方の表面は、何らかの粘性加熱を低減し、その結果、熱交換器が設置される極低温冷却システムの性能を向上させるように輪郭形成される。
図13から16は、縮尺通りではないが、熱交換器を通る流体の流れを制御するために焼結物にプレス加工することができる様々な形状の例を示す。
【0055】
その結果、低温にて作動可能な効果的な熱交換器が提供され、これによって、極低温冷却システムの信頼性のある作動が保証される。熱交換器のデザインは、比較的単純な構造であり、それ自体、溶接及び自動化された製造工程に役立ち、熱性能に関して高い再現性を保証することができる。従って、熱交換器を組み込んだ希釈冷凍機などの極低温冷却システムにおいて、より低い温度を取得することができ、取得可能な最低温度は、熱交換器の性能によって決まる。また、このような工程は、極低温冷却システムの製造に必要な時間を短縮するために使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 第1のホイル部材
11 第2のホイル部材
12 入口管
14 第1の周囲支持部材
15 焼結物
16 流れ偏向体
22 第1の末端部
24 第2の末端部
26 第1の領域
28 第2の領域
30 熱交換チャンバ
32 出口管
【国際調査報告】