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特表2024-513183不動態化接点を有する光起電力デバイス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】不動態化接点を有する光起電力デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20240314BHJP
【FI】
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558910
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022057488
(87)【国際公開番号】W WO2022207408
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166148.3
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502121731
【氏名又は名称】セ エス エ エム サントル スイス デレクトロニク エ ド ミクロテクニク ソシエテ アノニム ルシェルシェ エ ディベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア インジェニト
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェイン ニコレイ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA03
5F251DA07
5F251DA10
5F251FA06
5F251GA04
(57)【要約】
光起電力デバイス(1)であって、・シリコン基板(3)と、・前記シリコン基板(3)の少なくとも第1面(3a)上に位置する第1トンネル層(5)と、・前記第1トンネル層(5)上に位置する第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と、・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のほぼ全体上に位置する第2トンネル層(9)と、を備える。本発明によれば、前記光起電力デバイス(1)はさらに、・第2トンネル層(9)の所定のゾーン(11)上に位置する第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)であり、前記第2トンネル層(9)のうち、前記所定のゾーンの外側に位置する領域は、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層を含まない、第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)と、及び、・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)の少なくとも一部の上に位置する金属接点(15)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・シリコン基板(3)と、
・前記シリコン基板(3)の少なくとも第1面(3a)上に位置する第1トンネル層(5)と、
・前記第1トンネル層(5)上に位置する第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と、及び
・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のほぼ全体上に位置する第2トンネル層(9)と、
を備える、光起電力デバイス(1)であって、
前記光起電力デバイス(1)は、さらに、
・前記第2トンネル層(9)の所定のゾーン(11)上に位置する第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)であり、前記第2トンネル層(9)のうち、前記所定のゾーンの外側に位置する領域は、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層がないものである、該第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)と、及び
・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)の少なくとも一部の上に位置する金属接点(15)と、
を備えることを特徴とする、光起電力デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第1トンネル層(5)は誘電材料で作製され、前記第2トンネル層(9)は誘電材料又は半導体合金で作製される、光起電力デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)及び前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)のうちの少なくとも一方は、水素化された又は水素化されていない多結晶シリコン製である、光起電力デバイス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と同じドーパントタイプを有する、光起電力デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を有する、光起電力デバイス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)において、前記金属接点(15)は、銀、AgAl、アルミニウム又は銅のペーストである、光起電力デバイス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光起電力デバイス(1)において、
・前記第1トンネル層(5)は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)は、5nm~100nm、好ましくは10nm~50nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2トンネル層(13)は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、5nm超、好ましくは10nm~200nmの厚さを有する、光起電力デバイス。
【請求項8】
光起電力デバイス(1)の製造方法であって、
a)シリコン基板(3)を準備するステップと、
b)前記シリコン基板(3)の少なくとも第1面(3a)上に位置する第1トンネル層(5)を形成するステップと、
c)前記第1層上に、第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)を形成するステップと、及び
d)前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のほぼ全体上に、第2トンネル層(9)を形成するステップと、
を備え、
前記方法は、さらに、
e)前記第2トンネル層上の所定のゾーン(11)上に第2多結晶シリコン系不動態化層(13)を形成するステップであり、前記第2トンネル層のうち、前記所定のゾーンの外側に位置する領域は、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層がないものである、該第2多結晶シリコン系キャッピング層を形成するステップと、及び
f)前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)の少なくとも一部の上に金属接点(15)を形成するステップと、
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、ステップe)はさらに、
e1)前記第2トンネル層(9)のほぼ全体上に前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)を形成するサブステップと、続いて、
e2)前記所定のゾーン(11)の外側の領域(17)内で前記第2トンネル層(9)を露出させるように、前記所定のゾーン(11)の外側の前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)を選択的に除去するサブステップと、を含む、方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法において、前記第1トンネル層(5)は誘電材料製であり、前記第2トンネル層(9)は誘電材料製又は半導体合金製である、方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の方法において、前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)及び前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)のうちの少なくとも一方は多結晶シリコン製である、方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の方法において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と同じドーパントタイプを有する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を有する、方法。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか一項に記載の方法において、前記金属接点(15)は、銀、AgAl、アルミニウム又は銅のペーストである、方法。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか一項に記載の方法において、
・前記第1トンネル層(5)は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)は、5nm~100nm、好ましくは10nm~50nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2トンネル層(9)は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、5nm超、好ましくは10nm~200nmの厚さを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力デバイスの分野に関する。より詳細には、本発明は、不動態化接点(passivated contacts)を有する光起電力デバイス、及び対応するその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン太陽電池では、接点における再結合損失を低減し、したがって、セルに衝突する光を電流に変換する効率を高くするために、接点の不動態化が非常に重要である。
【0003】
典型的には、超薄型(<5nm)の誘電体トンネル層が、例えば酸化シリコンの結晶シリコン基板上に堆積され、その上にドープ多結晶シリコン(ポリシリコン)キャッピング層が形成される。次いで、例えば、スクリーン印刷し、続いて銀ペーストを硬化させることによって、このキャッピング層の上に電気接点が選択的に被着される。硬化は、ペーストを「固める(set)」ために高温で行われるので、硬化中、銀材料が表面性状及び表面欠陥に流れ込むにつれて、下にあるポリシリコンはしばしば損傷し、不動態化が低減される。
【0004】
比較的厚いポリシリコンキャッピング層は、優れた不動態化をもたらすが、太陽電池の活性部分で変換されるはずの光を吸収してしまうので、達成される不動態化のレベルは、最終的に妥協することになる。この寄生光吸収によって、セルの変換効率が低下する。
【0005】
こうした理由のため、スクリーン印刷及び全焼成(firing-through)によって金属化されるポリシリコン系不動態化接点は主に、従来のホモ接合を前面に有する太陽電池の裏側に使用される。高効率な太陽電池を求める場合、ポリシリコン不動態化接点は、理想的には太陽電池の両側に被着される。そのため、吸収層内で太陽光発電を最大にするには、過剰な寄生光損失を生じさせることなく、ポリシリコン系不動態化接点の再結合が低減され、ウェハ表面全体にわたって高い不動態化レベルが維持されるように、接点を配置する必要がある。ドープポリシリコンが裏側にのみある場合、このような損失は、自由キャリア吸収(FCA)による太陽電池スペクトル応答のうち、赤外線応答で起こることに留意されたい。ポリシリコン不動態化接点が太陽電池の前面にも又は両面に被着される場合、光損失は、太陽電池スペクトル応答のうち、UV領域、可視領域、及び赤外線領域で生じる。
【0006】
特許文献1(WO 2020/204823)は、裏面積層体を有する光起電力デバイスであって、シリコン基板上に配置された、全面的(full-surface)第1トンネル層、全面的第1多結晶シリコン系キャッピング層、全面的第2トンネル層、全面的第2多結晶シリコン系キャッピング層、及び金属接点のシーケンスを備える光起電力デバイスを開示している。金属接点以外の全ての当該層が全面的なので、セルの性能は少しも最適化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/204823号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より正確には、本発明は光起電力デバイスに関し、この光起電力デバイスは、
・シリコン基板、典型的には単結晶シリコンウェハであり、該シリコン基板は、ドープされてもよく、ドープされなくてもよく、又は一定のゾーン、特に表面のみドープされてもよい、該シリコン基板と、
・シリコン基板の少なくとも第1面上に位置する第1トンネル層と、
・第1トンネル層上に位置する第1多結晶シリコン系キャッピング層であり、セルの構成に応じて、第1多結晶シリコン系キャッピング層は、全領域であってもよく、又はパターニング(パターン形成)されてもよく、第1多結晶シリコン系キャッピング層は、多結晶シリコンそのものであってもよく、又は多結晶シリコンカーバイド、多結晶シリコン酸化物等であってもよく、これらの物質はシリコン系であることに留意すべきである、該第1多結晶シリコン系キャッピング層と、及び
・第1多結晶シリコン系キャッピング層のほぼ全体上に位置する第2トンネル層と、
を備える。
【0010】
本発明によれば、この光起電力デバイスは、さらに、
・第2トンネル層の所定のゾーン上に位置する第2多結晶シリコン系キャッピング層であり、第2トンネル層のうち、所定のゾーンの外側に位置する領域は、第2多結晶シリコン系キャッピング層がない(すなわち、所定のゾーンの外側に位置する領域上では、第2多結晶シリコン系の層を有していない)ものである、該第2多結晶シリコン系キャッピング層と、及び
・第2多結晶シリコン系キャッピング層の少なくとも一部の上に直接又は間接的に位置する金属接点であり、この金属接点は、デバイスの電気接点を構成するようにパッド、フィンガー等として構成される層である、該金属接点を備える。
【0011】
シリコン基板及び上述の様々な層のドーピング(又はドーピングの欠如)は必要に応じて手配することができ、本発明は、特定のドーパント構成に限定されない。さらに、上述の層は、基板の片面又は両面に設けることができる。
【0012】
その結果、金属が、シリコン基板と第1トンネル層との界面(不動態化接触界面を形成する)から遠ざけられて、例えば、金属接点用に使用される銀ペーストの熱硬化の間、又はPVDによる場合には蒸着の間、界面に対する損傷が排除される。上記ゾーンの外側の非接触領域には、第2多結晶シリコン系キャッピング層が設けられておらず、つまり、寄生光吸収を最小限に抑えるために、これらの領域における多結晶シリコン系の材料の厚さを、可能な限り薄くできるということである。したがって、接点の不動態化が最大化され、寄生光吸収が最小化され、セル効率、フィルファクタ、オープンソース電圧、及び短絡電流が改善される。
【0013】
有利には、第1トンネル層は誘電材料から作製され、第2トンネル層は誘電材料又は半導体合金から作製される。後者は垂直電荷輸送(すなわち、基板の平面に対して垂直方向の電荷輸送)を妨げない。
【0014】
有利には、第1多結晶シリコン系キャッピング層及び第2多結晶シリコン系キャッピング層のうちの少なくとも1つは、水素化された又は水素化されていない多結晶シリコン製である。
【0015】
有利には、第2多結晶シリコン系キャッピング層は、対応する所定のゾーン内の第1多結晶シリコン系キャッピング層、すなわち、下方にある第1多結晶シリコン系キャッピング層と同じドーパントタイプを有する。したがって、電荷の収集が最適化される。
【0016】
有利には、第2多結晶シリコン系キャッピング層は、対応する所定のゾーン内の第1多結晶シリコン系キャッピング層よりも高いドーパント濃度を有する。
【0017】
有利には、金属接点は、銀、銀/アルミニウム、アルミニウム又は銅のペーストである。
【0018】
有利には、以下の1つ以上が当てはまる。
・第1トンネル層は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・第1多結晶シリコン系キャッピング層は、5nm~100nm、好ましくは10nm~50nmの厚さを有する、及び/又は
・第2トンネル層は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・第2多結晶シリコン系キャッピング層は、5nm超、好ましくは5nm~200nmの厚さを有する。
【0019】
本発明は、上述の光起電力デバイスを製造する方法にも関連し、この方法は、
a)シリコン基板、典型的には単結晶シリコンウェハであり、単結晶シリコンウェハは、ドープされてもよく、ドープされなくてもよく、又は一定のゾーン、特に表面のみドープされてもよい、該シリコン基板を準備するステップと、
b)シリコン基板の少なくとも第1面上に位置する第1トンネル層を形成するステップと、
c)第1層上に、ほぼ全領域に又はセル構成に応じたパターニング方式で、第1多結晶シリコン系キャッピング層を形成するステップと、及び
d)第1多結晶シリコン系キャッピング層のほぼ全体上に、第2トンネル層を形成するステップと、
を備える。
【0020】
本発明によれば、本方法は、さらに、
e)第2トンネル層上の所定のゾーン上に第2多結晶シリコン系不動態化層を形成するステップであり、第2トンネル層のうち、所定のゾーンの外側に位置する領域は、第2多結晶シリコン系キャッピング層がないものである、該第2多結晶シリコン系キャッピング層を形成するステップと、及び
f)前記第2多結晶シリコン系キャッピング層の少なくとも一部の上に金属接点を形成するステップであり、この金属は、デバイス用の接点に資するものである、該金属接点を形成するステップと、
を備える。
【0021】
シリコン基板及び上述の様々な層のドーピング(又はドーピングの欠如)は必要に応じて構成することができ、本発明は、特定のドーパント構成に限定されない。さらに、上述の層は、基板の片面又は両面に設けることができる。
【0022】
その結果、金属は、シリコン基板と第1トンネル層との界面(不動態化接触界面を形成する)から遠ざけられ、例えば、金属接点用に使用される銀ペーストの熱硬化の場合、界面に対する損傷が排除される。ゾーンの外側の非接触領域には、第2多結晶シリコン系キャッピング層が設けられておらず、つまり、寄生光吸収を最小限に抑えるために、これらの領域における多結晶シリコン系の材料の厚さを可能な限り薄くできるということである。したがって、接点の不動態化が最大化され、寄生光吸収が最小化され、セル効率、フィルファクタ、オープンソース電圧、及び短絡電流が改善される。
【0023】
有利には、ステップe)は、さらに、
e1)第2トンネル層のほぼ全体上に第2多結晶シリコン系キャッピング層を形成するサブステップと、続いて
e2)所定のゾーンの外側の領域内で第2トンネル層を露出させるように、所定のゾーンの外側の第2多結晶シリコン系キャッピング層を選択的に除去するサブステップと、を含む。
【0024】
これは、第2多結晶シリコン系キャッピング層をパターン形成するのに特に効率的で簡便な方法である。しかしながら、代替的な方法では、パターニング方式で、例えば、マスキングに続いて蒸着することにより、第2多結晶シリコン系キャッピング層を堆積させることができる。
【0025】
有利には、第1トンネル層は誘電材料製であり、第2トンネル層は誘電材料製又は半導体合金製である。
【0026】
有利には、第1多結晶シリコン系キャッピング層及び第2多結晶シリコン系キャッピング層のうちの少なくとも一方は、多結晶シリコンから作製される。
【0027】
有利には、第2多結晶シリコン系キャッピング層は、対応する所定のゾーン内の第1多結晶シリコン系キャッピング層、すなわち、下方にある第1多結晶シリコン系キャッピング層と同じドーパントタイプを有する。したがって、電荷の収集が最適化される。
【0028】
有利には、第2多結晶シリコン系キャッピング層は、対応する所定のゾーン内の第1多結晶シリコン系キャッピング層よりも高いドーパント濃度を有する。
【0029】
有利には、金属接点は、銀、アルミニウム、銀/アルミニウム、又は銅のペーストである。
【0030】
有利には、以下のうちの1つが当てはまる。
・第1トンネル層は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・第1多結晶シリコン系キャッピング層は、5nm~100nm、好ましくは10nm~50nmの厚さを有する、及び/又は
・第2トンネル層は、0.5nm~5nm、好ましくは0.5nm~1.5nm、さらに好ましくは0.5nm~1nmの厚さを有する、及び/又は
・第2多結晶シリコン系キャッピング層は、5nm超、好ましくは10nm~200nmの厚さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のさらなる詳細は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
図1】本発明による光起電力デバイスの一部の概略的断面図である。
図2】本発明による方法の様々なステップの概略的断面図である。
図3】本発明による方法の様々なステップの概略的断面図である。
図4】本発明による方法の様々なステップの概略的断面図である。
図5】試験用光起電力セルの概略的断面図である。
図6】本発明による光起電力デバイスの様々な構成の部分の概略的断面図である。
図7】本発明による光起電力デバイスの様々な構成の部分の概略的断面図である。
図8】本発明による光起電力デバイスの様々な構成の部分の概略的断面図である。
図9】本発明による光起電力デバイスの様々な構成の部分の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による光起電力デバイス1の一部を概略的に示し、本発明の理解に必要な特徴のみ、すなわち、本発明の核心をなす不動態化接点の構成を図示し、またその他全ての層は除かれている。様々な層は概略的に表されており、相対的な厚さは、図面から判断すべきではない。
【0033】
光起電力デバイス1はシリコン基板3を備え、シリコン基板3は、典型的にはウェハの形態の単結晶シリコン又は一般的に知られている多結晶基板である。光起電力デバイスのタイプに応じて、この基板3は、ドープされずともよく、均一にドープされてもよく、ウェハの片面又は両面のいずれかにおける様々なゾーンがドープされてもよく、又は同様であってもよい。本発明の原理は、裏面接点型、前面接点型、又は両面接点型のいずれであろうと、単結晶シリコンウェハに基づく多くのタイプの太陽電池に適用されるので、この点に関するさらなる詳述は必要としない。
【0034】
ウェハの第1面3a上には誘電材料、例えば、任意の好都合な化学量論のSiO,SiN,SiON,AlN、又はAlON等から作製される第1トンネル層5が設けられる。この層は、典型的には5nm未満、好ましくは1.5nm未満、さらには1nm未満であるが、典型的には0.5nmよりも大きい厚さを有し、基板3のほぼ全面にわたって堆積される。この厚さは、トンネル化による電荷キャリア(場合に応じて電子又は正孔)の通過を可能にするのに十分小さい。
【0035】
第1トンネル層5のうち基板3とは反対側の面には、第1多結晶シリコン系キャッピング層7が設けられており、キャッピング層7は、ドープされてもよく、ドープされなくてもよい。本実施形態では、第1多結晶シリコン系キャッピング層7は、第1トンネル層の上記した面のほぼ全体にわたって設けられるが、図9(以下を参照)から分かるように、セル構成の機能における特定の状況下では、第1多結晶シリコン系キャッピング層7をパターニング(パターン形成)することができる。「多結晶シリコン系層」という用語は、Si自体、SiO,SiC又はSiN等のシリコン系材料から形成される多結晶層を指すものと理解されるべきであり、この材料は、随意的に水素化される。結晶化度のレベルに関しては、典型的には、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%のラマン結晶化度が適切である。厚さは、典型的には5nm~100nm、好ましくは10nm~50nmである。
【0036】
第1多結晶シリコン系キャッピング層7のうち、基板3とは反対側の面のほぼ全体上に、第2トンネル層9が設けられる。第2トンネル層9は、材料及び厚さに関して第1トンネル層5と同じ制約を受ける誘電体トンネル層、又は半導体合金トンネル層である。トンネル層5及び9がどちらも誘電体である場合、それらは同一である必要はない。半導体合金に関しては、厚さが10nm未満、好ましくは5nm未満、さらに好ましくは1.5nm未満であり、且つ0.5nm超である、Si-O、Si-N、Si-C及びAlON合金層を使用することができる。
【0037】
基板3の反対側にある第2誘電体トンネル層9の表面の所定のゾーン11には、第2多結晶シリコン系キャッピング層13が設けられる。第2多結晶シリコン系キャッピング層13は、ドープされてもよく、ドープされなくてもよい。第2多結晶シリコン系キャッピング層13は、第1多結晶シリコン系キャッピング層7と同じドーパントタイプ(又はその欠如)を有することが好ましいが、この通りである必要はない。有利には、多結晶シリコン系キャッピング層7及び13は、どちらも同一タイプのドーパント(P型又はN型)でドープされ、第2多結晶シリコン系キャッピング層13は、第1多結晶シリコン系キャッピング層7よりも高いドーパント濃度を有する。こうすることで、電荷キャリアの抽出を最大化するのに役立つ。この層は、5nmより厚く、典型的には10nm~200nm、好ましくは50~150nmである。
【0038】
最後に、第2多結晶シリコン系キャッピング層13上の、やはり基板3とは反対側の面に、金属接点15が直接的又は間接的に配置される。例えば、さらなるトンネル層及び/又はさらなる1つの(又はいくつかの)キャッピング層を、第2多結晶シリコン系キャッピング層13と金属接点15との間に設けることができることは、除外されない。
【0039】
所定のゾーン11の外側に位置する領域17では、第2誘電体トンネル層9は露出したままであり、こうすることで、寄生光吸収が最小限に抑えられる。
【0040】
層5、7、9、13、及び15は、実装される太陽電池のタイプに応じて、光起電力デバイス1の前面(すなわち、光が入射する側)、裏面(すなわち、日影側)、又は両面のいずれかに適用することができる。さらに、層5、7、9、13、及び15はそれぞれ、好ましくは、下にある層(第1トンネル層5の場合は基板)の上に直接設けられるが、介在層の存在は排除されるべきではない。
【0041】
本発明による光起電力デバイス1の構造について、図1を参照して説明した。次に、特に有利であるが非限定的なその製造方法について、図2図4を参照して説明する。
【0042】
図2は、シリコン基板3、第1トンネル層5、第1多結晶シリコン系キャッピング層7、及び第2誘電体トンネル層9を備える積層体の一部を形成するための一連のステップを表す。
【0043】
まず、上述のように、シリコン基板3を用意する。
【0044】
続いて、例えば、表面の酸化若しくは窒化などによる成長によって、又は、化学蒸着法(例えば、プラズマ成長を使用する又は使用しないAPCVD、LPCVDなど)、物理蒸着法(スパッタリング)などの蒸着によって、シリコン基板の表面上に第1トンネル層5が形成される。この層5は、典型的にはドープされないが、一般に知られているように、蒸着中にドーパントを含ませることができる。
【0045】
続いて、第1多結晶シリコン系キャッピング層7が第1トンネル層5の上に形成され、好ましくは、蒸着又は介在層の形成なしに、その上に直接形成される。典型的には、これは、一般に知られているように、選択された材料に応じて、物理蒸着法(プラズマ成長を使用した又は使用しないPVD)又は化学蒸着法(PECVD、LPCVD)によって実行される。
【0046】
続いて、第2トンネル層9が、第1多結晶シリコン系キャッピング層7のほぼ全体上に形成され、好ましくは、(例えば、熱硝酸法、オゾン酸塩脱イオン水、UV-オゾン、又は他の酸化法によって)第1多結晶シリコン系キャッピング層7の上で成長させることにより、蒸着又は介在層の形成なしにその上に直接形成され、又は、選択された材料に応じて、PVD、CVD、原子層蒸着(ALD)などにより、第1多結晶シリコン系キャッピング層7の上に蒸着される。理想的には、これは、第1多結晶シリコン系キャッピング層7と同じ蒸着ツールで実行される。
【0047】
ここで図3に移ると、第2多結晶シリコン系キャッピング層13が、第2トンネル層9の表面上に、好ましくは、蒸着又は介在層の形成なしに、典型的にはPVD、LPCVD又はPECVDによって直接第2トンネル層9の上に形成され、蒸着中は、随意的ドーパントが取り込まれる。
【0048】
この蒸着は、例えば、最終的に第2多結晶シリコン系キャッピング層13が設けられない領域17をマスキングすることによって、選択的に実行することができるが、図示の実施形態では、この層は、第2トンネル層9のほぼ全体にわたって設けられ、次いで、図13に示すように、領域17から選択的に除去される。
【0049】
これは、任意な既知の手段によって実行することができ、例えば、ゾーン11(図示せず)にエッチング用マスキングを施し、続いて、領域17における多結晶シリコン層13に対して、ドライ又はウェットエッチング、レーザアブレーション、レーザ結晶化を行い、続いて、結晶化領域をエッチングすることによって実行することができる。
【0050】
有利には、多結晶シリコン層13はマスキングされ、エッチングは、脱イオン水及びアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、又は水酸化テトラエチルアンモニウムのエッチング溶液中で、ウェットプロセスによって実行される。
【0051】
より好ましくは、水酸化カリウム中のエッチング溶液の濃度は、1M~6M、好ましくは1M~3Mである。
【0052】
有利には、エッチングステップは、20℃~100℃の温度、例えば室温(20~25℃)で行われる。
【0053】
いくつかの条件下では、ウェットエッチングプロセスによって多孔質シリコン層が形成される場合があり、この層は続いて、フッ化水素酸などのウェット溶液中でエッチングすることができる。
【0054】
上述のエッチング液のいずれも第2トンネル層9の材料をエッチングすることはできず、したがって、正確なプロセス制御を必要とせずとも、第2トンネル層9は、清浄で透明な表面を残すエッチングストップとして作用する。
【0055】
第2多結晶シリコン系キャッピング層13のパターニングの前後のいずれかで、700℃を超える温度、典型的には80℃~1050℃の温度でアニール(焼きなまし)プロセス(annealing process)を実行することができる。実際には、アニールステップを2回実行することが可能であり、1回は第1多結晶シリコン系キャッピング層7の蒸着後で、もう1回は第2多結晶シリコン系キャッピング層13の蒸着後である。
【0056】
最後に、第2多結晶シリコン系キャッピング層13の形成及び/又はパターニングに続いて、金属接点15が、後に硬化される銀ペーストの形態、任意の好都合な形態のPVD、金属めっきなどの形態で、第2多結晶シリコン系キャッピング層13に被着される。
【0057】
その結果、金属電極は第2多結晶シリコン層7と接触するだけであり、これにより、金属化プロセスによって誘発される損傷が排除される。このような損傷は不動態化を低減するので、金属を基板/不動態化接点の界面(すなわち、基板3/第1トンネル層5の界面)から離しておくことは、このような損傷を排除し、したがって、第1多結晶シリコン系キャッピング層7を、接点用に使用されない領域17(すなわち、ゾーン11の外側の領域)において可能な限り薄く保ちながら、全体的なセルの効率を向上させる。
【0058】
第2多結晶シリコン系キャッピング層15をパターニングし、金属接点15を被着した後で、図1の構造体が得られ、次いで、当技術分野で一般に知られているように、その他の製造ステップ、相互接続、カプセル化(封入)などを、この構造体に対して行うことができる。例えば、接点用に使用されない領域17に、SiNなどの誘電体層を設けることができる。完全な光起電力デバイス1を形成するために必要な他の層は、プロセス中の任意の好都合な時点で、一般に知られているように形成することができる。
【0059】
両面接点型光起電力デバイス1の場合、ステップは、基板3の各面で連続的に実行することができ、適切であれば、少なくとも特定のステップは、同時に実行することができる。
【0060】
上述の方法の他の変形例も可能である。例えば、層5、7、9、13のいずれかがドープされる場合、蒸着プロセス中にドーパント前駆体を付与するのではなく、追加の処理ステップ中にドーパントが供給されてもよい。このような補助的処理ステップは、ドーパントを含有する補助層のイオン注入又は堆積であってもよく、ドーパントはその後、拡散して下の層に入り、その後、補助層の除去が実行されてもよい。
【0061】
さらに、他の介在層が積層体内に、(限定しないが)特に、基板3と第1トンネル層5との間に存在することは除外されないが、これらの層は、間に余分な層が存在することなく、記載された順序通りに設けられることが好ましい。
【0062】
図5に示されるような複数の同一のセル1を、同じウェハ上に、第2トンネル層9の厚さを変えて形成し、また比較対照として、第2トンネル層9が省略されたセルを形成して、実験が行われた。いずれの場合も、第2多結晶シリコン系キャッピング層13がセル1の全領域を覆っており、その結果、このセル1は本発明に対応せず、むしろ、第2トンネル層13が電荷抽出を妨げず、実際にセルの性能を改善することを証明するための概念実証を形成する。適切な場合、様々な層のドーピングタイプが示される。
【0063】
基板3は、厚さが180μmのフロートゾーン結晶シリコンウェハであり、抵抗率が2Ω・cmのリンでドープされている。第1トンネル層5は、厚さが約1.2nmのSiOである。第1多結晶シリコン系キャッピング層7は、厚さが約10nmの多結晶シリコンであり、リンがドープされている。第2トンネル層9は、厚さを0nmから1.9~2.5nm(蒸着時間は30秒)で変化させたことを除いて、第1トンネル層5と同じである。第2多結晶シリコン系キャッピング層7は、第1多結晶シリコン系キャッピング層7と同じ材料、ドーピングタイプ、及びドーパント濃度であり、厚さは約100nmである。いずれの場合も、850℃で30分間、セルをアニール処理した。金属接点15は、スクリーン印刷された銀ペーストであり、第2キャッピング層13の表面のうち、金属接点15の外側の領域は、窒化ケイ素の誘電体層19で覆われている。SiN19は、(不動態化原子を付与するので、)太陽電池の光学的及び電気的特性を向上させる。誘電体層19を全面にわたって被着することも可能であり、金属接点15が焼成されると、金属スパイクが誘電体層19を貫通して、下側にある層13と直接電気的に接触し、誘電体層19を金属接点15の下側で機能不全にする。これにより、パターニング方式で誘電体層19を堆積することと比べて、又は、意図した通りに接点15が配置されるように、全領域に堆積してその後に局所的に除去することと比べて、製造が単純化される。これは、誘電体層19のあらゆる例に当てはまり、また、誘電体層29にも当てはまる(以下参照)。
【0064】
基板3の反対側には、ほぼ全領域に積層体が設けられ、この積層体は、基板3から離れる方向に、SiOの裏面トンネル層21、多結晶シリコンのp型ドープキャッピング層23、酸化インジウムスズの透明導電性酸化層25、及び銀の裏面接点27を備える。
【0065】
結果は以下の表に記録されている。Vocは開路電圧、FFはフィルファクタ、Jscは短絡電流である。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
上記から分かるように、9秒間堆積した第2トンネル層9では、全ての測定基準に対して最良のセルの性能が得られ、一方、30秒間堆積した場合のより厚い層では、結果の範囲が広くなり、結果が悪くなっている。これは、おそらく電荷キャリア抽出の妨げに起因している。
【0070】
堆積時間9秒に対応する第2トンネル層9の厚さが最良の結果を与える理由に関して、考えられる説明は以下の通り、すなわち、
・第2多結晶シリコン系キャッピング層13の微細構造層特性は、第2トンネル層9の存在によって変化する、
・第2トンネル層9は,キャッピング層におけるポリシリコンの再結晶化に影響を及ぼす、
・第2トンネル層9の存在により、2つのポリシリコン層7、13は、ポリシリコンの全体にわたって延在する結晶を有する単一層としてではなく、個別に再結晶化する、
・第2トンネル層9は、ドーパントの拡散に影響を与え、ドーパントが基板3の内部を通過することを妨げる、
・第2トンネル層9は、銀ペーストの積層体への浸透に対するバリアを与える、
である。
【0071】
図6図9は、本発明の核心をなす不動態化接点を組み込んだ、本発明による光起電力セル1の一部の様々な非限定的な構造を示す。様々な層のドーピングタイプは必要に応じて示され、また一般に知られているように、ドーパントタイプは逆にすることができる。さらに、入射光の方向は、太陽記号及び大きな矢印によって示されている。
【0072】
図6は、光起電力セル1の一部を示し、この部分は、基板3の前面、すなわち、入射光の方向を向くように意図された面側に、第2トンネル層9の表面のうち、第2キャッピング層13によって覆われていない領域上に設けられた誘電体層19(SiN又はその他等)と共に、図1の文脈で説明された層5、7、9、13及び15を備える。反対側となる基板3の日影側(裏側)には、図5の文脈で開示されているように、一連の層21、23、25、27が設けられている。
【0073】
図7は、光起電力セル1の別の部分を示し、この部分は、裏側から透明導電性酸化層25が除かれており、また裏面接点27が、パターニングされた金属層、例えば銀ペーストである点で、図6の部分とは異なる。誘電体層29は、誘電体層19と同様に、層23のうち、裏面接点27によって覆われていない領域上に設けられる。代替的に、誘電体層29が全面にわたって設けられてもよく、パターニングされた金属層27、例えば銀ペーストが焼成されると、金属スパイクが誘電体層を貫通して、誘電体層を通る電気的接続を形成し、金属層27の下側で冗長化する。しかしながら、これにより、誘電体層19の文脈において上述したように、製造が単純化される。
【0074】
図8は、光起電力セル1の別の部分を示し、この部分は、裏面に、前面と同様の不動態化接点の構成が設けられている点で、図7の部分と異なる。したがって、キャッピング層23は、前面トンネル層5、9と同様にさらなるトンネル層31がコーティングされ、若干のゾーンでは、第2キャッピング層13と類似するが逆ドーピングである、さらなるキャッピング層33が設けられ、変更すべきところは変更する。
【0075】
最後に、図9は、本発明による不動態化接点を組み込んだ裏面接点型光起電力デバイス1の一部を示す。基板3の光入射側には、上述と同様の誘電体層29が設けられている。裏面には、ほぼ全領域にわたって第1トンネル層5が設けられ、ゾーン11には、第1多結晶シリコン系キャッピング層7がパターニング式で設けられ、次いで、積層体の残りの部分7、9、13がその上に設けられ、上述のように金属接点15がトッピングされる。ドープ層7及び13は、第1タイプのp型ドーピングを有する。第1キャッピング層7をパターニングするための上述のプロセスに対する変更は、当業者に公知であり(例えば、堆積後にマスキングし、エッチング、レーザアブレーション若しくは同様のものを行い、又は、マスキング後に堆積及びマスク除去を行う)、ここでは詳細に説明する必要はない。
【0076】
各ゾーン11相互間には、n型ドーピングを有するパターニングされた多結晶シリコン層33が、ゾーン11内の積層体と接触しない状態で設けられている。この多結晶シリコン層33には、さらなる金属接点層33がトッピングされている。第1トンネル層5のうち、層7又は33で覆われていない領域は、上述のように誘電体層19でコーティングされる。また、第2多結晶シリコン系キャッピング層13を堆積した後で、ゾーン11内の積層体の垂直方向表面を含む表面全体にわたって誘電体層19を堆積し、続いてゾーン11内で局所的な除去を行うこと、又は単に、焼成中に接点15の金属を誘電体層19に貫通させることも可能である。さらに、接点15が、領域11の全体よりも少ない部分を覆うことが可能である。この全体的なセルの構成は当該技術分野において周知であり、その機能についてのさらなる説明は必要ではないが、本発明による光起電力デバイスを得るために、どのようにして層5、7、9、13を含む積層体がこの構成に被着されるかは明らかである。
【0077】
特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、それらの変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・シリコン基板(3)と、
・前記シリコン基板(3)の少なくとも第1面(3a)上に位置する第1トンネル層(5)と、
・前記第1トンネル層(5)上に位置する第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と、及び
・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のほぼ全体上に位置する第2トンネル層(9)と、
を備える、光起電力デバイス(1)であって、
前記光起電力デバイス(1)は、さらに、
・前記第2トンネル層(9)の所定のゾーン(11)上に位置する第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)であり、前記第2トンネル層(9)のうち、前記所定のゾーンの外側に位置する領域は、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層がないものである、該第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)と、及び
・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)の少なくとも一部の上に位置する金属接点(15)と、
を備えることを特徴とする、光起電力デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第1トンネル層(5)は誘電材料で作製され、前記第2トンネル層(9)は誘電材料又は半導体合金で作製される、光起電力デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)及び前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)のうちの少なくとも一方は、水素化された又は水素化されていない多結晶シリコン製である、光起電力デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と同じドーパントタイプを有する、光起電力デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の光起電力デバイス(1)において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を有する、光起電力デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の光起電力デバイス(1)において、前記金属接点(15)は、銀、AgAl、アルミニウム又は銅のペーストである、光起電力デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の光起電力デバイス(1)において、
・前記第1トンネル層(5)は、0.5nm~5nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)は、5nm~100nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2トンネル層(13)は、0.5nm~5nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、5nm超の厚さを有する、光起電力デバイス。
【請求項8】
光起電力デバイス(1)の製造方法であって、
a)シリコン基板(3)を準備するステップと、
b)前記シリコン基板(3)の少なくとも第1面(3a)上に位置する第1トンネル層(5)を形成するステップと、
c)前記第1層上に、第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)を形成するステップと、及び
d)前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のほぼ全体上に、第2トンネル層(9)を形成するステップと、
を備え、
前記方法は、さらに、
e)前記第2トンネル層上の所定のゾーン(11)上に第2多結晶シリコン系不動態化層(13)を形成するステップであり、前記第2トンネル層のうち、前記所定のゾーンの外側に位置する領域は、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層がないものである、該第2多結晶シリコン系キャッピング層を形成するステップと、及び
f)前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)の少なくとも一部の上に金属接点(15)を形成するステップと、
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、ステップe)はさらに、
e1)前記第2トンネル層(9)のほぼ全体上に前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)を形成するサブステップと、続いて、
e2)前記所定のゾーン(11)の外側の領域(17)内で前記第2トンネル層(9)を露出させるように、前記所定のゾーン(11)の外側の前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)を選択的に除去するサブステップと、を含む、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記第1トンネル層(5)は誘電材料製であり、前記第2トンネル層(9)は誘電材料製又は半導体合金製である、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)及び前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)のうちの少なくとも一方は多結晶シリコン製である、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)と同じドーパントタイプを有する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、対応する所定のゾーン(11)内の前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を有する、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法において、前記金属接点(15)は、銀、AgAl、アルミニウム又は銅のペーストである、方法。
【請求項15】
請求項8に記載の方法において、
・前記第1トンネル層(5)は、0.5nm~5nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第1多結晶シリコン系キャッピング層(7)は、5nm~100nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2トンネル層(9)は、0.5nm~5nmの厚さを有する、及び/又は
・前記第2多結晶シリコン系キャッピング層(13)は、5nm超の厚さを有する、方法。
【国際調査報告】