(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための細菌株
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240314BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240314BHJP
A01N 63/27 20200101ALI20240314BHJP
A01N 63/22 20200101ALI20240314BHJP
【FI】
C12N1/20 E
C12N1/20 A
A01P3/00
A01N63/27
A01N63/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558978
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022057862
(87)【国際公開番号】W WO2022207474
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523364368
【氏名又は名称】ビボプロテクト・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリザヴェス、ウーリグ
(72)【発明者】
【氏名】アーサ、ハーカシソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA15X
4B065AA41X
4B065BA22
4B065CA47
4B065CA60
4H011AA01
4H011BB21
(57)【要約】
本発明は、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)CR10b、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)H7、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)H10、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)Y13.1からなる群から選択される食用葉から単離される細菌株に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される食用葉から単離される細菌株
【請求項2】
前記細菌株は、種子及び野菜におけるヒト病原体及び植物病原体の確立及び成長を防止するためのものである請求項1に記載の細菌株。
【請求項3】
種子及び野菜におけるヒト病原菌であるエシュリヒア属及び腸内細菌種の拡散を防止するためのものである請求項1又は2に記載の細菌株。
【請求項4】
前記野菜は、緑色葉物野菜である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の細菌株。
【請求項5】
アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択された少なくとも1つの細菌株を含む組成物であって、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための組成物。
【請求項6】
前記組成物は、種子及び野菜におけるヒト病原体及び植物病原体の確立及び成長を防止するためのものである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)の組み合わせを含む請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの細菌株又は請求項5ないし7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
前記野菜は、緑色葉物野菜である請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記少なくとも1つの株は、パッケージング前に野菜を洗浄するための洗浄水に添加されるか、又は包装中の野菜のパッケージング前、パッケージング中、又はパッケージング後に野菜に噴霧される、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記少なくとも1つの株は、灌漑用水に添加されるか、又は水耕栽培システムで栄養溶液へと添加される請求項8又は9に記載の使用。
【請求項12】
前記少なくとも1つの株は、包装の内側に適用されるか、又は包装のライニング若しくは包装のパッケージング材料に適用される請求項8又は9に記載の使用。
【請求項13】
前記少なくとも1つの株は、播種前に種子へコーティングされる請求項8に記載の使用。
【請求項14】
前記少なくとも1つの株は、10
4 - 10
12 cfu/mlの量で種子上へコーティングされる請求項12に記載の使用。
【請求項15】
播種後に得られる葉野菜などの野菜における細菌多様性を増加させるための請求項12又は13に記載の使用。
【請求項16】
アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される、単離された株。
【請求項17】
ヒトの感染からの保護に使用するための、少なくとも1つの請求項1ないし4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの単離された株又は請求項5ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子及び野菜上のヒト病原体の確立及び成長を防止するための細菌株に関する。本発明はまた、種々の用途における当該株の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緑色葉物野菜(Leafy green vegetables)は、世界中の多数の食事に含まれており、栄養価が高く健康的な食品成分と考えられている。しかしながら、新鮮で便利な野菜の需要が増加するにつれて、食品媒介疾患のアウトブレイクの数も増加する。ヒト病原体による汚染は、生産チェーン全体で発生する可能性があり、製品を生で食べるとき、微生物は水道水で除去又は洗浄することが困難である。細菌負荷を低減することを目的とした塩素処理の有効性は疑問視されており、健康及び環境上のリスクをもたらすものと考えられている。塩素の使用もまた多くの国で禁止されている。生体保存又は生物学的制御の原理は、病原体の成長及び生存を制御するために、代わりに拮抗細菌又はその代謝産物を使用することである。効果の背後に存在する機構は、例えば栄養素若しくは物理的空間の競合、又は拮抗化合物の生産である。以前の研究では、新鮮な農産物から単離された細菌を用いて生物学的制御を使用して、ピーマンディスク上のサルモネラ・チェスター(Salmonella chester)及びリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)を予防した。エンダイブの天然の微生物叢の混合単離株は、L.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)から保護することが見出され、乳酸菌の株は、エロモナス・ハイドロフィリア(Aeromonas hydrophilia)、L.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)を阻害した。大腸菌(E.coli)とは、緑色葉菜(leafy green)で見られ得る最も一般的かつ重篤な病原体の1つであるが、生体保存によるその成長を防ぐための調査はごくわずかしか行われていない。しかしながら、生体保存では、ヒト及び植物の両方に関して、非病原性である拮抗細菌に焦点を合わせることが重要である。現在まで、ヒト病原体に対する拮抗性細菌株の効果は、生きている植物では試験されておらず、特に実際の生産環境では試験されておらず、これは、商業的使用のための細菌株の可能性を評価するのに重要である。以前の研究では天然の微生物叢が除去された滅菌葉系でのみ行われており、これは、実際の現場生産システムとは全く異なることが実現されている。
【0003】
すでに確立された生態系における空間及び共存についての競合は、潜在的な細菌株の生存及び成長にとって最も重要な課題の1つであるはずであり、これは、植物においてのみ測定することができる。
【0004】
国際公開第2016/005974号パンフレットは、実生における種子関連疾患のバイオコントロールについて開示している。油及び細菌カクテル中に粒子状物質を含む製剤が記載される。当該文献の表5Bでは、この製剤が試験されているのは植物病原体のみである。植物病原体の例として腸内細菌科(family Enterobacteriaceae)が挙げられる。腸内細菌科とは、細菌種の大きく多様な科である。一部の種はヒト疾患、例えば大腸菌(E.coli)に関連し、一部は植物関連疾患、例えばエルウィニア(Erwinia)に関連する。腸内細菌科内の多様性のために、例としては1つ又は少数に対して拮抗効果を有する場合、1つの拮抗株が全ての腸内細菌科種に対して作用するかどうかの結論を導くことは不可能である。たとえ病原体が同じ分類学的な細菌科に属する場合であっても、植物病原体に対するアンタゴニストがヒト病原体に対してもまた有効であることは示されていない。細菌の病原性は株特異的であり、植物病原体は、概して、ヒト病原体ではない。
【0005】
したがって、生きている植物に対するより高い病原体耐性、特にヒト病原体耐性の効果と、消費者にとってより健康な方向に植物の微生物叢を変化させる効果との両方を有する、新規かつ改善された細菌株を提供する必要がある。さらに、実生活の現場生産システムを取り扱うのに充分に堅牢であり、かつ経時的に安定している、すなわち改善された貯蔵能力を有する細菌株を得ることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/005974号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に照らして、本発明の概念の目的は、先行技術の前述した欠点の1つ以上が対処される、少なくとも1つの細菌株を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される食用葉から単離される細菌株に関する。
【0009】
以下に詳細に記載されるように、上述の株は、驚くべきことに、商業的な現場環境において生きている植物に対する大腸菌(E.coli)などの、潜在的なヒト病原体に対して拮抗効果を有することが示されている。
【0010】
上記の細菌株による種子コーティングを通して、消費者にとってより健康な方向で植物の微生物組成物に影響を及ぼすことが可能であることが示されている。このようにして、緑色葉物野菜への病原体の増殖及び拡散のリスクを低減することができ、将来のそれらの関連するアウトブレイクの結果を緩和することができる。また、一旦成長した葉野菜(leafy vegetables)などの野菜の細菌多様性の増加が播種後に得られることも観察されている。
【0011】
本発明は、別の態様では、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される、少なくとも1つの細菌株を含む組成物を提供する。
【0012】
本発明は、更に別の態様では、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を予防するための上記の少なくとも1つの細菌株の使用を提供する。
【0013】
本発明は、本発明の更に別の態様では、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される、単離された株を提供する。
【0014】
本明細書に開示される新規の株は、例えば、現場の植物においてインビボで大腸菌(Escherichia coli)を緩和することができる、食用葉から単離された非病原性細菌株である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】垂直画線培養法(a)大腸菌(E.coli)に対する拮抗効果を、大腸菌(E.coli)が成長しにくい勾配として示す。(b)大腸菌(E.coli)に対する拮抗効果を、大腸菌(E.coli)が成長できない測定可能な阻害ゾーンとして示す。(c)陰性結果、阻害ゾーンを視覚化することができない。
【
図2】科レベルでの細菌存在量。(a)大腸菌(E.coli)拮抗細菌でコーティングされた種子。N
S=未処理種子(n=2)、K
S=コーティング対照(n=2)、A
S=P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207(n=2)、B
S=P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204(n=2)、C
S=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205(n=1)、及びD
S=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206(n=2)。(b)(a)における種子由来の植物。N
L(n=5)、K
L(n=6)、A
L(n=5)、B
L(N=6)、C
L(n=6)、及びD
L(n=6)。
【
図3】0.001でカットオフされたp値による、DESeq2によって群ごとに分析された、属レベルでの葉及び種子のLog2倍数変化プロット。全ての群をコーティング対照(K)と比較する。NS=未処理種子(n=2)、KS=コーティング対照(n=2)、AS=P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207(n=2)、BS=P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204(n=2)、CS=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205(n=1)、及びDS=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206(n=2)。(b)(a)における種子由来の植物。NL(n=5)、KL(n=6)、AL(n=5)、BL(N=6)、CL(n=6)、及びDL(n=6)。なお、y軸は異なる間隔を示す。正のlog2倍数変化値は、処置群においてより高いASV存在量を示し、負の値は、コーティング対照群(K)においてより高い存在量を示す。同じ属内の複数の記号は、同じ属に割り当てられた異なるASVを表す。
【
図4A】0.001でカットオフされたp値による、DESeq2による同じ群内で比較した葉及び種子のLog2倍数変化プロット。N
S=未処理種子(n=2)、K
S=コーティング対照(n=2)、A
S=P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207(n=2)、B
S=P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204(n=2)、C
S=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205(n=1)、及びD
S=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206(n=2)。(b)(a)における種子由来の植物。N
L(n=5)、K
L(n=6)、A
L(n=5)、B
L(N=6)、C
L(n=6)、及びD
L(n=6)。正のlog2倍数変化値は、種子においてより高いASV存在量を示し、負の値は、葉においてより高い存在量を示す。同じ属内の複数の記号は、同じ属に割り当てられた異なるASVを表す。
【
図4B】0.001でカットオフされたp値による、DESeq2による同じ群内で比較した葉及び種子のLog2倍数変化プロット。N
S=未処理種子(n=2)、K
S=コーティング対照(n=2)、A
S=P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207(n=2)、B
S=P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204(n=2)、C
S=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205(n=1)、及びD
S=B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206(n=2)。(b)(a)における種子由来の植物。N
L(n=5)、K
L(n=6)、A
L(n=5)、B
L(N=6)、C
L(n=6)、及びD
L(n=6)。正のlog2倍数変化値は、種子においてより高いASV存在量を示し、負の値は、葉においてより高い存在量を示す。同じ属内の複数の記号は、同じ属に割り当てられた異なるASVを表す。
【
図5】重み付けされたunifracによって計算され、かつ順列多変量分散分析(Permutational multivariate analysis of variance:PERMANOVA)と対で比較された、葉試料のβ多様性。群Nは、未処理種子由来の葉であり、凍結培地のみでコーティングした種子由来のK(コーティング対照)、P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207でコーティングされた種子由来のA、P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204によるB、及びB.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205によるC、B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206によるDである。コーティング対照と比較して、*p<0.05、**p<0.01、K.n=比較数。
【
図6】動物研究の実験設計。水消費量を毎日測定し、最後に飼料消費量を測定した。開始時、前処理後、及び終了時に、体重を記録した。
【
図7A】フローサイトメトリーによって分析された、腸間膜リンパ節の免疫細胞集団。処置対照(K)と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、及び
***P<0.001。
【
図7B】フローサイトメトリーによって分析された、腸間膜リンパ節の免疫細胞集団。処置対照(K)と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、及び
***P<0.001。
【
図8A】示された細菌調製物で24時間刺激した後に、フローサイトメトリーによって調査したMoDC(n=5)上の活性化マーカ発現。PBSと比較して、*P<0.05及び**P<0.01。CD86及びCD80のデータは、試料中の陽性細胞の平均%/未染色の陽性細胞の平均%(標準偏差)として示された。HLA-DRデータは、試料のy中央値の蛍光強度の中央値(median fluorescence intensity:MFI)平均%/未染色のy中央値の平均%(標準偏差)として示された。
【
図8B】示された細菌調製物で24時間刺激した後に、フローサイトメトリーによって調査したMoDC(n=5)上の活性化マーカ発現。PBSと比較して、*P<0.05及び**P<0.01。CD86及びCD80のデータは、試料中の陽性細胞の平均%/未染色の陽性細胞の平均%(標準偏差)として示された。HLA-DRデータは、試料のy中央値の蛍光強度の中央値(median fluorescence intensity:MFI)平均%/未染色のy中央値の平均%(標準偏差)として示された。
【
図8C】示された細菌調製物で24時間刺激した後に、フローサイトメトリーによって調査したMoDC(n=5)上の活性化マーカ発現。PBSと比較して、*P<0.05及び**P<0.01。CD86及びCD80のデータは、試料中の陽性細胞の平均%/未染色の陽性細胞の平均%(標準偏差)として示された。HLA-DRデータは、試料のy中央値の蛍光強度の中央値(median fluorescence intensity:MFI)平均%/未染色のy中央値の平均%(標準偏差)として示された。
【
図9】10:1の細菌対MoDC比で、示された細菌調製物により24時間刺激したMoDC(n=3、反復実験)による、サイトカイン発現(異なるスケーリングに留意されたい)。範囲外の値及び高い変動に起因して、統計的評価は行わなかった。△は上限の範囲外における1つ以上の反復を示し、▽は下限の範囲外における1つ以上の反復を示す。OOR-測定された全ての反復は検出限界未満である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書で使用される「プロバイオティクス」という用語は、通常は消化管内で個体によって消費された場合に健康上の利益を提供する、生きている微生物を意味する。
【0017】
「cfu」という用語はコロニー形成単位を意味し、試料中の生存細菌細胞の数を推定するために微生物学で一般的に使用される単位である。本出願では、cfuは、cfu/mL、すなわちcfu/mLに関連して使用される。
【0018】
本明細書で使用される「α多様性」という用語は、個々の試料内の豊富さ(種の数)及び/又は均等度(種の分布)を推定するための尺度を意味する。α多様性は、豊富さ及び均等度の両方を考慮して、シャノン・ウィナー指数(H’=-Σ pi ln pi)によって計算することができる。
【0019】
本明細書で使用される「β多様性」という用語は、異なる群からの試料を比較して、全体的な群落の組成及び構造の違いを識別する尺度を意味する。UniFrac法はβ多様性の尺度であり、また、種の相対的な関連性も考慮に入れる。
【0020】
拮抗性細菌株に関連して本明細書で使用される「拮抗性」という用語は、ヒト及び/又は植物病原体を減少させる能力を有する株を意味する。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明を、以下でより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底性及び完全性のために、並びに本発明の範囲を当業者へ充分に伝えるために提供される。異なる実施形態に個々の特徴が含まれてもよいが、これらはおそらく他の方法で組み合わされてもよく、異なる実施形態に含まれることは、特徴の組合せが実現不可能であることを意味しない。さらに、単数の参照は複数を除外しない。本発明の文脈において、「a」、「a」という用語は、複数を排除するものではない。
【0022】
本発明の概念は、少なくとも部分的には、食用の葉から単離された特定の細菌株が、例えば、生きている植物に対するより高い病原体耐性の効果と、消費者のより健康的な方向に植物の微生物叢を変化させることと、を含む、望ましい特性を有するという予想外の認識に基づいている。
【0023】
上記のように、本発明は、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される食用葉から単離される細菌株に関する。当該少なくとも1つの株は、緑色葉物野菜(leafy vegetables greens)などの種子及び野菜における、ヒト病原体エシェリキア(Escherichia)属菌及び腸内細菌科種の確立及び成長を妨げ得る。腸内細菌の科内の病原体属の例は、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、シトロバクター(Citrobacter)、サルモネラ(Salmonella)、大腸菌(Escerichia coli)、赤痢菌(Shigella)、プロテウス(Proteus)、セラチア(Serratia)、及びパンテア(Pantoea)である。エシェリヒア(Escherichia)属菌の例は、大腸菌(E.coli)、エシェリヒア・アルベルティ(E.albertii)、エシェリヒア・ブラッテ(E.blattae)、エシェリヒア・フェルグソニ(E.fergusonii)、エシェリヒア・ヘルマンニ(E.hermannii)、及びエシェリヒア・ヴァルネリス(E.vulneris)である。
【0024】
上記で開示された細菌株は、以下に記載されるような産業現場生産システムで試験された大腸菌(E.coli)に対して拮抗性であることが示されている。ホウレンソウ種子は、当該細菌株である、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)でコーティングされる。本発明の細菌株がコーティングプロセスを生き延びることができるか、及び葉の天然の微生物叢で確立されることができるかどうかを試験した。シュードモナス(Pseudomonas)種の変化は豊富であり、種子及び葉の両方で、全ての試料において異なる種についてより高い存在量が観察された。
【0025】
より具体的には、2つの細菌株(シュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)LMG P-32207及びシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)LMG P-32204)について、種子から植物への大腸菌(E.coli)-赤痢菌(Shigella)の存在量の減少が見られた。より病原性の低い微生物叢組成物の他の徴候が存在した;2つの株(バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)LMG P-32205及びバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)LMG P-32206)を接種した種子は、ラクトバチルス科の存在量が増加しており、それらのうち1つはパンテア(Pantoea)の存在量が低かった。更に、試験した全ての拮抗株は、葉上の植物病原体属エルウィニア(Erwinia)及び/又はペクトバクテリウム(Pectobacterium)の存在量を低下させた。
【0026】
一実施形態では、当該細菌株は、種子及び野菜におけるヒト病原体及び植物病原体の確立及び成長を防止するためのものである。したがって、細菌株は、ヒト病原体に加えて植物病原体に対してもまた効果を及ぼし得る。
【0027】
本発明は、別の態様では、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される、少なくとも1つの細菌株を含む組成物を提供する。
【0028】
一実施形態では、当該組成物は、種子及び野菜上のヒト病原体及び植物病原体の確立及び成長を防止するためのものである。したがって、上記細菌株の少なくとも1つを含む組成物は、ヒト病原体に加えて、植物病原体に対してもまた効果を及ぼし得る。
【0029】
組成物は、少なくとも1つの細菌株及び形態と共に好適であり得る任意の他の従来公知の添加剤を含んでもよく、例えば、凍結乾燥形態で存在してもよい。
【0030】
上記に開示された少なくとも1つの株は、凍結乾燥形態、風乾形態、凍結形態、又は液体形態で存在し得る。少なくとも1つの株の前当該形態を調製するための方法は、当技術分野内で当業者に利用可能である。
【0031】
組成物は、同じ組成物中に1つ以上の細菌株、例として2つ以上の株、例えば3つの株などを含み得る。一実施形態では、4つ全ての株を、組成物で組み合わせて使用してもよい。そのような場合、各株の個々の特徴の全てが、全ての有益な特性を有する1つの組成物に組み合わされる。
【0032】
本明細書では、葉野菜などの種子及び野菜上のヒト病原体の確立及び成長を防止するための、少なくとも1つの細菌株又は組成物の使用もまた提供される。
【0033】
本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株又は当該少なくとも1つの細菌株を含む組成物の使用もまた本明細書で提供され、ここで、当該少なくとも1つの株は、パッケージング前に野菜を洗浄するための洗浄水に添加されるか、又は包装中の野菜のパッケージング前、パッケージング中、又はパッケージング後に野菜に噴霧される。
【0034】
本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株又は当該少なくとも1つの細菌株を含む組成物の使用もまた本明細書で提供され、ここで、当該少なくとも1つの株は、灌漑用水に添加されるか、又は水耕栽培システムで栄養溶液へと添加される。また、拮抗性細菌株を接種した種子を有する植物は、実生数の増加を示し、したがって、拮抗性細菌株が収量を増加させることを示していることが分かった。したがって、拮抗性細菌株は生物肥料として使用してもよい。
【0035】
本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株又は当該少なくとも1つの細菌株を含む組成物の使用もまた本明細書で提供され、ここで、当該少なくとも1つの株は、包装の内側に適用されるか、又は包装のライニング若しくは包装のパッケージング材料に適用される。
【0036】
本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株又は当該少なくとも1つの細菌株を含む組成物の使用もまた本明細書で提供され、ここで、当該少なくとも1つの株は、播種前に種子へコーティングされる。
【0037】
本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株又は当該少なくとも1つの細菌株を含む組成物の上記で提供された異なる使用により、病原体の増殖及び緑色葉物野菜への拡散が低減され得、将来のそれらの関連したアウトブレイクの結果が低減され得る。
【0038】
少なくとも1つの株はまた、播種前に種子にコーティングされてもよい。少なくとも1つの株は、104~1012cfu/mLの量、例として106~1012cfu/mLの量、例えば104~1012cfu/mLの量又は約106~1010cfu/mLの量などで種子上にコーティングされ得る。本明細書に記載の細菌株による種子コーティングを通して、消費者にとってより健康な方向で植物の微生物組成物に影響を及ぼすことが可能であることが示されている。B.コアグランス(B.coagulans)の2つの株を接種した種子由来の植物ではβ多様性がより高く、これらの群の微生物存在量が、対照と比較して系統発生的に異なることを示していた。微生物の多様性が高い植物ほど、病原体の侵入抵抗が高いことが知られている。
【0039】
更に、本明細書に開示される当該少なくとも1つの株でコーティングされた種子の効果は、少なくとも6年間維持されることが示されており、これは、本発明の株の効果の強い堅牢性を示している。表1に見られるように、大腸菌(E.coli)の成長の阻害は6年後に試験され、安定したままであった。
【0040】
播種後に得られる葉野菜などの野菜における細菌多様性を増加させるための、本明細書に記載の少なくとも1つの細菌株、又は当該少なくとも1つの細菌株を含む組成物の使用もまた本明細書で提供される。
【0041】
本明細書では、ヒトの感染からの保護に使用するための、上記の少なくとも1つの単離された株、又は当該少なくとも1つの単離された株を含む組成物もまた提供される。実験においてより詳細に記載されるように、本明細書に開示される細菌株の免疫調節効果が観察されている。
【0042】
株の定義
本明細書に開示される新規の株は、食用の葉から単離された非病原性細菌株である。
【0043】
全ての株は、2021年1月26日に、ベルギーのヘントのBCCM/LMG(Belgian Coordinated Collections of Micro-organisms/Laboratorium voor Microbiologie、Universiteit Gent(UGent))に寄託されている。寄託者は発明者及び出願人の両方であるÅsa Hakanssonである。
【0044】
アクセッション番号は以下の通りである。
【0045】
シュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis) LMG P-32204、
バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans) LMG P-32205、
バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans) LMG P-32206、及び
シュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina) LMG P-32207。
【0046】
株は生物学的に純粋である。バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)はプロバイオティクス種であることが知られている。
【0047】
実験
細菌株の単離
この実験では、緑色葉物野菜に対する天然の微生物叢からの潜在的な大腸菌(Escherichia coli)アンタゴニスト(特定の細菌株)を同定し、産業分野の生産環境におけるそれらの効果を評価することを目的とした。異なる種類の緑色葉物野菜から単離された295の細菌株のうち、37がインビトロで大腸菌(E.coli)に対して効果を示した。拮抗株のサブセットをホウレンソウの種子にコーティングし、畑に植えた。種子及び植物の両方をIllumina Miseq次世代シーケンシング(next generation sequencing:NGS)によって分析した。これは、植物の微生物叢が消費者にとってより健康的な方向に変化することが分かった。2つの細菌株で処理した試料ではより高いβ多様性が観察され、これは、植物のより高い病原体侵入耐性を示した。2つの細菌株(シュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)LMG P-32207及びシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)LMG P-32204)について、種子から植物への大腸菌(E.coli)-赤痢菌(Shigella)の存在量の減少が見られた。より病原性の低い微生物叢組成物の他の徴候が存在した;2つの株(バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)LMG P-32205及びバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)LMG P-32206)を接種した種子は、ラクトバチルス科の存在量が増加しており、それらのうち1つはパンテア(Pantoea)の存在量が低かった。更に、試験した全ての拮抗株は、葉上の植物病原体属エルウィニア(Erwinia)及び/又はペクトバクテリウム(Pectobacterium)の存在量を低下させた。
【0048】
実験の説明
アンタゴニストの単離、インビトロ試験、及び同定
潜在的な拮抗細菌を単離するために、スウェーデンのルンドの現地スーパーで、玉レタス、フダンソウ、ホウレンソウ、及びルッコラ(各65g)を各5袋購入した。そのうえ、30袋のルッコラを現地の葉物の緑色野菜生産者から収集した。微生物培養は、以下の増殖培地を用いて行った:トリプトンソイ寒天(TSA、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)、カザミノ酸酵母エキスデキストロース寒天(YCED:酵母エキス、0.3g;カザミノ酸、0.3g;D-グルコース、0.3g;K2HPO4、2.0g;寒天、18g;蒸留水1000mL)、水酵母エキス寒天(WYE:酵母エキス、0.25g;K2HPO4、0.5g;寒天、18g;蒸留水1000mL)、ラフィノース・ヒスチジン寒天(ラフィノース、10g;L-ヒスチジン、1g;MgSO4*7H2O、0.5g;FeSO4*7H2O、0.01g;NaCl、20g;寒天、18g;蒸留水、1000mL)、カゼイン塩寒天(カゼイン、0.3g;KNO3、1、25g;NaCl、47.25g;K2HPO4、1、25g;MgSO4*7H2O、0.05g;CaCO3、0.02g;FeSO4*7H2O、0.01g;寒天、18g;蒸留水、1000mL)、ISP2(酵母エキス、4g;麦芽エキス、10g;D-グルコース、4g;寒天、18g;蒸留水、1000mL)、及び麦芽寒天(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)。インキュベーションを、TSAについては30℃で3日間、YCED、WYE、ラフィノース、カゼイン、ISP2、及びISP5寒天については30℃で7日間、麦芽寒天については20℃で7日間進行させた。コロニーを単離し、精製のために画線培養し、凍結培地(K2HPO4、0.85g;KH2PO4、0.2;クエン酸三ナトリウム脱水物(Tri-sodium-citrate-dehydrate)、1.5g;MgSO4×7H2O、0.25g;グリセロール(99.5%)、121.5mL;蒸留水、-80℃で875mL中にて貯蔵した。TSAプレート上で垂直画線培養法により、大腸菌(E.coli)CCUG29300Tに対する拮抗作用について株を試験し、ここで、株をプレート上に一列に画線培養し、30℃で3日間インキュベートした。インキュベーション後、大腸菌(E.coli)を株に対して垂直に画線培養し、プレートを30℃で24時間更にインキュベートした。拮抗効果は、3mmより大きい阻害ゾーンの存在、又は大腸菌(E.coli)の線上の勾配として読み取られた。同じ試験を6年後に繰り返して、効果が経時的に変化するかどうかを評価した。最近同じ研究室で食用植物から単離され、かつバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)DSM1Tに最も近いタイプの株(同一性99.7%)によって同定された2つの株を、Balouiri、Sadiki、及びIbnsouda(2016年)によって記載された寒天プラグ拡散法によって大腸菌(E.coli)に対して試験した。手短に言えば、B.コアグランス(B.coagulans)株をMRS寒天(Merck KGaA、Darmstadt、Germany)上の高密度マット中において37℃で7日間、及び大腸菌(E.coli)をトリプトンソイ寒天(Sigma-Aldrich)上において37℃で24時間成長させた。B.コアグランス(B.coagulans)の1cm2プラグを切り出し、大腸菌(E.coli)プレートに移植した。大腸菌(E.coli)の非存在形態の拮抗作用は、大腸菌(E.coli)が成長できないTSAプレート上で勾配の形態にて検出された。
【0049】
拮抗株のDNA精製及びサンガー配列決定
インビトロで拮抗作用を示した株をDNA精製し、サンガー配列決定によって配列決定した。手短に言えば、精製株をビーズ破砕工程後に生理食塩水へと懸濁し、上清をPCRに使用して、順方向プライマENV1(5’-AGAGTTTGATIITGGCTCAG-3’)及び逆方向プライマENV2(5’-CGG ITA CCT TGT TAC GAC TT-3’)(Eurofins Genomics、Ebersberg、Germany)を用いてrRNA遺伝子(16S)のおよそ1500bp長の断片を増幅し、結果をゲル電気泳動によって確認した。PCR産物を、配列決定プライマとしてENV1を用いて、ABI 3130xl Genetic分析器(Applied biosystems、Foster City、CA、USA)で、Eurofins Genomics(Ebersberg、Germany)にてサンガー配列決定のために送った。配列決定した遺伝子を、配列の質に応じて590~788bpへとトリミングし、SeqmatchソフトウェアによってRibosomal Databaseプロジェクト(Ribosomal Database project:RDP)のタイプ株配列と比較した。
【0050】
野外試験
インビトロで拮抗効果を示した4つの異なる株(P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207、P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204、B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205、及びB.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206)を、ホウレンソウをモデル作物とする商業的な現場環境における種子及び葉の微生物群に対するそれらの影響によって評価した。1μLの純粋培養物を、シュードモナス(Pseudomonas)株については50mLのトリプトンソイ・ブロス(Sigma-Aldrich)と30℃で24時間にわたり、及びバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)株については38℃で6日間にわたり、MRSブロス(Merck KGaA)とインキュベートすることによって、種子接種物を調製した。インキュベーション後、株を生理食塩水で洗浄し、凍結培地で総体積40mLに希釈し、種子コーティング処理まで-80℃で貯蔵した。
【0051】
ホウレンソウの種子(ホウレンソウ「Yuma」F1/PV1245、バッチ番号366948 2018/2019、Pop Vriend Seeds、Andijk、The Netherlands)を、以下のように各1100gで6つの処理群に分けた;正常対照(N)は未処理種子を含有し、処置対照(K)は凍結培地のみでコーティングした種子を含有した;A群はP.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207(4×1012cfu/mL)で種子をコーティングし、B群はP.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204(9×109cfu/mL)で種子をコーティングし、C群はB.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205(1×109cfu/mL)で種子をコーティングし、D群はB.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206(1×109cfu/mL)で種子をコーティングした。種子を実験用コーティング機SATEC Concept ML 2000(SATEC Equipment GmbH、Elmshorn、Germany)で2分間コーティングし、実験用乾燥機SUET 819214/002(SUET Saat-und Erntetechnik GmbH、Eschwege、Germany)で室温にて4分間乾燥させた。微生物分析のための処理後に、各群から100gの種子を取り出した。
【0052】
現場試験は、スウェーデン南部の産業パートナーと協力して実施された。天候は晴れで乾燥しており、昼間の温度は23~26℃、夜間の温度は11~16℃であった。作物を長さ120m及び幅1.3mの1つの隆起床に播種し、ここで、各処理群は20m専用であり、1m2の6つのプロットが均一に積み重ねられた。各1m2プロットを1反復とみなした。収穫は、20日後に無菌技術を用いて、土壌の1.5cm上のプロット内の植物をはさみで切断することで行い、それらをビニール袋に移し、実験室での分析まで直ちにクールボックスに入れた。全ての機器を反復の間で滅菌した。
【0053】
種子及び植物上の微生物叢の次世代シーケンシング
葉及び種子のDNA抽出を行った。2gの植物材料の試料を、20mLのPBS(Oxoid Ltd.、Blastingstoke、UK)を含む試験管に入れ、その後、10分間にわたり超音波処理した。植物材料を除去し、残りの液体を11600×gで20分間にわたり遠心分離した。上清を捨て、残りのペレットをDNA精製による更なる処理まで-18℃で貯蔵した。DNA精製を、Nucleiospin(登録商標)Soil Kit(Macherey-Nagel、Duren、Germany)を製造業者の指示に従って用いて行った。DNA濃度は、Qubit(商標)1x ds DNA HS Assay Kit(Life Technologies Corporation、Eugene、OR、USA)を用いて測定した。PCRプライマB969F(ACGCGHNRAACCTTACC)及びBA1406R(ACGGGCRGTGWGTRCAA)(Eurofins Genomics、Ebersberg、Germany)を、PCR試薬であるKapa HiFi Hotstart Ready Mix(Kapa Biosystems Pty(Ltd)、Salt River、Cape Town、South Africa)と共に使用して、以下のPCRプログラムで16S rRNA遺伝子の470bpのV6-V8超可変領域を増幅した:95℃で30秒間、25℃で30秒間、及び72℃で30秒間を25サイクル、72℃で5分間の保持期間。PCR産物を、AMPure XPビーズ(Beckman Coulter Genomics、Brea、CA、USA)を用いて精製した。インデックスPCRを、95℃で3分間実行した後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、及び72℃で30秒間の8サイクルを実行し、この生産物を再びQubit(Life Technologies)で測定した。増幅された断片の長さは、両方のPCR実行後に製造業者の指示に従って、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、Waldbrunn、Germany)及びAgilent DNAキット(Agilent Technologies、Vilnius、Lithuania)を用いて、ランダム試料で測定した。インデックス付き試料を再懸濁緩衝液(Illumina、San Diego、CA、USA)で4nMまで希釈し、製造業者の指示に従って、Miseq試薬キットv3を用いてIllumina Miseqで配列決定した(600サイクル)。PhiX(Illumina)を内部対照として使用した。最終充填量は600μLであった。
【0054】
生産されたリードをIllumina CASAVA 1.8(Illumina)によって逆多重化し、Qiime 2 2020.6でDADA2を用いてフィルタリングし、次いでRで更に処理した。フィルタリング後のリードの総数は3128913であり、試料あたりのリードの平均数は65186であった。配列を、左は25bp及び右は275bpの末端でトリミングした。5000個未満のリードを含有する試料を除去した。SILVA 132データベースを用いて、残りのリードの分類学的分類を行った。真核生物、ミトコンドリア、又は葉緑体として同定されたリードを除去した。
【0055】
計算及び統計分析
NGSデータから、存在量レベルを、全ての複製物のOTUの合計をOTUの総数で割って計算した。Chao1及びシャノン指数を用いてα多様性を計算した。クラスカル・ウォリスの順位に基づく一元配置分散分析により、及びウィルコクソン順位和検定によって2つの群により、群ごとに存在量レベル及びα多様性を比較した。重み付けされたUniFracを用いてβ多様性を計算し、順列多変量分散分析(PERMANOVA)によって比較した。群間の差次的存在量を、0.001でカットオフされたp値による、DESeq2によって属レベルで分析した。
【0056】
単離、インビトロ試験、及び同定
垂直画線培養法で試験した295株のうち、18株は大腸菌(E.coli)が成長できなかった測定可能なクリアゾーン(>3mm)を示し、19株では大腸菌(E.coli)線上の勾配を観察することができた。拮抗効果を示した株を、それらの16S rRNA遺伝子によって配列決定し、それらの推定同一性を、2014年及び2020年におけるそれらの拮抗効果と共に表1に提示する。拮抗株は、主にミクロコッカス科(Micrococcaceae)、バチルス科(Bacillaceae)、及びシュードモナス科(Pseudomonadaceae)に属していた。バチルス菌(Bacillus)株は、ほとんどが、貯蔵中に消失しなかったクリアゾーンの形態で拮抗作用を呈した。単離されたシュードモナス(Pseudomonads)は、ゾーン及び勾配の両方を示し、株の約半分は、6年間の貯蔵後にその容量を維持した。寒天プラグ拡散試験によって試験した2つのB.コアグランス(B.coagulans)株について、大腸菌(E.coli)プレート上の勾配が観察された。
【0057】
【0058】
拮抗株は、中断することなく-80℃で6年間貯蔵した後に試験され、一部はその効果を失ったが、一方でクリアゾーンを示した18株のうち8株は、大腸菌(E.coli)に対抗する同じ能力を維持し、それらのほとんどはバチルス(Bacillaceae)科に属した。アルスロバクター(Arthrobacter)種及びリゾビウム(Rhizobium)種は、ほとんどがより弱い勾配形態の拮抗作用を呈し、それらのほとんどはまた、貯蔵後にそれらの拮抗作用を失っており、おそらくプラスミドが保有する形質を示している。これらの結果は、商業的適用のための株を考慮する場合、拮抗効果が経時的に安定であることを検証することが重要であることを強く示唆している。
【0059】
野外試験
現場でのインビボでの選択された細菌株の大腸菌(E.coli)拮抗能を評価するために、ホウレンソウの種子を、別々の群で、P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207、P.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204、B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205、及びB.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206でコーティングした。収穫時の植物の目視検査では、いかなる品質上の欠陥も示されなかった。種子及び植物の両方から抽出された細菌DNAを、Illumina Miseq NGS配列決定によって配列決定した。種子及び葉の両方において、最も豊富な門はプロテオバクテリア(Proteobacteria)であり、それぞれ、67.6%及び67.4%であった。種子において、2番目に豊富な門はバクテリオデテス(Bacteriodetes)(19.3%)であり、続いてアクチノバクテリア(Actinobacteria)(9.2%)であったが、しかし葉において、2番目に豊富な門はフィルミキューテス(Firmicutes)(31.1%)であり、続いてバクテリオドータ(Bacteriodota)(1.0%)であった。
【0060】
科レベルに関するデータは、
図2のタクソン棒グラフで視覚化することができる。種子上に最も豊富に存在したタクソンは、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)(22.4%)であり、次いでエルウィニア科(Erwiniaceae)(17.1%)、スプリンゴモナス科(Springomonadaceae)(10.0%)、ウィクセルラ科(Weeksellaceae)(8.9%)、及びスフィンゴバクテリウム科(Sphingobacteriaceae)(8.7%)であった。葉において、最も豊富なタクソンは、エルウィニア科(Erwiniaceae)(34.5%)、エグジゴバクテリア科(Exiguobacteriaceae)(28.6%)、及びシュードモナス科(Pseudomonadaceae)(13.2%)であった。コーティング対照(K)と比較して、種子又は葉について科レベルで統計的な差異は見られなかったが、注目すべきは、葉試料B
L(0.2%)における腸内細菌科(Enterobaceriaceae)の低濃度、並びにA
L(12.6%)及びC
L(13.5%)におけるより高い濃度である。種子上で最も豊富な属はシュードモナス(Pseudomonas)(22.0%)であり、次いでパンテア(Pantoea)(11.9%)であり、葉上においては、最も豊富な属はエグジゴバクテリウム(Exiguobacterium)(28.6%)パンテア(Pantoea)(20.1%)、及びシュードモナス(Pseudomonas)(13.2%)であった。
【0061】
属レベルでのN、A、B、C、及びD対Kの差次的存在量は、
図3のlog2倍数変化プロットで見ることができる。種子上のシュードモナス(Pseudomonas)に属するアンプリコン配列変異体(ASV)の存在量は、コーティング対照と比較して、非コーティング種子でより高かった(N
S対K
S)。P.セドリナ(P.cedrina)LMG P-32207及びP.プノネンシス(P.punonensis)LMG P-32204(A
S及びB
S対K
S)でコーティングされた種子は、より高いASV存在量のエシェリヒア-赤痢菌(Escherichia-Shigella)を有し、一方で、B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32205及びLMG P-32206株(C
S及びD
S対K
S)でコーティングすると、シュードモナス(Pseudomonas)及びラクトバチルス(Lactobacillus)のASV存在量が増加した。
【0062】
種子コーティングプロセスはまた、とりわけパンテア(Pantoea)種及びシュードモナス(Pseudomonas)種などの葉の微生物叢に多くの変化をもたらした。エルウィニア(Erwinia)、デュガネラ(Duganella)、及びエグジゴバクテリウム(Exiguobacterium)のより高いASV存在量もまた観察された。葉上の全ての拮抗染色(AL-DL対KL)は、エルウィニア(Erwinia)又はペクトバクテリウム(Pectobacterium)のASV存在量を低下させ、DL群(B.コアグランス(B.coagulans)LMG P-32206)は、パンテア(Pantoea)のASV存在量を低下させた。
【0063】
同じ群からの種子と葉とを比較する場合(
図4)、葉と比較して、種子では広範囲の属の存在量が高かった。A群及びB群では、エシェリヒア-赤痢菌(Escherichia-Shigella)は、葉上よりも種子上の存在量が豊富であった。
【0064】
多様性
群のChao1 α多様性指数は、種子については217.0~303.3の間、植物については82.0~98.0の間であった。シャノン指数は、種子では4.3~4.7の間、葉では2.4~2.8の間であった。Chao1指数及びシャノン指数は、種子群(NS、KS、AS、BS、CS、及びDS)及び葉群(NL、KL、AL、BL、CL、及びDL)内でも、同じ処理の葉試料と種子試料との間でも(NL対Ns、KL対KSなど)、有意な差異はなかった。
【0065】
図5で見ることができる葉試料のβ多様性は、コーティング対照Kと比較してC群及びD群でより高い。高い微生物多様性を有する植物は、より高い病原体侵入耐性を有することが知られている。
【0066】
したがって、商業的な現場環境における生きている植物上の潜在的なヒト病原体に対する拮抗性細菌株が本明細書に開示されている。拮抗細菌株による種子コーティングを通して、消費者にとってより健康な方向で植物の微生物組成物に影響を及ぼすことが可能であることが示されている。このようにして、緑色葉物野菜への病原体の増殖及び拡散のリスクを低減することができ、将来のそれらの関連するアウトブレイクの結果を緩和することができる。
【0067】
インビボ実験
上記の実験では、特定の細菌株が緑色葉物野菜上の大腸菌(E.coli)の成長を減少させることができることが分かった。商業的使用の可能性を評価するために、本実験は、炎症促進性マーカの形態での免疫学的応答、及びそれらの投与時の健康なマウスにおける微生物叢変化評価を測定することを目的とした。抗生物質及び大腸菌(E.coli)で動物を処置した後、これらの拮抗細菌を投与して、微生物叢を均等化した。
【0068】
動物
70匹の野生型雌C57BL/6Nマウス(Charles River Laboratories、Germany)を、動物施設で標準化条件下において飼育し、実験プロトコルの開始前に7日間順応させた。水及び飼料の消費は自由に与えられた。水消費量を、実験を通して毎日測定し、飼料消費量を実験終了時に記録した。開始時、前処理後、及び終了時に、体重を記録した。動物を、7つの群(各10匹、ケージあたり5匹)、正常対照(N)、処置対照(K)、及び5つの処置群(A~E)に分けた。実験計画については
図6を参照されたい。K群及びA群~E群は、最初の3日間は2%(v/w)フルクトースを補充した抗生物質で前処理し、その後、大腸菌(Escherichia coli)CCUG29300
T(10
8CFU/mL、ホグネス凍結培地で希釈)で2日間前処理して微生物叢を均等化した。5.2mgのメトロニダゾール(Sanofi AB、Stockholm、Sweden)、3.5mgのアモキシシリン(Mylan AB、Stockholm、Sweden)、及び2.1mgのクリンダマイシン(Orifarm Generics A/S、Odense、Denmark)の平均用量を、各マウスによって消費した。群Nには、最初の3日間はフルクトースのみを投与し、次の2日間は凍結培地のみを投与した。前処理後、A群~E群には、各一種類の細菌株(A:シュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)、B:シュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、C:ロドコッカス・セラスチイ(Rhodococcus cerastii)、D:バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、E:バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans))、及び水中の凍結培地(10
8CFU/mL)を投与し、K及びN群には凍結培地のみを16日間投与した。
【0069】
21日目に、動物を、腹腔内注射によって、1.0mg/kg体重のメデトミジン(Dormitor(登録商標)Vet、Orion Pharma Animal Health、Espoo、Finland)及び75mg/kg体重のケタミン(Ketalar、Werner Lambert Nordic AB、Solna、Sweden)で麻酔した。動脈血を収集し、2時間凝固させ、遠心分離し(3000rpm、3分、4℃)、その後のサイトカイン分析のために血清を-80℃で凍結した。無菌技術下において、正中切開によって開腹術を行い、腸間膜リンパ節(MLN)及びパイエル板(PP)を、HBSS(Biowest、Nuaille、France)を含むチューブに移し、かつフローサイトメトリーによる分析まで氷上に保った。脾臓、小腸及び結腸の管腔内容物を、慎重に収集及び秤量し、小腸及び結腸組織を等張食塩水ですすいだ。ミエロペルオキシダーゼ及び微生物叢分析のために、全ての試料を滅菌チューブに移した。次いで、ペントバルビタール注射によって動物を安楽死させた。血液及び腸試料を-81℃で凍結した。MLN及びPPを氷上に保ち、直ちにフローサイトメトリー(FACS)によって分析した。
【0070】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)
MPOのレベル、好中球に見られる酵素、及び局所腸炎症のマーカを測定するために、小腸試料及び大腸試料を液体窒素中で凍結し、重量を測定した後、1mLのリン酸カリウム緩衝液(20mM、pH7.4)中で60秒間にわたり均質化した。その後、ホモジネートを遠心分離し(14000rpm、10分)、ペレットを、0.5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含む50mM PBS(pH6.0)中に再懸濁した。試料を凍結融解し、次いで90秒間にわたり超音波処理し、60Cの水浴中で2時間にわたり保持した。遠心分離(14000rpm、10分)の後、45μLの上清を96ウェルプレートに移し、150μLのTMB基質(BD Opt EIA(商標)、BD Biosciences、San Diego、CA、USA)を各ウェルに添加し、暗所で15分間インキュベートした。次いで、ウェルあたり100μLの0.5M H2SO4を添加することによって反応を停止させ、試料を450nmで分光光度法により分析した。MPO(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を標準として使用し、値を単位MPO/g組織として表した。
【0071】
末端制限酵素断片多型、T-FRLP
T-RFLPにより微生物多様性を決定するために、500μLのPBS緩衝液を50mgの試料に添加することによって大腸及び小腸の内容物からDNAを抽出し、室温で10分間インキュベートした。その後、遠心分離工程(30秒、3000rpm)の後、エッペンドルフミキサ(Model 5432、Eppendorf、Hamburg、Germany)で4℃にて45分間にわたりビーズ破砕工程を行った。次いで、200μLの上清をEZ1 DNA組織キット(Qiagen、Sollentuna、Sweden)中の滅菌試料チューブに移し、Biorobot EZ1ワークステーション(Qiagen)の製造業者の指示に従ってDNAを抽出した。PCR及び制限エンドヌクレアーゼ(MSPI)消化を行った。消化したアンプリコンを、DNA lab(SUS、Malmo、Sweden)で、内部サイズ標準GeneScan LIZ 600(20~600塩基の範囲、Applied Biosystems)を用いてABI 3130 xl Genetic分析器(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)で分析した。データは、ローカル・サザン・アルゴリズム(local southern algorithm)を用いてGeneMapperソフトウェアバージョン4.0(Applied Biosystems)で分析した。未知のT-RFの正確なサイジングには4つの内部標準が必要であることを考慮して、T-RFを40塩基と580塩基との間で分解した。相対面積率は、多様性指数の計算に使用した各T-RFについて計算した。
【0072】
多重サイトカイン/ケモカイン分析
サイトカイン及びケモカイン(IFN-γ、IL1-β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、KC/GRO、IL10、IL12p70、TNF-α)の定量的分析のために、血清試料を解凍し、製造業者の指示に従って96ウェルV-plex炎症促進性パネル1(マウス)プレート(Meso Scale Diagnostics、LLC、Rockville、MD、USA)へ1:2希釈にて2連で添加した。プレートを、MSD Sector S600プレートリーダ(Meso Scale Diagnostics、LLC)を用いて読み取った。
【0073】
フローサイトメトリー
パイエル板及び腸間膜リンパ節を湾曲したはさみで1mm片に切断し、上清及び脂肪を除去した。次いで、組織を、コラゲナーゼP(0.8mg/mL、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)、ディスパーゼII(3.2mg/mL、Sigma-Aldrich)、及びDNAse(0、1mg/mL、Sigma-Aldrich)を用いて37℃で10分間消化した。上清を収集し、全ての組織が消化されるまで消化を2回繰り返した。遠心分離(1400rpm、5分、4℃)の後、上清を除去し、10%ウシ胎児血清(VWR、Radnor、USA)及び濾過した(40μmのセルストレーナ(VWR))を含むHBSS(Biowest、Nuaille、France)中に再懸濁した。フロースルーを遠心分離し(1400rpm、5分、4℃)、上清を除去し、ペレットをHBSSに再懸濁した。細胞の画分を、Turks’(Merck KGaA、Darmstadt、Germany)で染色し、計数した。懸濁液を、HBSS(Biowest)で106細胞に希釈し、以下の抗体(ab)の組合せで4℃にて一晩染色した:TLR2/CD11c/F4:80/TLR4(パネル1);CCR9/CD4/CD69/CD8a(パネル2);CD4/CD69/CD25/FoxP3(パネル3)。全ての組合せは、非抗原特異的Fc結合を遮断し、ダンプチャネルとして使用するためのCD16/CD32abを含有した(全ての抗体は、eBioscience,Inc.、SanDiego、CA、USAからのものである)。核内FoxP3(eBioscience、Inc.、San Diego、CA、USA)染色のために、細胞を製造業者の指示に従って固定し、透過処理し、次いで、FACS緩衝液(eBiosciences)中に再懸濁した。
【0074】
非染色細胞を対照として使用し、補償のために、VersaComp Antibody Capture Beadキット(Beckman Coulter Inc.、Brea、CA、USA)を使用した。細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、Cytoflexフローサイトメータ(Becton Dickinson、Mountain view、CA、USA)で実行した。Cytexpert 2.0(Becton Dickinson)ソフトウェアを用いてデータ分析を行い、試料あたり50000事象を評価した。PP及びMLNの両方からのリンパ球集団を、前方散乱(FSC)特性及び側方散乱(SSC)特性に基づいて最初にゲーティングした。このゲートから、FSC及びFSC-Widthに基づいてシングレットを選択した。パネル1については、マクロファージ及び樹状細胞を、それぞれF4/80及びCD11cに対する陽性染色によってシングレットから同定し、次いで、それらのゲートを更に使用してTLR2及び/又はTLR4の発現を分析した。パネル2については、CD8+細胞及びCD4+細胞をシングレットから選択し、腸ホーミング及び活性化、CCR9発現及びCD69発現について個別にゲーティングした。パネル3については、活性化及び休止制御性T細胞を、Foxp3+CD69-及びFoxp3+CD69+によってシングレットから選択した。
【0075】
インビトロ試験
細菌溶液
動物試験(セクション2.1.1)で使用したのと同じ拮抗株を、PBS 10^9CFU/mLで調製し、70℃で30分間にわたり熱不活性化した。熱不活性化は5日間にわたり寒天上の生存率対照によって確認され、コロニー成長は検出されなかった。さらに、3つの異なる大腸菌(E.coli)の株(他の細菌溶液と同じ方法で調製)を比較のために使用した。
【0076】
単球の単離及びMoDCへの分化
末梢血単核細胞を、勾配遠心分離(Ficoll-Paque(商標)(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)、末梢血対Ficoll比:1:1)を用いて、白血球濃縮物(Lund University Hospital)から単離した。抗ヒトCD14磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec B.V.&Co.KG、Bergisch Gladbach、Germany)を用いてCD14+細胞を単離し、結果をフローサイトメトリーによって確認した。次いで、6ウェルプレート中のR10培地(RPMI 1640(HyClone(商標))、10%FCS、2mM L-グルタミン、50μg/mLのゲンタマイシン)中で細胞を成長させた。単球をMoDCへと分化させるために、サイトカインヒト組換えGM-CSF(PeproTech、Hamburg、Germany)(150ng/mL)及びIL-4(50ng/mL)(PeproTech)を培地に添加した。細胞を37℃及び5%CO2の存在下において8日間培養し、3日目及び6日目に、培地の半分を交換した。
【0077】
細菌調製物によるMoDCの刺激
培養7日目にCD14(Dako、Santa Clara、CA、USA)とCD1a(Dako)で染色することによって、MoDCへの分化を確認した(CD14-CD1a+が分化)。分化の8日目に、MoDCを計数し、細菌調製物を添加した。細菌細胞とMoDCとの比は、FACS分析では1:1であり、多重サイトカインアッセイでは10:1であった。細胞の濃度は500,000細胞/mLであり、細胞を24ウェルプレートに0.5mL/ウェルで播種した。LPS(5ng/mL)(Sigma-Aldrich、St.Louis、USA)を陽性対照として使用し、PBSを陰性対照として使用した。次いで、細胞を、R10培地を用いて5%CO2の存在下において、37℃で24時間培養した。
【0078】
フローサイトメトリー
24時間の刺激の後、細胞を、マウスIgG(100μg/mL)(Jackson ImmunoResearch、Ely、UK)で遮断し、MACS緩衝液(PBS、0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)、2mMEDTA)で洗浄し、以下の抗体と4℃で15分間インキュベートした:CD14(Dako)、CD1a(Dako)、HLA-DR(BD Biosiences)、CD86(BD Biosiences)、CD80(BD Biosiences)、CD54(BD Biosiences)、TLR2(Biolegend、San Diego、CS、USA)、TLR4(Biolegend)。細胞を、BD FACSCanto(商標)II(BD Biosciences)で分析し、10000事象を収集した。データをFCS express 4(De Novo Software、Glendale、CA、USA)で分析した。生存細胞をゲーティングした。前方散乱及び側方散乱を使用して生存細胞をゲーティングする(ゲート1)。ゲート1から、PE及びFITC陽性細胞を選択した。第2のプロットでは、ゲート1を使用してAPC及びFITC陽性細胞を選択した。細菌で処理した細胞の活性化度を、以下に従って各マーカについて計算した:
【0079】
【0080】
HLA-DRでは、陽性細胞の割合は全ての試料においてほぼ98%であるので、代わりに以下の式を使用することで、放出された蛍光色素光の強度を示した:
【0081】
【0082】
多重サイトカインアッセイ(インビトロ試料)
10:1の細菌細胞対ヒト細胞比での24時間の細菌刺激の後に収集された細胞培養物からの上清を、製造業者の指示に従って(例外;ビーズを10秒の代わりに60秒ボルテックスした)、マルチプレックス免疫アッセイ(Human Custom ProcartaPlex(商標)10-plex、Thermo Fisher scientific、Vienna、Austria)を用いて、10種の異なるサイトカイン(IFN-γ、IL1-β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-8、KC/GRO、IL10、IL12p70、TNF-α)の濃度について分析した。次いで、サイトカインの濃度を、Bio-Plex(商標)200システム(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)を用いて反復実験で測定した。
【0083】
統計分析
飼料摂取量及び水分摂取量、MPO活性サイトカイン/ケモカインのデータ、多様性指数、及びFACSデータの統計学的計算を、SigmaPlot v13.0ソフトウェア(SPSS Inc.、Chicago、USA)を用いて行った。全ての群間の差異をクラスカル・ウォリスの順位に基づく一元配置分散分析によって評価し、2つの実験群間の差をマン・ホイットニー順位和検定によって評価した。p≦.05である場合、結果は統計的に有意であるとみなした。値は25パーセンタイル及び75パーセンタイルの中央値として提示される。群内のT-RFの発生頻度の統計的計算をフィッシャー検定で行った。細胞培養物からのFACSデータを、GraphPad Prism 8.01(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を用いたフリードマン検定で評価した。
【0084】
インビボ試験
動物
動物試験中の動物の体重並びに飼料摂取量及び水摂取量の記録は、表1で見ることができる。データは、実験期間全体にわたって分析され、また、2つの部へと分割される;動物が抗生物質及び大腸菌(E.coli)を投与されたときの前処置期間、及び動物が飲料水で拮抗細菌を投与されたときの処置期間。3週間の全実験期間にわたって、動物は、1.0~1.9gの間で体重が増加し、61.0~63.9gの間で飼料を摂取した。水分摂取量は、1日あたり18.5~20.0mLの間であった。処置対照群(K)と比較した群間の中央値の有意な変化は、体重、飼料、又は水分摂取量について開始から終了まで見られず、また処置期間中も見られなかった。処置前期間中、正常対照群(N)と比較した体重の増加が、C群を除く全ての群で観察された。
【0085】
【0086】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)
好中球に見られる酵素であり、かつ局所腸炎症のマーカであるMPOのレベルを、小腸及び大腸で測定した。群間のMPO濃度の中央値の統計学的に有意な差は、大腸又は小腸では見られなかったが、小腸にR.セラスチイ(R.cerastii)を投与された動物では減少傾向が見られた(C群)。B.コアグランス(B.coagulans)の異なる株を投与されたD群及びE群については、減少傾向が小腸及び大腸の両方で見ることができる。
【0087】
末端制限酵素断片多型、T-FRLP
小腸における17個の末端制限断片(T-RF)が、群間及び処置対照(K)間で有意に異なる発生数で検出された(表2)。2~4個のT-RFは、異なる処置群(A~E)でのみ検出され、処置対照群(K)では検出されなかった。大腸では、対照と比較して有意に異なる発生数で25個のT-RFを検出することができ(表3)、対照群と比較して処置群でのみ3~6個のT-RFが検出された。ほとんどの新しいピークは、P.セドリナ(P.cedrina)を投与したA群で検出され、最も少ない新しいピークは、小腸と大腸の両方でP.プノネンシス(P.punonensis)(B)を投与した動物で検出された。
【0088】
【0089】
【0090】
微生物多様性は、試料の総面積に比例した各試料のピーク面積を用いて、T-RFLPパターンに基づいて計算された。これは、表5で見ることができる。シャノン・ウィナー多様性指数(H’)の中央値は、小腸における処置対照群(K)での1.22と比較して、処置群では1.31~1.49の間で変動した。大腸では、シャノン・ウィナー多様性指数は、処置対照(K)と比較して、処置群で2.20~2.50の間で変動する。小腸のB群(P.プノネンシス(P.punonensis))及び大腸のE群(B.コアグランス(B.coagulans))は両方とも、処置対照群(K)と有意に異なる中央値を有した。シンプソン指数の中央値は、大腸では処置対照(K)と比較して処置群(A~E)について0.74~0.89の間で変動し、小腸では処置対照と比較して処置群について0.57~0.70の間の範囲であった。大腸におけるE群のシンプソン指数の中央値は、処置対照群の中央値と有意に異なっていた。
【0091】
【0092】
多重サイトカイン/ケモカイン分析
マウス血清中のサイトカイン/ケモカインのレベルを試験終了時に測定した。拮抗細菌の投与は、処置対照であるKと比較して、P.セドリナ(P.cedrina)(A)及びB.コアグランス(B.coagulans)(D,E)を投与された動物において、有意に高いレベルのIFN-γをもたらした。そのうえ、Kと比較して、群C(R.セラスチイ(R.cerastii))、D及びEでは、有意に高いレベルのKC/GROが観察された。
【0093】
フローサイトメトリー
パイエル板及び腸間膜リンパ節からの単核免疫細胞をフローサイトメトリーによって分析した。腸間膜リンパ節(
図7)では、活性化CD4+免疫細胞(T細胞、樹状細胞、及びマクロファージを含む)及びCD8+細胞(主に、細胞傷害性T細胞によって発現)の割合は、正常対照(N)と比較して、処置対照(K)で減少した。CD4+細胞及びCD8+細胞の両方について、B.コアグランス(B.coagulans)(D,E)を投与された動物はKよりも大きな集団を有し、A群(P.セドリナ(P.cedrina))及びC群(R.セラスチイ(R.cerastii))はKよりも小さな集団を有する。樹状細胞(CD11c+)及びマクロファージ(F4/80+)のグラム陽性細菌誘導調節(TLR2+)では、集団はNからKに増加する。シュードモナス(Pseudomonas)株及びR.セラスチイ(R.cerastii)(A~C)を投与された群は、CD11c(樹状細胞)のKと同じレベルのままであるが、一方で、B.コアグランス(B.coagulans)(D、E)を投与された群は、正常対照と同じレベルに戻る。F4/80(マクロファージ)では、全ての群が処置対照と同じレベル以上である。活性化制御性T細胞(CD69+CD4+CD25+FOXP3+)レベルは、正常対照から処置対照に減少し、全ての処置群において、処置対照と比較してより高いレベルのこれらの細胞が見出された。
【0094】
インビトロ試験
24ウェルプレートでの細菌刺激の前に、細胞を顕微鏡で確認し、細胞が全てのウェルで同様の丸い形状を有し、少数の単一細胞のみがウェルに付着していることを見出した。24時間の刺激後、細菌調製物B及び細菌調製物Cとインキュベートした細胞は、おそらく活性化を示す小さなクラスタを形成し、プレート表面に付着した。細菌であるP.セドリナ(P.cedrina)(A)及びB.コアグランス(B.coagulans)(D,E)とインキュベートした細胞は、クラスタをほとんど有せず、プレート表面にもまたほとんど付着していなかった。未処理細胞及びPBSで処理した細胞はクラスタ形成を示さず、また、少数の細胞が付着していた。細胞生存率は、使用した全てのドナーにおいて95%超であった。
【0095】
フローサイトメトリーによって評価されるMoDC活性化マーカ発現
5人の個体に由来するヒトMoDCを、対照及び異なる細菌調製物で24時間にわたり刺激した。樹状細胞活性化マーカであるCD80/CD86及びHLA-DRを、フローサイトメトリーによって調査した。この結果を
図8に示す。全体として、同様のパターンが観察され得る。大腸菌(E.coli)1、大腸菌(E.coli)2、大腸菌(E.coli)3、並びに細菌調製物A2及び細菌調製物A3で刺激した細胞は、未処理細胞及びPBSで処理した細胞と比較して、MoDCのより高い活性化を引き起こすようであった。全てのマーカについて同様のパターンが見られる。最も一貫した顕著な活性化は、異なる大腸菌(E.coli)株によって誘導された(CD80及びCD86の発現について対照と比較して有意)。シュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)(B)及びロドコッカス・セラスチイ(Rhodococcus cerastii)(C)もまた、CD80の発現増加をもたらし、これは、CD86発現のパターン及びHLA-DR発現の蛍光強度の中央値の増加によって反映される。対照的に、シュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)(A)及びB.コアグランス(B.coagulans)株(D及びE)に曝露された細胞は、本明細書で観察されるDC活性化マーカの変化を誘導しないようであった。
【0096】
多重サイトカインプロファイリング
細菌細胞とMoDCとの10:1の比での細菌刺激後の3名のドナーからの細胞培養上清を収集して、発現したサイトカインを定量化した。
図9には、IL-6、IL-12p70、IL-1β、及びIFN-γの濃度が提示されており、残りのサイトカインデータは、高い変動及び明確な傾向がないため示されていない。反復回数が少ないことに起因して、統計的評価は行われなかった。
【0097】
MoDC活性化について観察されたのと同様のパターンが出現した:大腸菌(E.coli)株、並びにP.プノネンシス(P.punonensis)(B)及びR.セラスチイ(R.cerastii)(C)は、陰性対照(PBS)と比較して、IL-6、IL-12p70、IL-1β、及びIFN-γの生産を刺激することができるようであった。IL-6レベルはまた、LPS及びB.コアグランス(B.coagulans)刺激に応答して増加するように見えた(D及びE)。
【0098】
実験を結論付けるために、マウスにおける大腸菌(E.coli)拮抗性細菌株の免疫調節効果は、B.コアグランス(B.coagulans)株を投与したD群及びE群が一貫して正常対照により類似していることを示しており、これは、抗生物質及び大腸菌(E.coli)による前処理からの回復、及び腸内のより低い炎症状態を示している。これは、DC活性化マーカ発現及び炎症促進性サイトカイン発現の増加が全く見られないか、又はわずかしか見られないヒトMoDCを用いて、インビトロで得られた結果と一致している。B.コアグランス(B.coagulans)の2つの株はプラスの効果を生じるようである。本発明によれば、大腸菌(E.coli)に対する生物的防除としてB.コアグランス(B.coagulans)を使用し、緑色葉物野菜に対する安全性を高めることについての大きな初期可能性が示されている。
【0099】
最後に、本発明によれば、商業的な現場環境での生きている植物におけるヒト病原体に対して潜在的能力を有する、4つの拮抗性細菌株、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)が提供された。上記の当該細菌株による種子コーティングを通して、消費者にとってより健康な方向で植物の微生物組成物に影響を及ぼすことが可能であることが示されている。このようにして、緑色葉物野菜への病原体の増殖及び拡散のリスクを低減することができ、将来のそれらの関連するアウトブレイクの結果を緩和することができる。さらに、インビボでの全ての大腸菌(E.coli)拮抗株の投与は、処理対照と比較して微生物叢に対する回復効果を認め、株のうちの2つ(シュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)及びバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans))は、宿主の健康と相関して、シャノン・ウィナー多様性指数を増加させた。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、
又は生物肥料としての、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの細菌株又は請求項5ないし7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
最後に、本発明によれば、商業的な現場環境での生きている植物におけるヒト病原体に対して潜在的能力を有する、4つの拮抗性細菌株、アクセッション番号LMG P-32204であるシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206であるバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207であるシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)が提供された。上記の当該細菌株による種子コーティングを通して、消費者にとってより健康な方向で植物の微生物組成物に影響を及ぼすことが可能であることが示されている。このようにして、緑色葉物野菜への病原体の増殖及び拡散のリスクを低減することができ、将来のそれらの関連するアウトブレイクの結果を緩和することができる。さらに、インビボでの全ての大腸菌(E.coli)拮抗株の投与は、処理対照と比較して微生物叢に対する回復効果を認め、株のうちの2つ(シュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)及びバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans))は、宿主の健康と相関して、シャノン・ウィナー多様性指数を増加させた。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される食用葉から単離される細菌株
[2]
前記細菌株は、種子及び野菜におけるヒト病原体及び植物病原体の確立及び成長を防止するためのものである[1]に記載の細菌株。
[3]
種子及び野菜におけるヒト病原菌であるエシュリヒア属及び腸内細菌種の拡散を防止するためのものである[1]又は[2]に記載の細菌株。
[4]
前記野菜は、緑色葉物野菜である[1]ないし[3]のいずれか1に記載の細菌株。
[5]
アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択された少なくとも1つの細菌株を含む組成物であって、種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための組成物。
[6]
前記組成物は、種子及び野菜におけるヒト病原体及び植物病原体の確立及び成長を防止するためのものである[1]に記載の組成物。
[7]
前記組成物は、アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)の組み合わせを含む[5]又は[6]に記載の組成物。
[8]
種子及び野菜におけるヒト病原体の確立及び成長を防止するための、[1]ないし[4]のいずれか1に記載の少なくとも1つの細菌株又は[5]ないし[7]のいずれか1に記載の組成物の使用。
[9]
前記野菜は、緑色葉物野菜である[8]に記載の使用。
[10]
前記少なくとも1つの株は、パッケージング前に野菜を洗浄するための洗浄水に添加されるか、又は包装中の野菜のパッケージング前、パッケージング中、又はパッケージング後に野菜に噴霧される、[8]又は[9]に記載の使用。
[11]
前記少なくとも1つの株は、灌漑用水に添加されるか、又は水耕栽培システムで栄養溶液へと添加される[8]又は[9]に記載の使用。
[12]
前記少なくとも1つの株は、包装の内側に適用されるか、又は包装のライニング若しくは包装のパッケージング材料に適用される[8]又は[9]に記載の使用。
[13]
前記少なくとも1つの株は、播種前に種子へコーティングされる[8]に記載の使用。
[14]
前記少なくとも1つの株は、10
4
- 10
12
cfu/mlの量で種子上へコーティングされる[12]に記載の使用。
[15]
播種後に得られる葉野菜などの野菜における細菌多様性を増加させるための[12]又は[13]に記載の使用。
[16]
アクセッション番号LMG P-32204を有するシュードモナス・プノネンシス(Pseudomonas punonensis)、アクセッション番号LMG P-32205を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、アクセッション番号LMG P-32206を有するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、及びアクセッション番号LMG P-32207を有するシュードモナス・セドリナ(Pseudomonas cedrina)からなる群から選択される、単離された株。
[17]
ヒトの感染からの保護に使用するための、少なくとも1つの[1]ないし[4]のいずれか1に記載の少なくとも1つの単離された株又は[5]ないし[7]のいずれか1に記載の組成物。
【国際調査報告】