(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】食用製品および食用製品のための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20240314BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240314BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240314BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20240314BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20240314BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20240314BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240314BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240314BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240314BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240314BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240314BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20240314BHJP
【FI】
A23L29/20
A23G3/36
A23L29/256
A23L29/269
A23L29/231
A23L29/262
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/46
A61K9/06
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560032
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 GB2022050780
(87)【国際公開番号】W WO2022208070
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268093
【氏名又は名称】ジェリー・ドロップス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jelly Drops Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】フートン,ニコラス ドーセット
(72)【発明者】
【氏名】ホーンビー,ルイス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジェファーズ,デイナ ペイジ
(72)【発明者】
【氏名】フレットウェル,マイケル
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B041
4C076
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GG08
4B014GK08
4B014GL01
4B014GL04
4B014GL11
4B014GP14
4B018LE06
4B018MD02
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD35
4B018MD36
4B018MD37
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4B018MD40
4B018MD67
4B018ME14
4B018MF04
4B041LD01
4B041LD02
4B041LH04
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4B041LH16
4B041LK02
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4B041LK05
4B041LK07
4B041LP01
4B041LP12
4C076AA09
4C076BB01
4C076CC40
4C076DD67T
4C076EE30P
4C076EE58P
4C076FF35
4C076FF52
(57)【要約】
【要約】
本発明は食用製品および食用製品の調製のための組成物に関する。特に、本発明は菓子としての用途に適した、および治療用の用途を有する食用製品に関する。特に、本発明はグミおよびゼリーと呼ばれる形態の製品、ならびに組成物およびそれらを調製する方法、ならびにそれらの菓子として、および治療における使用、特に水分補給療法における使用に関する。ル化製品を調製するためのゲル化組成物について説明する。ゲル化組成物は、成分Aおよび成分Bを1:4~1.4:1の重量比で含むか、またはそれらからなる。成分Aは少なくとも1つの硬質ゲル形成剤を含み、成分Bは少なくとも1つの柔軟性改質剤を含む。いくつかの例では、成分Aおよび成分Bは、1:4~1.5:1、または1:3~1.5:1、または3:4~4:3、または4:5~5:4または約1:1の重量比で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化製品を調製するためのゲル化組成物であって、ゲル化組成物は成分Aと成分Bを1:4~1.4:1の重量比で含むかまたはそれらからなり、成分Aは少なくとも1つの硬質(firm)または硬質(rigid)ゲル形成剤を含み、成分Bは少なくとも1つの柔軟性改質剤を含む、ゲル化組成物。
【請求項2】
前記ゲル化組成物が、成分Aと成分Bを1:4~1.5:1、または1:3~1.5:1、または3:4~4:3、または4:5~5:4、または約1:1の重量比で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの硬質ゲル形成剤が、1重量%水溶液中で25%以下の破壊時のひずみ(deformation at failure)を示す、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分Aが、アガー、低アシルジェランガムおよびカッパカラギーナンから選択される少なくとも1つのゲル化剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分Aが、アガー、低アシルジェランガムおよびカッパカラギーナンから選択される2つのゲル化剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
成分Aの各ゲル化剤が、約1.2:1~1:1.2、任意に約1.1:1~1:1.1、または約1:約1の重量比で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分Aが、アガー、低アシルジェランガムおよびカッパカラギーナンを重量でほぼ等しい割合で含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
成分Bの少なくとも1つの柔軟性改質剤が、1重量%水溶液中で0.2N以上の凝集性を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記柔軟性調整剤が、軟質または中程度のゲル形成剤または増粘剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記柔軟性調整剤が、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、高メトキシルペクチン、低メトキシルペクチン、イオタカラギーナン、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、グアーガム、キサンタンガム、タラガム、高アシルジェランガム、コンニャク、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される軟質または中程度のゲル形成剤である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記柔軟性改質剤が、アルギン酸、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロパン-1,2-ジオール、カラギーナンラムダ、加工ユーチューマ(eucheuma)海藻、清澄グアーガム、部分加水分解グアーガム、トラガカント、アカシアガム(アラビアガム)、カラヤガム、大豆ヘミセルロース、カッシアガム、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、酵素加水分解カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アガー、カラギーナンカッパ、カラギーナンイオタ、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、グアーガムスタンダード、キサンタンガム、タラガム、低アシルジェランガム、高アシルジェランガム、コンニャク、高メトキシルペクチン、低メトキシルペクチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される増粘剤である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
成分Bが、キサンタンガム、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、アラビアガム、高アシルジェランガムおよびイオタカラギーナンから選択される少なくとも1つの剤である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
成分Bが、キサンタンガム、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、アラビアガム、高アシルジェランガム、グアーガムおよびイオタカラギーナンから選択される2つまたは3つの剤であるか、またはそれらを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
成分Bが、キサンタンガム、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、アラビアガム、高アシルジェランガム、グアーガムおよびイオタカラギーナンから選択される2つの剤であるか、またはそれらを含み、各ゲル化剤が、約1.2:1~1:1.2の重量比で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
2つの剤が、約1.1:1~1:1.1または約1:約1の重量比で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
成分Bが、重量でほぼ等しい割合の3つの剤であるか、またはそれらを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
ゲル化製品を調製するための組成物であって、組成物が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも90重量%の量の水、および0.7~2.5重量%の量の請求項1~16のいずれか一項に記載のゲル化組成物を含む、組成物。
【請求項18】
ローカストビーンガム(イナゴマメガム)を0.25~0.4重量%の量で含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
低アシルジェランガムを含む、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
低アシルジェランガムを0.1~0.5重量%または0.2~0.4重量%の量で含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
アガーを含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
アガーを0.25~1.0重量%または0.3~0.8重量%の量で含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
アラビアガムを、任意に0.1~0.5重量%または0.2~0.4重量%の量で、含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
キサンタンガムを含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
アガーを0.1~0.5重量%または0.2~0.4重量%の量で含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
ガラクトマンナン、任意にグアーガムまたはタラガムと組み合わせてキサンタンガムを含む、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
アガーおよびカラギーナンを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項28】
約0.4~0.5重量%の量のアガー、および合計量で約0.7~0.8重量%の量である、重量でほぼ等しい割合のイオタカラギーナンとカッパカラギーナンの混合物を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ジェランガムおよびキサンタンガムを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項30】
ジェランガムが低アシルジェランガムである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
0.2~0.4重量%の量のジェランガムおよび0.2~0.4重量%の量のキサンタンガムを含む、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
アガーおよびキサンタンガムを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項33】
0.3~0.8重量%の量のアガーおよび0.3~0.4重量%の量のキサンタンガムを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
キサンタンガムおよびカラギーナンを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項35】
約0.3~0.5重量%の量のキサンタンガム、および合計量で約0.7~0.9重量%の量である、重量でほぼ等しい割合のイオタカラギーナンとカッパカラギーナンの混合物を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
0.3~0.6重量%の量のジェランガム、0.1~0.5重量%の量のアラビアガム、および0.3~0.5重量%の量のキサンタンガムを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項37】
アガーを、任意に0.25~0.5重量%、または0.3~0.4重量%の量で、さらに含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項38】
約0.4~約0.5重量%の量のジェランガム、約0.3~約0.4重量%の量のアガー、約0.2~約0.4重量%の量のアラビアガムおよび約0.4重量%の量のキサンタンガムを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項39】
i)約0.4重量%の量のジェランガム、約0.4重量%の量のアガー、約0.2重量%の量のアラビアガムおよび約0.4重量%の量のキサンタンガム;
ii)約0.4重量%の量のジェランガム、約0.4重量%の量のアガー、約0.4重量%の量のアラビアガムおよび約0.4重量%の量のキサンタンガム;
iii)約0.5重量%の量のジェランガム、約0.4重量%の量のアガー、約0.4重量%の量のアラビアガムおよび約0.4重量%の量のキサンタンガム;または
iv)約0.4重量%の量のジェランガム、約0.3重量%の量のアガー、約0.3重量%の量のアラビアガムおよび約0.4重量%の量のキサンタンガム、
を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
可溶性繊維を、任意に0.2~1.0重量%、または0.3~0.7重量%の量で、さらに含む、請求項17~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
マルトデキストリンを、任意に0.9~2.2重量%、好ましくは1~2重量%の量で、さらに含む、請求項17~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
総電解質量中に少なくとも1つの電解質成分を最大約3重量%の量でさらに含む、請求項17~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの電解質成分を、総電解質量中に0.2重量%~3重量%、または0.5重量%~3重量%、または1重量%~3重量%の量で含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
少なくとも1つの電解質成分が、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオンを含む、請求項42または請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
少なくとも1つの電解質成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよび炭酸マグネシウムのうちの少なくとも1つである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
約3~7の範囲のpHを有する、請求項17~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
乳酸を、任意に0.5~1.0重量%の量で、さらに含む、請求項17~46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
酸緩衝剤組成物を、任意に0.5~0.8重量%の量で、さらに含む、請求項17~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
少なくとも1つの非栄養性甘味料をさらに含み、任意に、非栄養性甘味料は、最大で約0.1重量%、または最大で約0.05重量%、または最大で約0.025重量%の量で存在する、請求項17~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
i)1つ以上の栄養組成物、任意に1つ以上のビタミン、ミネラル、脂肪またはアミノ酸;および/または
ii)少なくとも1つの酸味料、任意にリンゴ酸およびクエン酸のうちの少なくとも1つ、さらに任意に最大で約1.0重量%の量の酸味料、
をさらに含む、請求項17~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
水分含有量が少なくとも92重量%、少なくとも94重量%、または少なくとも95重量%である、請求項17~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
任意に最大で約0.5重量%または最大で約0.4重量%の量の、少なくとも1つの香料;または、任意に最大で約0.5重量%または最大で約0.2重量%または最大で約0.15重量%の量の、少なくとも1つの着色料、をさらに含む、請求項17~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
請求項17~52のいずれか一項に記載の組成物のゲル化によって調製されるゲル化製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食用製品および食用製品の調製のための組成物に関する。特に、本発明は菓子としての用途に適した、および治療用の用途を有する食用製品に関する。特に、本発明はグミおよびゼリーと呼ばれる形態の製品、ならびに組成物およびそれらを調製する方法、ならびにそれらの菓子として、および治療における使用、特に水分補給療法における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症はイギリスにおける主な死因であり、世界の認知症患者数は2050年までに少なくとも3倍の1億5000万人になるとされている。
【0003】
認知症患者は脱水症状になりやすく、彼らの脱水症状はいくつもの原因や引き金を有し得る。多くの患者がもはやのどの渇きを意識しなくなり、渇きを癒すことと水を飲むことが同じでなくなり、コップが何のためのものか忘れ(記憶)、コップとは何か認識できなくなり(失認)、コップを使うための筋肉の器用さが欠如し(協調)、コップを使うための「筋肉の記憶」が欠如し(手続き記憶)、またはコップを使用する計画を立てる能力が欠如したりする(実行機能)。
【0004】
認知症の人にとって液体の形の水分補給源は飲食するのが困難であり得る。それはしばしば気管に入りそして容易に吸引され、窒息を引き起こす。また、認知症の人に十分な水分補給をさせておくことは、介護者にとって多大な時間を消費させ得る。介護施設はこの要件を満たすことにしばしば苦労する。その結果、入居者の状態が加速度的に悪化し、生活の質を低下させ、および他の介護要件を悪化させ、よって入院が増加し、およびNHSなどの医療サービス提供者への負担を大きくさせ得る。イギリスにおける認知症にかかる支出は現在、年間で260億ポンドと推定されており、これは年間で認知症患者1人あたり32、250ポンドに等しい。
【0005】
水分は、細胞反応に加え、体温調節(発汗)、血圧の維持、および老廃物の排出など、広い範囲の使用のために人体に必要である。軽度の脱水であっても人に影響を及ぼし、疲労、頭痛、および集中力の低下を引き起こし得る。
【0006】
尿路感染症(UTI)は年配の人々のうちでは一般的な感染の種類である。仮に記憶障害や認知症をもつ患者がUTIを患うと、これはせん妄と呼ばれる突発的および深刻な混乱の原因となり得る。これは抗生物質による処置を受けるためにしばしば入院することになる、および致命的で有り得る腎臓障害や血液中毒を引き起こし得る。
【0007】
認知症患者においては、脱水症状はしばしば彼らの基礎疾患に誤って帰させられ、つまり、生命を脅かすようになるまで容易に見過ごされ得る。
【0008】
介護施設における設定においては、しばしば入居者が介護者に飲み物を飲ませてもらえるのはほんの短い機会である。このため1度に与えられる水分量が比較的多くなる。これはしばしば、腎機能が衰えた高齢者においては、液体の大部分が彼らの体内システムを素通りしてしまい、輸送される水分量が減少し、尿量が増加する結果となる。水分補給は、摂取した量ではなく、液体の吸収量に関係する。
【0009】
世界的な高齢化社会を考えると、水分補給を改善し、同時に介護要件を軽減するための解決策が必要である。本発明は、認知症患者がより頻繁におよび自身で水分補給することを可能にする、水分補給用製品を提供する。本発明はこのような観点から考案された。
【0010】
認知症患者の共通点として、彼らは甘いものを食べることが好きである。この種の食事が供された際に多くのが興奮し、夢中になることが観察されている。フィンガーフード型であればより飲食しやすく、認知症患者が直感的にどのように取り扱えばよいかわかる。
【0011】
我々の以前の出願である国際公開第2020/128531A1では、固体または半固体のマトリックス内に大きな割合の水分を含む食用製品を製造するための特定の組成物について記載している。好適には、このマトリックスはハイドロコロイドまたはハイドロコロイド混合物によって形成される。
【0012】
我々が記載した食用製品は、認知症患者に大きな容量の水分を固体の形で供する。液体または粘性のある水分補給源と比較して、これは患者にとって手にとりやすく、および飲食しやすい。これは特に手先の器用さや協調が損なわれている人に当てはまる。加えて、マトリックス内に水分を含むことによって、噛んだ時に水分が突然飛び出す、製品が「弾ける」ことがない。認知機能が低下している人にとっては、これは予想外の出来事であり、窒息の原因となる可能性がある。
【0013】
グミおよびゼリーは、菓子製品の望ましい硬さによって、最大約10~20重量%の水分含有量を有するゲル状製品を製造するために、菓子のバルキング(bulking)剤として働くハイドロコロイドを、バルク(bulk)甘味料を安定化するために使用する事に基づく、菓子の分類の1つである。低い水分含有量の製品はより硬いテクスチャーを有する。ハイドロコロイドは製造工程の加熱ステップの間に架橋することで網目構造を形成し、バルク甘味料分子がその中にトラップされ、半固体またはゲル状の構造を形成する。
【0014】
一般的には、グミまたはゼリー菓子中のバルク甘味料は、加熱前のグミまたはゼリー配合物の総重量を基準にして、70~85重量%の量で存在する。典型的には、バルク甘味料はスクロースおよびグルコースシロップの混合物である。グルコースシロップは、典型的にはバルク甘味料混合物の50~60重量%を形成し、残りがスクロースである。スクロースおよびグルコースのカロリー量の観点から、低糖のまたは無糖の製品を提供するために、代替バルク甘味料が使用されてきた。マルチトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、アルロースなどのポリオールが使用され、または提案されてきた。しかし、ポリオールの過剰摂取は、人によっては下痢などの胃腸症状を引き起こし得る。加えて、ポリオールは低カロリーであるが、肝臓でグルコースに変換され得る。従って、ポリオールをバルキング剤として使用することは理想的とは言い難い。
【0015】
最も一般的に使用されるハイドロコロイドは、ゼラチン、スターチ、およびペクチンである。アガー(agar)、アラビアガム、およびカラギーナンなどの、その他のハイドロコロイドはしばしば、菓子製品の視覚的およびテクスチャーの特徴を変更するために、他のハイドロコロイドとの混合物として用いられる
【0016】
ゼラチンはグミおよびゼリーに使用されるおそらく最も一般的なハイドロコロイドである、および、主にウシまたはブタに由来するコラーゲンから得られるタンパク質である。ゼラチンは、典型的には配合物の材料の総質量を基準にして、約5-10%の量で使用される。ゼラチンは明らかにベジタリアンまたはビーガンの消費者の食事のためには適していない。
【0017】
したがって、以前の出願で本発明者らは、アガーおよびガラクトマンナン多糖類、好ましくはローカストビーンガムのハイドロコロイド混合物を用いることで、バルキング剤が水であるグミおよびゼリー製品を調製し得ることを見出した。典型的には最終的な水分含有量が20重量%以下である、よく知られたグミおよびゼリーと比較して、本発明者らの製品は90重量%またはそれ以上の水分含有量を達成した。このように驚くべき高い水分含有量であるゆえに、本発明者らの製品は、上記のような水分補給療法に使用するための、水分補給製品として格別に有用である。
【0018】
さらに、本発明者らはバルク甘味料の必要性を回避し得るため、本発明者らの製品は無糖およびトゥースフレンドリーと認められるための規制要件を満足させ得る。
【0019】
最も広範な態様において、本発明者らの以前の発明は、0.2重量%~3重量%の少なくとも1つの多糖類のゲル化剤を含み、残りは水である、菓子製品を調製するための組成物を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
我々の以前の研究は成功したにもかかわらず、一部の消費者は食感が好みではないと感じ、製品の食感が好みよりもろかったり、簡単に崩れたり、大きな塊になったりしたとコメントした。したがって、我々はこれまでの取り組みをさらに改善するよう努めた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
その最も広い態様において、本発明は、少なくとも90重量%の量の水とゲル化組成物とを含む、またはそれらからなる組成物をゲル化することによって調製される食用製品であって、ゲル化組成物は、水の量に基づいて0.7~2.5重量パーセントの量で存在し、ゲル化組成物は、成分Aと成分Bを1:4~1.4:1の重量比で含み、成分Aは少なくとも1つの硬質ゲル形成剤を含み、成分Bは少なくとも1つの柔軟性改質剤(flexibility modifier)を含む、食用製品を提供する。
【0022】
本発明はまた、ゲル化製品を製造するためのゲル化組成物であって、ゲル化組成物は成分Aおよび成分Bを1:4~1.4:1の重量比で含む、またはそれらからなり、成分Aが少なくとも1つの硬質(firm)または硬質(rigid)ゲル形成剤を含み、成分Bが少なくとも1つの柔軟性改質剤を含む、ゲル化組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
柔軟性改質剤という用語は、成分Aの少なくとも1つの硬質(firm)または硬質(rigid)ゲル形成剤によって形成されるゲルの柔軟性を変化させる効果を有する材料を包含することを意図する。
【0024】
柔軟性改質剤は、軟質または柔軟性のあるゲル形成剤または増粘剤であってもよい。
【0025】
特定の例では、柔軟性改質剤は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、高メトキシルペクチン、低メトキシルペクチン、イオタカラギーナン、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、グアーガム、キサンタンガム、タラガム、高アシルジェランガム、コンニャク、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される軟質、中程度、または柔軟性のあるゲル形成剤である。
【0026】
好ましい例では、柔軟性改質剤は、高メトキシルペクチン、低メトキシルペクチン、カラギーナンイオタ、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、グアーガム、キサンタンガム、タラガム、高アシルジェランガム、コンニャクおよびメチルセルロースから選択されるゲル形成剤である。
【0027】
いくつかの例では、柔軟性改質剤は増粘剤であり、それ自体はゲルを形成しない剤である。
【0028】
特定の例では、増粘剤は、アルギン酸、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロパン-1,2-ジオール、カラギーナンラムダ、加工ユーチューマ(eucheuma)海藻、清澄グアーガム、部分加水分解グアーガム、トラガカント、アカシアガム(アラビアガム)、カラヤガム、大豆ヘミセルロース、カッシアガム、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび酵素加水分解カルボキシメチルセルロースから選択される増粘剤である。
【0029】
他の例では、増粘剤は、ゲルを形成することができるが、ゲルを形成しない濃度または他の条件下で組成物中に存在する剤である。
【0030】
特定の例において、増粘剤は、アルギン酸ナトリウム、アガー、カラギーナンカッパ、カラギーナンイオタ、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、グアーガムスタンダード、キサンタンガム、タラガム、低アシルジェランガム、高アシルジェランガム、コンニャク、高メトキシルペクチン、低メトキシルペクチン、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される。ただし、剤がゲルを形成するには不十分な濃度で存在する場合に限る。
【0031】
好ましい例では、成分Aの少なくとも1つの硬質ゲル形成剤は少なくとも1つの親水コロイドである。
【0032】
好ましい例では、成分Bの少なくとも1つの柔軟性改質剤は少なくとも1つの親水コロイドである。
【0033】
いくつかの例では、ゲル化組成物は、成分Aおよび成分Bを、1:4~1.5:1、または1:3~1.5:1、または3:4~4:3、または4:5~5:4または約1:1の重量比で含む。
【0034】
いくつかの例では、少なくとも1つの硬質ゲル形成剤は、1重量%水溶液中で25%以下の破壊時のひずみ(deformation at failure)を示す。
【0035】
好ましくは、成分Aは、アガー、低アシルジェランガムおよびカッパカラギーナンから選択される少なくとも1つのゲル化剤、任意に、アガー、低アシルジェランガムおよびカッパカラギーナンから選択される2つのゲル化剤、である。
【0036】
好ましい例では、成分Aはアガー、低アシルジェランガムおよびカッパカラギーナンから選択される2つのゲル化剤であり、各ゲル化剤は成分A中に約1.3:1、約1.25:1または約1:1の重量比で存在する。
【0037】
任意に、成分Aは、重量でほぼ等しい割合の3つ以上のゲル化剤である。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの柔軟性改質剤は、1重量%水溶液中で0.2N以上の凝集性を有する。
【0039】
好ましい例において、成分Bは、キサンタンガム、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、アラビアガム、グアーガム、高アシルジェランガムおよびイオタカラギーナンのうちの少なくとも1つである。
【0040】
好ましくは、成分Bは、キサンタンガム、ローカストビーンガム(イナゴマメガム)、アラビアガム、グアーガム、高アシルジェランガムおよびイオタカラギーナンから選択される2つの成分であり、各ゲル化剤は成分B中に約2:1~約1:1、任意に約2:1、1.5:1または1:1の重量比で存在する。
【0041】
任意に、成分Bは、重量比がほぼ等しい3つ以上の成分である。
【0042】
本発明はまた、ゲル化製品を調製するための組成物を提供し、この組成物は、組成物の総重量に基づいて少なくとも90重量%の量の水と、0.7~2.5重量%の量の上記で定義したゲル化組成物とを含む。
【0043】
特定の好ましい例では、組成物は、ローカストビーンガム(イナゴマメガムとしても知られる)を0.25~0.4重量%の量で含む。
【0044】
特定の好ましい例では、組成物は、低アシルジェランガムを、任意に0.1~0.5重量%または0.2~0.4重量%の量で、含む。
【0045】
特定の好ましい例では、組成物は、アガーを、任意に0.25~1.0重量%または0.3~0.8重量%の量、で含む。
【0046】
特定の例では、組成物はアラビアガムを、任意に0.1~0.5重量%または0.2~0.4重量%の量で含む。
【0047】
特定の好ましい例では、組成物はさらにキサンタンガムを、任意に0.1~0.5重量%または0.2~0.4重量%の量で、含む。特定の例では、キサンタンガムはガラクトマンナンと組み合わされる。任意に、ガラクトマンナンは、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガムおよびカッシアガムから選択される。
【0048】
特定の例では、組成物は:i)アガーおよびカラギーナン;好ましくは、約0.4~0.5重量%の量のアガーおよび合計量で約0.7~0.8重量%の量である、重量でほぼ等しい割合のイオタカラギーナンとカッパカラギーナンの混合物;ii)ジェランガムおよびキサンタンガム、好ましくは0.2~0.4重量%の量の低アシルジェランガムおよび0.2~0.4重量%の量のキサンタンガム;iii)アガーおよびキサンタンガム、好ましくは0.3~0.8重量%の量のアガーおよび0.3~0.4重量%の量のキサンタンガム;またはiv)キサンタンガムおよびカラギーナン;好ましくは、約0.3~0.5重量%の量のキサンタンガムおよび合計量で約0.7~0.9重量%の量である、重量でほぼ等しい割合のイオタカラギーナンとカッパカラギーナンの混合物、を含む。
【0049】
特定の好ましい例において、組成物は、0.3~0.6重量%の量のジェランガム、0.1~0.5重量%の量のアラビアガムおよび0.3~0.5重量%の量のキサンタンガムおよび/またはアガー、任意に0.25~0.5重量%、好ましくは0.3~0.4重量%の量のアガーを含む。任意に、組成物は、i)約0.4重量%の量のジェランガム、約0.4重量%の量のアガー、約0.2重量%の量のアラビアガム、および約0.4重量%の量のキサンタンガム;ii)約0.4重量%の量のジェランガム、約0.4重量%の量のアガー、約0.4重量%の量のアラビアガムおよび約0.4重量%の量のキサンタンガム;iii)約0.5重量%の量のジェランガム、約0.4重量%の量のアガー、約0.4重量%の量のアラビアガム、および約0.4重量%の量のキサンタンガム;または、iv)約0.4重量%の量のジェランガム、約0.3重量%の量のアガー、約0.3重量%の量のアラビアガム、および約0.4重量%の量のキサンタンガムを含む。
【0050】
好ましくは、ジェランガムは低アシルジェランガムである。
【0051】
好ましい実施形態では、組成物は、可溶性繊維を、任意に0.2~1.0重量%、または0.3~0.7重量%の量で、さらに含む。
【0052】
好ましい実施形態では、組成物は、マルトデキストリンを、任意に0.9~2.2重量%、好ましくは1~2重量%の量で、さらに含む。
【0053】
好ましい実施形態では、組成物は、少なくとも1つの電解質成分を最大約3重量%の量でさらに含む。任意に、少なくとも1つの電解質成分は、総電解質量中に0.2重量%~3重量%、または0.5重量%~3重量%、または1重量%~3重量%の量で存在する。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つの電解質成分は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウムイオンを含む。任意に、少なくとも1つの電解質成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよび炭酸マグネシウムのうちの少なくとも1つである。
【0055】
任意に、組成物の水は硬水であり、少なくとも1つの電解質成分は硬水の成分である。
【0056】
任意に、少なくとも1つの電解質成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、硫酸カリウム、リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよび炭酸マグネシウムのうちの少なくとも1つである。
【0057】
好ましくは、組成物は約3~7の範囲のpHを有する。
【0058】
好ましい実施形態では、組成物は、乳酸を、任意に0.5~1.0重量%の量で、さらに含む。
【0059】
好ましい実施形態では、組成物は、酸緩衝剤組成物を、任意に0.5~0.8重量%の量で、さらに含む。
【0060】
好ましい実施形態では、組成物は少なくとも1つの非栄養性甘味料;ここで、任意には非栄養性甘味料は、最大で約0.1重量%の、好ましくは最大で約0.05重量%の、より好ましくは約0.025重量%の量で存在する、をさらに含む。
【0061】
好ましい実施形態では、組成物は、i)1つ以上の栄養組成物、任意には1つ以上のビタミン、ミネラル、脂肪またはアミノ酸;および/またはii)少なくとも1つの酸味料であって、任意にはリンゴ酸およびクエン酸のうちの少なくとも1つ、さらに任意には、最大で約1.0質量%の量の酸味料、をさらに含む。
【0062】
ある実施形態では、組成物はさらに、好ましくは最大で約0.5重量%、より好ましくは最大で約0.4重量%の量の少なくとも1つの香料;および/または、好ましくは最大で約0.5重量%の量の、より好ましくは最大で約0.2重量%、より好ましくは最大で約0.15重量%の量の少なくとも1つの着色料を含む。
【0063】
好ましい実施形態では、水分含有量は少なくとも92重量%、好ましくは少なくとも94重量%である。
【0064】
本発明の上記の、およびその他の態様は、一例として、添付の実施例を参照して、ここにさらに詳細に記載される。
【0065】
本開示では、文脈から明らかな場合を除き、成分Aのゲルテクスチャーを説明する場合、硬い(firm)、硬い(hard)、硬い(rigid)、および脆い(brittle)という用語は同義であるとみなされる。同様に、柔らかい(soft)、弾性(elastic)、および柔軟性(flexible)という用語は、成分Bのゲルテクスチャーとの関連では同義であると考えられる。したがって、中程度(medium)という用語も理解されるであろう。
【0066】
ゲルの特性およびゲルを形成する成分の特性評価は、当技術分野でよく知られている。読者は、例えば、G. O. PhillipsおよびP. A. Williams編の「Handbook of Hydrocolloids, Second Edition」およびAlistair M. Stephen, Glyn O. PhillipsおよびPeter A. Williams編の「Food Polysaccharides and Their Applications」を参照されたい。特に
図1.10とそれに付随する解説を参照されたい。
【0067】
文脈で示される場合を除いて、全てのパーセンテージは全組成物の重量パーセントで与えられ、および関連する工程の温度において、本質的に液体であるような水または材料についての参照は別として、参照は全組成物のパーセンテージとしての乾燥材料の重量パーセントである。
【0068】
材料はすべて食品用の材料である。
【0069】
上記で定義された成分Aの成分は、主に最終製品に剛性(stiffness)を与えるための特性に基づいて選択される。好ましい成分は、1重量%の水溶液の破壊時の変形によって定義される、約25%以下の剛性を示す(Nussinovitch, A., Kaletunc, G., Normand, M.D. and Peleg, M. (1990), Recoverable Work Versus Asymptotic Relaxation Modulus In Agar, Carrageenan And Gellan Gels, Journal of Texture Studies, 21: 427-438. https://doi.org/10.1111/j.1745-4603.1990.tb00492.x)。
【0070】
柔軟性改質剤なる用語は、成分Aのみによって形成されるゲル化組成物の柔軟性を変化させる効果を有する材料を包含することを意図している。
【0071】
上記で定義した成分Bの成分は、ゲル化組成物に凝集性を与え、最終製品に心地よい口当たりを与えるように選択される。好ましい成分は、1重量%水溶液中で少なくとも約0.2Nの凝集性を示す(Chiara Cevoli, Federica Balestra, Luigi Ragni, Angelo Fabbri, Rheological characterisation of selected food hydrocolloids by traditional and simplified techniques, Food Hydrocolloids, 33(1) 2013, pp 142-150, https://doi.org/10.1016/j.foodhyd.2013.02.022.)。
【0072】
テクスチャー解析
成形ゼリーを、そのかたさ(firmness)、ばね性(springiness)、および咀嚼力(bite force)といったテクスチャーパラメーターを解析するために、テクスチャー解析の対象とした。サンプルとして殺菌前と殺菌後の両方を解析した。
【0073】
5kgのロードセルを備えた Stable Micro System TA XT Plus テクスチャーアナライザーを圧縮モードで使用した。各サンプルについて15片を測定した。
【0074】
完全圧縮試験では直径25mmのシリンダーを用いて、サンプルが破断するまで圧縮した。用いた設定は以下である:
【表A】
本試験において、かたさは本試験で得られた最大ピーク力として定義され、もろさ(Fracturability)はこのピークの距離として定義される。弾性(Elasticity)は5mmの圧縮およびピーク力の間の曲線の傾きとして算出される。3mmの圧縮におけるピーク力を同様に決定した。
【0075】
テクスチャープロファイル解析(TPA)
テクスチャープロファイル解析には、物質のばね性(splinginess)を算出するために、2回圧縮試験を用いた。テクスチャープロファイルは本発明者らの菓子製品および水分補給療法製品の両者にとって重要な検討事項である。例えば、製品が柔らかすぎる(flexible)、またはもろすぎる(frangible)と、特に、手先の器用さが損なわれている人にとって、持ち上げるのが困難で有り得る。したがって、十分なかたさ、もろさ、および弾性、は重要な検討事項である。加えて、製品は、特に、あごの筋肉が弱い人や、歯の一部または全部を失っている人のために、簡単に噛むことができ、および口内で容易に破断および破裂し、力や噛むことはほんのわずかでよい必要がある。しかし、製品は製造およびパッケージングの工程に耐え得る必要がある。
【0076】
ゲル化系のテクスチャープロファイル解析は当技術分野でよく知られている。例えば、Pons and Fiszman - Instrumental texture profile analysis with particular reference to gelled systems - Journal of Texture Studies 27 (1996) 597-624が参照される。
【0077】
サンプルは45mmのフラットディスクプローブを用いて、その高さの30%(歪み)まで圧縮した。用いた設定は以下である:
【表B】
【0078】
本試験で、ばね性は1回目の圧縮の後にどれぐらいサンプルがもとに戻ったかということで定義される。(その高さのパーセンテージで示す)。
【0079】
咀嚼試験
本試験は、「トゥースプローブ」によってサンプルを切断することで、サンプルへの最初の噛み込みを再現する。本試験で、咀嚼力はサンプルを切断し通すのに必要な最大力として定義される。
【0080】
【実施例】
【0081】
参照例1(WO2020/128531の調製にかかる実施例1)
1000gのバッチを作成する。
材料:
【表D】
【0082】
ハイドロコロイド混合物を形成するために、ゲル化剤、アガーおよびローカストビーンガムパウダーを混合した。塩化ナトリウム、塩化カリウム、安息香酸ナトリウムおよびソルビン酸カリウムを含む塩混合物を調製した。クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸、およびクエン酸を混合することで酸緩衝液混合物を調製した。
【0083】
ハイドロコロイド混合物を、スクラロースおよびマルトデキストリンと一緒に、篩にかけながら944.91gの水に加えた。該混合物を攪拌しながら、アガーの溶解温度(100℃)になるまでゆっくりと加熱した。該混合物を、この温度で攪拌しながら5分間沸かし、アガーおよびローカストビーンガムを溶かした。
【0084】
該混合物を約80℃になるまで冷却した(約20分の時間を置いた)。該塩混合物を、溶液になるように攪拌しつづけながら、溶かした溶液に加えた。
【0085】
該溶液を約70℃の温度になるまで冷却し、および該酸緩衝液混合物を攪拌しながら添加した。アガーが熱および酸性条件下にさらされると、そのゲル化特性が低減する。該酸緩衝液混合物はこの効果を中和する。
【0086】
着色料および香料を、望ましい味わいと色を得るために適切な量で、および香料および着色料の材料にとり適切な温度で、該混合物に添加した。着色料および香料のパウダーは、添加する前に少量の水で希釈しておくと、均一な分散及びロスの低減のために都合がよい。
【0087】
該混合物の質量を計側し、適切な水分パーセンテージおよび配合物の総質量を維持するために必要なだけの水を添加した。
【0088】
該混合物をアガーの固化温度を超える温度(テングサアガーでは約40℃)に保ちつつ、該混合物を望みの形の鋳型に流し込み、そして該鋳型を、成形ゼリーがその成型後の形を保持するのに十分に安定するまで冷蔵した。典型的には、体積が約13ml、および長さが約4mmおよび最大点での直径が約30mmであるティアドロップ形の成形ゼリーでは、4℃で約10分後である。
【0089】
サンプルの半分は、国際公開第2020/128531号に記載されている殺菌ステップに供された。
【0090】
本発明実施例1
1000gのバッチを作成する。
材料:
【表E】
【0091】
可溶性繊維は、Roquette Freresから入手可能なNutriose(商標)可溶性繊維であった。アラビアガムおよびキサンタンガムは、Special Ingredients Limitedから入手した。電解質混合物および酸緩衝液混合物は、上記の参照例1と同様であった。
【0092】
ゲル化成分をスクラロースと混合し、十分に撹拌しながら約300mlの熱水に加えた。約150mlの沸騰水を加え、混合物を撹拌しながら少なくとも97℃まで加熱した。約200mlの冷水を加えた。混合物の温度が約80℃未満になったら、撹拌しながら電解質混合物を加え、撹拌を3分間続けた。酸緩衝液と乳酸は両方とも溶液として調製され、混合物に添加された。さらに約125mlの温水を混合物に撹拌しながら加え、撹拌を3分間続けた。さらに温水を加えて、混合物の総質量を1kgとした。
【0093】
参照例1について記載したように、混合物を型にデカンテーションした。
【0094】
硬化後、参照例1および本発明実施例1の成形品を上述のようなテクスチャー解析試験に供した。結果を以下の表1に示す。
【0095】
【0096】
これらの結果からわかるように、革新的なゲル化混合物は、同様のレベルの弾性および咀嚼力を維持しながら、参照例1の非殺菌の例よりも顕著な改善をかたさにもたらす。さらに、本発明実施例1は、参照例1の非殺菌例および殺菌例の両方に比べてもろさが向上しており、したがって、国際公開第2020/128531号の参照例によって示されるよりも最終製品の崩れがかなり低いことが示される。
【0097】
比較例
有利なテクスチャー特性が硬質ゲル形成剤および柔軟性改質剤の直接的な結果であることを確認するために、本発明の実施例1を、i)マルトデキストリンを省略して、ii)可溶性繊維を省略して、iii)電解質、乳酸および緩衝液を省略して、繰り返した。実施例では、マルトデキストリンも繊維も、電解質、乳酸、緩衝液の組み合わせも、ドロップのテクスチャーに影響を与えないことが確認された。
【0098】
同様の結果が、本発明実施例1の方法に従って調製された以下のさらなる本発明実施例でも示された。すべての値は重量パーセントとして示され、斜体の成分はゲル化剤を表す。
【0099】
本発明実施例2
材料:
【0100】
【0101】
本発明実施例2
材料:
【0102】
【0103】
本発明実施例4
材料:
【0104】
【0105】
本発明実施例5
材料:
【0106】
【0107】
本発明実施例6
材料:
【0108】
【0109】
本発明実施例7
材料:
【0110】
【0111】
本発明実施例8
材料:
【0112】
【0113】
本発明実施例9
材料:
【0114】
【0115】
本発明者らの以前の発明と同様に、本発明は、水分補給療法を目的として、特に高い水分含有量の製品を提供するために考案されたが、組成物および方法は、菓子の製造に対しても同様に適用可能であることは、上記の議論から理解されるだろう。菓子の分野においては、90質量%台またはそれ以上の水分含有量は要求され得ない。言い換えると、典型的な菓子製品の全てのバルク甘味料を水分で置き換える事を必要とはし得ない。したがって、特にグミおよびゼリー菓子の分野において、20質量%以上の水分含有量は特定の製品のために選ばれるだろう。好ましくは、本発明に従って、菓子製品の水分含有量は少なくとも25質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上または70質量%以上である。最も好ましくは、本発明に従って、菓子製品は少なくとも約80質量%の水分(または水ベースの飲料)を含む。
【0116】
本発明は、従来のバルク甘味料のバルキング剤を、バルキング剤としてその全体を水に効果的に置き換えることで、高い水分含有量の菓子を実現した、グミおよびゼリー配合物を提供するものである。ポリオールまたは胃腸に悪影響を及ぼすその他のバルク甘味料に頼ることなく、組成物は無糖の菓子を提供する。結果として、本発明は、硬化もしくはストーブ工程の必要がなく、殺菌ステップの対象とし得る、そして比較的大きいサイズに成形した場合においても、手でつかむのに十分にかたい製品を製造することができる、グミおよびゼリー製品ならびにグミおよびゼリー製品を製造する方法を提供する。
【0117】
本発明は、優れたもろさおよび他のテクスチャー特性と、最大約95~96重量%またはそれ以上の含水量を有するような製品を製造できるという点で、さらに驚くべきことである。
【0118】
さらに、ゲル化剤と増粘剤のバランスを調整することにより、自重による変形を防ぎ、持ち上げやすい硬さを保つという点で、以前の製品の構造的弾力性を保持し、改善する組成物を開発することができた。構造特性を与えるゲル化剤と、製品に粘着性やばね性を与える成分のバランスをとることで、アガーなどの構造ゲル化剤の相対量を減らし、製品の口当たりを改善することができた。
【0119】
さらに、構造特性がアガーおよびジェランガムなどのゲル化剤の組み合わせによって形成される好ましい実施形態では、両成分のマイナスの口当たり効果のバランスをとることができた。アガーゲルは通常脆く(brittle)、小さな断片に砕ける。低アシルジェランガムのゲルも脆いが、通常はどろどろ(mushy)かつ粒状(grainy)で、不快な口当たりを有する。しかしながら、2つのゲル化剤を組み合わせることで、両方の成分による口当たりの悪影響を軽減しながら、製品に必要な構造的完全性を維持することができた。さらに、アガーとジェランを組み合わせると、どちらかの成分を単独で使用するよりも全体的に強力な製品が得られる。キサンタンガムとローカストビーンガムを組み合わせるなど、組成物に凝集性を与える成分を調整することによって、さらなる改良が可能となり、ゼリーが過度に硬くなるまたは「グミ状」になって噛みにくくなることなく、より滑らかで弾力のある口当たりが得られる。
【0120】
例えば、唯一の脆いゲルであるアガーはひび割れてギザギザ(jagged)のかみ応えを与え、口の中で立方体の破片に砕ける。2番目の脆性ゲルとしてジェランを追加すると、アガーまたはジェラン単独に比べてより高い応力に耐えることが見出されたため、製品の剛性が高まる。ジェランはドロップの構造を強化するが、結果として得られるテクスチャーが不快なざらざらしたものになるため、単独で使用することはできない。アガーとジェランという2つの硬いゲル形成材料を組み合わせたものは、きれいにカットされており、「砕けやすい(crumbly)」とは言えないが、感覚的にはわずかにザラザラしている(grainy)と思われるかもしれない。これは、2剤成分の添加によりさらに改善され、弾力性が増し、製品に滑らかできれいなカットとザラザラ感のない噛み応えを与える。
【0121】
全体として、もろさ分析によって実証されるように、本発明の組成物を用いて製造された製品のかみ応えまたはカットは、はるかにきれいで粘着性がある。
【国際調査報告】