(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または溶融亜鉛めっきQ&P鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240314BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20240314BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240314BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20240314BHJP
C23C 2/26 20060101ALI20240314BHJP
C23C 2/28 20060101ALI20240314BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/38
C21D9/46 J
C23C2/06
C23C2/26
C23C2/28
C23C2/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560448
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2022084518
(87)【国際公開番号】W WO2022206911
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110360131.0
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110360562.7
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110360528.X
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110360154.1
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 俊
(72)【発明者】
【氏名】王 健
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲ゴン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 駿 飛
(72)【発明者】
【氏名】毛 展 宏
(72)【発明者】
【氏名】杜 小 峰
【テーマコード(参考)】
4K027
4K037
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB02
4K027AB44
4K027AC12
4K027AC64
4K027AC73
4K027AE02
4K027AE03
4K037EA01
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA16
4K037EA17
4K037EA19
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA28
4K037EA31
4K037EA32
4K037EB05
4K037EB09
4K037EB12
4K037FC07
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG01
4K037FJ01
4K037FJ05
4K037FK02
4K037FK03
4K037FK08
4K037FL02
4K037FL05
4K037GA05
4K037JA07
(57)【要約】
引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または溶融亜鉛めっきQ&P鋼及びその製造方法。その化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.1~2.0%、Mn:1.6~3.0%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。その製造方法は、製錬、鋳造、熱間圧延、冷間圧延と急速熱処理あるいは急速熱処理溶融めっき工程を含む。本発明は、急速熱処理過程における急速加熱、短時間保温及び急冷過程を制御することにより、変形組織の回復、再結晶及びオーステナイト変態過程を変化させ、フェライトの再結晶を抑制することで、等軸微細結晶複相の微細組織を得られ、最終的に、得られた鋼の金相組織は、マルテンサイト、残留オーステナイト、フェライトの多相組織であり、結晶粒サイズは1~3μmであり、機械的性能が最適化され、材料性能区間の範囲が拡張された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.1~2.0%、Mn:1.6~3.0%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼は、以下のプロセスで得られる:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧A
r3、その後、550~680℃まで冷却し、巻取る;
3)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~85%である;
4)急速熱処理
冷間圧延された鋼板を、770~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~500℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度は770~845℃であり、均熱時間は、10~60sである;
均熱終了後は、5~15℃/sの冷却速度で700~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で、230~280℃まで急冷し、この温度区間で、2~10s保温し、その後、10~30℃/sの加熱速度で300~470℃まで加熱して、焼戻し処理を行い、焼戻し時間10~60s、焼戻し終了後は、30~100℃/sの冷却速度で室温まで冷却する;
好ましくは、前記の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼は、以下の方法で得られる:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧A
r3、その後、550~680℃まで冷却し、巻取る;
3)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~80%である;
4)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
冷間圧延された鋼板を、770~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度は770~845℃であり、均熱時間は、10~60sである;
均熱終了後は、5~15℃/sの冷却速度で700~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で、230~280℃まで急冷し、この温度区間で、2~10s保温し、その後、10~30℃/sの加熱速度で460~470℃まで加熱して、分配処理を行い、分配時間10~60s;そして亜鉛ポットに浸入しれ溶融亜鉛めっきを行う;
溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;あるいは、溶融亜鉛めっき後、10~300℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は5~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【請求項2】
前記の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金低炭素低合金Q&P鋼と溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、Cの含有量範囲は、0.17~0.23%、0.19~0.21%と0.18~0.21%から選べられる;
Siの含有量範囲は、1.1~1.7%、1.3~1.5%、1.4~2.0%と1.6~1.8%から選べられる;
Mnの含有量範囲は、1.6~2.2%、1.8~2.0%、2.4~3.0%と2.6~2.8%から選べられる;
Crの含有量は≦0.35%、例えば≦0.25%である;
Moの含有量は≦0.25%である;
Nbの含有量は≦0.06%、例えば≦0.04%である;
Tiの含有量≦0.065%、例えば≦0.04%、例えば0.006~0.016%である;
Vの含有量は≦0.055%、例えば≦0.035%である
ことを特徴とする請求項1に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
【請求項3】
前記の巻取り温度は、580~650℃、及び/又は、前記の冷間圧延圧下率は60~80%であることを特徴とする請求項1または2に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
【請求項4】
前記の急速熱処理の全過程時間は、71~186sであり、前記の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、43~186sである;及び/又は
前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである;及び/又は
前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;好ましくは、一段目では、30~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;及び/又は
鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである
ことを特徴とする請求項1-3のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
【請求項5】
前記の低炭素低合金Q&P鋼の金属組織は、マルテンサイト75~90%、残留オーステナイト10~25%、フェライト3~10%の多相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、シート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在する;及び/又は
前記の低炭素低合金Q&P鋼の-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い;及び/又は
前記の低炭素低合金Q&P鋼の降伏強度≧660MPa、引張強度≧1180MPa、伸び率≧18%、強伸度積≧24GPa%;好ましくは、降伏強度は668~1112MPa、引張強度は1181~1350MPa、伸び率は18.9~24.2%、強伸度積は24.1~28.97GPa%である
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
【請求項6】
前記の低炭素低合金Q&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.17~0.23%、Si:1.1~1.7%、Mn:1.6~2.2%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-5のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼では、C含有量は、0.19~0.21%であり、及び/又はSi含有量は、1.3~1.5%であり、及び/又はMn含有量は、1.8~2.0%である;
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼の金属組織は、マルテンサイト75~85%、残留オーステナイト10~25%とフェライト3~10%の多相組織である;
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼の降伏強度は、668~1002MPa、引張強度は、1181~1296MPa、伸び率は、18.9~24.2%、強伸度積は、24.1~28.6GPa%である。
【請求項7】
前記の低炭素低合金Q&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.4~2.0%、Mn:2.4~3.0%、Ti:0.006~0.016%、P≦0.015%、S≦0.002%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-5のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼の引張強度≧1280MPa;
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼では、C含有量は、0.18~0.21%であり、及び/又はSi含有量は、1.6~1.8%であり、及び/又はMn含有量は、2.6~2.8%である;
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼の金属組織は、マルテンサイト80~90%、残留オーステナイト10~20%とフェライト3~5%の多相組織である;
好ましくは、前記の低炭素低合金Q&P鋼の降伏強度754~1112MPa、引張強度1281~1350MPa、伸び率19~22.2%、強伸度積24.8~28.97GPa%である。
【請求項8】
前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、マルテンサイトとフェライトとオーステナイトとの三相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、シート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在する;好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、体積分率で、マルテンサイト45~75%とオーステナイト10~25%とフェライト15~30%の三相組織である;及び/又は
前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度≧720MPa、引張強度≧1180MPa、伸び率≧19%、強伸度積≧23.0GPa%;好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は721~956MPa、引張強度は1184~1352MPa、伸び率は19~22.5%、強伸度積は23.6~28.9GPa%である;及び/又は
前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼金属組織の-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い
ことを特徴とする請求項1-4のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
【請求項9】
前記の低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.17~0.23%、Si:1.1~1.7%、Mn:1.6~2.2%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4と8のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、C含有量は、0.19~0.21%であり、及び/又はSi含有量は、1.3~1.5%であり、及び/又はMn含有量は、1.8~2.0%である;
好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、体積分率で、マルテンサイト45~75%とフェライト15~30%とオーステナイト10~25%の三相組織である;
好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は、721~805MPa、引張強度は、1184~1297MPa、伸び率は、19.1~22.4%、強伸度積は、23.6~28GPa%である。
【請求項10】
前記の低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.4~2.0%、Mn:2.4~3.0%、Ti 0.006~0.016%、P≦0.015%、S≦0.002%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4と8のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼。
好ましくは、前記の低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の引張強度≧1280MPa;
好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、C含有量は、0.18~0.21%であり、及び/又はSi含有量は、1.6~1.8%であり、及び/又はMn含有量は、2.6~2.8%である;
好ましくは、前記の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は、802~956MPa、引張強度は、1280~1352MPa、伸び率は、19~22.5%、強伸度積は、25.2~28.9GPa%である。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の製造方法であって、前記の低炭素低合金Q&P鋼の製造方法は、以下のステップを含む:
1)製錬・鋳造
前記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧A
r3、その後、550~680℃まで冷却し、巻取る;
3)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~85%で、冷間圧延後、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
4)急速熱処理
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼又は鋼板を、770~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~500℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;
b)均熱
オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度770~845℃で均熱し、均熱時間10~60sである;
c)冷却
帯鋼または鋼板の均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、700~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で230~280℃まで急冷し、この温度区間で2~10s保温する;
d)焼戻し
保温終了後、帯鋼または鋼板を、10~30℃/sの加熱速度で300~470℃に加熱し、焼戻し処理を行い、焼戻し時間10~60sである;
e)焼戻し終了後、帯鋼または鋼板を室温まで冷却し、冷却速度30~100℃/sである;
前記の低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の製造方法は、以下のステップを含む:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧A
r3、その後、550~680℃まで冷却し、巻取る;
3)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~80%で、冷間圧延後、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
4)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼または鋼板を、室温から770~845℃のオーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで急速加熱し、前記の急速加熱は、一段式または二段式を採用する;
一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;
二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;
b)均熱
オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度770~845℃で均熱し、均熱時間10~60sである;
c)冷却
帯鋼または鋼板の均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、720~770℃まで徐冷する;その後、50~200℃/sの冷却速度で230~280℃まで急冷し、この温度区間で2~10s(例えば、2~8s)保温する;
d)分配
保温終了後、帯鋼または鋼板を、10~30℃/sの加熱速度で460~470℃に加熱し、分配処理を行い、分配時間10~60s;
e)溶融亜鉛めっき
分配終了後、帯鋼または鋼板を亜鉛ポットに浸漬して、溶融亜鉛めっきを行う;
f)帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;あるいは、帯鋼または鋼板をの溶融亜鉛めっき後、10~300℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は5~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る
ことを特徴とする請求項1-10のいずれか一つに記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の製造方法。
【請求項12】
前記の巻取り温度は、580~650℃であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記の冷間圧延圧下率は、60~80%であることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
前記の低炭素低合金Q&P鋼の急速熱処理の全過程時間は、71~186sであり、前記の低炭素低合金Q&P鋼の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、43~186sである;及び/又は
前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである;及び/又は
前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;好ましくは、一段目では、30~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;及び/又は
急速加熱ステップでは、前記の急速加熱の最終温度は、790~845℃である;及び/又は
冷却ステップでは、前記の帯鋼または鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである;及び/又は
均熱過程では、帯鋼または鋼板を、前記オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで加熱した後、温度を保持して均熱を行う;及び/又は
均熱過程では、均熱時間帯には、帯鋼または鋼板を、小幅昇温または小幅降温を行い、昇温後の温度は845℃を超えず、降温後の温度は770℃を下回らない;及び/又は
前記の均熱時間は、10~40sである
ことを特徴とする請求項11~13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の急速熱処理技術分野に属し、特に引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼または低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネやマテリアルサービスの安全性に対する人々の意識が徐々に向上するにつれ、高強度鋼、特に先進高強度鋼の使用が日増しに増加しており、これにより、鉄鋼企業及び科学研究院が先進高強度鋼の開発を日増しに重視している。鋼材製品の強伸度積をさらに向上させるため、Q&P(Quenching and Partitioning、焼入れ及び炭素の再分配)鋼に代表される第3世代先進高強度鋼の開発がますます重視されている。
【0003】
Q&P熱処理技術はSpeerらが21世紀初頭に提案した新しい連続熱処理プロセス技術であり、このプロセスは主に4ステップを含む:
第一に、帯鋼をオーステナイト化温度に加熱して保温する;
第二に、サンプルを、Ms~Mfの間のある温度まで急冷し、主にマルテンサイトと残留オーステナイトの二相組織を得る;
第三に、帯鋼をMs以下の温度まで加熱して保温し、炭素元素を過飽和マルテンサイトから、オーステナイト中に拡散・分配させ、マルテンサイト中の炭素含有量と硬度を下げ、その可塑性を改善し、同時に、オーステナイトの炭素含有量を高め、その安定性を増加させる;
第四に、室温まで冷却し、この過程で、残留オーステナイトの安定性が不十分である場合、一部のオーステナイトがマルテンサイトに変態すると、室温で得られる残留オーステナイト量が減少する。
【0004】
Q&P鋼は本質的にマルテンサイト鋼であるが、従来の焼戻しマルテンサイト鋼とは異なり、焼戻しマルテンサイト鋼と同等の強度では、Q&P鋼の可塑性は大きく向上される。これは、Q&P鋼の組織に残留オーステナイトが存在するためであり、この部分のオーステナイトが、変形過程でマルテンサイトに変態し、いわゆるTRIP効果が生じ、鋼の可塑性が大幅に向上したためである。
【0005】
現在、Q&Pプロセスに対する開発手段は2つあり、1つは合金元素を添加することによって、鋼中の合金元素の炭化物析出に対する抑制能力を高めることである;もう1つは、プロセスの最適化であり、最適な温度と時間を探し、Q&Pプロセスにおける焼入れ及び分配プロセスの温度と時間を調整することにより、Q&P鋼の組織性能を変える。
【0006】
米国特許出願US2003/027825は、Q&P鋼の生産プロセスの大まかなプロセスを提出し、オーステナイト化の過程を高温で行うことに限定し、材料組織は全体オーステナイト化を必要とするので、実際の生産過程では、こんな温度が高すぎ(850-950℃)、かつ時間も長く(通常、鋼板のオーステナイト化過程は2~5minの保温が必要とする)、設備の要求が高く、製造コストも高い。
【0007】
中国特許CN1081931138Bは、「980MPa級自動車用冷間圧延高強度Q&P鋼及びその生産方法」を開示し、当該鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.18~0.24%、Si:0.6~1.3%、Mn:1.6~2.4%、P:0.02~0.04%、S≦0.005%、Nb:0.04~0.07%、N≦0.006%、Als:0.05~1.0%、残部はFeとその他の不可避的不純物元素である。その熱間圧延工程の圧延終了温度870~910℃、巻取り温度660~710℃、前記冷間圧延工程の冷間圧延圧下率≧45%である;前記連続焼鈍工程の均熱セグメント保温温度770~840℃、過時効セグメント保温温度300~440℃、均熱セグメント保温時間60~225s、過時効セグメント保温時間300~1225s、前記平坦化工程の平坦化伸び率は0.3~0.9%である。得られた鋼板の降伏強度は550MPaより大きく、引張強度は980MPaより大きく、破断伸び率は18%より大きい。
【0008】
当該発明の鋼の主な特徴は、従来のQ&Pプロセスにより、強度と可塑性の良好なシナジーが得られることである。従来の熱処理方法を採用するため、その均熱時間と分配時間はどちらも長く、同時に、その合金含有量は比較的に高く、これも製造コストを増加し、製造のフレキシビリティを低下させる。
【0009】
中国特許出願CN109136779Aは、「マルテンサイトマトリックス1100MPa級希土類Q&P鋼の製造方法」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.15~0.22%、Si:0.6~1.7%、Mn:1.1~2.4%、Mo:0.1~0.5%、Al:0.1~0.5%、V:0.05~0.11%、Y:0.01~0.05%、P:0.02~0.04%、S≦0.005%、Nb:0.04~0.07%、N≦0.006%、B:0.001~0.006%、残部はFeとその他の不可避的不純物元素である。得られた鋼板の引張強度は1100MPa前後、破断伸び率は20%前後であった。
【0010】
当該発明の鋼の主な特徴は、希土類YとMo、V、Nbなどの合金元素を同時に添加して、結晶粒を微細化することにより、Mn元素の含有量を減少して、溶接性能を向上させ、その製造過程は2回の鋳造を行う必要があることである。製錬過程:当該発明による成分配合によって、原料を配合した後、転炉製錬を経て、真空炉で二次精製を行い、鋳造によってビレットを得る;微量元素の溶解過程:アーク溶解炉に微量合金元素粉末(Mo、Al、V、Y、Nb、N、Bなど)を添加し、二次ビレットを得る。熱間圧延過程:加熱炉を用いてビレットを1100-1150℃に加熱し、1-3h保温し、その後、熱間圧延を行い、圧延終了温度は820-880℃、巻取り温度は550-650℃、得られた鋼板の厚さは1.5-3.0mm、その後、水焼入れで室温まで冷却する;冷間圧延過程:酸洗後に、複数パスの冷間圧延を行い、厚さ1.2-1.5mmの鋼板を得る;
その全体の焼鈍過程は3回に分けられる:
第1回:二相領域のマンガン分配過程:材料を、10-30℃/sで、AC3とAC1(二相領域)の間のある温度に加熱し、3-15min保温した後、水焼入れで室温まで冷却する;
第2回:1回目の炭素分配過程:材料を、MSとMfの間のある温度T0で、10-300s保温し、その後、材料を水焼入れで室温まで冷却する;
第3回:2回目の炭素分配過程:材料を、MSとMfの間のある温度T1(T1温度はT0よりやや低い)で、10-300s保温し、その後、材料を水焼入れで室温まで冷却する。
【0011】
当該発明の製造プロセスは複雑で、エネルギー消費量が高く、合金含有量が高くて複雑で、しかも、複数回の水焼入れ処理を経て、材料表面の酸化層の除去に関連し、環境とエネルギー消費などの方面の多くの問題をもたらし、製造コストの増加と製造のフレキシビリティの低下を招く。
【0012】
中国特許出願CN10843148Aは、「延性及び成形性を改善する高強度鋼板の製造方法及びそれが得られる鋼板」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.15~0.23%、Mn:2.0~2.8%、Si:1.0~2.1%、Al:0.02~1.0%、Al+Si:1.0~2.1%、Nb:0~0.035%、Mo≦0.3%、Cr≦0.04%、残部はFe及びその他の不可避的不純物元素である。前記の鋼板を、焼鈍温度TAで、焼鈍し、少なくとも65%のオーステナイトと最大35%のフェライトを含む組織を得た。前記の鋼板を、少なくとも20℃/秒の冷却速度で、少なくとも600℃の温度からMs-170℃~Ms-80℃の焼入れ温度QTに焼入れ、前記の鋼板を350℃~450℃の分配温度PTまで加熱し、前記の鋼板を80~440sの分配時間Ptに保持し、その後すぐに、前記の鋼板を室温まで冷却した。得られた鋼板の引張強度は1180MPa超、破断伸び率は12%超であった。
【0013】
当該発明の鋼の主な特徴は、高Mn、高Si及び高Alの成分を用いて、伝統的なQ&Pプロセスを通じて、最終組織中の各相の割合を制御し、強度と可塑性の良好なシナジーを得た結果に達することである。従来の熱処理方法を採用するため、その均熱時間と分配時間はどちらも長く、これは製造コストを増加し、製造のフレキシビリティを低下させることができる。
【0014】
中国特許出願CN10912923Aは、「低炭素微量合金化高強伸度積冷間圧延TRIP980鋼の熱処理方法」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.18~0.23%、Si:1.6~1.8%、Mn:1.5~2.0%、Nb:0.025~0.045%、Ti:0.08~0.15%、P≦0.015%、S≦0.005%、残部はFe及びその他の不可避的不純物元素である。当該発明の鋼の主な製造ステップは以下の通りである:
1)一定の化学成分のビレットを鍛造ビレットに鍛造し、再加熱後に熱間圧延し、水冷後に、巻取り、熱間圧延帯鋼を得る
2)前記熱間圧延帯鋼を、酸洗後に冷間圧延して冷間圧延帯鋼にする;
3)前記冷間圧延帯鋼を完全にオーステナイト化した後、一定時間保温し、その後、室温まで水冷し、全マルテンサイト組織の予備焼入れ帯鋼を生成する;
4)前記予備焼入れ帯鋼の表面にスケール除去を行い、それによって、酸化スケール層と脱炭素層を除去し、その後、再び加熱焼鈍して、一定時間保温し、その後、塩浴で一定温度まで冷却し、一定時間保温した後に、室温まで水冷し、最終製品帯鋼を製造する。
【0015】
ステップ1)に記載の鍛造ビレットの再加熱の温度範囲は、1100-1200℃で、保温時間は、3-5hで、熱間圧延の圧延開始温度は、1050-1150℃で、圧延終了温度は850-900℃である;熱間圧延は、4ロール可逆圧延機を用い、7パスの往復圧延を行い、前の2パスの圧下率は30-50%で、後の5パスの圧下率は20-30%で、その後、650-750℃まで水冷した後、石綿を入れ、8-10h保温し、それによって、巻取り過程をシミュレーションし、熱間圧延帯鋼の厚さは4-5.5mmである。
【0016】
ステップ2)に記載の冷間圧延は、4ロール圧延機を用いて一方向圧延を行い、圧延パスは10-15パスであり、その中に、3-5パスの平坦化圧延を含み、最終の冷間圧延帯鋼の厚さは1.0-1.5mmである。
【0017】
ステップ3)に記載の冷間圧延帯鋼のオーステナイト化温度は870~920℃で、オーステナイト化保温時間は5~15minである。
【0018】
ステップ4)に記載の酸化スケール及び脱炭素層の除去厚さは、上下底面各50~100μmで、その後に、予備焼入れ帯鋼を再加熱する焼鈍温度は、780-830℃で、焼鈍保温時間は3-8minである。その後、塩浴冷却を行い、塩浴冷却速度は、100-200℃/sで、塩浴保温温度は、320-400℃で、保温時間は5-10minである。
【0019】
当該発明の鋼の主な特徴は、多く添加された微合金元素Nb、Tiを用いて、結晶粒を微細化し、高い伸び率(A%≧24%)と高い強度(≧980MPa)を得ることである。従来のTRIP鋼の生産プロセスと比較して、当該発明は、冷間圧延帯鋼に対して2回の熱処理を行う方法を採用する:酸洗後に、冷間圧延処理された冷間圧延帯鋼は、まず、1回の完全オーステナイト化焼鈍を行い、それから全マルテンサイト組織に焼入れ、その後、表面のスケール除去と脱炭素層除去を行い、再び1回の加熱焼鈍を行い、最終的に完成品である帯鋼を得る。この方法には、微合金元素の添加量が高いことや、2回の焼鈍による製造コストの増加や、製造工程の難さの増加などの問題がある。
【0020】
中国特許CN105543674Bが、「高局所成形性能冷間圧延超高強度二相鋼の製造方法」を開示し、当該発明の高強度二相鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.08~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.5~2.5%、Al:0.015~0.05%であり、残部は、Feと他の不可避不純物である。当該化学成分により原料を選択配合し、ビレットに溶融する;ビレットを、1150~1,250℃で1.5~2時間加熱した後、熱間圧延を行い、熱間圧延の圧延開始温度は1080~1,150℃で、圧延終了温度は880~930℃である;圧延後、50~200℃/sの冷却速度で450~620℃まで冷却し、巻取りを行い、ベイナイトを主な組織タイプとする熱間圧延鋼板を得た;熱間圧延鋼板に、冷間圧延を行い、その後、50~300℃/sの速度で740~820℃に加熱し、焼鈍を行い、保温時間30s~3min、2~6℃/sの冷却速度で620~680℃まで冷却し、その後、30~100℃/sの冷却速度で250~350℃まで冷却し、3~5min過時効処理し、フェライト+マルテンサイト二相組織の超高強度二相鋼を得た。この超高強度二相鋼の降伏強度は650-680MPa、引張強度は1023-1100MPa、伸び率は12.3%である。それが、圧延方向180°に沿って曲げても割れない。
【0021】
当該特許の最も主な特徴は、熱間圧延後の冷却条件の制御と連続焼鈍過程における急速加熱を結合し、即ち、熱間圧延後冷却プロセスを制御することで、帯状組織を除去し、組織の均一化を実現することである;後続の連続焼鈍過程中に、急速加熱を採用し、組織の均一性を保証した上、組織の微細化を実現した。当該特許技術が、急速加熱焼鈍を採用し、その前提は、熱間圧延後、ベイナイトを主要組織とする熱間圧延原材料を得ることであり、その目的は、主に組織の均一性を保証し、帯状組織による局所的な変形という不足を回避することである。
【0022】
当該特許の欠点は、主に以下である:
第一に、ベイナイト組織を有する熱間圧延原材料を得る必要がある;当該熱間圧延原材料は、強度が高く、変形抵抗力が大きく、後続の酸洗いと冷間圧延の生産に大きな困難をもたらす;
第二に、急速加熱に対する理解は、加熱時間の短縮や、結晶粒の微細化に限られ、その加熱速度は、異なる温度段階にある材料組織構造の変化に応じて区分されておらず、代わりにすべて50-300℃/sの速度で加熱し、そして、急速加熱生産コストの高騰を招いた;
第三に、均熱時間は30s-3minである;均熱時間の増加は、必然的に部分的に急速加熱による結晶粒微細化効果を弱め、材料強度と靭性の向上に不利である;
第四に、当該特許には、3~5分間の過時効処理を行う必要があるが、これは、実際に急速熱処理DP鋼にとって時効時間が長すぎ、必要がない。また、均熱時間と過時効時間の増加は、どちらもエネルギー節約、機械設備投資と機械の敷地面積の低減に不利であり、さらに炉内での帯鋼の急速安定運転にも不利であり、厳密な意味での急速熱処理過程でもないことは明らかである。
【0023】
中国特許出願201711385126.5が、「780MPa級低炭素低合金TRIP鋼」を開示し、その化学成分は、質量百分率で、C:0.16-0.22%、Si:1.2-1.6%、Mn:1.6-2.2%であり、残部はFeおよび不可避不純物であり、それが、以下の急速熱処理プロセスで得た:帯鋼を、室温から790~830℃のオーステナイトとフェライト二相領域まで急速加熱し、加熱速度は40~300℃/sである;二相領域加熱目標温度区間の滞留時間は60~100sである;帯鋼を、二相領域温度から410~430℃まで急冷し、冷却速度は40~100℃/sであり、かつ当該温度区間に200~300s滞留した;帯鋼を410~430℃から室温まで急冷した。その特徴は、前記のTRIP鋼の金属組織は、ベイナイト、フェライト、オーステナイトの三相組織である;前記のTRIP鋼の平均結晶粒サイズは、明らかに微細化された;引張強度は950~1050MPaである;伸び率は21~24%である;強伸度積は、最大24GPa%に達することができる。
【0024】
当該特許の欠点は、主に以下である:
第一に、当該特許は、780MPa級低炭素低合金TRIP鋼製品及びそのプロセス技術を開示したが、当該TRIP鋼製品の引張強度は950~1050MPaであり、この強度は、780MPa級の製品の引張強度としては高すぎ、ユーザーの使用効果が良い訳が無いが、980MPa級の引張強度としてはまた低すぎて、ユーザーの強度要求を十分に満たすことができない;
第二に、当該特許は、1段式急速加熱を採用し、加熱温度区間全体で同一の急速加熱速度を採用し、異なる温度段階にある材料組織構造の変化に応じて、区別処理を行わず、代わりにすべて40~300℃/sの速度で急速加熱し、これは必然的に急速加熱過程の生産コストの高騰をもたらす;
第三に、当該特許の均熱時間は、60~100sに設定され、従来の連続焼鈍の均熱時間に近い;均熱時間の増加は、必然的に部分的に急速加熱による結晶粒微細化効果を弱め、材料強度と靭性の向上に非常に不利である;
第四に、当該特許は、200~300sのベイナイト等温処理時間を行わなければならず、これは、実際に急速熱処理製品にとって、等温処理時間が長すぎて、あるべき役割を果たすことができず、必要がない。また、均熱時間と等温処理時間の増加は、どちらもエネルギー節約、機械設備投資と機械の敷地面積の低減に不利であり、さらに炉内での帯鋼の急速安定運転にも不利であり、厳密な意味での急速熱処理過程でもないことは明らかである。
【0025】
中国特許出願CN107794357Bと米国特許出願US2019/0153558A1が、「超急速加熱プロセスによる超高強度マルテンサイト冷間圧延鋼板を生産する方法」、当該高強度二相鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.10~0.30%、Mn:0.5~2.5%、Si:0.05~0.3%、Mo:0.05~0.3%、Ti:0.01~0.04%、Cr:0.10~0.3%、B:0.001~0.004%、P≦0.02%、S≦0.02%であり、残部は、Feと他の不可避不純物である。当該二相鋼の機械的特性:降伏強度Rp0.2が1100MPa超、引張強度Rm=1800-2300MPa、伸び率が最大12.3%、均一伸び率5.5~6%である。当該発明が、超高強度マルテンサイト冷間圧延鋼板の超急速加熱生産プロセスを提供し、そのプロセスの特徴は、まず、冷間圧延鋼板を1~10℃/sで300~500℃まで加熱し、そして、100~500℃/sの加熱速度で、単相オーステナイト領域850~950℃まで再加熱した;その後、鋼板は、5sを超えない保温後すぐに室温まで水冷し、超高強度冷間圧延鋼板を得た。
【0026】
当該特許に記載のプロセスの欠点は、以下を含む:
第一に、当該発明には、鋼の焼鈍温度は、オーステナイト単相領域の超高温温度範囲に入り、しかも合金元素を多く含み、降伏強度と引張強度はいずれも1000MPaを超えているため、これは熱処理本プロセス、熱処理前工程製造及び後続ユーザ使用に大きな困難をもたらした;
第二に、当該発明の超急速加熱焼鈍方法は、5sを超えない保温時間を採用し、加熱温度の制御性が悪いだけでなく、最終製品中の合金元素の分布の不均一、製品組織性能の不均一と不安定を招く;
第三に、最後の急冷には、水焼入れによって室温まで冷却し、必要な焼戻し処理を行わなかったため、得られた最終製品組織性能及び最終組織構造中の合金元素分布プロファイルは製品に最適な強靭性をもたらせず、最終製品の強度が過剰に残り、可塑性と靭性が不足した;
第四に、当該発明の方法は、水焼入れによる冷却速度が高すぎるので、鋼板の板型不良や表面酸化などの問題を引き起こすため、当該特許技術は高い実用価値がないか、実用価値が低い。
【0027】
中国特許CN1081931138Bは、「980MPa級自動車用冷間圧延高強度Q&P鋼及びその生産方法」を開示し、当該鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.18~0.24%、Si:0.6~1.3%、Mn:1.6~2.4%、P:0.02~0.04%、S≦0.005%、Nb:0.04~0.07%、N≦0.006%、Als:0.05~1.0%、残部はFeとその他の不可避的不純物元素である。その熱間圧延工程の圧延終了温度870~910℃、巻取り温度660~710℃、前記冷間圧延工程の冷間圧延圧下率≧45%である;前記連続焼鈍工程の均熱セグメント保温温度770~840℃、過時効セグメント保温温度300~440℃、均熱セグメント保温時間60~225s、過時効セグメント保温時間300~1225s、前記平坦化工程の平坦化伸び率は0.3~0.9%である。得られた鋼板の降伏強度は550MPaより大きく、引張強度は980MPaより大きく、破断伸び率は18%より大きい。
【0028】
当該発明の鋼の主な特徴は、従来のQ&Pプロセスにより、強度と可塑性の良好なシナジーが得られることである。従来の熱処理方法を採用するため、その均熱時間と分配時間はどちらも長く、同時に、その合金含有量は比較的に高く、これも製造コストを増加し、製造のフレキシビリティを低下させる。
【0029】
中国特許出願CN109136779Aは、「マルテンサイトマトリックス1100MPa級希土類Q&P鋼の製造方法」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.15~0.22%、Si:0.6~1.7%、Mn:1.1~2.4%、Mo:0.1~0.5%、Al:0.1~0.5%、V:0.05~0.11%、Y:0.01~0.05%、P:0.02~0.04%、S≦0.005%、Nb:0.04~0.07%、N≦0.006%、B:0.001~0.006%、残部はFeとその他の不可避的不純物元素である。得られた鋼板の引張強度は1100MPa前後、破断伸び率は20%前後であった。
【0030】
当該発明の鋼の主な特徴は、希土類YとMo、V、Nbなどの合金元素を同時に添加して、結晶粒を微細化することにより、Mn元素の含有量を減少して、溶接性能を向上させ、その製造過程は2回の鋳造を行う必要があることである。製錬過程:当該発明による成分配合によって、原料を配合した後、転炉製錬を経て、真空炉で二次精製を行い、鋳造によってビレットを得る;微量元素の溶解過程:アーク溶解炉に微量合金元素粉末(Mo、Al、V、Y、Nb、N、Bなど)を添加し、二次ビレットを得る。熱間圧延過程:加熱炉を用いてビレットを1100-1150℃に加熱し、1-3h保温し、その後、熱間圧延を行い、圧延終了温度は820-880℃、巻取り温度は550-650℃、得られた鋼板の厚さは1.5-3.0mm、その後、水焼入れで室温まで冷却する;冷間圧延過程:酸洗後に、複数パスの冷間圧延を行い、厚さ1.2-1.5mmの鋼板を得る;
その全体の焼鈍過程は3回に分けられる:
第1回:二相領域のマンガン分配過程:材料を、10-30℃/sで、AC3とAC1(二相領域)の間のある温度に加熱し、3-15min保温した後、水焼入れで室温まで冷却する;
第2回:1回目の炭素分配過程:材料を、MSとMfの間のある温度T0で、10-300s保温し、その後、材料を水焼入れで室温まで冷却する;
第3回:2回目の炭素分配過程:材料を、MSとMfの間のある温度T1(T1温度はT0よりやや低い)で、10-300s保温し、その後、材料を水焼入れで室温まで冷却する。
【0031】
当該発明の製造プロセスは複雑で、エネルギー消費量が高く、合金含有量が高くて複雑で、しかも、複数回の水焼入れ処理を経て、材料表面の酸化層の除去に関連し、環境とエネルギー消費などの方面の多くの問題をもたらし、製造コストの増加と製造のフレキシビリティの低下を招く。
【0032】
中国特許出願CN10843148Aは、「延性及び成形性を改善する高強度鋼板の製造方法及びそれが得られる鋼板」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.15~0.23%、Mn:2.0~2.8%、Si:1.0~2.1%、Al:0.02~1.0%、Al+Si:1.0~2.1%、Nb:0~0.035%、Mo≦0.3%、Cr≦0.04%、残部はFe及びその他の不可避的不純物元素である。前記の鋼板を、焼鈍温度TAで、焼鈍し、少なくとも65%のオーステナイトと最大35%のフェライトを含む組織を得た。前記の鋼板を、少なくとも20℃/秒の冷却速度で、少なくとも600℃の温度からMs-170℃~Ms-80℃の焼入れ温度QTに焼入れ、前記の鋼板を350℃~450℃の分配温度PTまで加熱し、前記の鋼板を80~440sの分配時間Ptに保持し、その後すぐに、前記の鋼板を室温まで冷却した。得られた鋼板の引張強度は1180MPa超、破断伸び率は12%超であった。
【0033】
当該発明の鋼の主な特徴は、高Mn、高Si及び高Alの成分を用いて、伝統的なQ&Pプロセスを通じて、最終組織中の各相の割合を制御し、強度と可塑性の良好なシナジーを得た結果に達することである。従来の熱処理方法を採用するため、その均熱時間と分配時間はどちらも長く、これは製造コストを増加し、製造のフレキシビリティを低下させることができる。
【0034】
中国特許出願CN10912923Aは、「低炭素微量合金化高強伸度積冷間圧延TRIP980鋼の熱処理方法」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.18~0.23%、Si:1.6~1.8%、Mn:1.5~2.0%、Nb:0.025~0.045%、Ti:0.08~0.15%、P≦0.015%、S≦0.005%、残部はFe及びその他の不可避的不純物元素である。当該発明の鋼の主な製造ステップは以下の通りである:
1)一定の化学成分のビレットを鍛造ビレットに鍛造し、再加熱後に熱間圧延し、水冷後に、巻取り、熱間圧延帯鋼を得る
2)前記熱間圧延帯鋼を、酸洗後に冷間圧延して冷間圧延帯鋼にする;
3)前記冷間圧延帯鋼を完全にオーステナイト化した後、しばらく保温し、その後、室温まで水冷し、全マルテンサイト組織の予備焼入れ帯鋼を生成する;
4)前記予備焼入れ帯鋼の表面にスケール除去を行い、それによって、酸化スケール層と脱炭素層を除去し、その後、再び加熱焼鈍して、一定時間保温し、その後、塩浴で一定温度まで冷却し、一定時間保温した後に、室温まで水冷し、最終製品帯鋼を製造する。
【0035】
ステップ1)に記載の鍛造ビレットの再加熱の温度範囲は、1100-1200℃で、保温時間は、3-5hで、熱間圧延の圧延開始温度は、1050-1150℃で、圧延終了温度は850-900℃である;熱間圧延は、4ロール可逆圧延機を用い、7パスの往復圧延を行い、前の2パスの圧下率は30-50%で、後の5パスの圧下率は20-30%で、その後、650-750℃まで水冷した後、石綿を入れ、8-10h保温し、それによって、巻取り過程をシミュレーションし、熱間圧延帯鋼の厚さは4-5.5mmである。
【0036】
ステップ2)に記載の冷間圧延は、4ローラー圧延機を用いて一方向圧延を行い、圧延パスは10-15パスであり、その中に、3-5パスの平坦化圧延を含み、最終の冷間圧延帯鋼の厚さは1.0-1.5mmである。
【0037】
ステップ3)に記載の冷間圧延帯鋼のオーステナイト化温度は870~920℃で、オーステナイト化保温時間は5~15minである。
【0038】
ステップ4)に記載の酸化スケール及び脱炭素層の除去厚さは、上下底面各50~100μmで、その後に、予備焼入れ帯鋼を再加熱する焼鈍温度は、780-830℃で、焼鈍保温時間は3-8minである。その後、塩浴冷却を行い、塩浴冷却速度は、100-200℃/sで、塩浴保温温度は、320-400℃で、保温時間は5-10minである。
【0039】
当該発明の鋼の主な特徴は、多く添加された微合金元素Nb、Tiを用いて、結晶粒を微細化し、高い伸び率(A%≧24%)と高い強度(≧980MPa)を得ることである。従来のTRIP鋼の生産プロセスと比較して、当該発明は、冷間圧延帯鋼に対して2回の熱処理を行う方法を採用する:酸洗後に、冷間圧延処理された冷間圧延帯鋼は、まず、1回の完全オーステナイト化焼鈍を行い、それから全マルテンサイト組織に焼入れ、その後、表面のスケール除去と脱炭素層除去を行い、再び1回の加熱焼鈍を行い、最終的に完成品である帯鋼を得る。この方法には、微合金元素の添加量が高いことや、2回の焼鈍による製造コストの増加や、製造工程の難さの増加などの問題がある。
【0040】
現在、従来の連続焼鈍炉生産ラインの設備能力に制限されており、冷間圧延Q&P鋼製品及び焼鈍プロセスに関する研究は、いずれも既存の工業装備の加熱速度(5~20℃/s)に基づいて、帯鋼を低速加熱し、それが、再結晶とオーステナイト化変態を順次完成させるため、加熱時間と均熱時間は比較的に長く、エネルギー消費量が高く、同時に、従来の連続焼鈍生産ラインには、高温炉セグメントにおける帯鋼のローラー数が多いなどの状況が存在し、従来の連続焼鈍ユニットは製品大綱と生産能力の要求に基づき、一般的な均熱時間の要求は1~3minで、ユニットの速度が180メートル/分程度の従来の生産ラインに対して、その高温炉セグメント内のローラー数は、一般的に20~40本であり、帯鋼表面の品質制御の難さを増大させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明の目的は、引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼、引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼及びそれらの急速熱処理製造方法を提供する。本発明は、急速熱処理によって変形組織の回復、再結晶及びオーステナイト変態過程を変化させ、核形成速度(再結晶核形成速度とオーステナイト変態核形成速度を含む)を増加させ、結晶粒の成長時間を短縮し、結晶粒を微細化し、残留オーステナイト含有量を高め、それによって、材料の強度と可塑性をさらに高める。本発明の低炭素低合金Q&P鋼のマトリックス組織分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布する残留オーステナイト相とフェライト相が存在し、そのうち、シート状の体積分率は、マルテンサイト組織75~90%、残留オーステナイト組織10~25%、フェライト組織3~10%である。本発明の低炭素低合金Q&P鋼の降伏強度≧660MPa、引張強度≧1180MPa、伸び率≧18%、強伸度積≧24GPa%、強度と靭性の良好なシナジー及び成形と溶接などのユーザー使用性能を有する。本発明は、急速熱処理プロセスによって、生産効率を高め、同じレベル鋼中の合金含有量を下げ、それによって、生産コスト及び熱処理前工程の製造難度を下げ、炉のローラー数を著しく減らし、材料表面品質を高める。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記目的を果たすために、本発明の技術方案は:
引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼、その化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.1~2.0%、Mn:1.6~3.0%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼の金属組織は、マルテンサイト75~90%、残留オーステナイト10~25%、フェライト3~10%の多相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。好ましくは、当該Q&P鋼の金属組織におけるオーステナイトは、良好な熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い。好ましくは、当該Q&P鋼の降伏強度668~1112MPa、引張強度1181~1350MPa、伸び率18.9~24.2%、強伸度積24.1~28.97GPa%である。
【0043】
好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Cの含有量範囲は、0.17~0.23%、0.19~0.21%と0.18~0.21%から選べられる。好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Siの含有量範囲は、1.1~1.7%、1.3~1.5%、1.4~2.0%と1.6~1.8%から選べられる。好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Mnの含有量範囲は、1.6~2.2%、1.8~2.0%、2.4~3.0%と2.6~2.8%から選べられる。
【0044】
好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Crの含有量≦0.35%、例えば≦0.25%;Moの含有量≦0.25%;Nbの含有量≦0.06%、例えば≦0.04%;Tiの含有量≦0.065%、例えば≦0.04%、例えば0.006~0.016%;Vの含有量≦0.055%、例えば≦0.035%である。
【0045】
好ましくは、本発明に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼は、以下のプロセスで得られる:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
巻取り温度550~680℃;
3)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~85%である;
4)急速熱処理
冷間圧延された鋼板を、770~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~500℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度は770~845℃であり、均熱時間は、10~60sである;
均熱終了後は、5~15℃/sの冷却速度で700~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で、230~280℃まで急冷し、この温度区間で、2~10s保温し、その後、10~30℃/sの加熱速度で300~470℃まで加熱して、焼戻し処理を行い、焼戻し時間10~60s、焼戻し終了後は、30~100℃/sの冷却速度で室温まで冷却する。
【0046】
好ましくは、ステップ2)では、前記熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3。
好ましくは、ステップ2)では、前記巻取り温度は、580~650℃である。
【0047】
好ましくは、ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。
好ましくは、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は、71~186sである。
【0048】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。
【0049】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱する;二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。
【0050】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、30~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱する;二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。
【0051】
好ましくは、ステップ4)では、前記の鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである。
【0052】
一部の実施の形態において、本発明の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.17~0.23%、Si:1.1~1.7%、Mn:1.6~2.2%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、この低炭素低合金Q&P鋼では、C含有量は、0.19~0.21%である。好ましくは、この低炭素低合金Q&P鋼では、Si含有量は、1.3~1.5%である。好ましくは、この低炭素低合金Q&P鋼では、Mn含有量は、1.8~2.0%である。好ましくは、このQ&P鋼の金属組織は、マルテンサイト75~85%、残留オーステナイト10~25%とフェライト3~10%の多相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。好ましくは、このQ&P鋼の金属組織におけるオーステナイトは、良好な熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い。好ましくは、このQ&P鋼の降伏強度は、668~1002MPa、引張強度は、1181~1296MPa、伸び率は、18.9~24.2%、強伸度積は、24.1~28.6GPa%である。
【0053】
一部の実施の形態において、本発明の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.4~2.0%、Mn:2.4~3.0%、Ti:0.006~0.016%、P≦0.015%、S≦0.002%、Al:0.02~0.05%、さらにCr、Mo、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、この引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼は、引張強度≧1280MPaの低炭素低合金Q&P鋼である。好ましくは、この低炭素低合金Q&P鋼では、C含有量は、0.18~0.21%である。好ましくは、この低炭素低合金Q&P鋼では、Si含有量は、1.6~1.8%である。好ましくは、この低炭素低合金Q&P鋼では、Mn含有量は、2.6~2.8%である。このQ&P鋼の金属組織は、マルテンサイト80~90%、残留オーステナイト10~20%とフェライト3~5%の多相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。好ましくは、このQ&P鋼の金属組織におけるオーステナイトは、良好な熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い。好ましくは、この該Q&P鋼の降伏強度754~1112MPa、引張強度1281~1350MPa、伸び率19~22.2%、強伸度積24.1~28.97GPa%である。
【0054】
本発明のもう一つは、引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼を提供し、その化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.1~2.0%、Mn:1.6~3.0%、P≦0.015%、S≦0.005%、好ましくは≦0.002%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、マルテンサイトとフェライトとオーステナイトとの三相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、シート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。好ましくは、前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、体積分率で、マルテンサイト45~75%とフェライト15~30%とオーステナイト10~25%の三相組織である。好ましくは、前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度≧720MPa、引張強度≧1180MPa、伸び率≧19%、強伸度積≧23.0GPa%。好ましくは、前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は、721~956MPa、引張強度は、1184~1352MPa、伸び率は、19~22.5%、強伸度積は、23.6~28.9GPa%である。好ましくは、前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼金属組織におけるオーステナイトは、良好な熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い。
【0055】
好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Cの含有量範囲は、0.17~0.23%、0.19~0.21%と0.18~0.21%から選べられる。好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Siの含有量範囲は、1.1~1.7%、1.3~1.5%、1.4~2.0%と1.6~1.8%から選べられる。好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Mnの含有量範囲は、1.6~2.2%、1.8~2.0%、2.4~3.0%と2.6~2.8%から選べられる。
【0056】
好ましくは、前記引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼では、Crの含有量≦0.35%、例えば≦0.25%;Moの含有量≦0.25%;Nbの含有量≦0.06%、例えば≦0.04%;Tiの含有量≦0.065%、例えば≦0.04%、例えば0.006~0.016%;Vの含有量≦0.055%、例えば≦0.035%。
【0057】
一部の実施の形態において、前記の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼は、以下の方法で得られる:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3、その後、550~680℃まで冷却し、巻取る;
3)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~80%である;
4)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
冷間圧延された鋼板を、770~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度は770~845℃であり、均熱時間は、10~60sである;
均熱終了後は、5~15℃/sの冷却速度で700~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で、230~280℃まで急冷し、この温度区間で、2~10s保温し、その後、10~30℃/sの加熱速度で460~470℃まで加熱して、分配処理を行い、分配時間10~60s;そして亜鉛ポットに浸入しれ溶融亜鉛めっきを行う;
溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;あるいは、溶融亜鉛めっき後、10~300℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は5~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0058】
好ましくは、ステップ2)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である。
好ましくは、ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。
【0059】
好ましくは、ステップ4)に記載の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、43~186sである。
【0060】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。
【0061】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。
【0062】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、30~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。
【0063】
好ましくは、ステップ4)では、前記の帯鋼または鋼板の急冷段階の冷却速度は、50~150℃/sである。
【0064】
一部の実施の形態において、前記の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.17~0.23%、Si:1.1~1.7%、Mn:1.6~2.2%、P≦0.015%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、C含有量は、0.19~0.21%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、Si含有量は、1.3~1.5%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、Mn含有量は、1.8~2.0%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、体積分率で、マルテンサイト45~75%とフェライト15~30%とオーステナイト10~25%の三相組織であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、シート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は、721~805MPa、引張強度は、1184~1297MPa、伸び率は、19.1~22.4%、強伸度積は、23.6~28GPa%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼金属組織におけるオーステナイトは、良好な熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い。
【0065】
一部の実施の形態において、前記の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.16~0.23%、Si:1.4~2.0%、Mn:2.4~3.0%、Ti 0.006~0.016%、P≦0.015%、S≦0.002%、Al:0.02~0.05%であり、さらにCr、Mo、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、且つCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼は、引張強度≧1280MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、C含有量は、0.18~0.21%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、Si含有量は、1.6~1.8%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼では、Mn含有量は、2.6~2.8%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、マルテンサイトとフェライトとオーステナイトとの三相組織(マルテンサイト組織は、75~90%を占め、残留オーステナイト組織は10~25%を占め、フェライト組織は3~10%を占める)であり、そのマトリックス組織分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は、802~956MPa、引張強度は、1280~1352MPa、伸び率は、19~22.5%、強伸度積は、25.2~28.9GPa%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっきQ&P鋼金属組織におけるオーステナイトは、良好な熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低い。
【0066】
本発明にかかる鋼の成分とプロセスの設計において:
C:炭素は、鋼の中で最も見られる強化元素であり、炭素は、鋼の強度を増加させ、可塑性を低下させるが、成形用鋼にとって、低い降伏強度、高い均一伸び率と総伸び率は必要であるので、炭素の含有量は、高すぎるべきではない。鋼中の炭素の相が、フェライトとセメンタイトの2つ方式で存在する。炭素の含有量が鋼の機械的特性に非常に大きな影響を与え、炭素の含有量の上昇に伴い、マルテンサイトとパーライトなどの強化相の数が増加し、鋼の強度と硬度が大幅に向上するが、その可塑性と靭性は明らかに低下し、炭素の含有量が高すぎると、鋼の中に、明らかな網状炭化物が出現し、網状炭化物の存在は、その強度、可塑性と靭性を明らかに低下させ、鋼の中の炭素含有量の上昇による強化効果も顕著に弱まる。また、鋼のプロセス性能を低下させるため、強度を保証すること上に、炭素含有量をできるだけ低下させるべきである。
【0067】
Q&P鋼にとって、炭素元素は、マルテンサイトのマトリックスにおける最も有効な強化元素の一つであり、それは、オーステナイト中に固溶し、オーステナイト相領域を拡大し、オーステナイトの安定性を大幅に高め、パーライトとベイナイトの変態C曲線を右に移動させ、パーライトとベイナイトの変態を遅らせ、Ms点温度を低下させる。炭素含有量が低すぎると、残留オーステナイトの安定性が低下し、炭素含有量が高すぎると、マルテンサイト中に双晶が現れ、鋼の可塑性、靭性、溶接性が低下する。総合的に考えて、炭素含有量を0.16~0.23%の範囲に限定した。一部の実施の形態において、Cの含有量は、0.18~0.21%である。もう一部の実施の形態において、Cの含有量は、0.19~0.21%である。
【0068】
Mn:マンガンは、鉄と固溶体を形成することができ、さらに、炭素鋼中のフェライトとオーステナイトの強度と硬度を高め、鋼材において熱間圧延後の冷却過程で比較的に微細で強度の高いパーライトを得ることができ、パーライトの含有量もMn含有量の増加に伴い増加することができる。マンガンは、同時に炭化物の形成元素であり、マンガンの炭化物は、セメンタイトに溶解することができ、それによって、間接的に、マルテンサイトとパーライトなどの強化相の強度を増強することができる。マンガンはまた、鋼の焼入れ性を強く増強し、その強度をさらに高めることができる。一部の実施の形態において、Mnの含有量は、1.8~2.0%である。もう一部の実施の形態において、Cの含有量は、2.6~2.8%である。
【0069】
Q&P鋼にとって、マンガン元素が、マルテンサイト変態温度Msを低下させ、残留オーステナイトの含有量を増加し、残留オーステナイトの安定性を向上し、且つ、マンガン元素は鋼の靭性にあまり影響しない。しかし、マンガン含有量が高い場合、鋼材料中の結晶粒を粗大化する傾向があり、鋼の過熱感受性を増加させ、溶融鋳造と熱間圧延後の冷却が不十分な場合、炭素鋼に白点が発生しやすい。本発明は、マンガン含有量を1.6~3.0%の範囲に限定する。
【0070】
Si:ケイ素は、フェライトまたはオーステナイト中に固溶体を形成し、それによって、鋼の降伏強度と引張強度を強化し、しかも、ケイ素は、鋼の冷間加工変形硬化率を増加することができ、合金鋼中の有益元素である。また、ケイ素はケイ素マンガン鋼の結晶断面に沿って明らかな偏在現象があり、ケイ素の結晶粒界位置での偏在は炭素とリンの結晶粒界に沿った分布を緩和し、さらに結晶粒界の脆化状態を改善することができる。ケイ素は、鋼の強度、硬度、耐摩耗性を高めることができ、しかも一定の範囲内で鋼の可塑性を明らかに低下させることはない。ケイ素は、脱酸素の能力が強く、製鋼時によく使われる脱酸素剤であり、ケイ素は、また溶鋼の流動性を増大させることができるため、一般的な鋼には、ケイ素が含まれているが、鋼中のケイ素の含有量が高すぎると、その可塑性と靭性が著しく低下する。Q&P鋼にとって:
第一に、ケイ素元素は、非炭化物形成元素であり、炭化物中の溶解度は極めて低く、QP鋼の等温過程において、Fe3Cの形成を抑制でき、未変態のオーステナイトを炭素に富ませ、それによって、オーステナイトの安定性を大幅に高め、それを室温で保持できるようにする;
第二に、ケイ素元素は、フェライト形成元素であり、残留オーステナイトの安定性を高め、固溶強化の役割を果たし、それによって鋼の強度を高めることができる;
第三に、ケイ素元素は、オーステナイト相領域を縮小し、フェライト中のC元素の活性を高める作用がある。
【0071】
高いケイ素含有量は、多くの残留オーステナイトを得るのに有利であるが、高すぎるケイ素含有量は、鋼に硬い酸化層と悪い表面性能を発生させ、熱間圧延鋼板の濡れ性と表面品質を低下させる。ケイ素は、オーステナイトの成長速度に、明らかな影響を与えないが、オーステナイトの形態と分布に明らかな影響を与え、ケイ素含有量の増加は、熱処理前工程の製造難度を増加させる;本発明は、ケイ素含有量を1.1~2.0%の範囲に限定する。一部の実施の形態において、Siの含有量は、1.3~1.5%である。もう一部の実施の形態において、Siの含有量は、1.6~1.8%である。
【0072】
Cr:鋼におけるクロムの主な作用は、焼入れ性を高めることであり、鋼を焼入れ・焼戻しした後に比較的に良い総合機械的性能を持たせる。クロムと鉄は連続固溶体を形成し、オーステナイト相領域を縮小し、クロムと炭素は多種の炭化物を形成し、炭素との親和力は鉄とマンガン元素より大きい。クロムと鉄は、金属間化合物であるσ相(FeCr)を形成することができ、クロムは、パーライト中の炭素の濃度及びオーステナイト中の炭素の限界溶解度を減少させる;クロムは、オーステナイトの分解速度を遅くし、鋼の焼入れ性を著しく向上させる。しかし、鋼の焼戻し脆性傾向も増す。他の合金元素を添加すると、クロム元素は鋼の強度と硬度を高める効果が顕著である。Crは、空冷時の鋼の焼入れ能力を高めるため、鋼の溶接性能に不利な影響を与える。しかし、クロム含有量が0.3%未満の場合、溶接性への悪影響は無視できる;当該含有量を超えると、溶接時に、クラックやスラグ挟みなどの欠陥が生じやすくなる。Crが他の合金元素と同時に存在する(例えばVと共存する)と、Crの溶接性への悪影響は大幅に減少する。例えば、Cr、Mo、Vなどの元素が同時に鋼中に存在する場合、Cr含有量が1.7%に達しても、鋼の溶接性能に顕著な不利な影響はない。本発明には、クロム元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、その添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Crの含有量は≦0.35%、例えば≦0.25%である。
【0073】
Mo:モリブデン元素は、鉄の自己拡散と他の元素の拡散速度を抑制することができる。Mo原子半径はα-Fe原子より大きく、Moがα固溶体に溶解すると、固溶体に強い格子歪みが発生すると同時に、Moは格子原子結合引力を増加させ、αフェライトの再結晶温度を高めることができる。パーライト型、フェライト型、マルテンサイト型鋼には、ひいては高合金オーステナイト鋼にも、Moの強化作用も明らかである。鋼におけるMoの良好な作用は、鋼中の他の合金元素との相互作用にも依存する必要がある。鋼に強炭化物形成元素であるV、Nb、Tiを添加すると、Moの固溶強化作用がより顕著になる。これは、強炭化物形成元素がCと結合して安定した炭化物を形成すると、Moの固溶体へのより効果的な溶解が促進され、鋼の熱強度の向上に有利になるからである。Moを添加することで、鋼の焼入れ性を高めることもできるが、CやCrの効果ほど顕著ではない。Moは、パーライト領域の変態を抑制し、中温領域の変態を加速させるので、Mo含有鋼は、冷却速度が大きい場合でも一定数のベイナイトを形成し、フェライト形成を排除することができ、これは、Moが低合金耐熱鋼の熱強度に有利な影響を与える原因の一つである。Moは、鋼の熱脆性傾向を顕著に低下させ、パーライト球状化速度を減少させることもできる。Mo含有量が0.15%以下の場合、鋼の溶接性能に悪影響を与えない。本発明には、モリブデン元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、その添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Moの含有量は≦0.25%である。
【0074】
Nb:Nb元素は、炭化物と窒化物の形成元素であり、かつ比較的低い濃度でこの要求を満たすことができる。常温時、鋼中で、大部は炭化物、窒化物、炭窒化物の形で存在し、ごく一部はフェライト中に固溶する。Nbを添加すると、オーステナイト結晶粒の成長を阻止し、鋼材の結晶粒の粗大化温度を高めることができる。Nb元素と炭素は、非常に安定したNbCを生成し、鋼に微量のNb元素を添加することで、その析出強化の効果を利用して、マトリックスの強度を高めることができる。Nb元素は、フェライト再結晶の成長とオーステナイトの結晶粒の成長に明らかな阻害作用があり、結晶粒を微細化し、鋼の強度と靭性を高めることができる;Nb元素は、結晶粒界の移動性に影響することができ、変態挙動と炭化物の形成にも影響する。Nbは、残留オーステナイト中の炭素の含有量を上昇させ、ベイナイトの形成を阻害し、マルテンサイト核形成を促進し、分散分布したマルテンサイト組織を得ることができ、そして、残留オーステナイトの安定性を高めることができ、Nb元素を添加することにより、二相鋼の強度を高めることは、より低含有量のマルテンサイトと低C含有量の条件下で一定強度の二相鋼を得ることができ、二相鋼の強靭性を高めることができる;同時に、Nb元素の添加のもう1つの利点は、広い焼鈍温度範囲で、鋼の強度を高めることができることである。本発明には、Nb元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、その添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Nbの含有量は≦0.06%、例えば≦0.04%である。
【0075】
Ti:Tiは、微合金元素であり、γ領域を閉鎖するフェライト形成元素に属し、それは、鋼の臨界点を高めることができ、鋼中のTiとCは非常に安定したTiCを形成することができ、一般的な熱処理のオーステナイト化温度の範囲内で、TiCは極めて溶解しにくい。TiC粒子が、オーステナイト結晶粒を微細化し、オーステナイトが分解・変態すると、新しい相の結晶核形成の機会が増加し、これらはいずれも、オーステナイト変態を加速させる。また、Tiは、C、Nと、Nb、Vの炭化物と窒化物より安定であるTiC、TiNの析出相を形成することができ、オーステナイト中のCの拡散速度を著しく低下させ、オーステナイト形成速度を大幅に低下させ、形成された炭化物と窒化物はマトリックス中で沈殿し、オーステナイトの結晶粒界にピン止めし、オーステナイト結晶粒の成長を阻害する。冷却過程では、析出したTiCは、沈殿強化作用を有する;焼戻し過程では、Tiは、α相中のCの拡散を緩和し、Fe、Mnなどの炭化物の析出と成長を緩和し、焼戻し安定性を増加し、TiCを析出することによって二次硬化作用を果たすことができる。Tiの微合金化により鋼の高温強度を高めることができる。鋼に微量のTiを添加すると、一方、炭素当量含有量を減少させると同時に鋼の強度、溶接性能を高めることができ、他方、酸素、窒素、硫黄などの不純物を固定し、鋼の溶接可能性を改善することができる;次、そのミクロ粒子の作用、例えばTiNの高温下での未溶解性により、熱影響領域の結晶粒の粗大化を阻止し、熱影響領域の靭性を高め、それにより、鋼の溶接性能を改善することができる。いくつかの実施形態では、Tiの含有量は≦0.065%、例えば≦0.04%である。いくつかの実施形態では、Tiを添加する場合、その添加量は0.006~0.016%の範囲にあっても良い。
【0076】
微合金元素V:Vは、フェライトの安定化元素であり、かつ強炭化物形成元素であり、強い結晶粒微細化作用を有し、鋼の組織を緻密にすることができる。鋼にVを添加すると、鋼の強度、可塑性、靭性が同時に改善される。バナジウムは、構造鋼の高温強度を高めることもできる。バナジウムは、焼入れ性を高めることができない。鋼に微量の微量合金元素Vを添加すると、鋼が炭素当量が低い場合、その炭化物/窒化物の粒子(サイズが5nm未満)の分散析出及びVの固溶により、結晶粒を微細化し、鋼の強度、靭性(特に低温靭性)を大幅に向上し、鋼に良好な溶接可能性などの使用性能を持たせることができる。鋼に微量のVを添加すると、一方、炭素当量含有量を減少させると同時に鋼の強度、溶接性能を高めることができ、他方、酸素、窒素、硫黄などの不純物を固定し、鋼の溶接可能性を改善することができる;次、そのミクロ粒子の作用、例えばV(CN)の高温下での未溶解性により、熱影響領域の結晶粒の粗大化を阻止し、熱影響領域の靭性を高め、それにより、鋼の溶接性能を改善することができる。本発明には、微量合金元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、その添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Vの含有量は≦0.055%、例えば≦0.035%である。
【0077】
鋼に微量の微量合金元素Nb、V、Tiを添加すると、鋼が炭素当量が低い場合、それらの炭化物/窒化物の粒子(サイズが5nm未満)の分散析出及びNb、V、Tiの固溶により、結晶粒を微細化し、鋼の強度、靭性(特に低温靭性)を大幅に向上し、鋼に良好な溶接可能性と使用性能を持たせることができる。Nb、V、Tiは、炭化物と窒化物の形成元素であり、これらの元素は、比較的低い濃度でこのような要求を満たすことができる;Nb、V、Tiは、強炭化物形成元素であり、常温時、鋼中で、大部は炭化物、窒化物、炭窒化物の形で存在し、ごく一部はフェライト中に固溶する。Q&P鋼にとって、これらの微合金化元素を添加することで、フェライトマトリックスを結晶粒の微細化と沈殿により強化することができる。フェライトの形成は、残留オーステナイトの炭素の富化をもたらし、オーステナイトのベイナイトへの変態を遅延させるとともに、微細に分散した炭化物と窒化物はベイナイトの核形成を抑制し、ベイナイトの形成動力も遅延させる。Nb、V、Tiを加えることで、オーステナイト結晶粒の成長を阻止し、鋼の粗大化温度を高めることができる;これは、それらの炭化物と窒化物が分散した小粒子が、オーステナイト結晶粒界を固定し、オーステナイト結晶粒界の移動を阻害し、オーステナイト再結晶温度を高め、未再結晶領域を拡大することができ、すなわちオーステナイト結晶粒の成長を阻止することができるためである。
【0078】
本発明は、急速熱処理方法(急速加熱、短時間保温及び急冷過程を含む)により、圧延硬帯鋼の熱処理過程における変形組織の回復、再結晶及び変態過程を精密化制御し、最終的に微細で、均一で、分散分布した各組織構造及び強度と可塑性の良好なシナジーを得る。
【0079】
具体的な原理は、加熱過程の異なる温度段階で、異なる加熱速度を採用し、低温セグメントでは、主に変形組織の回復が発生し、比較的低い加熱速度を採用してエネルギー消費を下げることができる;高温セグメントでは、主に異なる相組織の再結晶と結晶粒成長が発生し、比較的高い加熱速度を用いて組織の高温区間での滞留時間を短縮しなければ、晶粒の微細化を確保できない。加熱過程における加熱速度を制御することにより、加熱過程における変形組織の回復及びフェライト再結晶過程を抑制し、再結晶過程とオーステナイト変態過程をオーバラップさせ、再結晶粒とオーステナイト結晶粒の核形成点を増加させ、最終的に、結晶粒を微細化する。短時間保温と急冷により、均熱過程における結晶粒の成長時間を短縮し、結晶粒組織の微細と均一的な分布を確保する。
【0080】
中国特許CN107794357B及び米国特許US2019/0153558A1に開示された熱処理プロセスにおいて、加熱プロセスは、段階別に処理されている:まず、1~10℃/sの加熱速度で300~500℃に加熱し、その後100~500℃/sの加熱速度で単相オーステナイト領域850~950℃まで加熱し、5sを超えない保温後に、水焼入れによって室温まで冷却する。この処理方法には、鋼板を、単相オーステナイトの高温域に加熱しなければならず、これは、設備の耐高温要求を高め、製造難度を増加し、かつ水冷の冷却方式を採用するので、冷却速度は極めて高く、結晶粒組織の高温区間での成長時間を大幅に減少することができるが、最終製品中の合金元素分布の不均一をもたらし、製品の組織性能の不均一と不安定を招くことも避けられない;なお、水焼入れ冷却速度が高すぎると、鋼板の板型不良や表面酸化などの一連の問題を引き起こすこともある。
【0081】
熱処理プロセス全体(急速加熱(段階別に加熱速度を制御する)、短時間均熱、急冷プロセスを含む)を総合的に制御することによって、精密制御された最適な結晶粒サイズ、合金元素と各相組織の均一分布を得ることができ、最終的に最適な強度と靭性のシナジーを有する製品を得ることができる。
【0082】
本発明の急速熱処理方法により得られたQ&P鋼の主要相組織は、マルテンサイト(体積分率で75~90%を占める)と残留オーステナイト(体積分率で10~25%を占める)であり、同時に極めて少量のフェライト(体積分率で3~10%を占める)を含有し、そのため、厳密的に、その相組織は多相組織であり、そのマトリックス組織の分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmであり、マルテンサイト強化相結晶粒の周囲は均一に分布するフェライト相に囲まれ、マルテンサイト強化相結晶粒はシート状組織構造を主とする。
【0083】
本発明に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼の製造方法、以下のステップを含む:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
巻取り温度550~680℃;
3)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~85%で、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
4)急速熱処理
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼又は鋼板を、770~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~500℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;
b)均熱
オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度770~845℃で均熱し、均熱時間は10~60sである;
c)冷却
帯鋼または鋼板の均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、700~770℃(例えば720~770℃)まで徐冷し、その後、50~200℃/s(例えば50~150℃/s)の冷却速度で230~280℃まで急冷し、この温度区間で2~10s保温する;
d)焼戻し
保温終了後、帯鋼または鋼板を、10~30℃/sの加熱速度で300~470℃に加熱し、焼戻し処理を行い、焼戻し時間10~60s
e)焼戻し終了後、帯鋼または鋼板を室温まで冷却し、冷却速度30~100℃/sである。
【0084】
前記の低炭素低合金Q&P鋼の製造方法において、好ましくは、ステップ2)では、前記熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3。好ましくは、ステップ2)では、前記巻取り温度は、580~650℃である。好ましくは、ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。好ましくは、ステップ4)では、前記急速熱処理の全過程時間は、71~186sである。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱する;二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、30~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱する;二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱の最終温度は、790~845℃である。好ましくは、ステップ4)では、前記の帯鋼または鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである。好ましくは、ステップ4)に記載の均熱過程では、帯鋼または鋼板を、前記オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで加熱した後、温度を保持して均熱を行う。好ましくは、ステップ4)に記載の均熱過程では、均熱時間帯には、帯鋼または鋼板を、小幅昇温または小幅降温を行い、昇温後の温度は845℃を超えず、降温後の温度は770℃を下回らない。好ましくは、前記の均熱時間は、10~40sである。
【0085】
本発明に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の急速熱処理、溶融亜鉛めっき製造方法は、以下のステップを含む:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3、その後、550~680℃まで冷却し、巻取る;
3)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~80%で、冷間圧延後、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
4)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼または鋼板を、室温から770~845℃のオーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで急速加熱し、前記の急速加熱は、一段式または二段式を採用する;
一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;
二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する;
b)均熱
オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度770~845℃で均熱し、均熱時間は10~60sである;
c)冷却
帯鋼または鋼板の均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、720~770℃まで徐冷する;その後、50~200℃/s(例えば50~150℃/s)の冷却速度で230~280℃まで急冷し、この温度区間で2~10s(例えば、2~8s)保温する;
d)分配
保温終了後、帯鋼または鋼板を、10~30℃/sの加熱速度で460~470℃に加熱し、分配処理を行い、分配時間10~60s;
e)溶融亜鉛めっき
分配終了後、帯鋼または鋼板を亜鉛ポットに浸漬して、溶融亜鉛めっきを行う;
f)帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;あるいは、帯鋼または鋼板をの溶融亜鉛めっき後、10~300℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は5~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0086】
当該低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の急速熱処理、溶融亜鉛めっき製造方法において、好ましくは、前記急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、43~186sである。好ましくは、ステップ2)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である。好ましくは、ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、30~300℃/sの加熱速度で室温から550~625℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~625℃から770~845℃まで加熱する。好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱の最終温度は、790~845℃である。好ましくは、ステップ4)では、前記急冷段階の冷却速度は、50~150℃/sである。好ましくは、ステップ4)の均熱過程では、帯鋼または鋼板を、前記オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで加熱した後、温度を保持して均熱を行う。好ましくは、ステップ4)の均熱過程では、均熱時間帯には、帯鋼または鋼板を、小幅昇温または小幅降温を行い、昇温後の温度は845℃を超えず、降温後の温度は770℃を下回らない。好ましくは、前記の均熱時間は、10~40sである。好ましくは、ステップ4)では、前記の帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は5~20sである;合金化処理後、30~200℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0087】
本発明に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼及低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の製造方法において:
1、加熱速度の制御
連続加熱過程の再結晶動力学は、加熱速度に影響される関係式によって定量的に記述することができ、連続加熱過程におけるフェライト再結晶体積分率と温度Tの関数関係式は:
【0088】
【0089】
であり、ただし、X(t)は、フェライト再結晶体積分率である;nは、Avrami指数であり、変態機構と関連し、再結晶核形成率の減衰周期に依存して、一般的に、1~4の範囲内で値をとる;Tは、熱処理温度である;Tstarは、再結晶開始温度である;βは、加熱速度である;b(T)は、以下の式により得られる:
【0090】
【0091】
以上の式及び関連実験データから、加熱速度の増加に伴い、再結晶開始温度(Tstar)及び終了温度(Tfin)が、どちらも上昇する;加熱速度が50℃/s以上の場合、オーステナイト変態と再結晶過程がオーバラップし、再結晶温度が、二相領域温度まで上昇し、加熱速度が速いほど、フェライト再結晶温度が高くなることを知られる。
【0092】
従来の低速加熱条件下では、変形マトリックスは、すべて回復、再結晶、結晶粒成長が発生し、その後、フェライトのオーステナイトへの変態が発生し、しかも変態核形成は、主に、成長したフェライト粒界にあり、核形成速度は、比較的に低い。そのため、最終に得られた結晶粒組織は、比較的に粗大である。
【0093】
急速加熱条件下では、変形マトリックスは、十分に回復していないまま再結晶し始め、再結晶がまだ完成していないか、結晶粒の成長が始まっていないうちに、フェライトのオーステナイトへの変態が発生し始め、再結晶が完成したばかりの頃は結晶粒が微細で、粒界面積が大きいため、核形成速度が著しく向上し、結晶粒が明らかに微細化した。特に、フェライト再結晶とオーステナイト変態過程がオーバラップした後、フェライト結晶内に大量の転位などの結晶欠陥が残っているため、オーステナイトに大量の核形成点を提供し、オーステナイトには、爆発的核形成を呈するため、オーステナイト結晶粒はさらに微細化した。同時に残された高密度転位線欠陥も、炭素原子の急速拡散の通路となり、各オーステナイト結晶粒が急速に生成して成長できるようにしたため、オーステナイトの体積分率が増大した。
【0094】
急速加熱中に、組織の変化、合金元素と各相成分の分布に精密に制御することにより、後続の均熱過程におけるオーステナイト組織の成長、及び各合金成分の分布と急冷過程におけるオーステナイトのマルテンサイト相への変態に良好な基礎を築く。最終的には、微細化された結晶粒、合理的な元素と各相分布を有する最終製品組織を得ることができる。急速加熱と微細化結晶粒の効果、製造コスト及び製造可能性などの要素を総合的に考慮し、本発明は、一段式の急速加熱時の加熱速度を50~500℃/sとし、二段式の急速加熱時の加熱速度を15~500℃/sとする。
【0095】
異なる温度区間の範囲内では、急速加熱が材料の回復、再結晶、結晶粒成長などの組織変化過程に与える影響が異なり、最適な組織制御を得るために、異なる加熱温度区間の好ましい加熱速度も異なる:20℃から500~625℃まで、加熱速度が回復過程に与える影響は最も大きく、加熱速度を5~300℃/s、さらに好ましくは50~300℃/sに制御する;加熱温度は500~625℃からオーステナイト化温度770~845℃まで、加熱速度が再結晶の核形成速度と変態の核形成速度と結晶粒成長過程に与える影響は最も大きく、加熱速度を50~300℃/s、さらに好ましくは80~300℃/sに制御する。
【0096】
2、均熱速度の制御
均熱温度の選択は、加熱過程の各温度段階の材料組織の変化過程の制御と結合する必要があり、同時に、後続の急冷過程の組織の変化と制御を考慮する必要があり、それによって、最終的に好ましい組織構造と分布を得ることができる。
【0097】
均熱温度は、Cの含有量に依存し、従来の技術では、一般的に均熱温度をAC3より30~50℃高い温度に設定し、本発明には、急速加熱技術を利用して、フェライト中に大量の転位を形成し、オーステナイト変態に核形成エネルギーを提供するので、温度をAC1からAC3の間に加熱するだけで十分である。本発明のQ&P鋼中のC含有量は0.16~0.23%であり、AC1とAC3は、それぞれ、730℃と870℃程度である。Q&P鋼には、未溶解の微細で均一に分布した炭化物が大量に存在し、均熱処理過程において、オーステナイト結晶粒の成長に機械的阻害の役割を果たすことができ、合金鋼の結晶粒度の微細化に有利であるが、均熱温度が高すぎると、未溶解の炭化物の数を大量に減少させ、この阻害作用を弱め、結晶粒の成長傾向を強め、さらに鋼の強度を低下させる。未溶解炭化物の数が大きすぎると、凝集を引き起こす可能もあり、局所の化学成分の分布の不均一をもたらし、この凝集箇所の炭素含有量が高すぎると、局所過熱を引き起こす可能性がある。したがって、理想的には、合金鋼中に、少量の微細な粒子状の未溶解炭化物が均一に分布しているべきであり、これにより、オーステナイト結晶粒の異常な成長を防止することができ、かつそれに応じてマトリックス中の各合金元素の含有量を高め、合金鋼の強度と靭性などの機械的性能を改善する目的を達成することができる。
【0098】
均熱温度の選択は、さらに、冷却後に、より高い体積分率を得られ、均一で微細なマルテンサイト組織を得ることができるように、微細で均一なオーステナイト結晶粒を得ることを目的としなければならない。 高すぎる均熱温度は、焼入れ中にワークピースが割れやすく、焼入れ後に、得られるマルテンサイト組織も粗大化し、鋼の機械的性能を低下させる;また、残留オーステナイトの数を減らし、ワークピースの硬度と耐摩耗性を低下させる。低すぎる均熱温度は、オーステナイトに溶解した炭素及び合金元素の含有量を不足させ、オーステナイト中の合金元素濃度分布を不均一にし、鋼の焼入れ性を大幅に低下させ、合金鋼の機械的性能に不利な影響を与える。亜共析鋼の均熱温度は、Ac3+30~50℃であるはず。超高強度鋼では、炭化物形成元素が存在すると、炭化物の変態を阻害するため、均熱温度を適切に高めることができる。以上の要素を総合して、本発明は均熱温度として770~845℃を選び、合理的な焼入れプロセス及び理想的な組織性能を得ることを期待する。
【0099】
3、均熱時間の制御
本発明が、急速加熱を採用し、二相領域の材料に大量の転位を含有し、オーステナイト形成に大量の核形成点を提供し、かつ、炭素原子に急速拡散通路を提供するため、オーステナイトが極めて速く形成することができ、均熱時間が短いほど炭素原子拡散距離が短くなり、オーステナイト内の炭素濃度勾配が大きくなり、最後に、残った残留オーステナイトの炭素含有量が多くなる;しかしながら、均熱時間が短すぎると、鋼中の合金元素の分布が不均一になり、オーステナイト化が不十分になる;均熱時間が長すぎると、オーステナイト結晶粒が粗大になりやすい。均熱時間の長さも、鋼中の炭素及び合金元素の含有量にも依存し、鋼中の炭素及び合金元素の含有量が高くなると、鋼の熱伝導性が低下するだけでなく、合金元素が炭素元素よりも拡散速度が遅くなるため、合金元素は、鋼の組織変態を明らかに遅らせることができ、当該場合には、適切に保温時間を延長しなければならない。そのため、均熱時間の制御は、均熱温度、急冷及び急速加熱過程を厳格に結合し、総合的に考慮して確定しなければ、最終的に理想的な組織と元素分布を得ることができない。以上より、本発明には、均熱保温時間を10~60sとする。
【0100】
4、急冷速度の制御
マルテンサイトを得るためには、急冷時の材料の冷却速度は、臨界冷却速度より大きくなければ、マルテンサイト組織を得ることができず、臨界冷却速度は、主に材料成分に依存し、本発明では、Si含有量は1.1~2.0%であり、Mn含有量は1.6~3.0%であり、これらの含有量は比較的に高いので、SiとMnは、Q&P鋼の焼入れ性を大幅に強化し、臨界冷却速度を低下させた。冷却速度はまた、最終的に合理的な各相組織分布及び合金元素分布を得るために、加熱過程と均熱過程の組織変化及び合金拡散分布結果を総合的に考慮する必要がある。冷却速度が低すぎると、マルテンサイト組織を得ることができず、強度が低下し、機械的性能が要求を満たすことができない;一方、冷却速度が大きすぎると、大きな焼入応力(すなわち組織応力と熱応力)が発生し、板形状に厳重な不良を引き起こし、特に、冷却不均一の場合には、板形状の不良が特に厳重で、さらに試料の厳重な変形と亀裂を招きやすい。したがって、本発明は、急冷速度を50~200℃/sに設定する。
【0101】
5、焼戻し温度の制御
通常、合金鋼が150℃以下で焼戻しを行う場合、温度が低すぎるため、合金元素は拡散できず、炭素元素だけがまだ一定の拡散能力を持っているため、低温焼戻し鋼は、比較的に高い硬度を備えているが、脆性が大きすぎ、靭性が悪く、ワークピースとする使用性能の要求を満たすことができない。200℃以上の温度で焼戻しを行うと、マルテンサイトに含まれる炭素元素と他の合金元素が大量に析出し始め、残留応力を消失するまで減少させ、焼戻し鋼の硬度も焼戻し温度の上昇に伴って徐々に低下するが、靭性は増強される。一方、焼戻し温度が500℃前後に達すると、マルテンサイト分解が終了し、セメンタイトが徐々に凝集して成長し、α相には回復過程が発生し始め、温度を上昇し続け、α相には再結晶を開始し、多角形フェライトを形成し、強度は著しく低下する。焼戻し温度が高いほど、α相とセメンタイト相が粗大になり、焼戻し鋼の硬度も低くなり、本発明の最終目的は、より良い強度と可塑性を同時に得ることであるため、本発明は焼戻し温度を300~470℃に設定する。
【0102】
6、焼戻し時間の制御
鋼の焼戻し過程において、焼戻し時間は、三つの方面の役割を果たす:(1)組織の変態が十分に行われることを保証する;(2)内部応力の低減または除去;(3)焼戻し温度に合わせてワークピースに必要な性能を得る。本発明の鋼では、急速加熱技術を用いて、オーステナイト結晶粒を微細化することにより、一次急冷後に生成される残留オーステナイトとマルテンサイトとの間隔が短縮され、炭素原子の過飽和マルテンサイトから、残留オーステナイトへの拡散分配の効率が向上するため、焼戻し過程の所要時間も大幅に減少する。しかし、焼戻し時間が短すぎると、内部応力を解消しにくく、ワークピースの脆硬性を低下させることができない。総合的に考えて、本発明は焼戻し時間を10~60sに設定する。
【0103】
7、分配温度の制御
通常、比較に高い合金含有量のQ&P鋼が150℃以下で炭素分配(焼戻し)を行う場合、温度が低すぎるため、合金元素は拡散できず、炭素元素だけがまだ一定の拡散能力を持っているため、低温分配鋼は、比較的に高い硬度を備えているが、脆性が大きすぎ、靭性が悪く、ワークピースとする使用性能の要求を満たすことができない。200℃以上の温度で分配を行うと、マルテンサイトに含まれる炭素元素と他の合金元素が大量に析出し始め、残留応力を消失するまで減少させ、分配鋼の硬度も焼戻し温度の上昇に伴って徐々に低下する。分配温度が500℃前後に達すると、マルテンサイト分解が終了し、セメンタイトが徐々に凝集して成長し、α相には回復過程が発生し始め、温度を上昇し続け、α相には再結晶を開始し、多角形フェライトを形成する。分配温度が高いほど、α相とセメンタイト相が粗大になり、分配鋼の硬度も低くなり、本発明の分配プロセスの最も主要な目的は、既に得られたマルテンサイトにおける炭素を、まだマルテンサイト変態を行っていない残留オーステナイトに拡散させ、マルテンサイトにおける炭素を低減させてその可塑性を高めると同時に、拡散した炭素で残留オーステナイトにおける炭素濃度を向上させ、残留オーステナイトの安定性を増加させ、それにより最終製品に同時に良好な強度と可塑性を、即ち強度と可塑性の良好なシナジーをもたらすことであるため、溶融亜鉛めっき温度も合わせて考慮すると、分配温度を460~470℃に設定する。
【0104】
8、分配時間の制御
鋼の分配過程において、分配時間は、三つの方面の役割を果たす:(1)組織の変態が十分に行われることを保証する;(2)内部応力の低減または除去;(3)分配温度に合わせてワークピースに必要な性能を得る。本発明の鋼では、急速加熱技術を用いて、オーステナイト結晶粒を微細化することにより、一次急冷後に生成される残留オーステナイトとマルテンサイトとの間隔が短縮され、炭素原子の過飽和マルテンサイトから、残留オーステナイトへの拡散分配の効率が向上するため、分配過程の所要時間も大幅に減少する。しかし、分配時間が短すぎると、内部応力を解消しにくく、ワークピースの脆硬性を低下させることができない。総合的に考えて、本発明は分配時間を10~60sに設定する。
【0105】
10、溶融亜鉛めっきと合金化制御
高強度の溶融亜鉛めっき製品にとって、急速熱処理プロセスは、帯鋼の高温炉内での滞留時間を減少させたため、熱処理過程において、合金元素の高強度帯鋼表面での集中量が著しく減少し、高強度溶融亜鉛めっき製品のめっき可能性を改善し、表面めっき未着欠陥を減少させ、耐食性を向上させ、歩留まりを高めることができる。
【0106】
本発明の方法により、同じレベル鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、良好な軟相と硬相組織構成及び強度と靭性の良好なシナジーを得ることができる;同時に、従来の連続溶融亜鉛めっきユニットに対して急速加熱と急冷プロセスの改造を行い、それに急速熱処理プロセスを実現させることにより、従来の連続溶融亜鉛めっきユニットの加熱セグメント及び均熱セグメントの長さを大幅に短縮することができ(従来の連続焼鈍炉より少なくとも3分の1短縮できる)、従来の連続溶融亜鉛めっきユニットの生産効率を高め、生産コスト及びエネルギー消費を低減し、連続焼鈍炉の炉ローラー数、特に高温炉セグメントの炉ローラー数を減少し、これにより、エネルギー消費量および設備投資を低減できる。
【0107】
同時に、急速熱処理、溶融亜鉛めっきプロセス技術の新型連続焼鈍溶融亜鉛めっきユニットを構築することにより、ユニットの簡素化、フレキシブルな材料の移行、高い制御能力などの目的を実現することができる;材料にとって、帯鋼の結晶粒を微細化でき、材料強度をさらに高め、合金コスト及び熱処理前工程の製造難度を下げ、材料の成形や溶接などのユーザーの使用性能を高めることができる。
【0108】
従来の連続焼鈍ニットに対して急速加熱と急冷プロセスの改造を行い、それに急速熱処理プロセスを実現させることにより、従来の連続焼鈍炉の加熱セグメント及び均熱セグメントの長さを大幅に短縮することができ(従来の連続焼鈍炉より少なくとも3分の1短縮できる)、従来の連続焼鈍ユニットの生産効率を高め、生産コスト及びエネルギー消費を低減し、連続焼鈍炉の炉ローラー数、特に高温炉セグメントの炉ローラー数を減少し、これにより、帯鋼の表面品質制御能力を高め、高表面品質の帯鋼製品を得ることができる。同時に、急速熱処理プロセス技術の新型連続焼鈍ユニットを構築することにより、ユニットの簡素化、フレキシブルな材料の移行、高い制御能力などの目的を実現することができる;材料にとって、帯鋼の結晶粒を微細化でき、材料の強度と可塑性をさらに高め、合金コスト及び熱処理前工程の製造難度を下げ、材料の成形や溶接などのユーザーの使用性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0109】
従来技術に対して、本発明が、以下の利点を有する:
(1)本発明は、急速速熱処理により、熱処理過程における変形組織の回復及びフェライト再結晶過程を抑制し、再結晶過程とオーステナイト変態過程をオーバラップさせ、再結晶粒とオーステナイト結晶粒の核形成点を増加し、結晶粒の成長時間を短縮し、結晶粒を微細化し、得られたQ&P鋼の金属組織は、マルテンサイト75~90%、残留オーステナイト10~25%、フェライト3~10%を有する多相組織であり、得られた溶融亜鉛めっきQ&P鋼の金属組織は、微細化されたマルテンサイトとフェライトとオーステナイトとの三相組織であり、好ましくは、体積分率で、マルテンサイトは45~75%を占め、残留オーステナイトは10~25%を占め、フェライトは15~30%を占める。得られたQ&P鋼及び溶融亜鉛めっきQ&P鋼のマトリックス組織分布は均一であり、明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、且つ、結晶粒のサイズは、1~3μmまで微細化し、マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在し、マルテンサイト強化相の結晶粒は、シート状組織構造を主とする;組織中のオーステナイトは、塊状、ストリップ状、顆粒状などの多種の形態を有し、良い熱安定性を有し、-50℃オーステナイト変態率は8%より低く、-190℃オーステナイト変態率は、30%より低く、且つ、異なる歪み条件下で、TRIP効果を持続的に発生させることができるため、製品の機械的性能及びユーザーの使用性能が優れる。
【0110】
(2)従来の熱処理方式で得られるQ&P鋼を比較すると、本発明で得られるQ&P鋼の合金成分は大幅に低下し、結晶粒のサイズは、40~80%減少し、性能が優れる;その降伏強度は668~1112MPa、引張強度は1181~1350MPa、伸び率は18.9~24.2%、強伸度積は24.1~28.97GPa%。従来の連続焼鈍溶融亜鉛めっき方式で得られる溶融亜鉛めっきQ&P鋼と比較して、前工程の製造条件が変わらない前提で、本発明の急速熱処理後に得られたQ&P鋼の平均結晶粒のサイズは1-3μm、平均結晶粒のサイズは10~40%減少し、良好な細結晶強化の効果を得ることができる;その降伏強度≧720MPa、引張強度≧1180MPa、伸び率≧19%、強伸度積≧23.0GPa%;好ましくは、前記溶融亜鉛めっきQ&P鋼の降伏強度は721~956MPa、引張強度は1184~1352MPa、伸び率は19~22.5%、強伸度積は23.6~28.9GPa%である。
【0111】
(3)本発明に記載の引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼の急速熱処理プロセス及び低炭素低合金溶融亜鉛めっきQ&P鋼の急速熱処理プロセスは、熱処理の全過程時間がそれぞれに、71~186sと43~186sに短縮でき、熱処理プロセス全体の時間を大幅に低減でき(伝統的な連続焼鈍プロセス時間は通常5~8min)、それによって、生産効率を高め、エネルギー消費を減少し、生産コストを低減した。
【0112】
(4)従来のQ&P鋼及びその熱処理プロセスと比較して、本発明の急速熱処理方法の加熱セグメントと均熱セグメント時間は、60~80%短縮し、全体の熱処理工程時間は、71~186sに短縮する;従来の溶融亜鉛めっきQ&P鋼及びその熱処理プロセスと比較して、本発明の急速熱処理方法は、連続溶融亜鉛めっき焼鈍炉の加熱セグメントと均熱セグメントの長さと時間(従来の連続溶融亜鉛めっき焼鈍炉と比較して、加熱セグメントと均熱セグメントの長さは、60~80%も短縮する)及び全体の熱処理工程時間を短縮する。したがって、本発明には、省エネ・排出削減・消費削減で、炉設備の一回性投資を著しく低減し、生産運営コストと設備のメンテナンスコストを著しく低減する;なお、急速熱処理により同じ強度レベルの製品を生産すると、その合金含有量を下げ、熱処理及び前工程の生産コストを下げ、熱処理前の各工程の製造難度を下げることができる。
【0113】
(5)従来のプロセス生産のQ&P鋼、溶融亜鉛めっきQ&P鋼及びその熱処理プロセスと比較して、急速熱処理プロセス技術を採用することにより、加熱過程と均熱過程の時間を減少し、炉の長さを短縮し、炉ローラーの数を減少することができ、炉内に表面欠陥が発生する確率が減少し、製品表面に欠陥が発生する確率が減少し、そして、製品の表面品質は著しく向上する;なお、製品の結晶粒の微細化と材料合金含有量の減少により、本発明の技術を用いて得られたQ&P鋼の穴拡げ特性と曲げ特性などの成形性能、溶接性能などの使用性能も向上した。
【0114】
高強度の溶融亜鉛めっき製品にとって、急速熱処理プロセスは、帯鋼の高温炉内での滞留時間を減少させたため、熱処理過程において、合金元素の高強度帯鋼表面での集中量が著しく減少し、高強度溶融亜鉛めっき製品のめっき可能性を改善し、表面めっき未着欠陥を減少させ、耐食性を向上させ、歩留まりを高めることができる。
【0115】
本発明で得られた引張強度≧1180MPaの低炭素低合金Q&P鋼は、次世代軽量化自動車、列車、船舶、航空機などの交通輸送手段の発展及び対応する工業及び先進製造業の健全な発展に重要な価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】
図1は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Kから実施例7に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Rから実施例8に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Pから実施例22に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Sから実施例23に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Kから実施例7に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図10】
図10は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Rから実施例8に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図11】
図11は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Pから実施例22に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図12】
図12は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Sから実施例23に従って生産されたQ&P鋼の微細組織画像である。
【
図13】
図13は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産された溶融純亜鉛めっきQ&P鋼(GI)の微細組織画像である。
【
図14】
図14は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産された溶融純亜鉛めっきQ&P鋼(GI)の微細組織画像である。
【
図15】
図15は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Iから実施例17に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
【
図16】
図16は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Dから実施例22に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
【
図17】
図17は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Iから実施例34に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
【
図18】
図18は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産された溶融純亜鉛めっきQ&P鋼(GI)の微細組織画像である。
【
図19】
図19は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産された溶融純亜鉛めっきQ&P鋼(GI)の微細組織画像である。
【
図20】
図20は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Iから実施例17に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
【
図21】
図21は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Dから実施例22に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
【
図22】
図22は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Iから実施例34に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下、実施例と図面を結合して本発明をさらに説明し、本実施例は、本発明の技術案を前提に実施し、詳細な実施形態と具体的な操作過程を提供したが、本発明の保護範囲は下記の実施例に限定されない。
【0118】
実施例において、降伏強度、引張強度と伸び率は『GB/T 228.1-2010金属材料 引張試験 第1部:室温試験方法』に基づいて行い、P7号試料を用いて、横方向に沿って試験を行った。
【0119】
実施例一
本実施例の試験鋼の成分は表1を参照し、本実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表2と表3を参照し、表4と表5は、本実施例の試験鋼成分から実施例及び従来のプロセスで製造された鋼の主な性能である。
【0120】
表1~表5から、本発明の方法により、同じレベル鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法で得られたQ&P鋼の降伏強度は、668~1002MPa、引張強度は、1181~1296MPa、伸び率は、18.9~24.2%、強伸度積は、24.1~28.6GPa%である。
【0121】
図1は典型成分のA鋼から実施例1で得られた組織画像であり、
図2は、典型成分のA鋼から従来のプロセス例1で得られた組織画像である。画像を見ると、異なる熱処理方式で処理された組織には、非常に大きな違いがある。本発明実施例で処理されたA鋼の組織(
図1)は、主にマルテンサイト マトリックス上に分散分布する微細で均一なオーステナイト組織及び少量の炭化物からなり、オーステナイト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも、非常に微細でマトリックス中に均一に分布し、これは材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。一方、従来のプロセスで処理されたA鋼組織(
図2)には、分布が相対的に不均一で、黒色マルテンサイトとオーステナイト組織が粒界に分布する少量のバルクの白色フェライト組織が存在する。従来のプロセスで処理された組織の特徴は:結晶粒が相対的に粗大で、かつ一定の組織分布の不均一な現象が存在する。
【0122】
図3は典型成分のK鋼から実施例7で得られた組織画像であり、
図4は、典型成分のR鋼から実施例8で得られた組織画像である。
図5は典型成分のP鋼から実施例22で得られた組織画像であり、
図6は、典型成分のS鋼から実施例23で得られた組織画像である。実施例7、8、22、23は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである。画像から分かるように、本発明の方法を採用すると、短時間の急速焼鈍処理を経て、より均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる。従って、本発明の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
実施例二
本発明の試験鋼の成分は表6を参照し、本発明の実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表7と表8を参照し、表9と表10は、本発明の試験鋼成分から実施例及び従来のプロセスで製造された鋼の主な性能である。
【0132】
表6~表9から、本発明の方法により、同じレベル鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、材料組織の構成及び強度と靭性の良いシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法で得られたQ&P鋼の降伏強度は、754~1112MPa、引張強度は、1281~1350MPa、伸び率は、19~22.2%、強伸度積は、24.8~28.97GPa%である。
【0133】
図7は典型成分のA鋼から実施例1で得られた組織画像であり、
図8は、典型成分のA鋼から従来のプロセス例1で得られた組織画像である。画像を見ると、異なる熱処理方式で処理された組織には、非常に大きな違いがある。本発明実施例で処理され得られた鋼の組織は、主にフェライト マトリックス上に分散分布する微細で均一なマルテンサイト組織及び少量の炭化物からなり、マルテンサイト結晶粒組織及び少量の炭化物は、どちらも非常に微細でフェライト マトリックス中に均一に分布し、これは材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。伝統的なプロセスで処理された鋼組織は、分布が相対的に不均一で、マルテンサイト結晶粒は相対的に粗大で、マルテンサイト結晶粒界には、少量の残留オーステナイトと炭化物組織が分布し、分布が不均一である。従来のプロセスで処理された組織の特徴は:結晶粒が相対的に粗大で、かつ一定の組織分布の不均一な現象が存在する。
【0134】
図9は典型成分のK鋼から実施例7で得られた組織画像であり、
図10は、典型成分のR鋼から実施例8で得られた組織画像である。
図11は典型成分のP鋼から実施例22で得られた組織画像であり、
図12は、典型成分のS鋼から実施例23で得られた組織画像である。実施例7、8、22、23は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである。画像から分かるように、本発明の方法を採用すると、短時間の急速焼鈍処理を経て、より均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる。従って、本発明の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
実施例一と実施例二の結果によって、急速加熱と急冷技術を用いて、伝統的な連続焼鈍ユニットを改造し、それに急速熱処理プロセスを実現させることができ、従来の連続焼鈍炉の加熱及び均熱セグメントの長さを大幅に短縮することができ、従来の連続焼鈍ユニットの生産効率を高め、生産コスト及びエネルギー消費を低減し、連続焼鈍炉の炉ローラー数を減少し、帯鋼の表面品質の制御能力を高め、高表面品質の帯鋼製品を獲得することができる;同時に、急速熱処理プロセス技術を採用した新型連続焼鈍ユニットを構築することにより、連続熱処理ユニットは簡素化され、材料の移行がフレキシブルで、しかも制御能力が高いなどの利点がある;材料にとって、帯鋼の結晶粒を微細化でき、材料強度をさらに高め、合金コスト及び熱処理前工程の製造コストと製造難度を下げ、材料の溶接性能などのユーザーの使用性能を高めることができる。
【0144】
以上より、本発明は、急速熱処理プロセスを採用することにより、冷間圧延帯鋼の連続焼鈍プロセス技術の進歩に極めて大きな促進作用を生じ、冷間圧延帯鋼は、室温から最後のオーステナイト化までの過程を完成することは、数十秒、十数秒、ひいては数秒以内に完成することが期待でき、連続焼鈍炉の加熱セグメントの長さを大幅に短縮し、連続焼鈍ユニットの速度と生産効率を向上させ、連続焼鈍ユニットの炉内ローラーの数を著しく減少させ、ユニット速度が、180メートル/分程度の急速熱処理ラインの場合、その高温炉セグメント内のローラーの数は10本を超えず、帯鋼表面の品質を明らかに向上させることができる。同時に、極めて短時間で完成した再結晶とオーステナイト化過程の急速熱処理プロセス方法も、よりフレキシブルで柔らかい高強度鋼組織設計方法を提供し、合金成分や圧延プロセスなどの前工程条件を変更しないまま材料組織を改善し、材料性能を向上させる。
【0145】
Q&P鋼を代表とする先進高強度鋼は、広い将来性があり、また、急速熱処理技術はまた巨大な開発応用価値があり、両者の結合は、Q&P鋼の開発と生産により大きな空間を提供する。
【0146】
実施例三
本実施例の試験鋼の成分は表11を参照し、本発明実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表12(一段式加熱)と表13(二段式加熱)を参照する;表14と表15は、本発明の試験鋼成分から表12と表13の実施例及び従来のプロセスで製造されたGIとGA溶融亜鉛めっきQP鋼の主な性能である。
【0147】
表11~表15から、本発明の方法により、同じレベル鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法で得られたQ&P鋼の降伏強度は、721~805MPa、引張強度は、1184~1297MPa、伸び率は、19.1~22.4%、強伸度積は、23.6~28GPa%である。
【0148】
図13と
図14は、典型成分のA鋼が、実施例1及び従来のプロセス例1を経た組織画像である。画像から見ると、溶融亜鉛めっき後の組織には非常に大きな違いがある。本発明の急速熱処理後のA鋼の組織(
図13):マトリックス組織分布は均一であり、組織に明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmである。マルテンサイト強化相の結晶粒の周囲に均一に分布するフェライト相が存在する。一部の旧オーステナイトが成長してなるマルテンサイトの安定性が低下したため、熱処理後の組織に、少量の焼戻しマルテンサイトが出現し、残留マルテンサイト強化相は、依然としてシート状形態を主とし、フェライト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも非常に微細で、マトリックス中に均一に分布しており、これは、材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。
【0149】
従来のプロセスで処理された鋼組織(
図14)は、典型的なQ&P鋼組織図であり、ラス状マルテンサイト結晶粒は粗大で、オーステナイト及び炭化物はマルテンサイト結晶粒界に沿って分布し、多相組織の分布は均一ではない。
【0150】
図15は典型成分のI鋼から実施例17(GA)で得られた組織画像であり、
図16は、典型成分のD鋼から実施例22(GI)で得られた組織画像である。
図17は典型成分のI鋼から実施例34(GA)で得られた組織画像である。実施例17、22、34は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである;画像から分かるように、本発明の方法を採用すると、非常に均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる。従って、本発明の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、そして材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
実施例四
本実施例の試験鋼の成分は表16を参照し、本実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表17(一段式加熱)と表18(二段式加熱)を参照する;表19と表20は、本発明の試験鋼成分から表17と表18の実施例及び従来のプロセスで製造された溶融純亜鉛めっきGI製品の主な性能であり、表19は、本発明の試験鋼成分から表17と表18の実施例及び従来のプロセスで製造されたGIとGA溶融亜鉛めっきQP鋼製品の主な性能である。
【0160】
表16~表20から、本発明の方法により、同じレベル鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法で得られたQ&P鋼の降伏強度は、802~956MPa、引張強度は、1280~1352MPa、伸び率は、19~22.5%、強伸度積は、25.2~28.9GPa%である。
【0161】
図18と
図19は、典型成分のA鋼が、実施例1及び従来のプロセス例1を経た組織画像である。画像から見ると、溶融亜鉛めっき後の組織には非常に大きな違いがある。本発明の急速熱処理後のA鋼の組織(
図18):マルテンサイト、オーステナイト及び少量のフェライトと炭素化物からなり、マトリックス組織分布は均一であり、組織に明らかなシート状焼戻しマルテンサイトが現れ、結晶粒径は1~3μmである。強化相結晶粒のほとんどはフェライトで囲まれている。一部の旧オーステナイトが成長してなるマルテンサイトの安定性が低下したため、熱処理後の組織に、少量の焼戻しマルテンサイトが出現し、残留の強化相は、依然として塊状形態を主とし、フェライト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも非常に微細で、マトリックス中に均一に分布しており、これは、材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。
【0162】
従来のプロセスで処理された鋼組織(
図19)は、典型的なQ&P鋼組織図であり、ラス状マルテンサイト結晶粒は粗大で、オーステナイト及び炭化物はマルテンサイト結晶粒界に沿って分布し、多相組織の分布は均一ではない。
【0163】
図20は典型成分のI鋼から実施例17(GA)で得られた組織画像であり、
図21は、典型成分のD鋼から実施例22(GI)で得られた組織画像である。
図22は典型成分のI鋼から実施例34(GA)で得られた組織画像である。実施例17、22、34は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである;画像から分かるように、本発明の方法を採用すると、非常に均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる。従って、本発明の溶融亜鉛めっきQ&P鋼の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、そして材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
本発明は、急速加熱と急冷技術を用いて、伝統的な連続焼鈍溶融めっきユニットを改造し、それに急速熱処理と溶融亜鉛めっきプロセスを実現させることができ、従来の連続焼鈍溶融亜鉛めっき炉の加熱セグメント及び均熱セグメントの長さを大幅に短縮することができ、従来の連続焼鈍溶融亜鉛めっきユニットの生産効率を高め、生産コスト及びエネルギー消費を低減し、連続焼鈍溶融亜鉛めっき炉の炉ローラー数を減少し、ローラーの跡、ピット、擦傷などの表面欠陥を顕著に減少し、帯鋼の表面品質の制御能力を高め、高表面品質の帯鋼製品を獲得することができる;同時に、急速熱処理と溶融亜鉛めっきプロセス技術を採用した新型連続焼鈍ユニットを構築することにより、溶融亜鉛めっきユニットは簡素化され、材料の移行がフレキシブルで、しかも制御能力が高いなどの利点がある;材料にとって、帯鋼の結晶粒を微細化でき、材料強度をさらに高め、合金コスト及び熱処理前工程の製造難度を下げ、材料の成形や溶接などのユーザーの使用性能を高めることができる。
【0173】
以上より、本発明は、急速熱処理と溶融亜鉛めっきプロセスを採用することにより、冷間圧延帯鋼の連続焼鈍溶融亜鉛めっきプロセス技術の進歩に極めて大きな促進作用を生じ、冷間圧延帯鋼は、室温から最後のオーステナイト化までの過程を完成することは、十数秒、ひいては数秒以内に完成することが期待でき、連続焼鈍溶融亜鉛めっき炉の加熱セグメントの長さを大幅に短縮し、連続焼鈍溶融亜鉛めっきユニットの速度と生産効率を向上させ、連続焼鈍溶融亜鉛めっきユニットの炉内ローラーの数を著しく減少させ、ユニット速度が、180メートル/分程度の急速熱処理・溶融亜鉛めっきラインの場合、その高温炉セグメント内のローラーの数は10本を超えず、帯鋼表面の品質を明らかに向上させることができる。同時に、極めて短時間で完成した再結晶とオーステナイト化過程の急速熱処理と溶融亜鉛めっきプロセス方法も、よりフレキシブルで柔らかい高強度鋼組織設計方法を提供し、合金成分や圧延プロセスなどの前工程条件を変更しないまま材料組織を改善し、材料性能を向上させる。
【0174】
溶融亜鉛めっきQ&P鋼を代表とする先進高強度鋼は、広い将来性があり、また、急速熱処理と溶融亜鉛めっき技術はまた巨大な開発応用価値があり、両者の結合は、溶融亜鉛めっきQ&P鋼の開発と生産により大きな空間を提供する。
【国際調査報告】