(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】計測保存リアルタイムノイズ除去機能を備えるAFMイメージング
(51)【国際特許分類】
G01Q 60/34 20100101AFI20240314BHJP
G01Q 30/04 20100101ALI20240314BHJP
【FI】
G01Q60/34
G01Q30/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561264
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022023440
(87)【国際公開番号】W WO2022216677
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512038610
【氏名又は名称】ブルカー ナノ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BRUKER NANO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォノベロフ、ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン、ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ハンド、ショーン
(57)【要約】
AFMデータ取得中にノイズ除去アルゴリズムを用いて原子間力顕微鏡(AFM)をリアルタイムに動作する方法である。全変動及び非局所平均ノイズ除去が好まれる。本明細書で説明するように、ノイズを説明するためにイメージ取得後の処理を必要としないセンサノイズが最小限に抑えられたリアルタイムイメージが生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡(AFM)に係る方法であって、
前記方法は、
前記AFMのプローブをサンプルの表面に合わせるステップと、
AFM動作モードで前記プローブを振動させるステップと、
ノイズイメージを生成するためにシステムノイズを測定するステップと、
前記プローブと前記サンプルとの間に相対的な走査運動を提供するステップと、
前記提供するステップに応じて、前記プローブの偏向を測定するとともに、選択された走査線数に対するサンプルイメージを生成するために、前記選択された走査線数に対するAFM動作モードに応じてプローブ-サンプル分離を制御するステップと、
前記システムノイズを用いて、リアルタイムに前記サンプルイメージのノイズを除去するステップと、
新しいサンプルイメージを生成するために、前記走査運動の次のラインに対する前記偏向を測定するステップと、
前記システムノイズを用いて、リアルタイムに前記新しいサンプルイメージのノイズを除去するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記選択された数は少なくとも2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された数は、少なくとも5であり、
ノイズ除去された前記サンプルイメージのラインは、前記選択された数の中間にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノイズを除去するステップは、非局所平均(NLM)ノイズ除去アルゴリズムを使用するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ノイズを除去するステップは、全変動(TV)ノイズ除去アルゴリズムを使用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記走査運動はラスター走査である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ノイズを除去するステップの後、前記ノイズを除去するステップを含む全ての前記ステップを、前記サンプルの関心領域がイメージ化されるまで繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記モードは、ピークフォースタッピング(PFT)モード、接触モード、及びタッピングモードのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ノイズ除去された前記イメージに低域通過カーネル及び逆畳み込みカーネルのうちの1つを適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
原子間力顕微鏡(AFM)であって、
前記AFMのプローブとサンプルとの間の相対的な走査運動を提供するスキャナと、
AFM動作中にプローブ-サンプル相互作用に応じて前記プローブの偏向を測定する検出器と、
AFM動作中に選択された走査線数のイメージをリアルタイムにノイズ除去するためにノイズ除去アルゴリズムを実行するコントローラと、
を含み、
前記偏向は、サンプル特性を示しているとともに、イメージとして保存される、原子間力顕微鏡。
【請求項11】
前記選択された数は少なくとも2つの走査線である、請求項10に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項12】
前記選択された数は、少なくとも5個の走査線であり、
ノイズ除去された前記イメージは、前記少なくとも5個の走査線の中間である、請求項11に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項13】
前記ノイズ除去アルゴリズムは、全変動(TV)ノイズ除去及び非局所平均(NLM)ノイズ除去のうちの1つである、請求項10に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項14】
前記コントローラは、トレース及び再トレースAFMイメージング動作の間のオフセット影響を最小化するために、低域通過カーネル及び逆畳み込みカーネルのうちの1つをノイズ除去された前記イメージに適用する、請求項10に記載の原子間力顕微鏡。
【請求項15】
前記AFMは、ピークフォースタッピング(PFT)モード、接触モード、及びタッピングモードのうちの1つで動作する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
好ましい実施形態は、原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscopy)、特に、AFM計測データ(metrology data)を保存しながら、AFMセンサノイズ(sensor noise)を除去するためのリアルタイム方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子間力顕微鏡(AFM)のような走査型プローブ顕微鏡は、チップを有し、チップにより表面を原子単位まで特性化するのに適した力でサンプルの表面と相互作用するようにプローブを採用する装置である。一般に、プローブは、サンプルの表面に導入され、チップとサンプルとの間に相対的な走査移動を提供することで、サンプルの特定領域に対して表面特性データが取得され、サンプルの対応するマップを生成することができる。
【0003】
典型的なAFMシステムについては、
図1に概略的に示されている。カンチレバー(cantilever)15を有するプローブ14を含むプローブ装置12を使用するAFM10である。スキャナ24は、プローブ-サンプルの相互作用が測定される間に、プローブ14とサンプル22との間で相対運動を生成する。このような方式で、サンプルのイメージ又は他の測定値を取得することができる。スキャナ24は、通常3つの直交方向(XYZ)で動きを生成する1つ以上のアクチュエータから構成される。多くの場合、スキャナ24は、例えば、圧電(piezoelectric)チューブアクチュエータのように3軸の全てにおいて、サンプル又はプローブを移動させる1つ以上のアクチュエータを含む単一の一体型ユニットである。また、スキャナは、複数の分離したアクチュエータのアセンブリであってもよい。一部のAFMは、例えば、サンプルを移動するXYスキャナ及びプローブを移動する分離されたZアクチュエータなど、スキャナを複数の構成要素に分離する。従って、装置は、例えば、Hansmaらの特許文献1、Elingsらの特許文献2、及びElingsらの特許文献3で説明されているように、サンプルの地形又は一部の他の表面特性を測定する間にプローブとサンプルとの間の相対的な動きを生成することができる。
【0004】
一般的な構成において、プローブ14は、振動(oscilating)アクチュエータ又はカンチレバー15の共振周波数、又は、その近くでプローブ14を駆動するために使用されるドライブ16に結合される場合が多い。代替配列は、たわみ(deflection)、ねじり(torsion)、又は、カンチレバー15の他の動きを測定する。プローブ14は、チップ17が統合された微細加工されたカンチレバーである場合が多い。
【0005】
一般に、アクチュエータ16(又は、代替的にスキャナ24)がプローブ14を振動させるために、SPMコントローラ20の制御下で信号ソース18からの電子信号が印加される。プローブとサンプルの相互作用は、通常、コントローラ20によるフィードバックにより制御される。特に、アクチュエータ16は、スキャナ24及びプローブ14に結合されてもよいが、自己駆動されたカンチレバー/プローブの一部として、プローブ14のカンチレバー15と一体に形成されてもよい。
【0006】
前述したように、プローブ14の振動の1つ以上の特性変化を検出することによりサンプル特性が監視されることで、選択されたプローブ14がサンプル22に接触して振動する場合が多い。これに関連して、偏向検出装置は、典型的にビームをプローブ14の後側に向かうように利用され、その後ビームは検出器26に向かって反射される。ビームが検出器26を横切って移動することにより、ブロック28で適切な信号が処理され、例えば、RMS偏向を決定し、これをコントローラ20に送信し、コントローラは、プローブ14の振動変化を決定するために信号を処理する。一般に、コントローラ20は、プローブ14の振動の設定点(setpoint)の特性を保持するために、チップ及びサンプルの間の相対的に一定の相互作用(又は、レバー15の偏向)を保持するために制御信号を生成する。より具体的に、コントローラ20は、設定点とチップ-サンプルの相互作用によるプローブ偏向に対応する信号を回路30と比較して取得されたエラー信号を条件化する高電圧増幅器(HighVoltage Amplifier)34及びPIゲインコントロール(PI Gain Control)ブロック32を含むことができる。例えば、コントローラ20は、チップとサンプルとの間の一般的に一定の力を保障するために、定点値ASで振動振幅を保持するために使用されることが多い。代替的に、設定点の位相又は周波数が使用されてもよい。
【0007】
ワークステーション40は、また、コントローラ20内及び/又は分離したコントローラ又は連結されたシステム、又は独立型(stand-alone)コントローラ内に提供され、コントローラから得られたデータを受信して点選択、カーブフィッティング、及び距離決定を動作するために走査中に取得されたデータを操作する。
【0008】
AFMは、接触モード及び振動モードを含む様々なモードで動作するように設計されてもよい。動作は、表面を横切って走査されるときプローブ組立体のカンチレバーの偏向に応じて、サンプル又はプローブ組立体をサンプルの表面に対して垂直に上下移動させることで達成される。走査は、通常、サンプルの表面に少なくとも平行な「x-y」平面で発生し、垂直移動はx-y平面に垂直な「z」方向に発生する。多くのサンプルは、平面から外れた粗さ、曲率、及び傾きを有するため、「一般に平行」であるという用語を使用するにする。このように、この垂直移動に関連するデータを保存し、例えば、表面地形の測定されたサンプル特性に対応するサンプル表面のイメージを構成するために使用されてもよい。TappingMode(登録商標)AFM(TappingMode(登録商標)は、本出願人の商標)として知られたAFM動作のモードにおいて、チップは、プローブに関連するカンチレバーの共振周波数又はその付近で振動する。フィードバックループは、「トラッキングフォース(tracking force)」、即ち、チップ/サンプルの相互作用により起因する力を最小化し、その振動の振幅を一定に維持するように試みる。
【0009】
代替的なフィードバック装置は、位相又は振動周波数を一定に保持する。接触モードにおいて、このようなフィードバック信号がサンプルを特性化するためにデータで収集、格納、使用される。「SPM」及び特定類型のSPMに対する略語は、ここで顕微鏡装置又は関連技術、例えば「原子間力顕微鏡を参照するために使用され得ることを注目する。特許文献4、特許文献5、及び特許文献6で議論されたPeak Force Tapping(登録商標)(PFT)と呼ばれるユビキタスTappingMode(登録商標)の改善で、フィードバックは本明細書で明らかに参考として含まれており、各振動周期で測定された力(一時的プローブ-サンプルの相互作用力と呼ばれる)を基盤とする。
【0010】
AFMは、動作モードに関係なく、圧電スキャナ、光レバー偏向検出器、及びフォトリソグラフィ技術を用いて製造された極めて小さいカンチレバーを使用することにより、空気、液体、又は真空の様々な絶縁及び伝導性表面の原子レベルまで解像能を得ることができる。AFMは、解像能と汎用性のために、半導体製造から生物学的研究に至るまで様々な分野において重要な測定装置である。
【0011】
これに関連して、AFMは、半導体製造のような高精密製造工程を含む自動化されたアプリケーションに使用されてもよい。AFMは、ナノスケールの表面特徴(例えば、地形)に対する高解像能測定を提供できるため、AFMは、半導体空間で有用であることが証明されている。しかし、一般に、AFMデータは、計測データを収集するために使用される上記の光学ビームバウンス配列のようなセンサシステムを含み、AFMシステムノイズにより妨害された。
【0012】
非局所平均(Non-local means)(NLM)(https://en.wikipedia.org/wiki/Non-local_means)及び全変動(Total variation)(TV)(https://en.wikipedia.org/wiki/Total_variation_denoising)のような他のノイズ除去技術は、センサノイズを解決するためにAFMイメージデータに適用された。この場合、イメージ取得後に手動イメージノイズ除去(manual image denoising)が実行される。イメージデータの後処理の限界は、センサノイズが最小化したイメージを最終的に表示するための追加時間、データ取得中に走査パラメータを調整できないという点が含まれる。手動イメージ後処理は、高速FAB(例えば、半導体製造)環境で要求されるデータ取得及び処理を自動化することができない。
【0013】
その結果、自動化されたAFMを含むAFM分野には、センサノイズのようなシステムノイズを解決して補償するためのソリューションが必要であった。改善されたデータ取得及び表示時間が必要であり、イメージ取得後に処理を最小化することが好ましい。このようなシステムによりAFMは、高解像能の様々なサンプル表面に対するきれいなリアルタイムイメージを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国再発行特許発明第34489号明細書
【特許文献2】米国特許第5266801号明細書
【特許文献3】米国特許第5412980号明細書
【特許文献4】米国特許第8739309号明細書
【特許文献5】米国特許第9322842号明細書
【特許文献6】米国特許第9588136号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
イメージのノイズを除去する現在AFMシステムの短所を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
好ましい実施形態は、AFMイメージ取得時リアルタイムにAFMイメージのノイズを除去するためのAFM及び対応する方法を提供することにより、事後イメージング処理を使用することによって、イメージのノイズを除去する現在AFMシステムの短所を克服する。リアルタイム処理は、AFMイメージの取得中に短い時間内でデータ処理を実行し、ほぼ即刻的な出力を提供する。基準ノイズイメージ(baseline noise image)は、AFM動作/イメージ(operation/image)取得前に自動取得した後、初期ノイズ測定を用いて指定された数のラインがイメージ化されてノイズが除去される。走査線ブロックが選択され(例えば、5個のライン)、リアルタイムにノイズが除去されてラインの少なくとも1つ(中間ライン)の「クリーン」バージョンを生成する。一連のラインブロックそれぞれの中間ラインが最終イメージを形成する。ノイズ除去は、以前に説明したNLM及びTVアルゴリズムのように知られたアルゴリズムを用いて行ってもよい。このようなステップは、サンプル又はサンプルの関心領域がイメージ化されるまで繰り返す。そのため、方法及びシステムは計測を保存しながら、センサ/システムノイズが実質的に除去されるAFMサンプルイメージを生成する。
【0017】
好ましい実施形態である原子間力顕微鏡(AFM)方法によれば、この方法は、AFMのプローブをサンプル表面に合わせる(engaging)ステップと、AFM動作モードでプローブを振動させる(oscillating)ステップとを含む。次に、この方法は、システムノイズを測定してノイズイメージを生成するステップを含む。その次に、プローブとサンプルとの間の相対的な走査運動(scanning motion)が提供され、提供ステップによるプローブの偏向(deflection)が測定される。選択された走査線数に対するAFM動作モードに応じてプローブ-サンプル分離が制御され、選択された走査線数に対するサンプルイメージを生成する。その次に、この方法は、システムノイズを用いてサンプルイメージのノイズを除去するステップを含む。走査運動の次のラインに対する偏向は、新しいサンプルイメージを生成するために測定され、新しいサンプルイメージは、システムノイズを用いてリアルタイムにノイズが除去される。
【0018】
この好ましい実施形態の追加的な側面において、選択された数は少なくとも2つであり、さらに好ましくは、選択された数は少なくとも5個であり、ノイズ除去されたサンプルイメージは選択された数の中間にある。
【0019】
この実施形態の更なる側面において、ノイズを除去するステップは、非局所平均ノイズ除去アルゴリズム、全変動ノイズ除去アルゴリズム、又は、他のイメージノイズ除去アルゴリズムを使用するステップを含む。
【0020】
この実施形態の他の側面によれば、走査運動(scanning motion)はラスター走査であり、方法は、ノイズを除去するステップの後、ノイズを除去するステップを含む全てのステップを、サンプルの関心領域がイメージ化されるまで繰り返すステップを含む。
【0021】
この実施形態の更なる側面によれば、方法は、任意選択で低域通過カーネル及び逆畳み込みカーネルのうちの1つをノイズが除去されたイメージに適用するステップを含む。
また他の好ましい実施形態によれば、原子間力顕微鏡(AFM)は、AFMのプローブとサンプルとの間の相対走査運動を提供するスキャナ、AFM動作中のプローブ-サンプル相互作用に応じてプローブの偏向を測定する検出器(偏向はサンプル特性を示し、イメージで保存される)、及びAFM動作中に選択された走査線数のイメージをリアルタイムにノイズ除去するためにノイズ除去アルゴリズムを実行するコントローラを含む。
【0022】
この実施形態の他の側面において、選択された個数は、少なくとも2つの走査線であり、さらに好ましくは、選択された個数は少なくとも5個の走査線であり、ノイズ除去されたイメージは、少なくとも5個の走査線の中間にある。
【0023】
この実施形態の追加側面によれば、コントローラは、トレース及び再トレースAFMイメージング動作の間のオフセット効果を最小化するために、低域通過カーネル及び逆畳み込みカーネルのうちの1つをノイズ除去されたイメージに適用する。
【0024】
本発明の以上の又は他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付する図面から当業者にとって明白になるのであろう。しかし、詳細な説明及び具体的な例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、制限されない例示の方法として与えられる点を理解しなければならない。本発明の思想を逸脱しないで本発明の範囲内で多くの変更及び修正が行われることができ、本発明はそのような全ての修正を含む。
【0025】
本発明の好ましい実施形態が添付する図に示されており、図の全体にかけて同じ図面符号は類似の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来技術の原子間力顕微鏡AFMの概略図である。
【
図2】AFMイメージデータのリアルタイムノイズ除去プロセスを単純化したブロックダイアグラムである。
【
図3】AFMデータを取得してリアルタイムノイズ除去を行うためのAFMシステムのブロック図である。
【
図4】非局所平均又は全変動フィルタリングを使用する、好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法を示すフローチャートである。
【
図5A】全変動(TV)フィルタリングを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法とトレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するための逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する一連のAFMイメージである。
【
図5B】全変動(TV)フィルタリングを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法とトレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するための逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する一連のAFMイメージである。
【
図5C】全変動(TV)フィルタリングを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法とトレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するための逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する一連のAFMイメージである。
【
図5D】全変動(TV)フィルタリングを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法とトレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するための逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する一連のAFMイメージである。
【
図5E】全変動(TV)フィルタリングを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法とトレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するための逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する一連のAFMイメージである。
【
図6A】トレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するために、非局所平均(NLM)だけでなく逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法を使用する一連のAFMイメージである。
【
図6B】トレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するために、非局所平均(NLM)だけでなく逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法を使用する一連のAFMイメージである。
【
図6C】トレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するために、非局所平均(NLM)だけでなく逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法を使用する一連のAFMイメージである。
【
図6D】トレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するために、非局所平均(NLM)だけでなく逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法を使用する一連のAFMイメージである。
【
図6E】トレース-再トレースラインの間のオフセットを除去するために、非局所平均(NLM)だけでなく逆畳み込み又は低域通過カーネルを使用する好ましい実施形態のリアルタイムノイズ除去方法を使用する一連のAFMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好ましい実施形態は、高解像能AFMデータ取得のリアルタイム改善を可能とした、原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscopy)に係るノイズ除去アクセス方式に関する。本明細書で説明した方法は、高速データ処理アーキテクチャーで知られたノイズ除去技術を用いてAFMサンプルイメージング中に常に存在するセンサノイズを説明すると共に計測を保存する。
【0028】
先に、
図2を参照すると、好ましい実施形態のプロセス100の簡略図が例示されている。左側から右側に移動しながらイメージ化する関心特徴のあるサンプル102がステップ1として表示されている。これは、解像能を低下させる傾向のあるセンサノイズ(sensor noise)104のような異常現象を含む生のAFMイメージとして表示される。ステップ2において、プローブがサンプルに関連してAFM走査を開始する。関心セクション(例えば、1000nm×1000nm走査領域)上の移動ブロック/バッファに対応する選択された個数の走査線106が走査され、既知のアルゴリズムを用いてリアルタイムにイメージのノイズ除去を行うためにデータが処理ブロックに送信される。イメージバッファは2個のラインまで少なくしてもよいが、5個のラインが好まれる。5個のラインは、ユーザのイメージングニーズに適する十分な処理量を保持しながら十分なライン密度で優れたノイズ除去品質を提供する。このような2種類の好ましいアルゴリズム108は、全変動(TotalVariation)(TV)フィルタリングと非局所平均(Non-local Means)(NLM)を含む。非局所平均ノイズ除去は、周期的又はテクスチャされた背景、粗い表面などのような自己類似性を含む表面を走査する際に最適に動作する。全変動ノイズ除去は、高さが急激に変化する平坦な領域が含まれた表面を走査する場合に最適に動作する。全変動ノイズ除去は、さらに低い信号対ノイズ比を処理できるが、いわゆる階段アーティファクトが発生し得る。
【0029】
AFMセンサノイズの振幅及びスペクトルコンテンツは、関心走査領域の中心で測定され、全てのイメージブロック/バッファ及び対応するノイズ除去アルゴリズムと共に使用される。このノイズは、周期的、ランダム、又は両方が結合したものであってもよい。オリジナルイメージから除去されたノイズプロファイルが、
図2に示すイメージ110に表示されている。ノイズ除去後、全体サンプルセクションがセンサノイズの測定された量が除去された計測が保存されたAFMイメージ112を生成するために走査されるため、5個のラインのローリングバッファの中間が表示されたイメージに追加される。ノイズ除去パラメータ(TV用正規化パラメータラムダ、及びNLM用フィルタリングパラメータh)が選択されて起動し、この場合、測定されたノイズ振幅をノイズ除去前後のイメージブロック間の差異振幅に一致させることで、全ての5ラインデータブロックに対して自動に調整される。このような方式において、AFMイメージ102から除去されたノイズ量は、測定されたセンサノイズ量と同一である。サンプルイメージ112は、生のAFMイメージデータ102と比較してさらに「クリーン」であり、さらに高い解像能で関心特徴を識別することができる。
【0030】
自動調整の一部として、イメージバッファの大きさは全変動又は非局所平均処理の前に特異値(outliers)を除去するために再びスケーリングできる。特異値は、指定された標準偏差(シグマ)以上に平均値から外れたデータ点として定義される。ノイズ除去プロセスが終了すれば特異値が復元される。6-シグマは好まれる正確度の閾値である。しかし、1-シグマ以上の閾値を使用することができる。
【0031】
任意選択で、選択された大きさ(例えば、3×1)の逆畳み込みカーネル(問題となるピクセルに隣接ピクセルの加重平均によるフィルタリング、ピクセルのフィルタリングされた値が隣接ピクセルにどのように依存するかを示す)が全変動アルゴリズムと共に使用でき、一方、3×1の大きさの低域通過カーネルが明白なトレース-再トレースオフセットを効率よく除去するために、非局所平均アルゴリズムと共に使用されることができる。トレース-再トレースオフセットは、高い走査速度とパラシュートのような走査アーティファクトにより発生する。しかし、より大きいカーネルも使用できる。
【0032】
2/3の係数でスケーリングされたセンサノイズ振幅は、残留RMSエラーを除去する全変動に対する良いターゲットである。しかし、1よりも小さいか大きい他のスケーリング係数(scaling factors)を有効に使用することができる。
【0033】
NLMノイズ除去に関して、5×5サイズの研究ウィンドウはAFM空間で有用な結果を提供する。しかし、イメージ解像能に応じて他のNLM研究ウィンドウのサイズを使用することができる。
【0034】
好ましい実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置150(例えば、AFM)は
図3に示されている。この実施形態において、チップ(tip)154を有するプローブ152は、圧電管スキャナ(piezoelectric tube scanner)156により支持されるプローブホルダ(図示せず)により保持される。スキャナ156は、AFMイメージングの間にサンプル158に対してチップ154を位置決めするために、閉ループ制御システムのサンプル特性に反応する「Z」又は垂直スキャナである。チューブスキャナ156は、AFMの動作中にサンプルの表面に対してプローブチップ162をラスター化するために使用されるXYスキャナ(XYscanner)160、好ましくは、圧電チューブに結合される。例えば、チップ154とサンプル158とを合わせるAFMイメージ取得準備中に、チップ154とサンプル158との間のZ方向に大きい移動を提供するため、機械的Zステージ(mechanical Z-stage)162が使用される。サンプル158は、サンプル158の関心領域にプローブ152を配置するために概略的なXY運動を主に提供するXYステージ164に装着される。XYステージコントローラ(XYstage controller)166は、ステージ164を制御して該当の関心領域にプローブ/サンプルを位置させる。しかし、ステージ164は、選択された走査速度でチップ154とサンプル158との間の相対的な走査運動(例えば、ラスター)を提供するように構成されてもよい。コントローラ166は、また、関心領域にイメージ走査を位置決めするためにAFMコントローラ176に反応する。コントローラ166,174は、コンピュータ180によって実現される。
【0035】
動作時には、チップ154がサンプル158と結合した後、前述したように、AFMモード(例えば、PFTモード)でXYスキャナ160を用いてサンプルの高速走査が開始される。チップ154がサンプル158の表面と相互作用することでプローブ152は偏向し、この偏向は、光学ビームバウンス偏向検出装置(optical beam-bounce deflection detection apparatus)168によって測定される。装置168は、カンチレバー155の後面から偏向信号の高速処理のために、例えば、AFMコントローラ174のDSP176に偏向信号を送信する光検出器172に向かってビーム「L」を指向させるレーザ170を含む。
【0036】
AFMコントローラ174は、AFM動作モードに応じて制御信号を連続的に決定し、サンプル158に対してプローブ152のZ位置を保持するためにその信号をピエゾチューブ(piezo tube)156に送信し、より具体的に、フィードバック設定点(feedback setpoint)でプローブの偏向を保持する。コントローラ174は、また、TV又はNLMアルゴリズムを用いてセンサノイズのリアルタイム処理を実行する。このAFM制御については、
図4を参照して詳しく説明する。
【0037】
図4を参照すると、AFMイメージデータのリアルタイムノイズ除去方法200が図示されている。ブロック202において、AFMチップがサンプル表面と合わせられる。生のシステムノイズ(raw system noise)(すなわち、センサノイズ)の開始測定はブロック204で行われ、出力ノイズ(output noise)206として保存される。ノイズ測定走査である場合、走査領域が極めて小さく(例えば、1nm×1nm)、走査線数が小さい(例えば、10)。このノイズは、一般的に時間の経過と共に一貫して安定的であるため、この測定は最終的に取得したAFMイメージのノイズを除去するために有用である。その後、ブロック208において、AFMは、例えば、関心サンプル領域の最初の3個のラインを走査し、AFM計測データを収集する。方法100は、ブロック210においてノイズを除去し(例えば、TV又はNLMノイズ除去アルゴリズムを用いて)、AFM走査のノイズが除去された「ライン1」212がキャプチャされ、最終イメージの一部として表示される。
【0038】
次に、AFMラスター走査はブロック214にて継続され、サンプル領域の4番目のラインをイメージ化する。ブロック216において、DSPに送信されたAFMイメージデータは、ライン1~4を基にイメージをノイズ除去するために選択されたノイズ除去アルゴリズムを用いて処理される。この動作により、走査のノイズが除去されたライン2(218)が生成される。イメージブロック/バッファが5個のライン(好ましい)として選択される場合(ブロック/バッファの大きさは2ラインから5ライン以上であってもよい)、方法100は、ブロック220に進んでAFMデータ取得走査のK番目(例えば、5番目)のラインを走査する。ブロック222において、AFMデータ/イメージは、ラインK-4からKを基にノイズ除去される。好ましい実施形態において、ノイズ除去されたK-2ライン(5ラインのうち中間ライン)がキャプチャされ、表示のために出力224される。ノイズ除去されたデータは、表示されたイメージに追加されてセンサノイズが修正される。より具体的に、ノイズ除去パラメータは、測定されたノイズ振幅(ブロック206)をノイズ除去前後のイメージブロック間の差異振幅と一致させることで、全ての5-ラインデータブロックに対して自動調整される。その結果、AFMイメージから除去されたノイズ量は、測定されたセンサノイズ量とほとんど同一である。
【0039】
その次に、方法100は、イメージ化するサンプルセクション(即ち、関心領域)の全てのライン(N、イメージ化するライン数)がブロック226で走査されたか否かを尋ね、そうでない場合には(K<N)、変数Kがブロック228で1だけ増加し、該当ラインはAFMによって走査されてブロック220に制御される。データは、以前に説明したように、ノイズが除去されてイメージの新しいノイズが除去された中間ラインが出力224される。一方、走査がほとんど終了すれば(K=N)、方法100は、ブロック230におけるラインN-3からNを基にイメージデータからノイズを除去し、ノイズ除去されたラインN-1(232)を生成する。ノイズが除去されたラインNを取得するために、方法200は、選択されたアルゴリズム(TV又はNLM)を用いて、ラインN-2からNを基にAFMイメージデータからノイズを除去する。ノイズ除去されたラインN236を使用すれば、計測(表面の粗さ、サンプル形状の両側深度(例えば、半空間のライン/トレンチなど)を保存しながら、ノイズが除去されたサンプルイメージが生成され、ブロック238で方法200が終了する。任意選択で、逆畳み込み(TVノイズ除去)又は低域通過(NLMノイズ除去)カーネル240(例えば、3×1)が、また、トレース-再トレースオフセット(一般的なAFM映像異常)を効率よく除去するために採用されてもよい。対応する例示的イメージを
図5及び
図6に図示し、それについては下で説明する。
【0040】
図5A~
図5Eを参照すると、全変動(TotalVariation)(TV)ノイズ除去を活用し、上記で説明した方法に基づいて生成された一連のイメージが示されている。NIQEは、自然イメージ品質評価器(Naturalness Image Quality Evaluator)(非参考イメージ品質スコア(no-reference image quality score))である。値が小さいほどイメージ品質は良好である。AFMイメージは512×512ピクセルであり、関心領域は10μm×10μmである。
図5Aは、ノイズ除去なしに収集されたAFMイメージである。システムセンサノイズによって「ゴースト(ghosting)」として現れるアーティファクトは、表面の特徴の識別を損ない、イメージの解像能が最適ではなくなる可能性がある。
図5Bは、TVノイズ除去を用いて、以前に説明したように、センサノイズのリアルタイムノイズ除去により改善された表面特徴解像能を有することで、さらに滑らかできれいなイメージを示す。センサノイズは、
図5Cに示されている。
【0041】
図5Dにおいて、トレース方向(例えば、左側から右側)と再トレース方向(例えば、右側から左側)で収集されたデータ間のトレース-再トレースデータオフセットを除去するために、任意選択の逆畳み込みカーネルが使用されている。カーネルは、ピクセル単位でAFMデータを調整するように動作する。例えば、TV最適化に加重値が0.25、0.5、0.25の3×1カーネルを追加すると、現在の走査線と現在の走査線前後のラインとの間の全てのトレース-再トレースオフセットの平均を効果的に平均化することができる。
図5Dは、カーネルを用いたリアルタイムノイズ除去結果イメージであり、
図5Eは、残留センサノイズと除去されたトレース-再トレースエラーを示す。
【0042】
図6Aは、ノイズ除去なしに取得されたAFMイメージである。
図5Aと同様に、イメージには、システムセンサノイズによるアーティファクトが含まれているため、イメージの表面特徴が最適の解像能よりも低い。この場合、NLMノイズ除去が使用される。
図6Bは、センサノイズのリアルタイムNLMノイズ除去による表面特徴の向上された解像能を示す。センサノイズは
図6Cに示す。
【0043】
図6Dでは、トレース方向(例えば、左側から右側)と再トレース方向(例えば、右側から左側)で収集されたデータ間のトレース-再トレースデータオフセットを除去するために、任意選択の低域通過カーネルが使用されている。カーネルは、ピクセル単位でAFMデータを調整するように動作する。例えば、NLM処理後に追加された0.25、0.5、0.25の加重値を有する3×1カーネルは、現在の走査線と現在の走査線前後のラインとの間の全てのトレース-再トレースオフセットの平均を効果的に平均化することができる。
図6Dは、カーネルを用いたリアルタイムノイズ除去の結果イメージであり、
図6Eは、残留センサノイズと除去されたトレース-再トレースエラーを示す。
【0044】
TV及びNLMの他にも、様々な他のノイズ除去技術を適用して最終イメージの計測に影響を与えることなく、各イメージブロック/バッファを処理することができる。このようなノイズ除去技術には、中央値フィルタ、フーリエドメインノイズ除去(Fourier domain denoising)、ウェーブレットドメインノイズ除去(Wavelet domain denoising)などが含まれる。
【0045】
好ましい実施形態はイメージの後処理が必要ではなく、センサノイズが実質的にない高解像能AFMイメージを提供する方法及び装置に関する。ノイズ除去技術は、完全に自動化されてイメージが取得される間にリアルタイムに実行され、イメージが取得される間はノイズが表示されない。AFMセンサノイズが抑制され、追加的なイメージの歪みは発生しない。
【0046】
以上、本発明を実施するために発明者らが考えた最良の形態を上記に開示したが、上記の発明の実施はこれらに限定されるものではない。本発明の思想の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の特徴の様々な追加、修正、及び再配置を行うことができることは明らかである。
【国際調査報告】