(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】無細胞製造系におけるアントシアニンの生物生産
(51)【国際特許分類】
C12P 19/44 20060101AFI20240314BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240314BHJP
C12N 11/08 20200101ALN20240314BHJP
【FI】
C12P19/44 ZNA
C12N15/54
C12N11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561296
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022023497
(87)【国際公開番号】W WO2022216720
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523228060
【氏名又は名称】デビュー バイオテクノロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブリトン, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ブリドー, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】キム, ニール
【テーマコード(参考)】
4B033
4B064
【Fターム(参考)】
4B033NA25
4B033NB34
4B033ND02
4B033ND09
4B033ND14
4B033NE03
4B033NG09
4B064AF41
4B064CA21
4B064CA34
4B064CC01
4B064CD05
4B064CD09
4B064DA10
4B064DA16
(57)【要約】
無細胞系が、アントシアニンをアントシアニジンから生成するために提供される。アントシアニジンが、グリコシルトランスフェラーゼ酵素とUDP-糖とを含む反応混合物に添加される。その反応混合物は、水溶液であり得、共溶媒(例えば、有機共溶媒、例えば、DMF)を含み得る。無細胞生合成プラットフォームによって、アントシアニジンから出発するアントシアニジン(シアニジングリコシド、例えばシアニジン-3-グリコシド、シアニジン-5-グリコシドなど)の生成を可能にする無細胞方法を提供することが、本発明の目的である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアニンをアントシアニジンから生成する方法であって、前記方法が、
a)適切な溶媒を含む混合物に、
(i)式I:
【化1】
のアントシアニジンであって、該式Iにおいて、R
3、R
5、R
6、R
7、R
3’、R
4’、およびR
5’の各々は、H、OH、およびOCH
3からなる群より独立して選択され、R
3、R
5、R
6、R
7、R
3’、R
4’、およびR
5’の少なくとも1つはOHまたはCH
3であり、R
3、R
5、R
6、R
7、R
3’、R
4’、およびR
5’の少なくとも1つはOHである、アントシアニジンと、
(ii)式II:
【化2】
のグリコシル化ウリジン-5’-二リン酸であって、該式IIにおいて、Gは、五員環単糖および六員環単糖からなる群より選択されるグリコシル残基である、グリコシル化ウリジン-5’-二リン酸と、
(iii)グリコシルトランスフェラーゼ酵素と
を添加して反応混合物を形成する工程;
b)(a)からの反応混合物から上清を取り出す工程;ならびに
c)アントシアニンを単離する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記式Iのアントシアニジンが、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジンおよびペツニジンからなる群の一要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式II中のGが、グルコース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、およびラムノースからなる群の一要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式IIのグリコシル化ウリジン-5’-二リン酸が前記反応混合物中で約1mM~約30mMの濃度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が3-O-グリコシルトランスフェラーゼまたは5-O-グリコシルトランスフェラーゼを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が、3-O-グルコシド-6’’-O-ラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)、3-O-グルコシド-2’’-O-グルコトランスフェラーゼ(3GGT)、3’-O-グリコシルトランスフェラーゼ、または7-O-グリコシルトランスフェラーゼからなる群の一要素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素の配列が、配列番号1~5、または配列番号1~5に少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは少なくとも99.9%の類似性を有するアミノ酸配列のうちの一つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が固定されていない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が固定されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が連続リアクター系に収容されている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
R
3がOHであり、前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が3-O-グリコトランスフェラーゼ(3GT)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R
5がOHであり、前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が5-O-グリコトランスフェラーゼ(5GT)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記式IIのグリコシル化ウリジン-5’-二リン酸が、UDP-アラビノース、UDP-ガラクトース、UDP-グルコース、UDP-ラムノース、およびUDP-キシロースからなる群より選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
初期pHを有し、該初期pHが約4~約6である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アントシアニンをアントシアニジンから生成する方法であって、
a)無細胞容器中に、グリコシルトランスフェラーゼ酵素を提供する工程;
b)アントシアニジンとグリコシル化ウリジン二リン酸とを該無細胞容器に添加して該アントシアニンを形成する工程;および
c)該アントシアニンを該無細胞容器から取り出す工程
を含む、方法。
【請求項16】
前記アントシアニジンが、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジンおよびペツニジンからなる群の一要素である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式II中のGが、グルコース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、およびラムノースからなる群の一要素である、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式IIのグリコシル化ウリジン-5’-二リン酸が前記反応混合物中で約1mM~約30mMの濃度を有する、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が3-O-グリコシルトランスフェラーゼまたは5-O-グリコシルトランスフェラーゼである、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が、3-O-グルコシド-6’’-O-ラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)、3-O-グルコシド-2’’-O-グルコトランスフェラーゼ(3GGT)、3’-O-グリコシルトランスフェラーゼ、または7-O-グリコシルトランスフェラーゼからなる群の一要素である、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素の配列が、配列番号1~5、または配列番号1~5に少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは少なくとも99.9%の類似性を有するアミノ酸配列のうちの一つである、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が固定されていない、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が固定されている、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が連続リアクター系に収容されている、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記グリコシル化ウリジン-5’-二リン酸が、UDP-アラビノース、UDP-ガラクトース、UDP-グルコース、UDP-ラムノース、およびUDP-キシロースからなる群より選択される、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記無細胞容器が約4~約6の初期pHを有する、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
アントシアニンをアントシアニジンから生成する方法であって、前記方法が、
a)式Ia:
【化3】
のアントシアニジンまたはアントシアニンであって、該式Iaにおいて、R
3、R
5、R
6、R
7、R
3’、R
4’、およびR
5’の各々は、H、OH、OCH
3、もしくは糖からなる群より独立して選択され、R
3、R
5、R
6、R
7、R
3’、R
4’、およびR
5の少なくとも1つはOHである、アントシアニジンまたはアントシアニンと、
式II:
【化4】
のグリコシル化ウリジン-5’-二リン酸であって、該式IIにおいて、Gは、五員環単糖および六員環単糖からなる群より選択されるグリコシル残基である、グリコシル化ウリジン-5’-二リン酸と、
グリコシルトランスフェラーゼ酵素と
を添加して反応混合物を形成する工程;
b)(a)からの該反応混合物から上清を取り出す工程;ならびに
c)該アントシアニンを単離する工程
を含む、方法。
【請求項28】
前記式Iaのアントシアニジンが、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジン、グリコシル化シアニジン、グリコシル化デルフィニジン、グリコシル化マルビジン、グリコシル化ペラルゴニジン、およびグリコシル化ペオニジンからなる群の一要素である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記式Iaのアントシアニジンがグリコシル化シアニジン、グリコシル化デルフィニジン、グリコシル化マルビジン、グリコシル化ペラルゴニジン、およびグリコシル化ペオニジンから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記式Iaのアントシアニジンが、モノグリコシル化シアニジン、ジグリコシル化シアニジン、トリグリコシル化シアニジン、テトラグリコシル化シアニジンまたはペンタグリコシル化シアニジンン、モノグリコシル化デルフィニジン、ジグリコシル化デルフィニジン、トリグリコシル化デルフィニジン、テトラグリコシル化デルフィニジンまたはペンタグリコシル化デルフィニジン、モノグリコシル化マルビジン、ジグリコシル化マルビジン、トリグリコシル化マルビジン、テトラグリコシル化マルビジンまたはペンタグリコシル化マルビジン、モノグリコシル化ペラルゴニジン、ジグリコシル化ペラルゴニジン、トリグリコシル化ペラルゴニジン、テトラグリコシル化ペラルゴニジンまたはペンタグリコシル化ペラルゴニジン、およびモノグリコシル化ペオニジン、ジグリコシル化ペオニジン、トリグリコシル化ペオニジン、テトラグリコシル化ペオニジンまたはペンタグリコシル化ペオニジンから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
式II中のGが、グルコース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、およびラムノースからなる群の一要素である、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記グリコシル化ウリジン二リン酸が前記反応混合物中で約1mM~約30mMの初期濃度を有する、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が3-O-グリコシルトランスフェラーゼまたは5-O-グリコシルトランスフェラーゼである、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が、3-O-グルコシド-6’’-O-ラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)、3-O-グルコシド-2’’-O-グルコトランスフェラーゼ(3GGT)、3’-O-グリコシルトランスフェラーゼ、または7-O-グリコシルトランスフェラーゼからなる群の一要素である、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素の配列が、配列番号1~5、または配列番号1~5に少なくとも90%、少なくとも92.5%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、もしくは少なくとも99.9%の類似性を有するアミノ酸配列のうちの一つである、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記反応混合物が初期pHを有し、該初期pHが約4~約6である、請求項27~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が固定されていない、請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が固定されている、請求項27~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が連続リアクター系に収容されている、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
R
3がOHであり、前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が3-O-グリコトランスフェラーゼ(3GT)である、請求項27~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
R
5がOHであり、前記グリコシルトランスフェラーゼ酵素が5-O-グリコトランスフェラーゼ(5GT)である、請求項27~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記グリコシル化ウリジン-5’-二リン酸が、UDP-アラビノース、UDP-ガラクトース、UDP-グルコース、UDP-ラムノース、およびUDP-キシロースからなる群より選択される、請求項27~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記反応混合物が約4~約6の初期pHを有する、請求項27~42のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アントシアニジンの酵素改変によってアントシアニンを生成する方法を特徴とする。特に、本発明は、無細胞生成方法を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アントシアニン(アントシアニジンのグリコシド)は、果実および花において見られる色の変動の原因である、植物中に見出される主要な二次代謝産物である。アントシアニンの構築ブロックは、アントシアニジン、例えば、6種の主要なアントシアニジンであるシアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジンおよびペツニジンのうちの1種であり、これらはウリジン-5’-二リン酸(UDP)炭水化物依存性グリコシルトランスフェラーゼ(UGT)酵素によってグリコシル化される。型、数および位置の様々な組合せの種々のヌクレオチド活性化糖(すなわち、アラビノース、ガラクトース、グルコース、キシロース、ラムノース)の付加が、天然で見出されるアントシアニンの多様性の一因である。
【0003】
アントシアニンの産業上の使用は、それらの色の特性ならびに潜在的な健康上の利益に集中している。食物、布地、および化粧製品に関する人工色素から天然成分等価物への転換の増加に伴い、アントシアニンは人気のある種類の分子となりつつある。さらに、多年の研究は、様々なアントシアニンの抗酸化特性、抗炎症特性、抗がん特性、抗肥満特性、心臓保護特性および神経保護特性を調査することに到っている。
【0004】
培養によってか、化学合成によってか、または細胞においてアントシアニンを製造することは、高価値化学生産の商業的実行性を制限する多くの問題に悩まされている。第一に、培養は、しばしば経済的に実行不能であり、大量の土地/エネルギー/水を必要とし、そのプラントは、高価値物質を少量で生産可能でしかない。次に、化学合成は、しばしば複雑過ぎて実験室では作製できない天然産物を生成するために、広大で精巧で高価で有毒で非効率な多工程化学反応を必要とする。最後に、バイオファウンドリ(細胞全体の使用)は、生成物の毒性、炭素フラックスの方向転換、細胞壁を通る拡散の問題、および毒性副産物の生成に悩まされる。これらの上記の問題を回避するために、無細胞製造が、実行可能な選択肢として現れる。
【0005】
無細胞系において、細胞の重要成分(すなわち、補因子および酵素)が、その細胞を用いない化学反応において使用される。植物において見出される同じ酵素が、インビボで(代表的には、細菌などの宿主におけるタンパク質過剰発現を通じて)生成され、クロマトグラフィーによって単離され、その後、基質(出発物質)を含むバイオリアクター中に添加される。それらの酵素は、植物において生じるのと同じ様式でその基質を変換するが、生物の複雑性は伴わない。この様式では、天然産物は、植物も、細胞も、化学合成も用いずに生成され始め得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な概要)
無細胞生合成プラットフォームによって、アントシアニジンから出発するアントシアニジン(シアニジングリコシド、例えばシアニジン-3-グリコシド、シアニジン-5-グリコシドなど)の生成を可能にする無細胞方法を提供することが、本発明の目的である。本発明の実施形態は、それらが相反しない場合には互いと自由に組み合わされ得る。
【0007】
本発明は、アントシアニジンを、グリコシルドナーに依存していくつかの可能性のあるアントシアニジングリコシド(例えば、シアニジン-3-グリコシド)へと変換するために、グリコトランスフェラーゼ酵素を使用する。
【0008】
本願プロセスは、生成物力価を短い反応時間で増加するために、制御された酵素工程を使用する。一部の実施形態において、その制御された酵素工程は、生成物力価を少なくとも5倍増加し得る。さらに、酵素固定が、アントシアニジンから対応するアントシアニンへの変換を増強するために、使用され得る。例えば、酵素固定を使用して、酵素の沈殿、不活化、および固定されていない系の信頼性の欠如を回避することによって、シアニジンからシアニジン-3-グルコシド(C3G)への変換を改善した。
【0009】
本発明の独特で進歩性のある技術的特徴は、アントシアニン(アントシアニジングリコシド)(例えば、シアニジン-3-グリコシド)の生成のための無細胞系の使用である。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することは望まないが、本発明の技術的特徴は、有利なことに、より高い反応濃度の出発物質、試薬、および酵素を提供して、より高い濃度の最終生成物を生じると、考えられる。さらに、本発明は、細胞壁の複雑性を排除し、それによって生成物および基質の拡散に対する障壁を排除する。さらに、本発明は、炭素フラックスを巡る競合(これは、細胞ベースの合成方法の効率を制限する)を排除し、したがって、副生成物の形成を大いに減少させる。また、細胞が全く存在しないので、本発明は、毒性化合物の形成に起因する細胞死による分解に対して脆弱ではない。様々な出発アントシアニジンおよびグリコシル化UDP(UDP-糖)を収容するその系の適合性は、その系に、多くの生成物を生成する柔軟性と、細胞を殺すことを心配せずにより高濃度の溶質を許容するために種々の溶媒(例えば、有機溶媒)を使用する能力とを与える。
【0010】
本発明は、種々の生成物に適合性がある。このアプローチにおいて、所望されるアントシアニン生成物を合成するためには、その経路中のアントシアニジン、UDP-糖、およびUGT酵素を単に変更する。
【0011】
さらに、先行文献は、本発明から遠ざかることを教示している。現在の細胞ベースのアントシアニン生成について達成可能な最大力価は、制限されている。広範な細胞リプログラミングおよび代謝工学を含む、以前に公開された業績は、アントシアニン(例えば、シアニジン-3-グルコシド)を0~200mg/Lの規模で生成する。300~400mg/Lに近づく力価を生成する微生物宿主の報告が存在していたが、これらの実験は、技術的に再現性がない(例えば、Shrestha、2019を参照のこと)か、または当該分野において示されている基準に適合しないデータを含む(Yan、2008)かのいずれかである。本発明は、少なくとも1.5g/LのC3G生成力価を提供し、これは、報告された値からの50倍までの増加を示す。
【0012】
さらに、本発明の進歩性のある技術的特徴は、細胞ベースの合成の文献からは予測されなかった驚くべき結果に寄与した。例えば、出発物質であるシアニジンの安定性は、そのシアニジンが含まれている溶液のpHに依存し、pH<5.0にて安定性が最も高い。これらの低いpH値は、細胞の至適pHが7であるので、細胞ベースの生成には適合しない。本発明は、一定範囲のpH値(4.0~9.0)にて完全に機能する。一部の実施形態において、アントシアニジンの安定性を最大にするためには、そのアントシアニジンの最大安定性のpHまたはその付近のpH、例えば、pH5またはその付近(例えば、4.0~6.0、4.2~5.8、4.3~5.7、4.4~5.6、4.5~5.5、4.6~5.4、4.7~5.3、4.8~5.2、または4.9~5.1)で、その反応を実行することが好ましい。
【0013】
さらに、出発物質であるアントシアニジンの溶解度は、本発明が許容する溶媒(例えば、有機溶媒)を使用することによって、増強され得る。例えば、シアニジンの溶解度は水中でわずか49mg/Lであり、シアニジンはこの濃度では数分間以内に分解する。共溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール(MeOH)、もしくはエタノール(EtOH)(またはそれらの2種もしくはそれより多くの混合物)の添加は、その反応についてのシアニジンの溶解度および安定性を大いに改善する。本発明にしたがう一部の方法は、60%を超える共溶媒レベル(5%を超えるほとんどの共溶媒濃度に対して生細胞が感受性であるので、細胞ベースのアントシアニン生成よりも少なくとも12倍高い)にて作動可能であり得る。
【0014】
本発明の進歩性のある技術的特徴は、その反応混合物における高濃度のUDP-糖を許容するという、さらなる予期せぬ結果に寄与した。例えば、シアニジンからC3Gへの変換は、UDP結合体化糖ドナー分子(例えば、UDP-グルコース)を必要とする。UDP-グルコトランスフェラーゼ酵素は、UDP-グルコースに対する低い親和性を有し、その反応は、大きくモル過剰のこの分子に依存する。本発明におけるUDP-グルコースのレベルは、制御可能であり、このUDP-グルコースのレベルは、2g/Lに近づくUDP-グルコースレベルに到達するためにかなりの細胞工学を必要とする細胞ベースの生成(Fengら、2020)と比較して、1mMから30mM(0.5~17g/L)まで変化し得る。
【0015】
本明細書中に記載される任意の特徴または特徴の組合せは、文脈、本明細書、および当業者の知識から明らかであるとおり、そのような任意の組合せに含まれる特徴が相互に矛盾しない限りは、本発明の範囲内に含まれる。例えば、特定のアントシアニンが特定のアントシアニジンの生成物として示されているが、広範囲のアントシアニンを一定範囲のアントシアニジンから生成するために本明細書中に記載される方法が一般化され得ることを、当業者は認識する。本発明のさらなる利点および局面は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲において明らかである。
【0016】
(図面のいくつかの図の簡単な説明)
本発明の特徴および利点は、添付の図面と組み合わせて提示される以下の詳細な説明を考慮すれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、一般的なアントシアニジンの構造を示す。左の構造はアントシアニジンのコア構造であり、右の表は、アントシアニジンのコア構造の示された位置にある「Rn」置換基を示す。
【0018】
【
図1B】
図1Bは、アントシアニン(例えば、シアニジン-3-O-グルコシド、別名C3G)をアントシアニジン(例えば、シアニジン)およびUDP-糖(例えば、UDP-グルコース)から生成する化学変換経路を示す。
【0019】
【
図2】
図2A~
図2Cは、シアニジン、シアニジン-3-グリコシド標準物質(一番上の図、
図2A)、固定されていない酵素反応(中央の図、
図2B)、および固定された酵素反応(一番下の図、
図2C)についてのHPLCトレースを示す。530nmにて保持時間6.95分(C3G)および8.9分(シアニジン)が記録されている。
【0020】
【
図3】
図3A~
図3Bは、連続リアクターの模式図(上の図、
図3A)、ならびに分子標準物質とその連続リアクターにおいて生成されたシアニジン-3-グリコシドとのHPLCトレース(下の図、
図3B)を示す。530nmにて保持時間6.95分(C3G)および8.9分(シアニジン)が記録されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本化合物、組成物、および/または方法が開示され記載される前に、具体的な合成方法または具体的な組成物は当然変化し得るので、明記されない限りは、本発明はそれらの具体的な合成方法にも具体的な組成物にも限定されないことが、理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的とし、限定することは意図されないこともまた、理解されるべきである。
【0022】
本明細書において使用される場合、「反応溶液」とは、アントシアニジンからアントシアニンへの酵素ベースの化学変換に必要なすべての成分を指し得る。これは、代表的には、緩衝剤、塩、共溶媒、補因子、および基質(出発物質)であるが、それらに限定はされない。
【0023】
本明細書において使用される場合、「反応混合物」とは、「反応溶液」に由来するすべての成分と、それに加えてその反応に由来する酵素(複数可)および/または生成物とを指し得る。一部の実施形態において、その「反応混合物」は、いかなる酵素も反応生成物も含まない、反応溶液のみを指し得る。
【0024】
一部の実施形態において、「反応溶液」と「反応混合物」とは、交換可能に使用され得る。
【0025】
本明細書において使用される場合、「緩衝剤」とは、酸-塩基共役成分の作用によってpH変化に抵抗する、水ベースの溶液に添加された化学物質を指し得る。
【0026】
本明細書において使用される場合、「上清」とは、サンプルの可溶性液体画分を指し得る。
【0027】
本明細書において使用される場合、「バッチ反応」とは、閉鎖系(例えば、発酵槽または典型的な反応フラスコ)において実施された化学反応または生化学反応を指し得る。
【0028】
本明細書において使用される場合、「補因子」とは、タンパク質に結合し得て生化学反応を支援し得る、非タンパク質化学化合物を指し得る。補因子の非限定的例としては、UTPが挙げられ得るが、それに限定はされない。
【0029】
ここで
図1A~
図3Bを参照すると、本発明は、グリコシル化シアニジンをシアニジンから生成する例示的方法を参照することによって示されている。
【0030】
図1A~
図3Bにおいて示されている方法は、アントシアニジンとUTP-グリコシドと酵素との任意の適切な組合せを組み込んで、所望される生成物であるアントシアニンを生成するために一般化され得る。例えば、そのアントシアニジンは、表1中に示されているアントシアニジンであり得る。
【0031】
【0032】
一部の実施形態において、そのUDP結合体化糖は変化し得る。一部の実施形態において、その糖は、グルコース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、またはラムノースであり得る。
【0033】
一部の実施形態において、その生成物は、シアニジン-3-グルコシド(C3G)であり得る。一部の実施形態において、その生成物は、下記の表2または表3において列挙されている任意の生成物であり得る。
【0034】
一部の実施形態において、反応の温度は、約20℃~約50℃の範囲であり得る。一部の実施形態において、反応の温度は約30℃である。
【0035】
一部の実施形態において、反応のpHは、約4~約9.0の範囲であり得る。一部の実施形態において、反応のpHは約5.0(例えば、4.0~6.0、4.2~5.8、4.3~5.7、4.4~5.6、4.5~5.5、4.6~5.4、4.7~5.3、4.8~5.2、または4.9~5.1)である。
【0036】
反応時間は、収量を最適化するため、または資源の効率的使用に対して収量を釣り合わせるために、変更され得る。反応時間は、10分間から48時間まで、例えば、15分間から約36時間まで、または約30分間から24時間まで、変更され得る。一部の実施形態において、反応を実行する時間は、約30分間~約1時間の範囲であり得る。
【0037】
一部の実施形態において、酵素は固定され得る。一部の実施形態において、固定される酵素が、固体支持体に固定される。固体支持体の非限定的な例としては、エポキシメタクリレート、アミノC6メタクリレート、または微孔質ポリメタクリレートが挙げられ得るが、それらに限定はされない。さらなる実施形態において、種々の界面化学が、その固定される酵素を固体表面に結合するために使用され得、それには、共有結合、吸着、イオン性結合、親和性、カプセル封入、または捕捉が挙げられるが、それらに限定はされない。他の実施形態において、酵素は固定されていない。固定された酵素または固定されていない酵素のいずれかが、バッチまたは連続合成において使用され得る。例えば、固体支持体にある固定された酵素が、反応混合物が通過する連続フローセルにおいて使用され得、それによって、固定された酵素は、高力価で生成物を生成するように基質の改変を触媒し得る。あるいは、連続的方法が、高力価で生成物を生成するために酵素溶液と基質とを微量混合する一方で、生成物を連続的に除去すること、基質を除去すること、またはそれらの両方を行うことを含み得る。
【0038】
表2中のアントシアニンは、3-O-グリコトランスフェラーゼまたは5-O-グリコトランスフェラーゼをグリコシル化酵素として使用して、対応するアントシアニジンから調製され得る。
【0039】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0040】
アントシアニンをアントシアニジンから調製するための出発物質および反応物は、商業的供給源から、または利用可能な出発物質から容易に利用可能な合成プロセスによって、取得され得る。例えば、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、およびペツニジンは、例えば、ChromaDex, Inc.から、市販されている。
【0041】
本明細書中に開示されている方法は、一置換アントシアニン、二置換アントシアニン、三置換アントシアニン、四置換アントシアニン、および五置換アントシアニン、六置換アントシアニンならびに多置換アントシアニンを調製するために使用され得る。二置換アントシアニン、三置換アントシアニン、四置換アントシアニン、五置換アントシアニン、六置換アントシアニンおよびより多く置換されたアントシアニンを作製するために、複数の合成工程が、その提供された無細胞系において実行され得る。n-グリコシル化アントシアニンのための出発物質は、n-1グリコシル化アントシアニンであり得る。例えば、シアニジン-3,5-O-ジグルコシドを作製するために、そのアントシアニジンは最初に、3-グリコトランスフェラーゼ(3GT)酵素によってシアニジン-3-O-グルコシド(C3G)へと変換され、このC3G分子はその後、5-グリコトランスフェラーゼ(5GT)酵素によってR5位に第2のグルコシル部分を付加するように改変されて、最終のシアニジン-3,5-O-グルコシドが作製される。3GT酵素によるグリコシル基の付加は、一般的にはn-グリコシル化アントシアニンに向かう最初の工程である。その理由は、C3Gアントシアニンが最も塩基性のアントシアニン構築ブロックであるからである。非グルコシルドナーによるC3G分子の連続的改変としては、アシル化、マロニル化、クマロイル化、カフェオイル化、フェルロイル化が挙げられ得るが、それらに限定はされない。
【0042】
表3は、アントシアニン生成物および可能性のあるそれらの対応するアントシアニジン、ならびにグリコシルドナー出発物質を、その対応する反応を実行するために必要な予測される酵素とともに示す。
【0043】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【表3-14】
【表3-15】
【表3-16】
【表3-17】
【表3-18】
【表3-19】
【表3-20】
【0044】
(共溶媒)
反応混合物および反応溶液は、共溶媒(すなわち、水を伴う溶媒)を含み得る。種々の共溶媒が、溶解度を改善するために反応溶液および反応混合物において使用され得る。一部の実施形態において、その共溶媒は、その反応溶液または反応混合物の約1~約75%(v/v)(例えば、約5~約50%(v/v)または10~約40%(v/v))を構成し得る。その共溶媒は、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)であり得る。
【0045】
(アントシアニン純度)
アントシアニン生成物は、優れた純度で生成され得る。例えば、そのアントシアニン生成物は、70%よりも高い純度、80%よりも高い純度、90%よりも高い純度、95%よりも高い純度、97%よりも高い純度、98%よりも高い純度、99%よりも高い純度、99.5%よりも高い純度、または99.9%よりも高い純度で生成され得る。したがって、70~99.9%純度、80~99.9%純度、90~99.9%純度、95~99.9%純度の範囲の純度が、達成され得る。
【実施例】
【0046】
(実施例)
以下は、本発明の非限定的な実施例である。この実施例は本発明をいかなる様式でも限定することは意図されないことが、理解されるべきである。等価物または置換物は、本発明の範囲にある。
【0047】
(酵素の発現および精製)
すべての遺伝子を合成し、発現プラスミド中にクローン化し、その後、発現のためにE.coli中に形質転換した。細胞を、50μg/mLの硫酸カナマイシンを補充したTB培地において37℃および200rpmにてA600=0.6まで増殖させた。細胞を18℃に冷却し、発現を誘導し、さらに18時間増殖させた。細胞ペレットを遠心分離によって収集し、凍結させ、その後、細胞ペースト1g当たり5mLの溶解緩衝液(50mMリン酸ナトリウム pH7.5、300mM NaCl、5mMイミダゾール)中に再懸濁した。細胞溶解物を超音波処理によって調製し、細胞片を遠心分離によって除去した。清澄になった溶解物を、IMAC-ニッケル樹脂を含むGE XKシリーズのカラムにロードした。タンパク質を、バッファーA(50mMリン酸ナトリウム pH7.5、300mM NaCl、10%グリセロール(w/v))から25%バッファーB(1Mイミダゾール、50mMリン酸ナトリウム pH7.5、300mM NaCl、10%グリセロール(w/v))への15CV勾配を使用して溶出させた。目的のタンパク質を含む画分をプールし、GE HiPrep 26/10脱塩カラムを用いて50mMリン酸ナトリウム pH7.5、10%グリセロール(w/v)、および0.1mM EDTA中に交換した。その後、酵素をAmicon遠心式濾過ユニットを用いて5mg/mLの値になるまで濃縮し、15%グリセロール(w/v)と混合し、瞬間凍結した。
【0048】
当業者は、E.coli細胞が、本発明の概念を実証するための例示であることを理解する。細菌(例えば、bacillus subtillis)または真菌(例えば、trichodermaもしくはaspergillus terrus)が挙げられる他の適切な細胞、あるいはこれらの遺伝子を発現するために適切な他の任意の宿主細胞が本発明の範囲内にあることを、当業者は理解する。
【0049】
(分析方法)
サンプリングのために、反応液を2M HCl(1:10 v/v)で酸性化し、その後、高速遠心分離および0.45μmフィルターに通す濾過を行った。サンプルをHPLCシステムに流すことを実行して、反応混合物中に存在するシアニジンおよびグリコシル化シアニジンの量を調べた。このHPLC方法は、以下のとおりであった:Agilent 1200 HPLCに、Ascentis C18 HPLCカラム150mm×4.6mm、3μmを取り付けた。このカラムを25Cに加熱し、サンプルブロックを15Cにて維持した。各サンプルについて、10μLを注入し、水中で0.1%のリン酸(溶媒A)とアセトニトリル(溶媒B)とを以下の勾配で使用して、流量1.0ml/分でその生成物を溶出させた:90%Aから50%Aを6分間、90%Aを0.1分間、およびカラム平衡化のために90%Aを2.9分間。実行時間は合計9分間であり、シアニジン-3-グルコシドが3.8分で溶出し、シアニジンが4.6分で溶出した。ダイオードアレイ検出器(DAD)を、530nmでの目的分子の検出のために使用した。
【0050】
(3GT酵素を用いるC3G生成および反応の最適化)
本明細書において記載されるとおり、シアニジンは、3-O-グリコトランスフェラーゼ酵素(3GT、2.4.2.51)によってグリコシル化されて、シアニジン-3-グルコシド(C3G)を形成する。この3GT酵素ファミリーは植物中で見出され、微生物宿主において活性であることが示されているが、産業上適切な量のC3Gを生成するためには、顕著な進歩が必要である。表4からの酵素を発現させ、精製し、シアニジンからC3Gを生成する活性についてスクリーニングした。酵素をまず、基質濃度、pH、温度、緩衝剤、および時間に関する最適値についてスクリーニングした。基質であるシアニジンの安定性および溶解度は限定的であることが見出された。したがって、これらの反応における共溶媒の型および量のさらなる最適化も必要とされた。反応溶液(100mM酢酸ナトリウム、pH5.0、20mM UDP-グルコース、5mMシアニジン、5mM MgCl2、20% DMF(v/v))を20μM酵素と30℃にて30分間混合した。収量は、1.6g/Lに増加した。
【0051】
(シアニジン-3-グルコシドを生成するための固定した3-O-グリコトランスフェラーゼ)
遊離酵素を用いたシアニジンからのC3Gの生成を実証し最適化した後、次の工程は、安定性、寿命、および触媒作用を増加するために、3GT酵素を固体支持体に固定することであった。様々な市販の支持体材料を、生成物および基質の保持、酵素の保持、ならびに固定した酵素の活性についてスクリーニングした。その支持体の集合は、以下の型の結合のための種々の界面化学を含んだ:共有結合、吸着、イオン性結合、親和性、カプセル封入、および捕捉。代表的には、50mgの樹脂を、緩衝液中にある4.0mgの酵素と室温にて16~24時間混合した。固定した酵素の量を、固定の前および後に、溶液中のタンパク質濃度をBCAまたはBradfordアッセイのいずれかによって測定することによって定量化した。その樹脂に保持された出発物質および生成物の量を、HPLCによって定量化した。
【0052】
最初の樹脂スクリーニング後に、最良の酵素-支持体の組合せを、さらなる最適化のために選択した。固定した酵素を、種々の反応条件(基質濃度の変化、pHの変化、温度の変化、緩衝剤の変化、溶媒の変化、時間の変化)に再び供して、最適な活性を確実にした。
【0053】
3GTを、エポキシメタクリレート樹脂と混合した。その後、酵素を固定した樹脂を、10mg/mlポリエチレンイミン(PEI)とともに少なくとも1時間インキュベートした。固定した酵素を使用して、シアニジンをC3Gへと変換した。反応溶液(100mM酢酸ナトリウム、pH5.0、15mM UDP-グルコース、4mMシアニジン、40% DMF(v/v))を、2.5mgの固定した酵素と30℃にて30分間混合した。Vitis labrusca由来の固定した3GTは、2.9mMシアニジンを収量2.1mMのC3G(51.4%、0.924g/L)へと変換可能であった(
図2C)。
【0054】
(固定した3GTの使用は、連続リアクターにおいてC3Gを生成する)
固定したVl3GT酵素(50mgの樹脂に2.7mg酵素)を含む2.75インチ長および0.125インチ外径および0.055インチ内径のリアクターを30℃に加熱し、平衡化緩衝液(50mM酢酸ナトリウム、pH5.0)をこのリアクターにポンプで通すことによってこの平衡化緩衝液で30分間平衡化した。この時間の後、基質溶液をこのリアクターに流量2.3μL/分で流した。このリアクターに入れる前に、流量0.93μL/分の400μLの4.0mMシアニジンを流量1.38μL/分の600μLの15mM UDP-グルコース、100mM酢酸ナトリウム、pH5.0と混合して、このリアクターを通る総流量2.3μL/分(30分の保持時間)を生じることによって、この基質溶液を生成した。この溶液をこのリアクターに通した後、その液体を収集し、シアニジンおよびC3G形成の存在についてHPLCによってサンプリングした。その固定したVl3GT酵素は、この連続リアクターにおいて0.795g/LでC3Gを生成した。
【0055】
本明細書において使用される場合、用語「約」とは、言及された数±10%を指す。
【0056】
【0057】
本発明の一部の好ましい実施形態が示され記載されてきたが、添付の特許請求の範囲の範囲を越えない改変がそれらに対して行われ得ることが、当業者には容易に明らかである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。図面は例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲は、図面の寸法によっては限定されない。一部の実施形態において、句「含む(comprising)」を使用して本明細書において記載された発明の記載は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」として記載され得た実施形態を含み、したがって、句「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」を使用して本発明の1つまたはそれより多くの実施形態を特許請求することに関する記載要件は、満たされている。
【0058】
(参考文献目録)
Fengら、「Advances in engineering UDP-sugar supply for recombinant biosynthesis of glycosides in microbes」、Biotechnology Advances、https://doi.org/10.1016/j.biotechadv. 2020.107538、(2020)。
【0059】
Shresthaら、「Combinatorial approach for improved cyanidin 3-O-glucoside production in Escherichia coli」、Microb.Cell Fact. 18(7)(2019)。
【0060】
Yanら、「High-Yield Anthocyanin Biosynthesis in Engineered Escherichia coli、Biotech.and Bioeng. 100(1)(2008)。
【配列表】
【国際調査報告】