(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤を用いた併用治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20240314BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240314BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240314BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240314BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240314BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240314BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240314BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20240314BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240314BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20240314BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P1/16
A61P13/10
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61K31/519
C12N9/99 ZNA
C12N15/13
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561325
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022023775
(87)【国際公開番号】W WO2022216898
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515182071
【氏名又は名称】ハンミ ファーム.カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANMI PHARM.CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デラ クルーズ, ダーリーン
(72)【発明者】
【氏名】マレク, シヴァ
(72)【発明者】
【氏名】セガール, エフド
(72)【発明者】
【氏名】イェン, イヴァナ イェン イェン
(72)【発明者】
【氏名】ペ, イン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, キー ヒョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BB13
4B065BB19
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB26
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんの処置のための、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤を含む併用治療が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんを有する対象を処置する方法であって、(i)本質的に(ii)治療有効量のRAF阻害剤及び(iii)治療有効量のPD-1軸阻害剤からなる治療を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記がんが、黒色腫、肺、乳房、結腸直腸(CRC)、膀胱、胆嚢、腎芽腫、消化管間質腫瘍(GIST)、前立腺、神経膠芽腫、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、甲状腺、胆管、腺癌、絨毛癌腫、肉腫及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんが、黒色腫、腎芽腫、GIST、CRC、肉腫、胆嚢がん、膀胱がん、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、RAF変異を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが、BRAF V600E変異を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、BRAF V600Eを有する腎芽腫、BRAF V600E変異を有する黒色腫、BRAF V600E変異を有するGIST、BRAF V600E変異を有するCRC、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、BRAF V600E変異を有する黒色腫、BRAF V600E変異を有する腎芽腫、BRAF V600E変異を有するGIST、及びそれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが、BRAF V600E変異を有する黒色腫、BRAF V600E変異を有するGIST、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記黒色腫が、転移性又は切除不能である、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記がんが、NRAS変異又はKRAS変異を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記がんが、BRAF V600E変異、KRAS G12V変異、KRAS G12D変異、KRAS G12C変異、KRAS Q61H変異、NRAS G13D変異、NRAS G12D変異、NRAS Q61K変異、NRAS Q61R変異、及びNRAS G12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記がんが、KRAS G12V変異を有する肉腫、NRAS G13D変異を有する黒色腫、NRAS G12D変異を有する黒色腫、NRAS Q61K変異を有する黒色腫、NRAS Q61R変異を有する黒色腫、NRAS G12C変異を有する黒色腫、KRAS G12D変異を有する胆嚢がん、KRAS G12C変異を有するCRC、KRAS Q61H変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有する膀胱がん、KRAS G12V変異を有する膀胱がん、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記がんが、KRAS G12V変異を有する肉腫、NRAS G13D変異を有する黒色腫、NRAS G12D変異を有する黒色腫、NRAS G12C変異を有する黒色腫、KRAS G12D変異を有する胆嚢がん、KRAS G12C変異を有するCRC、KRAS Q61H変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有する膀胱がん、KRAS G12V変異を有する膀胱がん、及びそれらの組み合わせである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが、KRAS G12V変異を有する肉腫、NRAS G13D変異を有する黒色腫、NRAS G12D変異を有する黒色腫、NRAS Q61K変異を有する黒色腫、NRAS Q61R変異を有する黒色腫、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、NRAS変異を有する黒色腫である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記黒色腫が、転移性又は切除不能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RAF阻害剤が、汎RAF阻害剤である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記RAF阻害剤が、ベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記PD-1軸阻害剤が、PD-L1阻害剤である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記PD-L1阻害剤が、GFTFSDSWIH(配列番号24)のHVR-H1配列、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号25)のHVR-H2配列、及びRHWPGGFDY(配列番号12)のHVR-H3配列を含む重鎖と、RASQDVSTAVA(配列番号26)のHVR-L1配列、SASFLYS(配列番号27)のHVR-L2配列、及びQQYLYHPAT(配列番号28)のHVR-L3配列を含む軽鎖と、を含む抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PD-L1阻害剤が、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIY SASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTK VEIKR(配列番号9)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、1日当たり約100mg~約1500mgの前記RAF阻害剤で処置される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記RAF阻害剤が、ベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩であり、更に、前記対象が、1日当たり約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、又は約1300mgのベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩で処置される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg又は約500mgのベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩で1日に2回処置される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ベルバラフェニブが、28日間の処置サイクルの28日間連続して毎日投与される、請求項24又は請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、約400mg~約1200mgの前記PD-1軸阻害剤で、28日間の処置サイクルのうちの2日間処置される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記PD-1軸阻害剤が、アテゾリズマブであり、更に前記対象が、約840mgで28日間の処置サイクルのうちの2日間処置される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、前記PD-1軸阻害剤で28日間の処置サイクルの14日間毎に処置される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、前記PD-1軸阻害剤で前記28日間の処置サイクルの1日目及び15日目に処置される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記RAF阻害剤及び前記PD-1軸阻害剤がそれぞれ、28日間の処置サイクルの1日目及び15日目に投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記RAF阻害剤及び前記PD-1軸阻害剤がそれぞれ同日に投与される場合、前記RAF阻害剤は、前記PD-1軸阻害剤の投与前、投与後、又は投与と同時に投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記RAF阻害剤が、食物と共に投与される、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、抗PD-1薬又は抗PD-L1薬による一連の処置を以前に投与された、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
がんを処置するための前記方法が、ヒト対象における扁平上皮癌腫の発生の非存在を特徴とする、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記がんが黒色腫であり、
前記処置の前に、ヒト対象が、免疫治療、BRAF V600E治療、又は免疫治療とBRAF V600E治療との組み合わせによる処置後に疾患進行を経験した、
請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、EFS-Webを介して本出願と共に提出されたコンピュータ可読形式の配列表を含む。2022年3月31日に作成された前記配列表は、サイズが30,720バイトである。この配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月9日に出願された米国仮出願第63/173,207号の優先権を主張する。その仮出願の全文は、参照により本出願に組み入れられる。
【0003】
開示の分野
本発明の分野は、一般に、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤の組み合わせを用いたがん治療に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
RAS遺伝子は、ヒトがんにおいて最も頻繁に変異した癌遺伝子である。RASアイソフォームの中で、KRASが最も頻繁に変異し(86%)、NRASがこれに続き(11%)、主に皮膚黒色腫において変異している(28%)。Cox AD,Fesik SW,Kimmelman AC,et al,“Drugging the undruggable RAS:Mission possible?”,Nat Rev Drug Discov 13:828-51,2014;Hilmi Kodaz,Osman Kostek,Muhammet Bekir Hacioglu,et al.,“Frequency of RAS Mutations(KRAS,NRAS,HRAS)in Human Solid Cancer”,EJMO 1:1-7,2017;and Cancer Genome Atlas N,“Genomic Classification of Cutaneous Melanoma”,Cell 161:1681-96,2015を参照されたい。RAS変異体駆動型がんの前臨床モデルは、腫瘍の開始及び維持におけるKRAS及びNRASの役割を実証している。しかしながら、今日まで、PI3K及びMEKの阻害等のその下流エフェクタ経路を標的とすることによるRAS変異体腫瘍の処置における臨床的成功は限られていた。
【0005】
3つのサブタイプ(A-RAF、B-RAF、C-RAF)からなるRAFキナーゼファミリーは、RASの下流のMAPKシグナル伝達経路の重要な構成要素である。RAF遺伝子、特にコドンV600のBRAFにおける変異は、悪性黒色腫、結腸直腸がん、甲状腺がん、及び肺がんを含む様々ながんにおいて同定されている。Davies H,Bignell GR,Cox C,et al.,“Mutations of the BRAF gene in human cancer”,Nature 417:949-54,200を参照されたい。BRAF V600変異は、BRAFが単量体としてシグナル伝達することを可能にし、それによって下流のMAPKシグナル伝達経路を構成的に活性化する。
【0006】
ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、及びエンコラフェニブ等のBRAF単量体阻害剤の発見は、BRAFV600変異体腫瘍を有する患者の処置の著しい進歩をもたらしたが、それにもかかわらず、処置応答の持続性は、BRAF二量体化に大きく収束するBRAF増幅、BRAFスプライスバリアント及びRAS変異を含む様々な耐性機構、並びにBRAF V600単量体治療に対する耐性のために制限されている。Sullivan RJ,Flaherty KT,“Resistance to BRAF-targeted therapy in melanoma”Eur J Cancer 49:1297-304,2013を参照されたい。更に、これらのBRAFV600阻害剤はまた、BRAF野生型及びKRAS変異体細胞株においてMAPKシグナル伝達経路を逆説的に活性化し、その結果、BRAF及びCRAFの二量体化、並びにRAS依存的様式でのMEK及びERKシグナル伝達の活性化をもたらすことが示されている。Heidorn SJ,Milagre C,Whittaker S,et al.,“Kinase-dead BRAF and oncogenic RAS cooperate to drive tumor progression through CRAF”,Cell 140:209-21,2010;及びBlasco RB,Francoz S,Santamaria D,et al.,“c-Raf,but not B-Raf,is essential for development of K-Ras oncogene-driven non-small cell lung carcinoma”,Cancer Cell 19:652-63,2011を参照されたい。問題なことに、BRAFV600治療を受けている患者の5~20%が扁平上皮癌腫(squamous cell carcinoma:SCC)を発症し、これはおそらくMAPK経路の逆説的な活性化を介して引き起こされる。
【0007】
したがって、KRAS、NRAS及びRAF変異を有するがんの改善された処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
簡単な説明
本開示は、変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんを有する対象を処置する方法を提供する。本方法は、(i)本質的に(ii)治療有効量のRAF阻害剤及び(iii)治療有効量のPD-1軸阻害剤からなる治療を前記対象に投与することを含む。
【0009】
いくつかの態様では、対象は、(i)約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg又は約500mgを1日2回の用量のRAF阻害剤、及び(ii)約400mg~約1200mg、約600mg~約1000mg、約700mg~約900mg又は約840mgの用量のPD-1軸阻害剤で、処置される。
【0010】
いくつかの特定の態様では、RAF阻害剤はベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩であり、及び/又はPD-1軸阻害剤はPD-L1阻害剤である。いくつかの態様では、PD-L1阻害剤はアテゾリズマブである。
【0011】
本明細書で使用される場合、HM95573は、ベルバラフェニブを指す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示のベルバラフェニブ単剤治療(7.5mg/kg及び15mg/kg)、アテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)、7.5mg/kgのベルバラフェニブ及び10mg/kgのアテゾリズマブの併用治療、並びに15mg/kgのベルバラフェニブ及び10mg/kgのアテゾリズマブの併用治療についてのK1735同系モデルについてのマウス体重変化対時間のプロットである。ビヒクルを上線で表す。点:相対体重の平均;バー、S.E.M.
【0013】
【
図2】本開示のベルバラフェニブ単剤治療(7.5mg/kg及び15mg/kg)、アテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)、ベルバラフェニブ/アテゾリズマブ併用治療((i)7.5mg/kg及び10mg/kg並びに(ii)15mg/kg及び10mg/kg)についてのK1735同系モデルについてのマウス腫瘍体積対時間のプロットである。
図2において:
*P<0.05を指す;
****はP<0.0001を指す;§は、10mg/kgのアテゾリズマブと比較してP<0.05を指す;#は、15mg/kgのベルバラフェニブと比較してP<0.05を指す。P値を、二元配置ANOVAを使用して計算した。ビヒクルを上線で表す。点:腫瘍体積の平均;バー:S.E.M.
【0014】
【
図3】K1735同系マウスモデルにおけるベルバラフェニブ単剤治療(15mg/kg)、アテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)、及びベルバラフェニブ/アテゾリズマブ併用治療(15mg/kg及び10mg/kg)についてのK1735同系マウスモデルのCD3+CD8+T細胞のプロットである。
図3において:
***は、ビヒクル対照と比較してP<0.001を指す;###は、15mg/kgのベルバラフェニブと比較してP<0.001を指す;§はアテゾリズマブ10mg/kgと比較してP<0.05を指す。P値を、一元配置ANOVAを使用して計算した。点、CD3+CD8+T細胞の平均:バー、S.E.M.
【0015】
【
図4A】ビヒクルによる経口処置のためのKRASG12D CRCのCT26同系マウスモデルにおける腫瘍体積(mm
3)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物の結果であり、暗線は群の平均である。
【
図4B】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTによる経口処置についての同系マウスモデルにおける腫瘍体積対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗実線は群についての平均であり、暗破線は基準適合である。
【
図4C】3週間にわたる毎日の10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)による経口処置についての同系マウスモデルにおける腫瘍体積対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗実線は群についての平均であり、暗破線は基準適合である。
【
図4D】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTによる経口処置と、3週間にわたって毎日の10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)による経口処置との組み合わせについての同系マウスモデルにおける腫瘍体積対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗実線は群についての平均であり、暗破線は基準適合である。
【0016】
【
図5A】ビヒクルによる経口処置のためのKRASG12D CRCのCT26同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物の結果であり、暗線は群の平均である。
【
図5B】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTを用いた回経口処置についての同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗線は群についての平均である。
【
図5C】3週間にわたって毎日10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)で経口処置した同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗線は群についての平均である。
【
図5D】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTによる経口処置と、3週間にわたって毎日の10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)による経口処置との組み合わせについての同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗線は群についての平均である。
【0017】
【0018】
【
図7A】ビヒクルによる経口処置のためのKRASG12D TNBCのEMT6同系マウスモデルにおける腫瘍体積(mm3)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物の結果であり、暗線は群の平均である。
【
図7B】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTによる経口処置についての同系マウスモデルにおける腫瘍体積対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗実線は群についての平均であり、暗破線は基準適合である。
【
図7C】3週間にわたる毎日の10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)による経口処置についての同系マウスモデルにおける腫瘍体積対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗実線は群についての平均であり、暗破線は基準適合である。
【
図7D】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTによる経口処置と、3週間にわたって毎日の10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)による経口処置との組み合わせについての同系マウスモデルにおける腫瘍体積対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗実線は群についての平均であり、暗破線は基準適合である。
【0019】
【
図8A】ビヒクルによる経口処置のためのKRASG12D TNBCのEMT6同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物の結果であり、暗線は群の平均である。
【
図8B】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTを用いた回経口処置についての同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗線は群についての平均である。
【
図8C】3週間にわたって毎日10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)で経口処置した同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗線は群についての平均である。
【
図8D】3週間にわたる週に2回の5mg/kgのMu IgG1(6E11)WTによる経口処置と、3週間にわたって毎日の10mg/kgのGDC-5573(ベルバラフェニブ)による経口処置との組み合わせについての同系マウスモデルにおける体重変化(%)対日のプロットであり、明線は群の個々の動物についての結果であり、暗線は群についての平均である。
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本開示は、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤の組み合わせ、より詳細にはRAF阻害剤及びPD-L1阻害剤の組み合わせ、更により詳細にはベルバラフェニブとアテゾリズマブとの組み合わせを用いた変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんの処置を対象とする。
【0022】
定義
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、典型的には調節されていない細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的症状を指すか又は説明する。「腫瘍」は、1つ以上のがん性細胞を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「患者」及び「対象」という用語は、限定するものではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む哺乳動物などの動物を指す。特定の態様では、患者又は対象は、ヒトである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、臨床的病変の過程の間に処置される個体又は細胞の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復又は緩和及び寛解又は予後の改善が挙げられる。例えば、個体は、がん性細胞の増殖の低減(若しくは破壊)、疾患に起因する病徴の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬剤の用量の低減、及び/又は個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、がんに関連する1つ以上の病徴が軽減又は排除された場合、「処置」に成功する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、(i)特定の疾患、症状、又は障害を処置又は予防する、(ii)特定の疾患、症状、又は障害の1つ以上の病徴を減弱、改善、又は排除する、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、症状、又は障害の1つ以上の病徴の発症を予防又は遅延させる1つ以上の薬物化合物の量を指す。がんの場合、治療有効量の薬物は、がん細胞の数を低下、腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍成長をある程度阻害、及び/又はがんに関連する病徴のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。既存のがん細胞の成長を防止する、及び/又はそれらを死滅させ得る程度まで、薬物は、細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性であり得る。がん治療の場合、有効性は、例えば、全奏効率(ORR)を評価することによって測定することができる。治療有効量は、本明細書において、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を引き起こす薬剤の能力といった因子によって変動しうる。治療有効量はまた、処置の毒性又は有害な効果が治療上有益な効果によって上回る量である。予防的使用の場合、有益な又は所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は挙動的病徴、その合併症、並びに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除又は低減、疾患の重症度の軽減、又は疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益な又は所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の病徴の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患を処置するために必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。がん又は腫瘍の場合、治療有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、又は望ましくは停止させ)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、又は望ましくは停止させ)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/又は障害に関連する病徴のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。治療有効量を、1回以上の投与で投与することができる。本発明の目的のために、薬物、化合物、医薬組成物、又は医薬製剤の治療有効量は、予防的又は治療的処置を直接的又は間接的に達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、治療有効量の薬物、化合物、又は医薬組成物は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と組み合わせて達成されてもよく、又は達成されなくてもよい。したがって、「治療有効量」は、1つ以上の治療剤の投与との関連で考慮され得、1又は複数の他の作用物質と組み合わせて、望ましい結果が達成され得るか、又は達成されれば、単一の薬剤は治療有効量で与えられると考えられ得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」は、別の処置様式に加えて1つの処置様式の投与を指す。したがって、「と組み合わせて」とは、個体への他の処置様式の投与前、投与中、又は投与後の1つの処置様式の投与を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒な更なる成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤物は、無菌である。「薬学的に許容され得る」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0028】
本明細書で使用される場合、最大、最小、又は他のメトリックに関する「C」は、血漿中の薬物濃度を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「濃度曲線下面積」(area under concentration curve:AUC)は、適合された血漿濃度対時間曲線下面積を指す。AUC0-∞は、曲線下面積ベースライン-無限大を指す。AUC0-Tは総曝露量である。
【0030】
本明細書において使用される場合、「阻害する」は、阻害剤の非存在下における標的酵素の活性と比較した、標的酵素の活性の減少を指す。いくつかの態様では、「阻害する」という用語は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の活性の減少を意味する。他の態様では、阻害するとは、約5%~約25%、約25%~約50%、約50%~約75%又は約75%~100%の活性の減少を意味する。いくつかの態様では、阻害は、約95%~100%の活性における低下、例えば、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の活性における減少を意味する。そのような減少は、当業者によって認識され得る様々な技術を使用して測定することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(progression free survival:PFS)は、疾患の処置から疾患の進行又は再発の最初の発生までの時間を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」(partial response:PR)は、ベースラインの直径の合計を参照として、標的病変の直径の合計における少なくとも30%の減少を指す。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、「完全奏効」(complete response:CR)とは、全ての標的病変の消失のことを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、疾患の「進行の遅延」とは、疾患(がんなど)の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、かつ/又は延ばすことを意味する。この遅延は、疾患歴及び/又は処置される個体に応じて様々な期間であり得る。当業者には明らかであるように、十分な又は大幅な遅延は、実質的に、個体が疾患を発症しないという予防を包含しうる。例えば、転移の発症等の末期がんを遅延させ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」(progressive disease:PD)は、ベースライン及び少なくとも5mmの絶対的な増加を含む研究上の最小合計(最下点)を参照として、標的病変の直径の合計の少なくとも20%の増加を指す。1つ以上の新しい病変の出現も進行と見なされる。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、「全奏効率」(overall response rate:ORR)とは、RECIST v1.1を使用して研究者によって求められるとき、ランダム化後に生じ、28日目以上の後に確認されたPR又はCRの率のことを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「奏効期間」(duration of response:DOR)は、RECIST v1.1又は試験中の任意の原因による死亡を使用して治験責任医師によって決定された、実証された客観的奏効の最初の発生から再発までの時間のうち、いずれか早く発生する時間を指す。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、用語「RAF阻害剤」とは、RASの下流のMAPKシグナル伝達経路において3つのサブタイプ(A-RAF、B-RAF、C-RAF)のうちの少なくとも1つを阻害する分子のことを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「MAPK」という用語は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路又はシグナル伝達経路を指す。Ras-Raf-MEK-ERK経路、MAPK経路とも呼ばれ、細胞の表面上の受容体からのシグナルを細胞の核内のDNAに伝達する細胞内のタンパク質の鎖又は経路である。MAPK経路において、活性化RASはRAFキナーゼのプロテインキナーゼ活性を活性化し、RAFキナーゼはMEK(MEK1及びMEK2)をリン酸化して活性化し、MEKはマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ERK 1及びERK 2(MAPK3及びMAPK1)をリン酸化して活性化する。MAPKはリボソームタンパク質S6キナーゼ(RPS6KA1;RSK)をリン酸化する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「PD-1軸阻害剤」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能不全を除去するようにPD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、標的細胞死滅)を復元又は増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、及びPD-L2阻害剤を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「PD-1阻害剤」という用語は、PD-1の、1つ以上のその結合パートナー、例えば、PD-L1及び/又はPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、その結合パートナーの1つ以上のPD-1の結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1阻害剤は、PD-1のPD-L1及び/又はPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、並びにPD-1のPD-L1及び/又はPD-L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「PD-L1阻害剤」という用語は、PD-L1と1つ以上のその結合パートナー、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のPD-1及び/又はB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L1と1つ以上のその結合パートナー、例えば、PD-1、B7-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1阻害剤は、機能障害性T細胞の機能障害をより少なくする(例えば、抗原認識に対するエフェクタ応答の増強)ために、PD-L1を介したシグナル伝達によって媒介されるTリンパ球上に発現される細胞表面タンパク質によって媒介されるか又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを減少させる。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「PD-L2阻害剤」という用語は、PD-L2と1つ以上のその結合パートナー、例えば、PD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止又は妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L2阻害剤は、1つ以上のその結合パートナーへのPD-L2の結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2阻害剤は、PD-L2のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L2阻害剤は、抗PD-L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD-L2と、1つ以上のその結合パートナー、例えばPD-1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止又は妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L2阻害剤は、PD-L2を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によって又はそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクタ応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD-L2阻害剤は、イムノアドヘシンである。
【0044】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない塩を意味する。薬学的に許容され得る塩には、酸付加塩及び塩基付加塩の両方が含まれる。「薬学的に許容され得る」という語句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分及び/又はそれを用いて処置されている哺乳動物と、化学的及び/又は毒物学的に適合性であることを示す。酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸などの無機酸と、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシラート」、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びサリチル酸などの有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸、及びスルホン酸類から選択される有機酸と、で形成される。塩基付加塩は、有機塩基又は無機塩基を用いて形成される。許容され得る無機塩基の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、及びアルミニウム塩が挙げられる。薬学的に許容され得る有機非毒性塩基に由来する塩には、天然の置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、及びポリアミン樹脂を含む、第一級、第二級、及び第三級アミン、置換アミンの塩が含まれる。
【0045】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。
【0046】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定及び分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の夾雑物成分は、抗体の試験的、診断的、又は治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニング・カップ・シークエネーターを使用して、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)例えば、クマシーブルー又は銀染色を使用して、還元又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0047】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結されるが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に接触面を形成すると考えられている。
【0048】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含む可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、並びに軽鎖のCHL(又はCL)ドメインを含有する。
【0049】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般的に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含む。
【0050】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、且つ各特定の抗体の特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方の超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクタ機能を呈する。
【0051】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類のうちの一方に割り当てられ得る。
【0052】
本明細書において使用されるIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、その定常領域の化学特性及び抗原特性によって決まる免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
【0053】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分ける場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成が周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0054】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0055】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多特異性抗体が挙げられる。
【0056】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処置は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0057】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上に抗原結合部位を規定するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)であっても、全結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0058】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されているという点でFab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0059】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、PluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0060】
「ダイアボディ」という用語は、二つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、その断片は、同一ポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは二価でも二特異性でもよい。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)において、より完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載がある。
【0061】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
【0062】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)におけるもの)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照されたい)、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全てを有する動物において、ヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号、国際公開第1996/34096号、国際公開第1996/33735号、国際公開第1991/10741号、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照されたい)によって作製され得る。
【0063】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体にとしては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的とする抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0064】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体の性能を更に洗練させるために行われ得る。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含み、超可変ループのうちの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994)、並びに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
【0065】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生され、且つ/又は本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当技術分野で既知の様々な技法を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991).Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に使用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)もまた、参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してこのような抗体を産生するよう改変されているが、その内在性遺伝子座は無能になっているトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製することが可能である(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0066】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳動物種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳動物種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に」結合する(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上記で定義した様々なタイプの抗体のいずれかであり得るが、好ましくはヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)及びVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。天然抗体では、H3及びL3が、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる、天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0068】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含されている。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(Chothia及びLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(Kabatナンバリング)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothiaナンバリング)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0069】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36又は24~34(L1)、46~56又は50~56(L2)、及び89~97又は89~96(L3)、並びにVHにおいて、26~35(H1)、50~65又は49~65(H2)、及び93~102、94~102、又は95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0070】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0071】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatにあるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリング方式を使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0072】
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」又は「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0073】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapataら(1995 Protein Eng,8(10):1057-1062)に記載されている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって抗原結合領域の対を形成するタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性であり得る。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「結合する」、「に特異的に結合する」、又は「に特異的な」という用語は、生物学的分子等の異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、又はそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、及び/又はより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、又は0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は排他的結合を含むことができるが、これを必要としない。
【0075】
「検出」という用語は、直接的及び間接的検出を含む、任意の検出手段を含む。
【0076】
治療剤
本開示は、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤の組み合わせを使用して、対象における変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんを処置する。いくつかの態様では、(i)RAF阻害剤はベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩であり、(ii)PD-1軸阻害剤はPD-L1阻害剤であり、より具体的にはPD-L1阻害剤はアテゾリズマブ(商品名TECENTRIQ(登録商標))である。
【0077】
本明細書に開示されている化合物は、当技術分野において公知の任意の適切な様式で投与され得る。いくつかの態様では、化合物は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、腫瘍内又は鼻腔内投与され得る。
【0078】
活性化合物の適切な用量は、当該技術分野の医師の知識内の多数の因子に左右されると理解されている。活性化合物の用量は、例えば、対象の年齢、体重、全般的な健康、性別及び食事、投与の時点、投与の経路、排泄の速度及び任意の薬物の組み合わせに応じて変動するであろうことが理解される。
【0079】
処置に使用される本開示の化合物又はその薬学的に許容され得る塩、プロドラッグ、代謝産物若しくは誘導体の有効投与量は、特定の処置の経過にわたって増加又は減少し得ることも理解されよう。投与量の変化は、診断アッセイの結果から生じ、明らかとなり得る。
RAF阻害剤
【0080】
本開示の範囲内のRAF阻害剤の例としては、ベルバラフェニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブが挙げられる。
【0081】
ベルバラフェニブは、PCT出願国際公開第2013/100632号に開示されており、化学名4-アミノ-N-(1-((3-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ)-6-メチルイソキノリン-5-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-7-カルボキサミド(本明細書では式(I)と呼ばれる)を有し、以下:
式(I)
の化学構造を有する。
【0082】
ベルバラフェニブは忍容性が高く、対象における特定の脳がんの処置に有効であることが発見されている。本開示の範囲内の対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ又はネコを含むがこれらに限定されない哺乳動物である。いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0083】
ベルバラフェニブは、BRAF及びCRAFアイソフォームの選択的阻害を提供する高度に強力かつ選択的なII型RAF二量体阻害剤(汎RAF阻害剤)である。BRAFV600選択的単量体阻害剤とは対照的に、ベルバラフェニブは、非BRAFV600変異体細胞中のMAPK経路を活性化せず、代わりに、BRAF及びCRAF二量体を阻害することによってMAPKシグナル伝達の抑制を維持し、BRAFV600及びRAS変異体腫瘍の両方において低下した細胞増殖及び増加した抗腫瘍活性をもたらす。
【0084】
ベルバラフェニブは、BRAF又はRAS変異体黒色腫、NSCLC及びCRC細胞株中のMAPK経路におけるMEK及びERKのリン酸化を阻害する。ベルバラフェニブは、BRAF又はRAS変異体黒色腫、NSCLC、CRC及び甲状腺がん細胞株の成長をインビトロで阻害することが実証されている。
【0085】
ベルバラフェニブは、インビトロで、BRAFV600E変異体(IC50=7nM)、BRAF野生型(IC50=41nM)及びRAF-1(CRAF)(IC50=2nM)を含むRAFキナーゼの強力かつ選択的な阻害剤である。189のキナーゼアッセイのパネルで試験された場合、ベルバラフェニブは、7つの他の受容体チロシンキナーゼ(RTK)(コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、以前のマクドナフネコ肉腫(FMS)ホモログ、ジスコイジンドメイン受容体チロシンキナーゼ1(DDR1)、ジスコイジンドメイン受容体チロシンキナーゼ2(DDR2)、EPHA2、EPHA7、EPHA8及びEPHB2)に対して、1μMで>90%の阻害を有する阻害活性を示した。
【0086】
ベルバラフェニブのインビトロ抗腫瘍効果は、様々なマウス異種移植モデルにおける有効性に移行した。ベルバラフェニブは、BRAF及びNRAS変異体黒色腫に対する、KRAS変異非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、並びにBRAF変異体結腸直腸がん(CRC)マウス異種移植モデルに対する単剤治療として、マウス異種移植モデルにおいて腫瘍成長の用量依存的阻害を示す。
【0087】
ベルバラフェニブは、いくつかのがんに対して安全かつ有効な治療法を提供することが臨床試験において示されている。
【0088】
例えば、完了した非盲検の第Ia相用量漸増は、BRAF、KRAS又はNRAS遺伝子中に変異を保有する固形腫瘍を有する患者において、ベルバラフェニブのいくつかの用量及びスケジュールを調べた。少なくとも1回のベースライン後の腫瘍評価を受けた72名の対象のうち67名について、有効性を分析した。最良全奏効率(BORR)は8.96%(6/67の対象)であり、客観的奏効率(ORR)は4.48%(3/67の対象)であり、確認された最良全奏効としての部分奏効(PR)であった(黒色腫を有する2名の対象及び消化管間質腫瘍を有する1名の対象)。ベルバラフェニブ100mg1日1回用量レベル又はそれを上回るレベルで処置された対象の50.57%(34/67)において疾患制御が観察された。59名(88.06%)の対象が事象(疾患の進行又は死亡)を発症し、その全てが進行性疾患(PD)として報告された。更に、無増悪生存期間の中央値は11.53週であり、中央値の95%信頼区間は[7.12週、13.38週)であった。更新された結果では、BORRは10.45%(7/67対象)であり、95%正確信頼区間は[4.30%、20.35%]であった。ORRは4.48%のままである(3/67対象)。更に、BRAF変異体黒色腫対象に対するサブグループ再分析は、7.69%(1/13の対象)のBORRを示し、DCR、PFSの中央値及び進行までの時間は全対象において変化しなかった。DOR中央値は、800mg1日2回群では30.18週に上昇し、100.29週である対象のDORを含む合計群では23.99週に上昇した。
【0089】
別の非盲検第Ib相用量拡大試験では、BRAF、KRAS又はNRAS遺伝子中に変異を保有する固形腫瘍を有する患者において、ベルバラフェニブを450mg1日2回の用量で評価した。登録後に少なくとも1用量のベルバラフェニブを服用し、ベースライン後に少なくとも1回の腫瘍評価を受けた63名の対象のうち59名について有効性を分析した。BORRは11.86%(7/59対象)であり、ORRは6.78%(4/59対象)であり、確認された最良全奏効としてのPRであった(黒色腫を有する3名の対象及びCRCを有する1名の対象)。対象の35.59%(21/59)において、疾患制御が観察された。59名の対象のうち50名(84.75%)が事象(疾患の進行又は死亡)を発症し、1名の死亡例を除いてその全てがPDとして報告された。更に、無増悪生存期間(PFS)の中央値は7.83週間であり、中央値の95%信頼区間は[7.26週間、8.26週間]であった。この研究における全奏効の奏効期間(DOR)の中央値は、奏効者7名からの15.66週間であった。これらのうち、2名のBRAF変異体黒色腫奏効者は、22.49週間のDOR中央値を示した。
【0090】
健康な対象における別の第I相、単回用量、無作為化、クロスオーバー相対バイオアベイラビリティ及び食物効果研究では、第I相から第II相錠剤への製剤変更の、ベルバラフェニブ曝露に対する影響を評価した。合計18人の健康な対象が試験に登録され、以下の無作為化された処置を受けた:摂食状態で1錠の150mg及び1錠の50mg第I相錠剤、摂食状態で2錠の100mg第II相錠剤又は絶食状態で2錠の100mg第II相錠剤、処置間に18日間の休薬を設ける。絶食状態と比較して摂食状態では、ベルバラフェニブ曝露に対する食物のプラスの効果が存在した。ベルバラフェニブ曝露、Cmax及びAUC0-infは、200mgの単回用量で健康な対象にベルバラフェニブを摂食状態で投与した場合、絶食状態と比較して、それぞれ約2.2倍及び2.8倍増加された。この研究では、重篤な有害事象、特別な関心のある有害事象又は死亡は報告されなかった。
【0091】
ベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩は、1日当たり約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、又は約1500mg、及びそれらから構築される任意の範囲で適切に投与され、投与量は活性成分に基づく。適切なベルバラフェニブの1日用量範囲は、約100mg~約1500mg、約250mg~約1250mg、約500mg~約1000mg、又は約700mg~約900mgであり得る。いくつかの態様では、対象は、1日の総用量を達成するために、ベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩により1日あたり2回処置される。いくつかのこのような態様では、対象は、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg又は約500mgのベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩で1日に2回処置される。他の投与レジメンを使用して、1日3回又は1日4回などの1日の総用量を達成することができる。1日2回、3回又は4回などの任意のそのような投与レジメンでは、各用量は適切にはほぼ等しくてもよい。例えば、1日用量が900mgである場合、それぞれ450mgの1日2回用量又はそれぞれ300mgの1日3回用量を使用することができる。
【0092】
いくつかの態様では、ベルバラフェニブは、28日間のサイクルの第1~21日目に投与される場合がある。いくつかの態様では、ベルバラフェニブは、28日間のサイクルの第1~28日目に投与される場合がある。
【0093】
PD-1軸阻害剤
本開示によれば、PD-1軸阻害剤は、より具体的には、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はPD-L2阻害剤を指し得る。「PD-1」の代替名には、CD279及びSLEB2が含まれる。「PD-L1」の代替名には、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hが含まれる。「PD-L2」の代替名には、B7-DC、Btdc及びCD273が含まれる。いくつかの実施形態では、PD-1、PD-L1及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1及びPD-L2である。
【0094】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/又はPD-L2である。別の実施形態では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナーは、PD-1及び/又はB7-1である。別の実施形態では、PD-L2阻害剤は、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合パートナーはPD-1である。阻害剤は、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ラムブロリズマブ及びCT-011からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、AMP-224である。ニボルマブは、MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても知られており、国際公開第2006/121168号に記載されている抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブは、MK-3475、Merck3475、ラムブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、及びSCH-900475としても知られており、国際公開第2009/114335号に記載されている抗PD-1抗体である。hBAT又はhBAT-1としても知られるCT-011は、国際公開第2009/101611号に記載の抗PD-1抗体である。AMP-224は、B7-DCIgとしても知られており、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。なお更なる実施形態では、配列番号1の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は配列番号2の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD-1抗体が提供される。なお更なる実施形態では、重鎖配列及び/又は軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)の重鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、以下:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)の軽鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブ(CAS登録番号:1374853-91-4)である。なお更なる実施形態では、配列番号3の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は配列番号4の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD-1抗体が提供される。なお更なる実施形態では、重鎖配列及び/又は軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下:
QVQLVQSGVE VKKPGASVKV SCKASGYTFT NYYMYWVRQA PGQGLEWMGG INPSNGGTNF NEKFKNRVTL TTDSSTTTAY MELKSLQFDD TAVYYCARRDYRFDMGFDYW GQGTTVTVSS ASTKGPSVFP LAPCSRSTSE STAALGCLVKDYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTKTYTCNVDHKPS NTKVDKRVES KYGPPCPPCP APEFLGGPSV FLFPPKPKDTLMISRTPEVT CVVVDVSQED PEVQFNWYVD GVEVHNAKTK PREEQFNSTYRVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKGLPS SIEKTISKAK GQPREPQVYTLPPSQEEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE WESNGQPENN YKTTPPVLDSDGSFFLYSRL TVDKSRWQEG NVFSCSVMHE ALHNHYTQKS LSLSLGK(配列番号3)の重鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、以下:
EIVLTQSPAT LSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHWYQQKPGQAPRL LIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVT KSFNRGEC(配列番号4)の軽鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。
【0098】
いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1阻害剤は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105及びMEDI4736からなる群から選択される。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載されている抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70(重鎖及び軽鎖可変領域はそれぞれ配列番号5及び6に示される)は、国際公開第2010/077634号に記載されている抗PD-L1である。MEDI4736は、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載されている抗PD-L1抗体である。
【0099】
本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例、及びそれらを作製するための方法は、PCT特許出願の国際公開第2010/077634号A1及び米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、PD-1軸阻害剤は、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間及び/又はPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0101】
本発明において有用な抗PD-L1抗体は、そのような抗体を含有する組成物、例えば国際公開第2010/077634号に記載されているものを含む。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、配列番号7又は8(Infra)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号9(Infra)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0102】
一実施形態では、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを含有し、
(a)HVR-H1配列は、GFTFSX1SWIH(配列番号10)であり;
(b)HVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号11)であり;
(c)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号12)であり;
更に、X1はD又はGであり、X2はS又はLであり、X3はT又はSである。
【0103】
1つの特定の態様では、X1はDであり、X2はSであり、X3はTである。別の態様では、ポリペプチドは、以下の式に従ってHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列を更に含む:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下:
HC-FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号13)であり
HC-FR2は、WVRQAPGKGLEWV(配列番号14)であり
HC-FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)であり
HC-FR4は、WGQGTLVTVSA(配列番号16)である
である。
【0104】
なお更なる態様では、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組み合わされ、
(a)HVR-L1配列は、RASQX4X5X6TX7X8A(配列番号17)であり;
(b)HVR-L2配列は、SASX9LX10S、(配列番号18)であり;
(c)HVR-L3配列は、QQX11X12X13X14PX15T(配列番号19)であり;
更に、X4はD又はVであり;X5はV又はIであり;X6はS又はNであり;X7はA又はFであり;X8はV又はLであり;X9はF又はTであり;X10はY又はAであり;X11は、Y、G、F又はSであり;X12は、L、Y、F又はWであり;X13は、Y、N、A、T、G、F又はIであり;X14は、H、V、P、T又はIであり、X15は、A、W、R、P又はTである。
【0105】
なお更なる態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。なお更なる態様では、軽鎖は、軽鎖は更に、以下の式に従ってHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を含む:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)。なお更なる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なお更なる態様では、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下:
LC-FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号20)であり
LC-FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号21)であり
LC-FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号22)であり
LC-FR4は、FGQGTKVEIKR(配列番号23)である
である。
【0106】
別の実施形態では、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体又は抗原結合断片が提供され、
重鎖は含み、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3、更に、
(i)HVR-H1配列は、GFTFSX1SWIH(配列番号10)であり
(ii)HVR-H2配列はAWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号11)であり
(iii)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY、及び(配列番号12)であり
軽鎖は含み、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3、更に、
(i)HVR-L1配列は、RASQX4X5X6TX7X8A(配列番号17)であり
(ii)HVR-L2配列は、SASX9LX10S;及び(配列番号18)であり
(iii)HVR-L3配列は、QQX11X12X13X14PX15T;(配列番号19)であり、
【0107】
更に、X1はD又はGであり;X2はS又はLであり;X3はT又はSであり;X4はD又はVであり;X5はV又はIであり;X6はS又はNであり;X7はA又はFであり;X8はV又はLであり;X9はF又はTであり;X10はY又はAであり;X11は、Y、G、F又はSであり;X12は、L、Y、F又はWであり;X13は、Y、N、A、T、G、F又はIであり;X14は、H、V、P、T又はIであり;X15は、A、W、R、P又はTである。
【0108】
特定の態様では、X1はDであり、X2はSであり、X3はTである。別の態様では、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり;X15はAである。更に別の態様では、X1はDであり;X2はSであり、X3はTであり、X4はDであり;X5はVであり;X6はSであり;X7はAであり;X8はVであり;X9はFであり;X10はYであり;X11はYであり;X12はLであり;X13はYであり;X14はHであり、X15はAである。
【0109】
更なる態様では、重鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)を含み、軽鎖可変領域は、軽鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)を含む。なお更なる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の重鎖フレームワーク配列は以下:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号13)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号14)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号16)
のとおりである。
【0110】
なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来する。なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の軽鎖フレームワーク配列は以下:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号20)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号21)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号22)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号23)
のとおりである。
【0111】
なお更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウスの定常領域を更に含む。なお更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なお更なる特定の態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なお更なる特定の態様では、抗体は、低下した又は最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc突然変異」又はアグリコシル化に起因する。なお更なる一実施形態では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0112】
なお別の実施形態では、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖は更に含み、GFTFSDSWIH(配列番号24)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号25)、及びRHWPGGFDY(配列番号12)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列、又は
(b)軽鎖はそれぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号26)、SASFLYS(配列番号27)、及びQQYLYHPAT(配列番号28)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列を更に含む。
【0113】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)を含み、軽鎖可変領域は、軽鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)を含む。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の重鎖フレームワーク配列は以下:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号13)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号14)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号16)
のとおりである。
【0114】
なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来する。なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の軽鎖フレームワーク配列は以下:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号20)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号21)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号22)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号23)
のとおりである。
【0115】
なお更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウスの定常領域を更に含む。なお更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なお更なる特定の態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なお更なる特定の態様では、抗体は、低下した又は最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc突然変異」又はアグリコシル化に起因する。なお更なる実施形態では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0116】
なお更なる実施形態では、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号29)と少なくとも85%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号9)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0117】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)を含み、軽鎖可変領域は、軽鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)を含む。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列由来である。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の重鎖フレームワーク配列は以下:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号13)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号14)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号16)
のとおりである。
【0118】
なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来する。なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の軽鎖フレームワーク配列は以下:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号20)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号21)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号22)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号23)
のとおりである。
【0119】
なお更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウスの定常領域を更に含む。なお更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なお更なる特定の態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なお更なる特定の態様では、抗体は、低下した又は最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、原核細胞内での産生に起因する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc突然変異」又はアグリコシル化に起因する。なお更なる実施形態では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0120】
別の更なる実施形態では、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)と少なくとも85%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号9)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0121】
なお更なる実施形態では、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWI SPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号8)と少なくとも85%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号9)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0122】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)を含み、軽鎖可変領域は、軽鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)を含む。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列由来である。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の重鎖フレームワーク配列は以下:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号13)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号14)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)
HC-FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号30)
のとおりである。
【0123】
なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来する。なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の軽鎖フレームワーク配列は以下:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号20)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号21)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号22)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号23)
のとおりである。
【0124】
なお更なる特定の態様では、抗体は、ヒト又はマウスの定常領域を更に含む。なお更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なお更なる特定の態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。なお更なる特定の態様では、抗体は、低下した又は最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、原核細胞内での産生に起因する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc突然変異」又はアグリコシル化に起因する。なお更なる実施形態では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0125】
なお別の実施形態では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ又はMPDL3280A(CAS登録番号:1380723-44-3)である。なお更なる実施形態では、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)又はEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWI SPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号8)からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIY SASF LYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号9)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む単離された抗PD-L1抗体が提供される。なお更なる実施形態では、重鎖配列及び/又は軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有するか:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号31)、及び/又は
(b)前記軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号32)。
【0126】
なお更なる実施形態では、抗PD-L1抗体の軽鎖可変領域配列又は重鎖可変領域配列をコードする単離された核酸が提供され、
(a)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号24)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号25)、及びRHWPGGFDY(配列番号12)と少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列を更に含み、
(b)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号26)、SASFLYS(配列番号27)、及びQQYLYHPAT(配列番号28)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列を更に含む。
【0127】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。一態様では、重鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)を含み、軽鎖可変領域は、軽鎖可変領域は、以下のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)を含む。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列由来である。なお更なる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の重鎖フレームワーク配列は以下:
HC-FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号13)
HC-FR2 WVRQAPGKGLEWV(配列番号14)
HC-FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号15)
HC-FR4 WGQGTLVTVSA(配列番号16)
のとおりである。
【0128】
なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来する。なお更なる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる態様では、1つ以上の軽鎖フレームワーク配列は以下:
LC-FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号20)
LC-FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号21)
LC-FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号22)
LC-FR4 FGQGTKVEIKR(配列番号23)
のとおりである。
【0129】
なお更なる特定の態様では、本明細書に記載の抗体(抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、又は抗PD-L2抗体等)は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。なお更なる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なお更なる特定の態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。なお更なる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。更なる特定の態様では、抗体は、低下した又は最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、原核細胞内での産生に起因する。なお更なる特定の態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc突然変異」又はアグリコシル化に起因する。なお更なる態様では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内でのN297A又はD265A/N297A置換である。
【0130】
なおなお更なる態様では、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする核酸が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、前述の抗PD-L1、抗PD-1、又は抗PD-L2抗体のうちのいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターを更に含む。なお更なる特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞を更に含む。なお更なる特定の態様では、宿主細胞は真核細胞又は原核細胞である。なお更なる特定の態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)等の哺乳類細胞である。
【0131】
本抗体又はその抗原結合断片は、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、前述の抗PD-L1、抗PD-1、若しくは抗PD-L2抗体、又は抗原結合断片のうちのいずれかをコードする核酸を発現に好適な形態で含有する宿主細胞をかかる抗体又は断片の産生に好適な条件下で培養することと、その抗体又は断片を回収することとを含むプロセスによって作製され得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、単離された抗PD-L1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型又はO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1種が除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、又はトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン又は保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0133】
これに関して、単剤として投与されたアテゾリズマブの薬物動態は、試験PCD4989gからの臨床データに基づいて特徴付けられており、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の一次処置における現在進行中の第III相研究の国際公開第29522号と一致することに留意すべきである。アテゾリズマブ抗腫瘍活性は、1~20mg/kgの用量にわたって観察されている。全体として、アテゾリズマブは、3週間毎に1mg/kg以上の用量(q3w)について、線形であり、典型的なIgG1抗体と一致する薬物動態を示す。薬物動態データ(Bai S,Jorga K,Xin Y,et al.,A guide to rational dosing of monoclonal antibodies,Clin Pharmacokinet 2012;51:119-35,incorporated by reference herein in its entirety、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、固定用量又は体重に対して調整された用量後の曝露における臨床的に有意な差を示唆していない。q3w及びq2wのアテゾリズマブ投与スケジュールを試験した。2週間(q2w)毎の800mgのアテゾリズマブの固定用量(10mg/kgq2wの体重ベースの用量に相当)は、3週間(q3w)毎に投与される1200mgの第III相用量と同等の曝露をもたらす。q3wスケジュールは、複数の腫瘍型にわたるアテゾリズマブ単剤治療の複数の第III相研究で使用されており、q2wは主に化学療法レジメンと組み合わせて使用される。試験PCD4989gでは、Kaplan-Meier推定全24週間無増悪生存期間(PFS)は33%(95% CI:12%、53%)であった。
【0134】
本開示のPD-1軸阻害剤用量は、適切には約400mg~約1200mg、約600mg~約1000mg、約700mg~約900mg、又は約840mgである。いくつかの態様では、PD-1軸阻害剤は、PD-L1阻害剤であり、より具体的には、約840mgの用量で投与されるアテゾリズマブである。
【0135】
特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤、又はより具体的にはPD-L1阻害剤は、28日間の処置サイクルの14日間毎に静脈内投与される。いくつかの態様では、対象は、28日間の処置サイクルの1日目及び15日目に、PD-1軸阻害剤により、より具体的にはPD-L1阻害剤により処置される。
【0136】
変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがん
いくつかの態様では、本開示の方法による処置のための変異MAPKシグナル伝達経路を有するがんは、黒色腫、肺、乳房、結腸直腸(CRC)、膀胱、胆嚢、腎芽腫、消化管間質腫瘍(GIST)、前立腺、神経膠芽腫、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、甲状腺、胆管、腺癌、絨毛癌腫、肉腫及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様では、黒色腫、腎芽腫、GIST、CRC、肉腫、胆嚢がん、膀胱がん、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0137】
いくつかの態様では、がんは、NRAS変異、KRAS変異又はRAF変異を有する。いくつかのこのような態様では、がんは、BRAF V600E変異、KRAS G12V変異、KRAS G12D変異、KRAS G12C変異、KRAS Q61H変異、NRAS G13D変異、NRAS G12D変異、NRAS Q61K変異、NRAS Q61R変異、及びNRAS G12C変異から選択される少なくとも1つの変異を有する。
【0138】
いくつかの態様では、がんはRAF変異を有する。いくつかのそのような態様では、がんはBRAF V600E変異を有する。いくつかのそのような態様では、がんが、BRAF V600Eを有する腎芽腫、BRAF V600E変異を有する黒色腫、BRAF V600E変異を有するGIST、BRAF V600E変異を有するCRC、及びそれらの組み合わせから選択される。他のこのような態様では、がんが、BRAF V600E変異を有する黒色腫、BRAF V600E変異を有する腎芽腫、BRAF V600E変異を有するGIST、及びそれらの組み合わせである。他のこのような態様では、がんが、BRAF V600E変異を有する黒色腫、BRAF V600E変異を有するGIST、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかのそのような態様では、黒色腫は転移性又は切除不能である。
【0139】
いくつかのNRAS/KRASの態様では、がんが転移性又は切除不能の黒色腫である。
【0140】
いくつかのそのような態様では、がんは、NRAS変異を有する黒色腫である。
【0141】
いくつかのNRAS/KRASの態様では、KRAS G12V変異を有する肉腫、NRAS G13D変異を有する黒色腫、NRAS G12D、NRAS Q61K変異を有する黒色腫、NRAS Q61R変異を有する黒色腫、NRAS G12C変異を有する黒色腫、KRAS G12D変異を有する胆嚢がん、KRAS G12C変異を有するCRC、KRAS Q61H変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有する膀胱がん、KRAS G12V変異を有する膀胱がん、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0142】
他のNRAS/KRASの態様では、がんが、KRAS G12V変異を有する肉腫、NRAS G13D変異を有する黒色腫、NRAS G12D変異、NRAS G12C変異を有する黒色腫、KRAS G12D変異を有する胆嚢がん、KRAS G12C変異を有するCRC、KRAS Q61H変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有するCRC、KRAS G12D変異を有する膀胱がん、KRAS G12V変異を有する膀胱がん、及びそれらの組み合わせである。いくつかのそのような態様では、がんは、KRAS G12V変異を有する肉腫、NRAS G13D変異を有する黒色腫、NRAS Q61K変異を有する黒色腫、NRAS Q61R変異を有する黒色腫、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0143】
併用治療
RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤の併用治療は、MAPKシグナル伝達経路を標的とし、本実験的証拠に基づいて、併用治療は、変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんにおいて相乗的な抗腫瘍活性をもたらすと考えられる。本開示の併用治療は、そのようながんを有する対象の無増悪生存期間の中央値を延長し得ると更に考えられる。本併用治療は、例えばBRAF V600E変異などのRAF変異を有する転移性及び/又は切除不能黒色腫の処置に特に有用であると考えられる。
【0144】
更に、ベルバラフェニブなどのRAF阻害剤、及びアテゾリズマブなどのPD-1軸阻害剤を組み合わせることにより、変異MAPKシグナル伝達経路を特徴とするがんを有する患者に、化学療法ベースのレジメンと比較して毒性が低下した積極的処置を提供すると考えられる。更に、本発明の併用治療の作用機序は従来の化学療法レジメンとは異なるので、更なる標準的治療の活性は有意に影響されず、進行性疾患を有する患者が処置を継続することを可能にすると更に考えられる。
【0145】
これに関して、組み合わせの列挙された成分の列挙された投与量範囲の任意の組み合わせが、本開示の意図された範囲から逸脱することなく使用され得ることに留意されたい。本開示のいくつかの態様では、以下を含むがん治療薬の組み合わせが提供される:(i)約250mg~約500mg、又は約350mg~約450mgのベルバラフェニブ又はその薬学的に許容され得る塩の1日2回の用量のRAF阻害剤;(ii)約400mg~約1200mg、約600mg~約1000mg、約700mg~約900mg又は約840mgの用量のPD-1軸阻害剤。特定の一態様では、RAF阻害剤はベルバラフェニブであり、PD-L1阻害剤はアテゾリズマブである。
【0146】
対象が同じ日に薬物組み合わせ(すなわち、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤)を投与される場合、薬物は任意の順序で別々に投与され得る。いくつかの態様では、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤はそれぞれ同日に投与され、RAF阻害剤はPD-1軸阻害剤の投与前、投与後、又は投与と同時に投与される。薬物組み合わせの各薬物の投与は、0.5時間、1時間、2時間、3時間又は4時間などのある期間だけ離れていてもよい。いくつかの特定の態様では、ベルバラフェニブは経口投与され得、アテゾリズマブは静脈内投与され得る。そのような態様では、ベルバラフェニブは、アテゾリズマブの前又は後に投与されてもよく、又はそれらは同時に又は時間的に密接に離間して投与されてもよい。いくつかの態様では、RAF阻害剤及びPD-1軸阻害剤はそれぞれ、28日間の処置サイクルの1及び15日目に投与され、RAF阻害剤は、28日間の処置サイクルの1から21日目又は28日間の処置サイクルの1から28日目に投与される。
【0147】
いくつかの態様では、RAF阻害剤は食物と共に投与される。
【0148】
いくつかの態様では、対象には、抗PD-1薬又は抗PD-L1薬による一連の処置を以前に投与された。
【0149】
いくつかの態様では、本開示による方法による治療の前に、対象は、免疫治療、BRAF V600E治療、又は免疫治療とBRAF V600E治療の組み合わせによる処置後に疾患進行を経験した。
【0150】
いくつかの態様では、がんを処置するための方法は、ヒト対象における扁平上皮癌腫の発生の非存在を特徴とする。
【実施例】
【0151】
Hanmi Research Centerの動物実験委員会は、実施例の動物実験プロトコルを承認した。
【0152】
実施例1
【0153】
実施例1では、変異体K1735皮下マウスモデルにおいて、ベルバラフェニブ単剤治療、アテゾリズマブ単剤治療、ベルバラフェニブとアテゾリズマブとの併用治療の有効性を評価した。
【0154】
マウス系統は、K1735同系モデルに広く使用されているC3H/HeNCrlOriであった。マウスは、Orient Bio Inc.(韓国)によって供給された。マウスは雌であり、投与開始時に9~11週齢であり、19~26グラムの体重範囲を有していた。
【0155】
細胞株はK1735であり、American Type Culture Collection(ATCC)によって供給された。K1735細胞は、NRASG13D変異を有する黒色腫細胞である。細胞培養インビトロ培地は、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)10%ウシ胎児血清(FBS)であり、インキュベーションは5% CO2及び37℃であった。K1735同系モデルの場合、がん細胞(1.5×108細胞/10mL)をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)と混合し、0.1mL/頭で皮下注射した。群あたり7匹の動物を、ビヒクル(対照)、7.5mg/kgのベルバラフェニブ単剤治療、15mg/kgのベルバラフェニブ単剤治療、10mg/kgのアテゾリズマブ単剤治療、ベルバラフェニブ(7.5mg/kg)及びアテゾリズマブ(10mg/kg)の併用治療、並びにベルバラフェニブ(15mg/kg)及びアテゾリズマブ(10mg/kg)の併用治療で処置した。実験は、第1世代腫瘍組織を使用して行った。
【0156】
マウスを、実験開始前に、馴化のために従来の動物実験室ケージに14日間保った。馴化期間中、健康及び疾患の徴候に関してマウスを毎日観察した。マウスをポリスルホンケージ1291H(W425×D266×H185mm、Techniplast、イタリア)内のクリーンバリアルームに収容した。22±2℃の温度、50±20%の相対湿度、10~15回/時の換気頻度、12時間の明/暗サイクル、150~300ルクスの光強度、少なくとも毎週のケージ交換で、10匹のマウスを各ケージに収容した。マウスには、豊富な水道水と共に、Picolab Rodent飼料(5053、Lab Diet、USA)を与えた。
【0157】
室温で保存したベルバラフェニブ二塩酸塩、純度99.6%を使用した。投与は、活性成分遊離塩基を基礎としており、アッセイ及び含水量について補正された。投与ビヒクルは、DMSO(5%)、クレモフォアEL(5%)及び脱イオン水(90%)であった。投与のためのベルバラフェニブをビヒクルに溶解した。7.5mg/kg及び15mg/kgのベルバラフェニブ経口用量を単剤治療として、アテゾリズマブと組み合わせて評価した。ベルバラフェニブを21日間毎日投与した。
【0158】
2~8℃で保存したアテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))を使用した。投与ビヒクルは生理食塩水であり、投与濃度は5mL/kgであった。10mg/kgのアテゾリズマブ静脈内用量を、単剤治療として、7.5mg/kg及び15mg/kgのベルバラフェニブと組み合わせて評価した。アテゾリズマブを3週間にわたって週に3回投与した。
【0159】
以下の観察及び測定を行った。
【0160】
臨床徴候。一般的な臨床徴候及び死亡は、投与期間中に少なくとも1日1回観察された。
【0161】
体重。体重測定は、投与期間中に週2回行った。
【0162】
相対体重。相対体重(%)=体重(g)/初期体重(g)×100。
【0163】
腫瘍サイズ。腫瘍サイズを、投与期間中に週に2回、デジタルキャリパー(MITUTOYO CD-15CPX、MonotaRO Singapore、日本)によって評価し、楕円球形(V=L×S2/2=mm3(式中、L=長径、S=短径))の式を使用して計算した。体重測定日に腫瘍サイズを記録し、腫瘍体積記録シートにデータを記録した。
【0164】
相対腫瘍体積(RTV)。RTV(%)=腫瘍体積/初期腫瘍体積×100。
【0165】
腫瘍成長(TG)。TG(%)=RTVdayx/RTVday0×100。
【0166】
相対腫瘍成長(RTG)。0日目の平均腫瘍体積に対する最後の測定日の平均腫瘍体積の比。
【0167】
阻害率(IR)。ビヒクル処置対照と比較して腫瘍成長の阻害を計算した。IR(%)=(1-処置群の平均相対腫瘍重量/対照群の平均相対腫瘍重量)×100。
【0168】
最大阻害率(MIR)。MIRは、測定された阻害率(%)の中で最も高い記録されたIR(%)であった。
【0169】
平均腫瘍重量(MTW)。MTWは、研究の開始時及び研究の終了時であった。
【0170】
最大重量損失(MWL)。MWLは、測定された重量減少(%)の中で最も高い記録された重量減少(%)であった。
【0171】
フローサイトメトリーを、BD FACSCanto(商標)IL(BD Biosciences)及びFlowJoTM v 10.6.2ソフトウェア(BD Biosciences)を使用した腫瘍浸潤CD3+CD8+T細胞分析のために使用した。実験の最後に、ベルバラフェニブ7.5mg/kgを使用した単剤治療群及び併用治療群を除く腫瘍組織を、薬力学の評価のために収集した。腫瘍を外科的に切開し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、次いで1mm3片に細断した。細断した腫瘍片を7mLの解離培地(10% FBS、2mg/mLのコラゲナーゼII型、2mg/mLのコラゲナーゼIV型、及び1mg/mLのDNase Iを含むRPMI培地)中で37℃で30分間消化し、70μm細胞濾過器(BD Pharm、米国)でフィルタにかけた。次いで、フィルタにかけた細胞をPBSで2回洗浄した。残りの赤血球を、塩化アンモニウム-カリウム(ACK)溶液を使用して溶解した。単一細胞に解離した細胞を、非特異的抗体結合を防止するために4℃で15分間、Feブロック(抗CD16/32、Ref.14-0161-82、Invitrogen、米国)で染色した。次いで、細胞を適切な抗体で4℃で30分間染色した。CD3+CD8+T細胞集団の存在を評価するために、細胞を、PE Cy7コンジュゲート抗CD3e(1:100希釈)(クローン:145-2C11、Invitrogen、米国)及びFITCコンジュゲート抗CD8a(1:100希釈)(クローン:53-6.7、Invitrogen、米国)で染色した。
【0172】
GraphPad Prism version 6(GraphPad software,Inc.、米国)を用いて、腫瘍サイズの統計分析を行った。値を±S.E.Mとして表した。複数の群間の差の有意性を、二元配置ANOVAを使用して評価した。グループ間の事後ペアワイズ比較を、Dennettの方法を使用して有意性について試験した。
【0173】
アテゾリズマブ単剤治療の21日目での7匹のマウス群における1匹のマウスの腫瘍壊死を除いて、臨床徴候は観察されなかった。
【0174】
【0175】
体重減少が
図1に示されており、これは、本開示のベルバラフェニブ単剤治療(7.5mg/kg及び15mg/kg)、アテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)、7.5mg/kgのベルバラフェニブ及び10mg/kgのアテゾリズマブの併用治療、並びに15mg/kgのベルバラフェニブ及び10mg/kgのアテゾリズマブの併用治療についてのK1735同系モデルについてのマウス体重変化対時間のプロットである。HM95573は、ベルバラフェニブを指す。点、相対体重の平均:バー、S.E.M.投与中に特定の体重減少及び臨床病徴は見られなかった。
【0176】
腫瘍体積が
図2に示されており、これは、本開示のベルバラフェニブ単剤治療(7.5mg/kg及び15mg/kg)、アテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)、ベルバラフェニブ/アテゾリズマブ併用治療((i)7.5mg/kg及び10mg/kg並びに(ii)15mg/kg及び10mg/kg)についてのK1735同系モデルについてのマウス腫瘍体積対時間のプロットである。
図2において:HM95573は、ベルバラフェニブを指す。
*P<0.05を指す;
****はP<0.0001を指す;§は、10mg/kgのアテゾリズマブと比較してP<0.05を指す;#は、15mg/kgのベルバラフェニブと比較してP<0.05を指す。P値を、二元配置ANOVAを使用して計算した。点、腫瘍体積の平均:バー、S.E.M.
【0177】
図3は、ベルバラフェニブ単剤治療(15mg/kg)、アテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)、及びベルバラフェニブ/アテゾリズマブ併用治療(15mg/kg及び10mg/kg)を用いたK1735同系マウスモデルについてのCD3+CD8+T細胞のプロットである。
図3において:HM95573は、ベルバラフェニブを指す。
***は、ビヒクル対照と比較してP<0.001を指す;###は、15mg/kgのベルバラフェニブと比較してP<0.001を指す;§はアテゾリズマブ10mg/kgと比較してP<0.05を指す。P値を、一元配置ANOVAを使用して計算した。点、CD3+CD8+T細胞の平均:バー、S.E.M.
【0178】
結果の概略を表1に示す。最大阻害率(%)は、IR(%)の中で最も高い値である。最大体重減少(%)は、測定された体重減少(%)の中で最も高い記録値である。表1において、「Belv.Mono.」は、ベルバラフェニブ単剤治療を指し;「Atezo.Mono.」は、アテゾリズマブ単独療法を指し;「Belv./Atezo.Comb.」は、ベルバラフェニブ/アテゾリズマブ併用治療を指し;「QDx21」は、21日間の毎日の経口用量を指し;「TIWx3」は、21日間の週に3回の腹腔内用量を指し;「Max Inhib.」は、最大阻害率を%で指し;「Max Wt.」は、最大重量減少を%で指す。
【0179】
【0180】
表2は、K1735同系マウスモデルにおけるベルバラフェニブ単剤治療、アテゾリズマブ単剤治療及びベルバラフェニブ+アテゾリズマブ併用治療の抗腫瘍活性を示す。表2において、「Belv.」は、ベルバラフェニブ単剤治療を指し;「Atezo.」は、アテゾリズマブ単独療法を指し;「Belv.+Atezo.」は、ベルバラフェニブとアテゾリズマブとの併用治療を指し;「QDx21」は、21日間の毎日の経口用量を指し;「TIWx3」は、21日間の週に3回の腹腔内用量を指し;「MTV0」は、処置の1日目における平均腫瘍体積を指し;「MTV21」は、処置の21日目の平均腫瘍体積を指し;「RTG」は、相対的な腫瘍成長を指し;「」は、最大重量減少を指し;「IR(Day 21)」は、21日目の阻害率を指し;「MIR」は最大阻害率を指す。
【0181】
【0182】
表3は、K1735同系マウスモデルにおけるベルバラフェニブ単剤治療、アテゾリズマブ単剤治療及びベルバラフェニブ+アテゾリズマブ併用治療のCD3+CD8+T細胞の割合を示す。
【0183】
【0184】
腫瘍成長阻害が生じる。21日目に、ベルバラフェニブ(7.5及び15mg/kg)及びアテゾリズマブ(10mg/kg)は、それぞれ48.2%、54.7%及び53.4%の腫瘍成長阻害を示した。ベルバラフェニブ(7.5又は15mg/kg)とアテゾリズマブ(10mg/kg)との組み合わせは、それぞれ78.3%及び84.8%の腫瘍成長阻害を示し、併用治療の効果は、単剤治療と比較して有意であった(P<0.05)。
【0185】
CD3+CD8+T細胞が生じる。ベルバラフェニブ単剤治療(15mg/kg)及びアテゾリズマブ単剤治療(10mg/kg)は、それぞれCD3+CD8+T細胞の1.27%及び6.52%を示したが、対照群と比較して有意に増加しなかった。ベルバラフェニブ(15mg/kg)とアテゾリズマブ(10mg/kg)との併用治療は、各単剤治療と比較して、CD3+CD8+T細胞を16.0%に有意に増加させた(ベルバラフェニブ(15mg/kg)に対してP<0.001及びアテゾリズマブ(10mg/kg)に対してP<0.05)。
【0186】
実験結果は、併用治療におけるベルバラフェニブ及びアテゾリズマブの同時投与が、NRASG13D変異体K1735同系マウスモデルにおけるベルバラフェニブ及びアテゾリズマブ単剤治療と比較して、腫瘍成長を相乗的に阻害し、細胞傷害性T細胞の浸潤を誘導したことを示している。したがって、結果は、汎RAF阻害剤及びPD-L1阻害剤の併用治療が、変異したMAPKシグナル伝達系を有するNRASG13D変異体黒色腫患者における有効な抗がん治療であり得ることを実証している。
【0187】
実施例2
【0188】
実施例2では、CT26同系マウスモデル(KRASG12D、CRC)において、ベルバラフェニブ単剤治療、Mu igG1抗PDL1単剤治療、及びベルバラフェニブとMu igG1抗PDL1との併用治療の有効性を評価した。
【0189】
5mg/kgのMu igG1抗PDL1(6E11)WTを、単独で、又はベルバラフェニブと組み合わせて、3週間にわたって週2回(BIW)経口(PO)投与した。10mg/kgのベルバラフェニブを、単独で、又はMu igG1抗PDL1(6E11)WTと組み合わせて、21日間、1日1回(QD)PO投与した。ビヒクルは、5%ジメチルスルフィド/5% クレモフォア EL(100μL)、0.5%(w/v)メチルセルロース/0.2% Tween80(商標)であった。
【0190】
腫瘍体積を、Ultra Cal-IVノギス(モデル54-10-111;Fred V.Fowler Co.;マサチューセッツ州ニュートン)を使用して二次元(長さ及び幅)で測定し、Excel、バージョン14.2.5(Microsoft Corporation;ワシントン州レドモンド)を使用して分析した。腫瘍体積を以下の式を用いて計算した:腫瘍サイズ(mm3)=(より長い測定値×より短い測定値2)×0.5。
【0191】
%TGI=AUCに基づく腫瘍成長阻害のパーセント。
【0192】
このアプローチは、同じ研究対象からの反復測定及び研究終了前の中程度の脱落の両方に対処するため、一般化加法混合モデル(GAMM)を使用して、経時的な形質転換腫瘍体積を分析した(Lin et al.1999及びLiang 2005)。腫瘍は一般に指数関数的成長を示すため、分析前に腫瘍体積を自然対数変換に供した。各群における経時的な腫瘍体積の変化は、Ime4、mgcv、gamm4、multcomp、setting、plyr、及びtidyverseのいくつかのパッケージ、例えばmagrittr、dplyr、tidyr、及びggplot2を含むオープンソースパッケージからのソフトウェアを統合するRバージョン3.4.2(2017-09-28)(R開発コアチーム2008;R統計コンピューティング財団;ウィーン、オーストリア)のカスタマイズされた関数を使用して生成された適合(すなわち、自動生成されたスプライン基底を有する回帰スプライン)によって説明される。
【0193】
抗腫瘍応答は、この実施例の目的のために、部分奏効(PR)を用いた研究中に認められ、初期腫瘍体積からの50%超の減少として定義され、この実施例の目的のために、完全奏効(CR)は腫瘍体積の100%の減少として定義された。
【0194】
動物の体重を、Adventura Pro AV812スケール(Ohaus Corporation;ニュージャージー州パインブルック)を使用して測定した。パーセント重量変化を、以下の式を使用して計算した。体重変化(%)=[(現在の体重/初回体重)-1)×100]。研究中に各個々の動物についてパーセント動物重量を追跡し、各群について体重のパーセント変化を計算し、プロットした。
【0195】
一般化加法混合モデル(GAMM)も使用して、生体重(すなわち、グラム)を経時的に分析した。データ当てはめ後、全ての個々の動物及び全ての群当てはめからの各時点での生体重データを正規化し、2つの異なる方法で別々に再プロットした:1)開始時の重量に対して正規化され、%体重変化をもたらすパーセンテージとして報告される、2)現在までの最大重量に対して正規化され、%体重減少をもたらすパーセンテージとして報告された。
【0196】
有効性の推定値は、共通期間にわたる元の(すなわち、変換されていない)スケールに適合する関連群の1日平均ベースライン補正AUC間のパーセント差を計算することによって得た。
【0197】
腫瘍体積の結果を、ビヒクルについては
図4Aに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTについては
図4Bに示し、ベルバラフェニブについては
図4Cに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTとベルバラフェニブとの組み合わせについては
図4Dに示し、関連するオーバーレイについては
図6Aに示す。
【0198】
体重変化の結果を、ビヒクルについては
図5Aに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTについては
図5Bに示し、ベルバラフェニブについては
図5Cに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTとベルバラフェニブとの組み合わせについては
図5Dに示し、関連するオーバーレイについては
図6Bに体重変化を適合させる。
【0199】
実施例3
【0200】
EMT6同系モデル(KRASwT、TNBC)において、実施例2のプロトコルを繰り返した。
【0201】
腫瘍体積の結果を、ビヒクルについては
図7Aに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTについては
図7Bに示し、ベルバラフェニブについては
図7Cに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTとベルバラフェニブとの組み合わせについては
図7Dに示し、関連するオーバーレイについては
図9Aに示す。
【0202】
体重変化の結果を、ビヒクルについては
図8Aに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTについては
図8Bに示し、ベルバラフェニブについては
図8Cに示し、Mu igG1抗PDL1(6E11)WTとベルバラフェニブとの組み合わせについては
図8Dに示し、関連するオーバーレイについては
図9Bに体重変化を適合させる。
【0203】
本明細書は、本発明を開示するために実施例を使用する。本発明の特許取得の対象となる範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と実質的でない差異を有する同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】