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  • 特表-治療用ハイドロゲル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】治療用ハイドロゲル
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/52 20060101AFI20240314BHJP
   A61L 27/26 20060101ALI20240314BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20240314BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20240314BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 49/06 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61L27/52
A61L27/26
A61L15/22 300
A61L15/44
A61L27/54
A61K49/00
A61K49/06
A61K49/04
A61K49/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561385
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 US2022023457
(87)【国際公開番号】W WO2022216691
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,231
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モルナール、ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ビジャレアル、カロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】コッポル、バーヌ プラサンス
(72)【発明者】
【氏名】ラムクマール、ニヴェーディター スウェタ
(72)【発明者】
【氏名】ドーガン、フィリップ デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C081
4C085
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AB01
4C081AB11
4C081CA151
4C081CD011
4C081DA12
4C085HH01
4C085HH03
4C085HH07
4C085JJ20
4C085KB67
4C085KB79
(57)【要約】
本開示は、分岐ポリアミンによって架橋されたアニオン性多糖を含む治療用ハイドロゲルであって、分岐ポリアミンが少なくとも2個の第一級アミン基、より典型的には少なくとも3個の第一級アミン基を含む、治療用ハイドロゲル関する。本開示はまた、そのような治療用ハイドロゲルを含む医療組成物、およびそのような治療用ハイドロゲルを、医療処置を必要とする患者に送達する医療処置の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ハイドロゲルであって、前記治療用ハイドロゲルは、(a)アニオン性多糖および(b)分岐ポリアミンを含み、前記アニオン性多糖が前記治療用ハイドロゲルのpHで負に帯電しており、前記分岐ポリアミンが前記治療用ハイドロゲルのpHで正に帯電しているとともに2つ以上の正に帯電した第一級アミン基を含み、前記分岐ポリアミンが前記アニオン性多糖をイオン架橋する治療用ハイドロゲル。
【請求項2】
前記分岐ポリアミンは、前記治療用ハイドロゲルのpHにおいて3個以上の正に帯電した第一級アミン基を含む、請求項1に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項3】
前記分岐ポリアミンは、前記治療用ハイドロゲルのpHにおいて3~10個の正に帯電した第一級アミン基を含む、請求項1に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項4】
分岐ポリアミンによって架橋されたアニオン性多糖を含む治療用ハイドロゲルであって、前記分岐ポリアミンは少なくとも3個の第一級アミン基を含む、治療用ハイドロゲル。
【請求項5】
前記分岐ポリアミンは、3~10個の第一級アミン基を含む、請求項4に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項6】
前記治療用ハイドロゲルは、5.5~7.5の範囲のpHを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項7】
前記分岐ポリアミンは、有機酸塩の形態または無機塩の形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項8】
前記分岐ポリアミンは、2~10個のモノマー残基を有するオリゴマー分岐ポリアミンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項9】
前記治療用ハイドロゲルが流動性の治療用ハイドロゲルであるか、または前記治療用ハイドロゲルが自立した三次元形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項10】
蛍光色素、磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤、超音波造影剤、放射線造影剤、および近赤外線(NIR)造影剤から選択されるイメージング剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項11】
前記治療用ハイドロゲルは、第I族金属カチオンおよび第II族金属カチオンから選択されるカチオンをさらに含む請求項1~10のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項12】
キトサンをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項13】
前記治療用ハイドロゲルは治療剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲルを含む医療用組成物。
【請求項15】
塞栓剤、組織シーラント、組織スペーサー、組織増強組成物、組織再生および/または細胞増殖のための足場、外科的癒着防止用バリア、または移植可能な創傷被覆材から選択される、請求項14に記載の医療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用ハイドロゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な治療用ハイドロゲルが医療分野において知られており、これらのハイドロゲルは多種多様な医療用途に使用することができる。
本開示は、様々な医療用途に用いることができる多糖系治療用ハイドロゲルに関する。本開示の治療用ハイドロゲルは、例えば、数ある用途の中でも、塞栓剤、組織シーラント、組織スペーサー、組織増強組成物、組織再生および/または細胞増殖のための足場、外科的癒着防止用バリア、ならびに移植可能な創傷被覆材と併せて使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、イオン性多糖および分岐ポリアミンを含む治療用ハイドロゲルに関する。本開示は、様々な医療用途に用いることができる多糖系治療用ハイドロゲルに関する。
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも3個の第一級アミン基を含む分岐ポリアミンによって架橋されたアニオン性多糖を含む治療用ハイドロゲルに関する。
【0004】
いくつかの実施形態において、本開示は、(a)アニオン性多糖および(b)分岐ポリアミンを含む治療用ハイドロゲルであって、アニオン性多糖が治療用ハイドロゲルのpHで負に帯電しており、分岐ポリアミンが、治療用ハイドロゲルのpHで正に帯電し、かつ2つ以上の正に帯電した第一級アミン基を含み、分岐ポリアミンがアニオン性多糖をイオン架橋する治療用ハイドロゲルに関する。
【0005】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、治療用ハイドロゲルは、5.5~7.5の範囲のpHを有し得る。
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、分岐ポリアミンは有機酸塩の形態または無機塩の形態であってもよく、分岐ポリアミンは2000未満の分子量を有してもよく、分岐ポリアミンは2~10個のモノマー残基を有するオリゴマー分岐ポリアミンであってもよく、または分岐ポリアミンは前述の特性の任意の組合せを有してもよい。
【0006】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、アニオン性多糖は、直鎖状アニオン性多糖または分岐状アニオン性多糖であってもよい。
【0007】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、治療用ハイドロゲルは流動可能な治療用ハイドロゲル、または前記治療用ハイドロゲルは、自立した三次元形状を有する。
【0008】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、治療用ハイドロゲルは、例えば、蛍光色素、磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤、超音波造影剤、放射線造影剤、および近赤外線(NIR)造影剤から選択することができるイメージング剤をさらに含む。
【0009】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、治療用ハイドロゲルは、第I族金属カチオンおよび第II族金属カチオンから選択されるカチオンをさらに含む。
【0010】
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、治療用ハイドロゲルは、キトサンをさらに含む。
前述の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができるいくつかの実施形態において、治療用ハイドロゲルは、治療剤をさらに含む。例えば、そのような治療用ハイドロゲルを含む治療剤送達デポーを提供することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示は、前述の実施形態のいずれかに従う治療用ハイドロゲルを含む医療用組成物(medical compositions)を提供する。このような医療用組成物の例としては、例えば、塞栓剤、組織シーラント、組織スペーサー、組織増強組成物、組織再生および/または細胞増殖のための足場、外科的癒着防止用バリア、および移植可能な創傷被覆材などが挙げられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示は、前述の実施形態のいずれかによる治療用ハイドロゲルを患者に送達することを含む治療方法を提供する。このような方法としては、例えば、とりわけ、局所的または全身的な治療剤放出の方法、組織塞栓形成の方法、第1の組織と第2の組織とを離隔させる(spacing)方法、組織をシールする方法、外科的癒着を防止する方法、組織増強の方法、組織を再生する方法、および止血の方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態に従う、治療用ハイドロゲルからの時間の関数としてのIgGの累積放出%を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、イオン性多糖および分岐ポリアミンを含む治療用ハイドロゲルに関する。治療用ハイドロゲルは、様々な医療用途に用いることができる。
様々な実施形態において、本開示の治療用ハイドロゲルは、分岐ポリアミンによって架橋されたイオン性多糖を含み、分岐ポリアミンは、少なくとも3個の第一級アミン基を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、分岐ポリアミンは、1分子当たり3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の第一級アミン基を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、分岐ポリアミンは、3~25個、3~20個、3~15個、3~10個、または3~5個の第一級アミン基を有し得る。
【0015】
様々な実施形態において、本開示の治療用ハイドロゲルは、(a)アニオン性多糖と、(b)分岐ポリアミンとを含み、分岐ポリアミンがアニオン性多糖をイオン架橋するように、分岐ポリアミンは治療用ハイドロゲルのpHにおいて正に帯電しており、かつ2個以上の正に帯電した第一級アミン基を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、分岐ポリアミンは、治療用ハイドロゲルのpHにおいて1分子当たり3個以上の正に帯電した第一級アミン基を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、分岐ポリアミンは、治療用ハイドロゲルのpHにおいて1分子当たり3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上の正に帯電した第一級アミン基を有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、分岐ポリアミンは、治療用ハイドロゲルのpHにおいて、1分子当たり3~25個、3~20個、3~15個、3~10個、または3~5個の正に帯電した第一級アミン基。
【0016】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルのpHは、5.5~7.5の範囲であり得る。
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルの分岐ポリアミンは、2000g/mol未満である分子量を有し得る。例えば、分岐ポリアミンは、分子量が100g/molから、250g/molまで、500g/molまで、750g/molまで、1000g/molまで、1250g/molまで、1500g/molまで、2000g/molまでの範囲であってもよい(言い換えれば、分岐ポリアミンの分子量は、前述の値の任意の2つの間の範囲であってもよい)。
【0017】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、0.005w/w%以下から5w/w%以上までの分岐ポリアミン、例えば、0.005w/w%から、0.01w/w%まで、0.025w/w%まで、0.05w/w%まで、0.10w/w%まで、0.25w/w%まで、0.5w/w%まで、1.0w/w%まで、2.5w/w%まで、5w/w%までの範囲の分岐ポリアミンを含有してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルの分岐ポリアミンは、2~10個のモノマー残基を有するオリゴマー分岐ポリアミンであってもよい。例えば、オリゴマー分岐ポリアミンは、複数の可能性の中でも、複数のリジン残基を含む分岐ペプチドオリゴマーであってもよく、またはオリゴマー分岐ポリアミンは分岐ポリエチレンイミンオリゴマーであってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルの分岐ポリアミンは、他の可能性の中でもとりわけ、トリリジン(分子量402.5g/mol)、テトラリジン(分子量530.7g/mol)、ペンタリジン(分子量658.9g/mol)、トリス(アミノアルキル)アミン(例えば、トリス(2-アミノエチル)アミン(分子量146.2g/mol))、またはトリス(アミノアルキル)アルカン(例えば、1,1,1-トリス(アミノメチル)エタン(分子量117.2g/mol))から選択され得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルの分岐ポリアミンは、有機酸塩の形態であってもよい。例えば、有機酸塩は、とりわけ、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グルタル酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、またはグルコン酸塩から選択され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルの分岐ポリアミンは、無機塩の形態であってもよい。例えば、無機塩は、とりわけ、ハロゲン化物塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、またはスルホン酸塩から選択され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、0.1w/w%以下から10w/w%以上までのアニオン性多糖、例えば、0.10w/w%から、0.25w/w%まで、0.5w/w%まで、1.0w/w%まで、2.5w/w%まで、5w/w%まで、10w/w%まで、の範囲のアニオン性多糖を含有してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルのアニオン性多糖は、直鎖状アニオン性多糖であってもよい。例えば、アニオン性多糖は、とりわけ、アルギン酸塩、ジェランガム、ペクチン、アガロペクチン、およびカラギーナンから選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、ジェランガムが好ましい。ジェランガムは、高分子量のアニオン性多糖ガムであり、一般に微生物発酵によって製造される。多糖は、主に、1つのラムノース、1つのグルクロン酸、および2つのグルコース単位の四糖繰り返し単位から構成される。多糖骨格に沿って、グルコース残基上のアシル基(グリセレートおよびアセテート)の置換がある。発酵から多糖を直接回収すると、高アシルジェランガムとして知られるものが得られる。脱アシル化(例えば、アルカリ処理による)により、低アシルジェランガムとして知られるものが得られる。
【0025】
いくつかの実施形態において、アルギン酸塩が好ましい。アルギン酸塩はマンヌロン酸残基とグルロン酸(guluronate)残基からなる直鎖状の多糖である。アルギン酸塩は、典型的には、海藻および一部の細菌によって産生される。
【0026】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルのアニオン性多糖は、分枝状アニオン性多糖であってもよい。例えば、アニオン性多糖は、とりわけ、グアーガム、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、およびキサンタンガムから選択され得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルはpH調整剤(すなわち、緩衝剤)をさらに含有してもよい。例えば、pH調整剤は、治療用ハイドロゲルのpHを他の値の中でも特に5.5~7.5に維持することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、イメージング剤をさらに含有してもよい。イメージング剤の例としては、放射線造影剤、蛍光色素、磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤、超音波造影剤、および近赤外線(NIR)イメージング造影剤が挙げられる。放射線造影剤の特定の例としては、とりわけ、イオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソール、イオパミドール、イオキシラン、またはイオプロミドなどの非イオン性放射線造影剤、とりわけ、ジアトリゾエート、イオタラム酸塩、メトリゾエート、またはイオキサグレートなどのイオン性放射線造影剤、および例えば、エチオ化ケシの実油(ethiodized poppyseed oil)(Lipiodol(登録商標)として入手可能)を含むヨード化油、が挙げられる。イメージング剤のさらなる特定の例としては、とりわけ、(a)フルオレセイン、インドシアニングリーン、または蛍光タンパク質(例えば、緑色、青色、シアン蛍光タンパク質)などの蛍光色素、(b)Gd(III)、Mn(II)、Fe(III)などの常磁性イオンを形成する元素およびジエチレントリアミン五酢酸でキレート化されたガドリニウムイオンなどのそれを含有する化合物(キレートを含む)を含有する造影剤を含む、磁気共鳴イメージング(MRI)と併せて使用するための造影剤、(c)有機および無機エコー源性粒子(すなわち、反射超音波エネルギーの増加をもたらす粒子)または有機および無機エコールーセント(echolucent)粒子(すなわち、反射超音波エネルギーの減少をもたらす粒子)を含む、超音波イメージングとともに使用するための造影剤、ならびに(d)近赤外(NIR)イメージングに関連して使用するための造影剤であって、とりわけ、本開示のハイドロゲルに近赤外蛍光を付与するように選択することができ、深部組織イメージングおよびデバイスマーキングを可能にする、例えば、金ナノシェルなどのNIR感受性ナノ粒子、カーボンナノチューブ(例えば、部分酸化カーボンナノチューブなど、ヒドロキシル基またはカルボキシル基で誘導体化されたナノチューブ)、染料含有ナノ粒子、例えば、染料ドープナノファイバーおよび染料封入ナノ粒子、および半導体量子ドットなど、ならびにNIR感受性染料、例えば、シアニン染料、スクアレイン、フタロシアニン、ポルフィリン誘導体、およびボロンジピロメタン(BODIPY)類似体など、が含まれる。
【0029】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、I族金属カチオン(Li、Na、K、Rb、Cs、Fr)およびII族金属カチオン(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+)から選択される金属カチオンをさらに含んでもよい。例えば、そのような金属カチオンは、分岐ポリアミンの競合剤として作用し、架橋度を低下させ、それによって、いくつかの実施形態では、治療用ハイドロゲルをより流動性にし、かつ/または治療用ハイドロゲルを軟化させ得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、キトサンなどの直鎖状多糖架橋剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、そのような直鎖状多糖架橋剤は、ゲルのpHでカチオン電荷を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、治療剤をさらに含んでもよい。
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、帯電した治療剤および/または非帯電治療剤を含んでもよい。帯電した治療剤は、イオン交換機構によって治療用ハイドロゲル中に装填され得る。帯電した治療剤は、治療用ハイドロゲル中に静電的に保持され得、そして電解質媒体(例えば、生理食塩水(0.90%w/vNaCl))またはインビボ(例えば、血液または組織中)においてハイドロゲルから溶出して、数時間、数日またはさらに数週間にわたる治療剤の持続放出を提供し得る。生理学的pHで電荷を有さない治療剤もまた、治療用ハイドロゲルに充填することができる。これは、例えば、迅速な溶出もしくは「バースト効果」が所望される場合(例えば、組織への迅速な治療剤送達のため)、または生理学的条件下での治療剤の低い溶解度が、イオン相互作用よりもむしろ放出プロフィールを決定する場合に、特に有利であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、0.01mg/ml以下から10mg/ml以上までの1つ以上の治療剤を、例えば、0.01mg/mlから、0.025mg/mlまで、0.05mg/mlまで、0.10mg/mlまで、0.25mg/mlまで、0.5mg/mlまで、1mg/mlまで、2.5mg/mlまで、5mg/mlまで、10mg/mlまでの範囲の1つ以上の治療剤を含有してもよい。
【0033】
前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルに組み込むことができる治療剤(本明細書では薬学的活性成分とも称され得る)の例としては、小分子治療剤(本明細書では、2000g/mol未満、典型的には1500g/mol未満、より典型的には1000g/mol未満の分子量を有する治療剤として定義される)および生体分子(例えば、抗体および抗体断片およびオリゴペプチドなどのタンパク質およびタンパク質断片を含むポリペプチド、ならびにデオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド核酸、およびそれらの断片などの核酸および核酸類似体を含むポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド)が挙げられる。
【0034】
治療剤の例としては、とりわけ、抗血管新生剤、細胞毒性剤、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、免疫調節サイトカイン、T細胞アゴニスト、およびSTING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)アゴニストが挙げられる。
【0035】
治療薬の例としては、とりわけ、PD-1とPD-L1との結合の阻害剤、CTLA-4とCD80および/またはCD86との結合の阻害剤、TIGITとCD-112との結合の阻害剤、LAG-3とMHCクラスII分子との結合の阻害剤を含むチェックポイント阻害剤;PD-1に結合する(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ドンバナリマブなどなど)、PD-L1に結合する(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブなど)、LAG-3に結合する(例えば、レラトリマブなど)、TIM-3に結合する(例えば、LY3321367、MBG453、TSR-022など)、TIGITに結合する(例えば、エチギリマブ、チラゴルマブ、ビボストリマブなど)、またはCTLA-4に結合する(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブなど)抗体またはその抗原結合断片;CD3、CD19、CD20、CD22、CD52、CD79B、CD30、CD33、CD38、CD52、CD79B、HER2、EGFR、VEGF、VEGFR2、EPCAM/CD3、GD2、IL-6、RANKL、SLAMF7、CCR4、PDGFRα、ネクチン-4またはTROP2に結合する抗体またはその抗原結合断片;IL-2、IL-12、IL-15、IL-23、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、gm-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)などの免疫調節性サイトカイン;TLR3アゴニスト(ポリイノシン酸:ポリシチジル酸、二本鎖RNAなど)、TLR7アゴニスト(TMX-202、ガーディキモド、イミキモドなど)、TLR8アゴニスト(VTX-2337など)、TLR7/8アゴニスト(MEDI9197、R848、レシキモドなど)、TLR9アゴニスト(レフィトリモド(lefitolimod)(MGN1703)、チルソトリモド、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(例えば、アガトリモド)など)のようなT細胞アゴニスト;およびGSK532、環状ジヌクレオチド(例えば、環状グアノシン一リン酸-アデノシン一リン酸)、CRD5500(LB-061)、E7766、ADU-S100、SB11285 MSA2、MK1454、TTI-10001などのSTINGアゴニスト、が含まれる。
【0036】
治療剤の例としては、さらに、カンプトテシン系薬剤(例えば、イリノテカンおよびトポテカン)、アントラサイクリン系薬剤(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシンおよびエピルビシン)、血管新生阻害剤(血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)阻害剤、例えば、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、マシチニブ、ムブリチニブ、パゾパニブ、パゾパニブ セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、タンジュチニブ、バンデタニブ、バタラニブおよびビスモデギブ)、微小管形成阻害剤(例えば、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンクリスチン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール)、白金製剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチンおよびミリプラチン)、ヌクレオシド類似体(例えば、5-FU、シタラビン、フルダラビンおよびゲムシタビン)、パクリタキセル、ドセタキセル、マイトマイシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ピンヤンマイシン(pingyangmycin)、アビラテロン、アミホスチン、ブセレリン、デガレリクス、フォリン酸、ゴセレリン、ランレオチド、レナリドミド、レトロゾール、リュープロレリン、オクトレオチド、タモキシフェン、トリプトレリン、ベンダムスチン、クロラムブシル、ダカルバジン、メルファラン、プロカルバジン、テモゾロミド、ラパマイシン(およびゾタロリムス、エベロリムス、ウミロリムスおよびシロリムスなどの類似体)、メトトレキサート、ペメトレキセド、またはラルティトレキセド、が含まれる。
【0037】
いくつかの実施形態において、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、治療用および/またはイメージング可能な放射性同位体をさらに含んでもよい。治療用放射性同位体を含む治療用ハイドロゲルは、例えば、癌治療におけるような選択的内部放射線療法(SIRT)または近接照射療法において使用することができ、治療用ハイドロゲルの他の実施形態に関連して本明細書の他の箇所に記載されている様式のいずれかで送達することができる。1つのアプローチにおいて、放射性同位体は、イオン相互作用によってゲルに結合され得るか、または例えば、担体(例えば、キレート剤)を介して共有結合され得る。いくつかの実施形態において、放射性同位体は粒子中のゲルに組み込まれてもよく、粒子は放射性同位体を含む。このような粒子は、典型的には5um~500umの範囲、特に100um未満の最大直径を有するマイクロスフェアの形態であってもよい。粒子は、例えば、ポリマーであってもよく、またはセラミックであってもよい。そのようなセラミックの1つは、イットリウムアルミノシリケートセラミックである(例えば、米国特許第4789501号明細書を参照)。セラミックマイクロスフェアのさらなる例は、国際公開第16082045号および国際公開05087274号に記載されている。治療用放射性同位体としては、限定されるものではないが、177Lu、90Y、131I、89Sr、153Sm、223Ra、224Ra、211At、225Ac、227Th、212Bi、213Bi、および/または212Pbが挙げられる。いくつかの実施形態において、治療用放射性同位体は、177Lu、90Y、131I、89Sr、153Sm、および/または223Raのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態において、治療用放射性同位体は90Yである。イメージング可能な放射性同位体としては、限定されるものではないが、99mTc、201Th、51Cr、67Ga、68Ga、111In、64Cu、89Zr、59Fe、42K、82Rb、24Na、45Ti、44Sc、51Crおよび177Luが挙げられる。いくつかの実施形態において、イメージング可能な同位体は、99mTc、67Ga、68Ga、64Cu、または89Zrである。いくつかの実施形態において、イメージング可能な同位体は、99mTcである。いくつかの実施形態において、イメージング可能な同位体は、89Zrである。
【0038】
セラミック粒子の1つの特定の例は、米国特許第4789501号明細書に記載されており、TheraSphere(登録商標)(バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド(Biocompatibles UK Ltd))として市販されている。
【0039】
前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、滅菌形態で提供され得る。
前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルは、いくつかの異なる形態で提供され得る。場合によっては、治療用ハイドロゲルは、例えば、容器(例えば、シリンジバレル、バイアル、アンプルなど)から、針またはカテーテルチューブを通して注射可能であり得る流動性治療用ハイドロゲルの形態であってもよい。いくつかの例において、治療用ハイドロゲルは、自立した(free-standing)三次元形状の形態であってもよい。例えば、治療用ハイドロゲルは、微粒子もしくはマイクロスフェアの形態であってもよく、またはビーズ、ペレット、プラグ、ディスクなどのより大きな移植可能な剤形の形態であってもよい。
【0040】
本開示の他の実施形態は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む医療用組成物に関する。
例えば、いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む治療薬送達デポーである。そのような治療薬送達デポーは、局所、全身、または標的への治療薬送達のために制御された様式で治療薬を放出することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む塞栓剤である。
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む組織シーラントである。
【0042】
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む組織スペーサーである。
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む組織増強組成物(皮膚充填剤を含む)である。
【0043】
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む組織再生および/または細胞増殖のための足場である。
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む外科的癒着防止用バリアである。
【0044】
いくつかの実施形態において、医療用組成物は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルを含む移植可能な創傷被覆材である。
本開示のさらに他の実施形態は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を使用する医療処置に関する。
【0045】
例えば、いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を患者に(例えば、患者の組織上に、患者の組織中に、患者の組織間などに)、(例えば、注射すること、埋め込むこと、噴霧することなどによって)送達することを含む、局所治療剤または全身治療剤の放出の方法である。
【0046】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を患者の腫瘍内または腫瘍上に(例えば、注射すること、埋め込むこと、噴霧することなどによって)送達することを含む治療の方法であり、治療剤は腫瘍内に放出される。
【0047】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を組織に栄養を供給する1つ以上の血管(例えば、フィーダー動脈)に送達することを含む組織塞栓術の方法である。
【0048】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を第1の組織と第2の組織との間(例えば、前立腺組織と直腸組織との間)に、送達すること(例えば、注射すること、埋め込むことなど)を含む、第2の組織から第1の組織を離隔させる方法である。
【0049】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を組織上に適用することを含む組織をシールする方法である。方法は、治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を、組織をシールするのに有効な量で手術部位の組織に局所的に適用することを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を手術部位の組織に適用することを含む、外科的癒着を防止する方法であり、それによって、患者の手術部位の術後癒着が抑制される。方法は、治癒時の癒着の形成を抑制するのに有効な量で、手術部位の組織に治療用ハイドロゲルを局所的に適用することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を(例えば、組織の輪郭を変化させるために、組織の体積を増加させるために)患者の組織内または患者の組織間に(例えば、注射すること、埋め込むことなどによって)送達することを含む組織増強の方法である。
【0052】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を含む組織足場を患者に(例えば、患者の組織内に、患者の組織上に、または患者の組織間などに)、(例えば、注射すること、埋め込むこと、噴霧することなどによって)送達することを含む、患者の組織を再生する方法である。
【0053】
いくつかの実施形態において、医療処置は、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物を患者に(例えば、患者の組織上に、患者の血管内を含む患者の組織内に)、(例えば、注射すること、埋め込むこと、噴霧することなどによって)送達することを含む、患者における止血の方法である。
【0054】
またさらなる実施形態において、本開示は、癌、特に固形腫瘍などの疾患の治療のための医薬の製造における、前述の実施形態のいずれかの治療用ハイドロゲルまたは医療用組成物の使用に関する。このような癌としては、限定されるものではないが、肝臓の癌(肝細胞癌および肝臓への遠隔腫瘍の転移、例えば、転移性結腸直腸癌、神経内分泌腫瘍、転移性バレット食道など)、肺、乳房、腎臓、頭頸部、食道、皮膚、膵臓、副腎、脳、胃および腸の癌が挙げられる。
【0055】
本開示はまた、そのような疾患の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載の薬学的に活性な成分のいずれかの使用であって、同活性な成分が上述の実施形態のいずれかのハイドロゲルに組み込まれる、使用に関する。本開示はまた、そのような疾患の治療における本明細書に記載の活性成分のいずれかの使用であって、同活性成分が上記の実施形態のいずれかのハイドロゲルに組み込まれる使用に関する。治療用ハイドロゲルおよび組成物は、ハイドロゲルが注射、埋め込み、噴霧などによって送達される場合に特に使用され得る。
【0056】
実施形態において、治療剤の局所送達のための治療用ハイドロゲルが形成される。治療用ハイドロゲルは、以下を含む:(a)0.5~2.5w/w%のアニオン性多糖(例えば、ジェランガム(アシル置換の程度に依存して、低アシルまたは高アシル)またはアルギネート)、(b)0.01~3.0w/w%の分岐ポリアミン(例えば、酢酸トリリジン、酢酸テトラリジン、酢酸ペンタリジンなどを含むポリリジンの酢酸塩形態)、(c)治療剤、および(d)必要に応じて、とりわけ、pH調整剤、保存剤、および/または造影剤などの他の活性剤。
【0057】
本明細書に記載される実施形態に対する1つの特定のアプローチにおいて、治療用ハイドロゲルは、トリリジンで架橋されたジェランガムであり、これは、上記のように調製され得る。
【0058】
ハイドロゲルは、典型的には、アニオン性多糖の溶液を、多糖を水和させるのに適した温度に加熱することによって形成される。これは、典型的には62℃~90℃の範囲である。多糖を、典型的には30分~3時間の範囲の期間、水和させてもよい。所望であれば、溶液は、例えば、高粘度材料を混合するのに好適なインペラーによって撹拌されてもよい(そうでなければ相分離が起こる可能性がある)。
【0059】
アニオン性多糖の水和後、ゲルは、組み込まれ得る任意の活性成分に対して起こり得る損傷を防止する温度まで冷却されてもよい。40℃未満の温度が一般に好適である。この時点で、治療剤を添加し、使用する場合には続いて架橋剤を添加することができる。治療剤および架橋剤は、(例えば、ジャケット付き温度制御混合容器中で)制御された温度で連続的に撹拌しながら添加され得る。
【0060】
成分は、製剤化の前に滅菌され得る。成分は、無菌様式で充填され得るか、または成分は、シリンジもしくは他の容器に組成物を充填した後に滅菌され得る(例えば、温かい間に)。
【実施例
【0061】
治療用ハイドロゲルは以下のものから形成される:1.5w/w%低アシルジェランガム、溶媒としての注射用水(WFI)、架橋剤としての0.03w/w%トリリジン-アセテート(TLA)。ジェランガムを80℃を超える温度でWFIに添加した。高粘度材料に対して、インペラーを用いた連続撹拌を使用した。2時間の水和時間後、混合物を冷却した。IgGを38℃の温度で添加した。この段階で、少量のゲルを、磁気撹拌棒を備えたビーカーに移した。次いで、IgGを添加し、続いて1分間混合した後にTLAを添加した。装填された架橋混合物をさらに3分間撹拌し、次いでシリンジに充填した。シリンジを5℃未満で一晩冷蔵し、次いで、試料を薬物放出特性について試験した。
【0062】
IgGを、抗PD1装填ゲルの活性成分代用物として治療用ハイドロゲルに装填した。1gのハイドロゲル試料をウェルプレートに注入することによって、放出プロファイルを測定する。6mlのカルシウムを含まないダルベッコPBS溶液を収集培地として使用した。100ulの試料を指定した時点でPBSから採取し、試料を96ウェルプレートに移した。放出プロファイルは、BioTek Microplate Reader(バイオテック インストゥルメンツ社(BioTek Instruments,Inc.),米国バーモント州、ウィノスキー)を使用して280nmの吸光度測定を使用して、測定した。結果を図1に示し、図1は、IgGについての時間の関数としての累積放出%を示す。放出は主に拡散によって制御されると考えられる。
【0063】
治療剤が装填された治療用ハイドロゲルは、粘膜下に注射され得るか、または局所処置のために(例えば、抗癌剤の局所送達および持続放出のために腫瘍内に)使用され得る。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ハイドロゲルであって、前記治療用ハイドロゲルは、(a)アニオン性多糖および(b)分岐ポリアミンを含み、前記アニオン性多糖が前記治療用ハイドロゲルのpHで負に帯電しており、前記分岐ポリアミンが前記治療用ハイドロゲルのpHで正に帯電しているとともに2つ以上の正に帯電した第一級アミン基を含み、前記分岐ポリアミンが前記アニオン性多糖をイオン架橋する治療用ハイドロゲル。
【請求項2】
前記分岐ポリアミンは、前記治療用ハイドロゲルのpHにおいて3個以上の正に帯電した第一級アミン基を含む、請求項1に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項3】
前記分岐ポリアミンは、前記治療用ハイドロゲルのpHにおいて3~10個の正に帯電した第一級アミン基を含む、請求項1に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項4】
分岐ポリアミンによって架橋されたアニオン性多糖を含む治療用ハイドロゲルであって、前記分岐ポリアミンは少なくとも3個の第一級アミン基を含む、治療用ハイドロゲル。
【請求項5】
前記分岐ポリアミンは、3~10個の第一級アミン基を含む、請求項4に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項6】
前記治療用ハイドロゲルは、5.5~7.5の範囲のpHを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項7】
前記分岐ポリアミンは、有機酸塩の形態または無機塩の形態である、請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項8】
前記分岐ポリアミンは、2~10個のモノマー残基を有するオリゴマー分岐ポリアミンである、請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項9】
前記治療用ハイドロゲルが流動性の治療用ハイドロゲルであるか、または前記治療用ハイドロゲルが自立した三次元形状を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項10】
蛍光色素、磁気共鳴イメージング(MRI)造影剤、超音波造影剤、放射線造影剤、および近赤外線(NIR)造影剤から選択されるイメージング剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項11】
前記治療用ハイドロゲルは、第I族金属カチオンおよび第II族金属カチオンから選択されるカチオンをさらに含む請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項12】
キトサンをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項13】
前記治療用ハイドロゲルは治療剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲル。
【請求項14】
請求項1~のいずれか一項に記載の治療用ハイドロゲルを含む医療用組成物。
【請求項15】
塞栓剤、組織シーラント、組織スペーサー、組織増強組成物、組織再生および/または細胞増殖のための足場、外科的癒着防止用バリア、または移植可能な創傷被覆材から選択される、請求項14に記載の医療用組成物。
【国際調査報告】