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特表2024-513257多分散剤金属酸化ナノ粒子分散体組成物
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  • 特表-多分散剤金属酸化ナノ粒子分散体組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】多分散剤金属酸化ナノ粒子分散体組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20240314BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240314BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240314BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562175
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2022053019
(87)【国際公開番号】W WO2022214924
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,160
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ジュン-シェン
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ニーラジュ
(72)【発明者】
【氏名】キング,グレゴリー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ハーク,クリストファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】パディヤス,ラグナス
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA08
4J037CB04
4J037CB16
4J037CC24
4J037DD05
4J037DD24
4J037FF02
4J037FF17
4J038DD001
4J038DJ011
4J038HA166
4J038KA08
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA11
(57)【要約】
組成物は、金属酸化物を含む複数の顔料粒子と、ポリマーである第1の分散剤と、第1の分散剤よりも低い分子量を有する分子を含む、第2の分散剤と、を含む。組成物は、ハードコートで使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を含む複数の顔料粒子と、
2000原子質量単位以上の平均分子量を有する分子を含む、ポリマーである第1の分散剤と、
2000原子質量単位未満の最大分子量を有する分子を含む、第2の分散剤と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記第2の分散剤が、ポリマーではない第2の分散剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記顔料粒子が、混合原子価タングステン酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記顔料粒子が、セシウムタングステン酸化物、カリウムタングステン酸化物、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2の分散剤の分子が、20以下の最大主鎖長を有するポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーである第1の分散剤の重量が、前記組成物中の前記顔料粒子の重量の50%未満であり、前記複数の顔料粒子が、混合原子価タングステン酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーである第1の分散剤と前記第2の分散剤との組み合わせた重量が、前記組成物中の前記顔料粒子の重量の50%未満であり、前記複数の顔料粒子が、混合原子価タングステン酸化物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記複数の顔料粒子の各顔料粒子が、少なくとも1つのポリマーである第1の分散剤分子及び少なくとも1つの第2の分散剤分子に固定されて、複数の分散した顔料粒子を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記複数の分散した顔料粒子が、250ナノメートル以下の平均粒径を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の分散剤の固定基が、前記第2の分散剤の固定基と同様の表面電荷を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の分散剤の分子が、アミン、アンモニウム塩、ホスフェート、スルホネート、サルフェート、カルボキシレート、ホスホネート、及びホスフィネートを含む固定基を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記第2の分散剤の分子が、カチオン性固定基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第2の分散剤の分子が、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DODAB)、又はその両方を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記第2の分散剤の分子が、アニオン性固定基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記第2の分散剤の分子が、非イオン性固定基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
溶媒を更に含み、液体分散体を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1の分散剤の分子が、ポリエステル-ポリアミンコポリマーを含み、前記第2の分散剤の分子が、第四級アンモニウム塩を含み、前記溶媒が、1-メトキシ-2-プロパノール又は1-メトキシプロパン-2-オール(MP)を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物を含む、ハードコート。
【請求項19】
顔料分散体を製造する方法であって、
ポリマーである第1の分散剤と第2の分散剤とを溶媒に溶解して、溶液を形成することであって、前記第1の分散剤が、2000原子質量単位以上の平均分子量を有する分子を含み、前記第2の分散剤が、2000原子質量単位未満の最大分子量を有する分子を含む、形成することと、
金属酸化物を含む複数の顔料粒子を前記溶液に混合して、分散体を形成することと、及び
前記分散体をミリングして所望の粒径にすることと、を含む、方法。
【請求項20】
顔料粒子を有するハードコートを製造する方法であって、
硬化性バインダー材料を溶媒に溶解して、溶液を形成することと、
前記溶液を、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物を含む分散体に添加することと、
1つ以上の添加剤を前記分散体に添加することと、
前記分散体を基材上にコーティングすることと、
前記コーティングを乾燥させて、前記溶媒を除去することと、及び
前記乾燥させたコーティングを硬化させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、概して、金属酸化物分散体に関し、特に、ポリマーマトリックス中で安定化された金属酸化物分散体に関する。
【発明の概要】
【0002】
ポリマー分散剤は、金属酸化物分散体を安定化するために使用され得るが、過剰なレベルでは、ヘイズ、並びにこれらの分散体を使用して製造されるポリマーマトリックスにおける耐摩耗性、耐候性、及び配合物粘度などの他の特性に悪影響を及ぼし得る。本開示の技術は、ポリマーマトリックス中の金属酸化物分散体を安定化するために、低いポリマー分散剤レベルの使用を可能にする。いくつかの態様では、これらの技術は、ポリマー分散剤と低分子量分散剤とを組み合わせて、タングステン酸化物ナノ粒子分散体の表面安定化及び被覆率を最適化する。
【0003】
一態様では、本開示は、金属酸化物を含む複数の顔料粒子と、2000原子質量単位以上の平均分子量を有する分子を含む、ポリマーである第1の分散剤と、2000原子質量単位未満の最大分子量を有する分子を含む、第2の分散剤と、を含む、組成物を提供する。
【0004】
別の態様では、本開示は、本開示による組成物を含む、ハードコートを提供する。
【0005】
更に別の態様では、本開示は、顔料分散体を製造する方法を提供する。この方法は、ポリマーである第1の分散剤と第2の分散剤とを溶媒に溶解して、溶液を形成することを含む。第1の分散剤は、2000原子質量単位以上の平均分子量を有する分子を含み、第2の分散剤は、2000原子質量単位未満の最大分子量を有する分子を含む。この方法はまた、金属酸化物を含む複数の顔料粒子を溶液中に混合して、分散体を形成することと、及び分散体をミリングして所望の粒径にすることと、を含む。
【0006】
なお更なる態様では、本開示は、顔料粒子を有するハードコートを製造する方法を提供する。この方法は、硬化性バインダー材料を溶媒に溶解して、溶液を形成することと、この溶液を本開示による組成物を含む分散体に添加することと、1つ以上の添加剤を分散体に添加することと、分散体を基材上にコーティングすることと、コーティングを乾燥させて、溶媒を除去することと、及び乾燥したコーティングを硬化させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示による分散した顔料粒子を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の技術は、ポリマーマトリックス中の金属酸化物分散体を安定化するために、低いポリマー分散剤レベルの使用を可能にする。いくつかの態様では、これらの技術は、ポリマー分散剤と低分子量分散剤とを組み合わせて、タングステン酸化物ナノ粒子分散体の表面安定化及び被覆率を最適化する。
【0009】
概して、表面安定剤は、例えば金属酸化物表面が親水性であることにより、金属酸化物表面を安定化させ、溶媒中、特に有機系中での分散性を提供するために使用することができる。より小さい粒子は、より大きい粒子を使用することと比較してより高い総表面積を有するので、より多くの表面安定剤を使用して、粒子表面を十分に被覆することができる。
【0010】
特に高レベルの分散剤は、表面電荷及びヒドロキシ基の数に応じて、ある種の金属酸化物と共に使用することができる。一例では、タングステン酸化物材料は、低い表面電荷及び少数のヒドロキシ基を有することにより、他の金属酸化物よりも分散剤の充填量を相対的に高くして使用することができる。いくつかの既知の市販の分散体において、使用される分散剤は、分散体中の金属酸化物ナノ粒子の総重量の2~10倍を有し得る。これらの既存の分散体において、使用される分散剤の量は、過剰量として記載され得、これは、特にタングステン酸化物ナノ粒子について、金属酸化物表面を被覆するように平衡を推進し得る。金属酸化物と共に使用されるいくつかの分散剤としては、酸性粒子を安定化させるためのアミンなどの塩基性固定基を有するポリマー分散剤が挙げられる。本開示の組成物は、概して、分散体を製造する既存の技術と比較して、金属酸化物ナノ粒子の重量に対して相対的に低い総重量の分散剤を提供し、これは、コーティング性能を改善し得る。
【0011】
本開示の組成物は、複数の顔料粒子と、第1の分散剤と、第2の分散剤と、を含んでもよい。第2の分散剤は、第1の分散剤よりも最大分子量又は平均分子量に関して低い分子量を有してもよい。いくつかの実施形態では、第1の分散剤は、第1の閾値以上の平均分子量又は最小分子量を有する。いくつかの実施形態では、第2の分散剤は、第2の閾値以上の平均分子量又は最大分子量を有する。複数の顔料粒子は、金属酸化物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の分散剤は、高分子量を有し得るポリマー分散剤である。いくつかの実施形態では、第2の分散剤は、ポリマーではない分散剤である。一例では、組成物は、金属酸化物を含む複数の顔料粒子と、2000原子質量単位以上の平均分子量を有する分子を含む、ポリマーである第1の分散剤と、2000原子質量単位未満の最大分子量を有する分子を含む、第2の分散剤と、を含む。
【0012】
顔料粒子と共に第1の分散剤及び第2の分散剤を使用することにより、1つの分散剤のみを使用する既存の組成物、特に高分子量ポリマー分散剤を使用する既存の組成物と比較して、総分散剤使用量を低減させることができる。低減された総分散剤使用量は、コーティング性能を改善し得る。例えば、より低い総分散剤使用量は、任意の空気界面への未結合分散剤のブルーミングを最小化することにより、より低いヘイズのコーティングを容易にし得る。いくつかの実施形態では、本分散体を使用して製造されたコーティングの%ヘイズは、15、10、5、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、又は更には0.4パーセント以下であり得る。既存のコーティングは、同じ%ヘイズを達成するために、より多くの分散剤の総量を必要とし得る。より低い総分散剤使用量はまた、例えば、より高いアクリル樹脂含有量及び可塑剤として機能するより少ない非結合分散剤により、より高い耐摩耗性を促進し得る。いくつかの場合では、より低い総分散剤使用量は、より良好な耐候性を促進し得る。更に、より低い総分散剤使用量は、配合物粘度を低下させることができ、これは、特定の用途において有益であり得る。
【0013】
本開示の組成物は、任意の好適な用途、例えば、顔料粒子を有するポリマーハードコートの製造において、又は顔料粒子を有する接着剤層などのコーティング層若しくは押出層において使用されてもよい。概して、そのような組成物及びハードコートは、とりわけ、自動車又は建物のウィンドーフィルムにおける太陽光制御、近赤外線(NIR)カメラ可読ナンバープレート及び交通標識、ファイバーレーザー保護フィルムなどの様々な用途での使用に好適であり得る。
【0014】
任意の好適な技術が、組成物を用いてポリマーハードコートを製造するために使用されてもよい。一例では、顔料粒子を有するハードコートを製造する方法は、以下:硬化性バインダー材料を溶媒中に溶解させて、溶液を形成すること、この溶液を本開示の任意の組成物を有する分散体に添加すること、1つ以上の添加剤を分散体に添加すること、分散体を基材上にコーティングすること、コーティングを乾燥させて、溶媒を除去すること、及び乾燥したコーティングを硬化させること、のうちの1つ以上を含む。
【0015】
組成物は、分散した顔料粒子を提供することができる。いくつかの実施形態では、各顔料粒子は、少なくとも1つのポリマーである第1の分散剤分子と少なくとも1つの第2の分散剤分子とに固定されて、複数の分散した顔料粒子を形成してもよい。図1は、分散した顔料粒子10の一例を示している。分散した顔料粒子10は、1つ以上の第1の分散剤14及び1つ以上の第2の分散剤16に固定された顔料粒子12を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「固定基(anchoring group)」又は「アンカー基(anchor group)」は、分子を顔料粒子に固定することができる分子上の官能基を指す。
【0017】
概して、各分散剤は、組成物中で使用される顔料粒子のための顔料親和性固定基である少なくとも1つの固定基を含むことができる。固定基の非限定的な例としては、アミン、アンモニウム塩、ホスフェート、スルホネート、サルフェート、カルボキシレート、ホスホネート、及びホスフィネートが挙げられる。
【0018】
分散剤の固定基は、それらの電荷に依存して、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性として分類され得る。荷電基はまた、対イオンによって中和されていてもよい。カチオン性固定基の非限定的な例としては、アミン(若しくはポリアミン)又はアンモニウム塩が挙げられる。アニオン性固定基の非限定的な例としては、ホスフェート、スルホネート、及びカルボキシレートが挙げられる。非イオン性固定基の非限定的な例としては、エーテル又はエステルが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「電荷」という用語は、N又はOなどの固定基の非炭素原子上の部分電荷を指す。これらの部分電荷は、高分解能X線又は電子回折技術を使用して測定される電子密度から引き出すことができる。コア電子結合エネルギーシフトの分光測定及び双極子モーメント測定もまた、表面電荷に関する情報を提供する。酸性である場合、分散剤の電荷は、酸価と称され得る。酸価は、滴定などの従来の方法によって決定することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の分散剤及び第2の分散剤は各々、固定基を有する。第1の分散剤の少なくとも1つの固定基は、同じ溶液中に配置された場合、第2の分散剤の少なくとも1つの固定基と同様の表面電荷を有し得る。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「同様の表面電荷」は、第1の分散剤の固定基の表面電荷が、第2の分散剤の固定基の表面電荷と同じか又は中性であることをいう。例えば、第1の分散剤は正電荷を有してもよく、第2の分散剤は正電荷又は中性電荷を有してもよい。
【0022】
任意の好適な技術を、本開示の組成物の製造において使用してもよい。一例では、組成物を含む顔料分散体を製造する方法は、以下:ポリマーである第1の分散剤と第2の分散剤とを溶媒中に溶解して、溶液を形成すること、金属酸化物を含む複数の顔料粒子を溶液中に混合して、分散体を形成すること、及び分散体をミリングして所望の粒径にすること、のうちの1つ以上を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、ポリマー分散剤と、界面活性剤としても記載され得る低分子量分散剤と、を含む、組成物を提供する。高衝撃ミリングプロセス中に十分な分離を提供するために、ポリマー分散剤を使用してもよい。低分子量分散剤を使用して、ポリマー分散剤を補完して、表面被覆を容易にすることができる。組成物は、特にポリマー分散剤のみを使用する組成物と比較して、例えば、総分散剤使用量を重量に基づいて低減させることを可能にすることによって、タングステン酸化物ナノ粒子などの金属酸化物ナノ粒子の改善された表面安定化及び被覆率を提供し得る。
【0024】
このような分散体中の粒子は、還元条件(水素分圧)下でセラミックプロセスを介して製造され得るので、一次結晶サイズは、通常、数百ナノメートル以上である。高エネルギー媒体ミリングプロセスを適用して、用途のための所望の粒径分布に到達させることができる。例えば、サブ100ナノメートルの範囲の分布は、太陽光制御ウィンドーフィルムなどの多くの光学用途において使用され、可視光散乱が非常に少ししかないか又は全くない。
【0025】
組成物は、液体分散体又は固体分散体の形態で提供されてもよい。液体分散体は、1つ以上の溶媒を含み得る。固体分散体は、液体分散体中の全ての溶媒を除去することによって製造することができる。固体分散体は、1つ以上の溶媒を添加することによって液体形態に再分散され得る。液体分散体と固体分散体との間の変化は、分散した顔料粒径を有意に変化させない場合がある。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「顔料粒子」は、材料を通る太陽エネルギーの透過率を変化させるために添加される不溶性粒子を指す。顔料粒子は、無機であっても有機であってもよい。いくつかの実施形態では、顔料粒子は、可視波長範囲又は赤外線波長範囲のいずれかの光を選択的に散乱させ、これは色が非白色であると説明され得る。他の実施形態では、二酸化チタン顔料粒子などの顔料粒子は、可視波長範囲及び赤外波長範囲の両方の光を散乱させ、これは白色であると説明され得る。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「分散した顔料粒子」は、1つ以上の分散剤に固定された顔料粒子を指す。
【0028】
顔料粒子は、金属酸化物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、タングステン酸化物又は混合原子価タングステン酸化物を含んでもよい。酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、他の遷移金属酸化物又は金属酸化物顔料ナノ粒子(例えば、クロム-鉄酸化物、スピネル酸化物(例えば、アルミン酸コバルト)、及び鉄マンガン酸化物)などの可視吸収性である金属酸化物が使用されてもよい。アンチモンスズ酸化物(ATO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、及び亜鉛アンチモン酸化物などのIR吸収性の金属酸化物も使用することができる。
【0029】
混合原子価タングステン酸化物は、例えば、WO2.92、WO2.81、及びWO2.72などのタングステンブルー酸化物(TBO)などの還元タングステン酸化物、又はMWOタイプのタングステンブロンズ酸化物を含むことができ、式中、Mは、ナトリウム、カリウム、セシウム、又は多数の他の金属であり得る。タングステンブロンズ酸化物、例えば、セシウムタングステン酸化物(CsWO)又はカリウムタングステン酸化物(KWO)は、タングステン酸化物又はドープされたタングステン酸化物と呼ばれてもよい。ナノ粒子形態の混合原子価タングステン酸化物は、概して、高い可視光透過率及び低い近赤外線透過率(又は高い近赤外線吸収率)を可能にする。
【0030】
分散剤は、非適合性の固体又は液体を有する固体又は液体分散体中の粒子を安定化するために使用され得る。粒子、特に高表面積を有する小粒子は、例えば、任意の他の電荷安定化機構の非存在下で凝集する傾向がある。分散剤は、固体粒子の分離を防止するために、立体障壁、静電荷、又は電気的な立体メカニズム(electro-steric mechanism)を使用することができる。
【0031】
第1の分散剤は、ポリマー分散剤であってもよく、ポリマー主鎖の末端に様々な親油性官能基及び親水性官能基が結合されたポリマーであるポリマー分散剤であってもよい。ポリマーである第1の分散剤の官能基のいくつかの例としては、ポリエーテル、ポリエステル、アクリル、又はウレタンが挙げられる。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」は、多くの繰り返しサブユニットを有する分子を記載する。用語「非ポリマー」は、多くの繰り返しサブユニットを有していない分子を記載する。例えば、ポリマー分子は、10、20、30、50、100、200、又は更に500個以上の繰り返しサブユニットを有し得る。
【0033】
ポリマーである第1の分散剤は、より大きな分子量のオリゴマー又はポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーである第1の分散剤の平均分子量又は最小分子量は、1500、2000、3000、4000、5000、又は更には6000amu以上である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリマーである第1の分散剤は、長い長さの主鎖を有し得る。いくつかの実施形態では、主鎖長は、15、20、25、又は更に30以上の炭素-炭素結合又は炭素-ヘテロ原子結合であり得る。
【0035】
ポリマーである第1の分散剤は、酸性、塩基性、又は非イオン性結合基を有するジブロック、トリブロック、及びブラシなどのブロックコポリマーを含んでもよい。概して、ブロックコポリマーはランダムコポリマーよりも効果的である。いくつかの場合では、ランダムコポリマーが使用されてもよく、より効果的であり得る。
【0036】
概して、複数の固定部位を有するポリマー分散剤は、1つの固定部位のみを有する分散剤よりも良好な安定性を提供し得る。ポリマー分散剤は、分散剤分子が空気界面に移動する発生率を低下させ得る。ポリマー分散剤はまた、高エネルギー媒体ミリングプロセスのためのより良好な立体障害及び立体障壁を提供し得る。ポリマー分散剤は、立体障害により1つの粒子に固定される分散剤の数によって制限され得、いくつかの場合では、複数のナノ粒子が1つの分散剤粒子に固定され得る。
【0037】
第1の分散剤粒子固定部位は、非イオン性、アニオン性(通常、カルボン酸、リン酸、若しくはスルホン酸)、又はカチオン性(通常、アミン誘導体)であり得る。第1の分散剤の固定基の非限定的な例としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー(PEO/PPO)、ポリウレタン(PU)、ポリカプロラクトン、及びポリアクリレートが挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の分散剤の分子は、ポリマー鎖を含んでもよい。ポリマー鎖の非限定的な例としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、及びポリアクリレートが挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1の分散剤の分子は、ポリマーにおいてコポリマーを含んでもよい。ポリマー鎖におけるコポリマーの非限定的な例としては、ポリエステル-ポリアミンコポリマー、ポリエステル-ホスフェートコポリマー、又はその両方が挙げられる。例えば、いくつかの好適なポリエステル-ポリアミンコポリマーとしては、SOLPLUS D510及びSOLPERSE M387(各々、Lubrizol Corporation,Wickliffe,OHから市販されている)が挙げられる。
【0040】
第2の分散剤は、低分子量分散剤であってもよい。低分子量分散剤はまた、小分子量界面活性剤として記載され得る。このような低分子量界面活性剤は、水-油系及びナノ粒子合成を安定化するために使用されてきた。いくつかの実施形態では、第2の分散剤の平均分子量又は最大分子量は、2000、1000、750、500、400、300、200、又は150amu以下である。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2の分散剤は、ポリマーではない第2の分散剤であってもよい。他の実施形態では、第2の分散剤はポリマーであってもよく、短い長さの主鎖を有してもよい。一例では、第2の分散剤は、30、25、20、又は更には15以下の最大又は平均主鎖長を有し得る。概して、第1の分散剤及び第2の分散剤の両方がポリマーである場合、第1の分散剤は、第2の分散剤よりも長い平均主鎖長を有する。
【0042】
低分子量分散剤は、不変式量を有する典型的な明確に定められた分子であってもよい。低分子量分散剤は、明確に定められた固定基、例えば、正に荷電した第四級アンモニウムイオン又は負に荷電した、サルフェート、スルホネート、ホスフェートなどのようなアニオン性基を有し得る。分散剤の尾部は、溶媒媒体中での溶解性を提供し得る。低分子量は、単位重量当たりのより多くの固定基(結合単位又は頭部基としても記載され得る)をもたらし得、ひいては分散剤の単位重量当たりのより高い表面被覆率をもたらし得る。小分子はまた、より良好な移動性及びより速い結合機構を有し得る。
【0043】
いくつかの既存の技術では、低分子量分散剤は、摩砕又はボールミリングアプローチによってナノ粒子を分散させるのに好適であることが見出されていない。低分子量分散剤は、典型的には、激しいミリング環境中に粒子が互いに接触するのを防止するための保護シェルを形成するのに十分長い鎖長を有していない。
【0044】
いくつかの実施形態では、第2の分散剤は、カチオン性固定基を有する分子を含む。カチオン性固定基は、第四級アンモニウム塩を含んでもよい。カチオン性固定基を有する分子の非限定的な例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DODAB)が挙げられ、これらは第四級アンモニウム塩の例である。
【0045】
いくつかの実施形態では、第2の分散剤は、アニオン性固定基を有する分子を含む。アニオン性固定基を有する分子の非限定的な例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びリン酸水素ジヘキサデシルが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、第2の分散剤は、非イオン性固定基を有する分子を含む。非イオン性固定基を有する分子の非限定的な例としては、2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(DMAP)、及び2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(DMAEE)が挙げられる。
【0047】
概して、分散剤を比較すると、ポリマーである第1の分散剤は、より高い分子量、大きな立体障壁を有するものとして説明することができ、いくつかのポリマー分散剤は、1分子当たり複数の固定基を有し、より安定な平均固定を提供する。低分子量の第2の分散剤は、より低い分子量、小さい立体障壁、1分子当たり少数のみの固定基、及びより不安定な表面吸着を有するものとして説明することができる。
【0048】
概して、第2の分散剤の使用は、長い主鎖のポリマー分散剤のみを使用する分散体と比較して、分散剤粒子中で使用される炭素及び水素の総量を低減させ得る。いくつかの実施形態では、ポリマーである第1の分散剤の重量は、組成物中の顔料粒子の重量の50、40、30、25、20、15、又は更には10パーセント以下である。いくつかの実施形態では、ポリマーである第1の分散剤と第2の分散剤とを組み合わせた重量は、顔料粒子の重量の60、55、50、45、40、35、30、25、20、又は更には15パーセント未満である。
【0049】
第2の分散剤の使用は、同様のミリング粒径を提供するために必要とされる、ポリマーである第1の分散剤の量を低減させ得る。いくつかの実施形態では、第2の分散剤を使用することにより、同様の平均粒径を達成しながら、ポリマーである第1の分散剤のみを使用した場合と比較して、分散剤の総重量の顔料粒子の重量に対する比を少なくとも20、30、40、又は更には50パーセント低減させることができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「同様の平均粒径」という用語は、1つの平均粒径が別の平均粒径の50、40、30、25、20、15、又は10パーセント以内であることを指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「Z平均サイズ」及び「平均粒径」は、互換的に使用されてもよく、ISO 13321及びISO 22412で規定されるキュムラント分析における調和強度平均流体力学的粒径を指す。Z平均サイズは、ZETASIZER NANO ZS(Malvern Instruments Inc,Westborough,MAから市販されている)などの任意の好適な機器を使用して測定され得る。
【0052】
組成物から作製される分散粒子の好適なサイズは、用途に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態では、特に光学用途の場合、複数の分散した顔料粒子は、250、200、150、100、75、又は更には50ナノメートル以下の平均粒径を有する。
【0053】
顔料粒子と分散剤とを分散媒又は溶媒中に混合して、液体分散体を形成することができる。分散媒又は溶媒の非限定的な例としては、水、有機アルコール若しくは他のアルコール、炭化水素若しくは有機溶媒、ケトン、油、モノマー、オリゴマー、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。特に、溶媒としては、1-メトキシ-2-プロパノール(MP)、メチルエチルケトン(又は2-ブタノン)(MEK)、エチレングリコール(EG)、又は水を挙げることができる。有機アルコールの一例は、MPである。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1の分散剤及び第2の分散剤のための分子の選択は、溶媒中のそれらのそれぞれの溶解度に少なくとも部分的に依存し得る。溶媒中のそのような分散剤の溶解度は、それらの化学構造に依存する。
【0055】
いくつかの実施形態では、様々な分散剤を溶媒としての水と共に使用することができる。第1の分散剤としては、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)コポリマー、BYK Additives & Instruments of Wesel,Germanyから市販されている分散剤、例えば、ANTI-TERRA-250、BYK-154、BYK-156、DISPERBYK-183、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-191、DISPERBYK-192、DISPERBYK-199、DISPERBYK-2015、若しくはDISPERBYK-2096、Lubrizol Corporation of Wickliffe,Ohioから市販されている分散剤、例えば、SOLSPERSE W100、SOLSPERSE W200、SOLSPERSE W320、SOLSPERSE 43000、SOLSPERSE WV400、SOLSPERSE 43000、若しくはSOLSPERSE 47000、Croda Industrial Chemicals of Edison,New Jerseyから市販されている分散剤、例えば、SPAN 20、SPAN 40、SPAN 60、SPAN 80、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 80、又はDow Chemical Company of Midland,Michiganから市販されている分散剤、例えば、TRITON X-100のうちの1つ以上を挙げることができる。第2の分散剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DODAB)、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又はリン酸水素ジヘキサデシルを挙げることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、様々な分散剤を水溶性極性有機溶媒と共に使用することができる。第1の分散剤としては、BYK Additives & Instrumentsから市販されている分散剤、例えば、DISPERBYK、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-2013、DISPERBYK-2055、DISPERBYK-2059、BYKJET-9151若しくはBYKJET-9152、又はLubrizol Corporationから市販されている分散剤、SOLSPERE 20000、SOLSPERE 27000、SOLSPERE 45000、SOLSPERE 54000、SOLSPERE 65000、SOLSPERE 71000、SOLPLUS D540、SOLPLUS D545、若しくはSOLPLUS D570のうちの1つ以上を挙げることができる。第2の分散剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DODAB)、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又はリン酸水素ジヘキサデシルを挙げることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエンなどのより極性の低い有機溶媒と共に様々な分散剤が使用され得る。第1の分散剤としては、BYK Additives & Instrumentsから市販されている分散剤、例えば、BYK-W903、BYK-W969、BYK-W985、BYK-W995、BYK-W996、BYK-W9010、BYK-W9011、BYK-W9012、DISPERBYK-111、DISPERBYK-118、BYK-9076、BYK-9077、DISPERBYK-163、DISPERBYK-168、DISPERBYK-184、DISPERBYK-2008、DISPERBYK-2152、DISPERBYK-2155、又はLubrizol Corporationから市販されている分散剤、例えば、SOLSPERSE 32000、SOLSPERSE 36000、SOLSPERSE 39000、SOLSPERSE 41000、SOLSPERSE 71000、SOLSPERSE 75000、SOLSPERSE76500、SOLSPERSE85000、SOLSPERSE 88000、SOLSPERSE、SOLSPERSE M385、SOLSPERSE M387、SOLSPERSE M388、SOLSPERSE M387のうちの1つ以上を挙げることができる。第2の分散剤は、2-(メチルアミノ)エタノール、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、又は2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノールを含んでもよい。
【実施例
【0058】
ポリマーである分散剤及びポリマーではない分散剤を有する金属酸化物分散体の組成物を製造し、粒径について試験した。分散体をコーティング溶液に配合し、フィルムに適用し、乾燥させた。乾燥させたコーティングのヘイズ及び透過率を測定した。
【0059】
これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。以下の略語が本明細書で使用される:nM=ナノメートル、g/m=平方メートル当たりのグラム、g=グラム、℃=摂氏温度。
【0060】
材料
【表1】
【0061】
試験方法
粒径
粒径分布は、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Inc,Westborough,MA)を使用して測定した。173°後方散乱モードの検出を使用した。測定時間を自動モードに設定し、ソフトウェアが1回の実行当たりに必要とされる時間及び必要な実行回数を決定することを可能にした。測定位置及び減衰率も自動モードに設定した。ソフトウェア解析モデルとして「General Purpose(通常分解能)」モデルを選択した。Mark-Houwink Aパラメータを0.428に設定し、Kパラメータを7.67e-05cm/秒に設定した。測定温度を25℃に設定した。使用した溶媒粘度は、MEKでは0.43センチポアズであった。粒子濃度が低いことにより、溶媒粘度を試料粘度として使用した。最初に、試料をミリングに使用したのと同じ溶媒で、体積に基づいて1:100~1:10000に希釈した。Z平均粒径データは、動的光散乱理論に基づいて報告した。Z平均サイズは、ISO13321及びISO22412に規定されるキュムラント解析における調和強度平均流体力学的粒径である。サイズ分布は、ISO規格文書13321:1996 E又はISO 22412:2008に規定される相関データへの2パラメータフィットから計算した。
【0062】
ヘイズ及び透過率
透過率及びヘイズの読み取りを、BYK haze-gard plus(BYK Instruments USA(BYK Instruments USA,Columbia,MD)で行った。
【0063】
コーティングの厚さ
コーティングの厚さは、1.49の想定屈折率を使用して、tec5 AG UV-VIS分光計(tec5 USA Inc,Plainview,NY)を使用して測定した。
【0064】
実施例-分散体
分散体を、媒体ミリングプロセスを使用して処理した。分散剤と溶媒とをまず完全に溶解するまで混合し、次いで、顔料粉末をゆっくりと充填した。混合分散体を、0.2ミリメートルのToraycerumイットリア安定化ジルコニアミリング媒体を用いて、MiniCer(NMC)又はLabStar(NLS)実験室媒体ミル(Netzsch,Exton PA)中でミリングした。少量の試料を定期的に取り出して、粒径測定によってミリングの進行を監視した。表2は、分散剤配合組成(各例について計算された%及び比)、ミルタイプ、ミリング時間及び得られた粒径を示す。
【0065】
実施例E1~E5、CE1~CE2:CsWO/MP/H2O/第1の分散剤D510/第2の分散剤DTAB
E1~E2:ナノ粒子分散体E1は、粒子に対して合計55%の分散剤を使用して作製した(D1/P=50、D2/P=5)。分散体E2は、粒子に対して合計35%の分散剤を使用して製造した(D1/P=25%、D2/P=10%)。
【0066】
CE1a、CE1b、E3:1)CE1a分散体は、第2の分散剤のみを用いて、第1の分散剤を用いずに配合した。CE1a分散体を2時間ミリングしてサブミクロン粒径に到達させたが、十分なサイズの低減は得られなかった。2)10%の第1の分散剤(D1/P=10%)をE3に添加することによって、CE1b分散体を作製した。CE1b分散体を更に2時間ミリングして、400nm未満への更なるサイズの低減を得た。3)更に10%の第1の分散剤をCE1bに添加して、合計35%の分散剤(D1/P=20%、D2/P=15%)に到達させることによって、E3分散体を作製した。E3分散体を更に2時間ミリングし、粒径を100nm未満に低減させた。
【0067】
E4:顔料濃度がより高い配合物(最終分散体の27%)を、Labstarミルを使用してミリングして、精密パイロットコーターにおける配合組成評価を裏付けた。最終分散体は、粒子に対して35%の分散剤から構成されたた(D1/P=30%、D2/P=5%)。
【0068】
CE2:CsWO/MP分散体を、第1の分散剤のみを用いて作製し、第2の分散剤なしで所望の粒径に到達するためには、約100%の第1の分散剤、対粒子(D1/P=100%)が必要であった。
【0069】
E5:CsWO/MP分散体は、E1~E4及びCE1a~CE1bと同じ第1の分散剤から作製し、但し、第2の分散剤をDTABからDODAB(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド)に置き換えた。DODABは、二本鎖第四級アンモニウム分子である。粒子に対して合計60%の分散剤(D1/P=50%、D2/P=10%)を使用して、200nm未満の粒径に到達させた。
【0070】
実施例E6~E7、CE3:KWO/MP/第1の分散剤D510/第2の分散剤DTAB
E6:45%の合計分散剤対粒子比(D1/P=40%、D2/P=5%)を用いて、分散体を作製した。
【0071】
E7:分散体は、46%の合計分散剤対粒子比を有するE6と同様であったが、粒径を50nm未満に低減するために長時間ミリングした。
【0072】
CE3:この比較例は、第1の分散剤のみを使用し、第2の分散剤を使用せずに所望の粒径に到達するためには、約100%の分散剤対粒子比(D1/P)を必要とした。
【0073】
実施例E8、CE4:CsWO/MEK/第1の分散剤M387/第2の分散剤MAE
E8:第2の分散剤(MAE)を使用し、第1の分散剤の使用量を最小限に留めた。粒子に対して合計55%の分散剤(D1/P=50%、D2/P=5%)を使用した。
【0074】
CE4:100%の第1の分散剤、対粒子(D1/P)を使用した。
【0075】
実施例E9~E11、CE5:KWO/MEK/第1の分散剤M387/第2の分散剤
E9~11:E9についてはMAE、E10についてはDMAP、及びE11についてはDMAEEを含む3つの異なる第2の分散剤によって、3つのKWO/MEK分散体を作製した。それらは全て、同じ第1の分散剤を使用した。粒子に対して50%の第1の分散剤(D1/P=50%)及び粒子に対して5%の第2の分散剤(D2/P=5%)を使用した。
【0076】
CE5:100%の第1の分散剤、対粒子(D1/P)を使用した。
【0077】
実施例E12~E13:CsWO/EG/第1の分散剤D540/第2の分散剤
E12:第2の分散剤としてSDSを用いた分散体。それは、粒子に対して合計50%の分散剤から構成されていた(D1/P=40%、D2/P=10%)。
【0078】
E13:第2の分散剤としてDHP及びDS-10を使用した分散剤。それは、粒子に対して合計70%の分散剤から構成されていた(D1/P=50%、D2/P=10%)。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
実施例-E4、E6、CE2、CE3分散体を有するハードコート
ハードコートコーティング溶液は、顔料分散体とブレンドされたアクリレートモノマー、UV光に感受性の光開始剤、架橋剤、及びスリップ剤を含んでいた。これらの溶液をPETフィルム上にコーティングし、乾燥させ、硬化させた。配合については、表4を参照されたい。ハードコート溶液を、2工程で形成した。まず、等部のSR238モノマー、SR295モノマー、及びMEK溶媒を一緒に混合し、次いで、アクリレート重量の5.8%のPZ33架橋剤、アクリレート重量の0.67%のTEGORAD 2250スリップ剤、並びに、各々、アクリレート重量の2.4%の光開始剤IRGACURE 184及びIRGACURE 819を添加することによって、プレミックス溶液を作製した。次いで、このモノマープレミックスを、一定した混合下で顔料分散体(E4、E6、CE2又はCE3)に、以下の表4に示す重量比までゆっくりと添加した。混合を容易にするために、表4に示すように、50%のMEK及び50%のMPの溶媒ブレンドも添加した。その後、溶液を更に1時間混合した。
【0082】
ハードコートコーティング溶液を、質量流量計によって制御される加圧容器を使用して供給される精密押出ダイを用いて、厚さ50ミクロンの透明PETフィルム上にコーティングした。PETは、93%の測定透過率及び0.6%のバルクヘイズを有していた。PETのバルクヘイズ及び透過率は、ヘイズを測定する前にフィルムの両側に連続層を形成するのに十分に低い表面張力を有する透明な液体を適用することによって測定した。この場合、使用された液体は、1-メトキシ-2-プロパノールであった。コーティングを65℃の平均温度で1分間乾燥させ、次いで、600ワットのModel I603M UV Cure Chamber(Fusion UV Systems,Gaithersburg MD)内で、窒素パージ下、出力100%で5秒間硬化させた。分散体顔料充填量を計算した。乾燥コーティング厚さ、透過率及びヘイズを測定し、表5に報告した。
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
こうして、多分散剤金属酸化物ナノ粒子分散体組成物の様々な実施形態が開示される。本明細書では、本開示の一部を形成する添付の一連の図面が参照されるが、少なくとも当業者であれば、本明細書で説明される実施形態の様々な適合及び修正が本開示の範囲内であるか、又は本開示の範囲から逸脱しないことを理解するであろう。例えば、本明細書に記載された実施形態の態様は、様々な方法で互いに組み合わせてもよい。したがって、添付の特許請求の範囲内で、特許請求される本発明は、本明細書に明示的に記載されたもの以外で実施されてもよいことを理解されたい。
【0086】
本明細書で言及した全ての参考文献及び刊行物は、任意の態様が本開示と直接矛盾し得る場合を除き、全ての目的のために、これらの全体が参照により本開示に明示的に組み込まれる。
【0087】
本明細書で使用される全ての科学用語及び技術用語は、別途明記しない限り、当該技術分野で通常使用される意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いる特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0088】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、用語「正確に(exactly)」又は「約」のいずれかによって修飾されているものとして理解され得る。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて、例えば、典型的な実験誤差範囲内で変動し得る近似値である。
【0089】
用語「又は」は、文脈に別段の明示がない限り、その包括的な意味で全般に使用され、例えば、「及び/又は」を意味する。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの少なくとも2つの組み合わせを意味する。
図1
【国際調査報告】