(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】骨髄癌処置のためのLSD1阻害剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/497 20060101AFI20240314BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240314BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240314BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240314BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/132 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240314BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K31/497
A61K45/00
A61P7/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61K31/132
A61K31/513
A61K31/496
A61K31/495
A61K31/445
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562206
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2022057386
(87)【国際公開番号】W WO2022214303
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517434666
【氏名又は名称】オリゾン ジェノミックス ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】マエス,タマラ
(72)【発明者】
【氏名】サチロット,ナタリア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC50
4C086BC60
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA29
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA51
4C206ZB26
4C206ZB27
(57)【要約】
本発明は、LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)とギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)の組み合わせに関する。本組み合わせは、急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群などの骨髄癌の処置に特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品。
【請求項2】
LSD1阻害剤が小分子である、請求項1の組み合わせ製品。
【請求項3】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット、プルロデムスタット、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1または2の組み合わせ製品。
【請求項4】
LSD1阻害剤がイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1の組み合わせ製品。
【請求項5】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット二塩酸塩である、請求項4の組み合わせ製品。
【請求項6】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が同じ医薬製剤で提供される、請求項1~5の何れかの組み合わせ製品。
【請求項7】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が異なる医薬製剤で提供される、請求項1~5の何れかの組み合わせ製品。
【請求項8】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩および1以上の薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項9】
LSD1阻害剤が小分子である、請求項8の医薬組成物。
【請求項10】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット、プルロデムスタット、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項8または9の医薬組成物。
【請求項11】
LSD1阻害剤がイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項8の医薬組成物。
【請求項12】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット二塩酸塩である、請求項8の医薬組成物。
【請求項13】
同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、製造品。
【請求項14】
LSD1阻害剤が小分子である、請求項13の製造品。
【請求項15】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット、プルロデムスタット、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項13または14の製造品。
【請求項16】
LSD1阻害剤がイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項13の製造品。
【請求項17】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット二塩酸塩である、請求項13の製造品。
【請求項18】
治療に使用するための、請求項1~7の何れかの組み合わせ製品または請求項13~17の何れかの製造品。
【請求項19】
骨髄癌の処置に使用するための、請求項1~7の何れかの組み合わせ製品または請求項8~12の何れかの医薬組成物または請求項13~17の何れかの製造品。
【請求項20】
骨髄癌の処置に使用するための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩である化合物であって、ここで、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩がギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである、化合物。
【請求項21】
骨髄癌の処置に使用するための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩である化合物であって、ここで、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩がLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである、化合物。
【請求項22】
LSD1阻害剤が小分子である、請求項20または21の使用のための化合物。
【請求項23】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット、プルロデムスタット、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項20または21の使用のための化合物。
【請求項24】
LSD1阻害剤がイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項20または21の使用のための化合物。
【請求項25】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット二塩酸塩である、請求項24の使用のための化合物。
【請求項26】
骨髄癌が急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される、請求項19の使用のための組み合わせ製品、請求項19の使用のための医薬組成物、請求項19の使用のための製造品または請求項20~25の何れかの使用のための組み合わせ製品。
【請求項27】
骨髄癌が急性骨髄性白血病である、請求項19の使用のための組み合わせ製品、請求項19の使用のための医薬組成物、請求項19の使用のための製造品または請求項20~25の何れかの使用のための組み合わせ製品。
【請求項28】
急性骨髄性白血病が再発または難治性急性骨髄性白血病である、請求項27の使用のための組み合わせ製品、請求項27の使用のための医薬組成物、請求項27の使用のための製造品または請求項27の使用のための組み合わせ製品。
【請求項29】
急性骨髄性白血病がFLT3変異を有する急性骨髄性白血病である、請求項27または28の使用のための組み合わせ製品、請求項27または28の使用のための医薬組成物、請求項27または28の使用のための製造品または請求項27または28の使用のための組み合わせ製品。
【請求項30】
急性骨髄性白血病がFLT3変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病である、請求項27の使用のための組み合わせ製品、請求項27の使用のための医薬組成物、請求項27の使用のための製造品または請求項27の使用のための組み合わせ製品。
【請求項31】
患者に請求項1~7の何れかの組み合わせ製品または請求項8~12の何れかの医薬組成物を投与することを含む、処置を必要とする患者における骨髄癌を処置する方法。
【請求項32】
患者にLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の治療有効量とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む、処置を必要とする患者における骨髄癌を処置する方法。
【請求項33】
LSD1阻害剤が小分子である、請求項31または32の方法。
【請求項34】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット、プルロデムスタット、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項31または32の方法。
【請求項35】
LSD1阻害剤がイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項31または32の方法。
【請求項36】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット二塩酸塩である、請求項35の方法。
【請求項37】
骨髄癌が急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される、請求項31~36の何れかの方法。
【請求項38】
骨髄癌が急性骨髄性白血病である、請求項31~36の何れかの方法。
【請求項39】
急性骨髄性白血病が再発または難治性急性骨髄性白血病である、請求項38の方法。
【請求項40】
急性骨髄性白血病がFLT3変異を有する急性骨髄性白血病である、請求項38または39の方法。
【請求項41】
急性骨髄性白血病がFLT3変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病である、請求項38の方法。
【請求項42】
処置する患者がヒトである、請求項31~41の何れかの方法。
【請求項43】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が同じ医薬製剤で投与される、請求項31~42の何れかの方法。
【請求項44】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が別々の医薬製剤で投与される、請求項31~42の何れかの方法。
【請求項45】
骨髄癌の処置の処置用医薬の製造のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせの使用。
【請求項46】
骨髄癌の処置の処置用医薬の製造のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用であって、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである、使用。
【請求項47】
骨髄癌の処置の処置用医薬の製造のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである、使用。
【請求項48】
骨髄癌の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせの使用。
【請求項49】
骨髄癌の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用であって、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである、使用。
【請求項50】
骨髄癌の処置のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである、使用。
【請求項51】
LSD1阻害剤が小分子である、請求項45~50の何れかの使用。
【請求項52】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット、プルロデムスタット、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項45~50の何れかの使用。
【請求項53】
LSD1阻害剤がイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である、請求項45~50の何れかの使用。
【請求項54】
LSD1阻害剤がイアダデムスタット二塩酸塩である、請求項53の使用。
【請求項55】
骨髄癌が急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される、請求項45~54の何れかの使用。
【請求項56】
骨髄癌が急性骨髄性白血病である、請求項45~55の何れかの使用。
【請求項57】
急性骨髄性白血病が再発または難治性急性骨髄性白血病である、請求項56の使用。
【請求項58】
急性骨髄性白血病がFLT3変異を有する急性骨髄性白血病である、請求項56または57の使用。
【請求項59】
急性骨髄性白血病がFLT3変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病である、請求項56の使用。
【請求項60】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が経口投与される、請求項19または26~30の何れかの使用のための組み合わせ製品、請求項19または26~30の使用のための製造品、請求項20~30の何れかの使用のための化合物、請求項31~44の何れかの方法または請求項45~59の何れかの使用。
【請求項61】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が別々の医薬製剤で投与される、請求項19、26~30または60の何れかの使用のための組み合わせ製品、請求項19、26~30または60の何れかの使用のための製造品、請求項20~30または60の何れかの使用のための化合物、請求項31~42または60の何れかの方法または請求項45~60の何れかの使用。
【請求項62】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が別々の医薬製剤を使用して同時に投与される、請求項61の使用のための組み合わせ製品、請求項61の使用のための製造品、請求項61の使用のための化合物、請求項61の方法または請求項61の使用。
【請求項63】
LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩が別々の医薬製剤を使用して逐次的に投与される、請求項61の使用のための組み合わせ製品、請求項61の使用のための製造品、請求項61の使用のための化合物、請求項61の方法または請求項61の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、LSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせに関する。組み合わせは、骨髄癌、特に急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群の処置に有用である。
【背景技術】
【0002】
背景
急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄不全に至る未分化造血細胞(芽球)の未制御の増殖および蓄積を起こし、正常な血液細胞産生に影響し、最終的に、処置しなければ、診断後数カ月で患者が死亡する攻撃的骨髄癌である。AMLは成人で最も一般的な急性白血病であり、主に高齢者の疾患であり、診断時の中央年齢68歳である。世界中の人口が増え、寿命が延びているため、年々AMLと診断される患者は増えている。実際、AMLは全ての新規癌診断の1.1%を占め、2019年に世界中で約135,000人がAMLと新らたに診断された。
【0003】
60歳未満のヒトにおけるAMLの処置は、これらの患者で治癒的と考えられる唯一の治療法である骨髄移植をその後に可能とするための寛解を誘導する集中的化学療法が標準である。しかしながら、高齢患者または健康状態が悪い患者はこの処置に耐えることができない可能性があり、治療選択肢は、例えばアザシチジン単独またはベネトクラクスとの組み合わせ(後者のみUSAで承認されている)を用いる、低強度化学療法などの非治癒的アプローチまたは特定の変異を有する特定の集団を目的とする特定の薬物に限定される。
【0004】
AMLの予後は悪く、生存率は、<60歳未満の成人では35~40%、高齢患者では5~15%と低い範囲である。AMLを有する患者の25%は処置に難治性と推定され、50%超が現在の処置で再発すると推定される。患者が第一選択処置で再発するかまたは該治療から利益が得られないとき、ほとんど標準化されておらず、効率的ではない第二選択レジメンを続ける;実際、これらの患者のほとんどが、有効な処置がないとの観点から、臨床治験に参加する。積極的な治療でも、これら再発/難治性(R/R)患者の予後は極めて悪く、中央生存は6カ月である。このR/R集団の大部分(全R/R AML症例の30~50%)は、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)遺伝子の変異を示し、予後不良のマーカーと考えられる。
【0005】
骨髄異形成症候群(MDS)は、血液前駆細胞の分化が障害され、骨髄細胞で起こるアポトーシス細胞死のレベルが顕著に増大する、別のタイプの骨髄癌である。時間と共に、全MDS症例の約1/3がAMLになる。FLT3変異は、MDSでも見られる。
【0006】
ギルテリチニブは、FLT3変異を伴うR/R AML患者の処置について承認されているFLT3阻害剤であり、MDSは臨床治験で評価中である。しかしながら、ギルテリチニブ治療後のアウトカムはなお悪く、ギルテリチニブで処置したとき、R/R AML患者の21%しか完全寛解を示さず、無再発生存はわずかに約4カ月である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
故に、現在の処置に対する耐性および応答性欠如の問題に取り組む、骨髄癌、特にAMLおよびMDSのための新たな改善された治療選択肢の、強くかつ満たされていない要望がある。本発明はこれらおよびその他の要望に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、ここに記載するLSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせが、LSD1阻害剤単独またはギルテリチニブ単独での処置と比較して、骨髄癌細胞の増殖抑制に傑出した活性を示すとの予想外の発見に基づく。故に、本発明は、LSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせを使用することによる、AMLおよびMDSなどの骨髄悪性腫瘍処置のための新規組み合わせに関する。
【0009】
従って、本発明は、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品を提供する。
【0010】
本発明は、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩および1以上の薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0011】
本発明は、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、製造品(または「キット」)をさらに提供する。
【0012】
本発明は、さらに、治療に使用するための(または医薬/薬剤として使用するための)、上記組み合わせ製品、医薬組成物または製造品に関する。故に、本発明は、特に治療に使用するための、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品を提供する。
【0013】
本発明は、さらに、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置に使用するための、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、患者に上記組み合わせ製品、医薬組成物または製造品の治療有効量を投与することを含む、処置を必要とする患者における骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)を処置する方法を提供する。特に、本発明は、患者に、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品の治療有効量を投与することを含む、処置を必要とする患者における、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)を処置する方法を提供する。
【0015】
本発明は、さらに、患者にLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の治療有効量とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む、処置を必要とする患者における、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)を処置する方法を提供する。
【0016】
本発明は、さらに、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置用医薬の製造における、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせの使用を提供する。
【0017】
本発明は、さらに、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせの使用を提供する。
【0018】
好ましい実施態様において、LSD1阻害剤はイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩(例えば、イアダデムスタット二塩酸塩)である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1に記載の、本発明の組み合わせの相乗効果を決定するために使用したマトリクスアッセイのための組み合わせ図(plate organization)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な記載
上記のとおり、本発明は、ここに記載するとおり、LSD1阻害剤およびギルテリチニブを組み合わせて使用して、以下におよび実施例にさらに詳細に説明するとおり、LSD1阻害剤単独またはギルテリチニブ単独での処置で得られるより優れた抗癌有効性もって骨髄悪性腫瘍が処置できるとの驚くべき発見に基づく。
【0021】
本発明によると、「LSD1阻害剤」は、LSD1の遺伝子発現、活性または機能を低減、減少、遮断または阻害する化合物である。その例は、以下に「LSD1阻害剤」の表題の下に提供される。好ましいLSD1阻害剤はイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩(例えば、イアダデムスタット二塩酸塩)である。
【0022】
詳細には、本発明は、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品を提供する。故に、LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)およびギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は単一医薬製剤(すなわち、同じ医薬製剤)に存在し得るかまたは異なる(別個の)医薬製剤で提供され得る。
【0023】
本発明は、さらに、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩および1以上の薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明は、さらに、同じ医薬製剤または別々の医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、製造品を提供する。
【0025】
本発明は、さらに、治療に使用するための(または医薬/薬剤として使用するための)、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品を提供する。本発明は、同様に、治療に使用するための(または医薬/薬剤として使用するための)、上記医薬組成物または製造品に関する。
【0026】
本発明は、さらに、癌の処置に使用するための、好ましくは急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群などの骨髄癌の処置に使用するための、上記組み合わせ製品、医薬組成物または製造品を提供する。
【0027】
故に、本発明は、特に、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置に使用するための、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品を提供する。
【0028】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置に使用するための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩はギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである。従って、本発明は、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置に使用するための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される。LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)およびギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は同じ医薬製剤に提供され得るかまたは別々の医薬製剤で提供され得る。
【0029】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置に使用するための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである。従って、本発明は、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置に使用するための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、該ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される。ギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)およびLSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)は同じ医薬製剤に提供され得るかまたは別々の医薬製剤で提供され得る。
【0030】
本発明は、さらに、患者に上記組み合わせ製品、医薬組成物または製造品の治療有効量を投与することを含む、癌、特に骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)を処置する方法を提供する。
【0031】
特に、本発明は、患者に同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、組み合わせ製品の治療有効量を投与することを含む、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)を処置する方法を提供する。
【0032】
本発明は、さらに、患者に、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の治療有効量とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む、処置を必要とする患者において骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)を処置する方法を提供する。LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)およびギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は同じ医薬製剤で提供/投与され得るかまたは異なる医薬製剤で提供/投与され得る。
【0033】
本発明は、さらに、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置のための医薬の製造のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせの使用を提供する。
【0034】
本発明は、さらに、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置のための、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に、該LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩および該ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む、医薬の製造のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0035】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせたLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、医薬は、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に含む。
【0036】
本発明は、さらに、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0037】
本発明は、さらに、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0038】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、該医薬は、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせ使用のため(または組み合わせて使用するため)に製造される。
【0039】
本発明は、さらに、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0040】
本発明は、さらに、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0041】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置用医薬の製造のためのギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、該医薬は、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩との組み合わせ使用のため(または組み合わせて使用するため)に製造される。
【0042】
本発明は、さらに、好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される骨髄癌の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩とギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせの使用を提供する。
【0043】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせたLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、該LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩および該ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、同じ医薬製剤または異なる医薬製剤に提供される。
【0044】
本発明は、さらに、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0045】
本発明は、さらに、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0046】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される。
【0047】
本発明は、さらに、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0048】
本発明は、さらに、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0049】
本発明は、さらに、骨髄癌(これは好ましくは急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群から選択される)の処置のための、ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、該ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩は、LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される。
【0050】
本発明による方法および使用において、患者はヒトまたは動物(例えば、非ヒト哺乳動物)、好ましくはヒトである。
【0051】
ある実施態様において、LSD1阻害剤は小分子である。
【0052】
ある実施態様において、LSD1阻害剤は、イアダデムスタット、プルロデムスタット(CC-90011)、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩(すなわち、上記薬剤の何れかの薬学的に許容される塩)からなる群から選択される。
【0053】
ある実施態様において、LSD1阻害剤は、イアダデムスタット、プルロデムスタット(CC-90011)、ボメデムスタットおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0054】
ある実施態様において、LSD1阻害剤はプルロデムスタット(CC-90011)またはその薬学的に許容される塩である。
【0055】
ある実施態様において、LSD1阻害剤はボメデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である。
【0056】
好ましくは、LSD1阻害剤はイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、LSD1阻害剤はイアダデムスタット二塩酸塩である。
【0057】
ある実施態様において、骨髄癌は急性骨髄性白血病である。
【0058】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病は再発または難治性急性骨髄性白血病である。
【0059】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病は再発した急性骨髄性白血病である。
【0060】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病は難治性急性骨髄性白血病である。
【0061】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)遺伝的、後成的または転写後変更を伴う急性骨髄性白血病である。特に、急性骨髄性白血病は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)FLT3変異および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する急性骨髄性白血病であり得る。ある実施態様において、急性骨髄性白血病はFLT3発現レベル増加またはFLT3活性増加をもたらすFLT3変異および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する急性骨髄性白血病であり、ここで、該FLT3発現レベル増加または該FLT3活性増加は、未制御の細胞増殖に至る。
【0062】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病はFLT3変異を有する急性骨髄性白血病である。
【0063】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病は再発またはFLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)遺伝的、後成的または転写後変更を伴う難治性急性骨髄性白血病である。例えば、急性骨髄性白血病は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)FLT3変異および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する再発または難治性急性骨髄性白血病であり得る。
【0064】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病はFLT3変異を有する再発または難治性急性骨髄性白血病である。
【0065】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病はFLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)遺伝的、後成的または転写後変更を伴う再発した急性骨髄性白血病。例えば、急性骨髄性白血病は、再発したFLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)FLT3変異および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する急性骨髄性白血病であり得る。
【0066】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病はFLT3変異を有する再発した急性骨髄性白血病である。
【0067】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)遺伝的、後成的または転写後変更を伴う難治性急性骨髄性白血病である。例えば、急性骨髄性白血病は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)FLT3変異および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する難治性急性骨髄性白血病であり得る。
【0068】
ある実施態様において、急性骨髄性白血病はFLT3変異を有する難治性急性骨髄性白血病である。
【0069】
ある実施態様において、FLT3変異は、活性化FLT3変異、特にリガンド非依存的FLT3二量体化およびFLT3の構成的活性化をもたらす変異である。
【0070】
ある実施態様において、FLT3変異は、膜近傍ドメインにおける遺伝子内縦列重複変異(FLT3-ITD)またはチロシンキナーゼドメインにおける点変異もしくは欠失(FLT3-TKD)である。ある実施態様において、FLT3変異はFLT3-ITDである。ある実施態様において、FLT3変異はFLT3-TKDである。ある実施態様において、FLT3変異はFLT3-ITDおよびFLT3-TKDである。
【0071】
ある実施態様において、FLT3変異は、チロシンキナーゼドメイン(FLT3-TKD)における変異、特に野生型FLT3の835位のアスパラギン酸残基(D835)に影響(または関与)する点変異(例えば、ヌクレオチド置換)またはD835の欠失および/または野生型FLT3の836位のイソロイシン残基(I836)に影響(または関与)する点変異(例えば、ヌクレオチド置換)またはI836の欠失である。従って、FLT3変異は、例えば、D835変異、I836変異またはD835/I836変異であり得る(または含み得る)。特に、D835変異は、例えば、D835Y変異(すなわち、835位のアスパラギン酸(D)残基(D835)がチロシン(Y)残基で置き換え/置換されているFLT3変異)、D835V変異、D835H変異、D835G変異、D835N変異またはD835の欠失であり得る。ある実施態様において、FLT3変異は、D835Y変異である(または含む)。さらに、FLT3変異はまた野生型FLT3の842位のチロシン残基(Y842)に影響(または関与)する点変異またはY842の欠失、野生型FLT3の663位のリシン残基(K663)に影響(または関与)する点変異またはK663の欠失および/または野生型FLT3の592位のバリン残基(V592)に影響(または関与)する点変異またはV592の欠失、例えば、Y842C変異、K663Q変異またはV592A変異またはこれらの任意の組み合わせであり得る(または含み得る)。
【0072】
ある実施態様において、LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)およびギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は再発または難治性急性骨髄性白血病の第二選択処置または第三選択処置として使用される。
【0073】
ある実施態様において、骨髄癌は骨髄異形成症候群である。ある実施態様において、骨髄癌は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)遺伝的、後成的または転写後変更を有する骨髄異形成症候群である。特に、骨髄癌は、FLT3発現および/またはFLT3活性に影響する(例えば、増加させる)FLT3変異および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する骨髄異形成症候群であり得る。ある実施態様において、骨髄癌は、FLT3発現レベル増加またはFLT3活性増加をもたらすFLT3変異(例えば、上記FLT3変異例の何れか)および/または遺伝的、後成的または転写後変更を有する骨髄異形成症候群であり、ここで、該FLT3発現レベル増加または該FLT3活性増加は、未制御の細胞増殖に至る。ある実施態様において、骨髄癌は、FLT3変異(例えば、上記FLT3変異例の何れか)を有する骨髄異形成症候群である。
【0074】
ある実施態様において、LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)およびギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は、別個の医薬製剤として投与される。この目的で、LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)およびギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は異なる医薬製剤として提供される。
【0075】
好ましくは、イアダデムスタット(またはその薬学的に許容される塩)などのLSD1阻害剤は経口投与される。経口摂取を介して投与され得る製剤の例は、下にさらに詳述する。
【0076】
好ましくは、ギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)は経口投与される。経口摂取を介して投与され得る製剤の例は、下にさらに詳述する。
【0077】
実施例に記載するとおり、LSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせが、AMLなどの骨髄癌の増殖の阻害に強い相乗効果を示すことが、本発明により予想外に発見された。実施例1に記載するとおり、2種の構造的に無関係な、似ていないLSD1阻害剤、すなわち不可逆性のシクロプロピルアミンベースのLSD1阻害剤であるイアダデムスタットおよび可逆性の非シクロプロピルアミンベースのLSD1阻害剤であるプルロデムスタット(CC-90011)を使用する、LSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせでの処置は、種々の遺伝的背景のAML細胞株の増殖阻害に相乗効果を示した。イアダデムスタットとギルテリチニブおよびプルロデムスタット(CC-90011)とギルテリチニブの組み合わせの強い相乗作用が、FLT3-変異体AML細胞株、MOLM-13およびMV(4;11)で観察された。顕著なことに、相乗作用は、実施例1に示すとおり、ギルテリチニブまたはベネトクラクスなどの他の現在のAML治療での処置に耐性であるかほとんど応答しない、FLT3-野生型(すなわちFLT3変異無し)AML細胞株OCI-AML3およびTF-1aでも観察された。これらの発見は、イアダデムスタット(またはその薬学的に許容される塩)などのLSD1阻害剤とギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)の組み合わせが、他の処置に難治性であるかまたは再発した患者であっても、FLT3変異があるまたはないAMLおよびMDSなどの他の骨髄癌の処置に特に有用であることを示す。
【0078】
AMLなどの骨髄癌の処置のためのLSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせの治療効果を、薬物開発の分野の当業者により容易に設定され得る、さらなるインビトロまたはインビボ実験およびヒトにおける臨床治験でさらに確認し得る。
【0079】
LSD1阻害剤
先に示したとおり、ここで使用する「LSD1阻害剤」は、LSD1の遺伝子発現、活性または機能を低減、減少、遮断または阻害する化合物を意味する。LSD1阻害剤として作用する化合物は、当分野で知られる。LSD1阻害剤として作用するあらゆる分子が、原理上本発明の組み合わせ、方法および使用において使用できる。好ましくは、LSD1阻害剤は小分子である。不可逆性および可逆性LSD1阻害剤が記載されており、ギルテリチニブと不可逆性および可逆性両方のLSD1阻害剤の組み合わせを使用する、下記実施例に記載する結果で示されるとおり、本発明で使用できる。原型的不可逆性LSD1阻害剤は、ここでの実施例で使用するLSD1阻害剤の一つである、イアダデムスタットなどのシクロプロピルアミンベースの化合物である。可逆性LSD1阻害剤の代表例は、同様にここでの実施例で使用している化合物プルロデムスタット(CC-90011)である。好ましくは、LSD1阻害剤は選択的LSD1阻害剤である;ここで使用する「選択的LSD1阻害剤」は、他のFAD依存性モノアミンオキシダーゼ、特にMAO-AおよびMAO-BよりLSD1に少なくとも10倍の選択性を示す、LSD1阻害剤を意味する。
【0080】
小分子LSD1阻害剤の例示的一覧を下表に提供する。
【表1】
【0081】
本発明により使用するLSD1阻害剤は、故に、例えば、上記表に挙げる特定の化合物またはこれらの化合物の何れかの薬学的に許容される塩であり得る。
【0082】
ある実施態様において、LSD1阻害剤は、例えば、WO2010/043721、WO2010/084160、WO2010/143582、WO2011/035941、WO2011/042217、WO2011/131576、WO2011/131697、WO2012/013727、WO2012/013728、WO2012/045883、WO2012/135113、WO2013/022047、EP2743256A1、WO2013/025805、WO2013/057320、WO2013/057322、WO2014/058071、EP2907802A1、WO2014/084298、EP2927212A1、WO2014/086790、WO2014/164867、WO2014/194280、WO2014/205213、WO2015/021128、WO2015/031564、WO2015/089192、WO2015/120281、WO2015/123408、WO2015/123424、WO2015/123437、WO2015/123465、WO2015/134973、WO2015/168466、WO2015/181380、WO2015/200843、WO2016/003917、WO2016/004105、WO2016/007722、WO2016/007727、WO2016/007731、WO2016/007736、WO2016/034946、WO2016/037005、WO2016/123387、WO2016/130952、WO2016/161282、WO2016/172496、WO2016/177656、WO2017/004519、WO2017/027678、WO2017/079476、WO2017/079670、WO2017/090756、EP3381896A1、WO2017/109061、WO2017/116558、WO2017/149463、WO2017/157322、EP3431471A1、WO2017/184934、WO2017/195216、WO2017/198780、WO2017/215464、EP3486244A1、WO2018/081342、WO2018/081343、WO2018/137644、EP3575285A1、WO2018/213211、WO2018/216800、EP3632897A1、WO2018/226053、WO2018/234978、WO2019/009412、WO2019/034774、WO2019/054766、WO2019/217972、WO2019/222069、WO2020/015745、EP3825309A1、WO2020/047198、WO2020/052647、WO2020/052649、EP3851440A1、WO2020/138398、WO2020/159285、EP3907225A1、WO2021/058024、WO2021/095835、WO2021/175079、US2017-0283397、US2022-0064126、CN103054869、CN103319466、CN104119280、CN105541806、CN105924362、CN105985265、CN106045862、CN106045881、CN106432248、CN106478639、CN106831489、CN106928235、CN107033148 CN107174584、CN107176927、CN107459476、CN107474011、CN107501169、CN107936022、CN108530302、CN109265462、CN109293664、CN109535019、CN110204551、CN110478352、CN111072610、CN111454252、CN112110936、CN112409310、CN112920130、CN113087712、CN113105479、CN113264903、CN113582906、CN113599380、KR20190040763またはKR20190040783に開示の化合物の何れかを含む、当分野で知られるLSD1阻害剤であり、これらの各々を、引用により全体として本明細書に包含させる(特に、これらの文献の各々の実施例部分に記載される化合物を含む)。従って、LSD1阻害剤は、例えば、上記文献の何れかに開示される化合物(例えば、これらの文献の何れかの実施例部分におけるものを含む)であり得て、ここで、該化合物は、非塩形態または薬学的に許容される塩の形態で使用され得る。
【0083】
ある実施態様において、LSD1阻害剤は、イアダデムスタット、プルロデムスタット(CC-90011)、ボメデムスタット、セクリデムスタット、1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸、3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物である。
【0084】
イアダデムスタットは、選択的かつ不可逆性LSD1阻害剤である。イアダデムスタットは、式:
【化1】
[CAS Reg. No. 1431304-21-0]の化合物のINNであり、ORY-1001または(trans)-N1-((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンとしても知られる。イアダデムスタットは、例えば、WO2013/057322の実施例5に記載されている。塩酸塩を含むその薬学的に許容される塩も、その中に記載されている。
【0085】
プルロデムスタットは、式
【化2】
[CAS Reg. No. 1821307-10-1]の可逆性LSD1阻害剤であり、CC-90011としても知られ、化学名4-[2-(4-アミノピペリジン-1-イル)-5-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリミジン-4-イル]-2-フルオロベンゾニトリルである。プルロデムスタット(CC-90011)は、例えば、WO2015/168466およびWO2017/79670に記載されている。ベシル酸塩を含むその薬学的に許容される塩も、その中に記載されている。
【0086】
ボメデムスタットは、式
【化3】
[CAS Reg. No. 1990504-34-1]の不可逆性LSD1阻害剤であり、IMG-7289としても知られ、化学名N-[(2S)-5-{[(1R,2S)-2-(4-フルオロフェニル)シクロプロピル]アミノ}-1-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1-オキソペンタン-2-イル]-4-(1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)ベンズアミドを有する。ボメデムスタットは、例えば、WO2016/130952およびWO2018/35259に記載されている。ビストシル酸塩を含むその薬学的に許容される塩も、その中に記載されている。
【0087】
セクリデムスタットは、式
【化4】
[CAS Reg. No. 1423715-37-0]のLSD1阻害剤であり、SP-2577としても知られ、化学名(E)-N’-(1-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)エチリデン)-3-((4-メチルピペラジン-1-イル)スルホニル)ベンゾヒドラジドを有する。セクリデムスタットは、例えば、WO2013/025805およびWO2014/205213に記載されている。
【0088】
1-((4-(メトキシメチル)-4-(((1R,2S)-2-フェニルシクロプロピルアミノ)メチル)ピペリジン-1-イル)メチル)シクロブタンカルボン酸は、例えば、WO2015/123465およびWO2017/27678に記載される不可逆性LSD1阻害剤である。p-トルエンスルホン酸塩を含むその薬学的に許容される塩も、その中に記載されている。
【0089】
3-(シアノメチル)-3-(4-{[(1R,2S)-2-フェニルシクロプロピル]アミノ}ピペリジン-1-イル)アゼチジン-1-スルホンアミドは、例えば、WO2020/047198に記載される不可逆性LSD1阻害剤である。その薬学的に許容される塩もその中に記載されている。
【0090】
バフィデムスタットは、式:
【化5】
の不可逆性LSD1阻害剤であり、ORY-2001、5-((((1R,2S)-2-(4-(ベンジルオキシ)フェニル)シクロプロピル)アミノ)メチル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-アミンまたは(-)5-((((trans)-2-(4-(ベンジルオキシ)フェニル)シクロプロピル)アミノ)メチル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-アミン。バフィデムスタットはとしても知られる、例えば、WO2012/13728の実施例35に記載されている。
【0091】
ある実施態様において、LSD1阻害剤は、イアダデムスタット、プルロデムスタット(CC-90011)、ボメデムスタットおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0092】
特に好ましいLSD1阻害剤はイアダデムスタットまたはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、イアダデムスタットは二塩酸塩として使用される。
【0093】
ギルテリチニブ
ギルテリチニブは、式:
【化6】
[CAS Reg. No. 1254053-43-4] の化合物のINNであり、ASP2215または6-エチル-3-[[3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジニル)ピペリジン-1-イル]フェニル]アミノ]-5-[(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ]ピラジン-2-カルボキサミドとしても知られる。ギルテリチニブはFLT3阻害剤、特にI型FLT3阻害剤であり、商品名ゾスパタ(登録商標)の下に販売されている医薬品に対応する。ギルテリチニブは、好ましくはフマル酸塩として使用する。
【0094】
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲にわたるLSD1阻害剤(例えばイアダデムスタット)のあらゆる記載は、非塩形態およびその薬学的に許容される塩の何れかのLSD1阻害剤を含む。LSD1阻害剤がイアダデムスタットであるとき、好ましくは薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは二塩酸塩の形態で使用される。
【0095】
同様に、本明細書および特許請求の範囲にわたるギルテリチニブのあらゆる記載は、ギルテリチニブ(非塩形態)およびその薬学的に許容される塩の何れかを含む。好ましくは、ギルテリチニブは薬学的に許容される塩、好ましくはフマル酸塩の形態で使用される。
【0096】
LSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせの投与は、あらゆる有用な形態での組成物の投与を含み得る。例えば、本発明の組み合わせは各活性成分について異なる製剤(すなわちLSD1阻害剤およびギルテリチニブのための別個の製剤)を使用して投与してよくまたはLSD1阻害剤およびギルテリチニブ両方を含む医薬製剤を使用して投与してよい。異なる製剤、例えばLSD1阻害剤を含む第一製剤およびギルテリチニブを含む第二製剤を使用するとき、製剤は、逐次でも同時でも、任意の順番で投与でき、ここで、好ましくは両(または全)活性剤が同時に生物学的活性を発揮する時間を置く。
【0097】
ある実施態様において、1以上のさらなる治療剤を患者に投与し得る。さらなる治療剤は、FDAのオレンジブックまたは他国で承認薬を記載する他の資料に記載の対応する薬剤の何れかを含む、骨髄癌、特にAMLの処置に使用されるあらゆる薬剤を含む、1以上のさらなる抗癌剤を含み得る。さらなる治療剤は、例えば、5-HT3アンタゴニスト(例えば、パロノセトロン、ラモセトロン、アロセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、グラニセトロンまたはドラセトロン)、オランザピン、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロンまたはデキサメサゾン)またはプロクロルペラジンなどの1以上の制吐剤も含み得る。
【0098】
医薬製剤
ここに記載する組み合わせおよび本発明の組み合わせを含むここに記載する医薬組成物において使用するためのLSD1阻害剤およびギルテリチニブは、処置する状態に適するあらゆる経路で投与し得る。適当な経路は、経口、非経腸(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、髄腔内、硬膜外および点滴技術を含む)、経皮、直腸、経鼻、局所(バッカルおよび舌下を含む)、膣、腹腔内、肺内および鼻腔内を含む。好ましくは、組み合わせの両成分(LSD1阻害剤およびギルテリチニブ)は、別個に製剤化されるときまたは両活性成分が単一製剤に製剤化されるとき、経口投与される。
【0099】
ここに記載する組み合わせおよび本発明の組み合わせを含むここに記載する医薬組成物に使用するためのLSD1阻害剤およびギルテリチニブは、任意の慣用の医薬組成物または製剤、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、溶液剤、分散剤、懸濁液剤、シロップ剤、スプレー剤、坐薬、ゲル剤、エマルジョン剤、パッチなどで投与できる。このような組成物/製剤は、医薬製剤に慣用の成分、例えば、希釈剤、担体、pH修飾剤、防腐剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、風味剤、浸透圧変更用塩、緩衝液、マスキング剤、抗酸化剤および/またはさらなる活性剤を含み得る。またさらに他の治療上活性なまたは治療上価値ある物質も含み得る。
【0100】
典型的製剤は、LSD1阻害剤またはギルテリチニブまたはここに記載する組み合わせと1以上の薬学的に許容される添加物の混合により製造される。適当な添加物は当業者に周知であり、詳細には、例えば、“Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems” (2004) Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia; “Remington: The Science and Practice of Pharmacy” (2000) Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia; and “Handbook of Pharmaceutical Excipients” (2005) Pharmaceutical Press, Chicagoに記載される。製剤は1以上の緩衝液、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、処理助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、風味剤、希釈剤および/または薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)の洗練された見かけを提供するまたは医薬品(すなわち、医薬)製造の助けとなる他の既知添加剤も含み得る。
【0101】
経口送達のために、化合物を、結合剤(例えば、ゼラチン、セルロース、トラガカントガム)、添加物(例えば、デンプン、ラクトース)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogelおよびトウモロコシデンプン)および甘味または風味剤(例えば、グルコース、スクロース、サッカリン、サリチル酸メチルおよびペパーミント)などの薬学的に許容される担体を含む製剤に包含させ得る。製剤は、例えば、封入ゼラチンカプセルまたは圧縮錠剤の形で経口送達され得るカプセルおよび錠剤は、任意の慣用の技術を使用して製造できる。カプセル剤および錠剤はまたカプセル剤および錠剤の香味、味、色および形を修飾するために、当分野で知られる種々のコーティングでコートもされ得る。さらに、脂肪油などの液体担体もカプセル剤に含まれ得る。
【0102】
適当な経口製剤は、懸濁液剤、シロップ剤、チューインガム剤、ウェーハ剤、エリキシル剤などの形でもあり得る。所望により、特定の形態の香味、味、色および形を修飾するための慣用の薬剤も包含させ得る。さらに、嚥下できない患者における経腸栄養チューブによる慣用の投与のために、活性化合物をオリーブ油、トウモロコシ油およびベニバナ油などの許容される親油性植物油媒体に溶解し得る。
【0103】
化合物を、溶液もしくは懸濁液の形態または使用前に溶液または懸濁液への変換ができる凍結乾燥形態で非経腸投与できる。このような製剤において、無菌水および生理学的食塩水緩衝液などの希釈剤または薬学的に許容される担体が使用され得る。他の慣用の溶媒、pH緩衝液、安定化剤、抗細菌剤、界面活性剤および抗酸化剤を全て包含させ得る。例えば、有用な成分は、塩化ナトリウム、酢酸、クエン酸またはリン酸緩衝液、グリセリン、デキストロース、固定油、メチルパラベン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、重硫酸ナトリウム、ベンジルアルコール、アスコルビン酸などを含む。非経腸製剤は、バイアルおよびアンプルなどの任意の慣用のコンテナに保管し得る。
【0104】
化合物の持続放出のための皮下埋め込みも適当な投与経路であり得る。これは、皮下スペース、例えば、前部腹壁の下への任意の適当な製剤の活性化合物の埋め込みのための外科的手技を含む。例えば、Wilson et al. (1984) J. Clin. Psych. 45:242-247参照。ヒドロゲルを活性化合物の持続放出の担体として使用できる。ヒドロゲルは一般に当分野で知られる。典型的に高分子量生体適合性ポリマーの網への架橋により製造され、水中で膨張してゲル状物質を形成する。好ましくは、ヒドロゲルは生分解性または生体吸収性である。本発明の目的で、ポリエチレングリコール、コラーゲンまたはポリ(グリコール酸-コ-L-乳酸)製のヒドロゲルが有用であり得る。例えば、Phillips et al. (1984) J. Pharmaceut. Sci., 73: 1718-1720参照。
【0105】
経口および非経腸組成物などの医薬組成物は、容易な投与および投与量均一性のために単位投与形態に製剤化され得る。ここで使用する「単位投与形態」は、対象への投与単位投与量として適する物理的に分かれた単位をいい、各単位は1以上の適当な医薬担体と共に、所望の治療効果を生ずるよう計算された予定量の活性成分を含む。
【0106】
イアダデムスタットの適当な経口投与形態は、例えば、WO2019/211491A1に開示される。
【0107】
特に、イアダデムスタットは錠剤の形態で提供され得る。あるいは、イアダデムスタットは経口水溶液の形態でも提供され得る(これは、例えば、再構成用粉末から調製され得る)。上記のとおり、イアダデムスタットをイアダデムスタット二塩酸塩の形態で使用するのが好ましい。
【0108】
本発明で使用できるギルテリチニブの適当な経口投与形態は、例えば、ゾスパタ(登録商標)の名称で市販されているものを含む。ギルテリチニブは、40mgのギルテリチニブ(フマル酸塩として)を含むフィルムコート錠として市販されている。このような経口使用のための錠剤は、例えば、引用により全体として本明細書に包含させるゾスパタ(登録商標)の製品概要に記載のとおり(特に2021年4月1日に利用可能となった最新版)、錠剤コア用添加物としてマンニトール(E421)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)およびステアリン酸マグネシウムおよびフィルムコーティング用添加物としてヒプロメロース、タルク、マクロゴール、二酸化チタンおよび酸化鉄黄色(E172)を含む。従って、ある実施態様において、ギルテリチニブは、錠剤の形態で提供される(例えば、好ましくはフマル酸塩として、40mgのギルテリチニブを含む錠剤)。
【0109】
治療適用において、本発明の組み合わせおよび医薬組成物は、医学分野の当業者により決定される、処置する疾患に適する方法で投与される。適切な用量ならびに適当な投与期間および頻度は広い限度内で変わり得て、とりわけ患者の状態、疾患のタイプおよび重症度、活性成分の特定の形態、投与方法などの因子により決定される。一般に、適切な用量および投与レジメンは、本発明の組み合わせの活性成分を、治療利益、例えば、より頻繁な完全または部分寛解またはより長い無疾患および/または全生存または症状重症度低減または臨床医により示される任意の他の客観的に特定可能な改善などの臨床的アウトカム改善を提供するために十分な量である。治療有効用量は、一般にインビトロまたは動物モデル試験系またはヒトの臨床治験から導かれる用量-応答曲線などの実験モデルを使用して、評価または外挿され得る。
【0110】
例として、ギルテリチニブの適当な用量は、AMLの処置に現在の臨床業務で使用されているものである。R/R AML処置のための単剤療法としてのギルテリチニブの現在の推奨用量は1日あたり120mgであり、1日あたり200mgまで増量できる。従って、ギルテリチニブを、例えば、1日あたり約120mgの用量で経口投与し得る。他の用量も可能であり得て、例えばギルテリチニブの用量を、新たに特定されたギルテリチニブとLSD1阻害剤の組み合わせの組合せ作用(相乗作用)により低減し得る。ギルテリチニブについてここで示す用量は、対応するギルテリチニブ遊離塩基の量である。
【0111】
LSD1阻害剤の適当な用量および投与レジメンは、当業者に周知のとおり、使用する特定のLSD1阻害剤、そのLSD1阻害能、その薬物動態プロファイルおよび他の因子に依存する。
【0112】
イアダデムスタットは、極めて強力な活性医薬成分(HPAPI)である。故に、予想される1日用量は極めて低く、例えば、1日あたり1mgより低い。従って、固体形態の薬物量も極めて低く、例えば、100mgの錠剤あたり1mg未満のAPIである。一般に、経口投与(例えば、錠剤または経口水溶液として)の場合、ここに記載する、イアダデムスタットの約50ug~約300ug、好ましくは約75ug~約300ug(例えば、約75ug、約100ug、約125ug、約150ug、約175ug、約200ug、約225ug、約250ug、約275ugまたは約300ugまたは前記1日投与量の任意の二つの間の任意の範囲)の1日投与量が適切であるが、これらの限度は必要に応じて調整され得る。ここで使用する用語「ug」はマイクログラムをいい、用語「μg」と同義的に使用する。
【0113】
ある実施態様において、LSD1阻害剤はイアダデムスタット(またはその薬学的に許容される塩、例えば、イアダデムスタット二塩酸塩)であり、週あたり5日投薬/2日休薬(5/2)で投与される。
【0114】
ある実施態様において、LSD1阻害剤はイアダデムスタット(またはその薬学的に許容される塩、例えば、イアダデムスタット二塩酸塩)であり、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約50μg~約300μg、好ましくは約75μg~約300μg(例えば、約100μg~約300μg)の1日用量で経口投与される。イアダデムスタットについてここに記載する用量は、対応するイアダデムスタット遊離塩基の量に関する。ある実施態様において、イアダデムスタットは、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約75μgの1日用量で経口投与される。ある実施態様において、イアダデムスタットは、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約100μgの1日用量で経口投与される。ある実施態様において、イアダデムスタットは、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約150μgの1日用量で経口投与される。ある実施態様において、イアダデムスタットは、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約200μgの1日用量で経口投与される。ある実施態様において、イアダデムスタットは、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約250μgの1日用量で経口投与される。ある実施態様において、イアダデムスタットは、週当たり5日投薬/2日休薬(5/2)で、約300μgの1日用量で経口投与される。
【0115】
製造品
本発明の組み合わせおよび医薬組成物は、投与指示と共に、コンテナ、パックまたはディスペンサーに入れられ得る。
【0116】
本発明の他の実施態様において、ここに記載する組み合わせを含む製造品または「キット」が提供される。
【0117】
ある実施態様において、製造品またはキットは、コンテナおよびここに記載する本発明の組み合わせを含む。
【0118】
ある実施態様において、製造品またはキットは、a)LSD1阻害剤(またはその薬学的に許容される塩)を含むコンテナおよびb)ギルテリチニブ(またはその薬学的に許容される塩)を含むコンテナを含む。
【0119】
製造品またはキットはさらにラベルまたは添付文書を含み得る。用語「添付文書」は、治療薬のコマーシャル・パッケージに慣習的に含まれる指示をいい、そのような治療薬の使用に関する、適応症、用途、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含む。適当なコンテナは、例えば、ブリスターパック、ビン、バイアル、シリンジなどを含む。コンテナは、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成され得る。コンテナは、状態の処置に有効な組み合わせまたはその製剤を含み、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、コンテナは、皮下注射針で穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。ラベルまたは添付文書は、組成物がAMLなどの選択された状態の処置用であることを示す。これとは別にまたはこれに加えて、製造品は、さらに無菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝化食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第二コンテナを含み得る。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含み、販売上および使用者用に望まれる他の物質もさらに含み得る。
【0120】
キットは、さらに、組み合わせの投与のための指示、および、存在するならば、第二医薬製剤を含み得る。キットがLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第一医薬組成物/製剤およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む第二医薬組成物/製剤を含むならば、キットは、処置を必要とする患者への第一および第二医薬組成物/製剤の同時、逐次または別個の投与のための指示をさらに含み得る。
【0121】
他の実施態様において、キットは、錠剤またはカプセル剤などの組み合わせの固体経口形態の送達に適する。このようなキットは、好ましくはいくつかの単位投与量を含む。このようなキットは、意図する用途の順番に適合させた投与量を有するカードを含み得る。このようなキットの例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業では周知であり、医薬単位投与形態の包装に広範に使用されている。所望により、処置スケジュールにおける投与量が投与され得る日を示す、例えば数字、文字または他のマークまたはカレンダーの挿入により、記憶を助け得る。
【0122】
ある実施態様において、キットは、(a)LSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩が含まれた第一コンテナ;(b)ギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の第二コンテナ;および(c)第三医薬製剤が含まれた第三コンテナを含み得て、ここで、第三医薬製剤は、抗癌活性を有する他の化合物を含む。これとは別にまたはこれに加えて、キットは、無菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝化食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む他のコンテナを含み得る。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含む、販売上および使用者に望まれる他の物質もさらに含み得る。
【0123】
キットがLSD1阻害剤またはその薬学的に許容される塩の組成物およびギルテリチニブまたはその薬学的に許容される塩の組成物を含むとき、キットは、分割されたビンまたは分割されたホイルパケットなどの別個の組成物を含むためのコンテナを含み得るが、別個の組成物はまた単一の分割されていないコンテナに入れてもよい。典型的に、キットは別個の成分の投与のための指示を含む。キット形態は、別個の成分が好ましくは異なる投与形態(例えば、経口および非経腸)で投与される、異なる投与間隔で投与されるまたは組み合わせの個別の成分のタイトレーションが処置医により望まれるとき、特に有利である。
【0124】
定義
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【0125】
次の定義は、特に断らない限り、明細書および特許請求の範囲をとおして適用される。
【0126】
本発明の目的のための「患者」または「対象」は、ヒトおよび他の動物両方、特に哺乳動物を含む。故に、本発明の方法および使用は、ヒト治療および獣医適用両方に適用可能である。好ましい態様において、対象または患者は哺乳動物であり、最も好ましい態様において、対象または患者はヒト(例えば男性または女性のヒト)である。
【0127】
用語「処置」、「処置する」などは、ここでは、一般に所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。疾患(すなわち癌)および/または疾患に付随する症状または有害な影響の部分的または完全な治癒または軽減または疾患および/または疾患に付随する症状または有害な影響の進行の部分的または完全な停止を含む。ここで使用する用語「処置」は、患者における疾患(すなわち癌)のあらゆる処置を網羅し、癌の阻止、すなわちその進展/進行の停止、遅延または減速;または癌の軽減、すなわち癌の(完全なまたは部分的)退縮、補正または緩和を含むが、これらに限定されない。本発明は、これらの形態の処置の一つ一つに特におよび明確に関連する。
【0128】
ここで使用する本発明の化合物または組み合わせの「治療有効量」または「有効量」なる用語は、対象において所望の生物学的効果(例えば、治療効果または利益)を生ずる十分な量をいう。従って、化合物または組み合わせの治療有効量は、疾患(すなわち癌)に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与したとき、その疾患を処置するおよび/または疾患の発症または進行を遅延するおよび/または疾患の症状の1以上を軽減する量であり得る。治療有効量は、化合物、処置する疾患状態、処置する疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、投与の経路および形態、処置する医師または獣医師の判断および他の因子に依存して変わる。
【0129】
用語「薬学的に許容される」は、一般に安全、非毒性および生物学的にも他の点でも望ましくないものでなく、かつ獣医および/またはヒト医薬使用に許容される、医薬組成物の調製に有用な物質の特性を意味する。
【0130】
ここで使用する「薬学的に許容される塩」は、特定の化合物の遊離酸および/または塩基の生物学的有効性を保持し、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない塩を意味することを意図する。化合物は十分な酸性、十分な塩基性または両方の官能基を有し得て、よって、任意の数の無機または有機塩基および無機または有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を形成する。薬学的に許容される塩の例は、本発明の化合物、例えばイアダデムスタットと、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ピロ硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸、酢酸、プロピオン酸、デカン酸、カプリル酸、アクリル酸、ギ酸、イソ酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、プロピオル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、ブチン-1,4-二酸、ヘキシン-1,6-二酸、安息香酸、クロロ安息香酸、メチル安息香酸、ジニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、フタル酸、スルホン酸、キシレンスルホン酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニル酪酸、クエン酸、乳酸、ガンマ-ヒドロキシ酪酸、グリコール酸、酒石酸、メタン-スルホン酸(またはメシル酸)、エタン-スルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸(またはベシル酸)、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレン-1-スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、マンデル酸、ピルビン酸、ステアリン酸、アスコルビン酸またはサリチル酸などの無機または有機酸の反応により製造される塩を含む。化合物が酸性部分を有するとき、適当なその薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩;およびアンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、リシン、アルギニン、N-メチルグルカミン、プロカインなどの適当な有機リガンドと形成された塩などを含み得る。薬学的に許容される塩は、当分野で周知である。
【0131】
用語「医薬組成物」および「医薬製剤」(または「製剤」)は相互交換可能に使用され、哺乳動物、例えば、処置を必要とするヒトに投与される、1以上の薬学的に許容される添加物と共に本発明の活性医薬成分または組み合わせの治療有効量を含む、混合物または溶液を意味する。
【0132】
用語「薬学的に許容される添加物」または「薬学的に許容される担体」は相互交換可能に使用でき、治療活性を有さず、投与される対象に非毒性である、医薬品の製剤に使用される崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝液、等張化剤、安定化剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤、滑沢剤などの医薬組成物における薬学的に許容される成分を意味する。一般に米国食品医薬品局および/または欧州医薬品庁により公表されているものを含む、確立された政府規格に従いヒトに使用するのに安全なものである。薬学的に許容される担体または添加物は当業者に周知である。
【0133】
ここで使用する用語「阻害剤」は、特定の受容体または酵素に対する特定のリガンドの結合により、何らかの方法で競合する、減少する、遮断する、阻害する排除するまたは妨害するおよび/または特定のタンパク質、例えば受容体または酵素の活性または機能を何らかの方法で減少する、遮断する、阻害する、排除するまたは妨害する化合物を意味する。
【0134】
ここで使用する「小分子」は、分子量900ダルトン以下、好ましくは500ダルトン以下の有機化合物をいう。分子量は分子の質量であり、各構成元素の原子量の合計に、分子式にけるその元素の原子の数を乗じた総和として計算される。
【0135】
ここで使用する用語「含む」(または「含み」、「含んで」、「包含する」、「包含し」または「包含して」)は、他に明示しないかぎりまたは文脈に反しない限り、「とりわけ、含む」、すなわち、「さらなる任意的要素の中で、・・・を含む」を意味する。それに加えて、この用語は、「から本質的になる」および「からなる」のより狭い意味を含む。例えば、用語「BおよびCを含むA」は「とりわけ、BおよびCを含むA」を意味し、ここで、Aはさらなる任意的要素を含んでよいが(例えば、「B、CおよびDを含むA」も包含される)、この用語はまた「BおよびCから本質的になるA」の意味および「BおよびCからなるA」(すなわち、BおよびC以外の成分はAに含まれない)も含む。
【0136】
ここで使用する単数表現は、文脈から明らかに示されない限り、複数および単数要素を含む。
【0137】
用語「約」または「おおよそ」は、当業者により決定される特定の値の許容される誤差を意味し、どのように値が測定または決定されたかに一部依存する。ある実施態様において、用語「約」または「おおよそ」は、1、2、3または4標準偏差内を意味する。ある実施態様において、用語「約」または「おおよそ」は、ある値または範囲の25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%または0.05%以内を意味する。用語「約」が付されて示された数値または範囲のあらゆる記載は、対応する特定の値または範囲の記載も含む。
【0138】
ここに記載する全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照は、引用により全体として本明細書に包含させる。
【実施例】
【0139】
次の実施例は本発明の説明のために提供する。本発明の範囲を限定すると解釈してはならず、単にその代表例として解釈される。
【0140】
実施例1 - AML細胞株におけるLSD1阻害剤とギルテリチニブの間の相乗性決定のためのマトリクスアッセイ
このアッセイの目的は、LSD1阻害剤とギルテリチニブの間に存在する相乗性の決定である。第一段階として、興味のある化合物を、相乗作用を決定するマトリクス実験の設定前に単剤として評価した。
【0141】
1.1 実験設計
1.1.1細胞株および培養条件
マイコプラズマフリーAML細胞株を、RPMI 10%FBS培地に、37℃で5%CO
2雰囲気に制御された加湿インキュベーターに維持した。細胞凍結および解凍をATCCの推奨に従い、実施した。使用した細胞株の遺伝的プロファイリングは表1において利用可能である。
【表2】
【0142】
1.1.2 単剤生存能アッセイ(96時間)
細胞を、96ウェルプレートに、50μLの培地中アッセイをとおして線形増殖を保証する最適密度で播種した(MV(4;11)について8000細胞/ウェル、MOLM-13およびOCI-AML3について4000細胞/ウェル、TF1aについて2000細胞/ウェル)。各実験条件を、それぞれバックグラウンド補正および正規化のための培地のみおよび媒体処理対照を含み、技術的トリプリケートで試験した。播種後、9連続希釈(1:3)の2倍濃縮化合物を含む50μLの培地を細胞に添加して、各希釈で1倍濃縮化合物を伴う100μLの細胞を得た。次いで、細胞を96時間、5%CO2雰囲気に制御された37℃でインキュベートし、その後alamarBlueTM細胞生存能試薬(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA/USA)を使用して、細胞生存能を評価した。AlamarBlueTMは、生存細胞がレサズリンを蛍光分子、レゾルフィンに変換する天然還元力を使用する、細胞生存能指示薬である。簡潔には、alamarBlueTM原液を培養培地で1:20希釈し、3時間インキュベーション後、蛍光をTECAN Infinity 2000プレートリーダーを使用して、測定した(Tecan Group Ltd., Maennedorf, CH;540~570nm励起波長、580~610nm発光波長)。各条件について、平均蛍光を3個の技術的反復から計算した;バックグラウンド補正を、培地のみ対照の蛍光から計算した。データをGraphPad PRISM(登録商標)バージョン9.0.1(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA/USA)を使用して分析して、最良のあてはめ曲線およびEC50値を計算した。
【0143】
1.1.3 9x9マトリクス生存能アッセイ(96時間)
各マトリクスアッセイを、
図1に記載するスキームに従い、2プレートにわたり分配し、1個の化合物を左から右に濃度を増加しながら添加し、他方の化合物を上部から下部に濃度を増加しながら添加した。
アッセイのために、細胞を、96ウェルプレートに、上のセクションで特定した最適密度で50μLの培地に播種した;プレートの端のウェルは、バックグラウンド補正のために100μLの培地のみのままとした。2化合物の各々を、25μLの4倍濃度で添加し、各希釈で、最終体積100μLおよび最終濃度1倍とした。
図1に示すとおり、マトリクスを、LSD1阻害剤について左から右に濃度増加およびギルテリチニブについて上部から下部に濃度増加で設計した。プレート#1の最初と最後の行はプレート#2で反復し(
図1において矢印で示す)、2プレートにわたる再現性を確認した。両化合物について試験した濃度は両化合物のEC
50がマトリクスの水平および垂直の中央になるよう設計された、計9×1:3希釈をとして得た6561倍範囲を包含した(LSD1阻害剤およびギルテリチニブのEC
50は、それぞれ
図1に示す右からおよび下から5番目のウェルに対応する)。この方法で、プレートの対角線のウェル(
図1に水平線で示す)は、両化合物間の固定EC
50比に対応する。マトリクスアッセイで試験した化合物のEC
50値は、セクション1.1.2に詳述したとおり実施した単剤アッセイを介して予め得ていた。
次いで、生存能をセクション1.1.2に詳述するとおり、少なくとも2個の独立した生物学的反復(N=2)で、alamarBlue
TM染色を使用して決定した。
【0144】
1.1.3.1 9x9マトリクス生存能アッセイ(データ解析)
各マトリクスアッセイについて、次いでデータを媒体処理対照(≦0.5%DMSO、上部左隅)に対して正規化して、相対的残存生存能のパーセンテージ値を、次の式に従い得た:
%相対的残存生存能=バックグラウンド-補正RFU処理細胞/バックグラウンド-補正RFU媒体対照×100
次いで、残存生存能のパーセンテージ値を、GraphPad PRISM(登録商標)バージョン9.0.1(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA/USA)を使用して分析して、単剤の最良のあてはめ曲線およびEC50値を計算した。
【0145】
影響率(Fa)、別名効果比を、式:
Fa=1-(%相対的残存生存能/100)
を使用して、次の条件について計算した:
・単剤としてLSD1阻害剤の連続希釈で処理した細胞(各マトリクスアッセイの第一および第二プレートの第一行の平均)
・単剤としてギルテリチニブの連続希釈で処理した細胞(マトリクスアッセイの第一列)
細胞を、EC
50値比に対応する固定比でLSD1阻害剤およびギルテリチニブで処理した(マトリクスアッセイの対角線における%相対的残存生存能値;
図1でハイライト)。
【0146】
CalcuSynソフトウェア(http://www.biosoft.com/w/calcusyn.htm, Biosoft, Cambridge, UK)を、組み合わせ指数(CI)の計算により、2化合物間の相互作用の性質(相乗的、相加的または拮抗)を決定するよう設計する。この分析は、Chou-Talalay方法に記載されている、中央値効果原則および組み合わせ指数定理に基づき(T.C. Chou, Pharmacol Rev. 2006;58(3):621-681)、結果のCI<1は相乗効果を示し、CI=1は相加的影響を示し、一方CI>1は拮抗効果を反映する。相乗効果(CI<1)の場合、CI値が小さいほど、相乗作用が強い。さらに、薬物相互作用強度は、表2に示すとおり、CI範囲に基づき、さらに分類され得る。
【表3】
【0147】
有益かつ一貫した結果を作成するために、Calcusynで処理したデータ(単剤および薬物組み合わせ)両方を、中央値効果原則および組み合わせ指数定理理論モデルにフィットさせる必要がある。この理由から、中央値効果原則にほとんどフィットしないことにより特徴づけられる、潜在的外れ値およびデータ点を除くことが重要である(T.C. Chou, Pharmacol Rev. 2006;58(3):621-681)。これを達成するために、次の戦略をデータ選別に採用した:
第一段階で、データばらつきを、
1)Fa<0.1
2)先の点と比較してFa増加<0.03(Fa>0.9ならば)
により特徴づけられる点の除去により減らした。
これらの条件は、細胞が、極低または極高濃度の化合物(または組み合わせ)で処理されており、生存能のほぼ0%または100%の減少をもたらす(それぞれ0または1に近いFa値に相当)、用量応答曲線のプラトーを定義する。留意すべきは、用量-応答曲線のこの領域で、alamarBlueTMシグナルの変化は極小さく、大部分極小さな生物学的意義を有する無作為ノイズによる可能性がある。
【0148】
次に、各データ点について、Log
10(濃度)およびLog
10(Fa/(1-Fa))を計算し、前者の値をx軸および後者をy軸に報告する、ドットプロットグラフを作成した。次いで、Excelで回帰直線を得た(中央値効果方程式に対応)。
この点で、各データ点の回帰直線からの距離を、式:
距離(ax+by+c=0;X,Y)=(aX+bY+c)/√(a
2+b
2)
を使用して、計算した。
外れ値を、グラブス検定を使用して、中央値効果方程式からの距離に基づき同定する。各データ点について、グラブス検定を、次の式に従い、距離の絶対値で実施した(留意すべきは、グラブス検定の変数は、同義的にGまたはZと称される):
G=(X
n-X
平均)/s
ここで、X
nは各点の回帰直線からの距離の絶対値を意味し;X
平均は全X
n値の平均を意味し、そしてsは標準偏差を意味する。G
crit(下記のとおりα=0.2について計算)より上のG値は、中央値効果方程式にフィットしない外れ値を同定する。このようなデータ点は、CalcuSynを用いる組み合わせ指数計算に成功裏に除かれる。
【数1】
可能であれば、検定を
1. さらなる外れ値が同定されないまたは
2. R
2>0.95まで1回を超えて反復し、複数の外れ値を除く。データ品質を測定するために、R値をCalcuSynソフトウェアでも計算する(良好なデータは0.95を超えるR値により特徴づけられる)。
【0149】
1.1.3.2 CalcuSynアウトプット
CalcuSyn結果を、固定EC50比で組み合わせ処置により影響を受けた細胞の割合を表す実験的効果比(Faと称する)(細胞毒性処置の場合、効果比は媒体対照と比較した生存能減少に対応し、ここで、Fa=1は100%生存能減少に対応する)および関連組み合わせ指数(CI)として提供する。上の表2に示すとおり、CI値は化合物の相互作用の性質および強度の指標であり、1未満の値は相乗的相互作用を表し(値が0に近いほど、相乗効果が強い)、1に等しい値は相加的相互作用を表し、1を超える値は拮抗相互作用を表す。
【0150】
1.2結果
1.2.1 単剤生存能:イアダデムスタット、プルロデムスタット(CC-90011)、ギルテリチニブ、ボメデムスタット
セクション1.1.2に記載のとおり、MV(4;11)、OCI-AML3、MOLM-13およびTF1a細胞株を播種し、媒体(DMSO 0.05%)またはイアダデムスタットの連続1:3希釈(濃度範囲0.0014から9nM)とインキュベートした。全例で、イアダデムスタットは、20%(媒体対照と比較)より大きな生存能減少を誘導し、少なくとも2回の生物学的反復でEC
50値はサブナノモル範囲であった。CC-90011について、MV(4;11)およびMOLM-13細胞をセクション1.1.2に記載のとおり媒体(DMSO 0.05%)または連続1:3希釈(濃度範0.045~300nM)で処理した。全例で、CC-90011は、20%(媒体対照と比較)より大きな生存能減少を誘導し、少なくとも2回の生物学的反復でEC
50値はナノモル範囲であった。ギルテリチニブEC
50決定について、MV(4;11)、OCI-AML3、MOLM-13およびTF1a細胞株を、セクション1.1.2に記載のとおり媒体(DMSO 0.45%)または連続1:3希釈(濃度範囲MOLM-13およびMV(4;11)について0.014~90nMおよびTF1aおよびOCI-AML3について1.4~9000nM)とインキュベートした。FLT3-ITDを有する細胞株、MOLM-13およびMV(4;11)について、ギルテリチニブは、両細胞株でほぼ100%の著しい生存能減少を示し、EC
50はナノモル範囲であった。TF1aまたはOCI-AML3細胞などのFLT3変異がない細胞において、ギルテリチニブは>70%の生存能減少を誘導し、EC
50は両細胞株でマイクロモル範囲であった。ボメデムスタットについて、MV(4;11)およびMOLM-13細胞を、セクション1.1.2に記載のとおり媒体(DMSO 0.05%)または連続1:3希釈(濃度範囲0.045~300nM)で処理した。全例で、ボメデムスタットは、20%(媒体対照と比較)より大きな生存能減少を誘導し、EC
50値はナノモル範囲であった。実験を少なくとも2回の生物学的反復で行った。
表3は特定の細胞株におけるイアダデムスタット、CC-90011、ギルテリチニブおよびボメデムスタットと96時間インキュベーション後、実験的に決定したEC
50値を示す。
【表4】
【0151】
1.2.2 LSD1阻害剤イアダデムスタット+ギルテリチニブの組み合わせ
ギルテリチニブ(濃度範囲MOLM-13およびMV(4;11)について0.014~90nMおよびTF1aおよびOCI-AML3について1.4~9000nM)および共有結合および不可逆性LSD1阻害剤イアダデムスタット(全4細胞株について濃度範囲0.0014~9nM)でのマトリクス処理を、セクション1.1.3に記載とおり実施した。データ解析および組み合わせ指数の計算を、セクション1.1.3.1に記載のとおり実施した。イアダデムスタットとギルテリチニブの組み合わせから得た組み合わせ指数(CI)の結果を特異的効果比(Fa)および各分類(表2に記載のとおり)と共に表4に示す。
まとめると、組み合わせイアダデムスタット+ギルテリチニブは、FLT3変異を有するギルテリチニブ感受性細胞株(MOLM-13、N=3およびMV(4;11)、N=2)において広範な効果比(Fa)で強い相乗性を示した。重要なことに、強い相乗性は、単剤としてのギルテリチニブにほとんど応答性がないFLT3変異がない細胞株(WT FLT3)でも観察された(OCI-AML3、N=2およびTF1a、N=3)。これらの細胞株はまた他の現在のAML治療にも耐性である。特に、OCI-AML3およびTF1a細胞はベネトクラクスに耐性であった(EC
50>10μM、上記方法に従い試験した)。これらの結果は、FLT3変異があるまたはないまたは難治性/再発状況のAML患者において、イアダデムスタットなどのLSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせが成功する可能性を開く。
【表5】
【0152】
1.2.3 LSD1阻害剤プルロデムスタット(CC-90011)+ギルテリチニブの組み合わせ
セクション1.2.2に記載するLSD1阻害剤とギルテリチニブの間の相乗効果を、他のLSD1阻害剤、特に構造的に無関係な、可逆性LSD1阻害剤CC-90011を使用して、さらに確認した。ギルテリチニブ(濃度範囲MOLM-13およびMV(4;11)について0.014~90nM)およびCC-90011(両細胞株について濃度範囲0.045~300nM)を用いるマトリクス処理を、セクション1.1.3に記載のとおり実施した。データ解析および組み合わせ指数の計算を、セクション1.1.3.1に記載のとおり実施した。CC-90011とギルテリチニブの組み合わせから得た組み合わせ指数(CI)の結果を特異的効果比(Fa)および各分類(表2に記載のとおり)と共に表5に示す。
まとめると、組み合わせCC-90011+ギルテリチニブも、試験した細胞株で広範な効果比(Fa)で強い相乗性を示した(MOLM-13、N=2およびMV(4;11)、N=2)。
【表6】
【0153】
1.2.4 LSD1阻害剤ボメデムスタット+ギルテリチニブの組み合わせ
セクション1.2.2および1.2.3に記載したLSD1阻害剤とギルテリチニブの間の相乗効果を、他のLSD1阻害剤、ボメデムスタットを使用してさらに確認した。
ギルテリチニブ(濃度範囲MOLM-13およびMV(4;11)について0.014~90nM)およびボメデムスタット(両細胞株について濃度範囲.045~300nM)を用いるマトリクス処理を、セクション1.1.3に記載のとおり実施した。データ解析および組み合わせ指数の計算を、セクション1.1.3.1に記載のとおり実施した。ボメデムスタットとギルテリチニブの組み合わせから得た組み合わせ指数(CI)の結果を特異的効果比(Fa)および各分類(表2に記載のとおり)と共に表6に示す。
まとめると、組み合わせボメデムスタット+ギルテリチニブは、試験した細胞株で広範な効果比(Fa)で強い相乗性を示した(MOLM-13、N=2およびMV(4;11)、N=2)。
【表7】
【0154】
実施例1に記載の方法を使用して、他のLSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせの優れた治療効果が確認され得る。
同様に、この実施例1に記載するのに類似する方法を使用して、MDSなどの他の骨髄悪性腫瘍におけるLSD1阻害剤とギルテリチニブの組み合わせの優れた治療効果が確認され得る。
【0155】
本発明は、その具体的実施態様と関連して記載しているが、さらなる修飾が可能であり、この特許または特許出願は、一般に、本発明の原則に従い、本発明の開示からの逸脱であって、本発明が関係する技術分野における既知または慣習的慣行の範囲内にあるものおよび前記および以下の特許請求の範囲に記載される必須の特徴に適用される可能性のあるものを含む、本発明のあらゆる変更、使用または適応を包含することが意図されることは理解される。
【国際調査報告】