(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】低温の被圧縮ガスを圧縮するための要素、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20240314BHJP
F04D 3/02 20060101ALI20240314BHJP
F04C 25/02 20060101ALN20240314BHJP
【FI】
F04D29/58 S
F04D3/02 B
F04D29/58 Q
F04C25/02 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562217
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2022057738
(87)【国際公開番号】W WO2022214322
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ラルチャンダニ ムケシュ
(72)【発明者】
【氏名】デ ボック シモン
(72)【発明者】
【氏名】ファン トロース トム
【テーマコード(参考)】
3H129
3H130
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA11
3H129AA24
3H129AB05
3H129BB13
3H129BB42
3H129BB44
3H129CC09
3H129CC48
3H130AA12
3H130AA23
3H130AB05
3H130AB27
3H130AB53
3H130AC01
3H130BA37D
3H130BA37E
3H130BA66D
3H130BA66E
(57)【要約】
低温の被圧縮ガスを圧縮するための装置及び方法。-40℃以下の低温のガスを圧縮するための要素であって、この要素(1)は、ハウジング(2)を備え、ハウジング(2)は、該ハウジング(2)に対して回転可能に配置される、少なくとも1つのローター(3)を含み、要素(1)は、ハウジング(2)を貫通する加熱ダクト(8)を設けることによって、ガスを圧縮するように構成され、加熱ダクト(8)は、第1の熱媒体が上記低温よりも高い温度でハウジング(2)内に導入される入口(9)と、第1の熱媒体がハウジング(2)から排出される出口(10)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮するための要素であって、
前記要素(1)は、ハウジング(2)を備え、前記ハウジング(2)は、前記ハウジング(2)に対して回転可能に配置される少なくとも1つのローター(3)を含むと共に、前記被圧縮ガスのための入口(6)及び圧縮ガスのための出口(7)を有し、
前記要素(1)は、前記ハウジング(2)を貫通する加熱ダクト(8)を前記要素(1)に設けることによって、前記低温の前記被圧縮ガスを圧縮するように構成され、前記加熱ダクト(8)は、第1の熱媒体が前記低温よりも高い温度でハウジング(2)内に導入される入口(9)と、前記第1の熱媒体が前記ハウジング(2)から排出される出口(10)とを備えることを特徴とする要素。
【請求項2】
前記被圧縮ガスの温度は、最大-60℃、より好ましくは最大-100℃である、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記第1の熱媒体は、少なくとも40%のグリコールを有する水とグリコールの混合物である、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記加熱ダクト(8)の前記入口(9)は、前記ハウジング(2)の前記入口(6)と前記加熱ダクト(8)の前記入口(9)との間で熱が交換されるように配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の要素。
【請求項5】
前記加熱ダクト(8)の前記出口(10)は、前記ハウジング(2)の前記出口(7)と前記加熱ダクト(8)の前記出口(10)との間で熱が交換されるように配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の要素。
【請求項6】
前記加熱ダクト(8)は、枝状部を備え、前記枝状部は、前記枝状部と前記入口(6)との間で熱が交換されるように配置されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の要素。
【請求項7】
前記加熱ダクト(8)は、複数の屈曲部及び/又は湾曲部を有し、前記屈曲部及び/又は湾曲部は、一方で前記屈曲部及び/又は湾曲部との間で、他方で前記入口(6)との間で熱が交換されるように配置されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の要素。
【請求項8】
前記加熱ダクト(8)は、前記第1の熱媒体が前記ハウジング(2)の入口部分から前記ハウジング(2)の出口部分へ、及び/又はその逆に流れることができるように設計されており、前記入口部分は、前記ハウジング(2)の前記入口(6)が配置されている側に、前記ロータ(3)のシャフト(5)の軸方向に従って配置されており、前記出口部分は、前記ハウジング(2)の前記出口(7)が配置されている側に、前記シャフト(5)の軸方向に従って配置されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の要素。
【請求項9】
前記ロータ(3)は、軸受(4)によって前記ハウジング(2)に対して回転可能に配置され、前記要素(1)は、前記低温よりも高い温度で第2の熱媒体を前記軸受(4)に注入するための注入回路(11)を備えている、請求項1から8のいずれか1項に記載の要素。
【請求項10】
前記第2の熱媒体のための第1の供給点(12)を有する前記注入回路(11)の第1のダクト(15a)は、前記ハウジング(2)の前記入口(6)が配置されている側に、前記ロータ(3)のシャフト(5)の軸方向に従って配置されている、前記ハウジング(2)の第1の部分に配置されている、請求項9に記載の要素。
【請求項11】
前記第2の熱媒体のための第2の供給点(13)を有する前記注入回路(11)の第2のダクト(15b)は、前記ハウジング(2)の前記出口(7)が配置された側に、前記ロータ(3)のシャフト(5)の軸方向に従って配置されている、前記ハウジング(2)の第2の部分に配置されている、請求項9又は10に記載の要素。
【請求項12】
前記第1の供給点(12)及び前記第2の供給点(13)は、前記ハウジング(2)内の前記第2の熱媒体のための接続ダクト(17)によって相互接続されている、請求項10及び11に記載の要素。
【請求項13】
前記加熱ダクト(8)の少なくとも一部分は、それぞれ、前記加熱ダクト(8)と、前記第1のダクト(15a)、前記第2のダクト(15b)及び/又は前記接続ダクト(17)との間で熱が交換されるように配置されている、請求項10から12のいずれか1項に記載の要素。
【請求項14】
前記要素(1)は、前記入口(6)に最も近い位置にある前記ロータ(3)のシャフトの端部のための加熱手段を備えている、請求項1から13のいずれか1項に記載の要素。
【請求項15】
前記要素(1)は、少なくとも1つのヘリカルローター、好ましくは2つのヘリカルローターを有するスクリュー圧縮機要素である、請求項1から14のいずれか1項に記載の要素。
【請求項16】
前記要素(1)は、オイルフリーのスクリュー圧縮機要素である、請求項15に記載の要素。
【請求項17】
-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮するための装置であって、前記装置は、請求項1から16のいずれか1項に記載の要素(1)を少なくとも1つ備える、装置。
【請求項18】
要素(1)を用いて-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮する方法であって、
前記要素(1)は、ハウジング(2)を備え、前記ハウジング(2)は、前記ハウジング(2)に対して回転可能に配置される少なくとも1つのロータ(3)を含むと共に、前記被圧縮ガスのための入口(6)及び圧縮ガスのための出口(7)を有し、
前記要素(1)は、前記ハウジング(2)を貫通する加熱ダクト(8)を備え、第1の熱媒体は、前記低温よりも高い温度で、前記加熱ダクト(8)の入口(9)で前記ハウジング(2)の中に導入され、前記第1の熱媒体は、前記加熱ダクト(8)の出口(10)で前記ハウジング(2)から排出されることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記被圧縮ガスの温度は、最大-60℃、より好ましくは最大-100℃である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の熱媒体は、少なくとも40%のグリコールを有する水とグリコールの混合物である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の熱媒体の温度は、前記加熱ダクト(8)の前記入口(9)で少なくとも60℃である、請求項18から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ロータ(3)は、軸受(4)によって前記ハウジング(2)に対して回転可能に配置され、第2の熱媒体は、前記軸受(4)に注入される、請求項18から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の熱媒体は、潤滑流体、好ましくはオイルである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮するための請求項1から16のいずれか1項に記載の要素又は請求項17に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温の被圧縮ガスを圧縮するための要素、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下において、「低温」とは、-40℃以下の温度を意味する。従って、本発明は極低温用途を意図している。
【0003】
1つの可能性のある例は、液体天然ガス(LNG)のボイルオフガスの圧縮であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0004】
往復圧縮機又はピストン圧縮機がこのような用途に使用されることが知られている。
【0005】
このような往復圧縮機又はピストン圧縮機の欠点は、その運転によって圧縮ガスの供給に脈動が生じることである。換言すれば、圧縮ガスの供給は途切れてしまう。
【0006】
しかしながら、いくつかの用途では、途切れない圧縮ガスの供給が必要である。
【0007】
例えば、スクリューローターを有するスクリュー圧縮機要素は、圧縮ガスの供給に脈動を発生させることなく連続的に動作することが知られている。加えて、スクリュー圧縮機要素のエネルギー消費量は低い。
【0008】
しかしながら、スクリュー圧縮機要素は、-40℃以下のガスを圧縮するために使用するのに適していない。
【0009】
スクリュー圧縮機要素は、鋳鉄製のハウジングと鍛鋼製のスクリューローターとを備える。
【0010】
このような低温で発生するこれらの材料の熱変形は様々である。これは、スクリュー圧縮機要素の公差及びクリアランスに影響し、これらは、このような熱変形に起因して大きくなり、その結果、スクリュー圧縮機要素の効率及び性能が低下する。
【0011】
このため、-40℃以下の被圧縮ガスは、スクリュー圧縮機要素に入る前にまず加熱される。
【0012】
これは、熱変形の問題を解決するが、圧縮後に圧縮ガスを再び冷却する必要があるので、大きなエネルギー損失を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、-40℃以下の温度の被圧縮ガスを圧縮することができる要素を提供することによって、上述の欠点及び/又は他の欠点の少なくとも1つに対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮するための要素に関し、この要素は、ハウジングに対して回転可能に配置される少なくとも1つのローターを含むと共に、被圧縮ガスのための入口及び圧縮ガスのための出口を有するハウジングを備え、要素は、ハウジングを貫通する加熱ダクトを要素に設けることによって、低温の被圧縮ガスを圧縮するように構成され、加熱ダクトは、上記低温よりも高い温度で第1の熱媒体がハウジングに導入される入口と、第1の熱媒体がハウジングから排出される出口とを備えることを特徴とする。
【0015】
利点は、加熱ダクト内に第1の熱媒体を提供することにより、ハウジングに熱を供給することができ、これが被圧縮ガスの低温に起因するハウジング及び/又はローターの激しい温度低下を防止できることである。
【0016】
その結果、ハウジング及び/又はローターの熱変形を制限することができるので、ローターとハウジングとの間の公差及びクリアランスが妥当な範囲内に保たれ、熱応力が制限される。
【0017】
加熱ダクトの入口は、好ましくは、ハウジングの入口と加熱ダクトの入口との間で熱が交換されるように配置される。
【0018】
代替的に又は追加的に、加熱ダクトの出口は、ハウジングの出口と加熱ダクトの出口との間で熱が交換されるように配置される。
【0019】
圧縮中にガスの温度が上昇することになるので、入口温度は出口温度よりも低くなる。第1の熱媒体が、最初に要素の最も冷たい位置である入口を通過し、最後に要素の最も暖かい位置である出口を通過するのを可能にすることによって、第1の熱媒体の熱エネルギーが、ハウジング全体にわたって熱として比例的に又は均一に分配されるのを保証することができ、要素の入口側から出口側への温度勾配を制限することができる。
【0020】
本発明による要素の実際的な実施形態では、加熱ダクトは、枝状部を備え、これらの枝状部と入口との間で熱が交換されるように配置されている。
【0021】
代替的に又は追加的に、加熱ダクトは、本発明による要素の実際的な実施形態において、複数の屈曲部及び/又は湾曲部を備え、これらの屈曲部及び/又は湾曲部は、一方で上記屈曲部及び/又は湾曲部との間で、他方で入口との間で熱が交換されるように配置されている。
【0022】
その結果、第1の熱媒体は、加熱ダクトに枝状部、屈曲部及び/又は湾曲部が設けられていない場合に比べて、より長い期間にわたって又はより長い距離にわたって、入口と密接に接触することになる。
【0023】
「密接な接触」とは、第1の熱媒体と入口の周りのハウジングの一部との間で熱伝達が可能であることを意味する。
【0024】
これは、入口の周りのハウジングの適切な加熱に寄与することになり、そこでの過度の温度降下を回避することを可能にする。
【0025】
本発明による要素の好ましい実施形態では、加熱ダクトは、第1の熱媒体が、ハウジングの入口部分(この入口部分は、ハウジングの入口が配置されている側にローターのシャフトの軸方向に従って配置されている)から、ハウジングの出口部分(この出口部分は、ハウジングの出口が配置されている側にシャフトの軸方向に従って配置されている)へ、及び/又はその逆に流れることができるように設計されている。
【0026】
その結果、ハウジング全体又はハウジングの少なくとも主要部分は、加熱ダクト内の第1の熱媒体との熱交換によって加熱することができる。
【0027】
本発明による要素の次の好ましい実施形態では、ローターは、軸受によってハウジングに対して回転可能に配置され、要素は、低温よりも高い温度で第2の熱媒体を軸受に注入するための注入回路を備える。
【0028】
その結果、軸受は、軸受が冷えすぎて凍結する(軸受の摩擦が増加するために軸受の正常動作を危険にさらす可能性がある)のを防ぐために加熱することもできる。
【0029】
第2の熱媒体のための第1の供給点を有する注入回路の第1のダクトは、好ましくは、ハウジングの入口が配置された側にローターのシャフトの軸方向に従って配置されている、ハウジングの第1の部分に配置される。
【0030】
代替的に又は追加的に、第2の熱媒体のための第2の供給点を有する注入回路の第2のダクトは、ハウジングの出口が配置された側にローターのシャフトの軸方向に従って配置されている、ハウジングの第2の部分に配置される。
【0031】
利点は、要素の入口側及び/又は出口側に第2の熱媒体を供給することによって、供給点をローターの1つ及び/又は2つの端部に配置できることである。
【0032】
換言すれば、要素の入口側の軸受及び/又は要素の出口側の軸受は、第2の熱媒体が軸受のできるだけ近くに注入されるような独自の注入点を有し、第2の熱媒体を要素の入口側から要素の出口側に、又はその逆に、ハウジングを通して運ぶ必要がない。
【0033】
このようにして、要素内で第2の熱媒体の詰まり及び/又は第2の熱媒体の潤滑特性の劣化をもたらす可能性がある、第2の熱媒体がハウジングを通過する際に凍結する又は過度に冷たくなるのを防ぐことができる。
【0034】
第2の熱媒体は、供給点から関連する軸受までハウジングを通過する限られた距離しか進む必要がないため、第2の熱媒体は最小限で冷えることになり、その結果、第2の熱媒体は、軸受に最大限の熱を放散することができる。
【0035】
第1の供給点及び第2の供給点は、ハウジング内の第2の熱媒体のための接続ダクトによって相互接続することができる。
【0036】
この接続ダクトにより、第1の供給点及び第2の供給点を介して注入された第2の熱媒体の間の熱交換が可能になる。
【0037】
この熱交換は、接続ダクト内の第2の熱媒体を介して、要素の高温の出口側から低温の入口側に向かって生じる。
【0038】
これは、第2の熱媒体全体、ハウジング全体、及び軸受を通じて均一な温度を保証することになる。
【0039】
その結果、第2の熱媒体が要素内で局所的に冷却され過ぎることになるリスクも低い。
【0040】
加熱ダクトの少なくとも一部分は、好ましくは、加熱ダクトと、第1のダクト、第2のダクト及び/又は接続ダクトとの間で熱がそれぞれ交換されるように配置されている。
【0041】
その結果、第2の熱媒体が注入回路内で冷却され過ぎることになるリスクが低い。
【0042】
本発明による要素の好ましい実施形態では、要素は、入口に最も近い位置にあるローターのシャフトの端部のための加熱手段を備える。
【0043】
利点は、このようにしてシャフトの上記の端部を加熱することができることである。
【0044】
この位置では、加熱手段との間に最大の温度差が存在することになり、加熱手段とローターとの間の可能な限りの熱伝達が可能になる。
【0045】
シャフトの熱伝導性のため、シャフトに伝達された熱は、シャフト全体及びローターのローター本体にわたって分散されることになる。
【0046】
その結果、公知の要素で発生するような、要素の入口側から出口側へのローターを横切る温度勾配をなくすことができ、ローター全体がほぼ同じ温度になることになる。
【0047】
その結果、ローターの熱変形が制限され、ローターとハウジングとの間の公差及びクリアランスが妥当な範囲内に保たれ、熱応力が制限される。
【0048】
また、本発明は、-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮するための装置に関し、この装置は、本発明による少なくとも1つの要素を備えている。
【0049】
このような装置が、本発明による要素の上述の実施形態と同様の利点を有することは言うまでもない。
【0050】
また、本発明は、要素を用いて-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮する方法に関し、この要素は、ハウジングを備え、ハウジングは、ハウジングに対して回転可能に配置される少なくとも1つのローターを備えると共に、被圧縮ガスのための入口及び圧縮ガスのための出口を有し、要素は、ハウジングを貫通する加熱ダクトを備え、第1の熱媒体は、加熱ダクトの入口でハウジングの中に導入され、第1の熱媒体は、加熱ダクトの出口でハウジングから排出されることを特徴とする。
【0051】
低温の被圧縮ガスの温度は、好ましくは最大-60℃、より好ましくは最大-100℃である。
【0052】
第1の熱媒体は、好ましくは、少なくとも40%のグリコールを有する水とグリコールの混合物である。このようにして、第1の熱媒体は、-40℃より低い凍結温度を有する。
【0053】
加熱ダクトの入口での第1の熱媒体の温度は、好ましくは少なくとも60℃である。
【0054】
第1の熱媒体と被圧縮ガスとの間の温度差が大きいほど、上記第1の熱媒体と被圧縮ガスとの間の熱交換の推進力が大きくなる。
【0055】
本発明による方法の好ましい実施形態では、ローターは、軸受によってハウジングに対して回転可能に配置され、第2の熱媒体は、軸受に注入される。
【0056】
このような方法の利点は、上述した本発明による要素の対応する実施形態の利点と重複することは言うまでもない。
【0057】
好ましくは、第2の熱媒体は、潤滑流体、好ましくはオイルである。
【0058】
このようにして、第2の熱媒体は、軸受を加熱するためだけでなく、軸受を潤滑するためにも有用である。
【0059】
最後に、本発明は、-40℃以下の低温の被圧縮ガスを圧縮するための本発明による要素又は装置の使用にも関する。
【0060】
本発明の特徴をよりよく示すために、本発明による低温の被圧縮ガスを圧縮するための要素及びそのような要素を備える装置のいくつかの好ましい実施形態は、添付の図面を参照して、非限定的な例として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明による装置で使用するための本発明による要素を概略的に斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明による装置で使用するために図面に示されている本発明による要素1は、この場合、スクリュー圧縮機要素である。
【0063】
要素1は、少なくとも1つのローター3、この場合は2つのヘリカルローターを含むハウジング2を備える。
【0064】
スクリュー圧縮機要素は、この場合、オイルフリーのスクリュー圧縮機要素であり、要素1のハウジング2内の圧縮室において、ヘリカルローターの潤滑及び/又はシールのためにオイルが注入されないことを意味する。
【0065】
ヘリカルローターは、シャフト5が軸受4によってハウジング2に対して回転可能に配置されている。
【0066】
また、ハウジング2は、低温の被圧縮ガスのための入口6及び圧縮ガスのための出口7を備える。
【0067】
本発明によれば、低温の被圧縮ガスの温度は、-40℃以下であり、好ましくは、本発明で必須ではないが、-60℃以下であり、より好ましくは-100℃以下である。
【0068】
言うまでもないが、圧縮の結果、圧縮ガスは、圧縮前の被圧縮ガスよりも高い温度を有することになる。プロセスによっては、この温度は-100℃、-60℃又は-40℃より高くすることができる。
【0069】
本発明によれば、ハウジング2は、該ハウジング2を貫通する加熱ダクト8を備える。加熱ダクト8は
図2に示されている。
【0070】
加熱ダクト8は、第1の熱媒体をハウジング2に導入するための入口9と、この第1の熱媒体をハウジング2から排出するための出口10とを有する。
【0071】
加熱ダクト8の入口9及び出口10は、
図1及び
図3に示されている。
【0072】
この場合、本発明によれば必須ではないが、第1の熱媒体は、水と、1,2-エタンジオール又はエチレングリコールとも呼ばれるグリコールとの混合物である。
【0073】
第1の熱媒体は、好ましくは少なくとも40%のグリコールを含む。その結果、第1の熱媒体は、-40℃より低い凍結温度を有する。
【0074】
第1の熱媒体自体は、例えば60℃の温度を有することになる。
【0075】
図3に示すように、加熱ダクト8の入口9はハウジング2の入口6の近くに位置し、加熱ダクト8の出口10はハウジング2の出口7の近くに位置する。
【0076】
ハウジング2の入口6は、被圧縮ガスが低温でここに入るため、最も低温の場所となる。加熱ダクト8の入口9では、第1の熱媒体の温度は、ハウジング2との熱交換がまだ行われていないため最も高いことになる。加熱ダクト8を通過する際、第1の熱媒体の温度は、一般的にハウジング2の最高温度を有する位置である出口7の近くの出口10に到達するまで低下することになる。
【0077】
この場合、本発明によれば必須ではないが、加熱ダクト8は、第1の熱媒体がハウジング2全体を通って流れることができるように、屈曲部及び枝状部又は分岐部によって設計される。
【0078】
このように、ハウジング2全体の加熱が保証され、ハウジング2の温度ができるだけ均一になるのを保証することができる。
【0079】
加えて、加熱ダクト8は、ハウジング2の入口6の近くに位置する枝状部を備える。
【0080】
「入口6の近く」とは、熱媒体とハウジング2の入口6との間で熱交換が起こり得ることを意味する。
【0081】
これは、入口6の近くのハウジング2が、第1の熱媒体がより多く循環することになり、入口6の近くのハウジング2との間でより多くの熱交換が生じることになるので、ハウジング2の他の部分よりも加熱されることを保証することになる。
【0082】
また、加熱ダクト8は、枝状部又は分岐部の代わりに又はそれに加えて、ハウジング2の入口6の近くで複数の屈曲部又は湾曲部を有することも可能である。これは、ハウジング2の入口6の近くの枝状部について上述したのと同様の効果を得ることを可能にすることになる。
【0083】
図示の例では、要素1は、注入回路11を備える。
【0084】
この注入回路11は、軸受4への第2の熱媒体の注入を可能にするために使用されることに留意されたい。換言すれば、注入回路11は、圧縮室へのオイルの注入には使用されない。
【0085】
図2に示すように、注入回路11は、ハウジング2内の2つの異なる位置に、要素1内への第2の熱媒体のための2つの供給点12、13を備える。
【0086】
図示のように、ハウジング2において、ローター3の各端部14a、14bに供給点12、13が存在する。
【0087】
その結果、第2の熱媒体は、ローター3のシャフト5の端部14a、14bの軸受4のできるだけ近くでハウジング2の中に注入することができる。
【0088】
ダクト15a、15bは、軸受4に第2の熱媒体を供給するために、供給点12、13から軸受4までハウジング2を貫通することになる。
【0089】
軸受4には適切なノズル16が設けられている。
【0090】
図2に示すように、2つの供給点12、13は、ハウジング2内の第2の熱媒体のための接続ダクト17によって相互接続されている。
【0091】
この接続ダクト17は、装置の動作中、第2の熱媒体で満たされることになる。
【0092】
この場合、加熱ダクト8の一部は、接続ダクト17及び/又は上述のダクト15a、15bの近くに位置することになり、これらのダクト8、15a、15b、17内の熱媒体との間で熱交換が可能になっている。
【0093】
換言すれば、第1の熱媒体は、第2の熱媒体を加熱することができる。
【0094】
スクリュー圧縮機要素は、非常に簡単な方法で、以下のように動作する。
【0095】
スクリュー圧縮機要素の動作中、各ヘリカルローターは互いに噛み合うように協働して回転し、ハウジング2の入口6を介して、低温の被圧縮ガスを吸い込む。
【0096】
ガスはヘリカルローター3によって圧縮され、ハウジング2の出口7を通ってスクリュー圧縮機要素1から排出されることになる。
【0097】
この場合、低温の被圧縮ガスは、ハウジング2を強く冷却することになる。
【0098】
圧縮過程でガスの温度は上昇するが、ガスの温度は依然として低いことになり、圧縮後、依然として圧縮ガスはハウジング2を冷却することになる。
【0099】
要素1の動作中、第1の熱媒体は、加熱ダクト8を通って流れることになり、ハウジング2を加熱することになる。
【0100】
加熱ダクト8の入口9での第1の熱媒体の温度は、例えば60℃であるが、第1の熱媒体のこの温度は、低温の被圧縮ガスの温度に応じて選択されることになることは明らかである。
【0101】
加熱は、第1の熱媒体が低い温度を有することになる出口10の近くよりも、第1の熱媒体が最も高い温度を有することになる入口9の近くで大きいことになる。
【0102】
入口6はハウジング2の中で最も低温の場所であるため、ほとんどの加熱がここで必要になることになる。
【0103】
ハウジング2の入口6の近くの分岐部により、第1の熱媒体は、入口6の近くのハウジング2の部分と、枝状部が存在しない場合よりも長い時間、熱交換を行うことになり、ハウジング2の当該部分の十分な加熱が可能となる。
【0104】
その後、第1の熱媒体は、加熱ダクト8に沿ってハウジング2全体を通って流れ、ハウジング2を加熱することになる。
【0105】
ハウジング2を加熱することにより、ローター3も間接的ではあるが第1の熱媒体によって加熱されることに留意されたい。
【0106】
その結果、要素1全体の温度は可能な限り高く維持されることになり、その温度も均一になる。
【0107】
ハウジング2が加熱される結果、軸受4も間接的に部分的に加熱されることになる。
【0108】
しかしながら、軸受4の適切な機能を保証するために、注入回路11は、被圧縮ガスの低い温度よりも高い温度で軸受4に第2の熱媒体を注入する。
【0109】
ローター3のシャフト5の両端14a、14bの軸受4に関して、ハウジング2には特別な供給点12、13が設けられており、可能な限り短いダクト15a、15bを使用して第2の熱媒体を軸受4に運ぶことができる。
【0110】
このようにして、第2の熱媒体が軸受4に到達する前に、冷たいハウジング2を通過する場合は第2の熱媒体の温度の低下をできるだけ制限することができる。
【0111】
さらに、加熱ダクト8の一部がダクト15a、15bの近くに配置されているため、これは、軸受4に到達する途中の第2の熱媒体の温度ができるだけ低下しないことを保証するのを助けることになり、軸受4を最大限に加熱することができる。
【0112】
2つの供給点12,13の間の接続をもたらす接続ダクト17の目的は、2つの供給点12,13を介して注入される第2の熱媒体に関する熱交換を可能にすることである。
【0113】
この接続ダクト17は第2の熱媒体で満たされることになり、通常、第2の熱媒体は静止しており、軸受4には到達しないが、接続ダクト17内の第2の熱媒体を介して、高温の出口7から非常に低温の入口6までの熱交換が可能になることになる。
【0114】
これは、ハウジング2内の第2の熱媒体全体、ハウジング2全体及び軸受4を通じて均一な温度を保証することになる。
【0115】
この場合、第2の熱媒体が冷却され過ぎるリスクもない。
【0116】
さらに、加熱ダクト8の一部が接続ダクト17の近くに配置されているため、これは、接続ダクト17内で第2の熱媒体の温度ができるだけ低下しないことを保証するのを助けることになる。このようにして、第2の熱媒体の凍結を防止することができ、それによって接続ダクト17が詰まるのを防止することができる。
【0117】
本発明は、例として記載される又は図面に示された実施形態に限定されるものではなく、本発明による低温の被圧縮ガスを圧縮するための要素及びそのような要素を備えた装置は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な形状及び寸法で実現することができる。
【国際調査報告】