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特表2024-513262NKP46及びCD38を標的とする二重特異性抗体、並びにその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-22
(54)【発明の名称】NKP46及びCD38を標的とする二重特異性抗体、並びにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240314BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240314BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C12N15/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504910
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 US2022023501
(87)【国際公開番号】W WO2022216723
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/170,917
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523378918
【氏名又は名称】サイトヴィア セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケイドーシェ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ティパー, ダニエル
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、NKp46及びCD38に特異的に結合する二重特異性抗体分子を提供する。本開示は、二重特異性抗体分子を含む併用療法に更に関する。二重特異性抗体分子は、NKp46及び/又はCD38を発現する細胞と関連するがん又は感染性状態若しくは障害を治療、予防、及び/又は診断するために使用され得る。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NKp46及びCD38に特異的に結合する二重特異性抗体であって、
i)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)を含む第1の重鎖と、
配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、及び
配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)を含む第1の重鎖と、
ii)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)を含む第1の軽鎖と、
配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及び
配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む第1の軽鎖と、
iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRH1、
配列番号33のアミノ酸配列を含むCDRH2を含む第2の軽鎖と、を含み、
配列番号34のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む第2の軽鎖と、を含み、
iv)配列番号35のアミノ酸配列を含むCDRL1、
配列番号36のアミノ酸配列を含むCDRL2を含む第2の軽鎖と、を含み、
配列番号37のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む第2の軽鎖と、を含み、
i)及びii)を含みNKp46に特異的に結合する第1の抗原結合領域と、iii)及びiv)を含みCD38に特異的に結合する第2の抗原結合領域と、を含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記第1の重鎖が、配列番号23、25、27、又は29のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、
前記第1の軽鎖が、配列番号24、26、28、又は30のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、
前記第2の重鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、
前記第2の軽鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記第1の抗原結合領域が、
a)配列番号23のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号24のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、
b)配列番号25のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号26のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、
c)配列番号27のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、又は
d)配列番号29のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記第2の抗原結合領域が、
配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含む第2の重鎖、及び配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む第2の軽鎖を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
a)前記第1の重鎖が、配列番号23のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、前記第1の軽鎖が、配列番号24のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、前記第2の重鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含むか、
b)前記第1の重鎖が、配列番号25のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、前記第1の軽鎖が、配列番号26のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、前記第2の重鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含むか、
c)前記第1の重鎖が、配列番号27のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、前記第1の軽鎖が、配列番号28のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、前記第2の重鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含むか、又は
d)前記第1の重鎖が、配列番号29のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、前記第1の軽鎖が、配列番号30のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、前記第2の重鎖が、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、前記第2の軽鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記二重特異性抗体が、配列番号41のアミノ酸配列を含む融合重鎖と、配列番号31のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖と、を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記二重特異性抗体が、配列番号46のアミノ酸配列と、配列番号31のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖と、を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記二重特異性抗体が、異なるCH1及びCLドメインを有する少なくとも2つのFab断片を含み、前記Fab断片が、
a)i.NKp46に特異的に結合する、前記VH領域及びVL領域と、
ii.ヒト免疫グロブリンのCH1ドメインであって、前記CH1ドメインの192位でのスレオニン残基が、グルタミン酸残基で置換されている、CH1ドメインと、
iii.ヒト免疫グロブリンのCL-カッパドメインであって、前記CLドメインの137位でのアスパラギン残基が、リジン残基で置換されており、前記CLドメインの114位でのセリン残基が、アラニン残基で置換されている、CL-カッパドメインと、からなる、第1のFab断片と、
b)免疫グロブリンの野生型ヒトCH1及び野生型ヒトCLドメインと、CD38に特異的に結合する、VH領域及びVL領域と、からなる、第2のFab断片と、を含み、
前記CH1及びCLドメインのために使用される前記配列位置番号が、Kabat番号付けを指し、Fab断片が、任意の順序でタンデムに配置されており、
前記第1のFab断片の前記CH1ドメインのC末端が、ポリペプチドリンカーを介して、後続のFab断片のVHドメインのN末端に連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記ポリペプチドリンカーが、配列番号9又は44のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
c)免疫グロブリンの二量体化CH2ドメイン及びCH3ドメインと、
d)前記抗原結合領域の前記CH1ドメインの前記C末端を、前記CH2ドメインのN末端に連結する、IgA、IgG、又はIgDのヒンジ領域と、を更に含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
IgG1のFcドメイン又はIgG4のFcドメインに由来するFcドメインを更に含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記Fcドメイン領域が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記Fcドメイン領域が、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記二重特異性抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
IgG抗体が、IgG1又はIgG4抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項をコードする核酸配列。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体の前記抗原結合領域を含む、多重特異性抗体。
【請求項18】
異常なCD38発現又は活性と関連する病態を治療する、予防する、又はその進行を遅延させることを必要としている対象においてそれを行う方法であって、有効量の、請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項17に記載の多重特異性抗体を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記病態が、がんである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが、多発性骨髄腫である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、リンパ腫である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、白血病である、請求項23に記載の方法。
【請求項23】
NK細胞応答をリダイレクトすることを必要としている対象においてそれを行う方法であって、有効量の、請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項17に記載の多重特異性抗体を投与することを含む、方法。
【請求項24】
前記NK細胞応答が、NK媒介性細胞傷害又は抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ナチュラルキラー(NK)細胞による、CD38を発現する細胞(CD38+細胞)の特異的溶解を促進する方法であって、前記CD38+細胞を、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と接触させることを含み、
前記有効量が、前記NK細胞による前記CD38+細胞の前記特異的溶解を促進するのに十分な量である、方法。
【請求項26】
前記CD38+細胞が、多発性骨髄腫細胞又はリンパ腫細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記接触させるステップが、多発性骨髄腫若しくはリンパ腫を患う又はそのリスクがある対象に、前記二重特異性抗体を投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体で治療されている対象における多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、又はCD38+がん細胞の増殖を阻害する方法であって、有効量のナチュラルキラー(NK)細胞を投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記方法が、有効量のナチュラルキラー(NK)細胞を投与することを含む、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
多発性骨髄腫、リンパ腫、又はCD38+がんの治療のための併用療法又はキットであって、NK細胞と、請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、を含む、併用療法又はキット。
【請求項31】
NK細胞との組み合わせでの使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項32】
多発性骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、リンパ腫、又はCD38+がんの治療のための、ナチュラルキラー(NK)細胞及び請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体の使用。
【請求項33】
請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、キット。
【請求項34】
前記NK細胞が、誘導性多能性幹細胞由来ナチュラルキラー(iPSC-NK)細胞である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記NK細胞が、ドナー由来NK細胞である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記NK細胞が、照射された不死化NK細胞である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記CD38+がんが、血液悪性腫瘍又は固形腫瘍である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月5日に出願された米国仮出願第63/170,917号の優先権及び利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の言及
2022年4月5日に作成された、44,213バイトのサイズである「CYTT-002_001WO_SeqListing_ST25.txt」と称される提出されたテキストの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
がん免疫療法は、例えば、腫瘍細胞上の抗原に特異的な抗体での治療、腫瘍細胞との抗原提示細胞の融合、又は抗腫瘍NK細胞若しくはT細胞の特異的活性化によって、抗腫瘍免疫応答を生成及び増強するために利用される。患者における腫瘍細胞に対して免疫細胞を動員する能力は、これまで不治と考えられたタイプのがん及び転移と闘うための治療モダリティを提供する。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球は、自然及び適応免疫において重要な役割を果たす強力な抗腫瘍エフェクターである。NKp30、NKp44、及びNKp46の3つの活性化受容体が、NK細胞上で見出され、これらは、総括して、自然細胞傷害受容体(NCR)として既知である。NKp46は、NK細胞の特定のための確立されたマーカーである。NKp46は、休止及び活性化NK細胞の両方上で見出されるNK細胞特異的誘発分子である。NKp46は、腫瘍及びウイルス感染細胞を含む多数の標的に対するNK細胞活性化における重要な媒介物質である。
【0005】
養子細胞療法のための免疫細胞の使用は、依然として困難であり、改善の必要性が満たされていない。養子免疫療法におけるNK細胞又は他のリンパ球の全潜在性を使用するための重要な機会が依然としてある。単独で、免疫学的構築物の一部として、若しくは他の薬剤との組み合わせで、NK細胞などの免疫系の細胞を強化して腫瘍細胞を攻撃する、より有効でありより特異的でありより安全でありかつ/又はより安定した追加の薬剤を提供する必要性が満たされていない。したがって、NK細胞上のNKp46及び腫瘍細胞上のCD38を二重標的とすることを可能にする、多発性骨髄腫及びリンパ腫などのがんの治療のための新規の抗体及び治療薬の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、NK細胞上のNKp46及び腫瘍細胞上のCD38を標的とすることが可能である、多発性骨髄腫(MM)、リンパ腫、及び白血病(例えば、急性骨髄性白血病)を含むがこれらに限定されないがんの治療のための抗体を提供する。
【0007】
本開示は、NKp46及びCD38に特異的に結合する二重特異性抗体であって、i)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)、及び配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)を含む第1の重鎖と、ii)配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)、配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)、及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)を含む第1の軽鎖と、iii)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDRH2、及び配列番号34のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む第2の重鎖と、iv)配列番号35のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む第2の軽鎖と、を含み、i)及びii)を含みNKp46に特異的に結合する第1の抗原結合領域と、iii)及びiv)を含みCD38に特異的に結合する第2の抗原結合領域と、を含む、二重特異性抗体を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の重鎖は、配列番号23、25、27、又は29のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、第1の軽鎖は、配列番号24、26、28、又は30のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、第2の重鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、第2の軽鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、a)配列番号23のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号24のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、b)配列番号25のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号26のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、c)配列番号27のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号28のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖、又はd)配列番号29のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含む第1の重鎖、及び配列番号30のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含む第1の軽鎖を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含む第2の重鎖、及び配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む第2の軽鎖を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、a)第1の重鎖は、配列番号23のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、第1の軽鎖は、配列番号24のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、第2の重鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、第2の軽鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含むか、b)第1の重鎖は、配列番号25のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、第1の軽鎖は、配列番号26のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、第2の重鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、第2の軽鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含むか、c)第1の重鎖は、配列番号27のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、第1の軽鎖は、配列番号28のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、第2の重鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、第2の軽鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含むか、又はd)第1の重鎖は、配列番号29のアミノ酸配列を含む第1の重鎖可変領域を含み、第1の軽鎖は、配列番号30のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖可変領域を含み、第2の重鎖は、配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の重鎖可変領域を含み、第2の軽鎖は、配列番号39のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖可変領域を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を含む融合重鎖と、配列番号31のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖と、配列番号40のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖と、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、異なるCH1及びCLドメインを有する少なくとも2つのFab断片を含み、当該Fab断片は、a)i.NKp46に特異的に結合する、VH領域及びVL領域と、ii.ヒト免疫グロブリンのCH1ドメインであって、当該CH1ドメインの192位でのスレオニン残基が、グルタミン酸残基で置換されている、CH1ドメインと、iii.ヒト免疫グロブリンのCL-カッパドメインであって、当該CLドメインの137位でのアスパラギン残基が、リジン残基で置換されており、当該CLドメインの114位でのセリン残基が、アラニン残基で置換されている、CL-カッパドメインと、からなる、第1のFab断片と、b)免疫グロブリンの野生型ヒトCH1及び野生型ヒトCLドメインと、CD38に特異的に結合する、VH領域及びVL領域と、からなる、第2のFab断片と、を含み、CH1及びCLドメインのために使用される配列位置番号は、Kabat番号付けを指し、Fab断片は、任意の順序でタンデムに配置されており、第1のFab断片のCH1ドメインのC末端は、ポリペプチドリンカーを介して、後続のFab断片のVHドメインのN末端に連結されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカーは、配列番号9又は44のアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、c)免疫グロブリンの二量体化CH2ドメイン及びCH3ドメインと、d)抗原結合領域のCH1ドメインのC末端を、CH2ドメインのN末端に連結する、IgA、IgG、又はIgDのヒンジ領域と、を更に含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG1のFcドメイン又はIgG4のFcドメインに由来するFcドメインを更に含む更に含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン領域は、配列番号15のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、IgG抗体は、IgG1又はIgG4抗体である。
【0017】
本開示はまた、本開示の二重特異性抗体のうちのいずれか1つをコードする核酸配列を提供する。
【0018】
本開示はまた、本開示の二重特異性抗体の抗原結合領域を含む多重特異性抗体を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、サイトカインに融合又はコンジュゲートしている。
【0020】
本開示は、異常なCD38発現又は活性と関連する病態を治療する、予防する、又はその進行を遅延させることを必要としている対象においてそれを行う方法であって、有効量の、本開示の二重特異性抗体又は多重特異性抗体を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、病態は、がんである。いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんは、リンパ腫である。いくつかの実施形態では、がんは、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病)である。
【0022】
本開示は、NK細胞応答をリダイレクトすることを必要としている対象においてそれを行う方法であって、有効量の、本開示の二重特異性抗体又は多重特異性抗体を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、NK細胞応答は、NK媒介性細胞傷害又は抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)である。
【0024】
本開示は、ナチュラルキラー(NK)細胞による、CD38+細胞)を発現する細胞の特異的溶解を促進する方法であって、CD38+細胞を、有効量の、本開示の二重特異性抗体又は多重特異性抗体と接触させることを含み、有効量が、NK細胞によるCD38+細胞の特異的溶解を促進するのに十分な量である、方法を更に提供する。いくつかの実施形態では、CD38+細胞は、多発性骨髄腫細胞である。いくつかの実施形態では、CD38+細胞は、リンパ腫細胞である。いくつかの実施形態では、接触させるステップは、多発性骨髄腫若しくはリンパ腫を患う又はそのリスクがある対象に、二重特異性抗体を投与することを含む。
【0025】
本開示は、請求項1~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体で治療されている対象における多発性骨髄腫若しくはリンパ腫細胞又はCD38+がん細胞の増殖を阻害する方法であって、有効量のナチュラルキラー(NK)細胞を投与することを含む、方法を更に提供する。いくつかの実施形態では、方法は、有効量のナチュラルキラー(NK)細胞を投与することを含む。
【0026】
本開示は、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、又はCD38+がんの治療のための併用療法又はキットであって、NK細胞と、本開示の二重特異性抗体と、を含む、併用療法又はキットを更に提供する。
【0027】
本開示は、NK細胞との組み合わせでの、二重特異性抗体の使用を更に提供する。
【0028】
本開示はまた、多発性骨髄腫、リンパ腫、又はCD38+がんの治療のための、ナチュラルキラー(NK)細胞及び二重特異性抗体の使用を提供する。
【0029】
本開示はまた、本開示の二重特異性抗体を含む、キットを提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、誘導性多能性幹細胞由来ナチュラルキラー(iPSC-NK)細胞である。いくつかの実施形態では、CD38+がんは、多発性骨髄腫又はリンパ腫である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、ドナー由来NK細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、照射された不死化NK細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】マウス抗NKp46モノクローナル抗体での、ヒトNKp46を発現する細胞の染色を示す一連のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。図1Aは、BW親細胞対NKp46を発現するBWトランスフェクト細胞の、抗NKp46 mAb(9E2、461-G1、02、09、12)を使用するFAC染色を示す。塗りつぶし灰色ヒストグラムは、BW親細胞のみの、二次抗体での染色を表す。BW NKp46トランスフェクタントのバックグラウンドは、同様であった。これは、図示されない。これらのヒストグラムは、実行された6つの実験のうちの1つの代表的な実験に対応する。図1Bは、一次活性化バルクヒトNK細胞の、抗NKp46 mAb(9E2、461-G1、02、09、12)を使用するFAC染色を示す。塗りつぶし灰色ヒストグラムは、二次抗体のみでのNK細胞の染色を表す。これらのヒストグラムは、実行された6つの実験のうちの1つの代表的な実験に対応する。
図1B】同上。
図2】3つの細胞型上のNKp46の検出を示す一連のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。NKp46-Igは、単独で、又は抗NKp46 mAb(9E2、461-G1、02、09、12)とともに、4℃でプレインキュベートされ、続いて、BJAB、MCF7、及びC1R細胞は、予め処理されたNKp46-IgでFAC染色された。塗りつぶし灰色ヒストグラムは、二次抗体のみでの細胞の染色を表す。これらのヒストグラムは、実行された2つの実験のうちの1つの代表的な実験に対応する。
図3】抗NKp46抗体の結合後のNKp46の表面発現の下方調節を示す一連のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。活性化バルクNK細胞培養物は、示される抗NKp46 mAb(9E2、461-G1、02、09、12)とともに、4℃でインキュベートされた。37℃で処置された細胞のバックグラウンドは、同様であった。これは、図示されない。これらのヒストグラムは、実行された5つの実験のうちの1つの代表的な実験に対応する。
図4】2つの一次活性化一次NK細胞上への、これらの抗体での用量反応FACS染色を示す。2つのドナーであるNK1及びNK2からの一次活性化バルクヒトNK細胞の、抗NKp46 mAb(9E2、461-G1、02、09、12)を使用するFAC染色。塗りつぶし灰色ヒストグラムは、二次抗体のみでのNK細胞の染色を表す。
図5】BIAcoreアッセイによって決定された、マウス抗NKp46 mAb 09の結合親和性を示す。
図6】BIAcoreアッセイによって決定された、マウス抗NKp46 mAb 12の結合親和性を示す。
図7A】マウス抗NKp46抗体の可変領域のアミノ酸配列アラインメントを、ヒト化抗NKp46抗体と比較して示す。図7Aは、重鎖可変領域のアミノ酸配列アラインメントを示す。図7Bは、カッパ軽鎖可変領域のアミノ酸配列アラインメントを示す。
図7B】同上。
図8】完全長ヒトNKp46、NKp46ドメインI(D1)、及びNKp46ドメインII(D2)を示す。
図9】抗NKp46 mAb抗体を使用する、BW細胞、BW NKp46細胞、及びNK Fiji細胞上のNKp46の検出を示す一連のヒストグラムを示す。市販の抗NKp46抗体(黒線)が試験された(BioLegends(カタログ番号331702))。
図10-1】ヒト化NKp46ハイブリドーマ抗体を使用する、BW細胞、BW NKp46細胞、及びNK Fiji細胞上のNKp46の検出を示す一連のヒストグラムを示す。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
図10-4】同上。
図11】抗NKp46抗体及びヒト化NKp46ハイブリドーマ抗体とともにインキュベートされた細胞の活性化及びヒトNK細胞死滅の百分率を示すグラフを示す。PAR-Rは、対照抗体である。GPC3は、抗GPC3対照抗体である。9E2は、市販の抗NKp46抗体である。
図12】抗NKp46抗体及びヒト化NKp46ハイブリドーマ抗体とともにインキュベートされた後のHepG2細胞のヒトNK細胞死滅の百分率を示すグラフを示す。
図13A】本開示の二重特異性抗体分子又はNKエンゲージャー二重特異性抗体の概略図を示す。図13Aは、二重特異性抗体の構造の概略図を示す。いくつかの事例では、Mab1は、抗NKp46 Fabであり、Mab2は、抗CD38 Fabであり、リンカーは、ポリペプチドリンカーであり、ヒンジ1及びヒンジ2は、ヒトIgG1又はIgG4ヒンジであり、Fc領域は、ヒトIgG1又はヒトIgG4のFc領域である。Fab断片は、(円で示される)変異を、CH1及びCLドメインの界面において有し、変異は、重鎖及び軽鎖の不対合形成を防止する。図13Bは、NK細胞上で発現されたNKp46、及び腫瘍細胞の表面上で発現された腫瘍抗原(TA)、例えば、CD38に結合する、二重特異性抗体分子又はNKエンゲージャー二重特異性抗体の概略図を示す。両方の表面抗原への二重特異性抗体の結合は、NK細胞媒介性細胞傷害を引き起こす。
図13B】同上。
図14】多発性骨髄腫細胞株へのNKE2の用量依存性結合を示す。
図15A】それぞれ、BW親細胞及びヒトNkp46トランスフェクトBW細胞へのNKE2の結合を示す。
図15B】同上。
図16】CD38アラニンスキャニング変異誘発によるNKE2エピトープマッピング分析の結果を示す。
図17A】NKE2での、多発性骨髄腫細胞株KMS11(図17A)、MM.1S(図17B)、及びMM.1S(図17C)の用量依存性PBNKリダイレクト細胞溶解を示す。
図17B】同上。
図17C】同上。
図18A】多発性骨髄腫MM.1S細胞に対するPB-NK細胞リダイレクト細胞溶解、脱顆粒、及びサイトカイン産生を示す。図18Aは、NKE2、ダラツムマブ、又は単一のCD38及びNKp46 mAbでの、多発性骨髄腫MM.1S細胞に対するPB-NK細胞リダイレクト細胞溶解及び脱顆粒を示す。図18Bは、NKE2、ダラツムマブ、並びに単一のCD38及びNKp46 mAbでの、IFN-y及びTNF-a産生PBNK細胞の割合を示す。
図18B】同上。
図19A】インビトロでのヒトPBMCにおける、野生型及び変異型NKE2での、免疫サブセット枯渇の欠如、並びに低いレベルのNK細胞フラトリサイド及びサイトカイン放出を示す。図19Aは、NKE2、ダラツムマブ、又はヒトIgGの存在下でのPBNKのNK細胞フラトリサイドを示す。図19Bは、NKE2、ダラツムマブ、又はhIgG1でのヒトPBMC免疫細胞サブセット枯渇を示す。図19Cは、NKE2、抗CD3若しくはCD28 mAb(TGN1412)、又はhIgG1とともにインキュベートされた後のヒトPBMCからのサイトカイン放出を示す。
図19B】同上。
図19C-1】同上。
図19C-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、ヒトナチュラルキラー受容体NKp46及びCD38に結合する、二重特異性抗体及びその抗原結合断片を提供する。具体的には、二重特異性抗体は、NK細胞の表面上で発現されるNKp46に特異的に結合する第1の抗原結合領域と、腫瘍細胞上で発現されるCD38に特異的に結合する第2の抗原結合領域と、を含む。本開示の文脈において、以下の定義が提供される。
【0033】
定義
別途定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。更に、別途文脈によって要求されない限り、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含む。概して、本明細書に記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、並びにタンパク質及びオリゴ又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法及びそれらの技法は、当該技術分野で周知であり一般的に使用されるものである。標準的な技法が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために使用される。酵素反応及び精製技法は、製造業者の仕様に従って、又は当該技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実行される。上記の技法及び手順は、概して、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、かつ本明細書全体にわたって引用及び考察される様々な一般的かつより具体的な参照文献に記載されているように実行される。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。本明細書に記載される、分析化学、合成有機化学、並びに医薬品及び製薬化学に関連して利用される命名法、並びにそれらの実験手順及び技法は、当該技術分野で周知であり一般的に使用されるものである。標準的な技法は、化学合成、化学分析、製薬調製、製剤、及び送達、並びに患者の治療のために使用される。
【0034】
本開示により利用される場合、以下の用語は、別途示されない限り、以下の意味を有すると理解される。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈により明らかに指定されない限り、複数の言及を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞を含み、複数の細胞は、それらの混合物を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、対象又は対象への薬剤(例えば、抗NKp46及び抗CD38二重特異性抗体)の「投与」は、対象に、化合物を導入又は送達して、その意図された機能を実行する任意の経路を含む。好適な投与用製剤、及び薬剤を投与する方法は、当該技術分野で既知である。また、投与経路が決定され得、最も有効な投与経路を決定する方法は、当業者に既知であり、治療のために使用される組成物、治療の目的、治療されている対象の健康状態又は疾患段階、及び標的細胞又は組織で変動する。投与経路の非限定的な例としては、非経口、経腸、及び局所投与経路が挙げられる。
【0037】
投与は、自己投与及び他者による投与を含む。また、記載される医学的状態の治療又は予防の様々な様式は、「実質的な」ものを意味することが意図されており、これは、全治療又は予防のみでなく、それ未満のものも含み、ある程度の生物学的又は医学的に適切な結果が達成されることを理解されたい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「動物」という用語は、例えば、哺乳類及び鳥類を含む分類である生存多細胞脊椎動物生物を指す。「哺乳動物」という用語は、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」又は「患者」という用語は、ヒト及び獣医学的対象の両方、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、マウス、ウマ、及びウシを含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する(それと免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。「特異的に結合する」又は「と免疫反応する」又は「免疫特異的に結合する」とは、抗体が、所望の抗原の1つ以上の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドと反応しないか又ははるかにより低い親和性(K>10-6M)で結合することを意味する。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、単鎖Fab、Fab’及びF(ab’)2断片、scFv、並びにFab発現ライブラリを含むが、これらに限定されない。高い親和性を有する抗体、例えば、本明細書に記載される抗体は、約0.01~25nM以下の親和性(Kを有する。
【0040】
塩基性抗体構造単位は、四量体を含むことが既知である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成されており、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)と、1つの「重」鎖(約50~70kDa)と、を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を画定する。概して、ヒトから得られる抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgE、及びIgDのクラスのうちのいずれかに関連し、これらは、分子内に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。あるクラスはまた、サブクラス、例えば、IgG、IgG、及び他のものを有する。更に、ヒトにおいて、軽鎖は、カッパ鎖又はラムダ鎖であり得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」(MAb)又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、固有の軽鎖遺伝子産物及び固有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含有する抗体分子の集団を指す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、集団の全ての分子において同一である。MAbは、抗原の特定のエピトープと免疫反応することが可能である抗原結合部位を含有し、抗原結合部位は、それへの固有の結合親和性によって特徴付けられる。
【0042】
「抗原結合領域」又は「抗原結合部位」又は「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する、免疫グロブリン分子の部分を指す。抗原結合部位は、重鎖(「H」)及び軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成されている。重鎖及び軽鎖のV領域内の3つの高度に多岐にわたるストレッチは、「超可変領域」と称され、「フレームワーク領域」又は「FR」として既知のより保存された隣接するストレッチの間に介在する。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンにおける超可変領域間にかつそれらに隣接して自然に見出されるアミノ酸配列を指す。抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域及び重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間において互いに対して配置されており、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖及び軽鎖の各々の3つの超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」と称される。抗体のアミノ酸配列を番号付けし、相補性決定領域を特定するための様々な方法が、当該技術分野で既知である。例えば、Kabat番号付けシステム(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Protein of Immunological Interest,5th ed.(1991)を参照されたい)、又はIMGT番号付けシステム(IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)。www.imgt.orgにおいてオンラインで入手可能)。IMGT番号付けシステムは、コード配列におけるアミノ酸位置、アレルのアラインメントを決定するための、かつ全ての脊椎動物種からの免疫グロブリン(IG)及びT細胞受容体(TR)における配列を容易に比較するための信頼できる正確なシステムとして、当該技術分野で通例に使用され、認められている。IMGTデータの正確性及び一貫性は、免疫遺伝学及び免疫情報学のための最初のかつ今までに固有のオントロジーであるIMGT-ONTOLOGYに基づく(Lefranc.M.P.et al.,Biomolecules,2014 Dec;4(4),1102-1139)。IMGTツール及びデータベースは、配列の大きいリポジトリから構築されたIMGTリファレンスディレクトリに対して実行される。IMGTシステムにおいて、IG V-DOMAIN及びIG C-DOMAINは、適切なときに、エクソン区切りを考慮して区切られている。したがって、IMGTデータベースへのより多くの配列の使用可能性、IMGTエクソン番号付けシステムは、コード配列におけるアミノ酸位置を決定するために、かつアレルのアラインメントのために、当業者によって信頼して使用され得、「使用される」。加えて、IMGT固有番号付けと他の番号付け(すなわち、Kabat)との間の対応は、IMGT Scientificチャートにおいて入手可能である(Lefranc.M.P.et al.,Biomolecules,2014 Dec;4(4),1102-1139)。
【0043】
「超可変領域」又は「可変領域」という用語は、抗体のアミノ酸残基であって、典型的には、抗原結合に関与する、アミノ酸残基を指す。超可変領域は、概して、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされたときに、VL内の約残基24~34(LI)、50~56(L2)、及び89~97(L3)の周辺、並びにVH内の約31~35(HI)、50~65(H2)、及び95~102(H3)の周辺;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed(1991))を含み、かつ/又は「超可変ループ」からの残基(例えば、Chothia番号付けシステムに従って番号付けされたときに、VL内の残基24~34(LI)、50~56(L2)、及び89~97(L3)、並びにVH内の26~32(HI)、52~56(H2)、及び95~101(H3);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含み、かつ/又は「超可変ループ」VCDRからの残基(例えば、IMGT番号付けシステムに従って番号付けされたときに、VL内の残基27~38(LI)、56~65(L2)、及び105~120(L3)、並びにVH内の27~38(HI)、56~65(H2)、及び105~120(H3);Lefranc,M.P.et al.Nucl.Acids Res.27:209-212(1999)、Ruiz,M.e al.Nucl.Acids Res.28:219-221(2000))を含む。任意選択で、抗体は、AHo;Honneger,A.and Plunkthun,A.J.Mol.Biol.309:657-670(2001))に従って番号付けされたときに、VL内の点28、36(LI)、63、74~75(L2)、及び123(L3)、並びにVH内の点28、36(HI)、63、74~75(H2)、及び123(H3)のうちの1つ以上における対称的な挿入を有する。
【0044】
「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、タンパク質分解抗体断片(例えば、当該技術分野で既知である、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、及びFab断片)、組換え抗体断片(例えば、(当該技術分野で既知である)sFv断片、dsFv断片、二重特異性sFv断片、二重特異性dsFv断片、F(ab)’2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、ダイアボディ、及びトリアボディ、並びにラクダ類抗体を含む(例えば、米国特許第6,015,695号、同第6,005,079号、同第5,874,541号、同第5,840,526号、同第5,800,988号、及び同第5,759,808号を参照されたい)。scFvタンパク質は、融合タンパク質であり、融合タンパク質においては、免疫グロブリンの軽鎖可変領域及び免疫グロブリンの重鎖可変領域は、リンカーによって結合されているが、dsFvにおいては、鎖は、ジスルフィド結合を導入して鎖の会合を安定化させるように変異している。
【0045】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、特定の体液性又は細胞性免疫の産物、例えば、抗体分子又はT細胞受容体によって特異的に結合され得る、化合物、組成物、又は物質を指す。抗原は、任意のタイプの分子であり得、この分子は、例えば、ハプテン、単純な中間代謝産物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質、及びホルモン、並びに巨大分子、例えば、複合糖質(例えば、多糖)、リン脂質、及びタンパク質を含む。抗原の一般的な分類は、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫及び他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患に関与する抗原、アレルギー及び移植片拒絶、毒素、並びに他の多岐にわたる抗原を含むが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、scFv、又はT細胞受容体に特異的に結合することが可能である任意のタンパク質決定基を含む。「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することが可能である任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群化からなり、通常、特定の三次元構造特徴及び特定の電荷特徴を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端又はC末端ペプチドに対して生じ得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「免疫学的結合」及び「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間に発生するタイプの非共有結合相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度又は親和性は、相互作用の解離定数(K)に関して表され得、より小さいKは、より大きい親和性を表す。選択されるポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野で周知の方法を使用して定量化され得る。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成及び解離の速度を測定することを含み、これらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、及び両方の方向での速度に等しく影響する幾何学的パラメータに依存する。したがって、「会合速度定数」(Kon)及び「解離速度定数」(Koff)の両方は、濃度、並びに会合及び解離の実際の速度の計算によって決定され得る。(Nature 361:186-87(1993)を参照されたい)。Koff/Konの比は、親和性に関連しない全てのパラメータの取り消しを可能にし、解離定数Kに等しい。(概して、Davies et al.(1990)Annual Rev Biochem 59:439-473を参照されたい)。本発明の抗体は、バイオレイヤー干渉法アッセイ又は当業者に既知の同様のアッセイなどのアッセイによって測定された場合、平衡結合定数(K)が、1μM以下、例えば、100nM以下、好ましくは、10nM以下、より好ましくは、1nM以下であるときに、その標的に特異的に結合するためのである。
【0048】
本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、1つの分子が、別の分子と(典型的には非共有結合的に)結合する傾向、例えば、特異的結合対のメンバーが、特異的結合対の別のメンバーについて有する傾向を指す。結合親和性は、解離定数として測定され得、解離定数は、特異的結合対(例えば、抗体/抗原対)について、1×10-5M未満、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、1×10-10M未満、1×10-11M未満、又は1×10-12M未満であることができる。一態様では、結合親和性は、Frankel et al.,Mol.Immunol.,16:101-106,1979によって記載されているScatchard方法の修正形態によって計算される。別の態様では、結合親和性は、結合定数によって測定される。別の態様では、結合親和性は、抗原/抗体解離速度によって測定される。更に別の態様では、高い結合親和性は、競合ラジオイムノアッセイによって測定される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、若しくは合成起源のポリヌクレオチド、又はそれらのある組み合わせを意味し、その起源によって、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が自然において見出されるポリヌクレオチドの全て又は一部分と会合していないか、(2)単離されたポリヌクレオチドが自然において連結されていないポリヌクレオチドに動作可能に連結されているか、又は(3)より大きい配列の一部として自然において発生しない。本発明によるポリヌクレオチドは、本明細書に記載される、重鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子、及び軽鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子を含む。
【0050】
本明細書で言及される「単離されたタンパク質」という用語は、cDNA、組換えRNA、若しくは合成起源のタンパク質、又はそれらのある組み合わせを意味し、その起源又は由来源によって、「単離されたタンパク質」は、(1)自然において見出されるタンパク質と会合していないか、(2)同じ源からの他のタンパク質、例えば、海洋性タンパク質を含まないか、(3)異なる種からの細胞によって発現されるか、又は(4)自然において発生しない。
【0051】
「ポリペプチド」という用語は、ポリペプチド配列の天然タンパク質、断片、又は類似体を指す一般的な用語として本明細書で使用される。したがって、天然タンパク質断片及び類似体は、ポリペプチド属の種である。本発明によるポリペプチドは、本明細書に記載される、重鎖免疫グロブリン分子及び軽鎖免疫グロブリン分子、並びに重鎖免疫グロブリン分子をカッパ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子とともに含む組み合わせ又はその逆によって形成された抗体分子、並びにそれらの断片及び類似体を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、物体に適用される場合、「自然発生の」という語句は、物体が、自然において見出され得ることを指す。例えば、(ウイルスを含む)生物において存在し、自然における源から単離され得、実験室で人間によって又は別法で意図的に修飾されていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、自然発生のものである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「動作可能に連結された」という用語は、そのように記載される構成要素の位置が、構成要素がそれらの意図された様式で機能することを可能にする関係にあることを指す。コード配列に「動作可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合する条件下で達成されるかかる方式でライゲーションされている。
【0054】
本明細書で使用される場合、「制御配列」という用語は、ポリヌクレオチド配列であって、それらがライゲーションされているコード配列の発現及びプロセシングを行うために必要である、ポリヌクレオチド配列を指す。そのような制御配列の性質は、原核生物における宿主生物に依存して異なり、そのような制御配列は、概して、真核生物における、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含み、概して、そのような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、少なくとも、存在が発現及びプロセシングのために必須である全ての構成要素を含むことが意図されており、また、その存在が有利である追加の構成要素、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列を含むことができる。本明細書で言及される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマーボロン、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのいずれか、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を意味する。この用語は、DNAの一本鎖及び二本鎖形態を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、20個の従来のアミノ酸及びそれらの略語は、従来の使用に従う。Immunology-A Synthesis(2nd Edition,E.S.Golub and D.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland Mass.(1991))を参照されたい。また、20個の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、α-、α-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、及び他の非従来のアミノ酸は、本発明のポリペプチドに好適な構成要素であり得る。非従来のアミノ酸の例としては、4ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、ε-N,N,N-トリメチルリシン、ε-N-アセチルリシン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、σ-N-メチルアルギニン、並びに他の同様のアミノ酸及びイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用されるポリペプチド表記において、標準的な使用及び慣例に従って、左方向は、アミノ末端方向であり、右方向は、カルボキシ末端方向である。
【0056】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、例えば、GAP又はBESTFITのプログラムによってデフォルトギャップ重みを使用して最適にアライメントされたときに、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは、少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは、少なくとも95パーセントの配列同一性、最も好ましくは、少なくとも99パーセントの配列同一性を共有することを意味する。
【0057】
好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0058】
保存的アミノ酸置換とは、同様の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0059】
本明細書で考察されるように、抗体又は免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における小さい変動は、本発明に包含されるとして企図され、ただし、アミノ酸配列における変動は、少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは、99%を維持する。特に、保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換は、側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起こるものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、概して、以下のファミリー、(1)酸性アミノ酸が、アスパルテート、グルタメートである、ファミリー、(2)塩基性アミノ酸が、リジン、アルギニン、ヒスチジンである、ファミリー、(3)非極性アミノ酸が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンである、ファミリー、及び(4)非荷電極性アミノ酸が、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである、ファミリーに分けられる。親水性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパルテート、グルタミン、グルタメート、ヒスチジン、リジン、セリン、及びトレオニンを含む。疎水性アミノ酸は、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、及びバリンを含む。アミノ酸の他のファミリーは、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーである、セリン及びスレオニン、(ii)アミド含有ファミリーである、アスパラギン及びグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーである、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、並びに(iv)芳香族ファミリーである、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンを含む。例えば、ロイシンの、イソロイシン又はバリンでの単離された置換、アスパルテートの、グルタメートでの単離された置換、スレオニンの、セリンでの単離された置換、又はアミノ酸の、構造的に関連するアミノ酸での同様の置換は、特に、置換が、フレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合、得られる分子の結合又は特性への大きい効果を有さないと予想することは合理的である。アミノ酸変化が機能的ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性をアッセイすることによって容易に決定され得る。アッセイは、本明細書に詳細に記載される。抗体又は免疫グロブリン分子の断片又は類似体は、当業者によって容易に調製され得る。断片又は類似体の好ましいアミノ及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界の近くで発生する。構造的及び機能的ドメインは、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データを公共又は専有の配列データベースと比較することによって特定され得る。好ましくは、コンピュータ化された比較方法は、既知の構造及び/又は機能の他のタンパク質において発生する、配列モチーフ又は予測タンパク質コンフォメーションドメインを特定するために使用される。既知の三次元構造にフォールドするタンパク質配列を特定するための方法は既知である。Bowie et al.Science 253:164(1991)。したがって、上記の例は、当業者が、本発明による構造的及び機能的ドメインを定義するために使用され得る、配列モチーフ及び構造的コンフォメーションを認識することができることを実証する。
【0060】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解への感受性を低減するもの、(2)酸化への感受性を低減するもの、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を改変するもの、(4)結合親和性を改変するもの、及び(4)そのような類似体の他の物理化学的又は機能的特性を付与又は修正するものである。類似体は、自然発生のペプチド配列以外の配列の様々なムテインを含むことができる。例えば、単一又は複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)は、自然発生の配列において(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分において)なされ得る。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させるべきでない(例えば、置換アミノ酸は、親配列において発生するヘリックスを破壊する傾向、又は親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を破壊する傾向があるべきでない)。当該技術分野で認識されているポリペプチド二次及び三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984))、Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991))、及びThornton et at.Nature 354:105(1991)に記載されている。
【0061】
本明細書で使用される場合、「標識」又は「標識された」という用語は、検出可能なマーカーの組み込み、例えば、放射性標識されたアミノ酸の組み込み、あるいはマークされたアビジン(例えば、光学又は熱量測定方法によって検出され得る、蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出され得る、ポリペプチドへのビオチニル部分の結合を指す。ある状況では、標識又はマーカーはまた、治療的なものであることができる。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する様々な方法が、当該技術分野で既知であり、使用され得る。ポリペプチドのための標識の例としては、以下、放射性同位体又は放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体についての結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識は、潜在的な立体障害を低減するために、様々な長さのスペーサアームによって結合する。本明細書で使用される場合、「医薬品又は薬物」という用語は、患者に適切に投与されたときに、所望の治療効果を誘導することが可能である化学的化合物又は組成物を指す。
【0062】
本明細書での他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw-Hill,San Francisco(1985))によって例示されているように、当該技術分野での従来の使用に従って使用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」とは、目的の種が、存在する優勢な種である(すなわち、モル基準で、目的の種が、組成物内の任意の他の個々の種よりも豊富である)ことを意味し、好ましくは、実質的に精製された画分は、目的の種が、存在する全ての巨大分子種の(モル基準で)少なくとも約50パーセントを含む、組成物である。
【0064】
概して、実質的に純粋な組成物は、組成物内に存在する全ての巨大分子種の約80%超、より好ましくは、約85%、90%、95%、及び99%超を含む。最も好ましくは、目的の種は、本質的に均質性(混入種が、従来の検出方法によって、組成物内で検出されることがない)に精製され、組成物は、単一の巨大分子種から本質的になる。
【0065】
互換的にかつ単数形又は複数形のいずれかで使用される「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は、悪性形質転換し、それによって、宿主生物にとって病的になる細胞を指す。本開示の方法により治療され得るがんの非限定的な例としては、血液悪性腫瘍及び固形腫瘍が挙げられる。がんの非限定的な例としては、多発性骨髄腫。リンパ腫、及び白血病(例えば、AML)が挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、対象における疾患を「治療すること」又はその「治療」とは、(1)症状又は疾患が、疾患の素因がある又はその症状を依然として示さない対象において発生することを予防すること、(2)疾患を阻害するか、又はその発症を阻止すること、あるいは(3)疾患若しくは疾患の症状を寛解させるか、又はその退行を引き起こすことを指す。当該技術分野で理解されるように、「治療」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るための手法である。本開示の目的で、有益な又は所望の結果は、検出可能又は検出不能であるかにかかわらず、1つ以上の症状の軽減又は寛解、(疾患を含む)状態の程度の減弱、(疾患を含む)状態の安定化された(すなわち、悪化していない)状況、(疾患を含む)状態の遅延又は減速、進行、(疾患を含む)状態の寛解又は緩和、状況、及び(部分的又は完全であるかにかかわらず)緩解、1つ以上を含むことができるが、これらに限定されない。強力であり、非常に低い用量で局所投与され得、したがって、全身性有害作用を最小にする化合物が好ましい。
【0067】
抗NKp46及び抗CD38二重特異性抗体
本開示の二重特異性抗体は、CD16及びNKG2Dなどの他のNK細胞マーカーではなく、NKp46を標的にしてNK細胞に関与するため、当該技術分野のものよりも有利である。重要なことに、NKp46発現は、CD16及びNKG2Dが下方調節された固形腫瘍において頻繁に維持される。したがって、本開示の二重特異性抗体は、他のより低い発現マーカーを標的とする、当該技術分野で既知の他の二重特異性抗体療法よりも有効であり得る。更に、NKp46は、NK細胞により特異的である。対照的に、NKG2Dは、T細胞によって広く発現され、二重特異性抗体を使用して標的とされたときに、サイトカイン放出症候群(CRS)などの毒性をもたらす。したがって、本開示の二重特異性抗体は、他のNK細胞マーカーを標的とする、当該技術分野で既知の他の二重特異性抗体よりも良好な安全性プロファイルを有する。
【0068】
本開示の二重特異性抗体は、NKp46膜近位ドメイン(D2ドメイン)に特異的に結合し、これは、NKp46とそのリガンドとの相互作用を遮断しないため、有利である。二重特異性抗体は、NKp46受容体のインターナリゼーション又は分解をもたらさず、したがって、様々な療法において、NK細胞を動員するために使用され得る。
【0069】
したがって、二重特異性抗体は、がん免疫療法において有用であり、また、がん診断のために使用され得る。
【0070】
ヒトナチュラルキラー受容体NKp46
本明細書で使用される場合、「NKp46」という用語は、自然細胞傷害誘発受容体1(NCR1)又はCD335としても既知のナチュラルキラータンパク質46を指す。NKp46は、休止及び活性化NK細胞の両方上で見出されるNK細胞特異的誘発分子である(Sivori et al.,1997)。NKp46は、腫瘍及びウイルス感染細胞を含む多数の標的に対するNK細胞活性化における重要なメディエータである(Moretta et al.,2001)。NKp46は、マウスオルソログを有する、NK細胞上の唯一の受容体であり、この受容体は、NCR1と称される(Biassoni et al.,1999)。NKp46は、NK細胞の特定のための確立されたマーカーである(Koch et al.,2013)。
【0071】
NKp46は、2つのIg様細胞外ドメイン(D1及びD2)、続いて、約40個の残基の茎領域、I型膜貫通ドメイン、及び短い細胞質尾部を有する。NKp46は、HCV及び他のウイルス感染細胞の排除に関与する主要なNK細胞活性化受容体であり、T細胞及び樹状細胞(DC)を含む他の免疫細胞とのNK細胞の相互作用を調節することが示されている。本発明による例示的なNKp46は、UniProt及びGenBank記号又は受託番号:UniProtKB-O76036(NCTR1_HUMAN)及び遺伝子ID:9437に記載されている。NKp46は、2つのIg様細胞外ドメイン(D1及びD2)、続いて、約40個の残基の茎領域、I型膜貫通ドメイン、及び短い細胞質尾部を有する。(アイソフォームaの完全長タンパク質の残基121~254に対応する)134個のアミノ酸残基を含むD2ドメイン(又はNKp46D2)。
【0072】
本発明による二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、NKp46におけるエピトープに結合する。具体的には、抗体は、NKp46タンパク質のD2ドメイン内のエピトープに結合する。
【0073】
CD38
本明細書で使用される場合、「CD38」及び「CD38抗原」という用語は、互換的に使用され、細胞によって自然に発現されるか、又はCD38遺伝子でトランスフェクトされた細胞上で発現される、ヒトCD38の任意のバリアント、アイソフォーム、及び種相同体を含む。当該技術分野で認識されている、CD38の同義語は、ADPリボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、Cd38-rs1、サイクリックADPリボースヒドロラーゼ1、I-19、NIM-R5抗原を含む。例示的なヒトCD38の完全なアミノ酸配列 Genbank/NCBI受託番号NP_001766.2(UniProtID番号P28907)。
【0074】
CD38は、受容体媒介性接着及びシグナル伝達、並びにその外酵素活性を介するカルシウム動員の媒介、サイクリックADPリボース(cADPR)及びADPRの形成の触媒における機能を有する多機能タンパク質である。CD38は、サイトカイン分泌、並びにリンパ球の活性化及び増殖を媒介する(Funaro et al.,J Immunolog 145:2390-6,1990、Terhorst et al.,Cell 771-80,1981、Guse et al.,Nature 398:70-3,1999)。CD38はまた、そのNADグリコヒドロラーゼ活性を介して、調節性T細胞区画の調節に関与している細胞外NADレベルを調節する(Adriouch et al.,14:1284-92,2012、Chiarugi et al.,Nature Reviews 12:741-52,2012)。Ca2+を介するシグナル伝達に加えて、CD38シグナル伝達は、T及びB細胞上の抗原受容体複合体又は他のタイプの受容体複合体、例えば、MHC分子とのクロストークを介して発生し、CD38は、いくつかの細胞応答に関与するのみでなく、IgG1のスイッチング及び分泌にも関与する。
【0075】
CD38は、造血細胞、例えば、髄様胸腺細胞、活性化T及びB細胞、休止NK細胞及び単球、リンパ節胚中心リンパ芽球、形質B細胞、濾胞内細胞、並びに樹状細胞上で発現されるII型膜貫通糖タンパク質である。正常な骨髄細胞の一部分、特定の前駆細胞及び臍帯細胞は、CD38陽性である。リンパ球系前駆細胞に加えて、CD38は、赤血球及び血小板上で発現され、発現はまた、いくつかの固形組織、例えば、腸、脳、前立腺、骨、及び膵臓において見出される。成熟した休止T及びB細胞は発現する 表面CD38なしに制限される。
【0076】
CD38はまた、様々な悪性血液疾患において発現し、悪性血液疾患は、多発性骨髄腫、白血病、及びリンパ腫、例えば、B細胞性慢性リンパ球性白血病、T及びB細胞急性リンパ球性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、原発性全身性アミロイドーシス、マントル細胞リンパ腫、前リンパ球性/骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、大顆粒リンパ球性(LGL)白血病、AML、NK細胞性白血病、並びに形質細胞性白血病を含む。CD38の発現は、前立腺における腺上皮、膵臓における島細胞、耳下腺を含む腺における管上皮、気管支上皮細胞、睾丸及び卵巣における細胞、並びに結腸直腸腺がんにおける腫瘍上皮を含む異なる起源の上皮/内皮細胞上の発現が記載されている。CD38発現が関与し得る他の疾患は、例えば、肺の気管支上皮がん、(乳房の管及び小葉における上皮内層の悪性増殖から発生する)乳がん、β細胞(インスリノーマ)から発生する膵臓腫瘍、腸における上皮から発生する腫瘍(例えば、腺がん及び扁平上皮がん)、前立腺におけるがん腫、並びに精巣におけるセミノーマ及び卵巣がんを含む。中枢神経系において、神経芽細胞腫は、CD38を発現する。
【0077】
二重特異性抗体
本開示の二重特異性抗体は、NKp46に特異的である1つの抗原結合領域と、CD38に特異的である第2の抗原結合領域と、を有する。
【0078】
以下の抗体配列は、例として本明細書で提供されるが、これらの配列は、当該技術分野で認識されている様々な技法のうちのいずれかを使用して二重特異性抗体を生成するために使用され得ることを理解されたい。二重特異性フォーマットの例としては、Fabアーム交換に基づく二重特異性IgG(Gramer et al.,2013 MAbs.5(6));CrossMabフォーマット(Klein C et al.,2012 MAbs 4(6));強制ヘテロ二量体化手法に基づく複数のフォーマット、例えば、SEED技術(Davis JH et al.,2010 Protein Eng Des Sel.23(4):195-202)、静電ステアリング(Gunasekaran K et al.,J Biol Chem.2010 285(25):19637-46.)、若しくはノブインホール(Ridgway JB et al.,Protein Eng.1996 9(7):617-21.)、又はホモ二量体形成を防止する変異の他のセット(Von Kreudenstein TS et al.,2013 MAbs.5(5):646-54.);断片ベースの二重特異性フォーマット、例えば、タンデムscFv(例えば、BiTE)(Wolf E et al.,2005 Drug Discov.Today 10(18):1237-44.);二重特異性四価抗体(Portner LM et al.,2012 Cancer Immunol Immunother.61(10):1869-75.);二重親和性リターゲティング分子(Moore PA et al.,2011 Blood.117(17):4542-51)、ダイアボディ(Kontermann RE et al.,Nat Biotechnol.1997 15(7):629-31)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
二重特異性又は多重特異性エンゲージャーは、異なる抗体の2つ以上の単鎖可変断片(scFv)からなる融合タンパク質であり、少なくとも一方のscFvは、エフェクター細胞表面分子に結合し、少なくとも他方のscFvは、腫瘍特異的表面分子を介して腫瘍細胞に結合する。
【0080】
二重又は多重特異性エンゲージャー認識又はカップリングのために使用され得る例示的なNK細胞表面分子としては、CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2Cが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
二重特異性又は多重特異性エンゲージャー認識のための例示的な腫瘍細胞表面分子としては、GPC3、B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、ROR1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、エフェクター細胞と腫瘍細胞抗原結合ドメインとの間のリンカーを更に含み、例えば、エフェクター細胞増殖を容易にするために、修飾されたIL15を、エフェクターNK細胞のためのリンカーとして更に含む(いくつかの刊行物では、これは、TriKE又は三重特異性キラーエンゲージャーと称される)。一実施形態では、TriKEは、NKp46-IL15-CD38である。
【0083】
いくつかの実施形態では、二重又は多重特異性エンゲージャーのための表面誘発受容体は、しばしば、細胞型に依存して、エフェクター細胞に内因性であり得る。いくつかの他の実施形態では、1つ以上の外因性表面誘発受容体は、本明細書で提供される方法及び組成物を使用して、すなわち、iPSCの更なる操作を介して、エフェクター細胞に導入され得、次いで、iPSCが、源のiPSCと同じ遺伝子型及び表面誘発受容体を含むT、NK、又は任意の他のエフェクター細胞に分化することを指示する。
【0084】
いくつかの実施形態では、二重特異性フォーマットは、PCT出願第WO2013/005194号、並びに米国特許第9,631,031号及び同第10,815,310号に記載されている二重特異性抗体フォーマットを含むが、これらに限定されず、これらの文献の各々は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。CH1及びCLドメインのために本明細書で使用される配列位置番号は、Kabat番号付けを指す(Kabat,E.A.et al.,Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition-US Department of Health and Human Services,NIH publication n°91-3242,pp 662,680,689,1991)本発明の二重特異性抗体は、変異したFab断片であり、変異したFab断片は、a)目的の抗体のVH及びVLドメインと、免疫グロブリンのCH1ドメインに由来するCH1ドメインであって、当該CH1ドメインの192位でのトレオニン残基が、グルタミン酸残基で置換されていることによる、CH1ドメインと、免疫グロブリンのCLドメインに由来するCLドメインであって、当該CLドメインの137位でのアスパラギン残基が、リジン残基で置換されており、当該CLドメインの114位でのセリン残基が、アラニン残基で置換されていることによる、CLドメインと、からなる、Fab断片、b)目的の抗体のVH及びVLドメインと、免疫グロブリンのCH1ドメインに由来するCH1ドメインであって、当該CH1ドメインの143位でのロイシン残基が、グルタミン残基で置換されており、当該CH1ドメインの188位でのセリン残基が、バリン残基で置換されていることによる、CH1ドメインと、免疫グロブリンのCLドメインに由来するCLドメインであって、当該CLドメインの133位でのバリン残基が、トレオニン残基で置換されており、当該CLドメインの176位でのセリン残基が、バリン残基で置換されていることによる、CLドメインと、からなる、Fab断片、c)目的の抗体のVH及びVLドメインと、IgG免疫グロブリンのCH1ドメインに由来するCH1ドメインであって、当該CH1ドメインの124位でのロイシン残基が、アラニン残基で置換されており、当該CH1ドメインの143位でのロイシン残基が、グルタミン酸残基で置換されていることによる、CH1ドメインと、IgG免疫グロブリンのCLドメインに由来するCLドメインであって、当該CLドメインの133位でのバリン残基が、トリプトファン残基で置換されていることによる、CLドメインと、からなる、Fab断片、d)目的の抗体のVH及びVLドメインと、免疫グロブリンのCH1ドメインに由来するCH1ドメインであって、当該CH1ドメインの190位でのバリン残基が、アラニン残基で置換されていることによる、CH1ドメインと、免疫グロブリンのCLドメインに由来するCLドメインであって、当該CLドメインの135位でのロイシン残基が、トリプトファン残基で置換されており、当該CLドメインの137位でのアスパラギン残基が、アラニン残基で置換されていることによる、CLドメインと、からなる、Fab断片のうちから選択される。
【0085】
好ましい実施形態によれば、CH1ドメインは、IgG免疫グロブリンに由来する。いくつかの実施形態では、IgG免疫グロブリンは、IgG1アイソタイプ又はIgG4アイソタイプからのものである。いくつかの実施形態では、CLドメインは、カッパタイプである。ヒト療法における使用のために、変異したCH1及びCLドメインが由来する免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。
【0086】
任意の順序でタンデムに配置されているFab断片、ポリペプチドリンカーを介して、後続のFab断片のVHドメインのN末端に連結された、第1のFab断片のCH1ドメインのC末端。概して、当該ポリペプチドリンカーは、少なくとも20、好ましくは、少なくとも25、更により好ましくは、少なくとも30、最大80、好ましくは、最大60、更により好ましくは、最大40アミノ酸長を有するべきである。
【0087】
ポリペプチドリンカーは、IgA、IgG、及びIgDのうちから選択される1つ以上の免疫グロブリンのヒンジ領域の配列の全て又は一部を含む。抗体が、ヒト療法において使用される場合、ヒト起源のヒンジ配列が好ましい。
【0088】
ヒトIgG、IgA、及びIgDのヒンジ領域の配列は、以下に示される。
【0089】
IgA1(配列番号1):VPSTPPTPSPSTPPTPSPS
【0090】
IgA2(配列番号2):VPPPPP
【0091】
IgD(配列番号3):
ESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTP
【0092】
IgG1(配列番号4):EPKSCDKTKTCPPCP
【0093】
IgG2(配列番号5):ERKCCVECPPCP
【0094】
IgG3:(配列番号6)ELKTPLGDTTHTCPRCP
【0095】
続いて、以下の0又は1~4つのリピート
【0096】
(配列番号7)EPKSCDTPPPCPRCP.
【0097】
IgG4:(配列番号8)ESKYGPPCPSCP
【0098】
当該ポリペプチドリンカーは、1つの免疫グロブリンのみのヒンジ領域の配列の全て又は一部を含み得る。この場合では、当該免疫グロブリンは、隣接するCH1ドメインが由来する免疫グロブリンと同じアイソタイプ及びサブクラスに属してもよく、又は異なるアイソタイプ若しくはサブクラスに属してもよい。
【0099】
代替として、当該ポリペプチドリンカーは、異なるアイソタイプ又はサブクラスの少なくとも2つの免疫グロブリンのヒンジ領域の配列の全て又は一部を含み得る。この場合では、CH1ドメインに直接続く、ポリペプチドリンカーのN末端部分は、好ましくは、当該CH1ドメインが由来する免疫グロブリンと同じアイソタイプ及びサブクラスに属する免疫グロブリンのヒンジ領域の全て又は一部からなる。
【0100】
任意選択で、当該ポリペプチドリンカーは、免疫グロブリンのCH2ドメインの2~15個、好ましくは、5~10個のN末端アミノ酸の配列を更に含み得る。
【0101】
いくつかの場合では、天然ヒンジ領域からの配列が使用され得、他の場合では、望ましくない鎖内又は鎖間ジスルフィド結合を回避するために、点変異が、これらの配列にもたらされ得、特に、天然IgG1、IgG2、又はIgG3ヒンジ配列における1つ以上のシステイン残基が、アラニン又はセリンによって置換されていることがもたらされ得る。
【0102】
本発明の多重特異性抗原結合断片において使用され得るポリペプチドリンカーの非限定的な例は、配列EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSTPPTPSPSGG(配列番号9)若しくはEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPGGGGSGGSGSGG(配列番号44)、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を有するポリペプチドである。配列番号9は、ヒトIgG1ヒンジの完全長配列(配列番号4)、続いて、ヒトIgG1のCH2の9つのN末端アミノ酸(APELLGGPS、配列番号10)、続いて、ヒトIgA1ヒンジの配列の一部分(TPPTPSPS、配列番号11)、続いて、補足の柔軟性をリンカーに提供するために添加されるジペプチドGGからなる。他の柔軟なリンカーが使用され得、これらのリンカーは、GSタイプのリンカー、例えば、(GGGS)n若しくは(GGGGS)n(式中、nが、整数である)、又は非反復リンカー、例えば、SPNSASHSGSAPQTSSAPGSQ(配列番号45)、あるいはそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一の配列を含む。
【0103】
任意選択で、ヒトIgG1のCH2ドメインのN末端配列のより短い部分が使用され得る。また、最大ヒトIgA1ヒンジの完全長配列までの(好ましくは、N末端バリン残基を除く)そのより長い部分が使用され得る。特定の実施形態によれば、当該ヒトIgA1ヒンジ配列は、トレオニン、セリン、及びプロリン残基の改変を含有する人工配列によって置換され得る。
【0104】
例えば、配列番号9のポリペプチドのバリアントはまた、本発明の多重特異性抗原結合断片における使用に好適であり、以下の配列、EPKSCDKTHTCPPCPAPELLPSTPPSPSTPGG(配列番号12)、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を有するポリペプチドである。このポリペプチドにおいて、ヒトIgG1ヒンジの完全長配列、続いて、ヒトIgG1のCH2の5つのN末端アミノ酸(APELL、配列番号13)、続いて、配列PSTPPSPSTP(配列番号14)が存在する。
【0105】
3つ以上の異なるFab断片を含む本発明の多重特異性抗原結合断片の場合、Fab断片を分離するポリペプチドリンカーは、同一であってもよく又は異なってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、Fcドメインは、IgG免疫グロブリンに由来する。いくつかの実施形態では、IgG免疫グロブリンは、IgG1アイソタイプ又はIgG4アイソタイプからのものである。いくつかの実施形態では、IgG1のFcドメインは、L234A及び/又はL235A変異(EU番号付け)を含む。ヒト療法における使用のために、変異したFcドメインが由来する免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。
【0107】
いくつかの実施形態では、IgG4のFcドメインは、S228P変異(EU番号付け)を含む。いくつかの実施形態では、IgG4のFcドメインは、配列番号15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む。
【0108】
>IgG4アイソタイプのmutIGHG4 S228P変異体
【化1】
【0109】
いくつかの実施形態では、IgG1のFcドメインは、L234A/L235A変異(EU番号付け)を含む。いくつかの実施形態では、IgG1のFcドメインは、配列番号16のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む。
【0110】
>IGHG1*01-L234A/L235A|Homo sapiens
【化2】
【0111】
>いくつかの実施形態では、IgG1のFcドメインは、野生型IgG1のFcドメインである。いくつかの実施形態では、IgG1のFcドメインは、配列番号42の配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む。
【0112】
>IGHG1*01野生型(ヒト):
【化3】
【0113】
本開示の例示的な二重特異性抗体は、重鎖及び軽鎖対形成を制御するためのCR3変異を含む。(Golay et al.J Immunol.2016)。二重特異性抗体は、CH1ドメインを有する IgG1アイソタイプのものであり、T192EのCR3変異、カッパアイソタイプの軽鎖を含み、S114A及びN137KのCR3変異と、GSタイプのペプチドリンカーと、ヒンジドメインと、S228P(EU番号付け)変異を有する、IgG4のFcドメインと、を含む。
【0114】
本開示の例示的な二重特異性抗体は、重鎖及び軽鎖対形成を制御するためのCR3変異を含む。(Golay et al.J Immunol.2016)。二重特異性抗体は、CH1ドメインを有する IgG1アイソタイプのものであり、T192EのCR3変異、カッパアイソタイプの軽鎖を含み、S114A及びN137KのCR3変異と、GSタイプのペプチドリンカーと、ヒンジドメインと、L234A/L235A(EU番号付け)変異を有する、huIgG1のFcドメインと、を含む(Xu et al.In Vitro Characterization of Five Humanized OKT3 Effector Function Variant Antibodies.Cellular Immunology 200,16-26(2000)。Hezareh et al.Effector Function Activities of a Panel of Mutants of a Broadly Neutralizing Antibody against Human Immunodeficiency Virus Type 1.J.Virol.2001,12161-12168(75)。
【0115】
NKp46及びCD38に特異的に結合する例示的な二重特異性抗体
本開示の二重特異性抗体は、NKp46に特異的である1つの抗原結合領域と、CD38に特異的である第2の抗原結合領域と、を有する。
【0116】
NKp46抗原結合領域が由来し得る例示的なNKp46抗体は、02抗体、(「K3_P4」又は「P4」とも称される)09抗体、(「K3b」又は「K3」とも称される)12抗体、ヒト化09抗体、ヒト化12抗体、B341001抗体、B341002抗体、B341003抗体、及びB341004抗体を含む。
【0117】
CD38抗原結合領域が由来し得る例示的なCD38抗体は、「抗CD38」抗体を含む。加えて、CD38抗原結合領域が由来し得る例示的なCD38抗体は、米国特許第9,758,590号、同第9,944,711号、及び同第10,766,965号に開示されているものを含むが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態では、NKp46に結合する少なくとも第1の抗原結合領域と、CD38に結合する第2の抗原結合領域と、を含む本発明の例示的な二重特異性抗体は、表1、2、3、及び4に示されるCDR配列から選択される、重鎖及び相補性決定領域と軽鎖相補性決定領域(CDR)との組み合わせを含む。表1、2、3、及び4に示されるCDRは、IMGT命名法に従って定義される(IMGT(登録商標)、the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)を参照されたい。オンラインで入手可能:http://www.imgt.org/)。
【0119】
いくつかの実施形態では、表1に示されるCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列から選択される重鎖CDRアミノ酸配列の組み合わせを含む第1の重鎖を含み、表2に示されるCDRL1、CDRL2、及びCDRL3アミノ酸配列から選択される第1の軽鎖CDRアミノ酸配列のセットを有する第1の軽鎖において、表3に示されるCDRH1、CDRH2、及びCDRH3アミノ酸配列から選択される重鎖CDRアミノ酸配列の組み合わせを含む第2の重鎖と、表4CDRL1、CDRL2、及びCDRL3配列から選択される第2の軽鎖CDRアミノ酸配列のセットを有する第2の軽鎖と、を含む、本発明の例示的な二重特異性抗体。
【0120】
いくつかの実施形態では、NKp46に結合する第1の抗原結合領域と、CD38に結合する第2の抗原結合領域と、を含む、本発明の例示的な二重特異性抗体であって、第1の抗原結合領域が、表1に示される重鎖相補性決定領域(CDR)の組み合わせと、表2に示されるCDR配列から選択される軽鎖CDRの組み合わせと、を含み、第2の抗原結合領域が、表3に示される重鎖相補性決定領域(CDR)の組み合わせと、表4に示されるCDR配列から選択される軽鎖CDRの組み合わせと、を含む、二重特異性抗体。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0121】
以下に記載される例示的な抗NKp46及び抗CD38二重特異性抗体の各々は、以下に列挙するアミノ酸及び対応する核酸配列において示されるように、第1の重鎖可変ドメイン(VH)と、第1の軽鎖可変ドメイン(VL)と、第2の重鎖可変ドメインと、第2の軽鎖可変ドメインと、を含む。
【0122】
抗NKp46抗体
例示的な抗NKp46抗体配列は、以下に示される。表5は、本開示による抗NKp46抗体についての例示的な重鎖可変及び軽鎖可変アミノ酸配列を提供する。表6は、本開示による抗NKp46抗体をコードする例示的な重鎖可変及び軽鎖可変核酸配列を提供する。
【表5】
【0123】
抗CD38抗体
例示的な抗CD38抗体配列は、以下に示される。表6は、本開示による抗CD38抗体についての例示的な重鎖可変及び軽鎖可変アミノ酸配列を提供する。
【表6】
【0124】
例示的な抗NKp46及び抗CD38二重特異性抗体
いくつかの実施形態では、抗CD38/抗NKp46二重特異性抗体は、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDRH2、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む第1の重鎖と、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号21のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号22のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む第1の軽鎖と、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDRH2、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDRH3を含む第2の重鎖と、配列番号35のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号36のアミノ酸配列を含むCDRL2、及び配列番号37のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む第2の軽鎖と、を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗CD38/抗NKp46二重特異性抗体は、配列番号25のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む第1の重鎖可変領域と、配列番号26のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む第1のカッパ軽鎖可変領域と、配列番号38のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む第2の重鎖可変領域と、配列番号39のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む第2のカッパ軽鎖可変領域と、を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗CD38/抗NKp46二重特異性抗体は、配列番号41のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む融合重鎖と、配列番号31のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む第1のカッパ軽鎖と、配列番号40のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一の配列を含む第2のカッパ軽鎖と、を含む。シグナル配列は、配列番号41、31、40、及び46において太字で示され、必ずしも全ての実施形態で存在するわけではない。
【0127】
>融合重鎖CD38/NKp46/huIgG1-L234A/L235A
【化4】

>融合重鎖CD38/NKp46/huIgG1-wt
【化5】

>軽鎖1抗NkP46
【化6】

>軽鎖2抗CD38
【化7】
【0128】
抗体は、上記の単鎖抗体をコードするDNAセグメントを含有するベクターによって発現され得る。
【0129】
これらは、ベクター、リポソーム、ネイキッドDNA、アジュバントで支援されたDNA。遺伝子銃、カテーテルなどを含むことができる。ベクターは、化学コンジュゲート、例えば、標的部分(例えば、細胞表面受容体へのリガンド)及び核酸結合部分(例えば、ポリリジン)を有する、WO93/64701に記載されているもの;ウイルスベクター(例えば、DNA又はRNAウイルスベクター);融合タンパク質、例えば、標的部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)及び核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含有する融合タンパク質である、PCT/US95/02140(WO95/22618)に記載されているもの;プラスミド;ファージなどを含む。ベクターは、染色体であってもよく、非染色体であってもよく、又は合成であってもよい。
【0130】
好ましいベクターは、ウイルスベクター、融合タンパク質、及び化学コンジュゲートを含む。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスを含む。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターは、ポックスベクター、例えば、オルトポックスベクター又はトリポックスベクター;ヘルペスウイルスベクター、例えば、単純ヘルペスI型ウイルス(HSV)ベクター(Geller,A.I.et al.,J.Neurochem,64:487(1995)、Lim,F.,et al.,in DNA Cloning:Mammalian Systems,D.Glover,Ed.(Oxford Univ.Press,Oxford England)(1995)、Geller,A.I.et al.,Proc Natl.Acad.Sci.:U.S.A.90:7603(1993)、Geller,A.I.,et al.,Proc Natl.Acad.Sci USA 87:1149(1990)を参照されたい;アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et al.,Science,259:988(1993)、Davidson,et al.,Nat.Genet 3:219(1993)、Yang,et al.,J.Virol.69:2004(1995)を参照されたい;及びアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt,M.G.et al.,Nat.Genet.8:148(1994)を参照されたいを含む。
【0131】
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質内に導入する。トリポックスウイルスベクターは、核酸の短期間の発現のみをもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、核酸を神経細胞内に導入するのに好ましい。アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4か月)よりも短期間の発現(約2か月)をもたらし、次いで、アデノ随伴ウイルスは、HSVベクターよりも短い。選択される特定のベクターは、標的細胞及び治療されている状態に依存する。導入は、標準的な技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入、又は形質転換によるものであることができる。遺伝子移入の様式の例としては、例えば、ネイキッドDNA、CaPO沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、及びウイルスベクターが挙げられる。
【0132】
ベクターは、本質的にいずれもの所望の標的細胞を標的とするために用いられ得る。例えば、定位固定注射は、ベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に向けるために使用され得る。加えて、粒子は、脳室内(icv)注入によって、SynchroMed注入システムなどのミニポンプ注入システムを使用して送達され得る。対流と称されるバルク流に基づく方法はまた、脳の広範な領域への大きい分子の送達において有効であることが証明されており、標的細胞へのベクターの送達において有用であり得る。(Bobo et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2076-2080(1994)、Morrison et al.,Am.J.Physiol.266:292-305(1994)を参照されたい)。使用され得る他の方法は、カテーテル、静脈内、非経口、腹腔内、及び皮下注射、並びに経口、又は他の既知の投与経路を含む。
【0133】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原への結合特異性を有する抗体である。本発明の場合では、結合特異性のうちの1つは、NKp46又はその任意の断片などの標的へのものである。第2の結合標的は、CD38又はその任意の断片である。
【0134】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で既知である。従来、二重特異性抗体の組換え体産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づき、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature,305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の非選択組み合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、それらのうちの1つのみが、正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィーステップによって達成される。同様の手順は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0135】
二重特異性抗体は、当該技術分野で認識されている様々な技法のうちのいずれかを使用して作製され得、これらの技法は、WO2012/023053に開示されているものを含み、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。WO2012/023053に記載されている方法は、ヒト免疫グロブリンと同一の構造である二重特異性抗体を生成する。このタイプの分子は、固有の重鎖ポリペプチドの2つのコピーと、定常カッパドメインに融合した第1の軽鎖可変領域と、定常ラムダドメインに融合した第2の軽鎖可変領域と、から構成されている。各結合部位は、重鎖及び軽鎖の両方が寄与する異なる抗原特異性を示す。軽鎖可変領域は、ラムダ又はカッパファミリーのものであることができ、好ましくは、それぞれ、ラムダ及びカッパ定常ドメインに融合している。これは、非天然ポリペプチド接合部の生成を回避するために好ましい。しかしながら、本発明の二重特異性抗体を、第1の特異性のために、カッパ軽鎖可変ドメインが定常ラムダドメインに融合することと、第2の特異性のために、ラムダ軽鎖可変ドメインが定常カッパドメインに融合することとによって得ることも可能である。WO2012/023053に記載されている二重特異性抗体は、IgGκλ抗体又は「κλ体」と称され、これは、新しい完全ヒト二重特異性IgGフォーマットである。このκλ体フォーマットは、標準的なIgG分子と区別不能である二重特異性抗体であり、標準的なモノクローナル抗体と区別不能である特徴を有する、二重特異性抗体のアフィニティー精製を可能にし、したがって、以前のフォーマットと比較して好都合である。
【0136】
方法の必須ステップは、同じ重鎖可変ドメインを共有する異なる抗原特異性を有する2つの抗体Fv領域(各々は、可変軽鎖及び可変重鎖ドメインによって構成されている)の特定である。モノクローナル抗体及びその断片の生成のための多数の方法が記載されている。(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow E,and Lane D,1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたく、これは、参照により本明細書に組み込まれる)。完全ヒト抗体は、CDR1及び2を含む軽鎖及び重鎖の両方の配列がヒト遺伝子から生じる、抗体分子である。CDR3領域は、ヒト起源のものであってもよく、又は合成手段によって設計されてもよい。そのような抗体は、本明細書で「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」と称される。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体を産生するための、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor,et al.,1983 Immunol Today 4:72を参照されたい)、及びEBVハイブリドーマ技法(Cole,et al.,1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96を参照されたい)によって産生されてもよい。ヒトモノクローナル抗体が、利用され得、ヒトモノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを使用すること(Cote,et al.,1983.Proc Natl Acad Sci USA 80:2026-2030を参照されたい)によって産生されてもよく、又はヒトB細胞をエプスタインバーウイルスでインビトロで形質転換すること(Cole,et al.,1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96を参照されたい)によって産生されてもよい。
【0137】
モノクローナル抗体は、例えば、動物を、標的抗原、若しくはその免疫原性断片、誘導体、又はバリアントで免疫化することによって生成される。代替として、動物は、標的抗原をコードする核酸分子を含有するベクターでトランスフェクトされた細胞で免疫化され、これにより、標的抗原が、発現され、トランスフェクトされた細胞の表面と会合する。異種間の非ヒト動物を産生するための様々な技法が、当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたく、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
代替として、抗体は、標的抗原への結合のための抗体又は抗原結合ドメイン配列を含有するライブラリをスクリーニングすることによって得られる。このライブラリは、例えば、アセンブルされたファージ粒子の表面上で発現されるバクテリオファージコートタンパク質へのタンパク質又はペプチド融合としてのバクテリオファージと、ファージ粒子内に含有されるコードDNA配列とにおいて調製される(すなわち、「ファージディスプレイライブラリ」)。
【0139】
次いで、骨髄腫/B細胞融合からもたらされたハイブリドーマは、標的抗原への反応性についてスクリーニングされる。モノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)によって記載されているものなどのハイブリドーマ法を使用して調製される。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物は、典型的には、免疫化剤で免疫化されて、リンパ球が誘発され、リンパ球は、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するか、又はそれを産生することが可能である。代替として、リンパ球が、インビトロで免疫化され得る。
【0140】
厳密には不可能でないが、同じ重鎖可変ドメインを有するが、異なる抗原に対して向けられる異なる抗体の偶然の特定の可能性は、非常に低い。実際、ほとんどの場合、重鎖は、抗原結合表面に大きく寄与し、また、配列において最も可変である。特に、重鎖上のCDR3は、配列、長さ、及び構造において最も多様なCDRである。したがって、異なる抗原に特異的な2つの抗体は、ほぼ不変に、異なる重鎖可変ドメインを保有する。
【0141】
同時係属国際出願第2012/023053号に開示されている方法は、この制限を克服し、同じ重鎖可変ドメインを有する抗体の単離を、抗体ライブラリの使用によって大きく容易にし、抗体ライブラリにおいて、重鎖可変ドメインは、全てのライブラリメンバーについて同一であり、したがって、多様性が、軽鎖可変ドメインに制限される。そのようなライブラリは、例えば、同時係属国際出願第2010/135558号及び同第2011/084255号に記載されており、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、軽鎖可変ドメインは、重鎖可変ドメインとともに発現されるため、両方のドメインが、抗原結合に寄与することができる。プロセスを更に促進するために、同じ重鎖可変ドメインと、多様なラムダ可変軽鎖又はカッパ可変軽鎖のいずれかと、を含有する、抗体ライブラリは、異なる抗原に対する抗体のインビトロ選択のために並行して使用され得る。この手法は、共通の重鎖を有する2つの抗体であるが、一方が、ラムダ軽鎖可変ドメインを保有し、他方が、本発明の完全免疫グロブリンフォーマットでの二重特異性抗体の生成のための建築ブロックとして使用され得る、カッパ軽鎖可変ドメインを保有する、その2つの抗体の特定を可能にする。
【0142】
共通の重鎖及び2つの異なる軽鎖は、単一の細胞内に共発現されて、本発明の二重特異性抗体のアセンブリを可能にする。全てのポリペプチドが、同じレベルで発現され、同等に良好にアセンブルされて、免疫グロブリン分子を形成する場合、単一特異性(同じ軽鎖)及び二重特異性(2つの異なる軽鎖)の比は、50%であるべきである。しかしながら、異なる軽鎖が、異なるレベルで発現され、かつ/又は同じ効率でアセンブルされない可能性がある。したがって、異なるポリペプチドの相対的発現を調節するための手段は、それらの内在性発現特徴又は共通の重鎖とアセンブルする異なる傾向を補償するために使用される。この調節は、プロモーターの強度、異なる効率を特徴とする内部リボソーム侵入部位(IRES)の使用、又は転写若しくは翻訳レベルで作用することができ、かつmRNA安定性に作用する他のタイプの調節エレメントを介して達成され得る。異なる強度の異なるプロモーターは、CMV(最初期サイトメガロウイルスウイルスプロモーター)、EF1-1α(ヒト伸長因子1α-サブユニットプロモーター)、Ubc(ヒトユビキチンCプロモーター)、SV40(サルウイルス40プロモーター)を含むことができる。また、哺乳類及びウイルス起源からの異なるIRESが記載されている。(例えば、Hellen CU and Sarnow P.Genes Dev 2001 15:1593-612を参照されたい)。これらのIRESは、それらの長さ及びリボソーム動員効率において大きく異なり得る。更に、活性を、IRESの複数のコピーを導入することによって更に調節することが可能である(Stephen et al.2000 Proc Natl Acad Sci USA 97:1536-1541)。発現の調節はまた、細胞の複数の順次トランスフェクションによって、一方又は他方の軽鎖を発現する個々の遺伝子のコピー数を増加させ、したがって、それらの相対的発現を修正して達成され得る。本明細書で提供される実施例は、異なる鎖の相対的発現を制御することが、二重特異性抗体のアセンブリ及び全体的な収率を最大にするのに重要であることを実証する。
【0143】
重鎖及び2つの軽鎖の共発現は、2つの単一特異性二価抗体及び1つの二重特異性二価抗体の3つの異なる抗体の混合物を、細胞培養上清中に生成する。後者は、目的の分子を得るために、混合物から精製されなければならない。本明細書に記載される方法は、この精製手順を、カッパ又はラムダ軽鎖定常ドメインと特異的に相互作用するアフィニティークロマトグラフィー媒体、例えば、CaptureSelect Fab Kappa及びCaptureSelect Fab Lambdaアフィニティーマトリックス(BAC BV、Holland)の使用によって大いに容易にする。この多段階アフィニティークロマトグラフィー精製手法は、効率的であり、概して、本発明の抗体に適用可能である。これは、クアドローマ又は抗体混合物を発現する他の細胞株に由来する各二重特異性抗体について展開及び最適化される必要がある特異的精製方法とは際立って対照的である。実際、混合物内の異なる抗体の生化学的特徴が同様である場合、標準的なクロマトグラフィー技法、例えば、イオン交換クロマトグラフィーを使用するそれらの分離は、困難であり得るか、又はまったく可能でないことがある。
【0144】
他の好適な精製方法は、2012年10月19日に出願されWO2013/088259として公開された同時係属出願第PCT/IB2012/003028号に開示されているものを含み、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
二重特異性抗体を産生する他の実施形態では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合することができる。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましく、CH1は、融合のうちの少なくとも1つにおいて存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する。免疫グロブリン重鎖融合、及び所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクター内に挿入され、好適な宿主生物内に共トランスフェクトされる。二重特異性抗体の生成の更なる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0146】
WO96/27011に記載されている別の手法によれば、一対の抗体分子間の界面が、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大にするように操作され得る。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部分を含む。この方法において、第1の抗体分子の界面からの1つ以上の小さいアミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置換される。大きい側鎖と同一又は同様のサイズの代償性「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖を、より小さいもの(例えば、アラニン又はスレオニン)で置換することによって、第2の抗体分子の界面上に作製される。これは、ヘテロ二量体の収率を、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産物よりも増加させるための機構を提供する。
【0147】
二重特異性抗体を抗体断片から生成するための技法は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学連結を使用して調製され得る。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0148】
また、二重特異性抗体断片を組換え細胞培養物から直接作製及び単離するための様々な技法が記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547-1553(1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域において還元されて、モノマーを形成し、次いで、再酸化して、抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体の産生のために利用され得る。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)によって記載されている「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替機構を提供している。断片は、重鎖可変ドメイン(V)を含み、重鎖可変ドメイン(V)は、リンカーによって、軽鎖可変ドメイン(V)に接続されており、リンカーは、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるものである。したがって、1つの断片のV及びVドメインは、別の断片の相補性V及びVドメインと強制的に対形成され、それによって、2つの抗原結合部位を形成する。また、二重特異性抗体断片を、単鎖Fv(sFv)二量体の使用によって作製するための別の戦略が報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照されたい。
【0149】
3つ以上の結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
【0150】
例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合することができ、それらのうちの少なくとも1つは、本発明のタンパク質抗原起源のものである。代替として、免疫グロブリン分子の抗抗原性アームは、細胞防御機構を、特定の抗原を発現する細胞に集中させるように、白血球上の誘発分子、例えば、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、又はB7)、又はIgGについてのFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わされ得る。二重特異性抗体はまた、細胞傷害性薬剤を、特定の抗原を発現する細胞に向けるために使用され得る。これらの抗体は、抗原結合アームと、細胞傷害性薬剤又は放射性核種キレート剤、例えば、EOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAに結合するアームと、を有する。目的の別の二重特異性抗体は、本明細書に記載されるタンパク質抗原に結合し、組織因子(TF)に更に結合する。
【0151】
本明細書に開示される抗体はまた、イムノリポソームとして製剤化され得る。抗体を含有するリポソームは、当該技術分野で既知の方法、例えば、Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688(1985)、Hwang et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:4030(1980)、並びに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されているものによって調製される。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0152】
特に有用なリポソームは、逆相蒸発法によって、脂質組成物で生成され得、脂質組成物は、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む。リポソームは、規定された孔径のフィルタを介して押し出されて、所望の直径を有するリポソームが得られる。本発明の抗体のFab’断片は、Martin et al.,J.Biol.Chem.,257:286-288(1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介して、リポソームにコンジュゲートすることができる。
【0153】
コンジュゲート
ヘテロコンジュゲート抗体もまた、本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合的に結合した抗体から構成されている。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞が、望ましくない細胞を標的とするようにするために提案されており(米国特許第4,676,980号を参照されたい)、HIV感染の治療のために提案されている(WO91/00360、WO92/200373、EP03089を参照されたい)。抗体は、合成タンパク質化学において既知の方法を使用してインビトロで調製され得、これらの方法は、架橋剤を含む方法を含むことが企図される。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、又はチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的での好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、並びに例えば、米国特許第4,676,980号に開示されているものが挙げられる。
【0154】
本発明はまた、抗体を含むイムノコンジュゲートであって、抗体が、細胞傷害性薬剤、例えば、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち、ラジオコンジュゲート)にコンジュゲートしている、イムノコンジュゲートに関する。
【0155】
使用され得る酵素活性毒素及びその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(Pseudomonas aeruginosaからの)エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含む。様々な放射性核種が、ラジオコンジュゲート抗体の産生のために使用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが挙げられる。
【0156】
抗体及び細胞傷害性薬剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCLなど)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタレルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フルオリン化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製され得る。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。(WO94/11026を参照されたい)。
【0157】
多種多様な可能な部分は、本発明の得られた抗体にカップリングすることができることが、当業者には認識されよう。(例えば、“Conjugate Vaccines”,Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr(eds),Carger Press,New York,(1989)を参照されたく、その全容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0158】
カップリングは、抗体及び他方の部分がそれらのそれぞれの活性を保持する限り、2つの分子を結合する任意の化学反応によって達成され得る。この連結は、多くの化学機構、例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、及び複合体形成を含むことができる。しかしながら、好ましい結合は、共有結合である。共有結合は、存在する側鎖の直接縮合又は外部架橋分子の組み込みのいずれかによって達成され得る。多くの二価又は多価連結剤が、他の分子へのタンパク質分子、例えば、本発明の抗体のカップリングにおいて有用である。例えば、代表的なカップリング剤は、有機化合物、例えば、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼン、及びヘキサメチレンジアミンを含むことができる。この列挙は、当該技術分野で既知の様々なクラスのカップリング剤の網羅的な列挙であることは意図されておらず、むしろ、より一般的なカップリング剤の例示である。(Killen and Lindstrom,Jour.Immun.133:1335-2549(1984)、Jansen et al.,Immunological Reviews 62:185-216(1982)、及びVitetta et al.,Science 238:1098(1987)を参照されたい。
【0159】
好ましいリンカーは、文献に記載されている。(例えば、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記載している、Ramakrishnan,S.et al.,Cancer Res.44:201-208(1984)を参照されたい)。また、オリゴペプチドリンカーによって抗体にカップリングしたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載している米国特許第5,030,719号を参照されたい。特に好ましいリンカーは、(i)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミドヒドロクロリド、(ii)SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-プリジル-ジチオ)-トルエン(Pierce Chem.Co.、カタログ(21558G)、(iii)SPDP(スクシンイミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.、カタログ番号21651G)、(iv)スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピアンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.カタログ番号2165-G)、及び(v)EDCにコンジュゲートしたスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミド:Pierce Chem.Co.、カタログ番号24510)を含む。
【0160】
上記のリンカーは、異なる属性を有する構成要素を含有し、したがって、異なる生理化学的特性を有するコンジュゲートをもたらす。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ-NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのスルホ-NHSエステルよりも安定している。NHSエステル含有リンカーは、スルホ-NHSエステルよりも可溶性でない。更に、リンカーSMPTは、立体障害型ジスルフィド結合を含有し、増加した安定性を有するコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド連結は、インビトロで切断されて、使用可能なコンジュゲートをより少なくするため、概して、他の連結よりも安定していない。スルホ-NHSは、特に、カルボジミドカップリングの安定性を増強することができる。カルボジミドカップリング(例えば、EDC)は、スルホ-NHSとともに使用されたときに、カルボジミドカップリング反応単独よりも加水分解に対して抵抗性があるエステルを形成する。
【0161】
Fc修飾抗体
本発明の二重特異性抗体は、異なるアイソタイプのものであることができ、それらのFc部分は、異なるFc受容体への結合特性を改変し、このようにして、抗体のエフェクター機能及びその薬物動態特性を修正するために修飾され得る。Fc部分の修飾のための多数の方法が、記載されており、本発明の抗体に適用可能である。(例えば、Strohl,WR Curr Opin Biotechnol 2009(6):685-91、米国特許第6,528,624号、2009年1月9日に出願されたPCT/US2009/0191199を参照されたい)。本発明の方法はまた、Fc部分を欠くF(ab’)2フォーマットでの二重特異性抗体及び抗体混合物を生成するために使用され得る。
【0162】
例えば、異常なNKp46及び/又はCD38発現及び/又は活性に関連するがん並びに/又は他の疾患及び障害の治療における本発明の抗体の有効性を増強するように、抗体を、エフェクター機能に関して修飾することが望ましいことがある。例えば、システイン残基は、Fc領域内に導入され得、それによって、鎖間ジスルフィド結合が、この領域内に形成されることを可能にする。このように生成されたホモ二量体抗体は、改善されたインターナリゼーション能力、並びに/又は増加した補体媒介性細胞死滅及び抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を有することができる。(Caron et al.,J.Exp Med.,176:1191-1195(1992)及びShopes,J.Immunol.,148:2918-2922(1992)を参照されたい)。代替として、抗体は、二重Fc領域を有し、それによって、増強された補体溶解及びADCC能力を有するように操作され得る。(Stevenson et al.,Anti-Cancer Drug Design,3:219-230(1989)を参照されたい)。
【0163】
抗体のエフェクター機能を増強する変異は、当該技術分野で既知であり、例えば、本明細書に記載される抗体内に導入され得るFc修飾の例について、Saunders et al.,2019;Front.Immunol.10:1296及びWang et al.,2018,Protein Cell 9(1):63-73を参照されたく、それらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別途示されない限り、この項におけるFc変異は、免疫グロブリンのためのKabat番号付けスキームを参照して記載される。
【0164】
例えば、Lys326Trp/Glu333Ser及びSer267Glu/His268Phe/Ser324Thr Fc変異体は、減少したADCCを示し、Lys326Trp/Glu333Ser、Lys326Ala/Glu333Ala、Lys326Met/Glu333Ser、Cys221Asp/Asp222Cys、Ser267Glu、His268Phe、及びSer324Thr、並びにGlu345Arg Fc変異体は、増加したC1q結合を示す。一方、S239D/I332E及びS239D/I332E/A330L Fc変異体は、増加したADCC活性に関連する。
【0165】
Fc領域内の他の変異は、抗体循環半減期を改善することができ、例えば、Arg435His、Met252Tyr/Ser254Thr/Thr256Glu(「YTE」)、Met428Leu/Asn434Ser、及びThr252Leu/Thr253Ser/Thr254Phe変異体は、未変異のバージョンと比較して延長された半減期を示す。
【0166】
他の実施形態では、Fc変異は、エフェクター機能の損失、例えば、Fc受容体結合の切断をもたらし得る。1つ以上のFc受容体への結合を減少させるFc変異体の例としては、Leu235Glu、Leu234Ala/Leu235Ala(「LALA」)、Ser228Pro/Leu235Glu、Leu234Ala/Leu235Ala/Pro329Gly、Pro331Ser/Leu234Glu/Leu235Phe、Asp265Ala、及びAla330Leuが挙げられる。
【0167】
更に、Fc受容体への結合は、糖鎖工学によって達成され得る。糖鎖工学は、免疫グロブリンのCH2ドメインのアミノ酸N297でのグリコシル化部位の修飾を含み得る。代替として又は加えて、組換えで産生された抗体は、抗体を産生する細胞培養物を、グリコシル化阻害剤に曝露することによって、翻訳後に修飾され得る。翻訳後修飾 グリコシル化、カルボキシル化、脱アミド化、酸化、ヒドロキシル化、O-硫酸化、アミド化、グリシル化、グリケーション、アルキル化、アシル化、アセチル化、リン酸化、ビオチン化、ホルミル化、脂質化、ヨウ素化、プレニル化、酸化、パルミトイル化、ホスファチジルイノシトール化、ホスホパンテテイニル化、シアリル化、及びセレノイル化、C末端リジン除去。例示的なグリコシル化阻害剤は、例えば、米国特許第9,868,973号I記載されており、これは、本明細書に記載される抗体の産生において使用され得るグリコシル化阻害剤の例について、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0168】
NK細胞
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫療法のための方法であって、有効量の、本開示の二重特異性抗体及び免疫細胞(例えば、NK細胞)を投与することを含む、方法を提供する。
【0169】
NK細胞は、様々な腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、並びに骨髄及び胸腺におけるいくつかの正常細胞に対して自発性細胞傷害を有するリンパ球の亜集団である。NK細胞は、形質転換細胞及びウイルス感染細胞への早期自然免疫応答の重要なエフェクターである。NK細胞は、ヒト末梢血中のリンパ球の約10%を構成する。リンパ球が、IL-2の存在下で培養されたときに、強い細胞傷害性反応性が生じる。NK細胞は、それらの大きいサイズ、及びそれらの細胞質における特徴的なアズール親和性顆粒の存在のため、大きい顆粒リンパ球として既知のエフェクター細胞である。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺、及び胸腺において分化及び成熟する。NK細胞は、特異的表面マーカー、例えば、ヒトにおけるCD16、CD56、及びCD8によって検出され得る。NK細胞は、T細胞抗原受容体、pan TマーカーCD3、又は表面免疫グロブリンB細胞受容体を発現しない。
【0170】
NK細胞の刺激は、細胞表面活性化及び阻害受容体に由来するシグナルのクロストークを介して達成される。NK細胞の活性化状態は、生殖細胞系列にコードされた活性化及び阻害受容体のアレイから受信された細胞内シグナルのバランスによって調節される(Campbell,2006)。NK細胞が、異常な細胞(例えば、腫瘍又はウイルス感染細胞)に遭遇し、活性化シグナルが優勢であるときに、NK細胞は、パーフォリン及びグランザイムを含有する細胞溶解性顆粒の分泌の指示を介して、又は死ドメイン含有受容体の会合を介して、標的細胞のアポトーシスを迅速に誘導することができる。活性化NK細胞はまた、I型サイトカイン、例えば、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子a、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を分泌することができ、これらは、自然及び適応免疫細胞の両方、並びに他のサイトカイン及びケモカインを活性化する(Wu et al.,2003)。早期自然免疫応答におけるNK細胞によるこれらの可溶性因子の産生は、他の造血細胞の動員及び機能に著しく影響する。また、物理的接触及びサイトカインの産生を介して、NK細胞は、免疫応答を促進又は制限するための、樹状細胞及び好中球との調節クロストークネットワークにおける中心的なプレーヤーである。
【0171】
ある実施形態では、NK細胞は、当該技術分野で周知の方法によって、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、非刺激白血球アフェレーシス産物(PBSC)、ヒト胚性幹細胞(hESC)、誘導性多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)、造血幹細胞(HSC)、骨髄、CD34+細胞、又は臍帯血(CB)から得られる。いくつかの実施形態では、NK細胞は、PBMCから単離される。いくつかの実施形態では、臍帯CBが、NK細胞を得るために使用される。ある態様では、NK細胞は、以前に記載されている、NK細胞のエクスビボ増殖の方法によって、単離され増殖する(Shah et al,2013)。この方法において、CB単核細胞は、フィコール密度勾配遠心分離によって単離され、バイオリアクター内で、IL-2及び人工抗原提示細胞(aAPC)とともに培養される。7日後に、細胞培養物は、CD3を発現するいずれもの細胞が枯渇し、更に7日間再培養される。細胞は、再び、CD3が枯渇し、CD56/CD3細胞又はNK細胞の百分率を決定するために特徴付けられる。いくつかの実施形態では、臍帯CBは、CD34細胞の単離と、SCF、IL-7、IL-15、及びIL-2を含有する培地中での培養によるCD56/CD3細胞への分化とによって、NK細胞を得るために使用される。
【0172】
NK細胞を単離し得る例示的な方法は、米国特許第9,260,696号に記載されているものを含むが、これらに限定されない。iPSC-NK細胞を生成する例示的な方法はまた、Zhu and Kaufman,Mol.Bio,2019、Yang et.Al.,Mol Ther:Meth Clin Dev,2020、及びMoseman et.al.,2020に記載されている。
【0173】
使用方法
本発明による治療実体の投与は、好適な担体、賦形剤、及び他の薬剤とともに投与され、これらは、改善された移入、送達、及び耐容性などを提供するために製剤内に組み込まれていることが理解されよう。多数の適切な製剤が、全ての薬剤師に既知の処方集、Remington’s Pharmaceutical Sciences(15th ed,Mack Publishing Company,Easton,PA(1975))、特に、Blaug,SeymourによるそのChapter 87に見出され得る。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質(複数)、脂質、(カチオン性又はアニオン性)脂質含有ベシクル(例えば、Lipofectin(商標)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油及び油中水エマルション、エマルションcarbowax(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びcarbowaxを含有する半固体混合物を含む。上記の混合物のうちのいずれも、製剤内の活性成分が、製剤によって不活性化されず、製剤が、生理学的に適合し、投与経路に耐容性である限り、本発明による治療及び療法において適切であり得る。また、Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.”Regul.Toxicol Pharmacol.32(2):210-8(2000)、Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.J.Pharm.203(1-2):1-60(2000)、Charman WN“Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery-some emerging concepts.”J Pharm Sci.89(8):967-78(2000)、Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA J Pharm Sci Technol.52:238-311(1998)、並びに薬剤師に周知の製剤、賦形剤、及び担体に関する追加の情報についてのそれらの引用を参照されたい。
【0174】
本発明の抗体を含む本発明の治療製剤は、がん、例えば、非限定的な例として、白血病、リンパ腫、乳がん、結腸がん、卵巣がん、膀胱がん(bladder cancer)、前立腺がん、神経膠腫、肺及び気管支がん、結腸直腸がん、膵臓がん、食道がん、肝臓がん、膀胱がん(urinary bladder cancer)、腎臓及び腎盂腎がん、口腔及び咽頭がん、子宮体がん、並びに/又は黒色腫に関連する症状を治療又は軽減するために使用される。本発明はまた、がんに関連する症状を治療又は軽減する方法を提供する。治療計画は、がんを患う(又はそれを発症するリスクがある)対象、例えば、ヒト患者を、標準的な方法を使用して特定することによって実施される。
【0175】
治療の効能は、特定の免疫関連障害を診断又は治療するための任意の既知の方法に関連して決定される。免疫関連障害の1つ以上の症状の軽減は、抗体が臨床的利益を付与することを示す。
【0176】
所望の特異性を有する抗体をスクリーニングするための方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び当該技術分野内で既知の他の免疫学的に媒介される技法を含むが、これらに限定されない。
【0177】
標的、例えば、NKp46、CD38に対して向けられる抗体、又はそれらの組み合わせ(又はそれらの断片)は、これらの標的の局在化及び/又は定量化に関する当該技術分野内で既知の方法において使用され得、例えば、適切な生理学的試料内のこれらの標的のレベルの測定、診断方法、及びタンパク質の撮像など)において使用され得る。所与の実施形態では、これらの標的のうちのいずれか特異的な抗体、又は抗体由来抗原結合ドメインを含有する、それらの誘導体、断片、類似体、若しくは相同体は、(以下、「治療薬」と称される)薬理学的に活性な化合物として利用される。
【0178】
本発明の抗体は、特定の標的を、標準的な技法、例えば、免疫親和性、クロマトグラフィー、又は免疫沈降を使用して単離するために使用され得る。本発明の抗体(又はそれらの断片)は、例えば、所与の治療計画の効力を決定するための臨床試験手順の一部として、組織におけるタンパク質レベルを監視するために診断的に使用され得る。検出は、検出可能な物質への抗体のカップリング(すなわち、物理的連結)によって容易され得る。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生体発光材料、及び放射性材料が挙げられる。好適な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン、及びアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンが挙げられ、発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ、生体発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられ、好適な放射性材料の例としては、125I、133I、35S、又はHが挙げられる。
【0179】
ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、及び完全ヒト抗体を含む本発明の抗体は、治療剤として使用され得る。そのような薬剤は、概して、対象における所与の標的の異常な発現又は活性化に関連する疾患又は病態を治療又は予防するために用いられる。抗体調製物、好ましくは、その標的抗原への高い特異性及び高い親和性を有するものが、対象に投与され、概して、標的へのその結合に起因して効果を有する。抗体の投与は、標的のシグナル伝達機能を抑止してもよく、又はそれを阻害してもよく、又はそれに干渉してもよい。抗体の投与は、標的が自然に結合する内因性リガンドへのその結合を抑止してもよく、又はそれを阻害してもよく、又はそれに干渉してもよい。例えば、抗体は、標的に結合し、CD38とその内因性リガンドとの間の相互作用を中和するか又は別法で阻害する。例えば、抗体は、標的に結合し、NKp46とその内因性リガンドとの間の相互作用を中和するか又は別法で阻害する。
【0180】
本発明の抗体の治療有効量は、概して、治療目的を達成するために必要とされる量に関する。上記のように、これは、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得、ある場合では、この結合相互作用は、標的の機能に干渉する。投与されるために必要とされる量は、抗体の特異的抗原へのその結合親和性に更に依存し、また、投与される抗体が、それが投与された他の対象 自由体積で枯渇する速度に依存する。本発明の抗体又は抗体断片の治療有効投与量についての一般的な範囲は、非限定的な例として、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重であり得る。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回~1週間に1回の範囲であり得る。
【0181】
本発明の抗体又はそれらの断片は、様々な疾患及び障害の治療のために、薬学的組成物の形態で投与され得る。そのような組成物の調製に関与する原理及び考慮事項、並びに構成要素の選択におけるガイダンスは、例えば、Remington:The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed.(Alfonso R.Gennaro,et al.,editors)Mack Pub.Co.,Easton,Pa.:1995、Drug Absorption Enhancement:Concepts,Possibilities,Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers,Langhorne,Pa.,1994、及びPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences,Vol.4),1991,M.Dekker,New Yorkで提供されている。
【0182】
抗体断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、ペプチド分子は、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するように設計され得る。そのようなペプチドは、化学的に合成され得、かつ/又は組換えDNA技術によって産生され得る。(例えば、Marasco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889-7893(1993)を参照されたい)。製剤はまた、治療されている特定の適応症のために必要に応じて、2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに不利に影響しない相補的活性を有するものを含有することができる。代替として又は加えて、組成物は、その機能を増強する薬剤、例えば、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、化学療法剤、又は増殖阻害剤を含むことができる。そのような分子は、好適には、組み合わせで存在し、意図された目的に有効である量で存在する。
【0183】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技法によって若しくは界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に封入されてもよく、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)内に封入されてもよく、又はマクロエマルション内に封入されてもよい。
【0184】
インビボ投与のために使用される製剤は、滅菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成される。
【0185】
持続放出調製物が調製され得る。持続放出調製物の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形物品の形態、例えば、フィルム又はマイクロカプセルである。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーと、ロイプロリドアセテートと、から構成された注射可能なマイクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日間超にわたる分子の放出を可能にし、あるヒドロゲルは、タンパク質をより短い期間放出する。
【0186】
本発明による抗体は、試料における所与の標的(又はそのタンパク質断片)の存在を検出するための薬剤として使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、検出可能な標識を含有する。抗体は、ポリクローナル、又はより好ましくは、モノクローナルである。インタクトな抗体又はその断片(例えば、Fab、scFv、又はF(ab)2)が使用される。プローブ又は抗体に関して、「標識された」という用語は、プローブ又は抗体への検出可能な物質のカップリング(すなわち、物理的連結)による、プローブ又は抗体の直接標識、並びに直接標識された別の試薬との反応性による、プローブ又は抗体の間接標識を包含することが意図されている。間接標識の例としては、蛍光標識された二次抗体を使用する、一次抗体の検出、及び蛍光標識されたストレプトアビジンで検出され得るビオチンでのDNAプローブの末端標識が挙げられる。「生体試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、及び生体液、並びに対象内に存在する組織、細胞、及び流体を含むことが意図されている。したがって、血液、及び血液の画分又は構成要素が、「生体試料」という用語の使用に含まれ、血液の画分又は構成要素は、血清、血漿、又はリンパを含む。すなわち、本発明の検出方法は、生体試料における分析物であるmRNA、タンパク質、又はゲノムDNAをインビトロ及びインビボで検出するために使用され得る。例えば、分析物であるmRNAを検出するためのインビトロ技法は、ノーザンハイブリダイゼーション及びインサイツハイブリダイゼーションを含む。分析物であるタンパク質を検出するためのインビトロ技法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、及び免疫蛍光を含む。分析物であるゲノムDNAを検出するためのインビトロ技法は、サザンハイブリダイゼーションを含む。イムノアッセイを実施するための手順は、例えば、“ELISA:Theory and Practice:Methods in Molecular Biology”,Vol.42,J.R.Crowther(Ed.)Human Press,Totowa,NJ,1995、“Immunoassay”,E.Diamandis and T.Christopoulus,Academic Press,Inc.,San Diego,CA,1996、及び“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays”,P.Tijssen,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,1985に記載されている。更に、分析物であるタンパク質を検出するためのインビボ技法は、標識された抗分析物タンパク質抗体を対象内に導入することを含む。例えば、抗体は、放射性マーカーで標識され得、対象における放射性マーカーの存在及び位置は、標準的な撮像技法によって検出され得る。
【0187】
疾患及び障害
いくつかの実施形態では、医学的疾患又は障害は、免疫応答を誘発する免疫細胞集団の移入によって治療される。本開示のある実施形態では、がん又は感染は、免疫応答を誘発する免疫細胞集団の移入によって治療される。個体におけるがんを治療する又はその進行を遅延させるための方法であって、個体に、有効量の抗原特異性細胞療法を投与することを含む、方法が、本明細書で提供される。本方法は、免疫障害、固形がん、血液がん、及びウイルス感染の治療に適用され得る。
【0188】
本治療方法が有用である腫瘍は、任意の悪性細胞型、例えば、固形腫瘍又は血液腫瘍において見出されるものを含む。例示的な固形腫瘍は、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、及び乳房からなる群から選択される臓器の腫瘍が挙げられ得るが、これらに限定されない。例示的な血液腫瘍は、骨髄の腫瘍、T又はB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、及び骨髄腫などが挙げられる。本明細書で提供される方法を使用して治療され得るがんの更なる例としては、(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、及び肺扁平上皮がんを含む)肺がん、腹膜のがん、(消化器がん及び消化管間質がんを含む)胃(gastric)又は胃(stomach)がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓(kidney)又は腎臓(renal)がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頸部がん、及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
がんは、具体的には、以下の組織学的タイプのもの、新生物、悪性;がん腫;がん腫、未分化;巨細胞及び紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;悪性石灰化上皮腫(pilomatrix carcinoma);移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;複合肝細胞がん及び胆管がん;索状がん;腺様嚢胞がん;腺腫様ポリープの腺がん;腺がん、家族性大腸ポリポーシス;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺がん;乳頭状腺がん;色素嫌性がん;好酸性がん;好酸性腺がん;塩基好性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞性腺がん;乳頭状及び濾胞性腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;エンドメトロイドがん腫;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘膜表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性導管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生随伴腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞腫;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;悪性黒子型黒色腫;肢端黒子型黒色腫;結節型黒色腫;巨大色素性母斑中の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性がん腫;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル芽細胞歯牙肉腫;エナメル芽細胞腫、悪性;エナメル芽細胞線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ヘアリー細胞白血病;慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);骨髄異形成症候群(MDS);慢性骨髄芽球性白血病;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL);末梢性T細胞リンパ腫(PTCL);又は未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、がんは、リンパ腫である。いくつかの実施形態では、がんは、AMLである。
【0190】
本開示のある実施形態では、免疫細胞(例えば、NK細胞)は、それを必要としている個体、例えば、がん又は感染を有する個体に送達される。次いで、細胞は、個体の免疫系を増強して、それぞれのがん細胞又は病原性細胞を攻撃するか又は直接攻撃する。いくつかの場合では、個体に、免疫細胞の1回以上の用量が提供される。個体に、免疫細胞の2回以上の用量が提供される場合、投与間の期間は、個体における増殖のための時間を可能にするのに十分であるべきであり、具体的な実施形態では、用量間の期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12週間以上である。
【0191】
本開示のある実施形態は、免疫媒介性障害を治療又は予防するための方法を提供する。一実施形態では、対象は、自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の非限定的な例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、副腎の自己免疫性疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスパテ皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、チャーグストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集疾患、クローン病、円板状ループス、本態性混合性クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、若年性関節炎、扁平苔癬、ループスエルテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、1型又は免疫媒介性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群(例えば、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、又はメブラナス腎症)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、血管炎(例えば、結節性多発性動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、又は疱疹状皮膚炎血管炎)、白斑、並びにウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。したがって、本明細書に開示される方法を使用して治療され得る自己免疫疾患のいくつかの例としては、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、血管炎、又は乾癬が挙げられるが、これらに限定されない。対象はまた、アレルギー障害、例えば、喘息を有し得る。
【0192】
更に別の実施形態では、対象は、移植臓器又は幹細胞のレシピエントであり、免疫細胞は、拒絶を予防及び/又は治療するために使用される。特定の実施形態では、対象は、移植片対宿主病を有するか、又はそれを発症するリスクがある。GVHDは、血縁又は非血縁ドナーのいずれかからの幹細胞を使用又は含有するいずれかの移植片の可能性合併症である。急性及び慢性の2つの種類のGVHDがある。急性GVHDは、移植後の最初の3か月以内に出現する。急性GVHDの徴候は、手足上の赤色の皮疹を含み、皮疹は、皮膚の剥離又は水疱形成とともに広がり、より重度になり得る。急性GVHDはまた、胃及び腸に影響し得、この場合、腹痛、嘔気、及び下痢が存在する。皮膚及び眼の黄変(黄疸)は、急性GVHDが肝臓に影響していることを示す。慢性GVHDは、その重症度に基づいてランク付けされ、段階/グレード1は、軽度であり、段階/グレード4は、重度である。慢性GVHDは、移植後の3か月以降に発症する。慢性GVHDの症状は、急性GVHDのものと同様であるが、加えて、慢性GVHDはまた、目における粘液腺、口における唾液腺、並びに胃の内壁及び腸を潤滑する腺に影響し得る。本明細書に開示される免疫細胞の集団のうちのいずれも利使用され得る。移植臓器の例としては、実質臓器移植片、例えば、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓、肺、及び/又は心臓、あるいは細胞移植片、例えば、島、肝細胞、筋芽細胞、骨髄、又は造血若しくは他の幹細胞が挙げられる。移植片は、複合移植片、例えば、顔の組織であることができる。免疫細胞は、移植前に、移植と同時に、又は移植後に投与され得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、移植前に、例えば、移植の少なくとも1時間、少なくとも12時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、又は少なくとも1か月前に投与される。具体的な非限定的な一例では、治療有効量の免疫細胞の投与は、移植の3~5日前に発生する。
【0193】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫細胞療法前に、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法を投与され得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は、任意の好適な経路によって投与され得る任意の好適な療法であり得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法は、例えば、シクロホスファミド及びフルダラビンの投与を含むことができる。シクロホスファミド及びフルダラビンを投与する例示的な経路は、静脈内である。同様に、シクロホスファミド及びフルダラビンの任意の好適な用量が投与され得る。特定の態様では、約60mg/kgのシクロホスファミドが、2日間投与され、その後、約25mg/mのフルダラビンが、5日間投与される。
【0194】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫細胞療法前に、骨髄非破壊的リンパ球枯渇免疫療法を投与され得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇免疫療法は、任意の好適な経路によって投与され得る任意の好適な療法であり得る。骨髄非破壊的リンパ球枯渇免疫療法は、例えば、抗CD52剤又は抗CD20剤の投与を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇免疫療法は、抗CD52抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD52抗体は、アレムツズマブである。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇免疫療法は、抗CD20抗体である。例示的な抗CD20抗体は、リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、イブリツモマブ、又はヨウ素i131トシツモマブを含むが、これらに限定されない。抗CD52剤又は抗CD20剤を投与する例示的な経路は、静脈内である。同様に、抗CD52剤又は抗剤の任意の好適な用量が投与され得る。
【0195】
ある実施形態では、免疫細胞の増殖及び活性化を促進する増殖因子が、対象に、免疫細胞と同時又は免疫細胞後のいずれかで投与される。免疫細胞増殖因子は、免疫細胞の増殖及び活性化を促進する任意の好適な増殖因子であることができる。好適な免疫細胞増殖因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、及びIL-12が挙げられ、これらは、単独で、又は様々な組み合わせで、例えば、IL-2及びIL-7、IL-2及びIL-15、IL-7及びIL-15、IL-2、IL-7、及びIL-15、IL-12及びIL-7、IL-12及びIL-15、若しくはIL-12及びIL2で使用され得る。
【0196】
治療有効量の免疫細胞は、いくつかの経路によって投与され得、これらの経路は、非経口投与、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、又は関節内注射又は注入を含む。
【0197】
養子細胞療法における使用のための免疫細胞の治療有効量は、治療されている対象において所望の効果を達成する量である。例えば、これは、自己免疫若しくは同種免疫疾患の進行を阻害する若しくはその後退を引き起こすために必要である、免疫細胞の量、又は自己免疫疾患によって引き起こされる症状、例えば、疼痛及び炎症を和らげることが可能である、免疫細胞の量であることができる。これは、炎症に関連する症状、例えば、疼痛、浮腫、及び体温上昇を和らげるために必要である量であることができる。これはまた、移植臓器の拒絶を減弱又は予防するために必要である量であることができる。
【0198】
免疫細胞集団は、疾患と一貫する治療計画において投与され得、例えば、疾患状況を寛解するために、1週間~数週間にわたって単回若しくは数回の用量で投与されてもよく、又は疾患の進行を阻害し、疾患の再発を予防するために、長期間にわたって定期的な用量で投与されてもよい。製剤内で用いられる正確な用量はまた、投与経路、及び疾患又は障害の重篤度に依存する。免疫細胞の治療有効量は、治療されている対象、苦痛の重症度及びタイプ、並びに投与様式に依存する。いくつかの実施形態では、ヒト対象の治療において使用され得る用量は、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、少なくとも3.8×10、又は少なくとも3.8×1010個の免疫細胞/mの範囲である。ある実施形態では、ヒト対象の治療において使用される用量は、約3.8×10~約3.8×1010個の免疫細胞/mの範囲である。追加の実施形態では、免疫細胞の治療有効量は、体重1kg当たり約5×10個の細胞~体重1kg当たり約7.5×10個の細胞、例えば、体重1kg当たり約2×10個の細胞~約5×10個の細胞、又は体重1kg当たり約5×10個の細胞~約2×10個の細胞、又は体重1kg当たり約5×10個の細胞~体重1kg当たり約1×10個の細胞で変動することができる。いくつかの実施形態では、免疫細胞の治療有効量は、体重1kg当たり約1×10個の細胞~体重1kg当たり約10×10個の細胞の範囲である。免疫細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、性別、及び生理学的状態に基づいて、当業者によって容易に決定される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから得られる用量反応曲線から外挿され得る。
【0199】
免疫細胞は、免疫媒介性障害の治療のための1つ以上の他の治療剤との組み合わせで投与され得る。併用療法は、1つ以上の抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、及び抗真菌剤)、抗腫瘍剤(例えば、フルオロウラシル、メトトレキサート、パクリタキセル、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はビンクリスチン)、免疫枯渇剤(例えば、フルダラビン、エトポシド、ドキソルビシン、又はビンクリスチン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、又はグルコルチコイド、例えば、デキサメタゾン若しくはプレドニゾン)、抗炎症剤(例えば、グルコルチコイド、例えば、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン若しくはプレドニゾン、又は非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アセチルアリチル酸、イブプロフェン、若しくはナプロキセンナトリウム)、サイトカインアンタゴニスト(例えば、抗TNF及び抗IL-6)、サイトカイン(例えば、インターロイキン10又は形質転換増殖因子β)、ホルモン(例えば、エストロゲン)、又はワクチンを含むことができるが、これらに限定されない。加えて、免疫抑制又は免疫寛容誘発剤が、投与され得、これは、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン及びタクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)、ミコフェノール酸モフェチル、抗体(例えば、CD3、CD4、CD40、CD154、CD45、IVIG、又はB細胞を認識する抗体)、化学療法剤(例えば、メトトレキサート、トレオスルファン、ブスルファン)、照射、又はケモカイン、インターロイキン、若しくはそれらの阻害剤(例えば、BAFF、IL-2、抗IL-2R、IL-4、JAKキナーゼ阻害剤)を含むが、これらに限定されない。そのような追加の医薬品は、所望の効果に依存して、免疫細胞の投与前に、その投与中に、又はその投与後に投与され得る。細胞及び薬剤のこの投与は、同じ経路によるものであってもよく又は異なる経路によるものであってもよく、同じ部位又は異なる部位のいずれかでのものであることができる。
【0200】
併用療法
いくつかの実施形態では、本実施形態の組成物及び方法は、免疫細胞集団を、少なくとも1つの追加の療法との組み合わせで含む。追加の療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又はそれらの組み合わせであり得る。追加の療法は、アジュバント又はネオアジュバント療法の形態であり得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤又は抗転移剤の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/又は重症度を減らすことが意図された薬剤、例えば、抗嘔気剤など)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法及び手術の組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の療法は、ガンマ線照射である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学予防剤である。追加の療法は、当該技術分野で既知の化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
【0202】
免疫細胞療法は、免疫チェックポイント療法などの追加のがん療法前に、その療法中に、その療法後に、又は様々な組み合わせで投与され得る。投与は、同時~数分~数日~数週間の範囲の間隔のものであり得る。免疫細胞療法が、患者に、追加の治療剤とは別個に提供される実施形態では、概して、2つの化合物が、患者に、有利に組み合わされた効果を依然としてもたらすことができるように、著しい期間が、各送達の時間間で経過しないことが確実にされる。そのような事例では、患者に、抗体療法及び抗がん療法が、互いに約12~24又は72時間以内、特に、互いに約6~12時間以内に提供され得ることが企図される。いくつかの状況では、治療のための期間を著しく延長することが望ましいことがあり、この場合、数日(2、3、4、5、6、又は7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、又は8週間)が、それぞれの投与間で経過する。
【0203】
様々な組み合わせが用いられ得る。以下の例について、免疫細胞療法が、「A」であり、抗がん療法が、「B」である。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0204】
患者への本実施形態の任意の化合物又は療法の投与は、薬剤のいずれかの毒性がある場合、それを考慮して、そのような化合物の投与のための一般的なプロトコルに従う。したがって、いくつかの実施形態では、併用療法に起因し得る毒性を監視するステップがある。
【0205】
化学療法
多種多様な化学療法剤が、本実施形態により使用され得る。「化学療法」という用語は、がんを治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」とは、がんの治療において投与される化合物又は組成物を意味するために使用される。これらの薬剤又は薬物は、細胞内のそれらの活性モード、例えば、それらが細胞周期に影響するかによって、かつどの段階でそれらがそれに影響するかによって分類される。代替として、薬剤は、DNAに直接架橋結合するその能力、DNA内にインターカレートするその能力、又は核酸合成に影響することによって染色体及び有糸分裂異常を誘導するその能力に基づいて特徴付けられ得る。
【0206】
化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びシクロスファミド;アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボクオン、メトレドーパ、及びウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンエチオホスホラミド、及びトリメチロロメラミンを含む、エチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体であるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、チョロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロスウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマll及びカリケアマイシンオメガll);ジネミシンAを含むジネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラルニシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラルニイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾトシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;抗代謝剤、例えば、メソトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、デシタビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎抗体、例えば、ミトタン及びトリロスタン;葉酸補液、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルミチン;エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシノイド、例えば、マイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(特に、T-2毒素、ベルカリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;novantrone;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;xeloda;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメルヒルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質タンフェラーゼ阻害剤、トランス白金、並びに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、アザシチジンは、75mg/mで皮下投与される。
【0207】
放射線療法
DNA損傷を引き起こし広く使用されている他の因子は、腫瘍細胞への、γ線、X線として一般的に既知であるもの、及び/又は放射性同位体の指向性送達を含む。また、DNA損傷因子の他の形態、例えば、マイクロ波、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号)、及びUV照射が企図される。これらの因子の全てが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製及び修復、並びに染色体のアセンブリ及び維持への広範囲の損傷に影響する可能性が最もある。X線についての線量範囲は、長期間(3~4週間)にわたる50~200レントゲンの1日線量から2000~6000レントゲンの単一線量までの範囲である。放射性同位体についての線量範囲は、大きく変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度及びタイプ、並びに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0208】
免疫療法
追加の免疫療法が、実施形態の方法との組み合わせで使用されてもよく、又はそれとともに使用されてもよいことが、当業者には理解されよう。がん治療の文脈において、免疫療法は、概して、がん細胞を標的とし破壊するために、免疫エフェクター細胞及び分子の使用に依存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、そのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体は、単独で、療法のエフェクターとして機能してもよく、又は実際に細胞死滅に影響するために他の細胞を動員してもよい。抗体はまた、薬物又は毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートし得、標的剤として機能し得る。代替として、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接又は間接的に相互作用する表面分子を保有するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞及びNK細胞を含む。
【0209】
抗体-薬物コンジュゲートは、がん治療薬の開発への画期的な手法として出現している。がんは、世界において主要な死因のうちの1つである。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞死滅薬物に共有結合的に連結されたモノクローナル抗体(MAb)を含む。この手法は、MAbの抗原標的に対するそれらの高い特異性を、非常に強力な細胞傷害性薬物と組み合わせて、「武装」MAbをもたらし、これは、ペイロード(薬物)を、高いレベルの抗原を有する腫瘍細胞に送達する。薬物の標的送達はまた、正常な組織におけるその曝露を最小にし、減少した毒性及び改善された治療指数をもたらす。FDAによる、2011年のADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)及び2013年のKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン又はT-DM1)の2つのADC薬物の承認は、この手法を検証した。現在、がん治療のための臨床試験の様々な段階における30個超のADC薬物候補がある(Leal et al.,2014)。抗体工学及びリンカーペイロード最適化がますます成熟するにつれて、新しいADCの発見及び開発は、この手法に好適である新しい標的の特定及び検証、並びに標的MAbの生成にますます依存している。ADC標的についての2つの基準は、腫瘍細胞における上方調節された/高レベルの発現、及び堅牢なインターナリゼーションである。
【0210】
免疫療法の一態様では、腫瘍細胞は、標的に適するあるマーカー、すなわち、他の細胞の大部分上に存在しないあるマーカーを保有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのうちのいずれかが、本実施形態の文脈における標的に好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーは、CD20、がん胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、及びpl55を含む。免疫療法の代替態様は、抗がん効果を免疫刺激効果と組み合わせることである。また、免疫刺激分子が存在し、これは、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFN;ケモカイン、例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8;及び増殖因子、例えば、FLT3リガンドを含む。
【0211】
現在調査されている又は使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、Mycobacterium bovis、Plasmodium falciparum、ジニトロクロロベンゼン、及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び同第5,739,169号、Hui and Hashimoto,1998、Christodoulides et al,1998);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、及びγ、IL-1、GM-CSF、及びTNF(Bukowski et al,1998、Davidson et al,1998、Hellstrand et al,1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、及びp53(Qin et al,1998、Austin-Ward and Villaseca,1998、米国特許第5,830,880号及び同第5,846,945号);並びにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、及び抗pl85(Hollander,2012、Hanibuchi et al,1998、米国特許第5,824,311号)である。1つ以上の抗がん療法が、本明細書に記載される抗体療法とともに用いられ得ることが企図される。
【0212】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、又はシグナルを下げるかのいずれかである。免疫チェックポイント遮断によって標的とされ得る阻害免疫チェックポイントは、アデノシンA2A受容体(A2AR)、(CD276としても既知の)B7-H3、B及びTリンパ球アテニュエータ(BTLA)、(CTLA-4、CD152としても既知の)細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、並びにT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)を含む。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸及び/又はCTLA-4を標的とする。
【0213】
免疫チェックポイント阻害剤は、薬物、例えば、低分子、組換え形態のリガンド若しくは受容体であってもよく、又は特に、抗体、例えば、ヒト抗体(例えば、国際特許公開第2015/016718、Pardoll,Nat Rev Cancer,12(4):252-64,2012;両方は、参照により本明細書に組み込まれる)であってもよい。免疫チェックポイントタンパク質又はその類似体の既知の阻害剤が使用され得、特に、キメラ化、ヒト化、又はヒト形態の抗体が使用され得る。当業者には既知であるように、代替及び/又は均等な名称が、本開示に記載されるある抗体のために使用され得る。そのような代替及び/又は均等な名称は、本開示の文脈において互換的である。例えば、ランブロリズマブはまた、代替及び均等な名称であるMK-3475及びペンブロリズマブで既知である。
【0214】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のリガンド結合パートナーへのその結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1及び/又はPDL2である。別の実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1の結合パートナーへのその結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PDL1結合パートナーは、PD-1及び/又はB7-1である。別の実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2の結合パートナーへのその結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PDL2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8735553号、同第8354509号、及び同第8008449号に記載されており、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される方法における使用のための他のPD-1軸アンタゴニストは、当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許出願第2014/0294898号、同第2014/022021号、及び同第2011/0008369号に記載されており、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びCT-011からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合した、PDL1又はPDL2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても既知のニボルマブは、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck 3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、及びSCH-900475としても既知のペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。hBAT又はhBAT-1としても既知のCT-011は、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても既知のAMP-224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されているPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0216】
本明細書で提供される方法において標的とされ得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても既知の細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbank受託番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見出され、抗原提示細胞の表面上のCD80又はCD86に結合したときに「オフスイッチとして作用する。CTLA4は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、これは、ヘルパーT細胞の表面上で発現され、阻害シグナルをT細胞に伝達する。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28と同様であり、両方の分子は、抗原提示細胞上の、それぞれB7-1及びB7-2とも称されるCD80及びCD86に結合する。CTLA4は、阻害シグナルをT細胞に伝達し、CD28は、刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA4はまた、調節性T細胞において見出され、それらの機能に重要であり得る。T細胞受容体及びCD28を介するT細胞活性化は、B7分子についての阻害受容体であるCTLA-4の発現の増加をもたらす。
【0217】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドである。
【0218】
本方法における使用に好適な抗ヒトCTLA-4抗体(又はそれに由来するVH及び/又はVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替として、当該技術分野で認識されている抗CTLA-4抗体が使用され得る。例えば、US8,119,129、WO01/14424、WO98/42752、WO00/37504(トレメリムマブ、以前には、チシリムマブとしても既知のCP675,206)、米国特許第6,207,156号、Hurwitz et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95(17):10067-10071、Camacho et al.(2004)/Clin Oncology 22(145):Abstract No.2505(antibody CP-675206)、及びMokyr et al.(1998)Cancer Res 58:5301-5304に開示されている抗CTLA-4抗体が、本明細書に開示される方法において使用され得る。上記の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。当該技術分野で認識されているこれらの抗体のうちのいずれかと、CTLA-4への結合を競合する抗体が使用され得る。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願第2001/014424号、同第2000/037504号、及び米国特許第8,017,114号に記載されており、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
例示的な抗CTLA-4抗体は、(10D1、MDX-010、MDX-101、及びYervoy(登録商標)としても既知の)イピリムマブ、又はその抗原結合断片及びバリアントである(例えば、WO01/14424を参照されたい)。他の実施形態では、抗体は、イピリムマブの重鎖及び軽鎖CDR又はVRを含む。したがって、一実施形態では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインと、イピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインと、を含む。別の実施形態では、抗体は、CTLA-4上の、上記の抗体と同じエピトープとの結合を競合し、かつ/又はそれに結合する。別の実施形態では、抗体は、上記の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、又は99%の可変領域同一性)を有する。
【0220】
CTLA-4を調節するための他の分子は、CTLA-4リガンド及び受容体、例えば、全てが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5844905号、同第5885796号、並びに国際特許出願第1995/001994号及び同第1998/042752号に記載されているものを含み、イムノアドヘシン、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8329867号に記載されているものを含む。
【0221】
腎臓がん又は腎細胞がんの治療における使用のための免疫療法の例としては、Afinitor(エベロリムス)、Afinitor Disperz(エベロリムス)、アルデスロイキン、Avastin(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、Bavencio(アベルマブ)、ベバシズマブ、Cabometyx(カボザンチニブ-S-マレート)、カボザンチニブ-S-マレート、エベロリムス、IL-2(アルデスロイキン)、Inlyta(アキシチニブ)、インターロイキン2(アルデスロイキン)、イピリムマブ、Keytruda(ペンブロリズマブ)、レンバチニブメシレート、Lenvima(レンバチニブメシレート)、Mvasi(ベバシズマブ)、Nexavar(ソラフェニブトシレート)、ニボルマブ、Opdivo(ニボルマブ)、パゾパニブ、ヒドロクロリド、ペンブロリズマブ、Proleukin(アルデスロイキン)、ソラフェニブトシレート、スニチニブマレート、Sutent(スニチニブマレート)、テムシロリムス、Torisel(テムシロリムス)、Votrient(パゾパニブヒドロクロリド)、Yervoy(イピリムマブ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
急性骨髄性白血病(AML)の治療における使用のための免疫療法の例としては、アザシチジン、三酸化ヒ素、セルビジン(ダウノルビシンヒドロクロリド)、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシンヒドロクロリド、ダウノルビシンヒドロクロリド及びシタラビンリポソーム、Daurismo(グラスデギブマレエート)、デキサメタゾン、ドキソルビシンヒドロクロリド、エナシデニブメシレート、ゲムツズマブオゾガマイシン、ギルテリチニブフマレート、グラスデギブマレエート、Idamycin PFS(イダルビシンヒドロクロリド)、イダルビシンヒドロクロリド、Idhifa(エナシデニブメシレート)、イボシデニブ、ミドスタウリン、ミトキサントロンヒドロクロリド、Mylotarg(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Rubidomycin(ダウノルビシンヒドロクロリド)、Rydapt(ミドスタウリン)、Tabloid(チオグアニン)、チオグアニン、Tibsovo(イボシデニブ)、Trisenox(三酸化ヒ素)、Venclexta(ベネトクラクス)、ベネトクラクス、ビンクリスチンサルフェート、Vyxeos(ダウノルビシンヒドロクロリド及びシタラビンリポソーム)、Xospata(グラスデギブマレエート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
手術
がんを有する人の約60%は、あるタイプの手術を受け、手術は、予防手術、診断的又は病期診断手術、治癒的手術、及び緩和手術を含む。治癒的手術は、がん組織の全て又は一部が物理的に除去、切除、及び/又は破壊される切除術を含み、他の療法、例えば、本実施形態の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、及び/又は代替療法とともに使用され得る。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除術に加えて、手術による治療は、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡下手術(モース手術)を含む。
【0224】
がん細胞、組織、又は腫瘍の一部又は全ての切除後に、空洞が、体内に形成され得る。治療は、追加の抗がん療法でのその領域の灌流、直接注射、又は局所適用によって達成され得る。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、若しくは7日ごとに繰り返されてもよく、又は1、2、3、4、及び5週間ごとに繰り返されてもよく、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12か月ごとに繰り返されてもよい。これらの治療はまた、様々な投与量のものであり得る。
【0225】
他の薬剤
他の薬剤が、治療の治療効力を改善するために、本実施形態のある態様との組み合わせで使用され得ることが企図される。これらの追加の薬剤は、細胞表面受容体及びGAP接合部の上方調節に影響する薬剤、細胞増殖抑制及び分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導因子への過剰増殖細胞の感受性を増加させる薬剤、又は他の生物学的薬剤を含む。GAP接合部の数を上げることによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖細胞集団への抗過剰増殖効果を増加させる。他の実施形態では、細胞増殖抑制又は分化剤は、治療の抗過剰増殖効力を改善するために、本実施形態のある態様との組み合わせで使用され得る。細胞接着の阻害剤が、本実施形態の効力を改善するために企図される。細胞接着阻害剤の例は、局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。更に、アポトーシスへの過剰増殖細胞の感受性を増加させる他の薬剤、例えば、抗体c225が、治療効力を改善するために、本実施形態のある態様との組み合わせで使用され得ることが企図される。
【0226】
薬学的組成物
(本明細書で「活性化合物」とも称される)本発明の抗体、並びにそれらの誘導体、断片、類似体、及び相同体は、投与に好適な薬学的組成物内に組み込まれ得る。そのような組成物は、典型的には、抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合するあらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張化剤、及び吸収遅延剤などを含むことが意図されている。好適な担体は、当該技術分野での標準的な参照テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。そのような担体又は希釈剤の好ましい例としては、水、食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、及び5%のヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。また、リポソーム及び非水系ビヒクル、例えば、固定油が使用され得る。薬学的に活性な物質のための、そのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。あらゆる従来の媒体又は薬剤が、活性化合物と不適合でない限り、組成物内でのそれらの使用が企図される。また、補足の活性化合物が、組成物内に組み込まれ得る。
【0227】
また、本明細書において、免疫細胞(例えば、NK細胞)と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物及び製剤が提供される。
【0228】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約1×10個のNK細胞~約1×10個のNK細胞の範囲の用量を含む。いくつかの実施形態では、用量は、約1×10、1×10、1×10、1×10、又は1×10個のNK細胞である。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、約5×10個のNK細胞~約10×1012個のNK細胞の範囲の用量を含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、凍結保存されている。
【0230】
本明細書に記載される薬学的組成物及び製剤は、所望の純度を有する活性成分(例えば、抗体又はポリペプチド)を、1つ以上の任意選択の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 22nd edition,2012)と混合することによって、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる投与量及び濃度で、レシピエントに無毒であり、緩衝液、例えば、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル、若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10個の残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシン;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);並びに/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これらに限定されない。本明細書での例示的な薬学的に許容される担体は、インスティスティシャル薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)を更に含む。rHuPH20を含む、ある例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1つ以上の追加のグリコサミノグリカナーゼ、例えば、コンドロイチナーゼと組み合わせられる。
【0231】
本発明の薬学的組成物は、その意図された投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は、以下の構成要素、滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、アセテート、シトレート、又はホスフェート;及び浸透圧の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースを含むことができる。pHは、酸又は塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムで調整され得る。非経口調製物は、ガラス又はプラスチックから作製された、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、又は複数回用量バイアル内に封入され得る。
【0232】
注射可能用途に好適な薬学的組成物は、(水溶性の場合)滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与については、好適な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合で、組成物は、滅菌でなければならず、容易なシリンジアビリティが存在する程度に流体であるべきである。組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならず、微生物、例えば、細菌及び真菌の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合、必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどによって達成され得る。多くの場合では、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを、組成物内に含めることが好ましい。注射組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物内に含めることによってもたらされ得る。
【0233】
滅菌注射溶液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、上記の成分のうちの1つ又はそれらの組み合わせを有する適切な溶媒中に組み込み、続いて、濾過滅菌することによって調製され得る。概して、分散液は、活性化合物を、基礎分散媒及び上記のものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、活性成分と、任意の追加の所望の成分との粉末が、予め滅菌濾過されたその溶液から得られる。
【0234】
経口組成物は、概して、不活性希釈剤又は食用担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル内に封入されてもよく、又は錠剤に圧縮されてもよい。治療的経口投与の目的で、活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、マウスウォッシュとしての使用のための流体担体を使用して調製され得、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、スウィッシュされ、喀痰又は嚥下される。薬学的に適合する結合剤及び/又はアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル剤、及びトローチ剤などは、以下の成分、結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガントガム、又はゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン若しくはラクトース;崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、若しくはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム若しくはSterotes;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロース若しくはサッカリン;又は香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、若しくはオレンジ香味剤のうちのいずれか、又は同様の性質の化合物を含有することができる。
【0235】
吸入による投与のために、化合物は、好適な推進剤、例えば、二酸化炭素などのガスを収容する加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0236】
全身性投与はまた、経粘膜又は経皮手段によるものであることができる。経粘膜又は経皮投与のために、浸透するバリアに適切な浸透剤が、製剤内で使用される。そのような浸透剤は、概して、当該技術分野で既知であり、例えば、経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐剤の使用を介して達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、概して、当該技術分野で既知であるように、軟膏剤、膏薬、ゲル剤、又はクリーム剤に製剤化される。
【0237】
化合物はまた、直腸送達のために、(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤ベースでの)坐剤又は保持浣腸剤の形態で調製され得る。
【0238】
一実施形態では、活性化合物は、化合物を体からの急速な排出から保護する担体で調製され、例えば、制御放出製剤で調製され、制御放出製剤は、埋込剤及びマイクロカプセル化送達システムを含む。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。そのような製剤を調製するための方法は、当業者には明らかである。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販されているものから得られ得る。また、(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で、感染細胞を標的とするようにされたリポソームを含む)リポソーム懸濁液が、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、当業者に既知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように調製され得る。
【0239】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、経口又は非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される場合、単位剤形とは、単位投与量として治療されている対象に好適である物理的に別々の単位であって、各単位が、所定の量の活性化合物を含有し、その所定の量が、所望の治療効果がもたらされるように、必要とされる薬学的担体に関連して計算された量である、単位を指す。本発明の単位剤形についての仕様は、活性化合物の固有の特徴、及び達成される特定の治療効果、及びこのような活性化合物を個体の治療のために配合する技術において内在する制限によって決められ、それらに直接依存する。
【0240】
薬学的組成物は、投与についての使用説明書と一緒に、容器、パック、又はディスペンサー内に収容され得る。
【0241】
製造物品又はキット
また、二重特異性抗体と、免疫細胞と、を含む、製造物品又はキットが、本明細書で提供される。製造物品又はキットは、添付文書を更に含むことができ、添付文書は、免疫細胞を使用して、個体におけるがんを治療する若しくはその進行を遅延させること、又はがんを有する個体の免疫機能を増強することについての使用説明書を含む。本明細書に記載される抗原特異性免疫細胞のうちのいずれかが、製造物品又はキット内に含まれ得る。好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、バッグ、及びシリンジを含む。容器は、様々な材料、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリ塩化ビニル又はポリオレフィン)、又は金属合金(例えば、ステンレス鋼又はハステロイ)から形成され得る。いくつかの実施形態では、容器は、製剤を保持し、容器上の又は容器に伴うラベルは、使用法を示し得る。製造物品又はキットは、市販及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得、これらの材料は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、及び使用のための説明書を有する添付文書を含む。いくつかの実施形態では、製造物品は、別の薬剤のうちの1つ以上(例えば、化学療法剤及び抗新生物剤)を更に含む。この1つ以上の薬剤のための好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、バッグ、及びシリンジを含む。
【実施例
【0242】
実施例1:ヒトNKp46に結合するマウスモノクローナル抗体の生成
NKp46発現細胞へのマウス抗NKp46モノクローナル抗体の結合
NKp46に対する抗体を産生するために、NKp46欠損マウス(Ncr1gfp/gfp(Gazit et al.,2006))に、ヒトIgGに融合したNKp46の細胞外部分からなる融合タンパク質(NKp46-Ig)を注射した。新たに生成された抗NKp46 mAbを、NKp46に結合する能力について評価した。クローン02、09、及び12についてのデータを示す。結合を、NKp46を発現するマウス胸腺腫BWトランスフェクタント細胞(BW NKp46)上で調査した。(9E2と示される)市販の抗NKp46 mAb、及び抗NKp46 mAb(461-G1)(Amon et al.,2004、Mandelboim et al.,2001)を、対照として使用した。フローサイトメトリー実験に基づいて、試験された全ての抗体は、BW NKp46と特異的に相互作用したが、親BW細胞と相互作用しなかった(図1A)。この実験を、IL-2活性化一次バルクヒトNK細胞(活性化NK細胞)で繰り返して、抗体が、ヒトNK細胞によって自然に発現されるNKp46を認識することを実証した(図1B)。実験全体にわたって使用された活性化NK細胞を、PBMCから単離した。精製後に、NK細胞は、約97%純粋であり、NK細胞を、CD56CD3表面マーカーについて検証した。全ての抗体(9E2、461-G1、02、09、及び12)は、活性化NK細胞を陽性染色した。同様の結果を、追加のドナーに由来するPBMCで得た。
【0243】
マウス抗NKp46 mAbを使用する、内因性NKp46リガンド結合の阻害
抗NKp46 mAbが、NKp46とそのリガンドとの相互作用を遮断するかを決定するために、NKp46についての未知のリガンドを発現する、BJAB、MCF7、及びC1R腫瘍細胞を使用した(図2)。NKp46-Igを、単独で、又は抗NKp46 mAb及び対照抗体とともに、氷上でインキュベートした。その後、処理されたNKp46-Ig融合タンパク質を使用して、腫瘍細胞をFACS染色した。抗NKp46 mAbのうちのいずれも、細胞へのNKp46-Igの結合を遮断することができなかった(図2)。
【0244】
マウス抗NKp46抗体を使用する、NK細胞上での表面発現NKp46の下方調節
抗NKp46 mAbが、NK細胞の表面上でのNKp46発現の低減をもたらすかを試験するために、ヒト抗NKp46 mAbを、活性化NK細胞とともに、8時間4℃又は37℃のいずれかでインキュベートした。次いで、細胞を、コンジュゲート二次抗マウス抗体でFACS染色した。試験されたmAbのうちの1つである02のみが、NKp46のレベルの低減をもたらした(図3)。インターナリゼーションアッセイを、9E2対照、461-G1対照、及び02のみで実行した。インターナリゼーションアッセイは、(Berhani et al.,2018)に記載されている。02での活性化NK細胞の処置は、NKp46の平均表面下方調節を、60%のみでもたらした(Berhani et al.,2018)。NKp46への02の結合は、リソソーム経路を介する受容体インターナリゼーション及び分解をもたらした(Berhani et al.,2018)。12及び09抗NKp46抗体は、NK細胞の表面からのNKp46の下方調節をもたらさなかった。
【0245】
まとめると、これらのアッセイは、新しい抗体である02が、NKp46表面発現を下方調節する固有の能力を有することを明らかにした。2つの他の抗体である09及び12を使用して、二重特異性又は三重特異性抗体を生成することができる。これらの抗体は、NKp46に特異的に結合し、NKp46の同族リガンドへのその結合に干渉しない。
【0246】
2つの一次活性化一次NK細胞上への、これらの抗体での用量応答FACS染色を使用して、知見を確認した(図4)。試験された抗体の濃度が減少するにつれて、FAC染色における蛍光シグナルも減少する。したがって、09及び12抗体は、強い用量応答を示す。これは、市販の抗NKp46対照抗体及び461-G1対照抗体を使用して判明された結果と同様である。
【0247】
これらの結果は、09及び12抗NKp46抗体が、二重特異性及び三重特異性抗体の生成に好適であり、これらが、NK細胞と腫瘍細胞との間を橋渡し、したがって、腫瘍細胞死滅をもたらすことを実証する。
【0248】
BIAcore結合親和性
2つのマウス抗NKp46(09及び12)の結合親和性を、BIAcoreアッセイを使用して決定した。図5及び表9は、09抗体の結合親和性を示す。図6及び表10は、12抗体の結合親和性を示す。
【表9】

【表10】
【0249】
実施例2:ヒトNKp46に結合するヒト化抗体の生成
マウス抗NKp46抗体(09抗体、12抗体)を使用して、IgG4フレームワークを有するヒト化抗NKp46抗体ヒト化09抗体、ヒト化12抗体)を生成した。図7A及び図7Bは、それぞれ、重鎖可変領域アミノ酸配列アラインメント及び軽鎖可変領域アミノ酸配列アラインメントを示す。得られたヒト化配列は、配列番号25(12の重鎖のヒト化)、配列番号29(09の重鎖のヒト化)、配列番号26(09の軽鎖のヒト化)、及び配列番号30(12の軽鎖のヒト化)に記載される。B341001、B341002、B341003、及びB341004の4つのヒト化クローンを調製した。
【0250】
>配列番号25(09の重鎖のヒト化)
EVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGYTFTEYSMHWVRQAPGKSLEWFGGISPNSGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRDFHSSFDYWGQGTTVTVSS
【0251】
>配列番号26(09の軽鎖のヒト化)
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISDYLHWFQQKPHESPRLLIKYASQSISGIPARFSGSGSGSDFTLTISSLEPEDFAVYYCQNGHSFPLTFGPGTKVDIK
【0252】
配列番号29(12の重鎖のヒト化):
EVQLQQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGYTFTEYSMHWVRQAPGKSLEWFGGISPNSGGTSYNQKFKGRATLTVDKSSSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRDFHSSFDYWGQGTTVTVSS
【0253】
>配列番号30(12の軽鎖のヒト化)
DIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISDYLHWFQQKPHESPRLLIKYASQSISGIPARFSGSGSGSDFTLTISSLEPEDFAVYYCQNGHSFPLTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIF
【0254】
NKp46へのヒト化抗体の結合を、HEK293細胞又はCHO細胞上に発現されたヒトNKp46抗原(Acro Biosystems)を使用して試験した。
【0255】
1.最適なシグナルを見出すために、3つの濃縮対3つの緩衝液のマトリックスにおいて試験された抗原コート。
【0256】
2.ELISAトレイをコーティングするために使用された最適な信号条件。標準的なブロッキングステップ及び洗浄ステップ。
【0257】
3.一次抗体を、10個の希釈での濃度範囲で適用した。(MMTヒト化可変及び変異したIgG4を有するMAb)
【0258】
4.結合を検出するために使用された二次抗体(HRP、TMB基質を有する抗抗Huカッパ)
【0259】
5.450nmで測定された吸光度
【0260】
ヒト化09抗NKp46抗体についての結合データを、表11に示す。正規化された結合曲線を使用して、推定K値は、27pMである。
【表11】
【0261】
ヒト化12抗NKp46抗体についての結合データを、表12に示す。正規化された結合曲線を使用して、推定K値は、25pMである。
【表12】
【0262】
BIACoreアッセイ
NKp46ドメインへのヒト化抗NKp46抗体(B341001、B341002、B341003、及びB341004)の結合親和性を、BIAcoreアッセイを使用して決定した。図8は、これらの研究において試験された、完全長NKp46ポリペプチド、D1ドメイン、及びD2ドメインを示す。
【0263】
このアッセイにおいて、本発明者らは、BW細胞、及びNKp46を発現するようにトランスフェクトされたBW細胞(BW NKp46)を、マウスNKp46抗体9及び12、市販のマウスNKp46抗体9E9、並びにヒト化NKp46抗体(B241001、B341002、B341003、及びB341004)とともにインキュベートした。抗体は、トランスフェクトされたBW NKp46細胞を染色したが、親BW細胞を染色せず、これは、ヒト化NKp46抗体及びマウス抗体が特異的であることを示した。したがって、抗体は、発現されたNKp46に特異的に結合する。
【0264】
50,000個の、親BW細胞、NKp46を発現するようにトランスフェクトされたBW細胞、又は一次IL-2活性化NK細胞(NK Fiji)を、NKp46の発現のために、1μg/ml、5μg/ml、及び10μg/mlの濃度の様々なヒト化抗NKp46抗体を使用して染色した。抗PAFR抗体を、陰性対照として使用した。図9は、これらの実験の結果を示す。
【0265】
50,000個の、親BW細胞、NKp46を発現するようにトランスフェクトされたBW細胞、又は一次IL-2活性化NK細胞(NK Fiji)を、NKp46の発現のために、1μg/ml、5μg/ml、及び10μg/mlの濃度の様々なヒト化抗NKp46抗体を使用して染色した。抗PAFR抗体を、陰性対照として使用した。図10は、これらの実験の結果を示す。
【0266】
表13に示されるように、ヒト化抗体は、NKp46ポリペプチドのD2ドメインに結合した。09及び12マウス抗NKp46モノクローナル抗体を、対照として含め、これらもまた、D2ドメインに結合した。09抗NKp46モノクローナル抗体はまた、D1ドメインへの結合を示す。
【表13】
【0267】
実施例3:ヒトNkp46に結合する、ヒト化抗体及びマウスモノクローナル抗体の機能的特徴付け
ヒト化抗体を、NK細胞死滅を活性化するそれらの能力について調査した。2500個のマウスマスト細胞腫細胞株P815を、0.05μgの抗体とともに、1時間氷上でインキュベートし、次いで、10,000個のNK細胞を添加し、細胞を、5時間37℃でインキュベートした。PAR-Rを、対照抗体として使用した。抗GPC3抗体を、対照として使用した。両方の対照抗体を使用して、NK細胞死滅は観察されなかった。9E2は、市販の抗NKp46抗体である。図11は、ヒト化抗体がNK細胞死滅を活性化したことを示す。
【0268】
次に、ヒト化抗体を、NK細胞によるHepG2細胞(GPC3を発現する細胞)の死滅に影響するそれらの能力について調査した。5000個のHepG2細胞を、1μg又は5μgのマウスNKp46抗体09及び12、市販のマウスNKp46抗体9E9、並びにヒト化NKp46抗体B241001、B341002、B341003、及びB341004とともに、1時間氷上でインキュベートした。次いで、100,000個のNK細胞を添加し、細胞を、5時間37℃でインキュベートした。図12は、抗NKp46抗体のいずれも、HepG2細胞の死滅に影響しないことを示す。
【0269】
実施例4-ヒト化CD38抗体の生成 ヒトCD38に結合する
CD38に結合する2つのヒト化抗体を生成した(CD38-IgG1 L234A、L235A、及び野生型CD38-IgG1)。ヒトCD38へのヒト化抗体の結合を試験した。ELISAプレートを、0.1mg/ウェルのヒトCD38タンパク質でコーティングした。第1の抗体(ヒト化抗aNKp46抗体又はヒト化抗CD38抗体)を、0.1mg/ウェルで添加した。二次抗体を、1:7500で希釈した。ストレプトアビジン-HRP及びTMB基質の添加後に、光学吸光度を、650nmで測定した。抗CD38抗体は、ヒトCD38に特異的に結合するが、ヒト化抗NKp46対照抗体は、それに特異的に結合しない。
【0270】
実施例5:ヒトNKp46及びヒトCD38に結合する二重特異性抗体分子の生成
ヒトNKp46及びCD38に結合する二重特異性抗体分子を構築した(NKE2)。図13Aは、二重特異性抗体分子の概略図を示し、二重特異性抗体分子において、mAb 1は、抗NKp46抗原認識領域を有し、mAb 2は、抗CD38抗原認識領域を有する。いくつかの場合では、これらの二重特異性抗体分子は、NK細胞エンゲージャー二重特異性抗体分子である(図13B)。NK細胞エンゲージャー二重特異性抗体は、NK細胞及び腫瘍細胞の両方に結合することができ、NK媒介性細胞傷害を媒介することができる。
【0271】
NKp46及びCD38を発現する細胞への二重特異性抗体の結合
3つの異なる細胞型を使用して、NKp46及びCD38のいずれも発現しないNKp46及びCD38-BW細胞、NKp46を発現するBW細胞、並びにCD38を発現するKMS11及びMM1.S MM細胞株への二重特異性抗体分子の結合を試験した。50,000個の細胞を、0.5μgの抗CD38及びNKp46二重特異性抗体とともに、又は抗CD38抗体とともに、又は抗体なし(対照)で、1時間氷上でインキュベートし、次いで、AF-647コンジュゲート抗ヒト抗体を、更に30分間添加した。この実験は、二重特異性抗体が、(BW NKp46アームを使用して)NKp46に結合し、抗CD38アームを使用してKMS11又はMM1.S MM細胞に結合することを示す。
【0272】
用量依存性結合が、MM1S及びKMS11多発性骨髄腫細胞へのNKE2 WT又はMut Fc(Fcサイレント)の結合で観察され、CD38ノックアウトMM.1S細胞株への結合は観察されなかった(図14)。同様の結合が、BW細胞へのNKE2 WT及びMut Fcの結合で観察された(図15A及び15B)。
【0273】
実施例6:ヒトNKp46及びヒトCD38に結合する二重特異性抗体分子の機能的特徴付け
NK細胞によるKMS11及びMMS.1細胞殺滅-放射性アッセイ
KMS11及びMMS.1細胞は、CD38を発現する。KMS11及びMMS.1 MM細胞が、NKp46及びCD38に結合する二重特異性抗体の存在下で、NK細胞によって死滅し得るかを決定するために、KMS11及びMMS.1 MM細胞を、35S-メチオニンで放射性標識し、96プレート内に、5000個の細胞/ウェルで蒔いた。一次活性化ヒトNK細胞を、ウェルに、異なる量で、異なるエフェクター対標的(E:T)比(1ウェル当たり100,000、50,000、25,000、及び12,500個の細胞、20:1、10:1、5:1、及び2.5:1比)で添加した。細胞を、5時間37℃でインキュベートし、培地を採取し、放射能を、ベータカウンタを使用して決定した。KMS11及びMMS.1 MM細胞を、様々なE:T比での二重特異性抗体の存在下で測定した。
【0274】
NK細胞によるKMS11及びMMS.1 MM細胞死滅-脱顆粒アッセイ
異なる量のKMS11及びMMS.1 MM細胞を、96プレート内に蒔いた(500,000、250,000、125,000、62,500、31,250、15,625、及び7,800個の細胞/ウェル)。次いで、5000個の一次活性化ヒトNK細胞を、aCD56及びaCD107A抗体と一緒に添加した。細胞を、37℃で2時間インキュベートした。NK脱顆粒を、CD56陽性細胞上のCD107のフローサイトメトリー染色によって計算した。細胞を、抗NKp46及び抗CD38二重特異性抗体、抗NKp46抗体対照、並びに抗CD38抗体対照とともにインキュベートした。示された脱顆粒の百分率は、様々なE:T比での二重特異性抗体において測定された。脱顆粒は、NK細胞によるKMS11及びMMS.1 MM細胞死滅の代理である。したがって、これは、NKp46及びCD38の両方に結合する二重特異性抗体が、単一特異性抗体単独よりも、KMS11及びMMS.1 MM細胞死滅への増加した機能的効果を有することを示す。
【0275】
実施例7:ヒトNKp46及びヒトCD38に結合する二重特異性抗体分子のインビボ機能的特徴付け
ヒトMM異種移植モデルにおける、ヒトNKp46及びCD38に結合する二重特異性抗体の効果
ルシフェラーゼを発現するMM1.S細胞(MM1.Sluc)を、免疫不全(NSG)マウスの尾静脈内に注射し、ルシフェラーゼレベルを、IVISイメージングシステムによって、3又は4日ごとに測定する。MM1.S注射の13日後、精製ヒトT細胞を、抗NKp46及びCD38二重特異性抗体とともに又はなしで、静脈内移植する。腫瘍サイズを低減するために必要とされる、二重特異性抗体の安全量を決定するための用量応答実験を実施する。漸増濃度の二重特異性抗体及び単一特異性抗体(ヒト化NKp46及び抗CD38)を、腫瘍を保有するマウス内に注射する。抗体注射は、1週間に2回投与される。4週間の期間、マウスを、毎日監視し(マウスの体重、及び全般的な外観)、それらの腫瘍を、デジタルバーニヤキャリパーによって測定する。人道的エンドポイントは、1cmの腫瘍体積又は初期体重から20%の体重損失に設定される。4週間後に、マウスを屠殺し、腫瘍を、除去し秤量する。腫瘍増殖の有意な阻害(より低い腫瘍体積及び重量)が観察される処置は、成功と考えられる。
【0276】
実施例8:新規の多機能四価CD38 NKp46 FLEX-NK(商標)エンゲージャーの特徴付け
CD38は、多発性骨髄腫におけるNK細胞媒介性細胞傷害のための臨床的に検証された標的である。NKE2は、標的がん細胞及びNK細胞の両方に同時に結合する新規のFLEXリンカーを有する四価IgG1様多機能NKエンゲージャー抗体である。NK会合及び活性化は、自然細胞傷害受容体NKp46に対して向けられる結合剤を介して媒介される。NKE2は、抗CD38結合ドメインと、ヒト化09抗体のNKp47結合ドメインと、を含む(配列については、表1~6を参照されたい)。この実施例において、野生型(WT)Fcを有するもの及び変異型ヌルFcを有するものの2つのバージョンのNKE2を特徴付けた。
【0277】
NKE2は、多発性骨髄腫細胞株への用量依存性結合を示した
多発性骨髄腫細胞株MM1S及びKMS11を発現するCD38、並びにCD38ノックアウトMM.1S細胞株へのNKE2の結合を決定した。用量依存性結合が、MM1S及びKMS11多発性骨髄腫細胞へのNKE2 WT又はMut Fc(Fcサイレント)の結合で観察され、CD38ノックアウトMM.1S細胞株への結合は観察されなかった(図14)。
【0278】
NKE2は、NK細胞への用量依存性結合を示した
BW細胞へのNKE2結合を決定した。BW親細胞又はヒトNkp46トランスフェクトBW細胞を、NKE2又は対照IgG1とともに、1時間、室温でインキュベートした。次いで、細胞を、二次抗IgG1 PE Abで染色し、結合(抗IgG1 PEのMFI)を、フローサイトメトリーによって測定した。結果を、図15A及び15Bに示す。同様の結合が、BW細胞へのNKE2 WT及びMut Fcの結合で観察された。
【0279】
エピトープマッピング研究は、NKE2が、ダラツムマブとは異なる部位に結合することを示す
CD38アラニンスキャニング変異誘発によるNKE2エピトープマッピング分析は、NKE2が、ダラツムマブとは異なる部位に結合することを示す。結果を、図16に示す。NKE2結合に影響するアラニン変異体は、緑色でハイライトされ、ダラツムマブ結合に影響することが既知の残基は、赤色でハイライトされる(残基S232は、リーダー配列を有するS274に対応する)。これらのデータは、異なるエピトープがNKE2によって検出されたことを示唆する。
【0280】
NKE2は、多発性骨髄腫細胞株の用量依存性PBNKリダイレクト細胞溶解を示した。
PBNK細胞傷害アッセイを、漸増NKE2濃度で、5の固定E/T比で20時間評価し、標的細胞溶解を、フローサイトメトリーによって評価した。結果を、図17A~17Cに示す。KMS11及びMM1S多発性骨髄腫細胞のNKE2用量依存性PBNKリダイレクト細胞溶解は、最小の細胞溶解がMM1SCD38KO細胞で観察されたため、CD38発現に依存した。NKE2 WT-Fcは、NKE2 Fc変異体比較してわずかにより高い細胞溶解を示した。
【0281】
多発性骨髄腫MM1S細胞に対するNKE2 PB-NK細胞リダイレクト細胞溶解、脱顆粒、及びサイトカイン産生
PB-NK細胞溶解を、様々な濃度のNKE2で、1の固定E/T比で24時間決定し、標的溶解を、フローサイトメトリーによって分析した。PBNK脱顆粒を、1のE/T比で5時間評価し、フローサイトメトリーによって、抗CD107a抗体を使用して評価した。結果を、図18Aに示す。NKE2は、ダラツムマブ又は単一のCD38及びNKp46 mAbと比較して、多発性骨髄腫MM1S細胞に対する著しくより高い用量依存性PB-NK細胞リダイレクト細胞溶解及び脱顆粒を示した。これらの結果は、NKE2による、対向するNK及びMM細胞上のNKp46及びCD38の共会合が、このNK細胞エンゲージャーによって観察されるより高い効力に寄与することを示す。興味深いことに、機能的Fcを有さないNKp46 mAb単独は、多発性骨髄腫細胞の末梢血NK細胞細胞溶解を誘導し、これは、NKp46が骨髄腫細胞のNK細胞媒介性死滅において重要な役割を果たすという以前の報告と一致した。
【0282】
サイトカイン産生を、フローサイトメトリーによるIFN-g及びTNF-aについての細胞内染色によって評価した。結果を、図18Bに示す。NKE2はまた、MM細胞とともに、1のE/T比で5時間インキュベートされた後に、ダラツムマブ並びに単一のCD38及びNKp46 mAbと比較してより高い%のIFN-g及びTNF-a産生PBNK細胞を誘導した。
【0283】
NKE2は、インビトロでのヒトPBMCにおいて、著しい免疫サブセット枯渇を示さず、低いレベルのNK細胞フラトリサイド及びサイトカイン放出を示した
NK細胞フラトリサイドを、精製PBNKを使用して、NKE2又はダラツムマブ又はヒトIgGの存在下で、フローサイトメトリーによって、live dead細胞染料を使用して評価した。結果を、図19Aに示す。ダラツムマブは、NKE2 WT及びNKE2 MUTと比較して、PBNK細胞のより高いフラトリサイドを示した。
【0284】
ヒトPBMC免疫細胞サブセット枯渇へのNKE2の効果を、NKE2又はダラツムマブ又はhIgG1とともに、24時間インキュベートし、続いて、フローサイトメトリーによる免疫サブセット分析を行うことによって評価した。結果を、図19Bに示す。ダラツムマブは、NK細胞及び単球の枯渇を示したが、最小の免疫細胞枯渇が、NKE2 WT及びNKE2 MUTで観察された。
【0285】
NKE2がサイトカイン放出を誘導する潜在性を、ヒトPBMCアッセイにおいて、NKE2、又は抗CD3若しくはCD28 mAb(TGN1412)、又はhIgG1とともに、48時間インキュベートし、続いて、上清を、サイトカインの存在について、多重ELISAアッセイによって試験することによって評価した。結果を、図19Cに示す。堅牢なサイトカイン放出が、抗CD3及びCD28(TGN1412)mAbで観察されたが、最小のサイトカイン放出が、NKE2で観察された。
【0286】
結論
この実施例において考察される結果は、CD38 NKp46エンゲージャーが、ダラツムマブとは異なる、多発性骨髄腫を発現するCD38を標的とするのに好都合なNK細胞エンゲージャープロファイルを有することを示唆する。
【0287】
参照による組み込み
本明細書に記載される全ての刊行物、特許、及び受託番号は、各個々の刊行物又は特許が、具体的かつ個々に、参照により組み込まれることが示されるかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0288】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに記載されているが、上記の説明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を例示しかつ限定しないことが意図されている。他の態様、利点、及び修正形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C-1】
図19C-2】
【配列表】
2024513262000001.app
【国際調査報告】