(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】アルミニウム三水和物の形成方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/34 20060101AFI20240315BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20240315BHJP
B09B 3/38 20220101ALI20240315BHJP
B09B 101/55 20220101ALN20240315BHJP
【FI】
C01F7/34
B09B3/70 ZAB
B09B3/38
B09B101:55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515518
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 SG2021050199
(87)【国際公開番号】W WO2022216221
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522089125
【氏名又は名称】ジェイティーエス オプティマックス ピーティーイー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】パンディ,トリダンシュ バハードゥル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チャン リン ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4D004
4G076
【Fターム(参考)】
4D004AA43
4D004BA05
4D004BA06
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA34
4D004CA35
4D004CB21
4D004CC01
4D004CC12
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
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4D004DA10
4D004DA12
4D004DA20
4G076AA10
4G076AB02
4G076AB28
4G076BA26
4G076BA30
4G076BC02
4G076BD02
4G076BE11
4G076DA30
(57)【要約】
第1所定温度でアルミニウムくずを水酸化ナトリウムと混合して混合物を形成することであって、アルミニウムくずは、アルミニウムくずの総重量に対して30%以上の酸化アルミニウム含量を有する形成すること;混合物を濾過して第1濾液及び第1残渣を得ること;第1濾液を水で希釈すること;並びに第2所定温度で第1濾液を二酸化炭素と混合してATH残渣及び第2濾液を得ることを含むアルミニウム三水和物の形成方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム三水和物(ATH)の調製方法:
- 第1所定温度でアルミニウムくずを水酸化ナトリウムと混合して混合物を形成することであって、前記アルミニウムくずは、前記アルミニウムくずの総重量に対して30%以上の酸化アルミニウム含量を有すること;
- 前記混合物を濾過して第1濾液及び第1残渣を得ること;
- 前記第1濾液を水で希釈すること;並びに
- 第2所定温度で前記第1濾液を二酸化炭素と混合してATH残渣及び第2濾液を得ること。
【請求項2】
前記アルミニウムくずは、前記アルミニウムくずの総重量に対して60~90%の酸化アルミニウム含量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウムくずは、粉末アルミニウムくずである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウムくずは、0.002~10.0mmの平均粒径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物は、アルミニウムくずと水酸化ナトリウムとを1:0.2~1:8の比で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1所定温度は50~100℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記希釈することは、前記第1濾液を1.5~4の希釈倍率で希釈することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1濾液を二酸化炭素と混合することは、二酸化炭素を9~20kg/分の流量で前記第1濾液に流入させることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2所定温度は40~100℃である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1濾液を二酸化炭素と混合することは、二酸化炭素を60~180分間前記第1濾液に流入させることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1濾液を二酸化炭素と混合することは、前記第1濾液のpHを7.0~8.6に下げる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
大気圧で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2濾液を蒸発させて重炭酸ナトリウムを形成することを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸発は減圧蒸発を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記重炭酸ナトリウムを加熱して炭酸ナトリウムを形成することを更に含む、請求項13及び14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、アルミニウム三水和物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
アルミニウムくずは、アルミニウム精錬からの副産物であり、金属アルミニウム、酸化アルミニウム及び他の金属酸化物を含有し得る。一般に、アルミニウムくずからのアルミニウムの回収後に、くずは、埋立によって廃棄され、それは、地下水への毒性金属イオンの浸出をもたらし、水汚染問題及び原材料の損失を引き起こし得る。更に、アルミニウムくずが水と接触するとき、アンモニア、水素ガス及び他の可撚性ガスが発生し得、それらは、不適切に貯蔵される場合に空気を汚染するのみならず、火災及び爆発の源であり得る。
【0003】
アルミニウムくずからアルミニウムを回収する幾つかの方法がある。例えば、くず中の酸化アルミニウムの85~90%は、酸溶解法及び水酸化ナトリウム高温溶融法を用いて回収され、精製され得る。そのような方法は、アルミニウムくず中のアルミニウムの90%超を回収し得る。しかしながら、両方法とも、エネルギー集約的であり、それ故、費用効率及びエネルギー効率が高くない。
【0004】
アルミニウム三水和物(ATH)は、アルミナに変換され得るし、その後アルミニウムに変換され得る。ATHは、また、エレクトロニクス及び自動車工業での使用のための耐火材で保護されたポリマーに広く使用されている。しかしながら、これらの用途は、アルミニウム生産用のアルミナに変換される容量と比較して小さい百分率である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、アルミニウムくずから多量の金属及び化学品形態のアルミニウムとして回収する改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨
本発明は、これらの問題に対処しようと、及び/又はアルミニウム三水和物を調製する改善された方法を提供しようとするものである。
【0007】
第1態様によれば、本発明は、アルミニウム三水和物(ATH)の調製方法であって、
- 第1所定温度でアルミニウムくずを水酸化ナトリウムと混合して混合物を形成すること(ここで、アルミニウムくずは、アルミニウムくずの総重量に対して30%以上の酸化アルミニウム含量を有する);
- 混合物を濾過して第1濾液及び第1残渣を得ること;
- 第1濾液を水で希釈すること;並びに
- 第2所定温度で第1濾液を二酸化炭素と混合してATH残渣及び第2濾液を得ること
を含む方法を提供する。
【0008】
アルミニウムくずは、任意の好適なアルミニウムくずであってもよい。特に、アルミニウムくずは、アルミニウムくずの総重量に対して60~90%の酸化アルミニウム含量を有してもよい。
【0009】
別の特定の態様によれば、アルミニウムくずは、粉末アルミニウムくずであってもよい。特に、アルミニウムくずは、0.002~10.0mmの平均粒径を有してもよい。
【0010】
混合物は、任意の好適な量のアルミニウムくずと水酸化ナトリウムとを含んでもよい。例えば、混合物は、アルミニウムくずと水酸化ナトリウムとを1:0.2~1:8の比で含んでもよい。
【0011】
第1所定温度は、任意の好適な温度であってもよい。例えば、第1所定温度は、50~100℃であってもよい。
【0012】
希釈は、濾液を任意の好適な量の水で希釈することを含んでもよい。特に、希釈は、第1濾液を1.5~4の希釈倍率で希釈することを含んでもよい。
【0013】
特定の態様によれば、第1濾液を二酸化炭素と混合することは、二酸化炭素を9~20kg/分の流量で第1濾液に流入させることを含んでもよい。第1濾液が二酸化炭素と混合される第2所定温度は、好適な温度であってもよい。例えば、第2所定温度は40~100℃であってもよい。
【0014】
第1濾液を二酸化炭素と混合することは、二酸化炭素を好適な期間第1濾液に流入させることを含んでもよい。例えば、混合は、60~180分間であってもよい。
【0015】
本方法は、任意の好適な条件下で実施されてもよい。特に、本方法は、大気圧で実施されてもよい。
【0016】
特定の態様によれば、本方法は、第2濾液を蒸発させて重炭酸ナトリウムを形成することを更に含んでもよい。蒸発は、任意の好適な形態の蒸発であってもよい。特に、蒸発は、減圧蒸発を含んでもよい。
【0017】
特定の態様によれば、本方法は、重炭酸ナトリウムを加熱して炭酸ナトリウムを形成することを更に含んでもよい。
【0018】
図面の簡単な説明
本発明を十分に理解し、容易に実用的効果に移し得るために、これから非限定的な例の例示的にすぎない実施形態によって説明し、この説明は、添付の例示的な図面に関するものである。これらの図面において:
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】使用されたアルミニウムくずの重量並びに回収された湿潤及び乾燥反応酸化物残渣(ROR)の重量を示し;
【
図2】使用されたアルミニウムくずの重量並びに回収された湿潤及び乾燥白色沈殿物残渣(WPP)の重量を示し;
【
図3】回収されたアルミニウム三水和物(ATH)の百分率純度を示し;
【
図4】回収されたアルミニウム三水和物(ATH)の油吸収(g/100g)を示し;
【
図5】回収されたアルミニウム三水和物(ATH)の白色度を示し;
【
図6】回収されたアルミニウム三水和物(ATH)の水分含量(重量%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
上で説明されたように、アルミニウムくずからアルミニウムを回収する改善された方法が必要とされている。
【0021】
一般論として、本発明は、アルミニウム三水和物(ATH)を調製する改善された方法を提供する。ATHはその後アルミニウムへ変換されてもよい。このようにして、アルミニウムの効果的な回収が、環境にやさしい方法でアルミニウムくずから達成されてもよい。更に、本発明の方法は、二酸化炭素を利用し、それによって炭素排出を低減するのに役立つ。本方法の副産物は、また、更なる用途を有し得、それによって本方法を、廃棄物を最小限にする点で及び埋立地への資源の損失を低減する点で有利なものにしてもよい。
【0022】
第1態様によれば、本発明は、アルミニウム三水和物(ATH)の調製方法であって、本方法が、
- 第1所定温度でアルミニウムくずを水酸化ナトリウムと混合して混合物を形成すること(ここで、アルミニウムくずは、アルミニウムくずの総重量に対して30%以上の酸化アルミニウム含量を有する);
- 混合物を濾過して第1濾液及び第1残渣を得ること;
- 第1濾液を水で希釈すること;並びに
- 第2所定温度で第1濾液を二酸化炭素と混合してATH残渣及び第2濾液を得ること
を含む方法を提供する。
【0023】
アルミニウムくずは、任意の好適なアルミニウムくずであってもよい。例えば、アルミニウムくずは、アルミニウムくずの総重量に対して30~95%、35~90%、40~85%、45~80%、50~75%、55~70%、60~65%の酸化アルミニウム含量を有してもよい。特に、アルミニウムくずは、アルミニウムくずの総重量に対して60~90%の酸化アルミニウム含量を有してもよい。
【0024】
アルミニウムくずは塩を含んでもよい。塩は、ケイ酸塩、塩化物、フッ化物、硝酸塩を含んでもよいが、それらに限定されない。例えば、アルミニウムくずは塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0025】
アルミニウムくずは、任意の好適な形態であってもよい。例えば、アルミニウムくずは、粉末形状であってもよい。アルミニウムくずは、当技術分野において公知の任意の好適な方法によって粉末へ形成されてもよい。例えば、アルミニウムくずは、ハンマー、ジョー・クラッシャーで、又はアルミニウムくずを研削するために破砕機を用いる物理的破砕法によって処理されてもよい。特定の態様によれば、アルミニウムくずは、ブロック形状であってもよく、その場合では、アルミニウムくずは、それを本発明の方法の目的により好適な形態へ変換するために上で説明されたように更に処理されてもよい。
【0026】
アルミニウムくずは、任意の好適なサイズであってもよい。例えば、アルミニウムくずは、0.002~10.0mmの平均粒径を有してもよい。本発明の目的のためには、平均粒径は、アルミニウムくず粒子の高さの平均寸法又はアルミニウムくず粒子の平均幅を意味してもよい。特に、アルミニウムくずは、0.01~9.0mm、0.05~8.0mm、0.1~7.0mm、0.5~6.0mm、1.0~5.0mm、2.0~4.0mm、2.5~3.0mmの平均粒径を有してもよい。更により特に、アルミニウムくずは、0.002~3.0mmの平均粒径を有してもよい。
【0027】
混合は、好適な量のアルミニウムくずと水酸化ナトリウムとを混合して混合物を形成することを含んでもよい。特定の態様によれば、混合は、アルミニウムくずと水酸化ナトリウムとを、1:0.2~1:8の重量比で混合することを含んでもよい。例えば、比は、1:0.5~1:7、1:0.7~1:6、1:1~1:5、1:1.3~1:4、1:1.5~1:3、1:2~1:2.5であってもよい。特に、比は1:0.7~1:1.3であってもよく、更により特に、比は1:0.7であってもよい。
【0028】
混合は、任意の好適な温度においてであってもよい。例えば、混合は、50~100℃の第1所定温度においてであってもよい。特に、混合は、55~95℃、60~90℃、65~85℃、70~80℃、75~78℃の温度においてであってもよい。更により特に、温度は80~100℃であってもよい。
【0029】
混合は、好適な期間実施されてもよい。例えば、混合は1~4時間であってもよい。特に、混合は、1.5~3.5時間、1.75~3.0時間、2.0~2.5時間実施されてもよい。更により特に、混合は2時間であってもよい。
【0030】
混合は、以下の反応を含んでもよい:
【0031】
【0032】
混合後に、混合物は濾過されてもよい。濾過は、任意の好適な方法によってであってもよい。濾過は、第1残渣を第1濾液から分離するためであってもよい。第1残渣は、さらなる使用及び/又は処理のために集められ、貯蔵されてもよい。
【0033】
第1濾液はアルミン酸ナトリウム液を含んでもよい。第1濾液は、希釈濾液を得るために水で希釈されてもよい。例えば、第1濾液の希釈は、第1濾液を好適な量の水で希釈することを含んでもよい。特に、希釈は、濾液を1.5~4の希釈倍率で希釈することを含んでもよい。更により特に、希釈倍率は2であってもよい。
【0034】
第1濾液が希釈されるとすぐに、本方法は、第1濾液を二酸化炭素と混合することを含んでもよい。混合は、第1濾液を二酸化炭素と混合することを含んでもよく、二酸化炭素を第1濾液に流入させることを含んでもよい。特に、混合は、二酸化炭素を第1濾液中へバブルさせることを含んでもよい。第1濾液を二酸化炭素と混合することは、以下の反応を含んでもよい:
【0035】
【0036】
第1濾液を二酸化炭素と混合することは、二酸化炭素が炭酸を形成すること及び第1濾液中の水酸化ナトリウムと反応してNaHCO3を形成することをもたらす。したがって、第1濾液のpHは低下する。NaOHの枯渇は溶液を平衡に向かわせ、そのことは、アルミン酸ナトリウムがNaOHとAl(OH)3とに分かれ、後者が第2残渣として沈澱することをもたらす。特に、反応は、第1濾液のpHが約7.0~8.6、好ましくは約8.3~8.6のpHである場合に平衡に達すると考えられてもよい。
【0037】
混合後に、アルミニウムくず中に含まれたいかなるシリカも、不活性になってもよく、アンモニア又は水素を生成するほどもはや反応性ではあり得なくてもよい。
【0038】
二酸化炭素は、任意の好適な流量で第1濾液と混合されてもよい。例えば、流量は9~20kg/分であってもよい。特に、流量は、9~18.5kg/分、10~18kg/分、12~16kg/分、13~15kg/分、13.5~14kg/分であってもよい。更により特に、流量が9~10kg/分であってもよい。
【0039】
第1濾液を二酸化炭素と混合することは、好適な条件下で実施されてもよい。例えば、第1濾液を二酸化炭素と混合することは、好適な期間実施されてもよい。混合は、所定の期間実施されてもよい。特定の態様によれば、所定の期間は、第1濾液のpHを約7.0~8.6に下げることを可能にするための任意の好適な時間であってもよい。例えば、所定の期間は60~180分であってもよい。特に、所定の期間は、70~160分、75~150分、90~120分、100~110分であってもよい。更により特に、所定の期間は120~135分であってもよい。
【0040】
第1濾液を二酸化炭素と混合することは、好適な温度で実施されてもよい。例えば、混合は、第2所定温度で実施されてもよい。特定の態様によれば、第2所定温度は40~100℃であってもよい。特は、第2所定温度は、45~95℃、50~90℃、65~85℃、70~80℃、75~78℃であってもよい。更により特に、第2所定温度は55~70℃であってもよい。
【0041】
第1濾液を二酸化炭素と混合することは、第2濾液中の残渣としてのATHの形成をもたらす。特に、高純度のATHが、本方法から得られてもよい。特定の態様によれば、ATHの純度は70%以上であってもよい。特に、純度は70~90%であってもよい。
【0042】
本発明の方法は、任意の好適な圧力で実施されてもよい。特に、本方法は大気圧で実施されてもよい。このようにして、本方法は、安全な方法であり、本方法を経済的であるものに保つことに貢献する。
【0043】
本方法は、第2濾液を蒸発させて重炭酸ナトリウムを形成することを更に含んでもよい。蒸発は、任意の好適な形態の蒸発であってもよい。特に、蒸発は減圧蒸発を含んでもよい。
【0044】
特定の態様によれば、本方法は、重炭酸ナトリウムを加熱して炭酸ナトリウムを形成することを更に含んでもよい。加熱は好適な温度においてであってもよい。例えば、温度は150~200℃であってもよい。
【0045】
全体に、本発明の方法は、ATH、並びに重炭酸ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムを形成する。重炭酸ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムは、本方法の副産物として形成されてもよく、それらは、順繰りに、他の目的で使用されてもよい。したがって、本発明の方法は、廃アルミニウムくずの有効なリサイクリングを可能にして金属アルミニウムの抽出での使用のためのATHを得るのみならず、他の有用な副産物の製造をも可能にする。
【0046】
本発明を大まかに説明してきたが、同じものは、実例として提供される、及び限定的であることを意図されない以下の実施形態を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0047】
実施例
アルミニウムくずを入手し、酸化物層をアルミニウムくずから研削した。酸化物層は粉末形状であり、集められた。XRF走査(LaFarge Aluminates Laboratory)を用いてくず粉を化学的に分析した。分析の結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
次いで、約100gのくず粉を約3:2の比で水酸化ナトリウム溶液に添加し、一定に撹拌した。混合物を100℃で2時間維持した。
【0050】
2時間後に、アルミン酸ナトリウム液が得られる。液を反応酸化物残渣(ROR)ケーキから濾別した。アルミン酸ナトリウム液は、水に可溶のままであるために約68%の濃度を有した。
【0051】
次いで、二酸化炭素ガスを濾過されたアルミン酸ナトリウム液中へポンプで送って炭酸及びH2CO3を形成した。液の高いアルカリ度のために、炭酸は、アルミン酸ナトリウムを可溶性に保つNaOHを中和した。それ故、アルミン酸ナトリウムは、解離してNaOHとアルミニウム三水和物とに戻った。アルミニウム三水和物を可溶性に保つのに不十分なNaOHが存在するので、アルミニウム三水和物は、流れやすい白色沈殿物生成物(WPP)として沈澱した。全体的な反応は以下に示される:
【0052】
【0053】
全体反応への様々な異なる条件の影響を見出すために、5つの異なる条件の組合せを表2に示すように実施した。
【0054】
【0055】
撹拌と溶液中へポンプで送られる二酸化炭素対NaOHの化学量論比とが、どの化合物構造が生成するかを決定することが観察された。撹拌なし及び非平衡の中和であれば、個別の化学的に異なる成分へ物理的に分離するのが非常に困難である、Na2O.Al2O3.CO2.nH2Oの凝集結晶構造が形成された。
【0056】
次いで、得られたWPP及びRORを以下のとおり様々なテストにかけた:
【0057】
1.1 WPPの重量分析
得られたWPPを濾別し、分析する前に100℃で2~5日間マフラー炉中で乾燥させた。乾燥WPPについての元素分析は、XRF及びTOC/TC分析を用いて行った。
【0058】
1.2 CO2中和法を用いるテストランのATH純度、白色度テスト、油吸収テスト及び水分測定
乾燥WPPについてのアルミニウム三水和物(ATH)純度の定量は、XRF及びTOC/TC分析を用いて行った。白色度テストは、CIE L*a*b色空間を用いて行った。油吸収テストは、ASTM D281-12を用いて行い、水分測定は、TGA分析を用いて行う。
【0059】
1.3 CO2中和法を用いるテストランの化学組成分析
乾燥WPPについてのアルミニウム三水和物純度の定量は、XRF及びTOC/TC分析を用いて行った。
【0060】
1.4 乾燥RORの化学組成分析
様々なランからのRORを混ぜ合わせ、100gの試料を採取した。RORの分析は、XRF及びTGA/TC法を用いて行った。
【0061】
上記テストの結果は以下のとおりである。
【0062】
テストランの乾燥反応酸化物残渣(ROR)及び白色沈殿物生成物(WPP)の重量分析
図1から、5つの試料からの乾燥RORの重量は58.43g~64.59gであることが分かる。乾燥条件は同じものであったにもかかわらず、試料全ての間に乾燥において注目される不均一があった。
図2から、試料3のWPPが試料全ての最低重量及び最高水分損失を有したことを理解できる。
【0063】
比較ランのWPPのATH純度、油吸収、白色度及び水分含量
図3~6から、試料3の乾燥WPPが最高のATH純度(89.84%、工業グレード)及び白色度(98.32白色度指数)、並びに最低の水分含量(3.30%)を有することを理解できる。その油吸収テストレベルは、また、ペイント充填材に使用される工業グレードATHの範囲内にあった。
【0064】
テストランからのWPPの化学組成分析
表3から、CO3汚染が一般的であったことを理解できる。例えば、試料3について、CO3汚染は試料全ての中で最低のものであった。
【0065】
【0066】
アルミニウムくず及びRORの化学組成比較
表4は、元々使用されたくず粉及びNaOH抽出後の反応酸化物残渣(ROR)の百分率化学組成を示す。これらの結果から、酸化アルミニウムの量が処理後に25.73%減少していること、CaOの13.83倍増加、BaOの17.43倍増加及びFe2O3の3.14倍増加が観察された。
【0067】
【0068】
前述の記載は、例示的な実施形態を記載してきたが、関連技術の当業者によって、多くの変形が本発明から逸脱することなく行われてもよいことが理解されるであろう。
【国際調査報告】